黒烏の街に白兎跳ねる
●険しき山に住まう黒羽の種族
グリモアベース。
「獣人戦線にまつわる予知を得た。手を貸してくれぬか」
集まった猟兵たちを前に、龍の神のグリモア猟兵、水鏡・多摘(今は何もなく・f28349)は静かに告げた。
「『【Q】覚醒する獣人達』の儀式魔術の結果、この世界の猟兵に未だ覚醒していない種族に対して幻朧帝国のエージェントが大規模な破壊工作を行うという事件が予知されるようになっておる。破壊工作は逢魔弾道弾を利用したもので、その種族の獣人が多く住まう街に設置、起爆させることで街全てをオブリビオン蠢く逢魔が辻へと変える極めて悪辣なもの。設置前にエージェントを発見し撃破するために皆の力が必要となる」
龍神の話によると、今回事件が予知されたのは欧州の山岳地帯に居を構えるカラス獣人の街だという。
「この街の特徴は岩肌に築かれており、険しい地形にトンネル等を組み合わせた守りの拠点として超大国の侵略を凌いできておる。先日の獣人世界大戦を経て侵略の勢いが弱まっておるためか、現在は破壊された街の補修や改造で人手を必要としておる。よければ手を貸して住民と交流しておくのもいいじゃろう」
そして今回事件を引き起こすエージェントについて多摘は語る。
「『レックス・ラビットゲート大佐と焼尽中隊』、そんな名前のウサギの部隊で、F.O.N戦略情報局の特務部隊であるがどういう約定か幻朧帝国に力を貸しに来たようで、このカラスの街の険しい地形にも対応できる戦闘力を有しておる。接近戦にロケットランチャー、或いは配下への指揮で攻撃を重ねてくる厄介な敵じゃ。決して逃さぬよう撃破を頼みたい」
そう龍神は言って、宝珠形のグリモアを転送のために取り出した。
「先日は少数種族のサメが新たに猟兵に覚醒したが、カラス達も猟兵に覚醒する可能性は十分にある。其の未来にたどり着く為には多くの事件を解決していく必要があるじゃろう。……だがそれ以前に、これより起きるであろう悲劇を見過ごすことはできぬ」
どうか頼んだぞ、と多摘は話を締め括るとグリモアを輝かせ、猟兵たちを岩肌に築かれしカラス達の街へと転送したのであった。
寅杜柳
オープニングをお読み頂き有難うございます。
カラス、愛嬌ありますよね。
第一章はカラス獣人が住民の大半を占めるヨーロッパの山岳地帯の街で復興のお手伝いをお願いします。
街は山肌にトンネルも組み合わせて築かれており、カラス達は高所への物資輸送は得意としているようですが飛べない狭所での移動や作業はやや不得意としているのでそこを助けるといいかもしれません。
上手く仲良くなって協力を得ることができれば第二章の戦いで空から援護してくれるかもしれません。
第二章は逢魔弾道弾を設置しようとやってくる『レックス・ラビットゲート大佐と焼尽中隊』との戦いになります。
こちらは断章で冒頭に状況説明を追加致しますのでそちらもご確認下さい。
それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
第1章 日常
『復興作戦』
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POW : 大量の資材を運ぶ
SPD : 育ちの早い作物の畑を作る
WIZ : 子供達と遊んであげる
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赤星・緋色(サポート)
なんやかんやで事件を解決に導こうとします
フリーダムかつアグレッシブなアドリブも可
合わせ等も自由にどうぞ
●緋色の少年は岩肌を駆ける
欧州の山岳地帯に築かれたカラス獣人達の街は復興中、黒の翼をばさばさと羽ばたかせて半壊した建物の補修用建材をあちらこちらへと運んでいく姿が見える。
空に何も無い開けた空間ではカラス達の移動はとても容易で、岩肌に寄り添うように築かれた建物に次々に資材が運ばれて階梯毎に適した復興作業を行っている。
