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学校というものは、いつの時代も噂が蔓延っている。
それは事実であったり、あるいは誰かの流布した創作であったり、はたまた虚実が混じり合い形作られたものであった。
そして今日もまた噂話が囁かれる。
「ねえ、聞いたあの噂。 赤い女」
「赤い女? え、なに、また怖い話?」
「そうそう、なんでも隣町の学校で被害者が出たとか!」
「隣町って……それって、信憑性あるの?」
「あるある、マジモノだって! ううん、知らないけど絶対そう!」
●
「はい、と言うわけで今回も都市伝説ベースの依頼だよー!」
にっこにこ笑顔でそう語るのは、グリモア猟兵のミーナ・ペンドルトン(小学生妖狐・f00297)だ。
めったやたらに楽しそうな辺り、どうやら彼女は都市伝説というものが好きなようであった。
今回も、とは言っているが前回を知らない人には通じない話だと気付かないくらいには浮かれている。
でもそこは腐ってもグリモア猟兵。 説明を始めると気持ちをすっと切り替えるのだった。
「依頼の概要を説明するね。 まずは今配った資料の1ページを開いて」
彼女の話を要約するとこうだ。
UDCアースの極東にある島国の地方都市で、最近とある噂がまことしやかに囁かれている。
赤い女。
夜二時半に十字路で赤い服を着た女と擦れ違うと以降視界の端にその女が映り込み、擦れ違った人は三日後に全身を血に染めて死ぬのだという。
そして被害者の遺体からは臓器が一つ持ち去られている、と。
「まぁ、ここまでは単なる噂なんだけどね。 ここからは私が予知した情報を交えて話すね」
第一に、噂とは異なり出現時間は不特定である。
第二に、臓器は持ち去られていたり持ち去られていなかったりまちまちである。
第三に、死因も全身を血に染めて死ぬ以外のパターンも存在する。
「所詮は噂は噂。 事実と違うことは得てして多いから、UDCのエージェントの人と協力して、固定観念に囚われず自由な発想で動くことをお勧めするよ」
それじゃあ、気を付けていってらっしゃいとミーナは猟兵達を送り出すのだった。
神坂あずり
こんにちは、神坂あずりです。
前回に引き続き、今回も都市伝説依頼となります。
OPでも言いましたが、選択肢に囚われず、自由に動いて貰えれば幸いです。
第1章 冒険
『友達の友達から聴いた話:赤い女』
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POW : 夜二時に十字路を歩いて、見付けた赤い服の女に腹パン。
SPD : 赤い服の女と擦れ違った人を三日間護衛して、被害を防ぐ。
WIZ : 持ち去られた臓器や死亡時刻等に手掛かりが無いか、情報を元に犯人を割り出す。
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シキ・ラジル
都市伝説ってコワイのばっかりじゃん、明るいのないの?今回はない?そんなー
っとと、おふざけはおいといて、初めての調査頑張るよ!
うわさはあんまりアテにならなさそう、自分でちゃんと調べないと
エージェントの人にお願いしたら資料もらえるかな?臓器を取られた人について調べたいな。どこをとられたのか、あとどのくらい取られたとか?
臓器って言っても種類あるじゃん。人によって違ってたら、それはそれで情報にならないかなー
他にも調べてる人もいるだろうし、共通点を見つけたらエージェントの人にも伝えたいな!
それにしても見ただけで血まみれで死ぬとか、理不尽すぎない?アタシだったらキレそう
■
麗らかな昼下がり、ごく普通の企業のオフィスに偽装されたUDC組織の支部に、一人の少女が訪れていた。
その年端もいかない――この世界においては、外見的に中学生と呼ばれるであろう――少女は、例えここがごく普通の企業のオフィスだったとしても違和感を禁じえない。 この支部に来る者など、この世界の秘密を知るごく一部の官僚か関連機関の人間か、さもなくば猟兵くらいであった。
「お求めの資料は赤い女に関するものですね。 紙とデータのどちらがよろしいでしょうか?」
「データでお願い。 そっちの方が得意なんだよねー」
「おや、先にいらっしゃったお二方とは違うんですね。 でしたら、奥の端末から該当データにアクセスして頂けます」
受付の職員からゲストキーを受け取ったシキ・ラジル(揺蕩う雷歌・f11241)は、さっそく端末の前に腰を下ろすとデータを精査し始める。
そこには警察組織の捜査情報やUDCエージェントが集めた情報など、多岐に渡って存在していた。
彼女の求める情報。 奪われた臓器に関するものも、この資料の中には十分な情報量があった。
耳に馴染んだ鼻歌を口ずさみながら、資料の中から必要な情報をまとめ直していく。
臓器を抜き取られていた遺体は、被害者のうち精々3割といったところだ。
奪われた臓器は特定の部位というわけでもなく重複している場合もあり、その切除方法も乱雑であった。
……はっきり言って一貫性もなければ目的も見えてこない。
「うーん……これはどういうこと?」
目に映る不可思議な情報を前に、彼女は首を傾げながらも更なる情報を探っていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
一一・一一
【SPD】
赤い女といえば泉を思い出す一一っす
さて、噂と違う部分が多いようっすねぇ…
正式な出現条件とかないか調べてみるっすよ
「コミュ力」を使って聞き込みして、赤い女にあった人間を特定していくっす
すれ違った人で一番日数が近い人に「隙間女」を貼り付けて異常がないか、どういう状態でそうなるのか確認するっすよ。
助けれるようなら助けたいっすけど、どうなるっすかねぇ・・・?
■
「赤い女すか? あー、大分前にみたことあるっすよ」
太陽が中天を少し過ぎた頃、一一・一一(都市伝説と歩む者・f12570)は一人の男子高校生と並んで公園のベンチに腰を下ろしていた。
学生がこんな時間にこんな場所にいるということは……まぁ、恐らくはサボりであろう。
赤いネクタイにだらしなく着崩したブレザー、耳にシルバーのピアス。 いかにもといった風な不良だ。
二人の出会いは単なる偶然であった。
午前中から赤い女について聞き込みを行っていた一一だったが、なかなか遭遇した人物に辿り着けずにいた。
そこで一度昼休憩を取ろうとして入った店でこの不良少年と出会ったのだった。
どうもこの少年、なかなかに都市伝説に詳しい――本人曰く、ダチがそういう話が好きらしい――ようで、こうして二人並んでジャンクフードを食べながら会話をしていた。
「あれっすよね、最近また話題になってる噴水公園に居る女。 目が合うと追いかけてきて滅多刺しにして殺すってやつ」
理不尽すぎて怖いっすよね、と語る少年に一一は首を傾げる。
聞いた噂とも違うし、事前情報ともまた異なる。 どちらかと言うと自分が知っている都市伝説に似ている。
この奇妙なズレには何か理由があるのだろうか?
