捧げよ、その身から剥いだ温もりを
―――これは私の友人が体験した話です。
ある夜のこと。
その日、友人は遅くまで飲んだ帰りに普段は通らない裏路地を通って帰ろうとしたのです。
あまり治安のよくない場所というのもあって、酔っていなければ通らないような裏路地を。
そこで友人は見たのです。雑居ビルの地下へ続く階段と、階段の脇に置かれた看板を。
ヘェ、こんな時間でも開いてる店があるんだナァ、などと酔いのまわった頭で興味半分でその階段を下りてみたのです。
階段を降りた先にはたくさんの人が居り、何か催しが行われているようでした。
なにをやっているのだろうと友人が奥へと進んでみると、そこで行われていたのは。
倫理、道徳に反する賭博レース。
ネコチャン賭競走、だったのです。
ふと周囲を見ればまわりに居るのはまっとうではない人ばかり。怖くなった友人は、ここから出ようと思ったのですが。
ヨウ、ニィチャン。さっさとどのネコチャンに賭けるか決めな。
顔に傷のあるコワモテの大男に肩を掴まれ賭博レースをする事になってしまったのです。
そして朝日が昇るころ。友人は身ぐるみを剥がされ素寒貧で街をさまよっていたというのです。
●グリモアベースにて
「っていうネットロア? があるみたいなんにゃ」
ミーア・オセットがグリモアをテシテシしながら話を続ける。なお、ネットロアはSNSなどで広まる怪談の類だ。
今、ミーアが語ったネットロアは『雑居ビルの地下で暴力団が賭博レースをやっていて、足を踏み入れると強制参加させられて身ぐるみを剥がされる』というもの。ツッコミどころも多いが。
「エサで釣ろうがネコが大人しくレースをするわけないのににゃあ……。
まぁ、それはともかくにゃ。このネットロア、UDCが絡んでいるみたいなんにゃ」
ネタみたいな話ではあるが、UDCに関わるのであれば放っておけば何かしらの被害が出かねない。遊び半分でネットロア検証しにいく人もいるだろうし。
UDCが直接出て来るのはレース自体ではなく、その後の身ぐるみはがすところからだ。つまり。
「みんなには、ネコチャン賭競走に参加して、負けてほしいにゃ」
今回のネットロアUDCは『万が一の危険を感じれば即座に逃走する程の、病的な慎重さを備えている』ため、あえて相手の思惑に乗って警戒されずに近づく必要がある。
そして、このUDCの目的は。
「このネットロアUDCは剥がした身ぐるみ……というか誰かが着ている服を集めてるみたいなのにゃ」
なんだそれは。ネタはレースだけではなかったのか。
そう思わずにはいられないかも知れないが、それでも人に被害を与えるUDCを放置することはできない。何とかした方が良い類のモノではあるだろうし。
「にゃんでも邪神の供物にしてるみたいにゃ。UDCの考えることは、よくわからないにゃあ」
邪神絡みとか、ますます放置できない。
とはいえ実際に邪神が召喚される兆候はないため、現段階ではネットロアUDCの対処だけでいいだろう。
「ネコチャン賭競走で身ぐるみはがされれば、UDCの警戒心もだいぶ下がるにゃ。予知ではその後、気が大きくにゃったのか、雑居ビルの上の階で暴力団の組長を殺して身ぐるみ剥いでるにゃ」
この段階でもビルの破壊などUDCの危機感を煽る行動はご法度だ。ほどよく『わざと愚かな行動や失敗を混ぜ込んで』警戒させないようにUDCがどこへ逃げたかを探る必要がある。
「組長殺害後、ビル内は暴力団員が犯人を探し回ってるにゃ。にゃのでUDCはほとぼりが冷めるまでビル内に隠れているつもりみたいにゃ」
人目を避けて出る事が出来ずに中にいるらしい。それでも有能な猟兵が居ると分かればすぐ逃げだすだろうが。
「推理でもしらみつぶしにでも調べて回ればそのうちUDCは見つかるにゃんで、ほどよくがんばるといいにゃ~」
見つけてしまえばあとは全力で倒してかまわない。対面してしまえば、いかにUDCとて逃げるのは困難だろうからだ。
「UDC本体はそんな強くないにゃ。
にゃんで、ほどよく肩の力を抜いて頑張ってきてほしいにゃ!」
ネコチャンを解放するためにも! とミーアは猟兵を送り出すのだった。
●ひとしれず
一人の男が、暗い部屋で呟いている。
その前には整然と積まれた山のようなもの。
「ふふ、この温もり、匂い……やはり至高……!」
一枚、また一枚と畳まれて積み上げられていくそれは、服だ。
女性物、子供服、男性物、様々な人が身に着けていたであろう物が積み上げられてゆく。
「はぁッ、はぁッ……はは、ははは……ッ! この至高の物をこそ、かのモノへの供物に相応しい!!」
まだ温もりを残す布地を熱の籠った視線で舐めまわし、男はまた一枚積み上げる。
積み上がったそれはまるで、神を奉る祭壇のようにも見えた。
こげとら
こげとらです。
真面目に解決に動いてもネタに走っても全力で対応する所存です。
ただ、ネットロアUDCは非常に警戒心が強いため、🔵を稼ぎまくる優秀な猟兵に狙われるとすぐに逃げてしまいます。
そのため【第1章・第2章で12個以上の🔴を獲得する事で油断させない限り、ネットロアUDCに遭遇する事はできません】。
🔴が12個以上稼げた場合は本物のUDCと遭遇できますが、足りなかった場合は第3章で遭遇するのは偽物のハリボテとなります。
なので、こうやって油断させるぜ! みたいなところがあると良いかと思います。
第1章のネコチャン賭競走では、コースアウトしたネコチャンは即失格となり、賭けていた人は身ぐるみはがされます。猟兵の力をもってすれば勝つ事も出来るでしょうが、周りに気づかれないよう妨害する、ネコチャンの気を引いてコースアウトを狙うなどして負けていただければと思います。
なお、身ぐるみはがされると言っても一枚取られる程度になりますし、シナリオが終わればビル内で見つかるのでご安心ください。
第2章では🔵が章クリア分溜まればビル内を調べ尽くしたとしてUDCを見つけることができます。
調査方法、内容は問いませんがやはり優秀な猟兵が居ると感づかれればUDCは逃げてしまいますのでお気を付けください。
ビルにまっとうな人間はいませんので、多少手荒なことをしても大丈夫です。
第3章ではこれまでの鬱憤をぶつけましょう。
それでは、皆さまのご参加をお待ちしております!
