狂いクルリ境界線
●揺らぐ境界線
上下左右、どこを見ても暗く、深い闇が広がる空間。
地を踏みしめている感覚はある。あるのだが、見えないせいで確信は得られない。自分がどこにいるのか、それすらもかすんでしまう。
誰かが言っていた。洞窟を進んだ先に願いを叶えてくれる存在がいる、と。
「こんなの、耐えられ……るわけ……ない
…………」
人影が一つ、この中を歩いている。闇がその人物の輪郭を飲み込みながら、歩き続けている。呟いた言葉も反響しているのか否かも、自分が本当に口にしたのかもわからない。それでもその人物は歩き続けた。
「へぇ、まだ保ってるんだ。凄い! でも、ここで終わりかな」
暗闇でも浮かび上がる白い姿の少女が笑う。彼女が見つめる先で人影が泡のような人型に包まれ、姿を消した。
「うんうん。もっともーっと、来てもらわなきゃ!」
くるりくるりと舞い踊る彼女のそばで泡のような人型たちも揺れ動く。
共に喜ぶかのような姿に言い知れぬ恐怖を抱くだろう。その恐怖がいずれ世界に牙を立てるのは時間の問題だ。
●境界線を示す者たち
「って、予知をしたのよ。狂気を元にする連中が暴れ出したみたい」
安海・藤子(ダンピールの死霊術士・f02909)が苦笑しながら予知の内容を話す。
どこの教団かわからないが、邪神復活のために動いているのは確かである。猟兵としてそれは阻止しなければならない。
「行き先としては何もない空間よ。その空間に潜む何かが、侵入者を攻撃しては生贄として捧げてるみたいね。指示してるのは女の子みたいだけど、取り巻きがどういうのかはわからなかったわ。気を付けてね」
何も見えない暗闇は精神を揺さぶるもの。何か対策がないと厳しいかもしれない。大事なのは自分が何者か見失わないことだろう、とは彼女の言葉だ。
「すでに犠牲者は出ているみたいだからね。油断せずにおいきよ? それじゃ、いってらっしゃい」
面の下、微笑む彼女が何を考えているかわからない。だが、すべては猟兵たちに託された。
紫雨
お久しぶりになります、紫雨です。今回は発狂系シナリオの予定になります。
たまには何も考えずに好きにやるのもありだと思うんです。
皆さんに楽しんでもらえたら幸いです。
第一章は皆さんがやりたい発狂を書いていただけるとこちらが助かります。
第二章は戦闘中心になりますが、発狂を織り交ぜれたらなぁ……と考えております。
第三章はかっこよく元凶を倒す。という感じです。
それでは、皆さんの素敵なプレイングをお待ちしております!
よろしくお願いします。
第1章 冒険
『狂気空間へようこそ』
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POW : 自我を見失いながらも、強靭な精神力を全力で発揮することで狂気を振り払う
SPD : 正気を損ないながらも、現実を感知し冷静さを取り戻すことで狂気から抜け出す
WIZ : 理性を削られながらも、自らの術や智慧を駆使することで狂気を拭い去る
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牙国・蒼志
SPD
(自身が正気であると思いこみながら狂気の道をまっすぐ進む、自分が正気だと盲信して)
小龍次をドラゴントゥースに武器化してから杖代わりに地面をコツコツつつきながら歩いてみよう。
あぁ、私は正気だ正気だとも。
この程度で狂気だなどとあるはずがない。
だから、
目の前にある闇は、
とても、
まぶしくて、
美しい。
あまりの美しさに【人狼咆哮】をするだろう。
だが、私は、ずっと、正気ダ。
あア、そうだトも、私ハ、狂気などとらわれてイナイ。
コレはマダ狂気などデハない。
私は正気だ私は正気だ私は正気だ私は正気だ私は正気だ私は正気だ私は、
狂気ダ。
は、ハハ嗤ってしまいそうだ。
「この程度の闇で私を見失うことはない」
共にこの場所へ来た『小龍次』を『ドラゴントゥース』へと変化させるのは牙国・蒼志(蒼穹の龍・f15465)だ。
何もかもを覆い隠す闇へ一歩踏み出す。杖のように『ドラゴントゥース』で足元を確認しながら。確実に歩を進めていく。
(あぁ、私は正気だ正気だとも。この程度で狂気だなどとあるはずがない)
自らは正気であると妄信して彼は進む。足元の闇を『ドラゴントゥース』でコツコツと叩き、足音を立てながら先の見えぬ道を歩むのだ。
視界を埋め尽くす闇の昏さに心を奪われ、感嘆と共に言葉がこぼれる。その声量が尋常でないことに気づいている者は誰もいない。
「なんとこの闇は美しいのだろう」
他者がいたのならば、その身を傷つけているほどの言葉は闇の中へ吸い込まれていった。
だからなのか、彼が信じている正気が狂いだしていることに蒼志は気づかない。
正気を信じるということが狂気を孕んでいるということに蒼志は気づいていない。
(私は、ずっと、正気ダ。あア、そうだトも、私ハ、狂気などとらわれてイナイ。
コレはマダ狂気などデハない。この程度デ狂気に飲まれるコトはない。
私は正気だ私は正気だ私は正気だ私は正気だ私は正気だ私は正気だ私は正気だ私は……)
「……狂気ダ」
無意識に零れた言葉が引き金だったのか、彼は嗤う。どこか狂っているような笑みを浮かべた蒼志はどこまでも続く闇を進んだ。
どこまでも正気と信じて、彼の歩み続ける。
彼の前に立ちふさがる者たちが出てくるまで、歩みが止まることはない。
成功
🔵🔵🔴
八重森・晃
何もない空間、でも足元の感触があるのは、まだ救いなのかもしれなかった。魔法使いの訓練は虚空に図画を描く事でもあり、幻の火に温度を感じることであり、木漏れ日の光や細波の音を鮮明に思い出すことでもあった。特に彼女の習熟した魔法においては、そういうものが何より重要視された、最初の段階であった、初歩と言ってもいい。手始めに明かりを、描き出されるのは空想の洞窟、奇妙な壁画が飾られており、中には思わず笑っちゃうようなものもあった、すこし黴臭い匂いが好奇心をわきたてる。この壁画の意味はなんだろうか、と真剣に考える、自分をだますのも無意識領域からイメージを出すための…とは言え、延々と続くのであれば限界もあった
暗闇の洞窟を迷うことなく歩み続けているのは八重森・晃(Elementary my dear・f10929)だ。
晃が進む道を柔らかな光が照らしだす。それは彼女が作り出した幻の灯り。
魔法使いの訓練は虚空に図画を描く事から始まり、幻の火に温度を感じることであり、木漏れ日の光や細波の音を鮮明に思い出すことである。特に彼女の習熟した魔法において、そういうものが何より重要視される。なので、この程度なら初歩と言ってもいいだろう。
(この壁画の意味はなんだろうか……)
手始めに作り出した明かりを皮切りに暗闇の世界は徐々に姿を変える。
描き出されるのは空想の洞窟、奇妙な壁画が飾られており、中には思わず笑っちゃうようなものもあった。誰かのいたずら書きなのか、それとも何かの魔法陣なのか、洞窟内に漂うすこし黴臭い匂いが彼女の好奇心を更に掻き立てる。
(これはどういう形なんだろう……)
この風景は晃が無意識領域からくみ上げたイメージたち。どこまでこのイメージを保てるのかわからない。だが、彼女の歩みに淀みはない。
彼女の集中力が途切れるか、その前に何者かが乱入してくるか、その時まで闇はただ彼女を見守るだけ。
成功
🔵🔵🔴
波狼・拓哉
さーて進もうか?そのうちどこかに出るだろうね。
何もない空間ね…確か同じ風景を見続けると人の精神は持たないんだっけ?自分はどうなんだろ…?
