異世界猟兵~0から始める猟兵とともに成り上がりの祝福を
いっけな~い飛散飛散💦
あたしアルラウネ! オブリビオンとして復活した花の魔物🌼👾!
でもある日ひょんなことからドラゴン🐲があたしたちの森で力尽きちゃってもう大変!
ドラゴンの魔力を浴びた植物が異常に強くなっちゃって、変な花粉を飛散💦させまくってるし……あたしたちこれからどうなっちゃうの~!?
「――ホントどうするのこれ」
「現実逃避してる場合とちゃうぞ」
「う~ん、どうしよっかぁ……?」
異常発達して大きく成長してしまった花を見上げて、アルラウネのあたしたちは溜息をつく。もうなんかアルラウネとか目じゃないぐらい強くなっちゃってるし、あたしたちじゃどうしようもない。
「人里の方まで花粉飛んでるらしいし……。これ絶対来るよね、冒険者」
「来るでしょ絶対。駆除しに来る。こんなんいたら怖いもん」
「っていうかあたしたちがもう怖いもん。え、何? あのドラゴンの魔力浴び続けるとあたしたちまでああなるの……?」
めちゃくちゃ恐ろしい姿になった自分たちを想像してお互いに震える。強くなれるとしても絶対ああはなりたくない。
「どうしようねえ……」
遠い目になりながら、あたしたちは大きな花を見上げるのだった。
●
「みんな、よく集まってくれた」
石動・劒はグリモアベースに集まった猟兵たちを見渡す。
「アックス&ウィザーズで事件が起きた。森から異常な量の花粉が散布されて、周辺の村に被害を出している」
村の辺りであれば低濃度であるため猟兵にそこまで影響は無いが、一般人は花粉の影響を受けてすでに症状を出しているそうだ。すでに冒険者ギルドから派遣された一般冒険者たちも花粉の影響を受けているため、事件の解決が急がれる。
「でまあ、花粉が一般人に現状で与えている影響なんだが。どう表現したものか……。バカになるというか、アホになるというか……」
劒は難しい表情をしながらろくろを回すような動作をする。
現地の様子を見てきた彼の話を聞くに、どうやら花粉の影響を受けた一般人たちは全体的に“チョロくなる”そうだ。やたらとこちらを褒めちぎったり、妙に惚れっぽかったり。
「まるで講談か黄表紙みたいな、ノリの軽い物語の主人公になった気分だった」
やや気疲れした様子で劒は吐息した。一般冒険者や、森の中の案内のために何人かの女性村人が同行することになっているが、この依頼に臨む猟兵たちも彼女たちの褒め殺しと惚れっぽさを覚悟した方が良いだろう。
「一応、同行する一般人たちは依頼中に手伝いをしてくれるらしいが、指示が無い限りはお前さんたちを邪魔しないよう無難な援護に留まるだろうな」
簡単な指示であれば引き受けてくれるだろうが、囮や盾役、火力役などの主要な役割はオブリビオン相手に担うことは難しいだろう。
「まずは森に巣食うアルラウネを掃討してから、花粉を噴出している花を探す。この森も今じゃこんな様子だが、この時期だと桜の花が綺麗なんだそうだ。全部やることやったら花見するのも良いかもしれねえな」
何にせよ森にいるオブリビオンどもは掃討せにゃならんのだが、と言いながら彼は紋章型のグリモアを出現させる。
「行って来い、猟兵。お前さんたちなら解決できるって、信じてるぜ」
三味なずな
まるで将棋だな……。
お世話になっております、三味なずなです。
今回は第一章から第三章まで通して、某小説投稿サイトみたいなノリでNPCの女の子たちにキャーキャー褒められたり驚かれたりしながら依頼が進みます。武器を抜けば「見たことのない武器だ、あれはなんだ」と驚かれ、ユーベルコードを使えば「あれは使える者の限られた秘技! さすがですわ!」と褒め称えられることでしょう。
第一章はアルラウネ戦です。せめてもの抵抗とばかりに数を頼みに抗戦して来ますが、よわよわです。叫び声にだけは注意しましょう。
※ご注意!※
花粉のキマった一般人たちが「選ばれた者しか持てない」などの持ち上げ方や、ギルドマスターだとかのファンタジー系によくある役職などがリプレイ中に出てくることがありますが、このシナリオの中でのみ使われる物であってアックス&ウィザーズの世界観に共通するものではないことをご了承下さい。
また、なずなのマスターページにアドリブ度などの便利な記号がございます。よろしければご参考下さい。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております!
第1章 集団戦
『アルラウネ』
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POW : ルナティック・クライ
【聞く者を狂わせるおぞましい叫び声 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : スクリーミング・レギオン
レベル×5体の、小型の戦闘用【マンドレイク(アルラウネの幼生) 】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
WIZ : リパルシブ・シャウト
対象のユーベルコードに対し【それを吹き飛ばす程の大音声 】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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六六六・たかし
◎【デビルズナンバーたかし外伝】
「異世界に行ってもたかしはたかしだった件について ~なぜなら俺はたかしだから~」
俺の名はたかし、UDCアースに暮らすたかしだ。
ひょんなことから俺はアックス&ウィザーズとかいう世界に連れてこられてしまったらしい。
まぁいい、さっさと終わらせて帰るとするか。
(そういうとたかしはアルラウネに向かっていった、たかしの手には「たかしブレード」が持たれていた)
いくぞ!!(キンキンキンキンキン!)
(雑魚を蹴り散らかしながら戦うたかし攻撃は華麗なる『悪魔の舞踏』で回避する。流石たかし、やったぜたかし)
やれやれ、別に大したことはしてないんだがな。
【デビルズナンバーたかし 外伝】
~異世界に行ってもたかしはたかしだった件について~
第一章:なぜなら俺はたかしだから
「ここがアックス&ウィザーズか」
青年が眼鏡越しに森林地帯を見回す。彼の名はたかし。普段はUDCアースで暮らすごく普通のたかしだ。
彼はひょんなことからこのアックス&ウィザーズ界へと転移してしまった上に、いつの間にかに事件解決の頭数に数えられていた。
「まあいい、さっさと終わらせて帰るとするか」
だがそんなこともたかしにとっては些細なことだ。確かに面倒ではあるが迅速に解決してしまえば問題はない。
「たかし様でしたらきっとこんな森楽勝ですね!」
「たかしの力、みんなにも見せてやってよ!」
「…………」
付いて来た案内役の少女と冒険者の女が口々に言い合う中、一人だけたかしを無言で見上げていた。デビルズナンバー六零零・ざしきわらしだ。
「……なんだ、ざしきわらし。何か言いたいことでもあるのか?」
「別に。勝手にすれば?」
問いかけても素っ気なく返されてしまう。これにはたかしも理解できないとばかりにやれやれと溜息をついた。
森の中を進んで行くと、程なくしてたかしたちはアルラウネを見つけた。
「いました! あれがアルラウネです!」
「お前たちは下がっていろ。いくぞッ!」
キンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキン!!
さすがはオブリビオンだ。
ゴロツキや不良とは、素早さも戦闘力も比べ物にならない。
キンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキン!!
アルラウネが飛び退って間合いを取った。
「いきなり斬りかかってくるってどういうことよ!?」
「どうもこうもない。――なぜならお前はオブリビオンだから」
「さすが《稀人(マレビト)》のたかし様ですわ。先手を取るや否や一気にアルラウネを追い詰めて行きました!」
「あの銃とも剣ともつかない不可思議な武器……まさか、あれは伝説の
……!?」
「そう、超魔銃剣・たかしブレードだ」
たかしは超魔銃剣・たかしブレードを構える。銃にも剣にもなりうるこの武器はいかにもアックス&ウィザーズでは珍しいものだろう。
「舐めんじゃないわよ! 隙あり!」
「あっ、危ないたかし様!」
潜伏させていたのだろう。隠れていた小型の幼生アルラウネたちが一斉にたかしへ飛び掛かる!
しかしたかしはこの奇襲をまるで予想していたかのように上へと跳躍することで回避する。その様はまるで悪魔が踊るかのように華麗だった。
「ぴーっ!?」
勢い余って互いの頭をぶつけて目を回す幼生アルラウネたちをたかしブレードで斬り捨てる。案内役の少女と女冒険者が黄色い歓声を上げた。
「キャーたかし様ー! かっこいいー!!」
「華麗な体捌きと剣術……冒険者の中にたかし在りと言われるだけあるな」
「なっ、ななな……何で!? 絶対必中の奇襲攻撃が避けられるなんて……!? どういうことよ!!」
「そんな攻撃に当たる俺ではない」
たかしブレードを手に、アルラウネへと歩み寄る。アルラウネもこのまま殺されてやるつもりはないとばかりに破れかぶれの攻撃をするが――。
「――なぜなら俺はたかしだから」
また同じように、その攻撃は未来で見て来たかのように避けられてしまうのだった。
悲鳴を上げる暇もなく、アルラウネはたかしブレードで斬り払われてしまった。
「素晴らしい戦いぶりでした、たかし様!」
「やれやれ、別に大したことはしてないんだがな」
溜息をつくたかし。ふと視線を落とすと、ざしきわらしと目が合った。なぜか頬を赤く染められて、ぷいっとそっぽを向かれてしまう。
「……まあ、たかしにしてはよくやった方なんじゃないの」
花粉は未だに舞い散り続ける――。
成功
🔵🔵🔴
リリサレナ・ハイヴァーン
◎
誰彼構わず花粉撒き散らすオトコって嫌いなんだけど。(百合視点)
っていうかね、なんかもうチヤホヤされすぎて恥ずかしいんだけど!!
イケメン冒険者に取り囲まれてチヤホヤされて顔熱い!!茹でダコみたいになってると思う!!!(アワアワ)
特に槍使い達の目がすごいキラキラしてるのよ!
私が槍をひと振りする度に尊敬の眼差しが刺さってきて……
もうっ!もうっ!(ブンブン)
【誘惑、怪力、早業、串刺し、なぎ払い、聞き耳、存在感】
あと『槍サーの姫』って言うのはやめて
!!???
リリサレナは激怒した。必ずや婬虐暴戻にも誰彼構わず花粉を撒き散らす雄しべを除かなければならぬと決意した。
リリサレナの前世は一輪の百合である。それが何の因果か女神の手によって聖槍へと転生を果たし、そして聖槍は幾星霜もの年月を経たことでヤドリガミとして人の姿を得た。つまりこれもある種の異世界転生である。
ともあれ彼女は村まで花粉を飛ばす花を決して許してはならぬと固く決意し、案内役を頼りに諸悪の根源がいるであろう森へ向かった。
「……来たのは良いんだけど」
アルラウネがけしかけて来る幼生体の群れを槍で横に薙ぎ払い、槍を手の内で回転させることによって勢いを殺さぬまま刺突へと変化。幼生体を操っていたアルラウネを串刺しにする。
「ううむ、息を飲むほどの見事な槍捌きですね」
「然り然り。槍には覚えがあったがそれを上回る技の冴え。男だてらにあれを見るだけで惚れ込んでしまいそうだ」
「俺より強ぇ槍使いと聞いたが……ヘッ、面白ぇ女」
後ろでお手並み拝見とばかりにリリサレナの戦いぶりを観察していた男冒険者たちが口々にリリサレナの槍術を褒め称える。そのせいでアルラウネを串刺しにした槍を握る手が少しばかり緩まったのも致し方ないことであろう。
「褒められるのは嬉しいんだけど……嬉しいんだけどぉ
……!!」
聖槍としてそれなりにちやほやされて来た覚えはあるが、このリリサレナ、女としてちやほやされるのには人の形を得て以来未だに慣れていなかった。こうまでツラの良い男冒険者たちに口々に槍術を褒められてしまうと、耐性のないリリサレナの頬はたちまち赤くなってしまう。それでいて、常より槍の鍛錬を怠らない彼女としてはその腕前を評価されれば嬉しくないわけがなく。
「うぅー……顔があっつい!!」
「大丈夫ですか? 顔が赤いですよ」
「よもや風邪ではあるまいな」
「へェ、アレで本調子じゃねえなんて、やるじゃねェの……」
「いや、そういうわけじゃなくて……いやある意味そうではあるんだけどぉ!」
こうも褒め殺しを受けて本調子から外れてしまっているのは事実ではあるのだが。すっかり褒められ通して真っ白になってしまった頭ではうまく弁明ができず、結局リリサレナは「もうっ!」と八つ当たり気味に串刺しにしていたオブリビオンから槍を振って引き抜く。オブリビオンはざあ、と黒い塵となって消えた。
「なあ、あれ……」
「槍使いばっかり集まってる中で紅一点かぁ……」
「まるで槍使いのサークル……」
「槍サーの姫……」
ひそひそと遠巻きに別行動の冒険者たちからの視線がリリサレナに刺さること刺さること。
「その呼び方はやめてよねッ!!」
叫ぶようなツッコミを入れながらも次なるアルラウネへと一拍で七連撃を突き込む。その軌跡を遠目から見れば、まるで流星のようですらあった。それを見てまた槍サーの男衆から歓声が上がる。
「ああーもう! 慣ーれーなーいー!!」
リリサレナの叫び声が森の中に響き渡るのだった。
成功
🔵🔵🔴
壥・灰色
◎
これもうわかんねえな
壥・灰色は思考を放棄した。なんせかれはこう見えて論理的思考能力が割とあるのだ
普段の魔力とパワーで解決するゴリラ的行動は、それが最も合理的だと判断するために行うものであり、実際彼の魔力と腕力があればそれが最も解決に近かったりするのだ
その彼が思考を放棄したのは、褒め倒され褒めちぎられ倒し、これはあれだ、女子高生があげる「マジやばーい」「マジ卍ー」と同質の概念である、と思わざるを得なくなった為であった
心を無にしろ
何も聞くな
受け流せ……
壊鍵、起動
手だけがオートでアルラウネを殴る
アルラウネをしばきながらも、どんどん表情が無になっていく
ところでこの花粉
濃度濃くなると猟兵にも効くのかな
「灰色くんすごーい!」
「灰色お兄ちゃんってすっごく強いんだねー!」
「あの、灰色様って呼んでもいいですか……?」
壥・灰色は宇宙を背負った猫の如き無表情で目の前の女たちを見ていた。
「……………………」
森の案内役の少女にサポートをすると勝手に付いて来た冒険者の女たちはきらきらとした目を灰色に向けている。その後ろには倒されたアウラウネたちがあった。
経緯を端的にまとめよう。灰色はいつも通り依頼を受けて、自分なりに作戦を立て――いつも通りゴリラパンチでゴリ押せばゴリ勝てるというゴリラ的解決が有効だと彼は確信していた――そして勝手に付いて来る一般人の女たちを率いて敵地である森へ赴き、まずは数体のアウラウネを倒した。
その途端にこの一般人たちからの褒め言葉の嵐、尊敬の眼差しの雨である。これには表面化さえしなかったが多少なりとも灰色は困惑した。冷静に自己評価すれば、目立った瑕疵はなくともそう大袈裟に褒められるような戦果では決してないだろう、というのが彼の感覚だった。
「……これもうわかんねえな」
一瞬だけなんとか彼女たちの思考背景へと思いを馳せようとして瞬時に思考放棄した。
考えるからダメなのだ。感じろ。そう、これはいわゆる女子高生たちで言うところの「えーかわいーいー」「マジやばーい」「マジ卍~」などのワードとおよそ同源の思想概念ないしは価値判断基準であるのだろう。どこぞの三番器もかつて「アレはコミュニケーションを円滑化するための方便であることが多いから、本当にそう思っているわけではなく単に『すごいよ、これ味がする!』ぐらいのニュアンスで使われることが多い」と説明していたような気がする。説明していたか? 説明していた。そういうことになった。
思考を整理し終えて、灰色は吐息と共に頷く。成程、そういうことであれば対処は比較的容易だ。
――つまり心を無にすれば良い。何も聞かず、全てを受け流すのだ。
量子物理学的にも観測しなければそれは存在するのと同時に存在しないことになる。つまりこれはシュレディンガーのやたら褒めて来る女たちだ。見ざる言わざる聞かざるの三猿を貫けばこの謎の状況もおのずと切り抜けられよう。ゴリラ的解決方法を実行している今の自分であれば体現は容易だろう。何せゴリラと猿はなんと生物分類上では哺乳網霊長目まで共通している。科の時点でもうオナガザル科とヒト科で別れるが。
それはともかくとして。
「……壊鍵、起動」
一般人たちの黄色い歓声やら声援を掻き消さんばかりに腕へと流し込み多重増幅した魔力で衝撃波を生み出す。
アウラウネが強烈な叫び声を上げるも、彼の生み出した衝撃波によって掻き消され、次の瞬間には灰色の拳によって殴り抜かれていた。
思考停止しながらも、体だけは正直にアルラウネたちを殴り倒して行く。しばき倒したアルラウネの数が増えるたびに歓声が上がり、それに比例するように灰色の無表情から更に感情が欠落するようになくなっていく。
すべてが終わった頃になって、一般人たちから上がる黄色い声の中でふと花粉まみれになった自分の体を見下ろして、彼は呟く。
「……この花粉、濃度高くなると猟兵にも効くのかな」
――この時、彼は知らなかった。
花粉濃度の高い元凶との戦いで、猟兵たちもまた同じように花粉によって苦しめられることになろうとは――。
成功
🔵🔵🔴
御伽・柳
◎
行動:【POW】
使用UC:【痃癖】
使用アイテム:【紫色のイヤホン】【自分用スマホ】
これは……な○う小説状態……!UDCアースの人間なら1度くらいは経験してみたいと思うやつ……!
どうせなら……どうせなら俺だって異世界転生して魔法が使えるようになりたかった……!
