キャバリアファイト ~波涛! 四次元殺法~
●かつてのオブリビオンマシン・プラント跡は今
トリアイナ領海の大部分を占めていて一年を通して温暖な気候のマレ・ノストルム海だが、冬の時期になるとギルガランド大陸の最高峰である大陸の屋根『アトラウス山脈』より吹き下ろされるトラモンタナと呼ばれる冷たく強い風の季節風によって、熟練の船乗りでも予測するのが困難な大時化に見舞われることがよくある。
今日もそんな日であって他国との海上交易が主産業であるトリアイナ船籍の運搬船もまばらであるのだが、ここの海域に至っては立入禁止となっているので航行する船は存在しない。
ここはかつて『エンデカ』と呼ばれていた洋上プラントで、オブリビオンマシン・プラントなってオブリビオンマシンに支配されていたのを、企業国家トリアイナの私兵部隊とであるトリアイナ海軍所属特殊治安維持部隊の『キュクロプス隊』及び独立傭兵の義勇兵として同作戦に参加した猟兵の手によって破壊された。
非公式だが熱核兵器の使用がされたとも噂され、その形跡である焼け溶けた鉄骨部分からはまだ残留放射線が残っている。
トリアイナの発表では老朽化を辿っていた同プラントが嵐により全壊したことになっているが、公然の秘密として今もエンデカ周辺海域は立ち入り禁止海域と指定されている。
『随分昔に破壊されていたとは、な』
訪れるものが居なくなって久しい地に降り立つ者がひとり。
真紅のマントを冷たい風にたなびかせながら赤錆びた甲板に降り立った者、その名は『ザ・スター』。
山間部で隔てられていてトリアイナの隣国として広がる死せる地『ミド・バール』の地を襲った、ファースト・ヒーローと呼ばれる世界最初のスーパーヒーローチームの一員である。
猟兵の手によって撃退されるも、骸の海を越える長き旅路の果てにオブリビオンと化したザ・スターは再び世界に染み出た。
再びミド・バールの地下にあるオブリビオンマシン・プラント群を暴こうと飛行していた矢先、不倶戴天の宿敵である『戦神アシュラ』によく似た気配を感じて、この廃プラント跡にやってきたという訳である。
元エンデカはその巨大さで全壊こそは免れていたが、主要生産ユニットがあった海中部分が尽く破壊されているためか海上部分の大半が水没しており、残された部分も海鳥の営巣地になっているのか鳥の糞で赤錆びた鉄がまばらに白く塗られている。
『この様子では戦神アシュラの複製体……アシュラレディの製造工場ではなさそうか』
尋常でない悪の気配を感じ取って訪れたが気のせいだったか。
そう結論付けて飛び立とうとした瞬間、特徴的で如何にも悪そうな笑い声が廃墟となったエンデカ内に響き渡り、海鳥たちが何かから逃げるかのように慌ただしく一斉に羽ばたいた。
『グロロロロ! 待っていたぞ、ザ・スター!!』
その者は四肢の腕を持っていた。
多腕のシルエットにもしや戦神アシュラかとザ・スターは身構えるが、声の主は海鳥から毟り取ったであろう羽根で作った衣装に身を包んでいる。
もしや、鳥人か?
いいえ、超人です。
「なんだ、またお前か……一瞬我が宿敵と見間違えて損したぞ」
この怪人の正体はデスリング総統。
アスリートアースのキャンプ・フォーミュラ『キャンピーくん』の世界移動能力によって、猟兵の強力な共闘者として多数異世界に送り込まれたひとりである。
だが多世界を揺るがせた戦争の後も参戦した世界であるクロムキャバリアに留まっており……困ったことにキャンピーくん自身も今はどこかへ姿を消してしまったため、こうして挑み甲斐ある新たな強敵としてザ・スターを追いかけに追いかけ回していたのである!
『なんだ、とは悲しいぞ。ワガハイはこうして海を泳いで渡っていたところ、たまたま見つけた洋上プラント跡で英気を養っていたというのに……グロロロロ』
『イジケてもダメだ。我には崇高なる使命があるのであるから、貴様の戯れに付き合うのはもう懲り懲りなのだ』
『グロロロロ……つまり、またワガハイに負けるのが怖いのだと?』
この言葉が決定的となったのか、ザ・スターがピクリと反応した。
中々分かりやすい奴である。
『我が負けるのが恐れている、と?』
『その通り、グロロロロ! ファーストヒーローの名が聞いて呆れるわ!』
『……その喧嘩、買ったぞ。再びあの地へと行く前の準備運動代わりに、今度こそ貴様との因縁を断つべく海の底に沈めてやるわ!!』
まさにプロレスの定番である売り言葉に買い言葉。
かくして観客なき絶海の孤島にて超人プロレスが始まろうとしていた!!