けれど岩肌に掘られたトンネルの中まではその翼による機動力は存分には活かせない。狭いトンネルの中、羽を痛めてしまわないようにしつつ慎重に作業する大柄な階梯のカラス達と、逆に小柄で作業が捗らない妖精階梯や純粋階梯のカラス達とで少々復興は捗っていないようだ。
「ちょっとお手伝いさせてもらおうかな」
そこにやってきたのは緋色のバーチャルキャラクター、赤星・緋色(サンプルキャラクター・f03675)。
圧縮空気を駆動力に変えるブースターレッドの加速で岩場を軽々駆け抜けつつトンネル内へ飛び込んでカラス獣人達の作業の手助けを行っている。
スカイダンサーの身軽さは空を自在に舞うカラスにも劣らぬ自由さを示していて、彼の復興協力に手助けされたカラス達も大喜びで受け入れている。
(「エージェントはまだ来ないかな?」)
念の為岩肌から周囲を警戒する緋色だがまだ敵のウサギの姿は見当たらない。まあ復興の手伝いをしつつ待っていればじき現れるだろう――そんな事を考えながら、緋色はカラス達の要望に応えつつ復興に苦戦中のカラス達の手助けを行うのだった。
成功
🔵🔵🔴
ルキヴァ・レイヴンビーク
まぁ異世界の同朋みたいなものデスよね
是非ヘルプさせて頂きたく
カラスの皆様、もしや階梯3以上でもスモールサイズなんデスかね
ワタシがカラス種の中でもビッグだとは言え
ならば人間態に姿を変えた上で彼らには難しい作業を
背丈も力もございマスし、手羽届かぬ狭い場所も人間の手ならどうにかなりマショウかね
休憩なさるならお茶でも淹れマスね
英国仕込みのアフタヌーンティーを簡素に
可愛い
雛鳥達もおいでナサイ、クッキーの缶持って来マシタから
…妖魔の身となってから、鳥と人間の狭間におりマシタ
彼らは厳密には同族では無いとは言え…人の姿をしたカラス達
彼らや、この雛鳥達を見ていると――心和らぐ、そんな気が致しマスよ
●大鴉の憩いの時間
一羽の大鴉の青年が、岩肌のカラスの街へとやってくる。
(「まぁ異世界の同朋みたいなものデスよね」)
軽薄そうな雰囲気の細身の彼、ルキヴァ・レイヴンビーク(宵鳴の瑪瑙・f29939)はワタリガラスの妖魔であり、このカラスの街の復興を
手助けする為にやってきて、住民のカラス達に協力を申し出て快く受け入れられる。
(「カラスの皆様、特に階梯3以上でもスモールサイズではないみたいデスね」)
作業で飛び回るカラス達を見、ルキヴァはそんな事を考える。
獣人ではない普通のカラスと比較してワタリガラスは大柄な種、所々に見える妖精階梯のカラス達は別として階梯2や4、5の一般的なカラス獣人達の体格はルキヴァとそこまで極端な差はないようだ。やや小柄な個体が多いのは空を飛ぶ種族だからかもしれないが個人差の範囲で収まるだろう。
普通のカラスサイズな階梯1以下の獣人達と階梯2以上の獣人とではサイズ差も作業の障害になりそうに思えたけれども、現地住民達はその辺りは慣れているようで手際よく分担して作業している。
そんな姿にルキヴァは感心したりもしながら、人間態の背丈と力、器用な指先を活かした狭所での作業を手伝って住民たちに大いに感謝されて――ちょっとばかりの悪戯心も気が張り詰めたカラス達の緊張をいい感じにほぐす方向に働いているようだ。
そして暫く作業を進めて、
「休憩なさるならお茶でも淹れマスね」
住民の疲労の度合いを見て手際よくティータイムの準備をルキヴァは始める。英国仕込みのアフタヌーンティー、簡素なお茶会ではあるけれども復興作業で疲労の溜まったカラス達はほっと一息。
「可愛い
雛鳥達もおいでナサイ、クッキーの缶持って来マシタから」
どこか胡散臭げな軽薄な笑みを浮かべつつルキヴァが戯けた風に呼びかけるのは恐れ半分興味半分で物陰から様子を窺っていた現地の子供たち。ルキヴァの言葉に恐る恐るながらに近づいてきて、差し出した缶のクッキーを一口いただけば子供たちの顔にぱっと笑顔が浮かんた。
