●予兆:山本五郎左衛門、モフす。
カクリヨファンタズムに存在する『幻朧桜の丘』。
大昔になぜかサクラミラージュから流れ着いた幻朧桜が群生するその丘は一年中桜に覆われており、そこで東方親分『山本五郎左衛門』がのんびりと花見を満喫していた。
敷物の上で寝そべり、お気に入りの清酒を手酌して、優雅な一人の時間を過ごしていた。
「にゃふぁぁぁぁ……心地良い陽気に美味い酒……ツマミにチュール。
避暑代わりの花見を満喫する、なんて贅沢だにゃあ」
「もふ」
「にゃ?」
そんな山本親分に、一匹のウサギが近寄って肩をつつく。
もふもふとしたそれは、当然ただのウサギではない。そして、妖怪でもない。
サクラミラージュにおいて、戦闘力・知性共に並のウサギ程度であるために影朧だと気付かれず学名まで付けられたウサギの影朧。
『サクラモフウサギ』である。
「ニャニ? お前さんどこから来たんだニャ?」
「もふ」「もふ」「もふもふ」
「ニャッ!? い、いっぱいいるニャ!? いつの間に、囲まれてるニャア!?」
そして、慌てて身体を起こした山本親分の視界に、無数の『サクラモフウサギ』が迫って来る。
『サクラモフウサギ』は世界を憎んでいるため人に懐かず、敵対する恐ろしい影朧だ。
戦闘力・知性共に並のウサギ程度だが、今ここにいる『サクラモフウサギ』は
とある謎の力の加護により、異様に強化された状態にあった。
『サクラモフウサギ』が逃げようとする山本親分の上に飛び乗り、動きを押さえ、次々にモフモフが密集していく。
「なっ、
力強ッ!? やめ、やめるにゃ! にゃ……にゃああああ!?」
「「「 もふもふ もふもふ もふもふ」」」
そして、山本親分はモフモフに潰されることになるだろう……。
●前日譚:突如響く、謎の声。
港区にそびえ立つ帝都タワーの近くにある、幻朧桜の群生地。
そこを管理している年老いた桜の精の男性が頭を悩ませていた。
彼は、サカイ老人。
かつて、この近辺一帯をとある影朧により放火されそうになった際、猟兵たちに助けられた縁がある桜の精の老人は耳に何かの『声』が届いたことに困惑していた。
―――『桜』の下には『諸悪の根源』が埋まっている。
―――これを倒す鍵は、まず『六番目の猟兵』。そして次に『山本五郎左衛門』。
―――六番目の猟兵に伝えよ、『カクリヨの妖怪親分に助けを求めよ』。
「ふぅむ……。『桜』の下、か……あの幻朧桜のことかのぅ」
サカイ老人の視線の先にいるのは、黒い学生服に身を包んだ少女の影朧。
最近巷で噂に上る『デモノイド』なる存在に似た質感の腕を持つ彼女は、出現してから何人たりとも近づくことを許容せず、周囲に強い敵意を放ちながら一本の幻朧桜の傍から離れようとしていない。
彼女は未だ誰を傷つけることもなく、じっとその場に漂っていた。
それゆえサカイ老人は、彼女の荒ぶる魂と肉体を鎮められないものかと、憂慮していた。
「いつまでも、独りにしておくのも気が引ける。かといって生半可な者では太刀打ちできそうにないしのぅ。
……ここは、この耳鳴りの件も含めて伝えておこうかのぅ」
並々ならぬ強力な雰囲気を纏うその影朧こそ、『諸悪の根源』から漏れ出た力を受けているのではないか。
そう推測したサカイ老人は、超弩級戦力である猟兵に連絡を取るのであった。
●招集:そして、世界を跨ぐ桜の下へ。
「ハロー、エブリワン!
カクリヨファンタズムで山本殿、『山本五郎左衛門』がデンジャラスな目に遭うことが予知されマシタ!
それと関連して、まずはサクラミラージュに向かっていただきたいのであります!」
グリモア猟兵、バルタン・ノーヴェは居合わせた猟兵たちに声をかける。
それは常ならざる、大きな事件の前兆と思われる予知にまつわる案件であった。
「サクラミラージュにて、桜の精の方々から『諸悪の根源』なる存在の通報が相次いでおり、その関係で山本殿が強力なオブリビオンに狙われているとの情報が入っておりマース!」
『諸悪の根源』とやらが何か、それはまだ明らかになっていない。
だが、サクラミラージュの幻朧桜の下に埋まっているという情報が桜の精たちから提供されており、その事実は確認されているのだ。
「山本殿を襲撃している敵は、『諸悪の根源』の力を受けているようなのであります!
そのまま真っ直ぐ向かえば、山本殿と共に皆様もモフモフに飲み込まれてしまうデショー……」
用意したプロジェクターによって投影されるのは、山本親分がモフモフ……白いウサギのような
影朧の群れに飲まれ、圧死する様であった。
山本親分の実力ならば容易く跳ね除けられる脅威であるはずだが、この『サクラモフウサギ』たちは『諸悪の根源』の加護を得ているため、とても強く排除しきれずに蹂躙される展開に陥ってしまうようだ。
「山本殿を救援するためには、先に『諸悪の根源』の影響を弱めなければなりマセン!
『サクラモフウサギ』に加護を与えている幻朧桜は、港区にある群生地の中にありマース!
そこで、その桜の近くに佇む強力な影朧……『ロード・アヤセガワ』なる方を撃破すれば、『諸悪の根源』の影響は激減しマース!」
続いて映し出された、『ロード・アヤセガワ』という影朧。
その姿は一見するとただの女学生だが、ところどころに青い異形が見受けられる。
幻朧戦線将校『カルロス・グリード』が企む無差別大規模テロルに利用している、悪魔生物『デモノイド』に似た力を感じる彼女は、桜の下の『諸悪の根源』から漏れ出た力を受けてそれを維持するためにその場に佇んでいるのだろう。
『ロード・アヤセガワ』の意志、目的は定かではないが、その激しい敵意は説得が通じる雰囲気ではない。
力づくで撃破し、速やかに山本親分の救援に向かわなければならない。
「相手はモフモフなウサギのようなオブリビオンでありますが、山本殿を一方的に倒すほどの強敵! 油断してはいけマセーン!