現実はこんなクソ邪神をこき使うしかないのですから非情である
あ、叫び声は【痃癖】をアルウラネに使って黙らせます
口を塞げ、呼吸をするな、そしてそのまま窒息しろ
一応不意打ちを受けないように(あと周りの言葉で変に気が抜けないように)【紫色のイヤホン】と【自分用スマホ】で音楽聞きながら戦ってます
……そういえば、この花粉、俺たちに影響は……
分家と言えども魔術師の家系に生まれついて、御伽・柳は期待していた。
もしかしたら魔術の才に恵まれていて、それこそまるでお伽噺の魔法使いのように自由自在に魔法を使えてしまえるのではないか。自分はそんな特別な人間の一人なのではないか。まだ幼く魔術の才能というものに憧憬を抱いていた頃の彼は、そんなことを考えていたかもしれない。
それが蓋を開けてみればどうだろうか。彼は凡夫であった。魔術の才の欠片もない平凡な男。目の前に非日常な特別があって、きっと自分ならそれを掴み取れると信じていたにも関わらず、爪先さえも届かなかった時の彼の絶望と慟哭はいかばかりか。
「ああ、あの時にどうせなら……どうせなら俺だって異世界転生して魔法が使えるようになりたかった……!」
小声で一人ごちると、深い溜息が口元を隠すマフラーを膨らませた。
ここはアックスアンドウィザーズのとある森。
彼の後ろには幼い女の子と快活そうな女冒険者が付いて来ている。彼女たちはまだ出会って間もないというのに「大丈夫? 具合悪い? 膝枕してあげよっか?」と気遣わしげに首を傾げて来ていた。
「大丈夫ですよ、心配してくれてありがとうございます」
「そんな、私たちが頼れるのはオトギ様だけですから……」
「そうよ。ヤナギがやらなきゃ誰がやるってのよ!」
目元だけで笑って返す。返って来た女の子たちの励ますような笑顔があまりにも眩しい。思わず天を仰ぎ見るほどだ。これで超スーパーすごいチート能力があったらなぁ、と思わなくも無いが現実は自分の身に宿したクソ邪神をコキ使ってやるしかないというのだから世の中は非情なものである。
ともあれ一般人を連れながら柳が奥へと進んでいくと、事前の情報通りそこにはアウラウネたちがいた。
「ヤナギ様――」
「しっ、わかってますよ。……ちょっと静かにしていて下さいね」
オブリビオンの姿を見つけて、少し怖がるように敵の所在を教えようとしてくる少女を、マフラーの前で人差し指を立てるジェスチャーで静かにさせる。少女はなぜか顔を赤らめて俯いてしまった。
柳は取り出したスマートフォンを操作する。音量はいつもよりも少し大きめに、かける曲はいつものお気に入りを。奏でられる音楽が耳を満たして、それ以外の音が小さくなる。
準備ができれば、視線を滑らせるように液晶画面からアルラウネへと向けて。
「少し、お借りします」
柳はその身に宿る邪神の眷属を放って、アルラウネへと植え付けた。
「口を塞げ」
鋭い命令口調で言葉を投げる。アルラウネはようやくこちらに気付いたようで、反撃とばかりに叫び声を上げようとするが――閉じた口が開かない。
「呼吸をするな、そしてそのまま窒息しろ」
次に水中に入ってしまったかのように息が止まってしまう。意味のわからぬまま、とにかくこの場を脱しようとまだ酸素のある内に逃げ出そうとしたアルラウネは、けれどその途中で力尽きてしまった。
これが彼のユーベルコード。植え付けた眷属を介して敵を洗脳し、窒息死させる力だった。
「……ふぅ」
吐息し、そういえば二人は大丈夫だっただろうかと後ろを振り返る。
一般人の二人は何やら先の力を見たせいか、興奮した様子で何事かを柳に語りかけているようだった。それも音楽とイヤフォンで、今は聞こえないが。
「大したことではありませんよ」
とにかくそう笑ってみせて先へと進むと、二人もやはり付いて来た。
そういえば、と柳は樹冠を見上げる。
この花粉、猟兵たちへの影響はあるのだろうか。
――その危惧が、後に猟兵たちの前に立ちはだかるとも知らずに。彼は歩んで行くのであった。
成功
🔵🔵🔴
パーム・アンテルシオ
なんでもかんでも褒められるって、慣れないっていうか…釈然としないんだけど…
でも、折角だし。ここは一つ、ノリノリで行った方がいいのかな。
うん、何事もチャレンジチャレンジ。
ユーベルコード…いや、ここからノリノリで行くべきかな…
それじゃあ…見せてあげるよ、私の秘術。
超級炎術、七火竃。
【獄炎呪】の異名を持つ(今考えた)この術を見る事が出来るなんて、あなた達は幸運だね。
空よ燃えろ。世界は、変革する。
炎よ落ちろ。空も地も、全ては私のもの…
選ばせてあげるよ。差し出すか。奪われるか。
何を?それはもちろん…あなた達の、命を。(耳栓付けながら)
…なんてね♪
えっ、どっちかというと悪っぽい?そっかぁ…
【アドリブ歓迎】
「パームの尻尾はふさふさしててすごいね。水鳥の羽毛よりも柔らかそうだよ!」
「それにパームちゃんはお目々がぱっちりしていてとってもかわいいっ!」
「歌も上手で、女神様かと思ったぐらいだったね」
案内役の少年少女と、それから男冒険者と共に森を進む中。パーム・アンテルシオは曖昧な微笑みを絶やさないことに苦心していた。
パームは「もふ屋」だ。その商売道具である自分の尻尾の毛並みを褒められることはそれなりに多いし、それなりに自信のある歌でも褒められることはままあることだ。特に彼女が本気で誘惑などした時など、彼女の魅力を褒め称えない者などいないだろう。
そんな褒められ慣れた彼女であっても、何でもかんでも特に大したことをしていないのにも関わらず褒められるこの状況には、いささか釈然としないものがあった。
しかしそうであってもさすがは客商売、何とか適応してみせようと、彼女はノリに合わせて行く。何事にも挑戦しようという精神は彼女の美点の一つだった。
群生するアルラウネたちを見つけて、いつも通りに手を掲げ。
「ユーベルコード――」
いや、とここで首を横に振った。こういうのは演出も大切だ。もうこの時点でノリノリで行くべきだろう。
「それじゃあ……見せてあげるよ、私の秘術。――超級炎術、七火竈。【獄炎呪】の異名で知られるこの術を見られるなんて、あなた達は幸運だね」
パームの九尾がざわめいたかと思うと、そこから気が放出されて天へと昇る。
「空よ燃えよ。世界は、変革する。炎よ落ちろ。空も地も、全ては私のもの……」
空の一部が桃色に染まり、頭上が燃え立つ炎のような揺らめきを見せる。この時ばかりは、パームに付いて来た三人も、そしてアウラウネでさえもその光景に圧倒されて何も言えない様子だった。
「選ばせてあげるよ。差し出すか、奪われるか」
「な、何を選べば……?」
「それはもちろん――」
にやりと口を三日月に。空中を引っ掻くような仕草の直後――空から巨大な火柱が降り注いだ。
「あなたの命を。……なんてね♪」
桃色の炎で燃え盛る中、普段はピンと立った狐耳をぺたんと両手で塞ぎながら、悪戯っぽくウィンクしてみせる。
「どうだったかな? 結構大迫力でしょ」
「す、すごーい! パームって魔王みたい!」
「……ま、魔王っ?」
「えー、違うよー、ドラゴンさんだよー」
「ドラ、ゴン……?」
「闇魔術師もかくやの大威力だったよ。いやあすごい術だった」
「闇……」
総じて悪っぽい印象が先立つらしく。これにはさすがのパームも「そっかぁ……」と苦笑する他なかったのだった。
成功
🔵🔵🔴
灰炭・炎火
◎
「大丈夫、ここはあーしに任せて」
村人達を傷つける訳にはいかない
炎火は好戦的であると同時に――戦う力を持たぬ者を守ろうと思う正義感も、また当然のように持ち合わせる少女だった
「アルラウネ――ね。けど、あーしの一撃に耐えられる?」
手元のメダリオンが輝くと同時! 取り出されたるは炎火以外は持ち上げる事もできぬ、3mを超える赤い宝石で出来た、その名も“ニャメの重斧”である!(キラリとⅡの刻印が光る)
「いっくよぉー!」
その小さすぎる体から振るわれる一撃! 吹き飛ぶアルラウネ! かっこいいあーし!
「……手応えって、感じたことないんよね、あーし」
ふっ、とどこかさみしげな顔をして先をゆくのだった
「へくちっ」
「で、出た! アウラウネだ!」
悲鳴にも似た発見報告が森の中に響き渡る。若き冒険者はまだ経験が浅いのだろう。声の大きさで敵に気付かれ、それに釣られて更に多くの敵が来る。
「ひぃぃぃっ」
冒険者が後じさり、木の根に踵をぶつけて転びそうになった瞬間。後ろから支える者がいた。
「はいはい、怯えない怯えない」
「よ、妖精様……!」
それは小さなフェアリー、灰炭・炎火だった。彼女はその矮躯に似つかわしくない怪力でもって男一人の体重を支えていた。
「大丈夫、ここはあーしに任せて」
にひ、と笑いかけて、体勢を立て直させた冒険者の肩からするりと炎火は前へ出る。
炎火はフェアリーの中でも特に好戦的だ。しかし、それはあくまで荒事に自分から首を突っ込んで行ってるだけであって、無法者を意味するわけではない。彼女もまた戦う術を持たぬ者、戦う術を持ちながらも未だ未熟な者を守ろうという正義感の持ち主であった。
「アルラウネ――ね。結構多いじゃん。けど、あーしの一撃の後に残っていられる?」
彼女の持つメダリオンが輝きを放つと同時に、彼女の片手には身の丈15倍ほどはありそうな重斧が握られていた。
あれこそは彼女が所属する“結社”の象徴の一つ。鎖鉄球が付き、“Ⅱ”の刻印が刻まれた赤い宝石製の巨斧こそは“ニャメの重斧”だ。
「いっくよぉー!」
本来あるはずの重量などまるで感じさせないように、炎火は巨斧を振るう。叫び声を上げる暇もなく、アルラウネは巨斧によって両断され、樹冠の彼方へと吹き飛ばされた。
「束になっても全然“手応え”無いんなあ……」
「おお、あの凶悪な魔物を一撃で……!」
冒険者が目をきらきらさせながら感嘆の声を上げる一方で、炎火は少し残念そうな顔をしながらブンブンと巨斧を振っている。
「どうやってそんな大斧を使いこなしてるんですか?」
「力よ、力。パワー。力任せに振り回す」
ぶん、と片手でまた振ってみせてから、“ニャメの重斧”を元のメダリオンへと戻す。その言葉を聞いて、冒険者は唖然としてしまった。
「な、なんて剛力……」
「便利だけど、そうイイものでもないんよ? 手応えとか、あーし返って来た試しがないし」
小さなメダリオンを手に、炎火はふよふよと先へ行ってしまう。
本来返って来るべき反動、その一切が炎火の前では無きに等しい。あまりにも理不尽なほどに強力な怪力だった。
あるいは、それは“結社”の同じ構成員であれば馬鹿力だなんだと評していたのだろうが――。
「へくちっ。うう、誰か噂してんかな……」
成功
🔵🔵🔴
リチャード・チェイス
◎【常に誠実、ダマスカス級冒険者チーム悪巧み】
私達の伝説を聞きたいかね?(ざわめきが大きくなる)
青き薔薇の咲く庭園に集った4人の(はやし立てる口笛が混じる)
村人よ、リクロウの呼吸のリズムについて褒めちぎってくるのである。
何処まで話したか。そう、あれは暑い夏の(興奮で歓声がとどろく)
あの時、私達は悪(ワル)だった(感極まり、ただの叫び声になる)
少女よ、ティアーに被りたいと懇願してくるのである。上目使いで。
いや、やっぱり冬だった(ここで気絶者がでる)
あの真夏日の昼間、私達はビルの(全アックス&ウィザーズが泣いた)
ジョンが敵に花を持たせたのである。人々よ、それを称えるのである。
ジョン・ブラウン
◎
【騙すカス……もとい、ダマスカス級冒険者チーム悪巧み】
(パチンッ)
「ステータスオープン!」
指を鳴らしながらワンダラーの液晶画面からホログラムディスプレイを空中に投影
「さて自己紹介と行こうか、僕はジョン・ブラウン。ただの冒険者さ」
「レベル?ああ27だけど(剣世界2.0基準)」
「そうだ、皆これを使うと良い」
ワンダラーからあんまり花粉が防げなさそうな安手のマスクを取り出し配る
「これ?アイテムボックスだけど……もしかして珍しいのかな?」
「彼女が敵だって……くっ、魔物と言えど女の子じゃないか……!」
「魔物と人間の何がち(パァン(不意打ちを食らう」
「………」
「うおおお!!(大量の技能名攻撃)」
詩蒲・リクロウ
◎
【ダマスカス級冒険者って何?チーム悪巧み】
ここまで行くともはや狂気、なんですよね。
一動作する度に褒められ担がれ、僕もう既にグロッキーですよ。
害意は無いので邪険には出来ないですし、放置するにはうざいですし。
もうこれ恐いですよ。
しかも、見てくださいよ。
頼れる(?)仲間たちは皆調子乗ってますし、それがまたストレスですよ。
えぇ?敵?
なんか、もう、今ちょっとそんな気分じゃなくて……
あ、分かってくれます?ええ、もうホント何しても赤子みたいに褒められちゃ堪ったものじゃないですよ。こういう時に限って悪友たちは何もしないですし…。
あ、聞いてくれてありがとうございます。じゃあ。(謎喰らう触手召喚)
※ここまで真顔
ティアー・ロード
ヒーロランクはC(という事にしている) ダマスカス冒険者チーム悪巧み】
洗脳、ダメ絶対
「……」
(乙女にチヤホヤされ……珍しく無言の仮面)
「ダメだ、滾らん」
「この私が、乙女にチヤホヤされ
そして乙女が望めば乙女を涙の支配者にすると?
いや、これが常ならしたろうが」
(カタ)
「しない理由は簡単だ」
(カタカタ)
「ヒーローには覚悟が必要なのさ……
例えそれが無くとも心が紛い物では、ね」
(カタカタカタ)
「……っく、滾らん、滾らんぞ!」
(だいぶ揺れつつも乙女の誘惑に耐えるヒーローマスク)
使用UCは【刻印「比翼連理】!
