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🎃ゆうしゃとゆうしゃ

作者：聖山　葵

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「ひさしぶりに勇者します。腕がなるなあぶんぶん」
　デビルキングワールドの悪魔たちは、自分で擬音を口にするその勇者に恐怖した。
「なんか気を失って気がついたらガチデビルに乗っ取られてました。私はオブリビオンではありません」
　と言うか、恐怖したでは終わらない。勇者リリリリは自らの経緯を説明はしつつも魔王やラスボス達たちをシバきだしたからだ。
「誰だコイツが死んだなんてデマを流しウボアーッ！」
「へへへ、これは夢だ朝になればいつも通りのにちじょほげばっ？！」
「こ、この状況からでも入れる保け、ほげーっ？！」
　なんというか、死屍累々である。
「とりあえずはこんなところかも！」
　何体かのラスボスを積み重ねてふんすと得意顔な勇者リリリリではあったが、その興味はとある迷宮に奪われることになったのだとか。

「……それが、『リストランテ・ハロウィーン』と言う迷宮です」
　その昔、焼きそばから高級料理までなんでも作る魔王ビストログルメが建設したという、地上100階地下100階にも及ぶという超巨大迷宮ですなのだとか。エレノア・レインヘイル（理の悪魔の四天王・f31587）が言うにはビストログルメの没後も無限に「ちゃんと盛りつけされたおいしい料理」が湧き続けているそうで。
「実は今、この迷宮はオブリビオン残党の巣窟と化しているようです」
　ここに巣食うオブリビオン達は、ここのグルメが膨大なデビルパワーを秘めていると知り、戦争に負けたあの日からひたすらに食べて食べて食べまくっているのだそうで、このまま放っておくのはよろしくないというところだったのだが。
「ここの興味を持ったリリリリさんが殲滅に向かうことがわかりました」
　巣食ってるオブリビオンからすればとんだ災難だが、猟兵たちからすると巣食うオブリビオンを排除するチャンスでもある。
「えっと、現地には私が転送しますから、リリリリさんに着いて行って中へ足を踏み入れたら超巨大迷宮から勝手に湧いてくる料理を沢山食べ、デビルパワーの恩恵にあずかってください」
　ジャンクフードからご当地B級グルメ、季節の限定スイーツに最高級のコース料理まであらゆる料理にお目にかかれるここでは、それぞれふさわしい食べ方で料理を食べるとより効率よく強力なデビルパワーを獲得することができるらしく。
「その先に居るであろうオブリビオンもリストランテの料理を沢山食べてパワーアップを図っていますが、デビルパワーの恩恵にあずかっているならパワーアップしているのは皆さんも同じですよね？」
　たとえ料理を食べていなくても、同行して居る勇者リリリリが一緒に戦ってくれるので、彼女との連携をうまく利用すれば勝機はある筈という訳だ。
「『リストランテ・ハロウィーン』でパワーアップを図っているのは、伝説の勇者『ああああ』」
　なんでもはるか昔に闇を支配する悪しき魔王を討ち倒した伝説の勇者で、光の剣を振るい悪しき魔界の軍団を捻じ伏せてついに魔王を滅ぼした光よりの使者なのだとか。
「真偽はさておき、勇者対勇者という構図になりますね」
　勇者リリリリと共闘した場合は。こう、主である封印された魔王ごと魔術で遠くへ飛ばされ、帰る魔王城がわからなくなった四天王としてエレノアにもこの状況は思うところあるのかも知れないが。
「……私からは以上です。では、よろしくお願いしますね」
　個人的なことは何も語ることはなく、最後にぺこりと頭を下げてエレノアは君たちを送り出すのだった。

第1章 日常 『リストランテ・ハロウィーン！』

POW   :    ボリュームのある料理を豪快に食べる SPD   :    気軽な軽食をライトに食べる WIZ   :    洗練されたマナーで高級料理を食べる 👑5 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「勇者と勇者……成程状況はわかった、私も参戦しよう」
　それはグリモア猟兵の説明を聞き終えてのことだったように思われる。一つ頷いた勇猛天使・ユーエル（地に残されし光の勇者・f42761）は転送され。
「力を失ったこの身なれど、胸の勇気に陰りはなし！　勇ましき者勇者ユーエル、ここに参上！」
　名乗りを上げるユーエルの視線の先には件の迷宮、リストランテ・ハロウィーンがぽっかりと口を開けていた。
「勇者？　そっか、同じ勇者なら考えることは同じなのかも！　ほれこのようにテンションも上がってます」
　同じ勇者を名乗る者の登場に驚きつつも喜び剣をぶんぶん振るのは、勇者リリリリだ。
「いざ突入です」
　足取りも軽く勇者リリリリはそのままリストランテ・ハロウィーン内部へと足を踏み入れ、ユーエルもこれについて中へと入ってゆくのだが。
「不思議な光景、と言えばそうか……」
　内部はまさにグリモア猟兵から聞いた通り。迷宮のあちこちから料理が湧き出していた。
「さて」
　まさにより取り見取りな景色ではあったが、ユーエルが進んだ先にあるのは豪快にそしてこんもりと盛りつけられた所謂ドカ盛り料理。
「この手の物を食べきるには自身の流れを乱さない事が重要だと聞く」
　有無を言わさぬ物量系の料理を前に、ユーエルは送すことなくカラトリーへ手を伸ばした。
（――ならばここは）
　そのフォーク捌きは、まるで連撃を繰り出すかのようだった。一定の間隔で咀嚼を行うことで遅滞はなく、むしろ食べる速度を上げつつ料理を平らげてゆく。
「ところで食べれば強くなれるとの事だがこれには何が入ってるんだ？」
　と、時には質問を挟む余裕が出る程に。
「確かこれはお魚とかだったかも　ほれこのようにお魚だけでなく貝とかも入っています。こっちのタコは海の悪魔って言われてるけど実際に悪魔ではなくて――」
