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忘却のマグメリア

#キマイラフューチャー

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#キマイラフューチャー


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●御菓子の楽園
 ガトーショコラにミンスパイ。
 ジンジャーブレッドにスチームプティング。トライフルにローリーポーリー。
 クリームたっぷり苺のケーキに蜂蜜香るチェルシーバンズ。
 あたたかなアフターヌーンティーといっしょに、素敵な時間を過ごしましょう。
 此処は御菓子の森。
 陽の光を浴びる緑の樹々をノックすれば、ほら――いつもの騒がしさも忘れてしまうくらいの、甘やかな世界が広がってゆく。

 キマイラフューチャーの或るリゾート地のひとつ。
 お菓子の楽園『マグメリア』と名付けられたスイーツの森にて、事件は起こる。
 其処は眩い陽の光が射す穏やかな緑の森。
 この辺りをコンコンコンすると焼き菓子やケーキなどの甘味が手に入る。森の所々にはティースタンドや硝子製のポットなどの御茶セット置かれたアンティーク調のテーブルや椅子があり、好きな場所でゆったりとお茶とお菓子が楽しめる。
 そんな場所だったのだが――。
「急に怪人達がお菓子の森を占拠してしまったんです」
 グリモア猟兵のひとり、ミカゲ・フユは自分が視た光景を仲間達に語る。
 現れたのは多くの働き蜂戦闘員。
 そして、巨大な森のような形をした『森主』と呼ばれる怪人だ。
「マグメリアにいたキマイラのひとたちはすぐに逃げて被害はなかったのですが、このままだとずっとお菓子の森が危ないままです」
 だから、どうか手を貸して欲しいと告げたミカゲは詳しいことを説明していく。

●忘却との戦い
 まず森に入ると働き蜂戦闘員が襲ってくる。
 相手は数こそ多いが容易に蹴散らせる程度の戦闘力しかないので難しいことは何も考えずに思いきり戦えばいい。だが、問題は戦闘員を倒した後に出てくるであろう森主だ。
 ――森(われ)を讃えよ。森(われ)へ還れ。
「森主はそう呼び掛けてこちらを蹂躙して来ようとします。敵は僕たちを同士討ちさせるような力を持っているうえに、体力がすごく多いみたいで外側からの攻撃だけでは倒すのにかなり手こずると思います」
 正攻法で倒すことも出来るが、もうひとつ戦い方があるとミカゲは告げる。
 それは敵が扱う力を逆に利用することだ。
「森主は自分が生み出した小さな実をばらまきます。それは誘惑の香りを放っていて、実に触れた抵抗しない相手を吸い込むんです。吸い込まれた先は忘却の香りの満ちた森で……中に入ると自分が誰なのか、なんで此処にいるのかを忘れてしまうみたいです」
 だが、何とかして自分を取り戻せばいつでも外に出られる。
 そして出る前に内部から森主を攻撃すれば大打撃を与えることが出来るだろう。されど、忘却から脱却するまでが問題だとミカゲは言う。
 忘れてしまったことを思い出す。
 それは言葉にすると簡単だが、実際に行おうとするには困難だ。
 それでも、と少年は首を振る。
「何か思い出すきっかけになる大切なものを持っていくとか。誰かと一緒に忘却の森に入るとか、方法はきっとたくさんあります。だって、たとえ何もかも忘れてしまっていても大事なものが心からなくなるわけじゃないから――」
 そう告げたミカゲは傍らに佇む少女の浮遊霊に目を向け、そっと微笑んだ。

●マグメリアの過ごし方
 敵との戦い方について伝えた少年は御菓子の森について話す。
「そうだ。もし皆さんが甘いものが好きなら、無事に事件を解決した後にマグメリアで過ごすのはどうでしょうか?」
 怪人さえいなくなればどれだけ甘味を楽しんでも大丈夫。
 コンコンコンすれば洋菓子を中心にした甘いお菓子が好きなだけ楽しめる。
 ひとりで甘いもの巡りをしてもよし。知り合いを呼んでゆったりとティータイムを過ごすのもよし。春の花もちらほらと咲き始めているので散歩を楽しむのも悪くない。
 マグメリアの森はきっと穏やかな時間を過ごすのにぴったりだ。
 ミカゲは戦いの後の幸せな光景を想像して双眸を緩める。そして、仲間達へと信頼の宿った眼差しを向けた。
「それでは皆さん。この世界の平和とお菓子の森を守るために、がんばりましょう!」


犬塚ひなこ
 今回の世界は『キマイラフューチャー』
 お菓子の森を占拠した怪人たちを倒し、スイーツの森のリゾートを楽しむことが目的となります。

●第一章
 集団戦『働き蜂戦闘員』
 森を飛び交う蜂人型の敵との戦闘。力は弱いですがたくさんいます。難しいことは考えずにどんどん薙ぎ倒してください。

●第二章
 ボス戦『森主』
 生い茂る森の形をした奇妙な怪人。
 かなりタフで強敵。通常の戦い方では削り切るのにかなり時間がかかります。
 『楽園への帰還』は厄介ですが一発逆転のチャンスでもあります。
 UCで吸い込まれた先、忘却の香りの満ちた森では己が何者であるかも忘れてしまいます。ですが、何とか自分を取り戻して内部からの攻撃に成功すると大打撃を与えられます。

 内部攻撃が成功するかどうかは賭け(ダイス判定+プレイング補正)となりますが、敢えて飲み込まれる作戦を取ることもできます。
 もし自分が何もかも忘却してしまったら、どう思い出す? 何を思う? という見せ場です。思い出すまでの葛藤や大切なものに改めて気付くシーンなどを描くことが出来ますので、遠慮なくプレイングに詰め込んでください!

 また、万が一思い出すことに失敗した場合は敵が倒されるまで忘却の森に閉じ込められることになります。思い出す為のプレイングが少ないと失敗することもあります。その際は敗北シチュエーションっぽい描写となりますのでご了承ください。

●第三章
 日常『甘味巡りコンコンコン』
 イメージはイングリッシュガーデン+緑豊かな森。
 森の樹々をコンコンすると様々な甘味が出てきます。
 主に洋菓子が出てくるのでいっぱいコンコンコンして、甘い心地をお楽しみください。こんなお菓子が出てくるかも!と予想して決め打ちしてくださっても大丈夫です。また、どんなものが出てくるかお任せも可能です。

 三章だけのご参加、グループでのご訪問も大歓迎です。
 お誘い合わせの場合は迷子防止の為、お互いのIDやグループ名などを冒頭にお書き添えください。
 また、呼ばれない限りはリプレイには登場しませんが、ミカゲ・フユも興味を持っています。一人参加は寂しいけど誰かと一緒に行きたい、賑やかに過ごしたいので加わって欲しいなどのご要望があればお気軽にお声掛けください。
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第1章 集団戦 『働き蜂戦闘員』

POW   :    御槍奉公
【槍】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    飛行モード
空中をレベル回まで蹴ってジャンプできる。
WIZ   :    数で圧す
自身が戦闘で瀕死になると【さらなる増援】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。

イラスト:森乃ゴリラ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

鈴木・志乃
かなり、厄介そーじゃん?
でも……キマFで暴れてる以上
個人的に見過ごせないんだよね

さて……行きますか

一発目は【目立たない】場所から奇襲しようか
【UC発動】
【歌唱】の【衝撃波】でガンガン攻撃していこう
敵の意識も歌で【誘惑】

攻撃は光の鎖で【武器受け】からの【カウンター】狙うよ
【第六感】と動きをよく見て【見切らなきゃね】
【ダッシュ、スライディング】で回避ムーブ
ちょっと【パフォーマンス】的動きで格好つけて
敵を苛立たせてさらに動きを読みやすくしていこう

かすりそうなら【オーラ防御】でしっかり防ぐよ


……しっかし、忘却対策ねえ
めっちゃ恥ずかしい手紙持ってきたけど
これで足りるかなあ



●御菓子の森へ
 森に踏み入れば、溜め息がひとつ零れた。
「かなり、厄介そーじゃん?」
 周囲からは蜂の羽音。森の奥からは妙に巨大な存在感。鈴木・志乃(ブラック・f12101)はこの森に巣食った怪人たちを思って頭を押さえた。
 しかし、でも、と口にして顔を上げた志乃は第二の故郷とも呼べるほどに愛するキマイラフューチャーを思う。
「この世界で暴れてる以上、個人的に見過ごせないんだよね」
 木の陰に身を隠した志乃は樹々の間を飛び交う働き蜂戦闘員を見遣った。
 幸いにも敵はまだ此方に気が付いていない。
「さて……行きますか」
 自分にだけ聞こえる声で呟いた志乃は狙いを定める。一体だけ群から逸れたらしい戦闘員が自分に背後を見せた、次の瞬間。
 解き放たれたのはユーベルコード――天使の叫び。
 エンジェルシャウトとの名を持つ通り、その力はまるで空から一筋の光と共に天使が下りたかのよう。そして響き渡った声の音波は働き蜂を貫くかのように迸る。
 その衝撃によって敵は志乃に気付いた。
 瞬時に槍の切っ先を差し向けて迫る戦闘員。だが、先手を取った志乃が動く方が速い。ふたたび紡いだ声は衝撃波となって敵を穿つ。
 しかし敵も痛みに耐えながら槍を振るい返した。避けられぬと感じた志乃は腕で光の鎖を大きく引き、迫り来る刃を絡めようと狙う。
 槍と鎖が衝突する甲高い音が響いた直後、志乃は微かな痛みを覚えた。刃の切っ先が掠ったようだが、咄嗟にオーラで防御したゆえに軽傷で済んだようだ。
 そう感じると同時に志乃は地を蹴って駆ける。そして働き蜂が飛ぶ真下へとスライディングして一瞬で背後に回り込んだ。
 不意を打たれる形で狼狽えた働き蜂。その隙を逃す志乃ではない。
「さあ、これで終わりにしようか!」
 片目を瞑り、ちいさく笑ってみせた志乃は一気に攻勢に出た。次の一手が来る前に放つ素早い音の波が敵を貫く。
 羽を震わせた働き蜂戦闘員は戦う力を失い、その場に崩れ落ちた。
 一先ずはこれで一体。未だ敵は多いが、他の仲間たちと協力すれば駆除も容易なはずだ。軽く息を吐いた志乃は森主と呼ばれる怪人について思いを巡らせる。
「しっかし、忘却対策ねえ。めっちゃ恥ずかしい手紙持ってきたけど……」
 これで足りるかなあ。
 そう呟いた志乃は幾度か瞼を瞬いた後、森の奥に視線を向けた。

成功 🔵​🔵​🔴​

アウレリア・ウィスタリア
うーん、地を動く敵なら兵団で戦えるのですが、
今回は空を舞う敵なんですね
ボクの血人形は飛べはしないから
今回は【空想音盤:追憶】の花弁で切り裂きましょう

敵が空を舞うならボクも空から攻撃を仕掛けましょう
花弁の嵐となって駆け抜け、
花で切り裂ききれないのなら鞭剣を振るい、魔銃を放ち敵を屠っていきましょう

森、ですよね
ボクの故郷だと森は薄暗く危険な場所でした
木の実やキノコなどの収穫もありましたが……
ここはお菓子、お菓子の森……
ボクの故郷にもこんな森があったら素敵でしょうね

さあ、そんな素敵な森から
外敵を追い払いましょう
今のボクはそのために来ているんだから

アドリブ歓迎



●空舞う蜂と瑠璃の花
 働き蜂たちが立てる羽音は煩く、妙に耳障りだ。
 アウレリア・ウィスタリア(f00068)は緑の茂みに身を隠しながら森を我が物顔で飛ぶ戦闘員へと意識を向ける。
「うーん、地を動く敵なら兵団で戦えるのですが、今回は空を舞う敵なんですね」
 ボクの血人形は飛べはしないから、と普段の戦いで用いる血の傀儡兵団を思い、アウレリアは首を横に振った。
 敵が空を舞うならば自分も空から攻撃を仕掛けるのみ。
 黒猫の仮面の奥、琥珀色の瞳を上空に向けたアウレリアは三体の戦闘員たちを見据える。そして、狙いを定めた彼女は魔法の血糸を頭上に張り巡らせた。
 刹那、細く鋭いそれらがネモフィラの花に姿を変えた。
 ――空想音盤、追憶。
 ふわりと舞った瑠璃唐草の花弁は敵を司法から斬り裂く。
 まるでそれは花の嵐。アウレリアは地を蹴り、戸惑う戦闘員へと更なる花の舞を浴びせかけた。されど敵も黙ってはいない。
 攻撃の主がアウレリアだと気付いた彼らは羽音を響かせて迫る。
 花嵐を突破した敵の槍が此方を貫こうとするが、振るい返した鞭剣が刃を弾いた。それだけではなく、アウレリアは魔銃を撃ち放つことで反撃に入る。
 グレイプニルとヴィスカムの名を抱く得物を駆使し、彼女は三体の敵を相手取っていく。そんな中で敵を警戒するためにふと周囲の森を見渡す。
 すると、そこかしこに明るい光とやわらかな空気が満ちていることに気が付いた。
 自分の故郷の森は薄暗く危険な場所だった。木の実やキノコなどの収穫もあったが、この森は故郷とは随分と違う。
「ここはお菓子、お菓子の森……」
 ボクの故郷にもこんな森があったら素敵でしょうね、とマグメリアの心地を確かめたアウレリアは魔銃を握る手に力を込めた。
 平和な森を怪人たちに蹂躙されたままなど許してはおけない。
 だから――。
「さあ、そんな素敵な森から外敵を追い払いましょう」
 今のボクはそのために来ている。
 胸に抱く思いを強めたアウレリアはネモフィラの嵐を更に舞わせた。それによって戦闘員たちが倒れ、緑の上に伏す。
 森に咲く空色の花のいろは鮮やかに、平穏を導くために廻り巡ってゆく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エメラ・アーヴェスピア
あら、また面白い施設があるわね
キマイラさん達の為にも、無事に取り返してあげたいわ
…それじゃ、仕事を始めましょうか

…困ったわね、私の兵器だと被害が洒落にならない可能性が…
…一番楽な手段を取るとしましょうか
『出撃の時だ我が精兵達よ』
合体はさせず集団で運用、【地形を(の)利用】し魔導蒸気ライフルでハチの巣にしてあげなさい
他に同僚さんが居るなら【援護射撃】も忘れないようにしたいわね
とりあえずは前哨戦、手早く撃滅するとしましょう

※アドリブ・絡み歓迎


穂結・神楽耶
【アドリブ・連携歓迎】
…オブリビオンに「何故」を問うのは無駄であるとわかっております、ええ。
それでも思ってしまうのです。
どうして、よりにもよって、ここを狙ったのですか! ここが素敵だからですか! オブリビオンに差し上げるスイーツはございませんよ!

ともあれ、虫に対抗するのでしたら炎が適しているかと。【朱殷再燃】を起動。
炎を編んだ『オーラ防御』で攻撃を防ぎつつ、蜂たちの密集地帯を狙って『なぎ払い』ましょう。うまくいけば複数体を炎に巻き込むことが可能でしょうか。
いずれにせよ消耗戦になりそうですが…スイーツバイキングが待っているのです、ここで倒れていられません…!



●焔と銃弾
 踏み入った御菓子の森に悪しき蜂が舞う。
 エメラ・アーヴェスピア(歩く魔導蒸気兵器庫・f03904)と穂結・神楽耶(思惟の刃・f15297)は互いに背を預けあい、周囲を取り囲む働き蜂戦闘員を見据えていた。
 見た目は幼い少女だからと侮ったのか、敵がエメラを囲もうとしていたところに通り掛かった神楽耶が助太刀に訪れた――それが、今の状況だ。
 煩い羽音が響く中、エメラは軽く息を吐く。
「また面白い施設があると聞いて来たのだけど……これじゃキマイラさん達もゆっくりできないわね」
 その為にも此処を無事に取り返してあげたいと口にするエメラに焦りはない。
 神楽耶も戦闘員へと結ノ太刀を差し向け、敵意をしっかりと受け止めていた。なにゆえオブリビオンたちは此処を占拠したのか。何故、を問うのは無駄であるとわかっていたが、それでも思ってしまうことがあった。
「どうして、よりにもよって、ここを狙ったのですか! ここが素敵だからですか!」
 問う神楽耶に対して戦闘員たちは口許を賤しく緩めただけ。
 其処に理由などはなく、彼らはただ森と人々を蹂躙したいだけなのだと感じたエメラは身構える。
「……それじゃ、仕事を始めましょうか」
 そして、エメラが静かに言葉を紡いだ瞬間。
 神力を紡いだ神楽耶の周囲に炎が舞った。それは彼女が解放した朱殷再燃の力。炎に焼かれ続ける神霊と化した神楽耶は焔を操って戦闘員を穿つ。
 その間にエメラが精兵たちを呼び出した。
「――さぁ出番よ、私の勝利の為に出撃なさい」
 自分の兵器を使えば森への被害が洒落にならない可能性がある。だが、この魔導蒸気兵たちならば問題はない。
 エメラは兵に魔導蒸気ライフを構えさせた。そして敵に向けて指先を向け、戦闘員を相手取る神楽耶の援護に回るよう命じる。
「ハチの巣にしてあげなさい」
 その声に呼応する形で蒸気兵が働き蜂を次々と撃ちはじめた。
 神楽耶は援護射撃に感謝を覚えつつ槍を振るう敵と渡り合う。炎を編んだオーラをその身に纏った神楽耶は自分に敵を引きつけ、尽き放たれた槍撃を受け止めた。
「オブリビオンに差し上げるスイーツはございませんよ!」
 強く相手を睨みつけた神楽耶は新たな炎を纏いながら腕を大きく振るう。
 放たれた焔は敵を薙ぎ払うように迸り、蜂たちの羽を焦がした。其処に好機を感じ取ったエメラは魔導蒸気兵に追撃を願う。
 働き蜂たちの身が銃弾で穿たれ、次々と地に落ちていく。
 最初こそ囲まれていたが、今はもう此方の有利に事が進んでいた。だが、瀕死になった彼らは仲間を呼んだ。森の奥から現れる新手に気が付いたエメラは短く息を吐き、魔導兵たちの銃口を其方に向けさせる。
「とりあえずはまだ前哨戦よ、手早く撃滅するとしましょう」
「はい、このあとにはスイーツバイキングが待っているのです。ここで倒れていられません……!」
 しかと頷いてみせた神楽耶も身構え、炎を解き放った。
 ライフルが奏でる銃声の雨と燃える焔が迸る音が森に響く。視線を交わしあった少女たちは一片の容赦もなく敵に攻撃を向けてゆく。
 そして暫し後――少女たちがその場から去ったあと。辺りに残されたのは返り討ちに遭って倒れた蜂たちの姿だった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

愛久山・清綱
自らが何者かも忘れてしまうのか。もし、大切な記憶を持たない俺が入ったら、何もかも思い出せなくなるのだろうな……
いや、考えるのはよそう。

■戦闘
さて、蜂軍団との戦いだ。得物の刀をさっと抜き、戦闘に突入するぞ。槍や空中からの攻撃は【野生の勘】で予測しつつ、【残像】を用いた【見切り】で回避を試みる。
避けられなければ、【気合い】で耐える。

敵の集団に接近したら、蜂たちに牛の膂力を見せつけてやるか。
【怪力】と【鎧無視攻撃】を含めた【剣刃一閃】でばっさりと【なぎ払い】、蜂たちに【恐怖を与え】てみせる。

※アドリブ歓迎です



●記憶の行方
 いま、此処に巣食うのは忘却の森主。
 ひとたびそれの領域に入れば、自らが何者かも忘れてしまうという。
「もし、大切な記憶を持たない俺が入ったら……」
 何もかも思い出せなくなるのだろう。愛久山・清綱(もののふ混合童子・f16956)は浮かんだ思いを言葉にしてから、ゆっくりと顔を上げた。
「いや、考えるのはよそう。今は蜂軍団との戦いだな」
 携えた今刀の柄を握った清綱は周囲の気配を探る。
 そして、見据えた方向に幾つかの影を捉えた彼は刀を抜き放った。同時に向こうも此方を見つけたらしく、槍を構えた二体の働き蜂戦闘員が飛ぶ姿が視界に入る。
 先手を取ったのは相手の方。
 急降下からの槍突きが来ると察した清綱は素早く後方に跳んだ。一瞬後、敵が貫いたのは残像。相手に一瞬の戸惑いが生まれた隙を突き、清綱は刃を振るう。
 剣刃が標的を斬り裂き、大きな痛みを与える。
 されど敵は一体ではない。側面から回り込んできた蜂の気配を察した清綱は刃を切り返して迫る槍を受け止めた。
「……!」
 衝突から重い衝撃が響き、身体に鈍い痛みが走る。
 だが、清綱は気合いで耐えてみせた。そして敵の刃を逸らして距離をとった清綱は痛みを払うようにして首を振る。同時に牛の角が揺れた。
 まるでそれは敵への威嚇のようでもあり――。
「蜂たちよ、牛の膂力を見せてやろう」
 宣戦布告にも似た言葉を紡ぎ、清綱は強く地面を蹴りあげる。
 空を舞う敵の頭上を飛び越える勢いで跳躍した彼は狙いを定めた。其処から振り下ろされるのは持てる限りの力を込めた剣刃一閃。
 戦闘員は何とか避けようと身動ぎしたが、清綱の刃の方が速い。
 次の瞬間、蜂の羽を斬り落とされた働き蜂が地に落ちた。清綱も着地しながら残る一体に向き直り、今刀の切っ先を差し向ける。
 その所作に戦闘員は恐怖を覚えたらしく、後退りするようにじわじわと清綱との距離を取った。しかし一度対峙した以上、逃がすわけにはいかない。
 清綱はふたたび地を蹴って刀を振るいあげる。猛禽の翼が風になびいた刹那、その刃は標的の身を斬り裂き、戦う力を奪い取った。
「……こんなものか」
 そして清綱は倒れ伏した敵を見下ろしながら今刀を鞘に収める。
 其処から向かう先は森の奥。未だ見ぬ森主を思い、彼は静かに歩を進めてゆく。

成功 🔵​🔵​🔴​

マリス・ステラ
【WIZ】他の猟兵と協力して戦います

「主よ、憐れみたまえ」

『祈り』を捧げると星辰の片目に光が灯る
全身から放たれる光の『存在感』で敵を『おびき寄せ』る
光は『オーラ防御』の星の輝きと、星が煌めく『カウンター』

弓で『援護射撃』
重傷者がいれば【不思議な星】
緊急時は複数同時に使用

「灰は灰に、塵は塵に」

オブリビオンは骸の海に還します
金平糖をひとつまみ口に運んで甘味巡りに想いを馳せます
ダメージや疲労が重なるなら星枢で魔力を補給
お菓子の森は豊かな恵みを与えてくれるでしょう

それにしてもお菓子の森!

なんて甘美な、いえ、甘味な響きでしょうか!

でも、その前に森主を忘れてはいけません
油断大敵と瞳がキラリと光った


エアル・アネモス
……なるほど、蜂の子らか。
季節の理から外れてしまったものは如何ともし難いな。
本来であれば、お前たちも生を謳歌する季節であろうに。

かわいそうに、と細めた瞳に敵意はない。単純に、憐れだとしか思っていない。
春を言祝ぐ者としては、春に飛び交う蜂の生命を憐れに思う。
しかし、猟兵とはお前たちを倒すべきものなのだと聞く。
なら、今のわたしは猟兵だ。

……詮無いことだな。
【歌唱】に【呪詛】を乗せて、春の佳き日を歌おう。
声音は男とも女ともつかぬ柔らかさで、高らかに。
春がお前たちを呪おう。
生命を吹き散らす花嵐よ、死の季節よ。
働き果てた蜂の群れは地に落ち、蟻に、鳥に啄まれ、土に還る。
お前たちも、円環におかえり。

共闘歓迎



●春の詩に星のひかり
「……なるほど、蜂の子らか」
 遠くから聞こえる羽音に耳を澄ませ、エアル・アネモス(春風・f16808)はちいさく呟いた。季節の理から外れてしまったものは如何ともし難い。そう考えたエアルは近付いてくる働き蜂戦闘員の姿を見据える。
「本来であれば――いや、ただの蜂ならばお前たちも生を謳歌する季節であろうに」
 されど相手は怪人の手下であり、オブリビオン。
 元より理の埒外にあるものだ。
 エアルが傍らに目を向けるとマリス・ステラ(星を宿す者・f03202)が静かに身構えた。ふたりは森に入った場所で偶然に出会い、今はこうして共に此処にいる。
 此度の敵は数が多いと聞いていた。ゆえに戦うならば共闘関係を結ぶ方が良いと考えてのこと。
 そして、マリスは両手を重ねて祈りを捧げる。
「主よ、憐れみたまえ」
 星辰の片目に光が灯り、全身から放たれる光の存在感が周囲に満ちた。それは敢えて敵を誘き寄せるための行動だ。
 マリスたちの存在に否応なしに気付いた戦闘員たちが此方に飛んでくる。
 かわいそうに、とエアルが細めた瞳に敵意はない。春を言祝ぐ者として、春に飛び交う蜂の生命を憐れに思っているだけ。
 だが、猟兵とはオブリビオンを倒すべきもの。
「今のわたしは猟兵だ。ゆえに容赦はしない」
 エアルは詩を紡ぎ、其処に呪詛を乗せた。迫りくる戦闘員たちは槍を差し向けてマリスに一閃を放とうとしている。
 されどエアルの歌が一瞬だけ敵の意識を揺らがせた。
 その隙を感じ取ったマリスは星の輝きを光の盾に変え、煌めく流星めいた一閃で以て槍を弾き返す。体勢を崩した敵の背後からも新たな敵が飛んできていたが、マリスは慌てることなく星屑の弓を構えた。
 其処から放つ矢の一閃は見事に働き蜂を貫く。
 マリスが敵を引きつけてくれている間。エアルも春の佳き日を歌いあげ、敵への呪を広げていった。その声音はやわらかく、高らかに緑の森に響き渡る。
 春がお前たちを呪おう。
 生命を吹き散らす花嵐よ、死の季節よ。
 働き果てた蜂の群れは地に落ち、蟻に、鳥に啄まれ、土に還る。
「――お前たちも、円環におかえり」
 エアルがすべてを歌いあげたとき、マリスも更なる矢を解き放った。
 真っ直ぐに飛翔する矢は光を纏いながら敵を樹に縫い止めた。身動きが取れなくなった働き蜂へと弓を差し向け、マリスは願うような言葉を紡ぐ。
「灰は灰に、塵は塵に」
 そして、一瞬後。真正面から穿かれたオブリビオンは骸の海に還っていった。
 周囲の気配がすべて消えたことを確かめ、エアルは花唇を閉じる。
 やりましたね、と勝利を歓んで微笑むマリスに芽吹く翠めいた彩の瞳を向け、エアルも双眸を緩めた。そうしてマリスは金平糖をひとつまみ、口に運ぶ。
 想いを巡らせたのは甘味巡りのこと。
「それにしてもお菓子の森! なんて甘美な、いえ、甘味な響きでしょうか!」
「そうだな。しかし……」
 マリスがこの先に待つ楽しみについて口にすると、エアルは頷きながらも森の奥に視線を向けた。その意図を理解したマリスは口許を引き結び、彼と同じ方向に目を向けた。
「ええ、その前に森主を忘れてはいけません」
 油断大敵、と瞳がキラリと光る。
 ふたりが見つめる先からは大きくて奇妙な気配が漂っており、鈍い地響きめいた音も聞こえてきていた。
 この向こうに忘却の主がいる。
 次なる戦いを予感したふたりは覚悟を抱き、先を目指して歩きはじめた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

パーヴォ・シニネン
※イルカ、鯨等の海洋生物を模したマスクが子供の肉体に憑依

お菓子の楽園を独占とは
怪人達は君より随分幼いようだぞ、相棒(牛串を頬張る子供へ
猟兵として黙ってはいられないな
早速お邪魔しにいこうじゃないか

大食いでしっかり牛串を食べ終えたなら
あのブンブン煩い蜂をやっつけてしまおう

フッフー、相棒のこどもらしからぬ怪力に驚いているようだネ
更にこのナイフとフォークは、諸君を斃すこともできるのだヨ

猟兵同士の連携も忘れず
挑発でこちらへ気を惹き、味方が攻撃しやすいよう

我輩達のような小さなもの相手に
数でかかっても苦しげだネ?
諸君が我輩達を地に伏せることは不可能だとも!
(ツールを振り回し余裕綽々



●緑のいろを知る
 御菓子の森に佇むちいさな影。
 牛串を頬張る子供が見上げるのは陽光が煌めく緑の樹々。暗い目をした子供は怪人が蔓延っているこの場には似つかわしくない。だが、彼――パーヴォ・シニネン(波偲沫・f14183)がその身に憑依しているならば話は別だ。
「お菓子の楽園を独占とは怪人達は君より随分幼いようだぞ、相棒」
 瞳に森の景色を映す子供に語りかけるそれは、海洋生物を模したヒーローマスク。
 少し離れた場所からは蜂の羽音が聞こえてきている。パーヴォは子供に気をつけるよう呼び掛け、己の力を漲らせる。
「猟兵として黙ってはいられないな。早速お邪魔しにいこうじゃないか」
 パーヴォの言葉に子供が頷く様子を見せる。
 そして、相棒がしっかりと牛串を食べ終わったことを確認したパーヴォは前方に意識を向けた。見据える先からは働き蜂戦闘員が迫ってきている。
 数は二体。それくらいならば平気だろうと踏んだ彼、もとい子供は地を蹴った。
 あのブンブン煩い蜂をやっつけてしまわねば先には進めない。
 この向こうにはもっと危うい怪人がいるのだ。行くヨ、とパーヴォが敵を示せば子供が大きく腕を振るう。其処から繰り出されるフォークの一閃は鋭く、幼子とは思えぬほどの怪力で以て敵を貫いた。
「フッフー、相棒のこどもらしからぬ力に驚いているようだネ」
 パーヴォの読み通り、戦闘員は此方を舐めてかかっていたようだ。
 先程の勢いで槍を取り落としてしまった敵は焦りを覚えている。その隙を逃さないパーヴォではない。
「更にこのナイフとフォークは、諸君を斃すこともできるのだヨ」
 そう告げた彼は敵が槍を拾い上げる前にナイフを振るい、一気に薙いだ。弾き飛ばされた働き蜂が樹に叩きつけられると同時にもう一体の敵が槍を振り下ろしに迫る。
 だが、パーヴォはもう片手のフォークで槍を受け止めた。
 彼自身が子供に与える力に加え、肉を食べたことによって戦う力が増幅している。今の彼らにとって末端であろう戦闘員など敵ではない。
「我輩達のような小さなもの相手に数でかかっても苦しげだネ?」
 大胆不敵かつ余裕のある物言いで敵に問うパーヴォ。彼が少し笑ったような雰囲気が感じられた、次の瞬間。
「諸君が我輩達を地に伏せることは不可能だとも!」
 両手のグルメツールを振り回した彼は二体の敵をひといきに薙ぎ倒した。
 こんなものか、と呟いた彼は森の奥に目を向ける。
 この調子ならば進むのは問題ないだろう。今回の相棒と共に戦い抜くことを心に決め、パーヴォは先を目指してゆく。

成功 🔵​🔵​🔴​

オブシダン・ソード
アメリア(f01896)と

はいはい、それじゃ甘いもの目指して頑張ろう
森に蜂というと微笑ましい感じだけど怪人となるとね
…あれの集めた蜜とか食べたい?本気?

器物の剣を手に前衛として戦闘
槍を捌きながらざくざく斬っていこう
燃え移らないよう控えめにしつつ、炎の魔法で範囲攻撃もするよ
後ろに行きそうなやつが居たら庇うくらいはしてあげる

…え、仲間呼ぶの?
やめてよ終わらないじゃない、僕は先に進みたいんだけど…

は?
待ってアメリア、それ僕までやばくない?
UC発動に合わせてただの剣に戻っておくね
大丈夫、この剣は凍ったくらいで……

うわ、さっぶ

エンチャントじゃなくて凍り付いてるんですけど?
…しょうがないなぁ!


アメリア・イアハッター
ダンダン(f00250)と

ハニースイーツいっぱい食べたい!
早く解決して甘いもの楽しみましょ!
…あの怪人の巣から蜂蜜取れたりとかは…しない?

敵が少ないうちはダンダンの後ろにつき、背後や上からくる敵を殴って蹴って進んでいく
前はお任せ
きっとなんとかしてくれるよね

えー、なんか増えてない?
ダンダン、その火でおびき寄せたりしてない?
これはもう、しょーがないよね
全部まとめて叩き落としちゃおうか!

ダンダンが頑張ってる隙にUC【フリージングデス】発動
周囲の敵をまとめて凍らせる
ダンダンなら私より暖かそうな格好してるし、きっと大丈夫でしょ…あ、剣になってる!

…氷エンチャントの剣ってのもありだね?
ほら、残りを倒すよ!



●剣炎と氷撃
「ハニースイーツいっぱい食べたい!」
 森に着くや否や、アメリア・イアハッター(想空流・f01896)は瞳を輝かせた。
 淡く射し込む陽光。見渡す限りの緑の樹々。
 樹をノックすれば甘いお菓子が食べられると聞いて、アメリアの心は躍っている。早く解決して甘いもの楽しみましょ、と気合を入れる彼女の傍ら、オブシダン・ソード(黒耀石の剣・f00250)は周囲の気配を探っていた。
「はいはい、それじゃ甘いもの目指して頑張ろう」
 すぐに御菓子の森を楽しめれば良いのだが、今この場所は怪人たちが巣食う危険な森と化している。森に蜂というと微笑ましく感じるが、怪人となると相容れない。
 先ずは尖兵退治だとしてオブシダンが警戒を強めていると、アメリアがマントを軽く引っ張り、見て、と前方を示した。
「ねえ、ダンダン。あの怪人の巣から蜂蜜取れたりとかは……しない?」
「あれの集めた蜜とか食べたい? 本気?」
 木々の間から姿を現した働き蜂戦闘員に目を向け、オブシダンは肩を竦める。
 そして、此方に敵意を見せている相手へと剣を差し向けた。前衛として彼が一歩前に出ると同時にアメリアはその後ろにつく。
 敵は数体。いくよ、と振り返らずに告げたオブシダンは振るわれる槍を刃で受け止め、一瞬で弾き返した。
 そして彼は魔力を紡ぎ、炎の矢を撃ち返してゆく。
 オブシダンの側面から敵が回り込んだことに気付いたアメリアは地面を蹴り、敵の攻撃が届く前に蹴撃で以て相手を牽制した。
「前はお任せするよ。ダンダンならきっとなんとかしてくれるよね!」
「任せてよ。何とかしなきゃ進めもしないからね」
 信頼の籠もった言葉を受け、オブシダンは魔炎を周囲に広げていく。
 だが、背後を守ってくれているアメリアに敵が向かう。さりげなく庇った彼は振るう刃で標的を斬り伏せた。
 そんな中、顔を上げたアメリアはふと首を傾げる。
「えー、なんか増えてない?」
 おそらく瀕死になった敵が新たな働き蜂戦闘員を呼び寄せたのだろう。燃える炎が伏した敵を燃やしていく様を見遣ったアメリアは冗談交じりに問いかける。
「ダンダン、その火で誘き寄せたりしてない?」
「え、そんなこと……こいつらって仲間呼ぶの? やめてよ終わらないじゃない」
 僕は先に進みたいんだけど、と新手に意識を向けたオブシダンはアメリアに視線を送った。その意図を感じ取った彼女はぐっと拳を握る。
「これはもう、しょーがないよね。全部まとめて叩き落としちゃおうか!」
「うん、それでこそ」
 アメリアが氷の魔力を紡ぎはじめる。その間にオブシダンは敵からの槍撃を捌き、彼女に攻撃が向かぬよう立ち回った。
 そして、次の瞬間。
 瞬時に周囲の働き蜂たちの身体が凍りつき――オブシダンにも鋭い衝撃が走った。
「は?」
 アメリアが魔力を開放すると同時に訪れた突然の痛み。これって無差別攻撃なんじゃ、と気付いたが痛みは消えてくれない。
「待ってアメリア、これ僕までやばくない?」
「ダンダンなら私より暖かそうな格好してるし、きっと大丈夫でしょ」
「大丈夫じゃない……!」
「あ、剣になってる!」
 二撃目を敵に叩き込もうとしている彼女に首を振るオブシダン。もう二度と喰らって堪るかと本来の姿に戻った彼はアメリアの手の中に収まった。
 これならば彼女の攻撃に巻き込まれることもあるまい。仕方ないなあ、とオブシダンを握ったアメリアは更なる力を解き放った。
「うわ、さっぶ」
 しかし剣になっても冷たい感覚は継続している。思わずそう言葉にした彼に、アメリアは軽く笑って見せ、周囲を舞う氷の魔力を示した。
「氷エンチャントの剣ってのもありだね?」
「エンチャントじゃなくて凍り付いてるんですけど?」
 対するオブシダンは不服そうだ。されどアメリアはそんなことなど少しも気にせずにどんどん増えていく働き蜂たちに目を向けた。
「ほら、残りを倒すよ!」
「……しょうがないなぁ!」
 軽口を叩き合いながらも彼女たちは次々と敵を屠っていく。
 すべてはスイーツのため――もとい、この森の平和のため。剣炎と氷撃が織り成す戦いの彩はもう暫し、この場に煌めき続けるようだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

神埜・常盤
助手のエリィさん(f11289)と

スイーツの森、夢のある響きだよねェ
獰猛な蜂などお呼びでは無いよ
さァ、駆除を始めようか!

「──おいで、九堕。
エリィさんがお前の勇姿を御所望だ」

リクエストにお応えして管狐を召喚
破魔の炎で範囲攻撃し、戦闘員達を炎に巻いて仕舞おう
今日の供物は無限に湧いて出るらしいからねェ
存分に焼き払い、喰らい尽くせ

「おや、その子には初めてお目にかかるね。
君が使役するだけあって、とても頼もしいなァ」

助手の手腕と幽鬼の活躍には惜しみない拍手を
お捻り代わりに広範囲に護符の雨を降らせ、マヒ攻撃で援護しようか
足止め位には成れば良いのだがね

「ふふ、名探偵と優秀な助手が揃えば向かう所敵無しだねェ」


エレニア・ファンタージェン
先生(f04783)と共闘

エリィ、今日は先生と一緒に遊びに来たの
色々試してみるわ
「ねえ先生、あれをお願い。エリィ、先生の式神さんが見たいわ」
先生のUCは強くて素敵なの
エリィ、大好き
先生の流れるような戦い方はもっと好きよ

「エリィも、新しい子を喚べるようになったのよ」
得意げにUCで幽鬼を召喚して敵を襲わせる
その間手持ち無沙汰だから、拷問具で手近な敵を攻撃
沢山居るから色んな道具を試してあげる
敵の増援?まだ遊べるのね
素敵!