●グリモアベースにて
「……という訳で、デスリング総統とザ・スターによる新たなキャバリアファイトが開かれようとしています」
また変な予知を見てしまったと言わんばかりな様子で、秋月・信子(
魔弾の射手・f00732)はため息混じりに猟兵への報告を終える。
彼女が語ったキャバリアファイトだが、一部ではバトリングとも呼ばれるキャバロア同士で殴り合うまたコックピットを破壊しない程度の模擬戦を差す。
ローカルルールで頭部を破壊されたら失格負けだの、一対一でない僚機を伴ったチーム戦もあるだのとあるが、戦火が絶えないこのクロムキャバリアにおいてはプロレスのような興行という面もあって、戦地でしか己の存在意義を見い出せないキャバリア乗りの食い扶持先としても機能しているだとか。
「場所はかつてオブリビオンマシン・プラントでしたが、皆様のご活躍によって機能停止した海上プラント『エンデカ』。資料でも提示しましたが、絶海の孤島さながらに港から遠く離れた場所にありますので、周辺への危害が特に心配されません」
それなら放って置いても問題ないのだが、ザ・スターは再びミド・バールの地の底に眠るプラント群を暴こうとしている。
それを許せば再びミドの町に危機が訪れることになるので、ここは介入しておくのが得策だと判断に至った次第である。
「問題は破壊し尽くされたエンデカは沈みかけた洋上プラントでありますので、足場が限られている上にキャバリア戦を繰り広げましたら今後とそ沈む脆さが懸念されます。ザ・スターは空を飛べますので問題ありませんが、空を飛べないデスリング総統にとっては大きなハンデとなります。そこで総統に声援を送るなり、飛び入り参加も含めた実力行使によって支援して頂ければです」
空中戦となると
殲禍炎剣の無差別砲撃が問題となるが、ザ・スターのユーベルコード『エナジー・ゲート』によって、その点は問題ない。
超高高度に至る飛翔能力を持つザ・スターを追った空中戦を得意とする猟兵も遺憾なく実力を発揮する機会に恵まれているのであれば、それを利用するのも手である。
「なおデスリング総統は飛べませんので、キャバリアファイトへ夢中になるあまりに足場として機能しているエンデカを今度こそ破壊して沈まないようにご注意ください」
そう念を押すと、信子は自らの影を広げてグリモアの輝きを放つ。
かくして猟兵一行は新たなキャバリアファイトの会場に降り立つのであった。
ノーマッド
ドーモ、ノーマッドです。
記念すべきクロムキャバリアシナリオの第一作が『キャバリアファイト』を題材にしたネタ寄りなシナリオでしたので、まさか公式化されるとは驚きましたとも。
●シナリオ概要
帝都櫻大戰の際、アスリートアースのキャンプ・フォーミュラ『キャンピーくん』は自身の世界移動能力を用い、猟兵の強力な共闘者を多数異世界に送り込んでくれました。ですが、困ったことにキャンピーくん自身も今はどこかへ姿を消してしまった為、世界移動能力を頼ることもできません。
ですがそんなことはお構いなしに、デスリング総統は新たな強敵を「ザ・スター」を見つけてここぞとばかりに挑みかかっています!
……なんだか総統自身もあんまり困ってはいなさそうに見えますが、アスリートアースのレスラー達は皆デスリング総統の帰還を待ち侘びていますし、ザ・スターは紛れもなくクロムキャバリアの文明を脅かす超強敵です。
とにもかくにも総統に協力し、ザ・スターと戦う事には意義がある筈!
第一章は【ボス戦】フラグメントとなります。
デスリング総統も強力なプロレス・フォーミュラですが、ザ・スターの戦闘力は若干の差とは言えそれを上回ります。
普通に猟兵が数の暴力で助太刀してもいいですが、ここは何らかの手段……熱い実況とか観客になってエールやブーイングを投げかけるとかでデスリング総統の「プロレス魂」を燃え立たせることができれば、総統は一時的にパワーアップしてザ・スターと互角の戦いを繰り広げられます!
第二章も【ボス戦】フラグメントとなります。
ザ・スターは自分専用の黄金のオブリビオンマシン「レミニセンス・エニグマ」を召喚し、それに乗り込んで戦いを仕切り直してきます。デスリング総統も持てる手段全てを駆使して体高5メートルのキャバリアに挑みかかっていくので、引き続きエールや実況でプロレス魂を燃え立たせたり、キャバリアに乗り込んでレミニセンス・エニグマに遠距離攻撃を仕掛けたりして総統を援護しましょう!
第三章は【集団戦戦】フラグメントとなります。
プロレスの力でザ・スターを遂にねじ伏せましたが、上空に開いた彼のユーベルコード「エナジー・ゲート」から多数のオブリビオンマシンが降ってきます!
それらを返り討ちとしましょう。
それでは、皆様の熱いプレイングをお待ちして……キャバリアファイト! レディィィ…ゴォォォッ!!
第1章 ボス戦
『ファーストヒーロー『ザ・スター』』
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POW : バスター・ナックル
【拳】を構えて【エナジー・ゲートから降り注ぐ光】を纏い、発動前後が無防備となる代わりに、超威力・超高速・防護破壊の一撃を放つ。
SPD : スーパー・ノヴァ
自身の【装備】を【輝く「超新星モード」】に変形する。攻撃力・攻撃回数・射程・装甲・移動力のうち、ひとつを5倍、ひとつを半分にする。
WIZ : レミニセンス・ザ・ワールド
常識的な行動を囁く【「ザ・スターの心」の幻影】と、非常識な行動を囁く【「ザ・スターの肉体」の幻影】が現れる。[「ザ・スターの肉体」の幻影]に従うと行動成功率が8倍になる。
👑11
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円谷・澄江
何やってんだいアンタら…
勝手に戦えって言いたいけど応援するかねえ。
…猟兵とオブリビオン戦いも他所の世界の者同士で戦う事とか似たようなものもあるしね。
クニークルス搭乗。
直接横槍入れるような野暮はしないが洋上プラントが沈むのはよくないだろう?
