ラビニアの異世界飯 因習村の淫囚クリームパイ
●永遠のハレの日
「本当に年中お祭りをやっているんだね。12月にこういうお祭りとか初めてかも」
屋台の並ぶ道を印旛院・ラビニア(エタらない人(仮)・f42058)はそんな事を呟きながら歩く。片手には林檎飴、もう片方の手には食べ終わった焼きそばやらたこ焼きやらのパックをブラブラと持ってゴミ箱を探す。
「おねーさん、お祭り楽しんでる?」
「え?僕?」
ラビニアが振り向いた先には浴衣を着た少女の姿があった。
「今ここにいるおねーさんは貴方だけよ。見た感じ、おにーさんではないでしょ?」
「まあ、それはそうだけど」
何か見透かしてくるような雰囲気に少し苦手意識を感じるラビニア。だが、質問には律儀に答える。
「お祭りは楽しいよ。屋台のメニューも美味しいしね」
「そう。なら、ここのクリームパイも食べたかしら?」
「そうだね。屋台でパイっていうのも珍しいとは思ったけど、色んなのをいただいたよ。フルーツが載ってたり、クリームにチョコが入ってたりレモンが入ってたり、中にはお惣菜っぽい味付けのもあったかな? 店ごとに色々と工夫がされていたから、おかげで飽きなかったよ」
このお祭り屋台ではなぜかクリームパイの店が多い。しかも他に比べて安いのだ。おかげでこのお祭りで食べたものではクリームパイが一番多いかもしれない。
「そう、ならよかった。これでおねーさんもこの村の仲間入りね」
「かなー? ただ食べてただけだけど」
「実はね、ここの村には仲間内でしか行われない秘密のお祭りがあるの」
(来た!)
少女の唐突な話にラビニアは内心反応する。
「へぇーそうなんだ」
「おねーさんみたいな美人さんは大歓迎よ。場所は……」
ラビニアは年中と言っていいほどの頻度で屋台を開いてお祭りをやっている村の噂を耳にしていた。そして、そこで行方不明者が出ているとの噂も。異世界のお祭りに興味があったのと、ダークネスに関連する事件であるならば解決したいという正義感も相まってラビニアはその村へと向かったのだ。
「それっぽい場所は見つけたんだけどな」
いかにもな祠を見つけたが、何やら結界が張ってあって中に入れない。
無理矢理侵入する方法も考えたが、まずは穏便に侵入する方法を模索しに表のお祭りである屋台へと足を運んだ。そうした経緯があったのだ。
●盛ってけクリームパイ
「すんなり入れちゃった」
少女が教えてくれた場所は最初に目星をつけた祠だった。村に来たばかりの時に弾かれた結界など最初から無かったかのようにラビニアはスムーズに祠の中へと侵入する。中は異空間のように広がっており、いくつかの部屋が存在している。
「行方不明になった人たちが見つかればいいけど」
慎重に忍び足で建物の中を探し回るラビニア。そして、人の声のする部屋を探し当てる。そっと扉の隙間を作り、ラビニアが覗いたものは、
「うっ」
隙間からでもむわっと漂う淫臭。そこには十数人もの男女が淫らに交わり合っている姿があった。熱を帯びて嬌声をあげる女達、そこへ熱心に絡みつく男達……そして中には男性顔負けのものを屹立とさせた少女なども混じっている。そして、部屋の隅の方では休憩中なのか、身体から白濁としたものを滴らせて寝転がっている者達もいる。
(これが行方不明になった人達……この人たちを助けて黒幕を倒s)
「ゔぁっ!?」
様子を伺っていたラビニアの身体に異変が起きる。下腹部の奥のあたりが熱くなり、キュンキュンと快楽を伴った振動を感じる。そして、目の前で繰り広げられる淫蕩の宴に混ざりたいという衝動に駆られる。
「そこに誰かいるのか?」
「新しい『参加者』かしら?」
先ほどの呻き声が聞かれたのか、数人がラビニアの存在に気づき、扉へ向かおうとする。選択肢が限られてからの行動は早かった。
「召喚!戦乙女の行進シリーズ!」
部屋の中へと飛び込み、澱みない動作でデュエリストカードからモンスターを召喚する。剣、盾、槍、杖などを様々な武器を構えた戦乙女達がラビニアの目の前に現れる。
「さあ、大人しくしてもらおうか。さもないと、この戦乙女達が……あれ?」
現れた戦乙女達のほとんどが倒れ伏す。まるでそこに高重力が発生したかのように。その様子を見て少女の一人が呟く。
「この人達はまだこの村の仲間になっていないようね」
(仲間? もしかして結界を無理に破って入っていたら僕もこんな風になっていたってこと? だとすると)
自身の内から湧き起こる淫らな衝動に抗いつつラビニアが考察する間にも話は進む。
「ならば村の一員になってもらいましょう」
少女の言葉と共に男達が動けなくなった戦乙女達に手を伸ばそうとするが、
「ぐわっ」「がっ」
戦乙女の一人が男達に襲い掛かり、当て身を喰らわせて気絶させる。
「ジークヒルデ!」
それはラビニアの扱う戦乙女の中でもエースモンスターである『神滅の戦乙女・ジークヒルデ』だった。その能力は特殊効果の影響を受けない、強大な敵へ神殺しの特攻が乗るなどであった。
「ジークヒルデは動けるんだ! さあ、痛い目に遭いたくなければ大人しく……」
「そんなことされたら奥の手を使わなきゃいけないじゃない」
「へ?」
形勢逆転でラビニアが調子に乗ろうとした矢先、疾風のように何者かが飛んできてジークヒルデを吹き飛ばす。
「弱体化しないなら、こちらを強化すればいいものね」
「君は!」
吹き飛ばした存在の正体は先ほどの屋台で出会った少女。だが、その時とは違い、禍々しき雰囲気を身に纏っている。こうなれば、この少女がこの村の黒幕であるダークネスであると容易に想像できる。
「お姉さんは灼滅者?それとも最近活動している猟兵かしら?」
「あ……う……」
少女に眼差しを向けられた瞬間、身体の衝動がさらに強くなり、ラビニアの身動きが取れなくなる。
「そこらのサイキッカーより強い力を感じるわ。お姉さんと子供を作ったら、新しい拠点を任せられそうな個体を産んでくれそうね♪」
(やばいやばいやばい)
脳内で警鐘は鳴るが身動きが取れない。
「クリームパイ、美味しかった? 結構食べていたみたいよね? だからお姉さんはもう村の仲間。私には逆らえないのよ」
(そういうことかー!)