先生が楽しそうで嬉しいわ
先生を邪魔する敵がいないか警戒するわ、第六感とかで
居たら先生には気づかれない内に幽鬼の餌よ
水をさすのは野暮だもの
「エリィったら有能な探偵助手でごめんなさいね」



●探偵と助手
 見渡した緑の森は穏やかで、樹々の合間からやわらかな光が零れ落ちていた。
 一見は平和なこの場所も今は怪人たちの手の中にある。
「スイーツの森、夢のある響きだよねェ」
 神埜・常盤(宵色ガイヤルド・f04783)は森に満ちる空気を確かめ、傍らを歩くエレニア・ファンタージェン(幻想パヴァーヌ・f11289)に語りかけた。
 今日は先生こと常盤とのお出かけの日。頷きを返したエレニアは周囲から感じる気配に意識を向ける。
 そして彼女は此方に近付いている働き蜂戦闘員たちを示して常盤に願った。
「ねえ先生、あれをお願い。エリィ、先生の式神さんが見たいわ」
 その声に応える形で常盤は竹筒を手にする。
「――おいで、九堕。エリィさんがお前の勇姿を御所望だ」
 其処から解き放たれたのは火神の加護を纏う管狐。エレニアの纏う清廉な白彩に負けずとも劣らぬ白い毛皮を翻した管狐は前方に瞳を向けた。
 その後姿を見つめたエレニアは薄く笑む。
 敵が迫りくるよりも早く、指先を宙に差し向けた彼女は得意げに告げた。
「エリィも、新しい子を喚べるようになったのよ」
 そうして召喚された幽鬼は黒く禍々しい影のようなものたち。
 常盤は眼を細め、エレニアに称賛を込めた眼差しを送る。
「おや、その子には初めてお目にかかるね。君が使役するだけあって、とても頼もしいなァ」
 そして彼は地を蹴った。それは槍を振り上げた敵からの一閃を避けるため。
 一撃目を外したことに戸惑う働き蜂。常盤は其処に生まれた一瞬の隙を狙い、管狐に炎を解き放たせた。炎は周囲に広がり、紅の彩が空中に躍る。
「獰猛な蜂などお呼びでは無いよ。さァ、駆除を始めようか!」
「エリィ、式神さん大好き。先生の流れるような戦い方はもっと好きよ」
 彼の戦闘所作への好意を言葉にしたエレニアも幽鬼たちに攻撃を願った。ぶんぶんとは音を立てる戦闘員たちに向け、怨嗟の咆哮が放たれる。
 その間にエレニアは仕込み杖をくるりと回し、適当な拷問具を取り出した。
「沢山居るから色んな道具を試してあげる」
 ちいさく口許を緩めたエレニアの言葉に慄いたのか、働き蜂たちは増援を呼ぶ。だが、常盤もエレニアは少しも慌てたりなどしない。
「今日の供物は無限に湧いて出るらしいからねェ」
 ――存分に焼き払い、喰らい尽くせ。
 常盤が九堕にそう命じると、まるで演舞のように廻る激しい炎が周囲を焦がした。エレニアも新たに現れた戦闘員を見遣り、淡く無邪気に双眸を緩める。
「敵の増援? まだ遊べるのね。素敵!」
 その反応を見たらしき働き蜂が後退った。おそらくは本能的に勝てないと感じてしまったのだろう。だが、それが分かっても容赦するようなふたりではない。
 逃げられぬと察した敵は半ば自棄になって襲いかかってくる。
 様々な拷問具が試せるのも嬉しいが、先生が楽しそうなことが何よりも嬉しい。
 沿う感じているエレニアは先生を邪魔する敵がいないか警戒を強める。彼が護符の雨を降らせれば周囲の敵は槍を振るって対抗した。
 そのうちの一体が常盤の攻撃を掻い潜って来たと察し、エレニアは幽鬼に願う。
 ――喰らって。
 その声に呼応した幽鬼が放つ影は一瞬で戦闘員を闇に包んだ。敵は倒れ、エレニアは緋色の瞳をそっと細める。
「エリィったら有能な探偵助手でごめんなさいね」
 そんな彼女の声を聞き、常盤は惜しみない拍手を送った。
 管狐と幽鬼、そして護符と拷問具の一閃。
 それらによって既に数体の敵が倒れており、後に残るのは二体のみ。護符に麻痺の力を宿らせた常盤はエレニアに視線を送り、さァ、と敵を示す。
「探偵と優秀な助手が揃えば向かう所敵無しだねェ。それじゃ、終わりにしようか」
「ええ、先生」
 彼の声に頷いたエレニアは幽鬼たちを残る敵に向かわせた。
 そして――周囲の働き蜂がすべて倒れたあと。探偵と助手は互いに視線を交わしあい、木漏れ陽と風が示す森の奥へと歩を進めた。
 この向こうに何が待っていようとも、きっとふたりならば大丈夫。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

戒道・蔵乃祐
月夜さん(f01605)と参加しています

ええい、傍迷惑な怪人ですね。ブンブンとうるさいですよ!
数だけは多いと見えます。何処かに女王蜂的存在が居るのかもしれませんが

先ずはスイーツを守るのですよ!独り占めして奪えるだけ奪った後で壊すなり何なりするんでしょう!僕にはお見通しですよ!!!!奪わせない甘い一時スイーーーツ・バイキング!!


『他心智證通』で働き蜂の心を覗き見、槍の軌道を見切りながらカウンターで返り討ちにします

オーラ防御、武器受けでフォースオーラを纏い。槍を手刀とグラップルで捌きながら、咄嗟の一撃・早業・先制攻撃で意表を突く

シールドバッシュ・マヒ、気絶攻撃・武器落としで攻撃力を削いでいきます


月夜・玲
【戒道・蔵乃祐 f09466】
戒道さんと同行

甘味の楽園を占拠するなんて、酷い連中だね
まったく羨ま…けしからんね
けどコンコンしてお菓子が出て来るなんて、不思議な場所
キマイラフューチャーって変わった世界だよね
あ、そうだ
終わった後での甘味巡り、楽しみだね?
戒道さんは洋菓子も好きなの?

●戦闘
『忍び足』で足音を消しながら素早く接敵するよ
空の記憶とKey of Chaosを抜刀して、刀身にエネルギーをチャージ
【エナジー開放】を使用するよ
まずは一撃、飛ぶ敵に目掛けてエネルギーを放出して撃ち落とし
落ちてきた敵に対して『2回攻撃』で追撃
『第六感』頼りながら攻撃は基本回避!

残った敵は任せたよ!

●アドリブ等歓迎



●仁義なきスイーツバトル
 羽音が響き、鋭い槍が迫る。
 御菓子の森に踏み入った戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)と月夜・玲(頂の探究者・f01605)のふたりを待ち受けていたのは手荒い歓迎だった。
「ええい、傍迷惑な怪人ですね。ブンブンとうるさいですよ!」
 襲いかかってくる働き蜂戦闘員たちを相手に立ち回る蔵乃祐は大きく地面を蹴った。一瞬遅れて槍の切っ先は蔵乃祐が立っていた場所に振り下ろされ、空を切る。
 其処に生まれた隙を利用して玲は抜刀した。
 空の記憶、そして混沌の鍵の名を冠する兵器に力を込め、おもいきり振るった玲。その一閃は見る間に戦闘員の一体を地に伏せさせる。
「甘味の楽園を占拠するなんて、酷い連中だね。まったく羨ま……けしからんね」
 言いかけた言葉を飲み込みながら、玲は新たな敵に目を向けた。
 最初に襲ってきた者たちは三体。
 既に倒れた敵は意識を失う間際に拙いと感じたらしく仲間を呼んでいた。そして増援が訪れるまでの時間稼ぎとして、二体が蔵乃祐に向けて同時攻撃を仕掛けてきた。
 だが、その一閃は大連珠で受け止められる。
「数だけは多いと見えます。何処かに女王蜂的存在が居るのかもしれませんが」
 おそらく今回、その存在はグリモアに予知された森主なのだろう。
 親玉に辿り着く為には尖兵たる戦闘員を倒さねばならない――のだが、蔵乃祐が巡らせた思考はそれよりも大切なこと。
「先ずはスイーツを守るのですよ! 独り占めして奪えるだけ奪った後で壊すなり何なりするんでしょう! 僕にはお見通しですよ!!!!」
 奪わせない、甘い一時。
 スイーーーツ・バイキング!!
 高らかに声にされた蔵乃祐の思いを聞き、玲は薄い笑みを浮かべた。
 終わった後の甘味巡りを楽しみにするのは自分も同じ。彼の熱く強い思いに応えるべく、玲はふたたび刀身に力を宿していく。
 その間に蔵乃祐は迫り来る敵の心の内を読み、槍撃を次々と回避した。
 更に攻撃が来ようとも手刀で捌き、力強い一撃で以て反撃に移る。蔵乃祐の見事な戦い方に双眸を細めた玲は刃を横薙ぎに振るった。
 高威力の一閃が働き蜂戦闘員を斬り裂き、戦う力を奪う。
 新たな敵がその場に到着するよりも先に戦闘員を倒した玲たちは身構え直す。
 そして、樹々の影から二体の新手が姿を現した瞬間。
「先手必勝っていうからね」
「スイーツの為の犠牲になってもらいます!」
 玲と蔵乃祐は敵が攻撃動作に入るよりも早く、全力を込めた一撃を振るった。
「先ず一体! 残った敵は任せたよ!」
 敵を斬り伏せた玲は蔵乃祐に願う。刹那、敵の腹に拳が減り込んだ。
 哀れ、増援兵は何も行うことなく沈んだ。
 玲は周囲の気配を探り、蔵乃祐も辺りを見渡す。敵の気配は感じられず、どうやらこれ以上の増援は訪れないようだ。
 武器を下ろした玲は樹々を改めて見つめ、そっと触れる。
「けどコンコンしてお菓子が出て来るなんて、不思議な場所」
 此処って変わった世界だよね、と玲が口にすると蔵乃祐は深く頷いた。
「そういった世界だということですね。有り難いことです」
 其処にしみじみとした感情が込められている気がして玲は問いかけてみる。
「甘味巡り、楽しみだね? 戒道さんは洋菓子も好きなの?」
「そうですね、甘いものは至高とも言いますから」
 だからこそ幸せに繋がる一時を怪人たちに蹂躙させたくはない。
 森の奥を見据えた蔵乃祐の眼差しは真剣そのもの。玲は甘味が出てくるという樹をノックしかけたが、敢えてその手を止めた。
 楽しむならば後顧の憂いをすべて断った後が良い。
 そのためにもまだまだ頑張らなければならぬと感じ、玲たちは先を急いだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シャルロット・クリスティア
現場は既に相手の勢力圏……。
前もってトラッピング、とは行きませんね……仕方ありません。正攻法で狩りに行きましょう。

森の中の移動は慣れたものです。物音を立てないよう、【目立たない】ように隠れ身の外套を纏いつつ移動。
銃だと音で警戒されるでしょうし、パラライズナイフの【投擲】で仕掛けます。
【早業】で手早く【マヒ】させて、目に入る相手の動きを封じたところで、レイピアで急所を一突き。
近くに味方がいるならトドメはお任せしてもいいですね。
……悪く思わないでくださいね。

一通り仕留めたらまた外套を纏い移動。基本はその繰り返しですね。
着実に片づけて行きましょう。


ティエル・ティエリエル
「ハチミツを集めてくれる蜂さんはよい蜂さん、襲い掛かってくる蜂さんは悪い蜂さんだよ☆」
これが終われば美味しいお菓子が食べれると聞いてやる気満タン!悪い蜂さんをやっつけるぞ!

戦闘では得意の【SPD】を活かした戦い方をするよ!
背中の翅で飛び回りながら働き蜂戦闘員と【空中戦】を繰り広げるよ!
【スカイステッパー】の空中ジャンプを交えた【フェイント】で蜂さんを翻弄するね♪
敵の攻撃は【見切り】で回避して、そのまま【カウンター】でレイピアによる刺突をお見舞いだー!

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です



●レイピアの煌めき
 耳に届いたのは蜂の羽音。
 御菓子の森、この場は既に相手の勢力圏。
「前もってトラッピング、とは行きませんね……仕方ありません」
 隠れ身の外套に身を包んだシャルロット・クリスティア(ファントム・バレット・f00330)は息を潜め、木の陰から森の奥を見遣った。
 その視線の先には屯する働き蜂たちの姿がある。そして、シャルロットが纏う外套の胸元辺りにはティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)が潜んでいた。
「わあ、いっぱいいるね」
 森の入口で偶然に出会ったふたりはいま、行動を共にしている。
 ティエルはシャルロットに隠して貰いつつ森を此処まで抜けてきた。上手く行けば森主がいる場まで見つからずにいけたのだろうが、ある程度進んできたところで見えたのは大量の働き蜂軍団。
 もし移動中に気配を察知されてしまったら大変なことになる。
「正攻法で狩りに行きましょう」
「うん! ハチミツを集めてくれる蜂さんはよい蜂さん。だけど襲い掛かってくる蜂さんは悪い蜂さんだよ☆」
 シャルロットの呼び掛けに頷いたティエルは戦いへの思いを強めた。
 そして、ふたりは木の陰から飛び出す。
 先ずは不意打ちからの先手。シャルロットはナイフを投擲した。同時にティエルが手近な戦闘員へと突撃する。
 停滞のルーンを刻み込み、更に麻痺毒が塗られた刃が敵に突き刺さった。
 ティエルは其処に生まれた隙を逃さず、刺突剣で急所を一気に貫く。
「これが終われば美味しいお菓子が食べれるからね!」
 そう聞いているのだからやる気は満タン。悪い蜂さんをやっつけるぞ、と意気込むティエルの翅が愛らしく揺れる。
 偶然にも同じレイピア使い同士。
 彼女とならばうまく連携が取れると感じたシャルロットは更にナイフを投げ、周囲の敵の動きを鈍らせていった。
 ティエルは得意の素早さを活かした動きで以て敵の合間を掻い潜る。
 振るわれる槍をひらりと躱してから戦闘員の眼前まで迫り、えいっとレイピアの刺突攻撃を見舞うティエル。
 その所作はまるで華麗に舞う蝶々のよう。
 危うく敵の槍が掠りそうになれば空中ジャンプで見事に避けた。ちいさくとも前線で戦うティエルの補助になれるよう、シャルロットもオースレイピアを振るった。
 破邪の誓いを込めた白銀の刺突剣が陽光を反射する。
 刹那、シャルロットを狙って急降下してきた働き蜂が地面に落ちた。しかし敵はティエルを追いきれないと判断したのか、先ずはシャルロットを倒す作戦に切り替えたようだ。
「わっ、大丈夫?」
「遅れは取りません。そちらはお願いします」
 集中攻撃がシャルロットに向かっていると気付いたティエルは心配の声をあげる。だが、彼女は平気だと首を振って答える。
「わかったよ。じゃあ、こっちからもすごいのをお見舞いだー!」
 信頼を抱いたティエルは風鳴りの剣を構え直す。
 そのとき、森に吹いた風が刃を撫でた。同時にティエルが刺突剣を振るうと、透き通った風の音色が辺りに響く。
 その音を聞いたシャルロットも目の前の敵の急所を貫いた。
 そして、暫し後。
 ひらりと舞ったティエルはシャルロットの肩に乗り、辺りを見回す。周囲には完膚なきまでに倒された働き蜂たちが転がっていた。
「ボクたちにかかれば、こんな敵なんてこてんぱんだよ!」
「はい、無事に切り抜けられましたね」
 胸を張った妖精の少女にそっと頷き、シャルロットは緩く双眸を緩めた。
 そして、ふたりは森の奥を見つめる。
 この先に忘却の力を持つ森の主がいるはず。妙な空気と重い気配を感じながら、彼女達は進んでゆく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

パーム・アンテルシオ
忘れたことを、思い出す方法。
ふふふ、大丈夫。ちゃんと、事前に準備してきたよ。
じゃん。手のひらに書いてきたんだ。これなら、きっと思い出せるよね?

…と、そうだった。まずは、この子たちの相手をしないといけないんだった。
ふふふ。数だけが多い相手との戦いは、得意分野だよ。
数には数をぶつければいい。だよね?

ユーベルコード…極楽鳥火。
さぁみんな、ごはんの時間だよ。
獲物はたくさんいる。好きに焼いて、裂いて、喰らうといい。
どんなにお腹が空いてても、相手もたくさん増えていく。
さぁさぁ、急いで。食べ尽くすまでは、ごはんの時間は終わらないよ?

ふふふ。私のご飯の時間は、全部終わった後だよね。
楽しみだなぁ、スイーツの森。


狼谷・賢太郎
お菓子の甘い匂いにつられて――ってわけじゃねーんだろうけど、マジでいっぱいいんなぁ。何のために、どっから出てきたんだか
……ま、難しい事考えんのは無しだな。とにかく今は怪人をぶっ倒して森を取り返す、そんだけだ!

ユーベルコードを使って最初っから全力で行くぜ!
これ使いすぎっと頭痛くなるけど、後で糖分補給できるだろーしな。食前の運動?ってやつだ
強化した技能でヴァナルガンドからマシンガンみたいに色んな属性魔法を撃ち出して、わらわら出てくる怪人を圧倒してやるぜ! 空飛んでたら撃ち落とす!
なんか強そうな個体とかいたら、【全力魔法】でぶっ飛ばす!
っと、やりすぎで森に火とかつけて燃やさねーように気をつけねーとな



●狼と狐
 勿忘草の花が風に揺れ、森がざわめく。
 この場所の奥には忘却の力を持つもの――森主が巣食っているという。
「忘れたことを、思い出す方法か。ふふふ、大丈夫」
 パーム・アンテルシオ(写し世・f06758)は周囲を見渡しながら、森主と戦うために必要なことを思い返す。
 ちゃんと事前に準備してきたのだとして見下ろしたのは自分の手のひら。
「これなら、きっと思い出せるよね?」
 自分に言い聞かせるように掌を握ったパームは顔を上げる。同時に聞こえたのは鈍い音。それが蜂の羽音だと気付いたパームは、そうだった、と気を引き締めた。
「まずは、この子たちの相手をしないといけないんだった」
 パームの行く先を塞ぐように布陣していたのは働き蜂戦闘員たち。
 ざっと見て六体はいるだろうか。
 敵は最初から此方を狙っていたらしく、あっという間にパームを取り囲んだ。そして先手を取った働き蜂が一斉に彼女を攻撃しようとした、そのとき――。
「卑怯なことはさせねーぜ!」
 少年の声が響き渡り、炎を纏った魔力の刃が敵を次々と貫いた。
 体勢を崩した働き蜂戦闘員の間に割り込み、パームの隣に布陣したのは狼谷・賢太郎(イマチュアエレメントマスター・f09066)だ。
「大丈夫か? 通り掛かったら囲まれてるのが見えたからさ」
「うん、平気だよ。お陰さまでね」
 少年の問いかけにパームは頷き、助かったよ、と答える。
 自分とて多数との戦いは得意だが、先程の攻撃を無傷で躱せたかと問われれば難しいと答えるしかなかった。だからこそ賢太郎の助太刀は有り難い。
 そっか、と安堵を抱いた賢太郎は狼の尾をぴんと立て、敵を睨みつけた。
「お菓子の甘い匂いにつられて――ってわけじゃねーんだろうけど、マジでいっぱいいんなぁ。何のために、どっから出てきたんだか」
「どうなんだろう。分かってるのは……倒さなきゃいけないってことだね」
 賢太郎の声にそう答えたパームは力を紡ぐ。
 体勢を立て直した敵が迫るよりも早く、パームは炎の鳥を召喚した。
 ――陽の下、火の下、燃える羽音を響かせよう。
「さぁみんな、ごはんの時間だよ」
 獲物はたくさんいるから好きに焼いて、裂いて、喰らうといい。パームがそう告げると火の鳥は羽撃く。
 敵が振るった槍に突撃する形でそれらは舞い、焔の軌跡を描いた。
 其処へ更に賢太郎が魔力を重ねる。
「……ま、難しい事考えんのは無しだな。とにかく今は怪人をぶっ倒して森を取り返す、そんだけだ!」
 火の精霊が宿る杖、ヴァナルガンドを掲げた賢太郎は一気に力を解放した。
 全力を紡げば頭が痛くなるが、きっと後で糖分も補給できる。何故なら此処は御菓子の森と呼ばれているのだ。
 食前の運動ってやつかな、と口にした賢太郎。彼の魔力はパームが飛ばす極楽鳥火の軌跡と混じりあい、敵を貫いてゆく。
 炎は紅く燃え上がり次々と敵を地に落とす。
 だが、倒れる寸前に戦闘員達は増援を呼んだらしい。木々の影から新手が現れたと察したパームは其方に目を向けた。
「数には数をぶつければいい。だよね?」
 賢太郎に、そして極楽鳥たちに問いかけたパームは狐の尾をふわりと揺らす。
 どんなにお腹が空いてても、相手もたくさん増えていく。
 さぁさぁ、急いで。食べ尽くすまでは、ごはんの時間は終わらない。
 何処か楽しげにそう語るパームの声に呼応した火の鳥は華麗に舞った。賢太郎もヴァナルガンドの杖先を敵に向け、まるで機関銃の如き属性の連弾を解き放つ。
 いつしかふたりはその背を守りあうようにして、背中合わせで戦っていた。
 揺れる狐と狼の尾。どうしてかどうあっても負ける気がしない。
「どれだけ来たってオレたちの敵じゃないぜ!」
「ふふふ。たくさん食べて、喰らい尽くしてね」
 魔力で敵を穿つ賢太郎の瞳は真っ直ぐで、パームの声色も心なしか弾んでいた。
 そうして、少年と少女の力によって働き蜂がすべて地に落ちる。
 これで邪魔な蜂たちは粗方排除できただろう。ふっと息を吐いた賢太郎はパームに笑みを向け、森の奥を示した。
「さて、後は森主ってやつのところに行くだけだな!」
「私たちのご飯の時間は、全部終わった後だよね。楽しみだなぁ、スイーツの森」
 うん、と答えたパームは示された先へと歩を進める。
 せっかくだから一緒に行こうと誘う少女に続く少年。そんなふたりの後ろ姿を、森に咲く勿忘草の花が見送っていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

クラウン・メリー
蜂さんはこのあまぁい森の香りに
釣られて来たのかなっ?

俺も甘いの大好きだから
気持ちわかるな!

さぁ、一気に倒しちゃうよ!

ぱちんと指を鳴らせば、あら不思議!
あまぁい香りのフリチラリアが沢山!
翼で風を起こして、視界を塞ぐよ!
蜂さん蜜好きだし、きっと俺の事より
そっちに向かうよね!

蜂さん達がよそ見してるところに、
【鎧も砕い】ちゃう大玉を
自由自在に回してアタックだ!

ラストは火の輪を素手でくるくる回して、蜂さんに向かって投げるよ!
ちょっと熱いかもだけど我慢してね!
俺もちょっと熱い!!

俺の芸どうだった?

アレンジ歓迎


海月・びいどろ
あまい匂いに誘われて
働き蜂たちも、やってきてしまったの…?
花とお菓子は、どちらが好き、かな

機械の海月たちを泳がせて
数には数、というやつ、だね
蜂の毒針と、海月の麻痺と
くらべっこ、してみようか

海月たちに迷彩をまとわせたら
フェイントを仕掛けつつ
目立たないように、囲い込んで
、こっそりと
見つかってしまったら、捨て身の一撃を

ボクは正面から、おびき寄せるよ
硝子の鏃の弓矢を引いて
しっかりと、狙い定めてスナイパー
…に、見せかけて、範囲攻撃で星を降らせるよ

囮として、時間稼ぎをしたら
現れた海月たちに、お願い
働きすぎては毒だから、蜂の彼らに
痺れるほどの抱擁を、ぎゅっと、ね

我をも忘れる甘さとは
どんな香りが、するのだろう



●甘い香りに誘われて
 風に揺れる翠の樹々を振り仰ぐ。
 御菓子の森と呼ばれるこの場所で、ふと浮かんだのは或る思いとちいさな疑問。
「蜂さんはこのあまぁい森の香りに釣られて来たのかなっ?」
「働き蜂たちも、甘いものに惹かれてやってきてしまったの……?」
 自分の声に重なるようにして誰かの声が聞こえた。
 しかも両者はどうやら同じ疑問を言葉にしたらしい。
 クラウン・メリー(愉快なピエロ・f03642)と海月・びいどろ(ほしづくよ・f11200)は傍として、樹を見上げていた視線を隣に向ける。
「びいどろ!」
「クラウン?」
 聞き覚えのある声だと思えば、よく知った相手だった。そのことに驚いて少年達は瞼を幾度か瞬いた。そして、すぐにおかしくてくすぐったいような気持ちを覚える。
 お互いが此処に何をしに訪れたのかなんて聞かなくたって分かった。だって、きっと目的も思いも同じだから。
「俺も甘いの大好きだから気持ちわかるな!」
「蜂たちは、花とお菓子は、どちらが好き、かな」
 穏やかに視線を交わしあったクラウンとびいどろは、いっしょにいこう、と告げあってそっと頷きあった。そして、怪人と森主が巣食っているという森に踏み入る。
 其処から暫く進んだ先。
 ぶんぶんと羽音が聞こえたかと思うと、周囲に数体の働き蜂戦闘員が現れた。
「さぁ、一気に倒しちゃうよ!」
「海月たち、おいで」
 クラウンの呼び掛けに答えたびいどろは機械の海月を周囲に泳がせる。
 そして、ぱちんとクラウンが指を鳴らせばあら不思議。あまい香りのフリチラリアがたくさん現れた。
「翼で風を起こして、視界を塞ぐよ!」
「数には数、というやつ、だね」
 クラウンの動作と同時にびいどろが海月たちを遣わせた。ふたりが狙うのは此方から意識を逸らして貰うための目眩ましとフェイント。
 敵がフリチラリアに気を取られている間にクラウンが大玉を用い、自由自在に回す。そうして勢いよくぶつかった大玉が働き蜂戦闘員を揺らがせる。
 その頃には迷彩を纏った海月たちがこっそりと働き蜂を取り囲んでいた。
 相手は反撃に移ろうとしたが、何もかもが遅い。
 ほら、とびいどろが指先を標的に差し向けると、海月たちが一斉に襲いかかる。蜂の毒針めいた槍と海月の麻痺、どちらが勝つかのくらべっこ。痺れるほどの抱擁がぎゅっと敵を締め付ける。
「まだまだ、終わらないよ」
 更にびいどろは硝子の鏃の弓矢を構え、弦を引く。しっかりと、狙い定めて撃つ――と思わせておいて、びいどろは周囲に星を降らせた。
「びいどろ、すごいね! よーし、こっちも負けてられないな」
 クラウンは友人の立ち回りに称賛の視線を送り、自らも火の輪を掲げる。
 くるくるとそれを素手で回してみせる様は華麗なパフォーマンスそのもの。えい、と火の輪を蜂に向けて投げれば紅い軌跡が宙に舞う。
「ちょっと熱いかもだけど我慢してね!」
 俺もちょっと熱いから、と軽く舌を出しておどけてみせたクラウン。その一瞬後、働き蜂の身を炎が焦がした。
 そうして、クラウンとびいどろの手によって何体もの戦闘員が倒れる。
 伏した彼らを見下ろしたクラウンは明るく笑い、問いかけた。
「俺の芸どうだった?」
 それは元より答えを求めない質問だったが、代わりににびいどろがぱちぱちと拍手で以て答える。そして、ふたりは共に森の奥を目指してゆく。
 この向こうに待ち受けるのは森主。
 どきどきすると語るクラウンに揺れる眼差しを返し、びいどろはぽつりと呟く。
「我をも忘れる甘さとは、どんな香りが、するのだろう、ね」
 それはすべてを忘却させるほどのものだという。
 未だ像すらつかないことへ思いを巡らせ、少年たちは歩みを進めてゆく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リル・ルリ
■櫻宵(f02768)
アドリブ歓迎

「櫻宵!お菓子の楽園だって。僕、行きたい」
どんなのが出てくるんだろう
僕のすきなチョコがあれば嬉しいし
なによりコンコンするのは初めてなんだ。
でーと、だなんて……違……くはないけど照れてしまう
でも櫻宵とお菓子たくさん食べたいから
僕も、がんばる

「ここ、通してもらうね」
【歌唱】に【鼓舞】をのせて歌う、櫻宵の為の「凱旋の歌」
ほら、いっておいで
櫻宵は今日も楽しそうに刀を振るうね
僕への攻撃は【空中戦】でかわしていよ。
君が僕を守るなら僕が君を支えよう
「氷楔の歌」で凍らせ動きを奪う

今お腹を空かせておいたら
たくさん食べられるかな
僕の櫻
一緒に過ごす時間を考えるだけでこんなにも楽しみ


誘名・櫻宵
🌸リル(f10762)
アドリブ歓迎

うふふ、じゃあ今日のデートはマグメリアに決定ね!たくさんコンコンさせてあげる
可愛い人魚にウインク
あら照れちゃった

愛しい可愛い子の笑顔のために
美味しいお菓子をご馳走するの
あたし頑張っちゃうわ

リィの歌は今日も最高ね!
あたしのために歌われる歌に心昂るわ
リィを庇うように前へでて
攻撃されそうになったら咄嗟の一撃を

呪詛こめた刀を抜き放ち、衝撃波を生み出して薙ぎ払う
たくさんいるならまとめて範囲攻撃して斬るわ!
何度も傷口を抉り、狙い斬りながら
『散華』を放つ
働き蜂さん?
首を頂戴


ええリル
たくさん食べまよ!
お腹をちゃんとすかしておかなきゃ
愛しいあなたと過ごすあまーい時間
たのしみね



●きみのために
 予知で識った森に思いを馳せて、想像に描くのは未だ見ぬ世界。
 其処はその名の通り、穏やかで甘い心地が満ちる場所だと云う。
「櫻宵! お菓子の楽園だって。僕、行きたい」
「まあ、それは素敵ね」
 リル・ルリ(瑠璃迷宮・f10762)からの願いに対して、誘名・櫻宵(屠櫻・f02768)は快く頷いて同行を承諾した。
 嬉しげに双眸を細めたリルは、これから向かう先についての思いを巡らせる。
「どんなのが出てくるんだろう。僕のすきなチョコがあれば嬉しいし……」
 なによりコンコンするのは初めてなんだ、とこの世界の独特で楽しい現象に期待を膨らませるリル。櫻宵にとってはその様子がとても微笑ましく感じられて、いくらでもさせてあげたいとまで思ってしまった。
「うふふ、それならたくさんコンコンさせてあげるわ。そういうわけで今日のデートはマグメリアに決定ね!」
 そういって可愛い人魚にウインク。
 すると彼は照れた様子を見せてから、ふわふわと宙を游いだ。
「でーと、だなんて……違……くはないけど……でも、」
 照れ隠しに少し視線を逸らしてしまったが、すぐに顔を上げたリルは首を振る。そして、櫻宵とお菓子たくさん食べたいからがんばる、と意気込んだ。
 愛しくて可愛い子の笑顔のために美味しいお菓子をご馳走したい。
 あたしも頑張っちゃうから、と櫻宵も気合を入れた。

 そんな遣り取りがあったのは、この森に入る少し前のこと――。
 櫻宵とリルはいま、周囲を数体の働き蜂戦闘員に囲まれていた。行く手を阻む彼らは羽音を響かせ、今にも此方に襲い掛かってきそうだ。
 楽園に真の意味で辿り着くには障害を排除しなければならない。そう感じた櫻宵は槍を差し向けて突撃してくる働き蜂へと屠桜を向け返した。
 突きと一閃が交差し、甲高い音が辺りに木霊する。その間にリルは瞳に敵の姿を映し、櫻宵へ贈る凱旋の歌を紡いでいった。
「ここ、通してもらうね」
 ――ほら、いっておいで。
 儚くも力強い歌声はそう告げるかの如く、戦場に響き渡る。
 櫻宵は今日も楽しそうに刀を振るっていると感じられるし、リルの歌は今日も最高だ。ふたりは互いに揺るぎない信頼と好意が籠められた思いを抱いている。
 自分のためだけの歌に心を昂らせ、櫻宵は華麗に戦場を舞うが如く戦ってゆく。
 敵が増援を呼ぼうとも櫻宵は決して怯まず、リルに向けられる攻撃から彼の身をしかと守った。リルもまた、自分のために身を挺してくれる櫻宵に歌を届け続ける。
 まるでそれが当たり前だというように、ふたりの意思は通じ合っていた。
「君が僕を守るなら僕が君を支えよう」
 リルは働き蜂を相手取り続ける櫻宵への言の葉を落とす。
 其処から響かせてゆくのは、氷楔の名を冠するに相応しい玲瓏たる歌声。標的を凍てつかせる力を孕む調べは敵の動きを鈍らせていく。
 リルが最高の援護で以て自分の追い風になってくれていると感じ、櫻宵は地面を強く蹴った。敵がいくら群がって来ようとも呪詛を宿らせた刃で斬り裂き、それでも追い縋って来る相手には衝撃波を飛ばして弾き飛ばす。
 そして――歌が響き続ける戦場で敵が次々と倒れていった。
 やがて自分達を狙う者が一体になり、櫻宵はひといきにけりを付けに駆ける。
「働き蜂さん? さぁ、首を頂戴!」
 短い問いかけと呼び掛けの声が聞こえたかと思った直後、一振りの刃が言葉通りに相手の首を斬り落とした。
 そうして、働き蜂戦闘員たちとの戦いはひとまずの終わりを迎える。
 おつかれさま、と告げたリルはふわりと櫻宵の傍へと游ぎ寄った。戦いは激しかったがその分だけ先程よりお腹が空いた気がしている。
「今お腹を空かせておいたら、たくさん食べられるかな」
「ええリル。たくさん食べましょ! 愛しいあなたと過ごすあまーい時間、たのしみね」
 櫻宵は明るい笑顔で答えた。
 同じように淡い微笑みを向けたリルはそっと、僕の櫻、と囁く。
 一緒に過ごす時間を考えるだけでこんなにも楽しみだから、きっと本当の楽園が取り戻せたときはもっと、もっと――甘くて倖せに満ちた時間が訪れるに違いない。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ユーリ・ヴォルフ
チコル・フワッフルと行動 アドリブ共闘大歓迎!

チコルはお菓子を見ると目の色が変わるな。とはいえ穏やかで幸せな場所を荒らす輩は許せん。行くぞ、チコル!

野兎と共闘できるようになっていたとは。成長したな…ならば私は、その野兎も、チコルも守るとしよう!

【メギドフレイム】をドーム状に放ち、害を成そうとする敵のみを狙い一切討伐!チコルたちの死角は封じてみせよう。蜂ならば尚更、熱を怖がるかもしれない

迫る危険はオーラ防御で防ぎ、範囲攻撃・属性攻撃炎でカウンターを放つ。それをも掻い潜るなら面白い。炎霆…炎から槍を生み出し、炎舞のように殺陣を行い反撃に出る。貴様たちも槍使いか、面白い。負けるわけにはいかないな!


チコル・フワッフル
ユーリ・ヴォルフと行動
★アドリブ、他猟兵との絡みも歓迎!

お菓子の森を占拠するだなんて、許せない!
美味しい物は皆で分け合うのが基本だよ!
厄介な怪人と戦う前に、まずは働き蜂を何とかしないとね。
行こう、ユーリ!美味しいお菓子の為に!!

大勢の敵が相手なら、こっちも数を増やして戦うよ。
【もふもふパラダイス】でどこからともなく野兎を召還!
皆、やっちゃえー!齧ってキックして体当たりだ!
敵が空中へ逃げるなら【ジャンプ】と【空中戦】で地面に落してやる!

ユーリの炎も、とっても頼りになるよ!
でも、無理はしないでね?もしユーリに危険が迫るなら
ダガーで【援護射撃】も行うよ!
さあ、まだ私達と戦う?だったらかかっておいで!



●野兎と炎霆の演舞
「お菓子の森を占拠するだなんて、許せない!!」
 マグメリアの森に響き渡ったのは少女の熱く真っ直ぐな思い。
 チコル・フワッフル(もふもふウサキツネ・f09826)は今、憤りにも似た感情を覚えていた。美味しい物は皆で分け合うのが基本であり蹂躙するなど言語道断。
 掌を強く握った彼女はユーリ・ヴォルフ(叛逆の炎・f07045)に呼び掛け、森の奥を目指して進んでいく。
「行こう、ユーリ! 美味しいお菓子の為に!!」
「チコルはお菓子を見ると目の色が変わるな。とはいえ……」
 先を急ぐチコルの傍に付いたユーリは辺りを見回してみた。
 厄介な怪人と戦う前に、まずは働き蜂を何とかしないといけない。燃えに燃える闘志を宿す彼女と同じようにユーリも揺らがぬ思いを抱いていた。
「穏やかで幸せな場所を荒らす輩は許せん。行くぞ、チコル!」
 そうして、ユーリが示したのは三体の働き蜂戦闘員。
 相手も此方に気が付いたらしく、槍を振るいながら迫ってくる。チコルは強く敵を見据え、自らの力を紡いだ。
「大勢の敵が相手なら、こっちも数を増やして戦おう。皆、やっちゃえー!」
 敵の一閃がチコルとユーリに振るわれるよりも早く、チコルはたくさんの野兎たちを召喚した。ぴょこんと跳んだうさぎは戦闘員の槍を掻い潜り、がじがじと噛み付いたりキックで反撃を行っていく。
 その早業と行動に何度か瞼を瞬かせたユーリは静かに笑む。
「野兎と共闘できるようになっていたとは。成長したな……ならば私は、その野兎も、チコルも守るとしよう!」
 先手は蜂とうさぎの衝突になってしまったが、後れを取るユーリではない。
 ユーリは己の周囲に炎の力を顕現させてドーム状に放つ。その狙いは彼女たちの死角を消すこと。
 害を成そうとする敵のみを狙った炎剣の一閃は鋭く、焔の軌跡が迸った。
 うさぎたちと敵を相手取っていたチコルは炎の剣が舞う様を見つめて頬を緩める。
「ユーリの炎も、とっても頼りになるよ!」
 明るい声が響くが、此処は既に戦場。わ、とチコルの慌てた声が上がると同時に働き蜂たちの槍がぶんぶんと振るわれた。
 その動きを察知していたユーリは炎から槍を生み出し、炎舞めいた動きで即座にチコルの前に割り込む。そして自らの炎から具現化した武装――炎霆で敵からの攻撃を受けた。
「大丈夫か、チコル」
「ユーリのお陰で平気だよ! でも、無理はしないでね?」
 チコルは頷きながらも、ユーリが庇ってくれたときの痛みを密かに堪えていることを理解していた。彼は口にも顔にも出さないがそれくらいは分かる。
 だからこそ自分もユーリを守りたかった。
 標的をユーリに変えた働き蜂が槍を振り下ろそうと動いた。しかし、チコルがすぐさま夏陽のダガーを投擲して矛先を弾く。
 鋭く真っ直ぐに飛ぶ姿は夏の日差しを連想させた。
 それに驚いて空中に逃げた敵を追い、チコルは跳躍する。彼女が自分を援護してくれたのだと気付いたユーリは共に支え合っている実感を覚えた。
 そして、チコルは近くの樹を足場にして宙に舞う蜂兵に追い縋る。
「逃さないからね!」
 えい、と可愛らしい掛け声と共に思いきり蹴撃を打ち込んだチコルは敵を地に落とした。森の大地に叩きつけられた働き蜂は重い衝撃に悲鳴を上げる。
 だが、其処に待ち構えていたユーリが容赦のない追撃を与えた。炎の刃が敵を貫き、戦う力を奪い取る。
 だが、敵も倒れる間際に増援を呼んだらしい。
 すぐに現れた新たな働き蜂戦闘員。それらへの警戒は解かぬまま、ユーリはチコルに目配せを送った。
「チコル、気は抜かずに行くぞ」
「うん、まだまだ戦えるよ!」
 もふもふたちに次の攻撃を願ったチコルは大きく頷く。
 ユーリの炎剣とチコルが放つうさぎたち。ぴょんぴょんしながら縦横無尽に暴れるそれらはあっという間に敵を地に落としていった。
 されど増援の中にはまだ息のあるものもいる。ユーリは敵を強く見据え、チコルも敢えて不敵な笑みを浮かべてみせた。
「面白い、貴様たちの槍がこちらに敵うと思うか」
「さあ、まだ私達と戦う? だったらかかっておいで!」
 ふたりから威圧感めいたものを感じた働き蜂戦闘員は思わず一歩後ろに引く。
 しかし、取り逃すまいと駆けたユーリが槍を薙いで炎を解き放った。更にうさぎたちと共に敵との距離を詰めたチコルが花嵐の刃を振り上げる。
 焔と花。その二つが重なった瞬間、戦いの音が止んだ。
 周囲の敵の気配がすべて消えたと感じ、ユーリとチコルは視線を交わす。其処に咲いたのはお互いへの信頼が宿った笑みの花だった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

菓子の森を占拠…だと…?
甘味を一人占めするとは…全力で排除させて貰おう

数が多い故、宵と背を預けつつ【罪告げの黒霧】にて確実に数を減らして行こうと思う
視界に捉えんと攻撃出来ぬ故背後を取られるのが一番厄介だが…宵が居ると思えば安心して動けるな

時折背を付けへばって居ないか、と軽口を投げるも
返された声には疲れては居らんが…ならば休ませて貰おうと
意趣返しに背に凭れて業とらしい笑みを
攻撃と警戒の手は止めんがな?