――厳密には同族ではない、けれどもこの街に住まうのは人の姿をしたカラス達であり、妖魔の身となり鳥と人の間を揺蕩うルキヴァには少々感じるものがある。
復興に勤しむカラスの大人たち、そしてあどけない表情の子供たちがお茶を楽しむこの場面は心和らぐ――そんな風にワタリガラスの妖魔は感じつつ、休憩を終えて親しくなった住人たちとさらなる復興作業に取り掛かるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『レックス・ラビットゲート大佐と焼尽中隊』
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POW : ファイアバーン・システム
着弾点からレベルm半径内を爆破する【ロケットランチャー 】を放つ。着弾後、範囲内に【戦場を彷徨う死霊】が現れ継続ダメージを与える。
SPD : サイレント・キリング
【相手に悟られぬCQC 】で敵の間合いに踏み込み、【気配を殺し視界の外から無音の銃弾】を放ちながら4回攻撃する。全て命中すると敵は死ぬ。
WIZ : 殺るか殺られるか
戦闘用の、自身と同じ強さの【焼尽中隊のバニー部隊 】と【自身を護衛するバニー部隊】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
👑11
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●復興砕く白兎部隊
猟兵達の協力により効率的に岩肌に築かれた街の復興速度は上がっていく。
まだまだ修理すべき場所こそ多いけれども厄介な部分を優先して片付けているから現地住民だけでも手こずらずに進められる――そんな時、周囲を警戒していた住民のカラス獣人が外的の襲来を察知する。
砂色の外套を纏い岩肌を静かに駆け上がり潜入を図る集団、どうみてもカラスではない彼らはウサギの集団であり、その先頭にいる白兎の邪悪な殺気は視認したカラス達も感じとれるようで羽毛をぶわっと広げて警戒を露わにしている。
この集団こそ街を破壊すべく逢魔弾道弾を持ち込もうとしているオブリビオン、その思うままにさせてしまえば復興が水の泡になるだけでなくこの街そのものが逢魔が辻となり滅び去ってしまうことだろう。
――先に発見することができた今ならば。
岩肌の不安定な足場にいる敵を迎撃することが出来て有利に仕掛けることも可能かもしれない。更に現地住民に協力を要請することができれば、決定打にこそならずとも支援攻撃で気を散らすことは可能だろう。
なんにせよ招かれざるエージェントはここで排除せねばならない。カラスの街を守るため、猟兵達は各々行動を開始するのだった。
響納・リズ(サポート)
「ごきげんよう、皆様。どうぞ、よろしくお願いいたしますわ」
おしとやかな雰囲気で、敵であろうとも相手を想い、寄り添うような考えを持っています(ただし、相手が極悪人であれば、問答無用で倒します)。
基本、判定や戦いにおいてはWIZを使用し、その時の状況によって、スキルを使用します。
戦いでは、主に白薔薇の嵐を使い、救援がメインの時は回復系のUCを使用します。
自分よりも年下の子や可愛らしい動物には、保護したい意欲が高く、綺麗なモノやぬいぐるみを見ると、ついつい、そっちに向かってしまうことも。
どちらかというと、そっと陰で皆さんを支える立場を取ろうとします。
アドリブ、絡みは大歓迎で、エッチなのはNGです
●工作兎を撃つは裁きの雷霆
『急ぐぞ。破壊工作に時間は掛けられない』
小柄な妖精階梯の白兎――幻朧帝国のエージェントとしてやって来た『レックス・ラビットゲート大佐』は配下の焼尽中隊の女達に告げて手早く岩肌を登っていく。
彼が有する逢魔弾道弾はこのカラスの街を逢魔が辻へと変え徹底的な破滅へと導く凶悪な兵器――この街の重要拠点に設置すれば彼の破壊工作任務は達成となるだろう。
だが、彼の想定外にその計画は猟兵に既に予知されており、現地のカラス達と友好関係を築き協力を得ている――それは工作計画にとっての致命的な破綻であった。