遭遇したことがあると言う少年に場所と時間帯を聞き、念のためにユーベルコード<隙間より覗き込む女>を監視につけさせるのだった。
成功
🔵🔵🔴
畠・和彦
これは不可思議な事件だねー
都市伝説とはいえ、被害者がいる以上は事件だ
捜査させてもらおう
【WIZ】
ボクの【コミュ力】と【情報収集】を活かそう
全被害者のどの臓器がなかったかと、死亡時刻、その人と親しかった関係者の名を事前に確認しよう
死亡日が分かれば、被害者の関係者に下記情報を聞き出そう
①赤い服の女とすれ違った場所と時間
②被害者の学校または仕事場に向かうルートと帰宅ルート
③更に彼らのよく行く場所
地図に直接それらの場所を記しておこう
それとその女は人が多かったり目立つような場所にはいない筈だ
いたら今頃噂じゃ済まないレベルの死者が出ててるだろうからね
その予測と入手情報から出没場所を推測しよう
■
まだ夕暮れには少し早い時間帯。
その時、畠・和彦(まねごと刑事の変わりモノ・f15729)は窮地に立たされていた。
目の前の相手は間違いなく強敵であった。 そして逃げ道は……どこにも存在しない。
――時は少し遡る。
彼は他の猟兵から共有された情報を元に、被害者の関係者を訪ねていたのだが状況は芳しくなかった。
被害者遺族や交友関係を辿ったものの話を聞けたものはごく僅かで、大抵の場合がすげなく追い返された。
どうにもこうにも上手くいかない、なぜなのか。
「手帳の提示もしないし、おっさん、別に警察とかじゃないよな?」
「捜査はボクのお仕事で……あ、いえ、はい」
「死人が出てんだから、あんまり興味本位で首突っ込むとあんまりいい顔されないぞ」
眼前で睨みつけてくる強敵。 黒髪眼鏡の――大人しそうな外見の割に妙に口調が荒っぽい――少女の言葉に全てが詰まっていた。
UDCアースでは昨今、警察に成りすました詐欺も多いためどうにも警戒されがちであった上に、被害関係者は興味本位で質問されることも多くうんざりしていたのだ。
興味本位ではないが、さりとて一般人相手に猟兵と名乗っても通じない。 何よりも目の前の少女の視線が反論を許してくれそうになかった。
とは言うものの、情報が手に入らないのは困るので何かしっていないかと言葉を繋げると少女は重たい溜息を吐き、和彦の手から地図を奪い取ると素早く目を滑らせると、ペンを走らせる。
「ほら、これでいいだろ。 通学ルートなんて相当親しくても一緒に帰ってる人以外しらないと思うぞ」
「え、これマジ……? なんでこんなことしってるのー!? お嬢さん何者!?」
返された地図には、数人分の通学ルートとよく行っていた場所が記されていた。
まだ未記載であった情報と被っている部分もあるため、情報確度は高そうだ。
和彦が顔を上げると、少女は「ただのちょっと怪事件に詳しいだけの女子高生だ」と、手をひらひらしながら既に立ち去り始めているのだった。
成功
🔵🔵🔴
イリーツァ・ウーツェ
チーム【始祖鳥】
基本はタクシーで移動する。
資料を受け取った後、クィリと別行動し、出現場所へ急行。
それぞれの場所でUCを使い、土地の記憶に干渉。
事件が起きたときの光景を幻影として再現し、実際に視てみる。
バックミラーの彼女にも意見を聞いてみてもいい。
一通り回った後、クィリと連絡を取り、情報共有と合流を行う。
■
日が暮れ始め、空が朱に染まる頃。
狭い路地を抜けた先、十字路の隅で地面に手をついた大柄な青年の姿があった。
彼はしばし閉じていた目を開くと、路肩に停めていたタクシーの運転席へと素早く乗り込み、車を発進させた。
あまり長く停めていると迷惑になる上、場合によっては違反キップを切られる可能性もあった。
タクシーを運転し、大通りに合流したイリーツァ・ウーツェ(不死盾・f14324)は後部座席に居ない誰かに話しかけた。
「先ほどのところはどうやら当たりだ。 噂とは違うものも多いが確かに赤い女はいるようだな」
バックミラーに映る女性は何も答えてはくれないが、そう口に出しながら頭の中でこれまでの情報を整理し始める。
彼は自前のタクシーで事件現場を回り、ユーベルコードの力を用いてその土地の記憶を読み取って回っていた。
普段から人通りの多い土地の記憶は既に薄れて見ることは叶わなかったが、それでも数ヶ所は朧げながらも記憶を残していたのだ。
最初に見れた場所では、真っ赤な空の下、赤いコートを着た女に鋏で顔面を切り裂かれた女性。
次の場所では、赤い制服の女によって全身を賽の目状に咲かせた男性。
更に別の場所では、全身を赤く染めた人の群れに四肢を裂かれた少女。
他にも幾つかあったが、その中でも最も奇妙だったものは、外傷のない状態から突然血を吐き即死したものであった
事前にUDC支部で入手した資料を見るに、恐らくは全ての臓器を抜き取られていた遺体のものであろう。
ちらりと視線を向けたバックミラー越しに、赤い服が視界の隅に見えた気がした。
夜になる前に仲間と合流しようと、イリーツァは車の速度を上げるのであった。
法定速度の範囲で。
大成功
🔵🔵🔵
四季乃・瑠璃
【ダブル】で分身
実際に噂の十字路の最寄りの駅や学校近辺へ。
瑠璃が改造スマホで掲示板やSNSで現在出ている以上の具体的な情報や噂(特に発生時間や臓器、死亡状況等)を中心に、警察のデータベースも含め【ハッキング】等も駆使して【情報収集】。
緋瑪がその間、学生等を中心に噂について【コミュ力、誘惑】を使って聞き込みを実施。
瑠璃も収集を終えたら緋瑪と合流し、得た情報を精査。
後は精査した情報から赤い女との遭遇率の高い時間帯に二人で十字路付近で張り込み、分身の緋瑪が女性とわざとすれ違って、すれ違う瞬間に【早業】で発信機をくっ付ける。
緋瑪「あまり聞かない噂だね」
瑠璃「地域特有の噂なのかな…?」
※アドリブ等歓迎
■
茜色に染まる通学路。
駅近くの喫茶店の一角、女子高生達が集まりパフェを頬張りながら姦しく会話に花を咲かせていた。
一方はこの近隣の高校の制服を着た少女が3人。
そしてもう一方は、それとは違った制服のそっくりな外見を持つ2人組だ。
片やスマホを真剣な顔で覗き込み、片や気楽な表情でパフェを啄みながら雑談をしている。
だが、その目はどこか目の前の女子高生を品定めするかのようでもあった。
「ほんとだって、友達の友達も見たって言ってたし」
「なにそれ、こわーい♪ でもそれってごく普通の口裂け女だよね。 キミ達はみたことないの?」
「私達はいつも一緒だから、そゆのとは会わないよねー」
話の中心となっているのは、最近何かと話題の『赤い女』の噂であった。
彼女達が言うには、その女は赤いコートを着た女で顔の下半分を覆う大きなマスクをつけており、決まって真っ赤に染まったような夕方に現れる。
そして『私、綺麗?』と問いかけ襲い掛かってくる。
逃げても逃げても追いかけてくるのだと言う。 それはもうスプリンターばりの綺麗なフォームで。
女子生徒達と会話している緋瑪の隣でスマホを見ていた四季乃・瑠璃("2人で1人"の殺人姫・f09675)が、素早く画面に視線を走らせる。
瑠璃は今までハッキングを仕掛けた警察のデータベースを閲覧していたが、他の猟兵達から回ってきた情報以上のものはなかった――これは逆に言えば、警察とUDC支部の連携がきちんととれていると言う証左でもあるのだが……。
それはそれとして、警察のデータベースによると夕方にマスクの女性に追いかけられたという事案は確かにあったようだ。 それも複数回に渡って。
これは何かいい手掛かりになりそうだ。 もう少し話を聞いてみる価値はあるだろう。
そして彼女達が伝票を手に席を立ったのは、それから暫くしてからのことであった。
成功
🔵🔵🔴
アルバート・クィリスハール
チーム【始祖鳥】
まずはエージェントの人に資料を貰おうかな。
出現場所の情報(出来れば地図に印をつける)と、被害者の死因トップスリーと、持ち去られた臓器とその状態について。
臓器を持ち去られなかった人は不健康だったりしたのかな?
