イェーガー、ヒーローズアースへ
●嗾す者
「さて、いかがかな。力を得た気分は」
奇抜な格好をした一人の男が、椅子に座った2人の男に語りかける。
「ワシが君らに託したのは、正義にも悪にも染まりうる力だよ。さぁ、この世界でその力を振るい、好きに生きるが良い……そして、その様をワシに見せてくれ。力のお代はそれで結構じゃよ」
シルクハットのてっぺんからポップコーンをつまみ、男は椅子に背を向ける。
残されたのは2人。新たに宿された力に、彼らは狂気的な笑みを浮かべるのだった。
●ヴィラン、その背後に
「早速の新世界だけれど……観光の前にまずは事件解決よ。猟兵の力が求められている、つまりその背後にはオブリビオンがいるわ」
UDCアースとよく似た、けれども違う世界、ヒーローズアース。新たな予知はその世界のものだとニコラは猟兵たちを集める。
「ヴィラン、と呼ばれる超常の力を持つ者が事件を起こすわ。まずはそれを解決してちょうだい」
ヴィランとは、と。説明を求めて猟兵がざわめく。
「オブリビオンではない、けれども一般人よりは力を持つ者よ。彼らはオブリビオンから力を与えられた影響で暴走してしまっているわ。だから、彼らは倒すのではなくて無力化する必要があるの。逮捕したら引き渡す先もあるし、彼らはオブリビオンに至る貴重な情報源だから丁重に扱ってね」
ニコラからの説明を受け、猟兵たちはこれまでの世界とは勝手が違うなと気を引き締める。
「現地で起こっている事件は2つ。麻薬の闇取引と銀行強盗よ……麻薬の方は現場での戦闘に、銀行強盗は現在進行形で起こっているから逃げる犯人を追うことになるわ。現場同士はニコラが繋ぐから安心して」
追うべきヴィランは2人、それぞれが別の事件を起こしているようだ。
「そして、彼らを捕らえたら、彼らに力を与えたオブリビオンの情報が手に入るはずよ……そしたら、オブリビオンの居所へゲートが繋げるわ。オブリビオンへの対処はこれまで通り、気を抜かずに戦ってきて」
説明はそれで全てなのか、ニコラは猟兵たちをぐるりと見回す。
「勝手が違う部分に戸惑うかもしれないけれど、最終的にはいつもと同じよ。気を引き締めて、けれども緊張せずに頑張ってちょうだい」
転移ゲートが展開……その先は新たな世界だ。飛び込む者を求めるようにニコラは猟兵たちへ手招きした。
Reyo
いつもお世話になっております、ニコ生会場で書いたシナリオとなりますReyoです。
第1章、第2章では冒険フラグメントでヴィランを追うことになります。
第1章では麻薬取引現場に突撃し、現場を仕切るヴィランを相手取ることになります。
第2章では銀行強盗を行ない逃走するヴィランを追うことになります。
皆様がどのように対応するかのプレイングをお待ちします。
第3章では、彼らに力を与えた謎のオブリビオンと戦うことになります。
油断せず、がんばってください。
では、よろしくおねがいします。
第1章 冒険
『闇取引を潰せ』
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POW : 怪しいと思われる非合法組織を襲撃するなどして、力技で情報を得ます
SPD : 関係者への聞き込みや目撃者を探すなどして、闇取引の現場を特定します
WIZ : 非合法な品の流通経路や取扱業者のデータから、取引現場を探り当てます
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リリスフィア・スターライト
他の猟兵さん達との協力や辛みはOKだよ。
世界は違っても犯罪者がいるのは変わりはないようだね。
電脳技能を使ってこの世界で非合法とされているものを
ピックアップして、それらが出回っている気配がないか
闇サイトとかもあるのかも探してみるよ。
分からない事も多いし、慎重に事を進めるよ。
首尾よく怪しい取引現場を特定出来たら猟兵達と共有して
皆で踏み込むようにしたいかな。
「この世界で私達の常識や技術がどこまで通用するかな?」
「悪役も保護対象とは新鮮だね」
アテナ・カナメ
【心情】本当にヒーローがいっぱいいる…すごい…すごいわ!!まるで映画の世界みたい!(感動)
とと、感激してる場合でもないわね。早い所ヴィランの犯罪を潰さないと!
【作戦】SPD。仲間と協力。私服姿(黒スーツ。マスクはつけたまま)で聞き込みをするわ。「すみません、少し聞きたいんですが…最近周辺で取引が行われていると聞いたんです。何か知りませんか?」
【戦闘】スーツを脱ぎ捨ていつもの格好(イェカの姿)で。「おとなしくこちらへ来てもらえる…?私はアテナマスク。スーパーヒロインよ!」と説得。聞き入れてもらえない場合は「そう…なら仕方ないわね。少し熱い目にあってもらおうかしら」とフレイムショット(当てない)
神酒坂・恭二郎
「やれやれ。どこもかしこも賑やかだねぇ」
何時もの着流しは脱いで、伊達なスーツ姿で世界に降り立てば、全く違う世界に見なれた風景。
さて、こうなるとやり方も何時もの流儀で分かるだろう。
「ごめんよ兄さん。ここを仕切ってる旦那方に挨拶をしてぇんだが」
礼儀作法と優しさにコミュ力で地元の犯罪組織の若い衆に質問。
その足で組織に踏み込み挨拶する。
「すまんね、旦那さん。新参でここの礼儀に疎くてね。幾つか教えてもらいたい事がある」
憤る若い衆に対し、ポケットに手を入れたまま、早業のクイックドロウで念動力の衝撃波を刃で飛ばして獲物を両断し、力と覚悟を見せる。
この位の荒事で情報を得られれば幸いだ。
【改変連携歓迎】
アーサー・ツヴァイク
※アドリブ共闘大歓迎
【POW】判定で
ヴィラン…オブリビオンとは違うんだな。まあ、悪いことする奴はぶっ飛ばすことに変わりはないな
じゃあ俺は銀行強盗の方を追うか。ライドラン、出番だぜ!
ライドランに【騎乗】して追跡【アニマル・カーニバル】でレイシューターを銀翼のイーグルケモノイド【ジルバ】に変形させて、空からも追尾させるぜ!
後は首に巻いてるスライスネッカーをマフラーのまま【ロープワーク】で相手を…捕まえられたらいいが…
ヴィランも何か力を得ているようだし、一筋縄ではいかなそうだよなぁ
スカル・ソロモン
「まあまあ、待ちたまえ。話を聞きたいだけなんだ、私は」
街の情報屋から得た情報で非合法組織に乗り込み……いやお邪魔しよう。
ふむ、そう喚かれては話も出来ないな。
【恐怖を与えて】少し静かにしてもらうとしようか。
君に力を与えた者について聞かせてくれ。
ああ、知りたいのはそれだけだ。
話を聞けたら【生命力吸収】、【吹き飛ばし】を乗せたデコピンを食らわせて立ち去ろう。
話を聞ければそれで良い。ああ、それだけで、な。君自身の事など、私はどうでもいいのだから。
時雨・零士
こんな世界があるとはな~。
どっちかって言うと、アメコミ系なヒーローが多い感じかる
ヒーローだけじゃなくて悪人もいるみたいだが…実に馴染む世界だな
POW
この世界のヒーローの確認や情報収集の為、ヒーロー達やその互助組織に接触。
猟兵で別世界でヒーローやってる事を明かし、怪しい組織や取引の情報を得るぜ。
その後はアクセラレイターで各現場へ向かい、「変身」して組織や取引を叩き潰すぜ!
ヴィランは【グラップル、怪力、早業】で叩きのめし、相手のUCに苦戦する場合は【アクセルフォーム】で手早く捕縛するぜ!
どの世界でもやる事は変わらねぇ。悪党は全員叩き潰す!
※アドリブ等歓迎
弥久・銀花
アメコミの世界っぽい感じなんですね、私みたいな(自称)普通の人狼は没個性かもしれませんが頑張りましょう。
【POW】
さて、怪しげな非合法組織はこちらの建物ですね。
(コンコン、とノックしてから)すみません、こちらは怪しい裏取引をしていると聞いたのですが。
私は正面から乗り込みます、強襲する人も居るので視線を集めて隙を作る積りです。
(荒々しい誰何の声を受けても平然とした顔で)ああ、こう見えてそこそこの修羅場を潜ってるのでそう言うのは良いです。
痛った! 銃撃なんてマグナム弾でも再生できます(ユーベルコード使用)
さあ、どうします? (その後、逃げ道に視線を向ける悪者を探して、強襲する人に叫びます)
レイチェル・ノースロップ
@POW
How are you? アナタ達はヒーローワールドに来たイェーガー?