電探で戦場一帯の地形情報収集、特に脆い箇所に注意。
UC起動、足場になってる部分の地面や瓦礫の下に網を設置して衝撃吸収するようにして補強。
…長さ足りるなら余分で適当な柱とか四角く揃えてリングロープでも張っとこうかね?
応援…そうだね。それでも世界征服目指すプロレス・フォーミュラかい?
英雄に負けてるようじゃ夢のまた夢、気合い入れて頑張りな!と激励。
※アドリブ等お任せ
──オブリビオンマシン・プラント『エンデカ』。
長らく軍事力ではなく商業を武器に多くの国々を相手とした『交易』と言う名の経済的戦争を支えてきたプラントであったが、四年前にオブリビオンマシン・プラントとしての兆しを見せたことで廃棄ならびに破壊処理が下された。
長年に渡り海風と波を浴びて侵食して生じた錆による老朽化が著しく嵐によって倒壊した、その際に同プラントで精製していた放射性物質が臨界に達しての爆発などの世論誘導がなされた。これもトリアイナが所有するプラントがオブリビオンマシン・プラントと化した事実に寄る企業イメージ低下を避けるべく措置だったのだろうが、今も半減期を過ぎていないとの理由により周辺海域の立ち入りは制限されるまでの念入りぶりであった。
「そのお陰で周辺に危害を出さずに済んでるだろうけどさ」
転移による空中からの降下の最中、円谷・澄江(血華咲かせて・f38642)は自機『クニークルス』のコックピットから海面を俯瞰する。
自国の民衆を養うのではなく他国への輸出という交易産業の屋台骨を支えてきた洋上プラントであったことが、朽ちつつながらも今現在も残っている残骸からかなりの規模を誇っていたと伺える。
だが、その大半は海没しかけていると見るのが正しく、見方次第では侵食の果てに海没が運命付けられた孤島と言っても差し支えないだろう。
クニークルスのセンサーが苛烈な戦闘を繰り広げる高熱源体の姿を捉えると、巨大な波しぶきを上げながら
残骸の一部が崩れ落ちる。
「何やってんだいアンタら……」
モニターに映し出される画像を拡大すると映し出されたのは、まるでサルのような俊敏性で残骸から残骸へと飛び移る四つ腕の覆面レスラーこと『デスリング総統』。
彼を追撃すべく赤いマントを時折吹き抜ける強風で靡かせながら飛んでいる鉄仮面の男こそ、ファーストヒーロー『ザ・スター』。
クニークルスの兎耳のようなアンテナで集音すると、痴話喧嘩さながらの罵り合いがスピーカーを通してコックピット内を騒がしくさせ、その幼稚さに思わず澄江は呆れ返ってしまうほどだ。
「勝手に戦えって言いたいけど、ここまで足場が脆いと下手に助太刀するのも危ないから応援するかねえ。……猟兵とオブリビオン戦いも、他所の世界の者同士で戦う事とか似たようなものもあるしね」
……猟兵はオブリビオンにより齎される世界の破滅を回避する抑止力。
本来であればその世界の猟兵が自分の世界に染み出たオブリビオンを倒すのが筋なのだろうが、こうして自身のように他なる世界から介入するのが常なのが第六の猟兵である。
事実、デスリング総統を始めとする助っ人が存亡の危機に瀕したあらゆる世界を救うべく介入したことにより、先の戦争では大いに助けられた。
ならば、今度はその時の礼を返すってのが任侠の仁義ってものだ。
「……よぉし、思ったとおりだね。まだ頑丈な部分が残っていたかい」
澄江が転送先としてエンデカの上空を希望した理由……それはプロレスには欠かせない『リング』を設けること。
鋼鉄の岩礁は無数に点在するが、それらの耐久性はひとつひとつ異なっている。
事実、デスリング総統とザ・スターの姿を捉えた際に沈んだ地点では到底プロレスをやるには脆すぎており、その結果崩れ落ちた。
闇雲に戦いを繰り広げていれば、いずれ追い詰められるのは目に見えている。
ならば、先手を打って超人プロレス、もしくはキャバリアが着地しても大丈夫なまでの強度を残している地点をサイキック式電探で上空から走査(探索)していた次第である。
──ならば、やることはひとつ。
「聞きな、デスリング総統! この世界で超人プロレスをおっ始めるのは勝手だが、リングなしにやり始める馬鹿がどこに居るんだい!! あんたらにお誂え向きな即席の会場は……ここさ!!」
剥き出しとなった焼けた鉄骨に絡み付くは、ユーベルコード『
念網は覆う』により顕現された頑丈なサイキックエナジーで織り上げた霞網。
澄江が脳裏に思い浮かんで、サイキックキャバリアによって増幅された念網が織り成すは四角く揃えられたリングロープその物。
「グロロロロ! 早速第六の猟兵がワガハイを嗅ぎつけてお出でなられたか! ザ・スターよ、このままでは一向に決着が着かん。そこで御婦人が寄贈した特設リングの上で決着を着けようではないか!!」
『くっ、またしても第六の猟兵か……。いいだろう、最後にリングの上に立っているのは……正義であることを証明してくれるわッ!!』
(男ってのはホント単純だねぇ……)
血気盛んとなって飛び移れば、互いに激しくぶつかり合って取っ組み合いをおっ始めるプロレス・フォーミュラとファーストヒーロー。
そんな性懲りもなく大人気もない喧嘩同然なプロレスを繰り広げようとする両雄の姿に澄江はまた呆れそうになるが、この世界……クロムキャバリアにおいて雌雄を決するのは血で血を流す戦争だ。
これはこれである意味平和的なのかもね、などと笑みを零しながら、キャバリアの重さに耐えうる強度を残しているプラント残骸の足場に降着する。
「折角作った特製リングだ……それでも世界征服目指すプロレス・フォーミュラかい? 英雄に負けてるようじゃ夢のまた夢、気合い入れて頑張りな!」」
コックピットのハッチを開けば、吹き込んでくる突風に乗った潮の匂いが鼻腔をくすぐってくる。
吹きすさぶ風に掻き消されぬよう、澄江は声の限りデスリング総統を激励するのであった。
大成功
🔵🔵🔵
賤木・下臈
豪傑たちの真っ向勝負ですか。この下臈は戦いに介入せず、一観客として事の有様を見守ることにしましょう。
さすがはデスリング総統、なんたる果敢な攻め!その武威、まさしく一人
大陸軍、世界最強というに相応しい!ナポレオンもこれを見れば「余の辞書に不可能の文字はないがデスリング総統はある」と言うだろう!