ここで一度、イリーツァと別れるよ。
僕は出現場所付近の学生に私服警官のふりして情報収集。UDCに偽物の警察手帳用意して貰っとこうか。
噂に詳しそうな女生徒を狙いたいな。おびき寄せて誘惑してコミュ力で言いくるめて聞き出そう。優しく礼儀正しくね。
同時にUCも使って目と耳を広げる。
もし、すでにすれ違った人が居るなら護衛しに行こう。その前にイリーツァに電話して情報共有と合流かなぁ。
■
太陽が稜線の向こうへと沈み始め、空が真っ赤に染まる頃。
事件現場の一つの近くに存在する中学校の前に、アルバート・クィリスハール(空舞う黒鷹・f14129)はいた。
最初はUDC支部の資料から持ち去られた臓器の状態を調べていた彼だったが、良し悪しに関係なく持ち去られていたことから、何かこだわりがあるわけではないと見切りをつけ、それからは私服警官に扮して聞き込みを行っていたのだ。
「そこの君、ちょっといいかな? こういうものなんだけど」
「ひゃ、ひゃい! 今度は何ですか?」
UDC支部に借り受けた警察手帳――どうにも本物臭い物――を見せると、女子中学生はびくりと身を竦ませる。
部活が終わり、これから帰宅しようとしたところだったのだろう少女は突然かけられた声に戸惑っているようだ。
緊張や警戒心を解くように柔和に笑いかけると、おどおどしながらも少女は話を聞く姿勢に入ったようだった。
「最近この辺りであった事件について調べてるんだけど、何か噂を聞いたりしたことはないかな? 例えば赤い服を着た女性とか」
最初は首を傾げた少女だったが、赤い服の女と聞いてなにやら思い当たることがあったのか徐に話し始めた。
時刻は今日のように真っ赤な夕暮れ時。
それはいつもと変わらぬ帰り道。 十字路に差し掛かった時に不意に背後に現れたのだという。
赤いコートに大きなマスク、そして大きな裁ち鋏を手にした女性は『ヨーグルト食べる?』と問いかけ、そのマスクに手をかけ……。、
「で、全力で逃げました!」
「は?」
「どう考えてもやばい人じゃないですかっ、そんなの全力で逃げますよっ!」
ごもっともであった。
話を聞くに彼女、どうやらそこそこ頻繁にこの手の変なモノに出くわすらしく、やばいと思ったら即逃げるようにと先輩に言い含められているという。
逃げ出したまではよかったのだが、それでもなおしつこく追いかけてきてかなり危ない時に、先輩の話を思い出し飴を投げながらある言葉を呟いた。
――ポマード。
そうしたらその女は突然足を止め、からくも逃げきれたとのことだった。
ひとしきり話して満足したのか、さっぱりしたような顔で去っていく少女をアルバートは見送る。
これはどう考えてもアレだ。
この世界、UDCアースのこの国の都市伝説を知っているものなら、誰もが知るであろう口裂け女としか思えなかった。
事前に聞いた噂話とあまりに喰い違うことに首を傾げる彼の前に、一台のタクシーが停まるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
マリン・ラピス
また都市伝説ですか…。
前回かなり手強い敵がいましたから今回も常に警戒しておくべきですかね。
ひとまず私は十字路で待機します。
もし赤い服の女性が来たらあえて何もせずすれ違います。
これで私がターゲットになるでしょう。
その後あらかじめ出しておいた鳥さんにその女性を追跡してもらいます。
たまたま赤い服の女性が通る可能性もありますからね。
これをひたすらに続けます。
私がターゲットになれば被害は減るでしょうし繰り返すことで正確な情報が収集できるはずです。
無論、ターゲットになったからには常に警戒をしておきますよ。
私自身がやられてしまったら元も子もありませんからね。
エドゥアルト・ルーデル
赤い服の女ねぇ…美少女なら良いですなァ
何にせよ都市伝説だろうがなんだろうが足が生えてるならぶちのめせるでござるな
とりあえず十字路に張り込んで赤い服の女が来るまで待ち伏せだ
【迷彩】と【地形の利用】で十字路脇に潜伏し、周辺の観察を行いますぞ
十字路なら安全確認の為にカーブミラーなりで見通しを確保していると思われるので、活用し全ての道を確認するでござるよ
目標と思わしき赤い服の女が十字路に接近してきたら一旦やりすごし、背中が見えた当たりで背後からバックアタック!地獄だ、やぁ!
スリーパー・ホールドで確保、逃げられそうなら何か手がかりになりそうな持ち物を【スリ取って】おくでござるよ。
アドリブ・絡み歓迎
■
とっぷりと日が暮れ、夜の帳が下りる。
頼りない街灯の明かりがうすぼんやりと周囲を照らす。
繁華街からほど近くも大通りからは一つ二つ離れた十字路はぱらぱらと時折人が行き交う。
そんな中、十字路の近くに佇みながら様子を窺っていたマリン・ラピス(禁忌に生み出されし姉妹・f08555)は苦心していた。
なにをそんなに苦心しているかと言えば……すぐ側の影に潜む男性だ。
怪しげな赤い服の女性が近付いてくると、背後から襲い掛かろうとする彼に待ったをかけること幾度か。
繁華街に比較的近い場所だけあり、確かに怪しげな人が通りかかることは多い――というか、こんなところに少女がいるものだから不貞の輩に絡まれることもしばしばあり、側に潜む男性が追い払っていた――が、ある程度の確証もなく攻撃するのは色々と不味い。
「ラピス氏ー、これもダメでござるかぁ? 拙者、そろそろバックアタックを一発ぶちこみたいですぞ」
「ダメですよ、エドゥアルトさん。 それをやると完全にこちらが通り魔です」
「残念無念でござるなァ……」
へんにょりと座り込んだエドゥアルト・ルーデル(黒ヒゲ・f10354)を尻目に、ラピスはユーベルコードで生み出した瑠璃の鳥を、通りがかった赤い制服を着た少女に向けて飛ばす。
彼女は赤い服を着た女性が通りかかる度に鳥を飛ばし追跡させていた。 こうすることで正確な情報を得ることが出来るとの踏んでのことであった。
黙々と時折通りかかる人を眺めることしばし、ふと十字路の反対側の角で一人の男性が立ち止まっていることに気が付く。
白地の赤い服を纏った男性は、言いようもない不安を掻き立てるような異様な雰囲気でじっとこちらを窺っている。
いやがおうにも高まる緊張感に身動きを止めた二人だったが、その時エドゥアルトの第六感が囁く。
――何者かの気配がする、後ろに気を付けろ、と。
自らの直観に従い、振り向きざまに手癖で抜いた10mmピストルから弾丸を撃ち出す。
放たれた弾丸は、エドゥアルトの頭部目掛けて飛来してきた物を撃ち落とし、甲高い音を立て鋏が道路に転がる。
様子を窺うが背後にはもはや何の気配も感じない。
そこでハッと赤い服の男の存在に思い至り、十字路の反対側の視線に戻すが……そこにもまた人影はなく。
遠く繁華街から微かなざわめきが聞こえてくる。
「一体、なんだったんでしょうか……」
「ちょっと分からないでござるなァ。 催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねぇ。 もっと恐ろしいものの」
「あれ? おかしいです」
台詞を遮られしょんぼりするエドゥアルトをスルーして、ラピスは言葉を続ける。
飛ばした瑠璃の鳥の一羽からの反応がいつの間にか途絶えている、と。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シーラ・フリュー
噂って結構事実と異なる伝わり方をしたりしますよね。そのままの形だったら探しやすかったりで楽なのですけれど…。
それだとその分犠牲者が増えそうですし…それはそれでよろしくないですね…。
とりあえず、地道に調査してみましょうか…。
【POW】
夜一時くらいから会えるまで、定期的に十字路を歩いてみたいです。
すれ違えたら、少し怖いですけれど…話しかけてみます…。貴方が噂の赤い服の方ですか、と。
あ、一応【クイックドロウ】で武器をすぐ構えられるようにはしておきますね。
何も反応がなければ、【目立たない】ように【追跡】してみたいです…。
と言っても映り込みがある事を考えると…いえ、やれる事はやってみましょう…!
アレクシス・アルトマイア
さて、これまではただの噂……ということは、まだ被害は出ていないということでしょうか
と、ほっと一息ついてから
でも、このままでは犠牲が出てしまう、ということですね。
一般の方に被害が及ばないようにがんばりましょうっ
皆さんと協力できれば効率的かと思いますっ
それでは、赤い女さんが罪を犯す前に、都市伝説の正体を解き明かしに参りましょう!
まずは被害の防止に、
十字路に怪しげな魔法陣とか描いてみて、こう……インパクトで超えてみたら視界にも入らないで済むかも知れません。
電飾で飾ってみたりもいいですね
もし敵に出逢えば、そして好戦的なら、【従者の礼儀指導】でユーベルコードを撃ち払ってご挨拶を致しましょう。
■
深夜。
昼間でも人通りの少ない路地の奥にある十字路は、この時間になるとまったくと言っていいほどに人気がない。
それでも稀に通り掛かる人はいないことはない。 だからこそ事件が起きやすいとも言えるのだが。
シーラ・フリュー(天然ポーカーフェイス・f00863)もそんな中の一人であった。
そして彼女は今、異様な光景の前に足を止めていた。
その十字路の中央には、その手の怪しげな教団が好みそうないかにもな魔法陣が明滅しながら光を放っていた。
このUDCアースの文明に詳しい者が見れば、それはLEDを用いた電飾の光だと分かるだろう。
当然ながらそれはシーラにも理解できていた。
だがそれ以上にもっとおかしなものがある。
それは嬉々として魔法陣に更なる飾り付けている、両目を目隠しで覆ったこれまた怪しげな従者風の女性だった。
これはもしや召喚的な物かと様子を窺うシーラに、何気なく顔を上げた従者のような女性、アレクシス・アルトマイア(夜天煌路・f02039)が気が付く。
「……おや、遅くにこんなところでどういたしましたか? ここは危険ですよ」
「えっ。 あ、お仕事です……?」
「まあ、こんな時間まで仕事ですか! お疲れ様ですね」
「あ、そちらは一体どうしてこんなところに……」
少し距離を置いて向かい合い、相手の様子を窺いながら会話を交わしていた二人だったが、不意に背後から感じたものに身体が反応する。
それは敵意を持った何者かの視線だ。
先に気付いたのはシーラだったが、行動の速さではアレクシスが勝っていた。
そして互いに背を向け、各々の手に武器を構え振り向き攻撃を放ったのは同時であった。
そこには……誰もいない。 塀に刺さった短剣と弾痕が残るだけだ。
既に気配も霧散し、静寂の中で電飾の光だけが自己主張をしている。
周囲への警戒を解かぬまま、シーラが口を開く。
「あの、もしかして猟兵の方ですか……?」
「貴方も猟兵だったりします?」
このUDCアースにおいて、常日頃から拳銃や短剣を身に着けているものはそうはいない。
そしてこの場所は、つい最近UDCによる事件が起こったと思しき場所である。
ならばそこに居合わせる人物など、UDCのエージェントか猟兵であることは必然だろう。
互いに自己紹介を交わしながら注意深く辺りを探る二人だったが、やはり何者かの気配を感じることはなかった。
そうして、その後も何事もなく夜は更けていく。
大成功
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第2章 集団戦
『『都市伝説』口裂け女』
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POW : 私、きれい?
