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海外遠征を阻止して帰還に協力せよ

#アリスラビリンス #西のラスボス『アイスエイジクイーン』 #チャンピオン・スマッシャー


(これまでのあらすじ)
 アリスラビリンスで暗躍していた幹部猟書家チャンピオン・スマッシャーだが、仕えるべき【鉤爪の男】や【ブックドミネーター】も今は亡く、猟書家としての使命がほぼ消滅した現在、今は自らに課した新たな使命に燃えていた。それはアスリートアースに渡り、デスリング総統を倒して自らが新たなプロレス・フォーミュラとなる事。折しもそのアスリートアースからアリスラビリンスに別のフォーミュラが来て、また戻っていったという事があったばかりである。それをヒントにアスリートアースに渡らんとしたチャンピオンの野望は猟兵によって阻止されたが……。

●よもや連戦になるとは筆者も予想していなかった
『なんだと!?』
 今回のチャンピオンはしぶとかった。
『トライアスロン・フォーミュラの他にこの世界アリスラビリンスに渡った強者がいるだと!?』
 たまたまシメて強制的に弟子にしたオウガからそれを聞かされては、チャンピオンがそれに興味を示さないはずがなかった。
『早速向かうぞ!』
 チャンピオンの目的はふたつ。ひとつはアスリートアースに渡るヒントを得る事。もうひとつは強者と戦い倒す事で自らを鍛え上げ、デスリング総統を超える力を得て来たるべき決戦に備える事であった。

「なんとチャンピオンくんは今度はアイスエイジクイーンちゃんの所に向かうというのだ!」
 つい先日やっつけたばかりのチャンピオン・スマッシャーとの再戦があまりに早く訪れた事に、大豪傑・麗刃(26歳児・f01156)もちょっとうんざりしたような顔をしていた。
「ただこれはある意味チャンスなのだ。これを利用して、アイスエイジクイーンちゃんがデビルキングワールドに戻る事に協力してほしいのだ!」
 現在アイスエイジクイーンはアリスラビリンスのとある世界で部下となる『四天王』を集めている。その『四天王』が強敵と戦う事で、アイスエイジクイーンは『悪魔インク』を得る事ができるのだという。で、その悪魔インクを使い『悪魔契約書』を書く事でデビルキングワールドに戻る事ができるらしいと。

 具体的な流れはこんな感じになる。
 まずはアイスエイジクイーンの『四天王』になるための試験を受ける事。具体的には模擬戦を行ってもらうらしい。この時重要なのは実力もだが、それよりも『四天王しぐさ』らしい。それっぽい言動を行いながら戦えば大きなアピールとなるだろう。なおアイスエイジクイーンは四天王だから四人でなくてはならないという言葉遊びには興味はないらしく何人いてもいいらしい。
 その後はチャンピオンの弟子、チャンピオン・スマッシャーと連続で撃破すればOKだ。この時も『四天王しぐさ』にこだわる事が重要だというのだ。

「……え?『四天王しぐさ』とは何かって?」
 麗刃、小考……そして。
「四天王のなんたるかを知ってんのう?」

 ……。

「ま、まあ、あれだ!わたしがいろいろ言ってみんなの想像力を止めてしまうのもアレなのだ!悪いけど似たような依頼いっぱいあるらしいから各自で調べてほしいのだ!」
 投げっぱなしやがった。まー、フィクションの幹部クラスにもいろいろいるよね。強そうなの弱そうなの、堂々たるのセコそうなの、他の幹部を信頼してるの出し抜こうとしてるの、それこそいろいろ。そういうのっぽい仕草をすればいいんじゃあないかな。たぶん。
「つーことで頼んだ!」
 まあ、これもアイスエイジクイーンを元の世界に戻すためである。猟兵たちはアリスラビリンスに向かうのであった。


らあめそまそ
 よもやのチャンピオン・スマッシャー立て続け。らあめそまそです。
 アイスエイジクイーン帰還シナリオをお送りいたします。相手はチャンピオン・スマッシャーとその弟子なのでプロレスにこだわりますが、猟兵側としては今回こだわるべきは『四天王しぐさ』でありプロレスではございません。プロレスをやってくれればチャンピオンと筆者は喜びますが。念のため、第2・3章からの途中参加であっても第1章の試験はクリアした事になっておりますのでご安心ください。
 それでは皆様のご参加をお待ちしております。
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第1章 冒険 『アイス怪獣襲来』

POW   :    力技で食い止める

SPD   :    トラップを仕掛けておびき寄せる

WIZ   :    怪獣の弱点や対策を練る

👑7
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●所詮奴は一番の小者ってセリフは有名ですね
 アリスラビリンスの小世界にて。
「おーっほっほっほっほ!」
 氷の城の玉座で高笑いをするは西のラスボスにして魔界随一の(ニセ)高飛車、アイスエイジクイーンその人であった。
「さあ!わたくしの四天王になってくださるのはどなたかしら?」

 はっきり言ってアイスエイジクイーンは超強い。なにせただでさえ強いデビルキングワールド住人の中でも指折りの強者なので当然だ。しかし今回はクイーン自ら戦うわけにいかない。なので猟兵が臨時の『四天王』として代わりに戦わなくてはいけないと。
 で、どうやら採用試験は実技試験をもって行われるようだ。アリスラビリンスの住人たちがクイーンのために準備した冷凍怪獣と戦い実力を見せなければならない。怪獣はその巨体から繰り出される爪牙や尾による攻撃にくわえて氷のブレスも使ってくる。まあ熟練した猟兵ならばそれほど苦戦する相手ではないが、重要な事は別にある。

 繰り返すが『四天王しぐさ』だ。

 いかにクイーンの部下、それも幹部ぽく戦うか。そこに重点を置けば採用への道は近いだろう。なので、その、なんだ。ご健闘をお祈りしております。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
「四天王らしい仕草」です?
そういえば、『封神演義』の魔家四将は、封神後に仏教の四天王になった、というお話が有りましたねぇ。
この方法は如何でしょう?

露出度の高いチャイナドレスを着用、『FTS』から『琵琶』を取出して所持しまして。
『琵琶』をかき鳴らすと共に【崇卓】を発動、戦場全域に『炎の竜巻』という『現象』を引き起こしますねぇ。
『冷凍怪獣』なら『ブレス』を『風』で吹き散らしつつ『炎』で炙れば対処可能でしょう。

実際は演奏と『現象』は無関係とは言え、魔家四将の一人、魔礼海さんの『碧玉琵琶』の演出を再現してみたわけですが。
四天王に「お色気担当の女性」がいるパターン含めて、何とか?



●あくまで原作版なので合体もしない
 夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)はアイスエイジクイーンのもとで四天王をやるのはこれが2回目らしい。しかし1回目の依頼は……現時点でまだ継続中らしいけど、なかなかすごい感じなようで。ああいうシナリオやりたいけど筆者の実力じゃ無理だなあとか
「そういうのはよろしいですから」
 ……と。ともあれ一度挑戦した四天王しぐさだ。その時だってうまくいったわけだから、同じ事をやったとしても誰も文句は言わないだろうが、どうにも猟兵しぐさとして似たような状況であっても同じ行動は避けた方がいいという不文律が存在するらしく……いや本当にそんなのがあるかどうか不明だが、ともあれるこるは前回とは違う手段をとることにしたようだ。

「なるほどなるほど」
 アイスエイジクイーンの前に現れたるこるの恰好は、普段の和服めいた格好とはうってかわってのチャイナドレスであった。ただし露出度に関してはいつもとあんまり変わらない感じである。そしてその手に握られていたのは琵琶だ。
「たしかにお色気担当枠も四天王には必要ですわね!」
 どうやらアイスエイジクイーンはるこるの意図をある程度は把握してくれたようだ。ただし服装の方はわかっていても、さすがに琵琶についてはちょっとわからなかったらしい。まあ、ちょっと封神武侠界あたりの知識が関わってくるのでこれは仕方のないところであるが。見た目はクリアしたらしい。だが試験はそれだけではない。
「それでどうやって敵を倒すのかを見せていただきますわ!」
「ではお見せいたしますねえ」
 改めてるこるは冷凍怪獣に対峙した。そして琵琶をかき鳴らしつつユーベルコード【崇卓】を発動すると、たちまちあたりに炎の竜巻が巻き起こった。これは封神演義に登場する魔家四将のひとり魔礼海の持つ『碧玉琵琶』の再現だそうな。某マンガ版だと聞く者の精神に働きかけて自在に操るものだったが、原作版だとるこるがやったように周囲一帯を風と炎で包むものであったらしい。また原作版で魔家四将が封神された後に仏教の四天王になったらしいというのも込みで……さすがにここまで来るとアイスエイジクイーンに理解されなくてもまあ仕方ないか。なお炎の竜巻はあくまで【崇卓】の効果であり琵琶は全く関係なく見た目だけだったらしいが、まあそんな事とは関係なく冷凍怪獣は氷のブレスも炎の竜巻で防がれ、そのまま炎で焼かれて溶けていったのだった。
「あっぱれですわ!お~っほっほっほ!」
 見事な戦いぶりに高笑いで応えるアイスエイジクイーン。どうやらるこるは試験を突破したようだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィルデ・ローゼ
『四天王しぐさ』ねぇ……こういうのはいかがかしら?

普段めったに使わない(プロレスやってたし)棘鞭「クィーン・オブ・ソーン」を取り出して、怪獣を打ち据えるわね。UCを使って縛り上げたら、わざと「痛いけど急所ではない」ダメージに響かない箇所を狙うわ。

四天王強者の余裕」ということで、頭や顎をナデナデしてあげたり、床を叩いて派手に音を出したりして、真剣には戦わない、悪の女幹部って感じを演出するわ。普段よりちょっと色気を出すことを意識するわね。



●女王様の部下に女王様がいても良い
「『四天王しぐさ』ねぇ……」
 ヴィルデ・ローゼ(苦痛の巫女・f36020)にとってもなかなか頭を悩ませる課題のようであった。で、考えた末の結論はといえば。
「……こういうのはいかがかしら?」

「よもやお色気枠が続くとは思ってもみなかったですわ」
 いつもの恰好で現れたヴィルデをアイスエイジクイーンはそう評した。たしかにまあ、つい先程出たばかりの猟兵と比較すると、微妙に方向性に違いあるような気がしなくもないが、豊満体形の露出多めという点ではかぶっていると言われても仕方がない面もある。
「まあそういうこともありますわね」
 だがそのことはさほどアイスエイジクイーンの評価には影響はなさそうであった。四天王が4人でなくてもよいのと同様にキャラかぶりだってあったって良いだろう。意識的にやったわけではないだろうし。ただ結論から先に言えば、やはりキャラはまるかぶりではなかった。
「おーっほっほっほっほ!」
 アイスエイジクイーンを思わせるような高笑いとともに冷凍怪獣と相対したヴィルデの手には真っ赤な棘鞭QUEEN of THORNが握られていた。ここ最近はプロレスシナリオばかりに参加していたので使う機会こそなかったが、確かにイラストにも明記されているものだ。普段はどちらかといえば格好に似合わず(失礼)わりとおっとりとしている感じのヴィルデであったが、鞭を持たせてこの恰好させたらまさにあれだ。女王様。
「可愛い子犬ちゃんね、可愛がってあげるわ」
 襲い来る冷凍怪獣に対してヴィルデが鞭が一閃させると、たちまち怪獣は鞭から放たれた無数の無数の荊の蔓で拘束された。だが暴れる怪獣にすぐさまとどめを刺す事はせず、致命的ではないが痛覚に響く場所ばかりを狙って鞭で打ち据えた。
「ケダモノの分際で私に逆らうのは兆億百千万年早いわよっ!」
 たまに頭や顎をナデナデしてあげたり、床を叩いて派手に音を出したりするのは『四天王強者の余裕』を見せる意味もあるらしい。飴と鞭の前に怪獣は完全にKOだ。なるほどたしかに先の猟兵とは色気的な意味では共通しているが結果としては差別化はできている……が。
「……今度はわたくしとかぶってる感がありますわね」
 とはアイスエイジクイーンの談。実はアイスエイジクイーンも気が付いていなかったのだが、ヴィルデはどちらかといえばM傾向の方が強いらしく、結果としてともに『ニセ』高飛車になってしまっているという点でも似てしまったのはなんという皮肉か。まあそれでも強かったし、そういうキャラがいても良いだろうと、合格にはなったようだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

有坂・紗良
アドリブ絡み諸々歓迎

四天王っぽい仕草かぁ…
そういう人らって手下を率いて戦ってるイメージあるんスよね
んじゃあボクもそういう感じでいきますか

ボクのUCなら配下のドローンをバァーっと良い感じに出せるっス!
後はそいつらを突っ込ませて、冷凍怪獣なんて爆破の力で全部吹っ飛ばしてやるっス!
率いてるボクはその後ろでふんぞり返って偉そうにすればほーらそれっぽい!これぞ幹部の四天王っぽさっス!