デッキから二対のガイストを召喚して森を焼くよ
「黙れ」\ドン☆/
「今私の頭は乙女の事で一杯なんだ!」
◎
何事もある一定の水準を超えた時点でそれは狂気と化す。
詩蒲・リクロウは今回の依頼でそれを痛感した。
「キャー! リクロウくん手を上げるところもかわいいー♥」
「見ろよあの鉤爪、ちょっと傾けただけで陽光を反射してキラリと光る!」
「見たまえ、あの依頼に行くたびに毎回何かしらの被害を被っていそうな出で立ちでありながら、それでもなお純粋さを忘れぬ曇りなき瞳を! まさしく芸術ではないかね!」
リクロウは純朴なシャーマンズゴーストだ。褒められれば素直に喜ぶし、なんなら煽てられて木にも登る。
それでも、そんな彼であっても、この一挙一動どころか何をしないでも褒められ続ける褒め殺し状態は度し難かった。
「害意が無いから邪険にもできないですし、放置するにはあまりにもウザいですし……。いやもうこれ怖……ホラーですよホラー」
どないせいっちゅうねん、とばかりにリクロウは頭を抱える。
「ジョンさん、この人たちなんとか……」
なりませんか、と連れのジョン・ブラウンへ助けを求めようとしたが。
「キャー! ジョン様ー!」「素敵ー!」「レベルいくつー?」
「ふふふ、レベル? ああ、27だけど。ついでに冒険者等級はダマスカス級だ」
「27!?」「精鋭兵でさえレベル7、英雄でレベル11だというのに!」「ほぼマイナーゴッドに等しいレベルじゃないか
……!」「大英雄ダマスカス冒険者様バンザーイ!」
「…………………………」
一緒に付いて来た一般人相手にイキるジョンを見て真顔になった。リクロウを褒めていた一般人が「真顔なリクロウ様も素敵ー!」「石膏像に残したいぐらいだ!」などと褒めて来るがそんなものは無視だ無視。
「ティアーさん、ジョンさんがあんな調子なんですよ。どうにか……」
できませんか、ともう一人の連れであるロード・ティアーへ呼び掛けようとして。
「キャーロード・ティアー!」「赤い目が素敵ぃ……」「私の涙でよければいくらでも飲んでー!♥」
「すまないリクロウ後にしてくれないか今私はかつてない強敵と戦っているんだそうこれは見えざる敵実体を持ちしかして実体を持たぬ敵すなわちそれは私の煩悩私の欲望私自身のエゴという敵と私は私の中で戦っているところなのだ悪いけど邪魔しないで貰えるかな……!」
「あっ……ハイ……」
超絶早口で遠慮を促されてはさしものリクロウとて頷かざるを得ない。美女に囲まれながらもティアーはぷるぷるとその身を揺らしながら何かに耐えている様子だった。女たちに絡まれるヒーローマスクという光景は傍目から見ていていかにもシュールな光景である。
「リチャー……」
こうなったら最後の一人、リチャード・チェイスに頼る他あるまい。リクロウは振り返り。
「私たちの伝説を聞きたいかね? よろしいならばお聞かせしよう。蒼き薔薇の咲く庭園に集まった2人、私、ティアー、ジョン……いや3人だ。リクロウも入れて4人だな。もとい! 星の内海、物見の台、楽園の端から聞かせると――」
「……………………」
伝説語りをしているリチャードを見て、全力で視線を逸らすことで見なかったことにした。
「……た、頼れる仲間たちがみんな使い物にならない
……!!」
おお、と嘆きの声を上げながら腹に手を当てる。下手な誘惑攻撃をしてくるオブリビオンよりも厄介な状況で、ストレスに耐えきれなくなった胃がキリキリと悲鳴を上げ始めていた。
「わかるよ、めっちゃわかる。なんかみんな生きるのに必死で協調性皆無だし……」
「あ、わかってくれます? 普段それなりにちゃんと役目を果たしてる人たちなだけに余計に腹が立つっていうか……」
「信頼とか友情とかあるとねー、逆にこういう時辛くなるんだよねー。わかるよそれ。あたしも普段仲良い子たちがみんなして自分だけ生き残ろうって他の子たちを囮にしようとしてるところ見ちゃってさー」
「ああ、それは幻滅してしまいますね……。心中お察ししますよ。仲良しだと信じていた人にそういうことをやられてしまうと、今までこの人と仲良くやってた自分はなんだったんだって気分になりますもんね……」
「それまさしくさっきのキミじゃない? って、あ。これ話ループするやつじゃん」
「あっはっは、ホントですねー」
二人して一頻り笑った後。
「――で、何で自分はアルラウネと話してるんでしょう?」
今まで話相手になっていたアルラウネを見下ろしながら首を傾げた。
「……同病相憐れむ、みたいな?」
「……仮にもオブリビオン相手に色々同情されるのは、ちょっと複雑な心境ですけど。いえ、でも聞いてくれてありがとうございました。じゃあ」
「じゃあ?」
何だろう、とばかりに首を傾げたアルラウネへと、リクロウが召喚した触手の群れが襲いかかった。
「まあ、役目は役目ですから……」
●
ティアー・ロードには信念がある。ヒーローたるもの自分の中に確固たる正義、はっきりとした「ここから先はまずい」という線引があるのだ。
ゆえにこそ、この洗脳じみた花粉の影響はティアーにとって唾棄すべき現象であり、即刻その原因を断ち切らなければならない。
「ティアー様ぁ、私に被らせてぇ♥」「あぁん表面の紋様が素敵ぃ♥」
「……滾らん」
「フォルムがセクシィー♥」「なぞらせてぇ♥」
「……私は、滾ってなど、いない
……!!」
乙女たちに囲まれてチヤホヤされながら、ティアーは自分に言い聞かせるようにしながら身体さえカタカタと震わせながら耐えていた。
常ならば、乙女から「被らせて欲しい」などと言われようものなら、喜びの余りに空を舞う紙の如く空中で踊りさえしただろうが。今回ばかりはそうもいくまくまい。ここで洗脳を良いことに被らせてしまったら、それはヴィランどもとやっていることがまるで同じではないか。
「ヒーローに必要なものは、覚悟……! いや、例え覚悟なくしても紛い物の心につけ込むなど人道に反する!!」
人道とはいえ彼女はヒーローマスクなんだが。
まるでバイブレーション機能が搭載されたかのようにカタカタと震えるティアーを、若干引き気味のアルラウネが見ていた。
「……はっ!? これ今攻撃すれば一網打尽じゃん!」
「黙れ」
ドン☆とティアーが念動力で操作したのは一つのストラクチャーデッキ。そこから引かれた二枚のカードから、“炎槍幽士-ガイスト・ランサー”と“炎操霊士-ガイスト・エンフォーサー”がバン☆と出現する。
「今私の頭の中は乙女たちのことで一杯なんだ。少し黙ってて貰おうか!」
若干八つ当たり気味な怒気さえ孕んだ声音でティアーが言うと、それに応じるように“ガイスト・ランサー”と“ガイスト・エンフォーサー”が炎でアルラウネを燃やす。
「キャー素敵ー!!」「さすがティアー様ー!!」
「…………」
乙女たちを背に、ティアーは何かに耐えるようにその赤い瞳に森ごと燃えるアルラウネたちを見つめるのだった。
●
「ステータスオープン!」
スナップフィンガーと同時にジョン・ブラウンはワンダラーの液晶画面からホログラムディスプレイを空中に投影した。
「大賢者……もといウィスパー、大気状況の解析」
《解析中》《解析完了》《魔力を帯びた異常な濃度の花粉を感知》
要請すると、ウィスパーはその通りのデータを収集してホログラムへと表示する。円グラフとテーブル表で表される花粉の濃度はなるほど確かに、異常な濃度だった。
「どう対策したものか……。あ、そうだ。皆もこれを使うと良い」
ジョンがワンダラーの液晶画面から量子データ化保存していた安手のマスクを大量に取り出して、一般人たちに配る。
「じょ、ジョン様、今のは一体
……?」「何もないところからこんなにマスクが出て来るなんて……」
「これ? アイテムボックスだけど……もしかして珍しいのかな?」
「アイテムボックス
……!」「あの大量のアイテムを仕舞い込んで持ち運べてしまうという伝説の!?」「希少なアーティファクトを使うところをこの目で見られるとはありがたやありがたや……」
ジョンを拝みながらマスクを受け取り、皆装着していく。
その中で一人、男が悲鳴を上げた。
「ひぃっ、あ、アルラウネだ!?」
「なんだって!?」
驚きながら、その男を庇うようにジョンは前へ出る。彼の言葉通り、植物型の少女、アルラウネがそこにはいた。
「彼女が敵……? くっ、魔物と言えども女の子じゃあないか……!」
「し、しかしジョン様、ああ見えてアルラウネは厄介な魔物でして……」「とにかく妙なことをしない内に早く倒して下さい!」
「何を言ってるんだ、彼女だって外見は人間と獣ほどかけ離れていないのに! 魔物である彼女たちと僕たち人間の何が違――」
ばちーん、と。不意を打ってアルラウネがその幼生体をジョンへとけしかけて攻撃してきた。
「……………………………………」
頬に手を当てると、幼生体の葉の部分で頬が切れていた。
「うおおおおおおおおおお
!!!!!!」
オーラで防御を固めながらのダッシュでまず幼生体どもを蹴散らしロープワークと溜めていた怪力でまとめて縛り、それでもなお縄から漏れた幼生体たちの攻撃を地形を利用した多段ジャンプでもって空中で避け、誘き寄せた敵を盾にして恐怖を与えて投擲の2回攻撃でジョンは敵を倒した。
「はぁっ、はぁっ……かつてないほどの強敵だった
……!!」
「キャー、ジョン様ー!」「あんな敵にも花を持たせてから討伐するだなんて……なんて徳の高いお方なんだ……」
●
「――そこで私は言ってやったのだ。『ティアーよ、三顧の礼を行いなさい。さすればきっと乙女は頼みを聞いてくれるだろう』と」
「三顧の礼
……!」「なんて的確でスマートなアドバイスなんだ!」「こうして二人の絆がより一層深まったのね!」
伝説を語るリチャードはうむ、と頷きながらも考える。
――ぶっちゃけ聴衆が増えすぎた。
その数はちょっとした講演会並に多く、ぶっちゃけリチャードの手には最早終えない。ざわつきで自分の声が妨害され、気持ちよく伝説が語れない状況にあった。であらばやることはただ一つ。
「村人よ、今しがたアルラウネを倒したリクロウの呼吸のリズムについて褒めて来ると良い。それが彼への何よりの褒賞となろう」
――押し付け、である。
「はい先生! ――リクロウ様、あなたの光の呼吸と闇の呼吸が渾然一体となった呼吸法はまさしく陽の光を表すかのようで――」
「うわあああああまた変な褒め方する人来ちゃった――!?」
グロッキーな様子のリクロウへ追撃の褒め殺しを仕掛けに行った村人たちを見て、さも良いことをしたとばかりにリチャードは満足気に頷く。普段からあまり功績を口で認められない彼だからこそ、今こうして言葉による褒賞がなくてはならないだろう。人はパンのみにて生くるにあらずである。
「さてどこまで話したか……。そう、あれは暑い夏の日のこと。あの時、私達は悪(ワル)だった」
「リチャッ! リチャード様ァ――!!」「センセぇぇええええ!!」「オギャッ! オギャアアアアア!!」
「少女よ、ティアーに被りたいと懇願して来るが良い。上目遣いでかわいらしくな。彼女には被った者に福を与える力があるゆえに」
「わーい!」
エキサイトの余りに歓声がただの叫び声となってきた段階で、危ないと判断された女児女性たちをティアーへと向かわせる。手段はともかくとして妙なところで紳士的なリチャードだった。
「ええと……そう、あれは暑い夏の――いや、やっぱり冬だった。あの真夏日の昼間――いやこれは梅雨だな? 熱帯夜の昼間、私達はビルの――」
「お゛お゛お゛お゛お゛お゛ん゛!゛!゛!゛!゛」「なんて……なんて感動的な話しなんだ
……!!」「感情を失ったはずのこの俺が……泣いている
……!?」
「……おっと、ジョンが的に花を持たせたのである。さあ、称えよ。あれが一流の冒険者の振る舞いである」
感極まって号泣する観衆たち。中には気絶者さえも出て、会場は混乱の渦中にあった。とりあえず気絶者の救助をしやすいように、ある程度の人数をジョンへと誘導する。
「……皆が話を聞くために静かになるのに5分かかったであるな。では話の続きを――」
その後もリチャードの伝説語りは続いたが、聴衆たちの騒動によってたびたび中断され、遂には全てのアルラウネたちが掃討されてタイムアップとなるのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ネグル・ギュネス
◎
(なんだこれ)
一先ず花粉など浴びてはどうにもだな
【衝撃波】を刀を振るって放ち、強風で吹き飛ばしておこう
鳴宮、帰っちゃダメ
私も帰りたいけどダメ
それにこう、たまには目立たせたいやつがいるだろ
ほら、私らの支援ばかりしてる…あの我々ちゅーまってなんかいう、ヴィクティムのことだよ
キャーキャー言わせていい目を見させてやろうぜ
と言うわけで、ユーベルコード【勝利導く黄金の眼】起動
氷の【属性攻撃】の弾丸をばら撒き、植物みたいなやつらの動きを鈍くさせよう
支援する、今回は私が脇役さ
俗に言う、サイドストーリー発刊、あの名作のあのキャラのお話って感じで!
ヴィクティム
運命を、受け入れろ───!!
※花粉に頭がやられてます
ヴィクティム・ウィンターミュート
◎
自分帰っていいっすか…あ、ダメ…ハイ…
こいつらすげー持ち上げてくるなオイ!!
だああああああ!!褒めるな!!媚びるな!!持ち上げるな!!
端役のことなんかどうでもいいからキリキリ働けバーカ!
やりにくい…ネグル、匡…どうにかしろ
ユーベルコードを使用して、奴らから音を奪い去る!
音を奪う…つまり、空気の振動を消し去る。衝撃波も音声も意味を為さない
【先制攻撃】で開幕から射出、わざと外して広範囲を無音フィールドにして手早く処理だ!
【ダッシュ】一気に距離を詰めて、各個撃滅だおら!
へっ、楽勝楽勝…えっ?俺また何かやっちゃった?
これくらい普通だろ?
え?何で驚いてんの?あ、弱すぎだから?
(頭がおかしくなってます)
鳴宮・匡
◎
何この……何?
頭の悪い空間になってる……。
なあネグル、俺帰っていい?
あ、ダメ? そう……。
……いやヴィクティム、どうにかって言われても
流石に一般人殺したらダメだろ?
だったら俺にはどうしようもない、諦めてくれ
ま、切り替えて仕事しようぜ
とりあえず召喚された奴を片っ端から撃ち殺していこう
できれば動き出す前に仕留めたいな
ヴィクティムが無音の空間を作るなら有難く乗る
効果の続く間に本体の数を減らしておきたい
優秀な奴がいると仕事が楽でいいよな
それにしてもこの女連中、何を騒いでんだろうな
別にこれくらい普通だろ……?
(※頭はおかしくなっていません。素です)
◆補遺
概ねクール+鈍感系主人公タイプで差し支えないです
「ヴィクティム様ー!♥」「ネグル様ー! 傷跡なぞらせてー!!」「Arsene! Arsene!」「ナルミヤ様素敵ー!! 鎖骨舐めさせてー!!」「キャー! こっち見たー!」「違うわ、あれは私を見たのよ!」
ここはアックスアンドウィザーズの森。女冒険者や村の案内役の少女たちに黄色い声を上げられて、ヴィクティム・ウィンターミュートは辟易した顔になっていた。
「……自分、帰っていいっすか……」
「ああ、じゃあ俺も帰るわ。お疲れ」
「両方ダメに決まってるだろうが。却下だ却下」
即座に真顔で便乗した鳴宮・匡ともども、帰りたがる二人をネグル・ギュネスが押し留めた。
「私も帰りたいが、こいつらをこんなところに置き去りにする気か?」
「村まで護送すりゃ良いんだろ……?」
精神的な疲弊を拭いきれない顔でヴィクティムが呟くように返答する。それに対して鉄面皮が常である彼にしては珍しく顔をしかめて、ネグルが一般人たちを指した。
「アレを?」
「さすが伝説に謳われたチームアサルト。こんな僻地の危機にも駆けつけてくれるだなんて
……!」「邪悪な騎士を倒したって伝説のチームなんだ、きっと綿密な事前準備を済ませた上で即解決してくれるに違いない!」「冒険者として貴重な体験だわ……。きっと彼らを手本にして、一流の冒険者になりましょうね!」
「………………」
一般人たちの期待の異様な高まり様を見て取って、ヴィクティムは嘆息だけをついた。あの調子であの人数なのだ、きっと適当な理由を付けて今から帰ろうとしても納得せずに進んで行ってしまうだろうというのは容易に想像がついた。
「ヴィクティム様ー! カッコイイー!」「鋭い目つきが素敵ー!」「私の心もハックしてー!」
「……ッ、だああああああ!! 褒めるな! 媚びるな! 持ち上げるな!! クッソ、やりにくいったらありゃしねえ……。ネグル、匡、お前らどうにかしろよ!」
「いや、どうにかって言われても。……さすがに一般人殺したらダメだろ?」
「引き金が軽すぎる!」
「生憎とカリキュレイト・アイでの演算結果では、これをどうにかする対処方法は無いと出た。ので、私は諦めた」
「普段言ってる希望はねえのかよ!?」
頭を掻きむしらんばかりの勢いで叫ぶ彼へ、二人が冷静に返す。マジでどうしようもねえ、とヴィクティムは顔を覆った。
「諦めるしかないなら切り替えて仕事しようぜ。仕事は手早くスマートにこなすに限る」
「同感だ。……ちょうど敵の痕跡もこの辺りから急に濃くなっている。来るぞ」
「やるしかねえか……」
痕跡からアルラウネが近いことを見て取った三人は、それぞれの得物を構える。
「支援する。今回は私が脇役だ」
最も最初に動いたのは、カリキュレイト・アイによって高度な未来予測を行うネグルだ。彼はソリッドブラスターαに装填した氷結弾を薙ぐようにばら撒いた。茂みに隠れていたアルラウネたちの下半身が凍りつき、その動きを鈍らせる。
それを見て目を剥いたのはヴィクティムだった。
「はぁっ!? 支援は俺の役割――」
「普段私たちの支援ばっかりしてるヤツをたまには目立たせてやらないとな! キャーキャー言わせて良い目を見て貰うぜ。運命を受け入れろ、ヴィクティム――!!」
「そういう趣旨か。オッケー」
ヴィクティムからの抗議を差し置いて、ネグルがニヤリと笑いながら次弾を装填する。その間に潜伏していた幼生体たちによる奇襲攻撃を匡がアサルトライフル掃射で迎え撃つ。
匡が横目でちらりとネグルを見遣ったのは、花粉の影響を受けて彼がだいぶ思考系統が怪しくなっているのを、いつもと違った妙なテンションの高さから感じ取ったからなのだが。そこからすぐに視線を外したということは「まあ作戦に支障がないなら別に良いか」と捨て置くことにしたのだろう。
「くそっ、敵以上に厄介な奴らだ!」
吐き捨てるように言いながら、ヴィクティムは右腕の『フェアライト・チャリオット』から0と1でできたプログラムの光線を放つ。着弾点を中心に、限定空間から音――つまりは空気震動を奪い去った。アルラウネたちが叫び声を上げようとするも、叫び声がうまく出せずに困惑した表情を浮かべる。
「冬の静寂は身に染みるだろ?」
ネグルの氷結弾と合わせれば尚更だろう。ここまでスマートに敵の攻撃手段を潰せれば一流のハッカーだ。
だが、彼は一流のハッカーではない。超一流のランニングハッカーだ。口元に凶悪な笑みを浮かべながらヴィクティムは疾走を始めた。瞬く間に距離を詰めて、領域外縁の敵から喉を狙うように生体ナイフを振るう。
「右翼、任せた!」
「了解」
消音空間にあっても、事前に登録した特定の音波だけは素通しにできる。素早く支持を飛ばし、それを受けた匡はヴィクティムとは反対の方角の外縁の敵、アルラウネから潰しにかかる。
●
媚びるヤツは好きじゃない。
ヴィクティム・ウィンターミュートが反骨精神の塊だから、というのもあるだろう。だが、きっと彼にとって一番の要因はその育ちにある。
彼の生まれ育ったスラム街では、乞食たちが媚びたえらく不細工な笑顔で物乞いをしていた。あるいは、ストリートチルドレンたちがマフィアに取り入ろうとおべっかを使っていた。だが、それらは全て無駄だとヴィクティムは見て知ってしまっていた。金持ちも、マフィアも、彼らを足蹴にして終わりだ。強者は弱者に施さない。だから弱者は強者に成り上がるしかないのだ。
「今だ、ヴィクティム!」
「ああ、各個撃破だオラァ!」
注意するべきとされていた攻撃も全て対処したアルラウネは正しく雑魚に違いなかった。最後の一匹が差し向けてきた幼生体たちをネグルが切り払いの衝撃波で散らして、その脇をヴィクティムが駆け抜けてアルラウネへと刃を突き立てる。確かな手応えの後、ざあ、とオブリビオンは黒い塵へと変わった。それを確認してから、ヴィクティムはくるりとナイフを回してホルダーへ戻す。
「へっ、楽勝楽勝」
「「「キャ――――――――――ッッ
!!!!!!」」」
「はっ
……!?」
一般人たちの急な叫び声に、ヴィクティムはすわまた敵襲かと驚いて身構えるが、匡が無反応ということはそうではないのだろう。
「あのアルラウネを倒してしまうなんて!」「熟練の冒険者だってああも簡単に正面から倒せないぞ!」「無音の中をはやぶさのように駆け巡るヴィクティム様、素敵ぃー!」「ネグル様は銃もカッコいいー!!」「百発百中のナルミヤ様ー!! 私のハートも射止めてー!!」
観客に徹していた一般人たちの湧くような歓声に、三人は呆気に取られたように立ち尽くす。
「……なあ、ハートを射止めるって、心臓撃ち抜いたらさすがに死なないか?」
「違うそうじゃない」
どこかズレた解釈をした匡へ即座にネグルがツッコミを入れた。
「えっ、俺特になんかやったか? いつも通りで、これくらいが普通だろ?」
「あの女連中がなんで騒いでるのか俺にもわからない。これぐらいは普通だろ」
ヴィクティムと匡が揃って首を傾げ、「敵が弱すぎたから?」だとか「敵の数が少なすぎたからだろ」などと二人の“ものさし”を示し合わせて言い合う。
一般人たちに囲まれながら、そんな二人をネグルは眺める。
「サイドストーリー、スピンオフ発刊。あの名作のあのキャラのお話って感じで――といったところか」
いつか本当にそんな本が出たとしたら。
一度読んでみたいものだ。ネグルはそう微笑みながら、甘えて来る幼女の頭を撫でさするのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アルトリウス・セレスタイト
◎
戦力に数えなければ、いつもとあまり変わらんということだな
破天で掃討
高速詠唱・全力魔法・2回攻撃・範囲攻撃・鎧無視攻撃など駆使して絶え間なく撃ち続け、爆ぜる魔弾の弾幕で蹂躙する面制圧飽和攻撃
攻撃の頻度と密度で相殺する上から叩き付ける
突破できないなら魔眼・掃滅に切り替え消去
レギオンも一緒くたに、視界に捕捉しうるだけ全て纒めて消し飛ばす
現地冒険者及び一般人の同行者が近くにいるなら下がって身を守っていてもらう
自身への評価その他は聞き流す
感情はあれど未だ顕にするほど掴めてはいない
人型をしているだけの身には感慨を抱くほどのものにはならぬ
アルトリウス・セレスタイトは今までいくつもの任務を受けて、何度も依頼をこなし、幾度となく修羅場を掻い潜って来た。それゆえに、溜め込んだ戦闘経験というものも多い。
「……要は護衛戦か」
付いて来た一般人たちを見渡して、アルトリウスはそう呟いた。冒険者も何人か付いて来ているが、見立てではそこまで突出した能力は無い。それならば自分がユーベルコードで賄ったほうが確実で早いだろう。教導を頼まれたわけでもなし、それならば戦力に数えず、庇護対象ぐらいに扱うのが最も適切だろう――と彼は過去の経験から類型を探し出して結論付けた。
護衛戦における特筆すべき敗北条件は「護衛対象の死亡」だ。では、逆に勝利条件とは?