敵の接近を許した場合はメイスで『なぎ払い』【罪告げの黒霧】にて止めを刺して行く
宵に攻撃が行く場合は『盾受け』にて『かば』い『カウンター』を
まあ跳ねのければ宵が止めを刺してくれるだろう


逢坂・宵
ザッフィーロ君(f06826)と

甘味好きのきみの憤怒がよくわかりますよ
オブリビオンとはかくも人間の邪魔をしたがるようです
早々と掃討して、お楽しみの時間と参りましょうか

ザッフィーロ君と背中合わせに
いつもは僕がきみの背中を守っていますが、きみに背中を預けるというのもとても楽しいですね
【範囲攻撃】【属性攻撃】をのせた
『天撃アストロフィジックス』で敵の数を減らすよう動きつつ
ザッフィーロ君の死角から敵が忍び寄るなら【目潰し】してやりましょう

へばるだなんてそこまでモヤシではありませんよ
きみこそお疲れではありませんか?
と返しつつ【戦闘知識】【地形の利用】を駆使して
有利な戦闘展開にできれば良いですね



●此の背を預けて
 春の野花が咲く森に一陣の風が吹いた。
 地に揺れる勿忘草の淡い彩は美しく可憐ではある。しかし今この胸の裡に浮かぶのは静かで、それでいて熱を孕んだ感情。
「菓子の森を占拠……だと……?」
 マグメリアの森を行き、ザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)は胸の奥で燻る憤りを言葉に変えた。たったそれだけの言葉で彼の胸中が察せた気がして、逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)は軽く頭を振ってみせる。
 夜色の髪が揺れる中、星瞬く深宵の瞳に映るのは不穏さを隠す翠森の光景。
「甘味好きのきみの憤怒がよくわかりますよ」
 オブリビオンとはかくも人間の邪魔をしたがるもの。
 ザッフィーロの思いを鎮める為にも早々と掃討しておくのが吉だ。そのように思いを巡らせている矢先、ザッフィーロと宵は妙な気配を感じ取った。
 同時に幾つもの羽音が耳に届く。
 あれがこの森に巣食いはじめたという怪人たちなのだと悟り、ふたりは身構えた。
「甘味を一人占めするとは……全力で排除させて貰おう」
 ザッフィーロは鋭い眼差しを敵に向ける。
 音が聞こえたのは彼らの左右両方から。宵は彼とは反対の方向に意識を向け、背中合わせになる形で宵色と星の杖を手にする。
 刹那、彼らを挟撃するようにして働き蜂戦闘員が数体現れた。
 囲まれるが如き布陣だが問題はない。
 宵に背を預けることに不安など一欠片もなかった。ザッフィーロは穢れが混じる黒い毒霧の吐息を槍を持って迫りくる敵に解き放った。
 同時に宵の放った天撃が別の個体を捉え、鋭い衝撃を与える。
「いつもは僕がきみの背中を守っていますが、きみに背中を預けるというのもとても楽しいですね」
 宵は振り向くことなく、背後から感じる戦闘音に耳を澄ませた。
 前方の敵から目を逸らすことは出来ないが、その音とザッフィーロが動く所作の気配がすべてを伝えてくれる。自分が後方に敵を通さぬよう広範囲へ魔法撃を放っているのと同じように、彼も此方を守ってくれているようだ。
 ザッフィーロもまた、背に宵が居ると思うと安心して動けると感じていた。
「増援が来るようだな。へばってないか?」
 瀕死の敵が仲間を呼ぶ動きを見せる最中、ザッフィーロは軽口混じりに宵に問う。罪告げの黒霧は更に広がってゆく。
 宵も次なる魔力を紡ぎあげながら問を返した。
「へばるだなんてそこまでモヤシではありませんよ。きみこそお疲れではありませんか?」
「疲れては居らんが……ならば休ませて貰おう」
 軽口の続きの意趣返しに、と宵の背に凭れて業とらしい笑みを浮かべたザッフィーロ。そんなことをしていても勿論、攻撃と警戒の手は止めない。
 軽く肩を竦めて凭れかかってきた彼を押し返した宵はちらと背後を見遣った。
「――其処、がら空きですよ」
 その際にザッフィーロの側面から迫る敵に気付き、宵は天魔撃を横方に放つ。瞬時に宙を躍った魔力の一閃は敵の眼を潰し、槍の一閃も大きく外れることとなった。
 されど増援が現れているのは宵の方も同じ。
 ザッフィーロは礼めいた視線を返した直後、構えたメイスを頭上で大きく振るった。途端に接近してきていた蜂兵が薙ぎ倒され、地に落ちる。
「跳ねのけるまではやった。宵、止めを刺してくれるか」
「言われなくとも、既に――」
 ザッフィーロがそう告げた次の瞬間、宵が解放した流星の矢が頭上から降り注いだ。
 その星の光はまるで雨の如く周囲の敵を一気に貫く。
 そして、煌めく流星が収まった後。其処には地に伏した幾つもの働き蜂たちの姿があった。終わりましたと示すように緩く息を吐いた宵へと振り返りつつ、ザッフィーロは周囲の様子を探った。
 森の奥から感じる妙な気配が一段と強くなった気がする。
「未だ終わっちゃいない、か……」
「早く終わらせてお楽しみの時間と参りましょうか」
 ザッフィーロの呟きを聞いた宵はそっと頷き、この後に廻る時へと思いを馳せた。
 この先に待つ時間は果たしてどのようなものか。それは未だ、誰も知らない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ネクタリニア・グラティア
ここが、キマヒュか
噂通り…ふふふ、なんとも個性的な世界だねぇ
他世界を知る良い機会だ
少しばかりお邪魔させてもらおう

へぇ、叩いたら菓子を生む木なのかい?
それは面白いね…だけれど、独占は良くないよキミ達
話し合いで解決出来れば良いが、致し方ない
…おいで、在るべき場所へ送ってあげよう

供のプルケリマは私の後ろへ
攻撃が届かぬよう風のオーラ防御を纏おう
死角は頼んだよ、何かあればその美しい声で教えておくれ

数で劣るなら
地形の利用を活用し、Prima roseの茨蔓を辺りに巡らせよう
上手くおびき寄せて、拘束できれば良し
高速詠唱・属性攻撃で増幅させた風の矢を放つ
あまり煩いと薔薇姫が起きてしまうかもしれないね、ご用心を



●御使いと繁栄の女神
 物珍しそうに森を眺める女神がひとり。
 此処がキマイラフューチャーか、と口にした彼女の名はネクタリニア・グラティア(蜜喰・f16417)。繁栄を司る神だ。
 その傍らには美しい白き羽を持つガチョウ、プルケリマがついていた。
「噂通り……ふふふ、なんとも個性的な世界だねぇ」
 楽しげに微笑んだネクタリニアは他世界を知る良い機会だとして森の奥を目指す。
 少しばかりお邪魔させてもらおうかと彼女が歩けば、森の樹々が緩やかにざわめいた。此の森の翠にも似た緑色の瞳が映すのは穏やかな景色。
 しかも周囲の樹はコンコンコン、とノックをすれば甘味が出てくるすごいものだ。
「へぇ、これが叩いたら菓子を生む木なのかい?」
 興味深く樹を見つめたネクタリニアは双眸を細めた。
 だが、彼女が見ているのはもう樹などではない。その奥から姿を現した怪人、働き蜂戦闘員たちだ。
「面白いね……だけれど、独占は良くないよキミ達」
 嗜めるように紡いだネクタリニアだが、槍を構えた戦闘員は聞く耳を持たない。
 話し合いで解決出来れば良かったが彼らはきっとそんな生温い選択肢など選ばないだろう。致し方ない、と口にしたネクタリニアは供のプルケリマを後ろへ下がらせる。
 そして、そっと前方に伸ばした掌をひらりと揺らした。
「……おいで、在るべき場所へ送ってあげよう」
 誘うような言の葉と同時に彼女の身体を防御の光が包み込む。背後の御使いに死角を楽しみ、何かあればその美しい声で報せて欲しいと願う。
 其処へ数体の働き蜂戦闘員が槍の切っ先を向け、突撃してきた。
 されどネクタリニアは慌てることなどなく、自らの身を茨で覆う。茨姫の呪縛と呼ぶに相応しい荊棘が女神の身体を護る。
 放たれた槍撃は茨を砕いたが、ネクタリニアには傷はついていなかった。
「あまり煩いと薔薇姫が起きてしまうかもしれないね」
 ご用心を、と片目を瞑って告げた彼女は地面を軽く蹴る。瞬刻、まるで舞うようにふわりと浮いた――もとい、華麗に跳躍したネクタリニアが樹の枝に降り立つ。
 それは呪縛から吸収した力を用いての行動だ。
 其処から眼下の敵へと視線を向けたネクタリニアは生長の祝福を得た薔薇を解き放った。蔓茨はまるで猛烈な恋の空騒ぎの如く、標的を縛り付けた。
「それでは、おやすみ」
 そして、ネクタリニアは止めの風の矢を放つ。
 真上から貫かれた働き蜂はもう二度と動くことはないだろう。風が枝葉を揺らがせる中、オブリビオンとして骸の海に還った蜂兵たちは静かに消えていく。

成功 🔵​🔵​🔴​

オズ・ケストナー
お菓子の森って、まるで絵本みたい
こんこんするのもやったことがないから
ふしぎな森のおはなしを聞くだけでわくわくしてくるけれど

そんなすてきな場所をひとりじめするなんて
(戦闘員を見まわし)
……ひとり?
えっと、みんなを追い出すなんてだめだよっ

【範囲攻撃】で斧を振り回すよ
ハチは花にとってだいじな運び屋さんだけど
きみたちはちがうね

お菓子の森、返してもらうからね

飛んで行こうとする戦闘員は
シュネーにお願いして
高く舞い上がったシュネーがハイキック
シュネー、ありがとうっ

【ガジェットショータイム】
まだまだいけるよっ
これはなんだろ
わ、なんかけむり出てきた
目くらましかな?
えいっ(そのまま散布用の鉄の棒を振り回して攻撃)



●幸福の運び手
 お菓子の森は、まるで絵本みたい。
 物語の中に創られた世界のようだと感じて、オズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)は春の花咲く大地をそっと踏み締めた。
 思えばこんこんするのもやったことがない。とても賑やかかつ不可思議がいっぱいなこの世界を思い、オズはゆるりと先を目指す。
「ふしぎな森のおはなしを聞くだけでわくわくしてくるけれど……」
 不意にオズは立ち止まり、風に揺れる樹々の向こう側に目を向けた。
 其方には淡い色を宿す勿忘草の花が咲いていた。だが、それだけではない。
「そんなすてきな場所をひとりじめするなんて……」
 オズがその声を向けた対象は次々と集まりはじめた働き蜂戦闘員たち。彼ら見回したオズは、だめだよ、と言いかけて言葉を飲み込む。
「……ひとり、じゃないかもだけど。えっと、みんなを追い出すなんてだめだよっ」
 そしてオズは身構え、相手からの敵意を受け止めた。
 怪人たちはどうあっても此方を排除する気でいるらしい。シュネーに頭上からの敵を任せ、オズ自身は斧を振りあげた。
「ハチは花にとってだいじな運び屋さんだけど、きみたちはちがうね」
 過去の残滓から生まれた彼らが運ぶのは不幸だけ。
 花も咲かないからね、と告げたオズが斧を大きく振り回すと同時にシュネーが高く跳んだ。上空からの攻撃を行おうとする敵へとハイキックを見舞った雪色の彼女はオズに害をなすものを蹴散らしていく。
「シュネー、ありがとうっ」
 姉であり友でもある彼女に礼を告げたオズは近付いてくる敵に狙いを定めた。
 まだまだいくよ、とガジェットを構えるともくもくと煙が立ち込めはじめる。きっと目眩ましだと感じたオズはそのまま鉄の棒を振り回した。
 ふわ、ふわりと浮かぶ煙は上空へ。
 それは蜂兵たちがオズの頭上に飛ぶことを防いでくれた上に、相手の動きを鈍らせてくれているようだ。虫さん駆除のおしごとをしてるみたい、と感じた思いは言葉にせずにオズは地面を蹴った。
 低空を飛行する働き蜂たちをやっつけるなら今が好機。
 斧を握る手に力を込めたオズは身体を回転させ、一気に周囲の蜂兵を薙ぎ払った。
「お菓子の森、返してもらうからね」
 凛と告げた言葉の後、オズの周囲にばたばたと敵が倒れてゆく。
 やがて彼らは骸の海に還っていった。その様を暫しそっと見つめてから、オズは更なる不思議が潜むという森の奥に目を向けた。

成功 🔵​🔵​🔴​

花咲・まい
ギドさん(f00088)とお出かけ!

ふおお、お菓子の森ですか!
名前の通り、そこかしこから美味しそうな匂いがしてきますですよ。
ギドさんも甘いものがお好きなようですし、然らばティータイムを楽しみにサクサク倒していきましょうです!

戦闘では背中はギドさんにお任せして
私も加々知丸くんでスパスパ斬っていきますです。
余裕があればその辺りの幹をココンと失礼しまして、お菓子を頂いて闘う糧とさせていただきましょう!

この先にいる森主さんは、どのような方なんでしょうね。
お菓子の森の主さんですから、やはりお菓子好きなんでしょうか?
何が待っているのかは私も分かりませんですが、美味しいティータイムのために頑張りますですよ!


ギド・スプートニク
まい嬢(f00465)と

菓子の楽園か
まい嬢がやる気になるのも頷ける

私も甘い物は好きだよ
故に怪人の類は手早く片付けてしまおう

手には血の処刑剣を具現化し、手近な蜂どもを斬り捨てる

敵の数が多ければ周囲に血を振り撒き
その血は杭へと姿を変え、敵を串刺しにする

まい嬢のつまみ食いには笑いながらも、それが貴女の流儀であったなと非礼を詫びる

どれ、折角なら茶も淹れさせよう
と使い魔の蝙蝠、セバス(セバスチャン)に命じる

まったく、準備運動にもならぬな
この先出てくるという森主にでも期待しよう

さて、どうだか
生い茂る森の姿をした怪人が菓子好きとも思えぬが

そう言えば忘却の森の対策なぞ考えていなかったが…
まぁ、何とかなろう



●もぐもぐフィーバー!
 緑豊かな森とあたたかな陽光。
 それだけで穏やかで心地が良いというのに、なんとこの場所はお菓子がいっぱい。
「ふおお、お菓子の森ですか!」
 花咲・まい(紅いちご・f00465)の瞳はこれ以上無く輝いていた。
 無邪気に、そして元気に周囲を眺めたり調べたりする少女。その姿を見守るギド・スプートニク(意志無き者の王・f00088)は対照的に静かに辺りを見渡している。
「菓子の楽園か。まい嬢がやる気になるのも頷ける」
「名前の通り、そこかしこから美味しそうな匂いがしてくる気がしますですよ」
 もうコンコンコンして甘味を取り出しても良いのだろうか。
 むしろ今すぐしてみたい。そんな衝動を隠しきれない様子のまいはギドを呼ぶ。
「ギドさんも甘いものがお好きでしたよね。然らばティータイムを楽しみにサクサク倒していきましょうです!」
「そうだな、その通りだ。故に怪人の類は手早く片付けてしまおう」
 えいえいおー、とまいが加々知丸を振り上げた、そのとき。
 来たか、と口にしたギドも血の処刑剣をその手に顕現させた。ふたりが気付いたのは遠くから聞こえてきた羽音。そして、働き蜂戦闘員が接近する気配。
「あっちからもこっちからも来てますですね!」
 背中は任せました、と告げて大刀を前方に向けたまいは一気に跳躍した。
 分かったよ。そう答えたと同時にギドもまいの背面側、つまりは自分の目前へと刃を振るう。すると近付いてきていた蜂兵が一閃のもとに伏し、骸の海に還った。
 まいは敵が倒れたと肌で感じ取りつつ、刀を一気に振り下ろす。
「加々知丸くん、私たちもスパスパっと斬っていきますですよ」
 その言葉通り鋭い刃が蜂兵の翅を斬り落とした。其処に隙を見つけたまいはコココン、と樹を叩いてお菓子を出現させた。
 チェリーパイを当たり前のようにさくさくと平らげ、まいは口許に付いたジャムをぺろりと拭う。そんなつまみ食いを目にしたギドの頬が僅かに緩んだ。
「……ふ」
 しかし、それは彼女が闘うための糧。笑いながらも、それが貴女の流儀であったな、と非礼を詫びたギドは改めて敵に目を向けた。
 相手は強くはないが、問題はその数の多さだ。
 どうやら敵は増援を呼んでいたらしく戦場となったこの場に次々と新手が現れていた。ギドは周囲に血を振り撒き、それを杭へと変えてゆく。
 魔力を更に籠め、解き放った杭はギドに近付く働き蜂を串刺しにしていった。
 まいも更に追加したミンスパイをおもいきり頬張って、蜂兵を遠慮なくずばばばーっと斬り伏せていく。
「むむむ……もぐもぐ」
 口の中いっぱいに広がる美味しい味を逃さぬようにしているのか、まいは何も喋らない。もとい喋れない。ギドは再び笑いが込み上げてきそうな感覚をおぼえながらぱちんと指を鳴らした。
「どれ、折角なら茶も淹れさせよう」
 使い魔の蝙蝠であるセバスチャンを呼び、命じたギドは双眸をそっと細める。
 そうして暫し、戦場では羽音と血とお菓子とお茶と剣戟が入り交じる不可思議な光景が繰り広げられた。されどそれも長くは続かず、敵の増援が尽きたところで終幕を迎えた。
「まったく、準備運動にもならぬな。この先出てくるという森主にでも期待しよう」
「この先にいる森主さんは、どのような方なんでしょうね」
 ギドが倒れて消えていく戦闘員を感慨もなく見送る中で、まいはふと浮かんだ疑問を口にする。対するギドは森の奥に意識を向け、続くまいの声に耳を傾けた。
「お菓子の森の主さんですから、やはりお菓子好きなんでしょうか?」
「さて、どうだか。生い茂る森の姿をした怪人が菓子好きとも思えぬが……」
 其処でギドは不意に敵が忘却の力を持っているのだと思い出す。
 その頃にはまいは森主に会えるまでのおやつだとして、近くの樹をコンコンコンしてジンジャーブレッドを入手していた。迷いもなくそれを齧る小動物的な彼女の様子を眺め、ギドはちいさく呟く。
「……まぁ、何とかなろう」
 まいはその声を聞きながらおやつを味わっていった。
 やがて少女は森主が待ちうけているであろう方角をしっかりと見つめる。
「何が待っているのかは私も分かりませんですが、美味しい時間のためにめいっぱい頑張りますですよ!」
 何も不安がないといえばきっと嘘になってしまう。
 それでも言葉にした思いは本物だ。そして――猟兵と森主の邂逅の時が訪れる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『森主』

POW   :    自然の猛威
単純で重い【雷槌】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    獣返り
【野生を促す香り】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【凶暴にして同士討ちを誘う事】で攻撃する。
WIZ   :    楽園への帰還
小さな【実から食べたくなる誘惑の香りを放ち、実】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【忘却の香りの満ちた森。故郷を思い出す事】で、いつでも外に出られる。

イラスト:クロジ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はロク・ザイオンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●忘却は仄甘く
 森に蔓延っていた蜂怪人は猟兵によってすべて駆除された。
 御菓子の森の奥から感じる重苦しい気配を辿り、仲間たちは或る場所に集う。其処は淡い青紫色の勿忘草が咲く森の奥だ。

『――森(われ)を讃えよ。森(われ)へ還れ』
 此処に辿り着いた時、確かにそのような声が聞こえた。そして、それ――森主は、生い茂る奇妙な森であるかのような大きなモノだった。
 大きさにして十メートルはあるだろうか。巨大な森の一部。そう表すほかない。
 だが、周囲の樹々と違うのはそれが明確な意思を持っていること。
 そうして森主と呼ばれるモノは周囲に小さな実を幾つもばら撒きはじめた。
 周囲に広がったのは甘くもほろ苦い不思議な香り。あの実に触れて、口にしてみたい。強制的にそう感じさせる誘惑の魔力がその実には満ちていた。

 君ならばその実の誘惑を振り解き、森主と真正面から戦うことが出来る。
 だが、その方法で敵を倒すのは困難だとも識っている。
 君は敢えて実の誘惑を受け入れ、森主の内部に取り込まれることも出来る。
 其処では何もかをも忘れてしまうということも分かっている。
 しかし、忘却の香りとて万能ではない。
 たとえば何らかの方法で故郷を思い出したり、思い出の品で大切な人の記憶を蘇らせたり、または様々な別の切欠があれば打ち破れる。思い出し方も思い出すものも人それぞれだろうが、自分を取り戻すことが出来れば内部から敵に大打撃を与えることも可能だ。

『――森(われ)を讃えよ。森(われ)へ還れ』
 もう一度、先程と同じ声が聞こえ、勿忘草の花が風に揺れた。
 忘却を拒むのか。忘却すら受け入ると決め、すべてを取り戻すと誓うのか。
 果たして君は、どのような戦い方を選ぶのだろう。
エメラ・アーヴェスピア
前哨戦は終わり、ここからが本番ね
さてこの強敵、どうやって倒すか…
まぁ、腹案はあるのだけどね

内部に取り込まれると記憶を一時的に失う、と
…また記憶喪失になるとか、あまりやりたくないわね
でも、先程も言ったけど考えが無いわけじゃない
ポイントは「触れた抵抗しない対象を吸い込む」事
再装填(リロード)『出撃の時だ我が精兵達よ』
今回はレベル34一体
ええ、取り込まれるのは私じゃなくてこの兵よ
もし命令部分を消されても外部通信、又は補助記録装置で再起動と言う訳
そっちの方も消されたら…まぁ私が突入しても機械が使えなくなって意味がないわね
さぁ、武器のチェーンソーで切り倒してあげなさい
私は外から援護よ

※アドリブ・絡み歓迎


マリス・ステラ
【WIZ】真正面から戦います

「主よ、憐みたまえ」

『祈り』を捧げると星辰の片目に光が灯る
全身から放つ光の『存在感』で森主を『おびき寄せ』る
光は『オーラ防御』の星の輝きと、星が煌めく『カウンター』
『第六感』を働かせて的確な防御に努める

全員が内部に取り込まれるとは思えません
ならば私はあえて真正面から挑む人達を支えます

「彼らは、できると思う故に、できるのです」

重傷者に限定して【不思議な星】
緊急時は複数同時に使用

弓で『援護射撃』
響く弦音は『破魔』の力を宿して獣返りする猟兵を正気に戻す

「我思う。故に我あり」

私自身は集中して誘惑や野生を促す香りを振り解きます
星枢で大地からの恵みを吸収して疲労やダメージに対応



●忘却の力
 呼び掛ける声。そして、誘惑の実。
 一筋縄ではいかぬ相手を前にした猟兵たちは其々の思いを胸に抱き、動き出す。
「前哨戦は終わり、ここからが本番ね」
 この強敵をどうやって倒すか。エメラは敵を見据えて考えた。
 真正面から戦う方法では倒すまでに時間が掛かり過ぎる。しかし、内部に取り込まれる方法は賭けだ。それゆえにすぐに飛び込むことはしない。
 そう考えているのはマリスも同じ。
 全員が内部に取り込まれる方法を取るわけではない。それならば自分はあえて真正面から挑む人達を支える。
「主よ、憐みたまえ」
 マリスが祈りを捧げると、星辰の片目に光が灯った。
 先程の戦闘員と戦ったときと同じように全身から放つ光の存在感で森主の気を引く。その光は星の輝きとなって彼女の身を守る力となった。
 するとエメラが腹案があるとして一歩を踏み出した。内部に取り込まれると記憶を一時的に失う。また記憶喪失になるだなんて御免だと口にしたエメラは力を再装填する。
「――出番よ、私の勝利の為に出撃なさい」
 森での戦いで用いた魔導蒸気兵たちが現れ、見る間に合体してゆく。
 マリスは軽く首を傾げ、それをどうするのかと考えて問いかける。
「もしかして、その子を……?」
「ええ、取り込まれるのは私じゃなくてこの兵よ」
 頷いたエメラは蒸気兵に命令を下す。実に触れて内部に入りなさい、と。
 従った精兵が誘惑の実に触れた瞬間、その姿は消えてしまった。
 エメラの考えはこうだ。
 もし命令部分を消されても外部通信、又は補助記録装置で再起動すればいい。そしてエメラはもう一度命じる。
「さぁ、やってしまいなさい」
 一瞬の間。しかし、何の反応も手応えも感じられない。
 本来ならば兵の武器であるチェーンソーで敵を切り倒す算段だったが、内部で何かが動いた気配すら分からない。
 何度か通信を送るが、装置が再起動した動きもなかった。
「どうやら遮断されているようですね」
「きっとどの機能も働かなく……いえ、動かし方すら忘れさせられているのね」
 マリスは内部の状況を想像し、エメラもそのようだと結論づけた。エメラ自身が兵の傍にいれば状況は変わったかもしれないが、それは賭けでもあった。
「まぁ私が突入しても思い出せなかったら意味がないわね」
 失敗ね、と潔く状況を受け入れたエメラは森主を見つめて身構える。
「ええ、では共に援護を行いましょう」
 マリスはエメラと一緒に戦い抜くことを決め、周囲にばら撒かれた実から意識を逸らす。外に居れば森主の力が自分たちを惑わせ続けるだろう。
 だが、マリスは誘惑や野生を促す香りを振り解く。
 既に何人かの猟兵が森主の内部に突入していた。だからこそ自分たちは地道に、彼らの帰りを待つ戦いをしよう。
 マリスがそう心に決めたとき、更に妖精の少女が自ら敵の内に飛び込んでいった。その後姿を見送ったマリスとエメラは視線を交わす。
「彼らは、できると思う故に、できるのです」
「……後は任せましょう。けれど、こっちだって負けたりはしないわ」
 エメラは金色のガトリングガンを周囲に浮遊させ、森主を穿つための一閃を放つ。
 戦い方はひとつではない。
 これが自分たちの役目だとして、彼女達は裡に決意を抱いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

エアル・アネモス
……うん、むずかしい話だな。
わたしは、元から覚えていないことが多すぎる故に。
内側からの破壊は、無理だな。
元から覚えていないことは、危機に瀕したところで思い出しようがない。

……だが、わたしは春だ。
木々を愛でるは訳ないこと。
お前の実は腐りて土に還り、お前の青々とした葉は春の盛りと食欲旺盛な虫共に食い荒らされる。
そう在るべき自然の摂理だ。
ならば、お前もそう在れと。
歌い、呪おう。
春の陰は、仄暗く忍び寄るものだ。

円環からも外れたお前が、生きるものを還してやれるはずなどない。
お前のそれは、無為に人々を喰らっていると言うのだ。

森如きの分際で、春の芽吹きたるわたしに己を讃え崇めさせようなど、頭が高い。


愛久山・清綱
俺は其方の声など聞かん。
何故なら俺は、幸せの真っ只中にいる。
己の持った才を活かすことができる幸せを知れたのだから。

手にした幸せを棒に振るなど、言語道断だ。

■闘
実の誘惑を振り解き、正攻法で戦う。

雷槌を【野生の勘】で落ちるタイミングを計り、【残像】を用いた【ダッシュ】で【見切る】。少しでも自分に落ちる感じたら、すぐさまその場から退避する。

森主に近づいたら大なぎなたで【怪力】を込めた【鎧無視攻撃】を放ち、木こりの如き一撃を加える。如何に丈夫な木でも、少しずつ切り口を入れていけば、切り倒せる筈。

相手が弱ってきたら【早業】で抜刀、攻撃力を重視した【夜見】を放ち、一気に畳みかける。

※アドリブ・連携歓迎です



●惑いの香り
 これは、違う。
 間違っている、と脳裏に過ぎるのは『今』への否定。
 振り下ろされた清綱の薙刀をエアルが春告げの若枝で薙ぎ払っていなす。春の花が咲き乱れる枝が振るい返され、清綱への反撃とされる。
 彼らは今、斬り合っていた。
 されどそれは仲間割れなどではない。森主が放つ野生の香りがふたりの意識を惑わせ、同士討ちを行わせているのだ。
 しかし、清綱もエアルも強い違和を感じていた。
 清綱はふたたび振るいかけた刃を引く。其処に彼の信念を感じたエアルも地面を蹴り、彼と距離を取った。
 ――違う。
「俺は其方の声など聞かん」
 否定の思いが裡に強く巡った瞬間、清綱の刃は森主の方へ向けられていた。同時にエアルも我を取り戻し、清綱の隣に並び立つ。
 恐ろしき哉、獣還りの力。
 其々の精神力で同士討ちの罠を逃れた彼らは敵を見据えた。だが、周囲には甘い誘惑の香りを放つ実がばらまかれている。
 実に触れたいと感じるのはまやかしだ。エアルは頭を振り、吸い込まれるとすべてを忘却させられるという森主の内部について思う。
「……うん、むずかしい話だな」
 獣還りを打ち破った今、実の誘惑になど負けはしない。
 それに自分は元から覚えていないことが多すぎる。覚えていないことは、危機に瀕したところで思い出しようがない。故に内側からの破壊は無理だと思えた。
 このまま外部からの攻撃を行うと決めたエアルと同じく、清綱も此処で戦い抜くことを決めていた。
 森の誘惑になど耳は傾けない。何故なら――。
「俺は、幸せの真っ只中にいる。手にした幸せを棒に振るなど、言語道断だ」
 己の持った才を活かすことができる幸せを知れた。
 たとえ一時的とはいえ、そのことを忘れることは出来ない。
 鋭い眼差しを敵に向けた清綱は地を蹴る。すると雷槌が其処に迫った。地面が破壊されて小石や土が飛び散る中、攻撃を避けた清綱は薙刀で敵の腕を斬り裂いた。
「どうやら効いていないようだ」
 彼の一閃が然程のダメージになっていないと気付き、エアルは敵の強靭さを知る。
 しかし、それは元より覚悟していたこと。
 清綱が更なる一閃を放とうと駆ける姿を見守るエアルは己の力を紡いでゆく。
「幾らお前が強かろうとも……わたしは春だ」
 木々を愛でるは訳ないことだと言葉にして、エアルは歌に力を込めた。
 お前の実は腐りて土に還り、青々とした葉は春の盛りと食欲旺盛な虫共に食い荒らされる。そう在るべき自然の摂理だ。
 ならば、お前もそう在れと歌い、呪う。
 沈む春の歌が敵に僅かな影響しか与えずとも、ただ歌い続けよう。
 エアルが響かせてゆく声を聞きながら清綱も森主を相手取る。巨大なだけあって相手の動きは大振り。
 無論、当たればひとたまりもないだろうが見切ることは可能だ。
 大薙刀に渾身の力を込め、清綱は枝葉を抉る。それは木を斬り倒すが如き一撃。
「如何に丈夫な木でも、少しずつ切り口を入れていけば、切り倒せる筈」
 それに、戦っているのは自分達だけではない。
 敢えて実の誘惑に乗って内部に飛び込んだ者たちもいる。彼や彼女の為にも此処で戦い続け、帰りを迎える者だって必要なはずだ。
 清綱が敵を引きつける様に頼もしさめいた思いを覚え、エアルは謳う。
 春の陰は、仄暗く忍び寄るもの。
「円環からも外れたお前が、生きるものを還してやれるはずなどない」
 凛と告げたエアルの視線が悪しき森主から逸らされることはなかった。
 惑いの実の誘いにも獣に還ることも御免だ。
 そして、頷きを交わしたふたりは気を引き締めた。続く戦いがどれほど激しくなろうとも、諦めないと心に決めて――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

鈴木・志乃
描写お任せ

内部に取り込まれる
手紙は目に入りやすいよう開きっぱなし
知り合いに見られそうになったら発狂!

【文面】

好き
大好き
すーごく好き
もう隠してるのが辛いレベルには好き

貴方の冗談めかした一言に
いつも心臓が跳ねそうになる
所作の一つ、気遣いの一つ
面白いくせに優しくて温かい
深い知識と巧みな言い回し
ほんと、惚れるなって方がムリ!

皆を幸せにする貴方は眩く輝いてる
とても綺麗で、だから
私も惹かれちゃったんだ

でもたまに辛そうな顔をする
何か重いものを抱えている
幸せでないと暗に言われたあの日
絶対笑わせてやるって決めたの

その為なら何があろうが
絶対、絶対諦めない
好きだから



正気に戻ったら多分恥ずかしさでUC発動してる



●諦めない心
「……よし」
 志乃は意を決し、誘惑の実に触れる。
 その片手には手紙。それも内部に入ってから目に入りやすいように開いたまま。
 どうか知り合いに見られませんように、と心の中で願った志乃は手にした実を思いきって齧った。舌に広がる甘さの中に妙な酸味を感じた。
 そのときにはもう、志乃の身体は森主の内部に取り込まれていた。
「…………」
 見渡す景色は翠一色。
 志乃は自分が誰なのかすら忘れて、暫し誘惑の森の中を歩いていた。
 このまま一人で静かにこの光景の中に在りたい。ただ、此処に居たい。そう思わせるだけの心地良さがこの場所にはあった。
 しかし志乃は不意に自分が何かを持っていることに気付く。
「手紙?」
 誰かから貰ったのか、自分が書いたのか。それすら今の志乃には分からない。
 自然と手紙を持ち上げて文面に目を通す。
 好き。
 大好き。
 すーごく好き。
 そんな書き出しから始まる手紙を、誰が書いたのだろうと首を傾げる志乃。
 だが、続く文章を目で追う度に妙な気持ちが裡に巡った。
 貴方の冗談めかした一言。
 所作の一つ、気遣いの一つ。深い知識と巧みな言い回し。
 その言葉を見て、誰かを思い出しそうになる。この手紙の主はその誰かに恋をしていたらしい。それも本当に大好きで堪らないくらいに。
「皆を幸せにする貴方は眩く輝いてる。とても綺麗で、だから……」
 いつしか志乃は記された字を口に出して読み上げていた。
「だから……私も、惹かれちゃったんだ」
 その言葉を音にして紡いだ時、胸の奥が熱くなった気がした。
 そうだ。この手紙を書いたのは――。
 志乃は思い出す。
 辛そうな顔をするあの人を。何か重いものを抱えている、あの人のことを。そして決めたんだ。幸せでないと暗に言われたあの日、絶対笑わせてやるって。
「その為なら何があろうが……絶対、絶対諦めない」
 ――好きだから。
 手紙を読み終えた志乃は顔をあげる。
 心を覆っていた忘却の霧はもうすっかり晴れていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティエル・ティエリエル
真正面から蔦や枝を切っていくけど、やっぱり埒があかないよ!
中から攻撃すれば効果的……なんだよね?と自分から中に飛び込んでいくよ☆

内部に取り込まれた後、しばらくは何もかもを忘れて森に実ってる木の実を食べたりして遊んでるの。
でもでも、ママが持たせてくれてたお守りの宝石が熱を発して【呪詛耐性】【毒耐性】を発揮!
ティエルは本当にお転婆なんだからとでも言いたげなママの優しい顔と一緒に故郷の森のことを思い出すよ!

「ボク、こんなところで負けたりしないよ!ママにボクの冒険譚を一杯一杯聞いてもらうんだから!」
風を纏わせたレイピアによる【属性攻撃】【捨て身の一撃】でどかーんと森主の中から飛び出すよ☆



●少女の冒険譚
 仲間が森主を引きつけている間に、ティエルはふわりと宙を舞う。
 刺突剣を振るい、先ずは正面から蔦や枝を切り裂いてみる。しかし、その攻撃は森主にとって何でもないもののようだった。
 攻撃を与えることは容易だが、枝や葉が落とされる程度では敵のダメージにはなっていないらしい。
「やっぱり埒があかないね!」
 ティエルは敵との距離を取りながら頭を振る。
「中から攻撃すれば効果的……なんだよね?」
 それならば行くしかないと少女は覚悟を決めた。そうして実に触れたティエルは翅を羽ばたかせ、自分から中に飛び込んでいく。

 ――暫し後。
 穏やかな心地が満ちる忘却の森の中。
「わあー、おいしそう!」
 ティエルは近くに実っている木の実を齧っていた。甘酸っぱい味が口いっぱいに広がって、幸せな気分が満ちてくる。
 少女の心からは先程の覚悟や気持ちは勿論、戦っていた記憶も消え去っていた。
 それが森主の力なのだが、今のティエルはそれすらも忘れていた。
 囀る鳥の声に耳を澄ませて風に揺れる樹々と戯れる。
 花の香りを楽しんで、ひらひらと舞う。それはずっと此処にいたくなるような満ち足りた気分だ。しかし、其処で異変が起きる。
「熱っ……なんだろ、これ?」
 不意にお守りの宝石が熱を発して、ティエルは驚いて飛び退く。
 何故こんなものを持っているのかすら今の彼女には分からなかった。だが、ふと誰かの顔が思い起こされた。
 ティエルは本当にお転婆なんだから。
 そうとでも言いたげな女性、ううん、ママの顔。そして、優しくてやわらかな記憶。同時に頭の中に広がったのは故郷の森のこと。
「……そうだ、ボクは戦ってたんだ。こんなところで負けたりしないよ!」
 宝石にそっと触れたティエルは気を引き締めた。
 忘れちゃいけない大切なことがある。こんな誘惑の魔法なんて効かない。
 だって――。
「いつか帰ったら、ママにボクの冒険譚を一杯一杯聞いてもらうんだから!」
 そして、レイピアに風を纏わせたティエルは大きく翅を広げた。

成功 🔵​🔵​🔴​

オズ・ケストナー
真正面からがむずかしいなら
シュネー、いこう
実に触れて

…ここは?
なにもない
からっぽだ
わたしは、なに?