ワタシの名前はレイチェル、よろしくネ♪
さて…と、お仕事は麻薬取引現場ね…
ん?顔つきが変わりマシタって?
気のセイですヨ、うふふ♪
さ、ここは目についた非合法組織をシークして見つけ次第インタビューしますヨ
え、ニンジャのヒーローなんだから忍ばないかデスって?
ノンノン、ここはスマートにダイナミックに【存在感】を出してショートカットしマース
それにヴィランには人権はありまセーン、それがここのLAWデース
さぁ、行きまショー!
※他PCとの行動を希望しマース
百目鬼・明日多
ここがヒーローズアース…ここには
どんなゲームがあるか気になりますが
それは後で調べましょうか。
さて、潜入は久しぶりですね。
まずは『遊技場への招待』でメダルの中に入っておき
他の潜入している猟兵さんに運んで貰い、
都合のいいタイミングで飛び出して戦闘を行います。
戦闘は『電脳化身の拳』での先制攻撃でブッ飛ばしますが
トドメは刺さない様にギリギリの手加減は行います。
殺すつもりは無いですから、気絶させた敵は『遊技場への招待』で
ゲーセンの中に待機して貰いましょう。
まぁ最小限の拘束はしますが。
…それにしても、オブリビオン程じゃないにしても
このレベルの相手がゴロゴロいるって凄い世界ですね、ここは…
…面白そうです。
草野・千秋
@
強い力を得た者は
正義のヒーローにも
悪のヴィランにもなりえる
改造されて得た強い力に酔いしれないように
気をつけなければいけない
と自戒を込めて
僕はあくまで悪をくじくヒーローでありたい
住む世界は違いますが
ヒーローの端くれとしてお手伝いしますよ
非合法組織を襲撃
麻薬取引?
そんな悪事は許さない!
UCで飛行し現場に駆けつける
ヴィランを発見し次第
手加減なく締め上げ情報を吐かせる
麻薬というものは追い詰められた
人間の心の弱みに漬け込むものだ
濫用すれば人間が人間でいられなくなる
そんなものを利用して何を企んでいる?
怪力でねじ伏せ行動出来ないよう捕らえる
オブリビオンの情報を得られるまでは倒さない
●かの世界で迎えるもの
展開されたゲートの先に広がるは新世界、ヒーローズアース。その中でも人目の少ない繁華街の裏路地であった。人でざわめく表通りとは打って変わった静かな暗い様子に、この世界もまたオブリビオンという過去の残滓に侵された世界であることを感じながら猟兵たちは新たな大地へと降り立った。
「Hi! How are you? アナタ達、ヒーローワルドに『来た』イェーガーで合ってるわよネ? ワタシの名前はレイチェル、ここのイェーガーデース」
そしてそれを待っていたかのように声をかける人影がひとつ――レイチェル・ノースロップ(忍者ヒーローお姉さん・f16433)と名乗ったのは、転移ゲートをくぐった猟兵たちを「この世界に来た者」と称する猟兵であった。
「わぁ、まるで映画の世界のヒーローみたい!」
「コミック世界みたいですね、そういう感じ」
出迎えたレイチェルの様子にそう呟きながら挨拶の手を伸ばすのはアテナ・カナメ(アテナマスク・f14759)と弥久・銀花(隻眼の人狼少女剣士・f00983)だ。片や興奮気味に、片や冷静なままに初対面の挨拶を投げる2人にレイチェルは満面の笑みで応えたあと、改めて他の猟兵たちに向き直る。
「そちらのグリモア猟兵さんから、大まかな事情は聞いているわ。まずは麻薬取引現場へ、そしてその流通元であるヴィランの逮捕まで、どうぞよろしくね?」
先ほどまでの陽気さはどこへやら、一瞬とはいえ真面目な雰囲気を纏うレイチェル。くるくると移り変わるその顔色のいったいどちらが彼女の本質かは、本人だけが知ることだ。
「オブリビオンとはまた違う存在、ヴィランか……まぁ、悪人をどうするかはどの世界でも変わらず、か?」
「大原則は変わらず、ってことだろう? 勧善懲悪だ、実に馴染むぜ」
初めて対峙する存在である「ヴィラン」という悪の存在に気を引き締めるアーサー・ツヴァイク(ドーンブレイカー・f03446)に、その緊張をほぐすように肩を叩くのは時雨・零士(仮面ライダーデオルム・f04112)である。
「Are you ready? さ、ご案内はお任せあれ」
踵を返すレイチェルの案内に続き、猟兵たちは裏路地をさらに奥へ――入り組んだ街の深部、ヴィランの巣食うこの世界の暗部へと足を踏み入れるのだった。
●アンダーグラウンド・ストリート
「ふぅん、電子機器の技術とかはあんまり変わらないのかな?」
持ち込んだ端末を操り、リリスフィア・スターライト(プリズムジョーカー・f02074)はざっくりとした現在地やこの近辺で起こっていた過去の事件などについての情報を収得、即座にゴーグルに投影して自分の視界と同期させる。
「事件現場付近とかについての詳しい情報を知ってる人が仲間にいると、こういう時の検索がかけやすくていいよ――とりあえず、ネットの書き込みとかを見ている範囲だとここらのビルが麻薬取引の現場でよく使われてるみたいだね」
ダークウェブ……いわゆる検索サイトからはアクセスの困難な闇サイトや深層ウェブの一部にある非合法組織の情報をまとめて引っこ抜き、リリスフィアは口頭で情報を共有した。
「だったら、ここらを仕切ってる連中に話を聞くのが早そうだ……調べられるかい?」
新調したばかり故にまだフィット感の薄いスーツの襟元を正しつつ、神酒坂・恭二郎(スペース剣豪・f09970)はそう提案を投げる。提案を受けてリリスフィアがまたもやウェブ情報に目を走らせるが、その報告を待たずに動く者も。
「――すみません、こちらで怪しい裏取引をしていると聞いたのですが」
「ちょ、ちょっと、さすがにぶっこみすぎじゃあ!?」
「イエイエ、あれくらいじゃないとインタビューにもなりませんヨ?」
ひそひそと、猟兵たちの集団を眺めながら路地の隅でたむろしていたガラの悪い者たちに、銀花が悪びれもなく声を投げた。問われた側は何を言っているんだ、と怪訝な顔をし、制する暇もなかったが故に猟兵の一部も天を仰いだ。アテナが慌てた様子で銀花の肩に手を伸ばすが、この程度は日常茶飯事なのかレイチェルは笑ってアテナを諌める。
――天下のヒーロー様が、こんな汚れた裏路地に何の御用で?
その小グループのリーダーらしき者がそう応じるが、斜に構えて皮肉も混ざった物言いには敵意に近いモノが含まれていた。ヴィランになるほどの力こそないが、彼らはいわゆる社会のつまはじき者……ヴィランとヒーローにこの世界を二分する時にはヴィラン側へと含まれるような者だ。返事が返ってくるだけでもマシなのかもしれないが――
「まあまあ、そう殺気を出さずとも。少し落ち着きたまえ……話を。そう、話を聞きたいだけ、なんだよ。私たちは」
そこを、答えが返ってきたのをいいことにスカル・ソロモン(目覚める本能・f04239)がズバリと切り込む。丁寧に言葉を区切りながらの物言いは多少威圧的であり、スカルの望むような、あるいはまともな返答をしなかった場合にどうなるのかは簡単に想像できることだろう。
「ああ、その通り。ここらを仕切ってる旦那を教えてもらえれば俺たちはそれで構わない。何分、新参でここの事情には疎いものでね」
そしてそうやって威圧するスカルの横に恭二郎が並べば圧迫感は2倍どころでは済まない。だが、これまでの世界のようにその威圧ですぐさま首を縦に振るほど、対する不良集団も善良でない。
――知ってたとして、教えるとでも?