「残らず殲滅だ」
アルトリウスは青い輝きを放つ魔弾をいくつも生成し、弾幕にして間断なく射出する。まるで機銃の掃射の如く万遍ない高火力面制圧の嵐は、被弾したアルラウネたちを灰も残さず消し去った。
要は護衛対象が殺される前にこちらが敵を殺し尽くせば全ては解決する。そういう意味では、アルトリウスにとって今回の依頼はいつもと同じだった。余人であれば不可能だろう。火力が不足している、手数が不足している、索敵能力が不足している。不足を彼らは水際防衛という形で補う。だがアルトリウスにはそれら全てを一人で賄って余りある実力と、それを運用しうる経験があった。
「すごい、すごいですアルトリウス様!」「すさまじい……王国の弓部隊を総動員してもああも高密度な弾幕は……」「ああ、不可能だ。まさしく神業だろう」「大魔法使い、いや、大賢者か
……!?」
「…………」
人々からの歓声と称賛を前にしても、彼は無表情を崩さない。感情がないわけではないが、なぜ彼らが騒いでいるのかまったく理解できない、まるで自分の成し遂げたことがそう大したことではないと言わんばかりで――否、彼にとっては真実大したことのない戦果だったのだろう。周囲に配慮して絞った火力でも一撃で葬り去ることができてしまう敵は、彼にとっては脅威にすらなりえない。
人の身をした戦術兵器。いつだったか、どこだったか。自分をそう評する者がいたことをアルトリウスは思い出す。
「人型をしているだけの身……」
人間の形をしていながら、しかし人間ではない自分では何の感情も掴めず、空を切った手は何の感慨も抱くこともできない。
それに対して思うことは特に無い。
ただ、敵を倒す。それだけだ。
大成功
🔵🔵🔵
紅呉・月都
あー…まぁ、なんだ
色々と悲惨だな。色々と
衝撃波と範囲攻撃、なぎ払い使っての攻撃
この数で叫かれたらたまんねえっつの
一気に行くぞ!
敵が叫けば顰めっ面
あー、あーうるせえうるせえ!
さっさと骸の海だかなんだかに失せろ、でもって二度と帰ってくんな!!
敵からの攻撃は野生の勘と見切りで回避
もしくは数だけはやたらと多い敵を盾にして対応するぜ
そーすりゃ数も減るし一石二鳥だろ?
周りが盛り上がれば何やら歯が浮く様な感覚
褒められ慣れていないヤドリガミは一緒になってぎゃーぎゃー
っだー!うるせえ!
お前らも少し黙ってろ!!
そんな盛り上がるようなこと一切何もしてねえよ!
おら、あっちのやつの方がスゲーことしてるぞ!
◎
弱者が強者に対抗する時の手段というのは限られている。
時間をかけて自分が強者になる。
奇策でもって強者よりも優位に立つ。
他の強者を連れて来て、代わりに戦わせる。
今回の場合は――“とにかく数を揃えて集中攻撃する”だった。
「数ばっかり用意しやがって!」
紅呉・月都は舌打ちしながら日本刀を横薙ぎに振るう。白刃の前にアルラウネの幼生体が斬り伏せられ、更にその先、刃の届かない位置にいた個体をも、振り抜いた時に生じた衝撃波が襲いかかって蹴散らしてしまう。
月都は刃を脇構えに構え直しながら、踏み込んだ足を更に前へ出す。今処理したアルラウネは単なる壁役に過ぎない。彼の本命はその先――今まさに狂ったように叫ばんとするアルラウネたちだった。
「間に合――わねえッ!」
彼我の距離差と刀の範囲。そしてアルラウネたちが叫ぶタイミング。それらを瞬時に月都は見て取って、自分の攻撃は間に合うまいと直感的に判断した。
「「「■■■■■■■■■――ッッッッ
!!!!」」」
歯を食いしばった直後に、アルラウネたちによる絶叫が始まった。
音とは震動だ。障害物があれば多少ではあるが緩和できる。彼は動かす足で、今しがた斬り伏せた幼生体たちを蹴り上げ、宙に浮かせて壁の代わりにする。気休め程度ではあるが、構えを脇から八相へ変えて、腕を耳元に当てたこともあって鼓膜にまではダメージは届いていない。
間に合わないが、耐えきれる。
判断は一瞬。瞬く間に距離が詰まって、彼は刀を振った。茂みか若木を切ったかのような、少し固い手応えが重なる。それと同時に、あの不快な絶叫が弱くなる。
「さっさと骸の海だかなんだかまで消え失せて、二度と戻って来るんじゃねえ……ッ!」
彼は自分の本体であるナイフを何本か宙に出現させて、それらを今しがた斬ったアルラウネたちへ差し向ける。鈍い音が幾重も鳴って、ようやくアルラウネたちの絶叫は鳴き止んだ。
「っはぁ、くそっ……うるせえったらありゃしねえ……」
刀を片手に、まだキンキンと痛む耳を手で抑える。絶叫のあまりの音量の大きさに、いくらか聴覚も狂いが生じてしまったらしい。絶叫はもう収まったはずなのに、耳の中ではワアワアと妙な音が聞こえている。
「――きゃー素敵ー!!」
だから、さっきまで月都の戦いを見ているだけだった女が上げた歓声は、尚更彼の耳に響いた。
「まさしくブレードマスターの称号に相応しいお方よ!」「敵の攻撃を物ともせずに切り伏せる姿、勇ましいわあ……」「この勇姿を村の銅像にしたいぐらいね!」
「……っだぁ――! うるせえ――!!」
きゃあきゃあと騒ぎ立てる一般人たちへ、月都が怒鳴りつける。大きな高い声で叫ばれるたびに耳が痛むのだ。
「お前ら少し黙ってろ! んな盛り上がり方するような場面あったか? ねえよ、一切微塵もこれっぽっちもねえよ!」
「まあ、ブレードマスターったらご謙遜を……」「この謙虚な姿勢、人間ができているってきっとこのお方のためにある言葉ね」「まさしく聖人に相応しいお方……やはり銅像を」
「いらねえよ作るなよ!? おら、あっちのやつの方が今スゲーことしてただろ!!」
耳を抑えながら適当な猟兵の方を指さしてそちらへと一般人たちの注意を逸らさせる。意外と単純なもので、まんまと一般人たちはそれに釣られて注意を惹かれて行き、一時の安寧を得た月都は若干複雑な表情を浮かべながら吐息した。褒められ慣れていないだけで、まったく嬉しくないというわけではないのだ。いやそれでも真面目に鬱陶しかったが。
「ああ、戦いの後の物憂げな表情も素敵。やっぱり銅像にして……」
「だから作るなっつーの
……!!」
成功
🔵🔵🔴
第2章 ボス戦
『幻惑喰いの大花』
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POW : 喰らいつく
単純で重い【花の中心にある口による噛みつき】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 蔦を振り回す
【蔦の先の花粉嚢】が命中した対象を爆破し、更に互いを【頑丈な蔦】で繋ぐ。
WIZ : 幻覚を見せる
【幻を見せる効果のある花粉】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を花粉で埋め尽くし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
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「お疲れさん。よくやってきてくれた」
アルラウネ戦後、君たち猟兵は一旦休憩も兼ねて作戦会議のためにグリモア猟兵の元へ集められていた。
一般人たちに付き纏われてかしましくやんややんやと囃し立てられ続けた君たちは、大なり小なり精神的疲労が溜まっていることだろう。
「……いやマジでお疲れさん。とりあえず、今はゆっくり休んでくれ」
二度言った。
「休んでいる間、簡単にだが状況の説明をさせて貰うぜ。まず、周囲一帯のアルラウネはお前さんたちの仕事のお蔭で全滅だ。これで横槍の危険性はなくなったと見て良い」
邪魔立てする存在が完全にいなくなったことから、事件の元凶を討伐する戦いもスムーズに進行できるだろう。もしこれでアルラウネたちが相当数残っていたら、元凶と共闘していたかもしれないという予測さえあったのだから、その懸念を排除できたのは非常に大きい。
「残す敵は元凶、“幻惑喰いの大花”のみだ。なんでも、この辺りで力尽きたドラゴンの魔力を浴びて異常成長した個体らしい。そんじょそこらの植物と違って、自我のようなものが備わっているみたいでな。ツタやら歯のような物で攻撃してくるみたいだ」
噛み付き攻撃は地形を破壊するほどの威力で、注意を要するだろう。花の動きに注意だ。
また、ツタの先に付いている花粉嚢に当たると爆発を引き起こし、その上拘束されるためこれもまた厄介である。地面にツタを埋没させて隠している可能性も示唆されているため、奇襲警戒を怠ってはならない。
そして、特に注意するべきはその花粉だろう。大花から出される花粉は幻覚作用がある。
「この幻覚がまた厄介でなあ。斥候からの報告によると、大花が段々とえっちなお姉さんに見えて来たそうだ。……あの斥候は野郎だったから、多分女が影響を受けたらえっちなお兄さんとかおじさんに見えて来るんじゃねえかな、多分だけど」
猟兵一同にざわめきが生まれる。ついでのように花粉によって大花自体の戦闘力が向上していることについても説明されていたが、果たして聞こえていたかどうか。
「幻覚には幻視、幻聴、体感幻覚だとか、諸々含まれた厄介な代物だ。えっちなお兄さんお姉さんの誘惑に打ち克つ強い心を持つことだ」
そこまで説明が終わると、休憩終了の合図が鳴った。
「以上で説明は終わりだ。悪いが乗りかかった船だと思って付き合ってくれ」
●補足説明
0.†知らんのか、花粉からは逃げられない†
1.敵は敵自身が好みの異性(場合によっては同性)として幻覚で映ります。簡単な性格だとか外見の情報をどうぞ。無い場合は適当に捏造するシェフのオススメコースになります。
2.好みがわからないPCである場合は、幻覚で映し出されるものが最近気になってる異性になります。(対象が他PCの場合は、PLさんからの許可がないならうまくボカして下さいね! ここ重要です!)(もっと言えば、できればこのネタやりたい方は、プレイング合わせで来てくれると確実なので嬉しいです!)
3.幻覚は積極的に会話やボディタッチでアプローチして来ますので、反応は様々にどうぞ。
4.◆◇◆◇◆◇第六猟兵は健全な全年齢ゲームなので青年の何かが危ない描写はできない。イイネ?◆◇◆◇◆◇
パーム・アンテルシオ
◎
好みのタイプ、かぁ…あんまり考えたこと無かったなぁ…
男性?女性?…同性はイメージできないし…きっと、男の人だと思う。
カッコいい?逞しい?…うーん…綺麗な人?
年下よりは…年上?頼りがいがあって、強くて…守ってくれて…
居場所になってくれて。
きっと、そんな人…かな。
ユーベルコードは、奇跡の力。だったら…
幻すらも魅了してみせる。
九ツ不思議…妖狐。
ねえ、幻のあなた。協力しろ、なんて言わないから…
今だけ。邪魔せず、見ていてくれないかな。
そうすれば…後で、ご褒美をあげるから。
そして…幻の後ろに隠れた、あなた。
ふふふ。後ろでコソコソしてるのは、タイプじゃないかな。
気を全開で…と。
こういう時は…ビンタ!かな?
ひどくふわふわとした心地だった。
パーム・アンテルシオは辺りを見回す。彼女は敵のいるであろう森の中心部へと足を運んでいたはずだ。だが、いつの間にやら周囲はぼんやりと霞がかっていて、周りに同道していたはずの猟兵たちの姿も見えなくなっている。
「本物の霧……ではなさそうかな」
尻尾に触れる。湿った様子も無い。であればこれが話に聞く花粉か、あるいは幻覚か。妖狐の自分が化かされてしまうなんて、と場違いにもパームは苦笑してしまう。
だがここは曲がりなりにも戦いの場だ。敵がどこにいるのか、そして仲間がどこにいるのかを探さなくてはならない。気を取り直したその矢先、ふと目の前の霧が少し薄らいだ。
『パーム、こんなところにいたのか』
上背の男、だった。格好いいと言うよりも、綺麗と評した方が適しているような優男。声音は親しげで、優しく響いていた。
パームには見覚えのない男だ。だが、彼からはどこか懐かしさのようなものを感じさせられた。あるいは――。
二本目の尻尾と、四本目の尻尾がざわりと揺れた、気がした。
『何にせよ敵に遭遇する前に合流できてよかった。僕が前に出るから、パームは後ろの警戒をお願いできるかな?』
「え、あ……うん」
彼とは仲間――なのだろうか。パームを守るように、彼は前に立つ。その勢いに呑まれてしまったかのようにパームは頷いてしまった。
そんな気のない返事をしたせいか、少し心配そうに男がパームへ視線を合わせるように腰を屈める。
『……大丈夫かい? なんだかいつもより、ちょっと元気がなさそうに見えるけど』
「だ、大丈夫。ちょっとびっくりしただけ」
『本当かな。パームって時々無理することがあるし……。熱とかないよね?』
「や、大丈夫だってっ!」
額に手を伸ばされるが、すんでのところで我に返って身を引いた。
訳もなく、なぜか男と話すのが心地良かった。事前に幻だと聞かされていなかったら、危うく流されていたやもしれない。
男は所在なさげに伸ばされた手を降ろして、苦笑する。
『それじゃあせめて、今回はパームは支援に徹してて。大丈夫、きっと僕が守るから』
気を取り直したように男は立ち上がる。
『これが終わったら、一緒に美味しいものでも食べに行って……それから昼寝でもしよう。しっかり働いた後はしっかり休んだ方が良い』
「………………」
パームは応えず、意を決したかのように吐息する。
「九ツ不思議……妖狐」
周囲を覆った白霧に桃色が混じる。
――誰かに夢を見せるのならば、それはとびきり素敵な夢を見せるべきだ。
夢は夢のままで。夢だと理解させたまま、けれど現実から離れすぎずに。それでいて、一時の幸福感に浸れるものがとびきり素敵だ。
これは少し惜しかった。これがもし、裏にオブリビオンが潜んでいない幻覚だったとしたならば。あるいは幻覚の彼としばし語らうのも一興なのだろうけれど。
「ねえ、幻のあなた。協力しろ、なんて言わないから」
にこりと、妖狐は男へ笑いかける。
「今だけ。邪魔せず、見ていてくれないかな。そうすれば、後でご褒美をあげるから」
ユーベルコード。世界の法則さえも覆す謎に満ちた奇跡の力。
パームのユーベルコードは生身の人間のみではなく、幻覚の男でさえも誘惑して、魅了しきってしまう。
「幻の後ろに隠れた、あなた」
するりと男の脇を通り過ぎる。霧が更に薄まって、目の前に黒く背の高い、花のような影が見えた。
「後ろでコソコソしてるのは、ちょっとタイプじゃないかな」
腕を思い切り振りかぶって、パームは大花へとビンタした。
「私を誘惑しようだなんて百年早いよ。なんてね」
成功
🔵🔵🔴
ジョン・ブラウン
◎【チーム悪巧み】男性陣は本日欠席
説明しよう、チーム悪巧みの男性陣はこういうちょっとえっちな空気が苦手なのだ
そのためティアーのユーベルコードの効果で楽屋裏へと潜り込んで観戦を決め込んだ
ではここでカメラを移そう
「あ、映ったね。ドロー2」
「ははっ、こっからだと幻覚何見えてるかわかんないや、うける。スキップ」
「うわ、見てるだけで花粉症になりそう。スキップ」
「ドロー2」
「残念もう一周、ドロー4」
彼らの懸命な声援によりティアーは驚異的なパワーアップを果たす
そう、チーム悪巧みは 言うなれば運命共同体 互いに頼り 互いに庇い合い 互いに助け合う一人が四人の為に 四人が一人の為
「ん?なんか埃っぽ……あ、花ふ」
リチャード・チェイス
◎【チーム悪巧み】男性陣は本日欠席
忸怩たる思いでティアーに戦いを任せ
せめて精一杯の声援を送る事を誓う3人。
(一方その頃を頻繁に挟んでカメラ切り替えてください)
「カルピス飲む人はいるであるか? 炭酸水もあるのである」
勝手に冷蔵庫を物色。
「強いて言うならば、メリハリのあるスタイルの女性を好む。
しかし、私は鹿であり、紳士である。ドロー2」
「故に、こういうことは手順を踏みたい。
例えば夜景の綺麗なレストランのディナーからである。ドロー4」
「努力を称えよう。ワイルドドロー4」
だからこそ戦場で生きられる。ウノを言うな!