ふと腕に座る人形に気づく
きみは?
どうして人形に話しかけたのか
当たり前のように答えはない
向き合って顔を見る
でも
言葉を話さなくても、わたしはきみに背中を押されたことがある
そんな気がして
そう、雪のような髪をしているから
名前が

彼女についた羽飾りを見る
無意識に自分の帽子に手をやり
羽の感触
おそろいで、だれかにもらった
―シュネーさんの分
だれかの声
シュネー?
呼びかけたわたしの耳にしゃらりと聞こえた

武器飾り
たんぽぽの硝子細工
―オズを守ってくれるように
やさしい声
ぜんぶ忘れたくない

うん
わたしは

斧を握り中から攻撃
帰るんだ



●祝福
 樹々が激しく揺らぎ、雷槌の一閃が地面を穿つ。
 飛び散った小石を避けたオズは森主の力の強さを目の当たりにした。外で戦うと決めた仲間たちもいる。だが、真正面からの攻防は厄介極まりない。
 それならば自分も進むべきだと感じて、オズは甘い香りのする方へ歩を進めた。
「シュネー、いこう」
 オズは傍らの彼女に告げ、誘惑の実に触れた。

 いつの間にか閉じていた目をゆっくりとひらく。
 目の前に広がっていたのは囀る小鳥の聲が響く、翠の森の中。
「……ここは?」
 なにもない。からっぽだ。
 そう感じたのは景色についてではなく自分の胸の中のこと。何処かから川のせせらぎが聞こえた。けれど浮かぶのは真っ白で虚しい感情だけ。
「わたしは、なに?」
 ぼんやりとした感覚が廻る。
 からっぽなままだけれど、この森の景色を眺めるのは悪くないかもしれない。心動くことはないが、此処は穏やかで悲しみや苦しみはないように思えた。
 このまますべてを忘れていられたら――。
 そんなとき、ふと腕に座る人形に気付く。
「きみは?」
 問いかけながら思ったのは、どうして自分が自然と人形に話しかけたのかということ。当たり前のように答えはない。向き合って顔を見てみる。
 でも、と手を伸ばしてその髪に触れた。
 言葉を話さなくてもわたしはきみに背中を押されたことがある。
 そんな気がして、その子のちいさな手を取った。
「そう、雪のような髪をしているから……」
 名前が、何かを思い出しかけたときに瞳に映ったのは羽飾り。
 無意識に自分の帽子に手を添えると羽の感触があった。そうだ、これはおそろいで、だれかにもらったもの。
 ――シュネーさんの分。
 頭の中にだれかの声が響いた気がした。これは記憶なのだろうか。
 いつ、何処で。それはまだ思い出せなかったが、浮かんだその名を口にしてみる。
「シュネー?」
 その子に呼びかければ、しゃらりと武器飾りが揺れる音が耳に届く。
 硝子細工の銀星と蒲公英が戯れて唄う音は心地好かった。
 ――オズを守ってくれるように。
 其処にこめられた祈りはやさしくて、あの声はあたたかい。いつしか立っていた場所にあたたかな光が射し込んだ。それはまるでひだまりの祝福のよう。
 ぜんぶ、忘れたくない。
 眩い光を見上げたとき、オズはすべてを思い出していた。
「うん、わたしは……」
 オズはシュネーを抱き上げて斧を握り締める。
 帰るんだ。
 そう言葉にして紡いだ彼の傍らで雪色の髪をした彼女の髪がさらりと揺れた。
 それはまるで、そっと頷いているかのように見えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

パーム・アンテルシオ
忘れちゃいけない事が、あった気がする。
でも、忘れたかった事だった気がする。

私の、手のひらに書かれた文字は…
人を助ける。
これが、忘れちゃいけない事?

違う。
─これは呪いだ。
思い出したくない。
─お前は、生きる事で報いを受けろ。
聞きたくない。
─それが、彼らへの手向けだ。
忘れたい。
それが許されると思っているの?
許されない。
そう、許さない。
生き続けて。思い出して。
みんなの為に。人を、助ける。

人の為に生きる。
思い出せ、なぜここにいるのかを。
進め、止まる事など許されない。
私は、私を許さない。みんなも、誰も、許しはしない。
だから…みんなの為に、人を助ける。
それが、手向けだから。
私が罪から逃れる、唯一の手だから。



●零魂
 鮮やかな緑の森に桜色が揺れる。
 まるで本当の桜が咲いているかのような彩はやわらかな狐の尻尾。
 パームはふわふわとした眼差しを樹々に向け、ゆっくりと森を歩く。いま、どうして自分が此処にいるのかはわからない。
 それでも、とパームは少しだけ俯いた。心にずっと何かが引っかかっている。
 忘れちゃいけない事が、あった気がする。でも、忘れたかった事だった気がする。
 いつしか強く握っていた掌。
 其処に見えた何か。文字が書かれていることに気付いたパームは手をひらく。

 人を助ける。

「これが、忘れちゃいけない事?」
 パームは首を傾げてから、そう書かれている手の平をじっと見つめた。
 すると次第に何だか妙な感情が浮かび上がってくる。
「……違う、思い出したくない」
 ――これは呪いだ。
 ――お前は、生きる事で報いを受けろ。
 聞きたくない言葉が、思い返したくない言葉が自然と脳裏に過った。
 ――それが、彼らへの手向けだ。
 忘れたい。忘れてしまいたい。誰か、忘れさせて。
 手の平から目を逸らしたパームは目を閉じる。きつく瞑った瞼が、そしてそのちいさな身体は震えていた。
 それが許されると思っているの?
 自分の中の何かが問いかけてきた気がした。
 許されない。そう、許さない。生き続けて。思い出して。みんなの為に――。
「人を、助ける」
 パームはその言葉を口にする。
 忘れたいと願ったことはもう、心の中に蘇ってきていた。先程まで何もかも忘れて、自分のことすら覚えていなかったというのに、赦されなかった。
 思い出せ、なぜここにいるのかを。進め、止まる事など許されない。
 パームは閉じていた瞼をひらく。
 その瞳にはもう忘却の森の景色は映っていなかった。彼女が見つめているのは自分の過去と、いまの己自身だけ。
「私は、私を許さない。みんなも、誰も、許しはしない」
 だから――人の為に生きる。
 それが、手向けだから。私が罪から逃れる、唯一の手だから。
「……行かなきゃ」
 静かに呟いた少女は歩き出す。その九尾は何処か哀しげに、けれど確かな意志を宿しているかのように揺れていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャルロット・クリスティア
(果実を手に取る。それはふとした興味からか、はたまた)

……ここは。
私は、何を……?なんで武器何なんかもって……?

行かないと。戻らないと……。……でも、どこへ……?

(ぽとりと懐から落ちる手垢塗れの空の薬莢)
……これは……。

……あぁ、そうだ。
私が初めて弾を作ったときの、その名残。
パパも、ママも、村の皆も、みんなあいつらに……だから、私はその遺志を継ぐために、武器を取ったんだ。
これを作った時よりも……みんな死んじゃったあの時よりも、もっともっと強くなれるように。

……えぇ、そうですね。
忘れてはいけない。……やっぱり、忘れたくない。

やはり私には、ここで止まるという選択肢はなさそうですね。
撃ち抜きます。



●薬莢と銃口
 誘惑の香りを放つ果実を手に取る。
 シャルロットがそうしたのはふとした興味からか、はたまた――。

「……ここは」
 眩むような感覚を覚えた後、立っていたのは森の中。
 甘くやわらかな心地が満ちる場所を見渡した少女はぼんやりと呟く。
「私は、何を……? なんで武器何なんかもって……?」
 何もかも分からなかった。
 白銀の刺突剣も、ライフルやナイフも手には馴染んでいるがどうして持っているのかも覚えがなかった。
 それだけではなく自分の名すら思い出すことが出来ない。
 行かないと。戻らないと。
 それでも何故かそんな思いが裡に巡った。
「でも、どこへ……?」
 何処へ行くかも見当がつかないというのに、何を目指して進めばいいのだろうか。
 少女は樹の傍に座り込んでみる。幹に背を預けて樹々のざわめきを聞いていると何もかもどうでもよくなって来た。
 このまま、此処で眠ってしまおうか。永遠に、永久に。
 誘うような心地が胸を満たす。だが、そのとき。
「……これは……」
 ぽとりと懐から何かが落ちた。それは手垢塗れの空の薬莢。
 それをじっと見つめた少女は、はたとした。
 あぁ、そうだ。
 これは自分が初めて弾を作ったときの、その名残。
 これは忘れてはいけないことだ。どうして自分が武器を持っているのか、何故に弾を作らなければならなかったのか。
「パパも、ママも、村の皆も、みんなあいつらに……だから、私はその遺志を継ぐために、武器を取ったんだ」
 あの日、あのときに誓った。これを作った時よりも、みんな死んじゃったあの時よりも、もっともっと強くなれるように。
 少女は――シャルロットは薬莢を握って立ち上がった。
「……えぇ、そうですね。忘れてはいけない」
 やっぱり、忘れたくない。
 実に触れたとき少しだけ思ってしまった。もし辛い過去を忘れてしまったら自分はどうするのかと。けれど答えはもうこの胸の中にある。
「やはり私には、ここで止まるという選択肢はなさそうですね」
 顔を上げた蒼い瞳には確固たる意志が宿っていた。そうしてライフルを手に取ったシャルロットは銃口を空に向けた。
 ――撃ち抜きます。
 静かな言の葉が落とされた後、天を穿つ銃声が忘却の森に響き渡った。

成功 🔵​🔵​🔴​

アウレリア・ウィスタリア
嫌な思い出は棄ててきたボクにこんなまやかし…

…私はなんでこんな場所に?
眩しい青空
私の手を引くアナタは誰?
眩しくて顔が見えない
見えるのは大きな白い翼

その先で手を降るアナタは?
私を受け止めるように手を広げるアナタは誰?
眩しくて顔が……その背に黒い翼を持つアナタは?

あぁ、歌が聞こえる
懐かしい歌……なのかもしれない
私も歌おうとするけど声が出ない
不思議に思って喉に手を伸ばす
そこで触れるのはチョーカーに飾られた紫水晶
指に引っ掛かるのは誰のものか覚えていないペアリング

あぁ、そうか
ボクは何も覚えていないけれど
こんな日々を経験していたんだ

私は夢から覚めてボクの現実へ

【空想音盤:理想】
さあ、ボクたちの敵を滅ぼそう



●遠き日々
 甘い誘惑の香りが目の前を眩ませる。
 惑わせようとする不穏な魔力が此方を内に誘う。
「嫌な思い出は棄ててきたボクにこんなまやかし……」
 アウレリアは足元の実に手を伸ばし、森主の内部へと取り込まれることを決意した。そして――。
 
「……私はなんでこんな場所に?」
 実に触れた直後、アウレリアが立っていたのは穏やかな森の中だった。
 先程までいた場所とほとんど変わりのない静かな場所。だが、アウレリアは既に自分がどうして此処にいるのかすら忘れてしまっている。
 忘却の先に待っていたのは更なる忘却。
「なんて心地好い場所」
 ゆるりと歩を進めてやわらかな草の感触を確かめる。囀る小鳥の声を聞いて目を細め、枝葉に手を伸ばす。
 アウレリアは森の心地を心から楽しみ、眩い空を見上げた。
 そのとき、不意に首元で何かが揺れる。
 首に触れてみるとチョーカーに飾られた紫水晶が指先に当たった。そして、指に引っかかるのはペアリング。
 誰のものかも覚えていない。今のアウレリアにとってそれは不思議なものだった。
 理解できない感覚をおぼえながら川縁へと歩いてゆく。
 そして、冷たい水に素足を浸して降り注ぐ陽をもう一度見上げてみる。
 胸の奥で妙な感情が燻り、何かが見えた気がした。
 目映い青空。私の手を引くアナタは誰?
 はっきりと顔は見えず、大きな白い翼が印象的だった。
 その先で手を降るアナタは、私を受け止めるように手を広げるアナタは誰?
 背に黒い翼を持つアナタは――。
「歌が……懐かしい、歌……」
 アウレリアは水面を見つめて耳を澄ます。
 自らも歌おうとするが声は出ない。どうして、と喉元に手を伸ばせば、ふたたび紫水晶に指先が触れた。
 そして、アウレリアは気が付く。
「あぁ、そうか。ボクは何も覚えていないけれど……」
 こんな日々を経験していたんだ。それは朧気で記憶と呼ぶには少し遠いもの。それでも、自分は自分だと思い出した。
 ――『私』は夢から覚めて『ボク』の現実へ。
 戻らなきゃ、と立ち上がったアウレリアの瞳にはもう夢は映っていなかった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ユーリ・ヴォルフ
チコル・フワッフルと行動
アドリブ歓迎!

チコルは強いな…ああ、勿論傍に居る
共に乗り越えるとしよう…いくぞ!
その実を口にする

森の中で、何も思い出せずに途方に暮れる
だが、孤独ではないのか。傍に居るこの少女は誰だ?
…不安そうな少女を見ると、なんだか胸が痛む
笑顔で居て欲しい。いつものように
…いつも?
だっ、抱きしめる!?ああ、構わないが…!

抱きしめ幸せそうにしている少女
ああ、いつもこうして傍に居た
誰よりも守りたいと思っていた
…君は、チコル・フワッフル。私の相棒だ
(そして…私が密かに想いを抱く、大切な人だ
今だって、君が私の記憶を呼び覚ましてくれた)

ああ、脱出するぞ!
真の姿を解放し炎の騎士に
UC全力攻撃!


チコル・フワッフル
ユーリ・ヴォルフと行動
★アドリブ歓迎!

記憶を無くすのは怖いけど……ユーリと一緒なら、大丈夫な気がする!
行こう、ユーリ。後で会おうねっ。
小さな実を、ぱくり。

目を覚ますと知らない森の中。傍には知らない人。
ここはどこ?貴方は誰?
私は……誰だっけ?

何も思い出せないけど、何だか不思議。
彼を見てると、心が弾んで楽しい気持ちになってくるの。
私は彼を、知っている……?

私の【野生の勘】が叫ぶ。五感で確かめろと。
ねぇ。だ、抱きしめても、いいかな……?

彼の温もり、香り、腕の感触。私は、彼を知ってる。
……ユーリ。貴方は、ユーリ・ヴォルフ!
そして私は……

さぁ、ここを出よう!
真の姿、狐の獣人になって宿主にUCで全力攻撃!



●大切な絆
 記憶を無くすのは怖い。
 けれどふたり一緒なら大丈夫。そんな気がするのだと告げ、チコルは前を向く。
 彼女の眼差しと意志が強いと感じ、ユーリは勿論傍に居ると伝える。
「行こう、ユーリ。後で会おうねっ」
「共に乗り越えるとしよう……いくぞ!」
 そして、ふたりは誘惑の香りを放つ実を口にして森主の内部へと自ら取り込まれてゆく。たとえすべてを忘却したとしても、必ずふたりで戻ってくると誓って――。

 目を覚ますと見覚えのない森の中にいた。
 傍にいたのは知らない人。チコルが首を傾げるなか、ユーリも何も思い出せずに途方に暮れていた。だが、不思議とお互いに嫌な心地はしない。
 されど自分の名前すら忘れてしまっている今、不安がないといえば嘘になる。
「ここはどこ? 貴方は誰? 私は……」
 誰だっけ、と俯いてしまったチコルを見つめるユーリは首を振った。
「すまない、答えられない」
 自分も思い出せないのだと告げた彼は己の胸が痛む感覚をおぼえる。それでも何も分からぬ状況でも彼女が居るから孤独ではない。そのことは少しの支えになった。
 そしてユーリは不安げな彼女を見て思う。
 ――笑顔で居て欲しい。いつものように。
(……いつも?)
 自分の中に浮かんだ思いに疑問が巻き起こるが、今のユーリの裡に答えは見つからなかった。チコルもまた、不思議な思いを感じていた。
 何も思い出せないけど、彼を見ていると心が弾んで楽しい気持ちになってくる。
(私は彼を、知っている……?)
 チコルが顔を上げるとユーリと視線が重なった。
 どうしてか自分の勘が告げている気がする。五感で確かめろと。あたたかな心地を感じる彼へと、意を決したチコルは願う。
「ねぇ。だ、抱きしめても、いいかな……?」
「だっ、抱きしめる!? ああ、構わないが……!」
 突然のことに驚いたユーリだが、どうしてか断る理由は見つからなかった。
 そっと彼に近付いたチコルは両手を広げ、真正面から抱きつく。自然と目を閉じたチコルの口許がふわりと緩んだ。
 自分を抱きしめて幸せそうに微笑む少女を見下ろし、ユーリは気がつく。
 ああ、いつもこうして傍に居た。
 誰よりも守りたいと思っていた。
 チコルは自分の背を包み込む彼の腕のあたたかさを感じ、ゆっくりと瞼を開く。
 彼の温もり、香り、腕の感触。
 どうして忘れてしまっていたんだろう。こんなにも大切だったのに。
 私は、彼を知っている。
「……ユーリ。貴方は、ユーリ・ヴォルフ」
 チコルは自分を思い出すよりも先に彼の名を言葉にした。
 名を呼ばれたことですべてを思い出したユーリもまた、少女の名を音に乗せる。
「……君は、チコル・フワッフル。私の相棒だ」
 相棒であり、大切な人。自分の記憶を呼び覚まし、この名を呼んでくれたかけがえのない存在、それが彼女だ。
 ふたりは今、すべてを取り戻した。
 先程よりも強くお互いを抱きしめあったふたりは頷きを交わす。
「さぁ、ここを出よう!」
「ああ、脱出するぞ!」
 多くの言葉は要らない。やるべきことはもう分かっている。
 チコルは狐の獣人へ、そしてユーリは炎の騎士へとその姿を変える。其々の力を紡いだ彼らは地を蹴り、そして――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ルイーネ・フェアドラク
ユハナ(f00855)
子のような庇護欲抱く存在

お前は誰だ
俺を知っているのか

見知らぬ子供、見知らぬ場所
後付けの敬語は失われ、警戒に毛をそばだて

どうしてだろうな、酷い罪悪感がある
俺はきっと、失くしてはならないものを失った

懐に過去を書き留めたメモ
小説の物事のように遠い
ユハナと揃いの守り石
これは……大事なものだとは、わかるけどな

かけた保険も結局足りず
不意に掴んだ彼の冷たい手が
トラウマを呼び起こす

遠い冬の朝
目覚めれば幼い妹はひとり事切れていた
冷たい手
妹の顔すら忘れても、心に突き刺さる棘のよう

記憶戻れば、子どもの手は氷よりは温い
情けないな
もっと容易いと思ったんですがね

手を握り、名を呼ぶ
ユハナ、おいで


ユハナ・ハルヴァリ
ルイーネ(f01038)
時々親にするように甘える

一度は全部を洗い流すように忘れ去った
もう一度忘れたら
僕は何に、なるんだろう
魔物の次は
ばけものだろうか。

気付けば隣に知らない大人
歌えばいい?殺せばいい?
それしか知らない
喋ったら怒られるし、歌えなければ無意味なモノ
だから暖かい掌が触れるのは初めてで、驚いて
知らない筈なのにどうしてか
何かを手放したような気分になる
揺れる守り石を見下ろして

昔は名を呼ばれた事は殆どなくて
少し遅れて目を瞬いた
招くその音はきっと、怖がる必要なんて無い
…ルイーネ
合ってますか、なんて訊いてしまう
こわくて。

解く長杖
裡からその身を穿ちながら
疎まれないならその手を、離せない



●祈りと暖かな色
 その果実は忘却を導くもの。
 ユハナ・ハルヴァリ(冱霞・f00855)は傍らのルイーネ・フェアドラク(糺の獣・f01038)を少しだけ見遣った後、赤い色をした実に目を向けた。
 一度は全部を洗い流すように忘れ去った。だったら、もう一度忘れたら。
「僕は何に、なるんだろう」
 魔物の次はばけものだろうか。
 続く言葉は胸中に押し込め、ユハナは手を伸ばす。ルイーネは耳に届いた声に敢えて答えることはせず、自らも実に指先を近付けた。
 すべてはこの世界に平穏を取り戻すため。忘却の森へと向かうべく――。

 気付けば緑深き森の中にいた。
 見知らぬ場所に見知らぬ人。何故に自分が此処にいるのかを思い出そうとしても、靄がかかったように思考が遮られてしまう。
 それだけではなく、己の名すら分からなかった。
 男は傍らに立っていた子供を見下ろし、警戒の入り交じる口調で問う。
「お前は誰だ。俺を知っているのか」
 すると子供はふるふると首を横に振った。
 彼を見上げた少年もまた、気付けば隣にいた知らない大人をじっと見つめている。
 ――歌えばいい? それとも、殺せばいい?
 何も分からない。それしか知らない。何事も思い出せなくとも、そのことだけは身体に刻まれていた。喋れば怒られるし、歌えなければ無意味なモノだ。
 誰がそう言っていたのか、誰がそう決めたのかは今の少年には分からない。
 目の前の子供が何も発しないことに首を傾げ、男はちいさく溜息をついた。
 どうしてだろうか、酷い罪悪感を覚える。
「俺はきっと、失くしてはならないものを失ったのだろうな」
 本来の彼が普段使っている敬語は消え去っていた。そもそも今の彼はそれすら忘れ去っている。そして、ふと懐に何かが入っていることに気がついた。
 それは過去を書き留めたメモのようだ。
 男はじぃと自分を見上げる子供から目を逸らして文面を眺める。しかしどれだけ呼んでも小説の物事のように遠い感覚しか得られなかった。そして、彼は守り石に目を落とす。
「これは……大事なものだとは、わかるけどな」
 改めて子供を見下ろすと、自分と似た石を持っているように見えた。
 深い海色と錆びた赤色。まるで対になるような色合いであり、少年も不思議そうに揺れる守り石を見ている。
 それは、と腕を伸ばせば手と手が不意に触れあった。
 冷たい少年の掌に対して男の手はあたたかい。少年は思わず驚き、彼から伝わってくるぬくもりに意識を向けた。
 知らない筈なのに、どうしてか何かを手放したような気分になる。
 同時に男は遠い冬の朝を思い出していた。
 目覚めれば幼い妹はひとり事切れていた。その冷たい手は忘れたくても忘れられない。もう妹の顔すら忘れているというのに、あの冷たさだけは突き刺さる棘のように心を抉る。
 だが、彼は――ルイーネはそこで己を思い出した。
 されど今触れている子供の手は氷よりは温い。
「情けないな。もっと容易いと思ったんですがね」
 今まで忘却に囚われていたことに肩を落とし、ルイーネは少年の手を握り直す。
 そして、その名を呼ぶ。
「ユハナ、おいで」
「……」
 そうだ、昔は名を呼ばれた事は殆どなかった。少し遅れて目を瞬いたユハナもまた、今の自分を取り戻した。
 招くその音はきっと、怖がる必要なんて無い。
「……ルイーネ」
 名を呼び返す。合ってますか、と訊いてしまうのはこわかったから。
 そして彼は静かに頷き、大丈夫だと示すように銀の瞳にユハナの姿を映した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

狼谷・賢太郎
抵抗はせず、実の中に吸い込まれるぜ
オレならきっと大丈夫!

なんか懐かしい匂いのするとこだな、ここ
あれ、何か大事な事を忘れてる気がすっけど――
とか言って森の中へ歩いていこうとしたら、オレと同じくらいのでっけー狼に頭突きされた!いってえ!
お前っ、ヴァナルガンド!……って、ああ、そうだったな
オレが孤児院のシスターに拾われる前の狼達に育てられてた頃、気づいたら精霊のお前がそばにいたっけ

あれから色々あったけど、ずっと一緒だったよな、オレたち
大丈夫、忘れたりしねーよ
二人でいろんな世界を見て回るって約束したもんな!

へへ、他のみんなの事も忘れてねーってば
……うし、こんなとこさっさとぶち破って、みんなで帰ろうぜ!



●少年は未来を視る
 森主は悍ましく強大なものだと感じた。
 賢太郎は拳を握り、目の前にばら撒かれた誘惑の実を見つめる。
 鼻先をくすぐる香りは得も言われぬもので意識が其方に引っ張られそうになる。だが、賢太郎の眼差しは真っ直ぐでひとかけらの迷いもない。
「オレならきっと大丈夫!」
 決して自分を疑ったりなどせず、賢太郎は赤い果実に手を伸ばした。
 そして、少年の身体は森主の中に吸い込まれてゆく。

 気が付けば賢太郎は不思議な場所にいた。
「なんか懐かしい匂いのするとこだな、ここ」
 地に足がついているというのにふわふわとした感覚がして、森のざわめきや川のせせらぎも聞こえはするが何処から聞こえてくるかも曖昧だ。
 されど森の景色は美しく、木漏れ日が揺れる様は見ていて心地よかった。
「あれ、何か大事な事を忘れてる気がすっけど――」
 まあいいか、と賢太郎は歩き出した。
 何処に向かっているのかは自分でもわからない。今まで何をしていたのか、どうして此処にいるのか。それから、自分の名前も覚えてはいない。
 首を傾げながら森の奥に踏み入る。だが、そのとき。
「いってえ!」
 不意にやわらかな感触をした何かに頭突きをされ、賢太郎は尻餅をついた。何するんだよ、と顔をあげた賢太郎はその狼の名を呼んだ。
「お前っ、ヴァナルガンド!」
 自然に言葉が出たのは先程の衝撃が切欠になったからだろう。
 いてて、と口にした賢太郎は手を伸ばしてヴァナルガンドに触れる。その手触りは忘却の森に満ちた空気よりも懐かしく、確かなものだった。
「ああ、そうだったな」
 段々と記憶がはっきりしてきたらしく、賢太郎は思い返す。
 ルウと名付けられた孤児院での暮らし。シスターに拾われたときのこと。そして、それよりも前――狼たちに育てられていた頃のこと。
 気づいたら精霊のお前がそばにいたっけ、とヴァナルガンドを撫でる。
「あれから色々あったけど、ずっと一緒だったよな、オレたち」
 大狼は賢太郎の指先の匂いを嗅ぐようにして鼻を近付けた。大丈夫、忘れたりしねーよ、と言葉にした賢太郎は立ち上がる。
「二人でいろんな世界を見て回るって約束したもんな!」
 そして、賢太郎は十字架の首飾りに触れた。水馬に大蛇、鷲木菟、そして大狼。皆が大切な仲間であり、忘れてはいけない存在だ。
「……うし、こんなとこさっさとぶち破って、みんなで帰ろうぜ!」
 精霊たちに呼び掛けた賢太郎の表情は明るく、目映いほどの笑みに満ちていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

オブシダン・ソード
【帽子と剣】
内側から斬った方が早いんでしょ?
まぁ何とかなるって
アメリアに持ってもらった状態で、森主の中へ

僕が誰かなんて事は、実は大したことじゃない
自分が何かは一目瞭然。そして僕の願いは、きっと変わらないのだから

えーと
はじめましてお嬢さん
僕は君が持ってる黒耀石の剣…便宜上オブシダン・ソードと名乗っておこう
君の事は知らないけれど、僕を持っているのだから、君は僕の相棒だよ

さあ、君は今、何がしたい?
僕はそれに手を貸すよ

ふうん、良いね。僕も空は好き

じゃあ、一緒に空を見に行こう
空を隠す枝葉も、行く手を遮る木々も
邪魔なものは全部僕がぶった斬ってあげる

君の願いを叶えられれば、僕もきっと思い出せる
君の名前は――


アメリア・イアハッター
【帽子と剣】
そうね、わざと中に入ったほうが簡単みたい
ダンダンもいるしなんとかなるよね!

とはいえ油断せず準備
素早くUCを使用し手に持てる大きさの空の絵を作る
描くのはヤドリガミとなり最初に見上げた空
元々記憶のない私だけど、この空があればきっと私は私でいられる
友達を握り締めいざ実の中へ

自分を忘れてもきっと目に入る
誰かの想いの篭った装備達
空への希望が詰まった帽子
左手には愛して止まぬ空
右手には大切な友人

貴方はだぁれ?
相棒?オブシダン?……それじゃあ、ダンダンね
私がしたいこと、それは……
空が、空が見たい
誰かと、君と一緒に、空が見たい!

剣を振るってこの森から出よう
でも私の名前は相棒じゃないよ
私の名前は−−−



●Fly High
 刃を振るい、力を紡ぐ。
 されど森主の枝葉を少しばかり削ぐだけにしかならず、手応えは薄かった。
「内側から斬った方が早いんでしょ?」
「そうね、わざと中に入ったほうが簡単みたい」
 敵の力を確かめたオブシダンは自分を手にするアメリアへと軽く問う。アメリアも同じことを考えていたらしく、誘惑の香りを放つ実に目を向けた。
「まぁ何とかなるって」
「ダンダンもいるしなんとかなるよね!」
 ふたりはいつも通りの調子で次の行動を決める。そして、アメリアはオブシダンを確りと握り締めた後、誘惑の実に手を伸ばした。

 風が吹いていた。
 森の樹々が揺れ、穏やかなざわめきが聞こえる。枝葉に空が覆い隠された深い森の奥、少女はそっと目を閉じてその音に耳を澄ませた。
 自分がどうやって此処に来たか思い出せない。名前も分からない。それはこの森が忘却の香に満ちているからなのだが、今の少女はそれすら忘れ去ってしまっていた。
「えーと、はじめましてお嬢さん」
 そんなとき、誰かの呼び掛けが聞こえた。
 自分が話しかけられたのだと気付いた少女は周囲を見渡す。だが、人影は見えない。こっちこっち、と呼ぶ声に視線を落とす。
「貴方はだぁれ?」
「僕は君が持ってる黒耀石の剣……あれ、何か忘れちゃってるな。まあいいや」
 剣である彼もまた、自分のことが分かっていなかった。
 しかし彼は何も動じていない。
 自分が誰かなんて事は実は大したことではないのだ。己が何かであるは一目瞭然。ただ在るがままを語る彼は暫し考える様子を見せ、自身を表すのに丁度良い呼び名を導き出した。
「そうだね、便宜上オブシダン・ソードと名乗っておこう」
 それは黒曜石の剣そのままの意味であり、少女はくすりと笑う。
「オブシダン? ……それじゃあ、ダンダンね」
 思い浮かんだあだ名を口にした少女。それを聞いたオブシダンは悪くない呼び名だと返した。そうして少女はもうひとつ問いかける。自分を知っているのか、と。
「君の事は知らないけれど、僕を持っているのだから、君は僕の相棒だよ」
「相棒?」
 そっか、と呟いた少女は足元を見下ろした。
 其処には空の絵が描かれたちいさな紙が落ちている。きっと自分が落としたのだろうと思い、少女はそれを拾い上げた。
「見て、ダンダン。何だか懐かしく感じる空だね」
「ふうん、君は空が好きなの?」
 オブシダンが問うと少女は、うん、と頷く。
 何もかも忘れてしまったけれどこれだけは分かった。それに何だか身につけているものが自分に何かを思い出させてくれそうだった。
 誰かの想いの篭った装備。空への希望が詰まった帽子。左手には愛して止まぬ空。
 オブシダンは少女にもう一度、質問を投げかける。
「さあ、君は今、何がしたい? 僕はそれに手を貸すよ」
「私がしたいこと、それは……空が、空が見たい。誰かと、君と一緒に、空が見たい!」
「良いね。僕も空は好き。じゃあ相棒、一緒に空を見に行こう」
 それならば、とオブシダンは語る。空を隠す枝葉も、行く手を遮る木々も邪魔なものは全部僕がぶった斬ってあげるから、と。
 彼女の願いを叶えられれば、自分も思い出せるはず。
 オブシダンを握る少女も心に巡った思いを強く抱く。
 あの空があればきっと私は私でいられるから、何も怖くはない。
「でも私の名前は相棒じゃないよ」
「ああ、そうだったね」
 少女が明るく笑む様にはっとして、オブシダンは裡に浮かんだ彼女の名を言葉にする。そのときにはもう、彼を覆っていた忘却の力は消え去っていた。
「君の名前は――」
「私の名前は――」
 そして、アメリアもすべてを思い出した。
 大切な友人に呼ばれた己の名を胸に、空を目指して。
 誰かの刃で在ること。そして、あの空にいったい何があるのかという希望。
 剣の願いと、その気持ちはずっとずっと変わらない、確かなもの。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

穂結・神楽耶
【アドリブ歓迎】

そこは穏やかな森の中。
はて、どうしてここにいるのでしたっけ?
わからない、おぼえていない。
まあいいや、とも思っている。
だってずっとここに居さえすれば、なにも苦しむことはない。
それはきっと、やさしくて、しあわせな。

──ちりん、と。

清らに響いた、鈴の音。
引かれて見下ろした手には焼けたお守り。
『穂結・神楽耶』を形作るもの。
鍛え抜かれた直刃の文。我が身がわたくしを揺さぶる。

記憶とは、人の身だけでなく。
神を宿すに至ったこの刃にもあるものだ。

……ええ。思い出しました。
今のわたくしのすべきこと。
【朱殷再燃】。
さあ燃え盛れ、我が悔悟。──過去を、なぎ払え。



●再燃
 其処は穏やかな森の中で静寂が広がっていた。
 神楽耶はやわらかな草と大地を踏みしめ、軽く首を傾げてみる。
「はて、どうしてここにいるのでしたっけ?」
 わからない、おぼえていない。
 これまでのことも、どうやって此処にきたのかも、自分自身のことも。
 それでも神楽耶は慌てることも怯えることもなかった。まあいいや、とすら思っているらしく、森の心地を楽しむ。
 だってずっとここに居さえすれば、なにも苦しむことはない。
 この森と翠はすべてを包み込んでくれるあたたかさがある。恐怖も、不安も、寂しさも感じない。
 それはきっと、やさしくて、しあわせな――。
 其処まで考えた神楽耶が忘却の森に身を委ねようとしたそのとき、音が聞こえた。
 ──ちりん。
 清らに響いたのは、鈴の音。
 その音の元を探って見下ろした手には焼けたお守りがあった。
 これが何なのかも、いつの間に持っていたのかも思い出せなかった。神楽耶はじっとお守りを見つめる。
 すると少しずつ何かが心の裡に浮かび上がってきた。
 忘却の誘いは心地好かったが、それ以上に強い思いが内から湧き上がってくる。
 それは『穂結・神楽耶』を形作るもの。
 そして、鍛え抜かれた直刃の文。我が身が己を揺さぶる。そんな気がして神楽耶は携えていた太刀の柄に無意識に触れた。黒塗りの鞘に朱の柄糸は見覚えがある。
(そうです、わたくしはこれを……)
 はっとして顔を上げた神楽耶はすべてを思い出す。
 この刃と共に戦い抜いてきた日々を。そして、記憶を。
 記憶とは、人の身だけでなく神を宿すに至ったこの刃にもあるものだ。
「……ええ。思い出しました」
 この森に足を踏み入れたのは使命を果たすため。
 平和を取り戻し、過去から生まれた残滓を骸の海に還すこと。それが――。
「今のわたくしのすべきこと」
 はっきりとした声で意志を紡いだ神楽耶は結ノ太刀を抜き放つ。
 朱殷再燃。
 さあ燃え盛れ、我が悔悟。
「――過去を、なぎ払え」
 その声と共に炎が舞い上がる。惑いの森を焼き尽くすかのような焔は赤く、朱く。
 決意の火は強く、まやかしの心を打ち破った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

逢坂・宵
ザッフィーロ君(f06826)と

大切なもののある限り
永劫に忘却の彼方ということはないと信じています

まあ、きみと一緒ならばなんでも乗り越えられると信じていますが
【高速詠唱】【全力魔法】を乗せた
『天航アストロゲーション』で狙い撃ちを図りますが
果実の誘惑にぐらりと傾ぐかもしれません
何もかも忘れてしまったなら前後不覚に陥るでしょう
しかし彼と揃いの守り刀と…… 手に手をつかむその温もりさえあれば
僕の帰るところ、きみの帰るところはここですから
帰る場所ある限り忘却はあり得ない
僕もきみと同じと信じていましたよ
戻ってこれたなら本領発揮とまいりましょう
ザッフィーロ君の援護を行いつつ
牽制を交え攻撃を行います


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と
忘却の果実、か
全て忘れたら俺は俺なのだろうか…と
ああ。そうだな
隣に宵が居るのだからな、思い出せぬ訳がないだろう

戦闘と同時に【蝗達の晩餐】を敵へと放つも、果実の誘惑を受ければ宵と揃いの守り刀を左手に
そして別の場所に取り込まれる等御免だろうと軽口と共に宵の手を右手で掴もう

取り込まれれば記憶を失うのだろうが…手の先の相手と刀を見れば己を取り戻すのだろう
俺の帰る場所は隣にある故、見失いようがないからな
…正気に戻り宵を見れば、同じ想いだったのだと自然と伝わり思わず笑みが零れるかもしれん
その後は内部から【蝗達の晩餐】を放ちつつメイスで攻撃を
やられた分は精々返させて貰う故、覚悟して置くがいい



●暁と宵
 宵帝の杖の先へ、導かれるのは空より降り注ぐ隕石。
 森主の枝葉をそれらが穿つ中、罪穢の力が蝗の影となって更に襲い掛かってゆく。宵の一閃とザッフィーロの影撃を連続で受けて尚、森主はびくともしない。
 ふたりは視線を重ね、敵への攻撃が然程効いていないことを確認しあう。
 その間にも新たな誘惑の身が放たれ、彼らを惑わせる。
 ぐらりと傾いだ宵の傍ら、ザッフィーロは頷いた。
 外からの攻撃がこれほどまでに通じぬのならば内部から壊してやればいい。宵も同じ思いを抱いており、ふたりは覚悟を決める。
「忘却の果実、か。全て忘れたら俺は俺なのだろうか……」
「きみと一緒ならばなんでも乗り越えられると信じています」
 ザッフィーロがふと呟けば、宵が双眸を細めて告げた。そして、彼らは揃いの守り刀を手にして果実に腕を伸ばす。
 共にある限り、永劫に忘却の彼方に留まってしまう可能性の方が低い。
 たとえすべてを忘れてたとしても失いはしない。
「別の場所に取り込まれる等御免だろう」
 ザッフィーロはそんな軽口と共に宵の手を右手で掴み、その身を誘惑に委ねた。
 一瞬後。
 眩い光に包まれたかのような感覚をおぼえ、宵は顔を上げた。
 この場所は何処だ。
 今まで何をしていたのか。
 自分は誰だ。そして、手を繋いでいる彼は――。
 宵は翠が揺れる惑いの森の中で不思議そうに首を傾げた。隣に並び立つザッフィーロもまた、何故に自分が彼と手を取り合っているのかが疑問だった。
 何もかもが分からないことばかりで前後不覚に陥る。
 このまま何も気にせずに妙に居心地が良いこの森に居たいという思いが巡った。だが、ふたりはふと其々が握る刀が似通っていることに気付く。
「これは……?」
「大切なもの、のような気がするな」
 宵はザッフィーロの、そしてザッフィーロは宵の守り刀を見つめた。
 不思議と心地好いのは森が誘うからだけではない。他ではない、彼が隣にいるからだ。そう気付いた宵は触れている手の温もりを強く意識する。
 既に心にかかっていた忘却の霧は晴れはじめた。
 こんなまやかしの力など、互いの間にある絆に比べれば大したものではない。
「僕の帰るところ、きみの帰るところは――」
「隣にある故、見失いようがないからな」
 宵がそっと口をひらけば、その言葉の続きをザッフィーロが紡ぐ。
 戻るべきところはここ。互いの傍。
 大切なもののある限り、帰る場所ある限り、忘却などあり得ない。すべての記憶を取り戻した彼らは来た時と同じように頷きを交わしあった。
「僕もきみと同じと信じていましたよ」
 宵が柔らかく笑むと、ザッフィーロも思わず笑みを零す。自分たちが同じ想いだったののならばもう何も恐れることなどない。
 元より心配も不安もなかったのだと思い出し、宵は杖を構えた。ザッフィーロもメイスを手に取って森主への反撃を誓う。
「やられた分は精々返させて貰う故、覚悟して置くがいい」
「本領発揮とまいりましょう」
 持てる限りの全力を紡ぎ、ふたりは忘却の森を内部から打ち壊してゆく。
 きっとこれからも進む先や、目指す場所は同じ。
 ふたつの守り刀が示してくれたのは対の信念。
 そして――帰るべき場所が此処に、すぐ傍にあるという揺るぎない真実。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

月夜・玲
【戒道・蔵乃祐 f09466】
戒道さんと同行

虎穴に入らざれば虎子を得ず…ってやつ?
まあ、多少のリスクは覚悟の上かな
じゃあ、戒道さん行こうか
折角だし同じ実に入ろうよ
それならお互い、思い出し易いだろうしね
じゃ、もしもの時はよろしく頼むね

●戦闘
実に触れて森主の内部に取り込まれよう
例え全てを忘れても、私にはこの剣がある
自ら鍛え作り出した剣達、これこそ私の生き様であり私の人生全て
これがある限り、私はきっと思い出せる
だから大丈夫、躊躇無くイケる
それに、信頼出来る仲間も一緒に居るしね

思い出したら《RE》Incarnationを抜刀
ソード・ファントム…不可視の刃よこの空間を切り裂け!
さあ反撃の開始だよ!