げらげらと下卑た笑い声をバックに、リーダーが猟兵たちに返す言葉は短い。ユーベルコードを扱う者が身近にいるというのは随分と彼らの神経を太くしているようだ。
そして、不意に。
――バツン
恭二郎が僅かに腕の角度を変え、スカルが指を鳴らした結果生じた音である。不良集団と猟兵の間の地面に、鋭い切り込みが1つと拳を叩きつけたようなひび割れが1つ生成された。
「話をしよう、と申し込んだのだが――」
「……こうやって話をするのはここの礼儀的には問題ないかな?」
言外に「次は当てるぞ」と軽い脅しをかける2人。ほとんどノーモーションで放たれたその武威に不良集団の面々は呆気に取られた顔をし……一歩後ずさりながら一斉にひとつのビルを指差した。
●突入、取引現場!
やや年代の古いビル。リリスフィアの電子的調査によると。不良集団の指差したそこの最上階につい最近入ったばかりの事務所があるという。ネットニュースや新聞から照らし合わせて、麻薬取引が噂に出始めたころとその事務所が開かれた時期はほぼ同じ。状況証拠的にはほぼクロと言えるその場所へ――
「麻薬取引なんて悪事は――許さない!」
装甲ユニットを装着した姿の草野・千秋(断罪戦士ダムナーティオー・f01504)がユーベルコード「Fly me to the Moon」の力で飛翔し、窓ガラスを突き破って突入した。
「なんだぁ、テメェ!」
事務所……というよりはガラスビーカーやフラスコの類が散乱するその場所は実験室や研究室じみていた。キラキラとガラスの破片が舞い踊る中、千秋の突入に応じて部屋の中から怒声が返る。薄汚れた白衣に身を包んだその男が、どうやらオブリビオンによって力を与えられたヴィランらしい。
「悪を挫く者――こっち流に名乗るなら、ヒーロー、ダムナーティオーだ!」
「ご丁寧にどうも! こちとら名乗る名前もない木っ端だ、窓の修理代を払ってとっとと帰って――くれないかっ!?」
部屋への突入から間髪いれずヴィランを締めあげに動いた千秋に対し、ヴィランはすっとぼける言葉から油断なく反撃。どうやら薬物生成系の能力らしく、鼻をつく酸っぱい匂いの液体が千秋へと飛んだ。それを振り払った千秋の腕で熱した鉄板に油を落としたような溶解音が響く――ヴィランが投じたのは強酸性の液体だったようだ。
「麻薬だなんてもので他人の心の弱みに付け込んで、何を企む!」
「答える義理なんざねえだろう!」
溶解液による反撃に怯んだ千秋が言葉を放つ間にもヴィランは逃走すべく部屋の出口へ走るが……その背後に投じられるものがある。
「千秋、突入御苦労――援軍を連れて来たぜ!」
窓の外から響くのはアーサーの声。ユーベルコードで召喚した特殊な使い魔、ケモノイドを通じて投げられた言葉。それを追うようにしてヴィランの背中へと投じられたのは1枚のゲームメダルだ。
「――こういう奇襲が、僕の得意技ですからね!」
きらりきらりと宙を舞うメダルから現れるのは百目鬼・明日多(一枚のメダル・f00172)の姿。ユーベルコードで作成したメダル内の空間に潜み、味方にそのメダルを投擲してもらうことで一気に距離を詰めるというのが彼が提案した奇襲である。そして今まさに千載一遇の機会、メダルから飛び出ると同時に呼び出したアバターによるラッシュがヴィランを捉えた。部屋の調度品を薙ぎ倒すようにしながらアバターがヴィランを吹き飛ばす。
「ぐっふ――だけどドアは近くなったぜ、ありがとよ、ヒーローさん!」
「さっきのラッシュで気絶しないって、どれだけ頑丈なのさ!」
あれだけ派手に吹っ飛びながらも、ヴィランは未だに気絶せず。唖然とする明日多を尻目にドアノブに手をかけ廊下へ飛び出しながら、最後っ屁のように危険薬物を振り撒いていく。
「危ない、明日多くん!」
「すいません、ありがとうございます、千秋さん!」
咄嗟に千秋が庇いに入るが、散弾のように飛び散った薬物が彼の纏う装甲を焼き焦がした。
「力加減を間違えました――ギリギリの手加減は難しいですね」
「無力化するにしても、殺してはいけないからね……それに、僕たち以外にも、廊下には――」
と、互いの被害状況を確認する2人の声に少し遅れて、廊下から派手な物音。どうやら階下から上がってきた他の猟兵とヴィランが鉢合わせたらしい。
Start Up――という機械合成音が響き渡り、それに続いてしばしの乱打音。先ほど部屋から飛び出た動きを逆再生するようにして、ヴィランが実験室へと叩き戻されてくる。
「千秋、明日多、無事か!」
ヴィランを追うようにして飛びこんでくるのは零士だ。今回は速力を重視したフォームに変身している彼は他の猟兵より一足早くこの階まで辿りついており、千秋と明日多が叩き出したヴィランと遭遇。持ち前の素早さで先手を取り、無事気絶させることに成功したようだ。
「僕が少し被弾した程度だ……何か、縛るものとか持ってない?」
「いや、そういうのはレイチェルが用意してくれているようだが」
「それなら、ひとまず僕のゲームメダルに閉じ込めておきましょうか。今なら無抵抗でしょうから……後できちんと拘束し直す必要はあるでしょうけどね」
尋ねる千秋に首を振る零士。明日多が手を挙げて、ひとまずヴィランへの対処が決まる。
しばらくすれば他の猟兵たちも続々と事務所へ辿りつき、まずはレイチェルと銀花が明日多のメダルに入りヴィランを拘束。そのまま再びメダルの外へ連れ出し、スカルと恭二郎が尋問。情報の裏取りはリリスフィアが、というように淡々と事件処理が進んでいくのであった。
成功
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第2章 冒険
『銀行強盗犯を追え』
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POW : 車を力技で止める。
SPD : 車なんてスロリィ!俺の脚の方が早いぜ!
WIZ : 魔法で食い止める!
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●ドラッグメーカー・ヴィランに曰く
クソッタレ、ヒーローはいいよなぁ、いつも徒党を組んで俺たちを追いまわして!
ただちょっと自分の力を活用して小金を稼いでるだけじゃねえか。それの何が悪い?
――おっと、そんなに恐い顔をするなよ。皆して俺を囲んで、いったい何が狙いだ?
金か?
それとも何か薬でも作れって?
……俺に力を与えたのは誰か?
それを喋れば、俺の身分はきちんと保障されるんだよな? 法律はそんなに詳しくないが、司法取引だろ、それ。
……その炎は下げてくれないかい、嬢ちゃん。ついつい爆発物を作りたくなる。拳も、ノーだ。あんまり殴らないでくれよ? そっちが聞きたいことをついつい度忘れしちまうかもしれねえ。
……詳しいことは俺も知らねえよ。ただアイツは「ドクター」と名乗っていて、世間を騒がしてくれるんなら、持ち前の能力を強くしてくれるってだけさ。
な、これでいいだろう? 後のことは弁護士を通して頼むぜ?
●次なるヴィランを追え
しかるべき機関へとヴィランを引き渡した猟兵たちの前に、再度転移ゲートが開く。どうやら、次のヴィランが居る場所の近くへとグリモア猟兵が運んでくれるらしい。
次なるヴィランが引き起こしたのは銀行強盗。
自身の身体を重機と一体化させ銀行を襲撃、その後近隣の車と再合体して現在はハイウェイを逃走中だという。
ゲートの向こう側は、件のヴィランが数分後に通過すると予知されているハイウェイの一角。
力づくや魔法で止めにかかるか、あるいは速力で以てチェイスを挑むかは猟兵に一任されるとのことだ。
時雨・零士
あー…ヴィランとかUCとか公になってる分、表の犯罪も大型化しやすいのかね…?
ま、これ以上やらかす前に止めねぇとな…!
さぁ、ひとっ走り付き合えよ!
「変身」した状態でカオス・アクセラレイターで【騎乗、操縦】で全速で追いかけるぜ!
相手の攻撃や妨害は【見切り】で回避。
ブラスターのバースト連射やマグナモードで敵本体を狙って攻撃するぜ!タイヤとか足だとまた別の車とかと合体するだけだろうしな。
ブラスターで止められねぇなら仕方ねぇ…強引でも力づくで止める!