クックック…その程度の相手なんぞボクが直接出向かずともこれで十分っスよ…
……迫力出てるっスかね?語尾で台無しになってない?大丈夫?



●ロールプレイって難しいよね
「四天王っぽい仕草かぁ……」
 有坂・紗良(天性のトリガーハッピー人間・f42661)は現在はフリーランスとして動いており、組織というものには縁がないようである。かつてどうだったかはわからないが。ともあれ四天王しぐさについてはグリモア猟兵がノーヒントだったという事もあり、いろいろ頭を悩ませたようだ。で、出た結論は。
「そういう人らって手下を率いて戦ってるイメージあるんスよね」
 なるほど。確かに四天王しぐさといえば個人の言動について考える人は多いが、言われてみれば幹部クラス、それも最高幹部だから当然部下はたくさんいるだろう。自らが戦うなんて本当に最終局面なわけで。このあたりはもしかしたら紗良の幼少時代の記憶も関係あったりなかったりするのかもしれないがまあ推測でしかない。
「んじゃあボクもそういう感じでいきますか」

 ということで早速アイスエイジクイーンの御前にて冷凍怪獣と対峙した紗良。
「早速わたくしに実力を見せてくださいませ!」
「クックック……」
 女王らしく偉そうに振る舞うアイスエイジクイーンに対し、紗良は幹部っぽい余裕を見せた笑いで応じた。
「その程度の相手なんぞボクが直接出向かずともこれで十分っスよ…」
 迫力を出したつもりだったが、その後で気が付いてしまった。
(……語尾で台無しになってない?大丈夫?)
 確かに『っス』口調は下っ端っぽい。このあたりは経験不足や現状が出てしまったのかもしれない。しかしなんとか動揺を表情に出す事はせずに済んだ。あとは自身の考える幹部の四天王っぽい戦い方を見せるだけだ。
「行くっスよ!数の暴力っス!」
 紗良はユーベルコード【特攻小隊出撃SWARM TEAM ROLLOUT】を発動し、自立ドローン部隊を「パァーっと良い感じに」召喚した。その数実に154体。小型機でもこれだけ数がいればなかなか壮観な光景だ。で、自分は偉そうに後方でふんぞり返りながらドローンを一斉に突っ込ませた。冷凍怪獣はブレスを吐き爪を振るいして雲霞の如く迫りくるドローンを次々と撃墜していくが、さすがに数が圧倒的すぎたようだ。
「とどめッス!」
 そして紗良の命令で大量のドローンは一斉に自爆。この大爆発の中ではさしもの冷凍怪獣ももはや原形を保つ事はできなかったようだ。なおドローンはすこーし値が張るらしいし、これだけの数となるとちょっと考えたくない要素も出てくるが、まあ勝てば良いのである。
「クックック…やっぱりボクが出るまでもなかったっスね」
「結局語尾はそのままだったですわね」
 しっかりチェックは入れつつも、これもまた個性と合格は出すアイスエイジクイーンであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

高崎・カント
もっきゅ! きゅぴぴもきゅー!
四天王! ゲームで見たことがあるのです
カントにお任せなのです!

四天王なら属性がある方が良いのです
カントはもちろんでんきタイプなのです

ゆーいっちゃんに指示を出してもらって、雰囲気作りをするのです
「カント君、パチパチ火花~!」
「もきゅー!」
こうやっていると使役ゴースト時代を思い出すのです
ゆーいっちゃんの応援を受けてやる気いっぱいなのです!
たとえ火の中水の中、氷のブレスもへっちゃらなのです!

「カント君、回り込んで攻撃だよ~♪」
足元をくぐり抜け、背後からフルパワーでパチパチしちゃうのです
氷を溶かしたら水になる、そして水は電気を通すので弱点なのです
もっきゅぴー!!



●あの子のスカートの中はもはや時代に合わない
「もっきゅ! きゅぴぴもきゅー!」
 四天王しぐさと聞いてカントは自信ありげに胸を張った。
「ゲームで見たことがあるのです!カントにお任せなのです!」
 さて四天王の出てくるゲームはいろいろあるわけだが、カントは参考にしたのはいったい何であろうか。

「……これはどういうことかしら?」
 現れたカントの姿に、さすがのアイスエイジクイーンもちょっと戸惑っているようだ。魔界屈指のニセ高飛車として高圧的な笑顔こそ崩していないものの、その頭上にはいくつものクエスチョンマークが。というのも。
「カント君!君に決めた!」
「もっきゅー!」
 試験を受けているのがモーラットの方であるのは確かだ。だが四天王候補であるカントは後方の人間の命令を受けて動いているように見える。いや、よく見たら人間は幻影ぽいのだが。つまり命令されているというていであろうか。四天王が命令されるのか……わたくし以外の奴に。だがカントには考えあってのことであった。
「カント君、パチパチ火花~!」
「もきゅー!」
 相対する冷凍怪獣に火花を飛ばしながらカントは感慨にふけっていた。
(懐かしいのです、こうやっていると使役ゴースト時代を思い出すのです)
 モーラットであるカントはかつて銀誓館で戦っていた時にはこうして命令されていたものであった。すなわち後ろにいる幻影の姿は今なお最愛の人であり続ける相手ゆーいっちゃんに他ならないと。
(ゆーいっちゃんの応援を受けてやる気いっぱいなのです!たとえ火の中水の中、氷のブレスもへっちゃらなのです!カントはもちろんでんきタイプなのです!)
 なるほどそっちの四天王ですか。ちなみに調べたところ、歴代の四天王の中にでんき使いはまだ現れていないようで。で、一方の怪獣も火花を受けながらもいまだに元気イッパイでふぶきならぬ氷のブレスを飛ばす。ということは初代赤緑のようにこおり単独タイプが存在せずみずとの複合型という事なのだろうか。
「カント君、回り込んで攻撃だよ~♪」
「もっきゅー!」
 カントは幻影のゆーいっちゃんの指示に従い、冷凍ブレスを回避しつつ怪獣の足元を潜り抜けると、背後から全力のパチパチを飛ばした。
(氷を溶かしたら水になるのです!そして水は電気を通すので弱点なのです!)
 こうかはばつぐんだ!2倍ダメージにはさすがの冷凍怪獣もたまらない。てきの れいとうかいじゅうは たおれた!カントの言う通り氷がとけたのか、最初からみずこおり属性だったのかは……
「どっちだっていいですわそんなの」
 とりあえず世界初のでんき系の四天王というカントの主張を、どうやらアイスエイジクイーンは認めてくれたようではあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニコリネ・ユーリカ
ほほほ、デンマーク四天王(自称)の私には造作も無いこと
世界的に有名な①ブロック玩具と②ビール、③スモーブローを手土産に謁見に臨みましょ
あと一つ足りない?
私よ私!
アンデルセン童話に登場する④人魚!
UCで人魚に変身し、恭しく尾鰭でカーテシーをしてご挨拶
コペンハーゲンにある像は世界三大ガッカリとか言われてるけど
私なら満足させてあげられる

さぁ冷凍怪獣さん、かかってこーい
腕試しにピッタリよ、と四天王らしい高慢さで近接攻撃を煽る
795km/hまで出るスピードを自在に操り
タッチできるかできないかの距離で引き付けながら
ギリギリのタイミングで進路を変えて別の怪獣へゴチーン!
四天王の力、思い知るがいいわ!(くわっ



●他にあるかと考えたけど出てこなかった
「ほほほ、デンマーク四天王の私には造作も無いこと!」
 豪語しつつアイスエイジクイーンの前に現れたのはニコリネ・ユーリカ(花屋・f02123)。その手には手土産として3つの物が握られていた。
「デンマークですって?」
 むろんデビルキングワールド住人のアイスエイジクイーンはアース世界の国名などは知らないが、そこはさすがに7thKING候補でもあった最強ラスボスの一角である。すぐさまニコリネの持つ手土産3つがデンマーク四天王のうち3つである事を悟ったようだ。で、その内容だがまずはあの有名な組み立てブロック。実はかつて筆者のシナリオで実名出た事はあるのだが今回は伏せよう。次にビール。ビール大国といえばドイツやアメリカ、オランダ等を思い浮かべる人が多いかもしれないが、一説によればデンマークのビールの歴史は5000年と言われ、カールスバーグやツボルグ等の有名ブランドもある。そしてスモーブロー。オープンサンドイッチの一種だが、パンの上に乗った具材の量の多さが特徴で、ナイフとフォークで食べるそうな……が。ここでアイスエイジクイーンが疑問を投げかけた。
「四天王と言いましたが、出されたのは3つだけですわね?あとひとつは?」
「足りないと思ったかしら?私よ私!」
 むろんニコリネはちゃんと回答を用意していた。まさに最初に言った通りである。ジャンプするとたちまちその下半身が魚の尾びれと化した。デンマークで人魚といえばアンデルセン。そしてニコリネは着地とともに恭しくカーテシー(よくスカートの裾つまんで広げながらやるアレだ)を決めてみせた。ちなみに世界三大がっかりと呼ばれるアレは場所の問題もあるらしいので、こういう華やかな場にたたずむ人魚はガッカリとはほど遠いものと言えるかもしれない。
 で、実技の方だが。
「さぁ冷凍怪獣さん、かかってこーい!腕試しにピッタリよ!」
 このあたりのウエメセな感じは四天王を意識しているようだ。挑発された事に気が付いたかは定かではないが、ともあれ冷凍怪獣はニコリネに襲い掛かってくる。でニコリネは真っ向から立ち向かう……と思いきや、逃げた。海のように空を泳ぐ姿はなかなか優雅かもしれない。
「遅いわねえ、早く来なさーい!」
 冷凍怪獣、迷う事なく追いかけてくる。ニコリネはつかず離れずの距離を保ちつつ、ひたすら逃げた。絶妙な距離感にさすがの怪獣もじれてきたのか、さらに速度を上げた……ところで。ニコリネは真横に移動。怪獣は急には止まれない。その方向には別の怪獣。あわれ正面衝突した怪獣は2体撃沈。
「四天王の力、思い知るがいいわ!」
 ニコリネはキメ顔で言い放った。で、アイスエイジクイーンはといえば。
「まあ、人魚がひとりぐらいいてもいいかもですわね、おみやもいただいた事ですし」
 ビールでスモーブローを流し込みながら満足気な顔をしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リカルド・マスケラス
「正体不明系の四天王はいかがっすかー?」
現地住人(愉快な仲間なり時計うさぎなり)の体を借りて登場の狐のお面
「顔を隠したミステリアスな佇まい。こう言うのも良くないっすか?」
口調がミステリアス感ぶち壊しだが、ちょっと道化っぽい仕草でカバーできるかな?
冷凍怪獣には、のらりくらり攻撃を避けつつ、隙を見て空中へ【怪力】を乗せて蹴り上げ、
「流石にでかいんで、こいつも使うっすね」
【念動力】【ロープワーク】で鎖鎌をじゃらじゃらと出させて受け身を取れないように【捕縛】してそのままUCで叩き落とす
「お眼鏡に適ったっすかねー?」
ちょっとちゃめっ気出しながら、そんなことを言ってみる



●しかしてその実体は
「正体不明系の四天王はいかがっすかー?」
 リカルド・マスケラス(希望の仮面マスカレイド・f12160)の第一声を聞き、アイスエイジクイーンは。
「あら3度目……ですわよね?でも試験受けるのは今回が初めてですの?」
「いやっすねー、ちゃんとこれまでも受けたっすよ」
「……いやですわ、わたくしとしたことがすっかり忘れていましたわ、ほーっほっほっほ」
 うん。たぶん当シナリオと一緒で途中参加であってもちゃんと試験受けて通った扱いなのだろう。たぶんね。で、女王の城にはアイスエイジクイーンのカリスマに惹かれた愉快な仲間たちがいっぱいいて、この城だったり今回の試験に使う怪獣だったりの製造に関わっているわけだが、今回リカルドはそんな愉快な仲間たちのひとりの体を借りていた。
「たしかこの間も正体不明系って名乗ってましたけど今回は自前で用意したのですわね」
「さすがに試験で女王様の体を借りるのもアレっすからね」
 そういや前回はそんな感じで戦ったんでしたっけ。今回の『本番』はどうするかはまた先の楽しみとして、ひとまずはリカルド自身の力で戦う事にしたらしい。
「顔を隠したミステリアスな佇まい。こう言うのも良くないっすか?」
「隠してるんだか丸出しなんだか微妙な所ですが、たしかに謎の仮面はアリですわね」
 こういうのって正体が勇者の父とか兄とかそんな感じの血縁多いよね。まあさすがに今回に限ってはその線はありえないわけだけど。そんなような事をアイスエイジクイーンは考えたとかどうとか。