戒道・蔵乃祐
月夜さん(f01605)と引き続き参加です
(木に胴と手足が生えてる…)

面妖。
しかし…、この芳しい香りはなんなんでしょうね…

心惹かれるし…とても眠い

◆対抗
深く深く微睡みに囚われてしまうでしょう

生きるが故の苦しみも、現世の雑音も存在しない完全な静寂
志を捨て去り、朽ち果て没するには最高の環境かもしれない

だが、衆生に苦痛は満ちれども。命有るが故に人は懸命に足掻く

苦しむために命は生まれてくるのだとしても。出逢いと別離
記憶の積み重ねと零れ溢れ出る沢山の感情を得て、人は人生のキャンバスに鮮やかな彩りを描き足す

孤独で無味乾燥な張り子の世界、惑わされこそすれど。それだけです

範囲攻撃となぎ払いの火界呪で火葬します



●命有る限り
(木に胴と手足が生えてる……)
 森主を目にして蔵乃祐の頭に浮かんだのはそんな感想。しかし、驚きは表に出さぬまま蔵乃祐は一言だけ呟く。
「……面妖」
 その声に玲もそうだねと頷いて身構える。
 既に他の猟兵たちが森主に攻撃を行っているが、それらが効いているようには見えなかった。内部からの攻撃がやはり得策なのだろう。
「虎穴に入らざれば虎子を得ず……ってやつ?」
 玲は神妙な表情を浮かべながらも、多少のリスクは覚悟の上だと続ける。
 そして、玲は蔵乃祐を見上げた。彼もまた同じ覚悟を抱いているようだ。だが、それ以上に誘惑の香りが気になっている様子。
「しかし……、この芳しい香りはなんなんでしょうね……」
 心惹かれるのはそれが此方を誘っているからなのだろう。玲も眩むような感覚をおぼえつつ、拳を強く握る。
「じゃあ、戒道さん行こうか」
「はい、敢えてこの香りに誘われてみましょう」
 折角だし同じ場所へ。玲の言葉に同意した蔵乃祐は例の実に歩み寄った。
 きっと一緒ならばお互いに思い出し易いはず。
「じゃ、もしもの時はよろしく頼むね」
 そして――玲の声と共にふたりは忘却の森の入り口へと手を伸ばした。

 深く深く、微睡みに誘われるような心地。
 いつの間にか閉じていた目をあけると、其処は緑に包まれた空間だった。
 隣にいたのは知らない人。
 玲は巨躯の彼を不思議そうに見上げた。蔵乃祐もまた、玲に気付いて見下ろす。
 視線が交差する。けれど何も思い出せなかった。誰だろう、という思いはあっても忌避感はない。そういった感情までもを忘れてしまったかのようだ。
「心地好い場所ですね」
「そうね。このままずっと此処にいたいような――」
 蔵乃祐がそう話しかけると玲は素直に頷く。
 そうして暫し、何も分からないままの静かな時間が流れていった。
 蔵乃祐は思う。
 此処には生きるが故の苦しみも、現世の雑音も存在しない。完全な静寂の中だ。志を捨て去り、朽ち果て没するには最高の環境かもしれない。
 そして、玲は無意識に携えた剣に触れていた。
 先程まで何かをこの刃に感じていた気がする。しかしそれが思い出せない。遠き空に思いを馳せるような、そんな感覚が巡った。
 きっとふたりで此処に立っている意味が何かあったはず。
 そう感じたとき、玲がはっとする。
 そうだ、これ還りつく為の力だ。たとえ全てを忘れても、自分にはこの剣があるのだと思っていた。
 自ら鍛え作り出した剣達、これこそ己の生き様であり、人生の全て。
「そっか……これがある限り、私は平気だって信じて此処に来たんだったね」
 己を取り戻した玲の傍ら。
 蔵乃祐もまた自分の内にある感覚を思い出しかけていた。
 この場所には苦痛などない。だが、衆生に苦痛は満ちれども。命有るが故に人は懸命に足掻く。苦しむために命は生まれてくるのだとしても――。
 出逢いと別離、記憶の積み重ね。
 零れ溢れ出る沢山の感情を得て、人は人生のキャンバスに鮮やかな彩りを描き足す。
「此処は……孤独で無味乾燥な張り子の世界。惑わされこそすれど、それだけです」
「思い出せたみたいだね、戒道さん」
「ええ。一人ではなかったことが功を奏しましたね」
 ふたりはふたたび視線を交わした。
 何もかも忘れさせられていた先程とは違う、確かな信頼が籠もった眼差しで。
 そうして蔵乃祐と玲は頷き合う。
 玲が再誕の為の詩を起動させ、抜刀する。それと同時に蔵乃祐が呪力を紡ぎ、不動明王の炎を顕現させた。
「大丈夫、躊躇無くイケるよ!」
「では、参りましょうか」
 周囲の森を見渡した彼らは一気に力を開放する。
 腕を大きく振り上げた蔵乃祐が火界呪の焔を周囲に広げ、玲は刃を振り下ろす。
「ソード・ファントム……不可視の刃よこの空間を切り裂け!」
 ――さあ反撃の開始だ。
 描いた炎の舞と刃の軌跡が重なり、忘却の森が大きく揺らいだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ネクタリニア・グラティア
招待してくれるなら、往かねばね
留守は頼むよプルケリマ

躊躇なく果実を抓めば
ふわふわの羽毛の様なあたたかさの中で
心地良さに目を閉じるけれど
わたしに掛かる声、声、声
…寝ぼけていると、笑うのは誰だい?

目を開けると視界に入る緑の衣
Memento mori
それは緑衣に宿る意思か
永き時の中で見送った…彼の、彼らの声で

忘れたりしない
それは
不死なる光の神が背負わねばならぬ宿命なのだから
すまないね
少しだけ…また、眠くなっただけ

そろそろ出ようか
愛し子が待ってる
それに、まだコンコンしてないからね

私には呪詛も毒も効かない
座興の礼に、もう一つ力を見せようか
漂う甘い香りを清風で払い
かわりに破魔の光でキミの腹を満たしてあげる



●緑の記憶
 甘い香りに誘う心地。
 忘却の森へと導く誘惑の実はまるで招待状のように目の前に落ちていた。
「招待してくれるなら、往かねばね」
 留守は頼むよ、とプルケリマに願ったネクタリニアは一歩踏み出す。其処に躊躇はなく、ぐしゃりと踏まれた実がちいさな赤い飛沫を散らした。

 そして、ネクタリニアは目を閉じる。
 感じたのはふわふわの羽毛の様なあたたかさ。何処からか小鳥の囀りが聞こえた気がして、心地良さが巡る。
 ネクタリニアは瞼を閉じたまま、森の空気を感じていた。
 目を開けずとも此処が森だということはわかった。風がそよぐ音、緑の香り、何処かから響く川のせせらぎ。
 何も、覚えていない。何もしなくていい。もう二度と瞳をあけずとも良い。
 そうとまで思わせるほどの忘却の力が彼女の身を包んでいた。
 だが――其処に掛かる声、声、声。
 寝ぼけているのかい、と笑っているような聲にネクタリニアは瞼をひらく。
「……誰だい?」
 視界に入ったのは緑の衣。
 これが自分の纏っているものだと気付くまで少しの時間がかかった。しかし、そのときにはもうネクタリニアはすべてを思い出しはじめていた。
 それは緑衣に宿る意思だったのか。
 聞こえた声はこの忘却の森が起こしたものではなく、永き時の中で見送った――彼の、彼らの声だったに違いない。
「忘れたりしない」
 大丈夫だよ、と甘やかな声を紡いだネクタリニアは掌を握る。
 それは不死なる光の神が背負わねばならぬ宿命。忘却よりも遥かに強いもの。
「すまないね。少しだけ……また、眠くなっただけ」
 誰にともなく告げ、ネクタリニアは歩き出す。
 そろそろ出ようか、と口にして思うのは愛し子、プルケリマのこと。御使いを残してきた意味は還るべきところを思い出すためでもあったのだから。
「それに、まだコンコンしてないからね」
 ふふ、とちいさく微笑んだネクタリニアはきっとこの後に巡るであろう時を思い、掌を天に掲げた。

成功 🔵​🔵​🔴​

パーヴォ・シニネン
ここは、どこだ
私は一体、誰だった?

誰も悲しむことのない
私が願った幸福がここにはある
けれど何故だろう、この胸に感じる空虚さは

声が、聞こえる
とても小さな声が私を…いいや、我輩を呼ぶ声が
ああ、そうだ
あの子が手を伸ばしているじゃないか【手をつなぐ、毒耐性】

あの子が、彼らが生きていけるように
光を与えることこそ、我輩が我輩である理由じゃないか!

外の世界で彼らが嘆いているのに
こんな所で幻に縋るなど
ヒーローマスクとして恥ずかしい限りだ

聖者たる暖かな光を宿し、迷わず武器を取る
【祈り、医術】

ありがとう、相棒
一緒に広い世界へ戻ろう
こんな実だけでは味気ない
まだまだ君には、美味しいものを食べて貰わないといけないからな



●希望の光
 ここは、どこだ。
 ――私は一体、誰だった?
 気付けば立っていた森の中でパーヴォは自問する。
 この場所は忘却の香りが漂う場所。しかし彼はそれすら覚えてはおらず、穏やかな空気に満ちた周囲をゆっくりと見渡した。
 此処は平穏そのもので、望めば永遠に今が続くところだと分かった。
 何も覚えておらず思い出すことが出来なくてもそれだけは理解できる。誰も悲しむことのない、心の底から願っていた幸福がここにはある。
 けれど――。
「何故だろう、この胸に感じる空虚さは」
 そう呟いたとき、何処かから声が聞こえた気がした。
 それは、とてもちいさな声。
「誰だ? 私を……いいや、我輩を呼ぶ声は……」
 はっとしたパーヴォの意識が引き戻される。まるでそれまで水底に沈み続けていたような感覚が、突如として鮮明になる。
 ああ、そうだ。
 あの子が手を伸ばしているじゃないかと気付いたパーヴォは今まで意識していなかった相棒の存在を思い出した。
 あの子が、彼らが生きていけるように光を与えること。
 それこそが自分の在り方。我輩が我輩である揺らぎない理由だ。
 はっきりと己の使命と意志を取り戻したパーヴォは忘却の森を改めて見渡した。
「外の世界で彼らが嘆いているのに、こんな所で幻に縋るなど……ヒーローマスクとして恥ずかしい限りだ」
 ならば、彼らに恥じぬように戦うだけ。
 パーヴォは聖者たる暖かな光を宿し、迷わず武器を取った。
 己を思い出すことが出来たのは相棒のおかげ。
 ありがとう、と自分を呼び起こす声の主でもあった相棒に告げ、パーヴォは歩き出す。
「一緒に広い世界へ戻ろう」
 誘惑を宿すだけのこんな実だけでは味気ない。
 そう――まだまだ君には、美味しいものを食べて貰わないといけないのだから。
 目指すのは聖なる光が導く場所。
 その先に真の平和が見つかるまで、ヒーローたる彼の戦いは続く。

成功 🔵​🔵​🔴​

クラウン・メリー
びいどろ(f11200)と

とても甘い香りがするね?
この実を食べたら、
自分自身も、びいどろのことも
忘れちゃうのかな……?
でも、絶対思い出してみせるよ!

いただきます!


あれ?この子は……?
瞳をぱちくり

手に持ってるのはカラフルなボール……?
遊んでみると、とても手に馴染む!
確か、大切な役目が俺にはあったはず。

うーん、思い出せそうで思い出せない。

ふわふわ、きらきらしてる子がいる。
さっきも目を合わせてくれた子。
優しくて、とても綺麗で、
そして、俺のとても大切な友達!

……びい…どろ、そう!
びいどろだよね!良かった!
大事な友達だから!忘れるわけない!

思い出したら、二人で力を合わせて、
大玉や火の輪で敵を攻撃するよ!


海月・びいどろ
クラウン(f03642)と
不思議な誘惑の香りを齧ると
『何か』が、ころり
転げ出てしまった、みたい

キミも、忘れてしまったの?
ふたりして、首を傾げるけれど

……ボール?

まんまるの、それ
好奇心に丸くなる眸
夕暮れ時、黄金の陽
友の元へ駆け出した、あの…

明るげな声に、呼び戻されて
ひとつ、瞬く

瞳に映った金色、器用に操る指先は
虹色の詩片を見つけ出した時と、同じ

――クラウン?

忘れたくないもの
ピエロの芸が上手で、空を見せてくれる
きれいな花に誘われてしまう子

ふわりと海月が横切るのを見ると
キミたち以外に、ボクにも
ともだち、いたんだね、って
くすぐったい、ような

思い出せたら、クラウンといっしょに
森におやすみ、してもらわないと



●たいせつなともだち
 鼻先をくすぐるのは甘い香り。
 この実に触れて口にすれば、自分自身のことも――そして、隣にいるともだちのことも忘れてしまう。
 クラウンとびいどろはばら撒かれた実と相手を交互に見つめる。
「びいどろのこと、忘れちゃうのかな……?」
「そうみたい、だね」
 少し不安が混じった声でクラウンがぽつりと零すと、びいどろはそっと頷く。けれどこれは必要なこと。強大な敵を中から破壊するためにはそうしなければならない。
 クラウンはこくりと頷き、びいどろの姿を瞳に焼きつけるつもりでじっと見る。
「でも、絶対思い出してみせるよ!」
 いただきます! という声と決意と共に、クラウンは赤い実を齧る。びいどろも少し遅れて実に口許を近付け、忘却の森への入り口をひらいた。

 ころり、と何かが転げ出る。
 そんな感覚をおぼえたとき、少年は知らない森の中に立っていた。
 不思議に思って頭上を見上げる。樹々が重なりあって空の色は見えない。それでも居心地は悪くなくて、海月めいた雰囲気を纏う少年は視線を下ろす。
 すると隣に誰かがいた。
 あれ、と声をあげたのは同じくこちらに気付いたピエロめいた少年の声だ。
「この子は……?」
「キミは……?」
 瞳をぱちくりと瞬かせるピエロの子に対し、海月の少年も首を傾げる。デジャヴを感じたのはどうしてだろう。少し前にもこうして樹を見上げて、気が付いたら隣に誰かがいたという状況があった気がする。
 だが、それがいつだったのか。本当にあったことなのかも分からない。
「キミも、忘れてしまったの?」
「うん……」
 何よりも少年たちは自分の名前すら思い出せないでいた。けれどそれでも構わないと思ってしまうのはこの森に満ちる忘却の香りのせいだ。
 ピエロの少年はふと、自分が持っているカラフルなボールに気がつく。何とはなしに遊んでみると妙に手に馴染んだ。
「確か、大切な役目が俺にはあったはず」
 くるくるくーると投げてみれば、何故だかそんな感情が浮かぶ。海月の少年もきょとんとしてボールを眺めた。思い出せそうで、思い出せない。
 妙な感覚が巡るなか、海月の少年の眸には好奇心が映りはじめていた。
「……ボール。まんまるの、それ……」
 夕暮れ時、黄金の陽。
 友の元へ駆け出した、あの――。
 海月の子が何かを考えている様子に目を向け、ピエロの少年は双眸を細めた。
 そうだ、この子を知っている。ふわふわ、きらきらしている彼はさっきだけではなく、その前も目を合わせてくれた。
 優しくて、とても綺麗で、そして――俺のとても大切な友達。透き通ったいろ、綺麗に響く硝子のような子。その名前は、
「……びい……どろ、そう!」
 彼の明るい声に呼び戻された気がして、海月の少年はひとつ瞬く。
「――クラウン?」
 そうだ、思い出した。
 ピエロの芸が上手で、空を見せてくれる。きれいな花に誘われてしまう子。瞳に映った金色、器用に操る指先は虹色の詩片を見つけ出した時と、同じ。
 びいどろがその名を呼ぶとクラウンは春に咲いた花のように明るく笑った。
「びいどろだよね! 良かった!」
 ふたりはすべてを思い出し、自分を取り戻した。忘却の香りは強かったけれどそんなものはただのまやかし。それに、大事な友達だから忘れるわけがない。
 びいどろはクラウンに手を伸ばし、これが忘れたくないものだったのだと確かめた。
 そして、びいどろの傍にふわりと海月たちが横切った。
「キミたち以外に、ボクにもともだち、いたんだね」
 くすぐったいような気持ちになったびいどろの思いを察したように、海月たちはクラウンのまわりをゆらゆらと游いだ。
 そうして、ふたりは視線を交わしあった。
 思い出したからにはやるべきことは決まっている。
「やろう、びいどろ!」
「行こうか、クラウン」
 互いの名前を呼びあった少年たちは森を見渡した。
 大玉がぽんと弾けて跳び、火の輪が森の景色を赤く照らす。海月たちも其処に続き、忘却の主を打ち払うべくふわふわと舞った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ギド・スプートニク
まい嬢(f00465)と

じぃ、とまいの姿を見つめ
身体を寄せると
まいの懐から“何か”を抜き取る

抗議をあげる彼女には笑い
森主の実を放り投げる

なぁに
少々預かるだけさ
きみがそれを忘れ得ぬ限りな

実を齧り忘却の森へ

初めて会う、可愛らしい羅刹の少女と挨拶を交わし
名を尋ね、自己紹介しようにも私も私が誰だか分からない

他愛のない会話をしながら森を散歩
小腹を空かせ非常食に手を出そうとする彼女に、そう言えば何か持っていた気がすると
取り出すのは覚えのない“おやつ”

ああ、そういえばそうだったな
これも作戦のうち
許されよ『まい嬢』

森主に一撃くれて帰還

*
身を包むもの
存在の成り立ち
我が身そのものが彼女との繋がり
故に程なく思い出す


花咲・まい
ギドさん(f00088)とお出かけ!

大きい!と驚いてる間に何かを抜き取られた事に気付いてぷんすこ。
けれど彼の事だから何かあるんだろうと気を落ち着けて、キャッチした実をひと齧り。

忘却の森に入ったら我が身を振り返り。
何をしていたのか、何をしようとしていたのか。
思い出せないのはきっと自分自身。
言葉に詰まったら何でもない話に切り替えますです。
それにしてもお腹が空きました
何かが渇いて、渇いて、
.....手渡されたおやつを食べたら、きっと私も思い出しますです。
「食べること」が私の起源になりますですから。
ただいまですよ、ギドさん。

あとはただひたすらに斬るのみ。
だって斬ってみれば、ぜーんぶ分かりますですから!



●己をかたちづくるもの
「大きい!」
 森主を見て目をぱちぱちと瞬き、まいは敵を見上げる。
 首が痛くなりながらもまいは森主の天辺を見ようとぴょんぴょんと跳んだ。その背後、じぃとまいの姿を見つめたギドはそっと身体を寄せる。
 後ろに倒れてしまいそうになったまいを支え、ギドはその懐から“ある物”を抜き取った。あっ、とまいから声が上がり、その頬がぷんすこと膨らむ。
「ギドさん、何するのですか!」
「なぁに、少々預かるだけさ」
 そう、きみがそれを忘れ得ぬ限り――。
 抗議する彼女にはそういって笑い、ギドは代わりに森主の実を放り投げた。
 彼のことだから何かあるのだろうと気を落ち着けたまいはそれをキャッチする。そして、ふたりは手にした実を齧った。

 樹々が風に揺れている。
 いつの間にか知らない森の中に佇んでいると気付き、首を傾げた。
 少女はまわりをきょろきょろと見渡して我が身を振り返ってみる。自分の名前は、何をしていたのか、何をしようとしていたのか。
 何もかも思い出せない。けれど思い出す必要もないと感じていた。
 少女は思うままに森を歩く。すると暫く進んだところで黒尽くめの青年――そう見える男と出会った。
「こんにちはです!」
「ああ、こんにちは。きみは?」
 誰か分からないが人と擦れ違ったならば挨拶はしなければならない。青年も軽く頭を下げて少女に挨拶を返す。
 ついでに名を尋ねるも羅刹の少女はふるふると首を振った。自らも自己紹介しようにも、彼も自分が誰だか分からないでいるようだ。
 それでも不思議と何も気にならなかった。そういうものだとこの森に満ちる空気が伝えているようで、ふたりは自然と歩き出した。
 きれいですね。心地好いな、と他愛ない会話を交わして森を散歩する。
 すべては忘却の彼方。
 囚われていることも思い出さぬまま、少女たちは森の心地に身を委ねていた。しかし、ふとしたときに少女が声をあげる。きゅるる、とお腹の虫が鳴ったからだ。
「それにしてもお腹が空きました」
 どうしてか、何かが渇いて、渇いて――。
 浮かない顔をする少女を見遣った青年は、何か持っている気がすると感じて食べ物を探した。荷物から取り出したのは見覚えのない“おやつ”だ。
 それから身につけていた或る物に目を落とした青年――ギドは静かに呟く。
「ああ、そういえばそうだったな」
「?」
 彼の様子が少し気になったが、少女は手渡されたおやつを受け取った。
 いただきます、とそれを口にしてみる。いっぱいに広がっていく味にはっとして、少女は目を見開いた。
 この感覚。この味。この触感。そうだ。
 食べること。それが自分の、私の起源。
 彼女が何かを悟ったのだと察したギドは残りのおやつをすべて渡し、これも作戦のうちだったと種を明かす。
「許されよ、まい嬢」
「……ただいまですよ、ギドさん」
 あやうくすべてを忘れたままだったと話し、まいはおやつを全部平らげた。
 もう大丈夫。誘惑の赤い実の味も、自分たちがやるべきことも思い出せた。だからあとはただひたすらに斬るのみ。
「それでは、参りましょうです! でも、そういえば……」
 意気込むまいは加々知丸を構えながらふと問いかける。自分は食べることで思い出したが、ギド自身はどうやって忘却から脱したのか、と。
 すると彼は片目を瞑り、自身を示す。
「ああ、それは――」
 身を包むもの。存在の成り立ち。それは我が身そのもの。自分自身が彼女――いとしいひととの繋がり故に、思い出すのにそう時間はかからなかった。
 それを聞いたまいは微笑ましさを覚え、明るく笑った。
 そして、ふたりは忘却の森から抜け出すために其々の力を紡いでゆく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

誘名・櫻宵
🌸リル(f10762
アドリブ歓迎

仕方ないわ
中にいってくる

大丈夫
あたしはリルを忘れない
刻まれた歌は思い出は消せない
泣きそうなリィを撫で贈り物を受け取り
指切りし果実を齧る

約束よ


虚しくて退屈
手慰みに何か殺せば気分も晴れるだろうか

ずっと歌がきこえる
不思議
知らないはずなのにおちつく
私を導いてくれる

羽織は瑠璃に月下美人
桜の花弁
耳に揺れる桜
携帯端末に揺れる白い闘魚
脳裏に笑顔が浮かぶ
大事にずっと握りしめてる勿忘草と
綺麗な鱗

全部が示す何かに焦がれ
堪らない
ああ

愛しいあたしの
人魚

思いきり力をこめ絶華を放つ
あの音の隣へ帰りたい
全部返してもらう


いつの間にか
こんなにもリルで一杯だったなんて

帰る場所はリルの隣よ
約束だもの


リル・ルリ
■櫻宵(f02768
アドリブ歓迎

やだよやだよ!
櫻宵が僕を忘れてしまうなんて
僕の櫻の中から僕が消えてしまうなんて

信じてる
けれど
怖くてたまらない

櫻宵、待ってるから絶対戻ってきて
絶対だ!約束だ!破ったら許さないからな!
綺麗に斬ってくるんだ!
差し出すのは傍に咲いていた勿忘草
せめてと添える螺鈿の鱗
ひとひらの桜の花弁
指切りし見送り

姿が森に呑まれればそれだけで泣きそうに
彼を取り戻すため
僕は歌う
届くように【歌唱】に【鼓舞】のせて君のための「愛の歌」を
君導くための「光の歌」
ずっとずっと
歌う
共に過した時間
故郷を思い出させる為に

君の帰る場所は僕のところ
僕を忘れたって
何度だって思い出させる

何度だって
おかえりと言わせて



●いとしきひと
 斬っても、葉を散らしても手応えがない。
 リルと共に森主へ攻撃を行っていた櫻宵はそのことを実感して屠桜を下ろした。手を止めてまで決意したのは忘却の森に自ら導かれる策。
「仕方ないわ。中にいってくる」
 その言葉を聞いたリルは息を呑み、首を横に振る。
「やだよやだよ!」
 敵の内部に入り込む作戦は確かに有効だ。けれどリルにはそれが耐え難かった。自分にはその決断は出来ない。一時的かもしれなくとも櫻宵を忘れてしまう選択は取れない。そして、それ以上におそろしいことがあった。
 櫻宵が僕を忘れてしまうなんて。
 僕の櫻の中から僕が消えてしまうなんて――。
 不安そうなリルの頬に手を伸ばした櫻宵は敢えて微笑んでみせた。
「大丈夫。あたしはリルを忘れない」
 リルはその言葉に力強さにぐっと掌を握る。こういったときの櫻宵が止められないということもよく分かっていた。リルは留守番の言い付けを守ろうとする幼な子のように唇を震わせ、何とか声を絞り出す。
「……わかった、信じてる」
 けれど怖くて怖くてたまらない。だからすぐに言葉を続けた。
「櫻宵、待ってるから絶対戻ってきて。絶対だ! 約束だ! 破ったら許さないからな! 綺麗に斬ってくるんだ!」
 今告げられることをすべて言の葉にのせ、リルは花を差し出す。
 それは傍に咲いていた勿忘草。せめてと添える螺鈿の鱗、そしてひとひらの桜の花弁。それを受け取った櫻宵はリルと小指を絡ませあった。
 リルは泣きそうな顔で櫻宵を見つめる。
 きっと――刻まれた歌も思い出も、あんなものには消せない。消させない。
 櫻宵はそう感じながら指切りをして、絡めた指を解く。そして、櫻宵は果実を齧った。
「ええ、約束よ」
 その言葉と共に櫻宵の姿が薄れ、その身体は忘却の森に導かれる。
「……っ」
 見送るリルは思わず櫻宵が居た場所に手を伸ばした。掌は空を掴む。けれどきっと、またあの人がこの頬に、手に触れてくれる。触れられる。
 信じたリルは目を閉じ、花唇をひらいた。

 気が付けば見知らぬ森に立っていた。
 其処は緑に覆われていて妙に居心地の良い場所だった。けれど、と顔を上げた櫻宵は同時に違う思いが裡に巡っていると感じる。
 虚しくて、退屈だ。
 遠くから小鳥の声が聞こえる。手慰みに何か殺せばこの気分も晴れるだろうか。
 そんなことを考えながら櫻宵は血桜の太刀を手にする。
 だが、ふとその手を止めた。
「歌が……」
 ずっと、何処からか歌がきこえる。
 不思議だと呟いた櫻宵は、知らないはずのその声が落ち着くと感じていた。己の名前すら忘れてしまったというのに、これだけは知っている気がした。
「私を導いてくれるの?」
 櫻宵は声が聞こえる方へと一歩、踏み出す。
 そしていつしか川縁に辿り着いた。水の流れを見下ろせば懐かしい気持ちが浮かんだ。水面に映る自分を見つめた櫻宵は、はっとする。
 羽織は瑠璃に月下美人。桜の花弁、耳に揺れる桜。
 携帯端末に揺れる白い闘魚。
 朧気だったが、脳裏に誰かの笑顔が浮かんだ。
 そうして櫻宵は掌をひらく。どうしてか、理由も分からずに大事にずっと握りしめていたのは勿忘草と、綺麗な鱗。
 ああ、と声が零れた。全部が示す何かに焦がれて堪らない。
「愛しいあたしの、人魚」
 ――リル。
 その名を言葉にしたとき、すべてが蘇ってきた。自分よりも先に思い出すことのできた愛しいひとの名をもう一度繰り返し、櫻宵は己を取り戻す。
 櫻宵は森に刃を向けた。忘却から抜け出して、彼に逢うために――。

 リルは歌い続けていた。
 彼を取り戻すべく、もう一度逢いたいと強く願って。
 忘却の森の中へと届くよう、唄うのは君のための愛の歌。君導くための、光の歌。
 たとえ聲が枯れたとしても、ずっとずっと。
 ただ謳いあげる。
 共に過した時間を、故郷を思い出させるために。
 ――君の帰る場所は僕のところ。
 僕を忘れたって、何度だって思い出させる。何度だって。
 歌い始めてからどれだけ経っただろう。短くもあり、とても長かった気もする。時間を忘れるほどに歌声を響かせるリルはふと気付く。
「……櫻宵?」
 いとしい人に名を呼ばれた気がして、その名を声に乗せた。
 そして、次の瞬間。絶華の剣閃が空気を斬り裂いた音が響き渡ると同時に森主の中から櫻宵の姿が現れた。
「櫻宵!」
 リルは泣き出しそうになりながら彼の元へ游ぐ。
 涙を堪えながらも、いてもたってもいられなくてその胸に飛び込んだ。リルを受け止めた櫻宵はくすりと笑み、もう一度その頬に触れる。
「約束したものね。ただいま、リル」
「おかえり。おかえり、櫻宵」
 伝えたかった言葉も思いも、その一言と呼ぶ名にすべて込められていた。
 そうしてふたりは顔を上げて敵を見据える。
「大丈夫よ、もうすぐ皆も戻ってくるわ。そんな気がするの。そうしたら……こんなもの、斬り落としちゃいましょ?」
 櫻宵が普段通りの微笑みを浮かべたことが嬉しくて、リルは大きく頷く。
 それならば自分もいつものように歌い続けよう。
「反撃開始だね」
「ええ!」
 刃を手にして駆けてゆく櫻宵の背を見つめたリルは双眸を緩める。
 そして――戦いは終わりに向けて巡りはじめた。

●森の崩壊
 櫻宵が忘却の森を抜けたのと同じ頃。
 猟兵たちは其々に己を取り戻し、森主の内部からの脱出を図っていた。
 正気に戻った志乃は恥ずかしさに首をぶんぶんと振る。
「……何でこんな……ああ、もう」
 やめて、と何に告げたのか自分でもわからない言葉と共に浄化の炎が迸る。聖痕から噴出する断罪の炎は容赦なく、森主の内側を焼き尽くしていく。
 そして、志乃は地面を大きく蹴った。
 ティエルも空を目指して飛ぶ。
「さあ、はやく戻らなきゃね。いくよっ、えーい☆」
 風を纏う刺突剣から巻き起こる上昇気流に乗り、ティエルは一気に舞う。翅の動きを止めればその身体は急降下していく。
 それは捨て身の一閃。
 大打撃を与えると同時にどかーんと森主の中から飛び出す為の一撃だ。
 何処からか風が吹いてきていた。
 オズは仲間の存在を感じながら振るいあげた斧を一気に下ろす。蒸気を噴出させた刃撃は勢いに乗り、森主の内を大きく穿った。
「シュネー、ここから抜け出そう」
 オズは永い時を共に過ごしてきた大切な子へと呼び掛ける。
 彼女が傍に居なければ取り戻せなかったものを思い、オズは森の外へ踏み出した。
 ――陽の下、火の下、命の欠片を喚び出そう。
 パームの声と同時に小さな狐の形をした桃色の炎が辺りに広がった。
「大丈夫、戻ったらいつもの私だから」
 自分に言い聞かせるように呟いたパームは金竜火の力で森を焼き焦がしていく。これが敵への大打撃になっていると感じた少女はぴょんと跳び、本当の世界へと飛び出した。
 空に向けて放った銃弾が天を割る。
 シャルロットはそれこそがこの忘却の森がユーベルコードでつくられた偽物であることを示している証だと感じ、更に銃口を天に差し向けた。
「すべて壊します。こんなまやかしなんて……」
 望むにしろ、望まぬにしろ、このような忘却など受け入れてはいけない。
 シャルロットは渾身の力を込めた一閃を撃ち放ってゆく。
 その頃、アウレリアも空想音盤を発動させていた。理想の名を冠するその力によって白き翼の琥珀の天騎士と黒き翼の紫の魅魔が召喚される。
「さあ、ボクたちの敵を滅ぼそう」
 アウレリアの声に呼応した天騎士と魅魔が翼を広げる。
 勇ましく心優しき琥珀、寄り添い愛を告げる紫。それらが描く軌跡は忘却の森を打ち壊し、崩壊へと導いていった。
 手と手は、繋いだまま。
 ユハナは長杖を片手で構え、ルイーネは刻印を循環する血液を代償にして封印を解く。
「――おいでなさい。醜悪なる我が臓腑の子」
「……すこしだけ、このままで」
 ルイーネが漆黒の触手を解放して森を穿つ中、ユハナはその手を離さずにいた。疎まれないなら、離せない。
 まるで親に甘える子のように身を寄せるユハナを見下ろし、ルイーネは頷いた。そして、月泪雨の先から放たれたきらきらと煌く貴石の花びらと漆黒の一閃が重なる。
 遠くから地響きめいた音が聞こえる。
 賢太郎は誰かも森を攻撃しているのだと悟り、拳を握った。
 ――太陽は暗く、地は海に沈み、輝く星々は消えていく。炎は燃ゆる。いずれ、天そのものを焼き尽くすまで。
 詠唱を紡いだ賢太郎は精霊たちに呼び掛け、高らかに腕を掲げる。
 其処に顕現した焔の魔杖は四体が融合したもの。
「とっておきだ、いくぜ!」
 まやかしの世界を焼き尽くす神殺しの炎が放たれ、忘却の森に因果律の鎖が巡った。
 賢太郎の力が森を揺らがせる中、オブシダンはふっと呟く。
「派手にやってるようだね」
「それなら私達もやっちゃおう!」
 アメリアはオブシダンを握る手に力を込め、いくよ、と声を掛けた。刹那、アメリアの手によって黒曜石の刃が振るわれた。
 その一閃は空間ごと森の景色を斬り裂き、外への脱出口をひらく。
 ほら、何とかなったでしょ。そんな風に語るように力を放出したオブシダンに向け、アメリアもくすりと笑んだ。
 森が、崩れる。
 ネクタリニアは内部の空気が震えていることを感じ取り、猟兵たちが次々に此処を脱しているのだと悟った。
 そして彼女は掲げていた掌に神としての力を集わせる。
「座興の礼に、もう一つ力を見せようか」
 漂う甘い香りを清風で払。かわりに破魔の光でキミの腹を満たしてあげる、と甘く囁いたネクタリニアは生まれながらの光を放った。
 ――さぁ、おやすみ。生まれ代った先でまた逢おう。
 浄化の光は刹那の間に忘却の森を包み込み、すべてのまやかしを消し去った。

●いざ、終幕を
 森主の目の前の空間が収束し、中から人影が現れる。
「ユーリ!」
「ああ、チコル。来い!」
 光り輝く空間の出口から姿を見せたのは炎の騎士と狐の獣人。手を取りあって着地したふたりはすぐに身構え、森主に向き直った。
 エメラはそれが内部に向かった仲間だと察し、マリスもふわりと微笑む。
「森主の力が急に弱まったと思ったら……」
「皆さんが戻ってこられたのですね」
 ふ、と息を吐いたエメラは疲労していた。だが、共に外で戦うマリスたちが支えてくれたおかげで此処まで戦えていた。
 エメラたちに気付いたチコルは尻尾を上機嫌に揺らして笑む。
「待っててくれた人がいたんだね。ふふ、ありがとう!」
「ならば最後まで戦い抜かねばな」
 ユーリも安堵を覚え、内に眠りし竜の焔を解放した。チコルが野ウサギを召喚していく中、忘却の森を脱した蔵乃祐と玲も即座に布陣する。
「惑いの世界はもう消滅したようですね」
「それなら後は本体を穿つだけ。ね、戒道さん!」
 玲の呼び掛けに、はい、と答えた蔵乃祐はふたたび火界呪の力を放ち、敵を火葬する勢いの焔を舞わせた。
 不可視の刃が其処に追撃として放たれた刹那、清綱もふたりに合わせて刃を振るう。そして、清綱は仲間たちに注意を促した。
「気を付けるといい。未だ獣還りの力は健在のようだ」
「散々と惑わされたからな」
 エアルも先程の森主の動きを思い返し、肩を竦める。しかし森主はもう誘惑の実を放つ力はないようだ。
 エアルたちの声を聞き、パーヴォは地を蹴った。
「相棒、頼んだぞ。共に動きを止めてやろうじゃないか!」
 その身を宿らせた子供が握るのは一対のグルメツール。パーヴォの力を得た子供はナイフで枝葉を斬り裂き、くるりと身を翻してから森主の脚をフォークで突き刺す。
 それによって森主が嘶き、周囲の空気が震えた。
 一緒に誘惑の世界を抜け出してきたびいどろとクラウンはその様子を見つめ、敵の最後が近いのだと悟った。
「もう、苦しそうだね。森におやすみ、してもらわないと」
「そうだね。骸の海に還ってもらおう!」
 クラウンの火の輪が放り投げられ、其処に合わせて唇をひらいたびいどろは告げる。
 ――おやすみ、よいゆめを。
 安らかな眠りに誘う歌が森に響き、偽りの主を弱らせてゆく。
 相手が揺らいだ瞬間を狙い、まいは駆けた。
「もう何も心配はありませんですよ。だって斬ってみれば、ぜーんぶ分かりますですから!」
 明るく言葉にした声は朗らかで、まいが完全に自分を思い出したことを示している。それでこそ彼女だと感じたギドは魔眼の力を解放した。
「先程の礼だ。くれてやろう」
 在るべき塵芥の海へと還れ、残痕。
 紫電の一閃が敵を穿つ中、ギドの声が響く。その力によって支配された刃が次々と森主の身を斬り裂いていく。
 リルは櫻宵のために詩を紡ぎ続け、櫻宵もリルを守るために刃を振るった。
 神楽耶は猟兵たちの力の強さを感じ、自らも更なる炎を顕現させる。
 炎に焼かれ続ける無名の神霊としての姿は神楽耶が神楽耶で在る意味であり、戦う力そのものだ。
「過去は過去へ、お還りください」
 そう告げた神楽耶が飛ばした炎が枝葉を焼き、地に落とす。
 だが、咆哮めいた音を響かせた森主は獣還りの力を解き放った。それが足掻きなのだろう。脳裏を貫くような感覚が宵とザッフィーロを惑わせる。
 しかし、互いを見遣ったふたりはそのような力には負けたりはしない。
 何故なら先程にそれ以上に強い忘却を打ち破ってきたからだ。やりましょう、と告げた宵にザッフィーロが視線を返す。
「僕はきみと居られるから――」
「良い、その先は言わずとも伝わる」
 天航を示す一閃を放った宵がそう口にすれば、ザッフィーロは首を振った。
 思いは同じだと示した彼は罪穢を影に変える。其処から巡った蝗の大群は森主を黒く塗り潰すが如く迸った。
 志乃にティエル、オズ。オブシダンとアメリア。
 賢太郎とシャルロットも攻撃に加わり、いよいよ敵の最期が近くなってきた。
 マリスは彼らがもう二度と惑わされぬよう星枢で大地からの恵みを吸収しながら援護に回る。信じた者たちは、自らの力で戻ってきた。
 待ち続けた甲斐があると感じたマリスは懸命に癒やしの力を振るい続ける。
 そして、エメラは傍に現れた魔導蒸気兵を見遣った。森の内部に取り残されてしまった兵が帰ってきたのは他の猟兵が完膚なきまでに内部を破壊したからだろう。
「やっと戻って来れたのね。……でも、ちょうど良いわ。今度こそアレを切り倒してあげなさい」
 命令と共に兵のチェーンソーが唸る。
 エメラの精兵が容赦なく森主の枝を斬り落としていく中、清綱も身構えた。
 そして瞬時に刃を差し向けた清綱はその手に力を込める。
「秘伝……夜見」
 魂を断ち斬る一太刀が振り下ろされ、大きな衝撃が森主の巨体を揺らがせた。
 補助に入りながらその光景を見守っていたルイーネとユハナは、次で終わりだと感じ取っていた。パームとアウレリアも頷き、ネクタリニアも森主を見つめる。
 エアルは好機を見出し、呪詛の力を歌に乗せた。
「お前のそれは、無為に人々を喰らっていると言うのだ。森如きの分際で――」
 春の芽吹きたるわたしに己を讃え崇めさせようなど、頭が高い。真っ直ぐに告げられたエアルの言葉が風に乗り、呪力は偽りの主を貫いた。
 刹那、森主が崩れ落ちる。
 そして――春の森に沈んだ過去の残滓は骸の海へと還っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『甘味巡りコンコンコン』

POW   :    目に付く場所をとにかくコンコン。スタンダードなスイーツが出るかも。

SPD   :    色んな場所を素早くコンコン。ちょっと珍しいスイーツが出るかも。

WIZ   :    色々な人や動画を当たってリサーチした上でコンコン。高級なスイーツが出るかも。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●マグメリア・スウィーツ
 御菓子の森を支配していた偽りの主は屠られた。
 元から此処にあった平穏は猟兵たちの手によって取り戻された。森は変わらず穏やかで、もう少しすればキマイラたちも帰ってきて賑やかな場所に戻っていくだろう。

 そして、これから巡るのは楽しくて甘い時間。
 コンコンコンと森の樹をノックすれば美味しい御菓子が食べられる。
 整えられたティーテーブルに春の花咲く庭めいた森。其処で口にする御菓子はきっと素晴らしい味がするに違いない。
 ウェリッシュケーキにアップルパイ。クロテッドクリームたくさんのスコーンにプティング、メイズオブオナー。ショートブレッド、それから苺やオレンジがたっぷり乗ったパンケーキ。
 どんなものが出てくるかを楽しみ、そしてこの森の心地も楽しもう。
 此処にあったまやかしの忘却はもう何処にもない。
 代わりに今から始まるのはいつもの忙しさや騒がしさも忘れてしまうくらいの、甘やかで素敵なひととき。

 さあ――きみは誰と、どうやってこの時間を過ごす?
 何をするか選ぶのは自分自身。そうすればきっと、忘れられない刻が巡っていく。
愛久山・清綱
一時はどうなるかと思ったが、之にて一件落着か。
よし、俺も一息つくとしよう。

……酸っぱいのが欲しいのだが、あるかなぁ?