出せない手札の溜まったカードがせせら笑う。
お前も! お前も! お前も!
ティアー・ロード
【チーム? 悪巧み】
◎
「んん、ここは……
しまった。心頭滅却し過ぎて気付かなかったな、もう次の戦場か」
「村の乙女もいない、もう惑わされんぞ
…………?」
「あれは!!!」
使用済UCは【刻印「鹿鳴之宴」】……
えっ、そんな刻印知らない……
「この子が、ヴィランなのか
……?!」
「私にはできない、こんな子を攻撃するなんて……!」
「やめろぉぉぉ!」
何故か強化され、自立行動した
愛用のグローブ「マイティアーム」が念動力で浮遊して攻撃します
好みの乙女や異性のタイプは捏造マシマシでもいいんだけど参考までに!
猫耳
青髪の長髪で身長は160前半
目の色は真紅
胸は形優先でスレンダーな体型
性格は偽善者タイプ
お姉さんよりは妹が好みだ
詩蒲・リクロウ
◎
【チーム悪巧み】男性陣は本日欠席
チーム悪巧みの致命的弱点が此処に来て明らかになろうとは……!
3人の意志を受け継ぎ、この試練を打ち破れティアー・ロード!
では、カメラをスタジオに戻しましょう。
「好みの異性ですかぁ。そりゃ興味はありますけど僕女性の同族そこまでみた事無いですから……あ、ウノです」
「えっ、ちょっ、くぅ……!ティアーさん、何を見てるんですかねぇ……?スキップです」
「ああっ!ジョンさん、さっきからスキップ連打卑怯ですよ!」
「ええい!ドロー4です!」
「ああぁぁぁあ!!!」
これは声援であって決して遊んで居る訳では無い。
これこそが絆の証、ユウジョウパワー!
尚、チーム悪巧み被害担当は持ち回り制。
●ティアー・ロード
「んん……」
ふと、我に返ったティアー・ロードは周囲を見渡す。いつの間にやら自分に付きまとっていたあの一般人たちの姿はなく、辺り一面は白い霧のようなもので覆われていた。
「ここは一体……。しまったな、過剰な心頭滅却で気付かなかった。もう次の戦場なのか?」
思い悩むように仮面をやや内側にしならせるティアー。ううむ、としばらく辺りを見回し続けるも、やはり場所はわからないままだ。
「場所はわからないが、村の乙女たちもいない。これならば惑わされることなく状況把握に努められるね」
ふう、と少し疲労とも安堵ともつかない溜息を漏らし、心機一転して進もうとしたその矢先の出来事だった。
ティアーの目の前に、大きな影が現れた。
「あ、あれは
……!!」
霧の中から現れたその影の正体とは――
一匹の、カメラを頭に装着した鹿だった。
●楽屋
チーム悪巧みは4人で一つのチームだ。互いが互いの長所を活かし、互いが互いの短所を埋める。そうやって彼らは困難な試練を乗り越え、強大な敵を打ち倒してきた。
だが、そこまでしても4人に共通する埋めがたい弱点というものは確かに存在する。
それが、今回のようなちょっとえっちな空気だった――。
「キャルピス飲む人はいるであるか? 炭酸水もあるのである」
リチャード・チェイスは冷蔵庫を物色していた。よく冷えたキャルピスをコップに注いで飲み干す。濃厚な甘さがするりと口から喉へと駆け抜けて行った。
「じゃあ僕はキャルピスで」
「ドクトルペッパーある? ……あ、映った映った。ティアー以外一面真っ白だ」
テレビを注視するのはジョン・ブラウンだ。液晶テレビの中には白い霧の中に浮きながら怪訝な表情を浮かべるように身体を傾げているティアーがカメラを覗き込んでいた。
「ハァイ、調子良い? 聞こえてる?」
『鹿からジョンの声が
……!?』
「ああうん、これティアーが出した【刻印「鹿鳴之宴」】のカメラに付いてる通話機能だから」
『えっ、そんな刻印知らない……』
「時間がない、手短に済ませるよ。今そっちの霧の中には君しかいない。多分女の子が出てくると思うけど、それは敵の幻覚だから気を付けて。それからえーっと……」
「ジョンさん、次あなたですよ」
「あっ、マジ? ごめんえーっとスキップで」
「では私はこれを出すのである」
『UMOだね? UMOやってるね君たち???』
「結構居心地良いよ、鹿鳴之宴の楽屋。鹿鳴館意識なのかな。スキップ」
「ああっ!ジョンさん、さっきからスキップ連打卑怯ですよ!?」
「リバースするのである。……まあ我々はここからティアーを応援するであるから、チーム悪巧みを代表して励むであるぞ」
『ちょっ、待つんだ! 君たちは戦場から逃げようとしている! 逃亡者は銃――』
ブツンッ――
●ティアー・ロード
ツーッ、ツーッ、ツーッ……。
「が、ガチャ切りぃ……ッ!!」
頼りになる仲間たちに応援(強調)だけされて霧の中にぽつんとティアーは佇む。カメラの付いた鹿が「どんまい」と励ますように仮面を舐めるが、後になってから「紙と間違われたのでは……?」と気付いた。
「と、ともかく、この状況をどうにかしないと……」
『仮面君、どうかしたにゃぁー……?』
やけに間延びした女の声が聞こえて、ティアーはそちらへ身体を向ける。そこには、長い青髪で芋いジャージを着た猫のウェアライ……もとい猫のキマイラっぽい少女が立っていた。
「君は、一体……?」
『瑠璃は瑠璃だにゃー。……迷ってるにゃね? 迷ってるなら、手を貸してあげても良いにゃー……。猫の手も貸したい、にゃー』
突然現れた少女に面食らいながらも、ティアーの赤い瞳は目の前の瑠璃と名乗る少女に釘付けになっていた。もうちょっと身長があと3,4cmほど伸びて体型がスレンダーでちょっと偽善者っぽい感じだったら理想だったのになあ惜しいなあでもほぼ理想だし、このダウナーっぽい雰囲気もまた癖になりそうだ――などと考えていたことを少女が察したかどうか。
しかしこの状況で協力者になってくれそうな女性が現れてくれたのはまさに渡りに舟だ。早速ティアーは瑠璃へと自分を被るように言おうとした瞬間。ジョンの言葉を思い出した。
――『多分女の子が出てくると思うけど、それは敵の幻覚だから気を付けて』。
「――この子が、ヴィランなのか
……!?」
●楽屋
「あの花粉って好みの空いての幻覚を見せるんでしたっけ」
「で、あるな。異性の場合が多いと聞いていたが、ティアーのことだから十中八九女性見えているであろうなあ」
「ははっ、こっからだと幻覚で何見えてるのかわかんないや、ウケる」
「敵の罠でさえなければ何が見えるのかっていうのは興味あるんですけどね。ただ同族の女性ってそこまで見たことないですからどんなのが見えるのか怖くもあり……っと、あ、そろそろウモだ」
「私も興味がないと言えば嘘になるであるな。強いて言えばメリハリスタイルな女性が好みなのでそれを映して欲しいものである。しかし、私は鹿であり、紳士である。ドロー2」
「ドロー2」
「えっ、ちょっ、くぅ……! 虎の子のドロー4!!」
「故に、女性との対面においては手順を踏むのが鹿の、そして紳士の基本。例えば夜景の綺麗なレストランのディナーから始まり――努力を称えよう。ワイルドドロー4」
「残念もう一周頑張ってね。ドロー4」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!💢💢💢💢」(シャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッ)(合計20ドローする音)
●ティアー・ロード
「わ、私にはできない、こんなちょっと他人とは思えないような美少女を攻撃するなんて
……!!」
ティアーは惑っていた。知らず、瑠璃から距離を取るようにあとじさりしてしまう。
だが、気付いてしまったからには遅かった。彼女の武器として使うマイティアームが出現し、一人でに拳を形作る。
『……瑠璃、悪い猫じゃないにゃよ?』
「ち、違う、わかってるんだ。私だって君を攻撃したいわけじゃ――」
弁解しながらも、ティアーはマイティアームへ念動力を向ける。普段ならば、それこそ手足のように操ることもできたマイティアームが、なぜか制御できない。どころか、拳を作ったそれは瑠璃へと振りかぶった。
「やめろ……」
マイティアームは強化されていたのだ。敵を打ち倒すために、より悪を打ち砕くことに特化してきたのだ。あの三人たちの声援によって!
「やめろぉぉぉおお
!!!!」
マイティアームを止めようと、念動力を最大限まで引き上げる。
無慈悲に振り被られていた正義の鉄拳は、その矛先をわずかにズラされて――。
●楽屋
詩蒲・リクロウの美徳はなんだかんだで諦めないことである。
もうだめだ、と思っても心が折れ切らずにそこで踏み留まる。勝機を探す。
この戦いだってそうだ。20枚ドローという絶望的な状況に立たされてなお、彼は巧みなヘイト誘導によって試合展開を泥沼化させ、どさくさに紛れてなんとか手札を残り数枚まで減らしてきた。
そう、あと数ターン。数ターンでウモできる。ジョンが口を開いたのは、そんな時だった。
「チーム悪巧みは言うなれば運命共同体だ」
ぱさり、とジョンの手札から数字カードが落とされる。
「互いに頼り、互いに庇い合い、互いに助け合う。一人が四人のために。四人が一人のために」
「だからこそ戦場で生きられる。チームは兄弟。チームは家族」
手番になったリチャードが手札から数枚のカードを落とす。
よし、これでウモだ。反射的に自分の手札へ手をかけて、リチャードに落とされたカードをリクロウは見た。見てしまった。ドロー4。
「――ウモを言うな!」
「なっ、そんな、まだ隠し持って
……!?」
「少しツメが甘いね、リクロウ。……切り札ってものは最後まで取っておくものさ」
4枚トランプをドローするリクロウへと、にやりと笑ったジョンが追い打ちをかけるように更に手札からドロー2! それに呼応するようにリチャードもまたドロー2! ドロー義務は流れるようにリクロウへと刺さる! 引いた四枚にカウンターカードは……無い!
「まさか、あの泥沼の中でカウンターカードとドローカードを全て二人で
……!?」
「出せない手札の溜まったカードがせせら笑う。ドロー、リバース、スキップ、ワイルド――どれ一つを取ってもウモでは命取りとなる」
「それらをまとめてスタッキングする」
誰が仕組んだ地獄やら。兄弟家族が嗤わせる。
「お前もっ! お前もっ! お前もっ!」
「だからこそ、僕のために負けろォ!!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!💢💢💢💢」(シャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッ)(合計8ドローして手札が20枚に逆戻りした音)
「いやぁウモなんて少人数でやるもんじゃないね。カードの独占とかで死ぬほど長丁場になる」
「で、あるなあ。まあリクロウぐらい素直な相手であればまだマシ――」
「とほほ、まだ続くんですかこれ……って、あれ? なんかこの楽屋ちょっと白くないですか?」
「ホントだ。なんか埃っぽ……いや、これ花ふ――」
――その後、彼らは事件解決後に楽屋へ文句を言いに来たティアーによって、なぜかやつれた顔で倒れ伏しているところを発見されたと報告された――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
アルトリウス・セレスタイト
◎
よく知った顔が見え、おや、と首を捻る
プラチナブロンドの髪と、赤にも褐色にも、或いは黒くも見える宝石のように煌めく瞳
確かに快活で礼儀正しく、忙しく、かわいい少女だが
何故今出てくるのだろう
少し考え、結論
そう言えば最近一つ彼女に教わったものを反芻しながら練習して、何度か実地で試したな
凡そいつも考えていたに等しい
成程ならばこうなるか
納得したところで攻撃開始
魔力を溜めた体内に破天の魔弾を生成し、腕に装填
片腕160発。両手で2回合わせて320発分でワンセット
高速詠唱で再装填しつつ打撃に乗せて叩き込む
全力魔法の応用で常に最大威力で
そも容易に異性に身体を触れさせる事もなかった筈
別物。と再確認しつつ魔弾で殴る
白い霧のようなもやの中に白がある。アルトリウス・セレスタイトだ。
ふむ、とアルトリウスは周囲を見渡す。いつぞやの霧の街を探しに森を歩いた時を思い出した。視界が悪く、索敵効率が落ちた。敵の所在さえ判明すれば戦闘行動におよそ支障を来さないのだが。
「……初期化するか」
気付けば他の猟兵たちも見えなくなっている。彼は吐息して、指定座標空間を中心に魔眼の力で白霧を取り払おうとして。
『アルトリウスさん』
その直前に、白にも金にも見えるプラチナブロンドの少女が霧の中から現れた。よく見知った顔だ。
「お前も参戦していたのか?」
敵の情報を教えられていた時にはいただろうか。見知った顔を見たら頭の片隅に留めるか、あるいは話し掛けるぐらいのことはするはずだが。どうしても彼女の顔を見たとは思えなかった。
『はい、こっち側は霧ばっかりで敵が全然いませんでしたよ。みんなとはぐれちゃったみたいですね』
「そうか。少なくとも方角はこちらで合っているはずなのだが。……あの短距離の間に分断されたということは、この霧はほぼ確実に敵の物だろう。警戒するべきだな」
霧の警戒度を胸中で上方修正する。加えて、それを加味した上で現状の分析と行動指針を再考。
「……この霧から一旦脱出して一度仲間と合流するべきだな」
『行くんですか?』
「敵影が確認されていないだけで、奇襲される可能性は十分にある。俺はともかく、お前が危険だ」
『心配してくださるんですね。アルトリウスさんって優しいです』
少しだけ嬉しそうに彼女は笑って、ステップを踏んでアルトリウスの前に出る。
『あたし、まだもうちょっとアルトリウスさんと一緒にいたいです』
「なら任務中は俺の傍にいて良い。安全だろう」
『そうじゃなくて』
少し呆れたように目を伏せて、吐息すると彼女はアルトリウスの手を取った。
『アルトリウスさんと二人きりでいたいんです。――ワルツ、踊れるようになりましたか?』
「練習はしたが」
『それなら一緒に踊りましょうっ』
快活な笑顔は確かにアルトリウスのよく知る彼女だ。ぐい、とアルトリウスの手を掴んで引っ張って来る。だが――。
「いや、遠慮しておこう」
おもむろに、アルトリウスが空いている方の手を少女へ向けたかと思うと、その手から青の魔弾を射出した。その数は150発を下らない。
魔弾は少女を貫き――しかし血の一滴も地に落ちない。少女には風穴が空いて、そこからふわふわと存在が曖昧になってほぐれて消えた。大型の花のような植物が代わりに現れる。彼女は幻覚だったのだ。
「そもそも、彼女は容易に異性に身体を触れさせることもなかったはずだ」
ワルツに誘うために手を握って来たこと。それがアルトリウスにとって、幻覚が幻覚であると確信に至った理由だった。
少女の代わりに現れた大花へ両手を向けて、体内に生成した魔弾を射出する。両手を合わせて300発以上の弾幕が大花を襲った。
「ここがお前の行き止まりだ。――戦闘行動を開始する」
成功
🔵🔵🔴
六六六・たかし
◎
※「好みの異性」は特に無い(なぜなら女体なら何でも良いから)
強いて言うならギャルJK。
ふん、幻覚か…。知らずに食らっていたらかなり厳しかっただろうが
話を聞いている以上、惑わされることはない…。
まぁだが折角だし今後何かしらの対策になるかもしれないから一応幻覚を食らってみるのも悪くないかもな。
いや、決して脳内で人形のための参照資料にしたいとかそういうのではないからな。
違うけど色んな視点で物事を見るのは大事だからな。
頼んだぞまなざし。UC『悪魔の眼鏡』!
よしこれで…っておい!近寄ってくるな!観察しにくいだろ!そこでポーズを取っていればいいんだお前たちは!!
