5thと7th、リストランテの夜
「死んだと聞いてたのに!」
「話が違う!」
ざわざわとどよめく悪魔達を尻目に、リリリリは歩きスマホで何かを検索していた。
「へぇー、せっかくだからここで食事しようかと思ってたのに。乗っ取られちゃってるんだ」
その画面に表示されたのは「リストランテ・ハロウィーン」のホームページ。
その昔、焼きそばから高級料理までなんでも作る魔王、2ndKING「ビストログルメ」が建設した地上100階地下100階にも及ぶという超巨大迷宮である。
ビストログルメの没後も無限に「ちゃんと盛りつけされたおいしい料理」が湧き続けているというその迷宮は今、オブリビオンの巣窟と化していた。
ここに巣食うオブリビオン達はそのグルメに膨大なデビルパワーが秘められていると知り、7thKING WARに負けてからというもの、ひたすらに食べて食べて食べまくり、その力を持って何も知らずに入ってきた悪魔達を追い返しているという。
「美味しい料理を独り占めしてるだなんて、万死に値するよねぷんぷん」
一息ついたリリリリは剣を持った右腕を準備運動がてらぐるぐると回し始めた。
「ひさしぶりに勇者します。腕がなるなあぶんぶん」
「このリストランテ・ハロウィーンではジャンクフードからご当地B級グルメ、季節の限定スイーツに最高級のコース料理まであらゆる料理にお目にかかれます」
ルウ・アイゼルネ(滑り込む仲介役・f11945)はそう言いながらリストランテ・ハロウィーンの宣伝用のポスターをホワイトボードに貼り付けた。
「しかしこのリストランテは現在、2年ほど前から入店していたオブリビオンの集団に占拠されてしまっています」
最初の頃はオブリビオン達もそうした妨害行為は行っていなかった。だがそれは自分達が悪魔達の反感を買って追い出されないようにするため。
リストランテで提供される料理に含まれているデビルパワーを摂取し続けて自らを強化したオブリビオンはだんだんと本性を露わにして、最近では入ってこようとする悪魔達を片っ端から追い出すようになったという。
「この横暴に終止符を打つべく、リリリリさんが動き出しました」
帝都櫻大戰を機にデビルキングワールドへの帰還を果たした「勇者リリリリ」は、世界を縦断して片っ端から自称強者の悪魔達に挑みかかってはボコボコにして、震え上がらせていた。
「いったいどこのバーサーカーなんですか、って話なんですがね……まあ、おかげで『次は俺が8thKINGだ』とか宣う輩がいなくなってるそうですが」
その最中リストランテ・ハロウィーンで起きている事態を知り、オブリビオンの殲滅作戦に乗り出したのだという。
「今回の概要はリリリリさんに同行してオブリビオンをボコボコにしつつ、リストランテ・ハロウィーンの料理を楽しむ、という感じです」
オブリビオンが頼りにしているデビルパワーは猟兵達も得ることが出来る。ただ相手が蓄えた2年分と同量のデビルパワーを、オブリビオン達に気付かれる前に集める事は中々に難しいだろう。
しかし元々の実力差とリリリリからの援護を得られることを考えると、いいハンデと言えなくもない。
「ちなみにデビルパワーはそれぞれふさわしい食べ方で料理を食べなければ効率よく得ることができないそうです。ジャンクな物はジャンクにガツガツ、高級料理はテーブルマナーに則ってって感じですね」
もちろんワルらしくそんな物は知らねえと我流で食べてもいいし、まるで何かの試験のように一項目一項目丁寧に注意深くこなしても構わない。
とにかく「料理を無駄にせず、美味しく食べる」ことを忘れなければ、それでいいらしい。
「もうすでにリリリリさんはリストランテの前でお待ちです。皆様、なる早での合流をよろしくお願いいたします」
そう言って、ルウは猟兵達を送り出した。
平岡祐樹
お
客様、食べ放題は終了の時間を迎えました。
お疲れ様です、平岡祐樹です。
当シナリオは2024年の「ハロウィンシナリオ」対象シナリオです。
今案件にはシナリオギミック「正しいマナーでリストランテの料理を食べる」・「リリリリと連携する」がございます。
これに基づいて行動すると有利になることがありますのでご一考くださいませ。
第1章 日常
『リストランテ・ハロウィーン!』
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POW : ボリュームのある料理を豪快に食べる
SPD : 気軽な軽食をライトに食べる
WIZ : 洗練されたマナーで高級料理を食べる
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ウィズ・ザー
お前がディナーになるンだよ!…なんてェのは流石に出来ねェか。オブリブオンはまた後程、デザートだァな?しっかし、こんな場所があるとはなァ…食べ放題最高かよ。
周りを見渡して、一先ず歩きながら食える軽食片っ端から貰って行くぜェ
ジャンク上等、胃袋ブラックホール(物理)ってェヤツだ。触手も使って呑み込んでいく。
津波の如く食ってもどうせ生えて来ンだろ?気にしなくて良いっての最高ぢゃねェか。
喜び勇んで、残らず頂くぜェ♪
入ってくる者を片っ端から追い返している、という話だったが、歴代のデビルキングが徒党を組んでやってくると聞きつけて上か下の階に逃げたのか入り口にオブリビオンの姿はなかった。
「お前がディナーになるンだよ! ……なんてェのは流石に出来ねェか。オブリブオンはまた後程、デザートだァな?」
ウィズ・ザー(闇蜥蜴・f11239)がゆっくりと周りを見渡せば、提供される料理のジャンルを記した看板がいくつも天井に吊るされていた。
これはビストログルメが指示を出した時から作られたのか、有志によって後に付けられたのか。
「しっかし、こんな場所があるとはなァ……食べ放題最高かよ」
一先ず歩きながら食える軽食を目指してウィズは4本の脚を動かす。400m近い巨体でも自ら当たりにいかない限りは椅子やテーブルといった調度品を薙ぎ払うことがないほど、リストランテの中は広々としていた。
出てくる品は階によって変わるようだが、占領して独占せずとも食い逸れることはないように思える。だが件のオブリビオンはそれすらも許せなかったのだろう。
「なんか大好物の
料理があって、それを誰かに取られたくなかッたとかかァ? でもソレならワンフロアだけで充分なはずだしなァ……ワッカンネェわ」
ウィズが置かれた看板に従って壁沿いを歩いていると、何もなかった壁が突然上下に開いて大量のファストフードが乗ったお盆が滑り込むように並べられた。
「ジャンク上等、胃袋ブラックホール(物理)ってェヤツだ」
ウィズは伸ばした触手で片っ端からお盆をひったくり、全身を使って呑み込んでいく。
落ちた空のお盆が音もなく床に沈む。そして空っぽにされたばかりの配膳口にはコンコンと叩く必要もなく新しい盆が音もなく並べ直されていた。
「津波の如く食ってもどうせ生えて来ンだろ? 気にしなくて良いっての最高ぢゃねェか。喜び勇んで、残らず頂くぜェ♪」
ウィズは声を弾ませながら何百人前分の揚げたてのフライドポテトを流し込むように一気に取り込んだ。
大成功
🔵🔵🔵
燮樹・メルト
❤️🩹やわらぎ🧬ちゃんねる💉
B級グルメ!こういうのが良いんだよ、こういうのが!