「なるほど悪魔の力……時として清濁併せ持つのもまた勇者！　恐れずに食らいつくさん！！！」
　割と律義に答えてくれる勇者リリリリの言葉の途中でユーエルは新たな具材にフォークを刺すと口元に運ぶのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「ここが『リストランテ・ハロウィーン』ですかぁ」
　その日、【豊饒の使徒】の面々はかの超巨大迷宮へ足を踏み入れた、そして。
「これはまた、素敵な施設ですねぇ」
「ええ。飢饉等への備えにもなる、素晴らしい施設に御座いますね」
　口を開いた夢ヶ枝・るこる（豊饒の使徒・夢・f10980）の称賛に同意する豊雛院・叶葉（豊饒の使徒・叶・f05905）。
「素晴らしい施設ですね」
「とても楽しそうな施設なんだよ」
　オブリビオンの方が住み着きたくなるのもわかる気がしますと籠る動機にまで鞠丘・月麻（豊饒の使徒・月・f13599）がいくらかの理解を見せる一方、これは確かに拠点にしたくなるんだよと鞠丘・麻陽（豊饒の使徒・陽・f13598）も真相はどうあれオブリビオンがここを巣窟としていることには納得して。
「私だけは、この世界に来るのが初めてなのだけど」
　それでも他の面々同様に楽しみであるのは間違い無いなかった華表・愛彩（豊饒の使徒・華・f39249）は、周囲を見回し。
「何というか、世界は広いわね」
「そうですわね。話を聞いた時には『こんな素敵な場所が有りますの？』と私も驚いたものですわ。世界は広いですの」
　ポツリ、呟いたことばに絢潟・瑶暖（豊饒の使徒・瑶・f36018）が同意した。
「ですが、見事な施設ですわね」
「だよねぇ。これは凄い施設だねぇ。色々と食べられそうだよぉ」
　艶守・娃羽（豊饒の使徒・娃・f22781）に頷いた甘露島・てこの（豊饒の使徒・甘・f24503）は迷宮内から料理が湧き出る様子を見て目を輝かせ。【豊饒の使徒】の面々はそれぞれ祈り始める。
「大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その神技の理をここに」
「豊乳女神の二なき一のみごゝろにたもち御在まして、八極外に顕出し、一毛中に秘蔵在す」
「大いなる豊饒の女神、《楽園の地》より紅鏡へと、その絶技をお与え下さい」
「大いなる豊饒の女神、《楽園の地》より水鏡へと、その絶技をお与え下さい」
「大いなる豊饒の女神の使徒の名の元に、女神より齎されし絶技の欠片よ、わが身に宿りて力となりなさい」
「大いなる豊饒の女神様、貴女の僕に天の絶技をお与え下さ」
「大いなる豊饒の女神様、貴女の使徒を天の絶技へとお導き下さい」
「大いなる豊饒の女神様、貴女の使徒を絶技の道へとお迎え下さい」
「大いなる豊饒の女神様、貴女の使徒に古の絶技をお授け下さい」、
　それはただの食前の祈りではない、だがこの後料理を食べることに備えてと言うのであれば間違いでもなかった。祈りによって得た、沢山の食物をその身に収めうる大食いの技術がチャレンジメニュー級のテラ盛の丼物への対処を可能としたのだ。
「『完成品で出てくる』とのことですから、『誰かが丼物を選び、全員で同じ品を頂いて、次は別の人が選んで同様に』という流れで参りましょう」
　と、るこるが提案すると他の【豊饒の使徒】の面々に異論はないようで。
「では私はこちらを」
　るこるが選んだのは、かつ丼であった。こう、器からして丼ものって何でしたっけと首をかしげたくなるサイズではあったが。
「しっかりと味が染みていて、とても美味しいですぅ」
　どうやって揚げたのか不思議になるほど巨大なカツも食べやすいようにきっちり切られた状態でご飯の上にのっており、一切れ口に運んだるこるは表情を綻ばせ。
「ここはとても美味しいのでぇす。絶好の機会でぇすし、皆で沢山食べましょぉ」
　嬉しそうに丼を掲げたリュニエ・グラトネリーア（豊饒の使徒・饗・f36929）の呼びかけに否と言う者はその場には居なかった。
「丼物なら『焼肉丼』を選ぶのでぇす」
　そして上がるテンションのままにリュニエが次の丼物の種類を定めるのだが、肉の次に肉と重なったところで一行は気にしない。
「テラ盛でぇすから、色々なお肉が乗っていると有難いでぇす」
　と要望まで加えていたが、望んだ形に近い丼物が湧き出てくるところはすぐ近くにあった。
「大盛系の丼物が集められているエリアなのかもしれませんわね」
「丼物で同じ肉が載ってるものだから場所も近かったのかねぇ」
　恐るべしはこの段階で他の面々もテラ盛かつ丼を平らげてのんびりと会話してるところだろうか。
「丼の中身の量がこれとなると……元となる食事量大食いのレベルが少な低いのは私と娃羽様に御座いますが、それでも数十周程度は問題のう御座いますね」
　とは叶葉の言だが、カウントの単位が杯ではなく周と言うことは【豊饒の使徒】の面々全員が一度丼物を選ぶということで、一周は丼もので九杯分に相当する。
「ごちそうさまでしたぁ」
「ごちそうさまだよぉ」
　量を考えれば完食までにも結構な時間を要しそうにも思えるものだが、いつの間にか焼肉丼を食べ終える者も出始めて。
「次は私が選ぶ番ですか？　それでは『牛丼』にしてみます」
　と月麻が三杯目を選ぶと、【豊饒の使徒】の面々もそれぞれ牛丼の器を手に取ってゆく。
「トッピングも種類豊富ですから、テラ盛なら少しずつ味を変えながら楽しむことも出来ますね」
　それでもここまで連続で肉が来ていることもあるのだろうか。
「私からは『海鮮丼』を提示させて頂きましょうや」
　次にチョイスされたのは肉系以外の丼物で。
「地方ごとの獲れる魚介の種類の違いで、『海鮮丼』と言っても様々な種類が御座います故、皆で得た品を分け合いつつ頂いても宜しいかと思いまする」
　ともしつつ叶葉がちらりと壁を見ると、使われた魚介の名前などの書かれた板が吊り下げられていた。