質問と共に【手で口元を隠していたマスク】を放ち、命中した対象が真実を言えば解除、それ以外はダメージ。簡単な質問ほど威力上昇。
SPD : 黄昏時の口裂けパニック
【自身の影に沈み込み、その場から姿を消す事】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【標的に周辺の影から出現、奇襲を仕掛ける事】で攻撃する。
WIZ : 【常時発動型UC】トワイライトゾーン
【戦闘地域の敵対者を異空間(夕暮れ時の町)】【に強制的に招き入れる。また黄昏時は】【「怪異が起こる時間帯」という噂】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
👑11
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■
翌日。
UDC支部に集まった猟兵達は、情報交換と話し合いの場を設けていた。
これまでの調査の結果から『赤い女』の事件の一端は、口裂け女と思しきUDCによるものである可能性が高いことが判明した。
恐らく口裂け女であろうと思しき目撃情報、その被害者であろう被害現場、死亡推定時刻などから行動範囲が絞られていく。
どうやら口裂け女と思しき赤い女は3つのルートを巡回しているようだ。
そして今日、現れる可能性のある場所もまた3ヶ所であった。
出現時刻を待ち、猟兵達は行動を開始する。
3つのグループに分かれた猟兵達は、各々出現が予想された場所に身を潜めて待機する。
そしてそれはやってくる。
空が真っ赤に染まる時、猟兵達の前に1人の赤い服を着た女が現れた。
それは噂に違わず、赤いコートに顔の半分を覆うほど大きなマスクをした紛うことなき赤い女であった。
そう、1人の赤い女だ。
3ヶ所に分かれた猟兵達それぞれの前に、1人の赤い女が現れていた。
口裂け女は、3人いたのだ。
赤い赤い夕暮れの、異空の町並みに猟兵達は飲み込まれるのだった。
そして、戦いが始まる。
イリーツァ・ウーツェ
【始祖鳥】で行動
顔は悪くないが所業が醜い。
選択肢を与えないまま他者に意見を求めるな。
【POW】
話の流れから見て、タクシーからは降りているな。
遠距離ではリボルバー、近距離では魔杖で相手する。
攻撃よりも仲間をかばうように動く。
アルバートが隙を作ったら急行し、掴んでUCを発動する。
速度を補うために杖を放棄し、地面を力一杯蹴り飛ばす。
砕けるた部分は後で直すから許して欲しい。
アルバート・クィリスハール
チーム【始祖鳥】
他の猟兵さんたちが見たっていう、赤い服の男はなんだったんだろう。
白地の赤い服っていうと血染め? 単純に被害者の霊を利用しただけかな?
【SPD】
影から襲ってくるのか……ならUC使って高めに飛んでおこう。
影は地面に出来るから、空中に居れば襲いにくいよね。自分の周囲に台風みたいに吹き荒れる大気のバリアを張っておけば、鋏を投げられても届かないし。
周囲に被害が出ないくらいの薄さで張るけど、入ってくるのは無理なはず。
あとはUCの力で雷作って攻撃。感電による隙を作る。
イリーツァが接近できればコンボ決めてくれるはず!
ふふっ、やっぱり敵が明確だといいね!
頭使うのは僕の領分じゃないって実感したよ。
シキ・ラジル
うわわわホントにでたー!!わぁ、原色のコートが似合うお姉さんだ、もっとグロっちい見た目してるかと…口がパックリしてるー!?やっぱグロっちいー!
薄気味悪いし空気悪いし!ここがフィールドってこと?
サウンドウェポンを起動、口裂け女に向かって『パフォーマンス』をしながら『衝撃波』を放つよ。
そして『エレクトロレギオン』で小型兵器を召喚!どっから来るか分からないなら、どっから来ても攻撃してやるんだから!
口裂け女はキレイかどうか?口見なけりゃアタシは美人だとは思うけど、それとこれとは話がちがーう!
シーラ・フリュー
口裂け女という名前の方が有名なんですね…。そういえば、そんな都市伝説の話はどこかで見た気がします。
この国の生まれでは無く詳しくはなかったので、いまいちピンと来ていませんでした…。
兎も角、犠牲を出さない為にさっさと倒してしまいたいですね…!
【SPD】
視認されると厄介ですので何処かの物陰に隠れたりして【目立たない】よう気を付けながら、少し距離を取って【鷹の目】で【スナイパー】での【援護射撃】をしていきたいです。
できればまずは武器の鋏を狙っていきたいですが…。
もし敵にユーベルコードを使用されて姿を消された場合は、早めになるべく広い影の少ない場所に移動します。後は攻撃に備えて身構えておきますね…。
一一・一一
口裂け女さんは盲目の少年と出会って幸せに暮らしてほしいっす
まぁオブリビオンになった彼女たちには関係ないことっすね
Q・T・Sで相手が沈み込む前に「スナイパー」するっすよ
「レッドバレット」だと重くなって逆に沈み込むの補助しそうなんで「メテオラ」で範囲攻撃するっす
そのきれいな顔吹き飛ばしてやるっすよ
スナイプしたら奇襲対策影の少ないところに「逃げ足」で逃げるっす
それでも襲いかかってくるから「ポマード!」って唱えるっす
口裂け女も有名すぎて、弱点が多いんスよねぇ…実際にきくかどうかしらないっすけど
エドゥアルト・ルーデル
これが口裂け女!なんか実物見るとがっかり感あるよね
敵が【マスクを外し自分が綺麗かと問うて来てたら】こう言わざるをえない
マヌケッ!裂け目で顔面崩壊だわーッ!気持ち悪いーッ!
お前みたいに口が裂けてる奴が綺麗な訳あるかッ!スカタンッ!
自分を客観的に見れねぇのかヴァーカッ!!
ふぅ…思わず残酷な真実を語ってしまった
あ、拙者知ってるよ、口裂け女に「綺麗じゃない」って答えると斬りつけて来るって事
つまりよぉ…【罠使い】でトラバサミなり足止め用の罠を仕掛けておけば簡単に引っかかるって訳だ
足が止まったら【超大型爆弾】を放って終わり!
アドリブ・絡み歓迎
畠・和彦
あの少女には助けられた
だから戦闘が苦手だからと言ってここから離れる訳にはいかない
・戦闘
仲間から離れすぎず、また仲間の影からも敵が現れることを考えて、仲間の影に密着しない距離を保つ
あと周辺の物影にもなるべく近づかない
基本は後衛でロケットペンシルや拳銃で敵のマスクを迎撃する
また『影の追跡者の召喚』で口避け女一体を追跡させる
肉眼で確認するよりも、影の追跡者なら敵により近いし、また五感を共有しているので影に沈もうとする瞬間が少しでも早く分かると思う
敵が影に沈み始めたら、すぐに皆に警戒を促すよ
また攻撃可能な距離内の影から敵が現れたら、先端が鋭利な特殊加工のシャーペン3本で放つ『投げペンシル』を使用する
四季乃・瑠璃
「口裂け女かぁ…実際には随分有名な都市伝説が正体だったね」
「さすがに3人にいるとは思わなかったよ」
【チェイン】で分身&戦闘力強化
二人及び他の猟兵と連携して戦闘。敵の攻撃は【見切り、残像、ダッシュ】で回避しつつ、【範囲攻撃、2回攻撃、早業、鎧砕き】接触式ジェノサイドボム(以下ボム)による飽和爆撃で周辺の障害物ごと敵を爆破。なるべく障害物を排除する事で奇襲を仕掛けられる影を制限し、奇襲に対応。
影を制限し、他の猟兵とそれぞれの影を互いに注意し合う事で奇襲に対応し、カウンターで爆破するよ
瑠璃「影を完全に取り除くのは難しいけど、敵を制限する事はできる」
緋瑪「そこを狙わせて貰うよ♪」
※アドリブ等歓迎
マリン・ラピス
正体は皆さんの情報からの予測どうりでしたがまさか3人もいるとは…。
ですが今はひとまず目の前にいる1人に集中しないとですね。
できることなら早く倒して他の場所に増援として駆けつけたいですね。
まず相手の動きを封じるために【咎力封じ】で動きを止めます。
相手が抵抗して解こうとするならさらに拘束を強めます。
攻撃は他の方々に全て任せて私は動きを止めることのみに集中します。
相手の強さは未知数ですがどんな相手でも動けなければただの的でしょう?