敵の前、または横につけて、【力溜め、怪力、ジャンプ、捨て身】で必殺の【カオス・ストライク】を叩き込んで仕留めるぜ!
絶望がおまえのゴールだ…!
※アドリブ等歓迎
百目鬼・明日多
…せっかく超人的な能力を手に入れたのに、する事が銀行強盗ですか…
もうちょっと他に無かったんですかね?
ともあれ、まずは追いかけないといけませんね。
アバターに本体を抱えさせて跳躍し、車を追います。
車よりは確実に速いですし、いざとなれば上から強襲も出来ますよ。
追いついたら車を蹴り飛ばして引っ繰り返そうとしましょう。
…さっきは加減し過ぎましたが、今回は車部分だけ叩き壊せばいいですし
抵抗できなくなるまで容赦なく殴り飛ばしますよ。
あ、盗まれたお金を回収できたら『遊技場への招待』で
メダル内に収納しておきます。
ここに入れておけば、取り返される事も無いですしね。
当然、事件解決後にすぐ返しますけど!
リリスフィア・スターライト
他の猟兵達と積極的に協力するね。
銀行強盗なんていかにも悪者が思い付きでする行為だよね。
折角だし新しく編み出したUCを使って追跡するよ。
光の翼を纏って全力で空中をダッシュだね。
車よりも早く飛翔できる想定だから先回りしてから
氷の魔法でタイヤだけをスリップさせてヴィランの車の
動きを止めるようにしたいかな。
周囲の一般車両が巻き込まれたりしないタイミングで仕掛けるよ。
「思いっきり飛ぶのは気持ちいいけれど、ちゃんとお仕事もこなさないとだね」
「ここから先は通行止めだよ」
レイチェル・ノースロップ
@SPD行動
挟み撃ちすべくハイウェイを【ダッシュ】、【ジャンプ】で距離を詰めていく
逃走中のヴィランを発見したその時、小腹が鳴る音が…
「Oh,shit…ランチはまだデシタネー」
スーパーヒーローは神ではない
爆発的な身体能力を発揮するにはそれに見合う良質なエネルギー補給が必要だ…即ちスシである!
(ハラが減ってはイクサは出来ませんからネー、何時もの事ですケド)
速やかに携帯用スシパックを取り出し、ヴィランを追いかけながらスシを補給する
本人はその気ではないが、ヴィランにとっては【挑発】モノであろう
そして補給し終わり、並走したらまずはアイサツ
「ドーモ、ヴィラン=サン。スワローテイルです」
さぁイクサの始まりだ
神酒坂・恭二郎
「全く。飽きさせない世界だねぇ」
召喚後、ハイウェイに落下しながら胸元から絵馬ホルダーを抜いて口寄せ。
相棒の星白鮫がアスファルトを海と見立て飛び出してくるので、その背に乗る。
「あいつを追え。頼むぜ相棒」
片手で手綱を引き、片手はポケットに入れサーフボードのように立ち乗り。
星白鮫がハイウェイから背ビレを出して泳ぐ。理屈は知らないが、地中も水中も同じらしい。
追い付けば、ポケットから居合抜きの早業で抜いた手刀で斬撃を念動衝撃波として飛ばす。
【クイックドロウ、グラップル、早業、念動力、誘導弾。衝撃波】
隙があれば相棒を路面から撥ねさせ、戦艦の装甲でも齧る鋭い牙でそのタイヤを破損させたい。
【改変・連携歓迎】
●チェイス・前
「せっかく超人的な能力を手に入れて、することが銀行強盗とは……」
召喚したアバターに肩車されつつ、明日多はハイウェイを疾走していた。明日多をはじめとしてこの場にいる猟兵は4人。その誰もが超人的な速力で車と一体化したヴィラン――ターボ・ヴィランを追っているところであった。
「とはいえ、飽きのこない世界なのは確かだろう? ――リリスフィアから通信だ。想定通り、追い込みは巧く行っているらしい」
ため息をつく明日多へ言葉を投げるのは恭二郎だ。まるでサーファーのような姿勢で路面を駆けている彼の足元には白鯨。アスファルトの硬さなど意に介さず、その上で路面に傷跡ひとつ残すことなく地中を海に見立てて泳ぐその姿は宇宙の神秘そのものであった。恭二郎が呼んだ仲間の名に他の猟兵たちが視線を挙げれば、上空に白雲を曳きながら飛翔するリリスフィアの姿が見えなくもない。上空からターボ・ヴィランの姿を確認するリリスフィアの指示に合わせ、猟兵たちはかのヴィランをある場所へ追い込もうとしているのだ。
「確かこの先に分離・合流するルートがあるからそこで2手に別れるんだったか? 走るのを他人任せにしてる分、俺と恭二郎のほうが長距離走には向いてる。明日多とレイチェルは最短ルートからヴィランを追ってくれ!」
走行中の風圧に負けぬよう声を張り上げるのは零士だ。彼は装甲を纏った姿で愛車「カオス・アクセラレイター」に騎乗している。零士のいう通り、分離・合流するルートを通ってヴィランを挟み打ちにするにはバイクと星鯨に乗った2人が適切だろう。
『報告、予想通り、最短ルートにヴィランが乗ったよ。既に一般市民に対するルート封鎖は別動隊が完了させてるみたいだから、遠慮なく追いこめるわ!』
一斉通信。猟兵たちの持つ端末からリリスフィアの声が響いた。
「オーケィ、了解ヨ!」
レイチェルの返事を合図に、猟兵たちは2人ずつ左右へと別れる――分岐路が見え、猟兵たちはそれぞれのルートへ向けて加速した。
●チェイス・後
「材料になる車がねぇ――クソ、こっちのルートは『入らされた』ってことか!?」
「その通りよ、ヴィラン。大人しくお縄につきなさい!」
「誰がっ!」
一足早くヴィランへと追いついたリリスフィアがヴィランの後方斜め上から降伏を勧告するが、一言吐き捨ててターボ・ヴィランは加速で応えた。スポーツカーのボンネット部分に上半身が生えたような姿をしているターボ・ヴィランが、猟兵たちを通じてこの世界の治安維持組織によって無人にされたハイウェイを駆ける。
「ハァイ、リリスフィア。お待たせデスか?」
「なかなか諦めの悪い様子ですね。ヴィランは皆そうなんでしょうか?」
だが、その速度を物ともせず、むしろ次第に距離を詰めたレイチェルと明日多がついに視界内にターボ・ヴィランを捉え、リリスフィアに合流した。
「待ってたよ、2人とも――それじゃあ、仕掛けに回るとしようか!」
「と、ちょっと待ってクダサーイ……さすがにこの速度を維持するのには、ランチがまだネー?」
増援を得て仕掛けようと提案するリリスフィアに、レイチェルが待ったをかける。ランチがまだ、といいながらレイチェルが懐から取り出したのは――携行用のスシ・ランチパックである。数種のネタがバランスよくパッキングされたそれはレイチェルのユーベルコードを支える貴重なエネルギー源なのだが、リリスフィアや明日多からみればやや奇異に映るものである。
「ハラが減ってはイクサは出来ませんからネー……はむはむ」
走りながら器用にスシを食べるレイチェルの姿は、バックミラー越しにターボ・ヴィランも目にしていた。レイチェルがスシを食べながら時速数百キロで走る姿は、その無邪気さと光景の異様さもあいまってターボ・ヴィランの精神を逆撫でする。
「舐めやがって、チクショウ!」
メキメキ、と音を立てながらターボ・ヴィランがスーパーカーをさらなる速度特化形態へ……まるでF1カーのような低重心車体へと変形させる。
だが――。
「ドーモ、ヴィラン=サン。スワローテイルデス」
その間にスシを食べ終えたレイチェルが、これまでの走りは手抜きだったとでもいうような超加速でターボ・ヴィランに並んだ。リリスフィアと明日多もレイチェルに追いつくべくギアを上げ、一瞬のうちにターボ・ヴィランの左右が猟兵によりブロックされる。
「車部分だけを叩き壊すくらいの芸当は出来ますよ? 車体を破壊されてどうなるかは知りませんけど、そうなるのが嫌なら抵抗をやめてください!」
アバターに肩車されたまま、明日多が再度の降伏勧告。
「ガキがしゃらくせぇ! テメェらと違ってこちとらエンジン搭載だ。止めたかったら力尽くで止めてみなぁ!」
「――もう、降伏勧告は行いましたよ!」
明日多の降伏勧告に荒い言葉で応じたターボ・ヴィランに、ついにリリスフィアが実力行使に出る。瞬時に展開された魔法陣が、ターボ・ヴィランの走る地面を瞬く間に凍りつかせる。
「げぇ、アイスバーン……!」