「この世界特有の魚介等も存在するでしょうし、見れば聞き覚えのない魚の名も。楽しみに御座いますね」
　丼の大きさに比べると小さくも見える醤油皿の脇に外した丼の蓋を置き、叶葉は箸を宝石のように艶やかな刺身へと伸ばす。
「まあ」
　口に運んでそしゃく、呑み込むと驚きの声が一つ。見知らぬ魚の身と舌との出会いがそれを齎したのは明白で。
「このお刺身、プリプリでほんのり甘いですわね」
「こちらは他の世界でもなじみのあるお魚ですよぉ」
　九人分の丼は各々が箸をすすめて瞬く間に中身が減ってゆく。そうしてやがて丼は完全に空となり。
「麻陽様？」
「あ、私の選ぶ番なんだよ？　それなら、『天丼』をお願いするんだよ」
　他の仲間同様に丼を空にし一息ついていた麻陽は名を呼ばれて湧き出している丼物の一つを示した。海鮮丼に使われていた魚介類が余程美味しかったのかあるいは別に理由があったのか。その理由は当人が明かすこととなるのだが。
「烏賊とかの海鮮系だけじゃなくて、野菜天やかき揚げも有るから、結構量が有っても飽きずに食べ易いんだよ」
　周りに話しつつ麻陽は主役と言って過言はなさそうな大きさの海老天を一口食べ。
「確かに色々な天ぷらが載ってるから飽きがこないわ。かき揚げの玉ねぎのように甘い野菜もあればほろ苦い山菜もあるし、味の面でもバリエーションに富んでるわね」
　サクサクと音をさせつつ【豊饒の使徒】の面々は天ぷらを食してゆく。ここまで数杯の丼物を食べているのにそのペースは一向に衰えず。
「次は私ですの？　そうですわね、丼物でしたら『鰻丼』をお願いしますわ」
　精のつく品であることに言及し、この後で戦闘となれば丁度良いと思いますわとも娃羽が言った頃には全員が天丼を完食し、早い者は湧き出す鰻丼を確保し、もう箸をつけていた。
「何周か頂く過程で、『ひつまぶし』を挟んでも良さそうですわね」
　柔らかくふんわり厚い身とたれの染み込んだご飯を一口食べて娃羽は周囲を見回した。ひつまぶしの湧き出るスポットを探していたのかもしれない。その間にもご飯は進み、【豊饒の使徒】の面々がもつどんぶりの中身はどんどん減ってゆく。
「丼物を選べば良いのね？」
　そう愛彩が確認した頃にはほぼ誰の丼も空になっていて。
「それなら、最初は『ステーキ丼』をお願いした上で、他の人が挙げなかった品を、周回ごとに順番に選んでみようかしら」
　娃羽が次週以降に思いを馳せていたのを見ていたのかもしれない。
「まだ出ていない『鶏肉系』だけでも、『親子丼』や『焼き鳥丼』、『からあげ丼』とかが残っているし、『カレー丼』もあるわね」
　指折りチョイスされていない丼物の名を挙げ。
「そういえば、リリリリさんは食事の方はどうするのかしら？」
　るこる以外が初対面であることも踏まえ、無理のない範囲で一緒に食べて少しでも親睦を得られると良いと思った愛彩が周囲を見回してみると。
「凄い食べっぷりですね。ちょっと驚いたかも！」
　勇者リリリリは地味にその辺に控えていた。他の猟兵の質問に答えてくれていたこともあったし、また質問されるかもと声の届く範囲に待機していたのだろう。
「でも他の人も来るかもなので控えめの量で良ければ付き合います」
　誘ってみるとリリリリはフォークを持つ手をぶんぶん振りながら条件付きで承諾し。食べる量に差こそあれ、一人食卓に加わって食べ勧めればやはりステーキ丼も完食となって。
「丼物のメニューでしたら、『豚丼』をお願いしますの」
　瑶暖は豚肉を砂糖醤油等で味付けした甘辛いタレで焼き、御飯に乗せた品を注文する。同じ名前で牛丼のお肉を豚肉に置き換えた品もあるためそちらは次周頼むことにしつつ、ただ。
「そういえば、お飲み物のお話が出ておりませんでしたの」
　この時点で瑶暖がそう言ったのは、ここまで誰も飲み物を必要としなかったわけではなく、料理同様湧き出す場所があったからでもある。鰻丼には肝吸いの椀が近くに湧き出していたというように。いや、汁物の類を飲み物と言うのは違うか。
「基本は皆でお茶類ですが、丼物の種類次第で合う品も変わりますから、其々合わせて行きますの」
　そう言って飲み物系が湧き出てくるスポットを探し始め。最終的に食べる量に合わせ飲み物も大量に確保することとなるのだが、その間もテラ盛の丼物へのチャレンジは続いてゆく。
「私が選ぶ番だねぇ？」
　丼物でと反芻しつつてこのが考えたのはほんのわずかな時間。
「それなら『スイーツ丼』にするんだよぉ。見た目は他の色々な『丼物』に見えるけど、実際は様々なスイーツで出来ているから、甘くておいしいんだよねぇ」
　他が皆食事系だからと言うこともあってか、目先を変えるのにも良いと思うんだよぉともてこのは述べ。
「ただ、こういう品だと『映え』を意識することも多いみたいだし、一応写真を撮ったりするのがマナーになるのかなぁ？」
　食べる前に撮影を始めるのだが、これでようやく一周、【豊饒の使徒】の面々はこれを周回するつもりのようだが。
「この味と量でしたら、何周でも行けそうですねぇ。時間の許す限り、食べ続けて参りましょう」
「だね。食事量は全く問題ないから、時間以外は気にしなくて良さそうだし、出来るだけしっかり食べておくんだよ」
　その反応はまさに恐るべしと言うところだろうか。
「出来れば、テイクアウトもお願いしたいところですが」
「確かに。とても美味しいし、本当にテイクアウトが欲しいんだよ」
「本当に美味しいし、強化にもなるなら二人の言うように是非テイクアウトしたいです。通える位置に『使徒』の拠点を置くことも、真剣に検討しませんか？」
　るこると麻陽のやり取りを聞いてそんな提案が飛び出すほどにはリストランテ・ハロウィーンがその心をとらえたのだろう。
「終わったら、打上げに暫く食べてかない？」
「なら、打ち上げ用に、この後も予約しておくのでぇす。その時はまた、他の色々な品も食べてみましょぉ」
　かと思えばこの後のことを考え出したメンバーもいるようで。それから一行が満足するまでにはこの丼物マラソンは当人らの言うように何十周かも要した。