大きな影がウサギの工作部隊にかかる。それは鳥類の翼の影であると同時に大型の猛獣の影でもあるこの場にある筈のない影――グリフォン。
『……まずい! 気づかれているッ!』
指揮官であるレックス大佐の判断は早く即座に部下たちに号令をかけユーベルコードで追加のバニー部隊を召喚、直後大佐目掛け銃弾が降り注ぐ。
それは空を舞うカラスの兵士達が放ったアサルトライフルの銃弾、練度の高い護衛部隊は指揮官を身を挺して守る事に成功したが銃撃自体は陽動で。
「天の雷よ、邪心に染まりし悪を滅する、天の裁きを与えん!!」
貴婦人の気品を備えた声が響き、直後悪しきウサギの部隊に空より雷が降り注いだ。放ったのはオラトリオの響納・リズ(オルテンシアの貴婦人・f13175)、茶の毛並みのグリフォン『アーティア』に騎乗し月を象った魔導杖『ルナティック・クリスタ』を掲げた彼女は、ユーベルコードによって魔導杖から裁きの雷を降り注がせ奇襲に成功したのだ。
復興途上のカラスの街を害しようとする極悪なオブリビオンに寄り添うことは不要、そして裁きの雷はウサギの部隊全てを焼いて指揮官をも感電、この場で召喚されたバニー部隊は召喚主のダメージにより消えていって。
しかし奇襲を受けてなお指揮官の判断は早い。感電して動きが鈍った直接連れてきたバニー部隊を残して岩山を駆け上がり始める。単独ででも任務を果たそうというのだろう――それを阻止すべくリズはガラスのフルートを奏でアーティアに指示を出して空よりエージェントの追跡を開始するのだった。
成功
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中村・裕美(サポート)
副人格のシルヴァーナで行動します
『すぐに終わってしまってはもったいないですわね』
多重人格者の殺人鬼× 竜騎士
外見 赤の瞳 白の髪
口調 (わたくし、~さん、ですわ、ますの、ですわね、ですの?)
裕美のもう一つの人格で近接戦闘特化。性格は享楽的な戦闘狂
戦闘では【残像】が残るような優雅ステップで敵に近づき、惨殺ナイフによる【切断】を【早業】で繰り出す
ドラゴンランスを使うことがあれば、相手を【串刺し】にするか、竜に変えて【ブレス攻撃】
【瞬きの殺人鬼】使用後の昏睡状態はもう一つの人格に切り替えカバー
電脳魔術が使えないので裕美の能力が必要な場合は【オルタナティブ・ダブル】で呼び出します
あと、虫が苦手
●岩肌での近接戦闘術
空よりの雷で纏っていた外套もぼろぼろになり、それを脱ぎ捨てたレックス大佐は単独で街の重要地点を目指していく。
配下は動けるならば後で合流してくるだろう、動けないならわざわざ救出にかかる余力もない。合理的に思考しつつ感電の残る体で険しい岩肌を登っていく彼の前に、令嬢風の白髪の女が上方からふわりと飛び降りてきた。
「中々腕の立ちそうな方……すぐに終わってしまってはもったいないですわね」
普段は分厚い眼鏡をかけた陰気そうな中村・裕美(捻じくれクラッカー・f01705)だが、現在表に出ているのは副人格のシルヴァーナ、戦闘狂の面の強い彼女は鮫牙の名を冠した惨殺ナイフを片手に構えて優雅な所作で白ウサギのエージェントへと襲いかかる。
対するエージェントは懐より拳銃を取り出し岩肌の地形を利用してシルヴァーナの周囲を飛び跳ね翻弄、物陰に身を隠して気配を消し、死角から裕美へと仕掛けた。
軍用近接戦闘術の先駆者であるそのエージェントのCQCは対峙した相手にすら悟られぬ程に研ぎ澄まされていて、死角から放つ無音の銃弾は全て命中すればどのような相手でも死へと誘う強烈な技――だが、その弾丸はシルヴァーナの優雅なステップにより残った残像を貫くのみであった。
「そろそろいただきますわ」
