●
貧しい暮らし、日常的な差別、変わる事のない毎日。そんな生活を打破してほしいと幾度願ったか。でもそれが、こんな形で実現するなんて。嗚呼、神様、どうして、これも我らに与えたもうた試練なのでしょうか!
領主館、エントランスホール。近隣の村から呼び寄せた若者を、従者たる受付嬢――白き羽根、オラトリオだろうか――が奥へ奥へと案内する。
豪奢な階段が伸びたその先、自らの肖像画を背に立つ少女が一人。彼女もまたオラトリオであろう、白き翼を携えている。呼び出した人数が凡そ揃った頃合いを見計らい、少女は口を開いた。
「神より遣わされし、我らの使命は唯一つ。あなた方を救うことです」
ざわざわとどよめくホール。少女の声は決して大きくないが、よく通る。耳にすんなりと入り、言い切るその姿に信頼感のようなものまで芽生た。
「では皆さま。苦しみ、怒り、恐怖、飢餓……斯様なものを捨てる準備はよろしいですか?」
女も男も子供も、喜び、神に感謝した。我らの神に、祈りが通じたと――。
「ぎゃああああ!!」
絶叫。一斉に向かう人々の視線の先で唸る男は……全身が炎に包まれていた。
混乱で誰も動けない間もどんどんと火は勢いを増し、辺りを肉が焼ける匂いで満たす。女が一人、人の合間を縫って玄関扉を開けようと叩くがビクリともしない。逃げたくとも不可能を悟り、ぺたんと床に座り込む女。
「なんなの!? あなたたち一体なにが目的なの!?」
「最初に申しあげた通りです。救済こそ我らが目的」
悲鳴が上がる。また一人、誰かが燃えている。見れば炎柱を生み出しているのはあの受付嬢達ではないか。傷ついた肢体を晒し、無情に人を炭へと変えていくのが見える。
身を屈め、壁を伝い、漸く動ける所に出た。ホールは最早阿鼻叫喚、地獄とは果たしてこういう場所を言うのではないのか。
ああしかし、もみくちゃにならないように逃げて逃げて辿りついたのは階段。踊り場では少女が先程と変わらぬ出で立ちで迎える。
「――癒されたいのでしょう、救われたいのでしょう?」
ちがう、いやだ、こんなものに。
「死こそ平等にして唯一の救済、私があなた方を――」
死んだら終わりなんだ! 贅沢は言わない、それなのにどうして、どうして!
「導くわ」
死にたくない! 死にたくない!! 死にたくない!!! 死にた。
ごとり。
「あなたは特別よ。私の剣で死ねたのだもの。極上の死に酔いなさい」
転がった生首を拾い上げた少女は、純白の翼を大きく広げる。その姿は、さながら子供を抱く聖母のようでもあった。
●
「この区画にね、天使が現れたわ。文字通り、天の御使いよ。でも残念……こいつが仕えてるのは死神ね」
斬断・彩萌(殺界パラディーゾ・f03307)は常の元気さを抑え、真剣な面持ちで説明に入った。グリモアは薄暗く退廃的な雰囲気を映し出している。
「今回の予知で視えたのは、ダークセイヴァーでの惨劇よ。救済を謳ったお天使様が、領主館に人々を集めるの。そこで『死こそ救済』とか意味わかんない事言って大虐殺するってワケ」
領主館の構造は実にシンプル。大きな玄関扉・広いエントランスホール・正面を陣取る長い階段。エントランスホールは広さの面で言えば戦場に最適だろうが、しかし。
「アンタ達を送れるのは一人目の炎上が起きた数秒後ってトコね。ごめん、これが限界のタイミングなの」
一人目は、確実に死ぬだろう。それでも大多数の人は無傷のまま残されている。受付嬢の姿をしていた天使は集団で人々を優先的に襲うため、無事にやりすごすには領主館からの避難や護衛が必要になる。あえて囮に使う事も出来なくはないだろう。
「とりま大天使さま的なヤツは高みの見物というか、近づいてきた人を手に掛ける程度であまり動かないと思うわ。かぁ~腹立つ~!」
コホン。一度冷静になり、クイと眼鏡を上げ、彩萌は本型のグリモアを閉じた。
哀れな村人を助けるのか。助けてどうするのか。死は本当に救済なのか。言いたい事をすべて圧しこめて、猟兵の転送を開始する――。
まなづる牡丹
オープニングを読んで下さりありがとうございます。
まなづる牡丹です。
今回は『救済』をテーマにしたシナリオをご用意しました。皆様が楽しめるよう努めて参ります。
●第一章
『集団戦:オラトリオの亡霊』
村人の数は大勢です。とにかく多いです。親子、男性、女性、子供等様々。老人はいません。
オラトリオの亡霊は村人の1/6程度ですが、個体は弱くはありません。
村人を逃がす・戦闘に専念する・両方を行う……等々、プレイングの種類は問いません。
●第二章
『ボス戦
:???』
救済を説いてきます。PC様にとっての救済が何であるか物申す事がありましたら、書き綴って頂けると幸いです。
もちろん会話を交わさずに殴り合う事も可能です。
●第三章
『日常:花と墓と灰を送ろう』
弔いの静かな時間です。思う様に動いて下さいませ。
以上。皆様のプレイングをお待ちしています!
●プレイング送信時間についての捕捉
1章は公開されたタイミングで送って頂いて構いません。
2・3章目はMSページにてプレイング受付時間を告知致しますので、目を通して頂けますと助かります。
第1章 集団戦
『オラトリオの亡霊』
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POW : おぞましき呪い
【凄まじき苦痛を伴う呪いを流し込まれ狂戦士】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD : 苦悶もたらす魔焔
【全身の傷から噴く魔焔 】が命中した対象を燃やす。放たれた【主すら焼き苦痛をもたらす、血の如く赤黒い】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
WIZ : 汚染されし光条
【指先】を向けた対象に、【汚染され変質した邪悪なる光】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
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桑原・こがね
救いだなんて言ってるけど、結局やってるのは大量虐殺ね。
許せないわね!一人でも多く助けないと!
戦いながら助けるとか器用なことできる気がしないけど……そうだ、あたしの方に引きつければ、みんな逃げやすくなるんじゃないかしら。【存在感】は結構あるのよ、あたし。
まずは雷を鳴らしてこっちに注目を集める。あたしを見ろォ!
「雷鳴団団長、桑原こがね、義によってここに推参!無辜の民を傷つけるのならば、この剣を超えていけ!」
速く動く物を無差別攻撃するらしいし、あたしが轟雷を使って動き続ければ良い囮になると思う。できるだけたくさん引きつけなきゃ!
もちろん引きつけるだけじゃなくてこの剣で倒してやるつもりだけど!
アレグリア・ノーチェス
POW ※アドリブ・連携歓迎
救済を語って大虐殺、ね。
・・罪もない人々を殺しておいて何が天使か。何が救済か。
いいとこ悪魔の所業じゃないか。これ以上犠牲を出さないように。村人達を逃がさないとね。
素早く動くものに反応するなら、とにかく動き回りながら、トイフェル・ゲヴェーアで攻撃し、村人からこっちに注意をそらしてみようか。そうすれば、囮にもなれるし、村人が逃げる時間稼ぎにもなるはず。
苦戦するようならユーベルコード【ブラッディ・アヴェンジ】も使用し、生命力を吸収しながら戦って、村人を逃す時間を稼ぐよ。
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死による救済。人とは決して相容れぬ、一方的で勝手な言い分。そんなものに惑わされないのは、猟兵達とて同じ事。
「罪もない人々を殺しておいて何が天使か。何が救済か。いいとこ悪魔の所業じゃないか」
「許せないわね! 一人でも多く助けないと!」
桑原・こがね(銀雷・f03679)、アレグリア・ノーチェス(活発な黒女神・f16474)の両名は、自らを囮として亡霊天使から村人を引き離す事を選んだ。混乱する村人の隙間を縫い、ホールを素早く走り回る。
まだ逃げ切れていない村人は多い。同じ高さにいたのでは敵にのみ攻撃を当てるのは難しいだろうと、こがねは階段を登り、そして手摺から豪奢なオブジェに足を掛け、高らかに剣を突き上げる! 雷を纏った剣は放電し、雷鳴を響かせた。こがねを追ってきた天使達は掲げた剣先、輝く雷光を見つめている。その剣先を敵に向け、力強く名乗りを上げた!
「雷鳴団団長、桑原こがね、義によってここに推参! 無辜の民を傷つけるのならば、この剣を超えていけ!」
言い終わるや否や、オブジェから勢いよく飛び降り着地と同時に走り出す。一つしかない玄関から、少しずつだが村人が逃げていくのを横目で見て少しの安堵。
「あたしができるだけたくさん引き付けなきゃ!」
そこに居るだけで放たれる存在感と、敢えて目立つ行動を行った事によって飛躍的に上昇した身体能力。二つの能力が噛み合って、幾人かの敵はこがねから目を逸らせない。縦横無尽に駆け回る少女を捉えようと躍起になり、亡霊天使は半狂乱で呪術を放つ! 常なら当たっていたかもしれないが、今のこがねの身体は羽根のように軽く、バネのような弾性を持つ。軽く避け、後ろに村人が居るならば飛来する呪術を斬り伏せて彼らを守った。
こがねの対角線上、アレグリアもまたホール内を走り回る。ぐるぐると大きく円を描く様は、状況が宜しくないが、追い駆けっこのようでもある。入口で詰まっている村人の護衛は他の猟兵に任せ、亡霊天使の視界内で動き続ける。敵の攻撃を村人に向かせない為には、彼らより早くより他にない。
愛銃トイフェル・ゲヴェーアの照準を亡霊天使の頭に合わせ……素早くパパパンと数体の身体に風穴を開けた。確実に急所を射抜いている――しかし、既に死した天使の亡霊は、脳天を貫かれようとも動きを止めない。血を流しながらも、その血すら呪いに変えて、アレグリアを屠らんと殴りかかる!
アレグリアは僅かな溜息を吐いた。もちろん走り回って疲れたわけではない。彼女らの哀れな姿に、同情と、少しの落胆を感じた故に。元来アレグリアは戦いを楽しむ性分である。しかし、それは交わす一撃に意味があってこそ。誇りを忘れた堕ちた天使を甚振っても、至上の愉悦は得られない。
ならば、せめて苦しむ間もなく逝かせてやるのが慈悲だろう。
拳を両腕で受け止める。衝撃が身体にビリビリと伝わって震えた。これは合図だ。腕を起点として正義を為す復讐の血鎧『ブラッディ・アヴェンジ』が発動、全身を自らの血液で出来た鎧が包む。
「やられた分はやりかえすから!」
敵が身を引くより速く、血鎧は亡霊天使から生命力を吸い上げる! 肉体を構成する偽りの生命力を奪われ、しおしおと萎む身体。立っていられずよろめく敵を引っ掴み、敵の真っただ中に投げ込んだ。慄く敵陣に突っ込んで、更に霍乱を続ける――。
村人を『救おう』にも、横やりが入っては標的を変更せざるを得ない。亡霊天使の狙いがあくまでも村人であるなら尚の事、猟兵を倒さねば救えないのだから。
こがねの雷剣が閃き、残像を産み出す剣捌きで斬りつける。目立てばその分、あらゆる方向から飛んでくる攻撃。拳、呪術、時に羽根の乱舞。サムライブレイドでそれらを受けると同時に、片手ではルーンソードが敵の腹を掻っ捌く。
「ほらほらどうした! あたしを見ろォ!」
啖呵を切り自らを鼓舞するこがね。それを聞いた数体の亡霊天使が、息を合わせるでもなく其々に呪術を向ける。一を切り、二を弾き、三を躱す。まるで戦場で最も映える剣舞だと、この場に詩人がいたら評していたかもしれない。
充分に惹き付けられた亡霊天使は皆一様にこがねを集中攻撃している。つまり、視線はこがねに注がれている。そして此処にはもう一人、影のヒーローが居る事を忘れてはならない。
「ああああああ!」
亡霊天使の一体が悲鳴をあげた。息を殺し、目立たぬように近づいたアレグリアの背後からの一撃が、生命力を一気に奪取したのだ。枯れた天使は隣の天使に倒れ込み、バランスを崩す。攻撃の止んだ今が好機と、接近し剣を振るうこがね。血鎧によって動けなくなった亡霊天使を断つのはいとも容易い。次々と生命力を奪われていては、反撃など到底不可能で。
「良かったじゃないか、『救済』されただろう?」
アレグリアの揶揄の声は、果たして届いたのだろうか。
大成功
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ニレ・スコラスチカ
「……異端が救済を語るなどと」
死こそ救済。わたしはオブリビオンの戯れ言にどこか賛同してしている。
…今行うべきは思い悩むことではありません。異端狩りがわたしの使命。
【胎動】を使い、強化した肉体と生体拷問器で亡霊達に攻撃します。敵のユーベルコードは自傷を伴うもの。その【傷口をえぐる】のは異端審問官の専門分野です。
敵の反撃は高速移動で避け、不可能なら【激痛耐性】で耐えます。痛みには慣れていますから。
わたしが派手に動き苦痛を与えれば、村人達への攻撃の優先順位を下げることができるはず。全力で囮に専念しましょう。
(アドリブ、絡み歓迎)
●
「……異端が救済を語るなどと」
先に続くのは「馬鹿げている」か「烏滸がましい」か。言葉は人々のざわめきにかき消され、行き場を無くした言葉はそのまま紡がれずに終わる。
裡に燻るもやもやした感情が、ニレ・スコラスチカ(旧教会の異端審問官・f02691)の表情を曇らせた。どうしてか、分かっている。心中ではどこか、オブリビオンの戯れ言に賛同してしている自分がいるからだ。
――『死は救済』だとしたら、自身の行いは善なのか? それとも仇なす骸どもと違わないのか?
