帝都櫻大戰⑩~シバチュウげんきでちゅう
●封神武侠界、人界
封神武侠界に季節外れの桜の花びらが舞う。
幻朧桜が咲き乱れる中、オブリビオン化によって邪悪に歪められしエンシェント・レヰス『護国鉄神零號』は、その意志とは裏腹に世界を滅ぼそうとしていた。
操られる身に歯がみしつつも、破壊の限りを尽くす身体は止まることが無い。
その巨体が人々の住む街を踏み潰さんとした時――。
突如吹き上がった炎の嵐に、舞い散る桜の花びらが一瞬で燃え上がる。
『消えざる炎……これならば!』
『護国鉄神零號』のセンサーの先にいるのは、皇帝『司馬炎』。彼が手にする屠龍刀から放たれた『シバの炎』が、護国鉄神零號の排熱を阻害し、押しとどめているのだ。
「汝は膨大な武力をお持ちだが、どうやら全ての動作に莫大な排熱を必要とする様子。我が『シバの炎』に包まれた状態では十全に動けまい。この状態でも余は勝機を見い出せないが……猟兵達ならば、活路を拓いてくれる筈だ!」
「シバチュウ!」
「シーバー!」
「シバシバー!」
不敵に笑む司馬炎の足元で、鼠に似た小さくて可愛い生き物達がちょろちょろしていた。
封神武侠界に存在する霊獣。その名も『シバチュウ』だ。
●グリモアベース
「ええと、そういうわけで封神武侠界が大変なんだよ」
エンシェント・レヰス『護国鉄神零號』の襲撃を受ける封神武侠界の様子を説明しつつ、遠藤・修司(ヒヤデスの窓・f42930)は、なんとも言えない顔をした。
「いや、うん、結構強いらしいよ。あの鼠……みたいな霊獣」
司馬一族が代々使役する霊獣『シバチュウ』。
体長2尺弱(40センチメートル)位の鼠に似た生き物で、赤い毛皮に包まれたとても可愛らしい霊獣だ。
小さいながらもシバの炎を操り、電光石火の速さで敵陣を駆け抜けるという。
全部で八匹いるこの霊獣を使役し、絆を深めた者は『八達』もしくは『八王』と呼ばれ、シバチュウバトルを勝ち抜いた者は一族を率いる者となるとかならないとか……?
「今、『護国鉄神零號』は皇帝『司馬炎』とシバチュウが抑えてるみたいなんだけど、このまま放置しているわけにもいかないだろうね」
というわけでここは猟兵の出番だと修司は告げる。
シバの炎に包まれた『護国鉄神零號』は排熱ができず、その動きは鈍い。
熱暴走を起こしたパソコンのように、大幅にその能力を落としていると思われる。
これなら猟兵達が全力で叩けば、あるいは破壊することもできるかもしれない。
「ただ、それでも恐ろしい力を持つ強敵だ。くれぐれも無理はしないように頼むよ」
修司の声と共にグリモアが光り、猟兵達は封神武侠界へと送られるのだった。
本緒登里
●MSより
シバチュウさん。
司馬炎とシバチュウと協力し、『護国鉄神零號』を倒します。
●シナリオについて
こちらは1章構成の戦争シナリオになります。
OP公開直後よりプレイングを募集いたします。
プレイングをいただければ、順次リプレイをお返しする予定です。
完結優先のため、プレイングに問題がなくてもお返しする可能性があります。
●プレイングボーナス
このシナリオフレームにはプレイングボーナスがあります。
プレイングボーナス……戦場に燃え盛る「シバの炎」を利用する/司馬炎や英傑軍団と協力して戦う。
●シバチュウ
燃える炎のようなふわふわの毛皮を持つ鼠に似た霊獣。
とても可愛く、シバの炎を放って勇敢に敵に立ち向かいます。
全部で八匹おり、猟兵の指示を理解して動いてくれます。
好物はトウバンジャンが入った麻婆豆腐。
第1章 ボス戦
『護国鉄神零號』
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POW : 零式噴進飛翔拳
かつて喰らった「【鋼鉄共栄圏の人々】」の魂を纏い、2倍ダメージ・2回攻撃・自動反撃を有した【ロケットパンチ】を装備する。
SPD : 八岐大蛇機関砲
【自在に射角調整が可能な蛇型四連機関砲】を最大レベル秒間連射し続け、攻撃範囲にダメージと制圧効果(脱出・侵入を困難にする)を与える。
WIZ : 護国熱血破壊砲
装備武器から【護国英霊波導砲】を発射する。自身の【放熱装置】削減量に応じ、威力・速度・発射数が増加する。
👑11
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朱鷺透・小枝子
司馬炎殿!ご助力感謝いたします!