それでは皆様、迅速なご協力をよろしくお願いしマース!」
そして、バルタンがグリモアを起動して、サクラミラージュに通じるゲートを開く。
暑い夏休みシーズン、最後の戦いが今始まろうとしていた。
リバーソン
こんにちは。リバーソンです。
マスターとして皆様に喜んでいただけるよう、つとめさせていただきます。
今回の舞台はサクラミラージュとカクリヨファンタズムを股にかけることになります。
港区に存在する幻朧桜の群生地にて『諸悪の根源』を守っている影朧を倒した後、幻朧桜の丘にて山本五郎左衛門を襲撃するオブリビオンの大群を撃破することが目的です。
第一章:『ロード・アヤセガワ』との戦闘です。
『諸悪の根源』の力が漏れ出る幻朧桜の傍に佇み、仲間たちが山本五郎左衛門を殺害するまで力を送り続けていると思われます。
独自の思惑があるようですが、詳細は断章にて語られます。
プレイングボーナスはなく、純粋な力量による戦闘となる見込みです。
第二章:『サクラモフウサギ』との戦闘です。
第一章がうまく遂行された場合、『諸悪の根源』の加護が弱まるため排除することは容易くなるでしょう。
襲来してきたオブリビオンの大軍に応戦中の山本親分も一緒に戦ってくれる上、相手の戦闘力はただのウサギと同じ程度なので、おそらく勝てるでしょう。
プレイングボーナスは、『山本親分と共闘して蹴散すこと』です。
第三章:『サクラモフウサギ』の軍勢を率いていた指揮官オブリビオンとの戦闘です。
『諸悪の根源』の加護が減衰していることである程度弱体化していますが、別格の強さを有しております。
第二章に引き続き、山本親分が共に戦ってくれるため、上手く活用することで撃破する隙を突くことができるでしょう。
プレイングボーナスは、『山本親分と共闘すること』です。
登場人物:
サカイ老人。ご高齢の桜の精の男性です。
帝都タワー周辺にある幻朧桜の群生地を管理しているお爺さんです。
以前、【帝都タワー大炎上】にて猟兵たちに助けられたことに強く恩を感じており、できる限り協力しようと思っています。
東方親分『山本五郎左衛門』。大祓百鬼夜行で猟兵たちと縁を結んだ妖怪です。
カリスマ特化型の「威風形態」で猟兵たちと共闘してくれますが、猟兵が駆け付けなければモフの山に埋もれてしまいます。
山本親分はオブリビオンではないのでご注意ください。
オープニング公開後、断章を公開します。
プレイングの受付期間はタグにてお知らせいたします。
皆様、よろしくお願いいたします。
第1章 ボス戦
『ロード・アヤセガワ』
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POW : ブルータルブラッドブレイド
攻撃が命中した対象に【デモノイド寄生体】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【強酸性の血液】による追加攻撃を与え続ける。
SPD : デモノイド・トキシック・ミスト・フェノメノン
戦場全体に【猛毒の霧】を発生させる。敵にはダメージを、味方には【大地の力】による攻撃力と防御力の強化を与える。
WIZ : 包囲殲滅陣
敵1体を指定する。レベル秒後にレベル×1体の【プラチナデモノイド】が出現し、指定の敵だけを【デモノイドアックス】と【ヘッドランス】で攻撃する。
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●断章:桜の下で靡く黒。
「……猟兵たちが勘付いたようですね」
漆黒の
學徒服に身を包んだ女学生の影朧が、鞘から刀を抜く。
その刀身は右腕と融合しており、青い怪物の姿に変異している。
彼女は、デモノイド。その中でも人間形態と理性を維持できる個体である、デモノイドロードと呼ばれる存在だ。
「告げましょう。私は『ロード・アヤセガワ』。
幻朧戦線将校、カルロス・グリードの配下です」
『ロード・アヤセガワ』はとある世界において、デモノイドロード『ロード・クロム』という存在に掌握された朱雀門高校に通う一生徒だった。
その時勢の記憶は、アヤセガワ自身定かではない。
今のアヤセガワの中にあるのは、『ロード・クロム』に対する激しい嫌悪と、ユーベルコヲド使いに対する憎悪。
そして、一つの使命感。
その使命を果たすため、アヤセガワは幻朧戦線に与したのだ。
「この任を全うすれば、とあるメガリスを得られる。
ですので……貴方たちはここで死んでもらいます」
『諸悪の根源』の力を仲間に送り続ける幻朧桜の根本で佇むだけ。
それだけで仲間たちが『山本五郎左衛門』なる人物を弑すると、アヤセガワは聞いていた。
だから近寄ろうとする桜の精を遠ざけ、誰も寄り付かないよう敵意を振りまいていた。
無暗な殺傷行為を行わないのも、帝都桜學府から猟兵を呼ばれないようにするための時間稼ぎに過ぎなかった。
ゆえに……猟兵に認識された今、アヤセガワは殺戮に躊躇することはなくなった。
「山本何某を見殺しにすれば見逃す……と言って応じるならば、この場にいないでしょう。
なので鏖殺します。
次の猟兵も、その次も。私の仲間が役目を全うする時を稼ぐのが、私の役目ですので」
幻朧桜の下から漏れ出る『諸悪の根源』の力がアヤセガワを強化しており、生前に引け劣らぬ力を引き出している。
配下となるデモノイドたちがおらずとも、単騎で複数の猟兵を相手にできるほどに。
静かに、そして冷酷に。アヤセガワは確固たる殺意を宿して、猟兵たちと正面から対峙する。
たとえ……人間であった頃の、
影朧となる前の思い出が無くとも。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
大変な難敵ですが、やってみましょう。
『FAS』により飛行、『FLS』で
全『祭器』を召喚、空間歪曲障壁を展開しまして。
【鴻鉀】を発動、『祭礼の女神紋』により『祭器』共々『天鎧』を纏い『環境耐性』として金星の様な『強酸性環境』を指定して巨大化しますねぇ。
『寄生体付与』は外からの物、『天鎧』で貫通させず『強酸』による浸食を環境耐性と『即時修復』で相殺、必要なら『FQS』の治癒や『FKS』の操速結界で修復速度加速を重ねれば問題ありません。
後は『FGS』の重力波と『FBS』の包囲で回避行動を封じ、『FRS』『FSS』の[砲撃]と『FDS』の[爆撃]を降らせますねぇ。
フリル・インレアン
ふええ、ここにも大規模テロル企んでいる影朧さんがいたなんて、テロルの標的は山本親分さんという事でしょうか?
ふえ?あの人はカルロスさんが遣わしたデモノイドさんですよね?
ということは大規模テロルですよ。
なんとしても阻止しないといけませんね。
ふええ、攻撃が命中した相手にデモノイド寄生体を付与するって、青いガチデビルさんみたいです。
強酸性の血液なんてしつこい汚れです。
お洗濯の魔法で落としてしまいましょう。
アヒルさん、青いシミとか残っていませんか?
まずはあのデモノイドさんを倒してしまいましょう。
多々良・緋輝
朱雀門高校の…成程な
だが、復讐の為に関係ねぇ他者を意図的に巻き込むのは復讐じゃなくて八つ当たりだ
…お前に復讐をする権利はねぇ
緋色の神殺刃を展開し、緋色の炎血で因果律を焼却する熱量を付与してアヤセガワの急所を狙っていく
UCを貰ったら、しめたもの
ーーUCで無限再生を行う『真の姿』へと変身…する度に、追加行動を開始
デモノイド寄生体から強酸攻撃をされても、負傷を媒介として追加行動を仕掛けてチェーンソーでアヤセガワの肉を削り取る!
とあるメガリス…銀誓館じゃなくて武蔵坂がある世界のお前がなんでメガリスを狙うか知らんが…言っておこうか
そんな事はさせはしねぇ!
家綿・衣更着
東方親分さんのピンチっす!…ピンチっすよね?
サカイ老人は危ないので離れててっす
「どーも、ロード・アヤセガワさん、東方妖怪の家綿・衣更着っす!」
毒使いで効果のありそうな中和剤を綿ストールに染み込ませ、さらにバリアバングルと結界術で毒の霧を遮断
「親分さんを助けるため、倒させていただきまっす!」
手裏剣投擲乱れ撃ち、だがUC『綿ストール・本気モード』状態の綿ストールからほどいた糸を幻影使いで迷彩して手裏剣に結んでおどろかすように遠隔操作し奇襲。化術で糸を強固で鋭利な鋼糸に変化させ拘束や切断
『空亡・蒼』で
超常ごと討つ
「あんたにも想いはあろうけど、おいらも仲間のため負けられないっす!」
●ロードデモノイドとの激闘。
『山本五郎左衛門』に危害を加えようとするオブリビオンたちの一員。
幻朧戦線将校カルロス・グリードの配下である少女、『ロード・アヤセガワ』は武器でもある自身の腕を構え、猟兵たちに対峙している。
アヤセガワは『諸悪の根源』の力を帯びて強化されており、猟兵たちであっても気を抜くことができない強敵であった。
「大変な難敵ですが、やってみましょう」
アヤセガワを見下ろしてそう呟くのは、童顔且つ小柄ながら桁違いに発育の良い体型の少女。
『豊饒の女神』の使徒、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は三対のオーラの翼型祭器『フローティング・エアロフォイル・システム』により戦場の空を飛行している。
所持している多数の『祭器』を完全に制御し、『祭器』の召喚や空間歪曲障壁の展開を行える札型祭器『フローティング・リンケージ・システム』を起動して全て『祭器』を召喚し、空間歪曲障壁を展開していた。
「ふええ、ここにも大規模テロル企んでいる影朧さんがいたなんて、テロルの標的は山本親分さんという事でしょうか?」
「東方親分さんのピンチっす! ……ピンチっすよね? サカイ老人は危ないので離れててっす」
「ええ、わかりました。……よろしく頼みますわい、猟兵さん」
続けて、アリスラビリンスに迷い込んだアリス適合者の少女、フリル・インレアン(大きな
帽子の物語はまだ終わらない・f19557)もアヒルちゃん型のガジェットの『アヒルさん』と共に馳せ参じていた。
綿っぽい白髪とストールがトレードマークの人を驚かせるのが好きな狸の妖怪、家綿・衣更着(綿狸忍者・f28451)もまた山本親分を救うために駆け付けており、アヤセガワの様子を伺っていたサカイ老人に避難を呼びかけていた。
「ふえ? あの人はカルロスさんが遣わしたデモノイドさんですよね?