だが、ザ・スターもさる者。足場を軽々飛び移る早業、まさしく平家物語に言う八艘跳び。ザ・スターが九郎判官義経ならば、総統は能登殿、教経か!
おお、ザ・スターの先を読む総統の立ち回り、まさしく神算鬼謀、今孔明!劉備も三十顧の礼を以てデスリング総統を迎えるだろう!だがちょっと足場が心配だ!
メディア・フィール
プレイング改変・アドリブOK
他PCとの絡みOK
武闘家とプロレスは似て非なるものですが、それでも共通点はあるので解説に回ります。デスリング総統の行動をちゃんと解説することで気持ちを盛り上げてパワーアップさせる目論見です。
「あ、あれは受けの美学だ!……です。本当はもっとうまく立ち回って肉体ダメージを抑えることは可能なんだけど……ですけれど、あえて正面から受けて立ってその技の真髄を直接身体で感じ取っているんです」
「今のはわざと攻撃を外したように思えますが、目に直撃する可能性があったので技をキャンセルしたんでしょう。レフリーストップがないからこそ逆に反則攻撃は行わないというプロレスの姿勢ですね」
大宝寺・朱毘
連携歓迎。
公序良俗に反する行動、利敵行為、過剰に性的な描写はNG。
アイドルでありロッカー。
ロック(漢気があるとほぼ同義)な様を好み、「ロックだ」と感じれば味方はもちろん敵でも賞賛することがある。
民間人への被害を嫌い、救助活動などには全力を尽くす。
使用武器は黒いボディに炎の模様が入ったギター『スコーチャー』
演奏によって音の爆弾や衝撃波を生み出してぶつけるという戦法を好む。
必要なら演奏を続けつつ蹴りなども行う。
冒険では、魔力任せに障害を吹き飛ばすといった行動が得意。ただし地頭が悪いわけでもないので、搦め手が必要ならその都度考える。
台詞例
「いいね、ロックじゃん」
「こっちゃ世界の命運背負ってんだよ!」
プラントであったことが忍ばれる程度に基部のみを残し残骸が点在していたエンデカであったが、猟兵の手により特設リングが設営された。
「グロロロロ……リングが出来たからには、貴様はここで骸の海へと帰するのだ!」
『喧しい! 我が宿敵の戦神アシュラっぽい姿なのが腹立たしいわ! 貴様こそ残骸に縛り付けて海底に沈めてくれるぞ!』
一旦土俵が引かれればそこから出てしまえば「お前の負けだ!」など言われかねない強迫観念か、先程までは飛行できるアドバンテージでデスリング総統に有利さを示していたザ・スターも降りて取っ組み合いを始めている。
「あーっと! ザ・スターがデスリング総統の四本腕を二本の手のみで押しかえようとしている! 一回りも二回りも巨大な上に腕の数まで勝るプロレス・フォーミュラとの攻防に、ファーストヒーローの意地を類稀ない
益荒流の力でしょうか、メディア姫」
「あ、あれは受けの美学だ! ……です。本当はもっとうまく立ち回って肉体ダメージを抑えることは可能なんだけど……ですけれど、あえて正面から受けて立ってその技の真髄を直接身体で感じ取っているんです」
「なるほど! 流石はプロレス・フォーミュラの頭目だけあって、魅せに魅せてるのですね!」
(なんであたしもここに座っているんだろう……)
リングを一望できる残骸の上に設営されているのは、テーブルとマイクが置かれたプロレスには欠かせない実況席。
そこには実況の賤木・下臈(おいしいクッキーです・f45205)、解説のメディア・フィール(人間の
姫武闘勇者・f37585)、そしてゲストとして何がなんだかわからないまま座らされたゲストのロック系眼鏡アイドル大宝寺・朱毘(スウィートロッカー・f02172)が鎮座している。
本当であれば一曲弾いてデスリング総統を鼓舞してやりたいのが本音であるのだが、こっちの方が効果的だとふたりに諭された次第であった。
「おーっと! 流石はデスリング総統、なんたる果敢な攻め! その武威、まさしく一人
大陸軍、世界最強というに相応しい! ナポレオンもこれを見れば『余の辞書に不可能の文字はないがデスリング総統はある』と言うだろう!」
「いや、それは流石に誇張すぎやしねーか?」
「いいや、決して誇張していません。プロレスは八百長とバカにされますが、プロレスとは究極のエンターテイメント。たとえ無観客であっても一切手を抜かない……これこそプロレスリングの真骨頂と言えましょう」