第1章 冒険
『賭けレース場へ潜入せよ』
|
POW : 賭けレース競技者として参加し調査する。
SPD : 観客として潜入し、周囲の動きを探る。
WIZ : 裏方へと忍び込み、施設やデータを漁る。
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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日紫樹・蒼
性格:弱気
性質:ヘタレ
※どんな酷い目に遭っても構いません
UDCを誘き出すには、わざと負けないといけないんだよね
いつもの僕なら運が悪いから、どの猫に賭けてもボロ負けするんだろうけど……こういう時に限って、普通に賭けるとボロ勝ちしちゃうんだよね
仕方ないので、UCで結果をある程度思い通りに操作できるよう頑張ります
衣服を代償に『わざと負ける』ための行動(こっそり餌で釣るなど)が成功するよう因果律操作
まあ、元の運が悪過ぎて、代償が衣服一枚じゃ足りないでしょうけれど
「よし、なんとか上手く負けられ……えぇっ!?なんでパンツしか服が残ってないの!?
盛大に負けた結果、素っ裸で放り出されても構いません
階段を降りてゆく。ついた地下の光景は、治安の悪い街の裏路地とも違う空気が澱んでいた。行なわれている賭けレース、ネコチャン賭競走。その結果に湧き、沈む熱気のうねりはアングラな賭場ならではか。
そんな場所に足を踏み入れた日紫樹・蒼(呪われた受難体質・f22709)は、そんな空気に息をのむ。
「 UDCを誘き出すには、わざと負けないといけないんだよね」
確かめるようにつぶやいた言葉は喧騒に消え、蒼はこれから自分が賭けるレースを見やる。
子ネコから大柄、小柄なネコ、種類も様々に集められたネコたちがレースをさせられている。いや、その様子は―――。
あるネコはスタート直後にコースの敷居で爪を研ぎ始め、また別のネコは気ままにどこかへ行こうとしている。めいめい勝手に動くネコたちに一喜一憂している周囲の裏社会の人間たち。
「これじゃどれが勝つかなんて予測できないな……。
いつもの僕なら運が悪いから、どの猫に賭けてもボロ負けするんだろうけど……」
こういう時に限って普通に賭けるとボロ勝ちしてしまう、思った通りにいかない受難体質なのは蒼自身がよく分かっていた。例えば、賭けたネコがたまたま真っ直ぐに駆け出してしまう、とかで。
「仕方ない。こうなったら……」
蒼は自分の賭けるネコが勝たないよう妨害する事にした。エサで釣る、物音を立ててゴールから遠ざける、などなど気ままなネコを勝たせない手段はいくつか思いつく。だが、それを周囲に見とがめられれば賭け事からは外されてしまうかもしれない。だからこそ【水影の悪魔の等価交換(ミズカゲノアクマノトウカコウカン)】で妨害が確実に成功するよう仕向けるのだ。だが、このユーベルコードには代償も必要で。
「ヨウ、ニィチャン……だよな? どうしたんだい服脱いで」
「あっ、いえ、これは……その……」
【水影の悪魔の等価交換】を使う代償、それは服。一枚、また一枚と服を失っていく蒼にも無遠慮な視線が刺さる。不躾な問いかけも何とかかわしつつも視線の集まる賭け事で見つからないよう妨害をする、その困難さはかなりのもの。それをレースが終わるまで続けるとなれば無論。
「よし、なんとか上手く負けられ……えぇっ!? なんでパンツしか服が残ってないの!?」
元々の運の悪さも相まって終わった時にはほとんど服を脱いだ状態だった。
そんな蒼に、さらにレースに負けた取り立てがくる。
「サ、負けたんなら出すモン出して……オヤァ、その様子じゃ財布も何もありゃしねェな。なら仕方ねェ」
押さえときな、と周囲の大男たちに声をかけ蒼に残された最後の一枚を剥ぎ取る。
「これで勘弁してやるよォ。気をつけて帰るんだな」
もうレースに賭ける物もないと判断された蒼は嘲笑う声と視線に見送られ素っ裸で放り出された。
「うぅ、こんな格好で帰れるわけないよ……」
どうしようと途方に暮れる蒼。
だが、UDCに警戒させないで誘い出すという点で見れば、蒼の行動は無駄ではないのだ。
苦戦
🔵🔴🔴
ミーガン・クイン
やーんネコチャンかわいい♡
こういう危ない(?)遊びは大好きなのよねぇ。
触れればベストだけど、ネコチャンに出来る限り近づくわね。
あらかじめ【縮小魔法】で、
指先サイズに小さくした≪守護大天使『ミュールフォン』≫を、
賭け対象のネコチャンに忍び込ませるわ。
剣でちくちくしてネコチャンの妨害させちゃうわね。
みぐるみはしょうがないし、
私のトレードマークのおっぱい布を進呈してあげても良いわよ?