そしてシバチュウ殿らも、蛇と鼠なれど、今は世界の危機!!
共に戦い、かのモノを討ち壊しましょう!!!
いいな夜剣!!炎を扇ぎ、敵を壊すぞ!!!
夜剣大蛇【操縦】『夜天叢雲剣』発動!悪天候暴風を召喚
戦場に燃え盛る炎、そしてシバチュウ殿の放つ炎を
【呪詛】神殺の霊威たる暴風で扇ぎ『護国鉄神零號』へ集中!!
『護国鉄神零號』を更に昇温させ、神殺の劫火で以て【継続ダメージ】
いくぞ夜剣大蛇!
あの鉄の器から、オブリビオンの楔から、全て開放させろ!!
動きの鈍る鉄神へメガスラスター【推力移動】迫り【空中機動】
躯体をしならせ、尾剣・夜天叢雲剣を振るい【重量攻撃】
神殺の霊威を直接叩き込む!!
晋の都、洛陽より十数里ほど離れた草原は燃えさかる火炎に包まれ、まるで太陽が地に降りてきたかのようだった。
世界を破壊せんと進軍するエンシェント・レヰス『護国鉄神零號』を取り巻く炎が、その動きを鈍らせる。
『消えざる炎……されど我が動きを留めるに能わず。この世界の皇帝よ、如何にする?』
「分かっておる。余の役割は汝の足止めよ」
業火に巻かれつつも歩みを止めぬ『護国鉄神零號』を前に、皇帝『司馬炎』は笑む。
「……来たか、猟兵」
ちらと視線を彼方へ向ければ、炎を貫く風一陣。
まつろわぬ大魔『
夜剣大蛇』を駆り、業火の炎より熱く猛る熱を帯びた朱鷺透・小枝子(
亡国の戦塵・f29924)の姿がそこにあった。
小枝子の駆る夜剣大蛇が『護国鉄神零號』と司馬炎の間に割って入る。
「司馬炎殿! ご助力感謝いたします!」
コックピットより大地を見下ろし、小枝子の声が届く。
頼もしき援軍の到着に、司馬炎の足元に控えていた赤き霊獣『シバチュウ』達が「「シバーッ!」」と喜び跳ねる。
「そしてシバチュウ殿らも、蛇と鼠なれど、今は世界の危機!! 共に戦い、かのモノを討ち壊しましょう!!!」
「「シッ! シバチュウ!」」
異世界より来た勇士に声をかけられ、シバチュウ達はキヌゲネズミに似たずんぐりした身体を震わせ、共に戦わんと雄叫びを上げる。
「いいな夜剣!! 炎を扇ぎ、敵を壊すぞ!!!」
相手は護国の鉄神。憎悪を向けるに相応しい相手。
神殺しの存在意義を奮わす小枝子の言葉に、夜剣大蛇は鎌首をもたげ、頭部の回転刃を天をも貫かんと伸ばした。
荒れ狂う業火の渦の中。小枝子を始め、誰しもが闘志を燃やし尽くして臨む。
「『夜天叢雲剣』発動! 来い!」
小枝子の意志に応え、夜剣大蛇がその尾を震う。
召喚された退魔神器『夜天叢雲剣』が炎に包まれた草原を薙ぐ。
切り払われ薙がれた草木が勢いよく舞い上がり、戦場に無差別に燃え盛っていた炎の波が意思持つ者のようにうねる。
叢雲剣――またの名を草薙の剣。
奇しくもその名を同じくする異世界の剣の逸話の如く、『夜天叢雲剣』より巻き起こった暴風が、炎の流れを変えたのだ。
「シバチュウ殿、炎を!!」
「シィィィバ、チュウウウゥッ!!」
小枝子の声に、その意を汲み、八匹のシバチュウが嵐をものともせず走る。
頬袋に貯め込んだ『シバの炎』を一斉に吐き出し、『夜天叢雲剣』の生み出した炎の波に重ねれば、波が重なり遙か天へ届かんばかりの津波となる。
小枝子が炎の津波へ『夜天叢雲剣』を打ち下ろせば、神殺の呪詛を込めた一撃が起こす烈風が一直線へ『護国鉄神零號』へ襲いかかる。
神殺の劫火に巻かれ、年旧りた『護国鉄神零號』の黒鉄が熱せられ、溶鉱炉のように赤々とした光と熱を放つ。
排熱どころか、自身の身体からの熱で内部を灼かれ、ギ、ガ、と音を立てて『護国鉄神零號』の身体が軋む。
「いくぞ夜剣大蛇! あの鉄の器から、オブリビオンの楔から、全て開放させろ!!」
今が好機と、小枝子は夜剣大蛇のメガスラスターを全開にする。
動けぬ『護国鉄神零號』へと飛びかかれば、躯体をしならせ、その全身の質量を込めて尾剣・夜天叢雲剣を振るう!