ユーベルコード【ジグザグスラッシュ】を起動したシルヴァーナは攻撃直後で隙を晒した白兎の足を惨殺ナイフで鋭く切り裂く。瞬きの間に156本もの傷を刻み込まれた白ウサギの足は使用困難かつ治療困難、機動力を奪われたレックス大佐はよろめいて岩肌から足を踏み外し重力に従って落下していく。
見下ろせばそこには感電から多少復活したバニー部隊が見える。彼女らが落下してきた指揮官を受け止めて応急処置をしているようだが、元の機動力はそう簡単には戻らない。
さらなる追撃をどう行うか思案しつつ、猟奇的な令嬢は鮫牙のナイフを軽く弄びながら険しい岩山を下っていくのだった。
成功
🔵🔵🔴
風雷堂・顕吉(サポート)
アドリブ連携可
約100年前、ダークセイヴァーの人類敗北以来、ヴァンパイアとの死闘を細々と繰り広げてきたダンピール、それが俺だ。
ヴァンパイアを狩るため、あるいは次に狩るべきヴァンパイアの手掛かりを得るためにここにいる。
【世界知識】ダークセイヴァー世界の大抵のヴァンパイア相手ならそれがどのような血族かは知っているし、知らなくとも【情報収集】の伝手はある。
それ以外の世界については物珍しそうに振る舞うことになる。すぐに慣れるだろう。
ダークセイヴァーとスペースシップワールド以外の世界は日差しが強すぎるので、サングラスを着用する。
戦闘は剣士の動きだ。
次に参加する猟兵が戦いやすい状況を作ることも多い。
●トンネルの闇には逃さない
鮫牙の惨殺ナイフに足を刻まれて落下したエージェントは配下たちに救助され落下死は免れた。しかし空から放たれるカラス兵士の銃弾はエージェントとその配下に休息の時を与えない。
『兎に角、急いでトンネルに逃げ込め!』
周囲を確認したレックス大佐が叫べば、彼の有能な配下たちは手近な位置にあった岩壁のトンネルへと指揮官を抱えて飛び込み避難。空からの攻撃を凌ぎつつ作戦を練り直そうとするエージェント、だがそんな時間など与えぬと奥の暗がりから
外套を纏ったダンピール、風雷堂・顕吉(
吸血鬼狩人・f03119)が駆けてきてバニー部隊へと斬りかかる。
手にした鎧砕きの愛刀『
小竜公』が閃けば精鋭揃いの敵配下は次々と打ち倒されトンネルの床に倒れ込んでいく。この狭い戦場では数の有利も中々活かせず、一方で顕吉の剣士として長年培ってきた技量は十全な形で活かされているから妥当な結果だ。
更に言えばこの岩山の面が北を向いていて直射日光も射し込んでこないのは幸いかもしれない。それでもダークセイヴァーに比べれば外の日光は遥かに強く、サングラスは欠かせないのだけれども。
この状況をまずいとみた白ウサギは配下に抱えられたままロケットランチャーを取り出し顕吉目掛け即座にぶっ放そうとする。着弾地点周囲を爆破し、それどころか周囲に戦場の死霊を彷徨わせ敵を害する凶悪な攻撃――対する顕吉は冷静に愛刀を構えユーベルコード【天地無双剣】を起動、神速の突きをロケットランチャー目掛け放ちウサギの手から弾き飛ばすと、返す刀でオブリビオンを深々と切り裂いた。
ロケットランチャーは不発に終わり、負傷したレックス大佐は配下に短く命じ、顕吉から離れ再びトンネルの外へと向かっていく。
「……
吸血鬼の手掛かりはなさそうか」
外に逃げたレックス大佐の方を見遣り顕吉は静かに呟いた。
もっと東方――ワルシャワ条約機構軍の侵略地域ならばもしかしたら可能性はあったかもしれないが、残念ながらあのエージェントは無関係のようだ。
追撃は他の猟兵に任せることに決めたダンピールの古強者は、そのまま音もなく光を厭うようにトンネルの奥へと歩みだしたのだった。
成功
🔵🔵🔴
クリスティナ・バイエンス(サポート)
火の神の名を持つキャバリアに選ばれたサイキックキャバリア乗り
水着みたいな格好なのは、コックピットが蒸し風呂みたいに熱いから仕方なくだからね
正直キャバリアを降りての戦闘はあまり得意じゃないのよ
でもキャバリアを使っての戦いは任せてね、みんな炎で薙ぎ払ってやるわ
とはいえ、必要ないところで炎を使うつもりはないの危ないもんね
使わなくても私の〔炎神機カグツチ〕は十分強いもの
よろしくね!