「ところで、ここはレストランですわよね？　お支払いの方は、どうなっているのかしら？　必要なら『ポーチ』からか『カード』で支払いますわよ？」
　と娃羽はキョロキョロしていたが、グリモア猟兵も支払いについては言及していなかったので既に支払われているか支払う必要はないのかもしれない。ともあれ、膨大な量を平らげて【豊饒の使徒】の面々の食事による強化は終了したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「ココガ『リストランテ・ハロウィーン』……」
　迷宮内に足を踏み入れたミーグ・スピトゥラス（コズミック・バイオモンスター・f24155）はぼんやりとその壁を眺めていた。
「オレ、何モシテイナイノニ、料理ガ出テクル」
　口から出る呟きの如く、迷宮のあちこちからは料理が湧き出ている。
「多分、オレノ頭ノ中、料理ヲ思イ浮カブト出テクル仕掛ケカモダ」
　そう、暫く観察していてミーグは推測した。面白そうに感じ、答え合わせを兼ねて色々想像して次から次へと想像オーダーし始めたミーグの前にどんどん料理が湧いてくる。推測が正しかったにせよそうでなかったにせよ、ここは料理が湧いてくる迷宮なのだ。結果的にミーグは料理に取り囲まれることになり。
「……ドウシタ、勇者？　コンナ多クノ料理ヲドウヤッテ平ラゲルカダト？」
「そうじゃないかも！」
　視線に気づいたミーグが問い返すと、勇者リリリリはぶんぶん首を横に振った。既に健啖家な猟兵の団体さんを見た後なのだ。この人も良く食べる方なんだな～、と思っただけだったのであるが。
「オレ、知ッテル。オ残シハ許シマヘンデ……魔王ビストログルメガ存命ナラ、キットソウ言ウ」
　ぐっと拳を握り、噛みしめるようにして言うと自身の言葉に二度頷く。会話がドッジボールだ。
「ダカラ、オレ……全部平ラゲル！　グォオオオ！！」
　咆哮を挙げるミーグ。悪そうな顔というか凶悪な顔の構造も相まって何も知らない第三者が見たら勇者とモンスターの戦闘シーンの一幕と間違えることもあるかもしれない、周囲に料理の山がなければ。
「ハグングモグモグングモグモグッ……ドンナ料理モ、オレサマ全部マルカジリ！　ダガ、腕ガ二本ダト足リナイ！　腕ガ足リナイナラ、増ヤスダケダ！」
　凄まじい速度で食べながら、荒々しく料理を掴んでいた腕の方を一瞬向いたかと思えばいくつもの新たな腕が身体から生えて、多腕形態になったことで食事のスピードは加速する。
「オレノ腹、腹五分目モイッテナイ！　出サレタ料理、平ラゲルノガ最大ノマナー！」
　マダマダイケルゾと食べる速度は衰えず、勇者リリリリはひたすら食べるミーグを眺めているだけだったとか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「なァンか、はるか昔に『あが4つ』とか主張してる奴が居たよーな居なかった様な……まぁ良いか」
　まるで喉に魚の骨が引っ掛かったかのように記憶のどこかに残留していたモノをウィズ・ザー（闇蜥蜴・f11239）は続けた一言でさらっと流すと、湧き出てくる料理の方へと向き直った。
「一先ず、デビルパワーを頂きますかねェ」
　この大迷宮の奥に巣食うオブリビオンを倒すためにも湧き出てくる料理を食べるのには意味があるのだ。
「盛り付け済みの料理が並ぶってのが良いよなァ」
　のしのしと迷宮に足を踏み入れたばかりだというのに、どちらを向いても美味しそうな料理。思わず嬉しげな声は漏れて。
「食欲の秋……！　なんでもありと聞くと、黙ってはいられません」
　祈るように手を組んで瞳を輝かせ玄羽・レン（『元』対歯車のコッペリア・f44108）もまたこの迷宮、リストランテ・ハロウィーンへ足を踏み入れた猟兵の一人だった。
「一応あまり太らない……胸などは太れない……体質ですし、まさかあれ・・の所為……いえそんな！」
　時折俯いたりハッと顔を上げたり急に頭を振ったりもしていたが、それはそれ。
「他の人も沢山食べてる人は居たし、何か食べてゆくのは悪いことじゃないかも！」
　割とコロコロ表情を変えるレンが抱えた乙女の悩みへ勇者リリリリは聞き役に回っていたが、他の猟兵もそうだったからと言うことでとりあえず料理を勧め。
「そ、そうですね……あっ」
「よお」
　互いに面識のあったウィズとレン。レンの方も遅ればせながら相手の存在に気づいた。
「無限に食えるっての、最高ぢゃね？　ちょい、津波みたいに一気に食って見るかァ、皿ごとよォ！！」
　が、出会ったからと言ってそのまま一緒に料理を食べるということにはならなかったようだった。理由は食べ方の違い、迷宮を進むペースの差とでも言おうか。触手使ってひょいひょい摘んでは食べてゆくウィズはレンの前をずんずん進みつつ膨らんでゆく。
「ちょい吸収まで時間かかって丸まる肥るのは、まァ、仕方ないって事で……」
　とも言っているので、なぜ膨らんでいっているのかを説明する必要はないだろう。
「おっと」
　そのうち大きくなりすぎて迷宮の通路を転がり始め。
「あの前を進んでなくてよかったかも！」
　レンに付き合うことで勇者リリリリはうっかり巨体化したウィズに轢かれる未来を回避したのかもしれない。
「凄い勢いでしたよね」
　湧き出してきたカボチャやお芋を使ったハロウィン系や季節もののスイーツとお茶をレンはリリリリと楽しみつつ、結果的にウィズを見送ってお茶の時間を楽しみ始めた。
「こういう女の子らしい会話も相応しいのではないでしょうか？」
「否定はしません。あ、このケーキ美味しいかも！　ほれこのように二個でも三個でもイケてしまいます」
　ケーキの美味しさに興奮してフォークをぶんぶん振るリリリリのペースにはついていけないレンではあるものの。
「太ったりした事はないのでしょうか？」
　感じたのは素朴な疑問。乙女だからでもあるだろうが、もし太ったことがないと答えられたら。