ぐるぐると渦巻く感情を抑えこみ、敵に向き直る。今は思い悩んでいる暇はない。ニレの使命は異端狩り、オブリビオンを討つ事だ。
「十四号洗礼聖紋、解放」
黒き聖紋Emblaを縁取るように光が浮きあがり、ニレの肉体に力を宿す。人離れした力は刻一刻と身体と精神を蝕み、増幅を続けた。痛みには慣れている。この程度は最早痛みとして認識すらしない。
伸縮性を持つ生体拷問器、祝福処刑鋸を構え、神速の切り込みをかける! 亡霊天使の傷口からは、血ではなく灼熱の炎があふれ出た。赤黒い魔焔は主諸共相手を焼き尽くさんと激しく燃え上がる。
「ああああああ!」
痛いのだろう、苦しいのだろう。それでもニレは止まらない。切っ先を傷口に突き立て、ぐりぐりと抉る。喚き散らす亡霊天使と静かに断罪するニレを、周囲の村人も敵も呆然と見つめていた。嗚呼、その目……身体よりも痛い、視線。居心地が悪い。
グッと鋸を引けば動けなくなった肉体は燃え上がり、血も残さず灰となって消えた。次の獲物の血を啜らんと、祝福処刑鋸を伸ばす。亡霊天使は怯むことなく向かい来ては炎に包まれた。
「全て救おう。人々も、世界も、お前たち異端も」
業火の赤が、ニレの翠緑の瞳に焼きついた。異端狩りはまだ終わらない。
成功
🔵🔵🔴
宮落・ライア
ハァァァロォォォォエブリワァァァァアアン!!
英雄の横入りだよ。
救える物全て救おう。
【かばう・存在感】で一般人への攻撃を集める。
攻撃は【見切り・野生の感】で殺気を察知する。
ボクから目を一瞬でも離せば…その首刹那で飛ばすよ。
【殺気・恫喝】
避けるなんて考えず【激痛耐性・毒耐性・覚悟】でごりおす。
まぁ避けたらかばってる意味無いし。
【剣刃一閃】【薙ぎ払い】【カウンター】を駆使し
一刀一殺を目標にやっていく。
まぁ出来ずとも【二回攻撃】でなかったことにするけど。
殺しきれてまーす二撃目なんてなかったのだよー。
あとはまぁ【気合い】と【怪力】で頑張ろう。
喚くな亡霊勝手に救われてろ。
●
「ハァァァロォォォォエブリワァァァァアアン!! 英雄の横入りだよ」
屋敷中に響き渡る大音声。宮落・ライア(英雄こそが守り手!(志望)・f05053)の張りのある声が、場の空気を変える。人々も、天使も、目を見開いてライアを見つめた。仄暗い紅と、赫赫と輝く赤の視線が交じる。
先に動いたのはライア。ニッと口角をあげ、無骨な大剣を手に敵陣に突っ込んでいく! 大きく踏み込んでひと薙ぎ、下から上へ斬り払う。腹と肩にかけて割けた胴体からは赤黒い炎が噴き出し、亡霊天使の身体を包み込んだ。
「ああああああ!!」
耳を劈く絶叫が煩い。苦しみを逃がすように肢体をくねらせ、抱きつこうと伸ばされた腕を柄で弾き、勢いを殺さず一回転。周囲の天使ごと捩り斬った。ゆらゆらと燃える身体を引き摺り、ふらふらと近寄る。叫びに人々は怯え、避難に手間取る。狙ってやっているのかは分からないが、――ひたすらに鬱陶しい。お前たちがどれだけ哭こうとも、誰一人救えやしないのに。
「喚くな亡霊。勝手に救われてろ」
口に出せばストン、と腑に落ちた。彼女らは『救済』を欲している。それは他者に宛てたものであると同時に、自らも。地に堕ちた白羽根を掬い取る者を求めている。
「嗚呼そうか、ならこの一太刀をくれてやる!」
剣刃一閃。碧の太刀筋は光の線を描き、一瞬目線が外れた天使の首を刎ね飛ばした。立ち上がった火柱はそのまま天使を包み込み、燃やし尽くす。距離はほど近いが熱くはない。
――焔ならばライアの中にもある。違えられぬ期待、撃ちに響き続ける祈り、強く狂気にも近い決意が、不撓の矜持を支えていた。熱さなら絶対に負けない、その程度の焔でライアを焼こうなど、笑えない冗談だ。
勇ましい笑みを湛え、人々を背に庇い立つ姿は騎士かそれとも英雄か。
「ボクは逃げも隠れもしない! さぁ次に救われたい奴はどいつだ!?」
覚悟を言葉に変えて、ライアは一刀を振るった。
大成功
🔵🔵🔵
レナータ・バルダーヌ
死を救済と宣う理屈はさておき、無理な押しつけはいけませんね。
まずは村人の皆さんを逃がしましょう。
わたしは、能力で形成した炎の翼を【ブレイズペタルテンペスト】で花びらに変え、村人の皆さんを護るように展開して敵の炎を相殺しつつ、攻撃します。
最初に燃やされた村人さんを救出する方が他にいらっしゃらなければ、わたしの炎で一時的に上書きすることで消火します。
助けられないかはやってみなければわかりませんし、仮に間に合わずご遺体となっても、できるだけきれいな方がよいでしょう。
他の村人さんに危害が及びそうなときは、【念動力】の【オーラで防御】するか、身を挺して庇います。
●
『死が救済』と説く理屈はひとまず置いておくとして。レナータ・バルダーヌ(復讐の輪廻・f13031)は人命救助を率先して行った。
まずは最初の犠牲者である炎に包まれた村人。既に事切れている遺体を慎重にホールの脇に寄せて、レナータの暖かい炎で包み込んだ。それは相手を労わる慈愛の火。助ける事は叶わない、予測していた事だ。ならばせめて綺麗な状態で地に還してやりたかった。
きゃあ、と悲鳴が上がる。猟兵も多いが、亡霊天使は更に上回る数で人々を襲う手を緩めない。遺体に短く祈りを捧げ、玄関扉に向け駆け出す。
「っ! 皆さん、此処は私が守ります。後ろは気にせず真っ直ぐ逃げて下さい!」
レナータの声に大人は頷き、幾分かの冷静さを取り戻した者が子供達から外へと逃がす。迫り来る天使を、花弁に変えた炎の翼で食い止める。邪悪な光を受けてひらりひらりと舞い散る花壁は、一枚剥がれたらまた内から咲き光を奥へ通さない。それどころか嵐のように吹き荒れ、天使の邪炎を呑みこみ相殺していく!
「大勢のお相手は目移りしてしまっていけませんね」
複数相手では分が悪いと判断し、身近な敵を花弁で覆い隠す。炎の抱擁は堕ちた天使には熱すぎるもの。花開く炎華が身を焦がし、彼女らが語る『救済』へと導いた。
「ああああ! ドウシテ……ああ……!」
「? どうして?」
天使の呻きに混ざる、悲痛な呟き。言葉を交わせるなどと思わないが、思わず聞き返した。天使は焦点の合わない虚ろな瞳でレナータを見下ろす。開いた口からは嘆きの代わりに炎が吐かれ、地を伝う。花壁を抜けた炎が人々の足元まで迫るが、しかし、そのまま抜かせる理由もなく。
「――どんな理由があろうと、この先には行かせません!」
念動力を駆使すれば、淡い紫のオーラが人々を囲い炎の侵蝕を防ぐ。敵の数はまだまだ多い、それならば自身は守りに徹しよう。さすれば少なくとも、誰かを守る事は出来るのだから。
成功
🔵🔵🔴
ローウェン・カーティス
ライラさん(f10091)と
救済を騙って人心を誑かす、この所業
此れは、何れの世界に於いても許されることではありませんよ
多くが傷付き、救いを求める此の世界にあっては、何よりも卑劣な行いだと言えるでしょう
未だ軟弱者であることは否定しますまい
ですが、其れ故に超えねばならぬ壁もありますから
何より…此れだけのことを見なかったことに出来る程、達観してもおりません
喩え後で泣きを見ることになったとしても。私は退きませんよ
人々の退路へ迫る亡霊を迎撃しに出ましょう
二人で連携して相手取り
私は剣を交わして前衛として動きます
幾ら天の御使いの姿を持つ者とて、暴虐を尽くすというのなら
此の剣で裁かせていただきます…!
ライラ・サンタマリア
ローウェンさん(f09657)と共に
●
【WIZ】
抑も、『救済』等を謳う輩にロクなものは居ないと相場が決まっているのです
捏ち上げの胡散臭い神か
小賢しい守銭奴か
頭のイカれた快楽主義者か
人の焼ける香りなんて嗅いだ日には
暫く肉が喉を通らなくなる事請合いの繊細なお坊ちゃんの癖に
後でベソかいても知りませんからねぇ
あゝ、もう仕方の無い仔!
村人が逃げる血路を開きたく
ふたりで亡霊1体と相対
逃げ道を塞がれない様、扉付近に陣取って
守られている様で性に合いませんが信頼はしていますよ、お行きなさい
その指も腕も眼すらも灼いて見せましょう
わたくし達は天使さえもを裁く者
不義を甘んじ、翼を剥奪され地獄に堕ちなさい
※アドリブ歓迎
●
人の焼ける匂いに顔を顰めながらも、ローウェン・カーティス(ピースメイカー・f09657)は強い意思を宿した瞳で真っ直ぐに前を見据えた。暴虐の天使達は誰彼構わず救わんと、呪いを投げ掛けてまわっている。到底見過ごす事等出来やしないと、執行剣Aaliyahを翻し、まごつく人々を呪言から守らんと立ち塞がった。諭すような柔らかい、それでいてどこか怒りを交えた思いを亡霊天使に突きつける。
「救済を騙って人心を誑かす、この所業。此れは、何れの世界に於いても許されることではありませんよ」
聖杖を握りしめ、傍らに立つライラ・サンタマリア(ライアーライアー・f10091)も呆れ半分に憂憤を吐く。
「抑も、『救済』等を謳う輩にロクなものは居ないと相場が決まっているのです」
「それは経験談ですか?」
「さぁ、どうでしょうねぇ」
くすりと上品に笑うライラに、ローウェンはどう返すべきか迷って……黙っている事にした。追及したら痛い目に遭う、そんな気がして。
村人が逃げる血路を開くため、前衛にローウェンを、後方にライラが陣取り、道を塞がれないよう扉付近で身構える。守るべき者を背負いながらの戦い。この手には余る強敵で、ともすれば後で泣きを見ることになるかもしれない――それでもローウェンは退かない。退けない。喩え未だ軟弱者であっても、其れ故に超えねばならぬ壁があるから。何より、此れだけの事を見なかったことに出来る程、達観してもいないし、出来るようになろうとも思わない。自らに出来る事を放棄して、見過ごすような卑怯者は、カーティスの名に不相応だ。
『救済』の邪魔をする異端者を排除しようと、亡霊天使が動く。おぞましき呪いによって理性を失った白羽根は、最早悪鬼の形相。血と肉が膨張し、焼ける事を気にも留めず、狂腕を振り下ろす!