アレクシス・アルトマイア
なんとお口……お口が裂けていらっしゃる。
これは大変ですね……治療、致しましょうか?
はあ、そう言うものなんですか……
でも、あれですね、猟兵さんたちのほうがバラエティ豊かですね?
今どき、お口が裂けている程度……チャームポイントのひとつなのではないでしょうか?
でも、気になるところを隠すというのは……少し、共感いたします。
それはともかく……どうやらお茶会を始めようという雰囲気ではありませんね。
では……失礼いたします。
【閨への囁き】でスパッとやったり、味方への援護射撃をしたりいたしましょう。
影に沈み込むようでしたら、【礼儀指導】で周囲の影に撃ち込んでユーベルコードを無効化致しましょう。
■
暮れなずむ空の下、一瞬にして空気が切り替わる。
いや、それは空気だけに留まらず、町並みまでをも塗り替えた。
恐らくは、この目の前にいるマスクをした赤い女、口裂け女の仕業であろう。
異空間の起点はここだけではなく、他にも二ヶ所――別動隊のいる場所だろう――から広がっていた。
つまりは、予想された三ヶ所全てにこの都市伝説が現れたということだ。
問題は今眼前にいる口裂け女だが、こちらに気付いていないのかまだ動き出そうとはしていなかった。
「正体は推測通りでしたが、まさか3ヶ所全部に来るとは……少し驚きましたが、今はひとまず目の前に集中しないとですね」
「しかしラピスさんが見たっていう、赤い服の男はなんだったんだろう……白地の赤い服っていうと血染めかな。 被害者の霊とか?」
「いえ、微かですが血の匂いがしたので。 幽霊って匂いとかするのでしょうか?」
物陰に潜み、襲い掛かるタイミングを計りながら小さな声で呟くラピスにアルバートが会話を繋げる。
謎は残っている。 つまりはまだ何かがあるということであろう。
そう言葉を交わす猟兵達の前で、口裂け女がとぷりと影の中へと姿を消した。
思いのほか素早い動きにぎょっとして、警戒心をあらわに辺りを見渡す。
狙われたのは……アレクシスだ。
背後の影から飛び出した口裂け女の振るう包丁が、その背を狙う!
しかし彼女は一歩前へ踏み出すことでその刃を躱すと同時に、反転しながら身を沈め僅かに認識から逸らす。
ふっとアレクシスの気配が消え、次の瞬間、逆に口裂け女の背後に空間跳躍したアレクシスのナイフが閃き血を散らした。
然程の防御力はなさそうだが浅い。
ギリギリで気配に気付いた口裂け女は、身を捻ることで狙いをずらすことに成功していた。
素早く影に潜り込み再度の奇襲を仕掛ける口裂け女だったが、アレクシスもまた認識の死角へ滑り込み背後から奇襲を仕掛ける。
互いに互いの上を行こうと転移しては刃を重ねていく。
この口裂け女、どうにも影に潜り込むのが得意なようで、発動を阻止するタイミングがなかなかに掴み辛い。
技術や手数ではアレクシスが勝っていたが、純粋な力としては口裂け女の方が一枚上手だ。 流石はメジャーな怪異なだけはある。
幾合か斬り結び、バックステップで互いに距離を取る。
片や近接戦過ぎて味方の援護を得られず、片や相手の技術や他の猟兵からの攻撃を警戒して致命傷を与えるに至らない。
――スリーフォールド・レピティション。 つまりは千日手である。
口裂け女は、自らの顔の半分を覆うマスクに手をかけ引き剥がす。
歪な形に裂かれた口が露わになるが、今大事なところはそこではない。 アレクシスは御し難いとみたのか、その手に握られたマスクがイリーツァに投げられ、彼女は問いかける。
――私、きれい?
「なんとお口……お口が裂けていらっしゃる」
「選択肢を与えないまま他者に意見を求めるな。 顔は悪くないが、その所業が醜い」
アレクシスの少々気の抜ける言葉が響く中、イリーツァは深くため息を吐き端的に答える。
返答と共に、乾いた音を立てリボルバーから連続して銃弾が吐き出される。
ひらりと舞い落ちるマスクを穿ちながら飛来する弾丸を避ける口裂け女を、瑠璃の鎖がしゃらりと澄んだ音を奏でながら追撃する。
攻撃に対するものか、はたまた罵詈雑言への怒りか、口裂け女は威嚇の声を上げた。
リロードを終えたイリーツァは発砲を再び返答とする。
「動きが速いわけじゃないですが、風を追ってるみたいに捉えどころがありませんね」
「それならこっちで追い立てるから、上手いこと動きを止めてくれるかな」
手首の返しで鎖を操りながら苦い顔で呟くラピスの頭上から声が降ってくる。
それは重力の枷を外し浮かび上がったアルバートだった。
彼が次々に呼び起こした雷を避ける口裂け女だったが、眼前のことに囚われ足元が疎かだ。
足元に垂れた瑠璃の鎖が波打ち脚を絡め取る。
だがそれではまだ影が開いている。 完全に封じることはできていなかったが、続く漆黒の短剣が影に突き立ち影を閉じた。
もはや逃げるすべを失った口裂け女を落雷が打ち据え、感電した身体が傾ぐ。
その隙を逃さず、アスファルトを踏み砕き急接近する影があった。
「今度は、潔く消えておけ」
掴み上げ浮いた口裂け女の身体にイリーツァの拳が放たれる。
動きを封じられたその身に叩きこまれる連撃に成す術はない。
こうして、歪な裂けた口を持つ女は消滅するのだった。
■
沈むことのない夕日に照らされた町並みの中、足音高く駆ける。
すぐ後を追うのは、ガシャガシャと金属を地面に叩きつける音だ。
広めの通りを選び、交差点を曲がってゆく。
狭い路地では左右の影に挟まれる形になり、口裂け女の影移動の能力を考えると、できるならば狭い場所は避けた方が無難だろうとの考えてのことだった。
戦闘開始当初よりは速度を落とした女が、道路をガリガリと削りながら交差点の角を曲がり姿を現す。
その停止した瞬間を狙い、振り向いた一一の両手に保持されたスナイパーライフルが火を噴く。
「そのきれいな顔吹き飛ばしてやるっすよ」
「そういう台詞は、ちゃんと肩に担いでから言うでござるよォ!」
「そんなこと言ってる場合じゃないと思うんですけど!? 命のやりとりしてるところですよねぇ!?」
むしろ両手にライフルを構えた姿は、どちらかと言えば某有名なロボットアニメを彷彿とさせる。
下手につっこむのも野暮……というよりは藪蛇か。 巻き込まれてはたまったものではないのだが、和彦はつっこまずにはいられなかった。
ノリがいささかおかしなことになっているが気にしてはいけないし、どことなく緊張感の抜けた感じがするがするのも致し方ない。
相手も緊張感が抜ける様相になってしまっているのだから。
トラバサミを引きずりながら現れた口裂け女は、自身に向く銃口を認めると、即座に裁ち鋏を眼前に構える。
正確無比に放たれた弾丸だからこそ、来る場所が分かっているのならばある程度の対処はできる。
人間業ではないが、実際に人間ではないのだから仕方ない。 構えられた鋏に弾かれた銃弾は、街灯に当たったところで炸裂し破片を撒き散らす。
防がれたと見るや否や、三人は再び逃走を開始した。
なぜ三人がこんな戦い方をしているのか? 答えは簡単だった。
そう、誰も前衛をできる人間がいないのである!
別に彼らは遊んで走り回っているわけではないのだ。
そう、全体的に純粋な前衛が少なかったのである!!