正気が損なわれてるのは感じる…けどまあ、狂気に晒されてるのはなれてるからね。他人よりは耐性あるかな。さて、発狂しないためにも暗視出来るゴーグルを付けたり外したりで現実感を確かめつつ進んでいこう。暗視能力発動しても真っ暗なままだと少々キツイかな…
…何かだんだん楽しくなってきた。あはははははは!はっ…危ない危ない、何か持ってかれそうだった。
(アドリブ絡み歓迎)
闇を『探索用ゴーグル』越しに見つめながら波狼・拓哉(ミミクリーサモナー・f04253)は慎重に足を動かす。
「さーて、進もうか? そのうちどこかに出るだろうね」
今かけているゴーグルには暗視機能が装備されているのだが、その機能を使っても彼の瞳に映るのは闇ばかり。
「これを使ってもダメか……。キツいが何とかなるかな」
ゴーグルを一度外し、自らの瞳で見つめ直してもその先を見通すことはできない。どこまでも深く昏い闇がこの場所を覆っていることがわかるだけだ。
それだけでは拓哉の歩みを止める理由にはならない。再び、ゴーグルをかけて彼が信じた道を進んでいく。時折、ゴーグルを外しては辺りを見渡して状況を確認。
同じ景色が続くことに人間は耐えられない、それはよく言われること。その対策として『探索用ゴーグル』での景色と肉眼での景色を切り替えることを選んだのだ。その思惑は通じなかった。
「……何かだんだん楽しくなってきた。あはははははは! はっ……危ない危ない」
通じなかったが、完全な狂気に飲み込まれることにはならなかった。何故か楽しくて仕方ないと高らかに笑ってしまうが、すぐに正気に戻る。首をふって前を見据え、歩き出した。
この空間に異変が起きるまで、拓哉の歩みは止まらない。
成功
🔵🔵🔴
ロバート・ブレイズ
「成程。埒外たる猟兵にも効果の有る狂気とは滑稽の極み。我々の成すべき事柄は邪神への冒涜――違う。俺の成すべき事柄は総てへの冒涜だ。忌々しい既知と呼べる連中は己も含めて滑稽な絡繰り。殺さねば。否定せねば。世界は何れ退屈に塗れて終う。ああ。重要なのは此処からだ。俺を狂気の住人だと貴様等は説くが、俺ほどの正気は存在しない。正気を固定する事で俺は辛うじて私で在るものよ。クカカッ――何。誰と言葉を交わして在るのか。答える必要が有るのか。答えなど在るものか。冷静だ。俺は常日頃から冷静だ。理由は単純なものよ。私は最初から地獄なのだ。ああ。這い寄る混沌など存在しない。私は千通りだが無の領域――」
以下支離滅裂。
この闇の中、何も迷うことはなく歩み続けている初老の男性が一人。彼はロバート・ブレイズ(シャドウ・f00135)である。
「成程。埒外たる猟兵にも効果の有る狂気とは滑稽の極み。我々の成すべき事柄は邪神への冒涜――」
誰に聞かせるでもなく、彼は言葉を紡ぐ。いや、紡いでいる自覚もないのだろう。
「違う。俺の成すべき事柄は総てへの冒涜だ。忌々しい既知と呼べる連中は己も含めて滑稽な絡繰り。殺さねば。否定せねば。世界は何れ退屈に塗れて終う。ああ。重要なのは此処からだ。俺を狂気の住人だと貴様等は説くが、俺ほどの正気は存在しない。正気を固定する事で俺は辛うじて私で在るものよ」
正気を固定する、ソレは常人に理解することはできない。だが、彼は、ロバートはそれを為している。それを為すことでロバートは自我を保っているとも言えた。
「クカカッ――何。誰と言葉を交わして在るのか。答える必要が有るのか。答えなど在るものか。冷静だ。俺は常日頃から冷静だ。理由は単純なものよ。私は最初から地獄なのだ。ああ。這い寄る混沌など存在しない。私は千通りだが無の領域――」
取り留めもない言葉の羅列。どこまでも続く単語の群れ。
目に映るナニかも気にせずに。ただひたすらに歩き、言葉を紡ぎ続ける様は詩人のようにも見えるかもしれない。その物語に整合性があれば、となってしまうかもしれないが。
「故に私は私だ。滑稽な絡繰りである必要などなく、俺はただすべてを冒涜するのみ。その全ても何もかも、あぁ、壊すだけだ」
彼の瞳に興味を惹く存在が現れるまで、彼の歩みも物語も止まることはない。
成功
🔵🔵🔴
ナハト・ダァト
暗闇なド、私の無限光(アイテム)の前でハ意味を為さなイ
尽きないからこその、無限。世界を形作るもの故ニ、この光ハどこまでモ照らすヨ
迫る狂気カ…狂人の智慧(アイテム)によっテ、大勢は得られているガ
より確実なものにする為、叡智も必要だろウ
六ノ叡智、自らを奮い立たせる事デ
狂気への耐性とするヨ
◆発狂
彼は既に狂っている
人の様な思考、感情を以ている時点で、彼はその存在と矛盾しているのだ
その正体は光、生命の樹そのもの
枠組みから外れたものが、枠組みから外れた事による耐性
真の狂気とは、見えないものである
彼の「瞳」(アイテム)を以てしても、自身の狂いは見抜けない
狂っていることに気づかない、それが彼の発狂である
どこからか降り注ぐ『無限光』に照らされた存在がいる。その存在はナハト・ダァト(聖泥・f01760)だ。
彼の周囲は明るいのだが、光と闇の境界は時折揺らぐ。それは気まぐれなのか、力が強いからなのか、それはわからない。
「迫る狂気カ……狂人の智慧によっテ、大勢は得られているガ……より確実なものにする為、叡智も必要だろウ」
彼が身につけている物の一つに『狂人の智慧』という栞がある。狂気への耐性を得られる一方、その栞に宿る狂気は尋常ではない。只人が触れば狂ってしまいかねないほどの代物だ。
逆説的にナハトは狂気に勝る正気を宿しているのか、それとも……。
「IHVH ALVH VDOTh」
彼が祈りを捧げるようにつぶやいたのは生命体の希望に共感して狂気への耐性を更に高める。この場にいる誰よりも狂気への耐性を備えたナハトに死角はないだろう。
「これでいい。為すべきを為そウ」
歩み出す彼を『無限光』がいつまでも照らす。彼の影が闇よりも色が濃いことに気づく者はこの場にいない。
この場が狂気を色濃くうつすのならば、狂気を宿しつつ気づいていない者はどこまで影響を受けるのだろうか? その答えを知ることができるのは彼だけだろう。
気づける前に他の存在が彼の意識を惑わすのだが、それはもう少し先の話だ。
成功
🔵🔵🔴
尾守・夜野
【POW】番長(f01648)と共に向かう
はぐれないよう互いを鎖と南京錠で繋ぎ鍵は相手のを持つ
近くにいれば例え片方が狂っても正気に戻せるだろ
…番長、いるか?