赤熱した『護国鉄神零號』の装甲に神殺の霊威を直に叩き込めば、ピシリとその部分がひび割れる音が走る。
――神殺しの蛇の一撃が、無敵と思われた鉄神の身体を貫いた瞬間だった。
大成功
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荒珠・檬果
推してる世界の危機ならば、私はいかねばならぬのです!!
零號さん自身も、止めてくれって願ってるんですしね。なおさらですよ。
しかし霊獣…よりによってその名前とは…。いえ、こちらの話です。
ふむ…では…霊獣にも合わせてのUC。
病。あらゆる病のうちの一つには、熱病もありまして。さて、さらに加熱することになるんですけど、動けます?
シバチュウさんたちには、さらにシバの炎をお願いしますね!
あ、私ですか?七色竜珠からのビームでの攻撃も行ってますよ!
何せこのUC、武器がフリーなので!
そして、零號さんは…放熱装置を削減なんてできませんよね。
なら、その砲は…EP硝子の盾にて、空へ受け流します!
「推してる世界の危機ならば、私はいかねばならぬのです!!」
消えぬシバの炎に包まれ、動きを鈍らせているとはいえ、エンシェント・レヰス『護国鉄神零號』は幾つもの世界を渡り破壊できる強大な相手。
黒々とした鉄の巨体を前に、荒珠・檬果(アーケードに突っ伏す鳥・f02802)は一歩も怯むことはない。
三国志はゲーマーたる檬果にとって親しみある題材。
全く同じものではないとはいえ、それと似たこの世界を護ることに何の迷いもない。
更に、零號自身が意に沿わぬ破壊を止めてくれと欲するなら、尚更のこと。
赤く燃え上がる炎の中でも際立つ橙の身体で仁王立ちする檬果。熱風に緑のたてがみが軽やかになびく。
「しかし霊獣……よりによってその名前とは……」
檬果がちらと傍らの赤に目をやれば、そこにはシバの炎を頬袋に蓄えた霊獣『シバチュウ』が控えていた。
他世界のゲーマーである檬果は、この響きに別の何かを連想してしまう。
だが、彼らは代々の司馬一族に仕え、忠を尽くす霊獣である。
シバチュウという名も、この世界の者から見ればおそらく違和感のないものなのだろう。
「シーバー?」
「いえ、こちらの話です」
後ろ足で立ち上がり、つぶらな黒い瞳で見上げてくるシバチュウに、檬果は気にするなと呼びかける。
今はこの危機を乗り越える方が先と、檬果は眼前の巨大な鉄神を見据える。
炎の渦の中、檬果の姿を捉えた『護国鉄神零號』が、胸部の巨大砲身を青白く光らせる。
機敏に動けぬなら巨大なエネルギーの塊でなぎ払うのみ。
装甲の隙間から排出される熱が辺りの空気を揺らがせる。
「ふむ……では、霊獣にも合わせてのユーベルコードを」
檬果が懐から携帯ゲーム機型デバイスを取り出し、操作すれば画面に映し出されるのはデフォルメされた三国時代の知将の姿。
『禍は大気に満ちれども、恵雨あり』
檬果の嘴より、厳かな音が発せられる。
すると、黒々とした霧が戦場の赤を覆い隠し、瘴気が『護国鉄神零號』を包み込む。
「「「シッバァ!」」」
この業には覚えがあると、シバチュウ達が高らかに炎の尾を振る。
「これは……もしや大伯父『司馬朗』の!」
司馬炎の祖父、司馬懿の兄。司馬八達と称された兄弟の長兄たる司馬朗。
若くして才を示し、しかし奢らず、能く領地を治めたという。その業の再来を目の当たりにし、司馬炎も驚愕の声を上げた。
『これは、熱病か……我が体内に搭載された八億の魂すら蝕む病。これでは……』
外部からのもの加え、体内からも尚発せられる熱に、排熱が追いつかず、『護国鉄神零號』が呻く。
「さて、さらに加熱することになるんですけど、動けます?」