というわけで、今回は食レポはデビキンのリストランテ・ハロウィーンから!
近所にあったら一店は欲しいなぁ。
あ!クルンジじゃん!(クロワッサンを薄くぺちゃんこにしたお菓子)
ハチミツと一緒にバニラアイスとかいいじゃーん!
うわ!めっちゃサクサク〜!皆のものには音だけお届けする。
(めちゃザクザク言ってる)
B級とは言ったけど、気軽に食べたいって思えて、食べられるのが一番だからね!動画を見て共感してもらえるっていうのはメルも大事にしてることだからね。
「❤️🩹やわらぎ🧬ちゃんねる💉」と「Now Loading……」のアニメーションがついた待機画面が開けられる。
「やふー! やわらぎちゃんねる、メルちゃんだよー」
馴染みの挨拶と共に燮樹・メルト(❤️🩹やわらぎ🧬ちゃんねる💉・f44097)は撮影用ドローンに手を振ってみせた。
「B級グルメ! こういうのが良いんだよ、こういうのが! ……というわけで、今回は食レポはデビキンのリストランテ・ハロウィーンから! 実はこのリストランテ、上は100階下も100階、前回の10段バーガーなんて目じゃないほどの大ボリューム! こんな楽しそうなところたった1回で終わらすなんてもったいないでしょ!」
待機中不満げなコメントを出していたリスナー達はメルトの前口上に「分かる」「わかるマーン」などすぐに掌を返した。他にも「200階もあるの!?」などのコメントも寄せられていた。
「あと他のお店を見たいというのもぶっちゃけある。というかあれで終わっちゃって、もっと好きなお店をスルーしてたら普通にやむ」
そうしてメルトのリストランテ探索がスタートした。
迷宮と銘打ってるだけあってエレベーターやエスカレーターが無く、坂道か階段しかない不便な作りだが実は肉体派のメルトは軽い足取りで昇り降りを繰り返した。
「近所にあったら一店は欲しいなぁ」
1食で1階使ったとしても一周するのに3ヶ月はかかる。しかもいくら食べても無料。近所にあったら太ってしまうこと間違いなしだ。
「あ! クルンジじゃん! ハチミツと一緒にバニラアイスとかいいじゃーん!」
その最中、クロワッサンを薄くぺちゃんこにした韓国発のお菓子を見つけたメルトは目を輝かせてオーダーする。すると反対側に控えていた容器や道具が宙を舞い、クルンジにトッピングが施され、メルトの元へサーブされた。
「うわ! めっちゃサクサク〜! 皆のものには音だけお届けする」
ザクザク音を立てながら切り分けたクルンジをメルトは美味しそうに頬張る。
「B級とは言ったけど、気軽に食べたいって思えて、食べられるのが一番だからね! 動画を見て共感してもらえるっていうのはメルも大事にしてることだからね」
市販のを潰して焼いても似たような物が作れるらしいよー、とワンポイントアドバイスを挟みながらメルトはアイスを削り、切り分けたクルンジの上に乗っけた。
大成功
🔵🔵🔵
ラップトップ・アイヴァー
寝ている美希には内緒で。
噂の、リストランテですわ……、
美味しい食べ物が幾らでも出てくるっていうから、そういうのもあるのねってやってきたけれど。
まあっ、絶品のハンバーガーがいっぱい!
チーズバーガーに照り焼きバーガーに……季節限定の満月バーガーまで!?
これはとても美味しそうねっ!
あら、飲み物には大きいサイズのコーラまで。ジャンクらしいわね……?
アスリート選手ですもの、たくさん食べないと力は出ませんわ!
そして、アスリートに食事制限はつきものだけれど、一度死んで猟兵になった私のこの身体がそれに縛られることはもう無いの!
思いっきり今このリストランテを楽しむ心と一緒に、ハンバーガーたちと……あら、ポテトにナゲットも増えましたわね?
兎に角全部全部、ガッツリといただきましょうか!
思いっきりかぶりつくと、肉汁やチーズと絡んでジューシーな味わいが本当にたまりませんわ……!