●炎の如き熱波を従え
ダンピールの斬撃にさらなる手傷を負った幻朧帝国のエージェントは、苦々しい表情を浮かべながら牽制射撃降り注ぐ岩壁の戦場の空を見上げる。
状況は非常にまずい、逢魔弾道弾の起爆ができれば逆転は可能だが、この状況ではそんな行動は確実に阻止されてしまう。
打開するための戦術を思案する白ウサギだが、そこに空より新たなる敵戦力がやってきたことでその思考は中断される。
紅蓮の如く燃え上がるそれはサイキックキャバリア『炎神機カグツチ』、パイロットたるクリスティナ・バイエンス(炎のキャバリア乗り・f30044)を乗せ実体剣『RX焔ノ剣』を手にした巨体は、彼女の見事な操縦技術により険しき岩壁の戦場を駆けてバニー部隊にあっという間に肉薄する。
『迎撃だ! 来い!』
レックス大佐の怒号と共に彼の周囲に護衛部隊、償尽部隊のバニー達が新たに召喚され戦えぬ召喚主を守るように防衛陣形をとってカグツチに武器を構える。
しかしクリスティナは更にカグツチの速度を上げて、
「炎神機の力を見せてあげるよ」
ユーベルコード【炎熱機雷】を起動すればカグツチ
の周囲に三つの火球が召喚され、周囲に高温の熱波を放つ。
冬の冷え込みを感じさせる大気は瞬時に真夏――それすら超えてサウナの如き気温となり、その熱は悪しきオブリビオンの部隊の戦闘力を削り取り弱体化させていく。
そこに襲いかかる炎神機、腕部連装機関砲で威嚇射撃しつつ高熱の実体剣を振り回して護衛部隊を切り崩し、配下に抱えられたエージェントに重量を乗せた重い一撃を叩きつける。
配下の反応がギリギリ間に合って両断こそ回避するが、カグツチの刃はオブリビオンの白き毛皮と肉を捉えて焦げ臭い匂いと共にダメージを刻み込む事に成功、その一撃で召喚されたバニー部隊も再び消失し、追い詰められたエージェントと僅かばかり残った配下だけが岩肌に取り残される形となった。
だがまだエージェントの眼からは光は失われていない。満身創痍な上に熱波に包まれ弱体化させられているこんな状況からの逆転を諦めないのは優秀な軍人だからなのだろうか。
それでも限界は近づいている。このカラスの街を守り抜くべく確実に仕留めるために、猟兵の詰めの攻撃が行われようとしていた。
成功
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ルキヴァ・レイヴンビーク
金烏玉兎とは申しマスけど
月と太陽…所詮ウサギは我々カラスと相容れぬ存在と言う事デスかね?
間合いに入られる前にさっさと仕掛けマショウ
闇鴉の羽根にてあちらの動きを留め、銃撃をストップさせ
同時使用UCは箱船の鴉達
カラスの同朋達を守る為、壁に囮にしながらけしかけマショウ
暴風を巻き起こせば崖に居られるウサギの大佐殿も落ちぬ様にするのが精一杯では?