前を歩くのが本当に番長なのか不安になり声をかける
互いも見えねぇ闇の中じゃ今がいつでどこに進んでいるかもわからねぇ
鎖と互いの息の音だけが聞こえて息が詰まる
…喉が渇く
煽ったスキットルは空だ
最後に啜ったのはいつの事だろうか
思わず鎖を引き寄せようとして…違う!
こんな事望んでない!
番長は友達だ!
違…!
多分異食と幻覚発症してる
…番長?!おい!俺だ!
正気に戻れ!
何か暴れてガチャガチャやってるぽいし、声をかけるぞ
正気にならなければ精神分析(物理)
星群・ヒカル
【SPD】
夜野先輩(f05352)と一緒に向かうぞ
鎖と南京錠で互いを繋いで、自分の南京錠の鍵は相手に持ってもらう
真っ暗だと『星の目』も上手く使えないな
光がないというよりは、物理的な闇って感じ
こりゃ骨が折れるぞ、用心していこう
獣の唸り声が聞こえる
夜野先輩?……違う、先輩じゃない
誰だてめーは!?どうしてそこにいるッ!?
てかなんでおれはこんな所に……やめろ、来るなッ……!
恐怖と疑心暗鬼にかられて逃げ出すが、鎖が邪魔だ
外そうにも鍵がかかっているが……
『第六感・世界知識』を使えば
今の状況と、繋がれてる先が先輩だと思い出すことができるだろうか
いでぇーッ!
だが、助かったのか。恩にきるぞ、先輩
※アドリブ歓迎
洞窟へ入る前に尾守・夜野(墓守・f05352)と星群・ヒカル(超宇宙番長・f01648)の二人は互いに鎖で繋ぎ合う。その長さは歩くのに影響を与えない程度。鎖がすぐに外れない様にと南京錠で鍵をかける。準備が終わり、顔を見合わせた。
「それじゃ。頼むぜ、番長」
「おぅ。任せてくれ、夜野先輩!」
自分の南京錠の鍵を相手に手渡して、二人は闇の中へと進んでいく。ヒカルが『星の目』を使用し、先を知ろうとするが。
「こうも真っ暗だとうまく使えないな。物理的な闇って感じか? こりゃ骨が折れるぞ、用心していこう」
闇が深すぎ、彼の『星の目』を用いても知ることができなかった。自身が感じたものを声に出し、後ろを歩く夜野へ告げる。
「物理的な闇、か。気を付けないとだな」
何とか聞き取ることができた言葉に頷き、スキットルを一口啜る。喉がなぜか乾く、無性に乾くのだ。意識しない様に空いている手にスキットルを握ったまま、夜野はヒカルの後へ続く。
ジャラ、かちゃ。ジャラ、かちゃ。
歩くたびにこすれる鎖の音、互いの吐息だけが耳に届くだけ。信じる相手の姿が見えず、不安に駆られる。
「……なぁ、番長。いるか?」
不安に声は掠れて、か細げに空間に響いた。その不安はヒカルの姿が見えないだけではない。頼もしい番長の姿を探しながらも乾く喉を潤すようにスキットルを煽る。何度も何度も何度も、どうしても乾きが満たされることはない。
(……いつの間に。でも、まだ飲むものはある)
スキットルの中身を最後に飲んだのはいつだろうか。それに気づかないほど、彼は憔悴していた。
鎖の先にいる者を喰らえばいい。そうすればこの乾きは潤されるはずだ。狂気が思考を肉体を支配するように繋がっている鎖を掴もうとスキットルを捨てる。
カランコロン。
「違う!」
この空間に不釣り合いな音で夜野は僅かな理性を取り戻した。鎖を掴もうとした手を握りしめ、手繰り寄せようとした相手は大事な友、信頼する番長なのだ、と。己が犯そうとした凶行は本心ではない、と。必死に抗う。
正気と狂気の狭間で揺れている彼を正気へと引き戻したのはヒカルの叫び声だ。
「誰だてめーは!?」
「なっ、番長!?」
錯乱したヒカルの叫び声に夜野は我に変える。自分が狂気に惑っていてはいけない。この場で彼を助けられるのは自分だけだと、その思いが狂気をはねのけた。
「どうしてそこにいるッ!? てかなんでおれはこんな所に……やめろ、来るなッ……!」
ガチャギチ、ガチャカチャ、ガチャガチャッ。
恐怖に震える声、鎖を外そうとしているのか金属がこすれる音がけたたましく鳴り響く。闇の中に見えた何かに怯え、逃げようとしているのだ。だが、南京錠の鍵は夜野が持っているため、ヒカルには開ける術がない。
「おい、どうした! しっかりしろ!」
「どうして外れないんだよ。なんでだ、なんで。鎖が邪魔だ、これがあっちゃダメだ。外れてくれ、外れろ」
今のヒカルに夜野の声は届かない。この場から離れるために鎖が邪魔になっていると疑心暗鬼と恐怖に駆られてそれどころではないからだ。
ヒカルの異常に気づいた夜野が鎖を手繰り、彼の傍に行くのは当然のことだろう。常ならばすぐに明瞭な返事を返す番長が、恐怖を胸の内に隠し、堂々と戦う彼が恐怖に屈しているのだから。
「目を覚ませ!」
夜野は鎖を頼りにヒカル目掛け、拳を振るう。この場で落ち着くよう話しかけるよりも物理的な衝撃で正気の戻したほうが早いと判断した。自らも外部の音で正気に戻ったというのもあるだろう。
夜野の拳は多少ずれはしたものの、ヒカルの頬に当たった。人を殴った感覚が拳から伝わるだろう。
「いでぇーッ! だが、助かったのか。恩にきるぞ、先輩」
「なに、これくらいならお安い御用だよ」
殴った衝撃でヒカルが倒れない様に鎖を掴んで体勢を維持する夜野。殴られた衝撃で狂気から解放されたヒカルは頬に手を当てながらも、助けてくれた先輩へ礼を伝える。
闇に阻まれているが、二人が笑いあったことは伝わるだろう。
「もう少し、頑張ってみるか。行こうぜ、先輩」
「あぁ、行こう。番長」
二人は闇の奥へと歩き出した。再び狂気が襲おうとも彼らが囚われることはない。
互いを信頼し、背中を預けられる友がいることは狂気を払いのける大きな助けになるのだから。
周囲を警戒しながら、二人は最深部へと向かっていった。
成功
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第2章 集団戦
『星辰の狂気或いは真実を浴びたモノ』
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POW : 泡立つ狂気
戦闘中に食べた【一般人や同じオブビリオンの肉 】の量と質に応じて【全身を覆う丸い鉱物上の何かが爆発的に増加】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD : 泡立つ脈動
【脈動する異常に発達した筋肉 】【体内からあふれ出す泡のような鉱石状の何か】【鉱石があつまり結晶化した鋭い刃】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
WIZ : 泡立つ譫言
【UDCアース上に存在しない言語での譫言 】から【それを聞いた対象者の脳内に冒涜的な光景】を放ち、【沸き立つ強烈な恐怖の感情】により対象の動きを一時的に封じる。
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狂気にさいなまれ、どこまでも続くかもわからない暗闇は唐突に終わった。
猟兵たちが踏み入れたのは何かの儀式場と思われる広間。先が見えない闇はどこにも見当たらない。代わりにこの空間には紫色の泡のようなものをまとい、揺れ動く人型の群れが静かにたたずんでいる。
「正義の使者さんたち、いらっしゃい! 私、みんなが来るの待ってたんだよ!」
どこからか声が響く。それは可憐な少女の声でこの場には不釣り合いにも感じるだろう。