そうして、完食しましょうね!
ふう、いっぱい食べたのは久々ですわねえ……!
準備も万端!
……大変、罪悪感が、
いえ、悪の姫君にそんなもの!
「これが、噂の、リストランテですわ……」
ラップトップ・アイヴァー(動く姫君・f37972)の姉、シエル・ラヴァロは目の前に聳え立つリストランテ・ハロウィーンを見上げて呆気に取られた。
「美味しい食べ物が幾らでも出てくるっていうから、そういうのもあるのねってやってきたけれど……」
まさかここまで巨大だとは思っていなかったシエルはおそるおそる入口を潜る。
そして吊り看板の表記に従って、ハンバーガーが提供されている階にまで進んでいった。
「まあっ、絶品のハンバーガーがいっぱい! チーズバーガーに照り焼きバーガーに……季節限定の満月バーガーまで!? これはとても美味しそうねっ!」
そこはオーソドックスな牛肉のハンバーガーからアボカドやパイナップルを挟み込んだ変わり種の物、さらにはバンズとパティが10段も積み重なったチャレンジメニューまで満遍なく取り揃えたハンバーガーだらけのバイキング会場であった。
「あら、飲み物には大きいサイズのコーラまで。ジャンクらしいわね……?」
その傍にはテレビのCMで見慣れたSサイズから外国の映画で見たことがあるLサイズまで取り揃えられた空の紙コップと、デビルキングワールドで好んで飲まれている炭酸飲料の数々もスタンバイしていた。
「アスリート選手ですもの、たくさん食べないと力は出ませんわ!」
そして、アスリートに食事制限はつきものだが、人によっては手っ取り早く脂肪をつけるための食べ物として採用されているし、なにより一度死んだシエルがそれに縛られることはもう無い。
シエルは美味しそうだと思った品を片っ端から1個ずつ、さらに食べている間に炭酸が抜けてしまうことを考慮して小さい方のMサイズのコーラを注文した。
「思いっきり今このリストランテを楽しむ心と一緒に、ハンバーガーたちと……あら、ポテトにナゲットも増えましたわね?」
しかし気づいた時には注文した覚えのないプライドポテトとチキンナゲットもお盆の片隅にこんもりと盛られていた。
だがどんなに美味しくてもバーガーばかりではいつか飽きてしまう。お口直しには最適の相棒達を切り捨てるのは勿体なさすぎる。
「兎に角全部全部、ガッツリといただきましょうか!」
まずは出来立てホヤホヤのチーズバーガーを手に取って思いっきりかぶりつく。
すると分厚いパティから溢れ出る肉汁が余熱で溶け出したチーズと絡んだジューシーな味わいが口の中いっぱいに広がっていく。
「本当にたまりませんわ……!」
一度潰さないと口に入りきらないほどの厚さだったチーズバーガーだったが、あっという間に無くなってしまった。他のバーガーも同じレベルだと思うと想像しただけでも心が弾む。
「ふう、いっぱい食べたのは久々ですわねえ……! 準備も万端!」
そうしてお盆の上に乗せた物を全てしっかり完食し終えたシエルは少し膨らんだお腹を摩る。すると掌に胃の底から膨れ上がってくるデビルパワーの波動が伝わってきた。
だがそれだけのデビルパワーを得たことは、同時に大量のカロリーを摂取したことと同義。
「……大変、罪悪感が……いえ、悪の姫君にそんなもの!」
この世界では「ワル」であることが至上なのだと開き直ったシエルはスヤスヤと寝ている
妹が起き出してくる前にこのリストランテを私物化しているオブリビオンを探しに動き出した。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『自称-氷の女王・アイスクイーン』
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POW : 「氷のしもべたち、あいつらを氷漬けにしなさい!」
レベル×1体の【配下にしている悪魔達 】を召喚する。[配下にしている悪魔達 ]は【氷】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。
SPD : 「あなた達も、私のしもべにしてあげるっ!」
戦場全体に【視界を奪い、触れると凍りつく猛吹雪 】を発生させる。敵にはダメージを、味方には【視界を確保できる能力と、氷の武器と防具】による攻撃力と防御力の強化を与える。
WIZ : 「もう怒ったわ!骨の髄まで氷漬けにしてあげる!」
【大きく広げた巨大な尻尾 】から、戦場全体に「敵味方を識別する【無数に降り注ぐ、対象を氷漬けにする氷の槍】」を放ち、ダメージと【凍結耐性破壊】の状態異常を与える。
👑11
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「アイスエイジクイーンが失踪した……つまりこの私こそが今、デビルキングワールド最強の氷使い」
そう呟いて自称「氷の女王」アイスクイーンはピスタチオのジェラートを頬張る。
その体躯は2年を超える食っちゃ寝生活の末にだいぶ丸くなっていた。
「もうこのリストランテの冷たい物はあらかた制覇したし、そろそろ外に出て7thKINGに反旗を……いや、でも相手もこの2年何もしてないわけがない。なら今年の秋限定の新作を食べてからでも遅くは……」
手段と目的がごちゃ混ぜになりつつあるアイスクイーンが悩んでいると、警備に当たっていたしもべたちが脚を床から離した体勢かつものすごい勢いで目の前を横切った。
何事かと飛んできた方向を見れば、満面の笑みを浮かべたリリリリがそこには立っていた。
「どーも、勇者です。リストランテを私物化している悪い子をぶっ飛ばしにきましたー」
そして邪魔だと言わんばかりに剣をその場で横薙ぎに振るえば、周りにいた他のしもべ達が風圧で吹き飛ばされた。
だが、リストランテ・ハロウィーンのデビルパワーを蓄えてきたアイスクイーンの体はびくともしない。だが動揺はした。
「5thKING『魔王リリリリ』!? 死んだはずじゃ!?」
「なんか気を失って気がついたらガチデビルに乗っ取られてました。私はオブリビオンではありません」
リリリリは口を尖らせて否定するだけで次の行動に出ようとしてこない。その間にアイスクイーンの頭は平静を取り戻した。
ここでリリリリを倒すことが出来れば、きっと猟兵も倒せるだけの力がついているはず。つまり今は世界に覇を唱えられるかの試金石に出来る絶好の機会なのでは?