故に、逃げ撃ちという戦法を取るほかなかったのだ。
再び角を曲がる――実を言うと、先ほどから右に右にとずっと同じ場所をぐるぐると回っていた。
だが今度は少し様相が違った。 続けて追ってくる足音の主が姿を現さない。
「あ、影の中に沈み込んだ」
「上から来るぞ! 気を付けろよォ!」
「上に影はないっすよ」
口裂け女につけていた影の追跡者からの情報を伝える和彦に、エドゥアルトと一一が答え、密集しすぎない陣形で周囲を警戒する。
誰のいった言葉だったのか『一一! 後ろ、後ろ!』という声に反応して、振り下ろされた鋏を思わずイーグレットの銃身で受け止めた。
瞬時の判断であったが、軽量なライトニングで受け止めていたら銃身がいかれていたであろう重い一撃だ。
「ポマード! ポマード! ポマード! ……ってやっぱり効いてないっす!?」
咄嗟に三度唱える。 だが、口裂け女はその動きを止めない。
効かない可能性は薄々考えてはいたが、まったく効果がなさそうに見える……というかこの口裂け女。 一見すると口が裂けているように見えるが近くでよくよく観察すると、化粧で裂けているようなメイクをしているだけで実際は裂けていない。
口裂け女なのに口が裂けていないとはこれ如何に。
完全に詐欺である。
「マジか! じゃあ、化粧落とせば美人ってことじゃねぇか! ……はっ、拙者さっきボロクソに言ってしまったですぞ!?」
「悶えてる暇があるなら、ちょっとは助けようよー!?」
ギリギリと銃と鋏で鍔迫り合いう口裂け女に、鋭利な先端を持つ三色のシャーペンが投げつけられる。
和彦の援護により、口裂け女は飛びずさった隙に一一が体勢を立て直し反撃しようとしたその時、猟兵達は気付いてしまった。
口裂け女がポケットから取り出すものを。
それは先ほど破壊したはずだ。 それはつまり……。
「予備のマスク……だと!?」
愕然とする猟兵達を前に、口の裂けていない口裂け女は悠々とマスクを装備する。
戦いはまだ終わりそうになかった。
■
姿勢低く物陰に身を潜ませ、吹き荒れる爆風をやり過ごす。
ここからかなり離れた遠方でもまた爆音が轟き、真っ赤に染まった夕空に朦々と黒煙が立ち上っていた。
あちらは確か、後衛ばかりだったグループが担当した区域だっただろうか。 そんなことに思いを馳せながら、眼前に広がる惨状に目を戻す。
そこにあった幾棟もの家屋は瓦礫へと姿を変え、町の只中に広い更地が生み出されていた。
それは口裂け女が目視できた瞬間、瑠璃とその分身体である緋瑪、二人分の魔力を溜め込んだ魔力爆弾を最大範囲で放った結果による破壊であった。
余分な影があるから不意打ちが怖い、ならば影の数を制限すればいいと瑠璃が提案したことで行われた計画的なものだ。
所詮は異空間。 実際の町ではないとはいえ、なかなか大味な作戦である。
だがそのおかげか、口裂け女が通れそうな大きさの影という影は駆逐され、近くにあるのは精々が自分達の足元の影くらいだ。
問題があるとすれば……立ち込めた砂煙が晴れたその先に、爆発に巻き込まれながらも五体満足で立っている口裂け女――もちろん服やマスクはボロボロだ――がいることくらいだろうか。
耳に掛ける部分が切れ殆ど落ちかけたマスクを投げ捨て捨て、綺麗にパックリと裂けた口を晒した女はポケットから医療用メスを取り出す。
これだけの破壊に巻き込まれながらも動きに淀みもない、どうやら随分とタフなようである。
「この国の生まれではないので、いまいちピンと来ていませんでしたが、あれが口裂け女ですか」
「口見なけりゃアタシは美人だとは思うけど、それとこれとは話がちがーう! 口がパックリしてるのがグロっちいー!」
「今ので殺ったかなーと思ったんだけど、頭庇ってたけど面攻撃じゃ効き辛いのかな? まあ、いいや。 私達が目晦ましするから後はよろしくね」
各々好き勝手に感想を述べながらも攻撃を開始する。
迫る口裂け女を瑠璃と緋瑪が迎え撃つ、近・中距離からの足止めがその役目だ。
先ほどと同じくジェノサイド・ボムによる爆発での目晦ましではあるが、魔力を込めに込めた先の一撃とは比ぶべくもない規模であるが、目晦ましにはこれで十分であった。
むしろこの場合、大規模な爆発は逆に味方の視界を塞ぎ、遠距離攻撃の妨害になりかねない。
爆風により足を止めた口裂け女の横っ面を銃弾叩き、盛大にその身を仰け反らせる。
地面に伏せ息をひそめ気配を隠したシーラの一撃だ。
こんな更地で気配を隠すも何もないと思われるだろうが、案外そうでもない。
なぜならば爆発のほかにも騒がしい者がいるからだ。
「さぁ、みんな、ゴーゴー!」
踊りながらサウンドウェポンで衝撃波を放つシキの号令で、召喚されたミニシキちゃん人形が口裂け女に特攻を仕掛けていく!
群がる人形の攻撃力は然程なくとも、対処に手間取っている間に身体を打ち据える狙撃と音と爆発の衝撃波は堪えかねるのか、口裂け女はずぶずぶと自らの影へと沈み込む。
こうなってしまっては、相手が出てくるまでは攻撃のしようがない。
だが彼女達にとっては何ら問題はなかった。
周囲は更地になっており、大した影は存在していない。
シーラは伏せたことで、彼女の影は人一人通り抜けられるほどの大きさはなく。
瑠璃と緋瑪、人形達の場所に出てきては本末転倒だ。
ならば残る場所は一ヶ所だけだ。
瑠璃の自動拳銃UDC-K100カスタムの銃口の先に、シーラの狙撃銃リュエール・デ・ゼトワールのスコープの中にシキの姿が映り込み……。
――二つの銃口から弾丸が叩きこまれる!
シキが少女が出すには少しだけ不適当な悲鳴を上げ、兎のように飛び跳ねた後ろで、彼女の影から姿を現した口裂け女が銃弾を受けて仰け反る。
だが一発では終わりはしない。
次々と頭部に向けて撃ち込まれる弾の衝撃に、口裂け女は一歩二歩と後退していく。
弾倉が空になるまでしこたま弾丸を叩きこまれた赤い服の女は、土煙を起こしながらどさりと仰向けに倒れ込む。
念のためにサブウェポンのリボルバーに持ち替えたシーラが注意深く近付く目の前で、口裂け女は煙となって消滅していく。
こうして彼女達の戦いは終わりを告げ、茜色の空が剥がれ落ち、瓦礫と化した町並みは捲り返されるように姿を失う。
そして後に残ったのは、街灯に照らされ静寂の満ちる夜の街並みだけであった。
大成功
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第3章 ボス戦
『『都市伝説』隙間少女』
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POW : 領域
【蜘蛛の巣の様に空間の裂け目】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : 恐怖
【周囲に作り出した多数の空間の裂け目】から【今まで異空間に捕われていた一般人】を放ち、【その感情を操り、猟兵達に抱き着かせる事】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ : 移動
小さな【空間の裂け目を作り、その裂け目】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【異空間で、別の場所に裂け目を作る事】で、いつでも外に出られる。
👑11
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■
口裂け女との戦いが終わり、時間も随分と経ち、もうすぐ日付も変わろうという頃。
猟兵達は一旦情報を整理するためにUDC支部の一室、地下にある会議室へと集まっていた。
なぜオフィスに地下室などがあるのか?
それはUDC組織では何かと物騒な物――銃火器や正体不明のオブジェクトなど――も扱うこともあるからである。
要するに隔離設備だ。
――閑話休題。
では状況を整理しよう。
一つ。
まずなぜ口裂け女は三体現れたのか?
これは口裂け女の都市伝説を調べると簡単に判明した。
三姉妹説だ。
各々口の裂け方や武器が違ったのは、恐らくはこの説をベースとして形作られた都市伝説型のUDCだったからであろう。
二つ。
臓器が抜き取られていた件は口裂け女の犯行とは思い難い。
口裂け女の都市伝説にはそんなものは存在しないから当然だろう。
三つ。
赤い服の男は何者なのか。
全身を赤く染めた人の群れの一端の可能性はあるが、情報不足だ。
四つ。
口裂け女のものとは思えない殺害方法は誰がなしたのか。
一部は赤い人の群れであろが、説明のつかないものもある。
五つ。
赤い女を探り、十字路に待機していた時の視線や攻撃は誰だったのか。
まだ姿を現さない何者かがいる、ということは間違いなかった。
そして最後に。
『赤い女の噂』は一体なんだったのか。
最初に聞いた噂話と、実際に起こっている事件があまりにも乖離している。
そこに何者かの作為が感じて仕方がないのだ。
赤い女の噂自体はただのフェイクで、その裏に何かがあるのではないか?