「シィバッ! チュウウゥゥゥッ!!」
檬果の言葉を合図に、一番大きいシバチュウが鉄神へと駆けていく。
それに続き、残り七匹も駆ける。
鉄神の装甲の隙間、排熱を行っているだろう箇所にシバの炎を浴びせかけ、灼熱の業火で動きを阻害していく。
そこに檬果も七色竜珠から放つビームを重ねる。
空気すら灼く猛煙が『護国鉄神零號』を包み込んだ!
燃え上がる赤炎の柱と化した鉄神だが、その中心に青が灯る。
本来なら炎の嵐ごと敵を貫き世界を削り取るはずの波動砲の一撃。
だが、オーバーヒートを起こしながら放たれた不完全なものは、あまりにも弱々しい。
「その砲は……盾にて、空へ受け流します!」
前に進み出た檬果が構える透明度の高い硝子の盾が、光を逸らし軌道を変える。
――燃える火柱を背景に、一条の青い光が空へと昇っていった。
大成功
🔵🔵🔵
初雪崎・識
シバ、チュウ……? かわいい……。
ここに来る前にお店で買ってきたよ、激辛麻婆豆腐。食べる……?
かわいい……はっ、司馬炎さんに見られた……。
仕事しよう。
炎なら僕の得意分野。
シバの炎を『焔式・黒刀』にちょっぴり拝借して、ロケットパンチ封じにチャレンジしてみる。
司馬炎さんにシバの炎の使い方の助言を受けつつ、シバチュウにも10万ボ……じゃなく電光石火でパンチの周りを走ってもらって、パンチの威力を減衰してもらうよ。
鉄神さんに接近出来たら、黒刀と、【レーヴァテイン】で生み出した炎の剣の二刀流で、一気に斬りかかる。
『武器巨大化』の技能で少しでもサイズ差を補って……鉄神さん、少し痛いかもだけど我慢してほしい。
あちこちに消えぬ炎が渦巻く草原。
その中をキヌゲネズミのような丸い体格をした霊獣がちょろちょろと駆け回っていた。
「シバ、チュウ……?」
初雪崎・識(翠炎の探求者・f44092)が霊獣の名を口にすれば、呼び止められたのだと思った数匹が、駆けるのを止めて「シバァ?」と小首を傾げて寄ってくる。
上質な石炭のように黒いまん丸の瞳を瞬かせれば、艶やかな長い尾が炎の線を描いて揺れる。
「シバー! シッシバチュウ!」
「かわいい……」
炎を思わせる真っ赤な毛皮に手を差し伸べれば、ふわふわの手触りと炎の霊獣らしい温もりが伝わる。
その頬から顎にかけて、識がくすぐるように優しく撫でてやれば、シバチュウは気持ちよさそうに目を細めた。それを見た他のシバチュウ達が、撫でて撫でてと識の周りに集まってきて「シバシバ!」「シバー!」と大合唱。
しばし、シバチュウをなでなでしていると、一匹のシバチュウのお腹がぐぅと鳴った。
「ここに来る前にお店で買ってきたよ、激辛麻婆豆腐。食べる……?」
「「「シッバー
!!」」」
テイクアウトの包みを開き、識は豆板醤をたっぷり使った真っ赤な麻婆豆腐を差し出す。
スパイシーな香りに、シバチュウ達は揃って鼻をヒクヒクさせて喜びの声を上げる。
一口含むだけで口の中が火の海になる鋭い辛みに、ちんまりしたおててをほっぺに当てて喜び跳ねるシバチュウ達。
「かわいい……」
口の周りに付いた豆腐の欠片をぺろりと舐め、おいしさに「シバ~!」とうっとり目を細めたり、もっとちょうだいと識の服の裾を引っ張ったりするシバチュウの姿は、可愛いの一言。
思わず夢中になってシバチュウ達を愛でていた識だが……。
「はっ、司馬炎さんに見られた……」
皇帝の証たる冠、その旒を透かして司馬炎がこちらに視線を送っていることに気付く
「司馬家は厳を旨とするが、たまには良かろう」
識もシバチュウもこれから一働きするのだからと、司馬炎が鷹揚に頷いていた。
さあ、腹ごしらえを済ませたら、お仕事だ!