ということは大規模テロルですよ。
なんとしても阻止しないといけませんね」
「その通りっす。相手は手ごわい相手っすけど、みなさんの力を合わせれば大丈夫っす!」
「朱雀門高校の……成程な」
そして、何処にでもいる平凡なエスパーだったが、魂を蝕む『デモノイド寄生体』に寄生され、その制御に成功したミュータントヒーロー。
ロードデモノイドという存在をその身をもって熟知している、多々良・緋輝(ロード・ヒイロタマハガネ・f44126)はアヤセガワを青い瞳で睨みつけた。
「だが、復讐の為に関係ねぇ他者を意図的に巻き込むのは復讐じゃなくて八つ当たりだ。
……お前に復讐をする権利はねぇ」
「復讐……なるほど、『ロード・クロム』に対するこの想いは、ソレですか。
ええ、そうですね。……ここの人々の生活など、関係ありません。
私は、使命を果たすまで」
緋輝の言葉に感じ入る素振りもなく、アヤセガワが淡々とユーベルコードを発動させる。
それに対応して四人の猟兵たちも、各々の戦闘態勢を整える。
猟兵とデモノイドロードの戦いが幕を開ける。
●対するは、圧倒的物量。
「まずは場面を整えましょう」
アヤセガワが放ったユーベルコードは、《デモノイド・トキシック・ミスト・フェノメノン》。
戦場全体に猛毒の霧を発生させ、敵にはダメージを、味方には大地の力による攻撃力と防御力の強化を与える。
「どーも、ロード・アヤセガワさん、東方妖怪の家綿・衣更着っす!」
幻朧桜の並木道を毒々しい霧が広がろうとする寸前に、衣更着が毒使いとしての技量を駆使して対処する。
解毒効果のありそうな中和剤を打綿狸の体の一部でもある『綿ストール』に染み込ませ、さらに『バリアバングル』で宇宙服代わりとなる全環境対応『全身を覆う透明バリア』を発生させて、自らに届く毒の霧を遮断する。
「大いなる豊饒の女神、あなたの使徒に『天鎧の加護』をお与え下さいませ」
続いて、るこるがユーベルコード《豊乳女神の加護・鴻鉀(チチガミサマノカゴ・ボウバクナルグソク)》を発動する。
全身を『天鎧』の装甲で覆い、身長・武器サイズ・攻撃力・防御力3倍の、『反動』適用で更に効果増幅可能な巨人姿に変身する。
『天鎧』は様々な環境耐性と即時修復を持つ。
『祭礼の女神紋』により『祭器』をるこるの体の一部と扱い、全ての『祭器』を『天鎧』で保護することが可能となる。
「強酸性の血液も猛毒の霧も。周囲への被害は出させませんよぉ」
アヤセガワの有するユーベルコード、《ブルータルブラッドブレイド》は攻撃が命中した対象に『デモノイド寄生体』を付与するものだ。
『デモノイド寄生体』が付与された対象が射程圏内いる間、強酸性の血液による追加攻撃を与え続ける恐ろしい技だが、るこるは金星のような強酸性環境を指定することで、アヤセガワのユーベルコードへの対策を施した。
「毒霧も寄生体付与も外からの物、『天鎧』で貫通させなければ浸食を環境耐性と即時修復で相殺できますぅ」
「なるほど。―――手強い」
そして、るこるの周囲を漂う浮遊する二種の祭器。
負傷や状態異常の治癒機能に加え、『意志や感情の力』の代替が可能な十輪の花型祭器『フローティング・クィンス・システム』と、思考加速や加減速及び停止といった速度を操作できる結界を展開できる八角形メダル型祭器『フローティング・キネティック・システム』を重ね、修復速度を加速させた治癒により、《デモノイド・トキシック・ミスト・フェノメノン》が仲間や周辺の幻朧桜へもたらす被害を抑制する。
「ふええ、攻撃が命中した相手にデモノイド寄生体を付与するって、青いガチデビルさんみたいです。
しつこい汚れです。お洗濯の魔法で落としてしまいましょう」
「ぐわっ」
「む……」
二人がかりでも、『諸悪の根源』の力で強化されたアヤセガワの発する毒と酸を、抑えることしかできない。
そこで、三人目……フリルが手を伸ばす。
フリルは強酸性の血液や猛毒の霧を
しつこい汚れと見做し、《身嗜みを整えるお洗濯の魔法(ドライクリーニング)》を放つ。
しつこい汚れや強化効果・弱体化効果が命中した対象に対し、高威力高命中のどんな頑固汚れや効果をはたき落とす連撃を放つユーベルコードは、初撃を外すと次も当たらない。
だが、戦場に蔓延する毒霧は外しようもなく、《ブルータルブラッドブレイド》が味方に命中すれば止まってもらってはたき落とせるのだ。
中和剤、治癒結界、洗濯。三者の繰り出す対策により、アヤセガワが繰り出したユーベルコードによる
優位性は失われた。
「じっとしていてくださいね。ぽんぽんぽんっと。
どうですかアヒルさん、青いシミとか残っていませんか?」
「ぐわっ」
「はい、これで大丈夫です。それでは、みなさん―――。
まずはあのデモノイドさんを倒してしまいましょう」
「ああ。行くぜ、アヤセガワ!」
衣更着、るこる、フリルが守りを固めたことで、緋輝は後顧の憂いなくアヤセガワへと斬りかかる。
デモノイドの肉体を生体変換して作り上げたあらゆる物質を粉砕・切断するチェーンソー『緋色の神殺刃』を展開し、因果律すら燃やし尽くす出力と性質の発火成分を持つデモノイドヒューマンとしての『緋色の炎血』を刃に付着させ、アヤセガワの急所を狙う。
「とあるメガリス……銀誓館じゃなくて武蔵坂がある世界のお前が、なんでメガリスを狙うか知らんが……そんな事させる訳にはいかねぇな!」
「ぎん……せい、かん? なるほど、そこにもメガリスがあるというのですね。
ならば……次はそこを狙うのも、手ですね」
緋輝が放った大振りの急所狙いを避け、アヤセガワはカウンターの一撃を緋輝へと叩き込む。
耳よりの情報を得たと笑みをこぼすアヤセガワの右腕の刃が、緋輝の肩に切傷を付ける。
たちまち《ブルータルブラッドブレイド》が付与されるが、緋輝はフリルのもとへ下がることなくその身に宿るユーベルコードに利用する。
「鋼は此処に。肉体と精神、魂に宿る寄生体は無限の再生力を持つ。
其れを展開し己が真なる姿に昇華した時、時間の軛を超えるだろう」
《DIR・我が真なるは無限に骨肉を絶やさず(デモノイド・インフィニティ・リジェネレーション)》。
緋輝の身体が無限再生能力を持つデモノイドの肉体に覆われた真の姿に変身し、筋肉・骨・神経・臓器のどれかを激しく損傷する度に追加攻撃ができる。
体内に付着した『デモノイド寄生体』から強酸攻撃をされるたびに、激しく損傷することでも、負傷を媒介として追加行動を仕掛けることができる。
激しく回転する『緋色の神殺刃』がアヤセガワの肉を削り取り、『緋色の炎血』がその傷口を焼き固めていく。
「っ、誘われ、ましたか……!」
「……一つ言っておこうか。銀誓館も、武蔵坂も、このサクラミラージュも。
お前らの思い通りになんざ、させはしねぇ!」
「ええ、その通りですよぉ」
「親分さんを助けるため、倒させていただきまっす!」
緋輝はアヤセガワの四肢に狙いを定め、手足を削っていく。
そうして動きを抑えているところで、るこると衣更着が連携して攻撃を叩き込む。
「一気に全弾放出しますねぇ」
るこるは、空中に広げた数百の『祭器』すべての照準をアヤセガワに合わせる。
重力の操作を行う百数十本の錫型祭器『フローティング・グラビトン・システム』が放つ重力波と、ビームの刃を持つ百数十枚の戦輪型祭器『フローティング・ブレイド・システム』による全周囲包囲により回避行動を封じていく。
浮遊する百数十台の球体と対になる一対の腕輪で更生された、砲台に変形して砲撃が可能となる祭器『フローティング・レイ・システム』と中心に砲門が有り、射撃にも使用可能なビームシールド型祭器『フローティング・シールド・システム』による砲撃と、対巨大兵器・戦艦等を想定した、極めて高い破壊力を持つ卵型爆撃用浮遊武装祭器『フローティング・デトネイト・システム』による爆撃を叩き込む。
爆心地にいる緋輝も巻き込まれるが、《DIR・我が真なるは無限に骨肉を絶やさず》による再生能力と『フローティング・クィンス・システム』による治癒が効果を発揮し、問題はない。
「くっ、これほどまで、火力差があるとは……」
「打綿狸の本領発揮、誰にもこの綿は捉えられないっす!」