「あぁ、違う違う、赤い女はフェイク情報じゃないよ。 アレは単純にまだ途中だったんだよ」
その時、自然と会話に混ざってくる少女がいた。
支部の職員にはこの部屋には入ってこないように通達をしていたはずだし、なによりつい今までこの場に"赤い制服"を纏った少女は居なかったはずだ。
突然、支部内にけたたましい警報が鳴り響く。
それと同時に蛍光灯の明かり落ち、代わりに緊急事態を告げる非常灯の赤い光が灯る。
各階層、各部屋を隔離するために全ての扉にロックが掛かり、各所の廊下の隔壁が降ろされたのか遠くから機械の駆動音が聞こえてくる。
そして猟兵達の中に、自然と紛れ込んでいた少女はくすりと笑うとこう言ったのだった。
「せっかくの私が手間暇かけて育てた噂を台無しにしてくれた猟兵さんたちにお礼参りに来ちゃった」
四季乃・瑠璃
「敵」を認識した瞬間、反射的に二人同時に躊躇なく敵に【ドロウ、早業】でK100を発砲
これで殺せるとは思ってないが、殺人姫の本能として即座に先制を撃ち込む。
緋瑪「こちらの拠点に乗り込んでくるなんて、良い度胸してるね」
瑠璃「…場所が悪い…ノヴァは使えないかな…。毒も使い難い…」
UCの効果で分身
他の猟兵とも連携して戦闘。【範囲攻撃、2回攻撃、早業】接触式ジェノサイドボム(以下ボム)による連続爆破とK100による銃撃の連携で攻撃。
ボムは地下で建物の倒壊や味方への被害を考えつつ使用。
敵の攻撃は【見切り、残像】で回避。
ラストは二人の魔力を集中して【ジェノサイドブレイカー】発射で仕留めるよ!
※アドリブ等歓迎
畠・和彦
隙間女か
直にくるとは
だが成程、手口が雑で異なってたのは多くの噂を流す為
噂が都市伝説を生むから、か
後はボクらと接触した赤い服の男などの事だが
「君、姿変えられる?
まさか空間に引きずりこんだ人を利用してる?」
しかし、この密閉空間の状況はマズイな……
・戦闘
注意すべきは空間の裂け目
【失せ物探し】でこれを早く見つけ、皆に注意を促し【ダッシュ 】で距離をとる
「移動」は触れなければいい
「領域」も範囲外へ逃れる
不可能なら【地形の利用】で会議室の備品を盾にする
一般人が放たれた時はロケットペンシルの芯を発射(【投擲】)して【マヒ攻撃】、近づかれたら杖で【気絶攻撃】
『投げペンシル』は隙がある時に一発ずつ確実に当てる
一一・一一
僕の友人の隙間女さんと違って可愛げがないっすね
ところで僕、口裂け女にはなんとか勝てたんスね
とりあえず声に即時反応できるならして『Q・T・S』で「レッドバレット」を撃ち込んで置こうっすかね
襲いかかってくる一般人の方々には「スパイダー」で「救助活動」というなの拘束して隅っこに転がしておくっすよ
あとは距離をとりつつ「援護射撃」でみんなの援護しておくっす
それにしても、うわさ話を意図的に発生させて都市伝説を発現させれるならつまり僕も都市伝説になれる…?
とか考えてこっちの隙間女に叩かれておくっす
アドリブ・協力行動歓迎っす
シキ・ラジル
お礼参り…えっ殴り込み?っていうか誰!?育てるってどういうこと?アレよりもっとヤバイのが来るかもしれなかったの!?
聞きたいことは山ほどあるけど、とにかく戦わないと!
サウンドウェポンを起動して「パフォーマンス」しながら「サウンド・オブ・パワー」で味方を強化していくよ。
その後は「衝撃波」の「援護射撃」でちょっとでも体力を削ってやるんだから!
こんなややこしいことするような趣味の悪いヤツ、犠牲になった人達のためにもぶん殴ってやらないと。そうでしょ?
マリン・ラピス
いつの間に!
ここまで誰にも気づかれずにくるなんて…。
しかもこんな接近することを許してしまうなんて…。
いや、今は目の前の敵をなんとかしないと!
ひとまず早急にその場から飛びのいて【クリスタライズ】で姿を消します。
おそらく相当手強い相手でしょうが、どんな相手でも不可視の攻撃を全ていなす事は難しいはずです。
速度と手数を意識して攻撃することで相手の体力を削るように戦います。
あとは体力が無くなるのが私が先になるか、敵が先になるかです。
この脅威は今ここでなんとしても止めなければ!
シーラ・フリュー
赤い服の女は口裂け女とは別にまだ居たんですね…。それにしても、そちらから来ていただけるとは思いませんでした…。
色々な謎が分かったような分からなかったような…ですけど、まずは目の前の事をどうにかしないとですね。
【SPD】
【目立たない】ように気を付けつつ【スナイパー】で【援護射撃】を。【早業】と【クイックドロウ】でどんどん撃ちます…!
今回は隠れる場所が有ればいいんですけど…前のように隠れる場所が無ければ、大人しく後方からになります…。
後は…空間の裂け目には注意しないとですね…?一般人がこちらに来たら、傷付けたくはないので一旦【ダッシュ】で逃げます。抱き付かれたら【怪力】で引き離したい所ですね…。
エドゥアルト・ルーデル
…良かった可愛いヨシ!
それにしてもお礼参りですって!オムライスに❤と書くやつ?
しかし空間を操るタイプか…厄介ですな、どう攻略したものか…
…なんてこった呼び出してた【知らない人】が【空間の裂け目】に落ちた!
だがこれで隙間から好き勝手は出来なくなったな!逃げ込もうとしたら知らない人に押し返させたりさせますぞ!
え、知らない人って誰だって?拙者にもわからん…
現実空間ならこっちのもんだ!室内だろうが関係ねぇ、爆破してぇ
銃撃しつつ【罠使い】で爆破系のトラップを仕掛け、相手の移動に合わせて起爆でござる
アドリブ・絡み歓迎
アレクシス・アルトマイア
そちらから来てくださるとは
手間が省けてありがたいことですね。
一般人を助ける感じでサポートに回りましょう。
【従者の独立幇助】で操られた一般人の方々の呪縛を立ちきって解放致しましょう。
一般人さんは危険のないようにUDC組織の方々に預けたいところですが、隔離されてしまったままなら鋼糸でぐるぐる巻きにして保護しておきましょう。
一般人へ被害が及びそうな不躾な攻撃は【従者の礼儀指導】で撃ち払います。
二丁拳銃や短剣での二回攻撃に援護射撃で味方の隙をカバーしますよ。
こちらへの意識が逸れていたなら【閨への囁き】での暗殺もしてみちゃいましょうっ
「っ……いつの間にこんなに接近してっ!」
「お礼参り……えっ殴り込み? っていうか!?」
慌てて振り返るラピスに続き、「誰」と言おうとしたシキの声を遮り二発の銃声が轟く。
それから数瞬遅れ、更に二発の銃声が追い打ちをかける。
それぞれがハンドガンを構えた瑠璃と緋瑪と、両腕にスナイパーライフルを抱えた一一だ。
だが……。
「やだなぁもう、何も言わずにいきなり撃ってくるなんて怖い怖い」
「あっさり受け止めておきながらどの口が言うっすか……可愛げがないっすね」
「……良かった可愛いヨシ!」
猟兵達が先制攻撃を仕掛けてくることは先刻承知。
来ることが分かっているならば対処は容易いと、前面に開いた空間の裂け目を閉じると、まったく正反対の反応を返す一一とエドゥアルトに、赤い制服の少女は呆れ顔で肩を竦めていた。
これで殺せるとは思ってはいなかったが、こうもあっさりと対処されると如何ともしがたい。
しかしこの"赤い制服"の少女。 調査の段階で一部の猟兵達が見聞きした中に確かに存在していた。
ある時は被害者男性の全身を賽の目状に咲かせ、またある時は十字路に通行人として表れ。
そして、調査する猟兵達の様子を窺う目としても。
「赤い服の女は、口裂け女とは別にまだ居たんですね……。 それにしても、そちらから来ていただけるとは思いませんでした……」
「こちらの拠点に乗り込んでくるなんて、良い度胸してるね」
「警備も隙間だかけでガバガバだったからね。 ちょーっと隙間を開けてあげればこの通り」
そう言いながら彼女は、気楽な雰囲気で空間に隙間を開いて見せる。
対する猟兵達は、言葉を交わしながらも赤い制服の少女から距離を取り、囲い込むように陣形を整えていく。
少女の方もそれには気付いているようではあったが、特に気にした様子もない。
囲まれた程度ならどうとでもなると言う自信の現れか、はたまたただの慢心か。
「……なるほど隙間女か。 まさか直にくるとはね」
「ノンノン、隙間少女だよ」
何かこだわりでもあるのか、和彦の呼び名に否を突き付ける赤い制服の少女改め隙間少女。
相手はまだこちらを舐めているからこそ付け入る隙があるというもの、油断している間に一気に畳みかける他にないだろう。
カンッ……カラン。
金属質な音を立てながら箱状の物が隙間少女の足元に転がり込み、次の瞬間、カチリという音と共に閃光を放ち小規模な爆発を起こした。
室内だろうが知ったこっちゃねぇとばかりに爆発物を使用するエドゥアルトに、瑠璃も便乗して接触式ジェノサイドボムを放り投げる。
幸いにして元々UDCを隔離するために作られた地下だ、多少の爆発程度ではびくともしない作りのようだった。
「っ、まったく、猟兵ってやつは無茶するなぁ!」
「おや、そっちから来てくださるとは、手間が省けてありがたことですね」
「んなぁ……っ!?」
爆炎を突き破り、僅かに赤い制服を煤けさせた少女が飛び出してくるのに合わせるように、アレクシスが振るうナイフが首元に迫る。
悪態を吐きながら、わざと姿勢を崩すことで刃を避けた隙間少女の腕からパッと朱が散る。
避けそこなったわけではない。それは戦いが始まった直後に<クリスタライズ>で姿を晦ましたラピスの攻撃だ。
戦法としてはかなり有用だった。 その証拠に隙間少女もやり辛そうに忙しなく視線を揺らしていた。
惜しむらくは体力をガリガリと削られるため、短期決戦にせざるを得ないことだろう。
見えない敵に業を煮やしたのか、隙間少女は何もない空間に向けて腕を払う。
「ああもう、鬱陶しい!」
「まずい、みんな物陰に隠れて!」
和彦はそう言うのが早いか、即座に側にあった金属製の棚を引きずり倒して盾にする。
注意深く観察していた彼はその動作の意味に気付いたのだ。 それが隙間少女が<領域>を広げる攻撃の予兆だということを。
各々が遮蔽に隠れるのと同時に破壊の嵐が吹き荒れる!