識が「仕事しよう」と呼びかければ、シバチュウ達もそれに習う。
炎なら僕の得意分野と、漆黒の刀身を持つ日本刀『焔式・黒刀』を構えて『護国鉄神零號』を見据える識。
燃え盛るシバの炎にその刀身を近づければ、消えぬ炎がその刀身に絡みつき赤熱する。
通常のキャバリアを遙かに超える巨大な鉄神を前に、司馬炎の助言も受けつつ、識はシバチュウを繰り出す。
「行け、シバチュウ。じゅ……電光石火」
何か別のものと間違えて指示を出しそうになり、識は慌てて言い換えながらシバチュウ達に指示を出す。
「シッバー!!」
シバチュウ達が一斉に走り出し、『護国鉄神零號』が射出したロケットパンチに真っ向から向かっていく。
ぴょんと跳ねて鉄神の腕に飛び乗ったかと思うと、八匹のシバチュウ達は炎袋に貯め込んだシバの炎を纏い、腕の周りをグルグル回りだす。
渦巻く業炎が生んだ気流がロケットパンチの推進力を減衰させ、その軌道を逸らす。
腕を鉄神が引き戻す時間、その隙を見逃す識ではない。
識は地面に斜めに突き刺さった腕の上を駆け、それを踏み台に鉄神へと飛びかかる。
識が飛ぶ瞬間、シバチュウ達が渾身の力で腕の断面を灼いた!
赤熱する鉄神の傷痕から炎が吹き上がり、識の腕に集まり神をも灼き尽くす剣となる。
右手に『焔式・黒刀』、左手に『レーヴァテイン』を構え、識は鉄神へと肉薄!
「鉄神さん、少し痛いかもだけど我慢してほしい」
刀身よりシバの炎を吹き上がらせる二振りの剣が、その大きさを増していく!
剣を振りかざし、一閃――!
識の繰り出す一撃が、鉄神の装甲を灼き切り、貫いたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
黒木・摩那
シバチュウ!
辛いものがお得意のようですね。
ならば、ここに激辛唐辛子ありますよ。
これで作ると特にパンチがあるんです。麻婆豆腐、あとで食べましょう。
まずは眼前の敵を倒さないとですね。
ボード『アキレウス』で熱対策。これがないと熱くて進めません。
そこから『護国鉄神零號』と対決します。
ヨーヨー『エクリプス』で戦います。
UC【蒼鷹烈風】を発動して強化したヨーヨーで超【重量攻撃】。
排熱のフィンを叩いて、性能悪化を加速させます。
もちろんシバチュウにも燃えてもらって、敵のオーバーヒートを誘ってもらいます。
「シバチュウ!」
尽きぬ炎の草原に響いたこの声は、霊獣『シバチュウ』の鳴き声ではない。
目の前でちょろちょろするシバチュウの愛らしさ。それに目をキラキラ輝かせた黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)の口からまろびでた渾身の叫びだった。
「シッバ!」
鼠にしては大きめの耳をぴこんと動かして、シバチュウ達が一斉に摩那を見上げる。
黒鉛のような真っ黒なお目々をパチパチさせて、「なんだろう?」と首を傾げるシバチュウ。
「辛いものがお得意のようですね。ならば、ここに激辛唐辛子ありますよ」
マイ唐辛子を持ち歩くほどの超絶辛党の摩那が、調味料ポーチから干した唐辛子を取り出す。日本や中国で一般的なものよりやや小ぶりで丸い、ハバネロという激辛品種だ。
「シィバ……シッバー!!」
見慣れぬ形の唐辛子に、興味を惹かれた数匹が集まってきた。
鼻先でスンスン臭いを嗅いで、ややフルーティーな香りの中でも確実に分かる強烈な辛みを感じ、目を丸くして跳ねるシバチュウ達。
「これで作ると特にパンチがあるんです。麻婆豆腐、あとで食べましょう」
口から炎が出そうになるほどの辛み! そしてそれを使った麻婆豆腐!!