緋輝とるこるの猛攻を浴びているアヤセガワが大地の力による防御力で耐えているところへ、衣更着が様々な形状をもつ『忍者手裏剣』を投擲して乱れ撃つ。
そして、同時に衣更着はユーベルコードを発動した。
《綿ストール・本気モード(コレガオイラノホンキッス)》。
装備中のアイテム、打綿狸の『綿ストール』の摩擦を減らし、その効果・威力・射程を三倍に増幅するユーベルコードだ。
『綿ストール』からほどいた糸を幻影で迷彩して手裏剣に結び、感知できない遠隔操作の糸として奇襲に用いたのだ。
手裏剣がアヤセガワの周囲を包囲したところで、打綿狸は化術を以て糸を強固で鋭利な鋼糸に変化させる。
アヤセガワが鋼糸に拘束され、緋輝の『緋色の炎血』が鋼糸を伝って焼却する。
「がっ……!? まさか、ここまで
……!?」
「あんたにも想いはあろうけど、おいらも仲間のため負けられないっす!」
『ロード・アヤセガワ』は、山本親分という仲間を救う猟兵たちの士気の高さを見誤っていたのだろう。
瞬く間に撃破されつつある現況に驚き、猟兵たちの力量に慄く。
空亡劔が自らの力を篭めて作った魔剣『空亡・蒼』を抜き放った打綿狸が、
超常ごとアヤセガワを討つ。
緋輝の『緋色の神殺刃』が蹂躙し、るこるの『祭器』たちが追撃する。
猟兵たちの息の合った連携攻撃により、アヤセガワは任された役目を果たすことなく撃破された。
猟兵たちが勢いで圧倒し、数で勝っていたことが勝敗を分けたのだろう。
「何とか勝てましたねぇ」
「この人は時間をかけるとドンドン強くなるタイプっすね。速攻で決着をつけないと危なかったっす」
「……さあ、行こうぜ。『諸悪の根源』の加護とやらは弱っただろうしよ」
一息つくるこると打綿狸が油断せずに周囲を警戒し、残心する。
緋輝も、灼かれて塵となって消えていくアヤセガワに一瞥をくれ、何の言葉をかけることもなく踵を返す。
今回の事件は、ここからだ。
猟兵たちは山本親分を救出するべくカクリヨファンタズムへ転移するゲートに向かうのだった。
「念のために幻朧桜の根本も、ぽんぽんぽんっと」
そして。フリルが幻朧桜の下から漏れ出る『諸悪の根源』をはたき落とす。
その行いはきっと、この先の戦いを優勢に傾けることになるだろう……。
大成功
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第2章 集団戦
『サクラモフウサギ』
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POW : うさぎ(かわいい)
非戦闘行為に没頭している間、自身の【ことをかわいいと思った人は、良心 】が【咎めてしまうため戦いたくなくなる。よって】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
SPD : ムシャムシャ……
レベル×5本の【その辺の草を食べることで、うさぎ 】属性の【モフりたくなるオーラ】を放つ。
WIZ : もふもふ
【自身の姿 】を披露した指定の全対象に【このうさぎをモフりたいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
👑11
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●断章:幻朧桜の丘に間に合って。
猟兵たちはカクリヨファンタズムに転移して、東方親分『山本五郎左衛門』を救援するべく幻朧桜の丘に急行する。
そこで待っていたのは、視界を埋め尽くす大量のウサギ……。
否。ウサギの影朧『サクラモフウサギ』であった。
「にゃああああ!?」
「「「 もふもふ もふもふ もふもふ」」」
無数のオブリビオンが山本親分に殺到し、圧死させんと群がっているところであった。
白いモフモフの中に、黒い毛並みがちらりと見える。
『号令懐刀』を抜き放ち、『サクラモフウサギ』の群の中で懸命に戦っている山本親分だ。
「りょ、猟兵さん! 助けに来てくれたのニャ!?
助かるにゃ、助けて欲しいニャア!!」
『サクラモフウサギ』たちは『諸悪の根源』により強化されていたが、猟兵たちがその力の源である幻朧桜を特定しており、加護の供給を弱めている。
そのため、戦闘力も知性も並のウサギ程度に戻っており、山本親分は耐えることができていた。
猟兵が駆け付けたことに気づき、山本親分は希望を得たとばかりに意気を上げている。
「儂も内から暴れるにゃあ! ええい! 儂の方がモフモフしているニャッ!」
「「「もふもふもふもふ」」」
猟兵たちはこれより、『サクラモフウサギ』のかわいさとモフさに堪えて、オブリビオンの大軍を掃討するのであった。
※プレイングボーナスは、『山本親分と共闘して蹴散すこと』です。
東方親分『山本五郎左衛門』はカリスマ特化型の「威風形態」で猟兵たちと共闘してくれます。
挟み撃ちという形態でも共闘になりますが、猟兵から指示を飛ばして行動してもらうことも可能です。
皆様、よろしくお願いいたします。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・『祭器』召喚継続
・アド/絡◎
■行動
え、ええ、助けに来たわけですが、これはまた。
な、何とも可愛いですねぇ。
確かに手出しし辛いですが、こうしてみましょうかぁ。
【玄傀】を発動し多数の『使徒人形』を召喚、『影朧の排除』を命じますねぇ。
私自身は兎も角『人形』達であれば、「可愛いと感じる感情」が有りませんので、兎さん達相手でも容赦なく排除出来ますぅ。
一部の『人形』を『FIS』の転移で親分さんの傍らに送り、護衛と支援を担当させましょう。
私自身は、間違えて『停止命令』等を出さない様アイマスクで視界を塞ぎ、『FPS』の探査を『生体感知』と『オブリビオン感知』に絞って伝わる状態にし、指揮に専念しますねぇ。
多々良・緋輝
アンタが東方親分って奴か
デモノイドヒューマン、多々良・緋輝
あ、因みに元男性だぜ
UCで光り輝き燃えるレアメタルの不死鳥の肉体に変身し、背中に東方親分を乗せて飛翔
不死鳥だから飛べる…因みに炎は再生の力で親分の傷と疲労を癒していく
因みに可愛いと思っていると攻撃が出来なくなるって言うなら…デモノイドの肉体を使い脳を弄って一時的に可愛いと思えなくなっておく
あ、ちゃんと元通りには出来るから安心してくれ、不死鳥の炎は再生…脳障害にすら作用する
東方親分の威風形態を用い、自己精密ロボトミーの反動を消して敵のUCを無効化
そのまま隙をついて攻撃用の炎を翼だけ展開し、滑空攻撃で殲滅していく
家綿・衣更着
アドリブ歓迎
狸状態で登場
「東方妖怪のどろんバケラーつまりどろん衆!打綿狸の衣更着、参上っす!モフモフならおいらも負けてないっすよ!微笑ましい光景だけどピンチなんすよね?」
草を食べさせぬよう化術と幻影使いで草をただの地面に迷彩し草のない場所におびき寄せ
人型に戻り、圧殺されないよう見切りながら兎を一匹ずつ剥がして救助活動し、見えた山本親分に(必要なら他の仲間にも)UC『あやかしメダル「打綿狸の衣更着」』を張り付け綿のモフモフ感のある結界術で保護
兎は手裏剣投擲で倒す
「可哀想だけど、骸の海に返さないと世界が危ないっす」
…ここの桜の下にも諸悪の根源はいるっすかね?念のため死体は桜から離れた場所に処理っす
フリル・インレアン
ふわぁ、うさぎさんです、かわいいですね。
ふえ?アヒルさん、どうしたんですか?
ふええ!?私は戦力外だからパシリでもしてろって、どういうことですか?
私はうさぎさんに篭絡されて、うさぎさんを攻撃できないって、そんなこと……。
ふええ!本当です、アヒルさんしか武器が無いのもありますが、うさぎさんの顔を見ていたら攻撃なんてできません。
ふえ?そんな役立たずの私はお電話の魔法で山本親分さんに電話でもしてろって、それでどうするんですか?
こういう時は内と外で同時に攻撃を仕掛けるのがいいから、どちらにも聞こえるように合図をするんですか。
ということですので、親分さん、アヒルさん、せーのでお願いします。
●モフモフの群れに挑む!