 ともあれ冷凍怪獣と対峙したリカルド。体を貸している愉快な仲間としては、結果として自分で作った怪獣を自分で破壊する事になってしまったわけだが、まあもともと試験の結果破壊されるものだからそこまでこだわりもないか。
「うーん、さすがにでかいっすね」
 あんまりまともにはやりたくない。なのでリカルドはまず回避に徹した。怪獣の苛烈だが大振りな爪や尾による攻撃をかわし、冷凍ブレスも回避する。さすがに怪獣もじれてきたのか、大きな口を開けて直接噛みつきにきた。
「好機っす!」
 口から突っ込んできた怪獣に蹴りを合わせるリカルド。その右足が怪獣の顎をまともにとらえ、そのまま巨体が宙を舞った。本来そのまま自らも宙に飛んで投げ落とすところを、念を入れて鎖鎌を投げつけ空中で拘束した上で、改めて飛んだ。
「これで仕上げっす!」
 空中で身動きの取れない相手に組み付くと、そのまま相手を頭から地面に叩き落とす大技【猛狐落火勢BLAZING FOX】だ。さすがの怪獣も位置エネルギーの暴力と受け身を取れない姿勢の前にはなすすべもなく一撃で破壊された。
「お眼鏡に適ったっすかねー?」
 ミステリアスさと口調のアンバランスなのはリカルド本人もちょっと気にしたようだが、まあそれはそれでいろいろ隠してる感が出なくもないとのアイスエイジクイーンの判断だったようだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ボクサーバニー』

POW   :    サンドバッグコンボ
攻撃が命中した対象に【ウサギ型の痣】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【次々と現れる仲間達のパンチ】による追加攻撃を与え続ける。
SPD   :    ダーティサプライズブロー
レベルm半径内の、自分に気づいていない敵を【異空間からの奇襲によるパンチ】で攻撃する際、ほぼ必ず狙った部位に命中する。
WIZ   :    ハニートラップカウンター
【挑発】を披露した指定の全対象に【無防備にこちらへ近づきたいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
👑11
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●必然の流れ
 かくして新たな四天王が誕生した……まさにその時。
『たのもー!』
 チャンピオン・スマッシャーが弟子たちを率いて攻め込んできたのだ。
『貴様は異世界に渡る手段を持っているそうだな!それを渡してもらおうか!』
「たしかにありますけど、あなたごときに使いこなせるようなものではありませんわおーっほっほっほっほ!」
 世界間移動に使う悪魔契約書はまだ未完成なので悪魔が使っても危険な上に、そも悪魔以外が使えるのかどうかもわからない、そんな不安定な物は危険すぎて使わせるわけにはいかない……アイスエイジクイーンの意図は、だが伝わる事がなかった。
『ならば力づくでもらっていくまでよ!私と勝負だ!』
「わたくしと戦うなんて兆億百千万年早いですわ!その前にわたくしの四天王を相手にすることですわね!」
『おもしろい!そういうことなら、そちらこそいきなり私と戦えると思うな!私が手塩にかけて育てた弟子たちに勝てたら私への挑戦権をくれてやろうではないか!』
 と、いうわけで猟兵たちが全く話に加われないままに戦いが決まってしまった。まあアイスエイジクイーンに代わって戦うのは今回の依頼だから、どうあがいてもこうなる流れは変えられなかったんだけど。

 ともあれ。
 チャンピオン・スマッシャーの弟子である【ボクサーバニー】たちは時計ウサギのウサギ穴に似た能力と暴力行為の合わせ技で戦うオウガだったが、たまたまチャンピオンに遭遇してケンカを売った結果返り討ちにあい弟子にさせられたらしい。その能力は以下の3種類だ。
【サンドバッグコンボ】は一度攻撃を命中させた相手にウサギ穴で仲間を送り込んで集団攻撃を加えるというものだ。1対1というプロレスの原則には反しまくっているが、まあヒールなので仕方がないか。
【ダーティサプライズブロー】は闇討ちだ。相手の死角にウサギ穴を開ける事で思わぬ方向からの攻撃を当てる事ができるという。プロレスでは反則なパンチだが、まあヒールなので仕方がないか(2回目)。
【ハニートラップカウンター】は挑発だ。あまりに巧妙な挑発は普段冷静な者や感情のない者ですら無防備な姿を晒してしまい相手の致命的な攻撃を受けてしまうだろう。まあヒールなので仕方がないか(3回目)。

 ともあれ、チャンピオン・スマッシャーの弟子ではあるが『手塩にかけた』という割には訓練期間の短さがゆえにプロレスというよりストリートファイト的な試合になりそうである。繰り返すが重要なのは戦術もだが、それと同じくらいに【四天王しぐさ】だ。いずれにせよオードブルはさくっと平らげ、チャンピオン戦に備えようではないか。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
……未完成品悪魔契約書を渡して、転移失敗で空間の狭間に放逐しては?

さて、改めてお相手致しますねぇ。
服装はそのまま『FAS』で飛行、『FLS』で『FPS』を召喚しバニーさんの行動を把握しまして。
【搾薢】を発動し『蔓』を形成、半数を私の周囲に纏って接近を防ぎ、半数をバニーさんに差し向けますねぇ。
纏う『蔓』は『白鼠』の様な形状に、そこから攻撃用の『蔓』が触手の様に生えた形状にし、魔家四将の一人魔礼寿さんの『花狐貂』を再現しましょう。
『蔓』に触れれば『拘束』から『存在吸収』が行われる以上、此方に【コンボ】を当てる為の接触は極めて困難、初撃を防げば[追撃]は有りませんので。



●まあ容赦する必要ない相手ではある
 戦いに突入するにあたり、夢ヶ枝・るこるはなかなか外道な事を口にしていた。
「……未完成品を渡して、転移失敗で空間の狭間に放逐しては?」
「ダメですわそんなの、ちゃんと完成させた上でわたくしが帰るのに使うのですから!」
「やはりそうですかぁ」
 当然のようにアイスエイジクイーンには却下された。たぶんるこるも却下がわかりきっていたとは思うので気にはしてないだろう。そういえば契約書って一回きりの使い捨てだったか何度でも再利用可能だったかよくわからないが、使い捨てなら当然チャンピオン・スマッシャーに使わせるわけにいかないし、再利用可能だったとしても……もしかしたら魔界屈指のニセ高飛車であるアイスエイジクイーンの事である。絶対に口にはしないだろうが、そんな事になったらかわいそうじゃないぐらい思ったかもしれない。まあ結局は倒さなきゃいけないわけだけど。

 ともあれ四天王の先鋒としてリングに立ったるこる……
『おい!この野郎!』
 早速対戦相手のボクサーバニーA(以下A)からクレームが入った。
『リングに立ったとか言って、立ってねえじゃねえか!』
 可愛い顔によらずずいぶん口は悪い。さすがは暴力好きなウサギだ。そう、るこるはいつものようにエネルギー翼を広げて宙を舞い、Aの頭上を取っているのである。近接戦主体の相手に対するるこるの定番の手段だ。
『おい!殴り合いだろ!降りてきやがれ!』
「別に殴り合いしなければいけない理由もありませんからねえ」
 そうなのである。ただでさえプロレス回でもプロレスをしないことに定評のあるるこる、特に今回はプロレスよりも四天王しぐさの方が重要と書いた気がしないでもないので、いつも以上に格闘技にこだわる必要がないのだ。だがいつもと違うのは相手も一緒だった。
『ちっ!まあそれならそれでいいけどな!こっちから行ってやるぜ!』
 ならばウサギ穴を使ってるこるの近くまで転移するだけである。一撃さえ当てればあとは次々にウサギ穴を呼び出して空中にいながらフクロにすればよい……そんなAの思考に気付いたか、るこるもユーベルコードを発動する。
「大いなる豊饒の女神、あなたの使徒に『魔樹の加護』をお与え下さいませ」
 その名は【搾薢】といった。薢は萆薢、オニドコロという植物であろう。読みの『シュウダツノカズラ』は『収奪の蔓』か。そしてるこるの周囲に160本の白色の蔓が出現した。るこるはそのうち半分を自分の周囲に纏わせ、それを変形させて白鼠のような形を作った。これは先刻るこるが参考にした封神演義の魔家四将のひとり魔礼寿が使う『花狐貂』の再現らしい。なるほどこれが四天王要素。マンガ版では巨大な鯨みたいな形だったよね。で、残り半分はAに向かわせた。
『なんだそんな気持ち悪いのは!ぶん殴ってやるぞ!』
 Aは次々に襲い来る蔓に連続してパンチを食らわせた。一度食らわせさえすればその蔓は仲間たちと共同で破壊できる。が、蔓は次から次へと襲ってくる。なにせ80本だ。これではきりがない。
『ええいめんどくせえ!今からそっちに行ってやる!』
 業を煮やしたAはウサギ穴を開いてるこるの近くにワープした。これでまずは白鼠を破壊し、しかるのちにるこるを叩くつもりだった……が。
「なるほどパワーとスピードはかなりのものですが、これはかわせますかねえ」
『!?な、なんだこいつは気色悪……』
 白鼠から触手のように大量に生えた蔓にはさすがのAも圧倒された。それでもなんとかパンチを繰り出すも、80本分の蔓で作られた白鼠から次々に繰り出される蔓には抵抗できるものではなく、ついに拘束された。そして抵抗する間もなく吸収されたのであった……なんか最初に述べた、未完成の悪魔契約書をチャンピオン・スマッシャーが使った時もこんな感じになるのだろうか、とかふと。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リカルド・マスケラス
「可愛いバニーちゃん相手が気が引けるっすねー。そうだ、ここから一歩も動かないで相手してあげるっすよ」
などと余裕ぶる四天王しぐさをしてみる
あえて攻撃を受け、次々と仲間が召喚される中、追加攻撃を受ける直前に【影魔人の術】で呼び出した魔人を影から出し、増殖した腕で【怪力】【グラップル】【捕縛】。魔人の両肩それぞれにカナディアンバックブリーカーをしたり、魔人の膝にケブラドーラコンヒーロで叩きつけたり、スリーパーホールドで締め上げたりと同時に技をかけまくって迎撃
悠然と立って言い放つ
「さながら、魔人のデコレーションツリーって所っすかね。先に仲間を呼んだのはそっち。こっちも仲間を呼んで文句はないっすよね?」



●でかいやつは強い
『おのれよくもAを!』
 仲間のカタキを取らんと勢い込んでボクサーバニーBがリングに突入してきた。それを迎え撃つは引き続き愉快な仲間の身体を借りたリカルド・マスケラスであった。
「可愛いバニーちゃん相手が気が引けるっすねー」
 先刻はミステリアス路線をやろうとしていたリカルドだったが、生来のちょっとチャラめな口調を演技で隠さずそのままだったと。で、結局口調はそのままで行く事にしたそうだ。軽薄で女好きなだらしない素を隠そうともせず、よりにもよって対戦相手のBにそれをそのままぶつけた結果。
『なんだテメエケンカ売ってるのか?』
 残念ながら確かに見た目は可愛いが色気よりも血の気を重視しているらしいBにはあっさり拒絶されてしまった。まあさすがにリカルドとてオウガ相手にナンパする目的で声をかけたわけじゃあないだろうから痛痒はないだろう。それどころか。
「そうだ、ここから一歩も動かないで相手してあげるっすよ」
『何!?』
 さらに相手を怒らせるような事を言ったのだ。そして自分の周囲に円を描いた。
「ここから一歩でも足を出したら自分の負けでいいっすよ~」
 このあたりの余裕ぶりがリカルドなりの四天王しぐさということらしい。で、ただでさえ暴力大好きで血の気の多いBはさすがにこの物言いにはむちゃくちゃ頭に来たようだ。
『言ったな!吐いたツバ飲み込むんじゃねえぞ!』
 早速Bはウサギ穴を呼び出すとその中に潜り込んだ。対するリカルドは宣言通り動こうはしない。そんなリカルドの背後に黒い穴が出現したと思った次の瞬間、上半身を出したBがリカルドの後頭部にパンチを一撃くらわせた。
「痛っ!ってかウサギがラビットパンチとかいう冗談っすか!?」
『はんっ!いつまでそんな余裕ぶっこいてられるか?軽口叩けるのも今のうちだけだぜ!』
 余談だが後頭部のパンチの事をラビットパンチと呼ぶのは捕らえたウサギの最終処置として後頭部を殴る事が行われたことに由来するらしいので、ウサギはむしろラビットパンチをくらう側なのだが。ともあれ今の攻撃でリカルドの身体にはウサギ型の痣がつけられた。早速リカルドの周囲に複数のウサギ穴が開かれた。そこから現れた新手のボクサーバニーたちがリカルドをフクロにせんと次々に殺到してくる。リカルド危うし……
「こっちも仲間を呼んで文句はないっすよね?」
 追撃を受ける前にとリカルドもまたユーベルコード【忍法・影魔人の術】を発動させると、リカルド(正確には憑依対象の愉快な仲間か)の影が伸びると、身長5m前後はあると思われる巨大な漆黒の人影と化した。これにはBもびっくり。
『な、なんだそりゃ!卑怯だぞ!』
「先に仲間を呼んだのはそっちじゃあないっすか」
『え、ええい!数じゃこっちが勝ってるんだ!やっちまえ!』
 それでも退かないところはさすがはオウガの闘争本能である。早速2匹のボクサーバニーが同時にパンチを繰り出したが、パンチがリカルドに届く前に影魔人の両腕に2匹同時に捕まり、両肩それぞれでカナディアンバックブリーカーの要領で背骨折りをくらう羽目になった。
『くっ!だが所詮腕2本足2本だ!5人で同時にかかれば一発はやつに当たる!』
「なかなか賢いっすね、ただ惜しかったっすね~」
 そう。Bがまったく予測していなった事に、影魔人の腕は増えるのだ。たちまちボクサーバニーたちは次々に現れる伸縮増殖自在の腕に捕らえられ、あるいは膝に叩きつけられ、あるいは首を絞められ、次々にKOされていく。
「さながら、魔人のデコレーションツリーって所っすかね~」
『ち、ちくしょう!』
 悠然と立って言い放つリカルドを前にさすがのBとしても逃げたいのは山々だったがそんな事をしたらチャンピオンに何されるかわかったものではない。結局Bには無謀な突撃に出て玉砕する以外に道はなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

有坂・紗良
あの…ここまでやっといて言う事じゃないとは思ってるんスけど…
ボク格闘戦全然ダメなんスよ!チャカしか撃ってこなかったから!
ヤベーっスよ今更プロレスなんてやれる気しない…

ええい、なるようになる!
プロレスは出来ないけどヒールっぽさならやりようがある!どっちが真のヒールか勝負っス!