酷い匂いに、頭痛がしてきた。それでもローウェンは、後ろに立つ人々とライラに指一本触れさせまいと、握りしめた剣で呪言を斬り、邪悪なる光条を引き割く。
守られているようで性に合わない、なんて言いつつも、ライラは頼もしい背中に内心信頼を預けていた。それを口に出すのはまた今度、ご褒美はとっておくものだ。子供の成長を喜ぶ母か、もしくは姉の様な立場で、ローウェンの勇姿を見守る。
「捏ち上げの胡散臭い神か、小賢しい守銭奴か、頭のイカれた快楽主義者か。どれにせよ裁きが必要ですわね」
目を伏せ、短い詠唱を紡ぎ意識を指先に集中させる。信仰は祈りとなって神に届き、灼かな光が天使の指を、腕を、眼すらも灼いてゆく。それは暖かくも冷たい神の宣告、罪深き者を裁く死の光。
「――わたくし達は天使さえもを裁く者。不義を甘んじ、翼を剥奪され地獄に堕ちなさい」
「ああああああ!」
言葉にならない叫びをあげる亡霊天使はライラに飛びかかり、煤煙を上げる両腕を振りかぶる。固く握られた拳が上がりきった時を見計らい……ヒュンッ、と。斬撃、後からついてくる切断音。ローウェンの剣が、天使の翼中ほどから前腕を切り落とした! ライラは、何が起こったのか分からないといった様子で呆然とする天使の腹に、杖の石突をガツンと喰らわせ圧し掛かる身体から抜け出る。ぱんぱんと服の汚れを払い、一言。
「上出来です」
「このくらいなら幾らでも」
ぱちっと片目を瞑り冗談めかして笑い返すローウェン。二人の息の合った連携で、亡霊天使は地に伏した。流れ出る血は炎となり、亡霊天使を包み込む。一体の天の御使いが、今この時をもって『救済』されたのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
グリツィーニエ・オプファー
成程、死が救済に御座いますか
然し人々は死を望まぬ様子
望まぬ物を与えんとする等「暴君」と何ら変わりないのでは?
それが救世主等、片腹痛いにも程がありましょう
御安心を、これでも多少頑丈故
人々の盾として激痛耐性で攻撃を耐えつつ
天使の行動を【母たる神の擒】を用いて封じていきます
注がれる光が邪悪な物へと変容しているならば
私の呪詛耐性にて威力を抑える事も出来ましょうか
高命中故、光が人々へ向かぬよう注意も必要で御座いましょう
ハンスに危険な任務を任せるのは心が痛みますが…致し方ありません
攻撃の命中を削ぐ為にも亡霊達の指先を狙って欲しいのです
私も指し示す先に態といる事で、人々への攻撃を逸らす事が出来ますでしょうか
●
人々を庇い、強烈な一撃がグリツィーニエ・オプファー(ヴァルプルギス・f13858)を襲う。一歩後ろに下がり衝撃を逃がすが、なるほど一体だけならまだしもこう数が多くてはやりにくい。頑丈さを取り柄にするグリツィーニエでなければ、痛みに戦意を喪失していたかもしれない。多少の痛みはむしろ心地よく、自らの生を強く意識させてくれる。肩に乗る鴉――ハンスが一声あげれば、大丈夫ですと返して。
生きているからこそ感じる、痛み、苦しみ。それらから解放される事を『救済』と呼ぶのだとしても。
「……人々は死を望まぬ様子。望まぬ物を与えんとする等『暴君』と何ら変わりないのでは? それが救世主等、片腹痛いにも程がありましょう」
口調は厳しく、天使達を面責する。聞こえているのかいないのか、亡霊となった心では何も感じないのか。天使は雄叫びをあげながら『救済』を執行せんと向かい来る。
嗚呼、なんと滑稽な事か。救済の名のもとに行われるただの蛮行に、何の正義もありはしないのに。姿形は天使でも、中身は悪魔よりも悪魔ではないか。グラツィーニエは眩暈がしそうだった。かつて悪魔と蔑まれた自分が、よもや天使の名を騙る者と対峙しようとは。これもまた運命だとしたら、矢張り滑稽だ。
掲げた腕から顕現した鳥籠から、一羽の青い精霊が蝶の形を成し舞い上がる。精霊は『母』の遺した追憶の残滓。今は届かぬ青き日の夢。壊したくない、でも閉じ込めるのは在り方として違うと、檻を開け放った。
「ハンス、あなたに危険な任務を任せるのは心が痛みますが……致し方ありません。さぁ、――お往きなさい」
ハンスは高く飛びあがり天井を旋回、蝶はひらひらとゆったりした歩調で天使に近づいていく。途中何度も狙い射ち落されそうになったが、ふわりと躱して当たらない。グラツィーニエの持つ呪詛への抗体が、ハンスにも蝶にも、加護となって効いていた。
蝶は邪悪な光を避け、ついには亡霊天使のもとに辿り着き、鱗粉を撒き散らす。浮遊する青を鬱陶しそうに振り払えば、途端に金縛りにあったかのように動かなくなる。そうなればもう恐れるものは何もない。ハンスは急降下し突き出した指を嘴で引き千切り、邪悪なる光をかき消した。母たる神の擒に、抗えるものなど居ないのだ――。
成功
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アンナ・フランツウェイ
彼女達には以前会った事あるけど、救済の名の元に残虐な事をするような人達じゃ無かった。なら…あなた達に容赦は要らないよね。
私は戦闘に専念。村人達の脱出とそれを援護する人達の方へ、彼女達が向かわないようにしたい。
【限定解放式・月下香】を発動させてから彼女達の元へ突撃。汚染されし光条はあえて受けて戦闘力を増強。急所へ向かう光条は【武器受け】で防ぐ。
接近したら【処刑斧・ロストクロニクル】を装備。【なぎ払い】と【範囲攻撃】でオラトリオの亡霊達を攻撃、命中した相手には【生命力吸収】で生命力を奪いトドメを刺してやる。
「処刑は赦されない者達に取っての最後の救済。村人を焼き殺したあなた達のような者達のような…」
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アンナ・フランツウェイ(断罪の御手・f03717)は以前にも天使と対峙した事があった。同じ個体ではないので当たり前だが、彼女らは被害者の立場だったのに……それが何故? そんな疑問も浮いてくるが、今はそれどころではない。
「救済の名の元に残虐な事をするような人達じゃ無かったのに。なら……あなた達に容赦は要らないよね」
『限定解放式・月下香』を発動し、敢えて傷を受けに敵陣に突撃する! 邪悪なる光条が肩や腕を掠め、少量の出血、やけど。それらはアンナの戦闘力を増幅させ、魂までも吸い尽くす生命吸収の糧となる。首を狙ってくる光線は処刑斧ロストクロニクルで軌道を逸らし、急所を守る。以前の戦闘知識が活かされているのか、相手の行動を予測し着実に敵との距離を縮めて。
亡霊天使達は近づくアンナにまだ油断している。数で勝る相手に、一人で立ち向かおうなど、普通に考えれば愚策だが、生憎とアンナからしてみれば好都合。一ヶ所に固まっていてくれた方が薙ぎ払いやすい、射程範囲の敵を纏めて攻撃出来るのだから。
「ここから先は通さないよ」
柔らかな手に似合わぬ斧を振り回し、一列に並んだ天使の腹を割く。流れ出た血は空気に触れるとカッと火に変わり、赤黒い炎が天使の身を焼いた。生命の焔は赫赫と燃え、揺らめく。『相手の人生を奪う事』を忘れない為に付けたロストクロニクルで、その生命力の焔を吸収していく。
「処刑は赦されない者達に取っての最後の救済。村人を焼き殺したあなた達のような者達のような……」
じっと倒れ伏す天使を見つめる。瞳に映る赤が深く心に焼き付いた。
――仮に。彼らがもしも本当に『救済』を与えているのだとしたら。私のしている事もまた、『救済』なのかな?
そんな問いかけに応える者は誰もいない。答えなど、どこにも無いのだから。
大成功
🔵🔵🔵
花菱・サヤ
絶望している時に手を差し伸べられたらふらっと引き寄せられるもんなんスかねぇ。救われるも救われないも、誰かに押し付けられるもんじゃねぇッス。弱った心につけ込むなんざ下種のする事。仕置きが必要ッスね
助けると戦う、両方やるのは無理ッス。なら
「叩っ斬ってやるッス!」
村人には目もくれず、天使に真正面から切りかかるッス
救出だの避難だのは他の誰かがやってくれるでしょう
あたしは敵を倒すだけッス
とはいえ、練度が足りねぇ雑魚ッスから、ドジを踏む事もあるかもしれやせん
「一山いくらの戦闘員の割りにゃぁ中々やるッスね!」
でも
「こいつを避けるのはちーっと難しいかもしれねぇッス!!」
【UC:花の形見】を叩き込むッス
連携可
リリー・ベネット
身勝手な考えで周りを犠牲にするのは美しくないですね。
行きますよ。アントワネット、フランソワーズ。
村人の避難、安全確保を最優先に動きます。
動けない人や子どもは……アントワネット、手をひいて誘導してあげてください。
邪魔者がいるならば、退いて頂きましょう。
敵が村人に向かうようであればアントワネットで誘導してフランソワーズで迎え撃ちましょう。
ユーベルコード『歌う人型機械人形』で漆黒の斧槍をフランソワーズに装備させます。
フラソワーズ、貴方なら出来ますね。
「……もう犠牲者は出しません。村人には触れさせません」
ディアリス・メランウォロス
村人達を守りながら戦わねばならないね、難しい戦いになりそうだ。
基本的に亡霊の注意を引き付けて戦うよ、剣で斬られればこちらを無視はできまい。
急ぎ天へと帰っていただこう。
それでも村人へと攻撃がいくようなら村人をかばうよ。
なんとかして隠れてもらおう。
周りの誰かと連携がとれるようならそれもいいね。
●
今日のお屋敷から猟兵の出張サービス。一方的な『救済』を否定する三人が集まった。
「身勝手な考えで周りを犠牲にするのは美しくないですね」
「救われるも救われないも、誰かに押し付けられるもんじゃねぇッス!」
リリー・ベネット(人形技師・f00101)の呟きに、花菱・サヤ(花残・f02057)が威勢良く応える。到底共感など出来やしないと、二人の意見は一致した。敵の数は減ってきたが、それでも油断はできない。村人は柔いのだ、亡霊天使の一撃にすら耐えられない無力な存在。だから、守らねばならない。
「私が避難誘導を行います。花菱さんは奴らを」
「任されたッス!」
救助と戦闘、一人で同時に行うのは難しい。しかし、上手い事気心の知れた友人が共に立っているのだ。前を、背中を、お互いに預ける事が出来る。
サヤは村人には目もくれず、真正面から切り掛かった! 百花大刀を引いては払い、隙間合間にねじ込んで、捻る。それは金色の花が踊っているかのよう。
弱った心につけ込むなど、下種のする事。自身の手で直接仕置きをしなければ気が済まない! 自然と柄を握る手に力が篭もる。練度不足は承知の上、敵の邪光を避けきれず一張羅を焦がすが一々気にしていられない。
「一山いくらの戦闘員の割りにゃぁ中々やるッスね! でも……こいつを避けるのはちーっと難しいかもしれねぇッス!!」
ひと呼吸の間もなく、薙刀は無数の桜の花弁となり、旋毛風の如き速さで亡霊天使に向かいゆく。スパッと鋭い切れ味で剥き出しの肌を切り裂けば、天使は悲痛な叫びをあげる。
「ああああああ!」
満開の桜吹雪は、最期の光景に相応しい美しさだっただろう。
後方、村人を背に庇いながら戦う者が二人。一人はリリー、傍らの人形に指示を飛ばし、一人ひとり確実に避難を進めている。そしてもう一人はディアリス・メランウォロス(羅刹の黒騎士・f00545)。騎士の肩書きの通り、守りに長けた忠誠の兵。
「こうも入り乱れているとやりにくいね。リリー、そちらは順調かい?」
「問題ありません。……アントワネット。あの方の手をひいて誘導してあげてください」
近敵をディアリスに任せ、リリーは人々を整列させる。玄関扉が広いとはいえ、大勢で詰め寄れば渋滞を起こすのは必至。それを使役人形と手分けすることで、最小限の動きで最大限を逃がせるように采配をとる。
ディアリスは、サヤの猛攻をすり抜けて執拗に村人を狙う亡霊天使を切り伏せる。グジュッ、重い一撃が骨肉を粉砕する。黒剣に付着した血はすぐさま燃え上がり、刀身を冷たい炎で包み込んだ。生の暖かみなど微塵も伝わらない熱を振り払い、近づく者から容赦なく潰していく。
村人達は最初こそ戸惑ったものの、二人の剣幕と傷つきながらも救助の手を止めない姿に心打たれたのか素直に従った。
「『救済』を届ける相手を間違ったようだね。急ぎ天へと帰っていただこう」
態とらしく注意を惹きつけ、天使の視線を村人から逸らす。時に踏み込んで斬り捨てれば、おぞましき呪いに狂った天使は激しく光条を乱射した。村人に当たらぬよう白妙のマントで弾くディアリス。村人の近くではアントワネットの片割れ・フランソワーズが、漆黒の斧槍を手に光を捌く!