幻朧桜の丘を埋め尽くす『サクラモフウサギ』の群れの前に、猟兵たちは集結した。
夢ヶ枝・るこるとフリル・インレアンが、可愛らしいモフモフなウサギたちを前に感嘆の息を漏らす。
「え、ええ、助けに来たわけですが、これはまた。な、何とも可愛いですねぇ」
「ふわぁ、うさぎさんです、かわいいですね」
「ぐわっ」「ふえ? アヒルさん、どうしたんですか?」
無邪気に笑うフリルの腕の中で、『アヒルさん』が首を左右に振って声を上げる。
それはフリルに対する、残酷な事実の突きつけ。
戦力外通告だった。
「ぐわっ」
「ふええ!? 私は戦力外だからパシリでもしてろって、どういうことですか?」
「ぐわっぐわっ~」
「私はうさぎさんに篭絡されて、うさぎさんを攻撃できないって、そんなこと……」
「ぐわっ……」
「確かに手出しし辛いですが、あれを使ってみましょうかぁ」
残念だけどうさぎさんをかわいいと思ってしまったフリルではどうしようもないよ、とつぶらな眼差しを向ける『アヒルさん』。
そんなフリルたちをよそに、『フローティング・エアロフォイル・システム』を始めとする各種『祭器』の召喚を継続しているるこるは、『サクラモフウサギ』への対処法を思案する。
攻撃で無ければ、通るのだと。
「おいおい、とんでもねぇ数だな……ま、やれる手はある。可愛さへの対抗手段もな」
「モフモフならおいらも負けてないっすよ! 微笑ましい光景だけどピンチなんすよね?」
そして、多々良・緋輝と家綿・衣更着も意気込みを見せる。
『サクラモフウサギ』への対抗心を燃やす衣更着と、東方親分『山本五郎左衛門』救出に意欲を見せる緋輝。
二人は互いの有する得意技を活かして、この状況を打破する方法を用意してきていた。
「ああ。なに、オレたち四人がかりなら何とでもなるさ」
「はいっす! おいらたちの連携を見せるっす!」
「ええ。それでは参りましょうかぁ」
「は、はい。私もちゃんと役に立ちますからね」「ぐわっ……」
緋輝の強気な言葉に衣更着とるこるは頷き、フリルも『アヒルさん』を抱えて何度も首を縦に振る。
猟兵たちによる、山本親分救出作戦が開始される。
●戦いは攻撃のみに非ず。
「ふええ!?
本当です、アヒルさんしか武器が無いのもありますが、うさぎさんの顔を見ていたら攻撃なんてできません」
「ぐわっ……」
悲報。
フリルは『サクラモフウサギ』かわいさという魔の手にかかってしまった。
山本親分を抹殺しようとする『サクラモフウサギ』たちだが、その手段は攻撃ではなくモフモフが群がることによる圧迫・窒息・過熱という非戦闘行為によるものだ。
ユーベルコード《うさぎ(かわいい)》の影響により、生命維持も不要になる『サクラモフウサギ』たちが非戦闘行為に没頭している間、『サクラモフウサギ』のことをかわいいと思った人は良心が咎めてしまうため戦いたくなくなる。
よって、『アヒルさん』の言っていた通り、フリルは攻撃が遮断されていた。
『アヒルさん』が可哀そうなものを見る眼付きでフリルを見上げ、打開策を提案する。
「ぐわっぐわっ」
「ふえ? そんな役立たずの私はお電話の魔法で山本親分さんに電話でもしてろって、それでどうするんですか?」
かわいいモフモフがうごうごしている光景を眺めながら、フリルは素直に《誰とでもお話しできるお電話の魔法(ハンドフォン)》を発動する。
自身から発信するサイキックエナジーの電波が命中した対象を>爆破<し、更に互いを通話状態で繋ぐユーベルコードである。
フリルはおもむろに、『サクラモフウサギ』の山の中に埋もれそうになっている山本親分を爆破する。
「にゃあああ!? なな、なんニャ、今の爆発は!?」
「も、もしもし、フリルです」
「にゃにゃ!? てれぱしー、だニャ? 救援ありがとうにゃ!
ところで今の爆発は」
「ぐわっ」
『アヒルさん』がこれからの作戦を伝えるべきだと、カンニングペーパーならぬアドバイスをフリルへと差し込む。
フリルのユーベルコードの効果をゆっくりと説明をしている時間はないのだ。
「えっと、今は説明している時間はありません? ですね、アヒルさん。
それで、こういう時は内と外で同時に攻撃を仕掛けるのがいいから、どちらにも聞こえるように通話を繋いでおきますね」
「わ、わかったニャ」
「ということですので、親分さん、皆さん。合図を出しますので、せーのでお願いします」
そしてフリルは、るこる、緋輝、衣更着にも小規模の爆破を行い、グループ通話を結ぶのであった。
●数のもふもふ VS 人外戦術!
突然降りかかった細やかな爆発を払い、状況を仲間たちと共有しながら猟兵たちは各々の手段で『サクラモフウサギ』に対処していく。
手始めに、るこるは《豊乳女神の加護・玄傀(チチガミサマノカゴ・クロキタマノヒトガタ)》を発動する。
「大いなる豊饒の女神の使徒の名に於いて、女神の加護を得し黒き星の人形達よ、私の下へ」
156体の、漆黒の結晶で出来た人間大の『使徒人形』を召喚するユーベルコード。
『使徒人形』は召喚者を強化するだけでなく、重力操作や武具形成を駆使する重力属性の戦闘能力を持っている。
十分な時間があれば城や街を築く、簡易的なAIに相当する会話機能を有するヒトガタたちだ。
るこるは『使徒人形』に命令を下す。
「影朧の排除を」
性質的にはゴーレムに近い『使徒人形』たちには、可愛いと感じる感情が無い。
それ故に、かわいいウサギ相手でも容赦なく排除できるのだ。
外周部から『サクラモフウサギ』を攻撃させながら、るこるは16本の浮遊する水晶柱型祭器『フローティング・インタディクト・システム』を稼働させ、瞬間移動機能により『使徒人形』の一部を山本親分の傍らへと転送する。
『サクラモフウサギ』に集られていた山本親分は物理的な護衛と支援役を得ることができ、一息吐くことができたようだ。
「はぁ、はぁ、ふぅ、助かるにゃあ……!」
「さて、私は指揮に専念しますねぇ」
るこるは可愛さのあまり間違えて『停止命令』等を出さない様、アイマスクで視界を塞ぎ、耳栓で聴覚を封じる。
そして、各種探知能力を有し情報の概念化や複製・記録を行える百五十六個の浮遊する涙滴型の水晶型祭器『フローティング・プローブ・システム』を展開する。
視覚で姿を、触覚で柔らかさを、鳴き声で愛嬌を振りまく『サクラモフウサギ』をかわいいと思ってしまわないよう、五感を遮断してシステム的に『生体感知』と『オブリビオン感知』に絞って情報を把握していく。
『フローティング・プローブ・システム』で得た情報を《誰とでもお話しできるお電話の魔法》を通じて味方に伝達することもでき、るこるはフリルの隣で全体図を掌握する。
「親分さんの位置情報を送りますぅ。よろしくお願いしますねぇ」
「了解っす!」
「ああ、任せときな!」
●突撃、親分救出部隊!
「ムシャムシャ……」
「今回の化かし方は、こんな具合っすね」
『サクラモフウサギ』はその辺の草を食べることで、うさぎ属性のモフりたくなるオーラを放つ。
そのオーラを浴びてモフってしまえば、猟兵たちはたちまち《うさぎ(かわいい)》と思ってしまうことだろう。
それを防ぐため、衣更着は『サクラモフウサギ』たちに草を食べさせぬよう、化術と幻影を駆使して草をただの地面に迷彩していた。
「もふ」「もっもっ……」「もふ?」
「よし! うまく引き付けられたっす」
そして、丘の中でも露出した土しかない場所に幻の草を見せて、自身が圧殺されないよう挙動を見切りながら『サクラモフウサギ』たちを誘き寄せる。
草を食んでいるはずなのに何もない、そんな不思議に可愛く首をかしげる『サクラモフウサギ』を認識しないよう目を逸らし、山本親分から離れた場所にある程度の数のウサギが集まったところで、衣更着は人型に戻って緋輝のもとへ駆け寄る。
「近くの数は減らしたっす! 今なら離陸、いけるっすよ!」
「オーケー、行くぜ。
鋼は此処に。不死鳥は希少なる金属を肉体として再臨する。
翼を広げ、輝き燃え上がる己の肉体を振るえ。
この不死の炎と鋼は壊れない!