だって普段着のドレスだと1枚で、ねぇ?(
私は脱いでも構わないけどね♪
ケージの中からつぶらな瞳が見上げてくる。こちらに興味があるのかと思いきや、ふいと離れていってしまう。気ままなネコたちの様子を見に来たミーガン・クイン(規格外の魔女・f36759)は思わず声を上げた。
「やーんネコチャンかわいい♡」
「だろう? っぱ、かわいいよなァネコチャンは」
次のレースのネコたちを管理しているらしいコワモテの男がデレた顔で話す。男はネコに注いでいた視線をミーガンに向け、見に来ただけなのかと問うた。値踏みするような男の視線をさらりと流し、ミーガンはまさか、と答える。
「こういう危ない遊びは大好きなのよねぇ」
どのコがいいか、見に来たのよと返すと男も納得したようだ。だがレースに出るネコを触るのはご法度らしい。
「前に撫でてたネコチャンをレースの時間になっても放そうとしないヤツがいてなァ」
それ以来、ネコは見るだけにするという取り決めができたのだ。気持ちは分かるけどよ、と愚痴る男。必ず数人で見張る事になり、見張りが撫でてしまうのも見張られている状況だった。
「でも近くで見るくらいならいいでしょ?」
ミーガンもネコを愛でに来た一人と思わせるように言葉巧みに誘導してゆく。ネコ好き同志という共通項ができれば、案外仲良くできるのもなのだ。
「まァそれくらいならいいぜェ。ネコチャン好きに悪い奴はイネェしな」
男はミーガンがケージに近寄るのを許し、なのネコチャンはどうでこのネコチャンはこんなヤツ、と話しはじめた。その話から必要な情報を抜き取り、ミーガンは目星のネコを選ぶ。そのネコに指先ほどの何かが飛び乗った。周囲に目立たないほど小さなそれは【縮小魔法(ミニマムスペル)】で小さくなぁれ♪と縮小させた≪守護大天使『ミュールフォン』≫だ。ミーガンがネコチャントークで見張りの注意を引いていれば目当てのネコに飛び乗るのはさほど難しくなかった。
「うーん……それじゃ、このネコチャンにするわ」
ミュールフォンを忍び込ませたネコに賭け、ミーガンはレースが見える場所へと戻る。見送った見張りの男が細工に気づくことは最後までなかった。
あらたなネコチャン賭競走が始まる。
ケージから出されたネコたちは、一斉にめいめい好き勝手な動きを始めた。それでもゴールに近づくネコもたまには出て来るのがこのレースの常だ。
「今回のレースは2匹か」「これはどうなるか分からないゼ」
ゴロゴロとじゃれるように進んでは転がるネコチャンが2匹。片方はミーガンが賭けている猫だ。
「いけッ、そのままゴールだ!」「ま、負けるな!」
白熱する観客、のんびり気ままに進むネコ2匹。このままヒートアップするかと思いきや。
突如、片方のネコが首元を掻き始めた。
「ふふっ」
それはミーガンが賭けたネコ……ミーガンが細工を仕掛けたネコだ。ネコに忍び込んでいたミュールフォンが、手にした剣でチクチクし始めたのだ。
それはネコにとってはささやかな、しかし気になって仕方ない刺激。後ろ足で掻き、背中を床にこすりつけてゴロゴロし、お腹をペロペロする。突然のネコの動きに会場がざわつく。
「ど、どうしたんだタマちゃん!」「ああっ、あんなにカイカイしてるチィちゃんかわいい……!」
めいめい勝手に騒ぐ観衆。なおネコに名前はついていないので、叫んでいる呼称は各自が勝手に呼んでいるものである。
ミーガンの目論み通りレースが終わる。ミーガンの賭けていたネコはその後スタート地点まで戻ってコースアウトしたため失格となった。
「ああ、負けちゃったわ。
みぐるみはしょうがないし、私のトレードマークのおっぱい布を進呈してあげても良いわよ?」
賭けに負けた者から取り立てに来た男の鐘がないなら身ぐるみはがすと言う言葉にミーガンは残念そうに返す。だって普段着のドレスだと1枚で、ねぇ? と続けるミーガンに仕方ない、それでかまわんとおっぱい布を回収する男。
ここで美女が脱いだら周りが大変な事になる。
「私は脱いでも構わないけどね♪」
艶っぽく悪戯めいた言の葉を残し、ミーガンはその場を去った。
成功
🔵🔵🔴
ミーヤ・ロロルド(サポート)
『ご飯をくれる人には、悪い人はいないのにゃ!』
楽しいお祭りやイベント、面白そうな所に野生の勘発動させてくるのにゃ!