「だとしたら結構羨ましいですね、はい……」
　若干凹み気味にそう言うしかないレンへとリリリリは言う。
「ほれこのように食べた分だけ動けばいいのです」
「あぁ」
　食後の運動とばかりに無駄に洗練された無駄のなさそうで全く無駄な動きを見せる勇者リリリリへレンは何とも形容し辛い表情をし。
「あ、こちらのかぼちゃスイーツ、一口どうでしょう？」
　その表情を引っ込めると自分の食べていたスイーツを勧める。勇者vs勇者の前と思えない、和やかな雰囲気であった。これもさほど長くは続かないのであろうが。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「階層の事を考えると、軽食を食べているだけでも、物量でお腹いっぱいになりそうなのです！」
　とは転送後、リストランテ・ハロウィーンの外観を見た稲荷・こん子（七変化妖狐・f06041）の感想だが、無理もない。地上100階地下100階にも及ぶという超巨大迷宮なのだ、だが。
「そこで！　『秘技』を使って『大食いな人』に変身なのです！」
　こん子には腹案があったらしい。
「そうと決まれば、変身できる人が誰か居ないか、考えてみるのです……」
　うん、細部まで突き詰めてはいなかったようではあるが。
「よく食べる人、食べられる人……」
　湧き出てきた料理を食べる為になのか用意されていたテーブルと椅子の椅子の方に腰を下ろして唸ること暫し。
「決めたのです！　コンコン、変化なのです♪」
　椅子から立ち上がってむきゅっと変身したその姿は少し前に仲間たちとこの場を通り過ぎて行った団体さんの内の一人だった。当人は膨大な体内容量を持つらしいので人選としては間違ってはいないのだろうが。
「この姿なら、いっぱい食べながらも進められそうなのです！　それではゴーゴーなのです！」
　オリジナルと口調が違うことに傍から見ると違和感はあるが、足取り軽くこん子は進み始め。
「あ、迷わないように時々目印を付けて迷宮を進むのです！」
　湧き出る料理を食べつつ進みながら足を止めると床に何やら書き込んで。
「こん子は賢いのです！」
　サンドイッチをもきゅもきゅと頬張りながら自画自賛すると迷宮をさらに奥へ、そこには模倣元の味方や勇者リリリリ、そして討つべきオブリビオンまでが居るはずだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

第2章 ボス戦 『伝説の勇者『ああああ』』

POW   :    究極剣技「ああスラッシュ」 詠唱時間に応じて無限に威力が上昇する【聖・光】属性の【悪しき者を滅ぼす激しく輝く斬撃波】を、レベル×５mの直線上に放つ。 SPD   :    勇者と共に戦いし伝説の英傑達 戦闘用の、自身と同じ強さの【あらゆる魔法を操る伝説の賢者『いいいい』】と【会心の一撃を放つ伝説の武闘家『うううう』】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。 WIZ   :    究極魔法「ああブレイク」 自身の【MP（魔法ポイント）】を代償に、【悪しき者を滅ぼす光と雷纏いし大爆発】を籠めた一撃を放つ。自分にとってMP（魔法ポイント）を失う代償が大きい程、威力は上昇する。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

「まだだ、もってくれ俺の胃袋！　うおぉぉおおおぉっ！」
　ガツガツと食らう音が声とともに迷宮の奥から洩れていた。青い宝石の嵌った剣と盾を壁に立てかけ食器とフォークを手に伝説の勇者『ああああ』は今もナニカ食べているようだった。食べるのに集中して猟兵の存在に気づいていないのは幸いか。だが忘れてはいけない、この迷宮の料理を食べているということはこのオブリビオンもデビルパワーを獲て強くなっているということを。


「完食、大変美味な食事だった！」
　余韻もそのままに勇猛天使・ユーエル（地に残されし光の勇者・f42761）はオブリビオンの元へたどり着く。
「言葉の始まりを司る母なる音を並べる勇者よ、我が挑戦を受けてみよ！」
　声に出した瞬間、ユーエルの足は床を蹴り身体を一歩前に押し出していた。
「勇ましき者勇者ユーエル、魔の力を喰らいてここに参上！」
　名乗りと共に踏み込むとユーエルは手にしたお下がりの羽根のように軽い大剣グラファイトブレイド++をすぐさま振るう。
「ちいっ」
　初撃を伝説の勇者『ああああ』が躱せたのはユーエルが声に出して名乗りながら斬りかかったのと握っていたフォークを手放したからだった。ああああの代わりにフォークがグラファイトブレイド++によって真っ二つに両断され、けたたましい音を立てながら床を跳ねた時にはユーエルの二撃目がああああの身に襲い掛かる。
「連撃かっ」
　ユーエルははなからそのつもりだった。
（可能ならば――）
　この連撃でああああの足を鈍らせることができるまで粘りたいユーエルだが、ああああとてここまでひたすらすら食べてデビルパワーを獲ていたのだ。
「うおおおっ」
　剣を近くに立てかけており、フォークも手放したが故に無手。にもかかわらずああああは反撃に出た。
「牽制か」
　剣も盾もないというのにこのまま肉薄されるのはよろしくないと判断したのであろう。至極真っ当な判断である、だが。
「立て直す暇を与えると思ったか！　喰らえ黒点、光を終えろ！　フェンリルコラプサーッ！」
　剣閃で牙の紋章を描くとユーエルはそこから極小の黒点をああああに向けて放つ。
「くうっ、これはっ」
　直撃を受けては拙いと瞬時に判断したらしく、ああああは身体を捻る。結果として極小の黒点はああああがそれまで居た場所を通過するにとどまる、が。
「見事だ、だが」
　無理やりのように避けたああああにユーエルの次の一撃を躱す余裕はなかった。
「これぞ喰らう事から編み出した我が新奥義！　漆黒の顎を受けてみよ！」