「あ、ちなみに猟兵のみんなもついてきてます。みんなー、オブリビオンいたよー! こっちこっちー!」
「は?」
前哨戦どころか本戦であるという事実の提示に、アイスクイーンの思考は再び停止した。
燮樹・メルト
【食後の】
うーん、アイスかぁ、アリだけど、ちょっと気分じゃないなぁ。
まぁ良いや、ポカポカインサニティ・ブルー!体温上昇のテンションアップと、毒は敵味方識別逆転の精神毒だね。
なんかおかしいなぁ〜ってところまでは有効だから、折り合い見てもう一回、正常化させて攻撃範囲めちゃくちゃにしてみよっと。
それにしても、よく食べたねー。
ここをキャンプ地にして、輸出ってできない?
ここは割とすぐこれるようにブックマークしておかなきゃ。
「うーん、アイスかぁ、アリだけど、ちょっと気分じゃないなぁ」
圧巻の品ぞろえを前にしてメルトは首を傾げる。
食後のデザートとしてはありだけど、だんだん寒さが増してきた季節を考えるとナシである。でも年がら年中地表を炎が覆っているデビルキングワールドなら一周回ってアリなのかもしれない。
「まぁ良いや、ポカポカ【インサニティ・ブルー】!『オンステージ!( ˘ω˘ )狂気の蒼に染まれ!』」
メルトは高らかに叫びながらメルト・メディカルとケミカルストリームを周囲にばらまく。
「お、なんかポカポカしてきたね? 何したのー?」
「興奮作用に伴う体温上昇のテンションアップと、敵味方識別逆転の精神毒だね」
「いつの間にっ……!? でもこれぐらい一蹴しないとねぇ!」
アイスクイーンが大きく広げた巨大な尻尾から対象を氷漬けにする氷の槍が大量に飛び出し、天井ギリギリのところで弧を描いて降り注ぐ。
それらは全て味方であるはずの悪魔達に全部降り注いだ。
見た目は猟兵に見えても彼らが発するのは聞き馴染みのある声である。その困惑混じりの悲鳴にアイスクイーンは私達の方が優勢のはずなのに、と怪訝そうに眉間に皺を寄せる。
メルトはニコニコ笑みを浮かべながら解毒薬を投下する。認識が正常に戻ったアイスクイーンは自らがもたらしたものだと分かる惨状に顔を真っ青にさせた後、すぐに怒りで真っ赤になった。
『もう怒ったわ!骨の髄まで氷漬けにしてあげる!』
怒りのボルテージが限界突破したところにメルトは見せつけるように持っていた薬品を投下する。
ここで、実はこの中身はただの水です、とは明かさない。
「はっ、カラクリが分かればもう間違えるわけがない! 今度は味方だと思った相手に打ち込めばいいんだろう!」
言わなければ勝手に狂わされたと思って同士討ちを始めるのだから。
「なんかおかしいなぁ〜ってところまでは有効だから、折り合い見てもう一回、正常化させて攻撃範囲めちゃくちゃにしてみよっと」
どうせまた断末魔を聞けば異常に気づくでしょ、とメルトは壮絶な内輪揉めを尻目にアイスを物色する。
「それにしても、よく食べたねー。ここをキャンプ地にして、輸出ってできない?」
「あーダメダメ、ここってテイクアウト出来ないんだよ。多分容器の方に持ち出し厳禁の魔法がかかってんだと思う」
「そっかー」
無料で料理は提供するが、店内飲食に限るらしい。
現地民からの情報にメルトは残念そうに口を尖らせつつ、スマートフォンを取り出した。
「ここは割とすぐこれるようにブックマークしておかなきゃ」
大成功
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真・シルバーブリット
●POW
そう言えばアイスエイジクイーンはまだ帰ってきていなかったよね
鬼の居ぬ間に洗濯って言うけど、ラスボスの居ぬ間に玉座に座るってところかな?
まぁ、アイスエイジクイーンが帰ってきたら唯で済まない事態になりそうだし、知らぬが仏で今のうちにやっちゃおうか
けど、ここは冷凍庫のように寒いねー
そのまま立ってると凍りつくかもしれないから、リリリリはグラビティチェンインエンジンで十分温まった僕に乗りなよ
僕もそのままだと凍りつくだろうし、子どもは風の子元気な子
巨大グルメ迷宮をバリバリ走って追い詰めちゃうぞー
【デッドヒートキャリバー】を発動
黒炎を纏った突撃で氷属性をバリバリ倒して、リリリリの必殺剣をお見舞いさ!