六六六・たかしに好みのタイプなどいない。なぜなら女体ならばなんでも良いからだ。
カーチャンでさえなければそれで良い。いやだがちょっと最近のマイブームはギャルJK系とか良いんじゃないかなと思っている。なぜなら大胆に着崩されたシャツから覗く胸元が、極端に短いスカートが彼を魅了してやまなかったからだ。
だからなのだろうか。霧の中にいる彼の目の前には、子ギャルっぽい見た目の幻影が現れたのは。
「……ちょっとディテールが不安になったから比較的範囲が広めに取れる亜種を選んでてきたな?」
『は? 何ゆってんの?』
怪訝そうに首を傾げる子ギャル。だがたかしは子ギャルの足元が若干「そ、そんなことないっスよ?」と動揺するように輪郭が揺れたことを見逃さなかった。
「だが――……」
幻影の子ギャルの足元から頭の天辺まで、たかしは眺める。ルーズソックスに膝上10cmのスカート、マニキュア、腰に巻かれたカーディガン。学校指定らしいネクタイは無理矢理リボンのように結ばれている。
なかなかどうして、知らずにこの幻覚と対面していたら信じ込まされていたかもしれなかったが。しかしたかしは惑わされなかった。なぜなら事前に幻影の情報はよく聞いていたから。
しかしまあこういった幻覚に遭うという機会もそう多いわけではないし? 今後何かしらの対策になるかもしれないし?? 一応万が一に備えて対策を! 考えるために!! ちょっと幻覚と茶番を続けるというのも悪くはないかもしれないな??? なんてことを考えていたら、子ギャルからものすごいジト目を向けられた。
『さっきからさぁ、なーんかジロジロ見てね? なんか○○臭……っ』
「どどどど○○ちゃうわ!!」
『あ、やっぱ○○なんだぁ』
たかしが否定したことでより確信を強めたのだろう。子ギャルはにまーっと笑いながら「ふーん、へえー」とフードに隠れたたかしの顔を覗き込む。
『……えっちなんだぁ。ねえ、見てるだけで良いの? 触ってみたくない?』
「なん……だと……?」
人形作成のための参考資料にするため、様々な角度から観察しようとデビルズナンバーまなざしを大量召喚した矢先。そんなことを聞かれてたかしは一瞬でマジ顔になった。女体、それは神秘。肌の触感などもうすでにカーチャンのものだってたかしは忘れてしまっている。それを彼女は思い出させてくれるというのだ。
だが、すでにたかしの心は決まっていた。
「――そこを動くな」
たかしの冷たい声に、驚いたように子ギャルは足を止める。
『……えぇー、なんでよ○○』
「なぜなら――単純に近寄られると観察しにくいからだ!!」
『……は?』
子ギャルからだいぶ素の地声が漏れた。しかし構わずたかしは続ける。
「確かに人間を再現する上で触覚情報は重要だが視覚情報ほどではない。というか素材の都合上どうしても触覚は妥協することが多いし、そもそも触られなければ良い。最悪、人形は人形であって人ではないと妥協させるしか無い……ッ!!」
熱い思いをたかしは謳い上げる。だいぶコスい現実的な問題も挟まったたかしの思いは子ギャルに確かに伝わったようで、「うっわ……」とメチャクチャ引いた表情をされていた。
「なのでお前はそこでポーズを取っていれば良い。動くな。よし、次は笑顔。その次はおこ、激おこの順で表情を変えろ。……変顔をしろとは言っていない!!」
その後、たかしwithまなざしによる幻影の子ギャルの撮影会がしばらく続いたという。
成功
🔵🔵🔴
御伽・柳
◎
使用UC:【nous】
あぁ、これ本当に俺たちにも影響あるんですね……
ところで
……おい、誰が俺の初恋に干渉していいと言った
穢されるなんて許せない、オブリビオン如きが菫に成りすますな
真面目で、素直で、優しくて、流れる灰色髪が綺麗で、(どこがとは言わないけれど)大きくならないのを嘆いていて、敬語であっても!
断じて!これは違う!!
(風の噂ではこの好みというか初恋相手の従妹である穂都伽は2個前くらいの世界で灼滅者やってたそうで)
……哀しいかな分かっているのに理性がこれを殴るのを拒否してるんですよ
なので理性を投げ捨てます、【nous】で
もう良い、自由に食っていい
【激痛耐性】でどんな風に戦ってもいい……
最初は納得だった。「あ、やっぱりこの花粉俺たちにも影響出るんですね」ぐらいのものだった。
次に興味があった。「幻覚って事前にわかってれば対処もしやすいし、どんな子が出て来るんでしょうねえ」ぐらいの薄っすらしたものだった。
そして最後に来たものは――。
「……おい、誰が俺の初恋に干渉していいと言った」
御伽・柳は身体をわなわなと震わせながら、みっともなく怒りのままに叫び声を上げてしまうのをなんとか堪える。
目の前にいるのは少女だった。灰色髪にリボンが似合う、少し童顔な少女。穂都伽・菫。柳の従妹。
『どうかしましたか?』
険しい顔をする柳を心配するかのように、菫が綺麗な藍色の瞳で見上げてくる。ああ、あの頃は身長同じぐらいだったのにいつの間にかにこんなに差が付いてしまったんだな、と柳は時間の流れを感じて不覚にもちょっとグラっと来ていた。
「ち、違う……これは菫では、ない……っ!」
自分に言い聞かせるように呟いてなんとか精神的に立ち直ろうとするが、しかし目に見えている目の前の幻覚はどうしようもなく菫なのだ。
『……ねえ、聞いてますか? ねえってば……』
「菫じゃない……菫じゃない……これは幻覚……胸が小さいところまで完璧に再現されているが……! これは……!! 幻覚
……!!!」
『……あの、柳さん? その目は一体なんですかね?』
菫からジト目を向けられるが、彼はなんとか唇を噛み切らんほどに噛み締めて耐える。
『そりゃあディミニ先輩とかみたいにいっぱいあるわけじゃないですけど……。うぅ、運動会の応援団とかちょっと思い出してしまいました……』
胸を抱くように隠して胸囲の格差社会の精神ダメージを受ける菫。最初から初恋エンカウントで精神ダメージがマッハな柳。なんかよくわからない精神ダメージレースが始まっていた。
「だ、大丈夫、大きくならないところ込みで菫は可愛いんだから!!」
『追い打ちしないでくださいよ!?』
拳さえ握って力説したらキレられた。解せない。
真面目で、素直で、優しくて、さらさらと流れる灰色髪が綺麗な女の子。どこがとはもう言ってしまったが大きくならないのを嘆いていて、丁寧な物腰。柳の中の菫とそう変わらない彼女。
そんな彼女を、オブリビオンが見せている幻覚だからと言って柳には攻撃できなかった。だが、今の自分は猟兵で、だからこのオブリビオンを退治しなくてはならない。
吐息を、一つ。
「……たとえ幻覚でも。顔が見れて少し嬉しかったですよ」
最後に、伝えたかったことを伝えて。彼は自分の中に潜むUDCへと理性を投げ捨てた。
激痛と共に自身がUDCへと侵食されていき、理性が、知性が欠けていく。
自分には、彼女を攻撃できる強さはなかったから。
柳は邪神の力に縋った。
――後の報告書では、半暴走状態となった柳が大花と苛烈な戦闘を繰り広げたと記されていた。
成功
🔵🔵🔴
壥・灰色
・なるべくなら
花粉嚢が弾ける前に炎殺式と壊鍵を全力稼働して燃やしてしまいたいけど……
もしかして喰らってみたいって猟兵もいるかな
迷いのせいでちょっと手が鈍る
・好み
黒く長い髪。スレンダーだが出るところは出た体躯
スタイルが良く立った姿が凜としている女性が好み
性格……はどうなんだろうな。不出来なおれを見限らないような質なら、わりとなんでも
・だが
見えたら燃やす。ごめん。ウワー綺麗だなー→燃やす
恐ろしい花粉だ。早めに焼かないと(あんまり狙ってない炎殺式で大花のあるであろう方を絨毯爆撃する)
……そもそも、花粉って雄しべから出るものだろ、なあ、きみら
(周りの男性猟兵に冷や水ぶっかける一言)
燃やそう
そうしよう
壥・灰色は見てしまった。ものすごい勢いで先陣を切って突入して行った猟兵たちがものすごい勢いで花粉を浴びてそれぞれ誰もいない場所へ向けて独り言を言っているところを。
「幻覚見てる状態って傍から見てるとああなるのか」
シュールを通り越してちょっと怖いな、と灰色は呟きながら、鞭のように自分へと迫り来るツタを魔弾術式で撃ち落とし、焼き尽くす。周囲は花粉が充満して霧のように白く染まっていて、視界は悪いが戦えないことはなかった。幻覚を食らっているらしい猟兵の一人が「粉塵爆発って、知ってるか?」と言っていたのは一瞬肝を冷やしたが、よく考えたらここは密閉空間ではない。
「本格的な幻覚を見てないってだけで、思考は鈍らされてるな……」
自己分析する。アルラウネ戦での若干の精神的疲労や、花粉の蓄積もあって、思考速度や精度が目に見えて低下していた。それこそ起こりもしない粉塵爆発に肝を冷やす程度には。
勝算は短期決戦だろうな、と灰色は拳を握り直す。長期化すればするほど、幻覚で有効戦力は減っていく。……中には幻覚に打ち克ったのか、大花へと攻撃する猟兵たちもいたが、戦闘効率はお世辞にも良いとは言えなかった。
「炎殺式、起動――」
拳へと再装填した術式を衝撃波の魔弾と共に撃ち出して、爆炎を巻き起こす。敵の攻勢は激しく、いくら叩き落として燃やしてもなかなか攻勢は緩まない。敵の攻撃に対処することは可能だが、敵本体まで攻撃するには少々周りに人が多すぎる。
何か突破口を作れないだろうか、と周囲の猟兵を一瞥する。笑ったり戸惑ったり、怒ったり興奮したり。幻覚を見せられている猟兵の反応は十人十色だが、割とわかりやすい。
「……もしかしてあの花粉を食らってみたいって猟兵もいるのかな」
そんな愚にもつかないことを一瞬考えてしまって。鈍化した思考は戦闘のそれへと戻るのにいつも以上に時間を要した。
そしてそれは致命的な隙となる。敵のツタが灰色を捉えた。致命打を避けるために灰色はそれを腕で受け止めるが、ツタの先端に付いた花粉嚢が爆裂して花粉を撒き散らし、追撃とばかりに灰色を拘束する。
「――――ッ」
一瞬視界が白くなったのは、花粉のせいか、それとも爆破の衝撃か。強制的に魔力回路を励起することで身体を活性化させて、ホワイトアウトした視界を回復させる。
鮮明さを取り戻した視界の中央にいたのは、黒髪の女だった。
『縛られて動けないの?』
ツタに縛り上げられた灰色を見上げる女は、凛とした大人の女性に見えた。スレンダーだが出るところが出た肉付きはなるほど女性としての魅力に溢れているように灰色にも感じられた。
『大きな人。でも、顔はちょっと可愛いのね。ねえ、お姉さんとちょっとイイコトしない?』
それはそれとしてなんとなく身体の外見が三番器に類似しているのはどういうことだろうか。「ウワー綺麗ダナー」と思う矢先にあのイエローダイヤモンドの瞳の女が脳裏を掠めていくのはなかなかの嫌がらせ味を感じる。
「しない」
ゆえに、灰色が冷静さを取り戻す速度は暴走列車よりも速かった。励起してあった魔力回路内で魔力の過剰増幅を行い、こつんと裏拳とも言えない程の小突きをツタへと与える。
「炎殺式、起動――」
拳の先から射出された魔弾が衝撃波を放ち、爆炎でもって自身を拘束するツタを焼いた。
自身までをも焼こうとする爆発と炎を身体から漏出した魔力の波動で相殺。拘束が解かれると同時に、灰色は両拳を振るって炎殺式の魔弾でもって弾幕を形成する。幻影の女が魔弾によって揺らいで消えて、大花へといくつかの魔弾が命中したのが確認できた。
「想像以上に厄介だな……」
大花自体の戦闘力もそうだが、何よりも花粉が与える戦闘への影響が厄介だった。
地面から突き上げるように奇襲を仕掛けて来るツタを避けながら、なんとか猟兵たちの正気を取り戻させる、あるいは戦意を高揚させるような一手はないかと思考する。
――そして、灰色は辿り着いた。
「……そもそも、この花粉って雄しべから出るものだろ。なあ、きみら」
ぴしり、と猟兵たちの動きが一瞬だけ止まった。
そう、花粉とは雄しべから出るもの。雄しべとは言わば魚で言えば白子に当たるし人間で言えば【検閲済】に該当し、そこから出る花粉は【禁則事項】ということだ。つまりもしもあの大花が人間であれば猟兵たちは全身に【R-18】をぶっかけられている上に強制的に【バキューン☆】させられていた、ということになる。
「「「うおおおおおおおおお
!!!!!!!」」」
猟兵たちは奮起した。怒りで、羞恥で。あの不倶戴天の敵を決して許してはならないと!!
「……燃やそう。そうしよう」
これが終わったらシャワーを浴びてうがいをしよう。そう心に決めながら、灰色もまた炎殺式を再装填して大花へと突撃するのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ネグル・ギュネス
◎
チームアサルトで参加
やたら幻覚に縁があるが、全く
植物風情、さっさと伐採してくれる
【幻覚】に囚われた場合、仲良しのフェアリーが見える
───何故、ここに?
積極的に手を握ったり腕に抱きついてきてドギマギ!
ではなく
違う
お前は、フルールじゃない
彼女はこんなベタベタしないし、何より!
柑橘系の匂いとか精霊のナンタラが無い!匂いが違う!
私にこんな幻覚を見せるとは、余程死にたいようだな…?
【ユーベルコード:エクリプス・トリガー】セット!
根刮ぎ、再度生えぬように駆逐してくれるわ!
【残像】のでる【ダッシュ】から、大花に近づき蔦を引っ掴み!
【属性攻撃】、火の回し蹴りで滅却!
理性が飛ぶため、植物が見える限り暴れます
ヴィクティム・ウィンターミュート
◎
【アサルト】
くぅ~疲れました!これにて依頼たっせ…あーはいはいわーってるよ
逃げたりしねえって。えーっと?花粉による幻覚でえっちなおねえ…え?
スゥゥゥゥゥ(首を回す)シィィィィィ(伸脚)あー俺なんかやる気でてきたわーカーッ
何でだろうなー!謎だわー!
(予め自分の『ウィンターミュート』に自我バックアップを取る)
エッッッッッ(年上。スタイル良し。性格は飄々とし、年下をからかいがち)ここが桃源郷か!いやぁ、この女ランナー時代の…(ここトリガー)
──電子ドラッグやってるイカれメイジと似てるじゃねーかバーカ!!
ふざけんなボケ!おいお前らも幻覚見てる場合か!
(UCのハッキングで正気に戻る手伝いをします)
鳴宮・匡
◎
【アサルト】
何お前ら急にやる気出してんの?
(頭)大丈夫?
で、なに、幻覚?