「……もう犠牲者は出しません。村人には触れさせません」
呑気なもので、子供たちはもう安心しきっているのだろう、対の人形の動きに拍手を送る者に感嘆の声をあげる者と様々。彼らの背を押し、また一組の家族が領主館からの脱出に成功した。
「かなり片付いてきましたね。花菱さんが勇ましい……」
「あと少しだ、こちらも頑張ろう」
村人も亡霊天使も、確実に数を減らしている。救助に専念する者、敵陣を切り開く者、そして守る者――三者が一体となる事で、犠牲を抑えることが出来た。流れを掴んだ猟兵達を、上に控える大天使は冷ややかな目で見下ろしていた……。
大成功
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胡堂・充
死が救済だと……? ふざけるな、命をいたずらに奪う権利は誰にも無い!
この『病巣』は、確実に取り除かなければならない……これは、医者に叩きつけられた挑戦状だ。
転送直後から、オフロードバイクのマックスに【騎乗】し、【高速突撃形態】を発動。
突撃による攻撃を行うと同時に、敵を【おびき寄せ】て民衆の避難のための【時間稼ぎ】をする!
エントランスやホールは、バイクで走り回るには少し狭いかもしれないが、もともと不整地用のバイクであることを活かして階段等も走行経路として利用する!
例え一時の救いの先が絶望でも……俺は未来を信じる!
(アドリブや連携歓迎です。また、大成功については希望しません)
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此処は『病巣』だ。天使の名を騙る奴らは、その実、人の暮らしを破壊する病魔となんら変わりない。確実に取り除かなければならない……これは医者に叩きつけられた挑戦状だと解釈した胡堂・充(電脳ドクター・f10681)は、愛車のオフロードバイク・マックスに騎乗。エンジンを蒸かし、頭を低くしながらガラス窓を突き破ってホールへと侵入した!
ぱらぱらと飛び散った破片をものともせず、そのまま高速突撃形態に変形する。ホールは広さは十分にあるものの、まだ避難できていない村人が残っている。普通に考えれば走りにくいのだが、冴えわたる騎乗テクニックで外周を駆ける。
動きまわるマックスを目障りだと感じたのか、天使はふらりと充に魔焔の照準を合わせた。肉体を武器とし、力付くで動きを捉え魔焔を燃え移らせようと伸びる腕。絡まる脚。触れたら跳ね飛ばされるとも知らず、恐れを知らない天使は要の前に立ち塞がる。ブレーキは踏まない、止まれば後ろの村人が狙われるのだから。
「命をいたずらに奪う権利は誰にも無い!」
天使の肉壁に突っ込んで、大きな打音が響く。天使の一体は轢く、もう一体は跳ねごろんと床に転がる。呻きながらも起き上がろうとする背を再び容赦なく轢いて、階段を登る。ガタガタと揺れるのは想定済み、元より不整地用のバイクであることを活かせばこの程度の段差は坂と同じだ。
登り切った先、ふと綺麗な身形の少女と目が合う。少女の背中には立派な白羽根、彼女こそがこの場を支配する『病原』!口元だけで嗤う救済の天使に、声を張り上げる充。
「例え一時の救いの先が絶望でも……俺は未来を信じる!」
言い切るが早いか、2階を見上げる天使達に向かいウィリーで飛び降りた! 下敷きになり潰れた天使がまた一体、『救済』されてゆく……。
成功
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三嵩祇・要
救済ね。死にたいヤツ相手ならそりゃ有難い話だろうな。
けど、そこに集まったヤツらは死にたいわけじゃねぇんだろ。
なら。奪わせてたまるか。
こいつらの事なんかオレにはどうでもいいけどよ。
一方的に踏みにじろうって奴は許せねぇんだよなぁ!
クロックアップ・スピードで命を刈り取られそうなヤツから優先的に庇いに行くぜ。護衛とか気配りとかは得意じゃねぇから、兎に角目についたとっから、手あたり次第可能な限り敵の攻撃を防ぐ。生きたいヤツの命優先だ。
連携アドリブ歓迎。
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死にたい奴は勝手に死ねばいい、死ねないなら死神にでも頼ればいい。そういう在り方もあるだろう、だがしかし。此処に集められた者たちは、何れにも当てはまらない。小さな幸せを享受して、日常を慎ましやかに過ごすただのヒト。
「――なら、奪わせてたまるか」
パチンと指を鳴らし、三嵩祇・要(CrazyCage・f16974)は時の一歩先を往く。高速戦闘モードとなった身体はじわじわと精神と臓腑を削っていくが、これもまた要の在り方だ。誰にも邪魔も文句も言わせない、ヒーローの戦闘スタイル。
「こいつらの事なんかオレにはどうでもいいけどよ。一方的に踏みにじろうって奴は許せねぇんだよなぁ!」
広いホール内。村人は逃げ、亡霊天使は堕ちて数を減らしている。速さを活かすには好条件が揃っていた。ぼさぼさの紫髪はまるで流れる紫電の稲光。目で追える速度を超え、天使の視界を縦横無尽に動き回る。一人、狙われている者がいれば庇い。また一人、逃げ惑う腕あれば手を引き屋外へ押し出して。兎に角目についた村人を片っ端から助けていく。
護衛だの気配りだの、そんな繊細なものは不得手で。かといって敵に一人向かい立つ程の力もなく。ならば手の届く範囲を――たとえそれがまだ狭くとも、掴んだ命は離さない。
生きたい奴が生き残れるように、要は自らの命すら惜しまず戦う。敵を殺す為でなく、人を活かす。そんなヒーローに黄色い歓声があがるも、ビリリと通る大音量で撥ね退ける。
「おい! 見てねぇでさっさと行け!!」
ここは戦場、いつ何のイレギュラーが起り死ぬか分からない。人々は状況を自覚すると、また列を無し避難していった。
最期の亡霊天使が無謀にも要の前に躍り出る。高速を得た身は軽く天使をいなし……雷を纏った拳撃を腹に喰らわせた。
ボッと燃え上がる天使の骸。正面階段2階、手すりに座った救済天使は猟兵達に微笑んで――ふわり、ホールに舞い降りた。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『救済の代行者・プレアグレイス』
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POW : 黒死天使
【漆黒の翼】に覚醒して【黒死天使】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD : 鏡像の魔剣・反射
対象のユーベルコードを防御すると、それを【魔剣の刃に映しとり】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
WIZ : 鏡像の魔剣・投影
【魔剣の刃に姿が映った対象の偽物】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
👑11
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「愚かね」
救うべき人間が全てこの場から去り、猟兵だけになっても、救済の代行者・天使プレアグレイスは笑みを崩さない。
「どれだけ否定しても、認めたくなくても……人間は生きているだけで罪がある。救われる方法は一つしかない」
猟兵から視線を逸らさず、たおやかな身のこなしで魔剣を抜く。ギラリと黒光りした剣に映るのは、敵か、自分か。
「――あなた達も所詮は愚かなヒト。可哀想に、私が救済してみせるわ。ええ、我が神に誓って」
翼を広げ、対峙。今こそ救済の名の元行われる虐殺の根源を断て!
胡堂・充
何故……笑う? 「死こそ救済」だと嘯き、人々の命を弄んだお前に……笑みなど似合わない。
ニレさん(f02691)……先に行かせてください。アイツは……許せないッ!
俺の分身を呼び出すようだが、生憎俺はバイクが無いと只の医者。ニレさんの援護で対処してもらう。
その間に【グラップル】【捨て身の一撃】で本体を強襲する!
――痛みを、分からせてやる。
(真の姿 初発動。右手から発する【贄を食らう黒き霧】で敵を覆い【目潰し】【生命力吸収】を行う)
……な、なんだこの力は……ッ!? 頭が痛い……!?
ニレ、さん……離れて……ッ!!
※アドリブ可
ニレ・スコラスチカ
救いとは赦し。赦しとは罰。罰とは死。
…しかし罰とは罪あるものにこそ与えられるもの。救いとは罪あるものにこそ必要なもの。例えば異端であるあなたや──わたしのような。
いきましょう。充さん(f10681)。共に救済を。
敵によって現れるであろう充さんの偽物はわたしが引き付けます。【激痛耐性】と【カウンター】。その隙に充さんには本体を。
これは…黒い霧…?何にせよ好機。霧の中に跳び込み、目潰しが効いている間に、長く伸長させた生体拷問器の【罪滅】をもって偽物ごと異端を切断します。
…ッ!あの黒い霧…敵の、わたしの命を吸い取っている…?
これ以上は他の人まで…充さん!いいえ、"ドクター"!
●
怒気を孕んだ口調で、充は天使プレアグレイスを責め立てる。目の前にいるのは『病魔』だ、医者たる自分が取り除くべき敵だ! そんな考えを知ってか知らずか、天使は微笑んで口上を聞いている。
「何故……笑う? 『死こそ救済』だと嘯き、人々の命を弄んだお前に……笑みなど似合わない」
「嗤わずにいられますか。『救済』を否定するあなた達が、私を断罪するなど、可笑しくて笑いが止まらないわ」
「なんだと……!」
天使は本気で言っているのだろう。強者の余裕を湛え、充の言葉を嘲笑する。今にも飛びかかりそうな勢いの充の服をニレが抑えて、努めて冷静な言葉を続けた。
「救いとは赦し。赦しとは罰。罰とは死。………しかし罰とは罪あるものにこそ与えられるもの。救いとは罪あるものにこそ必要なもの」
曇った翠の瞳で、真っ直ぐ天使を睨みつける。普通の枠に納まらず、どこにも属さない者。どこにも居場所はなく、誰からも愛されない。ああ、やはり『死は救済』は、間違っていないのかもとの考えが一瞬過ぎる。こんな救済を受けるべきは。
「例えば異端であるあなたや――わたしのような。そういう者にこそ相応しい」
小さく笑い、天使は黒大剣の切っ先を上に、胸元へ翳した。映るのは自身、そして敵である猟兵――充。剣を一振りすれば空間が裂け、中からのっそりと充と姿かたちが同じ分身が現れた。しかし、見分けは容易である。
緊張感を持ち真剣な眼差しの充。対して分身はへらへらと、人を小馬鹿にしたような笑みを浮かべていた。主人たる天使を守る様に、前衛につく。
「……ニレさん、先に行かせてください。アイツは……許せないッ」
「いきましょう。共に救済を」
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職業、医者。愛車の改造オフロードバイク・マックスに乗っていなければ本来の力は発揮しきれない。それを充が言うより先に、ニレが切り出す。
「充さんの偽物はわたしが引き付けます。その隙に本体を叩いて下さい」
「――気遣い感謝する」
即座に生体拷問器"祝福処刑鋸"を振り回し、分身に斬りかかる。避ける事に専念した偽物は充を追いかける事も出来ず、ニレの猛攻を受け止める。しかし段々と目が慣れてきたのか、偽物はニレが鋸を振りあげた瞬間を狙い脇腹に激しい一撃を喰らわせる。
「ゲホッ……ゴホッ。ああ……」
慣れていなければ、意識が飛んでいたかもしれない。それほどに強烈な痛みだ。息苦しい、骨も数本いってるかもしれない。倒れ伏さずにいられたのは高い激痛耐性のお陰だろう。昔に感謝する事等ないが、今だけは助けられたと認めざるを得ない。
よろめくニレに二撃目を喰らわせようと近づく分身に、肉の様な筋張った鞭が絡みつく。贖罪を代行する罪滅ぼしの執行鞭だ。ぐぅっと首を締め上げ、充と天使が戦う方へ投げつけた。
しゅるしゅると収縮する鞭を撫で、呟く。
「分身だと分かっていても、知人を攻撃するのは躊躇われますね」
●
一方、充。ニレの援護を受け、天使と睨みあっている。どちらが先に動くかの探りあいをじりじりと続け……待ちきれなくなったのは充。天使にグラップルを仕掛けようと、捨て身とも思われる構えで突進していく。マックスが居なくても、この男、十分に早い。
「――痛みを、分からせてやる」
今まで、幸いにも発動機会が無かった。しかし天使プレアグレイスは強敵、そうも言ってられない。充は真の姿を開放し、贄を喰らう黒き霧を右腕から噴出。瞬く間に広がった黒霧は天使と、先程後方からぶっ飛んできた自らの分身を覆い隠した。黒霧の中の様子は、今の充には手を取る様に分かる。相手の目が効かぬ内に生命力を吸収すれば、かなり痛手のはず……だが、初めての技がそう上手くいくはずがない。頭を掴まれるような痛みが走る。
頭を抱え、ふらつく姿に驚いて、駆け寄り支えるニレ。しかし充はその手を振り払い、唸り声を上げ続けた。
「……な、なんだこの力は……ッ!? 頭が痛い……」
「……ッ、あの黒い霧……敵の、まわりの命を吸い取ってる……?」
これ以上は他の人まで巻き込まれてしまう。たとえ天使にトドメを指せずとも、人命が優先である。またふり払われる事を予測して、ニレは一層強く肩を掴んだ。
「ニレ、さん……離れて……ッ!!」
「充さん! いいえ、“ドクター”! 意識をしっかり保ってください」
敵から吸収した生命力が充に悪影響を及ぼしたのか? それは後で本人に訊くとして。目つぶしが効いている今が好機であることに変わりはない。ニレは再び鋸を伸ばし鞭状態にしたら、切断する勢いで両者を滅多打ちにした。
黒霧が晴れたとき、分身の姿はなく……天使プレアグレイスは剣を杖代わりにして柄尻に顎を置き、不機嫌そうに猟兵達を睨んでいた。
「お気に入りの服だったのに、酷いわ。悪いヒトだわ。ええでも構わない、悪人すらも私は救済して差し上げます」
「戯言を……!」
落ち着きを取り戻した充は天使と睨みあい、そして一歩退いた。次は上手くやると心に誓って。
苦戦
🔵🔵🔴🔴🔴🔴
宮落・ライア
あっそ。
例えそうであってもボクは救うさ。
キミとは違う方法で。
さぁ、存分にボクに死を告げてみろ。
存分に返上してみせる。
【気合い・覚悟・激痛耐性・毒耐性・武器受け】で耐える!