ターボ・ヴィランの顔が一瞬にして真っ青に。折しも、他のハイウェイとの合流点が近い故に道は緩やかにカーブしている。今の速度で突っ込めばスリップすること確実。
「ナイスタイミングだぜ、リリスフィア……!」
「ここから先は通行止め、絶望のゴールへようこそだぜ、ヴィラン?」
「ま、まだ仲間が居やがったのか!」
加えて、分岐路を先回りしていた恭二郎と零士がその先に待ちかまえ、ターボ・ヴィランにユーベルコードを叩き込むべく待機している。
「だがぁ、それでも俺の走りを甘く見ていたようだなぁ、ヒーロー!」
故に、ヴィランが取った行動はただ一つ――猟兵たちが狙い澄ましていた1本のルートへ飛びこむため、ターボ・ヴィランはアイスバーンの路面に向けてさらに加速。その直後、高らかに急ブレーキの音を響かせながら凍結した路面の滑り易さを利用した超絶テクニックのドリフトを見せつけ――猟兵たちが敢えて開けていた「反対車線」へとその車体を滑り込ませていく。
「ハッハァ、それじゃああばよ、ヒーローさん! 悔しかったらまた追いかけてくるんだなぁ!」
ドップラー効果で低くなる声を残しながら、ターボ・ヴィランは勝利を確信した表情で走り去っていく。
「――もしもし、こちら恭二郎だ。ヴィランはそっちに向かった。あとの仕上げは任せた」
「どっちに向かってもゴールは絶望……やれやれ、ちょっと同情したくなっちまうぜ」
ヴィランの進路に待機する猟兵に連絡を入れる恭二郎の横で、零士はやれやれと肩を竦めるのであった。
大成功
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弥久・銀花
【POW】
力付くで止めに掛かります。
ハイウェイなので一本道、なのでちょっと道に置石(身の丈サイズの大きな岩)を置いて封鎖します。
こう見えて私、【怪力】が有るので。
車に合体してるなんて言うからには置石ごときで止まる筈も無いのでしょう。
岩の陰に隠れてカウボーイみたいに投げ縄を用意して待ち構えて、通過する際に投げ縄を投げ付けて、それを手繰って近付いて接近戦を挑みます。
刀の届く距離になったら鋭刃線閃でタイヤを斬っちゃいましょう。
草野・千秋
@POW
我々猟兵が徒党を組む?
仲間達と組んで動けるのは
こちらに正義と絆があるからだ
人間は一人では生きていけないんだ
金も薬も興味は無い
ただの人を駄目にするだけのもの
……ドクターか、その名前、覚えたぞ
力技で車を止めに行く
持てる限りの全速力で駆け抜け
車に追いついたら
怪力を思い切り使用
このままお前を逃してなるものか
車を完全に止めたらヴィランを
これまた怪力でねじ伏せ
殺さない程度に締め上げる
お前達のボスはどこだ?
オブリビオンは?
……なかなか悪が多いですね、この世界
どこの世界も同じ、か(ため息)
断罪、制圧、制裁、退屈はしなさそうです
アテナ・カナメ
なるほどね…今度は車と一体化した強盗のヴィラン…まるで某変形ロボット生命体ね…。
【作戦】車と一体化した強盗の前に立ち、不適に微笑み【怪力】を使って車を抑える。「悪いわね。ちょっと止まってもらうわよ」そしてもし言うことを聞かないならバーニングパンチをお見舞いするわ。(殺さないように気をつけて)「優しく諭してるのに…ちゃんと話を聞かないからよ」
スカル・ソロモン
全く、忙しない街だ。
賑やかなのは結構だが、もう少し大人しくしてくれてもいいんじゃないか。
お守りが大変だろう?
要は件のヴィランを止めればいいのだね?
彼の上空に【ブラックホールスマッシュ】でブラックホールを発生させ、その吸引力で車体ごと宙に浮かせよう。
首尾よく浮いたら、一つ問題を出そうじゃないか。
このままブラックホールに吸い込まれて生命未体験の旅に出るか、大人しく投降するか、二択問題だよ。
ヒントは『こんなところで死ぬのかい?』だ。
賢明な君なら、答えはわかっているだろう。
無事彼が正解を引き当てたら【ドクター】とやらについて聞くとしよう。
「良いパトロンがついているそうじゃないか。ぜひ紹介して欲しいね」
胡蝶花・空木
銀行強盗ね、また放って置いたら大事になりそうな事を……
ワケのわからない内にパワー目覚めた身としては思うところあるけど、見逃して私の知った顔が被害にあっても困るし、捕まえさせてもらうわ
さて、いつも通り、コスチュームで正体を隠してから行くわよ
●行動
スーパージャスティスを使って、空を飛んで追いかけるわ
追い越して正面から力業で止めようかしら
スピリットヒーローとしての氷のパワーで、可能なら車輪を凍らせてだめ押しね
「さて、鬼ごっこは終わりよ」
「アンタと私の違い?そんなもの、人様に迷惑掛けてるかどうかに決まってるでしょ?当たり前の事をわからないフリは辞めることね」
※アドリブ、連携は歓迎
●ヒーローズ・トラップ
「こちら、ウィンターサイレンスよ――上空からヴィランを確認。想定通りのルートに入っているわ。皆、用意をして頂戴」
ヒーローネームで連絡を入れつつ、胡蝶花・空木(ウィンターサイレンス・f16597)はヴィランの進路に罠を敷いた猟兵たちに連絡を入れた。
「わかった、追いこみに入るよ」
答えるのは、ヴィランの予測進路で待機する千秋だ。最後の詰めとして道中に待機した千秋の役割は、最終的なトラップゾーンへとターボ・ヴィランを追いこむこと。
「こうやって仲間と共に動けるのは、正義と絆があるからだ――ヴィラン、立った1人で僕たちから逃れられると思わないことだ」
クラウチングスタートの姿勢を取り、千秋は粛々と空木――ここにいる猟兵たちは皆、彼女の名をウィンターサイレンスとだけ認識している――からの合図を待つ。
「――ダムナーティオー、今よ!」
「応!」
アスファルトに罅が入るほどの強烈な一歩。全身に纏った装甲の重さを感じさせることなく、千秋の身体が一瞬でトップスピードに乗る。飛びだすのはターボ・ヴィランの目前。突如並走するようにして現れた千秋の姿に、ターボヴィランは驚きの声をあげた。
「はぁ!? まだヒーローがいやがるのか! くそ、くそ! こうなったら轢き殺してやらぁ!」
「やれるものならやってみるんだな、ヴィラン!」
車体を巧みに操り、千秋を轢こうと位置取りをするターボヴィラン。対して千秋は、それをかわす様に小刻みに左右に進路を振りつつ、ヴィランの車体との並走を狙う。横に並んでさえしまえば、あとは全身の力を乗せたタックルで揺さぶりをかけてやればいいからだ。そして仮に千秋がここでターボ・ヴィランを止められなかったとしても――
「――なんだありゃあ!?」
ヴィランの叫び声。熾烈な位置争いをするターボ・ヴィランと千秋の前に姿を現すのは、路面の横幅に間断なく置かれた無数の置き石だ。しかも、単なる置き石ではなくそのサイズは1つ1つが人間大の超巨大なもの。
「ブレーキは、使わせない――そのまま突っ込め! 鬼ごっこはこれで終わりよ!」
そして、そこへ突進する形となるターボ・ヴィランに空木の氷結術が襲いかかる。先の猟兵が行ったような路面凍結ではなく、今度は車体、車軸、車輪といった「ヴィランの身体そのもの」を凍らせにかかる容赦ない一撃。
「クソが……! でもあれくらいなぁ!」
エンジンや摩擦の熱で氷結術自体はじきに効力を失うだろうが、それは今まさに、ではない。一瞬とはいえ車体操作が不可能になったターボ・ヴィランはこれまでの加速を殺し切れず置き石に突っ込む。派手な破砕音。置き石にもターボ・ヴィランにも、その双方に無視できぬダメージ。されど、速度の暴力でもってその置き石をターボ・ヴィランが突破する。
「ハハッ、あれくらいで止まるわけが――」
「でしょうね、だからこそここに私が居るの」
「ええ、あの置き石はあくまでそちらの注意を逸らすためのものですので」
勝ち誇った表情で千秋や空木を振り返ったターボ・ヴィランの目の前をロープにつながったネットが通過。さらには耳元に囁きかける女の声。
「て、てめぇら……!」
「残念だけれど、ウィンターサイレンスの言う通り鬼ごっこはここでおしまいよ」