……悪いけど全く興味がないんで他をあたってくれないかな
そこで怒り狂ってる白いやつとか……
……まあいいや
幻覚由来と思しき感覚情報は全部棄てる
本来の外観情報と周囲環境からして
不自然でない視覚・聴覚情報のみを拾い戦闘の助けにする
特に足元からの不自然な振動や音には気を付けて
不意打ちを食らわないよう心掛けるよ
回避と同時に反撃を行う
攻撃が来たということは
そこに敵がいるってことだからな
◆補遺
性癖is皆無ですが2になるとクソ重シリアスになりかねないので1でお願いします
(適当にシェフのオススメコースしてくれて大丈夫ですだいたい効きません)
「くぅ~疲れました! これにて依頼達成です!」
「そんなわけあるか。早く装備の点検しろ」
ブリーフィングを終えて。
ヴィクティム・ウィンターミュートがさも全てが終わったかのように諸手を挙げて伸びをしていると、精霊銃を点検していたネグル・ギュネスが無情に言い放った。
「あーはいはい、わぁーってるよ」
クソデカ溜息をつきながら、「それ以上は言ってくれるな」とばかりに手をひらひらと振ってみせる。それを見てか見ずしてか、ネグルも鼻を鳴らして自分の刀へと手を伸ばす。
「ったく、雑魚戦の時は幼女相手にデレッデレだったのに、それが終わった途端にすーぐこれだ……」
「……何か言ったか?」
「いやぁ? なにもぉ???」
ネグルからの睨みつけに、口笛を吹きながら視線を逸らす。電脳デバイス、システムオールグリーン。目立った外傷ナシ。生体ナイフも問題なさそうだ。雑魚が相手だと後のメンテナンスも楽で助かる。
「しかしまたぞろ幻覚か。まったく、妙に縁がある……」
「……いつぞやのスペースシップワールドみたいなことには、ならないと良いけどな」
アサルトライフルの弾倉に銃弾を詰め直しながら、鳴宮・匡が呟く。彼としても、幻覚自体に興味は無かったがそれだけは危惧していた。二人とも口には出さないものの「そッスね……」と概ね表情で同意する。
「だが、今回に限ってはその心配も無いだろうさ。ちょっとえっちな異性が出て来る程度の幻覚なら――」
「あ? えっちな異性……うん??」
ネグルの言葉に、猛然とヴィクティムが反応して録音システムからブリーフィング時の音声を再生して確認。把握完了。
「スゥゥゥゥゥ……ッ」(深く息を吸う吸う音)(腕回し体操)
「シィィィィィィ――……」(深く息を吐く音)(伸脚)
「あー俺なんか急にやる気出てきたわ――ッ! カーッ!! 何でだろうなぁ
!?!??! 謎だわぁ――――
!!!!」
「「エロ本の件懲りてねえだろお前」」
●鳴宮・匡の場合
そんなこんなでチームアサルトは戦場に向かったが、彼らも例の如く早速白い霧に包まれた。
「ただの霧……じゃないな」
辺りの様子を確認しながら触覚から湿度が高くないことを感じ取って、匡はこの白いもやが霧ではないと断定した。発想を飛躍。恐らくは高濃度の花粉だろう、と推定すると、布を口元に当ててマスクの代わりにする。あまり役には立たないだろうが無いよりはずっとマシだろう。
さっと周囲を再度見渡してから自分の装備が紛失してないか触って確認し、次に仲間へ連絡を取ろうと手を伸ばす。
『你好(こんにちは)、お兄さん迷子デスカ?』
そんな時に、ゆらりと目の前に人影が現れた。チャイナドレスを着た女性だった。
『迷子の時には占い良いデスネー。一回100元。円なら1500円で良いデスヨ』
「……さすがに通信は妨害されてるか。魔力濃度の関係か……?」
『ちょっとは聞いてクダサイヨ!?』
ショックを受けるチャイナドレスの女を完全無視して匡はさてどうしたものかと考える。初めからどういった種類の幻覚が来るのか把握しているのだったらその幻覚は無視するに決まっていた。
「聴覚は若干ボヤついてるな。幻聴は音が通りやすいが普通の音がかなり聞こえにくくなって集中して聞かないと意識から外される」
『あの、占い……50元で良いデスカラ……』
「視界は幻視が見えはするが霧に入る前の足元の情報と一致。完全にコントロールされているわけではないならまだやりようはあるな。後は――」
『うらな……うぅぅぅー
……!!』
敵からの攻撃が無いことを良いことに、淡々と状況の整理と対策を進める匡。遂に泣き出すチャイナドレスの女。余人が見れば誤解されること間違い無しの光景だった。
『……良いデス、わかりマシタ。アナタがその気ならワタシだって――ワタシだってアナタの未来勝手に占っちゃいマスモンネ! 沢水困でも引けば良いデスヨ!!』
そう言うが否や、女はえいや、とコインを地面に向けて投げた。匡が反射でアサルトライフルを構えるが、攻撃というわけではなく、ちゃりんちゃりんとコインは地面に落ちていく。
『水火既済――今は良い時。完成した時。完成した後に乱あり。……完成したもの、維持できると良いデスネ』
「それは、どういう――」
意味だ。単なる幻覚の言葉にはどうしても思えず、聞き返そうとした瞬間。匡の耳へ僅かな違和感が来た。反射的にバックステップすると、目の前を何かが通って行くのを風圧で感じ取る。ツタによる攻撃。そう推測すると同時に、その攻撃が来た方向へとアサルトライフルでバースト射撃する。
白い霧は僅かに薄らいで、気付けば女はどこにもいなくなっていた。
「何だったんだ、一体……」
●ネグル・ギュネスの場合
「ふ、フルール……!? どうしてここに……」
白霧の中で匡とヴィクティムを探すことしばし。ネグルは仲の良かったフェアリー、フルールと遭遇していた。
『ネグルさん! あなたもこの依頼に参加してたですか』
木の葉にも似た妖精の羽根を羽ばたかせ、ネグルの元へと文字通り飛んでいくフルール。ネグルは若干の戸惑いを覚えながらもそれを受け止める。
『急に白い霧が出て来たかと思ったらみんないなくなってしまって……。ネグルさんが見つかって安心しましたです!』
「あ、ああ。それは良かった、が……」
安心したような笑顔をみせて、フルールはネグルの腕へと飛びついて、そのまま手を握る。
こちらも笑顔を返そうにも、少しぎこちなくなってしまうのは胸の早鐘のせいか――あるいは、先程から感じる猛烈な違和感のせいか。
『えへへ……二人っきりですね。白夜街の会合とか、依頼とか……二人っきりになれたことってそこまでありませんでしたから、ちょっと嬉しいかも……です』
「そう……だな?」
ネグルの大きな手を両手で握りながら、フルールはぴったりと身体を腕に付ける。義手ならまだしも生身の方の腕でやられたものだから、二重三重の服越しに華奢な感触が伝わって来てもうたまらない。
「と、とにかくいつ敵が出て来るとも限らない。早めに仲間と合流を……」
『ネグルさんは私と二人きりはイヤ、ですか……?』
「ぐ、ぅっ……」
上目遣いに少しばかり潤んだ瞳で覗き込むフルールを見てしまうと、もうネグルはそこから目を離せなくなる。更に追撃とばかりに、彼女はするりと腕から肩へと移っていき。
『私はネグルさんとだったら安心できますですよ。強くて、頼もしくて……素敵な人』
「そん……な、ことは……」
どう返したものか、どう答えればいいか。普段は高速演算による未来予知すら可能にするネグルの頭脳はすでにオーバーヒート寸前だった。
――ふと、草木の香りが鼻腔をくすぐった。
「――オランジェ」
『? どうかしたですか、ネグルさん』
「違う」
『違うって……』
何が? フルールがそう問いかけるよりも早く、ネグルは腕に絡みついていた妖精を振り払った。
「お前は、フルールじゃない」
違和感は最初からあった。まず最初に飛びついて来たこと。次にべたべたと腕に絡みついて来たこと。いずれも恥ずかしがり屋の彼女らしからぬ行動だった。
そして極めつけは匂いだ。
「お前からはオランジェの、柑橘系の匂いがしなかった。――私にこんな幻覚を見せるとは、余程死にたいらしいな……ッ!」
ネグルの両眼が、そして右半身が、メキメキとその姿を変形させていく。その様はまさしく光を放つ太陽が影に侵されていく日蝕が如く!
「全て終わらせてやる、私が、どんな手を使っても!」
深紅の男が、そこには立っていた。
怒りの炎が疾走する。幻影など最早眼中にはなく。本能的とも言うべき五感によらない感覚でネグルは駆けて、その先にいた大花へと火を灯した右脚でもって蹴撃した。
「――根こそぎ再度生えぬように駆逐してくれるわ!!」
●ヴィクティム・ウィンターミュート
「エッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ」
ヴィクティムはガッツポーズをした。彼の目の前にはキャットスーツに身を包み、その肉付きの豊満さを隠そうともしない妙齢の女性がいた。
「ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッロ……」
『んもう、初対面の女性に対して失礼よ? そういうの』
女は嗜めるように言うものの、クスクスとおかしそうに笑う。それがまた艶やかであり、ヴィクティムは「なるほどここが桃源郷かぁ……」とニッコリ笑顔になろうものだ。
『坊やにしてはなかなかイカした装備センスね。腕の立つランナーってところかしら?』
「いやぁ~それほどでも~あるんですけどねェ~~~~」
女に弱い彼が誇りにしている自慢の装備を褒められたのだから、有頂天になろうものだ。鼻の下を伸ばしきってデレデレな笑顔になりながら、装備を誇示するように胸を張る。
『あら自信家ですこと』
それを見た女もくすりと笑ってヴィクティムの方へと歩み寄る。すらりと伸びた手は、彼の胸元へ当てられて。そのまましなだれかかるように密着される。
『でも――こっちの方の自信の程はいかがかしら?』
「こここここ、こっちとは……?」
油断して無防備になっていたところへの急な接近とボディタッチでヴィクティムは動揺した。未知の領域への期待と興奮で心臓がうるさいくらいに鳴り響く。
『クスッ、もう期待しちゃってる。でもまだだぁめ。その前に――コレ、しちゃわないと』
「それって……」
見せつけるように、ジッパーを降ろした女の豊満な胸元から出されたのは無針シリンジ。彼には見覚えがあった。あれは“エピクロス”と呼ばれたストリートで出回る違法電子ドラッグの一つで――。
「って、テメェ電子ドラッグキメてたイカれメイジと似てるじゃねーかバーカ!!」
気付くが早いか、ヴィクティムが振り払うように腕を振ると女はそのまま揺らいで消えてしまった。
「危ねえ畜生ふざけんなボケ! くそっ、ドラッグキメずにちょっとオイシイ思いができると思ったらとんだトラップだぜ!」
怒声を上げながらヴィクティムは左腕の“トランシス・アヴァロン”から防衛プログラムを放出する。
●
「おいお前らも幻覚見てる場合か! 一気に攻め込むぞ!!」
大脳のインプランテッドデバイス“ウィンターミュート”をオーバーロードして超高度演算能力を獲得した彼は、そのままその場にいた猟兵たちへとクラック・アクセスして幻覚を引き起こしている情報を強制的に修正していく。
次々と正気へ戻っていく猟兵たち。その中には――頼れる仲間、チームアサルトのネグルと匡もいた。
「遅かったな。もっと早めに仕事してくれると踏んでたんだが」
「お楽しみが邪魔されたせいでこんなに早くなっちまったんだよ、畜生。俺が援護する。ネグルは?」
花粉の解析と対処を進めながら匡へ問いかけると、彼はただ黙って大花と戦う深紅の戦士を指差した。
「コピー、それならいつも通りだな。俺が補助する」
「それなら俺は火力支援で良いな。そしたらあいつが決めてくれる」
匡がアサルトラフルを構え、ネグルへ迫るツタへと射撃する。軌道予測は用意で、未来位置へと“置く”ように撃ち込まれた銃弾は吸い込まれるようにツタへ命中。
「AAAAAAAAAAAAAAAAAh!!」
もはやネグルを妨害するものはない。彼は跳躍し、その深紅に染まった機械の右腕を大花へと振り下ろす。
その様、まさしく赤い稲妻が落ちた如く。
ネグルの一撃によって縦に引き裂かれた大花は、その身を左右に分けながらゆっくりと地に伏せ、黒い塵となって還っていくのであった。
――猟兵たちの、勝利である。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『桜で一杯、花見で二杯』
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POW : みんなで一緒にご飯を食べよう
SPD : 桜を見て優雅に過ごそう
WIZ : 歌や躍りで楽しもう
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大花を倒してしばらくすれば、辺りを覆っていた白い霧のように見える高濃度の花粉もすぐに晴れた。
森は平時の彩りへと戻り、豊かな緑を見せている。
君たちが退避させていた一般人たちを連れて村へ帰還するその帰路で、桜並木が見えた。
「花見でもするか」
そう初めに提案したのは誰だったか。お疲れ様会だとか、新年会だとか、戦勝祝であるだとか。各々それぞれの理由を付けて桜の木の下へと陣取って宴会を始める。花見の輪は次第に拡大し、友を呼び寄せ、どこからか聞きつけた者までもが花見に足を運び、猟兵たちだけではなく、一般人もまたその輪に混じって陽気に笑う。
「お前さんらが取り戻した風景だ。村を挙げての宴会になるそうだから、楽しむと良いさ。俺は慣れないが給仕でもやらせて貰うよ」
そう言って、グリモア猟兵の劒は村から料理や酒樽を運び込む。
村人も一般人も、花粉の影響はまだ少しばかり抜け切らず。一般人たちに褒められてはむず痒そうに苦笑する猟兵たちも多いとか。
さあ、あなたも。桜で一杯、花見で二杯。いかがだろうか?
ヴィクティム・ウィンターミュート
◎【アサルト】
花見だってよ?最近はそこかしこでやってるよなぁ
まー、別に俺も花を愛でるようなタイプじゃあねーけどさ
ビズ終わりに飲み食いして休息すると思えばいいんじゃねーか?
ほら、酒あるし。飲め飲め。俺は果実ジュースで
しかし面倒くさいビズだったな…周囲からもてはやされるのは…とにかくやりにくかったわ…
褒められるのは別に悪い気はしねーけどさぁ、限度ってもんがあるだろ?
ああいうのに憧れる奴って、やっぱ一定数いるのかねぇ…
あーそうだ、折角だし写真撮ろうぜ
3人揃ってのんびり腰を落ち着ける機会もそんなにあるわけでもねーし
ほら、ドローンに向かってポーズなりなんなり取れよ
3カウント、スリーツーワン…パシャってな
鳴宮・匡
◎
【アサルト】
さすがに花はどうでもいい、っていうか
俺が見ても、風情とか全くわかんねーけど
まあ、仕事の後のクールダウンっていうのはわからなくもない
そういうことなら付き合うさ
……あ、酒はいいや
さすがに見知らぬ土地でそこまで気は抜けねーよ
……うん? やりにくかったか?
俺、全部聞き流してたから気にならなかったけど……
さあ、褒められて嬉しいやつもいるんじゃねーの
……そこの白いやつとか
いや俺、写真はちょっと……
おい待てもう撮ってんじゃねーか
ああもうしょうがねーな……まあ、お前らならいいか
今日だけだからな
といっても、
……写真を撮るのなんか初めてなんだよ
どうすればいいかも、よくわからない
ポーズってなんだ……?
ネグル・ギュネス
◎
アサルトで参加
花見か
私は一度経験した
花を愛でながら、ゆるりと───っておい、まあ…良いか。酒、貰うぞ?
さて、承認欲求とは厄介なものだ
褒められ慣れていない人には、強い麻薬であろうさ
…失礼な、私とて誰彼褒められて喜ぶクチではないよ。どうでも良い人間には、聞き流すさ
相棒たちや、あの子や、あの子、あとは───ん?なんだその顔は。
ん?写真か
良いぞ、思い出は大事だ
特に、記憶はなくなってからでは遅いからな
ピースしたり、サムズアップしたり、色々だよ
この写真、あとでくれよ?
焼き増しして飾るのもオツなものさ
嘘じゃあないから、ほら。
はい、ポーズ
変身ポーズを取りながら、笑顔で写真に写る
心底楽しげな顔を見せながら。
桜吹雪でちらりほらりと薄桃色が降り注ぐ中、男三人がいた。周囲には同じく桜の下で笑い合う村人たちの姿がある。
「盛況だな」
特に羨むわけでもなく、鳴宮・匡が呟く。むしろ彼の表情は「何をそんなに騒いでいるのか理解できない」と語っていた。
「花見だし。最近はそこかしこでやってるよなぁ」
電脳ゴーグルに付いた桜の花びらを手で払いながら、ヴィクティム・ウィンターミュートが返す。実際、今回の件に限らずこの季節では世界を問わず桜があれば花見をする者というのは少なくない。
「王国で一回やってみたけど、まあ悪くはなかったぜ。花、あんまり見なかったけどな」
「私も一度経験したが、同意見だ。実際にやってみると良いものだぞ。花を愛でながら、ゆるりとな」
ネグル・ギュネスが猪口を傾ける仕草をする。それを見て、匡はふぅんと気のない変じをするだけだ。
「俺が見ても、風情とか全くわかんねーな」
匡は桜吹雪を見上げるが、そこに何の感慨も情念も抱けない。ただ桜の花びらが散っていて、視界性がほんの少しだけ悪くて、片付けが後で大変そうだと考えるのが関の山だ。
「まー、別に俺も花を愛でるようなタイプじゃあねーけどさ。ビズ終わりに飲み食いして、休息するとでも思っとけばいいんじゃねーか?」
「まあ、仕事の後のクールダウンっていうのは……わからなくもない」
ヴィクティムの言葉で思い出すのはかつて渡り歩いた戦場で、戦闘を終えた後に戦勝を記念するだとかの名目で騒いでいた兵士たちの姿だ。遠巻きに見ていただけだったが、具体例としてはわかりやすい。
「ほら、酒あるから飲め飲め。俺は果実ジュースで我慢しとくから、俺の分までな」
「……さすがに酒はいいや。馴染みの薄い土地でそこまで気は抜けねーよ」
ヴィクティムが瓶に詰められた酒を勧めてくるが、それを手で遮る。別に村人や他の猟兵たちのことを疑っているわけではない。ただ、敵の奇襲の可能性は常に考慮に入れておきたかっただけだ。
「なら俺が頂くとしよう」
ひょい、とネグルが差し出されていた酒瓶へと空のコップを差し出した。おう、飲め飲め、とヴィクティムは黄金色の酒をなみなみと注ぎ入れる。
「しかし今回は面倒臭いビズだったな……。周囲から持て囃されるのが特にやりにくかったわ……」
「……うん? やりにくかったか?」
果実ジュースを飲みながら語るヴィクティムに、匡が首を傾げる。彼は外野の会話の一切合切を思考からシャットアウトして聞き流していたので全く気にも留めていなかったのだ。
「やりにくかったさ! あんな一挙手一投足どころか、何もしなくても褒め殺して来るとは思わねえよ……。褒められるのは別に悪い気はしねーけど、限度ってもんがあるだろ?」
「さあ、褒められて嬉しいやつもいるんじゃねーの」
たとえば、と匡は少し考えるように視線を上に上げてから、ネグルの方へと投げかける。
「……そこの白いやつとか」
「失礼な。私とて誰彼褒められて喜ぶクチではないよ。どうでも良い人間のものは話半分に受け流すさ」
酒盃を傾けながら「お前たちだろう? あの子と、あの子、あとそれから……」とネグルが指を折るのを見て、二人は半目になる。
「――ん? 二人してなんだその顔は」
「「お前そういうところだよなぁって」」
「どういうところだよ、ハモるなよ」
無自覚かぁー、と匡は溜息をつき、ヴィクティムは天を仰いだ。A&Wの空気はうまかったし空はどこまでも青い。
「……あー、そうだ。せっかくだし写真撮ろうぜ」
ふと、思い付いたようにヴィクティムが提案する。
「ん? 写真か。焼き増ししてくれるなら良いぞ。思い出は大事だからな。物として残せる内に残しておくとしよう」
記憶がなくなってからでは残せもしないしな、とは、胸中で呟いてネグルは賛同する。しかしその一方で、匡は少し困ったような顔をした。
「……いや、俺写真はちょっと」
「ほら、ドローンに向かってポーズなりなんなり取れよ」
「おい待てもう撮る気満々じゃねーか。俺の意思は無視か」
「まあまあ、3人揃ってのんびり腰を落ち着ける機会もそんなにあるわけでもねーし」
良いだろ? とヴィクティムに迫られては、さしもの匡とて「ああもう、しょうがねーな……」と渋々ながら了承せざるを得なかった。チームを組んでまだ日はそれほど経ってはいないが、共にいくつもの修羅場を潜り抜けて来た二人ならば、今日だけなら別に良いだろう。そう妥協できる程度には、匡は二人を信用していた。
「……といっても、写真撮るの初めてなんだが。ポーズってどんな風にすれば良いんだ……?」
「なんだ、知らないのか? ピースしたり、サムズアップしたり、色々だよ」
こんな風にな、とネグルが実際にポーズを取ってみせると、ぎこちなくだが匡もそれに倣う。やめる。
「いややめるなよ」
「無理はするべきじゃねえな、って……」
「馬鹿やってねえで、ほらあと3カウントで撮るぞ。3、2、1――」
パシャリ。ヴィクティムの放ったドローンがシャッター音を発して、その時間を切り取った。
ドローンの液晶の中には、桜吹雪の中で肩を組んでピースする三人が写っていた。
大成功
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壥・灰色
劒の給仕を手伝う
結構な人数がいるだろ
普段喫茶店で手伝いをやらされてる分、色々運ぶのは得意だ
一回で皿八枚持ちとかしちゃう(前腕と内肘と指先をフル活用)
一通り給仕が終わったら、おれ達も食べよう、劒
腹が減ったよ(山盛りになったニョッキの皿を持ち、サーブスプーンで食い出す)(ほどなくおかわりを要求する)
このニョッキ美味いな、ソースがいい。トマトベースでさっぱりしつつもコクがある。なるほど、チーズをソースに使ってるのか……
劒はなに喰ってるの?