「みんなが来るまでに作ったかわいい兵隊さんたちなんだよ。ぜーんぶ壊せたら私が遊んであげるからね!」
心から楽しんでいるとわかる声音に彼女は狂っているのだと誰もが思うだろう。そして、目の前のオブリビオンー星辰の狂気或いは真実を浴びたモノーたちは動き出した。
主のために倒されるようと誰もが捨て身で襲いかかる。どの個体も一様に声なき呻きをこぼしながら。
アルトリウス・セレスタイト
何処の何であれ、詮索に大した意味もあるまい
臘月で分体を喚び、分体全てで破天による掃討
爆ぜる魔弾の弾幕で蹂躙する面制圧飽和攻撃
敵性個体が存在するあたりを面で捉え、周辺諸共巻き込む範囲攻撃
高速詠唱・全力魔法・2回攻撃・範囲攻撃・鎧無視攻撃など駆使し、絶え間なく叩き付けて回避や反撃の余地を奪うように
強化されても正面から攻撃の密度と速度で突破
言葉も届かねば問題はない
数の力を更なる物量で圧殺する
長身の男、アルトリウス・セレスタイト(原理の刻印・f01410)は冷え切った眼差しでオブリビオンたちを見ている。
「何処の何であれ、詮索に大した意味もあるまい」
降りかかる火の粉は払うのみ、と。オブリビオンの過去を詮索したところで彼らを戻せる保障はどこにもないのだから。
「写せ。数には数を、圧殺する」
アルトリウスは静かに自らの力を発動させた。彼の身体を淡青色の光が包み込む。すると半透明な存在がアルトリウスと同じ姿で現れた。その数は28。
呼び出された者たちがオブリビオンたちの前に立ちはだかると一斉に言葉を紡いだ。
「行き止まりだ。骸の海へと戻れ」
幾重にも重なる声の後に、この場所を埋め尽くすのは青く光り輝く物が埋め尽くす。
彼の能力が引き金となり生み出された弾丸たちが縦横無尽とこの場を飛び交っているのだ。ただ狂気により譫言をこぼす星辰の狂気或いは真実を浴びたモノたちは避けることもできずに貫かれていく。
彼らの言葉はアルトリウスの元へ届くことはない。届く前に言葉ごと撃ち抜かれてしまっているから。
「有象無象では俺に届くことはあり得ない」
彼もまた他の猟兵たちを援護するように力を行使する。弾幕を盾のようにしながら、オリビオンの群れへ大打撃を与えることに成功した。
大成功
🔵🔵🔵
ナハト・ダァト
趣味が悪いネ
もう少し美しい形ニ整えられなかったのかイ
罪のない一般人とはいエ、
狂気に呑まれたのなラ対処するヨ
それが我々の役目ダ
感傷など今は不要サ
外皮が邪魔だネ
しかシ、接合部分ハ医術で診て取れる
荒い繋げ方ダ
鎧無視攻撃に加え傷口をえぐりながラ対処するヨ
その様な言語、私には効かないヨ
「狂人の智慧」これヲ上回れるものを持っておいデ
ニノ叡智デ、相殺を行うがネ
他の者が巻き込まれたラ危険ダ
譫言にハ、叡智の弁舌デ対抗するヨ
溶け込む夜デ体は気化、液状化させておこウ
触れる事すら分らぬ実態ハ、狂気ニ勝るだろウ?
外皮を捲リ、言葉を防ギ、力ハ削いダ
どこかデ見ているだろウ?
そのまま見給エ、これガ君に与える裁きの叡智ダ
波狼・拓哉
・・・ははは。幻聴まで聞こえて気やがった。・・・ん?あ、これ幻聴じゃねーわ。暗闇終わったから何処かでミスったかと思ったわ。
さーて、狂気をお返しと行こうか。化け吼えるな、ミミック。爆破して、死骸も何もかも吹き飛ばしな。・・・まーどうせ狂気は上塗りでしかないし、効果は期待できないんだけどね。意趣返しってやつかな。
自分は衝撃波込めた弾で傷口抉ったりしてサポートに。他の猟兵も見えるなら、そちらのサポートもしっかりしないとね。戦闘知識を使って相手が1番嫌がりそうなタイミングで撃って邪魔したりするか。
(アドリブ絡み歓迎)
「あァ、趣味が悪いネ。もう少し美しい形ニ整えられなかったのかイ」
ナハト・ダァト(聖泥・f01760)は静かに言葉を発す。その声音には感情が滲んでいなかった。
「罪のない一般人とはいエ、狂気に呑まれたのなラ対処するヨ」
狂気に飲み込まれ、オブリビオンと化してしまった存在を助ける手段は一つ。その命を終わらせることだけだ。そうなる前が罪のない存在だとしても関係ない、これ以上の被害を防ぐことも猟兵たる彼らの役割。
ナハトは自身の感情を少しの間、蓋をする。今は不要だから、と。
「……ははは。幻聴まで聞こえて気やがった……ん? あ、これ幻聴じゃねーわ」
ゴーグルをかけ直した波狼・拓哉(ミミクリーサモナー・f04253)はいまだ狂気の中にいると思うも、肌に感じるものが違うと伝える。
慣れた手つきでカラフルなモデルガン『MODELtypeβ バレッフ』を抜いた。
「さーて、狂気のお返しと行こうか。なぁ、相棒」
拓哉が呼びかければソレは彼の足元にいた。宝箱に足が生えたもの-ミミックと彼は呼んでいる-は応えるように飛び跳ねる。
「化け咆えなミミック……! 奴らへ真の狂気を知らしめてやろうぜ!」
彼の命に従うようにミミックは巨大な龍へ姿を変えた。西洋の龍を模したソレは見る者へ恐怖と威圧を与えるだろう。呼吸のために薄く開かれていた口は突如、大きく開かれる。
轟音。鼓膜を揺さぶるのは咆哮だけではなく、爆発音も混ざったもの。龍の咆哮を浴び、爆発するオブリビオンたち。
オブリビオンが動揺することはない。だが、それでも隙が生まれるもの。
「その様な言語、私には効かないヨ。これヲ上回れるものを持っておいデ」
衝撃が走る空間をナハトは何事もなく進む。その体を液状化させ、進んでいるからこそともいえるだろう。
敵の足元を移動する彼に降り注ぐのは意味をなさない譫言の雨。狂気を誘発する言葉の羅列であろうと、ナハトの精神を揺るがすことはない。『狂人の智慧』と名付けられた栞を取り出して見せる。この栞がどれほど危険なのかは彼が一番理解しているから言える言葉でもある。
「外皮が邪魔だネ。接合部分ハ荒い繋げ方ダ。外してしまおうカ」
精密作業も可能とする触手状の腕が敵の繋目を的確に抉る。表面に浮かび上がる泡のように浮かんでいる鉱石を切除した。
だが、敵もやられたままではない。動きが止まっているナハトを狙わないわけはなく、鋭い刃が彼を貫かんと腕を振り降ろす。
刃がナハトへ触れる直前、狙いすましたように拓哉の弾丸が炸裂する。込められていた衝撃波がオブリビオンを吹き飛ばした。
「いいタイミングダ。ありがとウ」
「サポートならお任せを、なんてね。背中は任せてください」
拓哉の方へ向きながらナハトは言葉を告げる。一人ではないというのは戦闘の幅を広げるだろう。
「頼もしいヨ。さテ、どこかデ見ているだろウ? そのまま見給エ、これガ君に与える裁きの叡智ダ」
ナハトが弱体化させ、拓哉が仕留める。相手の呼吸、動きを把握するなど既知の二人なら容易なこと。
阿吽の呼吸で戦場を駆ける二人に死角は無い。
彼らの前に立ちふさがるオブリビオンたちはなすすべもなく倒されていくだろう。
成功
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星群・ヒカル
夜野先輩(f05352)と行動
互いの鍵を投げ渡して交換し、鍵を外して臨戦態勢へ
うわっ、パッと見エッグいやつだな……
だが星の目の『視力・第六感』でしっかりと敵の姿を捉え、弱点を見出そう
(余計なことまで分かっちまうかもだけど)
夜野先輩にさっき助けてもらったから、戦闘で借りを返さないといけねぇな。 これが超宇宙番長のケジメだ!