「そう言えばアイスエイジクイーンはまだ帰ってきていなかったよね。鬼の居ぬ間に洗濯って言うけど、ラスボスの居ぬ間に玉座に座るってところかな?」
カチカチとランプを点灯させながら、真・シルバーブリット(ブレイブケルベロス・f41263)はアイスクイーンを見遣る。
「まぁ、アイスエイジクイーンが帰ってきたら唯で済まない事態になりそうだし、知らぬが仏で今のうちにやっちゃおうか」
『氷のしもべたち、あいつらを氷漬けにしなさい!』
アイスクイーンの号令に従い、氷属性の下っ端悪魔達が動き出し、氷の壁が次々と建てられていく。
「けど、ここは冷凍庫のように寒いねー」
アイスクイーンが先程ばら撒いた氷の槍の侵食も相まって、このフロアは暖房が追いつかないほど一気に冷え込んできた。
「おお寒い寒い」
「そのまま立ってると凍りつくかもしれないから、リリリリはグラビティチェンインエンジンで十分温まった僕に乗りなよ」
「あれれ、これはご丁寧にどうも」
膝を上げた足踏みを繰り返すところに横付けすれば、リリリリは断ることなく跨る。
「僕もそのままだと凍りつくだろうし、子どもは風の子元気な子。巨大グルメ迷宮をバリバリ走って追い詰めちゃうぞー」
けたたましいエンジン音をたてて突っ込んできた黄金の車体へ悪魔達は目前の氷の壁を押し倒すことで下敷きにしようとする。だが傾いた瞬間に鋭い角度で曲がって避けると、姿を自ら露わにした悪魔達を轢き飛ばした。
その様子を見た悪魔達はシルバーブリットの行く手を遮るために新たな壁を形成する。しかしリリリリの剣によって横薙ぎに切り裂かれ、低くなったところをウィリー体勢を取ったシルバーブリットに飛び越えられる。
「アイスクイーン様、止められません! どうかお逃げを!」
「はあ? 何を言い出すんだい!?」
自分達では止められないと悟った悪魔が半泣きでアイスクイーンに報告をする。
だがその時にはすでに、黒炎に身を包んだライダーはすぐ間近に迫ってきていた。
「いたよ!」
「おっけー、全力全開でいっちゃってー!」
「くっ、こうなったら……私が囮になっている間に、早く!」
「え、いや、早くと言ったって……」
敵の攻撃を防ぐために作った氷の壁は、逆に自分達の退路を断つ檻と化してしまっていた。
ばんざーい! と言いながら突っ込んだ手下が成す術なく吹っ飛ばされる。
立ち往生していたアイスクイーンはリリリリの振るった剣を咄嗟に避けて防寒着を削られるだけですませる。だが急旋回したシルバーブリットの突進から逃げ切ることは出来なかった。
成功
🔵🔵🔴
ミルドレッド・フェアリー
●WIZ
これは随分と冷え込む凍獄なご様子で
過酷な宇宙空間でも快適なスペースアーマーを装備しているので今の所は影響がありませんが、このままではカッチンコッチンになってしまうのも時間の問題ですね
にしても、デビルパワーを得たリリリリは凄いですね
この極寒の中でも寒いの一言で済んでいるのですから
ですが、このままでは氷漬け
何とか血路を拓かねば共倒れとなってしまいます
ならば…『ミゼリコルディア・スパーダ』!
無数に降り注ぐ対象を氷漬けにする氷の槍を魔法剣で迎撃です!
相手は2年も食っちゃ寝し続け、動きが緩慢!
この間隙を突き、騎士銃槍のロケットエンジンで一気に距離を詰めてリリリリと共に突撃あるのみ!です!!
「これは随分と冷え込む凍獄なご様子で。にしても、デビルパワーを得たリリリリは凄いですね。この極寒の中でも寒いの一言で済んでいるのですから」
ばら撒かれた黒炎に炙られて溶けつつも、フロア全体に真っ白な氷の膜を広げ続けている氷の槍とそこから発せられる寒気にミルドレッド・フェアリー(
宇宙風来坊・f38692)は目を細める。
「ですが、このままでは氷漬け。何とか血路を拓かねば共倒れとなってしまいます」
過酷な宇宙空間でも快適に動けるスペースアーマーを装備しているため今の所は影響はないが、リリリリ達への反抗でアイスクイーンは新たな氷の槍を生成しては全方位に撃ち込んでいる。このままでは溶けるよりも凍るスピードの方が勝り、カッチンコッチンになってしまうのは時間の問題だろう。
「ならば……『ミゼリコルディア・スパーダ』!」
ミルドレッドが天井に手を伸ばせば、虚空から何千本も現れた魔法剣が弧を描いて飛来する氷の槍へ切り掛かる。
動かす主がいない魔法剣は槍から発せられる冷気に凍らされてもなお幾何学模様を描きながらぶつかり続ける。その結果、槍は床に落ちず空中に留まる格好になった。
冷気を生み出す新たな障害物が増えなかったことで氷が溶け、アイスクイーンの姿が露わになる。しつこいリリリリ達の攻撃を避けるのに必死なアイスクイーンが気付いてないだろうその僅かな隙間を突くべく、ミルドレッドは騎士銃槍のロケットエンジンを起動させてその推進力に乗り、一気に加速した。
「リリリリ、いきます!」
「お、挟み撃ちだね了解。頼んだよバイクくん!」
合図に気づいたリリリリの指示を受けた金色のバイクが黒い火花を散らしながらUターンし、ミルドレッドと真逆の位置に着き直してから再度突撃する。
相手は2年も食っちゃ寝し続け、動きが緩慢になっているはず、この両方向からの突撃を避ける術はないとミルドレッドは確信していた。
「はっ、その程度でこの私を捕まえられると思わないことね!」
しかし脂肪だけでなくデビルパワーも溜め込んでいたアイスクイーンは足元に尻尾をつけるとそこから巨大な氷の槍を生成し、足場にして天井近くにまで上昇した。
だが先んじてたどり着いたリリリリの手によって槍がへし折られ、アイスクイーンは別の場所に飛び移る前に転落させられる。
「きゃあっ!?」
「逃しはしない!」
そこへミルドレッドの突進が炸裂し、アイスクイーンは凍った床を勢いよく転がされた。
成功
🔵🔵🔴
ヴァルター・シュヴァルツェ
グループ名:シャルラッハロート家
-かの勇者殿が自らご参戦とは。
嘗ては敵として戦いましたが、これも何かの縁。
及ばずながら助太刀いたしましょう。<リリリリに対し
一行(とリリリリ)に作戦を伝達した後でUC使用
まずは車中にてボスの周囲をプログラミングでマグマの海に変換。
そして皆様の合体UCを発動させ、それを叩き込む隙を作ります。
「今です!奴にドデカい一撃を喰らわせましょう!」
ボスを撃破出来ましたら、眼鏡を直しつつ一言。(鼻で笑う感じ)
「…その程度でアイスエイジクィーンの後釜を狙うとは笑止千万、ですね」
余裕が残っていましたら、皆にデビルキングワールド名物料理を薦めます。
(但し刺激が少なめな物を)
レオンハルト・シャルラッハロート
グループ名:シャルラッハロート家
-バトルオブオリンピアの時は敵として戦いましたが、
ボク達も貴女に協力します!