UCでスモークを展開!これで敵の挑発も見えないしボクの姿も外から見えなくなる!
見えないなら何したって構わないっスよね?ならお得意の『ハンドガン』で黙ってもらうだけっス

態度はわざわざ幹部が出てきました感を出して堂々してれば…
この程度の相手、ボクの手の内を見せる必要すらないっス…
……得物使ったのバレてないっスよね?信じるっスよ?



●競うな 持ち味をイカせッッ
『おらおらぁ!次はこうはいかねえぞ!次の奴出てきやがれ!』
 立て続けの敗北に、気合を入れてリングに上がってきたボクサーバニーCを遠目に見つつ、有坂・紗良は悩んでいた。
「あの…ここまでやっといて言う事じゃないとは思ってるんスけど……ボク格闘戦全然ダメなんスよ!チャカしか撃ってこなかったから!」
 なるほど。世の中ガンカタやらピストルカラテやらができる銃使いばかりではないというかそういう方が少数派だろう。正規の軍人さんだったら軍隊格闘技とか習わされるんだろうけど、紗良の境遇はそういうのとも違う感じだし。
「ヤベーっスよ今更プロレスなんてやれる気しない……」
 弱音を吐く紗良。確かに、相手がいかにも見た目プロレスラーで、実際プロレスやる気満々な敵が登場するシナリオは基本的にはプロレスやりたい人が来るだろうし、お出しする側もプロレスやってほしいなーな雰囲気を作りまくっている感じはある。まあ、ついさっきまったくプロレスやる気なかった猟兵は既にいたわけだが。さてどうしたものか。
「ええい、なるようになる!」
 意を決して紗良はCの待つリングに上がった。おお、どうやらプロレスをやってくれるようだ。
「プロレスは出来ないけどヒールっぽさならやりようがある!どっちが真のヒールか勝負っス!」

「くっくっく、わざわざこのボクが出てきてやったっスよ、ありがたく思うっス」
 四天王しぐさとして、幹部である自分が出てきたという事をアピールする紗良。
『なんかえらいのか三下なのかわからんやつが出てきたな』
 だがやはり口調にはツッコミが入ってしまった。まあ仕方ないね。
『まあなんでもいいか!いいからかかってきやがれ!』
「おう!いってやるっす!」
 そのまま互いににらみ合いとなる。そして……
『……おい、来やがれってのに』
「だからいってやるっすから」
 言いはしたけど紗良が行けないのは仕方がない。白兵戦できないからね。
『ええい!そっちから来るつもりがないならこっちから行ってやる!』
 しびれを切らしたCがウサギ穴を通って一気に紗良に接近し、パンチをくらわそうとしたが。
『逃げるなぁ!』
「に、逃げてるんじゃないっス、間合いを取ってるだけっス」
 あくまでアウトレンジを維持したい紗良は離れるばかりである。これではまったく戦いにならない。
『ええい!こうなったら嫌でも来たくしてやる!こっちを見ろ!』
「あ、これは……」
 前もって聞いていた奴だ。普段冷静な者どころか感情に乏しい者そも感情がない者にすら効果を及ぼすという恐るべき挑発の技【ハニートラップカウンター】。これをくらったら紗良は無防備のまま相手に近づいてしまい、必殺のパンチを受けてしまうだろう。だが紗良には対策があった。
「これでもくらうっス!」
 紗良は【電撃煙幕手榴弾ARCH SMOKE GRENADE】を投げつけた。たちまちリング上をもうもうと煙が多い、ふたりの姿を覆い隠す。
『な、なんだこいつは!卑怯な!』
「今っす!」
 煙によって紗良からはCの姿が見えない。当然挑発も見えないため引っかかる事はない。そして紗良の姿も外からは見えなくなった。ならば……紗良は愛用のCOMPACT.45を抜いた。大体の場所が分かれば、こっちが本業である紗良にはたやすい事であっただろう。

 煙幕が晴れた時、リング上には勝ち誇る紗良に完全にKOされたCの姿。
(……得物使ったのバレてないっスよね?信じるっスよ?)
 結局プロレスしてない事にちょっとビビる紗良であった、が。
「別にいいんじゃありませんの?重要なのは勝つ事ですわ」
 特にプロレスに対してこだわりもなさそうなアイスエイジクイーンはあっさりのたもうたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニコリネ・ユーリカ
アイスエイジクイーン様、ここはお任せを
四天王のニコリネがやっつけてみせましょう

鍛錬の浅いインスタント弟子なんてチョロイチョロイ
私のデンマーク・マーメイド・アタックでけちょんけちょんにグワーッ!
傲慢から生まれる油断で奇襲パンチを無様に喰らい
実はチョロかった四天王あるあるを体現すると同時
相手に「彼奴は四天王の中でも最弱」と思わせるわ

くっ、いいパンチ持ってるじゃない
今のは痛かったわよ!(涙目

初撃こそ気付かなかったしメチャいいとこに入ったけど、認識できればこっちのもの
ピースにした手を額に添えてビームを照射し、玩具のお人形にしちゃうわ

おほほ、可愛くなったものね
ポケット揺すって虐めてやりましょ(わるいかお



●たぶん起源は男塾
「アイスエイジクイーン様、ここはお任せを!四天王のニコリネがやっつけてみせましょう!」
「うむ!その心意気や由ですわ!見せていただきましょうかしらおーっほっほっほっほ!」
 激励を受け、アイスエイジクイーンの四天王にしてデンマーク四天王でもあるニコリネ・ユーリカは人魚姿のままリングに上がった。待ち構えるは当然ボクサーバニーDである。
『なんだぁ?陸に打ち上げられた魚の分際でウサギに盾突こうってか?』
 確かに普通に考えれば人魚の陸上適正は低そうである。かのアンデルセンの人魚姫からして、陸に上がる時には声を代償にして人間の2本足を得る事を余儀なくされたわけだし。一方でウサギの陸上適正は言うまでもあるまい。とはいえ基本ウサギは草食性。相手がネコ系だったら本当に天敵だっただけにまだしもやれなくもない部類と言えるかもしれないが。
「鍛錬の浅いインスタント弟子なんてチョロイチョロイ!」
 四天王らしく余裕のあるところを見せたニコリネ。実際チャンピオン本人と幾度もなく戦ってきたニコリネである。その弟子相手に後れを取る事などあってはならない。あるはずがないだろう。
「私のデンマーク・マーメイド・アタックでけちょんけちょんに」
『イヤーッ!』
「グワーッ!」
 なんと。口上を述べている間無防備だったのか、ウサギ穴を使って相手の死角に出現し回避困難な一撃をくらわすDの【ダーティサプライズブロー】を、ニコリネはまともにくらってしまった。
『なんだお前弱いじゃねえか!なにが四天王だ?あれか、所詮やつは我らの中で最弱っていうやつか?』
「くっ、いいパンチ持ってるじゃない!」
 傲慢から生まれる油断で手痛い一撃をくらってしまったニコリネ、涙目。Dからも容赦のない罵倒をくらう始末である。
「今のは痛かったわよ!」
 しかしこれも実はニコリネなりの四天王しぐさらしい。あれだ、「彼奴は四天王の中でも最弱」って四天王の誰かが死んだ時に残った四天王の誰かが言う言葉だよね。それをあえて敵に言わせるというなかなかの高騰テクニックだ。まあたしかに味方にはちょっと言いづらいかもしれないからね。
『ひゃひゃひゃ!ならもっと痛い目にあわせてやるぜぇ~!』
 完全にニコリネをなめたかかったDは再度のダーティサプライズブローを狙い、ウサギ穴に身を隠した。だが。
「初撃こそ気付かなかったしメチャいいとこに入ったけど、認識できればこっちのものよ!」
 そう。猟兵に同じ技は二度も通じぬ今やこれは常識!!ただそれはまったく無根拠なわけではない。猟兵は最初から相手の情報を伝えられ、しっかり対策を立てた上で依頼を受けるものである……例外なくはないけど。その対策が、ニコリネの場合は一度はくらってみる事だったわけで。そんなわけで、空中に現れたウサギ穴から出てきたDが見た物は無防備に背をさらすニコリネではなく、ピースにした手を額に添えてこちらを向いていたニコリネであった。
「Good boy!!ポッケの中でよーく遊んでねLeg godt!!」
 それはかの有名な組み立てブロックの語源となった言葉であった。あわれニコリネのミニフィグビームをまともに喰らったDは、まさに組み立てブロックのミニフィグ(顔と手先が黄色い人形といえばわかるでしょ)に姿を変えられ、そのままニコリネのポケットの中に収納されたのであった。
「おほほ、可愛くなったものね」
『な、なんだこれは、このやろう元に戻しやがれ』
「そんな悪い口をきく子はこうでちゅよ~」
 実にわるいかおをしたニコリネはポケットを揺すってDをさんざんいじめるのであった。猟兵を、四天王をなめてはいけない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

高崎・カント
四天王と言えばかっこいいバトルBGMなのです!
ゆーいっちゃんは昔はフリッカースペードだったのです
ギターがとっても上手なのです【UC使用】

『アイスエイジクイーン四天王のテーマ』
作詞・作曲 高崎優一
歌唱 高崎カント

(ギターソロの前奏)
もーもーもーもー♪(コーラス)

もきゅきゅー♪ もきゅきゅー♪
もきゅぴぴもきゅぴきゅぴーぴー♪
きゅぴぴー♪ きゅぴぴー♪
きゅぴるぴきゅぴもきゅぴーぴー♪
(ギターソロの間奏後、繰り返し)

人間語訳
雷鳴よ歌え 雷火よ踊れ
大いなる白き毛玉がやってくる
愛を謳い 生を賛える
何者にも染まらぬ純白のもふもふ

かっこいいBGMがあるとやる気が出るのです!
もきゅっと体当たりで攻撃なのです!