『超宇宙・武勇星舞台』を使い身体能力強化
『ロープワーク・先制攻撃』で超宇宙牽引ワイヤーを使い
相手の足を引っ掛けたり拘束したり
夜野先輩が攻撃を叩き込む準備や、死角からの攻撃に対応しよう
おっと夜野先輩、落ち着いてくれッ
正気を失いそうになってたら超宇宙ビンタ(手加減)だ
※アドリブ歓迎
尾守・夜野
番長(f01648)と共に行動。
敵が来る前に鍵を投げ渡して交換し即外す。
それが無理なら切り落とす。
敵が目の前にいるのに機動力が下がるのは悪手だしな。
正気ならば見た目に怖じ気づくんだろうが…
正直、さっき耐えれたのが奇跡的なぐらい飢餓感を感じてる。
そんな前に現れたんだ。
喰らいつきにいくぞ(生命力吸収、吸血)。
そのまま行っても他のに邪魔されて喰いにいけないし、別人格の俺…破壊衝動の塊たる俺を呼び一部を相手にさせる。
強化?防御を固めるなら毒と呪詛で削ろうか。
状態異常?攻撃力強化?耐性でもって耐えようか。
…つまる所完全にバーサーク。
戦闘後はたかれて正気に戻るぞ
「ついたみたいだな。やろうぜ、先輩」
「あぁ。思いっきりやらせてもらおうか」
星群・ヒカル(超宇宙番長・f01648)と尾守・夜野(墓守・f05352)がお互いの南京錠の鍵を投げ渡す。手早く掴むと解錠し、臨戦態勢へと移った。
「敵を知り、対策を立てる。これも大事なことだよな」
『星の目』を通し、オブリビオン『星辰の狂気或いは真実を浴びたモノ』たちの情報を読み取る。
互いを喰らいあうことで戦闘力を強化できること、身体強化を行えること、彼らの譫言を聞いてしまえば狂気や恐怖を受けること。そして、元になったのは人間だったこと、もう人として助けられないことを、ヒカルは把握してしまう。
「っ……。倒すしかないのか。あいつらは脆いみたいだ、全力で行こうぜ」
「そうか……。なぁ、『ボク』も喉が渇いてるだろ?」
先ほどの闇の中、ギリギリで飢餓感を耐えることができた。でも、その飢餓感は癒されてない、それは破壊衝動へと繋がっていく。
『そうだね。とても喉が渇いてるよ』
夜野の姿がぶれ、隣に同じ姿が現れる。夜野と同じ顔、体躯をしているはずだが、気配に狂暴さが滲んでいた。全くの別人だと感じるだろう。
「背中は任せるぜ、番長!」
黒剣を構えた夜野、牙を剥きだしに好戦的な笑みを浮かべる夜野。ヒカルへ一声かけると返事を聞く前に地を蹴った。
「あんま羽目を外さないでくださいよ。俺も行くぜ! 姿を見せろ、ガントバス! ふふふ、ここから先の超宇宙番長は、一味違うぜぇーッ!」
ヒカルの影が形を変える。宇宙を写した色へ、大人の体躯へ、戦士の影がヒカルとリンクする。
歴戦の戦士がヒカルを通し、彼の身体を操り、夜野たちの後を追いかける。夜野たちを支援するために『超宇宙牽引ワイヤー』を構え、敵の動きを抑制してゆくのだ。
「先輩の邪魔をするんじゃねぇよ!」
敵の足をロープで絡め、転倒を誘いながらも周囲への警戒を怠らない。夜野たちの死角に存在する敵へ牽制を繰り出し、常に戦況を把握し続ける。
「……あぁ、やっとだ」
手近な敵へ噛みつき、体液を啜る。喉を潤す液体に夜野は知らずのうちに頬が緩んでいた。一体では物足りない、この乾きを潤すには足りない。
『これだけいるんだ、存分に暴れさせてもらおうかなぁ』
黒剣を振るい、一太刀で切り伏せる。敵を殲滅するまでは暴れても暴れても咎められることはない。ならば、衝動のままに剣をふるっていこう。
狂気へ誘う譫言だとしても、間近で耳にしているのは衝動のままに暴れている夜野だけ。だが、今の彼に聞く耳はない。
ヒカルが敵の動きを牽制、妨害し、二人の夜野が踊るように敵を葬り続ける。
十を超えたあたりだろうか、夜野の飢餓感が癒えたと思われる頃でも彼の動きは止まらない。敵の液体を飲み干し続けるのだ。
「まだ駄目だ。まだ足りない」
「夜野先輩! もう落ち着いてくれッ」
これ以上、衝動のまま暴れる先輩を見ていられずにビンタを放つ。
「いっ……。狂気に飲まれてたのか。ありがとうな、番長」
パーンッ。
正気へ戻すためなので手加減をしているが、いい音が響いた。殴られた頬に手を当て、一瞬呆けるが、すぐに正気へと夜野は戻る。
正気に戻った夜野にヒカルは安堵するも、すぐに意識を切り替える。まだ、敵は残っているのだ。
「よかったぜ。まだいけるよな、先輩」
「勿論だ。行こうぜ、番長」
渇きは満たされた今、夜野は本能を理性で抑えつけ、武器を構える。それを確認したヒカルはロープを構え、振るった。
もう一人の夜野と合わせた三人もまた、敵の群れへ牙をたてる。
ここまで戦う彼ら猟兵たちの奮戦により、オブリビオンたちは徐々に減っているようだ。
殲滅するまであと少し、というところだろう。
成功
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八重森・晃
ずいぶんいい趣味をしてるじゃないか…、驚いたね。まあどうでもいいけど、被害者が出てることはもう知ってたし、ならその被害者と戦う羽目になるのも必然か…ずいぶんジメジメとした森に迷い込んだもんだ、焚火でもしなきゃ狼とご対面する羽目になりそう、なら焚火の用意としようか。全く、これだから加減も道理もしらない子供は嫌いだよ。可哀そうな君たちはその悪夢から早引きしたまえよ、なあに、真実の神様は慈悲深いとおかあさんが言っていた、私は会ったことないからしらないけど、先に行って頭を撫でてもらうといい。≪全力魔法≫≪属性攻撃≫≪範囲攻撃≫使用、火打石で生み出した火球をスタックした状態で突風を熾して熱風で焼き払う。
思考の海を彷徨っていた八重森・晃(Elementary my dear・f10929)は状況を精査する。敵の情報を総合し、何が起きているのか、相手が何なのかは粗方予想がついているようだ。
「ずいぶんいい趣味をしてるじゃないか……、驚いたね」
平坦な声音で驚愕を呟くもその言葉に応えるものはいない。気にせず彼女は手持ちの荷物から火打石を取り出す。
(まあどうでもいいけど、被害者が出てることはもう知ってたし、ならその被害者と戦う羽目になるのも必然か……)
彼女の表情は変わらず、胸の内で呟く言葉は事実をなぞっているだけ。このような悪夢から彼らを助け出すためにと火打石を打ち鳴らす。
「真実の神様は慈悲深いとおかあさんが言っていた」
火打石から生み出された火種は小さな火球となった。それは敵へ放たれることはなく、何かを待つように彼女の前から動かない。
「私は会ったことないからしらないけど、先に行って頭を撫でてもらうといい」
晃が火球をあおぐ。すると火球を通り抜けた風は高熱を孕んだ熱風へと姿を変えた。
彼女の言葉を再現するように敵の身体を頭を熱風は撫で燃やす。オブリビオンたちを哀れんだ神の抱擁のような熱風。抱かれた者はすべて灰となり、魂があるとすれば天へとのぼっていくのだろう。