「ぐああああああっ」
　勇気と共に飛び込んだユーエルの一撃は見事ああああの身体を捉えたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「あれがこの大迷宮を巣窟としていたオブリビオンですか」
　出来たばかりの傷を押さえへのへのもへじ顔を歪める伝説の勇者『ああああ』を視界におさめ、夜鳥・藍（宙の瞳・f32891）はほのかに青白い月光を放つ鋒両刃造の打刀青月が感触を確かめた。敵味方の攻防を目の当たりにし、次に為すことは理解している。
「加勢します」
　転生した元影朧と言う身の上、藍も影朧には同情しがちであるが世界も違うただのオブリビオンが相手となれば慮るところは何もない。それどころか今同行して居る勇者リリリリがこのデビルキングワールドに居る理由は故郷であるサクラミラージュで起きた大きな戦い、帝都櫻大戰にある。デビルキングワールドに現れたエンシェント・レヰス『護国鉄神零號』と戦う助っ人としてキャンピー君に運ばれてきた勇者リリリリも出身世界の恩人の一人と言っても過言はないだろう。
「穿ち貫け！」
「新手か！　っ」
　だから、迷いなど欠片もない。星の力を纏った青月を振るい襲い来る藍へ咄嗟に伝説の勇者『ああああ』は白いマントを翻した。盾も武器も手放した状況で吹き飛ばされたああああは無手。青月の一撃を受け止める武器が手元になかったが故に青月を遮らせたマントは次の瞬間、破壊される。
「な、に？！」
　驚愕は一瞬。
「拙い」
「まだ――」
「うおおおっ」
　藍の武器による一撃それが一撃も受けてはならない攻撃だと理解したああああは次撃を大げさなぐらい大きく回避した。
「くそっ、このままでは」
　また、そうしての攻撃を警戒して避けることに意識の大部分を割けば、手放した剣と盾を疲労にも時間がかかり。
「あと少しだ、あと、っ」
「今です」
　物騒な追いかけっこの中、疲労か大量に飲み食いした後急に動いたからか躓き転びかけてああああが見せた隙を藍は見逃さない。
「ぐあっ……」
　避け切れずについに一撃を受けたああああはよろめき、剣と盾の前で床に膝をついた。

成功 🔵​🔵​🔴​

「楽しいお茶会でした、ぶんぶん」
　道中のことを思い出し、つい玄羽・レン（『元』対歯車のコッペリア・f44108）の口から独言は漏れた。
「……こほん、口調が伝染りかけてますね」
　取り繕うように咳払いは一つ、向ける視線は左右の一対。たどり着いた時点ではまだ何か食べていた伝説の勇者『ああああ』へ味方が仕掛け、攻防が始まって今に至る。
「やはり食事が強化トリガーとなっている都合上、胃袋への打撃は『死の永劫点』になっていますね。そして――」
　観察の末に得た答えをレンはただ自身だけのものとする気はなく。
（……これは全部同様に強化したりりりりさんの弱点でもあるのですが）
　それでいて、女子同士の情として伏せるべきところは伏せた上で味方へと伝える。
「それなら狙ってみるかも！」
　視界の中で勇者りりりりが動いた。
「やらせるか！」
　剣と盾を拾い上げたああああが迎撃せんと盾をわが身に引き寄せつつ剣を振りかぶり。
（さて）
　ああああが動き出すのを見届けて、レンも実弾狙撃銃に魔力機関銃を統合した、二連装ライフルSNDを片手に走り出す、その間もレンはああああを視界の中から外さないが。
「俺が、デビルパワーを大量に得たはずの俺が、押されている？！　っ、欠損部位の再生にデビルパワーを先過ぎたって言うのか？」
「デビルパワーを得てもこの程度だったんじゃないの～？　伝説の勇者を名乗ってるのにコレはがっかりしたかも！」
　今のああああは押されている理由がどうであれ、リリリリ一人に手いっぱいの様。
「伊達に、今まで生きて帰ってはいません……！　攻めるべき場所がわかっているなら」
「ごがっ？！」
　ちょうどリリリリの攻撃を防ごうと盾を上げああああの脇腹ががら空きになったタイミングでああああの横手から突撃したレンは後部グリップを握ってフルスイングしたSNDをああああの腹部にクリーンヒットさせたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「っと言うわけで、るこるさんに変身して進むのです！」
　そう戻ったらお腹いっぱいで動けなくなりそうという理由で稲荷・こん子（七変化妖狐・f06041）が化け術を行使したのは、ちょうど向かった先で伝説の勇者『ああああ』がお腹を押さえてのたうち回っているのよりもそれなりに前のこととなる。
「あ、るこるさんたちなのです！」
　迷宮を進んだこん子は無事先を進んでいた夢ヶ枝・るこる（豊饒の使徒・夢・f10980）らを発見し。
「稲荷さんと無事合流出来ましたが、私の姿がベースです？」
　オリジナルを知る人が見るたらすぐ解る位の変身ではあるものの、いろいろ似せていることからるこるオリジナルにもすぐ分かったらしい。
「稲荷さんが合流しまぁしたが、何かるこるさんっぽいでぇす。口調と雰囲気が違うので、知人ならわかり易いでぇすが」
　とはリュニエ・グラトネリーア（豊饒の使徒・饗・f36929）の弁だが、流石に【豊饒の使徒】の面々にるこるとこん子を間違える者は存在せず。
「お互い無事に辿り着けました様で」
「これで稲荷さんも無事合流ですわね」
　頷きあうのは豊雛院・叶葉（豊饒の使徒・叶・f05905）と艶守・娃羽（豊饒の使徒・娃・f22781）。こん子が加わって【豊饒狐】となった猟兵の集団は総勢十名、これがさらに迷宮を進めば既に戦闘が始まっていた場所へと行きつく。
「どうやら会敵ですの」
「ん、無事発見だねぇ。とっとと片付けて、お食事再開しようかぁ」
　絢潟・瑶暖（豊饒の使徒・瑶・f36018）の視線の先に居たのは、お腹を押さえて床を転がるああああの姿。甘露島・てこの（豊饒の使徒・甘・f24503）は若干アレな出会い方には動じた様子もなく、のんびりした調子でむしろ敵を倒した後のことに触れ。