UCは、ショータイムの方が使うのが多いのにゃ。でもおやつのUCも使ってみたいのにゃ。
戦いの時は得意のSPDで、ジャンプや早業で、相手を翻弄させる戦い方が好きなのにゃよ。
口調だけど、基本は文末に「にゃ」が多いのにゃ。たまににゃよとか、にゃんねとかを使うのにゃ。
食べるの大好きにゃ! 食べるシナリオなら、大食い使って、沢山食べたいのにゃ♪ でも、極端に辛すぎたり、見るからに虫とかゲテモノは……泣いちゃうのにゃ。
皆と楽しく参加できると嬉しいのにゃ☆
※アドリブ、絡み大歓迎♪ エッチはNGで。
リカルド・マスケラス(サポート)
『さーて、どう調べるっすかね~』
装着者の外見 オレンジの瞳 藍色の髪
基本は宇宙バイクに乗ったお面だが、現地のNPCから身体を借りることもある
得意なのはサポートで、非戦闘時はコミュ力や宇宙バイクの機動力で情報収集をしたりなどが可能。ある程度のその世界の知識や常識なども世界知識でわきまえていたりもする
色々な世界を渡って学んだことで魔術や機械の操縦など何でもござれ
また、仮面単体の時のサイズを利用すれば、念動力と組み合わせて、狭い場所を通ったり潜入調査を行うこともできる
基本的には真面目に仕事はしますが、きれいなお姉さんと一緒に行動できる選択肢があれば、迷わずそちらを選ぶチャラいキツネさんです
アトシュ・スカーレット(サポート)
性格
悪ガキから少し成長したが、やっぱり戦うのは好き
大人に見られるように見た目的にも精神的にも背伸びしている
目の前で助けられる人がいるなら積極的に救おうとする
口調は「〜だな。」など男性的
戦闘
【呪詛(腐敗)】と「棘」を組み合わせ、万物を強引に腐敗させる方法をついに編み出した
前衛も後衛もやれる万能型だが、前衛の方が好き
複数の武器を同時に操ることも可能
高速戦闘も力任せの戦闘も状況に応じて使い分ける
(装備していれば)キャバリアにも対応可
光や聖属性は使えません
非戦闘
聞き耳などを駆使した情報収集を中心とする
化術で動物に化けて偵察することも
「ここか。地下の賭場は」
「きれいなお姉さんはいなそうっすね~」
「ごはんもなさそうだにゃ~」
ネコチャン賭競走の会場に、新たに足を踏み入れた3人の猟兵。アトシュ・スカーレット(神擬の人擬・f00811)、リカルド・マスケラス(希望の
仮面・f12160)、ミーヤ・ロロルド(にゃんにゃん元気っ娘・f13185)である。軽い調子のリカルドとミーヤにアトシュは一緒に行動すべきか僅かに迷ったが、事件解決に手は抜くまい、ならば性格の違う者と組んだ方が調査も捗るかと考え直して今に至る。
「おっ、あっちにきれいなお姉さんいるじゃん」
「こっちから美味しそうな匂いがするにゃ」
(……本当に大丈夫か?)
若干の不安に揺れるアトシュを横目にリカルドとミーヤは賭場の状況を観察していた。当人たちは真面目に調査しているが、周囲にはそう捉えられにくいのはこういった場での調査では有用か。アトシュも思考を切り替えて状況把握に努める。
先んじて動いていた猟兵がUDCの警戒心を下げている今なら、多少強引に動いても問題はないだろう。周囲の状況も調べ、そう判断した3人は次のレースに参加するネコたちの所へと移動した。
「ヘッヘッヘ……どうだい、どのネコチャンもかわいいだろう?」
コワモテの男たちが見守っているネコたちのケージ。ネコを見に来たていを装って3人は密かに言葉を交わす。
「やはり予めネコに細工しておいた方が、レース中に仕掛けるよりはバレにくいか」
「ネコチャンの気を引くならミーヤにまかせるにゃ」
「隙があれば周りの男もどうにかできるっすよ」
となれば。
アトシュがケージの影から棘を生やす。腐敗の呪詛を宿す棘はケージの留め具を容易く壊してバラバラにした。
「なんだァ!?」「ケージが! ネコチャンがー!?」
結果、ネコたちは脱走した。
「さあ、こっちにゃ。おいしいおやつの時間にゃー♪」
ミーヤがばら撒いたネコ用のお菓子にネコたちが殺到する。自分も殺到したくなる衝動をぐっと抑え、こっちで捕まえましたにゃと追ってきた男たちにネコを引き渡した。
「いや~助かったっすよ~」
受け取った男の頭にはいつの間にか狐のお面が。
「ン? お前そんな口調だったっけ?」
「やだな、そんなこと言って。自分と兄さんの仲じゃないっすか」
それよりネコチャン連れて帰りましょうよ、と狐面の男がいう。ヒーローマスクのリカルドが、男の一人を操っていた。そしてリカルドが今抱えているネコは。
(上手くいったか。あとはこのままレースに出るだけだな)
化術でアトシュが化けたネコだった。
ここまでお膳立てが整えばあとは容易い。アトシュが化けているネコにリカルドが全賭けして盛大に負けるだけである。負債はリカルドが取り付いている男にかかるが。
「お前、ほんと運がねェなァ」
ネコチャン管理側からいきなり賭けたいと言い出した男(リカルド)が負けたのを見た同僚の男にからかわれる中、ミーヤはアトシュの化けたネコを紛れさせるためにケージに戻さなかった一匹のネコと一緒に持ってきたお菓子を堪能していた。
「ハッ、オレは何を……や、やめろ、オレの一張羅がァーーッ」
リカルドから解放された男が服を持っていかれた。
「さてと、こんなとこっすね」
「ああ。これでUDCを誘きだせればいいが」
「ネコチャン、もうこんなとこに捕まるんじゃにゃいよ」
各々のやるべき事をやり遂げて3人は賭場を後にした。