■行
【POW】で普通にお菓子を食べるか。
故郷を発ってから数週間ぶりの『コンコン』だな。

では早速この木を叩いてみるか、コンコン……
お、アップルパイが出てきたか。
いつものようによく噛み、よく味わいながら頂こう。
一口最低80回は噛むぞ。

(モグモグモグ……)ふむふむ……む、これは美味い、が……
酸味はあまり残っていなかった。残念。

もう一度同じ木を叩いてみよう。今度は俺好みのものが……
(モグモグモグ……)先程と同じだ。

むむ、時計を見たら1時間も過ぎていた。
まだ2個しか食べていないのだがな……



●平穏な森で
 間違いなく、揺るぎない平穏が此処にある。
 一時はどうなることかと思ったがと口にして、先程までの戦いを思い返した清綱はマグメリアの森をゆるりと眺めた。
「之にて一件落着か」
 森には戦いの爪痕も殆ど見えず、清綱は深呼吸をしてみる。
 よし、と息を吐いた清綱は自分も休息を行おうと決め、御菓子の森がそう呼ばれる由縁たる樹々に触れてみる。
「……酸っぱいのが欲しいのだが、あるかなぁ?」
 思わず素直な本音が言葉に出た。その声色は戦いのときよりも幾分かやわらかく、清綱は静かに双眸を細めた。
 思えば故郷を発ってから数週間。
 言葉にすれば短いようにも思えるが久方ぶりのコンコンになる。
「では早速この木を……」
 コンコンコン、と手近な樹を叩けば現れたのはアップルパイ。
 甘い香りが漂っている様にちいさく喉がなる。近くの樹の傍に腰を下ろした清綱はさっそくアップルパイを口に運ぶ。
 一口最低八十回。よく噛み、よく味わいながら頂くのが彼なりの流儀。
 モグモグモグ。
「ふむふむ……む、これは美味い、が……酸味はあまり残っていなかった」
 残念、と一息ついた清綱はもう一度同じ樹をコンコンしてみる。
 見た目が同じアップルパイが出てきたが、今度は自分好みの酸味がきいた味だろうか。ちいさな期待を懐きつつ更に口に運ぶ。
 モグモグモグ。
「……先程と同じだ。だが――」
 美味いな、と自然と零れ落ちた言葉は心からのものだった。
 そして、ふと時計を見れば訪れてから一時間も経っていた。未だ二個しか食べていないのに、と清綱は樹々を見上げる。
 しかし時間はあるゆえに大丈夫だと首を振る。
 何せ此処には、自分たちが守った平和が満ちているのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティエル・ティエリエル
「オブビリオンやっつけたー!これで、スイーツの時間だーー☆」
全身で喜びを表現して、いざスイーツを求めて出陣だよ!

ボク、ハチミツいっぱいなスイーツが食べたい!ということで
森の中を飛び回ってハチミツの匂いがしてくる場所を【情報収集】してるよ!

きっとここだーって場所をコンコン!
見事ハチミツとアイスがたっぷり乗ったハニートーストをゲットだよ♪
食パンを1斤近く使ったハニートーストに周りが心配するけど大丈夫☆
あんなに運動したんだからこれくらいペロっと食べちゃうよ♪

なんとか食べきったけど、ううぅお腹一杯だよーと森の木陰で一休みしちゃうね



●蜂蜜の香り
 戦いの激しさも何処へやら。
 森に流れる雰囲気は平和そのものでティエルは胸いっぱいに空気を吸い込む。ぴょんぴょんと空中で跳ねるように飛び、少女は喜びを全身で表現した。
「オブビリオンやっつけたー! これで、スイーツの時間だーー☆」
 ひらひらと翅を羽ばたかせてティエルは森を飛ぶ。
 お菓子の森の樹々の何処をコンコンしても何かしらの甘いものが出るらしい。けれどティエルの狙いはたったひとつ。
「ボク、ハチミツいっぱいなスイーツが食べたい!」
 そんなわけでティエルは現在、蜂蜜の匂いを辿って森を探索中。
 甘い香りはそこかしこから漂ってくるが求めている香りではない。パンケーキやマフィン、プティングの誘惑に心惹かれながらもティエルは目的のもの探してゆく。
 あっちでもない、こっちでもない。
 なかなか見つからずとも、ふわふわと森を行く少女の瞳は期待に満ちていた。そしてティエルはやっと発見する。
「ハチミツの匂い! きっとここだーっ!」
 ひときわ甘い香りを察知したティエルはその樹に腕を伸ばし、コンコンコンとノックする。わくわくした表情で見つめる少女。その目の前に現れたのは――。
「ハニートースト、ゲットだよ♪」
 見事にアイスと蜂蜜がたっぷり乗った甘味を手に入れたティエルは大はしゃぎ。
 パンは一斤ほどあり、妖精の少女が食べるには些か大きい。周囲から心配の視線が注がれたがティエルは気にしてなんかいない。
「あんなに運動したんだもん、これくらい軽いよね!」
 大きなフォークを抱えたティエルはパンにさくりと先端を刺す。
 あーん、一口目を頬張ればいっぱいに蜂蜜の味が広がった。これならペロっと食べちゃえると感じたティエルはさくさくとハニートーストを口に運んでゆく。
 そうして暫く。
「なんとか食べきったけど、ううぅ……お腹一杯だよー」
 お腹を擦ったティエルは木陰に寝転がり、風に揺れる葉を振り仰いだ。
 いつしか其処に愛らしい寝息が響きがはじめ、穏やかな午後の時間が流れていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

逢坂・宵
ザッフィーロ君(f06826)と

ええと、この樹をコンコンと叩けばいいんですね……?
初めてなので、ドキドキしますね
僕はアップルパイやほうれん草のキッシュが出ると嬉しいのですが
ザッフィーロ君、お互い欲しいものがもし出たら交換しましょう

とと、こちらは果実のパンケーキとアップルパイが出ましたね
よかった、と笑って
見たことのないスイーツもあるので、食べるのが楽しみです

そして出てきたものはすべからく美味しくいただきましょう
……うん、とても美味しいです
きみとこの時間を過ごせてよかった
ザッフィーロ君、一口交換しませんか?
……以前なら忌避していましたが、今は自分からしたいです
……こういう時間が、とても幸せです


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

コンコン叩くと物が出る…か
本当に不思議だが…宵も初めてか
ならば共に試してみるか

俺はスコーンや果実のパンケーキが食いたいのだが…と
スコーンは出たが後はほうれん草のキッシュ、か
ほうれん草のキッシュはたしか食べたいと言って居っただろうと宵の前に置こう
宵は何が出たのだ…と
結果的にお互いが食いたい物が出た故良かったな…!
後他にも色々と出て来たが…初めて口にする物が多い故、楽しみだ

…一口交換は勿論答えは是以外なかろう
特にスコーンは甘くて美味かったのでな。多めにクリームを乗せ宵へフォークを向ける
俺もだと、宵の言葉に照れくさいながらも返しつつ
幸せなこの時間を過ごせれば良いと思う



●幸せのかたち
 先程までの戦いを忘れてしまいそうになるほど、森は平穏そのもの。
「コンコン叩くと物が出る……か」
「ええと、この樹をコンコンと叩けばいいんですね……?」
 ザッフィーロと宵は御菓子が出てくるという樹の前に立ち、枝葉を見上げた。ノックで食べ物が出てくると言葉にすれば簡単で、この世界では当たり前のこと。だが、初めてとなるとドキドキしてしまう。
「本当に不思議だが、宵も初めてか。ならば共に試してみるか」
「はい、それでは……」
 互いを見遣り、別々の樹の前に立ったふたりはコンコン、と幹を叩く。
 場所によって何が出てくるかわからないのが更に不思議なところ。宵はアップルパイやキッシュが出て欲しいと願い、ザッフィーロはスコーンや果実のパンケーキを食べたいと考えていた。
「ザッフィーロ君、お互い欲しいものがもし出たら交換しましょう……とと」
「スコーンとキッシュが出たな。宵は何が出たのだ……と」
「こちらは果実のパンケーキとアップルパイが出ましたね」
 お互いが欲しいものと相手が欲しいものをひとつずつ手に入れた彼らは、よかった、と笑いあった。
 宵が戯れに近くの樹々をコンコンするとウェリッシュケーキが出てくる。
 ザッフィーロが倣って違う樹をノックすれば、スチームプティングやトライフルが現れた。他にもジェリービーンズやちいさなクッキーの小瓶などが手に入り、二人は手近なテーブルへと菓子を運んでいく。
「見たことのないスイーツもあるので、食べるのが楽しみです」
「……初めて口にする物が多い故、楽しみだ」
 賑やかになっていくテーブルを眺めた後、彼らはテーブルについた。
 ふと周囲を見遣ると心地好い風が吹いてきていた。
 双眸を細め、視線を戻すとふたりの眼差しが寛やかに交差した。自然と笑みが零れ、フォークを手にした宵は、いただきます、と言葉にする。
「……うん、とても美味しいです」
 アップルパイの芳しい香り。其処から感じる仄かな酸味と甘み。このテーブルのものはすべからく美味しくいただくべきだと感じ、宵は口許を緩める。
 ザッフィーロもお目当てだったスコーンを口にして満足げに頷いた。続けてパンケーキを切り分ければナイフからやわらかな感触が伝わる。
 キッシュを口に運びながら、その様子を暫し見つめていた宵はふと思い立つ。そうして自分の皿を示し、彼に提案する。
「ザッフィーロ君、一口交換しませんか?」
「勿論。答えは是以外なかろう」
 快い返答に心があたたかくなった気がした。
 特にスコーンは甘くて美味かったと話したザッフィーロとはクリームを多めに乗せて宵へフォークを向ける。
 遠慮なく頬張った菓子は確かに甘く、とても幸せな味がした。
「きみとこの時間を過ごせてよかった」
 宵は裡に浮かんだ思いを包み隠さずに言の葉に乗せる。ザッフィーロはそんな宵の思いに照れくささを感じつつも答えを返した。
「俺もだ」
 そうして、宵はザッフィーロからして貰ったのと同じようにキッシュをフォークに乗せて差し出した。こういった遣り取りは以前なら忌避していた。けれど、今は自分からしたいと思える。
「……こういう時間が、とても幸せです」
「幸せ、か。こういった時間をもっと過ごせれば良いな」
 告げた言葉は心からのもの。
 交わす笑みも視線も快く、ふたりは心地好いひとときに身を委ねた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

吉瀬・煙之助
理彦くん(f01492)と参加
美味しいお菓子が食べられると聞いて、理彦くんをお誘いしてみたよ。
……前から2人で一緒にお出かけしてみたかったから、すっごく嬉しいよ♪

ノックするとお菓子が出てくるなんてキュマイラフィーチャーって便利だね~
理彦くんは何が食べたい?
僕はね、アップルパイを食べてみたいなって思うんだけどちゃんと出てくるかな?
目的のものが出てきたらいい香りに気分がもっと上がっちゃうね
理彦くん早く食べよ~♪

うん?理彦くんも食べたいの?もちろんいいよ~、半分こしよっ!
理彦くんのパンケーキも美味しそうだね~♪
ふふふっ、洋菓子はもちろん美味しいけど、理彦くんと一緒に食べるともっと美味しいって思うよ


逢坂・理彦
煙ちゃんと(f10765) 無事戦闘も終わって安全にってるみたいだね。 これなら大丈夫そうだ。 ふふ、煙ちゃんと二人でお出かけするのは初めてだから嬉しいなぁ。信頼してもらえたような気がしてすごく心が暖かくなる。 コンコンは初体験なんだよね。叩くだけででてくるの?俺が食べたいのはぱんけーきってやつなんだけど…旅団で話を聞いててたべたくなったんだよね。よし、コンコンしてみるか。 わっ、本当に出てきた。果物もたくさんのってて美味しそうだね。煙ちゃんも食べたかったものが出てきた? 煙ちゃん美味しそうに食べるなぁ。 …ねぇ、煙ちゃんのやつも食べてみたいんだけどいいかな?俺のと半分こでどう?



●一緒の気持ち
 森を吹き抜ける風は心地良く、爽やかな緑の香りが感じられる。
 煙之助と理彦はすっかり静かになった御菓子の森を歩き、猟兵たちが取り戻した平穏をその身をもって感じていた。
「前から二人で一緒にお出かけしてみたかったから、すっごく嬉しいよ♪」
 煙之助が嬉しそうにそう告げると、理彦も双眸を細める。
「ふふ、煙ちゃんと二人でお出かけするのは初めてだから嬉しいなぁ」
 嬉しい気持ちは同じ。
 何だか信頼してもらえたような気がしてすごく心があたたかくなった。それに美味しいお菓子が食べられるのならばもっと楽しくなる。
 ノックすると食べ物が現れるのはこの世界ならでは。
 便利だね、と笑いかけた煙之助は周囲の樹を見遣りながら問う。
「理彦くんは何が食べたい?」
「俺が食べたいのはぱんけーきってやつなんだけど……」
 聞いた話ではふわふわしていて甘い菓子らしい。理彦も煙之助に倣って御菓子の樹に目を向けた。未だ自分たちには何処からどんなものが出てくるかは分からないが、探すのも楽しそうだ。
 そうなんだ、と頷いた煙之助は先ずパンケーキを見つけようと心に決める。
「僕はね、アップルパイを食べてみたいなって思うんだけどちゃんと出てくるかな?」
 そうして自分の希望を告げた煙之助はぐっと掌を握った。
 きっとふたりで探せばすぐに見つけられる。
 先に来ていた人を観察していた煙之助はふと、或る樹からパンケーキが出てきたところを目撃する。
「理彦くん、あれ! 早くコンコンしよ~♪」
「よし、コンコンしてみるか。わっ、本当に出てきた」
 手を伸ばした理彦がそっと樹を叩くとフルーツとカスタードクリームがたっぷり乗せられたパンケーキが現れた。理彦はまじまじとそれを眺めてから、この世界の仕組みを改めて実感する。
 不思議だと感じてもこれがキマイラフューチャーの理。
 そういうものかと納得した理彦は辺りを見渡した。すると丁度、別の樹からアップルパイを引き当てている人の姿が見つかった。
 あそこに、と理彦が指差す先に目を向けた煙之助は頷く。
 これでお互いが欲しいものを見つけられた。嬉しげに口許を緩め、煙之助はコンコンコンと樹を叩いた。
 パイの良い香りに気分がもっと良くなった気がして、煙之助は満足げ。
 そうして二人は近くに用意されていたテーブルについた。
 フォークで器用にパイを掬い取った煙之助を暫し眺め、理彦もぎこちなくナイフとフォークを動かしてフルーツパンケーキを切り分けた。
 そっと口に運ぶと甘い味がふわりと広がる。だが、それ以上に煙之助があまりにもアップルパイを美味しそうに食べるものだから気になってしまう。
「……ねぇ、煙ちゃんのやつも食べてみたいんだけどいいかな?」
「うん? 理彦くんも食べたいの?」
「俺のと半分こでどう?」
「もちろんいいよ~、半分こしよっ!」
 理彦からの提案に快く答えた煙之助は自分の皿と彼の皿を交互に見た。
 パンケーキにアップルパイ。
 それはごく普通の洋菓子だったけれど、きっと忘れられないものになる。何だって誰かと一緒に食べると美味しくなるもの。
 それが彼となら、もっともっと思い出に残る味になるはずだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

久篠・リジェリ
マリス(f03202)と一緒に甘味巡りに参加

叩いたら甘いものが出てくるの?
素敵な森ね。

試しにコンコンと叩いて、出てきたのは桜モンブラン

とても不思議ね
そう、とても美味しそうね
アップルパイを美味しそうに食べてるマリスに微笑みつつ
そう、優雅に、優雅な微笑みで返すわ!

フユはなにを食べてるの?

ノックしてお菓子が出てくるのはつい楽しくて
それにおいしいわ

いろんなお菓子を一緒に楽しめてとても幸せね
幸せはみんなで分け合わないとね

今はこの森とお菓子と、みんなで過ごせるこの空間を楽しむわね


マリス・ステラ
リジェリ(f03984)と参加
ミカゲも誘います

「あなたはフユがファーストネームなのでは?」

森を散策しながら以前から気になっていた事を問いかける
ミカゲがファーストネームと思っていましたが、"お姉ちゃん"がハルという事は……

「リジェリ、このアップルパイは絶品です」

彼女は何を食べているでしょう?
コンコンとノックすれば苺とオレンジのパンケーキが現れる

「フユ、半分ずつにしませんか? あなたのそれもおいしそうです」

アイスティーで喉を潤してお菓子を堪能
リジェリがあちこちからお菓子を集めています

「私の分も残しておいて下さい、リジェリ」

彼女を見ていると心が和みます
それは今の春のように
フユ、まだまだ食べますよ



●分け合う幸せ
 此処はコンコンコンと樹を叩けば甘いものが出てくる場所。
 素敵な森ね、とマリスに笑いかけたリジェリは近くの樹に触れ、早速どんな御菓子が出てくるのかを確かめてみる。
 すると出てきたのは桜のモンブラン。
「とても不思議ね」
 くすりとリジェリが微笑むと、マリスも興味深そうに頷いた。
 そうしてマリスは隣の樹をコンコンしてみる。現れたアップルパイからは芳しい香りが漂ってきていて、マリスは思わずぱくりとそれを口にする。
「リジェリ、このアップルパイは絶品です」
「そう、本当に美味しそうね」
 心底美味しそうにパイの感想を告げるマリスにリジェリが笑みを返す。それはとても優雅な微笑みで、マリスも思わず笑顔になってしまう。
 そんなふたりの近くにはお供の浮遊霊と一緒に御菓子を楽しむミカゲがいた。リジェリは少年に軽く手を振り、質問を投げかける。
「フユはなにを食べてるの?」
「こんにちは。ええと、スコーンです。クロテッドクリームたっぷりの!」
「フユ、半分ずつにしませんか? あなたのそれもおいしそうです」
 ミカゲが明るく答えるとマリスが提案する。その手には既にアップルパイはなく、新しく手に入れた苺とオレンジのパンケーキの皿があった。
「はい、ぜひお願いしたいです」
「それじゃあテーブルの方に行きましょう。ついでに幾つかコンコンしてから、ね?」
 ミカゲはこくりと頷く。リジェリはスコーンだけでは喉が渇くだろうと察して、少し先にあるティーテーブルを示す。
 そして、ノックして御菓子が出てくるのが楽しいから、と周囲を回った。
 出てきたのはミンスパイやバナナパンケーキ。
 それらを綺麗にテーブルに並べて、用意されていたお茶を淹れればティーパーティーのはじまりはじまり。
 頂きます、と三人の声が重なる中で、ふとマリスは気になっていたことを問う。
「あなたはフユがファーストネームなのでは?」
「ううん、こっちの世界の様式に合わせるとミカゲの方が名前なんです。ハルお姉ちゃんと合わせてフユと呼ばれることがおおいので、どちらも大切な名です」
 ミカゲはにこにこと答え、リジェリに淹れてもらったお茶を口にした。どっちの名前で呼ばれても嬉しいと話す少年は特に呼び名に拘ってはいないようだ。
「リジェリさん、お茶のおかわりをしていいですか?」
 このスコーンが美味しくてついお茶が進んでしまう。そう話した少年に優雅な笑みを向けたリジェリは快く頷いた。
 マリスはスコーンが気になったらしく、パンケーキの皿を差し出しながら願う。
「フユ、半分ずつにしませんか? あなたのそれもおいしそうです。それからリジェリ、私の分も残しておいて下さい」
「わあ、嬉しいです。マリスさんたちのも気になっていたんです」
 アイスティーで喉を潤したマリスは其々の甘味を堪能していった。あちこちからお菓子を集めたリジェリもまた、これもどうぞ、と皿に乗ったパイを切り分けていく。
 優しい眼差しとやわらかな微笑み。
 彼女を見ていると心が和む気がして、マリスは春のような心地を感じた。
「リジェリ、フユ。まだまだ食べますよ」
「はいっ、お付き合いします!」
「ええ、幸せはみんなで分け合わないとね」
 マリスの呼び掛けにふたりが其々に返事をすれば、あたたかな気持ちが巡る。
 いろんなお菓子を一緒に楽しめることはとても幸せなこと。
 リジェリは双眸を緩めて今という時間を甘い御菓子と共に噛み締める。森とお菓子とみんなで過ごせる空間が何よりのひととき。
 楽しくて穏やかな心地は寛やかに、陽だまりの森に満ちてゆく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アウレリア・ウィスタリア
はあ……ボクはボクの未熟さを思い知りました
痛みの記憶を捨ててそれで前に進んでいるつもりだった
こんなボクではこのお菓子の森を故郷に…なんてまだまた無理ですね
こんな気分の時は何をすればいいんでしょうか

そう思いつつコンコンと
出てくるのはアップルパイでしょうか
故郷のダークセイヴァーでもスタンダードなお菓子

あぁ、そうですね
別にこの森をなんて考える必要はないのでしょう
平和な一時を過ごす
それだけ、たったそれだけでも悩む心が癒される
急ぎ足でなくても良い
ボクだけが頑張る必要もない
周囲にはたくさんの猟兵たちがいる
ボクは他人と話すのは苦手だけれど
言葉で語らなくても想いは繋がっているのでしょう

アドリブ歓迎



●甘い痛み
 過去にすべてを置いてきた。
 今まではそう思っていた。それでいいと考えていた。けれど――。
「はあ……ボクはボクの未熟さを思い知りました」
 アウレリアはちいさな溜息をつき、先程までの戦いを思い返した。痛みの記憶を捨ててそれで前に進んでいるつもりだった。しかしこんな自分ではこのお菓子の森を故郷に、なんてまだまた無理だと分かってしまった。
 後悔ではなく、己を更に知れたということかもしれない。
 それでも気持ちが晴れたとは言い難かった。
 こんな気分の時は何をすればいいのか。そう考えながらもアウレリアは傍にあった樹に触れ、コンコンコンとノックしてみる。
「これは……アップルパイですね」
 目の前に出てきたのは故郷でもスタンダードな焼き菓子。
 まさか此処で同じものを目にするとは思っておらず、アウレリアはふと気付く。
「あぁ、そうですね」
 零れ落ちた言葉は静かで、何処か落ち着いていた。
 別にこの森を、なんて考える必要は最初からなかったのだろう。
 平和な一時を過ごす。それだけ、たったそれだけでも悩む心が癒されるのだから。
 誘惑の森でも、心は穏やかだった。
 それは魅了されていたからでもあるが、あの心地を此処で感じればいいだけだ。この場は自分たちが守りきった場所。
 咎めるものも、心を押さえつけるものも此処にはない。
 だから急ぎ足でなくても良い。
「……ボクだけが頑張る必要も、ありません」
 周囲にはたくさんのひとがいる。
 遠くから聞こえる笑い声や、誰かと誰かが話す楽しげな声。それを聞いているだけでも不思議と気持ちがあたたかくなった気がした。
 自分は他人と話すのは苦手だけれど、それでも構わない。
 きっと――言葉で語らなくても想いは繋がっている。
 アウレリアはそっと瞼を閉じた後、顔をあげた。そしてアップルパイの香しい香りに目を細め、フォークでさくりとパイを切り分ける。
 思いきって口に運んだその味は、甘酸っぱくて懐かしいような心地をくれた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

パーム・アンテルシオ
起きた事は戻らない。
起きた事は忘れられない。
だから…今も。きちんと思い出せた事を。
自分の意思を試して、再確認できた事を。
噛み締めながら、時を過ごそう。

…美味しそうな誘惑が、たくさん並んでたとしても。

●POW
ウェリッシュ?メイズ…?
紅茶と一緒に食べる菓子たち。
イメージはあるけど…食べたことはないし、詳しくもない、かな。
本当、人ってずるいよね。こんなに美味しそうなものを、ずっと食べてるんだから。

楽しむ時には楽しんで。一瞬でいいから、全てを忘れる。
…人の心は、その方が正しいあり方なのかな。

できるなら、誰かと一緒に過ごしたい、かな。
ヒトとして。ティータイムを楽しもう。
私は、ヒトだから。

【アドリブ歓迎】



●ヒトとして
 起きた事は戻らない。
 起きた事は忘れられない。
 忘却の力に囚われようとも、記憶から逃れることにはならなかった。
 桜を思わせるパームの淡い彩髪を風がふわりと撫でていく。森の樹々がゆるやかに揺れている様を暫し眺め、パームは過去を思い返す。
 幻想の森で思い出したのは抗えない現実。
「だから……今も、」
 独り言ちたパームは目を閉じて、風の流れを確かめる。
 この風は今という時が流れていくことを教えてくれているかのよう。
 きちんと思い出せた事を。自分の意思を試して、再確認できた事を。噛み締めながら、時を過ごそう。
 そうたとえ――美味しそうな誘惑が、たくさん並んでいたとしても。
 瞼をひらいたパームは歩き出す。
 コンコンコンと樹々をノックすれば甘い御菓子が出てきた。
 ウェリッシュケーキとメイズオブオナー。
 食べたことのない御菓子に首を傾げるパームは、手近なテーブルにつく。きっと紅茶と一緒に食べれば美味しいと感じ、机に添えてあったティーポットからお茶を注ぎ、フォークを手にとった。
「本当、人ってずるいよね。こんなに美味しそうなものを、ずっと食べてるんだから」
 思わず零れ落ちた言葉と共にちいさな溜息をつく。
 けれど、これでいい。
 楽しむ時には楽しんで。一瞬でいいから、全てを忘れる。
 人の心は、その方が正しいあり方なのかもしれないとパームは感じた。
 そしてできるなら、誰かと一緒に過ごしたい。
 通り掛かった誰かを誘うのも悪くない。これから始まるだろうティータイムに思いを馳せ、パームはケーキにフォークをさした。さくりとしたやわらかな感触をおぼえ、パームは自分に言い聞かせるようにそっと呟く。
 ――私は、ヒトだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エメラ・アーヴェスピア
ふぅ、何とか終わったわね
猟兵の仕事は終わり、ゆっくりさせてもらいましょうか

何か適当なものを頂いて、お茶の時間としましょう
誰かとお話しするのも良いかもしれないわね
最近、猟兵の仕事で忙しかったし、ゆっくりしたいものね…

あぁ、それと施設で何か壊れた物があるのなら【メカニック】で修理してしまうわ
得意なのは魔導蒸気なのだけど、どの世界の機械も直せるように勉強はしてあるわ
…これは仕事じゃなくて趣味だから、何の問題もないわ、ええ

…何か騒がしいわね、何か起こったのかしら…?

※アドリブ・絡み歓迎



●休息のひととき
 平穏な空気が満ちる森は心地好い。
「ふぅ、何とか終わったわね」
 エメラは無事に猟兵の仕事は終わらせたことに安堵と満足を覚え、暫しこの森でゆっくりさせてもらおうと決めた。
 適当な御菓子が欲しいと考え、エメラは樹をノックする。
 すると目の前にショートブレッドが乗った皿が現れた。ちょうど良いと感じたエメラはその皿を手にして近くのテーブルへと向かう。
「最近、猟兵の仕事で忙しかったし、ゆっくりしたいものね……」
 ポットに入った紅茶をカップに注ぎ、エメラは一息をつく。
 口に運んだショートブレッドはさくさくとしたやわらかな食感で、程よい甘みが少し疲れた身体に染み渡る気がした。
「特に壊れた場所もないみたいだし、平和で良いわね」
 ゆったりとしたティータイムを楽しみながらエメラは周囲を眺める。
 もし何か破損があればメカニックの知識と経験を生かして修復しようと考えていたが、それも必要なさそうだ。
 いちばん得意なのは魔導蒸気だが、今のエメラはどの世界の機械も直せるように勉強している。それが活かせないのは少しばかり残念でもあるが、何もなかったということも尊いことだ。
 そうして暫しお茶の時間を楽しんでいると、近くから誰かの声が聞こえてきた。
「わあっ、パンケーキがこんなにいっぱい……!」
「何か騒がしいわね、何か起こったのかしら……?」
 首を傾げてその声の方向を見ると、人狼の少年がコンコンコンしすぎてしまったらしい光景が見えた。くすりと笑って立ち上がったエメラは少年の元へ向かう。
 彼を助けて、それからこのテーブルに誘うのも良い。
 そこからどんな時間が巡るのか楽しみだと感じながら、エメラは歩き出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エレニア・ファンタージェン
エリィね、先生(f04783)と式神の九堕さんと、ジュジュ(f01079)さんとそのお友達のメボンゴさんとお茶をしに来たの!

お菓子が色々楽しめるのよね?
エリィ、何にしようかしら
決められないわ、だから、えーと…アフタヌーンティーセットが良いと思うの
気合いを入れてコンコンしたら、セットで出て来ないかしら!
え、だめ?じゃあ地道にコンコンして一式集めるわ

さぁ、お二人とも一緒に召し上が…えっ、先生、そのクッキーの山は一体…?
ええと、うん。エリィもお手伝いするわ。
甘いものはいくらでも食べられるのだわ!
九堕さんとメボンゴさんにもあげましょうね
ああ、何だか夢みたいな時間だわ


神埜・常盤
ジュジュ君(f01079)、エリィさん(f11289)と一緒に茶会を

僕は洒落た菓子を知らないので、クッキーを食べようかなァ
色々な種類が降れば良い、とコンコンコンコン

……ウン、軽く山が出来て仕舞った
さァ、お嬢さん方!どんどん食べてくれ給え
夫々へ紅茶を淹れながら勧めつつ
せめて気分だけでもと、メボンゴ君のカップにも茶を

エリィさんのは豪華絢爛で眼福だなァ
もしや地道にコツコツと集めたのかね……?
ジュジュ君が選んだタルトやケーキも美味しそうだ
2人が分けてくれるのなら、有難く頂こう!

戦闘を頑張った九堕も同席させよう
報酬の菓子だ、お食べ
おや、御婦人方からご褒美貰えて良かったねェ
満足げにケーキを食む管狐を撫で


ジュジュ・ブランロジエ
常盤さん(f04783)、エレニアさん(f11289)と

白兎頭のフランス人形・メボンゴを椅子に座らせてからコンコン
色々なケーキやタルトを取り出す
叩くとお菓子が出てくるなんてお伽噺みたいで素敵!

席に戻ったら皆でシェアするよ
一緒に食べよう
皆のも分けてもらう
わーい!頂きまーす!
クッキーも大好き!色々な味と形で楽しいね!
エレニアさんのアフタヌーンティーセットも豪華で美味しそう!

メボンゴは私の膝の上
人形だから食べられなくて残念だね
『見ているだけで美味しいよ!』(裏声で腹話術)
メボンゴのための紅茶やお菓子にほっこり
良かったね、メボンゴ!

スイーツ食べる九堕さん可愛いな
これも食べて~、とケーキを一匙差し出す



●御菓子と夢を
 テーブルには仄か湯気を立てる紅茶。
 白兎頭の人形、メボンゴを椅子に座らせたジュジュは先に森に向かったエレニアと常盤に負けないほどの御菓子を取りに行こうと決めた。
 同じ頃、エレニアはノックする樹を見定めていた。
「エリィ、何にしようかしら」
 様々な御菓子が出るという森で何を食べるか。それが問題であり悩ましいところ。
 決められないわ、と首をふるふると振ったエレニアは暫し考え、それならばと妙案を思いついた。
「えーと……アフタヌーンティーセットなら迷わなくて済むわ」
 気合いを入れてコンコンしたら一式が出てこないだろうか。そうして軽く樹をノックすれば、ちいさなチェリーパイが出てきた。
「え、だめ? じゃあ地道にコンコンして一式集めるしかないわね」
 セットではなかったことに少しがっかりしながらもエレニアは気合を入れ直す。ひとつずつしか出てこないなら自分だけのティーセットを作るだけ。
 先生たちとお茶を楽しむためにも、と歩き出したエレニアは不思議とわくわくした気持ちを覚えていた。
 当の先生こと常磐は今、クッキーを手にしていた。
 アイスボックスにショートブレッド、ココアにチョコレート。様々な種類を集めようと思っていたのだが、少しばかり量が多すぎた気もする。
「……ウン、軽く山が出来て仕舞った」
 皿いっぱいのクッキーを見下ろした常磐はちいさく呟いた。
 しかし今日は三人。それに加えて管狐もいる。きっと大丈夫だと考えた常磐はこの先に巡るティータイムに思いを馳せてテーブルへと向かった。
 ジュジュも二人が御菓子を集め終わりそうだと気付き、コンコンと樹を叩く。
 するとブルーベリーのタルトが現れた。
「叩くとお菓子が出てくるなんてお伽噺みたいで素敵!」
 まるで物語の中に迷い込んだようだと感じつつ、ジュジュもメボンゴの元へと戻ることを決める。エレニアたちはどんなものを持ってきてくれるのだろう。期待を抱く気持ちは足取りまで軽やかにしてくれるかのようだった。

 テーブルに三人が集えば、お茶会が始まる。
「さぁ、お二人とも一緒に召し上が……えっ、先生」
 そのクッキーは一体、と驚くエレニア。常磐は少し集めすぎてしまったと告げながら山になった皿を机の中央に置いた。
「さァ、お嬢さん方! どんどん食べてくれ給え」
「わーい! 頂きまーす!」
 彼の勧めに素直に頷くジュジュの傍ら、エレニアは暫しクッキーを見つめていた。
「ええと、うん。エリィもお手伝いするわ。甘いものはいくらでも食べられるのだわ!」
 逆に考えれば此処までたくさんのお菓子を目にするのも貴重だ。
 アフタヌーンティーセットとタルト、それにクッキーとケーキ。好きなものを好きなだけ楽しめると思えば心も弾んだ。
「それにしてもエリィさんのは豪華絢爛で眼福だなァ」
 もしや地道にコツコツと集めたのかと問えば、エレニアは得意げに微笑む。
「そうなの、いろんな所でコンコンしてきたのよ」
 出来る助手だからと澄まして告げる彼女が可愛らしく、ジュジュと常磐もそっと笑んだ。そうしてジュジュは膝の上にメボンゴを座らせ、ココアクッキーを摘む。其処からメボンゴの片手を軽く上げさせて腹話術をはじめた。
『見ているだけで美味しいよ!』
 なんてね、と裏声で話すジュジュの表情は楽しげだ。
 しかしその様子を見ていた常磐は夫々へ紅茶を淹れた後、せめて気分だけでもと、メボンゴのカップにも茶を注ぐ。
 そして管狐の九堕を傍らに呼んだ常磐はちいさなパイをその前に置いてやった。
「報酬の菓子だ、お食べ」
「九堕さんとメボンゴさんにもあげましょうね。このクッキーはどうかしら?」
 エレニアも二体に菓子を差し出してふわりと双眸を緩める。
「良かったね、メボンゴ! それに九堕さんも」
 メボンゴと九堕のための紅茶やお菓子にほっこりした気持ちを抱く。これも食べて~、とジュジュがケーキを一匙差し出せば九堕がぱくりと口にした。
 その光景がとても穏やかに感じられ、常磐とエレニアは視線を交わしあう。
「ああ、何だか夢みたいな時間だわ」
 自然にエレニアの唇から零れ落ちた言葉は心から感じた思い。その通りだと頷く常磐にジュジュも笑みを向け、三人は心地好い時を楽しむ。
 そして――平穏と甘さに満ちたひとときはこの後ももう暫し、続いていくようだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

狼谷・賢太郎
待ちに待ったおやつタイムだ!