「うぐっ、新手か……って、まだ食う気か？！　再開ってことはここまで何か食って来たんだろ？！　そこは食後の運動とかじゃないのかよ！」
　歪めながらもあげた顔で瑶暖らを発見し、思わずツッコミを入れたああああではあったが、指摘する相手が間違っていたと言うべきか。
「食後の運動、というより食中での運動の方が正確かな、だよ？」
「この後でまた食べに行く予定ですし、確かに『食休みの運動』みたいです」
　顔を見合わせ答える鞠丘・麻陽（豊饒の使徒・陽・f13598）と鞠丘・月麻（豊饒の使徒・月・f13599）にああああはうがーっと吠えて拳で床を叩いた。
「なんでだよ！　と言うか、よくよく見たらお前たち十人居るじゃねぇか！　なんでそんなに団体で迷宮に来てんだよ！」
「それはぁ、リストランテですし？」
「あー、食事処って言うんなら団体さんが来てもおかしくは、ってそう言う問題じゃねぇぇぇええっ！」
　首を傾げるるこるに納得しかけてから再び床をバンバン叩くああああ。
「稲荷さんも合流、リリリリさんも合わせて11人？　確かに、酷い袋叩きな気もするわね」
　この後の光景を察せてしまったのか、華表・愛彩（豊饒の使徒・華・f39249）はぽつりと零すも、もうどうにもならない気がする。
「大いなる豊饒の女神、祈りを捧げる者達に、その天祐をお与え下さい」
　喚くああああをしり目にるこるは祭器の数々を召喚してから祈りをささげ。
「皆さんこちらに集まってくださいねぇ。あ、リリリリさんも」
「はぁい」
「わかったのです！」
「良くわからないけどわかったかも！」
　るこるの呼びかけにぞろぞろと勇者リリリリを含む十一名が集まると、行われたのは作戦の伝達に複製した装備の配布交換。
「作戦了解よ。私は支援と補助攻撃に入るわね」
「ん、了解なんだよ。それじゃ、私と月麻ちゃんは攻め主体に回るんだよ」
「了解しました、私も麻陽ちゃんと一緒に攻め手に回りますね」
　愛彩が口を開いたのを皮切りに応え動き始める【豊饒狐】の面々。
「作戦了解ですの。私は攻め手に回りますの」
「それじゃぁ、攻撃に回りましょぉ」
「おっ、おま」
　瑶暖にリュニエと一人また一人と配置へ着いてゆき、へのへのもへじ顔の勇者ああああは理解した、これは本当に十一人がかりで来ると。
「始めましょうや。諸々の禍事・罪・穢　有らむをば　祓へ給ひ清め給へと　白すことを聞こし召せと　恐み恐みも白す」
　促す声に続いて叶葉は祈りを捧げ多数の『御幣』を召喚し。
「大いなる豊饒の女神様、貴女の使徒に神医の施薬をお授け下さい」
　愛彩の捧げた祈りが乳白色の霧を発生させて味方を強化すると。
「大いなる豊饒の女神様、貴女の使徒を神剣の薫陶へとお導き下さい」
　霊力を帯びた瞳でああああが此方の動きにどう対応するかを瑶暖は看破、浮遊する涙滴型の水晶FPSによって声には出さず仲間へ伝え。
「大いなる豊饒の女神の使徒の名の元に、護軍を授かりし聖殿の守護者達よ、その天兵を率いて此処に集いなさい」
　味方の攻撃までの時間を稼ぐべく娃羽がここで何やら薬を摂取し、巨大埴輪兵と、数十個師団の小型埴輪兵を召喚。
「と、流石に多すぎましたわね」
　地上100階地下100階にも及ぶという超巨大迷宮と言えど広さは有限。収まりきらない小型埴輪兵は外に溢れ出てゆくし、密度が高いと身動きすら取れず、多すぎる小型埴輪兵は16本の浮遊する水晶柱FISによって迷宮の外へと転移と言う形で間引かれて。
「いや、お前らどんだけ戦力増やすんだよ、いい加減にしろよ！」
　ああああがブチ切れながら押し寄せてきた小型埴輪兵へと剣を振るう。周囲を小型埴輪兵らにわちゃわちゃされたああああは大技を放つどころではないようだ。
「邪魔だ！　っ、ああもうっ！」
　デビルパワーで強化されているからか、数体纏めて小型埴輪兵らはあっさり薙ぎ払われるが、すぐに後続が押し寄せ。
「大いなる豊饒の女神様、貴女の僕に神域の壁をお与え下さい」
　祈りをささげたてこのは神気の壁を形成し守りを固めるが、ああああは小型埴輪兵らの相手で手いっぱいと言った状況だ。
「ん、どうしたものかねぇ」
　小型埴輪兵を庇うように割り込み、神気の壁をもってああああの攻撃を跳ね返し当人へダメージを与えることは可能だった。小型埴輪兵らの混雑の中に入ってゆくのが前提ではあるが。
「そろそろ良さそうですわね。では」
　そうこうして居る内に準備が整ったのであろう。娃羽が召喚を解除し。
「ん？　おお、ようやくまともに動け」
　ああああが喜んだのもつかの間。
「大いなる豊饒の女神、《楽園の地》より紅鏡へと、その提篭をお与え下さい」
「大いなる豊饒の女神、《楽園の地》より水鏡へと、その針をお与え下さい」
　麻陽と月麻は複製された３対のオーラの翼FASで天井近くまで浮かび上がるとラスボスも通れるよう高く作られた天井付近から陽炎弾と670を数える理力の槍をそれぞれ放つ。
「うおおおおおっ？！」
　もうこの時点で幾度かの手傷を負っているああああからすればたまったものではない。まだまだ【豊饒狐】の面々の攻撃はまだ終わりではないというのに。
「ぎゃあああっ」
　一言で言うなら、逃げ場はなかった。理力の槍は誘導性を有す上に数で逃げ場を塞いでいたし、陽炎弾は着弾と同時にその周囲を爆破する。ああああの悲鳴は爆発の中に消え。
「大いなる豊饒の女神様、貴女の使徒を岩舞の奏者へとお迎え下さい」
　更にリュニエが広範囲に及ぶ岩石嵐を発生させると、岩石は爆炎の中に次々飛び込んで猛威を振るう。
「これもおまけでぇす」
　加えて重機関銃にした『アサルトオーブ』で射撃も行えば。
「私も合わせて攻撃と行きましょうかぁ」
　ここぞとばかりにるこるも砲台に変えた浮遊する20台の球体と対になる一対の腕輪FRSと12枚の小型ビームシールドFSS中央の砲門をああああの居たあたりへ向け砲撃を開始。
「承知いたしました。皆様と時機を合わせ叩きましょう」