ミーヤにお菓子を貰っていたネコに見送られて。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
第2章 冒険
『義理と人情と狂気と異形』
|
POW : 事件の関係者たちから直接聴き取り調査を行う。関係者が関係者なので、たぶん荒事もありうる。
SPD : 死体発見場所や死体を分析して犯行方法、犯人の素性などをプロファイルする
WIZ : 死体が発見された場所の残留思念を読み取ったり、同様の事件を図書館やネットで調べたりする
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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「はぁッ、はぁッ……抵抗しなければ死なずに済んだものを」
呟いた男の足元には血だまり。そこに倒れた恰幅の良い人物は、すでにピクリとも動かない。
「ふふ、ふふふ……折角ですし、すべて戴いていくか」
手にしたネコチャンの柄のスーツだけでは飽き足らず、その手を伸ばした――。
その直後。
「く、組長ーーーーッ!」
ネコチャン賭競走を行なっていたビルの上の階から組の者の絶叫が響いた。
「ど、どうしやしょう、ワカ!」
「動転してんじゃねェヨ。ビルから誰も出すな。後はビルの中を調べて回るだけだ」
ビルから出た者はまだ誰もいない。
外に出る出入口には見張りを立てた。
あとはさして広くもない雑居ビルの中をしらみつぶしに探すだけだ。
「エレベーターは止めたな? ヨシ、あとは階段と、各階の部屋だけだ。
ナァに、部屋も事務室とオフィスと物置くらいだ。人を入れれば全部探すなんてわけねェサ」
こうして組長殺しの犯人捜しが始まった。
無論、ただの人にUDCは見つけられない。
だが、UDCはこのビルの中に居るのは間違いない。
見つけ出せば、このネットロアUDCの本体を叩く、またとない機会となるだろう。
宙音・ナナシ
絡み/アドリブOK
pow
本体を叩くには相手を油断させる必要があるってことは頭の片隅に入れておこうかな。
取り敢えず関係者に話を聞いてみるよ。
そう思って話しかけたけど何やら関係者数人と私だけの空間に通される。
嫌な予感が…
恐らく話す気は無いだろうし奇襲で始末しようとするかも。
例えば、男が私を気絶させようと不意打ちで腹に拳を叩き込んできたり。まあ私には有効打にはならないだろうけど、一応お腹に力を込め耐えるよ。
奇襲が効かなかったら相手は驚くだろうけど、同室の連中と襲って来るかも。なら私も【気絶攻撃】で応戦するよ。
ただ勢い余って、全員気絶させてしまうかも。そうしたら結局情報は得られなくて失敗ってことに…。
組長が殺され、騒然とする雑居ビルに足を踏み入れた宙音・ナナシ(異能改造体格闘少女・f42852)。彼女の肉体をもってすればビルごと破壊してUDCを探すくらいは造作もないだろうが。
「本体を叩くには相手を油断させる必要があるってことは頭の片隅に入れておこうかな」
それでUDCに逃げられたら元も子もない。
故に力技で捜索するより先に、取り敢えず関係者に話を聞こうと思ったのだが。
「それで、オジョウチャンは何が聞きたいってェ?」
通された部屋にはガラの悪い男が数人。ナナシをここまで案内してきた男が部屋のドアを閉め、入り口を塞いだところで部屋の奥に居たエラそうな態度の男がガンつけと共に言葉を投げかけてくる。
この程度の威圧に負けるほどヤワではないが、ナナシに向ける男たちの視線、そして態度は話をしようという雰囲気には思えなかった。
(嫌な予感が……)
まァ、オジサンたちも聞きたいことあるんだよネと眼前の男が立ち上がった瞬間、それが合図だったかのように横にいた男がナナシの腹に拳を叩き込んだ。
「どこのシマのモンだオラァ!!!」
見知らぬ者はとりあえず始末とばかりに殴りかかった男の拳は、だがナナシの腹にめり込む事無く止まっていた。
「な……ッ!?」
男が不意を打ったつもりの一撃は、ナナシには通用していなかった。耐える為にお腹に力を入れるまでもなかったかな、と呟いたナナシが部屋の男たちを一瞥する。
「話を聞きたいだけなんだけど。そっちがそのつもりなら」
殴ってきた男の胸元を掴み、壁に投げつける。叩きつけられた衝撃で気を失ったかそのまま動かなくなった。
「ッテメェ!!」「コノアマ……ッ!!」
いきり立つ男に掌底を叩き込んで悶絶させ、隣の男を当て身で飛ばす。部屋にあった机が男と共に吹き飛んでいった。
「まだやる?」
「オトナを舐めんなよ、オジョウチャンよォ!」
「上等」
エラそうな態度の男が警棒のような鈍器を手に殴りかかってくる。周囲の男たちもめいめいにナイフや鈍器を手に襲い掛かってきた。
多少は場慣れしているようだが、その程度の動きでナナシを倒すのは無謀が過ぎた。体捌きで躱して一撃を入れる。或いは男を別の男にぶつけて足並みを乱す。いや、そんな技を弄さずとも単純な肉体のポテンシャルだけで圧倒できるだけの地力がナナシにはあるのだ。
結果。荒れた室内に累々と倒れ伏す男たちの中、ただ一人ナナシだけが無傷で断っていた。
「勢い余ってやっちゃった、かな……」
それはつまり話を聞く相手すべてをKOしたという事にほかならず、どうしたものかとナナシは部屋を見渡した。
「まぁ、この部屋にはいなそうか」
そう独り言ち、ナナシは隠れる場所など壊れ尽くした部屋を後にした。
苦戦
🔵🔴🔴
鈴乃宮・影華(サポート)