●俺の歌を聴け
「カント君!きみに決めた!」
「もっきゅー!」
 高崎・カントは先刻同様、高崎・優一(真モーラットの花嫁・b24417)に使役されるゴーストという形でリングに上がった。
『おいおい、戦うのはケモノの方か?』
 早速ボクサーバニーEの挑発がはじまった。
『男の方はペットの後ろに隠れて出てこねえつもりか?』
「もぎゅー!もきゅきゅぴー!」(訳:おまえなんかにゆーいっちゃんが出る必要なんかないのです!ゆーいっちゃんと戦う前にまずカントと戦うのです!)
 なお本来は猟兵なので普通に話は通じるのですが、今回は昔の使役ゴースト時代ぽくやる意味もあり、あえてモーラット語翻訳用アプリ『モラリンガル』を通してあります。
『おもしれぇ』
 Eはさらに凶悪な笑みを浮かべた。
『なんだったら嫌でも出てくるようにしてやるぜ!』
 相手を強引にリングに引きずり出すべく、Eは【ハニートラップカウンター】を発動させた。むろんゆーいっちゃんはカントの【はなよめさんといっしょ】で作り出した幻影なのでさすがに効かないだろうが、カントが挑発に乗ってしまい、強烈な一撃をくらってしまったら戦いの趨勢は一気にむこう有利になってしまうだろう。幻影だろうと愛する人を消してしまうわけにはいかないのである。
「もっきゅー!」(大丈夫なのです!)
 だがカントはちゃんと対策を用意していた。それはカントにとっての四天王しぐさとも関係しているものであった。
(四天王と言えばかっこいいバトルBGMなのです!)
 後方の優一がギターを手にした。今でこそフランケンシュタインの花嫁な優一だがもともとはフリッカースペードだったらしい。そういえば昔は使役ゴーストもサブジョブ扱いでしたっけ。今だとそういうのはなくなった……と思いきやキャバリア乗りにその名残が残っているな。ともあれ歌は始まった。

『アイスエイジクイーン四天王のテーマ』
作詞・作曲 高崎優一
歌唱 高崎カント

(ギターソロの前奏)
もーもーもーもー♪(コーラス)

『なんだ!この音楽は!』
 いきなりのBGMとカントの歌声に、さすがのEも驚愕した。

もきゅきゅー♪ もきゅきゅー♪(雷鳴よ歌え 雷火よ踊れ)
もきゅぴぴもきゅぴきゅぴーぴー♪(大いなる白き毛玉がやってくる)
きゅぴぴー♪ きゅぴぴー♪(愛を謳い 生を賛える)
きゅぴるぴきゅぴもきゅぴーぴー♪(何者にも染まらぬ純白のもふもふ)

 そしてギターソロの間奏、以下繰り返し。さすがはシルバーレイン世界では芸能界でがんばっているカントとゆーいっちゃんである。その姿はなかなかどうして堂に入っている。
「なかなか楽しませてくださいますわね」
 少なくともアイスエイジクイーンはおおいに喜んでいるようだ。だが対戦相手のEとしたらやはりたまったもんじゃないわけで。てか挑発しているのになんで相手はそれを無視して歌っていられるのか?
「もきゅもきゅきゅぴー!」(かっこいいBGMがあるとやる気が出るのです!)
 原因はこれだった。ハニートラップカウンターは相手の心を強く震わせるほど高い効果が得られる特徴があった。で、カントにはそれよりもさらに強く心を震わせるものがあったのである。すなわち、結果的にゆーいっちゃんとの歌が相手の挑発への対抗手段となっていたのだった。
『ば、馬鹿な、そんな事で破られるとは』
(やる気が出たところで行くのです~!)
 元気百倍となったカントは真っ向からEに突撃していった。当然無防備状態ではない。当然Eもパンチで迎撃しようとしたが。
「もっきゅー!!」
 さすがに勢いが違い過ぎた。カントのものすごい体当たりはEのパンチを軽々と破り、そのままEに突撃して思い切り吹き飛ばしたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィルデ・ローゼ
「あらあら?これは可愛いウサギさんね?」
ウサギのオウガと言っても色々いるのね、と感心。

プロレスと言いつつボクシンググローブを着けているなんて、打撃しかしないつもりかしら?……あぁ、縛りプレイなのね、いいんじゃない?
そうねぇ、あなたが打撃で来るなら、私は投げ技だけで相手してあげるわ。
UCを使ってリング中央で迎え撃つわね。いつもと同じ?ふふ、そう。相手によってやり方を変えたりしない、それも強者というものよ。相手の手数が一番多そう一番パンチがもらえそうだな~とか、そういうんじゃないわ。

おっとっと、しぐさは忘れちゃいけないわね、お~っほっほっほ!



●Fist or Twist
「お~っほっほっほ!」
 自分なりの『四天王しぐさ』、すなわちSな高飛車な感じを出しつつヴィルデ・ローゼはリングに上がった。そして先に上がっていたボクサーバニーFを見て。
「あらあら?これは可愛いウサギさんね?」
『ぬぁんだとぉ!?』
 色気よりも暴力気に偏ったオウガらしく、たちまちFの頭に血が上ったようだ。
「ウサギのオウガと言っても色々いるのね」
 感心感心、と言わんばかりのヴィルデ。確かにアリスラビリンスつー世界観からしてウサギぽいオウガは結構いたような気がした。調べてみたらたしかに集団戦にもボス戦にもいるいる。もう滅びたけど猟書家にもいたぐらいだし。当然武闘派から搦め手から色気多めなのからバリエーションもそろっておりますと。で、ボクサーバニーってのは色気に見えるけど武闘派なわけで、しかも名前が示す通り。
「プロレスと言いつつボクシンググローブを着けているなんて、打撃しかしないつもりかしら?」
『……むう』
 ヴィルデの指摘に場外に控えていたチャンピオン・スマッシャー、ちょっと苦々しい顔。というのも、本来チャンピオンの前座として戦う弟子たちはみんなチャンピオンに強制的にプロレス技を叩き込まれ、本来のユーベルコードを思わせるような形ではあるがプロレス技を使うよう徹底的に仕込まれているものである。だが今回はなにせ時間がなさすぎた。まあ、ほぼほぼ連戦だからね。
「……あぁ、縛りプレイなのね、いいんじゃない?」
『違うわ!』
 F、わりと本気目に怒った。グラブをハメる蹴り技がない組み技がない投げ技がない組み技がない以上の理由で不完全だッと言われたような気がしたから仕方がない。いやそこまで言ってないかもしれないがまあ受け取る側の問題である。
『だからあんなおっさんの言う事聞いてプロレスなんかしてやるもんか!これがこっちのやり方なんだ!』
 チャンピオン、ますますしぶい顔。戦いに勝ったらまずは弟子の再教育から始めないといかんなあ。そんな思考が表情から見て取れた。なんか仮にFが勝っても無事ではいられない感も出てきたが。
「そうねぇ、あなたが打撃で来るなら」
 ヴィルデ、一歩前に出ると、手招き。
「私は投げ技だけで相手してあげるわ」
『言いやがったな!後悔するんじゃねえぞその言葉!』
 組み技主体で戦うと言われたら立ち技格闘家としては燃え上がらないわけにはいかない。立ち技と投げ技強いのはどっちだ。結局のところ両方使える方が強いとなりつつある現状な気もするが、それでもこの議論はいまだに尽きないだろう。ともあれFはウサギ穴を通って一気にヴィルデに接近すると必殺の一撃をくらわせた。
『なんだ、でかい口きいといてこんなもんか!みんなやっちまえ!』
 ウサギ型の痣ができたヴィルデの周囲に次々と新手のボクサーバニーが現れてはパンチをくらわせていく。ヴィルデはリング中央でただただ立ち尽くすだけだ……いや見よ。ヴィルデの顔を。それは負け犬のそれではない。
「……うふ、うふ、うふふ……」
 そう。ヴィルデが使っていたのは苦痛を受ければ受けるほど自らを強化する【苦痛回路PAIN CONDENSER】であった。よくチャンピオン相手に使って壮絶な試合を見せていたやつだ。相手によってやり方を変えたりしないのも強者の在り方というヴィルデの考え方によるものであり、決して相手からたくさんパンチをもらいたいからというわけではないらしい。今のヴィルデは四天王でありSなのでMではないからね。うん。
『ちっ!不気味な笑いを浮かべやがって!とうとうイカれたのか?』
 そんな事を知らないFはとどめを刺さんと自ら突っ込んでいく。だがそれはヴィルデの思うつぼであった。
「ふっふっふ、捕まえたわよぉ」
 存分に上がった身体能力でヴィルデはFをあっさり捕らえ、そのままキャプチュードの一撃でリングに沈めた。今日は投げ技に軍配が上がったのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『チャンピオン・スマッシャー』

POW   :    グローリーチャンピオンベルト
自身の【チャンピオンベルト】が輝く間、【自身】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
SPD   :    キス・マイ・グローリー
【プロレス技】を放ち、レベルm半径内の指定した対象全てを「対象の棲家」に転移する。転移を拒否するとダメージ。
WIZ   :    アイ・アム・チャンピオン
自身の【攻撃を回避しないチャンピオンとしての信念】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
👑11
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『ええい!やはりにわか仕込みではダメだったか!』
 ふがいない弟子たちに怒り心頭のチャンピオンがついにリングに上がった。
『こうなったら私自らが相手をしてやろう!ランバージャックデスマッチだ!かかってこい猟兵ども!』

 ということで今回のリングはボクサーバニーたちがリングを取り囲み、リング外に出た選手に容赦のない攻撃をくわえるというランバージャック形式が採用された。むこう有利な形式かと思いきや、チャンピオンはボクサーバニーたちに自分が場外に出た時でも容赦なく攻撃するように伝え、ボクサーバニーたちはチャンピオンの教育が浅いせいかあるいは素直なためか本当に容赦ない攻撃をくわえるらしい。これを利用すれば有利になる……と言いたいところだが場合によってはそうならない事もあるので要注意だ(具体的にはWIZ)。

 それを踏まえてチャンピオンの能力を説明しよう。
【グローリーチャンピオンベルト】はベルトを光らせる事で攻撃回数を9倍にするというものだ。ただでさえ強力な技が9回攻撃とあってはたまったものではないだろう。9回全部猟兵を攻撃すると寿命が縮むというデメリットがあるため、その回避のために1回はボクサーバニーを攻撃するらしいので実質8回攻撃らしいがそれでも十分な脅威といえよう。
【キス・マイ・グローリー】はプロレス技を当てた相手を自らの『棲家』に送り返す……というものだが、今回は仮にそれで帰るを選んだ場合、場外判定となってボクサーバニーたちにフクロにされた上で強制的にリング内に戻されてしまうのだ。とはいえ棲家への転移を選ばなければ通常の技ダメージにくわえ追加ダメージも入るらしい。どっちの方がマシだろうか?
【アイ・アム・チャンピオン】は相手の技をあえて受ける事で自らの能力を上昇させるというものだ。中途半端なダメージはそれを上回る身体強化を与えてしまうだろう。なおチャンピオンは猟兵の攻撃のみならず、場外に出た時のボクサーバニーの攻撃に対しても使用するらしい。なのでWIZ技を使う場合はチャンピオンを場外に追い出すのはやめた方が良いかもしれない。

 以上。なんだかんだで幹部猟書家と呼ばれた男は強い。何度戦い何度破っても強いのは強い。それでもうまい事ルールを活かし、かつもっと大事な事として【四天王しぐさ】をしながら戦えば決して勝てない相手ではないだろう。アイスエイジクイーンを故郷に帰すためにも、その、なんだ。ご健闘をお祈りしております。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
そのルールは存じ上げませんが。
お相手致しますぅ。

『FAS』により飛行、『FLS』で『FPS』『FIS』を召喚しまして。
中華風の『派手な傘』を取出し軽く回しつつ【昬扤】を発動、魔家四将の一人魔礼紅さんの『混元傘』に近似した『超振動の暗黒』を展開しますねぇ。
攻撃力と攻撃回数に優れても『視界と平衡感覚を失った状態』で空中の私を狙うのは困難、間違えてリング外に出れば兎さん達の攻撃対象ですぅ。
尤も兎さん達もオウガ、範囲内でしょうが。
『FPS』で行動を把握し、当たりそうなら『FIS』の転移で躱せばまず万が一も有りませんので、そのまま『存在吸収』と[砲撃]で兎さん達ごと叩きますねぇ。