　叶葉も御幣から光線を発射。
「このまま一気に行こうねぇ、えい」
「さ、行きなさい。一斉攻撃ですわ」
　てこのもグレネードエッグを投擲し。娃羽は小型埴輪兵らとは違い残していた巨大埴輪兵へ攻撃を命じる。ここまでほぼ一斉攻撃といって良かった。
「ちょっとオーバーキルんじゃないの～？　いたそうだからあそこには突っこみたくないかも」
　とはいうものの完全な一斉攻撃とならなかったのは、近接攻撃組が余波に巻き込まれるのを避けたり、攻撃に移るべく前準備をしていたからに他ならない。
「同感ですわ。ですからああしましたけれど」
　例外的に瑶暖は斬撃波で遠距離から一斉攻撃に参加してはいたが、それぐらいであろうか。そうして降り注ぐ攻撃が止んだかと思われたところで動き出すのは二名。
「こん子の本気、少しだけ見せるのです！」
　狐火で出来た狐型の式神狐の炎偶に飛び乗ったこん子は刀と盾で武装するとるこるに似せた姿のままで駆け出した。
「皆さんとの打ち上げ食事会楽しみなので、頑張って運動するのです！」
「私のやることもう残ってないかも！　でも勇者なのでほれこのように一緒に行きます」
　戦意は旺盛、晴れ切らぬ爆発の中に突っ込むように進んで行けば、ぶんぶん剣を振ってリリリリがこれに続いて。
「あ」
　進んだ先では爆発の中心にぶっ倒れたへのへのもへじ顔の勇者の姿が。流石にこの人数での集中攻撃はキツかったのか、と思いきや。
「ぐ、うおおおおっ！　俺は伝説の勇者っ！　これぐらいで」
「えい、なのです！」
「ぐああああっ！」
　がばっと起き上がったところをこん子に斬られ。
「隙だらけかも！」
「おぐあああっ！　がっ！」
　よろめくああああの腹部にリリリリの一撃が叩きこまれ、吹っ飛んだああああは壁に激突してずり落ちた。
「勝利なのです！」
　こう、こん子が斬った時点で気力だけで立ち上がって来た感があったのだ。はしゃぐ今こん子は狐の炎偶からそろり降りると仲間の方を振り返り。
「しかし、何故私が変身してるの皆にバレていたのか不思議なのです……」
　一人首を傾げ。l
「打ち上げの御飯、楽しみなんだよ」
　麻陽の意識はもう戦闘には向いていないらしい。
「美味しいお店でぇすし、次は洋食やBBQが食べたいでぇす」
　いや、それはリュニエも同様か。
「思ったのだけど」
　そう前置きした愛彩はまだ倒れたままのああああへと恐る恐る視線を向けた。
「『レストランの料金』って『倒されたああああさんから徴収予定』とかないわよね？」
　こう、デビルキングワールドらしいよろしくないああああの末路でも想像してしまったのか。
「では参りましょうかぁ」
「はぁい」
　だが、何かが起きるということは一切なく、一同は打ち上げの為移動を開始する。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「行ったか……」
　倒れていた伝説の勇者『ああああ』が声を漏らした。緩慢に指が動く。
「そうとは限らないかも」
「なっ」
　ただ、気を抜くのはまだ早かったらしい。降って来た勇者リリリリの声にああああは身を起こした。機敏な動きではなかった。倒れていた床は血に汚れ、満身創痍なのは明らかだ。
「間に合ったようですね」
　ポツリ呟いて、一連の流れを見ていた火土金水・明（夜闇のウィザード・f01561）は銀の剣を構える。その肩に黒猫の使い魔、クロの姿はない。
「ただ料理を食べるだけなら連れてきても良かったのですが」
　湧き出てくる料理を食べつつ迷宮を進むだけの時間は終わってしまっていた。
「そして、楽しいハロウィンの為にもここで閉幕とさせてもらいます」
「出来る……とでも？」
　よろけつつもああああは剣を杖代わりに立ち上がろうとする。緩慢すぎる動きは隙だらけではあったが、明は宣言のあと、無言でああああが立ち上がるのを待っていた。ぽたり、滴り落ちるああああの血がリストランテ・ハロウィーンの床を打つ音、ああああの靴底が床をこすれる音、杖代わりにした剣の切っ先が床を削る音。無言故に物音だけがそこにはあって。
「俺はただでは死なん！」
　盾まで保持する余力もないのか空の手だった左手をああああが右手に持つ剣の柄に沿える。大技を繰り出そうというのであろう。
「これは私の出番かも」
「いえ」
　すすっと勇者リリリリが進み出ようとするが、明はこれを手で制した。
「あれは私が何とかしますから、リリリリさんはその後を――」
「面白い」
　立っているのもやっとの態に見えるのにああああは笑う。笑い、剣を振りかぶる。
「これが最後の一撃になるだろう」
　そう、もつ力をすべて注いでああああが床を蹴る。ああああの剣は悪しき者を滅ぼす光と雷を纏い。
「究極魔ほ」
「我、求めるは、冷たき力」
　斬りかかるああああを空いた手に七色へ輝く杖を握った明が魔法の矢を放って迎え撃つ。
「え゛、ちょ、おま！　今のはどう考えても斬り合う流」
「あれはフェイントです」
「……ちくしょぉぉおおっ！　ああブレイク」
　殺到する795本もの魔法の矢を討ち払うべくああああは最後の一撃を放ち、生じた爆発がああああの姿を覆い隠し。
「はぁ、はぁ、はぁ……ぐっ、う……どうだ、相殺して」
「確かに相殺はしたけどそれで終わりと思わない方が良かったかも！」
「な、あっ」
　のの字の目をああああは見開く。そこには明に言われた通りああブレイクが防がれた後に備えていたリリリリが立っていて。
「終わりにしましょう」
　銀の剣も持ったままだった明もああああの元へと距離を詰める。
「「はぁっ」」
「ぐ、ふ」
　剣閃が二筋走り、どうと倒れたああああが起き上がってくることは今度こそなく。
「では帰りましょうか。長居するとクロにつまみ食いを疑われるかもしれませんし」
　剣を振って血を払った明はリリリリへ向き直ったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2024年10月31日