「どうも、銀誓館の方から助っ人に来ました」
銀誓館学園所属の能力者……もとい、猟兵の鈴乃宮です。よろしく
学生時代の経験から、大概の状況は冷静に対応できます
体内に棲む黒燐蟲を使役するユーベルコードを主に使用
シルバーレイン世界の技術レベル程度ならハイテク機器も扱えますが
それ以上だとキャバリアの制御AI『E.N.M.A』に頼ります
例え依頼の成功の為でも、他の猟兵に迷惑をかける行為はしません
あとえっちなのは絶対にNG
なお、コメディ色が強い等のネタ依頼の場合は
「これ、真面目にやると負けなのでは……?」と考え
姉の『鈴乃宮・光華』の演技で語尾を「にゃ」にする等全体的にきゃる~ん☆とした言動に変わります
組長が何者かに殺されにわかに騒がしくなる雑居ビル。その中で、また別の騒ぎが起こっていた。
「なんじゃあ、この虫……虫?」
組の男たちが見た事のない虫がビルの片隅から湧き始めたのである。どうしようか、業者でも呼ぶべきなのか、いやでもそんなことをしている場合では……組長殺しの犯人を捜している最中という事もあって判断に迷う男たちに声をかける者がいた。
「どうも、助っ人に来ました」
鈴乃宮・影華(暗がりにて咲く影の華・f35699)である。蟲を何とかしに来ましたよ、と告げる影華がひらひらと振る業者の依頼書類に誰か頼んだのかと案内をする男。
「こんな虫、初めて見るんだがよォ。なんとか出来そうか?」
尋ねる男に無論と応じ、ペットボトルから液体を撒く。するとどうだろう、蟲がもぞもぞと引っ込んでいく。おお、と沸く男たちを目に内心ほくそ笑む影華。
(私の黒燐蟲なので当然なのですけどね)
そう、この蟲は影華が先んじて放った黒燐蟲だった。蟲を操って引っ込めることも当然できる。
その薬があれば虫をどうにかできるのか、いくらだと問う男たちに薬剤は素人が使うのは危険なのでと返し、巣を探さないとダメですねと続ける。ペットボトルの液体はただの水なので、効果がないとバレると面倒だ。
「では蟲を探さないといけませんので、回らせてもらいますね」
そう言って影華はビル内の探索を開始する。どこかに潜んでいるUDCを探す為にも自由に調べられる大義名分が得られたことは大きい。
こういう所にいるんですよね、と駆除の専門家を装って棚を開け、先に転移させている蟲を見つけてほらここに居ますよと捕まえる。そうやって徐々に男たちの警戒を下げ、駆除業者と認識させていきながら一つ一つ部屋を確認していった。
(状況は E.N.M.Aにも送っていますが、全部調べるのはさすがに手間がかかりそうですね)
調べた部屋の状況などはAIである E.N.M.Aにも共有しているが、ビル全てを網羅するのはさすがに影華一人では手に余る。
であるならば、他の猟兵とあわせて探索していない所を減らすように動くべきか。そう判断し、影華は黒燐蟲を使って探索を進めていく。
「あ、あっちにも居そうですね」
「そこはオジキの秘蔵のコレクションを置いている部屋……!」
普段なら人を入れないような場所でもかまわず入り、UDCの居場所を探していくのだった。
成功
🔵🔵🔴
日紫樹・蒼
性格:弱気
性質:ヘタレ
※どんな酷い目に遭っても構いません
素っ裸の状態では外にも出られず、しかしビル内の騒ぎにビビりまくり
裸を見られたくないことも相俟って、適当なロッカーの中に隠れます
まあ、そんなことしても、直ぐにヤクザに見つかるでしょうけれど
尋問と称してボコられ、顔が可愛いので下手すりゃ掘られるかもしれませんね
身の危険を感じUCで液状化して換気ダクトの内部などに逃げ込みます
もっとも、ビルのダクト内なんて、Gとかネズミの巣窟なので……今度はそういった生き物に追われ、怯えて逃げることになるでしょう
「うわぁぁぁ気持ち悪ぃぃぃ!!
全身がGまみれになっても構いません
「うぅ……どうしよう……」
ロッカーの中で日紫樹・蒼(呪われた受難体質・f22709)が震えていた。誰かの気配を感じるたびにびくりとしながら息を潜め、見つからないよう努めている。なぜ、こんなことになったのかというと――。
賭けレースで負けて身ぐるみを剥がされた後、蒼は途方に暮れていた。
「このままじゃ外には出られないし、何か着るものとか見つけられないかな」
そう思ってビルに上がりこんだのだが、その後運悪く組長殺しが発生。ビルの内では男たちが犯人を捜そうと血眼になって徘徊していた。
明らかにカタギではない男が鬼気迫る雰囲気で徘徊する事態に蒼は思わず近くの部屋に逃げ込み、その後はロッカーの中で息を殺して身を潜めていた、という訳だ。いまさら出て行っても誰かに見つかってしまう。そうなれば、どうなるか……頭に過ぎる想像に蒼はすっかり怯えてしまっていた。
「どこ行きやがった、見つけたらただじゃおかねエ!」
「さがせ、さがせェ! まだその辺に居るかもしれねェ!」
怒鳴り声が近くで聞こえる。自分の身体がガタガタと震えるのが止められない。ガチャリ、ガチャリと隣のロッカーが開けられていく音が近づいてくる。
そして――。
「ひっ……」
ガチャリと音を立てて蒼が隠れていたロッカーが開けられた。
「なんだァ、このガキ……」
男の表情は逆光でよく見えないが、苛立った声からロクな感情は向けられていまい。やがて蒼に男の手が伸び、ロッカーから引きずり出されて部屋の中に突き飛ばされた。部屋に居た男たちの視線が蒼に刺さる。全裸で、暴力的な雰囲気に曝され、頭の中が真っ白になる蒼に男の一人が乱暴に掴みかかってきた。