【力溜め・怪力・見切り・捨て身の一撃・カウンター・鎧砕き・剣刃一閃】で攻める!
機を見極め最高の好機に被弾覚悟で全力の一撃を叩き込む!
キミの言ってる罪が何なのか分からないけれど…
例えそれが何であれ、実直に生きようとする人々は輝かしいよ。
●
天使プレアグレイスの語る罪が如何様なものか、ライアには理解できない。例え罪なるものが本当にあるとしても、実直に生きようとする人々は輝かしいと思う。ならばそれを護るのが、英雄としての役目だろう。何より単純に。
「キミの事が気に入らない。それすらも罪だと言うのなら、存分にボクに死を告げてみろ」
存分に返上してみせる――。
その挑発に、プレアグレイスは純白の翼を漆黒に染め上げ、黒死天使へと覚醒する。ビリビリと感じる威圧感にライアは震えた。恐れではない、所謂武者震いだ。これほどまでの強敵と戦う事が出来る。その覚悟が、闘志が、胸を熱くする!
藍の瞳を妖しく輝かせ、黒剣を手に斬り込んでくる天使。受けるは白の無骨な大剣。剣戟を二、三度交わし、鍔競り合う。白と黒とが互いを喰らわんとギチギチと音を立て圧し合った。真紅の瞳が藍の目に映る。それは爛々と燃え、焼き尽くさんばかりの勢いだ。
膠着状態はほんの数秒、しかし感覚では何十分もそうしているように感じる。腕の力はそのままに、天使の蹴りがライアの脛を打つ。バランスを崩したところに襲い来る追撃を紙一重で躱し、大剣を放り投げ、身軽な体勢で天使の懐に飛び込んだ! 黒剣が振るわれるより早く、腕を引き……一瞬の溜め。全身全霊の拳を、黒衣が包む鳩尾に喰らわせる。勢いよく吹き飛んだ天使は壁に叩きつけられ、黒羽根がみるみる白に戻ってゆく。
確かな手ごたえに、ライアはニッと元気に笑う。人の生を『救済』しようと嘯く死の化身を、嗤う。
「……罪を、救わなければ。人は救いを求めている――」
「あっそ。例えそうであってもボクは救うさ。キミとは違う方法で」
多くに救われ、願われ、選ばれた記憶。他でもないライア自身が、救済された経験を持っているのだから断言できる。
「はっきり言ってやる。キミの偽りの『救済』なんかじゃ、誰も救えやしないって」
大成功
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レナータ・バルダーヌ
救済とは、ひとがよい方向に進む手助けをすること。
本人にとって結果がないものは救済とは言いません。
ですが、死から甦った方なら違うものがみえるのかもしれません。
あなたの行いが真に救済ならば、わたしを救ってみせてください。
わたしは、魔剣の刃をすべて受ける【覚悟】で、敵に手の届く距離まで歩みを進めます。
敵からの攻撃は纏った【オーラで防御】し、防ぎきれないダメージは【痛みに耐え】て凌ぎます。
充分に近づけたら、【A.A.ラディエーション】の一撃を掌から【零距離で撃ち】込みます。
やはり悪意のない方では、復讐の代役には不足ですか……。
あなたが示す救済も、わたしが望む救済にも、今は届かないようです。
アンナ・フランツウェイ
確かに人間にはどうしようもない者や、悪に堕ちる者だっている事を知っている。でも私を憎悪以外の事を教えてくれた少女、人の可能性を信じ戦う人のような善き人間達を知っている!
だからプレアグレイス!アンタの救済を、生きているだけで罪があるという思想を認める訳にはいかないんだ!
【先制攻撃】と【暗殺】で攻撃を放ち傷を負わせ、【呪詛】を乗せた【ブラッドエンド・カース】を打ち込み、奴の動きを止めよう。
動きを止めたら【終焉剣・ラストテスタメント】で攻撃。【傷口をえぐる】【生命力吸収】でトドメを刺してやる。
私の偽物を作るなら【武器改造】で広範囲を攻撃できるよう改造し、【範囲攻撃】【なぎ払い】でまとめて切り裂く!
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人は弱い。どうしようもない者や、悪に堕ちる者だっている事を、アンナは知っている。そんな奴を、時には世界すら憎む事もあった。しかし、アンナに憎悪以外の事を教えてくれた少女や人の可能性を信じ戦う善き人間達の事を忘れた事などない。暖かな真実は活力となり、心を強くしてくれる。だから――。
「プレアグレイス! アンタの救済を、生きているだけで罪があるという思想を認める訳にはいかないんだ!」
断罪の剣・エグゼキューターを抜き、天使に先制攻撃を仕掛ける! 冴えわたる暗殺技術が、致命傷こそ与えられないものの服を、髪を、肉を引き裂いていく。天使の魔剣が刃を受け止め、捩るように弾く。そのまま突き刺すようにアンナに飛びかかるが――それは届くことは無かった。包帯が巻かれたレナータの腕が、手首を交差するように構えられ、刃を受け止たからだ。
レナータの覚悟は相当のものだった。何しろ魔剣の攻撃はすべて受ける、そのくらいの気概で此処に立っている。オーラによる防御が掛かっていたとしても、ビリビリと骨に伝わる痛み。激痛への耐性があったから良かったものの、正直な話、もう受けたくないくらい痛い。でも、退けない。天使はもう射程の範囲内だ、ならば此処で一撃を喰らわせねば、此処に立つ意味がない!
「痛めつける側は苦手なので、手加減できませんよ?」
そう優しく声を掛けながら、放出するのは敵を内部から破壊する念動力【A.A.ラディエーション】。掌にありったけの念を集め、無軌道の筋を天使の胸に掌底を撃ちこんだ! ふわっと浮いた身体は、地に落ちる前に翼を羽ばたかせ体勢を立て直し、プレアグレイスは一度距離を取る。よろめくその姿は、確実に攻撃が効いた証。
「救済とは、ひとがよい方向に進む手助けをすること。本人にとって結果がないものは救済とは言いません。行いが真に救済ならば、わたしを救ってみせてください」
暗に死を望んでいるようにも聞こえるその声に、天使は困惑した。救済を求めながら、生きるために必死にもがくその意味を、天使は永遠に知ることはない。
レナータの一撃と、アンナのエグゼキューターによる傷は、深いがまだ天使の動きを制限するには至らない。呪詛を乗せた【ブラッドエンド・カース】が天使の傷口に染みこむと、苦痛の声をあげのた打ち回る。その衝撃で黒の魔剣がガチャンと音を立てて倒れた。そこに映っていたのは、アンナの姿。黒魔剣はひとりでに宙に浮くと、ぐるりと円を書くように一回転。切り取られた空間から出てきたのは緑の髪に翠の瞳を持つ少女……アンナの偽物だった。
「自らに『救済』されるなんて、とても素晴らしいでしょう。さぁ、お往きなさい!」
天使の号令に推され、コピーはオリジナルであるアンナに駆け寄る。手にしている武器も、動きも、全てがアンナ自身なのに。
――私はこんな顔をしていた?
偽物は恍惚の笑みを浮かべ、ニヤリと笑っていた。ああ、気色が悪い。あの天使に救済されなどしたら、自分はこうなってしまうのか。
全く笑えない冗談に吐き気を催しながらも、改造を施した断罪の大鎌を呼び出し、ひと薙ぎ。天使諸共切り裂く!
「くぁぁ……! なぜ? この『救済』はお前たちには関係のないこと。どうして邪魔をするの!」
天使の叫びに、レナータとアンナは顔を見合わせた。そして、失笑。言うまでもない事だから黙っていたというのに。
「ふふ、悪意のない方では復讐の代役には不足ですか……。あなたが示す救済も、わたしが望む救済に今は届かないようです。残念です」
行き場を失った復讐心。それを発散するために天使と戦ってみるも、やはり心は空いたまま。
「狭い世界ではそれが『救済』になるのだとしても。大多数の優しい人達まで巻き込むなんて許せない! あなたを倒して、彼らを『救済』する!」
終焉剣・ラストテスタメントを顕現し、天使に立ち向かう。これで、トドメを刺す! と、果敢に踏み出した。狙いは呪詛により蝕まれた、天使の傷口。流れ出る血は腐り、苦痛に耐える様子が伺える。最も急所に近い場所――胸を斬る。斬ったはず、なのに剣が刺さらない。
天使は黒魔剣を拾っていた。だから刀身で受け身をした、ただそれだけの事。それだけの事を、未だ素早く行える体力が残っているのか。まだまだ時間が掛かりそうな敵に、はぁと溜息を漏らしたのはどちらか。
「言い忘れてたわ。あなた、さっきはありがとう。助かったよ」
「え? ああ、腕で守った時の。お気になさらず、わたしがしたくてした事です」
お互いを知れたことで、こちらの闘気もやや回復。背中を預け、再び武器を取り戦いを続ける――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
グリツィーニエ・オプファー
人が生きているだけで罪と呼ぶならば
…過去より出で、未来を貪る貴女こそ罪以外の何物でもないでしょうに
それに、私にとっての神は母のみに御座います
故に――私は、貴女の神を否定致しましょう
ハンス――準備は宜しいですか?
撫でた鴉を花弁と変え【黒き豊穣】にて代行者を包みましょう
…いやはや然し
何者かの姿を映し、使役するとは厄介に御座います故
その映しにも何らかの印を刻みたいでしょうか
例えば私の呪詛等…私が分る印を付けさえ出来れば
他の猟兵殿にも伝達は容易になりましょう
御安心を、足止めならばお任せ下さいませ
翼を裂き、目を潰し
少しでも此方に有利に働くよう行動を阻害
――悪魔に地に堕とされる気分は如何で御座いましょう?