風防のゴーグルを掛けた姿でクイッと位置を調整しながら、メディアは不条理・ナンセンスを軸とする独自のゲロイズムが溢れる下臈の実況に補足の解説を間髪を容れず挟み込む。
そう言われてしまえば、自分も練習の際は万人の観客が前に居ると思って全身全霊で弾いている。職業は違えどプロの精神は変わらないものだねと呟いたその時、流れは大きく変わろうとしていた。
『このまま力比べをしていても埒が明かん。相変わらずの馬鹿力だが、これはどうだ!』「グロロロロ! 良いぞ、一旦仕切り直しだ!!」
「両雄互いに離れた! だが、ザ・スターもさる者。ロープを結び合う鉄骨を軽々飛び移る早業、まさしく平家物語に言う八艘跳び。ザ・スターが九郎判官義経ならば、総統は能登殿、教経か!」
「能登ってーと……あの『平家に非ずんば人に非ず』って有名な言葉を言った奴か?」
「そうです! あの有名な滅亡フラグを立て、『見るべきほどのことは見つ』と身体に舟の錨を巻きつけ海に身を投げるも、結局源氏方に捕らえられて義経の手で処刑されたあの平教経! ですが、下臈さん。アヤカシエンパイアでは源平合戦は起きて……?」
アヤカシエンパイアは永年平安時代の世界。
平安時代に訪れた世界の危機から現在に至るまで平安結界を張り、平安時代の貴族社会今も継続して武士の世は到来することは平安結界破壊行為そのもの。
「あー……それはですね。この下臈、猟兵に目覚めたことで多世界の歴史も学んでおりますので」
「ラーメン!」「もんにょふ」「ラブリーオッサン」など意味も脈絡もない言葉を吐き散らす彼のことなので、さもありなん。
「グロロロロ! ファーストヒーローとあるものが、小賢しい手を! だが、ワガハイとてプロレス・フォーミュラ。貴様の考えていることなど、まるっとお見通しである!!」
ここは残骸の中でも比較的強度がある場所であるが、部分部分と脆くなっている箇所も点在している。
試合に熱中するあまり忘れてしまいそうになるかもしれないが、そこは手練れの熟練レスラー。
試合に熱くなろうが冷静さを失わない試合運びで、技を繰り出そうと身構えるザ・スターと正対し……。
「おお、ザ・スターの先を読む総統の立ち回り、まさしく神算鬼謀、今孔明! 劉備も三十顧の礼を以てデスリング総統を迎えるだろう! だがちょっと足場が心配だ!」
『ぬぅん!』
それはまさに流星の煌めき。
常人では何が起きたか解らぬ疾さで繰り出されるのは、ロープの反動を活かしてより威力を増させたレッグ・ラリアット!
「恐ろしく速いレッグ・ラリアット! 猟兵でなければ見逃してしまう流星の瞬きッ! だが、デスリング総統に当たることは叶わず不発だぁ!!」
「いいえ、違います。今のはわざと攻撃を外したように思えますが、目に直撃する可能性があったので技をキャンセルしたんでしょう。レフリーストップがないからこそ逆に反則攻撃は行わないという、ファーストヒーローの高潔さを現したプロレスの姿勢ですね」
「いいね、ロックじゃん」
オブリビオンに見を落とそうとも、世界を救うヒーローであり続けているファーストヒーロー『ザ・スター』。
本来の在り方は混迷を極め終わることなき戦乱のクロムキャバリアに平穏を与えれてたかもしれないが、今やそれは無差別なプラント破壊によって齎される平和となっている。
だからこそ、腐ってもヒーローである証左がここに現れた訳か。
「グロロロロ! 貴様、わざと外したな!?」
『ふん、我とてファーストヒーローの一員。このような技で貴様に勝っては、仲間に顔向け出来ないどころか宿敵の戦神アシュラにも嘲笑われよう!』
「グロロロロ……笑止! そこ言葉、ワガハイへの愚弄と受け止めた! 如何なる技も受けきってこそのプロレス・フォーミュラ……貴様の技も受けきってやるわ!!」
さぁ来いと言わんばかりに、四腕を広げて仁王立ちするデスリング総統。
『その言葉、違えるではないぞ!』
デスリング総統の在り方はヒール。
つまり、約束を違えてカウンターを与える可能性は大いにある。
そうであれば、こちらも応酬の技を繰り出すまで。
ザ・スターは再びロープの反動を活かし、デスリング総統を強襲する!