そっちは美味い?
落ち着いて一緒にめしを食う事って今まで無かった気がするな
きみがチーズバーガーを食うところくらいは見たことがあったけど
折角だ、楽しもう
めしでも食べよう
――給仕なんて誰にでもできる。そんな風に考えていた。
「向こうに飲み物4人分。あっちにつまみが6皿。それ終わったらそこのにパンを――」
その幻想は、秒で壥・灰色によって打ち砕かれた。
「待ってくれ頼む」
「どうかした?」
石動・劒が待ったをかけるように手で制すると、両手どころか腕や肘、指先まで使って8皿もの料理を抱えた灰色が首を傾げる。
「お前さんよくそんなに運べるな……?」
「まあ、普段喫茶店で手伝いやらされてるからね。色々運ぶのは得意だよ」
ああ、マーベリック、と納得するように劒は頷く。灰色はそこの常連だった。
「この人数の給仕は大変だろうけど、一段落したらおれたちも食べよう」
じゃ、またあとで。そう言い残して、灰色は皿を持って行く。
「……よくあんなに運べるな、あいつ」
●
ニョッキ、ラビオリ、アランチーニ、ピアディーナ、グアンチャーレにカプレーゼ……。各々が好みに任せて持ち寄った料理が二人の座るテーブルには並んでいた。
「早く食べよう、腹が減った」
「そりゃお前さん、あんだけ大暴れしてこんだけ働いてりゃな」
「今回はだいぶ出力絞ったはずだけど」
「そうなんだけど違うそうじゃない」
じゃあどういうことなんだよ、と言いながら、灰色はサーブスプーンでニョッキの山を崩し始める。
「あ、このニョッキうまいな。ソースがトマトベースでさっぱりしつつもコクがある。成程、これチーズ混ぜてるのか……」
「よくわかるな、お前さん」
「ボスの手伝いしてたら、自然とね。手が足りてない時に作ってたから、基本的なことくらいはわかるよ」
「もうそれ店員名乗って良いだろ」
「まさか。おれはただの常連さ」
なんてことはないとでも言うように、灰色は更地にした皿を脇にのけて次の皿に手を伸ばす。
「は、早っ!? お前さん俺と話してたよな!?」
「さっき『腹が減った』って言っただろ」
「それにしたって早えよ。つか、お前さんどんだけ食うつもりだ……? ニョッキって結構腹持ち良いって聞いてたんだが」
「たくさん」
もぐもぐと頬張りながら真顔で答える灰色。マジかよこいつ、という顔になる劒。灰色の手が更に次の皿へと伸びて、焦りを感じた劒が自分の取り分を確保し始める。
「劒はなに喰ってるの?」
「アクアパッツァとか言うやつ。魚介系ってあんまり食べられる機会なかったしな」
「へえ、この辺実は海が近いのかな。うまい?」
「出汁がとにかく良くてめちゃくちゃうまい。うまいけどやらねえぞ」
「さすがに取らないよ」
きゅっ、と心外そうな顔をする灰色へ、すまんすまんと詫びる。
「きみと落ち着いて一緒にめしを食うこと今まで無かった気がするな。……ああ、チーズバーガーを食うところは見たことがあるか」
「あの時は俺の方に色々と余裕が無かったから、落ち着くも何もあったもんじゃなかったしな。次はもっと優しく喰ってやらねえと」
「……劒、そういう不意打ちはよくないと思う」
何のことだ、と首を傾げる劒に、灰色は吐息する。
「……ま、いいや。せっかくだ。ゆっくり喰って、飲んで、楽しもう」
大成功
🔵🔵🔵
パーム・アンテルシオ
この世界にも、桜って咲いてるんだね。
ふふふ。この子たちは、どこでも綺麗に咲くね。
…みんな、綺麗に咲く花に夢中だけど…
落ちて、泥に塗れた花びらには、誰も目を向ける事はない。
人は、綺麗なものが大好きだから…
汚れてしまったら、誰にも目を向けて貰えない。
綺麗なままで。綺麗に見えるように、生きないとね。
ふふ、なんて。
●POW
私たちが取り戻した風景だ、って言うけど…
あなただってその一員だよ、石動。
せっかくだから、一緒に食べない?腹が減ってはなんとやら、でしょ?
風の噂で、ハンバーガーが好きって聞いたから。調達してきたよ。
…何のお肉かわからないけど。
それとも…私も、給仕さんの方、お手伝いする?
【アドリブ歓迎】
「この世界にも、桜って咲いてるんだね」
果実水を飲みながら、パーム・アンテルシオは桜の花を見上げていた。
「ふふふ。この子たちは、どこでも綺麗に咲くね」
思い返すのは、彼女がよく訪れる旅館のこと。あそこもまた、一年中咲き誇る千年桜のある場所だ。
つい、と視線を滑らせる。上から、下へ。桜から、桜を眺める人々へ。
「……みんな、綺麗に咲く花に夢中だけど」
更に視線は下に落ちる。桜を眺める人々から、更にその下、地面に落ちて、泥に塗れた花たちへ。
「人は綺麗なものが大好きだから。汚れてしまったら、誰も目を向けることはない。誰にも目を向けて貰えない……」
桜を捉えた彼女の瞳は、いつものように赤く綺麗で。けれど、その言葉と表情はどこか物悲しげだった。
「……綺麗なままで。綺麗に見えるように、生きないとね」
呟いて、跳ねるように、スイッチを切り替えるように立ち上がる。
「ふふっ……なんて、ね」
●
歩いて行くと、そろそろ見慣れて来た青年の姿が見えた。石動・劒だ。彼は午後の給仕を終えて一休みしているようだった。
「ね、石動。せっかくだし、一緒に食べない?」
「おお、パームのか。ありがたい。昼に喰ったはずなんだが、もうへばっちまってな」
お疲れ様、と笑いながら、パームが差し出したのはハンバーガーだ。
「風の噂で、ハンバーガーが好きって聞いたから。調達してきたよ」
「よく知ってたな、そんなこと」
「妖狐だからね。耳が良いんだ」
受け取りながらも目を丸くする劒へ少し悪戯っぽい笑みを浮かべて、パームは狐の耳を動かしてみせる。
すとんと劒の隣に座り、二人でハンバーガーにかじりつく。
「桜を見ながらハンバーガーってのはあんまり聞かねえけど、なかなか悪くないもんだな」
「おいしいものはおいしいし、綺麗なものは綺麗だからね。団子やお酒に限った話じゃないよ」
「それもこれも、お前さんたちがこの風景を取り戻してくれたお陰だな」
「そうは言うけどさ、石動」
石動の顔の前へと、ぴ、と一本、指を立てて言葉を制する。
「あなただってその一員だよ。私たちとあなたでこの風景を取り戻したんだ」
「……嬉しいこと言ってくれるじゃねえか、パームの。何も出ねえぞ」
「ふふ、そもそも何か貰えるだなんて期待してなんかないよ」
照れ臭そうに笑いながらも、それを隠すように劒はハンバーガーにかぶりつく。
ざぁ、と風が吹いて、地面に落ちた桜の花びらが、地面に落ち行く桜の花びらが、巻き上げられて見事な花の嵐となった。人々がそれを見て、おお、と歓声を上げる。見上げるパームの尻尾が、自然と笑うように揺れた。
「それにしてもうまいな、このハンバーガー。良い肉使ってるのか?」
「そうなんじゃないかな? 何のお肉使ってるのかはわからないけど」
「…………マジ?」
「ふふ。桜肉、とかかもしれないね?」
大成功
🔵🔵🔵
リチャード・チェイス
◎【チーム悪巧み】男子は皆未成年
「でてきてちょー!」
酔っぱらうティアーの犠s……介抱してもらうため
たまたま近くにいた石動・劒を召喚します。
鹿じゃない? 汝は鹿、角ありき!(鹿だと言いくるめる)
「良いかね? 我々は未成年である。つまり、法律により飲酒喫煙は禁止されている。
バレなければよいと言う者もいるが、そういった口車に乗る事もない。
何故ならば、私達は品行方正を重んずる者達だからである」
酔っ払いに滔々と常識を説き、人々の模範となる聖人の如き姿を見せる。
「と、彼は言っているのである」
花札をしながら、そっちの方向は一切向かず劒が言った事にする。
ジョン・ブラウン
◎【チーム悪巧み】男子は皆未成年
「青タンとカスで6点」
UMOに飽きたので石動くん巻き込んで花札やってます
石動くんが「俺はいつまで花札やってりゃ良いんだ……?」って顔したら
「シッ、せっかく解放されたのに騒ぐとまた君があの鹿の代わりになるよ」
と諌めて延々付き合わせます
「じゃあ次なんか賭けようか。リクロウ負けたら来週掃除当番ね」
「ほら、UMOの負債を返すチャンスだよ。ここで大きく勝てば1ヶ月丸々当番押し付けられるんだから」
「おっと雨四光」
「おいおいメンコじゃないんだぜ、ハッハッハ」
「ところで絡まれてる鹿がだいぶゲッソリしてきてるんだけど大丈夫あれ」
ティアー・ロード
◎
【チーム悪巧み】男子は皆未成年
「なんだ、飲めるの私だけかい?」
真の姿で酒盛りし
チーム悪巧みの愚痴を
たまたま近くにいた石動くんに零しまくります
「まったく!信じられるかい?!」
「こいつら私が頑張っている時にUMOしてたんだよ!?」
「瑠璃ちゃんはいたんだ!彼女は今でも私の胸の中で生きている!」
チーム悪巧み(+石動)の面々が花札をする横で酒乱と化し
甘酒を呑ませようと絡みます
「ジョンはチヤホヤされて調子に乗ってたくせに!」
「というかチェイス!あの刻印はキミだろう!?何をした!」
「詩蒲くん、それ出すと負けるよ」
「私の酒が飲めないっていうのかい!?」
使用技能はグラップル、怪力
逃さん、お前たちだけは……ッ!
詩蒲・リクロウ
◎【チーム悪巧み】男子は皆未成年
「ああっ、ぐぬぬ……、いや道は、道は見えています!」
二人の謀略によってUMOに大負けたのでヘソ曲げつつも花札で逆転を狙っています(弱い)
「ああなったティアーさんには触れぬが吉ですよねぇ」
「そう言ってまた僕の事嵌める気でしょうが、そうは行きませんよ」
「良いでしょう、受けて立ちます!」
「あっあっあっあっ」
「良いんですか!?僕、泣きますよ!?」
「う わ ぁ…。か、可哀想だけど、助かってホッとしてる自分に少し嫌悪感……。えっ、あっ、これ勝てな__」
(その後、負けに負けを重ね2ヶ月の掃除当番と悪質な酔っぱらい(ティアー)の相手をさせられた少年の姿があった。)
「「「「乾杯~
!」」」」
四つのコップが軽く合わさり、カチンと軽快な音を鳴らす。桜の木の下、敷物の上に座るのは、一仕事終えたチーム悪巧みの四人だ。
「……っふぅ! 依頼の後のお酒ほど良いものは無いね。仕事の報酬ともなれば尚更だ」
早速グラス一杯の酒を一気に飲み干したのは、真の姿で仮初めの人間態を得たティアー・ロードだ。彼女は酒瓶を取って手酌する。
「惜しむらくは飲めるのが私だけということか……」
「仕方ないさ、僕ら未成年なわけだし」
ジョン・ブラウンがコークを飲みながら肩を竦める。この四人チームの中で実に三人が未成年であり、成年はティアーだけだった。
「正直、リチャードさんは……いえ、なんでもありません」
「紳士とは年齢に関係ないものだ。覚えておくがいい、若きシャーマンズゴーストよ」
ぶどうジュースの入ったグラスを回すリチャード・チェイスへと、半目で詩蒲・リクロウが「そういうところですよ」とぼやく。
「ま、何はともあれお疲れ様だ」
ジョンが一旦コップを置いて、懐からカードを取り出す。
「飲んでばっかりもなんだし、とりあえずUMOでもやろうか」
●
「でてきてちょー!」
夕暮れの頃。リチャードの呼び声によって石動・劒は召喚された。夕方の給仕の手伝いを終えて、休憩していた矢先にこれなのだから、劒が目を白黒させるのも無理からぬことだろう。
「は? 今何……えっ。リチャードの、お前さんのそのユーベルコード鹿を召喚するヤツじゃ……」
「考えてもみたまえ劒。私の【鹿は遍く存在す】は確かに鹿を召喚するユーベルコードだ。――劒を召喚できたということは、逆説的に劒は鹿であったということだよ」
「うん。……うん? うん。なんかよくわからねえけど、俺は、鹿だった……?」
「然り。汝は鹿、角ありき! おお、かくあれかし!」
勢いとノリで即座に言い包められた劒は、「まあ召喚されたものは仕方ないか」と嘆息しながら状況を確認しようと周囲を見渡して――。
「石動くぅ~ん!!」
酒臭いティアーが絡んで来た。
「うわっ、ティアーのどうしたんだお前さん……酒臭!? こいつ酔ってるな!?」
「信じられるかい石動くん! こいつら私が頑張っている時にUMOしてたんだよ!?」
「正直俺も敵の親玉との交戦中にUMOやってるのを報告されたときは耳と正気を疑ったが、そうじゃなくて。とりあえず離れてくれ……っ」
拗ねたようなクソデカ溜息とともに、ティアーは一度離れて自分のグラスに酒を注ぐ。
「瑠璃ちゃんはいたんだ……。彼女は今でも私の胸の中で生きてるんだ……」
「大丈夫なのか、あいつ」
「放っといて良いですよ。ああなったティアーさんには触れぬが吉、君主危うきに近寄らずですから」
さすがの劒もやや心配そうにティアーを見るが、リクロウが苦笑しながら手を横に振る。
「ティアーが見ての通りで一人メンツが足りなかったんだ。ちょうどいいし石動、花札やろう」
「……もしかして俺、このために呼び出されたのか?」
配られた手札に目を落としながら、少し胡乱な表情になる劒だった。
それからしばらく、花札が続く。
「まったく、今回は酷い目に遭ったよ……。あんな美少女たちを前にして我慢を強いられる私の気持ちはまさしく悲劇のヒーローと言っても過言ではなかったね!」
「そうだね。青タンとカスで6点」
「自分も結構大変でしたねー。うーん、タネ札ばっかりです」
花札をする横でティアーはしきりに最近の愚痴について語っていた。ジョンたちも慣れたもので、適当に相手しつつスルーしながら花札を続行する。
「なんだよ、ジョンはチヤホヤされて調子に乗ってたくせに! レベル27とか言ってたじゃないか!」
「今は28になったよ」
「というかチェイス! 【刻印「鹿鳴之宴」】って何なんだい!? あの刻印はキミだろう!? 何をした!!」
「聞きたいか、では語るのである。そうあれはある夜更け、丑三つ時の――」
「ここで語らないで下さい。花札に集中できないじゃないですか。ここでどうにかUMOの負け分を取り返さないといけないんですよ自分は
……!!」
「あ、詩蒲くんそれ出すと負けるよ」
「えっ、ティアーさん今なんて……」
「サンクス、リクロウ。こいこい」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛~~……これで……2ヶ月間の掃除当番が……確定……」
花札の横で管を巻くティアー。隙あらば伝説を語ろうとするリチャード。ゲームプレイに容赦の無いジョン。そして負けが込んでさめざめと泣くリクロウ。誰一人として桜に見向きもしなかったが、誰もが何だかんだで楽しそうにしていた。
これがチームか。わずかながらに羨望を抱きつつ、劒は立ち上がろうと膝に手を置く。
「……そろそろ俺はお暇――」
「――待った、劒。せっかく解放されたのに騒ぐとまた君があの鹿の代わりになるよ」
それを引き止めたのはジョンだった。彼が目線で示した方向を見ると、甘酒を片手にしたティアーにリチャードが絡まれているところだった。
「ほら、チェイスも飲めるだろう私のお酒ぇー! 私の甘酒飲めるだろぉー!?」
「良いかね? 我々は未成年である。つまり、法律により飲酒喫煙は禁止されている。バレなければよいと言う者もいるが、そういった口車に乗る事もない。何故ならば、私達は品行方正を重んずる者達だからである――」
「なんだいなんだい、私の酒が飲めないっていうのかい!?」
うまいこと言い包めようとするリチャードだが、やんぬるかな酔っぱらいの前ではどうしようもない。リチャードは続く言葉を打ち切って、劒の方へ視線を向ける。
「――と、劒は言っていたのである」
「はあ!? 俺!?」
「石動くん、キミは私の甘酒が飲みたくないのかい!?」
これはまずい流れだ、と直感した劒はそのまま一も二もなく逃げ出そうと立ち上がろとする――が、それを止めるものがあった。ティアーのマイティアームだ。念動力による恐るべき怪力でもって掴まれてしまえば、彼とて抵抗のしようもない。
「逃さん……絶対に
……!!」
ティアーの目はマジだった。
「まあこんな調子だからさ。ティアーが酔いつぶれるまで暇を潰そうよ。次も何か賭けようか」
肩をすくめながらジョンは山札をシャッフルする。はあ、と吐息しながら、劔は引き続きこの馬鹿騒ぎの中に加わるのだった。
大成功
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