●唯一採用されなかった魔礼青
「そのルールは存じ上げませんが……」
 まあ、プロレスに詳しくない夢ヶ枝・るこるがランバージャックデスマッチを知らないのは仕方がない。リングをずらっとオウガが取り囲んでいるのは、プロレスで技をくらった者が追撃を避けるために場外に逃げる光景はしばしば見られるが、それを防ぐためだろうというのはさすがにるこるでもなんとなくは察する事はできた。しかし、この形式がどうしてランバージャック(きこり)と呼ばれるのか、プロレスを知らないるこるが分からないのは当然として、知ってる人でもよくわからない人がいるかもしれない。一説によればカナダのきこりのケンカの作法が元になっているとか。
「それはそれとしてお相手いたしますぅ」
 かくしてるこるはボクサーバニーたちが取り囲み、チャンピオン・スマッシャーが待つリングに降り立った……と思いきや。
『降りてこいコノヤロー!』
 どなるチャンピオン。そう、るこるはリングに降り立たなかった。いつものように3対6枚のエネルギー翼を広げ、リング上空を舞っているのであった。これにはチャンピオンもだがボクサーバニーたちも困惑。
『なあ、あれは場外扱いにしなくていいのか?』
『いや、でも一応リングの真上だからなあ』
 むろん空中であってもボクサーバニーの力をもってすればウサギ穴でるこるに拳を届かせる事はできはする。それでもちょっとこんな状況は想定していなかったようで、いきなり攻撃を仕掛ける事は躊躇われたようだ。結局リングの枠から外れたら殴りに行くという事になったようだ。
『まあ良いわ!待っていろ!今からそっちに向かってやるわ!』
 チャンピオンのベルトが輝いた。攻撃回数を爆発的に増加させる【グローリーチャンピオンベルト】の合図だ。むろん空中にいるるこるに技が届くかどうかははなはだ疑問なところではあるが、実際チャンピオンほどの強者が9(実質上8)回攻撃も可能なほどに身体能力を上げたなら空ぐらい飛べるかもしれない。
『さすがにそれは困りますねえ』
 るこるは中華風の派手な傘を取り出した。これまでるこるなりの『四天王しぐさ』として2人採用した封神演義の魔家四将、その3人目魔礼紅の装備『混元傘』に見立てているとのことだ。その効果は原作では天地を鳴動させ、さらに敵の宝貝を吸収するというものである。マンガ版では攻撃反射能力だったそうな。そしてユーベルコードを発動した。
「大いなる豊饒の女神、あなたの使徒に『揺動の加護』をお与え下さいませ」
 その名は【昬扤】といった。昬=昏、扤は揺れ動く意味らしい。すなわち読みの『マミエザルトウヨウ』は『まみえざる蕩揺』であろう。暗黒の範囲はるこるを中心に半径161m。四方の長さが6.5mのリングは当然すっぽり埋まるに十分なサイズだ。たちまちリングとその周囲を暗黒が覆い尽くした。
『な、なんだこいつは!』
『く、暗いぞ何も見えないぞ!』
 当然、チャンピオンのみならずボクサーバニーたちも範囲内である。これはただ視覚を奪うだけにとどまらず、超振動を与える事で平衡感覚にも作用するらしい。なるほど原作版の方の再現のようだ。
『め、目が……立ってられんッッッおええええええ』
 ボクサーバニーたちはひどい回転性めまいのため次々に地面に突っ伏し嘔吐する始末。これでは仮に場外にるこるかチャンピオンのどちらかが落ちたとしても本来の役割を果たす事はきわめて難しいだろう。一方チャンピオンはさすがに元幹部猟書家だけあってすぐさまダウンする事はなかったようだ。
『おのれよくも私が提示したデスマッチをめちゃくちゃにしてくれたな!』
「怒る所はそこですか」
 やっぱり基本的に猟書家は、というよりオブリビオンはわがままな存在なので、こっちがルールを提示したからにはそれにつきあってもらいたい気持ちというのはかなり強いようである。ただまあ繰り返すけど。
「ですから私には最初からあなたの流儀に従う理由はないんですってば」
 そう。猟兵はグリモア猟兵からの特別な指示がない限りはそれに付きあうも逆らうも自身の裁量に任されているのである。今回はるこるは付きあわない事を選んだそれだけの話だ。それにチャンピオンとてそれならそれでやりようはあるわけで。
『ならば喰らうが良い!これは私の怒りではない!プロレスの怒りだ!』
 何やらよくわかるようなわからないような理屈でチャンピオンは跳んだ。飛行ではなく跳躍。確かに9回攻撃する程の身体能力である。るこるのいる所まで届かんばかりの勢いだ。チャンピオンとしては組み付いてしまえばあとは一気にカタをつけるつもりだったようだ……が。
「さすがにそれだけ感覚を崩せばこうもなりますよねえ」
 視覚と平衡感覚が不自由な状況では飛距離は十分でも方向が不十分だったようだ。るこるはあさっての方向に飛んだチャンピオンに容赦のない砲撃をくわえ、ついでに地上で苦しむボクサーバニーたちにも砲撃の嵐を食らわせるとバニーたちはひとたまりもなく倒され、その上で暗黒に吸収されてしまったのであった……が、補充要員の数だけはいたし、チャンピオンはさすがに吸収はされなかったので試合はまだまだ続くようだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

有坂・紗良
アドリブ絡み諸々歓迎

ついにチャンピオンが出てきた…んスけど、流石にそろそろプロレスっぽい事しないとマズいっスよねぇ
いくら前哨戦で問題なさそうな感じだったとは言え…ねぇ?

クックック…ようやく四天王であるボクに相応しい相手が出てきたみたいっスねぇ…
さあ身体貼りますか!『サメボード』を振り回して凶器攻撃!
でもボクの力じゃダメージはそう通らないだろうから、強化して反撃される事になるっスね

ぐえー!普通に痛い!
でもそこがデカい隙っス、ここでUCで奴の足元に爆弾設置!コイツでドカン!

相手の大技を受けつつも、大技を返す…これぞプロレスの魅せ方であり四天王らしさってヤツっスね
ヒール寄りなのは変わんないんスけど



●得意不得意ってやっぱりあるから
 先の試合でチャンピオンのみならずリングやボクサーバニーたちも大ダメージを受けたわけだが、そこはさすがにチャンピオンである。あまりにも早くリングは修理され、リングを取り囲むボクサーバニーたちも補充され、そしてチャンピオンは再びリングに立った。
(ついにチャンピオンが出てきた…んスけど)
 バニーたちが囲むリングに立った有坂・紗良は、反対側に立つチャンピオンを見て考えた事は。
(流石にそろそろプロレスっぽい事しないとマズいっスよねぇ、いくら前哨戦で問題なさそうな感じだったとは言え……ねぇ?)
 お。やってくれる感じか。銃器の扱いには長けているが白兵戦はからっきしな紗良は先ほどは格闘技やるフリをして結局やらなかったわけだが、まあ猟兵なので格闘技できないと主張する人がある日突然格闘技をやりだす事もなくはないかもしれない。なにせ紗良も歴戦の猟兵と十分呼べる経験は積んでいる。それくらいの事はできてもおかしくないような気もするわけだが。
「クックック…ようやく四天王であるボクに相応しい相手が出てきたみたいっスねぇ……」
 自信がないなりにプロレスやると決めた上で、それでもあえて四天王しぐさは忘れない紗良。精一杯えらそうな感じでしゃべってはみたが、対するチャンピオンはといえば。
『どうした?今回は銃は使わんのか?』
(普通にバレてたっスか!?)
 挑発するように獰猛な笑みを浮かべた。どうやら拳銃を使ったアイスエイジクイーン同様、チャンピオンにもオミトオシだったようだ。ただそれを別に責める様子もなさそうなのもアイスエイジクイーンと同じなようだが。
『遠慮するな!銃を使う事で弱者と強者は平等になるという言葉もある。まあお前が銃を使おうが私のプロレスには通用せんがな!』
 撃って来いとばかりにチャンピオンは胸を張った。先刻砲撃の嵐にやられたような気がしないでもないが、まあ状況も違うだろうしね。ともあれ銃を使って初めて自分と互角になるというのはなかなか強烈なアピールであるが、観客がいないのが残念なところだ。そしてアピールされた側はといえば。
(う、まあその通りなんスけどね)
 特に拳銃を握りつぶすとか突きで叩き折るとかしなかったが、それでも内心の動揺を顔に出さなかったのはさすが歴戦の猟兵であった。ただし言われるがままに拳銃を抜くのもそれはそれで紗良には躊躇われた。相手の注文通りに動くのが癪だったというのはむろんあったが、それよりも重要なのが。
(いかにも【俺が王者だI am a Champion】と言わんばかりっスね)
 胸を張りノーガードで相手の攻撃を受ける気満々なチャンピオン・スマッシャーには拳銃の弾丸すら受け止められてしまうのではないか。そんな危惧を覚えざるを得ない。
「さあ身体貼りますか!」
 なので紗良は拳銃の代わりに別の物を使う事を選んだ。取り出したのはサメの形をしたボードであった。おそらくホバー移動により水陸両用で高速移動ができるものであり、応用としてはジャンプで短距離飛行もできるそうな。で、これで何をするのだろう。高速移動や三次元的な動きを活かしてチャンピオンをスピードで翻弄して活路を見出すのか……と思いきや。
「覚悟するっス!」
 普通に振り上げた。どうやら凶器として使用するようだ。どうやら出力の割にかなり軽いもののようである。まあそれほど小回りが利くようなものでもなさそうなので狭いリングで移動手段として用いるにはちょっと不適当だったのだろう。下手したら場外に飛び出してボクサーバニーたちにフルボッコにされかねない。
『ほう凶器攻撃か、まあ拳銃よりはプロレスぽいな!さあ殴ってみろ!』
 チャンピオン、あくまで無防備の構えでこれを受けて立った。もはや紗良にはこうする以外に道はない。
「どりゃー!」
 サメボードを振り上げるとチャンピオンの頭上に叩きつけた……が、渾身の一撃にもチャンピオンはびくともしない。さらに2発、3発、4発と叩き込むが。
『その程度か!どうせならパイプ椅子でも持ってくるべきだったな!』
 完全に耐えきったチャンピオンは紗良を抱え上げると背中からリングに投げつけた。ボディスラムだ。
「ぐえー!普通に痛い!」
 ボディスラムといえばプロレスの基本中の基本のはず。だが、これが痛い。痛みが背中から全身に広がってきた。チャンピオンの膂力にくわえ、攻撃回避しなかった事による身体強化も加わっているのだろう。これがチャンピオンか。まざまざと思い知らされた紗良だった……が。
『銃なんぞに頼るから鍛え方が足らんのだ!わたしの弟子にして一から鍛えなおしてやろうではないか!』
「……い、嫌っス!」
 とどめを刺すべく紗良に近づこうとしたチャンピオン。しかしこれこそ紗良が狙っていた隙だった。
「これが孔明の罠って奴っス!」
『!?』
 突然チャンピオンの足元が爆発したのだ。紗良があらかじめ設置しておいた【即席設置型爆弾アトダシコウメイボム】が炸裂したのである。予期せぬ爆発はさすがのチャンピオンも受けきれず、そのまま場外にまで吹き飛ばされてボクサーバニーたちにボコボコにされたのであった。
「相手の大技を受けつつも、大技を返す……これぞプロレスの魅せ方であり四天王らしさってヤツっスね」
 勝ち誇る紗良。しかしこのリング上でいったいいつの間に爆弾なんか仕掛けたんです?
「いや、そこに来るのは予想してたんであらかじめ試合前に仕掛けておいたんスよ」
 本当は自動生成なのでは?
「い、いやホントにマジだって!」
 まあどっちでもいいや。少なくともアイスエイジクイーンはそう言う事であろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニコリネ・ユーリカ
ランバージャック……カナダの匂いがするわね
デンマーク四天王として燃えるところよ!

人魚状態で試合に臨む、その前に
天に向かって拳を突き上げ、えいえいおー!
在住中の日本式鼓舞で9回攻撃に耐えうる防御力を強化する

本来の目的を失った今、自ら新たな使命を課す姿勢は尊敬するわ
総統と闘う為に命を惜しむ気持ちも理解る
でも味方バニーを攻撃するなんて見てられない
8回攻撃を何とか耐え、彼女達に向かう1回も受けてみせる!
私が全力で耐えきった時、そのベルトの耀きは翳る筈

ズタボロになっても「王者斯くあるべし」の矜持を胸に
相手の連続攻撃が止まった直後、魚の跳ねるが如きジャンプからのモンゴリアン……ちがったデンマークチョップ!