●
グリツィーニエには神がいる。母にして神、比喩でも諷喩でもない、紛れもない彼の真実。故に、プレアグレイスが仕える神など居ないと分かる。そんなものはグリツィーニエを救ってくれない、信じるものは手を差し伸べてくれた母だけだ。
「人が生きているだけで罪と呼ぶならば……過去より出で、未来を貪る貴女こそ罪以外の何物でもないでしょうに」
肩に乗る精霊ハンスを撫でれば、その姿は鴉から無数の黒藤の花弁へと変わる。黒き豊穣は華やかに咲き、天使の柔肌を切り裂く。
じんわりと滲む血が色濃くなる前に、大剣を振り回し花弁を落とそうとするが、数は無限。相手にしきれる量ではない。ドレスから溢れる薔薇を、黒藤の激流が呑みこんでいく。天使は津波のように押し寄せる相手を、相手自身に任せる事にした。黒剣に映ったグリツィーニエを、現世に再現する。
「あなたの救済は自身で行いなさい」
「ふむ……生憎と、私はそのような趣味を持ち合わせておりません故――偽物にはご退場願いましょう」
意識を集中し、短い詠唱。身体を駆け巡る呪詛を手に集め花弁に預ければ、ひらりひらりと空を舞う黒藤。一枚一枚がグリツィーニエの指示に従い、偽物に目印を付ける。混戦ならば周囲の猟兵の為に情報を伝達するのも重要な役目。纏わりついた呪詛は偽物の身体を侵蝕し、動きを鈍らせる。
「皆様、どうぞ遠慮なさらずに。彼も『救済』されるのでしたら本望でしょう」
異なる神の眷属となった偽りの自分は、酷く哀れだと思った。どんな言葉も、信念を持つグリツィーニエには届かない。如何な攻撃も、身に付けたのは自分なのだから先を読めて当然。仲間の猟兵の手を借り、黒藤の雨が天使と偽物に降り注ぐ。
純白の羽根に黒藤が刺さり、斑点の模様が出来る。天使を名乗るには異様な柄だ。だからこそこの天使には相応しい。
「――悪魔に地に堕とされる気分は如何で御座いましょう?」
蔑まれた山羊の角がこれほど似合う場面は、早々ないだろう。母だけが美しいと言ってくれたこの角を、少し誇らしく思った。今度は自分が、母の様に誰かを救済することができるのだから。
成功
🔵🔵🔴
アレグリア・ノーチェス
※アドリブ・連携大歓迎
生きているだけで罪がある、か。
・・・確かに人間っていうのはそういう生き物なのかもしれない。けど彼らだって、罪を背負いながらも必死に生きてるんだよ。その罪や苦悩を乗り越えられるように手を差し伸べ、幸せに生きられるように導くこと。それこそ、救済であると信じている。
だからこそ、私は貴様の救済を許すわけにはいかない。
ここで、討たせてもらう。
行動
私はユーベルコード「目覚めよ黒女神」で戦闘力を爆発的に上げて戦うよ。
トイフェル・ゲヴェーアで【フェイント】を織り交ぜつつ、相手の急所を狙って攻撃してみようか。
相手の攻撃は【見切り】【第六感】で回避しよう。
桑原・こがね
なんか難しいこと言ってるわね……。
誰か分かる?説明して欲しい……。
まあ、いまさら話し合いでどうこうするつもりもないしいっか!
村人はみんな逃げたみたいだし、気兼ねなく戦いましょ!
髪も服も黒いのに、翼まで黒くなるとほんとまっくろね。鴉みたい。
あっ、ごめん、いい意味でよ。いい意味で。
今回はあんまり難しいこと考えないで、この二刀で戦うしか無いかな。
思いっきり切りつけてやるんだから!
●
「生きているだけで罪がある、か」
その考えを否定はしない。けれど、否定しない事と認めることは違う。誰しもが罪を背負っているのだとしても、人々は必死に今を生きている。罪や苦悩を乗り越えられるよう手を差し伸べ、幸せに生きられるように導くこと。それこそ『救済』であるとアレグリアは信じている。ただ死を与えるだけが救済ならば、人は何故に生れ落ちるのか――生きるとは、乗り越える事。なればこそ、プレアグレイスの救済を許すわけにはいかない。
「なんか難しい事言ってるわね……。つまりどういう事? 説明して欲しい……」
一方のこがねには、プレアグレイスの言いたい事がちっとも分からない。哲学か? 宗教か? 唯一分かるのは。
「まあ、いまさら話し合いでどうこうするつもりもないしいっか!」
村人が無事逃げ遂せて、気兼ねなく戦えるという事である! それさえ分かれば十分、元よりそれが目的なのだから。凝った揉んだの変化球は捨て、シンプルに二振の愛刀を構えた。なに、思いきり切りつければ大抵の者は死ぬのだ。オブリビオンもヒトも、それは変わらない。
天使は衣服についた埃を払い、漆黒の翼を呼び起こす。黒死の力を大剣に込めて、たっぷり滾った闇色の刀身をひと振りすれば、床を抉りながらの衝撃波が二人に向かう!
「うわっ、危な……!」
サムライブレイドを床に叩きつけ、こがねは生まれた衝撃で黒波を相殺する。同時に後ろに跳躍して距離を確保。天使の火力はかなりのもの。まともに受けては自身も刀も折れかねない。攻め込むばかりが戦でないと、身体が知っている。
アレグリアは静かに、最小限の動きで脇に避ける。経験と第六感が危険を予知し、的確に行動を選んでいく。放浪の旅の中で培われた力は、しっかりとアレグリア自身に応えた。避けた拍子にくるりと回転すると、背に三対の黒羽根を受けた姿に変わる。相手が黒死天使なら、こちらは黒女神。増強された力を抑えるように、ぐっと腹を押さえる。命が削れる音が、裡から主張していた。長くは持たない。トイフェル・ゲヴェーアの照準を天使の眉間に合わせて銃爪を引く。
「さぁ、裁きの時間だ」
音速の弾丸が、吸い込まれるように真っ直ぐ飛んでいく。黒剣の刀身で受け止める天使だが、勢いは止まらない。剣は弾かれ、一歩踏ん張る。ガチっと黒剣が鳴った後に生まれた僅かな隙を見逃さず、こがねは一気に距離を詰めた。背面をとり、サムライブレイドを振り下ろす!
黒羽根を斬りつけられ、悲鳴を上げる天使。ホールが甲高い声で震える。
「ああああああ!」
流れ出る鮮血が羽根に染みこんで、黒が艶を増した。片翼を失っては、もう翔ぶ事も儘ならないだろう。
「――髪も服も黒いのに、翼まで黒くなるとほんとまっくろね。鴉みたい」
「鴉ほど頭が回ればいいけど」
張りつめたような面持ちだったアレグリアが冗句に乗ってきたのは意外だったのか、こがねは少し驚いて――ニッと笑った。蒼の視線が交差する。そして互いに頷いて、左右に分かれる。
いくら天使の力が強大で、強力だとしても、ヒトの形をしているならば、視界が真横にいくなどありえない。自身が『救済』すべきヒトのカタチが、天使を追いこんでゆく。天使の目は無意識的に近い方……こがねに向いた。剣と刀が火花を散らす。
「あんたの言ってる事があってるかどうかは知らない。でも人を傷付けるなら、容赦なしよ!」
有り余る存在感で天使を引きつけて正面を向かせたなら、アレグリアが背後を捉える。心臓か頭か、少しだけ迷って、ガチンと一発。今度は混じりっ気なしの本命の一撃。
「貴様はここで討たせてもらう」
胸に潜り込んだ弾が爆ぜ、天使の心に罅が入る。その心の痛みを和らげる方法など、どこにも無い。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
三嵩祇・要
人間の罪とかオレにはどうでもいんだよ。生きたいヤツは生きれば良い。どれだけ罪を重ねようとどうせいつか死ぬんだからな。
あんたが救済したいっつーから、オレはここに来たんだ。
オレを、救済してくれるよなぁ?天使サマ。
ただ、おとなしく殺される心算も猟兵の足を引っ張るつもりもねぇ。死ぬのは怖ぇからな。死に物狂いで反撃も抵抗もするぜ。
【雷神の尾】を最大出力で敵に放つ。とっときの断末魔だ、受け止めてくれるよな。
みっともなくわめいて這いつくばるゴミみてぇな魂をキッチリ救済してもらおうじゃねぇか。期待してるぜ。
連携アドリブ歓迎。
●
どれだけ罪を重ねようと、人間はどうせいつか死ぬ。そんな些末で当たり前の事象に、わざわざ『救済』と名を付けて、なんとご苦労な事か。人間の罪とか、ましてや救いだとか、要にとってはひたすらどうでも良い話。此処に立つ理由はひとつ。
「あんたが救済したいっつーから、オレはここに来たんだ。オレを、救済してくれるよなぁ? 天使サマ」
「良いでしょう、あなたも救って差し上げます」
死にたいのか、と問われれば否。要だって死ぬのは怖い。痛い目には遭いたくないし、猟兵の足を引っ張る心算もない。
――それでも尚、オレを救済出来るって言うなら。やってみせろよ。みっともなくわめいて這いつくばるゴミみてぇな魂だ、一筋縄じゃいかないぜ。これでも期待してるんだ――。
心に浮かんだ言葉は音にならず飲みこまれる。ヒーローに負の言葉は不要。尤も、要をヒーローと呼ぶ者がいるかどうかは、また別の話だが。脳裏にこびり付く自嘲の念をかき消して、ギラギラと音がしそうな程の殺気を放ち、天使を睨みつける。
胸に風穴が空いているというのに、天使は黒大剣を振り回し活動を止めない。所詮はオブリビオン、ヒトの形をしていても、自分達とは全く違う生物だと分かる。もしかしたら生物ですらないのかもしれない。だとすれば、要の求める『救済』はまだ出会えないのだろう。
「沈め。二度と『掬われない』程に深く」
片手を突出し、半身ごと天使に向ける。猟兵の願いと奮励を、息が痺れる程の超高圧の雷に圧縮。それが球体の形になったなら、ぐっと握りしめ全力で放出する! 雷球は尾ひれを引きながら、豪速で天使に飛んでゆく。
「とっときの断末魔だ、受け止めてくれるよな!」
天使から笑みは消えていた。防御して能力をコピーする気なのだろうが……受け止めきれる限度量を超えた質量のある雷が、天使の身体を駆け巡る。
「『救済』を――求めているのでは無いのですか」
「勘違いするなよ。あんたのそれじゃ俺は救えない。ンなもん、ぶっ壊すだけだ」
成功
🔵🔵🔴
ディアリス・メランウォロス
理解はできないがそうまで言うなら君も救済してあげよう、私達皆の力でね。
それほど好きなら自分でも一回体験してみるといい、まぁ初めてじゃないのかもしれないが。
容赦なく叩き斬ろう、まぁ簡単には救済されないだろうが仕方ないね。
救済できるまで決して手を緩めずに行こうね。
どうかな、救われたかい?
魔剣から私の偽物が現れたらそれは止めなくてはね、自分のことだから癖は理解してるつもりだが客観的に見て気づく部分もあるだろう。
参考にさせてもらうよ。
誰かがピンチなようならそれをかばいにも行こう。
苦しくてもなるべく声は出さないよ、我慢さ我慢。
まぁ痛いのも苦しいのも苦手なんだけどね。
味方との連携やアドリブは大歓迎さ。
●
「それほど『救済』が好きなら自分でも一回体験してみるといい、まぁ初めてじゃないのかもしれないが」
理解はできないが、そうまで言うならプレアグレイス、君も救済しよう。一人では無理でも、猟兵皆の力で。
どうしてか、強大な敵を前にして、ディアリスは恐れを全く感じなかった。負ける気がしない、と言うべきか。背を預けられる仲間、揺るぎない信念が、身体を軽くしているような感覚。
両手に握りしめた黒曜剣モノケロスを振れば、二振の黒剣がぶつかり合う! ギッと硬い音が弾け、火花を散った。鍔を軸にモノケロスを突き上げ反動で後退した天使は、闇より昏い黒翼に包まれ黒死天使へと変貌を遂げる。
「まだその姿に頼るのかい?」
どれだけ縋ろうと、何度も使えば命を侵す。天使の身体は最早満身創痍。傷を癒す事も出来ず、荒い息を吐きながらディアリスに剣を向けた。
誰よりも死を告げ、死をもたらした天使が、今は死に抗っている。盲信する者の為に『救済』を遂げようとしている――その威容に、ディアリスは素直に感心した。信じられる何か、誰かに、献身的に尽くす様は美しいと思う。考え方は相容れないけれど、剣を捧げる姿勢だけは評価しよう。
「生き様は参考にさせてもらうよ。だが、罪は救済されるべきならば、君にこそ救済が必要だ」
剣戟を敢えて受ける。最初の一撃は強く、二撃目はやや弱く。緩急をつけて押し返せば、ペースを乱された天使の体力は急速に消費されていく。もちろん攻撃を喰らえば痛みはある。ビリビリと手と腕が痺れる、それでも悲鳴のひとつもあげない。何故かと聞けば、我慢もまた騎士道だからときっとディアリスは笑うのだろう。
「私は『救済』を執行する者。あなたに救われる謂れはない!」
「そうかい。では君は今まで何度その言葉を斬ってきたのだろうね」
簡単に救済などしてやらない。天使の軌道を読み、懐まで引きこんだら、手を緩めず重い一撃を叩きこむ! 受け止めた天使の黒大剣に、ピシリと大きな亀裂が走った。
天使も黒大剣も限界は近い。ディアリスの剛剣を、あと何度も受けられるわけがない。いつの間にか天使の顔は、憎悪の表情に変わっていた――。
成功
🔵🔵🔴
ローウェン・カーティス
過ちを繰り返し、己が罪から目を背け
追い詰められれば、都合よく神にも悪魔にも縋る
…人が愚かである事は否定はしませんとも
UCを発動して攻撃力を強化し接近戦を仕掛けます
剣を交えながら目を馴らして行き
徐々に挙動を【見切り】ましょう
姿を模倣する魔術ですか…!