《デモノイド・シャイン・メタル・フェニックス》!」
緋輝は、光輝く希少金属の肉体を持つ不死身のフェニックスに変身する。
《DSMF・不死鳥は鋼の如く光り輝く(デモノイド・シャイン・メタル・フェニックス)》。
不死鳥の肉体しか武器として扱えなくなるが、射程外からのダメージは全て100分の1にすることができる防御性能の高いユーベルコードだ。
緋輝はその背に衣更着を乗せると、輝き燃える翼を広げて助走すると勢いよく飛び立ち、二人は山本親分の救助活動へ向かう。
「アンタが東方親分って奴か」「援けに来たっすよ!」
「ニャア……! 皆さん、感謝しますニャ!」
地上はモフモフに埋め尽くされているが、ウサギと同じ程度の戦闘力しか持たない『サクラモフウサギ』は空を跳ぶことはなかった。
僅か数秒の飛翔で、緋輝が山本親分のもとへ颯爽と舞い降りる。
山本親分の周囲はるこるの『使徒人形』が守備陣形を構築しており、疲弊は見れるもののダメージはなかった。
「東方妖怪のどろんバケラーつまりどろん衆! 打綿狸の衣更着、参上っす!」
「オレはデモノイドヒューマン、多々良・緋輝。あ、因みに元男性だぜ」
「そうかにゃ。……猟兵さんには良くあることだニャア」
緋輝は背中に山本親分を乗せて、再び飛翔する。
空高くで山本親分を保護しつつ、再生の力を宿す炎で親分の傷と疲労を癒していく。
そして、衣更着が山本親分に《あやかしメダル「打綿狸の衣更着」(アヤカシメダル・ウチワタダヌキノキサラギ)》を張り付ける。
「守るぜトモダチ! おいらのあやかしメダル、ペタリっす!」
「おお、あやかしメダル! うれしいにゃあ」
妖怪『打綿狸の衣更着』が描かれたメダルを対象に貼り付けている間、対象に悪意を持つものを退け対象を守る結界を張る効果を与え続けるユーベルコード。
当然、緋輝やるこる、フリルたちにもメダルは託しており、綿の柔らかな結界が彼女たちを守護している。
打綿狸とは、綿に変身し拾われそうになると逃げる妖怪だ。
綿に包まれたモフモフの感覚を受ける結界術で保護することで、仲間たちを『サクラモフウサギ』のもふもふから守るのだ。
「救助対象の確保は完了したっす!」
「わかりましたぁ。それではあとは、兎さんたちの排除ですねぇ」
「ああ。掃討だ!」
●モフモフ掃討戦。そして……。
空を飛ぶ緋輝の背にいる山本親分をモフろうと足掻く『サクラモフウサギ』を、猟兵たちは着実に撃破していく。
衣更着は手裏剣を投擲し、『サクラモフウサギ』を一匹ずつ的確に倒していく。
るこるは送り出した『使徒人形』たちに全力攻勢を指示し、容赦なく『サクラモフウサギ』をなぎ払っていく。
緋輝は攻撃用の炎を翼の部分にだけ展開し、滑空攻撃で殲滅していく。
「ふええ、すごいです。衣更着さんも緋輝さんもうさぎさんを攻撃できてます」
「可哀想だけど、骸の海に返さないと世界が危ないっす」
「因みに可愛いと思っていると攻撃が出来なくなるって言うから、デモノイドの肉体を使い脳を弄って一時的に可愛いと思えなくなっているぜ」
「ニャ!? そ、それは大丈夫なのかニャ?」
「ああ、ちゃんと元通りには出来るから安心してくれ。不死鳥の炎は再生……脳障害にすら作用する」
「それなら安心、にゃあ……? ……何はともあれ、儂も働くニャ! きませい!」
そして『サクラモフウサギ』の包囲を少しずつ剥がして、着実に数を減らしていく。
頃合いを見て山本親分も自らの威風形態を用い、一時的に妖怪軍団を召喚してはウサギの大軍を蹴散らして行く。
数分か、数十分か。
時間をかけることで、幻朧桜の丘に集まっていたオブリビオン、『サクラモフウサギ』の殲滅が完了した。
「これで最後ですぅ」「ふええ、お疲れ様です」
「……ここの桜の下にも諸悪の根源はいるっすかね? 念のため死体は桜から離れた場所に処理っす」
「なむなむニャ。さて、これで一安心……にゃ?」
―――と、思ったのもつかの間。
「ぶーっ! ぶーっ!」
「なんだ、ありゃあ……!」
突然、何処からともなく指揮官オブリビオンが出現する。
『諸悪の根源』の加護を失い弱体化しながらも、山本親分を討つために自ら姿を晒すことにした、『サクラモフウサギ』を率いていたボス。
―――『サクラモフウサギ巨大種』の登場であった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『サクラモフウサギ巨大種』
|
POW : ぶーっ!ぶーっ!
【鳴き声と共に激おこうさぎモード】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD : もふもふもふもふ
対象の攻撃を軽減する【超もふもふ毛皮】に変身しつつ、【踏み潰し】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : サクラモフウサギの大群
自身の【寿命】を代償に、【サクラモフウサギの群れ】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【体当たりや齧りつき、キックなど】で戦う。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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●断章:規格外! ビッグラビット、登場。
「 ぶーっ! ぶーっ!」
「で、でっっっっっっかっ……!? デカすぎるニャ!?」
『サクラモフウサギ巨大種』。
『サクラモフウサギ』と同じく通常のうさぎと同程度の知性しかないものの、非常に巨大な危険な影朧だ。
大きさは高層ビルくらいのものからエベレストよりでかいものまで幅広く存在するが、今回はせいぜい全高1000m程度であろう。
東京タワーの三倍ほどの大きさのうさぎは、子分の『サクラモフウサギ』を倒されたことでご立腹なのか、激おこうさぎモードに変化しつつあった。
「む、むむむ……! こんな大きいウサギに暴れられたら、幽世が大変なことになるニャ!
皆さん! 儂も協力しますから、どうかここであいつを倒してくださいにゃ!」
とはいえ、そのまま倒れ込まれるだけで『山本五郎左衛門』どころか、幻朧桜の丘すらも平らに均されそうな巨体。
倒し方も考慮しなければ、大惨事は免れないだろう。
その圧倒的体積は、半端な攻撃はモフモフの毛皮で防ぎ、多少の毒素や汚染は痛痒に感じない。
大きいという、純粋にして強力な存在が、猟兵たちの前に立っている。
『サクラモフウサギ』とは別格の強さを発揮する『サクラモフウサギ巨大種』を倒さなければ、山本親分の命は危うい。
今、夏休み最後の戦いが……モフモフとの決戦が、始まる。
※プレイングボーナスは、『山本親分と共闘して倒すこと』です。
東方親分『山本五郎左衛門』はカリスマ特化型の「威風形態」で猟兵たちと共闘してくれます。
猟兵から指示を飛ばして行動してもらうことも可能です。
皆様、よろしくお願いいたします。
多々良・緋輝
うわ、デケェ……こんなのと戦っているのか六番目の猟兵って……
ま、今はオレもそうなんだけどな
脳障害を完治させた後、背中に東方親分を乗せる形で竜種……帝竜へと変化
帝竜の姿と能力の全身を覆う金属の肉体からデモノイドのレアメタルの能力に応じた吐息のUCを放つ
東方親分!威風形態とやらで追加攻撃かオレを強化してくれ!
そう言って東方親分に指示を仰いだ後、追加行動
合計20回までの追加行動によるブレスUC……対巨体用兵装の合金のブレスを用い、巨体に対して特攻を乗せて全身を焼き尽くしていく!
然しデカいは強い、か
シンプルなモノ程強力って事かね
夢ヶ枝・るこる
■方針
・『祭器』召喚継続
・アド/絡◎
■行動
巨大でも可愛くは有りますが。
大量の肉と毛皮が取れませんかねぇ?
『FAS』により飛行、『FPS』で兎さんの動きを探知し攻撃に備えまして。
『激おこモード』は強力ですが、速く動くものを自然と狙うなら、山本さんに『悪霊』の召喚を願い、高速で逃げ回ることで囮になって頂きましょう。
その間に『FIS』の転移で後背を取り【噇醒】を発動、『捕食弾頭』を撃ちこみますねぇ。
毛皮を多少でも傷つけられれば、装備品共々兎さんと同等の身長と、兎さんの弱点に応じた『祭器』が得られますので、そのまま『FGS』に重力波で動きを抑え、『FBS』による[切断]と弱点用『祭器』で叩きましょう。
家綿・衣更着
いい感じにアドリブ連携お願いします
「でっかいのはいいことっすけど処理には困るっすね。親分さん配下呼んで倒す場所の準備や指示して欲しいっす」
どろんと妖怪煙を煙幕とし自分や仲間を迷彩
化術と催眠術と幻影使いの併用で自分や仲間の残像を作り、戯れさせることで仲間の援護&時間稼ぎ
「打綿狸の真骨頂!綿に触れようとすると逃げ、空に昇るっすよ!」(モチーフ元がそういう化け狸)
親分の指示に合わせて巨大ニンジンっぽい綿に化けておびき寄せ
逸話通り敵の動きを見切って空中浮遊で逃げる
「巨大怪獣にはキャバリアで対抗っす!」
上空で収納鏡からキャバリア召喚、転倒時の被害を避けるため幻影で地面に伏せさせ脳天にUC『流星突撃槍』
フリル・インレアン
ふええ、お、大きいです。
こんなに大きなうさぎさんに勝てる訳がありません。
ふえ、大きいからって強いとは限らないことを見せてやるって、アヒルさん何をするんですか?