仲間にならなければ祠に入って救助に向かえない、だが仲間になってしまえばダークネスに逆らえなくなってしまう。
「さあ、お姉さんもクリームパイを作りましょ?」
そう言って少女はチラリと白濁まみれの女性達を見る。言葉の意味は理解できなくても、何をしようとするのかは想像がつく。
「嫌だ、僕は、こんな所で……」
抵抗も碌にできない。このままでは彼女の言うクリームパイ作りに参加させられてしまうだろう。
『ラビ子ぉぉぉぉぉ!!!』
だがそんな時に部屋の壁を突き破ったのは全長5mを超える黒い巨体。
「劫禍!?」
『ここは一旦退くぞ!』
ラビニアの相棒と自称するオブリビオンマシンはラビニアを掻っ攫うと、バーニアをふかし祠の外へと突き破って脱出する。あっという間の手際だった。
「私の因子を中途半端に取り込んで、支配に抵抗しつつ結界に侵入したってところかしら? そしてその状態だと叶わないからさっさと退散。なかなかガードが固いわね♪」
あっという間に去ってしまった相手にダークネスの少女は舌なめずりするのであった。
●こんなホワイトクリスマスは嫌だ
『しっかりしろラビ子』
「う、うう……戻らなきゃ」
村から脱出したラビニアは人間形態となった劫禍に解放されつつもどこか意識が朧げになっている。屋台で出された食べ物の影響でダークネスの支配下に完全に入ってしまったようだ。
『仕方あるまい』
「おがっ、ぬぐっ」
劫禍はそう言うと、身体から触手を生やし、ラビニアの喉の奥へと突っ込み蹂躙する。
『できれば意識のある時に楽しみたかったのだがな!』
そして触手の先からビュビュっと何かを出し胃の中を撹拌する。程なくして、
「オボロロロロロロロロ」
盛大に嘔吐するラビニア。地面が吐瀉物の内容のせいか真っ白に彩られる。
『吐いて楽になったか?』
「ううーん」
ぐったりはしているが、ダークネスの支配からは解放されたようだ。
『おのれダークネス。ラビ子を汚していいのは俺様だけだといのに。しかし、あそこはダークネスのユーベルコードで守り固められた拠点。攻めるには大分準備が必要になりそうだ』
そう言うと劫禍は主を休ませつつ、相手の能力の考察をするのだった。
●因習村のタタリガミ・アリス(仮称)の考えうるユーベルコード考察
●因習の積み重ねし力
【六〜二四】世代分の【眷属と共に儀式で得られたパワー】を発動し、身体能力が[六〜二四]分間[六〜二四]倍となる。前日に[六〜二四]時間の【因習に沿った】儀式が必要。
●因習の祠
小さな【結界の施された祠】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【特殊な食物を食べた者以外を無力化する空間】で、いつでも外に出られる。
●因習の眷属
【因習の積み重ねによる力】によって、自身の装備する【食べ物と同じものを食べた相手】を遠隔操作(限界距離はレベルの二乗m)しながら、自身も行動できる。
●因習村の主
【結界術】と【料理】と【眷属の創造】と【誘惑】と【エナジードレイン】と【儀式魔法】を組み合わせた独自の技能「【因習村の主】」を使用する。技能レベルは「自分のレベル×10」。
●持ってけクリームパイ
自身の創造物に生命を与える。身長・繁殖力・硬度・寿命・筋力・知性のどれか一種を「人間以上」にできる。
【危険度:★〜★★】村などを拠点に勢力を増やすダークネス。食べ物を介して相手を操ったり、自身がルールを定めた儀式(因習)で力を蓄えるなどができると考えられる。
成功
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