(…でもボク達の事、覚えてるかな?)<リリリリに対し
ヴァルターに『一緒にボスを倒す』と命令し、
その後は娘を乗せてシュヴァルツェヴィントで上空で待機。
合図が来たら、そこから飛び降りつつ、
ボスに合体ユーベルコードを叩き込みます。
「これがボクらの全力だ!『真・鳳翼熾炎斬&星霊大突進』!」
(星霊が一斉に突進した後で、自分のUCを発動する感じ)
(ボスを撃破出来たら)
「…アイスエイジクィーンの氷はそう簡単に溶けないと聞いた。
つまり貴様はその足元にも及ばなかったという事だ」
後はヴァルターの勧めに任せる
レオーナ・シャルラッハロート
グループ名:シャルラッハロート家
-ここがヴァルターさんの故郷、デビルキングワールド。
話は聞いてたけど…思ってたより怖くはなさそう。
と、とにかくレオーナも頑張るね!
まずはお父様のグリフォンに乗って待機。
ヴァルターさんのスキルに目を見張りながらも、合図が来たらそこでUC発動。
この時はスピカだけでなく、全星霊で援護します。
「スピカさん、みんな!お父様を助けてあげて!」
ボスを撃破出来ましたら、勇者さんや他の猟兵達に一礼します。
もし、食事(?)できる余裕がありましたら、
ヴァルターさんの助言は守りつつも、
デビルキングワールド産の料理に好奇心の目を向けます。
(アレは一体どんな味がするのかな?)
マグダレーナ・ブラウベルク
グループ名:シャルラッハロート家
『魔女』ってのがどういうのか識りたくて、
ここ(デビルキングワールド)へやってきたのはいいけれど…、
何やら大変な事になってるようね。
アタシも及ばずながら手を貸すよ!
まずは箒に乗って空中へ。
合図が来るまでは特製カボチャをお見舞いするよ!
そして合図と同時にUC発動。
「かつてはアタシも星霊術士だったのよ!」
ひと段落したら、
「…もう“魔女”どころじゃなくなったようね」
と零しつつも、リストランテの食事を物色。
ああ、もちろん食べるのは遠慮するわ。
けど、アタシも料理人の端くれ。
これからのメニューの参考にさせてもらうよ。
「ここがヴァルターさんの故郷、デビルキングワールド。話は聞いてたけど……思ってたより怖くはなさそう」
髑髏が辺り一面に転がり、活火山から絶えず流れる地獄の業火が地を這う景色を父———レオンハルト・シャルラッハロート(不死鳥の天誓騎士・f38951)が操る黒きグリフォンの背中から眺めていたレオーナ・シャルラッハロート(星霊の友・f42330)は率直な感想を漏らす。それはおどろおどろしい見た目の地上から断末魔や悲鳴の類が全く聞こえてこなかった、というのと大いに影響していただろう。
レオンハルトは凄惨に見える光景を前にしても平静を保っている娘の成長を感じつつ、視線をリストランテ・ハロウィーンに移す。
リストランテ・ハロウィーンは地上100階地下100階からなる超巨大迷宮である。故にもしアイスクイーンの潜伏先が地下であればその姿を外から見ることは出来なかった。
だが幸運なことに地上の階であったことで、レオンハルト達はとある階にある小窓が全て真っ白に凍りついているのを見つけることが出来た。
「『魔女』ってのがどういうのか識りたくて、ここへやってきたのはいいけれど……何やら大変な事になってるようね」
その真横に魔法の箒に跨るマグダレーナ・ブラウベルク(あらあらまあまあの・f40466)が着く。
「テラス席があったらそこから特製カボチャをお見舞いしたのに、残念ね」
「女将さん、あの中に入ったら思う存分お願いします」
『しかしかの勇者殿が自らご参戦とは。嘗ては敵として戦いましたが、これも何かの縁。及ばずながら助太刀いたしましょう』
「ええ、アタシも及ばずながら手を貸すよ!」
「と、とにかくレオーナも頑張るね!」
マグダレーナが元気に応え、慌ててレオーナも反応するはるか下で、久々の故郷のドライブとなったヴァルター・シュヴァルツェ(シャルラッハロート家の執事・f40571)がリストランテ・ハロウィーンの前に停車していた。
『ヴァルター、オブリビオンとリリリリ達が戦っていると思われる階層が見えたよ。ちなみに1階に見せかけて実は2階分とかってことはないよね?』
「ええ、そのような騙し絵のような設計はされてないです」
『分かった。じゃあ見た通りに言うよ』
スマートフォンから聞こえてくるレオンハルトの情報をコードに加えつつ、ヴァルターは作戦を伝える。
「まずは車中にてボスがいると思われる場所の周囲をプログラミングでマグマの海に変換。そして皆様の合体ユーベルコードを発動させ、それを叩き込む隙を作ります」
外から中が見えない故、すでにオブリビオンと交戦しているリリリリや猟兵達を巻き込んでしまう可能性は大いにある。事前に作戦を共有出来れば良かったが、ここは彼らが咄嗟に反応して全力で避けてくれることを信じるしかない。
『ヴァルター、一緒にボスを倒すよ』
「かしこまりました、若君様」
具現化された闇がヴァルターと座席の間から立ち昇る。そしてヴァルターは澄ました顔でエンターキーを叩いた。
「えっ
……!?」
何かを叩く音がスマートフォンから聞こえてきた瞬間に目前の建物の一部分だけがマグマとなり、悪魔達が流れに巻き込まれて落ちて行く様を見てレオーナは思わず目を見張る。
故郷でもアルダワの魔法学園でも色んな魔法を見てきた。しかしあの打撃音一つだけでここまでの大きな変化をもたらす魔法は初めて見たのだ。
「どうすればこんな短時間であれだけの効果を齎す術式を……ひょっとしてお父様が場所を伝えているときにもう組み始めていた?」
『今です! 奴にドデカい一撃を喰らわせましょう!』