巨大なうさぎも無数のアヒルさんの前には手も足も出ないって、
ふわぁ、すごいです、アヒルさん。
素早く動いているアヒルさんが多すぎてうさぎさんが目を回してます。
……あれ、このユーベルコードはアヒル真拳ですよね。
って、ことは何で私も攻撃対象なんですか!!
●常識外の怪物退治。
「ぶーっ! ぶーっ!」
影朧『サクラモフウサギ巨大種』は、幻朧桜の丘一帯に響き渡る鳴き声と共に激おこうさぎモードに変化した。
理性を失い、速く動く物を無差別に攻撃する代償に超攻撃力と超耐久力を得る。
ただのウサギであればその行動も可愛らしいものだが、『サクラモフウサギ巨大種』はとてもデカい。
その質量が超強化され、無差別に暴れ回ればそれだけで大惨事になるだろう。
幻朧桜の丘も、東方親分『山本五郎左衛門』も……カクリヨファンタズムにすらも、危険が迫っていた。
「巨大でも可愛くは有りますが。大量の肉と毛皮が取れませんかねぇ?」
夢ヶ枝・るこるは『フローティング・エアロフォイル・システム』により飛行して『サクラモフウサギ巨大種』の頭上に位置を取り、『フローティング・プローブ・システム』を展開して『サクラモフウサギ巨大種』の動きを探知している。
『サクラモフウサギ巨大種』の挙動を事前に把握し、その
起こりを見過ごさないようにしている。
猟兵たちの攻勢が先手を取れるようにと、警戒を怠らない。
「うわ、デケェ……。
こんなのと戦っているのか六番目の猟兵って……ま、今はオレもそうなんだけどな」
「ふええ、お、大きいです。こんなに大きなうさぎさんに勝てる訳がありません」
「でっかいのはいいことっすけど処理には困るっすね」
そして、他の猟兵たちも皆、空中に移動していた。
フェニックスの姿で空を飛び回り、自発的に弄っていた脳を不死鳥の炎で元に戻して完治させた多々良・緋輝は、背中に家綿・衣更着と山本親分を乗せたまま、地上にいたフリル・インレアンも回収して滞空していた。
地上に居ては、『サクラモフウサギ巨大種』に潰されたり、足踏みで起こる振動で揺らされる可能性が予期されるためだ。
「親分さん、配下を呼んで倒す場所の準備や指示して欲しいっす」
「わかったにゃ! さあ、どろん衆! きませい!」
衣更着は山本親分と作戦の相談を進め、『サクラモフウサギ巨大種』を倒す位置の確保を検討する。
十分な時間があれば城や街を築くことのできる
化術属性の東方妖怪のどろんバケラーたちを召喚して、手近な空きスペースを模索して都合の良い墓穴になるような場所を整えていく。
そしてフリルはあまりの敵の巨大さに恐れ慄く様子を見せていたが……その腕の中にいるアヒルちゃん型のガジェット『アヒルさん』が声を上げる。
「ぐわっ!」
「ふえ、大きいからって強いとは限らないことを見せてやるって、アヒルさん何をするんですか?」
フリルの手元から飛び出した『アヒルさん』が、そびえ立つ『サクラモフウサギ巨大種』に向けて落下していく。
『アヒルさん』はパタパタと空中で羽ばたき減速しながら、フリルの意図しない形で勝手にユーベルコードを行使する。
「ぐわっ!」
「えっと、156秒……二分半待ってて、ですか」
「……長いような、短いような……」
「ええと、それでは、はじめましょうかぁ」
何らかのユーベルコードを発動した『アヒルさん』が、もふんと『サクラモフウサギ巨大種』の毛皮に消えて行った。
数秒の沈黙ののち、『アヒルさん』の無事を探知しているるこるが気を取り直して作戦の開始を告げる。
「『激おこモード』は強力ですが、速く動くものを自然と狙うなら、山本さんに『悪霊』の召喚を願いましょう。
『悪霊』の皆さんに、高速で逃げ回ることで囮になって頂きましょう」
「承ったニャ! 悪霊衆きませい!」
山本親分が『
号令懐刀』を抜き放ち、東方妖怪の悪霊軍団を放つ。
実体のないゴーストである悪霊であれば、物理的なダメージを避けて『サクラモフウサギ巨大種』の注意を引きつけられるというるこるの判断は功を奏した。
『サクラモフウサギ巨大種』は目の前をウロチョロと飛び回る悪霊軍団を叩こうと、無差別に前脚を振り回す。
「ぶーっ……? ぶーっ、ぶーっ!」
「うわっ、風圧が……! 狙われてなくても、こんなに威力があるのかよ!」
「ふええ、吹き飛んでしまいそうです」
「打綿狸の真骨頂! 綿に触れようとすると逃げ、空に昇るっすよ!」
余波で吹き荒れる衝撃波に猟兵たちが驚く中、衣更着はどろんと『妖怪煙』を煙幕とし自分や仲間を迷彩する。
モチーフ元がそういう化け狸であるがゆえに、衣更着は化術と催眠術と幻影使いが十八番である。
持ち得る技術を併用させて不死鳥姿の緋輝の残像を作り、悪霊軍団と共に戯れさせることで『サクラモフウサギ巨大種』の意識から逃れる時間稼ぎだ。
「これでしばらくは時間を稼げるっす!」
「でかした衣更着! それじゃあ、オレももう一つ……変化を見せるかね!」
煙幕の中に潜んだ緋輝が素早く飛翔して、『サクラモフウサギ巨大種』の頭上を越えて後ろに回り込む。
そしてすかさず、ユーベルコードを使用する。
光輝く希少金属の肉体を持つ不死身のフェニックスは、異なる新たな姿へと変貌していく。
「鋼は此処に。
寄生者から希少金属に、希少金属から竜へと至った魔が至るは生命の極致。
その再現と反証を以て金属の吐息を司ろう。
《DRDB・希少金属の吐息を司る金属竜》!」
《DRDB・希少金属の吐息を司る金属竜(デモノイド・レアメタル・ドラゴン・ブレス)》。
それは緋輝の姿を竜種へと……帝竜たる【真の姿】へと変化させるユーベルコード。
緋輝はその背に仲間たちを乗せたまま、デモノイドのレアメタルの能力に応じた力を宿す金属竜と化していた。
帝竜形態の緋輝は今、合計20回までの追加行動が可能となったのだ。
「東方親分! 威風形態とやらでオレを強化してくれ!」
「承ったニャ! 正義の味方衆きませい!