「……全く、これだから加減も道理もしらない子供は嫌いだよ」
彼女の起こした熱風が全てのオブリビオンたちを飲み込み、燃やし尽くした。小さく呟いた言葉はこの場にいない存在へ向けられている。
静かに見届ける瞳には何が宿るのだろうか。
成功
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第3章 ボス戦
『楽園への招待者』
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POW : 安寧なる楽園への案内状
【頭上にある天使のような輪の高速回転】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 健やかなる楽園の住民の召喚
対象のユーベルコードに対し【『楽園』へ導かれた『幸福』な一般人達の霊】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
WIZ : 美しき楽園の象徴画
【両袖の中から噴き出す色とりどりのインク】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【には不気味な抽象絵画の様な物が描かれ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
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猟兵たちの尽力により、この場を埋め尽くしていたオブリビオン-星辰の狂気或いは真実を浴びたモノ-たちは骸の海へと帰っていく。
最後の一体が消え去ったとき、再び声が響いた。
「あははははっ! すごい、すっごいよ! 約束通り、私が遊びに来たよ」
なにもなかった空間、白い服をまとった少女が現れる。心からの称賛を猟兵たちへ送るように拍手をしていた。
「みんななら、さっきの子たちよりずっと強い兵隊さんになってくれるかな?」
改めて猟兵たちに向き直る少女-楽園への招待者-は笑う。
新しいオモチャを与えられた子供のように無邪気に、傲慢に笑うのだ。
八重森・晃
やあ、こんにちわ、ずいぶん楽しそうだね?うん、楽しいんだろうね、楽しいのは良いことだよ。―――でもね、君の楽しみの為だけにこれ以上いろんな人が悪夢に堕ちるのは良しとはできない、君の楽園は、決して万人にとって楽園なわけじゃあ、無いんだよ。…ああいや、いいんだ別に、分かってほしかったわけじゃない、これは私なりのケジメ、決意…いや、違うな、死刑宣告。そうだ、多分これは殺意なんだろう。私も私の楽園を持っている、そして多分それを楽園としない人もいるんだろう、私の楽園の子供を見せてあげる、おいで、サラマンドラ。忌むべきすべてを食む貪欲な火蜥蜴-違いを認められなかった我が鏡像を焼き滅ぼせ。
「やあ、こんにちわ、ずいぶん楽しそうだね?」
「うん、とっても楽しいわ!」
八重森・晃(Elementary my dear・f10929)は胸中に渦巻く感情が何か分からない。それでも彼女は問いかける。
少女-楽園への招待者-はとても楽し気に答えた。くるりくるりとその場で踊るくらいに。
「楽しいのは良いことだよ。―――でもね、君の楽しみの為だけにこれ以上いろんな人が悪夢に堕ちるのは良しとはできない、君の楽園は、決して万人にとって楽園なわけじゃあ、無いんだよ」
「それってどういうこと? みんな、幸せな世界に暮らすのが一番じゃないかな?」
招待者はどこまでも純粋に信じている。狂気に染まった世界が人々にとって幸せになれると。キョトンとした表情に悪意は存在しない。
晃は小さく首を振る。そうではない、と。
「……ああいや、いいんだ別に、分かってほしかったわけじゃない、これは私なりのケジメ、決意……いや、違うな、死刑宣告。そうだ、多分これは殺意なんだろう」
胸中を渦巻く感情の名前を知る。そう思うだけのものが招待者にあるのだと、腑に落ちた。そして、晃は袖から一つのハンドベルを取り出す。
(私も私の楽園を持っている、そして多分それを楽園としない人もいるんだろう……楽園の形は人それぞれだ)
自身の楽園を脳裏に思い浮かべ、その違いを受け入れられなかったら……そのもしもが目の前の存在。
彼女を認めるわけにはいかない。その罪へ罰を与える、それが己の役目だから。
「私の楽園の子供。おいで、サラマンドラ」
取り出したハンドベル『呼び鈴』を揺らす。トカゲ状の炎の矢が彼女の周囲に呼び出された。その数は百を超えるだろう。
「ん? んー、私にはわかんないんだけど、君は遊んでくれるんだよね!」
招待者の頭上、色鮮やかな天使の輪が高速回転を始める。場を埋め尽くす炎の矢を斬り捨てるようだ。
「忌むべきすべてを食む貪欲な火蜥蜴――違いを認められなかった我が鏡像を焼き滅ぼせ」
ひと際強く、大きくベルを振る。サラマンドラと呼ばれた炎の矢たちは牙を剥きだし、襲い掛かる獣のように宙を走った。
「たくさんだ! 私も負けられないね」
小柄故の身のこなしで炎の矢を避け、天使の輪で斬り裂くもそれだけですべてをいなすことは可能だろうか? 答えは否。
楽園の母のためにと、天翔けるサラマンドラたちは果敢に襲い掛かるのだ。彼女の望みを叶えるまで、炎の矢たちが消えることはあり得ない。
「きゃぁっ! あつい、熱いよっ!!」
一つの矢が敵を捉えた。それは振り回される袖だが、その隙を他のサラマンドラたちは見逃さない。
貪り喰らうように招待者へ襲いかかる。百を超えるサラマンドラが褐色の肌を灼熱の牙で食い破っていく。
「いい子たちだ。お腹いっぱい食べるといい」
敵を貪り喰らうサラマンドラを見つめながら、晃は小さく呟いた。もう一度、ベルを揺らして。
炎に焼かれながらも、オブリビオンは今だ健在。このままでは倒すことはできないだろう。
だが、この場にいるのは彼女だけではないだから。
成功
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波狼・拓哉
…狂気に晒されてたせいか、何が本当で何が幻か分からんくなってきた。あのカラフルな女性は敵でいいんだよね?自分の幻覚じゃないよね?
さて、それじゃあ燃やすか。ミミックを一度箱型に戻し相手に投擲。一度見られてるなら龍だと思うだろうし、見てないならそれはそれで。霊や輪、インクが当たる瞬前に炎に転化。さあ、化け焦がしな…!あ、一応味方猟兵に対しての注意を入れるのは忘れないようにしとこう。これで大ダメージ負ってくれれば後は楽なんだけどな。
自分は衝撃波込めた弾で輪や霊といった武器を落とすように撃ち込んでいくか。インク?飛び散ると思うんだけど?