●任侠と書いて人魚と読むきん
 改めて今回の試合形式はランバージャックデスマッチである。それを聞いたニコリネ・ユーリカは。
「ランバージャック……カナダの匂いがするわね!デンマーク四天王として燃えるところよ!」
 カナダとデンマークになんの因縁があるのかと疑問に思った方は少なくないだろうし実は筆者も思ったので調べてみたところ領土問題らしい。カナダとデンマークって大西洋挟んでるだろうになんの領土問題?と思う向きもあるかもしれない(まあ離れてても領土問題はなくはないのだが。フォークランドとか)。が、デンマークに所属するグリーンランドの事考えると結構近いのである。で、カナダとグリーンランドの境にあるハンス島でウイスキー戦争と呼ばれる領土問題が発生していたのだ……このあたりはなかなかおもしろい事をやっているのだが詳細は略。まあ平和的に解決して良かったよと。ともあれハンス島同様の寒い世界にあると思われるリングに熱い思いを込めてニコリネは立った。これまで同様のデンマーク四天王な人魚スタイルである。
『なかなかプロレス映えしそうなコスチュームではないか』
 思いの外チャンピオンにもニコリネの姿は好評だったようだ。女子プロレスラーの『水着』などと呼ばれるコスチュームのように派手さや煌びやかさがあるかはちょっとわからないが、確かに人魚つーものは見栄えは良いものであり魅せる仕事であるプロレスラーに通じるところはあるかもしれない。なお有名なコペンハーゲンの人魚像はフルヌードであるがさすがにニコリネは違うだろうつーか寒くて死ぬ。
『よもやその恰好だから歩けないというオチではあるまいな?』
「心配ご無用!さっきも試合してみせたでしょ!」
 ということで改めてボクサーバニーたちが取り囲む中試合が始まろうとしていた……その時である。
「ちょっと待って!」
『なんだ?今更になって怖気づいたか?』
「まさか!見てなさいな!」
 チャンピオンやボクサーバニーたちが見ている中、ニコリネは拳を天に突きあげた。
「えいえいおー!」
 それはニコリネが今暮らしている日本においては定番のムーブであった。その由来はアヤカシエンパイアの頃の『鋭鋭応』、あるいはサムライエンパイアの頃の『曳叡王』らしいが実際はよくわかっていない。ともあれ『鬨の声』をあげる事で戦意を高める行為は日本のみならず世界中でも行われてきた伝統的な所作であった。むろんチャンピオンがその意図に気付かぬはずもなかった。
『気合を入れたか、ではその成果を存分に見せてもらおうではないか』
 そしてチャンピオンもまた気合を入れるかのように腰のベルトを輝かせた。それの意味するものを当然ニコリネはわかっている。攻撃回数を9倍に増やす【グローリーチャンピオンベルト】の合図だ。
(……来る!)
 ニコリネは構えるがチャンピオンは想像以上に素早く動く、一気にニコリネに近づくと左腕でニコリネの首をかかえ、右腕は左足いや尾びれのあたりをとった。そして体を抱えたまま後方へと投げ飛ばした。
「きゃあっ!?」
 その技の名は網打ち式原爆固めフィッシャーマンズスープレックスといった。まさに人魚に仕掛けるには最適な技といえただろう。そして本来はこのままブリッジしてフォールにいくのだが、チャンピオンはそのまま両足を跳ねて体を反対側に持ってくると、再度フィッシャーマンズスープレックスを仕掛けたのだ。ロコモーション式と呼ばれるスープレックスを繰り返すムーブである。そのまま3回、4回と繰り返しチャンピオンはニコリネをリングに叩きつけた。
(わ、分かってたけど……)
 それでもきついものはきつい。だがニコリネは耐える。試合前に気合を入れたのはまさしくこの連続攻撃に耐えるため。次々に襲い来る衝撃は、だがやがて終わりがやってくる。連続攻撃がきっかり8回目を数えた時、ニコリネは解放された。だがニコリネに安堵する暇などない。チャンピオンの9回攻撃のラスト1回は場外のボクサーバニーを狙って放たれたものだったが、ニコリネはそれを受け止めたのだ。さすがにこれは相当に堪えたようでそのままニコリネはダウン。これにはチャンピオンはさすがに驚愕した。
『馬鹿な!確かに私の寿命は縮むかもしれないが、ことこの闘いの趨勢を左右するものではない!なぜわざわざそんな真似を!?』
「……本来の目的を失った今、自ら新たな使命を課す姿勢は尊敬するわ。総統と闘う為に命を惜しむ気持ちも理解る」
 ゆっくり立ち上がりながらニコリネは笑った。
「でも味方バニーを攻撃するなんて見てられないの!」
『お、お前……』
 これには敵であるはずのボクサーバニーたちも感涙。オウガなので次の瞬間には忘れているかもしれないが、少なくともこの瞬間だけはニコリネの熱意が伝わったようだ。
『くっ!おのれ!』
 9回攻撃を耐えられたチャンピオンはすぐさま次の攻撃を仕掛けたいのは山々だったが、さすがに肉体的かつ精神的な疲労のため、すぐに動ける状況ではなかったようだ。あるいはニコリネの「王者斯くあるべし」の矜持に圧倒されたのかもしれない。いずれにせよニコリネにとっては絶好機だった。倒れそうになる体に鞭打って跳躍するその姿はまさにデンマークのトビウオか。そして両腕を高々と掲げると、チャンピオンの首元を狙って両腕を叩き込んだ。それは水鳥の名を持つ拳法の使い手が宿敵との戦いで用いた決め技にも似た華麗な拳にも似たモンゴリアン……もといデンマークチョップだ。
『ぐはぁ!』
 首から両腕がちぎれんばかりの激痛にもだえるチャンピオン。これも王者である事を忘れて弟子を攻撃する暴挙に出たバチがあたった……のかもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リカルド・マスケラス
まずは恭しく四天王しぐさ
「これはこれは。このような舞台を整えていただき、感謝感激恐悦至極っすよ。ここがあんたの墓場になるんすけどね」
リングロープが使いづらく一見得意の【空中戦】が活かせず苦戦
「おっと、追い詰められたっすね…」
敵のUCを回避しようとしてリング際に近づき、バニーからパンチを受けるが、それは布石。放物線を描いてチャンピオンに頭突き
「っと、捕まるわけにはいかないっすね」
そのまま全身のバネや【念動力】で再び上空に跳ね、粘土腕軌道をずらし攻撃をすり抜けつつ頭突き連打
「このまま異世界にも行けず骸の海に帰るっすよ」
相手の体を頭突きのたびにリングへと沈め、脱出しようとするなら首を掴んで投げる



●偽マッスルリベンジャー改めアステカセメタリー
 リングに上がるや否や、リカルド・マスケラスはうやうやしく一礼をした。
「これはこれは。このような舞台を整えていただき、感謝感激恐悦至極っすよ」
 これは無論、第1章とも第2章とも違うがリカルドの考える四天王しぐさだ。その姿は慇懃無礼と呼ぶに十分なものであり、チャンピオンをおおいに苛立たせる事になったが、そこで終わらず一言加えるのがなんともリカルドであった。
「ここがあんたの墓場になるんすけどね」
『ほざいたな仮面野郎め』
 まあチャンピオンとしても怒りの直接的な『はけ口』を見いだせたという事で互いに悪い展開ではなかったようだが。ともあれボクサーバニーたちが取り囲むリングで両者の戦いが始まろうとしていたわけだが。
(とは言ってみたものの、これはちょっとやりづらさがあるかもしれないっすね)
 やはり覆面レスラー、それもいかにもメキシカンぽい名前のリカルドとしてはルチャリブレぽく飛んだり跳ねたりな戦い方をしたのだろう。スーパーヘビー級のチャンピオンに対し、今回のボディーがそこまで巨漢というわけではない点からも真正面から直接ぶつかる事はあんまりしたくない。で、そのためにはロープワークが必須テクニックなわけだが、その中にはちょっと場外に体を出すムーブもあるわけで。例えば初代タイガーマスクが使った『フィンタ・デ・レギレテ』。619という技の元ネタだと言えば、あああれかと思い出す人もいるかもしれない。あれは体半分ぐらいリング外に出すわけで、いやさすがにあのくらいじゃ場外扱いにはならんだろと思いはするものの、たぶんそれほどプロレスわかってないボクサーバニーたちなら反則取りかねないような気がした。
(ま、なるようになるっすかね)
 ともあれ戦いは始まった。やはりというか、真正面から堂々と迫りくるチャンピオンに対し、リカルドは正面衝突を避けて搦め手で迫る戦い方となった。体格差のある者同士がやる場合どうしてもそうなる。まあ猟兵の戦いは体格差で左右されない事も多いが、ことプロレスとなるとそうならざるをえまい点はあろう。
『どうした私を墓場に送るんじゃなかったのか、やはり口だけの道化か』
「それはこの後でたっぷりとわかることっすよ」
 チャンピオンの挑発にも動じる事なく、リカルドは自らの戦い方に徹した。それこそが勝利するための近道である事を心得ていたのだ。チャンピオンとてリカルドが真正面から来るはずがないのはわかってはいたが、それでもやはりその戦い方に苛立ちのような感情はあったようだ。
『ええいまどろっこしい!こうなったらこいつで一気にカタをつけてくれるわ!』
 チャンピオンの腰のベルトは光った。攻撃回数を9倍にする【グローリーチャンピオンベルト】の合図だ。
(来るっすね!)
 確実にやってくる猛攻にリカルドは身構えた。そして猛牛のようにチャンピオンが突っ込んでくる。回避困難な攻撃だが全て回避しなければなるまい。1発受けるだけでも致命傷となる威力があるというのに、1度でも攻撃を受けたら以降の攻撃は全部食らうことは確実である。必死で回避しているうちにリングサイドに追い詰められたリカルドは、さらなる攻撃をそれでもどうにか回避し……
「あ、しまったっす」
 ついリング外に体が出てしまった。
『出番だー!いけいけー!』
 そこにたちまちボクサーバニーたちが殺到してくる。リカルドはバニーに強烈なパンチをくらい、吹き飛ばされた勢いでリング内に戻されてた。戻ってきた所にはチャンピオンが待ち受けている。
『よーしよくやったぞ!さすがは我が弟子たち!こうなっては避けられまい!残りの攻撃の全てをぶつけてくれる!』
 リカルド危うし……と思われたのだが、実はここまで全てリカルドの計算内の行動だったのだ。
「っと、捕まるわけにはいかないっすね」
 チャンピオンの攻撃をかわしつつ強烈な頭突きを食らわせた。そのあまりに強烈な頭突きにより、チャンピオンの身体がリングに沈む。
『ぐはっ!な、なんだこれは!?』
「まだまだこれからっすよー」
 頭突きの反動でリカルド自身は空高く舞い上がると、そのまま落下してチャンピオンに再度の頭突きをくらわそうとした。むろんそんな事を許すわけにいかないチャンピオンは両腕でリカルドを捕らえようとしたが、リカルドは空中で軌道を変えてチャンピオンの掴みから逃れ、再度の頭突き。さらに空に跳ねると再び頭突き。
『こ、これは……!?』
「前もって言った通りっす、ここがあんたの墓場になるんっすよ」
 そうしているうちに、ハンマーで打たれる釘のごとく、チャンピオンの身体が徐々にリングに沈んでいった。
「このまま異世界にも行けず骸の海に帰るっすよ」
 そう。これこそリカルドのフェイバリット【奈落への杭打ちKnock to the Abyss】であった。完全にリングに埋められた時チャンピオンは骸の海に送られるのだという。猟兵が使える数少ない骸の海送りの技、それをリカルドはモノにしていたのだ。
『お、おのれ!私はまだここで終わるわけにはいかないのだ!』
 どうにか残された力を振り絞り、リングから抜けようとするチャンピオン。だがそれすらもリカルドの読み筋であった。
「出たいんっすか?なら出してあげるっすよー」
 リカルドの両足がチャンピオンを捉えると、そのまま空中高く舞い上がり回転をくわえリングに叩き落した。即骸の海送りこそ免れたものの、チャンピオンのダメージは絶大であろう。結局骸の海に戻る運命には変わりがない事は誰の目にも明確になりつつあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

高崎・カント
きゅっぴ! この間ぶりなのです!
またカントがお手伝いするのです!

もっきゅきゅ、カントは四天王らしく変身を残しているのです
リージョンフォームなのです
カント(マスク着用のアスリートアースのすがた)はかくとうタイプなのです

ゆーいっちゃんは四天王の横にいる回復するお供なのです
選手ではないのでリングには入らないのです

ゆーいっちゃんからの支援を受けつつ攻撃なのです
軽量級の素早さを活かして足を狙ってキックや体当たりなのです

もきゅ! やっぱり回復役を狙うのですか!?
もももも……狙い通りなのです
回復役を先に落とすのはセオリー
つまり、これは不利な行動ではないのです

トドメはコーナーからのクロスチョップなのです!