その前に影縫い仕掛けてますからそもそも動けないデショウかね
基本的に上から高見の見物してマスが、トドメくらいはこの手で
鴉達に紛れて飛び降り、ダイレクトに片鎌槍にて攻撃を
カラスとは斥候であり狩人でもあるのデスよ
ウサギよりずっとゲリラ戦向きだと思うのデスがねぇ
●始末は大烏の手で
キャバリアより放たれた火球の熱波により弱ったバニー部隊に街の住人であるカラス達は空から畳みかけるように銃弾や矢を降らせていく。
その様子をルキヴァ・レイヴンビーク(宵鳴の瑪瑙・f29939)は山の上方から見下ろしていて。
(「金烏玉兎とは申しマスけど」)
中国古代の民話では三本足のカラスが太陽に住み月にはウサギが住むというけれども、
「月と太陽……所詮ウサギは我々カラスと相容れぬ存在と言う事デスかね?」
――少なくともあの逢魔弾道弾を持ち込んできたオブリビオン部隊のウサギ達とは相容れないだろう。
弱っているとは言えど相手に時間を与えれば状態を立て直して間合いに入ってくる、或いは銃撃で生命が危険に晒されてしまう可能性は依然存在している。
ならば、
「さっさと仕掛けマショウ。――この鴉の闇羽根が、死ぬまで貴方を優しく包みマスから」
ユーベルコード【闇鴉の羽根】をルキヴァが起動し、白兎の指揮官に向けて136本の大鴉の羽根が放たれる。
それは抵抗の意志を奪う影縫いの黒羽根、放たれたそれらが岩山に落ちたレックス大佐の影を貫き銃撃を停止させれば、更に136羽のワタリガラスの群れが続き殺到する。
「我が眷属達、力を貸して下サイ」
それは並列起動した【箱船の鴉達】により召喚されたルキヴァの眷属、広げた翼に1の数字の目立つ大鴉達はオブリビオンの部隊が放つ空のカラス獣人達への反撃をその身を壁に、或いは囮として防ぎ攪乱する。
更に大鴉はその身に宿した闇と風の力で一斉に羽ばたき暴風を叩きつける。足場の悪い岩山であるからその突風で落下せぬようにと残り僅かな配下達も周囲地形に踏み止まるのが精一杯――影縫いされているからそもそも大きく動く事さえできないのだが、そこに生じた隙を街のカラス達が銃撃して配下共を容赦なく仕留めていって。
『クソッ! この状況はまずい……!』
舌打ちする白きウサギの指揮官、通常の地上戦であるならば猟兵の間合いに飛び込んでくる事もできただろう。
だが今ルキヴァは高みの見物とばかりに眷属の大鴉達をけしかけ続けていて、そして見下ろす彼の視界外へと移動する事もまず不可能な状況。
その上レックス大佐は足をほぼ使えなくされた上で弱体化まで受けている、持ち前の速度を活かした突破も困難極まりないだろう。
影縫いの羽根を受けて未だ抵抗の意志が揺らがないのは本国への忠誠故だろうか――けれどその抵抗にも終わりの時は来る。
「そろそろデスかね」
呟き、北欧の神に仕えし大鴉の名を冠した一対の片鎌槍を両手に構えるルキヴァ。
眷属の大鴉達が激しく羽搏きレックス大佐の視界を覆い、次の瞬間それらに紛れ大鴉の妖魔は山を一息に飛び降り白ウサギに肉薄、その急所を片鎌槍で貫いた。
ぱっと舞い散る鮮血がレックス大佐の白の毛皮を汚す――それが決定打となりエージェントの赤瞳からは生命の灯火は失われる。
指揮官の死とほぼ同時にその配下達も全滅、空のカラス達は勝利の歓声を高らかに謳い上げて。
「カラスとは斥候であり狩人でもあるのデスよ」
ウサギよりずっとゲリラ戦向きだと思うのデスがねぇ、とルキヴァは呟いて、勝利に賑わうカラス獣人達の元へと登っていった。
かくして復興途上のカラスの街は逢魔弾道弾の脅威より守られ、猟兵達はグリモアベースへと勝利の報告と共に帰還したのだった。
大成功
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