やりにくいことを…
所詮はまやかし、と斬り捨てられれば如何に楽なことか
太刀筋を迷わせてしまうのが己の弱さを憎みますよ…
…全く、人を下僕か犬の様に
ですが…届きましたよ。本当の貴女の声が、確りと
故に…此の剣も届いたのです
人は愚かで、不完全です
私も、その一人
だからこそ…こうして手を取り合って前に進むのです
孤高の支配者たる貴女には、知り得ぬことだったでしょうが
ライラ・サンタマリア
ローウェンさん(f09657)と
ええ、とんでもなく愚かね、人は
勝手に救いを求めておきながら
騙された、こんな物は望んじゃいないだなんて
……何て、嘆かわしくて、然しどうして可愛気があるではないですか
ははぁ、わたくしが2人
全く以って良い判断!
趣味が合いますね
彼には効果がありましょう
でも何方が本物か思い悩むだなんて
信仰心が足りないのではなくって?
ねぇ貴方。お聞きになって
――とびっきり美しくて、碌な往生も出来そうもない方がわたくしよ
愚かだと、在るが儘の自分を受け入れるのは
諦めでも怠惰でもないわ
誠実に生きる努力をした者が
失敗してもその不完全さを許容する事こそが『救い』
征服と享楽とを欲望せし存在に、鉄槌を!
●
プレアグレイスの考えは、一理ある。しかしそれが全てではないとも、ローウェンは知っている。
「過ちを繰り返し、己が罪から目を背け、追い詰められれば都合よく神にも悪魔にも縋る。……人が愚かである事は否定はしませんとも」
ライラはくすりと笑い、ローウェンの言葉に続く。
「確かに、人はとんでもなく愚かね。勝手に救いを求めておきながら、騙された、こんな物は望んじゃいないだなんて……何て嘆かわしくて、然しどうして可愛気があるではないですか」
なんて哀れで、愛おしいのだろう。傲慢で自分勝手、大罪犯し、大いに結構。それもまた『人間らしさ』の一面、切ってもきれない人の性。
天使の憎悪は燃え上がり、二人の言葉に反論しようと口を開くが……言わせない。魔力を破壊力に変換したローウェンの一撃が、息を遮る。受け止めた黒大剣の罅が深くなり、亀裂が広がった。執行剣Aaliyahに体重を乗せて、反撃を圧し込める。
重みに耐えかねた天使は脚を思い切り撥ね上げる。間一髪、急所に喰らう事を避けられたが、この天使、形振り構わなくなってきている。それだけ追い詰められているのだろう。
退いたローウェンの奥、詠唱を続けるライラに狙いを定め、黒大剣を掲げる。黒光りする刀身は割れた鏡となり、一片一片にライラを写す。キラリと眩い閃光が戦場を包み、次に瞼を開けたときには同じ風貌の女が複数。皆一様にローウェンを見つめている。
「ははぁ、わたくしが2人、3人、沢山。全く以って良い判断!」
「趣味が合いますね」
「彼には効果がありましょう」
「……やりにくいことを……」
ある意味で、悪夢だ。一人でも持て余すというのに、何人も彼女が居られたら気が触れかねない。――所詮はまやかしと、斬り捨てられれば如何に楽なことか。頭では分かっていても、太刀筋を迷わせてしまうのが己の弱さをローウェンは憎んだ。
「ねぇ貴方、何方が本物か思い悩むだなんて、信仰心が足りないのではなくって?」
「こんなに判りやすいでしょう」
口々にローウェンを惑わすライラ達。詠唱、囁き、祈り……そして何れかのライラは笑う。
――こんな単純で当たり前のことに迷うなんて、躾のやり直しが必要かもしれない。考え込む様も可愛らしいけれど、ヒントくらいあげましょう。今回限りの特別サービス、心して受け取りなさいな。
「お聞きになって。――とびっきり美しくて、碌な往生も出来そうもないのがわたくしよ」
「……届きましたよ。本当の貴女の声が、確りと」
故に、もう躊躇わない。ローウェンは走り出し、ライラの贋物に斬りかかる! 引き裂かれた肉体は血も流さず、煙のように立ち消えた。
「合格です。良い子ですね」
「はぁ。全く、人を下僕か犬の様に」
溜息を吐きつつも満更ではなさそうなローウェンに、ライラは「そういうところが犬っぽいのですけれど」と思ったが、今は黙っておいた。あとでじっくり、このネタで弄れるのだから。
指先と刺すような視線を天使に向けて、ライラは詠唱を再開する。
天使の黒大剣はボロボロで、最早何も写さない。頼れるものはもう自分の力だけ。飛翔を奪われた天使は、渾身の力でライラに突進。刃が心臓を貫くよりも先に、ローウェンが割り込んで守れば、黒大剣はガシャンと砕け散る。
「征服と享楽とを欲望せし存在に、鉄槌を!」
背後に構えるライラの詠唱が完成した。天より降り注ぐ無数の光線が、天使を焼く。じゅわじゅわと灰になる天使が完全に崩れる前に、最期の言葉を投げかける二人。
「人は愚かで不完全です、私もその一人。だからこそ……こうして手を取り合って前に進むのです」
「愚かだと、在るが儘の自分を受け入れるのは諦めでも怠惰でもないわ。誠実に生きる努力をした者が失敗してもその不完全さを許容する事こそが『救い』よ」
灰塵となった天使は、果たして自らの『救済』に屈した。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『見送る鈴花』
|
POW : 墓の整備などを手伝う。
SPD : 無数の花で花環や花束を作る。
WIZ : 弔うひとに静かに寄り添う。
|
●
犠牲者の葬儀も終わり、墓地は静かに賑わっていた。
プレアグレイスが今まで、どれほどの人を『救済』したのかは分からない。それでも、過去を胸に今を生きる者達は生に感謝し、猟兵を讃える。
君達は花を手向ける事も出来るし、誰かに寄り添ったり、勝利に酔ったり、物思いに耽ってもいい。
【捕捉】
技能のPSWは指針の一つであり、全く気にしないで自由にやりたい事を書いて頂いて構いません。
場所は墓地で固定です。
宮落・ライア
んー花環を作りまくる。
残された子供に渡す用。
救われると思ったら裏切られたなんて大人はともかく
子供には辛すぎるだろうからね。しかもそれで親がいなくなったら…。
せめて少しでも前に進めるように。
迷わないように。
強くなれるように。
親の墓前に供えてもらう。
●
大人と子供、生きてきた時間が違えば経験も感受性も違う。大人には割り切れる事でも、子供はそうはいかない。残された小さな者達に贈る為の花環を、ライアはせっせと作った。
それがどれほどの少年少女を救うのか、今はまだ分からない。それでもいつかこの日を思い出した時、悲しみだけを背負わないように。少しでも前に進めるように。未来に迷わず、強く生きられるように。
救いを求めたわけでもなく、ただ巻き込まれただけの子供たちへ。せめて心を軽く出来るならばと、ライアは墓前ですすり泣く少年に花環を手渡した。
「今は泣いてても良い。でもさ、絶望しないで欲しいんだ。明日を生きる君達が少しでも前に進める事を、きっと親御さんも望んでいるよ」
救済を求めながらも無念のまま逝った親の事を、子供たちは決して忘れはしないだろう。だが、長い人生それを憎み続けるなんて……とても勿体ない。
ライアは墓守だ。幾度となく葬送り、死者も残された者も見てきた。怨恨、憤怒、祈り、あらゆる感情を推察できる。その感情を否定する事はないが、どんなに想っても死者が甦るなどありえない。現実を受け止めること以外、何も出来やしない。
なればこそ、人は前を向いて歩くべきなのだ。過去の思い出に縋るより、未来への希望こそが人を豊かにするのだから。
少年は花環とライアの言葉を受け取り、墓前に供える。墓に刻まれた名をじっと見つめながら、蚊の鳴くような微かな声で一言、「ありがとう」と言った。
今日は銀の絹糸に灼眼の少女が、村の英雄譚に永遠に刻まれた記念日。さぁ、作ろう、葬送ろう、死者の為に、生者の為に!
大成功
🔵🔵🔵
三嵩祇・要
少し離れた場所から見送る。
悲しみに寄り添うのも、誰かと分かち合うのも苦手だ。
人々を救いたいと行動したプレアグレイスの事は少し考える。
オレも死んじまった後になって、間違った正義を掲げて誰かを傷つける事があるだろうか。
暴れまわるただの害獣になった自分を想像できて笑っちまうが。
そうなったら、今回共に戦場に居た猟兵達みてぇな連中に終わらせて欲しいな。
「お前は間違ってる」ってぶっ潰してもらえたらそれは幸せな事だ。
だからきっとプレアグレイスも。何度蘇っても同じように沈めてやる。
安心しな。
●
村人と猟兵が集う墓所から、少し離れた場所に要は居た。感情の詰まった人々の声が自然と耳に入る。その気持ちを頭では理解できる。しかし、誰かの悲しみに寄り添うのも分かち合うのも苦手とあれば、わざわざ輪に入る必要もないだろう。
考えるのは救済の天使プレアグレイスの事。人々を救いたいと行動した彼女は、骸の海より来たりし者だ。何度でも蘇り、その度に救済を執行する。永遠に終わらない救済者を救える者が、いつか現れるのだろうか。
そして要自身も、死後同じように間違った正義を掲げ、誰かを傷付ける日が来るのだろうかと想像する。浮かんだのはほんの僅かな不安と、半ば確信にも似た推論。
――醜悪に暴れまわる、ただの害獣。咆哮は怨嗟を吐き、紫電の牙が生者に喰らいつく。其処に矜持など無く、憎悪を振り撒くだけならば、此度の戦場を共にした猟兵のような者達に終わらせてほしいと思う。「お前は間違っている」と身も心も潰してもらえるならば、それはきっと幸せな事だと、今は信じたい。だからプレアグレイス、お前も。
「何度蘇っても同じように沈めてやる。安心しな」
一陣の風がビュゥっと駆け抜ける。要の言葉が彼女に届いたのかもしれないと、心中で静かに笑う。
遠くの喧騒に目を向ければ、悲しみに暮れながらも大地にしっかりと立つ人々が見えた。彼らの傍に立つだけが猟兵ではない。陽光にはなれずとも、見守る月光もまた猟兵の一面。あるいは優しく眠りを包む夜闇すらも、きっと誰かが辿る路。
稲光が導くままに、要は自分の路を往く。歩き出したばかりの新米ヒーローの最初の任務は、こうして果たされた。
大成功
🔵🔵🔵
アンナ・フランツウェイ
私はどこかで物想いに耽っていようかな。頭を冷やさば頭を満たしている、この悶々とした感情が落ち着くと信じたい。
思うのは自分の偽物を見た時の事。偽物の私が浮かべていた邪悪な笑みを見た時、心の奥底では気味悪さよりも何故か親近感を感じてしまった。
それは彼女に救済されなくても、かつて施設で行われていた実験が成功していたら今頃偽物のような存在になっていたかもしれない故か…。私の内に存在する邪悪な怨念に身を乗っ取られる事がある故か…。
だから今回の一件を忘れぬよう胸に刻まなくちゃいけない。私の中の怨念に屈し、プレアグレイスのような救済を掲げる殺戮者にならない為にも。
・アドリブ、絡み歓迎。
●
もやもや、ぐるぐる。心の中に渦巻く悶々とした感情を落ち着かせる為、アンナは少し離れた場所で物思いに耽る事にした。頭を冷やせば多少この気分も晴れると思いたい。
――あの時。自らの偽物が見せた邪悪な笑みが、瞳の奥に焼き付いて離れない。嫌悪や不気味さはなく、心の奥底では、むしろ何故か親近感を感じてしまっていた。黒き片翼がじぃんと疼く。痛みはないのに、鉛のように重く感じるのは、心か、翼か。
プレアグレイスに救済されずとも、かつて施設で行われていた忌まわしき実験が成功がしていたのなら、今頃はあの偽物の様な存在になっていたかもしれない。それはアンナの裡に存在する邪悪な怨念に、身を乗っ取られる事がある故か。
だとしたら、それはとても恐ろしいと思う。自身の死に対する恐怖ではない。誰かを傷付け、悲しませ、新たな怨念を産み出してしまう……その終わらない怨嗟を創りだしてしまうのが、怖い。そうはなりたくないと思うのに、いつかその日が来る事を否定しきれない自分もいた。
どこまでいっても仮定の域を出ない。あくまでも妄想に過ぎない考えを、いつまでも悩んでいるのは無意味だ。それでもアンナは、此度の『救済』を胸に刻む。
「(プレアグレイスのような救済を掲げる殺戮者に成らない為にも。私の中の怨念に屈しないと誓おう)」
憎むだけだった世界にも救いがあると、アンナはもう知っている。暖かい感情、優しい人たち、まだ見ぬ出会いに仇為す事がないように、祈りを捧げた。
大成功
🔵🔵🔵
リリー・ベネット
せめて安らかに眠れるように、私からは花環と花束を贈ります。
悲しむ人達がいる以上、真の救済ではなかったのでしょう。