置き石に突っ込んだせいでやや勢いを失ったターボ・ヴィランの車体を真正面から受け止めたのはアテナだ。全身に熱を纏い、アスファルトに力強く踏ん張りながらアテナは確かにヴィランを受け止めていた。それをサポートするのは投げ縄の要領でヴィランに制動ネットをひっかけた銀花だ。
「これ以上、動けると思わないことです――仮に1回でもエンジンを噴かしたら、タイヤを斬ります」
「はっ、やれるものならやって――」
「やってみるのも結構。賑やかなのはよろしいが、もう少し大人しくしてくれてもいいんじゃないかな? 君のお守にそこまで手間をかけてる暇は無くてね」
アテナと銀花が最後通告をし、それでもなお逃げる気マンマンのヴィランに対してついにスカルが動く。
「足止めに感謝するよ、皆――さすがにあの速度だと、一瞬で効果範囲の外側に逃げられてしまうからね」
「スカした骸骨が、何を言ってやがる!?」
「何、ちょっとした授業だよ、君――宇宙の神秘というやつを間近に見せてあげよう」
スカルがパチンと指をならせば、ターボ・ヴィランの上空に漆黒の球体が現れる。周囲の光景を奇妙に曲げるそれは、ユーベルコードにより表出したブラックホール。アテナや銀花、そして追いついた千秋がターボ・ヴィランの身体が浮きすぎないように抑えにかかるが、それでもじわじわと吸い上げていくほどに強力な吸引力を持った特異点だ。
「さて、問題だ。ここで君の車体を彼らが手放すともれなく前人未到、生命体の体験したことのない旅へ送り出すことができるのだが――大人しく投降するかい? 答えは2択、イエスか、ノーかだ」
どこか楽しんでいる口調でそう問いかけるスカルに、ターボ・ヴィランだけでなくその車体を抑えている猟兵たちもやや顔を引きつらせる。ユーベルコードの力で再現されているとはいえ、ブラックホールの持つ特異点としての力は本物だ――そこに生命体が呑みこまれた場合にどうなるのかを想像してしまったのだろう。
「……と、投降で宜しく頼みますぜ、旦那」
「よろしい。賢明な選択に拍手を――さて、ここからは交渉の時間だ」
スカルの指鳴りひとつで、今度はブラックホールが消失する。
「此方の世界でも司法取引とやらは有効らしい――こちらがベットするのは君の命。君に差し出してもらうのは、情報だ」
有無を言わさぬ髑髏の声音に、ターボ・ヴィランはついに戦意を喪失して唯唯諾諾と猟兵たちに従った。
大成功
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第3章 ボス戦
『ドクター・サイコ』
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POW : マッドネス・フュージョン
無機物と合体し、自身の身長の2倍のロボに変形する。特に【自分の発明した犯罪機械】と合体した時に最大の効果を発揮する。
SPD : サイコ・ギロチン
【自動で対象を追う13個の空飛ぶギロチン刃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : クリミナル・エクスペリエンス
自身からレベルm半径内の無機物を【犯罪用の発明品】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
👑11
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●ターボ・ヴィランに曰く
なんで銀行強盗なんてしたんだって?
そりゃあ、金が無いからに決まってるだろう。車と合体して、そいつの性能を引き出すのが俺の能力なんだが――まぁ、車体の中は俺の思う通り。タクシーやるにも運送業やるにも、いつでも客の荷物に手を伸ばせちまうような能力の持ち主がマトモな就職ができるわけねえだろう?
で、何が知りたいんだよ、あんたらは。
……ドクター?
ああ、あの変人のことか。
ある日突然だよ。俺のところに手紙が届いてな。力が欲しければ、指定された日時に、指定された場所に来いってな。そしたら、力をやろうって。
代償は世間を騒がすこと。それだけでも変わった奴だってわかるだろう?
……その場所はどこだったって?
ああ、詳しい住所までは覚えてないが、おおまかな場所なら地図で示せるぜ?
●ヴィランに力与えしオブリビオン
「ふむぅ、やはり即物的な欲を持つ者に力を与えても精々がこれくらい、か」
猟兵たちがヴィランを捉えるのをテレビで見ていた老人はそう言って落胆したような声を漏らした。
「さてさて、彼らが捕まってしまっては、ワシのもとに辿りつくのも時間の問題ですな」
よっこいしょ、と声を出しながら椅子から立ち上がる老人。裾の汚れた白衣に、被ったシルクハットにはポップコーン入り。怪しげな機械をちょいちょいと弄って片手に持つその姿は、現代に蘇った奇怪な犯罪王。暗いその部屋の扉を開けたオブリビオンは、予想よりも早い展開に眉根を上げた。
「――おや、ワシの行動は少々遅かったですかな?」
オブリビオンが開けた扉の向こうは、荒廃したスラムの広場。そこにグリモア猟兵が開いた転移ゲートが待ち受けていたのだ。
弥久・銀花
どんな車とでも合体できるのでしたらヒーローの使うばかげたオーバースペックの車両のテスターとかになったり、そんな車を使ってヒーローとか災害救助とかの職に就けば良かったのに……。
さて、それはそれとして。
黒幕とご対面ですね、何を企んでいるのかは捕まえてしまえばどうでも良いのでさっさとお縄に付いて下さい。
愛刀の白嵐玉椿で峰撃ちで襲い掛かります、あの細い手足なら何処に当たっても一発で骨を折れます。
接近戦には弱そうな印象ですが油断しないで掛かります、弱点を自覚したまま放置する程頭が悪くも見えませんしね。
硬い! 金属の感触でしたね。
ならばこれはどうですか? 人狼咆哮!
リリスフィア・スターライト
他の猟兵達と協力しながら戦うよ。
とりあえずは逃げられる前に補足できたようだし、
後は全力で倒すだけみたいだね。
無機物と合体したり発明品を作ったりするみたいだけれど
天体破局による雷の嵐でまとめてショートさせて
使い物にならないようにしてあげるね。
発動するタイミングには気を付けて仲間を巻き込まず
確実にドクター・サイコを狙える時にだね。
それまでは魔力を溜めつつ剣で応戦して防御に努めるね。
「中々、凄いことが出来るようだけれど私達だって負けないよ」
「気が付いた時にはもう遅かったみたいだね」
神酒坂・恭二郎
「なぁに。こちらにゃ頼れる味方がいるんでね」
飄々と答えて刀の鍔を手に取ると。
青いフォースを輝かせ、ネビュラ着流しに早着替え。
「さて、それじゃあ還りの時間だぜ。ドクター」
愛刀の銀河一文字を抜く。
と言う訳で対戦だが難敵だ。
中々に隙の無いドクターである。
衝撃波で薙ぎ払い、受け太刀でいなし、粘り強く攻め手を探る。
ギロチン刃を結ぶ思念を感得すれば。
「せぇやぁぁぁぁっ!!」
摺り上げの一刀で蒼光一閃。
不可視の念を切り払う。
僅かでもギロチン刃の動きが乱れれば。
「成れり!」
刀を地面に突き刺し、風祓の守護明神を召喚。
正答ならば、祓いの風がギロチンを封じるだろう。
「もって3分だ。それで決めな!」
【改変連携歓迎】
胡蝶花・空木
なるほど、こうやって転移できるのは便利ね……
っと、猟兵の戦い方に感心してる場合じゃないわね
私怨で悪いけど、こうやってワケのわからない間に人に力を渡していく奴ってキライなのよ
その点、あなたは殴り飛ばして良さそうだから安心したわ。下手に正義の使命とか持ってる相手だと殴りづらいもの
……それじゃ、思い切り殴らせてもらうわ
●戦闘
スーパー・ジャスティスを使用して、高速で飛行して相手を撹乱しながら戦うわ
私に敵の目を引き付けられれば、味方が攻撃する隙を作れるしね
「大きければいいってものじゃないわよ?さあ、私の力……あなたに受け止められるかしら!?」
アテナ・カナメ
あなたが黒幕ね!老人だからって容赦はしないわよ!