後はダメージ狙いで傷口を抉るように撃っとこう。
(アドリブ絡み歓迎)
アルトリウス・セレスタイト
お呼びではないぞ。お帰りはあちらだ
付近の味方と協働し自身は支援に専念
魔眼・封絶で拘束
目標の始動を抑えるタイミングで行使
短時間でも躓きが生じれば此方の有利に傾く
以後は目標の行動に注視しつつ瞳の内部で循環させて魔眼の力を溜めておき、行動を見切ることに専念
初手と同様に行動の頭を抑えるように、同程度の拘束力になるよう溜めた力を開放して拘束を仕掛けていく
味方が畳み掛けるに十分なタイミングと見たら高速詠唱と全力魔法の技術を転用し、溜めた力を更に重ねて全力で開放し強度と拘束時間を最大化
一気に攻め潰す
万一攻め切れなければ破天で追撃
爆ぜる魔弾を嵐と叩きつけ全力で圧殺する
「うぅ、これやだ……黒くなっちゃう」
身に纏う炎を消すようにしていた招待者へ更なる牙が向けられる。
「……狂気に晒されてたせいか、何が本当で何が幻か分からんくなってきた。あのカラフルな女性は敵でいいんだよね? 自分の幻覚じゃないよね?」
困惑顔で辺りを見回している波狼・拓哉(ミミクリーサモナー・f04253)へアルトリウス・セレスタイト(原理の刻印・f01410)が同意を示した。
「あぁ、その通りだ。やつが狂気の元凶であり、敵だ」
「そっか……さて、それじゃあ燃やすか。ミミック」
アルトリウスが敵へ視線を投げる。焼き焦げている姿を瞳にうつし、思考を切り替えた。
龍の姿を示したミミックを呼び戻す。宝箱の姿に戻った彼をひと撫でして敵を見据えた。
「むー? あなたたちもなの? ん、じゃあ、お色直しだね!」
招待者は所々焼け焦げている袖を振り回して極彩色のインクで自身を強化しようとする。周囲にインクがばらまかれる、はずだった。アルトリウスが彼女を見ていなければ、それは成功していただろう。
「淀め。お前の動きは許されない」
「ふぇあっ!? あ、あれ、どうして?」
振り回そうと腕を広げたところでその動きは不意に止まった。動かそうとしているのが、微塵も動く余裕はない。腕だけではなく口や瞳くらいしか動かせることができないことに気づいたらしい。
「距離は平気か。あんまり近寄らないでくださいよ」
アルトリウスのほうへ忠告するとミミックを抱き上げる。
「さあ、化け焦がしなミミック……! 陽炎が全てを焼き尽くす時だ!」
流れるように動きを止めた敵に拓哉はミミックを投擲。投げられながら、彼の言葉に従い、ミミックはその姿を変える。
それは巨大な火の塊。ただその場にいるだけで上昇気流を生むほどの高温を産み出すもの。手で顔を覆っていようとも突き刺す光を放つのだ。意思を持ち動くその存在は生きた太陽とも言えるだろう。
「え、きゃぁぁぁぁぁぁっ
!!!!」
身動きを封じられた彼女が回避することができずに、その全身を太陽に飲み込まれるだろう。肉を焼く嫌な臭いが辺りに立ち込める。
「これも持っていってくださいよ」
「お前の命運はここで行き止まりだ」
拓哉がモデルガン『MODELtypeβ バレッフ』を構え、傷口をえぐるように狙いを定めて引き金に指をかける。
その隣ではアルトリウスが更なる力を解放する。彼の眼前に展開されるのは数多の青く輝く魔弾。
示し合わせた訳ではないが、彼らは時を同じくして弾丸を放った。いまだ燃え上がるその場へ雨のように弾丸が降り注ぐ。
立ち上る蜃気楼が消えた時、招待者の姿はまだあった。肉体の一部が炭化しているようだ。地に降りる、ふらつきながらも彼女は立っている。
「なんで、なんで、みんな……そんなに楽園がきらいなの?」
「あんたの楽園が嫌いなんだよ。狂気はいらない」
「お前が不要だからだ。楽園は関係ない」
拓哉とアルトリウスが招待者へ答える。オブリビオンの作る楽園は平和とかけ離れている。そんなものを認めるものはこの場にいない。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
尾守・夜野
番長(f01648)と共に戦うぜ。
悪趣味なのは顔だけじゃあねぇってか?
センスも悪いとなれば救いようがねぇな(相手の攻撃を避け、または食らいつつこぼし)
ならちっとはマシにしてやるよ!(2章で吸血してた時にちゃっかりスキットルにいれてた血に呪詛を込めて足元に描かれた抽象画にぶちまけ…冒涜係数を急上昇させ)
はん!強化の式に別のもん混ぜたってなら…弱くなっても仕方ねぇよな?行け!
(犬をけしかけつつ離れ)番長!今だぜ!
星群・ヒカル
悪趣味にヘラヘラ笑いやがって。いいさ、お望み通り遊んでやる。命の保証は全くしないがなッ!
この超宇宙番長と夜野先輩(f05352)が相手をするぜッ!
『星の目』の『視力・第六感』を駆使して敵を探るぞ
真の姿の片鱗である青と銀の炎を纏い
夜野先輩のフォローに入りながら『ロープワーク』
ワイヤーの先の鉤を引っ掛けて移動を封じる
事前に見ていない必殺技を、必殺のタイミングでだけ一瞬で使えばいいわけだ
相手がおれに接近し、夜野先輩から遠ざかるタイミングがあればチャンス
『超宇宙・真眼光波動』を至近距離から一瞬で放ち、勝負を決めるぞ!