細切れに壊れた椅子がバラバラと降り注ぎ、机や棚が削られ粉が舞い散る。
迂闊に姿を現わせば賽の目状に刻まれかねない。 猟兵達は今はただ、息をひそめて反撃の機会を窺う。
それはそう長くは続かず、突如として途切れる。
敵の警戒しながらも反撃に転じるため、様子を窺いながら姿を現した猟兵達の前には……人の群れがあった。
老若男女、服装もバラバラ、比較的健康そうな人から怪我をしているのか服を赤く染めた者まで様々な人の群れだ。
それは異空間に捕らわれ、感情を操られた無数の一般人である。
人垣の向こうで、面白い見世物でも眺めるかのような態度で隙間少女が指示を出す。
――猟兵達を八つ裂きにせよ、と。
大挙して押し寄せる人の群れに、二種類の糸が投げかけられる。
粘着性のワイヤーに絡め取られた人は、神経毒の込められたロケットペンシルの芯を即座に撃ち込まれて意識を刈り取られ。
星の如き淡い輝きを持つ鋼糸に巻かれた人は、その傷と感情操作の呪縛を断ち切られて転がされていく。
「ここはボク達に任せて、隙間少女の方を頼むよ」
「そうですねぇ、放っておくと余計なちゃちゃを入れてこられそうです」
「こっちが終わったら、すぐにそっちの援護に回るっすよ」
「うわわ、でもこれちょっと数が多くない!?」
そう言った和彦が接近してきた一般人を杖で気絶させると、一一が縛り上げて部屋の隅に転がす。
数に任せて押し込まれないように衝撃波で全体を押し戻すシキ。
流れ作業のようでありつつも、人の圧力は馬鹿には出来ない。 人波の中で倒れるものが居ては人死にもありえるからだ。
危険な状態の人はアレクシスが鋼糸で釣りあげ、回復と洗脳の解除をして後ろへと退けるその横を、隙間少女を討つために走り抜ける。
しかしその間にも群れからあぶれ、襲い掛かってくる一般人もいた。
狂乱に侵され飛び掛かる一般人を、流れるような動作で投げ飛ばしたシーラは、射線に収まった隙間少女目掛けて引き金を絞る。
放たれた弾丸は少女の額にぶち当たり、上体を大きく仰け反らせた。
だが相手は人ならざる怪物である。 この程度は大したダメージにはなっていないだろう。
反撃される前に猟兵達は次々と攻撃を仕掛けていく。
「逃がさない、このまま抑え込ませてもらうよ。 行くよ、緋瑪」
「オッケー、瑠璃。 派手にやっちゃお♪」
「拙者もおっけーでござるよォ! 派手にやっちゃお❤」
瑠璃と緋瑪が生み出した複数の魔力爆弾に混じり、仕掛けるのも面倒くさいとばかりにエドゥアルトが便乗して投げ込んだトラップ用の爆発物が起爆し、連鎖的に誘爆を起こし赤い制服を翻弄する。
爆炎に紛れ接近したラピスの袈裟懸けに振るわれた刃に鮮血が飛び散り、更にバックステップで離脱するついでとばかりに逆袈裟に切り上げ血霧が舞う。
「これで、どうですか!」
「舐めるな猟兵どもがっ!!」
飛びずさるラピス目掛けて空間が引き裂かれる。 真っ赤な制服を赤黒く染めながら伸ばされた腕はラピスの襟首に掴みかかり……ガッ、と何者かの手によって阻止された。
その腕の伸びた先に目を向けた者は、その瞬間一つの単語に思考が支配された。
――この人、誰?
そこには見知らぬ男が立っていた。
召喚したエドゥアルトですらそれが誰か分からないのだ。 なぜなら『知らない人』を呼び出すユーベルコードだからだ。
誰だかはよく分からないが助かったことには違いない、相手が都市伝説なのだからTさん(仮称)としておこう。
Tさんは空間の隙間に引きずり込まれると、そのままポイっと人の群れの方に開いた隙間から排出され人波に飲み込まれて送還されていく。
だが彼の尊い犠牲のおかげで、隙間少女に隙が生まれる。
この機を逃さないとばかりに放たれたシーラの連続射撃によって足を止めた少女の視界を、ラピスラズリで形作られた鳥がばさりと遮る。
「邪魔よ! ……って、え?」
払われ砕け散った青い鳥がきらきらと舞い落ちる中、赤い少女の目に映ったのは自らを覗き込む二つの銃口。
極限まで魔力を集束された銃の引き金が引かれる。
チカチカと光が瞬き、光が奔流となり少女の姿を飲み込んだ。
■
こうして戦いは終わりを告げた……のだが、猟兵達は依然として会議室から動くことができずにいた。
なぜならば依然として扉はロックされ、隔壁が下りたままであったからだ。
扉や隔壁を無理やり破壊すれば出ることも可能だろうが、遠からず開かれるであろうものを戦闘後に壊すのはなかなか骨が折れるのだ。
なによりも隙間少女の呪縛から解き放たれたとはいえ、気絶したままの大勢の一般人を放置していくわけにもいかなかった。
「……あ、そうだ。 あれってどういう意味だったんだろ?」
「あれとはなんでしょうか? はい、どうぞ」
「おほっ、メイドさん? 手ずから入れたお茶でござるか」
生き残っていたテーブルを起こしながらふと思い出したように声を上げるシキに、テーブルの上にお茶を並べたアレクシスが問い返す。
ありがたそうに拝んでいるエドゥアルトは脇に置いておこう。
こうして戦闘後にお茶ができるのだから、部屋の隅にあったお茶セットが辛うじて破壊を免れていたことは僥倖であった。
各々椅子や床、瓦礫の上に座り込みお茶を啜りながら話し始める。
「ほら、あの子が来た時言ってた『手間暇かけて育てた噂』って」
「そういえば言ってましたね……分かったような分からなかったような……ですけど」
「あー、あれすか。 意図的に噂を流して都市伝説を発現させてたんじゃないっすかね」
ふーふーとお茶を冷まし、一口お茶を啜ったシーナがぽややんと頷くのを横に、一一の推測が続く。
もしかすると同じ方法で僕も都市伝説になれる……? と呟く彼の頭をぺしりと叩く音だけが聞こえてきた。
近くには……誰も居ない。 敵意は感じないから、危険なものではないのだろう。
和彦はお茶を啜ると共にため息を吐きながら小さく言葉を零した。
「なるほどな、通りで噂話がちぐはぐだったわけだよ」
「沢山の噂を流して、同時に複数の噂を生み出していたわけですね」
「はい、真面目な話はここまでにして、お菓子でも食べない?」
「あ、それわたしの!」
神妙な顔で頷くラピスだったが、続く瑠璃と緋瑪の会話で空気が弛緩する。
そして彼女から提供されたスティック菓子によってゆったりとした時間が流れ始めるのだった。
なお、隔壁が開いたのはそれから更に1時間後のことであった。
大成功
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