【作戦】敵からの攻撃はギロチンは【見切り】で対象。ロボの攻撃は【見切り】と【怪力】で対応よ!「なるほど…あなたもロボに変形出来るってわけね!どんな大きいロボでも対処してみせるわ!」そして隙あらば【2回攻撃】のバーニングパンチを食らわせるわ!
レイチェル・ノースロップ
@SPD、真の力開放
ドーモ、ドクター・サイコ=サン。スワローテイル=です。
まずは神聖なるアイサツを交わすついでに、インローデバイスで【存在感】を与えまショウ
勿論、相手はこちらのアイサツにお構いなしにATTACKするデショウから、目にも留まらぬ【早業】で勝負をしかけマス
ホーミングするギロチンをニンジャ動体視力で華麗に【見切り】、【アゲハ・ジツ】でButterflyのように空を跳んで掻い潜って見せるワ
うまく行ったらザンテツソードでカイシャクして差し上げまショウ…ハイクを詠む準備はOK?
ふふ…スワローテイル(アゲハ蝶)の名は伊達でない事を教えてあげる…あらやだ、お姉さんちょっと地が出ちゃったカシラ?
草野・千秋
@POW
悪事を自分の力のせいにするなんて恥ずべきことだ
ありあまる力を世間のために貢献すればよかったのに
ドクター・サイコ、お前か!
ヴィランに力を与え心惑わせた!
――叩きのめしてやる、徹底的に
行くぞ!ダムナーティオー、推参!
2回攻撃、怪力、勇気、捨て身の一撃で攻撃
この僕のスキル、お前に見切れるか?
世界は違えど僕だってヒーローなんだ
あまり見くびってもらっては困る
仲間が攻撃されそうなら
盾受け、かばうでカバーリング
仲間を傷つけさせはしない、守ることも戦うこと
決めどきがあったらUCでフィニッシュ!
倒しても倒しても悪い奴らはいる
僕らの戦いはいつまで続くのか
真の姿は白髪で2Pカラーな感じ
アーサー・ツヴァイク
※アドリブ共闘大歓迎
遅れちまったが、戦線復帰だぜ!
敵のギロチン攻撃はこっちに引き付けるぜ。先ずはライドランに【騎乗】して加速。ギロチンの刃を引き付けつつ、レイシューターで撃ち落としてくぜ!
ギロチンのスピードが速い時は【フルスピード・スカイドライブ】でスピードアップだ!
どうにも撃ち落とし切れない場合は【激痛耐性】で耐え抜くぜ。1、2発は貰っても良いぜ…その分こっちの反撃も活きるってもんだ。
ギロチンを処理したらこっちの番だ! 骸の海に帰る準備は出来たか? まあ…返事は聞かねえけどな!
つーわけで新技【ブーステッド・ソニックアーム】をぶちかますぜ!
時雨・零士
ドクターとかいったか?テメェはここで終わりだ。
さぁ、おまえの罪を数えろ…!
「変身」状態で決め台詞
敵の攻撃は【見切り、第六感、残像】で回避またはギロチン等は【早業】ブラスターのバーストで迎撃。
【ダッシュ】で接近し、【グラップル、怪力、早業】による連撃で近接戦闘。状況に応じてクロスメモリで【フォームチェンジ】して各フォームの能力を行使。
フロストリヴァイアサンで敵を凍結【属性攻撃】で動きを封じたり、ストームドラグーンの雷撃でロボやギロチンを迎撃。ブレイズフェニックスの炎で空中から攻撃する等、適宜【フォームチェンジ】して戦闘。
ラストは各フォームの必殺技【捨て身、力溜め】で仕留めるぜ!
※アドリブ等歓迎
スカル・ソロモン
「いや、私達が早かっただけだ。気に病むことはない、ドクター」
そして、ああ、ヒーローズアースでならこの台詞も映えるだろう。
「さあ――ヒーロータイムだ」
まあ、人の受け売りなんだがね。
タクティカル・スパインを手に、ドクターと合体したロボと戦闘開始だ。
敵の攻撃は【吹き飛ばし】を乗せた攻撃で弾き、弾けない攻撃は【オーラ防御】で防ごう。
敵に追い詰められそうになれば【恐怖を与えて】敵の動きを鈍くする。
「――怯えたな?」
であれば、そこが隙だ。
【スカル・ブランディング】を発動し、すれ違いざまにタクティカル・スパインで敵の胴を強打する。
刻印が刻まれるとどうなるか、気になるかい?
そうだね。有り体に言えば、爆発する。
●迅速なる狩人
転移ゲートから真っ先に姿を現したのは、ドクターと並ぶとどちらも悪役に見えなくもない凶悪な面構えの猟兵であった。
「いや、私たちが早かっただけだ。気に病むことは無い、ドクター……もっとも、気に病めることのできる時間もそう与えるつもりはないがね」
「ほう――最近やけに強いヒーローがいると愚痴を言うヴィランが居ったが。なるほど、貴様らであるならば納得ですな、イェーガー」
ねじくれた骨の杖を構えドクターににじり寄るスカルと、それに対して油断することなくポップなカラーに塗られた拳銃を構えるドクター。これまでのヴィランと異なり、オブリビオンであるドクターは元より逃走する気などないようだ。
「それに、1人じゃないぜ? 頼れる味方を引きつれての参上だ。そろそろ、あの海に還る時間だぜドクター」
続いて、先鋒を取ったスカルをカバーするように複数名の猟兵を伴い恭二郎が転移を完了した。刀の鍔に手をかけながらの登場、転移ゲートから地面に着地するまでの間に蒼いオーラを伴いながら一瞬にしてスーツ姿がいつものネビュラ着流しへと姿を変える。
「力を与え心を惑わせるドクター、徹底的に叩かせて貰う!」
「市民をそそのかした罪、とくと数え購うがいい、ドクター!」
そして恭二郎の左右に付くのは、着地と共に変身シークエンスを完了させる千秋と零士である。ヒーローとしての彼らの名、ダムナーティオーとデオルムを高らかに告げる機械音声が空き地に響き渡る。
「――いやぁ、真に賑やかなことで。正義の大多数と悪の少数……ここでワシが逆転させできれば世間は大荒れでしょうなぁ」
「「「「やれるもんなら――」」」」
語尾は様々。ドクターのあからさまな挑発をトリガーにして、迅速なる猟兵たちのオブリビオン狩りがスタートした。
●犯罪発明博覧会
「クリミナル・エクスペリエンス、ナンバー87……サイコキネティック・ギロチン。同時運用個数13個、独立制御ライン搭載でその上なんと脳波コントロールもできるッ」
続けて転移ゲートから登場しその総計が10名にもなった猟兵を前に、ドクターは早口で商品口上を述べながらその1つ1つが成人男性ほどの直径を誇る巨大な回転ギロチンを召喚する。スラム広場の周辺に積み上げられていたスクラップはその大半がドクターの犯罪発明品のようであり、13個の回転ギロチンは全てそこから飛来した。
「ドーモ、ドクター=サン。スワローテイル、デス。生憎のセールスに申し訳ないけれど、そういうアイテムを買うつもりはありまセーン!」
転移ゲートからジャンプで飛びだし、そのまま自然落下するのでなく宙を蹴ることで加速し位置エネルギーを加えた強烈なレイチェルの一撃がドクターへ迫る。目にもとまらぬ空中挙動はドクターの反応速度をはるかに超えているように思われたが――
「言ったでしょう、脳波コントロールもできると! つまり、思考を分割さえできれば13のギロチンは全てがワシの思うがままに動くのだよ」
「――ザンテツ・ソードと斬り合うとは凄まじい強度デスネー!」
機敏な反応を見せて1つのギロチンがレイチェルの攻撃を防御するべく展開された。十分な加速の加えられたレイチェルの刀とギロチンの刃がギャリギャリと音を立ててせめぎ合い……
「チィ、まだ力不足だっていうの?」
一瞬、レイチェルの顔が冷静さに染まる。ギロチンの回転に根負けしてレイチェルは空中機動――ユーベルコード、アゲハ・ジツで一時撤退。機械と人の身では、さすがに機械の耐久力に分があった。
「そっちが機械で来るのなら! みんな、あのギロチンをある程度一か所に集めて!」
「どうにか出来るっていうのかい、アレを!?」