ヴァナルガンドを霊体から実体化させて、二人で色んな甘いもんを腹いっぱい食べるぜ!
本当は他のみんなも一緒に実体化させてーけど、まだ半人前のオレには難しそーなんだよな……
後で順番に実体化させてやっから、そんな目すんなって!

エクレアにマカロン、タルトタタンにアップルパイ!
孤児院にいた頃には滅多に食えなかったもんばっかだ!
……これ、いくつか持って帰って平気かな
孤児院のみんなへのお土産にしてーんだ
きっと喜ぶよな!

ヴァナルガンドは……果物がいいよなぁ
コンコンコンしたら出てくっかな

あ、よかったらフユとフユのねーちゃんも一緒に食べよーぜ!
みんなで一緒に食べた方が賑やかで楽しいしな!



●みんなでいっしょに
 平穏と安寧。
 やはりこの世界には賑やかなくらいの平和が似合う。それに――。
「待ちに待ったおやつタイムだ!」
 賢太郎はマグメリアの森に満ちる穏やかな空気を胸に満たし、此処が現実なのだと改めて確かめる。そして、首飾りに触れた賢太郎はヴァナルガンドを実体化させた。
 自分を自分だと思い出させてくれた大狼の傍ら、賢太郎は目を細める。
「よし、二人で色んな甘いもんを腹いっぱい食べるぜ!」
 何処をコンコンコンしようかと考える少年の眸はきらきらと輝いていた。
 本当は他のみんな、フリームファクシやフレースヴェルグ、ヨルムンガンドも一緒に実体化させたかったが、まだ半人前の自分には難しそうだ。
 大狼が此方を見つめている視線に合わせ、首飾りから呼び掛けられたような気がして賢太郎はふる、と首を横に振った。
「後で順番に実体化させてやっから、そんな目すんなって!」
 けれど、いつかみんな一緒に並び立てたら。
 そんな未来への想像を巡らせた少年はヴァナルガンドと共に駆け出した。
 エクレアにマカロン。
 タルトタタンにアップルパイ。
 孤児院にいた頃には滅多に食べられなかったものばかりで、コンコンする度に嬉しい気持ちが巡った。
「……これ、いくつか持って帰って平気かな」
「ふふ、特に駄目って話は聞いてないです。こんにちは、賢太郎くん」
 不意に零れ落ちた賢太郎の呟きを聞き、声をかけたのはミカゲだ。ヴァナルガンドさんもどうも、と挨拶をした少年の後ろにはハルも控えている。
 ハルは持っていた林檎を大狼に差し出しながら、樹の傍でふわふわと浮かぶ。ヴァナルガンドと浮遊霊の少女が仲良さげに戯れているなか、賢太郎は手にしていたアップルパイの皿を嬉しげに見つめた。
「じゃあ孤児院のみんなへのお土産に出来るな。みんな喜んでくれるよな!」
「はい、きっと!」
 ふたりの少年の笑みが重なり、あたたかな心地が巡る。
 お土産の分。それから自分たちが此処で食べる分。それぞれにコンコンし終わった彼らは森に用意されていたテーブルにつき、大狼と少女も傍に座る。
「それじゃ食おうぜ。みんなで一緒に食べた方が賑やかで楽しいしな!」
 賢太郎はフォークを片手に持ち、タルトタタンに手を伸ばす。
 これが自分たちが守り、取り戻した時間。この後に続いていく変わらぬ日々を思い、少年たちは楽しいひとときに身を委ねた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

チコル・フワッフル
ユーリ・ヴォルフと行動
★アドリブ歓迎!

無事に怪人を倒せて、森を取り戻すことができて良かった!
今はコンコンしない生活をしてるから、久々だな〜♪
どんなお菓子が出るか、楽しみ!

ユーリはコンコンするのは初めて?じゃあお手本見せるね!
いろんな場所を素早くコンコンッ。
あっ、洋菓子と和菓子が出てきた!美味しそう〜♪
ユーリもやってみて!

お菓子をゲットしたら、いただきまーす!
んん!このお菓子美味しい〜♪こっちのも最高っ!
(尻尾をぶんぶん振りながら、満面の笑みで)

……森では、ありがとね。ユーリがいてくれて、本当に良かった。
もしまた、私がユーリのことを忘れちゃったら……同じこと、してくれる?な、なんてね!?


ユーリ・ヴォルフ
チコル・フワッフルと
アドリブ大歓迎!

ああ。これがこの森の平和な日常なのだな
壁を叩くだけで食べ物が出てくるとは
働かなくても暮らして行けそうで凄いものだな…

素早く叩けば良いのだな?良し!
(ココココココココン!と連打してみる)
おおっ様々な種類の菓子が大量に!?
生み出したからには全て食べるぞ!

ではっ頂きます!
(チコルの笑顔を微笑ましく眺めながら
ビュッフェのようなお菓子群を摘まむ)

力になれたのならば幸いだ
ああ、もちろ…
(同じこと?つまり…抱きしめろ、ということか!?)
わ…分った。練習しておく…!
(赤くなりながら、強すぎず弱すぎない抱きしめ方を
脳内でシュミレーション)
忘却だろうと何だろうと負けはしないぞ!



●甘い想いと、きみのとなり
 無事に怪人を倒して、森を取り戻して大団円。
 良かったね、と嬉しそうに微笑むチコルに笑みを返し、ユーリは森を眺める。
「ああ。これがこの森の平和な日常なのだな」
 平穏という言葉が相応しい森の光景は先程までとは少し変わっていた。来たばかりの印象も悪くなかったが、やはりこれが本来の姿なのだろう。
 清々しい森の風と戯れながら、チコルは久々のコンコンコンにわくわくしていた。
「どんなお菓子が出るか、楽しみ!」
 楽しげな彼女に頷いたユーリは、それにしても、と樹を見上げる。
「叩くだけで食べ物が出てくるとは……」
 働かなくても暮らして行けそうだ。そんなことを考える彼の様子に気付いたチコルは胸を張って見せた。
「ユーリはコンコンするのは初めて? じゃあお手本見せるね!」
 近くの樹へと駆けていったチコルは握った掌をユーリに見せながら、隣り合った樹をコンコンっとノックしていく。
「あっ、苺のケーキと桜餅が出てきた! 美味しそう~♪」
 ユーリもやってみて、と呼びかけるチコルが両手に菓子を持つ様は実に可愛い。
 いろんな場所を素早くコンコンすればいいのかと判断したユーリは、彼なりに意気込む。チコルとは違う樹へと向かった彼は握った拳を向ける。
「素早く叩けば良いのだな? 良し!」
 ココココココココン!
 連打の勢いでノックされた樹からはクッキーやチョコレートケーキ、タルトやスコーンが出てきた。おお、と驚きを見せたユーリは軽く目を見開く。
 出しすぎたかとも思ったが此処はすべて食するのがきっと礼儀。
「生み出したからには全て食べるぞ!」
「さすがはユーリ! いただきまーす!」
 チコルもふわふわと笑み、良かったら分け合いっこをしようと彼を誘う。そうして暫し、甘くておいしい時間が流れてゆく。
「んん! このケーキ美味しい~♪ こっちの桜餅も最高っ!」
 尻尾をぶんぶん振り、満面の笑みで甘味を楽しむチコル。ユーリもゆっくりとそれぞれの菓子を味わい、穏やかな心地を感じていた。
 そんな中、ふとチコルが口をひらく。
「……あの森で、ユーリがいてくれて、本当に良かった」
「力になれたのならば幸いだ」
 先程までの戦いのこと、それも忘却の森であったことへの礼が告げられ、ユーリも自分も助かったのだと話す。
 そしてチコルは少し恥ずかしそうに俯いてから、おずおずと問いかけた。
「もしまた、私がユーリのことを忘れちゃったら……同じこと、してくれる?」
「ああ、もちろ……」
 勿論だと言いかけてはっとしたユーリは思い出す。
 あのときと同じこと――つまり、抱きしめて欲しいということ。
「わ……分った。練習しておく……!」
 思わず赤くなりながらユーリは想像する。あの場では自然に行っていたことだが意識すると途端に気恥ずかしくなってくる。
 しかし、忘却だろうと何だろうと負けはしない。
 強すぎず弱すぎない抱きしめ方を脳内でシミュレーションする彼もまた照れているのだと知り、チコルの頬も真っ赤に染まる。
「な、なんてね!? でも、本当に……ありがとね」
 慌てて誤魔化しながらもチコルは自分の頬が緩むのを感じていた。
 きっと何度忘れたって思い出せる。
 あのときに抱いたぬくもりを。そして、この気持ちを――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リュカ・エンキアンサス
オズお兄さん(f01136)と
こういうの初めてだから、
ほんとに甘いものなんてでるのかな…
あ、ほんとにでた
不思議だな…
お兄さんはどんなの食べたい?
俺は…そうだな。金平糖とか出るかな。子供の頃よく食べた
あとちょっと珍しいものとか探してみたい
一緒にいただいて、お兄さんが美味しいっていったなら、
きっとそれが、俺の好きなものにもなると思う

…で、現れたタルトに興味津々で
タルト?
本当だ。綺麗な形してるし……、
…うん、美味しい

こういうお茶会では珈琲じゃなくて紅茶を入れるんだっけ
じゃあ、今日は紅茶をいれよう。お疲れさま
今回はどんな敵と戦ったの。教えてよ

…うん、俺も、お兄さんとこうして話してるのすごく楽しい


オズ・ケストナー
リュカ(f02586)と

こんこん、どこでもいいの?
どこをノックしようかそわそわ
わ、スコーン
こっちは?
すごい、ふしぎだねっ

わたしは、そうだなあ
こんなに花がきれいだもの
おなじように色とりどりのタルトが出てきたらいいな
リュカは?

こんぺいとうっ
ぜったい見つけよっ
ふふ、なんだかこんぺいとうってリュカらしい
色とりどりの星だもの
きれい

わ、リュカ見てっ
バラがいっぱいのったタルト
あれ、でもりんごの香り

食べてみよみよっ
…このバラ、りんごでできてるっ
ふふ、おいしいねえ

カップを受け取り
ありがとうっ
あのね、今回はねえ…

はじめてのこんこんもたのしいけど
いちばんたのしいのはリュカとのおしゃべりだから
たくさんたくさん、話そう



●薔薇彩タルトと金平糖の星花
 眩しくもあたたかな陽射しと春の風。
 ふわりと甘い香りが風に乗って漂ってきた気がして、オズは双眸を緩めた。
 オズはそわそわした気持ちを懐きながら、こっち、とリュカを手招いていざなう。
「ほんとに甘いものなんてでるのかな……」
「こんこん、どこをノックしてもいいみたい」
 半信半疑のリュカに笑いかけ、やってみようと告げたオズは近くの樹に手を伸ばした。何が出るかな、と期待の眼差しで見つめた先。ころりとオズの手の中に転がってきたのは掌サイズのスコーン。
「すごい、ふしぎだねっ」
「あ、ほんとにでた。不思議だな……」
 リュカは物珍しそうにオズの手の中を眺めてから辺りを見渡す。他の樹をコンコンすれば別のお菓子が出るのだろうと考え、リュカはオズに問いかけてみる。
「お兄さんは他にどんなの食べたい?」
「わたしは、そうだなあ」
 オズは口許に手を当てて森の景色を改めて眺めた。
 木陰に咲く野花は春のいろ。そよぐ風に淡い紫や黄色の花弁が揺れる様を見つめるオズに倣い、リュカも其方を見つめた。
「こんなに花がきれいだもの。おなじように色とりどりのタルトが出てきたらいいな」
 そして、リュカは? と、聞き返すオズ。
「俺は……そうだな。金平糖とか出るかな。あの花みたいに、きれいな色の」
 子供の頃によく食べたのだと話したリュカは、あとちょっと珍しいものを探してみたいのだと答えた。
 リュカと金平糖はとてもよく似合うと感じたオズはぐっと意気込む。
「こんぺいとうっ、ぜったい見つけよっ」
 彼は花の色に譬えたけれど、色とりどりの星にも似ている。きれいなところがリュカらしいと思っているのは口にしないまま、オズは森の奥を目指した。
 それから無事に金平糖を見つけたふたりは続けてめずらしいものを探しにゆく。
 そして、こんこんと低い樹を叩いてみる。
「わ、リュカ見てっ。バラがいっぱいのったタルト。あれ、でも……」
 りんごの香りがする、と首を軽く傾げたオズは一口だけ食べてみることにした。わあ、と嬉しげな声が溢れたかと思うとタルトの皿がリュカに差し出される。
「このバラ、りんごでできてるっ」
「本当だ。綺麗な形してるし……、……うん、美味しい」
「ふふ、おいしいねえ」
 つられて一緒にタルトを口にすれば、素直な感想が零れた。
 一緒に食べて、彼が美味しいといったもの。きっとそれが、自分の好きなものにもなる。そう考えてリュカは思いが本当になったと感じていた。
 そういえば、と近くを示したリュカは森のなかに用意されていたテーブルを指差す。其処で食べようと彼が告げているのだと理解したオズは笑顔で頷いた。
 こういったお茶会では紅茶を入れるもの。
 そう聞いたと話すリュカがセイロンティーを淹れていく光景を楽しそうに眺め、オズは渡されたカップを受け取る。
「ありがとうっ」
 タルトに金平糖、スコーン。
 いろんなこんこんも楽しかったけれど、いちばん楽しみにしていたのはリュカとのおしゃべり。たくさんたくさん話したいと願うオズに、リュカはそっと頷く。
「じゃあ今回はどんな敵と戦ったの。教えてよ」
「うんっ、それじゃあまずはね――」
 視線を交わして、言葉と思いもいっしょに交わしてゆく。
 それはとても心地好くて、すてきな時間。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リル・ルリ
■櫻宵(f02768
アドリブ歓迎

櫻宵!ここ、コンコンしていい?
僕の櫻がもうどこかへ行かないように
手をつないだまま瞳を煌めかせあちこち游ぐ

好奇心のままあっちもこっちもコンコン

けーき!ぷりん、苺のもある
このお菓子は初めて見た
出てくるお菓子に大歓声
いつの間にかたくさんになったお菓子
櫻と一緒に食べるんだ
僕は果物たくさんのタルトを食べる
林檎にドキッとしたけれど
甘くて美味しいよ
分けてもらえば僕のもとお裾分け

櫻の笑顔が咲けばけーきがもっと甘く感じる
一緒なのが嬉しい
じっと大好きな櫻宵の笑顔を心に刻み付けるみたいにみる
僕は絶対忘れない
ねぇ
もう僕のこと忘れない?

2人で写った写真を大事そうに抱え
また一つ宝物ができた


誘名・櫻宵
🌸リル(f10762
アドリブ等歓迎

ええ!もちろん
リィの好きなところをコンコンするといいわ
嬉しげな人魚の手を握り
微笑みながら導かれるままついていく
まるでお菓子狩りね!
ああ
本当に可愛い人魚だこと

ティーテーブルの上はリルが見つけたお菓子でたくさん!
そろそろ食べましょ!
甘くてとろけるプリンにメレンゲを土台にしたモンブラン
このガトーショコラも堪らないわ!
ほら、リィ
あたしのおすそ分け
リィのは果物たくさんね
ありがと、あなたが見つけてくれたお菓子だもの
幸せの味がするわ

忘れないに決まってるでしょ
こんなに幸せで甘い時間
頼まれたって忘れてやらないわよ

最後に写真をパシャリ
沢山のお菓子と森と寄り添い笑うあたし達の写真



●だいすきな、きみと
 緑の景色に揺らぐ白孔雀の尾羽。
 平穏が戻った森に満ちる空気は心地好く、そよぐ風も清々しい。
「櫻宵! ここ、コンコンしていい?」
「ええ! もちろん」
 明るく快い声が響くマグメリアの森でふたりの視線が重なる。
 僕の櫻がもうどこかへ行かないように。リルと櫻宵が繋いだ手と手はしっかりと握られている。瞳を煌めかせて游ぐ彼の笑顔は森に降りそそぐ陽射し以上に眩くて、櫻宵の口許にも笑みが宿った。
 好奇心のまま、あちらもこちらもコンコンするリル。
「けーき! ぷりん、苺のもある」
「まるでお菓子狩りね!」
 導かれるままについていく櫻宵は、出てくるお菓子に一喜一憂するリルに愛らしさを覚える。さっきまで泣きそうになっていたのに、と思ったことは口には出さずに櫻宵は双眸を幸せそうに細めた。
「ああ、本当に可愛い人魚だこと」
「櫻宵、なにか言った?」
 透き通った硝子の皿に乗ったプリンを手にするリルに、櫻宵は何でもないのと首を振る。ただ、こうして居られることが何よりの時間だと思えた。
 一緒であることが当たり前だと云える、この関係が愛おしい。
 そうして、いつの間にかたくさんになったお菓子は近くのテーブルに並べられる。
 リルが集めたお菓子の数々は櫻宵と同じひとときを過ごすためのもの。
「そろそろ食べましょ!」
「うん、このタルトがおいしそう!」
 櫻宵はテーブルに用意されていたスプーンを手に取り、プリンをすくう。口に運べば甘くてとろける味わいが広がった。
 リルも果実がたっぷり乗ったタルトをフォークで切り分ける。林檎のような実に少しどきりとしてしまったけれど、食べてしまえば何のことはない。
 メレンゲを土台にしたモンブランに、ガトーショコラ。どれも堪らないと微笑む櫻宵はフォークに一口分のショコラを乗せてリルに差し出す。
「ほら、リィ。あたしのおすそ分け」
「じゃあ僕のも」
 苺のケーキをお返しに差し出し返したリルは花唇をひらいた。
 甘い心地を感じるのは、彼がくれたものだから。その笑顔が咲けば、ケーキもショコラももっと甘くなっていく。
「ありがと、あなたが見つけてくれたお菓子だもの。幸せの味がするわ」
 そう告げてくれる、大好きな櫻宵をリルはじっと見つめる。
 その笑顔を心に刻み付けるみたいに、僕は絶対忘れない、と胸の中でリルは誓った。そして、リルは戯れに問いかける。
「ねぇ、もう僕のこと忘れない?」
 リルの眸には自分への信頼が宿っていると感じた。けれど、その薄花桜の奥にほんの少しだけ不安めいた色が見えた気がして、櫻宵は手を伸ばす。
「忘れないに決まってるでしょ」
 安心させるように触れたのはリルの掌。
「こんなに幸せで甘い時間、頼まれたって忘れてやらないわよ」
 その証に、とふたりで並んだ櫻宵は写真を撮ろうと提案する。それは今日、此処で過ごした思い出のかたちになる。
 沢山のお菓子と森と、寄り添い笑うふたりの写真。
 一緒に同じ時を過ごせることが嬉しくて、幸せで、倖せで――。
 ほら、また一つ宝物ができた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

メア・ナイトメア
浮舟さま(f04260)とご一緒します!

ええ、ええ。当機にとってはなんでも目新しいことです
けれど浮舟さまが楽しそうにしているのが、一番嬉しいのですよ
ふふん、心配無用ですそう簡単に転びませぁあぁあぁ

当機の狙いはスターゲイザーパイとやらです!
こんな素敵な名前なのです、きっと素敵なお菓子でしょう!
意気揚々とコンコンノック。さてさていよいよご対面……
……なんですかこれ

うう。食べます。食べますとも
浮舟さま、そっちのやつちょっと頂戴してもいいです……?

……浮舟さまには秘密ですが
実は当機に食事機能はありません
食べたものはあとで回収です
けれど、浮舟さまが楽しそうなら……
……それで当機は、おなかいっぱいなのです


浮舟・航
メアさん(f14587)と不思議な森へ

この世界にはたまに来ますけど、こんなところがあったんですね
所々に置かれたアンティークを、スマホのカメラに収めながら歩く
なんだかメアさんも嬉しそうだし うん、よかった
あ、転ばないように気を付けてくだ 遅かった

このあたりの樹にしてみましょうか
狙いは鮮やかな色のアントルメグラッセ
花のように見えるそれを、すかさず写真に撮って
可愛らしくて、心が躍るような色合い
きっといい資料になるでしょう

メアさん、本当にアレを出すんですか?
止めても聞かなかった。いっそ出なければッ うわ出た

果敢に戦っているメアさんを見守る
ええ、いいですよ。どうぞ
……僕もそれ、ちょっともらおうかな。



●星と花
 春風が吹き抜け、枝葉をやさしく揺らす。
 新緑の葉がひらりと舞って、木々の合間から見える青空へと翔けていった。
「こんなところがあったんですね」
 この世界にはたまに来ますけど、と口にした航はスマートフォンのカメラ越しにマグメリアの森を見つめる。シャッターを切って画面に収めるのは所々に置かれたアンティークのテーブルや飾り。
 航の傍らでは、すべてを物珍しそうに眺めるメアの姿がある。
「ええ、ええ。当機にとってはなんでも目新しいことですので、新鮮です」
 嬉しげな様子を見せるメアは航の後ろをついてゆく。
 言葉にはしないでいるが、航が楽しそうにしていることを見るのが今のメアにとって一番嬉しいこと。
 なんだかメアも嬉しそうだと感じる航はちいさく頷き、森を歩く。
 途中に木の根が地面に這っている場所を見つけ、航はそれを軽く乗り越えた。後ろを振り向きながらメアに注意を呼びかけようとした、そのとき。
「転ばないように気を付けてくだ――」
「ふふん、心配無用ですそう簡単に転びませぁあぁあぁ」
「あ、遅かった」
 メアが根に引っかかって盛大に転んだ。

 それから暫し後、航の手を借りて起き上がったメアは或るものを探していた。
「当機の狙いはスターゲイザーパイとやらです!」
 どんなものかは名前だけしか知らない。しかし、こんなに素敵な名前なのだ。きっと素敵なお菓子だろうとしてメアは期待を抱いていた。
 航も辺りを眺めて手近な樹に触れてみる。
「このあたりの樹にしてみましょうか」
 狙いは鮮やかな色のアントルメグラッセ。よくよく見れば樹にちいさな看板がついており、目当てのものはすぐにわかった。
 コンコンコン、と軽くノックする航。
 フリュイルージュの花が咲いたような甘やかな菓子を手にした航は、緑の森を背景にしてすかさず写真に撮る。
 可愛らしくて、心が躍るような色合いはきっといい資料になる。
 うん、と目を細めた航の隣。メアは意気揚々と、未だ視ぬお菓子を夢想してノックを行おうとしていた。
「メアさん、本当にアレを出すんですか?」
「はい、ぜひとも見てみたいと思っております」
 航の心配そうな声にも気付かず、メアは既に臨戦態勢。もといコンコンコン寸前。止めても聞かないだろうし、いっそ出なければ――そう思った次の瞬間。
「うわ出た」
「……なんですかこれ」
 出てきたのはメアが想像した星や銀河めいた色をしたパイ、ではなく魚がしゃきーんとパイ生地に突き刺さったものだった。星を見上げる魚のパイらしいのだが、何故か尻尾も飛び出ている。
 対面したスターゲイザーパイと暫し睨めっこするメア。航が見守る中でやっと観念したのか、メアはふるふると震えながら決意する。
「うう。食べます。食べますとも。でも……浮舟さま、そっちのやつちょっと頂戴してもいいです……?」
 アントルメグラッセとスターゲイザーパイの落差が気になるのか、メアはおずおずと問いかける。航は快く頷きを返し、花咲く見た目のそれをそっと差し出した。
「ええ、いいですよ。どうぞ」
「ありがとうございます。浮舟さまはお優しいですね」
「……僕もそれ、ちょっともらおうかな」
 きっと味は悪くないだろうから、と暫し考え込む航。
 その姿がとても好ましく思え、メアはそれだけでお腹いっぱいになれると感じていた。少しの秘密はあるけれど、そんなことも関係なくなるほどに一緒に過ごせる時間が嬉しいと思えた。
 森を吹き抜けていく風も、やわらかな陽射しも、何もかもが心地好い。
 そうして、ふたりのひとときは寛やかに流れてゆく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
【戒道・蔵乃祐 f09466】
戒道さんと同行

さてと、お楽しみのコンコンタイム!
今日はお菓子の食べ放題だね
まずは適当にコンコンコン…と
アップルパイか、うん良い感じの甘さ
甘さのバランスが丁度良いね

戒道さんは西洋菓子もイケるの?
普段食べてるのより、大分甘いんじゃない?
私は甘すぎるのはダメだけど、これくらいなら丁度いい感じ
あ、メイズオブオナーいただき!

けど、なーんでコンコンしたら食べ物出て来るんだろうね
何かそういう機械が仕込んであるのかな…?
まあ気にしても仕方ないけど、気になる技術職…
とりあえずショートブレッドで今日はおしまいかな
食べすぎも気になるからね!
色んな意味で!!
カロリーは敵!程々に!


戒道・蔵乃祐
月夜さん(f01605)と参加

熱々のホットケーキ!冷え冷えのコーヒーゼリー!しゅわしゅわのクリームソーダフロートをいただきたいですね!!

ホットケーキはバターとメイプルシロップたっぷりに更に温かいりんごコンポートを添えて、コーヒーゼリーはホイップクリーム盛り盛りでさくらんぼとみかん乗せ。クリームソーダはメロン味にバニラアイスを掟破りのダブルですよ!!
な、何てこった…これは人死にが出てもおかしくない殺人的コースメニューだ…!(((戦慄)))


そだね。お山に居た頃は無かった知識と楽しみ

過去の自分が今に続いている。だから、感謝の気持ちは忘れないのさ


よし!食べた後は燃やして消費しないとな
一緒に走ろうか!!



●甘いひととき
 ――スイーーーツ・バイキング!
 あのときに心から叫んだ言葉は忘れていない。この森の平和を守り、穏やかで甘い時間を守るために蔵乃祐たちは果敢に戦ったのだ。
「熱々のホットケーキ! 冷え冷えのコーヒーゼリー! しゅわしゅわのクリームソーダフロートをいただきたいですね!!」
 そんな様子の蔵乃祐を見遣った玲は自分まで嬉しくなるような感覚をおぼえた。
「さてと、じゃあ早速お楽しみのコンコンタイム!」
 今日はお菓子の食べ放題だと意気込み、玲は手近な樹へと歩んでいく。
 まずは適当にコンコンコン。
「アップルパイか、うん」
 芳しい香りが漂ってきて、最初に食べるにはちょうど良いと思えた。その間に蔵乃祐もお目当ての甘味を探して様々な樹を巡っていたようだ。
「戒道さん、良かったらあっちのテーブルに……あれ、もう席についてる」
 誘おうと声をかけるよりも先に蔵乃祐が着席していることに気付き、玲はおかしくなってくすりと笑んだ。
 お茶が用意されていたテーブルにはアップルパイの皿。
 そして蔵乃祐が集めたとっておきの甘いものセレクトが集った。
 ホットケーキはバターとメイプルシロップたっぷりに更に温かいりんごコンポートを添えて。コーヒーゼリーはホイップクリーム盛り盛りで、さくらんぼとみかんを乗せて贅沢に。更にクリームソーダは定番のメロン味で、バニラアイスと一緒に。
「こ……これは……掟破りのダブルですよ!!」
 感動なのか、衝撃なのか、もしくはその何方ともなのか。
 打ち震える蔵乃祐の姿を微笑ましく眺めながら、玲はパイを口に運ぶ。
「良い感じの甘さ。酸味とのバランスが丁度良いね」
 さくさくとした歯応えとやわらかなりんごの食感が実に絶妙だ。
 蔵乃祐はというと、ホットケーキのお供にバニラアイス添えクリームソーダを口にして、広がる幸せの味を噛み締めていた。
「な、何てこった……」
 これは人死にが出てもおかしくない殺人的コースメニューだと戦慄する彼は少しばかり大袈裟だが、これも御菓子の森を楽しんでいる証。
 そういえば、と新たに持ってきたメイズオブオナーにフォークを刺した玲は西洋菓子もイケるのかと蔵乃祐に問いかける。
「普段食べてるのより、大分甘いんじゃない?」
「確かに。それでもこれは……とても良い!」
 やや興奮気味に答える蔵乃祐は、次はコーヒーゼリーでこれまでの甘さを中和している。と、思わせつつホイップクリームで更に甘味増し状態。
「私は甘すぎるのはダメだけど、これくらいなら丁度いい感じ」
 チーズの仄かな味わいを感じながら、玲は紅茶に手を伸ばした。蔵乃祐もひといきをつき、今までの生活を思い返す。
「そだね。お山に居た頃は無かった知識と楽しみ」
 過去の自分が今に続いている。だから、感謝の気持ちは忘れずに頂くのだと彼は話した。その通りだと答えた玲は、ふと首を傾げる。
「けど、なーんでコンコンしたら食べ物出て来るんだろうね」
 何かそういう機械が仕込んであるのか、システムが組まれているのか。気にしても仕方ないことだが、気になるのが技術職としての性。
 ショートブレッドを手にとった玲は、これで今日はおしまい、とお腹に掌を当てた。
「さて、食べすぎも気になるからね! 色んな意味で!!」
 こう見えても乙女心だって程々にある。
 カロリーは敵だもんね、と拳を握ってみせた玲に視線を向け、蔵乃祐は頷く。
「よし! 食べた後は燃やして消費しないとな。一緒に走ろうか!!」
「望むところだよ。でも、後少しだけこの時間を楽しみたいな」
 力強い蔵乃祐の誘いに玲も同意する。
 そうして、玲はあたたかな紅茶のカップを傾けた。自分たちが守ったこの時間を、忘れずに――しっかりと覚えておくために。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オブシダン・ソード
【帽子と剣】
甘味がどこからでも出てくるとか、いやあ天国だね天国
手近なところをコンコンしてアップルパイとチーズケーキを確保
お茶が出てくる所はどこかな?

おかわりは絶え間なくするからね

美味しい?
君はあの話の流れでも蜂蜜を選ぶんだね…いやあの怪人は関わって無いと思うけどさ
変わるよ全然変わる。主に気分が
…ああ、うん。美味しいね。わかったよお茶汲んできてあげる

そういえばアメリア
君は僕に相棒って呼ばれたいかい?
ああ、君はそう言うんじゃないかと思ったよ
それならそれで構わないさ。ねぇ、赤い帽子のアメリア。

そうかあ、、『中』で約束したし、しかたないなぁと笑って
行こうか、空を見に

運んでくれるなら任せるよ
ああ、良い風


アメリア・イアハッター
【帽子と剣】
色々あったけど、それは後回し!
食べたかったハニースイーツを狙ってコンコンコンだ!
出てきたのが違かったら…ダンダンにも手伝ってもらおーっと

うん、蜂蜜美味しいよ!
そんなに気にするとこ?
蜂も蜂怪人もあんまり変わんないって
ほらほら、食べてみる?
代わりにお茶ちょーだい!

そーいえば『中』で相棒って呼んでたね
んー、相棒になるのは構わないけど……呼び方は今まで通りがいいな
だってなんだか寂しいもの
だめ?

それよりも!
さっき一緒に空を見てくれるって言ったよね!
ふふ、相棒なら勿論付き合ってくれるよね
これ食べ終わったら、早速木の上にでも登って空を見ましょ!

そーだ
持ち運んであげるから、一緒に空、跳んでみない?



●帽子と剣と果てなき空
 緑と御菓子の世界。これが在るべきマグメリアの森の姿。
「いやあ天国だね天国」
 オブシダンは手近な樹をコンコンして、既にアップルパイとチーズケーキを手に入れていた。その片方はハニースイーツを探すアメリアに押し付けられたものだが、そんなことは些細な事柄だ。
 森では色々あったけど、それは後回しでいい。
「ダンダン、見て! ハニーパンケーキと蜂蜜ゼリーがあったよ」
「それは良かった。頑張ったご褒美かもね」
 嬉しそうに報告してくるアメリアを近くのテーブルに誘い、オブシダンは改めて森の景色に意識を向けた。
 甘味がどこからでも出てくる森とは何と素晴らしいものか。
 心地好い空気を感じながらパイを平らげたオブシダンはおかわりに手を伸ばす。そうして蜂蜜パンケーキを頬張るアメリアを見遣った。
「美味しい? 君はあの話の流れでも蜂蜜を選ぶんだね……」
 蜂型怪人と戦うときから蜂蜜が食べたいと言っていたことを思い出し、オブシダンは彼女をじっと見つめる。
「うん、蜂蜜美味しいよ! そんなに気にするとこ?」
 蜂も蜂怪人もあんまり変わらないと語るアメリアは実に幸せそうだ。
「いやあの怪人は関わって無いと思うけどさ。変わるよ全然変わる。主に気分が」
「えー? ほらほら、食べてみる?」
 複雑な気持ちを感じたオブシダンだが、パンケーキが差し出されれば食べるほかない。美味しいね、と返した彼は代わりにお茶が欲しいとねだるアメリアのために紅茶を淹れてやった。
 それから暫し、甘いものを楽しむ時間が流れる。
 そんなとき、ふと裡に浮かんだのは忘却の森であった出来事。思い立ったオブシダンはアメリアに問いかけてみた。
「そういえばアメリア、君は僕に相棒って呼ばれたいかい?」
「そーいえば『中』で相棒って呼んでたね。んー、相棒になるのは構わないけど……呼び方は今まで通りがいいな」
「アメリアのままってこと?」
「うん。だってなんだか寂しいもの。だめ?」
 そう答えたアメリアはオブシダンを見つめ返す。剣としての自分を手にした相手は等しく相棒と呼ぶらしい彼だが、名前呼びから相棒呼びになるのは少し距離が離れたように感じてしまう。すると、オブシダンは頷いた。
「君はそう言うんじゃないかと思ったよ。それならそれで構わないさ。ねぇ、」
 ――赤い帽子のアメリア。
 口許を緩め、その名を呼んだオブシダンの声は穏やかだった。
 そうして、ハニースイーツを堪能したアメリアはテーブルから立ち上がる。
「それよりも! さっき一緒に空を見てくれるって言ったよね!」
「ああ、そういえば……」
「ふふ、相棒なら勿論付き合ってくれるよね。早速木の上に登って空を見ましょ!」
「そうかあ、『中』で約束したね」
 既にアメリアは動き出す気満々。しかたないなぁと笑ったオブシダンはカップに残っていた紅茶を飲み干し、席を立った。
「じゃあ行こうか、空を見に」
「そーだ。持ち運んであげるから、一緒に空、跳んでみない?」
「運んでくれるなら任せるよ」
 手を差し伸べたアメリアに頷き、オブシダンはその姿を黒曜石の剣に変える。そして、少女は踵を鳴らし、宙を駆けるようにしておおきく跳んだ。
 ああ、良い風だ。
 一面の青が広がり、空に近付く感覚。あの向こうには何があるんだろうか。
 風を感じる剣もいつしか、相棒と同じ思いを抱いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

須辿・臨
【エイリアンツアーズ】

綺麗な森、きっと皆さんが守ったからっすね。
どんなお菓子が出るか、直感でコンコンしてみるっす!
こんもりとクリームとフルーツの乗った山積みのパンケーキ。
食べられる花まで……もっと大雑把なスイーツが出てくると思ったんで驚きっす。
折角なんで、皆さんもどうぞっす。
相変わらずパウルさんの触手は器用っすね!

珍しく珈琲にもミルク多めでチャレンジしてみるっす!
風光明媚、味覚も幸せ、言う事ないっすね。
(ユキさんの言葉に得意げに)
皆さんと改めてゆっくり過ごせる時間が楽しい。
ヨシュカさんも深冬さんも頼もしい相棒がいていいっすね。
ぎゅっと寄らないと収まらないんじゃっ(後ろに回りつつ)

アドリブ他歓迎


キララ・キララ
【エイリアンツアーズ】
マグメリア、ずーっと行ってみたかったの!すてきー!解放してくれたみんなにありがとうってしなきゃね。

きららはねー、どんなお菓子が出てきてもうれしい!色んなところをコンコンしてみます!
ジャムクッキーみたいに手軽にたべられるのもうれしいし、切ってシェアできるのもいいし…フルーツタルトとか?
飲み物はねー、気になってたのがある!
フルーツティーパンチ?っていう…つよそうな名前のアイスティー!出てきてくれるかしら?

みんなが楽しそうにしてるとこ、《撮影》しておきます!
これをねー、しゃほう(社報)にするの。ふひひ!
あっ、きらちゃんも入るよ!もちろん!すてきな思い出になるはずですもの!


パウル・ブラフマン
【SPD】
【エイリアンツアーズ】の皆と参加するよっ☆

素敵なツアー先を探す春の社員旅行。
マグメリアに平和を取り戻してくれた
猟兵さん達に感謝感謝、だね!

みんなー、こっちこっちー!
エイツアクルー全員で座れそうな大きめのテーブルを確保したら
オレも春らしい色合いの花が咲き誇る、近場の木をコンコンっと☆
これは…?
バナナの輪切りが盛りつけられた未知のパイに目をぱちくり。
土台がトフィーっぽいので、上が生クリーム?
なんだかちょ~美味しそう!
わけっこイイね!
触手を器用に使って
取り皿を用意したり、倒さないようにケーキを切り分けたりお手伝い。

社報もナイスアイディア!
ほら、キララちゃんもおいで?一緒に記念撮影しようっ♪


榛名・深冬
【エイリアンツアーズ】のみなさんと

何が出てくるか、半信半疑ながらもわくわくしながらコンコンたたく
出てくるお菓子に驚いて、でも嬉しくて
甘いものはどれも好きだから、どんな物が出てもきっとおいしく食べられるけれど
せっかくだからいろんなお菓子食べたいです
燈やみなさんと一緒に、おいしく食べられたらもっと嬉しいので
よければわけっこしませんか?
お茶は緑茶を用意して
手を合わせていただきます
どれも、おいしくて幸せ
まだ誰かとお喋りすることには慣れていないけれど
燈の口にもお菓子を運びつつ、みなさんの話に相槌打って
楽しい空間に一緒にいられる今が、とても嬉しい

写真?……恥ずかしいので隅っこに混ざろう

※アドリブ絡み歓迎


ヨシュカ・グナイゼナウ
【エイリアンツアーズ】
皆様と参りましたのは、きらきらと射す陽光が綺麗な森の中

樹々をノックすれば美味しいお菓子が食べ放題なんて!天国でしょうか?
猫が食べられるお菓子も出るのかな?そしたらヴィルヘルムも一緒にお茶会ができるね
この期に新しく来た社員の方々と親交を深められると良いな

折角ですので珍しいお菓子が食べてみたい…ですがスタンダードなものも高級なお菓子も捨てがたい…全部食べてしまえば良いか(笑顔)
む、このイートンメスというお菓子気になります

皆様が座れる様な大きめのテーブルを探して、紅茶はたっぷりミルクが入ったミルクティが私は好きです

皆で記念撮影ですか!それはとっても素敵です

(アドリブ絡み歓迎)


ユキ・スノーバー
【エイリアンツアーズ】
美味しいスイーツコンコンってしたら出てくるの、どきどきするっ!
優しくノックして、林檎沢山アップルパイに思わず目がきらきらしちゃう!一緒に食べるのに慎重に運ぶー♪
皆はどんなの出たかな?