「なァンでこんな所にいるのかなァ? ボウズ?」
「黙ってねェで何か言えやゴラァ!」
「口で言えねェなら身体に聞くしかねェナァ!」
引き倒された蒼を力ずくで尋問する男たち。華奢な体が晒される暴力に身の危険を感じた蒼の身体が溶けてゆく。致命的な事になる前に発動できた【水影の悪魔の呪い(ミズカゲノアクマノノロイ)】で蒼は逃走を図った。
「なんじャア!?」
驚く男たちをすり抜け、蒼が溶けた液状の肉体は部屋の換気ダクト、その開口部目掛けて流れていった。
「はぁ……はぁ……なんとかなった……」
まだバクバクと早打つ心臓の音を感じながら蒼は薄暗い換気ダクトの中で人型に戻った。長い間掃除もされていないのか、ダクトの中はじっとりと湿った汚れがこびりついていた。汚いな、と感じながらも元居た部屋に戻る勇気は湧かない。何とか外へ出られないかと換気ダクトを這い進んでいった蒼だったが。
「あれ、なにか聞こえる……」
何か、小さな物音が聞こえる。まるで小さな足で泥道を踏むような……。
なんだろう、と疑問に思った瞬間、ダクトの奥からさざめくような何かが迫ってきた。
「なんなの……ネズミ!?」
汚れたダクトの奥はネズミの巣になっていた。そしてネズミのみならず、堆積するフンや汚れは黒光りする虫も呼び集めている。下に、壁に、上に。蠢いていた無数のそれらが一斉に侵入者へ向かって雪崩れてきた。
「うわぁぁぁ気持ち悪ぃぃぃ!!」
いっそ痛みでもあった方が気が紛れただろうか。素肌を這う不潔な不快感から逃れようと蒼は必死にダクトを這い回る。
蒼にとって唯一の収穫は、ダクト内にUDCはいないと分かった事だろうか。尤も、少年にそれを気にかける余裕などないだろうが。
苦戦
🔵🔴🔴
エジィルビーナ・ライアドノルト(サポート)
私はエジィルビーナ、エジィでもルビーでも好きに呼んでくれていいよ。
困ってる人がいるなら助けたいし、倒さなきゃいけない強い敵がいるなら全力で立ち向かわなきゃ。全力で頑張るからね!
実は近接戦闘以外はあんまり得意じゃないんだけど……あっ、畑仕事ならチェリから教えてもらったから、少しはわかるよ!
力仕事はそんなに得意じゃないけど、足りない分は気合と根性でカバーするから任せといて!
☆
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
響納・リズ(サポート)
「皆様のお役に立てるよう、頑張りますわね」
移動時には、急ぐ要素があれば、サモン・アーティアを使って移動します。
洞窟など罠が予想される場所では、慎重に進み、万が一、けが人が出た場合は、回復UCにてすぐに癒します。
調査の際は、タロットを使っての失せもの探しや、礼儀作法を使っての交渉。聞き耳等を駆使して、情報を得ようとします。
交渉時は相手の機嫌を損ねないよう気遣いながら、気持ちよく話してくれるように進めます。
共同で進む際は、足手まといにならないよう、相手を補佐する形で参加したいと思います。
アドリブ、絡みは大歓迎で、エッチなのはNGです。
まだ組長殺しの犯人を捜す騒ぎの収まらぬ雑居ビルに新たに訪れる女性が二人。
「こういう探索はあんまり得意じゃないんだけど……でも、全力で頑張るからね!」
「細かなところは私が調べますので、協力してあたりましょう。荒事になった時には頼りにさせていただきますね」
エジィルビーナ・ライアドノルト(シールドスピアの天誓騎士・f39095)と響納・リズ(オルテンシアの貴婦人・f13175)である。ここの調査に訪れた際にばったり会った二人はお互いの得意分野が異なる事もあり協働することにしたのだ。
「どこから調べようか。あ、私のことはエジィでもルビーでも好きに呼んでくれていいよ」
「ではルビー様と呼ばせていただきますわ。調べるところは先に占っておきましたので、そちらからでいかがでしょう?」
他に当てがあるわけで無し、リズの提案に頷くエジィルビーナ。
が、ビルの中を進めば当然、目を光らせて犯人探しをしているガラの悪い連中に絡まれる。
「アァ!? コンな所でなにしてンだァ!?」
リズが交渉の言葉をかけるよりも早く、男は力任せに殴りかかってきた。
す、と前に出たエジィルビーナが男の拳を払い、鳩尾に一発。床に転がり男は悶絶した。
「血の気が多いなぁ……すこし話を聞いてほしいんだけど」
倒れた男にエジィルビーナ は【スーパーライフベリー】を放り、回復させる。また殴りかかってきたとしても対処できると男に知らしめ、場所をリズに譲った。
「私たちも犯人探しに来ましたの。ご協力していただけません?」
にこやかに話すリズの言葉に男は頷く。男とて見ず知らずの人間がそう都合よく助けに来るなど思ってはいない。が、ここで事を荒立てるより協力できるところまで協力し、利用してやろうという腹だろうか。単に睨みを利かせるエジィルビーナに敵わないと思っただけかもしれないが。
「そンで、なにが聞きてェんだ?」
「まずは、まだ調べていない部屋を教えていただけませんか?」
先んじて調査を進めている猟兵の調べた場所と合わせれば、まだ調べていない所も絞れるはずだ。その候補の場所とリズの占いが示した場所を合わせれば、より効率的に調べることも出来るだろう。
部屋の中をざっくりとエジィルビーナが見て回り、気になったところをリズがあらためる。そうして下の階から順に見て回り、ついに最後の部屋を調べ終わって。
「……見つかりませんわね」
占いではエレベーター近辺が怪しいと出ていた。それに他の猟兵の探索も加えて考えれば調べていない部屋はないはず……。