※アドリブ歓迎
ふらつきながらも招待者は顔を上げる。尚も笑みを絶やさないのは狂っているからなのか。
「ふふ、うふふ。そっかーみんな楽園は好きなんだ。きらいじゃなくてよかった」
「悪趣味にヘラヘラ笑いやがって。いいさ、お望み通り遊んでやる。命の保証は全くしないがなッ! この超宇宙番長と夜野先輩が相手をするぜッ!」
青と銀の炎を纏った星群・ヒカル(超宇宙番長・f01648)と黒剣を片手に携えた尾守・夜野(墓守・f05352)が立ちはだかる。
「あぁ、悪趣味なのは顔だけじゃあねぇってか?」
眉間に皺を寄せながらも夜野は地を蹴った。黒剣が静かに鳴動する。それは何かを呼び出す、いや、生み出すかのように。
「フォローするぜ、先輩!」
『星の目』を発動させ、敵の動きを見通す。『超宇宙牽引ワイヤー』を構え、フックを起点に絡ませようと投げ放つ。
「んー? 悪趣味って言われるほどかな? そんなつもりじゃないんだけどなぁ」
足でフックを蹴り飛ばし、二人から距離を取る。迫る夜野を迎撃するように黒く焼けてしまった袖を振り回し、新たに極彩色のインクを噴出させた。当たらなくてもいい、自分色にこの場所を染めるためにも。
「暗いからみんなここが嫌なのかな。そうだよね?」
「そんなんじゃねぇんだ。センスも悪いとなれば救いようがねぇな」
彼女が走らせるインクを避けながら夜野は小さくこぼす。手持ちから先ほど補充したスキットルを取り出す。そこへ込めるのはこの元凶に対する呪詛。スキットルの中身、そのモノたちが抱いていたであろう意志を呼び起こすかのように、禍々しい気配を放ちだした。
「良くしたいんだろ? ならもうちっとマシにしてやるよ!」
ロープにより身動きを止めた敵の懐に飛び込むとスキットルの中身をぶちまける。それは毒々しいほどに濃く昏い赤。色黒な肌、焼け焦げた白い服、その両方を蝕むように広がる。地面に広がる抽象画も蝕んでいくのだ。
「ふぇっ!? なにこれっ!」
「はん! 強化の式に別のもん混ぜたってなら……弱くなっても仕方ねぇよな?」
不意に染まる赤黒い色に悲鳴があがる。その姿を鼻で笑いながら夜野は鳴動している黒剣から黒き妖犬たちを呼び出した。牙を剥きだしにうなる黒き妖犬たちへ夜野は指示を出し、飛び下がる。
「行け! 番長! 今だぜ!」
「おぅ!」
夜野と入れ替わるようにヒカルが飛び出した。纏う炎がたなびく、その姿はまさに流星のようだ。薄く瞳を閉じ、星を写す魔眼へ力を回しながら。
「その目に焼き付けろ。これが……超宇宙番長の輝きだッ!」
「みんな、きっ……きゃーっ!」
懐に潜りこんだヒカルの瞳から青く輝く魔力光が迸る。
危険を察知した招待者が身を護るために楽園の住民を呼び出そうとするも間に合わない。手を差し出したときにはもう、ヒカルの力が炸裂していた。
一瞬、この場を青白い光が埋め尽くす。
「これが必殺の一撃だっ!」
魔力光波動によって吹き飛ばされた招待者をヒカルが睨み付ける。その隣には剣を構える夜野が警戒しているのだ。
壁に叩きつけられた招待者はどさりと地に倒れ落ちた。
成功
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ナハト・ダァト
悪いガ、君ノ傀儡ニなるつもりは無いヨ
君ハ未来に邪魔だかラ、ここで始末するサ
天使の輪
一ノ叡智を防御力重視デ使用、激痛耐性、オーラ防御を重ネ
溶け込む夜斬撃を受け流す構成ニ変化させて味方ヲかばうヨ
一般人の霊
九ノ叡智、幸福を抱いていることヲ忘却さセ、ニノ叡智で浄化しよウ
楽園なド、自ら作ろうという意思が無けれバそれはただの幻想サ
象徴画
八ノ叡智
私の触手の「色」デ塗り替えて見せよウ
生命を尊ぶ色ダ
神性さを感じるだろウ?
さア、そのインクで塗り重ねた罪
清算の時ダ
悔いる間も与えなイ
骸へ還り給エ
アドリブ歓迎
ロバート・ブレイズ
「狂気を浴びた連中の相手は皆に任せたが、此処まで『冒涜』された気分は久方振りだ。違う。此れは愉悦の叫びだ。俺の脳髄で液体を啜る蛆虫は、貴様の如き存在を冒涜で『還す』為に在る。俺は冒涜の王だ」
事前に『見て』成功率を上げる技ならば『見せない』事だ
自身を普遍的無意識の領域、即ち空間と成し緩やかに迫ろう
対象の魂を取り込むと同時に姿を表し、鉄塊剣で鎧を砕く一撃
此れを何度も何度も執拗に繰り返す
何処から『無貌』が飛び出すのか判らぬ『恐怖』に震えるが好い
苦戦する場合は退避一択
他の猟兵が攻撃し易いよう立ち回る
「貴様が如何なる狂気を撒き散らし、楽園へ導こうと、俺は独りの王だ。王が神の兵士に成ると思うのか。莫迦な」
地に倒れ伏した招待者は無様にもがきながら立ち上がる。服らしきものは赤黒く汚れ、身体のところどころは煤け黒焦げていた。
「みんな、みんな、酷い。なんで、こんなことするの?」
立ち上がった少女の問いへ返答する者はいない。変わりに声が響く。
「狂気を浴びた連中の相手は皆に任せたが……此処まで『冒涜』された気分は久方振りだ。違う。此れは愉悦の叫びだ。俺の脳髄で液体を啜る蛆虫は、貴様の如き存在を冒涜で『還す』為に在る。俺は冒涜の王だ」
この場に姿は見えないが声の主はロバート・ブレイズ(シャドウ・f00135)だ。彼は空間に溶け込み、普遍的無意識の領域へと変わっている。
「だれ? どこにいるのかな」
「悪いガ、君ハ未来に邪魔だかラ。ここで始末するサ」
辺りを見回す招待者へ『無限光』を浴びるナハト・ダァト(聖泥・f01760)が『腕』を構えた。
ただ淡々と紡がれる言葉に感情が読めない。
「そんなはずない! 私の楽園は必要だよ!」
その叫びに呼応するように白い服を着た半透明な一般人の霊がこの場に現れる。その表情は幸福に満ちた笑みを浮かべていた。
招待者を守るように立ちふさがる彼らにナハトは目を細める。
「それハ幻影だヨ。ShDI AL ChI」
招待者へ矛先は向けず、霊たちへその腕を伸ばした。攻撃するというよりは触れるようなそれは霊たちが抱く幻想を徐々に消し去っていく。無意識化に働きかけるその力は相手を無力化させるものだ。
ナハトの光が力を増し、彼は微笑んだ。旅立つ者を送るかのように。
「楽園なド、自ら作ろうという意思が無けれバそれはただの幻想サ」
IH、と。祈るように彼は光を解き放つ言葉を呟く。その光は敵の目を欺くのにも有効だろう。
「然り。貴様が如何なる狂気を撒き散らし、楽園へ導こうと、俺は独りの王だ。王が神の兵士に成ると思うのか。莫迦な」
招待者の背後、鉄塊剣を振り上げたロバートがいた。彼女が彼の空間に取り込まれた、という方が正しいのかもしれないが。
その剣は敵を袈裟に切り裂き、黒く変わった肌を抉る。血が噴き出るも彼の表情は変わらない。跳ね上げるように刃を返し、逆袈裟に切り上げるのだ。
「貴様は不要。去ね」
その言葉ごと突き刺すようにロバートは剣を突き立てる。傷つけられ、悲鳴をあげるだけの体力が彼女に残されてはいない。
剣をすぐさま引き抜くと彼は空間に溶けて行った。
なぜなら、彼女の消滅は決定しているから。
「さア、清算の時ダ、そのインクで塗り重ねた罪。悔いる間も与えなイ」
呼び出された一般人の霊をすべて浄化させたナハトは右腕を向ける。その手には赤い光が集い、とても強い輝きを放っていた。
「骸へ還り給エ」
神の怒りに触れた者へ裁きの光が放たれる。無辜の人々を狂わせ、玩具のように扱った彼女の罪はとても重い。赤き光は楽園への招待者を飲み込むと跡形も残さずに消えてしまった。
「これデ、終わりだネ」
ナハトの言葉を皮切りに集まった猟兵たちは帰還するだろう。この洞窟に巣くっていたオブリビオンたちを討伐できたからだ。
かくして、狂気に満ちた邪神が世界へ牙をたてることはなくなった。広まっている噂もいずれ忘れ去られるだろう。
願いを叶えてくれる存在がこの洞窟にいないのだから。
成功
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