ヴァルターの合図で現実に引き戻されたレオーナは、まずは手筈通りに壁も床も失って吹き晒しになった階に向けて大量の星霊達を飛び込ませた。
「スピカさん、みんな!お父様を助けてあげて!」
「かつてはアタシも星霊術士だったのよ!『お休みの時間よ。もこもこヒュプノスちゃんの数、数えてごらん?』」
続けてレオーナ達も転がり込めばオブリビオンの手下達がマグマから必死に立ち泳ぎをすることで顔だけ出して断末魔を上げているのが見えた。だがそんな彼らもマグダレーナが呼び出したヒュプノスに眠らされたことでどんどん沈み出す。
その顔面を踏みつけて跳び移るレオンハルトは慌てて作った氷の槍の柄に必死にしがみつくオブリビオン———アイスクイーンに白く輝く刃を向けた。
「これがボクらの全力だ!『真・鳳翼熾炎斬&星霊大突進』!」
アイスクイーンは咄嗟に氷の槍を束ねて作り出した壁で受け止める。しかしレオーナによって呼び出された星霊達がスピカダンスを空中で披露することでその集中力を削る。
「何をしてるんだこいつら!? いや、これが終わったら何かが起きるのか!?」
アイスクイーンは警戒から氷の槍を空中にも投じて星霊達を妨害する。その結果、レオンハルトへの対処が疎かになった。
『羽ばたけフェニックス!聖炎よ、燃え爆ぜよ!』
星霊フェニックスが生み出した炎に焼かれ、飛ばされたアイスクイーンは辛うじて形を保っていたカウンターに転がり込み、置かれていた氷に頭から突っ込む。
そして消火し終わって顔を上げると、リリリリと男2人の冷めた目が向けられていることに気づいた。
「……アイスエイジクイーンの氷はそう簡単に溶けないと聞いた。つまり貴様はその足元にも及ばなかったという事だ」
「……その程度でアイスエイジクイーンの後釜を狙うとは笑止千万、ですね」
「デビルパワーいっぱい貯めてきてこの程度なんだーくすくす」
アイスエイジクイーンならばこのマグマも一瞬で凍り付かせて熱い熱いと騒ぎ立てることはなかっただろう、という言外の指摘にアイスクイーンは顔を真っ赤にさせてジェラートが満杯に入った容器を投げつける。
それを最低限の動きで2人が避けると明後日の方向へ駆け出し、溢れ出たマグマが流れている階段に飛び込んだ。
「アイスクイーン様はオレ達ぎゃあああっ!!」
「邪魔だよこら待てー!」
間に割り込んできた悪魔達を片手で薙ぎ払い、リリリリがその後を追いかける。レオンハルト達もすぐに続いたが何十階か降りたところで2人の姿は見えなくなってしまった。
膝に手をやって呼吸を整えていたヴァルターは直立の体勢に戻るとマグマへの変換を停止させ、リストランテを本来の形に戻す。これで灼熱の中に沈んでいた悪魔達は床に伸びた形で浮上してくることだろう。
それから何階か降りて行くとレオンハルトが被っていた兜を脱いで首を横に振っていた。
「ヴァルター……すごいね、デビルパワーって。二段飛ばしとか、三段飛ばしとかっていう、次元じゃない……」
ヴァルターに気づいたレオンハルトは、決して訓練を怠っていなかったにも関わらず置いてかれたという事実に悔しそうな表情を浮かべる。
「慰めにもなりませんが……あそこまでの動きが出来るのは悪魔でも一握りです。まず第一にわたくしめも追いつけてないのですから」
「……そうだね。そうだね、って言うのもおかしいけど」
「もう『魔女』どころじゃなくなったようね」
レオンハルトが疲れ果てた笑みを浮かべていると、早々に追いかけっこからリタイアしていたマグダレーナが嘆息しながらレオーナと一緒にゆっくりと降りてきた。
「逃げられる前にヒュプノス達で眠らせられれば良かったんだけど、どうも効かなかったらしくてねぇ」
「それもまた、デビルパワーか」
大人達が反省会を繰り広げる中、蚊帳の外になっていたレオーナは初めて目にする色彩ばかりの食べ物を見て、アレは一体どんな味がするのかな、と好奇心で目を輝かせる。
「……よろしければ。わたくしめの故郷の料理を召し上がられてはいかがでしょうか」
その感情の動きを敏感に察知したヴァルターはすぐにその背後につき、問いかければ渡りに船とばかりにレオーナは声を弾ませる。
「いい、お父様?」
「ヴァルター……後でショックを受けるような物は」
「もちろん、若君様とお嬢様のために刺激少なめの物をご紹介させていただきます。この階ですと……あちらのヤンニョムコタツムリなどいかがでしょう。鶏に似た姿の悪魔の肉を揚げた物にコクのある甘辛いソースで味付けした物になります」
「火を吹きそうになるほど辛くなければ大丈夫そうだね。それから食べてみるかい?」
「はい、お父様!」
「マグダレーナ様はいかがされますか?」
「ああ、もちろん食べるのは遠慮するわ。けど、アタシも料理人の端くれ。これからのメニューの参考にさせてもらうよ」
ヴァルターの教えに従って本日の食事を吟味する親子の姿から何に興味を抱いているのか、調理場を任されている者としてマグダレーナは観察に専念するようだ。……決してここで出てくる料理を不安視しているわけではないだろう。もし抱いていたらシャルラッハロート親子を本気で止めていただろうから。
「ちなみに色んな意味で不味い料理もあるんだろう?」
「ええ、お嬢様の世界にいる物よりもはるかに大きな芋虫を使った着色料を使っている物とか噛んだら目から涙が出てくるほど酷い臭いが発せられる物とか……ですが注文される前に全て阻止しますので」
大成功
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淳・周
なーんかマイペースで調子狂うな…まあいいか!