摩那の提案がシバチュウ達の心にも火を付ける!!
嬉しさのあまり、「シバシバシッバ♪」と手を振って、尻尾も振って踊り出す。
「――ッ!!」
キヌゲネズミに似た丸っこい小動物の無邪気なダンスに、摩那もしばし時を忘れそうになって……。
「……まずは眼前の敵を倒さないとですね」
お楽しみはそれからと、摩那は眼前の敵へと向き直る。
この世界を破壊せんとする『護国鉄神零號』は、今は司馬炎やシバチュウ達の業炎に巻かれて動きを止めているが、摩那が近付けば無理矢理にでも動き出して襲いかかってくるだろう。
しかし、鉄神の周りは特に炎の勢いが強く、通常なら近寄ることすら叶わない。
「では、これで一気に近付きましょうか」
摩那が取り出したのはマジカルボード『アキレウス』。耐火に優れ、空中も滑空可能なサーフボードで近付こうという狙いだ。
「さあ、行きますよ!」
「シバチュウ!」
摩那が声をかければ、シバチュウ達が炎袋からシバの炎を放ち、幾重にも草原に連ねて炎の波を作りだす。
摩那はアキレウスに飛び乗り、炎の大波の上を滑走する!
シバチュウ達も摩那の後ろにタンデムし、麻那の指示に従って炎の向きや大きさをコントロールしながら波乗りを楽しむ。
鉄神の蛇型四連機関砲から撃ち出される砲弾を、摩那は波をカットしながら加速し、右左に姿勢を制御しながら避けていく。
砲弾を避けながら近付けば、摩那は波の頂上から大きく空中に飛び出す!
波の勢いも利用して空中を滑空し、鋭いターンで鉄神へと迫る。
「励起。昇圧、目標を確認……加速開始」
摩那の手から放たれたヨーヨーが高速回転によって射線上の空気分子を吹き飛ばし、真空を作り出す!
ヨーヨーは空気との摩擦で減衰することなく飛び出し、稲妻のように鉄神へと迫る!
摩那のヨーヨーが鉄神の放熱フィンを叩き折り、表面積を削って排熱性能を落としていく。
「シィバチュウウウッ!!」
排熱性能を落としたところで、シバチュウ達がアキレウスから次々にジャンプ!
鉄神へと飛び移り、摩那が削った放熱フィンに向けてシバの炎を浴びせかけた!