「いくら発明が凄くっても、ね! 負けてられないでしょう?」
レイチェルの重撃が弾かれたのを見て、リリスフィアはそもそもドクターの犯罪機械に対処せねばならぬと他の猟兵に連携を呼び掛ける。どうするつもりだ、と問い返すのは銃撃で巧みにギロチンをいなすアーサー。槍とバイクのモードを巧みに使い分けながら愛機・ライドランとともにギロチンに対処しているアーサーであるが、ドクター曰く脳波コントロールされているというギロチンの動きはしつこい。セミオート状態でも各猟兵に1枚ずつは割り当てられているようで、猟兵たちは未だにドクターにまで手が回っていない状況だ。
「そうやって声に出して連携とは……それを聞いた時点で、ワシがギロチンをまとめるとでもお思いですかな?」
「違うわ、ドクター! あなたが集めるのではなく、集めざるをえない状況に持っていくのが……ヒーローよ!」
嘲るように猟兵に言葉をかけるドクターに、アテナは熱い心で叫びかえす。迫るギロチンに恐れなく立ち向かい、その上で力で無理やりギロチンを白羽取り。燃える拳と見事な見切りでそれを成し遂げ、ギロチンの回転を堪えるようにして踏みとどまり――アテナは見事に回転ギロチンをドクターへと「投げ返し」た。
「そうよ、いくら思考でコントロールできるとはいえ……私たちの速度があなたの思考速度を上回れば、確実にその瞬間は生み出せる!」
「なるほど、宜しいでしょう――ワシの発明と貴様らイェーガーの限界、どちらが先に来るか試さしていただきましょうぞ!」
黄金のオーラを纏い宙に浮いた空木が、アテナの言葉を継ぐようにして残像の残る速度で撹乱を開始する。右へ、左へ――そして天を走ったかと思えば次の瞬間には大地スレスレを滑空する。いかな高速を誇る回転ギロチンも、瞬間速度がマッハを越える空木の動きを完全に追尾し得るほどではない。
「被弾は気にしないで、ウィンターサイレンス! ――ヒーロー・ダムナーティオーは、仲間が傷付くことを決して許さない!」
さらには、千秋による適切なカバーリングが入れば空木の撹乱戦法が次第に効力を発揮しはじめる。
「――ついでにいえば、あまり彼女だけに集中しすぎないことです」
唸り声を上げながら脳を焼けつかせ猟兵たちと対していたドクターの隙を付き、一瞬のうちに銀花が肉薄する。片手には銀花の愛刀、白嵐玉椿――今回は斬撃ではなく打撃を重視して鞘に収めたまま。ドクターの細い手足を狙い骨を折りに掛る。
「むぅっ! なるほど、数の力とは個人を容易く凌駕し得る――!」
ギリギリのところでドクターはギロチンを防御の為に制御するが……それこそ銀花の第2の狙い通りであった。
「リリスフィアさん――今ですっ!」
攻撃ではなく防御に展開された故に位置を読むことができたギロチンの刃をかいくぐり、己はドクターへと肉薄。そしてリリスフィアへと声を投げれば――
「ありがとう、銀花さん! ドクター、これが、連携の力よ!」
唸る雷光、轟く疾風。リリスフィアの魔力が集積された剣を基点とし、一瞬のうちにスラム上空の天候が悪化する。呼び出されしは雷雲。大地の上にある自然界において最大・最強の出力を誇るエネルギーの迸りが「雷」としてギロチンたちを直撃。金属の導電効率の良さもあいまって、猟兵たちの攻勢連携によりある程度の密度に集められていたギロチンは互いに感電し合い、自然の暴威の前にその機能を停止した。
「防御のギロチンもありませんね、覚悟!」
「ぬぅん!?」
振り抜いた一閃。腕をクロスさせ防御するドクター。銀花の手に戻ったのは骨を砕く生々しい感触ではなく――
「……なるほど、そうやって弱点を補強しましたか!」
「御名答ですな、イェーガー――配点はワシの本気とさせていただきましょう!」
金属を強かに叩く感触。鈍い反響音を戦場に残しつつ、銀花の一撃をもバックステップの勢いに加え――ドクターの姿がスクラップの山へと埋もれた。
直後、低い地響きとともに、そのスクラップの山が立ちあがる……!
●マッドネス・フュージョン
『クリミナル・エクスペリエンス……ナンバー03改、クライムロボティクス! ワシの初期作品にして他の発明品のフィードバックにより進化し続ける最高傑作をご覧あれ!』
胴体部分の操縦ボックスに収まったドクターと、様々な犯罪機械で構成された体躯のロボットが猟兵たちを威圧するように腕を振り上げる。
「おっと、対ギロチンでは見せ場が無かったが――デカけりゃその分隙も増えるのを忘れなさんなよ、ドクター!」
ネビュラ着流しをはためかせ、振りおろされた鋼の拳を迎撃するように恭二郎の蒼い一閃が大地から昇る。刀の一閃から生み出されたエネルギー・ウェーブがロボの拳に対するカウンターとして走り……僅かな拮抗の後、一閃の消失と引き換えにどうにかロボの拳を弾き返した。
『ぬぅっ――巨躯で圧倒できるかと思いましたが、そう容易くはいかないようですな!』
「ああ、その通りだ――さっきは随分と雷にやられてたようだな。ならば、これでどうだ」
悔しげに唸るドクターに対し突撃しながらの言葉――零士の両手に握られているのは竜と雷のマークが描かれたクロスメモリというアイテム。腰のスロットにそれらを挿しかえれば「ストォーム・ドラゴンッ!」という機械音声と共に零士の装甲が一瞬にして様相を変える。
「天網恢恢疎にして漏らさず――天罰覿面、竜の裁きは雷と相場が決まってるんだぜ?」
己の倍はあるロボに臆すことなく踏み込みからの強烈な一撃。先にリリスフィアが呼びだしていた暗雲の助けも借りて、雷撃纏う拳が容赦なくロボの足を刈り取りに掛る。
「ナイスだ、零士――さぁ、機械の弱点は雷と相場が決まっているが、これで確実だ。明神への奉納、ここに成れりっ!」
『ワシの犯罪機械が――!?』
そしてその様子からドクターの弱点を認識した恭二郎は、その結果を持ってして己のユーベルコードを成就させる。大地に突き刺した刀を触媒として召喚されるは守護明神・風祓。ドクターのロボと同等のサイズを持つその存在が、大嵐の力を伴ってロボの四肢を絡め取り動きを封じていく。
「持続時間はそう長くないが――十分だよなぁ!」
「もちろんだとも、恭二郎君……さて、ドクター。君は確かに今、己の集大成である犯罪機械が完膚なきまでに破壊される『未来』を『恐れた』ね?」
タクティカル・スパインを片手にスカルがドクターのロボに歩み寄る。
「――結構。猟兵は過去の残滓を叩き、未来作る空隙を生み出すものだ。ドクター、君のその恐れは――すなわち私たちがきちんと仕事をできた証だからね」
コン、とドクター収まる操縦ボックスの前面を杖で軽く叩くスカル。ただそれだけの動作で、奇怪な紋章がロボの全身に刻まれた。
「……さて諸君。〆の一撃はお任せしたよ」
「「「「「「「「応
!」」」」」」」」
スカルがそういって振り向いた瞬間、ドクターを抑える恭二郎と刻印を刻んだスカルを除く8人の猟兵たちが一斉にユーベルコードを放ち――
『ワ、ワシの壮大なる犯罪計画がァ――!』
その攻撃を喰らったドクターのロボが派手に爆発四散した。
●ヴィランたちのその後
一連の事件を終え、オブリビオン・ヴィランの撃破により世間は僅かながら平穏を取り戻したという。
ドラッグメイカーとターボはそれぞれ、ドクターによって強化された能力の適性を鑑みた職を然るべき機関の手により斡旋され、無事社会復帰を果たしている。
新たなる世界、新たなる戦い……その第一歩は、少なくとも誰も不幸にすることなく。猟兵の「ヒーロー」としての活躍が新たに歴史に記されて終わるのであった。
大成功
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