勇者的にアウトな悪人はアタシがブッ飛ばしてやろう!
一応ハンバーガー系のジャンクなのを豪快に喰う感じでちょっとパワー補給しつつアイスクイーンの元へ、スレカ解放して武装装着!
…なんか堕落してるけど強さは本物なんだろうな。よっしゃ燃えてきた!
基本的に守りはリリリリに頼みアイスクイーンが召喚する配下悪魔達を蹴散らして貰ってその間にUC起動、灼熱の焔凝縮した渾身の一撃ぶち込むぞ!
隙がデカいUCだが、勇者が守ってくれるなら問題なし!
一発でダメなら何度でもぶち込む、正義のヒーロー舐めんじゃねえぞ!
戦闘後は冷たい何か食べたいかな。マナー通りに。
※アドリブ絡み等お任せ
「飯を食えば食うほど強くなれるとか、おかしなレストランだな本当に」
淳・周(赤き暴風・f44008)がパティとチーズが3段重なったハンバーガーを大口を開けて噛みついていると忙しない足音と息を切った声が聞こえてきた。
「なっ、先回りされてた!? くそぉ、まだオータムフェアの第三弾を食べてないのに……!」
「どおこいったあああ!!」
続けてリリリリの大声が上から聞こえてくる。しらばくれて逃げるよりも開き直って攻撃するよりも次の期間限定商品のことを考えているとは、なんと悠長なことだろうか。
「なーんかマイペースで調子狂うな……まあいいか! 勇者的にアウトな悪人はアタシがブッ飛ばしてやろう!『起きろ!』」
翳したスレイヤーカードが光り輝いた瞬間、周の服装がワインレッドのスーツへと変わる。
下の階に降りるには周の横を通らねばならないアイスクイーンは歯を見せて唸り出した。
「うう……氷のしもべたち、あいつぐらいは氷漬けにしなさい!」
大きな尻尾から悪魔達が這いずり出てくる。彼らも彼らで太っているが、その身から漂う魔力は決して見かけ倒しではないのだろう。
「堕落してるけど強さは本物なんだろうな。よっしゃ燃えてきた!」
周は突っ込んでくる悪魔達を焔を纏った体で殴って蹴って弾き飛ばす。しかしいくら倒してもアイスクイーンの尻尾からは新たな悪魔達が出続いていた。
「四次元ポケットかっつーの……こうなったら一撃でカタをつけるしかねぇか」
周は灼熱の焔を圧縮して拳に集中させ始めた隙をついて悪魔達が思い思いの武器を振り上げて襲いかかる。しかしその切先は周の
手前で止まった。
「ちょっとー危ないよっ!」
着いて早々盾のオーラを飛ばしたリリリリが頬を膨らます。それとほぼ同時に周の体から赫き月光のオーラが噴き出し、取り囲んでいた悪魔達は天井や壁に激突した。
「すまねぇ! でも守ってくれるって信じてたからさ!」
周は悪魔達の影に隠れて逃げようとしていたアイスクイーンを捕まえ、窓に叩きつける。
「一発でダメなら何度でもぶち込む、正義のヒーロー舐めんじゃねえぞ!」
それから一方的に殴られ続けて顔が変形し始めたアイスクイーンは何十度目かの一撃の余波で窓に開いた穴から迷いなく飛び降りた。
「お、覚えてなさい! 私の8thKING計画はまだ終わってないんだからぁぁぁぁぁ!!」
「次からちゃんと並んで食べるんだよ!」
捨て台詞を吐きながら遠のいていくアイスクイーンにリリリリは笑顔で返す。
———リリリリはレストランテ・ハロウィーンでオブリビオンが食事をするのを禁止しに来たわけではない。それを私物化していることを咎めに来たのだ。故に一般客として行列に並んで食べる分にはその剣を振りかざすことはないのだろう。
「……なんか、冷たい物食べたくなってきたな」
「ならジェラートなんてどう? ひえっひえだよ?」
「お、乗った」
「じゃあ、この私が直々に案内してあげよー」
大成功
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