【絶対に全員を守る】誓いで彼……彼女……緋輝さんを強化するニャ!」
空中に召喚された正義の味方たちが、弱きを助け悪を挫く正義の誓いで緋輝を強化する。
全身を覆う金属の肉体から、対巨体用兵装の合金の
吐息を噴出する。
眼前の悪霊や残像に気を取られていた『サクラモフウサギ巨大種』は、後頭部から背中にかけて激しい正義の炎を浴びせかけられた。
「ぶーっ!?」
「この合金は、詳しい理屈はわからんが巨体に対して特攻だ! 全身を焼き尽くしていくぜ!」
「やったれニャ! その意気ニャ!」
緋輝の放つ金属の猛火に焼かれる『サクラモフウサギ巨大種』。
もふもふの毛皮が良く燃えるが、激おこうさぎモードの超耐久力により致命傷を免れており、怒り心頭の状態で背後を振り向く。
そこにいる、ブレスを吐き続ける緋輝を睨めつけて前脚を振り上げたその瞬間。
「大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その輪環の理をここに」
るこるが『フローティング・インタディクト・システム』の瞬間移動機能で転移で、背を向けた『サクラモフウサギ巨大種』の後背を取り、素早くユーベルコードを発動する。
《豊乳女神の加護・噇醒(チチガミサマノカゴ・ムサボリシメザメ)》。
攻撃が命中した時に対象を捕食する『祭器式捕食弾頭』を放つユーベルコード。
るこるは緋輝の希少金属の吐息が焼き払った、『サクラモフウサギ巨大種』の後頭部付近の皮膚に『捕食弾頭』を撃ち込む。
とても強いもふもふの毛皮が焼かれ、耐久力の高められた皮膚も熱せられて柔らかくなっていたことで『サクラモフウサギ巨大種』に手傷を刻むことに成功する。
その血肉、あるいは毛皮の一端を多少でも傷つけられれば、るこるの目的は適う。
「参りますよぉ」
《噇醒》の効果が起動する。
『捕食弾頭』が命中した敵から剥ぎ取った部位を喰らう事で、るこるに向けて加護が付与される。
捕食した対象の弱点に対応した形状の『祭器』を持つ、対象と同等の体格の巨大娘に変身するのだ。
装備品である『祭器』共々、『サクラモフウサギ巨大種』と同等の身長に巨大化するるこるは、『フローティング・グラビトン・システム』の重力波で『サクラモフウサギ巨大種』の動きを抑え込み、逃げられないよう『フローティング・ブレイド・システム』の戦輪を『サクラモフウサギ巨大種』の四肢に嵌めこみ手足を封じ込める。
四肢に嵌めることで簡易飛行具としても使用可能な『フローティング・ブレイド・システム』が、『サクラモフウサギ巨大種』を捕える拘束具として応用されていた。
「ぶっ!?」
「これで質量は互角ですねぇ。ああ、幻朧桜を踏み潰さないよう、浮遊させるのでご安心ください」
「おお、ナイスだにゃー!」
帝竜と巨大な兎、そして巨大な美女が衝突する戦場。
その様相は、怪獣大決戦。
『サクラモフウサギ巨大種』も、突然の浮遊感に虚を突かれ、自身に匹敵する
存在の出現に驚き、激おこうさぎモードの攻撃の手が止まってしまう。
「それではこちら。兎さんの弱点に応じた『祭器』が得られますので、叩きますねぇ」
「ぶーっ!? ぶっ、ぶっー!!」
その隙をるこるは見過ごさない。
るこるは《噇醒》にて形成した、鮫の形をしたサーフボード状の『祭器』を構える。
古事記曰く、鮫と兎は浅からぬ縁がある。
『サクラモフウサギ巨大種』の弱点として付与された概念を用い、その毛皮を剥ぎ取るに適したサメ肌の『祭器』で叩いていく。
前面からは火炙り、後方から削り取る斬撃。
激しい攻撃から逃れようと、巨躯を捻って暴れようとする『サクラモフウサギ巨大種』。
拘束する『祭器』との間で凄まじい力の引っ張り合いを繰り広げる中、抑えきれない耳の殴打や尻尾の風圧が猟兵たちに襲い来る。
「危ねぇ! 然し、デカいは強い、か。シンプルなモノ程強力って事かね。……ん?」
「おや、アヒルさんの様子が」
「ぐわっ」
「巨大なうさぎも無数のアヒルさんの前には手も足も出ないって、ふええ」
「「「ぐわっぐわっぐわっ」」」
そんな最中、時間が経ったことで『サクラモフウサギ巨大種』の体内から突如として溢れ出すものがあった。
相手を突いて拷問・お仕置きする『アヒルさん(拷問モード)』の群体であった。
《アヒル真拳『アヒル座流星群』(バードストライク)》。
敵1体を指定してから二、三分後に効果を発揮するそのユーベルコードは、156体の『アヒルさん』が出現して指定した敵(とフリル)だけを高速の突撃と嘴の突きによって攻撃するのだ。
『アヒルさん』オリジナルはブレスや重力波の被害を受けないよう、『サクラモフウサギ巨大種』の大きな口の隙間から入り込み、体内で大量召喚してめったやたらに攻撃しているのだ。
流石の『サクラモフウサギ巨大種』も、内部を啄まれては辛抱できないようで、苦しそうに咳き込む。
「ぶーっ!? けふっ、けふっ!」
「ふわぁ、すごいです、アヒルさん。
……あれ、このユーベルコードはアヒル真拳ですよね?」
「「「ぐわっ!」」」
「って、ことは……」「えっ、こっちに戻って来るっすよ?」
そう。
《アヒル真拳『アヒル座流星群』》は……フリル自身も巻き添えで攻撃するのだ。
咳き込んだ『サクラモフウサギ巨大種』の口から飛び出した数体の『アヒルさん』が、緋輝の背にいるフリルに殺到して高速の嘴突きを繰り出そうとする。
「「「ぐわっ!」」」
「何で私も攻撃対象なんですか!!」
「あらら、いったん隠すっす!」
衣更着が打綿狸の逸話通り、フリルを綿の塊に偽装して空中へと浮遊させて避難させる。
『アヒルさん』の索敵から逃れたフリルが悲鳴を上げる中、『サクラモフウサギ巨大種』との戦いは佳境に突入する。
「ぶ、ぶぅ、ぶぅぅぅ……!」
「くっ、もう一押しと思ったが……!」
「これは、とてもすごくもふもふしてきますねぇ」
『サクラモフウサギ巨大種』が、超もふもふ毛皮に変身する。
《もふもふもふもふ》としたその姿は敵の攻撃を軽減し、踏み潰しで攻撃するだけのシンプルな形態だ。
変身中は毎秒寿命を削るリスクがあるが、その分威力は絶大だ。
超もふもふ毛皮が合金のブレスや鮫肌の『祭器』がその身に届かぬように保護し、空中に浮かされた後ろ脚を激しく動かす。
『フローティング・ブレイド・システム』が無ければ幻朧桜の丘は踏み砕かれていただろう。
敵の攻勢は凄まじさを増している。だが、猟兵側も決着の準備が整った。
「猟兵さん! どろん衆がこのウサギを収める場所を用意できたニャ!」
「了解っす! 緋輝さん、るこるさん! 誘導するっす!」
「わかった!」「かしこまりましたぁ」
山本親分の指示に合わせて、衣更着が巨大なニンジンっぽい綿に化けて緋輝の背から飛び出す。
そして『サクラモフウサギ巨大種』の目の前に身を躍らせて披露し、美味しそうに見える催眠術を施した。
激おこうさぎモードから超もふもふ毛皮に切り替えたことで理性を取り戻した『サクラモフウサギ巨大種』は、痛みに苦しみながらも目の前の美味しそうなニンジンに惹かれて誘き寄せられる。
摂食することで栄養補給をしたいと、動物的な本能が働いているのかもしれない。
食いつこうとする動きに合わせて四肢を拘束した『祭器』を移動させて、山本親分たちが作ったウサギの墓穴の上に到達する。
召喚された『アヒルさん』たちがフリルを探して『サクラモフウサギ巨大種』の体内から退去したことをるこるが探知して、後はトドメを繰り出すだけとなった。
「アヒルさんは全員離れましたぁ。あとは頼みますねぇ」
「はい! あとは、巨大怪獣にはキャバリアで対抗っす!」
「やってやれ、衣更着!」
衣更着は変化を解除すると同時に、不思議な無人の屋敷に通じる《収納鏡》から一騎のキャバリアを召喚する。
空中に出現するのは、空力の為トンビのように尖った鼻先を持つ白いキャバリア『テングリーフ・ホワイト』だ。
木の葉天狗が構えるのは、操者の心折れぬ限り槍は折れないというRXキャバリアグレイブ『ハイノーズランス』。
傲慢の象徴たる天狗鼻の概念から形成した巨大突撃槍が、『サクラモフウサギ巨大種』の脳天にユーベルコードを叩き込むべく加速する。
「流星の化身『天狗』の力を借りて、流星のごときランスチャージっす!」
「ぶーっ!?」
「このまま、押し込んでぇ」「そして、焼却だっ!」
《流星突撃槍(テングリーフ・アルティメットランスチャージ)》。
時速14900kmで飛翔し上昇してから一気に急降下。
勢いをつけた直上からの突撃、超音速の衝撃波を伴う強力なランスチャージを放つ。
そのまま『サクラモフウサギ巨大種』の身体が穴に収まるよう、るこるも重力波を放ち続ける。
頭から地面に伏せさせられ、埋もれた『サクラモフウサギ巨大種』がもがく穴に、緋輝が残りの追加行動すべてを使用した渾身のブレスを叩きつける。
「ぶ……ぶっ……」
「……や、やりましたか……?」
フリルが固唾を飲んで見下ろす中、数分が経過する。
そして、ついに『サクラモフウサギ巨大種』は動きを止める。
別格の強さを発揮する『サクラモフウサギ巨大種』も、猟兵たちと山本親分たち東方妖怪の連携の前に、撃破されたのだ。
「やったニャ! この戦い、猟兵さんたちの勝利にゃー!」
「「「おおおおー
!!」」」
山本親分の勝鬨に召喚された東方妖怪たちも歓喜の声を上げる。
緋輝、るこる、衣更着、フリル。
四人の猟兵の活躍により、山本親分は救われ、幻朧桜の丘も守られたのであった。
「これで一件落着、だな」
「ええ。ですが、まだ残された謎がありますねぇ」
「幻朧桜の下に埋まってる、諸悪の根源っすね。念のため桜から離れた場所に埋めてもらったっすけど」
「ふええ、何か、予兆が……ふえええ!?」
そう、この一件は決着がついた。
だが、すぐに次なる事件が始まろうとしている。
グリモア猟兵たちが、サクラミラージュからの予兆を受け取った。
幻朧戦線将校『カルロス・グリード』の声明、幻朧桜の暴走……。
『幻朧帝イティハーサ』の蠢動を。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2024年09月01日
宿敵
『サクラモフウサギ巨大種』
を撃破!
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