排熱を行うはずの部品を直接熱せられたことで、鉄神の内部の部品が完全にオーバーヒートを起こす。
炎の波と排熱阻害。それを繰り返し、摩那は鉄神の力を大きく削っていくのだった。
大成功
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夜刀神・鏡介
シバチュウ……この世界にはそんな霊獣が存在するのか。なんというか、世界は広いな
などと感心している場合じゃない。さあ、護国鉄神零號を止めに行くとしよう
神刀の封印を解除。神気を纏う事で身体能力を強化
シバチュウは散開して、複数方向から敵へ攻撃を仕掛けてもらう
俺は敵の機関砲をひたすら回避と防御で凌ぎ。時折、地面に燃え広がるシバの炎を掠めるように斬撃波を放って一緒に炎を飛ばしてやる
本来の連射力は相当なものだったのだろうが。排熱の都合で動きが鈍くなっている分、どうにか凌げる
連射が止まったタイミングで勢いよく踏み込む。高速ステップで近付いて、伍の秘剣【灰桜閃】
四回連続攻撃で一気に決めにいこう
「シバチュウ……この世界にはそんな霊獣が存在するのか」
火の海となった草原で、炎袋に炎を蓄えて飛び跳ねる霊獣『シバチュウ』を眺め、夜刀神・鏡介(道を貫く一刀・f28122)は、世界は広いものだと驚嘆する。
皇帝『司馬炎』が使いこなす『シバの炎』は、辿れば創造と破壊をもたらすシヴァ神に由来するのだろうか。そうなればシバチュウとはその眷属なのかもしれない。
或いは、中国に伝わる
火鼠の伝説――鏡介のいるサクラミラージュ世界では火鼠の皮衣という言葉がよく知られているが、ここには火鼠が実際におり、それを司馬家が手なずけ使役しているのだろうか。
「……感心している場合じゃない」
これらは全て推測に過ぎないと、鏡介はとりとめなく浮かぶ思考を振り払う。
目を凝らさずとも、猛る火の粉から垣間見える巨大な鉄の神、『護国鉄神零號』の姿。
今はこの世界の危機を救うため、戦いに集中しなくては。
「さあ、護国鉄神零號を止めに行くとしよう」
鏡介が呼びかけると、足元のシバチュウ達がその後に付き従う。
「神刀解放――」
神刀の力を封じる白鞘より、鏡介はすらりと『無仭』を抜き放つ。
白銀の刃が戦場の業火を受けて赤く色付き、灰色の桜が、鉄神の出現と共に現れた幻朧桜の花弁に紛れて流れていく。
神刀より溢れる神気をその身に宿らせ、鏡介が奔る!
少し遅れてシバチュウ達も駆け、八方へ散開し鉄神へと向かっていく。
京介の姿を見咎め、鉄神が蛇型四連機関砲の砲身を鏡介へと向ける。
通常であれば、自在に射角を変えて全方位より連射される砲弾を避けるのは難しい。
だが、戦場に広がるシバの炎によって鉄神の排熱は阻害され、機関砲の動きは鈍い。
ゆっくりと持ち上げられる砲身の角度より弾の着弾点を予測し、鏡介は大地を蹴って飛び退くと、それら全てを躱していく。
巨大な鉄神より放たれる砲弾は、一発一発が大砲の弾にも匹敵する威力。その余波だけでも、喰らってしまえば相当な傷を負うことになるだろう。
鏡介は神気を集中させた刀身で砲弾の衝撃を切り払い、返す刀で斬撃波を放つ。
斬撃が戦場を埋め尽くして燃える炎を煽り、燃え上がらせ、鉄神を熱と斬撃で弱らせていく。
鏡介が鉄神の攻撃を引き受けている隙に、シバチュウ達は小さい身体で機敏に駆け回っては鉄神に八方より炎を浴びせかけていく。
シバチュウ達が動きやすいように鉄神の攻撃を引きつけてやりながら、鏡介は勝機が来るのを待つ。
シュウウゥ……と空気を灼く音と共に、不意に鉄神の動きが止まる。
排熱ができないまま機関砲を撃ち、戦場を覆う業火を浴びせかけられ続けた鉄神の身体が、ついにオーバーヒートを起こしたのだ。
鉄神の巨体がぐらりと揺れ、地面に膝を突く。
鏡介が待っていたのはこの瞬間だった。
炎の上昇気流で巻き起こる風のように駆け、鉄神の膝を踏み台にして大きく跳躍する。
膝から腰に飛び乗ったと思えば腕へ、そして続けざまに肩へ!
高速で跳躍を繰り返し、敵の間合い――鉄神の顔面の前へと踏み込んでいく。
「舞い散るは徒桜――伍の秘剣【灰桜閃】」
瞬く間に四度、神気を滾らせた神刀の剣閃と共に、灰色の桜が舞う。
滅びし世界『鋼鉄共栄圏』、その象徴なのだろうか。
鉄神の額に据え付けられた金属の桜がピシリと音を立てて砕けた。
それと同時に、鉄神の双眸に宿っていた灯が色を失う。
『我を倒し、八億の魂に平穏を与えてくれたのか……命ある者達よ、感謝……する……』
猟兵への感謝の言葉を残し、『護国鉄神零號』はその動きを完全に止めたのだった。
大成功
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