●歴代かくとうタイプ使いの四天王は3人(うちひとりは2タイトル登場)
「きゅっぴ!この間ぶりなのです!」
『ぬう!お前か!』
 高崎・カントが言うように、たしかについ最近ぶりであった。これまでチャンピオンはシナリオごとにきっちり殺されて骸の海に戻ってリセットされてまたアリスラビリンスに戻って来るものだから、同一人物でありながら別人というなかなかややこしい事態だったのだが、前回のチャンピオンは吹き飛ばされて行方不明となり、骸の海に戻った所を誰も見てないから、間を開けずに現れたこいつが前回のと同一人物である可能性は極めて高い。そんなわけでチャンピオンは、前回吹き飛ばしてくれたカントを見てむちゃくちゃ苦い顔をした。
「またカントがお手伝いするのです!」
『いらんわ!』
 お手伝い。そう、前回カントはチャンピオンが骸の海を自力で渡ってアスリートアースに行くために鍛えるためっていろいろやった結果、その時と全く同一人物と思われるチャンピオンがここに立つ羽目になったという。そりゃあ、このうらみはらさでおくべきか、という気持ちになるのも仕方あるまい。
『ええい!でんき系かなんだか知らんが相手になってやろう!リングに上がるがいい!』
 チャンピオンに言われずとも、カントはボクサーバニーたちが取り囲むリングに上がった。その後ろにはこれまでカントを導いてきたゆーいっちゃん(の幻影)の姿。
『なんならふたりがかりで来ても構わんぞ?』
「ゆーいっちゃんは四天王の横にいる回復するお供なのです!選手ではないのでリングには入らないのです」
 という事らしい。扱いとしてはセコンドなのでさすがに場外に出ていてもボクサーバニーたちにボコられる事はないようだ。逆にセコンド扱いという事なら仮にチャンピオンが場外に出てしまった場合にこれをボコる側に回ってもいいのかもしれないが、あくまでお供なのでそういう事はしないようだ。
『回復の時点でふたりがかりな気もするが、まあよかろう。さておきでんき系ならあれだ、電流爆破デスマッチにでもしてやろうか?』
「もっきゅきゅ、あれはどちらかといえばほのお系のような気がするのです……ともあれそんなのは不要なのです!なぜなら……カントは四天王らしく変身を残しているのです」
『変身だと!?』
 なるほど変身して強くなるのもたしかに幹部級のあるあるだろう。しかしカントが変身とは。よもや設定資料にある人間型になったりするのだろうか?とか思いきや。
「リージョンフォームなのです!」
 カントはマスクを着用した。これぞカント(アスリートアースのすがた)である。
「この姿のカントはかくとうタイプなのです!」
『アスリートアースの姿だとお!?』
 どうやら今回はプロレスをやるらしいカント。一方でチャンピオンにとってはなんとも頭にくる名前だったようだ。
『おのれモーラットがアスリートアースに行けて私が行けないはずがない!目に物見せてくれるわ!』
 わけのわからない切れ方をするチャンピオン。まあ猟兵が他世界に行けるのは仕方ないね。ともあれようやっと試合が始まった。早速チャンピオンは【アイ・アム・チャンピオン】を発動させると仁王立ちになった。
私が王者であるI am the championゆえんを見せてくれよう!どこからでもかかってくるがよいわ!』
「遠慮なくいくのです!」
 ユーベルコード発動中のチャンピオンは攻撃を避けない代わりに中途半端な攻撃はダメージを上回る強化を与えてしまう。なのでしばらく受けのみに回ると思われ、その間にカントは真正面から猛攻をくわえてもよかった。だが別の手で来るとしたら?例えば初撃を受けた後は攻撃一辺倒に専念してくるとかされたら、攻撃にいったつもりがあっさり捕まるという事になりかねない。なのでカントは体格差ある相手と戦う時のセオリーに従う事にした。軽量級の速度を活かしてロープワークからチャンピオンの足を狙って低空ドロップキック。
『ふん!それなりにやるようだな!ならば次は私の番だ!』
 やせ我慢か、本当に効いてないのかはわからないが、ノーガードでダメージを受けたチャンピオンは攻勢に出た。巨体がカントに迫るが掴まれたくないカントは小柄な体を活かしてチャンピオンの死角に回り、致命の攻撃を回避すると今度は足めがけて体当たり。その後もチャンピオンはカントの攻撃を受ける事で身体強化を図るが、カントもチャンピオンの攻撃を簡単に当たらせてくれない。
(むう、猟兵とはいえさすがにタフすぎないか?)
「カントくーん!がんばれー!」
「もっきゅー!!」
 チャンピオンは気が付いた。場外のゆーいっちゃんの声援を受け、明らかにカントが元気になっている事に。確かに試合前にゆーいっちゃんは回復役だと言っていたが、どうやら文字通りの意味だったらしい。
『ならば!』
 チャンピオンは場外に飛んだ。狙いはゆーいっちゃん(の幻影)だ。身体能力強化の恩恵もあってか、巨体に見合わぬ身軽さで繰り出されたミサイルキックの一撃はあっさりゆーいっちゃんを吹き飛ばした。むろん場外に飛んだ事でボクサーバニーの攻撃を受ける事になるが、それも受け入れ身体強化につなげる……はずだった、が。
「もももも……狙い通りなのです!」
 幻影とはいえ愛する人を倒され激怒するかと思いきや、カントは存外冷静だった。
「回復役を先に落とすのはセオリー!つまり、これは不利な行動ではないのです!」
『な、何?』
 指摘に動揺したチャンピオンは身体能力の恩恵を受ける事なくボクサーバニーにフクロにされ、やっとの事でリングに上がった……が、そこにカントの狙いすました一撃が。
「くらうのです!ゆーいっちゃんのかたきなのですー!」
『ぐはっ!?』
 それはそれとしてやっぱり怒ってはいたらしい。コーナーからのフライングクロスチョップをまともに受けたチャンピオンは再度リングから転げ落ちて再びフクロにされる事になったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィルデ・ローゼ
「お~っほっほっほ!待たせたわね!チャンピオン!」

アイスエイジクィーンはデビキンの方だから、もしかしてヒールワルな方が受けるのかしら?
……。
……ヒールワルってどうすればいいのかしらね?パイプ椅子とか、入場前に襲撃するとかすればいいのかしら?思わずウサギちゃんに聞いちゃうわ。

……ダメね。付け焼き刃では魅せるプロレスなんてできないわ。
観客もいないのになぜプロレスに拘るのか、ですって?
観客なら、いるわ!
ここに!(アイスエイジクィーンを指し)ここにも!(ボクサーバニーたちを指し)そしてここに!(自分の胸を指す)苦痛の女神様はいつだってここにいらっしゃる。
そして今はアイスエイジクィーンの『四天王』としても、恥じない戦いをしなければならないわ。
故に、私は私のやり方を貫く。すなわち、全部受けて返す!さあ、かかってきなさい!

プロレスなら観客を魅せてこそ。攻防の合間にも周りにアピールすることを忘れないわ。
最後は垂直落下式キャプチュードで決めるわ。



●今度こそ本当に最期
「お~っほっほっほ!待たせたわね!チャンピオン!」
 鞭を片手に現れたのはヴィルデ・ローゼ。彼女なりの四天王しぐさ、すなわち女王様チックな高笑いとともに堂々とリングに現れた。その様をチャンピオンはリング中央で睨みつける。
『ぬう、来おったか』
 既にこれまでの連戦で大ダメージは受けていたが、それでもそんな様子など全く見せていない。当然だ。なにせ前回チャンピオンと最後に戦ったのがヴィルデだったし……いや厳密には違う猟兵がとどめ刺したような気もするが、まあいいか。ともあれチャンピオンは雪辱に燃えていた。
「やる気だけは十分みたいね!いいわ、私が相手をしてあげますわお~っほっほっほ!」
『チャンピオンを前に大口叩きおって!その増長慢、後悔させてくれるわ!』
 ヴィルデは半分以上演技で、チャンピオンはおそらく素で、我こそ格上だと言わんばかりにえらそうな態度を取った。まさにメインイベントを張るに相応しき風格だ……が。ヴィルデがここに至るまでにはいろいろとあったようだ。

 少し遡る。
「アイスエイジクィーンはデビキンの方だから……」
 他の猟兵たちがチャンピオンと戦っている間、ヴィルデはかなり悩んでいた。
「もしかしてヒールワルな方が受けるのかしら?」
 さて本人に聞いたらどう答えただろうか。たしかにデビルキングワールド住人だったらワルい方が偉い感じではあるので、よりワルというのは好まれる要素ではあろう。しかしアイスエイジクイーンの四天王という立場である事を考えると、もしかしたら主人よりよりワルなのはちょっと眉をひそめるかもしれない……内心は別として。そしてなにより女王様系でワルとくれば完全にアイスエイジクイーンとキャラかぶりではないか。
「……ヒールワルってどうすればいいのかしらね?」
 ただ悪役で行くという方向性は良さそうだ。しかし具体的にどうすればいいのやら、改めて悩んでみた。先刻みたいにムチを使うのもそれっぽい。ムチを使う善玉は某考古学者か某ヴァンパイアハンターの一族か……探せばまだいるかもしれないがひとまず出てきたのはこれくらいで、基本ムチというのは悪役が使うような印象はあるよね。しかし今回はあくまでプロレスで行くと決めていたヴィルデはその案を没にした。
「パイプ椅子とか、入場前に襲撃するとかすればいいのかしら?」
 なるほどそのあたりはプロレスっぽい。まあチャンピオンは既に入場しているものだから奇襲は難しいが、パイプ椅子は使ってもいいかもしれない……うーん。でもやっぱり悩ましい。
「ねえ、どうすればいいと思う?」
『知るか!プロレスの事なんか聞くな!』
 考えあぐねた挙句、あろうことかセコンド中のボクサーバニーに聞いてみる事までしてはみたが、残念ながらバニーたちはチャンピオンの弟子とはいえまだプロレス脳になるほどに鍛えられてなかったせいだろうか、満足のいく答えは返ってこなかった。他の事なら答えたかどうかはまた別の問題として。で、悩んだ末にヴィルデの選択はといえば。

「それでは魅せて差し上げますわ!私のできる最高のプロレスで!」
 結局ヴィルデが選んだのはいつもと同じ方法であった。付け焼刃の演技よりも、普段通りの戦い方を行う事を選んだのだ。むろんチャンピオンとしてもそれは望むところだ。
『よう言うた!それでこそこのリングに上がる宿敵というものよ!』
『お前は何を言ってるんだ』
 異議は意外な所からあがった。
『プロレスなんかしょせん見世物だろうに、普通に格闘技で戦えばいいじゃんか、別に観客がいるわけでもないだろうに』
『む?』
 やってしまいましたなあ。もともとボクシングというよりはストリートファイト的な戦い方をしてきたボクサーバニーたちがいまだプロレス脳に染まり切ってないのは前述の通りであるが、ここまで反抗的だとはさすがにチャンピオンとしても予想外だったのだろう。覿面に顔に怒気を浮かべ声の方向を睨みつけた。これは教育やろなあ。だがチャンピオンが口を開く前に、ヴィルデが言葉を発した。
「観客なら、いるわ!ここに!」
 指さした方向には今回の戦いのきっかけとなったアイスエイジクイーン。
「ここにも!」
 次にボクサーバニーたち。彼女たちも試合を見ている事に変わりはない。そして。
「ここに!」
 自分の胸を差した……さすがにこの意図をすぐに理解できた者はそうはいるまい。これはヴィルデの内面を支えるもの、すなわち彼女の信じる苦痛の女神を指しているのだ。
「苦痛の女神様はいつだってここにいらっしゃる!」
 誰が見ていないようでも必ず行いを見ている者はいるのだ。我々風に言えば、おてんとうさまはいつも見ている、というやつだ。ならばそれに恥じぬ戦いをしなければならない。さらに言うならアイスエイジクイーンの『四天王』としても、である。
『よう言った!』
 対戦相手の堂々たる発言には敵ながらあっぱれとチャンピオン喜色満面。アイスエイジクイーンも実に心地よさそうに微笑んでいる。ボクサーバニーたちはといえば、ヴィルデの言葉に感動しつつも実際よくわかってないかもなーが半分、何が苦痛だそんな苦痛が望みなら存分に与えてやってくれやボスとでも言いたげなのが半分といったところか。
「故に、私は私のやり方を貫く。すなわち、全部受けて返す!さあ、かかってきなさい!」
『言われずとも!』
 かくして始まった戦いは……チャンピオンがベルトを光らせて【グローリーチャンピオンベルト】を発動させて9(マイナス1)回攻撃で猛烈に攻め込むのを、ヴィルデは【苦痛回路PAIN CONDENSER】で全て受けきり、苦痛を力に変えて反撃するという、まさに全部受けて返すという自らの言葉を有言実行するという、あまりに凄まじいものになった。
『い、いつものことながら、私の攻撃をここまで受けるとは、なかなかやるではないか』
「まだまだ、もっと来てくれてもよろしくてよ」
 ダメージを与え与えられつつもヴィルデはプロレスラーらしく、周囲へのアピールも忘れない。これには場外で見ていたボクサーバニーたちも言葉を失った。なにせ両者とも、町のケンカならとっくの昔に終わっているダメージを受けているはずなのだ。
『な、なんであんなに攻撃をくらいながら笑ってられるんだあの猟兵は!?』
『ボスも強烈な反撃されながらも動きが止まる様子がないぞ』
 沈黙はいつの間にか大声援に変わっていた。両者をともに応援する大声援に。オウガなので次の時には忘れているかもしれないが、少なくともふたりの戦いぶりはプロレスに興味のなかったボクサーバニーたちの心を動かしたのだ。
『……ふ』
 チャンピオンの口が曲がった。確かに彼は、笑っていた。
『良い物だな、こういう所で試合というのも』
「……そうね」
『今しばらく続けていたいものだな』
 だがそれは叶わない。やがて動きの止まったチャンピオンを、ヴィルデは前方から抱え込むと一気に持ち上げた。
『これで、決めるわ!』
 垂直落下式キャプチュードでチャンピオンの脳天がリングに叩き込まれ、そして3カウントを聞いた。今度こそ、皆の見ている前でチャンピオンは骸の海に還っていった。

(……私はあきらめんぞ、いつかはアスリートアースで歓声を浴びてみせようぞ……)

 ボスを失いボクサーバニーたちも散り散りにアリスラビリンスの奥に逃げていくのを見つつヴィルデはつぶやいた。
「……かえって闘志を燃え上がらせちゃったかしら」
 まあ、仮にあのグリモア猟兵がまた予知する事があるとしてもさすがに当分先だと思います……たぶん。

●エピローグ
「おーっほっほっほっほ!」
 アイスエイジクイーンは高笑いで四天王たちを労った。
「感謝いたしますわ!おかげで悪魔インクが手に入りましたのですもの!」
 果たして悪魔契約書を完成させるのにあといくつ必要になるか現時点ではわからない。が、少なくともそのための一歩を進めた事は間違いないのだ。おそらく帰還の日もそう遠くはないだろう。
 さてこれからどうしようか。すぐさまグリモア猟兵の次の依頼を受けるか、少し休憩するか、それとも……いずれを選ぶにせよ、猟兵たちはふたたびそれぞれの道を歩き始めるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年12月29日


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#アリスラビリンス
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#西のラスボス『アイスエイジクイーン』
#チャンピオン・スマッシャー


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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はビードット・ワイワイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト