●落下
「空からサクラミラージュを大地ごと破壊しようって奴がいてさ、止めてくんねえか?」
幕を開けた『帝都櫻大戰』。それと同時に動いたカルロス・グリードが、サクラミラージュの各地に潜ませていた海賊船型秘密基地『カルロスの錨』を一斉に出港させたのだと、エスパルダ・メア(零氷・f16282)は手短に告げる。
「カルロスの狙いは幻朧帝の復活らしい。それがあちらさんにどういう利があるんだか知らねえが。ま、目論見ごと倒しちまえばいいだろ」
とはいえ、とエスパルダは眉を顰めた。
「海賊船のくせに空飛んでんだよ。しかも影朧兵器が満載だ。影朧兵器で近代化改修した空飛ぶ戦艦軍団の砲塔からは、影朧の群れが射出されてる」
撃ち出されるのは狂える影朧――ヒヨリミは、赤いてるてる坊主を思わせる一見可愛らしい影朧だ。しかし見た目とは裏腹に、ヒヨリミの裾から覗く二本の刀は触れるものを容赦なく切り刻み、そして吐く炎で燃やし尽くす。
「こいつらが落ちれば街が壊されるのは勿論、街で戦ってる学徒たちもただじゃ済まねえだろうし、帝都は一瞬で火の海だろうな」
つまり、このヒヨリミたちを帝都の地に落としてはならない。
「てことで、屋根の上で戦おうぜ」
あっさりとエスパルダは提案して、高いとこ嫌いか? と悪戯に笑った。
屋根の上ならば見晴らしもよく、射出される影朧たちをよく見渡せる。地面で待ち構えるよりは被害のリスクも小さいだろう。
「このヒヨリミには特徴があってさ、こいつらは『武器を持ったやつだけ』狙うんだ。屋根の上で自慢の武器持ってりゃ、あっちから寄ってくる」
そうして猟兵たちが敵を引き付けることは、同時に帝都を守ることにも繋がる。
「けど、くれぐれも気をつけろよ。射出されたスピードも切れ味も火力も、狂ってる分普通より強いし数も多い。次々倒しながらあちこち足場を飛び移りながら戦うことになるだろうし、気は抜けねえぞ」
帝都の建物は背が高いものも多い。屋根から屋根へ飛び移りながらの戦闘は、相応の危険を伴うものだ。なにより狂える影朧たちは、明確な殺意を持って猟兵たちへ群がるだろう。真剣な眼差しで注意を促してから、エスパルダはグリモアを輝かせた。
「集まってくるぶん、動き出したら立ち止まらねえほうがいっそ安全だ。けど本当に危ねえってなったときは、一旦武器を手放しゃいい。特性のおかげで隙は稼げる。……まあ、多少の傷は覚悟して行ってくれ」
それじゃ、あんまり無茶するなよ。言って、エスパルダは猟兵たちを送り出す。
柳コータ
お目通しありがとうございます。柳コータと申します。
こちらは『帝都櫻大戰』戦争シナリオです。
●シナリオについて
≫断章なし/〆切なし/達成度人数+執筆可能な限り。
・プレイングボーナス≫砲塔から放たれる影朧を迎撃する。
・帝都空中の敵艦隊の砲塔から無差別に放たれる影朧の群れを屋根の上で迎撃してください。
≫敵のヒヨリミは武器を持っているものだけを狙う特性があります。
●プレイングについて
・複数参加の場合、IDか合言葉をお願いします。
・場合によりまとめて採用することがあります。個別希望の場合は記載してください。
・戦争シナリオにつき完結を優先します。内容に問題がなくともお返しする場合があります。
・技能を羅列したプレイングの採用率は低いです。
●受付について
公開後〜送れる限り。先着順ではありません。焦らずどうぞ。
プレイングの状況次第でサポート進行予定です。
それでは、皆さまのプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『ヒヨリミ』
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POW : ヒヨリミ台風
予め【二本の刀を掲げて空中でくるくると回転する】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD : ヒヨリミボディ
自身の肉体を【刃のように触れるものを切り裂く布】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
WIZ : 無縁火
レベル×1個の【血のように赤い色】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
👑11
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叢雲・紗綾
飛んでくる敵を狙い撃ち落とすのが今回の任務目的と。
狙撃手の腕の見せ処ですね。
一匹たりとも生きて地上には降ろしませんよ。
建物の屋根上で敵を待ち構えましょう。
移動に備え、周辺地形は交戦開始前に把握を。
「雀蜂」を構え、其処に装着した「鷹目」を通して敵を捕捉。
死点狙撃を発動し、先に飛んできた奴から順に急所を撃ち抜いて仕留めていきますよ。
敵は体を伸ばして攻撃してきますから、間合いが遠くても油断せず。
避けるのが厳しい距離まで寄られる前に移動して距離を取り直し、そこから改めて狙撃を。
燃えて落ちるはお前らだけです。
誰ひとり何ひとつ、奪わせはしませんよ。
桜舞う空に、物騒な船の影がいくつも浮かんでいる。
その砲塔から放たれた赤い塊が、流星のように空を滑り落ちてくるのが見えた。けれども赤い尾を引くそれは、不自然に軌道を変える。
明らかにそれらは、屋根の上で武器を構えた叢雲・紗綾(嘲り詰る兇弾・f40836)たちのほうへ向かって来ていた。――ヒヨリミだ。
「狙撃手の腕の見せ処ですね。一匹たりとも生きて地上には降ろしませんよ」
紗綾は身の丈ほどもある長大な狙撃銃を構え、装着した照準器から迫りくるヒヨリミをしかと補足する。凄まじい勢いでこちらに迫る赤色――その中心に、急所を見つける。
「見えてますよ」
引き金を引けば、過たず見つけた敵の急所を弾丸が撃ち抜いた。空へ撃ち戻された赤色がその場で燃え尽きていく。
だが、敵は一体ではない。我先にと距離を詰めてくる者から、次々と紗綾の弾丸に穿たれていく。
「と、そろそろ移動しますか」
ヒヨリミとの距離はまだあるが、最初に陣取った屋根の上から紗綾は武器を担いで駆け出した。事前に周辺の足場は確認済みだ。狙撃は距離を詰められる前に移動をしなければその真価を発揮できない。特に今回の敵は体に伸縮性がある。間合いが遠くとも油断はできない。
屋根を駆け、飛び越え、あらかじめ定めていた狙撃ポイントで紗綾は銃を構え直した。
狂える影朧たちが、またぐんと軌道を変えてこちらへ駆けてくる。紗綾は慌てることなくその一体一体へ照準を合わせ――敵の死点を見抜き引き金を引いた。
「燃えて落ちるはお前らだけです。誰一人、何ひとつ、奪わせはしませんよ」
銃声が空の蒼を裂き、赤い破片が帝都の空に散る。
がしゃりと銃弾を装填して、紗綾は躊躇なく引き金を引いていった。
大成功
🔵🔵🔵
キラティア・アルティガル
帝都なれば住む民は多かろう
屋根の上で戦うなら民にも都にも被害はゆくまい
なればデモンウィングを用い翼にてかるがる上がろう
これなら足を踏み外す心配もない
引き付けももっと上でも可能じゃ
まぁ出来る限りは屋根に足をつけ戦いたいがの
待ち構えておらば…来やったの!
かわゆらしいナリだが我を殺さんと殺到しおる
切っ先向けられただけでさえ灼熱の炎も感ずるの
だが
「エンドブレイカー…いやさ猟兵とは諦めぬ者がこと!」
我は七百本の破壊光線を放てるゆえ
「どれだけ参ろうが全て串刺しにしてくれよう!」
屋根の上でも上空でも引き付け刺し貫き薙ぎ払う
我が大鎌にても塵芥と化すが良い!
「民住まう都を貴様等如き輩に蹂躙はさせぬ!覚悟せよ!」
帝都の空を、物々しい艦隊が埋め尽くそうとしている。
「帝都なれば、住む民は多かろう」
そのさまを街路から見上げたキラティア・アルティガル(戦神の海より再び来る・f38926)は、背からデモンの翼を生やすや、軽々と建物の屋根へと武器を手に舞い上がった。
「屋根の上で戦うなら民にも都にも被害はゆくまい」
翼があれば、万が一の際に踏み外す心配も無用だ。必要とあらばさらに上空で敵を引き付けることもできるだろう。
「まぁ、出来る限りは屋根に足をつけて戦いたいがの。……と、来やったの!」
近くなった空から赤い火球めくものがいくつも滑り落ちてくる。それこそ艦隊の砲塔から放たれた影朧――ヒヨリミだとすぐにわかった。赤いてるてる坊主のような姿の影朧たちは、空中で軌道を変え、明確な殺意をもって武器を構えるキラティアのもとへ殺到する。
裾に潜む切っ先を向けられただけで、肌を焼きそうな灼熱を感じた。血の色によく似た炎がキラティアの身に迫る。
「かわゆらしいナリだが、我を殺さんとしおることは確かか」
――だが。
「エンドブレイカー……いやさ猟兵とは、諦めぬ者がこと!」
終焉を終焉させ続けてきたつわものが、不敵な笑みを唇に描いた。そしてその身から放たれた七百もの光線が、いまにも身を裂き燃やし尽くそうと群がるヒヨリミたちを至近距離から貫き通す。
「どれだけ参ろうが、全て串刺しにしてくれよう!」
大鎌で串刺したヒヨリミを薙ぎ払い、キラティアは屋根の上を駆ける。構え引き付け刺し貫き薙ぎ払うのを繰り返せば、敵は塵芥と化し、周りに舞うのは血か炎か、判然とはしなくなってゆく。
帝都へと放たれる軌道を見れば、それさえも空中で引き付け、同じように薙ぎ払った。知らぬ間に得た傷はいくつもある。だがキラティアはその痛みも意に介すことなく、デモンの翼を広げ、続くヒヨリミたちの殺意へと大鎌を構えた。
「民住まう都を貴様等如き輩に蹂躙はさせぬ! 覚悟せよ!」
大成功
🔵🔵🔵
夜刀神・鏡介
暗躍していたカルロスの奴がこうも派手に動きだすとは……と思ったが
しかしまあ、目的があるから暗躍していたに決まってるよな
屋根の上で利剣を構え。まずは砲塔の方に視線を向けて影朧の射出を待つ
射出されたら、此方に向かってくる個体数を大まかに確認してタイミングを図る
速さはあっても、動きそのものは幾らか読みやすい。接近して振るわれる刃や、此方を切り裂こうと伸びてくる布
それらが至近距離に迫るギリギリのタイミングで澪式・肆の型【玉輪】
敵の攻撃を弾くと同時に体勢を崩してやって、手近な個体に追撃を叩き込み
その後は、追加で降ってくる奴らを含めて囲まれないように素早く移動
ダッシュにジャンプに壁を蹴って飛距離を稼ごう
嫋やかに桜が舞うばかりだった帝都の空を埋め尽くす『カルロス錨』。
これまで暗躍ばかりしていたカルロスがこうも派手に動き出すとは。そこまで考えて、夜刀神・鏡介(道を貫く一刀・f28122)は軽く頭を振った。
「まあ、目的があるから暗躍していたに決まってるよな」
幻朧帝の復活が、カルロスにどう利を為すのかは不明のままだ。考えてもわからないことよりは、いま目の前に迫る危機を打ち砕くことのほうが先決だろう。
鏡介は見晴らしのいい屋根の上で使い慣れた刀を構え、戦艦の砲塔が吠えるのを待つ。
見据えるなか、一斉に射出されたヒヨリミたちは、火球のように勢いよく空を滑り落ちて。そして鏡介たち猟兵が持つ武器に吸い寄せられるように、軌道を変えた。
「一、三、六……ひとまず十ってところか」
己のほうへ向かってくる敵の数を大まかに把握して、鏡介も屋根の上を駆け出した。
敵は速さはあっても、動きそのものは幾らか読みやすい。
ぐんと接近してきたヒヨリミたちがその刃や布を殺意と共に振るう寸前を見極めて、鏡介は刀を回転させた。
「――澪式・肆の型【玉輪】」
回転した刀が、ヒヨリミの伸ばした布を巻き取り、刃を弾く。なおも回転を続ける刀は、周囲に迫ったヒヨリミたちを切り裂いた。
「逃がすわけないだろ」
大きく体勢を崩したヒヨリミが立て直そうと離脱を図ろうとしたところを、鏡介が追撃する。慣れた仕草で振り下ろす刀は、さらに手近な個体を叩き切った。
これであらかじめ数えた分は倒したか。けれど空からは次いでヒヨリミたちが降ってくる。それを見て取って、鏡介は囲まれる前にと動きを止めず屋根から屋根へと飛び移り駆けていく。
速度を上げ、建物の壁を蹴って更に上へ、前へ。
そうしながら、鏡介は次の敵を数えだす。――ひとつたりと、この帝都へ落とさぬために。
大成功
🔵🔵🔵

栗花落・澪
確かに見た目は可愛いんだけどね
とりあえず魔法の杖を持って
屋根より高い位置で空中戦
自身には念のため高速詠唱、多重詠唱で
水、氷魔法の冷気を混ぜたオーラ防御で防衛
万一炎が当たっても熱を緩和できるように
更に杖の先端にも破魔の光を纏わせ迎撃準備
この杖、魔法だけが用途じゃないんだよね
基本的には接近される前に
破魔の乗った水と炎の属性攻撃で凍結、撃破狙い
だけど万一魔法が突破されても杖を伸ばして振り回し
破魔の鈍器でぶっ飛ばします
まぁ、軽い武器だから衝撃の大半は
浄化、破邪効果によるものだと思うけど
UC使ってきたらこちらもUC
水と氷の範囲攻撃で炎の相殺を優先し
その間に無防備な本体に花弁の刃で斬撃をお見舞い
「確かに見た目は可愛いんだけどね」
てるてる坊主みたいだし、と囁いた栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は、迫る敵の群れを見据え、桜舞う空のなかで魔法の杖を持ち直す。
敵は空から来るが、翼を持つ澪にとっても空は得意な場所だ。
とはいえ敵は狂える影朧。空を滑るように飛び来るさまは可愛げもなく、まるで隕石じみている。澪は念のため詠唱を素早く重ね、自身の周りに水や氷魔法の冷気を混ぜたオーラ防御を展開させた。これで万一炎が当たっても熱を緩和できるだろう。
それから魔法の杖の先端にも、破魔の光を力強く纏わせる。
ほぼ同時に、ヒヨリミたちが魔法の攻撃射程内に入った。澪は水と炎の属性を乗せた魔法を放つ。水は氷、追撃する炎は相反して爆発を引き起こす。
しかし敵の数のほうが圧倒的に多い。
魔法を掻い潜り近づくヒヨリミを確認して、澪は魔法の杖を伸ばして握り直した。
「この杖、魔法だけが用途じゃないんだよね」
目前に敵が迫り、炎が迫る。しかし炎をオーラが阻み、一瞬できたその隙に澪は魔法の杖を思い切り振り回した。群れを成して迫っていたヒヨリミたちが、勢いよく空へ吹き飛ばされていく。
「あれ、思ったより飛んだね。これ軽いほうなんだけどな」
乗せられた破邪や浄化の効果だろう。もはや破魔の鈍器と言って差し支えない。
それでも狂える影朧と化したヒヨリミたちは怯まなかった。血の色めいた巨大な炎が迫り、
「――恥ずかしいから、一瞬で終わらせるよ!」
舞い散る花びらと共に可憐なドレス姿に変身した澪が巨大な水と氷の魔法を放ち返す。
炎を澪の魔法が相殺し、同時に花びらの刃がヒヨリミたちを切り裂いた。
ふわり、澪のドレスが花びらと揺れる。
見た目が可愛いからと言って油断大敵であるのは、ヒヨリミたちにとっても同じであったようだった。
大成功
🔵🔵🔵
五百崎・零
※戦闘中はハイテンション
武器持ってたらずっと
戦ってくれんのかァ?
それにしても、ヒヨリミだっけ?
イイなァ真っ赤で!
これ見よがしに銃を持っているアピールして敵を引きつけ、射撃
敵の攻撃を受けても【激痛耐性】で耐え、戦闘の継続を優先する
武器を手放せば狙われないって言われてもな?
せっかく楽しいとこなんだから、やめるわけねーだろ!ヒャハハハ!
まあでも、オレも死にたくはないし
数が増えてどうしようもなさそうならUCを使って悪魔どもを召喚する
「全部喰え。残すんじゃねーぞ!」
取りこぼしがあったらオレがもらうからな
それにしても…ハハッ!
やっぱりイイ色だなァ!!
※真っ赤な戦場をみて更にハイテンションに
いつもより少し近い空から、血のように赤い塊が降ってくる。
銃を手にした五百崎・零(死にたくない死人・f28909)は屋根の上から、帝都めがけて放たれたそれが自分のほうへ向きを変えるのを見て取って、にぃと唇に弧を描いた。ああ、どうやら聞いた話通りだったらしい。
「武器持ってたらずっと
戦ってくれんのかァ?」
狂える影朧は委細構わず零のほうへと加速してくる。桜舞う空に蔓延した殺意が、明確に零へと注がれて。期待通りでいっそ胸が躍って、零はこれみよがしに銃を空へ突き上げた。空を指す銃口の先に、赤が滑り込む。くつりと零の喉が楽しげに鳴った。
「ヒヨリミだっけ? イイなァ真っ赤で!」
銃声が空をヒヨリミごと劈く。撃ち抜かれたヒヨリミは撃たれた勢いで吹き飛ばされていくが、すぐさま他のヒヨリミたちが殺到した。
「ハハッ!」
零は楽しげに笑いながら、引き付けた敵を次々に撃ち抜いていく。鋭い刃と貸した赤布が身を掠め、いくつも傷を作っても、その笑みはむしろ深まるばかりだった。
敵の数が増えていく。むやみに伸びたその赤布が零の腕を貫き横腹を裂いて、血のような赤のなかに、本当の赤が混じる。けれど慣れた痛みはむしろ戦いを彩るようだ。
「ヒャハ、ああ痛ェな! 楽しいなァ!」
敵は武器を持つものを狙う特性があるらしい。一時的にでも手放せば狙われなくなると聞いたけれど。
「せっかく楽しいとこなんだから、やめるわけねーだろ! ヒャハハハ!」
群がるヒヨリミたちで、視界が赤くなっていく。その戦場の中心に零の心底楽しげな笑い声が響いた。
だが、零としても死にたいわけではない。楽しみ尽くすなら、いささか敵が増えすぎたかと見て取って、零は笑い収めると、おもむろに狼の姿をした悪魔たちを召喚した。
「全部喰え。残すんじゃねーぞ!」
怒れる悪魔たちは応えるように唸り声をあげてヒヨリミたちに喰らいついていく。赤を黒が呑み込んで、零の動きがいくらか自由になった。途端にまた零も屋根の上を跳び駆けて引き金を引く。
「取りこぼしがあったらオレがもらうからな、悪魔ども!」
早い者勝ちだと言わんばかりに、零と悪魔たちはヒヨリミたちを駆逐していく。けれどいまなお見上げれば、空は赤い。零はぼたりと滴る血をぞんざいに拭って、尚更愉快そうに喉を震わせた。赤い、痛い、楽しい――赤い。
「ハハッ! やっぱりイイ色だなァ!!」
大成功
🔵🔵🔵
冴島・類
武器を構えているもの…
それで戦意をはかってるのか
特性活用して役割分担も可能かな?
瓜江を絡繰糸から離し
相縁使い独立遠隔操作
彼は武器装備なしで動いてもらおう
僕は刀構え
炎対策に火炎耐性の結界を登った先
戦場なる屋根の上と自身、瓜江にかけ
その上で、誘導する為にも破魔の力降ろした薙ぎ払い放ち気を引き
その後は見切りを用い相手の攻撃を
全て避けられるとは思わぬが
直撃はなるべく避け、反撃しながら応変に対応を
そして、僕を狙って来た相手を死角から
瓜江に風の全力魔法で攻撃してもらい
連携しながら倒していけたら
この地を破壊も
復活もさせませんとも
長い、長い時間ずっと
封じて来た方々の想い
ここで生きる住人達の毎日も、壊させない
降り注ぐ敵で、空が赤く染まっている。
けれど滑り落ちる殺意は帝都を穿つその前に、屋根の上に待ち構えた猟兵たちによって迎え撃たれていた。
「武器を構えているもの……それで戦意をはかってるのか」
ならばその特性を活かせるかと、冴島・類(公孫樹・f13398)は傍らのからくり人形たる瓜江を絡繰糸から離してやる。一瞬ぐらりと揺れた瓜江の身体は、しかしすぐさま類がなぞり起こした縁で動き出した。
「其方は武器は出さずに。……頼むよ、瓜江」
応えて、瓜江が独り駆け出す。それを見送って、類は刀を構えた。途端、空を滑るヒヨリミたちがぐんと類のほうへ標的を定めるのがわかる。同時に己と瓜江、そして戦場と定めた屋根の上に、対炎の結界を巡らせた。
「どうぞ、こちらへ」
類は迫る敵の気を増して引くように、刀を大きく薙ぎ払う。破魔の力を下ろした一閃は、一息に寄り集まったヒヨリミたちを断った。視界の端を燃え盛る赤が散る。
その一撃で視界が開いた。隙に呼び込まれた敵がさらに落ちてくる軌道をよく見据え、類は伸び貫こうとする赤布の刃を跳び躱す。
敵の数のほうが圧倒的だ。全て躱せはしない。刀でいなし、弾き、隙を薙ぐのを繰り返すうち、ひとつ、ふたつと傷が増えていく。
けれど、類から滴る赤は地に落ちる前に鋭い風に吹き飛ばされた。
類に群がったヒヨリミたちが、空に返されていく。――瓜江の風だ。
屋根を飛び伝い類の死角へ潜んだ瓜江が、それ以上の類の傷も隙をも許さない。類の刀が、瓜江の風が息を合わせ、敵を次々と薙ぎ払っていく。
空には鉄の船が浮かんでいる。けれどいくらその砲塔が吠えようと、放たれた影朧が帝都に届くことはない。
「この地を破壊も、復活もさせませんとも」
類は身軽に屋根を駆け、次の屋根へと飛び移る。その足場が続く限り――その下には人々の暮らしがあるのだ。たとえ仮初の世界であろうとも、それを密かに護って来た者たちがいる。仮初と知りながら、誰に見返りを求めることなく見事な花を咲かせる桜たちがいる。
「長い、長い時間ずっと、封じて来た方々の想い――ここで生きる住人たちの毎日も、壊させない」
類が振るった刀が、ヒヨリミが吐こうとした炎ごと刺し貫き、瓜江の風が花びらと共に駆け抜けていく。
この街に落ちる火を、この街が墜ちる日を、決して許しはしないのだ。
大成功
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