「こ、これはー!?」
「デスリング総統……宣言通りにザ・スターの技を受け止めたーッ!?」
「こっちもロックじゃん。いいね」
浴びせかけられたレッグ・ラリアットの蹴りはデスリング総統の顔面に叩きつけられ、2メートル近くもある巨体が大きく揺れる。
しかしそれでも倒れることはなく、口の中を切ったのか流したジュースがデスリング総統の白い歯を赤く染め上げる。
『……確かに受け止めたぞ、グロロロロ!』
「おーっと! デスリング総統!! 技を決めて、このまま着地するだけのザ・スターの脚を掴み上げて捕らえた!!」
「これは……四本腕で相手の身体を掴んで繰り出す……」
「そう! デスリング総統十八番のデスリングスイングだぁー!!」
悪魔に魂を売り渡した正義の味方よ。
真の悪魔が繰り出す四次元殺法──その身でとくと味わえ!!
巻き起こるは骸の海より来訪した者を骸の海送りとする旋風……デスリングスイングだぁーーーーッ!!
大成功
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第2章 ボス戦
『ファーストヒーロー『ザ・スター』』
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POW : バスター・ナックル
【拳】を構えて【エナジー・ゲートから降り注ぐ光】を纏い、発動前後が無防備となる代わりに、超威力・超高速・防護破壊の一撃を放つ。
SPD : スーパー・ノヴァ
自身の【装備】を【輝く「超新星モード」】に変形する。攻撃力・攻撃回数・射程・装甲・移動力のうち、ひとつを5倍、ひとつを半分にする。
WIZ : レミニセンス・ザ・ワールド
常識的な行動を囁く【「ザ・スターの心」の幻影】と、非常識な行動を囁く【「ザ・スターの肉体」の幻影】が現れる。[「ザ・スターの肉体」の幻影]に従うと行動成功率が8倍になる。
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洋上プラント跡に激しい旋風が舞い上がり、錆び朽ちつつある鉄骨が激しく軋む。
デスリング総統の四次元殺法『デスリングスイング』を受け、遥か上空に展開する『エナジー・ゲート』まで届かんとばかりに放り投げられるザ・スター。
しかしデスリング総統の四次元殺法を受けても彼の身体は骸の海へと還ることはなく、身を翻しながら体勢を整えると怒りに満ちた怒声を浴びせかけた。
『貴様! 何故手加減をしたッ!?』
「グロロロロ! 痴れたことよ。おぬしはまだ全ての力を出し切っていない……言ったであろう? ワガハイはあらゆる全てを受け止める、と」
バトル・オブ・オリンピアでデスリング総統と超人プロレスを繰り広げた猟兵は知っていよう。
この男はまずこちらの攻撃を受け切るまでは手を出さず、仕留め損なえば四本の腕による異次元の怪力により「攻撃を喰らった者を骸の海に放り出す」恐るべきプロレス・フォーミュラであることを!
故にデスリング総統はザ・スターを骸の海に放り出さなかった。
自身を愉しませる一手があると、クロムキャバリア中で開催したザ・スターとのファイトに次ぐファイトを何度もやっていれば知っていて当然と言えば当然なのだが。
『フン! 相変わらずの酔狂者だな』
「よく言われるわ、グロロロロ!」
ザ・スターもこのままでは埒が明かないのが明白であり、本来であれば不倶戴天の宿敵である『戦神アシュラ』およびクロムキャバリアの何処かにあると睨んでいるプラントで製造される複製体『アシュラレディ』への対抗手段として、確かにザ・スターは隠し玉を所有している。
その名も──
『……出ろぉぉぉぉっ! レミニセェェンス……エニィィグマァァァッ!!』
パチィンッ!!
ザ・スターが叫びながら高らかに挙げた腕で指を鳴らせば、大気を揺るがす破裂音に呼応してエナジー・ゲートより巨大な金色に輝く甲冑とも形容できる物体が顕現し、緩やかに降下してくる。
それは5メートルにも及ぶキャバリア……戦神アシュラに対抗するために造り出されしスーツはアシュラバスターの異名を持ち、ザ・スターの乗機たるオブリビオンマシンの名は『レミニセンス・エニグマ』!
胴体部分に亀裂が走って装甲が展開されれば、直立した姿勢となったザ・スターの巨体が格納される。
最後に頭部がザ・スターの頭を覆い隠し、ツインアイが光るとデスリング総統を見下ろしながら睨みつける。
『さぁ、とっておきを出したぞ。これで満足か?』
「グロロロロ! そう来なくてはだ!!」
巨漢たるデスリング総統の倍はあるオブリビオンマシンが緩やかに降着すれば、プロレスリングとなっている洋上プラント残骸が叫び声を上げながら一層と軋む。
猟兵のユーベルコードで補強されているとは言え、金色のオブリビオンマシンの自重と戦いに耐えれるか……それとも耐え切れず崩壊する前にデスリング総統が戦神殺しの巨人を骸の海に送り返すか……。
第2ラウンドとなる戦いのゴングは、デスリング総統の巨拳とレミニセンス・エニグマの鉄拳が激しく打ち合った衝撃音となって高らかに鳴らされる──!
音駆螺・鬱詐偽(サポート)
世界に蔓延る悪を懲らしめるネガティブアイドル鬱詐偽さん
ただいま参上。
・・・って、どうしてこんな恥ずかしいセリフを言わないといけないのよ。
うう、これも番組の為なのね。
自身の命綱である番組の為、多少の苦難や困難は仕方なく行います。
むしろ持ち前の不運によりおいしい場面を呼び込んでくれるかと思います。
ただし、ネガティブとはいえアイドルですのでマイナスイメージとなる仕事はすべて却下でお願いします。
ユーベルコードや技能はご自由に使わせてください。
どうぞ、当番組のネガティブアイドルをお役立てください。
プロデューサーより
迅瀬・ナクタ(サポート)
「ちっ、見て見ぬふりも、ばつが悪い。オレも参加してやるか」
人間の「トイロボバトル」アスリート×オブリビオンマシン使い
トイロボと言う小型ロボットを特殊なデバイスで操作するホビースポーツのアスリートです。
基本的には愛機である『OM-NATAKU』を使ってスポーツや戦闘をします。しかし、本人もアスリートなので身体を鍛えており、場合によってはトイロボを使わずスポーツ・戦闘を行います。また、巨大戦では別に所持するオブリビオンマシンを操作することもあります。
仲間や一般人にはぶっきらぼうな態度で接しますが、相手がピンチの時はなんだかんだと助けてしまうタイプです。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
エリー・マイヤー(サポート)
フラスコチャイルドのサイキッカー × 寵姫です。
常に丁寧語で、あまり感情を乗せずに淡々と話します。
ユーベルコードは習得した物をどれでも使用し、目的達成のために全力を尽くします。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
***
ごきげんよう。
戦力が必要と聞いて手伝いに来ました、エリーです。
念動力で、戦いをサポートしますね。
敵の攻撃を妨害したりとか目潰ししたりとか、そういうセコイ工作は任せてください。
攻撃は念動力で締めたり潰したり斬ったり突いたり。
敵の物性に合わせてそれっぽくやりましょう。
キャバリアは……まぁ、必要そうなら乗ります。
巨拳と鉄拳が激しく激突して生じた衝撃波が暴風となり、海面に白波を立たせながら洋上プラント跡地に残る残骸を大きく揺らした。
オブリビオンマシンという強者を前にして滾るデスリング総統の闘魂、エナジー・ゲートから降り注ぐ光を纏ってより神々しく光り輝くレミニセンス・エニグマの表面を覆うオーラが反発しあったのだ。
「うう……実況するだけのお仕事だって聞いたはずなのに……!」
まるで上陸した台風の勢力を体を張って実況するアナウンサーよろしく、音駆螺・鬱詐偽(帰ってきたネガティブアイドル・f25431)は暴風を一身に浴びながら風に煽られて倒れないよう身を屈めた。
鬱詐偽小屋の中に引き籠もりたいが、狼が吹いた息よりも強烈な暴風の前にはひとたまりもないだろう。
「海風は髪がベタつくから苦手なんですよね……」
必死に耐える鬱詐偽とは対象的に、エリー・マイヤー(被造物・f29376)は自らの念動力で作り出した擬似的なフラスコ空間を隔壁として悠々と紫煙を燻らせる。
元々は喫煙の副流煙で他人の健康を害さない気遣いで獲得した物であるが、こういう時は念動力を強めれば被害を受けないので助かる。
尤も、外から見れば阿片窟同然と煙草の煙で充満しているのがひと目で分かるので、見ているだけでも健康に悪そうなのであるのだが。
「一撃、また一撃ぶつかり合うだけで、この衝撃か。ちっ、迂闊に手出しできないのも苛立つものだ」
迅瀬・ナクタ(闇を抱くトイロボバトラー・f37811)が歯がゆさを覚え、唇を噛んだ表情でデスリング総統とザ・スターの勝負を見守るのも理由がある。
ここが陸地であればオブリビオンマシン『ラシャ』を持ってしての、飛び入りキャバリアファイトで介入できよう。
しかし、ここは元オブリビオンマシン・プラントの跡地で、猟兵の手で破壊に破壊されてからだいぶ年月が経ったことで海水による腐食も進んでいる。
猟兵の役割は現存するプラントを破壊するザ・スターの撃退もそうだが、デスリング総統を元の世界であるアスリートアースへと帰還させる手助けをすることである。
ここで下手にキャバリア戦をやれば、デスリング総統の足場をも破壊することに繋がってしまう。
故に、サイキックキャバリア『アレクサンドラ』を所有するエリーもまた、ヤニを吸いながら観戦しての応援に洒落込んでいたという訳でもあった。
「グロロロロ! ワガハイのデスリングナックルをまともに受けても、ヒビひとつ入らないとは気に入ったぞ!!」
『言ったはずだ。我がとっておき、とな』
猟兵たちの狼狽を他所にデスリング総統は拳から腕に伝わる衝撃で骨を軋ませ、キャバリア相手に素手で激しく打ち付け合わせることで皮が裂けて鮮血を滴らせるが、圧倒的な強者を前にした悦びでより一層とワルく嗤う。
「本人はああ言ってるが、不利には違わない。何せ鳥人間みたいなリングコスチュームでも飛べないからな」
事実、レミニセンス・エニグマはザ・スター同様に飛行能力を有しているが、デスリング総統は跳ぶことは出来るが飛行することは叶わない。
しかもザ・スターが操縦桿を握って操作するのではなく彼の挙動や脳波を感知して動きを投影するパワードスーツの操縦系統であるのか、レミニセンス・エニグマは重厚な装甲の重量級キャバリアながらも機敏な動きと反応性で意外にも俊敏だ。
言うなれば、ザ・スターそのものが装甲を纏って巨大化したと言っても過言ではない。
『お遊びはここまでだ! これで貴様との因縁を断たせて貰う!!』
なんとかして掴もうとするデスリング総統の四腕から逃れる形でザ・スターが身に纏うレミニセンス・エニグマが垂直に飛び上がった。
そのまま上空を滞空し、ザ・スターの身体を通して発現しようとするユーベルコードの名は『スーパー・ノヴァ』。
金色のオブリビオンマシンが帯びていたエナジー・ゲートから降り注ぐ光が超新星の極光とへと変わり、ファーストヒーロー『ザ・スター』の所以がここに現れようとする。
「これは……受け止め甲斐があるではないか! グロロロロ!!」
「こんな時でもああ言ってるけど……私たちも巻き添えになるわね、絶対」
持ち前のネガティブマインドで事あるごとにネガティブな思考である鬱詐偽だが、ここは彼女の言葉通りかも知れない。
「ああ、飛行すれば足場の崩壊を気にせずにキャバリア戦をやれましたか。と言っても、ユーベルコードが発動するまであと僅かだと時既に遅しですけども」
呑気そうに新しい煙草に火を付けるエリーの言葉も、その通りだ。
ここでキャバリアを召喚するにも時間は無く、何より猟兵自身でザ・スターを撃退して骸の海に還せば、不完全燃焼のデスリング総統がまたザ・スターを追い求めてアスリートアースへの帰還は遠のいてしまう。
如何にしてデスリング総統を満足させ、ザ・スターも骸の海に送り還すか……。
「……デスリング総統は、バトル・オブ・オリンピアで新生フィールド・オブ・ナインのひとりとして私たち猟兵と闘い……ダーク王位決定戦に敗れた今は猟兵の協力者として先の戦争では助けられました。だからこそ、今がご恩をお返しする時なのかもしれません」
自身も元はオブリビオンであって、バーチャルキャラクターのインターネットアイドルとして転生した経緯がある。
故に激闘の果てに猟兵の配下となったデスリング総統に共感するところがあったのかもしれない。
だからこそ普段のネガティブな考えを捨て、勇気を出して一歩踏み出して自身のユーベルコード『サウンド・オブ・パワー』を込めた応援の歌を歌い始める。
「……ああ、そうだな。おい、デスリング総統! オレも手を貸してやるから、ありがたく受け取れ!!」
ナタクもまた偶然拾った謎のトイロボで狂気に陥り、同じトイロボ競技者の猟兵との勝負に敗れたことで正気に戻ると同時に猟兵へと覚醒した。
同じ闇から光へと転じた仲間でもある鬱詐偽の姿を見てしまえば、普段はライバルムーブで気取っているが音は年相応の少年である彼も応援しよう。
ナタクがデスリング総統に贈った
声援は、『応援の翼』。
腹を括って勝利への意志を共有した今だからこそ、デスリング総統の背中に光の翼を授けたのだ。
「グロロロロ! これはありがたい。ワガハイの力のみで彼奴に挑むべきだろうが……ファンの声援を受けてれば、それに応えてこそのプロレス・フォーミュラである!!」
コーナーに登ったデスリング総統が今も輝きを強めるレミニセンス・エニグマを見上げて、高らかに翔び上がる。
「フラーイング・ザ・スカーイ。高く飛び上がれ、大空のどこまでも」
「デスリング殺法! 燃える闘魂が、地の果て燃やし」
「……奇跡を呼ぶPOWER」
3人の猟兵が送った即興の応援歌を背に、デスリング総統は風を切りながらザ・スターを見据える。
『自らやられに来るとは。良いだろう、海の藻屑と散れッ!!』
一直線にこちらへと向かってくるデスリング総統を相手に、レミニセンス・エニグマも動いた。
光り輝きながら急降下するそれは、まさしく一筋の
流星。
このまま加速を強めれば、避けずに自身を受け止めたデスリング総統をそのまま海底深くまで沈めることが叶おう。
だが……それを許さないの猟兵である。
「ぬおぉぉッ!?」
刻々と近づくデスリング総統に狙いを付けた瞬間、ザ・スターの視界は青い炎で覆われたのだ。
しかもそれは外部ではなく内部からの出火。
「らしくなく応援歌を送ってしましましたが、私としてはこっちの支援が性に合ってるのですよね。ま、
発火能力は専門外なんですけどね……」
エリーのユーベルコード『|発火能力』。
決して自身以外では消せないサイキックの炎が、ザ・スターのヘルメットのみを燃やしたのだ。
当然ながらザ・スターに火傷を与えるのは困難だろうが、視界を奪うのみであれば十分である。
『グロロロロ! 翼を得たワガハイを前に臆したか!?』
そして、それはデスリング総統も与り知らないこと。
視界が奪われたことで失速ならびに軌道が反れたレミニセンス・エニグマを背後から羽交い締めしたデスリング総統は、そのまま互いの頭を下にして急降下!
そのまま相手の頭部を杭打ち機で打たれる車止めよろしく地面に叩きつける空中殺法の名こそ……デスリング落とし!!
デスリング総統の起死回生が見事に決まると、3人の猟兵はその勇姿に再び声援を送るのであった。
成功
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