眠りについた方も残された方も静かな時間を過ごせるよう、私達が力を尽くすしかないですね。
眠った後も寂しくならないように。一人じゃないと思えるように、花束を捧げます。
私に出来ることは少ないですが、これで弔いになるならば。
アレグリア・ノーチェス
※戦闘時とはうって変わって歳頃の少女らしい話し方になります。
今までも『救済された』人がいたのか。・・願いは死神に届いてしまったようけど、この村の人達とって救済って言葉は何よりもすがりたいものだったんだろうな。
・・ああ、ダメダメ!物思いにふけるなんて私らしくない。
今は、犠牲者の人達への追悼と
今を生きる人達が強く生きていくのを願わないとね。
私は花束を作って、犠牲者のお墓に手向けようかな。手向けたら、彼らの魂に安息と平穏がありますようにと【祈り】を捧げよう。
●
――花環を送ろう、花束を贈ろう、魂を葬送ろう。悲劇の犠牲者に、哀悼の花を捧げよう。
遺された人々に寄り添うリリーとアレグリアは、地に還る者達の弔いを手伝う。気丈に振る舞う子供や、悲嘆にくれる老人、呆然と葬儀を見送る若者。共通するのは誰もが『救われた』りしなかった事。
「この村の人達とって、救済って言葉は何よりも縋りたいものだったんだろうな」
「そうでしょうね。しかし、悲しむ人達がいる以上、真の救済ではなかったのでしょう」
「……彼らが本当に救われる日が、来ると思う?」
「分かりません。何を以って救済となるかは、人其々ですから。私とあなたでも、きっと違いましょう」
リリーの言葉に、それもそうだと納得するアレグリア。置かれた花束は風に揺れ、花弁を乗せ舞い上がる。ひらりひらりと散った命を想うと、胸が痛んだ。
戦闘中の勇ましさはどこへやら、アレグリアは年頃の少女のように物思いに耽る――なんて、らしくない。ダメダメ! と頭を振って、せっせと墓前に供える為の花束を作る。
悲しみを癒す白、願いを託す黄、勇気を与える赤……そして一輪、別れの青を添えて完成した花束は、美しくもどこか儚い。でも、それで良い。すぐに立ち直れる者ばかりではないし、それが正しいわけでもない。それらを乗り越え、今を生きる人々が強く前を向けるように、そっと後押しするような、そういう小さな願いの元に作ったのだから。
一方のリリーが作るは純白一色の百合。華やかなそれは一見墓前には似つかわしくないようで、一説には復活や清浄の意味を持ち故人を送るに相応しい。包装紙に黄色のリボンを飾りつけ、丁寧に仕上げれば、村人にも薄ら笑顔が戻る。これだけ豪華ならば、眠った者達も寂しくないだろう。
「お姉ちゃん、それ綺麗だね」
無垢な子供が、真剣な様子のアレグリアに話しかける。永遠の別離にまだ気付いていないのか、作りかけの花束を指差し微笑んでいる。いつかこの花束の意味を理解する時がこの子にも来るのなら、今日の思い出は晴れやかであって欲しいと二人は思った。
完成した花束を村人に手渡し、リリー達も犠牲者の墓に手向ける。彼らの魂に安息と平穏が訪れる様にと祈りを込めて――。
大成功
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グリツィーニエ・オプファー
おや、ハンス
…花を摘んできて下さったのですね
有難う御座います
嘴に一輪の花を咥えた精霊の頭を撫で
共に墓前へと向かいましょう
今まで天使に『救済』された人々へ
そして――亡霊と化した過去の天使達へ
我々を傷付け、更には罪なき人々を殺めた者達の安寧を願う等、どう思われるでしょう
…ええ、ええ
オブリビオンは我々の敵に御座います
然し――あれが嘗て、望まぬ過去に沈められた者達ならば
死を悼む事は許されて問題ないでしょう
花が如何程咲いているかにもよりますが…
今を生きる人々へ、私からも一輪の花を手渡したく
人々の身を守れるよう優しい呪詛を込めて
…御守りと呼ぶには可憐に御座いましょうか
どうか皆様に、末永き安息が訪れますよう
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ばさりと羽ばたき、精霊鴉ハンスがグリツィーニエの元に戻ってくる。嘴には一輪の花を銜えて、主人に差し出した。
「おやハンス、花を摘んできて下さったのですね。有難う御座います」
指示もしていないのに、流石以心伝心。こちらの意図を正確に汲んでくれる優秀な相棒の頭を撫でて、共に墓所へ向かう。
今まで天使に『救済』された人々に祈り、亡霊と化した過去の天使達を想い、遺された人々へ希望を捧げる。戦いを挑んだ猟兵を傷付ける事は仕方がない、しかし罪なき人々を殺めた者達の安寧を願うなど……他者はどう思うだろう。
――ええ、ええ。オブリビオンは我々の敵に御座います。然し、あれが嘗て、望まぬ過去に沈められた者たちならば。死を悼む事くらいは許されるでしょう?
この一件に関わった全ての者が、いつか本当に救済される事を、グリツィーニエは心より願った。
猟兵達が用意した花はどっさりと一輪車に積まれ、溢れている。暗き世界でも凛と咲く花は、力強かった。グリツィーニエは一輪手にとり、呪詛を掛ける。人々の身を守れるように、優しいまじないを宿した花はキラリ、一度だけ輝いた。お守りと呼ぶには少し可憐すぎる気もしないでもないが、こういう形もアリと一人納得。
静かに涙を流す村人に花を渡すと、最初は驚いた様子だったがほんの少し笑顔を取り戻し「あの人も喜ぶでしょう」と礼を述べる。救済には至らなくても、花は確かに心の支えくらいにはなれたのだ。
「どうか皆様に、末永き安息が訪れますよう」
穏やかな祈りが、墓前にじんわりと染み込んだ――。
大成功
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レナータ・バルダーヌ
こういう時、何か助けになることをして差し上げられたらといつも悩むのですけど、戦う以外にできることといえば、わたしの場合、土を耕すことしかないんですよね。
墓地のそばで日当たりのよさそうな場所に、お花の種を植えましょう。
普段は野菜が中心なので、お花の方は手持ちがあまり多くないのですけど、じっくり手をかけてくだされば小さなお花畑くらいにはなると思います。
そうやってこの場所に足を向ける機会が増えれば、亡くなられた方々も少しは浮かばれるのではないでしょうか。
そして、生きてこの場にいる方々にとっても、それが何かしらの救いになれば幸いです。
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葬列に参加するのは気が引ける、花束作りは他の猟兵が勤しんでいる。であれば、他に助けになれる事と言ったら、レナータの場合は土を耕すことくらいだ。
墓地の傍、日当たりのよいところに目星を付け、慣れた手付きで耕し畝を作る。普段は野菜が中心故、花の手持ちはあまり多くないが、じっくりと手を掛け育てれば小さな花畑くらいにはなるだろうと村人に説明した。手際の良さと知識に感心した村人は、感謝を述べ、大切に育てると約束する。
「死人が何か言うだなんて、そんな事はありません。慰めは生きている方のためのものです」
撒かれた種がいつか大輪の花を咲かせる頃、残された者たちが笑顔を取り戻せるように、レナータは一粒ずつしっかりと埋める。
花の管理の為に人が訪れたなら、死者も少しは浮かばれる――死者からの返事はない。ならば、自論を信じるだけだ。行為によって生者の心は軽くなり、死者もまた孤独を感じずに済むのなら越した事はない。
「この花はいつ咲くのでしょう」
喪服の女性に話しかけられる。何の感情も写さない女性の表情は痛々しい。人の好い笑みを圧し込め、レナータもまた心に寄り添うように、綻ぶ花を想いながら返事を返す。
「すぐには咲きませんよ。芽が出るのに数日、茎が伸びるのにまた時間がかかり、運よく蕾が出来ても虫にやられてしまう事もあります。それでも……手間には必ず応えてくれますよ」
時間が全てを解決するとは思わない。でも、時間を掛ける事で和らぐ事もあるのだ。
だから今すぐじゃなくても良い。花が咲いたら、村人はまた次の種を撒くのだろう。そうして愛する者を失った寂しさから解放する仕組みが出来あがる。
腕の包帯が汚れる事も気にせずに、種植えを続けたレナータだった。
大成功
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胡堂・充
戦いは終わった……しかし、人々の心身に残った傷痕は深い。
医者である僕に出来ることは【医術】【他者治癒能力】による治療と【コミュ力】【優しさ】による精神的なケアぐらいだ。精神科は専門外だけれども……。
……あぁ、ニレさん(f02691)。――そうだな、こういう時ぐらいは神に救いを求めても良いはずだ。
……ニレさん、先程の『黒い霧』なのですが……正直、僕自身にも正体は分かっていません。なので、もしご迷惑をお掛けしたのならばここで謝罪します。
それと……申し訳ないのですが、亡くなられた方々に祈りをお願い致します。 ……それは、医者には出来ない仕事なので……。
※連携希望、アドリブ可
ニレ・スコラスチカ
罪は滅びた。あの異端にも赦しと救いが訪れんことを。
充さん(f10618)は負傷者の治療を行うのでしょうか。わたしも微力ながら手伝いましょう。 充さんのユーベルコードは他人に命を与えている…真の姿の黒い霧とはまるで正反対の力ですね。やはり、そうしている方があなたらしい。
死者には弔いの祈りを。 わたしの祈りはユーベルコードでも技能でもない。何の力もありません。
ですが……死者の冥福を、残された者の平穏を、祈らずにはいられないのです。
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救済の天使は去った。自らの説いた『救済』を受け、過去へと還ってゆく。しかし、悲しみは消えない。刈り取られた命はもう戻ってこないのだ。
「ニレさん、申し訳ないのですが亡くなられた方々に祈りをお願い致します。……それは、医者には出来ない仕事なので……」
「構いませんよ。わたしには何の力もありませんが、死者の冥福と残された者の平穏を祈る事はできますから」
手を組んだニレが安寧の祈りを捧げる隣で、充は治療の準備を始める。外傷はもちろん、精神的なケアもまた医者の役目。専門外でも出来ることはあると、心身に傷跡を負った人々の声を聞く。
村人は酷く憔悴していたが、その瞳はまだ光を失っていない。充はそれが少し意外で……安心した。人は辛い事、悲しい事を乗り越える力を、根本的に宿しているのだと知れたのが、嬉しい。祈りの言葉を終えたニレが顔を上げると、穏やかな表情の充が目に入る。嗚呼、彼もこんな顔が……否、こういう表情が本来の彼なのかのかもしれないと思った。仕事中とはまた違う一面に、ニレも綻ぶ。
人々の治療もそこそこに、疎らになってきた頃。充は徐に話を切り出した。
「……ニレさん、先程の『黒い霧』なのですが……正直、僕自身にも正体は分かっていません。なので、もしご迷惑をお掛けしたのならばここで謝罪します」
「謝罪など不要ですよ。驚きはしましたが、あなたの行動が間違っていたとは思いません。迷惑などと言わないで下さい」
「……ありがとうございます」
「はい。どうか気に病まずに」
ニレはほんのりと――気付かない程僅かに微笑んだ。聖母の様に柔らかく狩人の様に確りと、聖職者の揺るぎない信念で、充の真剣な横顔を見つめる。
彼の苦悩を完全に理解する事は出来ない。今の彼と黒霧を纏う彼はまるで正反対の別人。どちらもが充であり、偽りなき本性だ。
例えどちらかに彼が寄ったとしても、先程共に戦ったあの天使への気持ちは同じだろうと、最後にプレアグレイスへと言の葉を送る。
「あの異端にも、赦しと救いが訪れんことを」
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斯くして『救済』は潰え、遺されたのは悲しみと一筋の光。
昏い夜を越え、人々はまた明日に救いを求め生きていくのだろう――。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2019年04月24日
宿敵
『救済の代行者・プレアグレイス』
を撃破!
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