(テーブルのスイーツを見て)Σ何か凄い豪華だーっ♪…崩すの勿体ないのまであるし!
ふーこーめーび?(こてん、と首傾け)須辿さん難しい言葉知ってるんだねっ!
こんなに沢山から、少しづつしか食べれないのが悔しいなぁ…
切り分けて皆のお皿に載せたら、飲み物は冷たいミルク!
賑やかなお茶会、また機会あると嬉しいなっ

思い出いつでも読み返し出来る?わーいっ!
写真見切れない様にしっかり傍に寄るよー

アドリブ&絡み歓迎



●お茶会の前に
 今日は素敵なツアー先を探す為の、春の社員旅行。
 エイリアンツアーズ一行が訪れたのはお菓子と緑に満ちたマグメリアの森。
「平和を取り戻してくれた猟兵さん達に感謝感謝、だね!」
 パウルは清々しい森の空気と陽射しに片目を眇め、平穏な雰囲気を確かめる。その傍らで同じように森を眺めるキララも感謝を抱いていた。
「マグメリア、ずーっと行ってみたかったの! すてきー!」
 ありがとうの気持ちを胸いっぱいに抱く少女を微笑ましげに見つめた後、臨も双眸を緩める。危険なものの気配はもう何処にもない。
「綺麗な森、きっと皆さんが守ったからっすね」
「気持ちいい空気ですね」
 深冬も辺りを見渡し、ヨシュカもきらきらと射す陽光を瞳に映す。綺麗な森であるだけではなく、此処は様々な甘いものが食べられるところだという。
「樹々をノックすれば美味しいお菓子が食べ放題なんて! 天国でしょうか?」
「美味しいスイーツコンコンってしたら出てくるの、どきどきするっ!」
 ユキも嬉しそうにアイスピックをぶんぶんと振り、さっそく御菓子を探しに行こうと決めて駆け出した。
 待ってください、と深冬がユキの後を追いかけ、臨とキララもその後に続く。
 そして、ヨシュカとパウルは皆の後ろ姿を見送った。
 ふたりが探すのは全員で座れる大きめのテーブル。陽当たりも心地好い方が過ごしやすいだろうと考え、何処が良いかと悩むのも楽しい。
 やがてパウルは森の中央に大きなテーブルを見つけた。
 その周囲ではクルーたちが既にコンコンコンを開始しているようだ。
「みんなー、こっちこっちー!」
 お菓子を貰ったらこのテーブルにおいで、とパウルが仲間を呼ぶ。まずヨシュカが其方へと向かい、皆が戻ってくる前にと紅茶や珈琲を淹れる準備を始めた。
「紅茶はたっぷりミルクが入ったミルクティが私は好きです」
「いいね! ここのお菓子と合いそうだ」
 テーブルにはお茶会用の道具や食器が並べられており、ミルクポットも置いてある。手伝うよ、とヨシュカの隣に立ったパウルもカップを並べていく。
「そういえば……猫が食べられるお菓子も出るのかな? そしたらヴィルヘルムも一緒にお茶会ができるね」
 目を細めて語りかけたヨシュカは、先に椅子に座った灰猫を撫でた。
 それから、この期に新しく来た社員の方々と親交を深められると良い。ヨシュカとパウルはこれから巡るお茶会の時間へと思いを馳せた。

 同じ頃、あちこちでコンコンコンとノックの音が鳴っていた。
「キララさんは何か食べたいものはある?」
「きららはねー、どんなお菓子が出てきてもうれしい!」
 ユキは林檎の香りが香ばしいアップルパイを片手に、今まさにノックを始めようとしていた少女に問いかける。
 キララは期待に満ちた眼差しを樹に向け、ここん、とリズムを刻んだ。
 すると鮮やかな果実がたくさん飾られたワンホール分のフルーツタルトが現れる。これで皆とシェアできると喜んだキララは嬉しそうにタルトの皿を掲げた。
 一方、臨と深冬も直感で決めた樹へと腕を伸ばす。
「どんなお菓子が出るかな……と、パンケーキっす!」
「こっちはミンスパイ?」
 臨が手にれたのは、こんもりとクリームとフルーツの乗った山積みのパンケーキの皿。その上にエディブルフラワーが乗っかっていることにちいさな感動めいた驚きが満ちる。
 深冬が手にしたのは見た目はシンプルながらも、中にドライフルーツが詰まったちいさなパイ。何が出てくるか分からなくてわくわくしていたけれど、こういうお菓子も悪くないと思える。
 賑やかな時間の中、いつしかパウルも皆の近くに訪れていた。
「パウルさん、コンコンするの見せて見せてー♪」
 ユキは彼がどんなお菓子を引き当てるのか気になり、てこてこと駆けてくる。もちろん良いよ、と快く答えたパウルは春らしい色合いの花が咲き誇る樹をコンコンっと叩いてみた。
「これは……?」
 出てきたのはバナナの輪切りが盛りつけられた未知のパイ。目をぱちくりさせながら観察してみると、土台がトフィーで上が生クリームのようだ。
「なんだかちょ~美味しそう!」
「きららもそれ、食べてみたい!」
 パウルが期待に満ちた声をあげると、キララがぴゃっと寄ってきた。深冬も興味を惹かれて彼の傍に向かい、じっと見上げる。
「わたしもせっかくだからいろんなお菓子食べたいです」
「じゃあ皆さんで一緒にっすね。ほら、ヨシュカさんも待ってるみたいっすよ」
 深冬の静かな主張に臨は明るく笑み、テーブルを指差す。
 其処にはヴィルヘルムを抱き、その前足をひらひらと振らせて皆を手招くヨシュカの姿が見えた。テーブルには仄かな湯気が立つ紅茶のカップ。
 お茶会はもうすぐに始められる。
 ユキとキララが元気よく駆けていく様子を見守るパウル。ふたりが転んだりはしないかと心配になる深冬。皆其々に歩き出し、テーブルへと向かった。

●ツアーズティーパーティー
 皆が集ったティーテーブルの上は豪華絢爛。
 数々のスイーツを眺めるユキはきらきらと目を輝かせる。
「何か凄い豪華だーっ♪ 崩すの勿体ないのまであるし!」
「折角ですので珍しいお菓子を……ですがスタンダードなものも高級なお菓子も捨てがたい……全部食べてしまえば良いか」
 ヨシュカはどれから食べようかと暫し迷っていたようだが、或る意味で豪快な結論を導き出して笑顔になった。
 そして、深冬は膝の上に槍竜の燈を乗せ、皆に提案を投げかける。
「燈やみなさんと一緒に、おいしく食べられたらもっと嬉しいのでよければわけっこ、しませんか?」
 その案に反対するものはおらず、パウルもうんうんと大きく頷いて賛成した。
「さーて、そうと決まったらわけっこしていこっか!」
 パウルは触手を器用に使って取り皿を用意し、ケーキを切り分けたりと己の力を存分に発揮していった。
「相変わらずパウルさんの触手は器用っすね!」
 臨は触手使いにぱちぱちと拍手を送った後、珈琲にミルクをたっぷり入れていく。自分にしては珍しいことだが、白と黒の色合いがくるくると混ざっていく様子は何だか見ていて楽しかった。
 まるで、此処に集まった皆が調和していくような――。
 そんなことを考えた臨の隣ではキララがフルーツティーパンチを味わっていた。
「つよそうな名前のお茶だけど味はやさしい! きらちゃん気にいりました!」
「わあ、いいなあっ」
「む、このイートンメスというお菓子気になります」
 ユキはフルーツがいっぱいのお茶に興味津々。ヨシュカは苺とメレンゲとクリームで彩られたスイーツの皿を取り、思い切ってスプーンで掬ってみる。
 ぱくりと一口。甘い、と素直な感想が零れたがヨシュカはまだ気付いていない。その口許にクリームがくっついてしまっていることに――。
「あの、ヨシュカさん」
「はい? そうでした、独り占めはいけませんね」
 おずおずと深冬がクリームのことを告げようとするが、気付かないヨシュカはイートンメスの皿を差し出してにっこりと笑った。
 そんな光景が微笑ましくて、パウルとキララは楽しさを覚える。
 そして、臨もくすりと笑む。
「風光明媚、味覚も幸せ、言う事ないっすね」
「ふーこーめーび? 須辿さん難しい言葉知ってるんだねっ!」
 こてん、と首を傾けたユキはすぐに尊敬の眼差しを送った。その視線に得意げな顔をした臨は胸を張ってみせる。
 そうして何とかヨシュカにクリームのことを伝えられた深冬はほっと息を吐く。
 緑茶と一緒に味わう甘味はどれもおいしくて幸せだった。
「深冬ちゃん、楽しんでる? どのお菓子もおいしいよねっ☆」
「はい、燈も美味しいと言っているようです」
 パウルが深冬に問いかけ、バナナのパイを更に渡す。深冬は膝上の燈がパウルからの差し入れを味わっていると伝え、こくりと頷いた。
 うまく言葉にするのは難しい。けれど楽しい空間に一緒にいられる今が、とても嬉しいという思いは嘘ではない。そんな風に思えた。
 それからまだまだ楽しい時間は続いていく。
 皆がきらきらとした笑顔を浮かべる光景が眩しく思え、キララは楽しげなクルーたちの写真をぱしゃぱしゃと撮っていく。
「これをねー、しゃほうにするの。ふひひ!」
「社報かあ、ナイスアイディア!」
 キララがピースサインを作って得意げに笑う隣で、パウルが名案だと頷いた。そうしていつしか皆で記念撮影をしようという話があがる。
「わーいっ! 賑やかなお茶会の記念だっ!」
「皆で記念撮影ですか! それはとっても素敵です」
 ユキがテーブルの前に回り、ヨシュカも立ち上がってどんなポーズを決めようか考えはじめる。対する深冬は遠慮がちに隅っこに混ざった。
「写真? ……ちょっと恥ずかしいです」
「ぎゅっと寄らないと収まらないんじゃっ」
 そんな深冬に臨が助け舟を出し、もっとこっちにと告げて後ろに回る。パウルが中心になり、燈とヴィルヘルムも其処に加わって撮影準備はばっちり完了。
「ほら、キララちゃんもおいで?」
「きらちゃんも入るよ! もちろん! すてきな思い出になるはずですもの!」
 パウルが誘えばキララはカメラをセットして、元気よく皆の元へ駆けてきた。
 そして――。
 軽やかなシャッター音が鳴り響き、楽しく賑やかな思い出の一幕が切り取られた。
 マグメリアの森で紡ぐひととき。
 それはきっと、忘れられない時間になる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

海月・びいどろ
【自然】

ミカゲも、いっしょに
あまりお顔が見られないから、会いに来たよ

あまい蜜の代わりに、お菓子?
春の花咲く木の近くで、コンコン

エディブルフラワーが飾られた
チョコチップ入りのスコーンに
クロテッドクリームだって、たっぷりと

クラウンのお菓子、たくさんだね
マカロン、かわいい
ボンボンショコラにザッハトルテ…
クールナイフは甘いのは、程良くがお好み?
すこしずつ分け合って、いただきます

ふわりと漂うミントと紅茶の香りは
クールナイフの淹れてくれたお茶の匂い
このミントも、クールナイフが?
すっきりと、爽やかで
……おいしい

…うん。ほんとうに
忘れられない、思い出になる、ね


クラウン・メリー
【自然】

ミカゲも一緒にどうかな?
皆とお茶会楽しみ!

俺は空飛んで、樹の回りを

こんこん、こんこん!

わぁ!沢山出し過ぎちゃった!
俺が責任持って食べるね!
ザッハトルテにマカロン、
ボンボンショコラが出てきたよ!

こんなおしゃれなテーブルに
お菓子を並べて食べるの初めて!

じゃあ、いただきます!
わぁっ美味しい!とろける甘さ?だ!
皆も食べて、食べて!

俺も少し貰うね。
チョコチップスコーンおしゃれだね!
クリーム付けて、さくさく。

ミンスパイはフルーツが入ってて美味しい!

クールが淹れてくれたミントティー
爽やかでさっぱりしてて美味しい!

ミカゲ、美味しい?ミカゲはチョコ好き?

えへへ、今とっても幸せ!
忘れない思い出にしたいね!


クールナイフ・ギルクルス
【自然】

しっかり話したことなかったな
混ざれ混ざれ
俺も呼ばれた身だが、こういうのは大勢の方が楽しいだろ

面白そうな形の木を見つけコンコン
ころころ出てきたのはミンスパイ
素朴な焼き菓子に少し安心した
A&Wからあまり出ないので甘すぎる菓子を口にする機会が少ないのだ

茶は好きだが人に入れたことはない
店で見たのを真似てみて
入れた紅茶に持ってきたミントの精製液を一滴
ん、ちょうどいいから持ってきた

菓子の名前を言われてもピンとこず
食えば分かるかと色々手を伸ばす

甘っ、これがチョコか
スコーンはクリーム付けずにそのままで
嫌いじゃねえけどそんなに量は食えねえな

上等そうな品々に場違い感が否めないが
それ含めて楽しむか



●忘れえぬもの
 忘却の森はもう、何処にもない。
 かわりに此処にあるのは忙しさを忘れてしまうほどの甘い心地――なんて、ちょっと洒落た謳い文句のお菓子の森。
 お茶会をはじめるための四人分のテーブルはもう見つけた。
 あとは其々においしいものを手に入れるだけ。行ってくるね、と元気よく翼を広げたクラウンを見送り、びいどろとミカゲは手を振る。クールナイフも気を付けろと告げてから思う方向に歩いていった。
 さあ、どんなものが出てくるのだろう。
 びいどろは春の花咲く木を見上げ、コンコンコンとノックするために手を伸ばす。
「あまい蜜の代わりに、お菓子?」
 首を傾げたびいどろの前に現れたのはエディブルフラワーが飾られたチョコチップ入りのスコーン。其処にはクロテッドクリームもたっぷりと乗せられている。
 ところ変わって飛び立ったクラウンの方。
 こんこん、こんこん。楽しくてつい調子に乗ってしまって、気付けばたくさんのお菓子がクラウンの周りに現れていた。
「わぁ! 沢山出し過ぎちゃった!」
「わわっ! 運ぶの、僕も手伝いますね」
 ミカゲもちょっとした緊急事態に気付き、クラウンの傍に駆け寄る。
 ザッハトルテにマカロン、ボンボンショコラ。ふたりが甘いものが乗った皿を運ぶ様を見遣り、クールナイフはクラウンらしいと独り言ちた。
 そして、面白そうな形の木を見つけてコンコンと叩いてみる。
「これは……パイか」
 ころりと出てきたのはミンスパイ。元いた世界からあまり出ない自分には甘すぎる菓子を口にする機会が少ない。素朴な焼き菓子に少し安堵し、クールナイフはお茶会のテーブルへと向かった。
 それぞれが持ち寄った甘いものを並べ、びいどろは双眸を細める。
「クラウンのお菓子、たくさんだね。マカロン、かわいい」
 色とりどりのちいさな焼き菓子を手に取り、びいどろは軽く持ち上げてみた。薄い青のまあるいマカロンはまるで海月のようで少し親近感が湧く。
「こんなおしゃれなテーブルにお菓子を並べて食べるの初めて!」
 クラウンも目の前の光景に浮き立つ気持ちを抑えきれず、いただきます、とフォークを握った。
「わぁっ美味しい! とろける甘さだ!」
 皆も食べて、とザッハトルテを勧めるクラウン。その隣ではクールナイフとミカゲがチョコレートケーキだと思われるそれをじっと見つめていた。
「ザッハトルテか……」
「ざっはとるて……」
 故郷が故郷だけに菓子の名前を言われてもピンと来ないらしく、ふたりはその名を繰り返していた。しかし、クールナイフが食えば分かるかと手を伸ばせばミカゲも倣ってお菓子を食べはじめた。
「わああ、甘くて口の中がぐるぐるしそうです」
「甘っ、これがチョコか。嫌いじゃねえけどそんなに量は食えねえな」
 いっぱいに広がる甘味にミカゲもクールナイフも暫し眸を瞬いていた。
「ふたりとも、甘いのは、程良くがお好み?」
 びいどろはそんなふたりにやわらかな眼差しを向けて、自分もケーキにフォークをさくりと刺した。口に運べば甘い心地がふわりと広がる。
 そんな中、クールナイフが皆にミントティーを淹れてくれた。
「人に淹れたことはないんだが、どうだろう」
 店で見たのを真似てみたのだと言って彼はクラウンたちに視線を向ける。ちょうど少年たちはカップを傾けたところで、ゆっくりと紅茶を味わっていく。
「爽やかでさっぱりしてて美味しい!」
「すっきりしてて……おいしい」
「僕もこれ、好きです」
 どうやら三人にも好評だったようで、クールナイフは何処か満足気に頷いた。
 チョコチップスコーンにはクリームをつけてさくさく。ミンスパイは中にたっぷり入ったドライフルーツが絶妙。ザッハトルテはとろける甘さがやっぱり美味しい。
 其処にクールナイフが淹れてくれたミントティーがあるのだから、もうこれは最強布陣とあらわすほかない。
「ミカゲ、美味しい? ミカゲはチョコ好き?」
「僕もクールナイフさんと似た感想です。けれど、甘いものは幸せになれますね」
 クラウンの問いかけに笑顔で答えたミカゲの尻尾がふんわりと揺れていた。
 美味しいものを皆と分け合えるという感覚。
 びいどろは其処に不思議な心地良さを感じた。クールナイフは和やかな光景を眺め、スコーンをそのまま齧る。少しばかり自分が場違いな感は否めない。それでも、この思いも含めて楽しめば良いのだと彼は知っていた。
 そして、楽しいお茶会の時は巡る。
 クラウンは円卓テーブルに座る皆の顔を見渡し、素直な思いを言葉に変えた。
「えへへ、今とっても幸せ! 忘れない思い出にしたいね!」
「……うん。ほんとうに。忘れられない、記憶になる、ね」
 びいどろが眩しいものを見るように目を眇めると、クールナイフとミカゲも今という時間が楽しいものだと感じて頷いた。
 甘い香りと穏やかなひとときは、きっとまた――大切なもののひとつになる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

青葉・颯夏
【ラボ】のみんなと
ノックするだけでいろいろ出てくるなんて不思議な世界ですよそういいながら近くの樹をコンコン
出てきたのはスコーンにクロテッドクリーム、ファッジにトフィー
ニルギリのレモンティー
……うん、この時期のアフタヌーンティーみたい
樹の近くに座って、他の人が持っているものを観察
よければこれもどうぞと差し出す
それにしてもこれ、どこでどう作ってるのかしら
美味しく食べてるけどそれも気になるわ。


パーヴォ・シニネン
【ラボ】

すっかりお腹もすいたね、味わおうじゃないか!
ティータイムというからには、洋菓子だよネ
タルトやケーキ、マカロンが出るようにこんこんしよう
名前も知らぬ洋菓子にはほうと目を見張り

相棒、ちゃんと手は洗ったね?よしよし
皆が出したお菓子もテーブルに広げて
大きなものは取り分けるヨ

女性陣や相棒が幸せそうなのを見ながら満足げに頷き
やっぱり女の子や小さな子が甘いものを食べてる姿は
心が温まるねぇ麒麟…君も楽しそうでなにより

うっかり喉を詰まらせぬよう相棒には適度に飲み物をすすめ
焦らずゆっくり食べていいからね
そうだね、皆と一緒がうれしいんだね


八十神・詩歌
【ラボ】
おー…本当にこんこんするだけでお菓子が出てくるんだねぇ
(しゃがみ込んでこんこんこん)…同じのばっかりいっぱい出てきた…。
叩く場所にコツがいるのかなぁ。高い所は届かないから任せるんだよぅ

うん、十分揃ったねぇ。じゃあ食べようー
(ケーキを一口)…おおお、ふわふわしてる…。
(ブレッドを一口)こっちはかりかり…。
エンパイアのお菓子とはまた違った美味しさだねぇ(もくもくもく)
うん、詩歌も気になったよぅ。これどうやって出来てるんだろうねぇ

おー、お茶ももらえるかのかなぁ。頂くよぅ
美味しいのをお腹いっぱい、平和ならではだねぇ

…わぁ、ばっちいなぁ。手拭いならあるけど、濡らして使うー?


フィラメント・レイヴァス
【ラボ】 いいなあ。わたしの工房も、こんこんするだけでお菓子やご飯が出てきてくれたら最高に便利なのに…、なんて。それにしても、出てくるお菓子は洒落た物が多いね、これはレディーのティータイム向けといったラインナップ。わたしはスコーンをいただくよ。クロテッドクリームを付けて食べるスコーンが大好きだし、ショートブレッドも紅茶にぴったり。叩いた場所によって出てくるお菓子が変わるなら、皆で分け合って色々楽しめるね。珍しいお菓子を探してノックするのも楽しい。フルーツアイスティーで喉を潤しながら、賑やかな様子を見守って。お行儀よく……まあ、今日はいいか。こういう機会は滅多にない。思う存分、楽しくお腹も幸せに


七々澤・麒麟
【ラボ】
叩いただけで菓子が出てくるなんてスゲー森だなぁ!
こんなのがあったらケーキ屋は商売あがったりだろうな★

けらけら笑い、色々食べたいので
あちこちノックして回れば持ってた大皿にモリッと山盛りに
「うおおっと!?落ちる落ちるっ、みんな適当に取ってってくれッ!」
両手で皿を慌てて支えながら周囲に助けるようせっついて

腰を落ち着ければ両手に菓子を持って食べ始める
「おぉ、タルトのフルーツは新鮮だしスコーンはサクサクだし…
一体どういう原理なんだこれ!旨いからいいか!」
ワハハ!可愛い女子達がいれば味も一入ってな!
五月蝿く喜び、パヴォに頷く

…うわ、両手がベッタベタだぞ!誰かティッシュ持ってねえ!?

※アドリブ歓迎



●平和なひとときを
 穏やかで賑やか。それがマグメリアの森の本来の姿。
 パーヴォは森の心地を確かめながら、仲間たちの様子を眺めた。
 颯夏と詩歌は白い花が咲く木の傍へ。そしてフィラメントは大きな根が目立つ木の方に、麒麟はこの辺りで一番大きな樹に向かっていく。
「ノックするだけでいろいろ出てくるなんて不思議な世界ですよ」
 そういいながら颯夏は樹をコンコンと叩いてみた。その隣では詩歌がしゃがみ込み、コンコンコンと何度も樹をノックしていた。
 おー、という感心の声と共に現れたのはたくさんのアップルパイ。
「本当にこんこんするだけでお菓子が……同じのばっかりいっぱい出てきた……」
「あまり同じところばかり叩くとそうなるみたいですね」
「叩く場所にコツがいるのかなぁ。高い所は届かないから任せるんだよぅ」
 静かに驚く詩歌にちいさな笑みを向け、颯夏は自分が手に入れた菓子を数える。
 クロテッドクリーム乗せスコーンにファッジ、トフィー。そしてお茶はニルギリのレモンティー。
「……うん、この時期のアフタヌーンティーみたい」
 満足そうに頷いた颯夏は詩歌を手招き皆の元へ行こうと誘う。
 同じ頃、フィラメントと麒麟もコンコンを楽しんでいた。
「いいなあ。わたしの工房も、こんこんするだけでお菓子やご飯が出てきてくれたら最高に便利なのに……、なんて」
「叩いただけで菓子が出てくるなんてスゲー森だなぁ!」
 羨ましそうに樹を見上げたフィラメントの傍ら、麒麟はけらけらと笑った。ノックする樹を見定めているフィラメントとは対象的に麒麟はあちこちノックしてまわる。
「うおおっと!? 落ちる落ちるっ、みんな適当に取ってってくれッ!」
 大盛りになりすぎて菓子を落としそうになった麒麟は慌てて皆を呼ぶ。両手で皿を支える彼に気付き、パーヴォがころりと落ちたシュークリームをキャッチした。
 大丈夫だったかな、と問うパーヴォに麒麟は笑みを返し、フィラメントも安堵混じりの表情を浮かべる。
「それにしても、出てくるお菓子は洒落た物が多いね」
 まるでレディのティータイム向け。そんなラインナップだと感じたフィラメントはメイズオブオナーとスチームプティングの皿を手にしていた。
 パーヴォは皆がそれぞれの菓子を集めたと察し、おいで、と仲間を呼ぶ。
「すっかりお腹もすいたね、味わおうじゃないか!」
 ティータイムというからにはやはり洋菓子。パーヴォの更にはタルトやケーキ、マカロンが綺麗に取り揃えられていた。
 皆が持ってきた名前も知らぬ洋菓子には、ほうと目を見張る。
 新たな物が知れるというのも良いことだ。そう感じながら颯夏は樹の近くに座り、他の人が持っているものを観察していった。
 フィラメントはスコーンを手にして、クロテッドクリームを其処に乗せる。
「うん、おいしい」
 スコーンは元々大好きだし、一緒に持ってきたショートブレッドも紅茶にぴったり。それに、これだけあればいろんなものを皆で分け合って楽しめる。
 詩歌も穏やかな気持ちを覚え、フォークを手にした。
「うん、十分揃ったねぇ。じゃあ食べようー」
 そうして先ずはケーキを一口。ふわふわしてる、という感想を落とした後に次はブレッドを一口。こっちはかりかりだと感じた詩歌はもぐもぐと菓子を味わう。
 サムライエンパイアのお菓子とはまた違った美味しさで食感も楽しい。麒麟も既に食べ始めており、両手に菓子を持って交互に味を確かめていた。
「おぉ、タルトのフルーツは新鮮だしスコーンはサクサクだし……一体どういう原理なんだこれ! 旨いからいいか!」
 ワハハ、と笑った麒麟は実に楽しそうだ。
 そんな中、パーヴォはお菓子に手を伸ばす相棒に問いかける。
「相棒、ちゃんと手は洗ったね? よしよし」
 マカロンを手掴みで口に放り込んだ子供の口許は嬉しそうに緩められていた。女性陣や相棒が幸せそうに楽しむ姿を見ながら、パーヴォは満足げに頷く。
「やっぱり女の子や小さな子が甘いものを食べてる姿は心が温まるねぇ。麒麟……君も楽しそうでなにより」
「そうそう、可愛い女子達がいれば味も一入ってな!」
 パーヴォからかけられた声に同意を示し、麒麟はタルトを平らげていく。他になにか食べるものは、と探す彼に颯夏がトフィーを差し出す。
「よければこれもどうぞ」
「やった! ありがとな!」
 喜ぶ麒麟に目を細め、颯夏はふと浮かんだ思いを言葉にした。
「それにしてもこれ、どこでどう作ってるのかしら」
「うん、詩歌も気になったよぅ。これどうやって出来てるんだろうねぇ」
 詩歌も首を傾げたが、今考えても答えは出ないことだということは分かる。颯夏から差し出されたお茶を受け取り、詩歌は甘い心地に身を委ねた。
 フィラメントもフルーツアイスティーで喉を潤しながら、賑やかな様子を見守る。
 パーヴォも相棒がうっかり喉を詰まらせぬよう適度に飲み物を勧め、焦らずゆっくり食べていいのだと告げる。
 こくこくと頷きを返した相棒は何かを訴えるように皆を見渡した。
「そうだね、皆と一緒がうれしいんだね」
 その思いを感じ取ったパーヴォは自分まで同じ気持ちになったかのように感じ、賑やかな様子を見つめた。
「……うわ、両手がベッタベタだぞ!」
「手拭いならあるけど、濡らして使うー?」
 はっとした麒麟に詩歌が手拭きを渡す様は騒がしかったが、これも幸せの証。フィラメントはついお行儀よく、と告げそうになるがすぐに首を振った。
「……まあ、今日はいいか」
 こういう機会は滅多にない。思う存分、楽しくお腹も幸せに。
 これがきっと、平和ということなのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

花咲・まい
ギドさん(f00088)とおでかけ!

見てくださいギドさん!
今までのお菓子の森も素敵でしたが、どこかのお庭みたいな、より春めいたところに出ましたですよ。ここも素敵ですね。
疲れた体には甘いものが1番と聞きますです。
私たちもさっそくティータイムと洒落こみましょう!

場所取りが出来たら、手身近な幹をココンとノック。
出てくるお菓子はランダムなのでしょうか。
であればアップルパイも捨てがたいですが、旬の苺のお菓子が出てきたら当たりですね!
ギドさんはお好きなお菓子はありますですか?
苺のお菓子が出てきたらぜひぜひ交換してくださいです!
もちろんシェアでも大歓迎!
さあ、いただきますですよ!

*アドリブはご自由にどうぞ


ギド・スプートニク
まい嬢(f00465)と

そうだな。たまにはこんな自然に囲まれての茶会も悪くない


菓子の類は全般的に好きだな
嗜好品と言われればそれまでだが、美食は心を豊かにする
洋菓子に限らず、和菓子なども良い

苺か。残念ながら私も苺は好きなのでな
まい嬢の頼みと言えど、譲るわけにはいかぬ

……と意地悪く笑うが、シェアするくらいなら構わぬだろう

まい嬢と同じく手近な場所をノックして
出てきた菓子を席へと持ち帰り茶会と洒落込もう

戻る先では我が従者が紅茶や食器の類など、ひととおりの準備が整えている筈だ


なお今の気分としては苺のミルフィーユが食べたい



●苺日和
 緑の地を駆け、少女は両手を広げる。
「見てくださいギドさん!」
 振り返ったまいが示したのは一面に春の野花が咲く光景。
 今までのお菓子の森も素敵だったけれど、この場所はどこかのお庭みたいで春めいた色に満ちている。
 ここも素敵ですね、と花の傍らに屈み込んだまいは指先で花弁に触れた。
 そして、顔を上げたまいはギドに新緑にも似た彩の瞳を向ける。
「疲れた体には甘いものが一番と聞きますです。私たちもさっそくティータイムと洒落こみましょう!」
「そうだな。たまにはこんな自然に囲まれての茶会も悪くない」
 まいの誘いに頷いたギドは辺りを見回した。
 手近な樹は何処でもお菓子が出てくるという。まいはきょろきょろと視線を泳がせた後、えいやっとコンコンしてみた。
「アップルパイが出てきましたです! ですが苺のお菓子も捨て難いですね」
 むむ、と嬉しさと少しの悔しさが混ざった表情を浮かべるまい。ゆるりと樹を見定めているギドに向け、まいは問いかけてみる。
「ギドさんはお好きなお菓子はありますですか?」
 その声に視線を返したギドは、好きなものか、と少々考えてから答えた。
「菓子の類は全般的に好きだな」
 嗜好品と言われればそれまでだが、美食は心を豊かにする。洋菓子に限らず、和菓子なども良いと話す彼の声をまいはにこにこと明るい笑みを浮かべて聞いた。
 そうして、まいは遠慮なく提案を投げかける。
「苺のお菓子が出てきたらぜひぜひ交換してくださいです!」
「……苺か。残念ながら私も苺は好きなのでな。まい嬢の頼みと言えど、譲るわけにはいかぬ」
 しかし、ギドは意地悪く笑って少女の様子を窺った。
 頬を膨らませると思いきや、まいはそれならばと代案を打ち返してくる。
「でしたら、もちろんシェアでも大歓迎ですよ!」
「それくらいなら構わぬだろう」
 意地悪な言葉にもめげない少女の瞳は純粋で、ギドは可笑しそうに薄く笑んだ。そしてギドはふと木の根元にちいさな看板があることに気付いた。
 成る程、と納得したのは其処に記された文字がお菓子の名前だったからだ。
 苺のミルフィーユを食したいと感じていたギドは文字を頼りに目的の樹へと辿り着く。あっ、と少し遠くでまいの声があがったのは同じことに気が付いたからだろう。
 コンコン、と紳士的なノックの音が響く。
 目の前に現れたスイーツの皿を手に、ギドはまいの姿を探した。ギドさん、と嬉しげに手を振って来た少女のもう片方の手には苺大福らしきものが見える。
「さあ、戻っていただきますですよ!」
「ああ、茶会と洒落込もう」
 見上げる少女の視線を受け止め、ギドは森の中のテーブルを示した。ふたりが其処に到着する頃にはセバスチャンが紅茶や食器の類をひととおり揃え、お茶会の準備を整えて終えているはずだ。
 使い魔の蝙蝠がせっせと茶器を並べている光景を思い浮かべ、まいは気持ちが浮き立っていくことを感じていた。
 アップルパイに苺のミルフィーユ、それからおまけに苺大福。それらを囲んで過ごす時間はきっと美味しくて、楽しい。
 ほら、もうすぐ――甘くて穏やかな春のひとときが近付いてくる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ネクタリニア・グラティア
エアル・アネモス(f16808)と

コンコンコン
ああ、本当に菓子が出てきたよプルケリマ
おもしろいねぇ、ともう一度
絡繰り探してもう一度
気付けばテーブルを彩るスイーツ達

反省はしている、が…さて如何しようと視線を泳がせ
目に付いた彼
奇遇だねぇと声をかけて、お茶に誘おう
あわよくば彼に食べてもらおう。なんて考えていたら
…おや、なんとも頼もしい言葉

彼は甘味が好きなのだろうか
普段より輝きを増した表情にそっと笑い
見事な食べっぷりを眺めながら、
生クリームのタワー盛りパンケーキを突く
美味いが、ちょっと重い

…頑張れ、キミならいける!

穏やかで心地よい春の陽気
会話らしい会話はないけれど
新しい彼を知れたようで、ちょっと楽しい


エアル・アネモス
【ネクタリニアと共に】

壁を叩くと、菓子が出るのか
……この世界の理がいまいち、よくわからないのだが
これは、壁の向こうで生成されているのか

好奇心と探究心
周囲の人々を見て回っては薄い表情のまま感心を
疑問符のない疑問も尽きない
試しにコンコンと叩いた其処からチョコレートを手に入れて口に入れた

不意に知った声に呼ばれ、一拍、振り返る

……お前か、ネクタリニア
誘われるまま、お茶の席へとついて
色とりどりの菓子に、瞳を瞬いた
お前、ひとりで食べきれるつもりだったのか、これ
……食物を無為にするのは、無しだ
食べ切る
もっもっもっも、と菓子を食べるのに徹するけれど
甘さにいつもの無表情がほんのり緩んでいたのは、気付かぬまま



●甘くて、しあわせ
 在るべき形に森は戻り、小鳥たちは伸びやかに唄う。
 緑が風に揺れる光景は平和そのもの。
 しかしこの世界の理とは不思議なものだ。マグメリアの森も例に漏れず樹々や壁から菓子が現れ出ると聞き、エアルは静かに首を傾げていた。
「これは、壁の向こうで生成されているのか」
 考えても答えは出ず、エアルはそっと腕を伸ばす。
 其処に宿るのは好奇心と探究心。先程まで周囲の人々を見て回っていたのだから自分が行うのも容易なはず。薄い表情のまま感心を寄せ、エアルは軽く樹に触れる。
 コンコンコン。
 試しに叩いた其処からはチョコレートが現れた。
 一口で頬張れるちいさな葉のかたちをしたそれを口に入れてみる。甘い感覚が舌先から広がり、エアルは双眸を細めた。

 同じ頃、少し離れた樹の傍でもコンコンコンとノックの音が響く。
「ああ、本当に菓子が出てきたよプルケリマ。おもしろいねぇ」
 御使いの白鵞鳥に笑いかけたネクタリニアは、もう一度、と違う樹へと歩き出す。先程のコンコンで出た菓子はローリーポーリー。ならば次は、と絡繰りを探してふたたびノックする。
 二度目はチェルシーバンズ。
 三度目はジンジャーブレッド。四度目、五度目は――と、気付けばテーブルの上を様々なスイーツ達が彩っていた。
「反省はしている、が……さて、」
 プルケリマがじっと見上げる視線に少しだけ目を逸らしながら、ネクタリニアは如何しようと視線を泳がせる。
 そのとき、ふと知った顔が視界の端に見えた。
 ネクタリニアは丁度チョコレートを口にしていたエアルに手を振り、声を掛ける。
「奇遇だねぇ」
 不意に聞き覚えのある声が耳に届いて、一拍。振り返れば彼女が居た。
「……お前か、ネクタリニア」
「一緒にお茶をしないかい。向こうに良いテーブルがあるんだ」
「ああ」
 彼女に誘われるまま、示されたお茶の席へと向かうエアル。
 其処に並べられていた色とりどりの菓子に瞳を瞬いた彼は、これは一体、と思わず問いかけそうになった。だが、わざわざ聞く必要もない。
「お前、ひとりで食べきれるつもりだったのか、これ」
「さあ、どうだったかな」
 ネクタリニアが少しとぼけて見せたのは元より、取りすぎた分をあわよくばエアルにも食べてもらおうと考えていたから。その魂胆に気付いたエアルは首を横に振る。
「……食物を無為にするのは、無しだ」
 断るのかと思いきや、食べ切る、という宣言が続けて落とされる。
「おや、なんとも頼もしい言葉」
 そこまで言えるということは彼は甘味が好きなのだろうか。ネクタリニアは手を差し伸べ、どうぞ、と彼を席に座らせた。
 隣の席にちょこんと乗っているプルケリマに見守られながら、エアルはフォークを手に取る。目の前にはウェリッシュケーキにザッハトルテ、おまけにマカロンの山。
 その奥にも色々あるのだから少しばかり取りすぎだ。
 しかし、エアルは文句も言わずに手近な皿を引き寄せ、まずはケーキを口に運ぶ。
 もっもっもっも、と菓子を食べることに徹するエアル。
 その甘さと美味しさに普段の無表情がほんのり緩んでいる。いつもより輝きを増したと感じられる彼の表情を眺めながら、ネクタリニアは机に頬杖をついた。
 そっと笑い、彼女はジンジャーブレッドを手に取ったエアルに応援の言葉を送る。
「……頑張れ、キミならいける!」
 もくもくと食べ続ける彼は自分の頬が自然に緩められていることに気が付いていないのだろう。その見事な食べっぷりを暫し見つめた後、ネクタリニアも自分もそろそろ食事をはじめようと決めた。
 生クリームのタワー盛りパンケーキを突き、舌先に乗る甘さを満喫する。
 少しばかり重い気もするがこれも贅沢。
 穏やかで心地よい春の陽気は心まで和やかにしてくれるようで心地好い。
 ふたりの間に会話らしい会話はない。けれど新しい彼を知れたようで、ネクタリニアは楽しい気持ちを覚えた。
 そうして、甘やかな平穏に満ちた時間が流れていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年04月28日
宿敵 『森主』 を撃破!


挿絵イラスト