「一応、エレベーターも見ておこうか。もしかしたら上に居るかもしれないし……って、やっぱりいないね」
止まっているエレベーターのドアを開け、中と上を見てきたエジィルビーナの言葉にリズがハッと顔を上げる。
「占いではエレベーターの近くと出ました。それは、その周辺の部屋や物置などではなく……」
エレベーターの最下層。地下階のエレベータードアを開き。
「エレベーターシャフトの下、ですわね」
これ以上下はないはずのエレベーターシャフトの底は見えず、ただ底知れぬ闇が広がっていた。
成功
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第3章 ボス戦
『間違った方向のエリート狂信者』
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POW : 素晴らしき強制脱衣テク
【邪神の為、己の為、漢達の夢の為という思い】を籠めた【神業とも呼べる超人的な高速脱衣テク】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【衣服(場合により鎧や装甲)】のみを攻撃する。
SPD : その気になったら空だって飛んでみせる
全身を【まだ俺はこんな所で止まれないとかいう思い】で覆い、自身の【衣服への熱い執念と執着】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
WIZ : 高速強制着衣テク(衣装内容は任意)
自身の【趣味の衣服を着させて脱がしたいという欲求】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
👑11
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「くっ、何故だ。何故、この場所がバレる
……!?」
大したことないと侮っていた。自ら手を誤る、あるいは視野の狭い相手。そう思わされていたのだと気が付いた時には、既に猟兵の手は自分へと迫っていた。
「だが、まだだ。凌ぎきればいいだけのことだ……!」
時間さえあれば祭壇を移すことも出来たろう。だが、今となっては時すでに遅く。自らが積み重ねてきた供物を手放すことも出来ず。
ネットロアUDC……『間違った方向のエリート狂信者』は猟兵を迎え撃つ。
闇の底を仄かな明かりが照らし出す。ガランと広がる空間に奉るように、あるいは捧げるように積まれた衣類。
生温かな狂気を孕んだ空気が満ち、狂信者は口端を引き上げる。嗤うように、引き攣るように。
ハリボテではない、本物のUDCとの戦いが始まろうとしていた。
日紫樹・蒼
性格:弱気
性質:ヘタレ
※どんな酷い目に遭っても構いません
大量のGから辛くも逃げて来たところでUDCに遭遇
しかし、既に素っ裸なので脱がせる服はありません
追い打ちを掛けるように、UDCの攻撃で恥ずかしい衣装を着せられます
もう自分ではどうにもできなくなり悪魔に頼りますが、悪魔はドSなので碌なことをしません
『あら、素敵なお洋服ね。それじゃ、もっと素敵に改造してあげるわ
UC効果で悪魔が蒼とUDCの衣服を共に魔法生物『触手服』に変換!
化学繊維などの素材が触手化しUDCの生命力を吸収!
ついでに蒼も蹂躙します
「うわぁぁぁん! 気持ち悪ぃぃぃ!
触手に何を奪われても構いません
薄闇に足音が響く。固い靴音ではなく、裸足が床を叩く小さな音。その音の主は身体を縮こまらせ、辺りを窺いながら歩いていた。
「どこなんだろう、ここ……逃げるのに必死で戻る道もわからないや……」
少年の名は日紫樹・蒼 (呪われた受難体質・f22709)。雑居ビルからほうほうのていで逃げてきた彼は一糸まとわぬ姿になっていた。こんな状態で誰かに遭えばどうなるか……イヤな想像を頭を振って追い出し、何とかしなければと彷徨っていた蒼。だが、運の悪い事にここはネットロアUDCの隠れ住む拠点である。
「来たか、猟兵。だが、その様子では……ハハッ、まともに戦う事もできんか!」
この場に踏み込んだ猟兵を認め、姿を現した『間違った方向のエリート狂信者』は蒼の姿を見て嗤う。それは剥ぐ服もない落胆か、何も為せぬと見た嘲笑か。
「供物も持たぬとあればさして興味もない、が……ふむ、素体は悪くない」
狂信者の舐めるような視線を肌で感じ、蒼の背筋に悪寒が走る。
「ぼ、僕だって……!」
武器一つとしてない身としては、張れるのは声と虚勢くらいのもの。だが、戦える、と続けようとした言葉は喉につかえて出なかった。震える足は動かず、逃げ出すこともままならない蒼の様子に狂信者はほくそ笑む。
「怯える事はない、少年。ちょっと私の趣味に付き合ってもらうだけさ……」
口を笑みの形に歪ませながら迫る狂信者の目は獲物を前にした狩人のソレだ。己の欲望のまま、UDCの指が蒼に触れる。
「ひぃぃっ!?」
全身をなぞる指の感触に思わず声が出る。次に感じたのは温かな布の感触だった。だが、その服はまるで園児が着るようなスモックであり。蒼は服を着れた安堵と、見世物にされて辱められるような心地を味わう事となった。そこに追い打ちをかける声が一つ。
『あら、素敵なお洋服ね。それじゃ、もっと素敵に改造してあげるわ』
何処からともなく現れた悪魔の行使する【水影の悪魔の物質変換(ミズカゲノアクマノブッシツヘンカン)】の力が広がってゆく。
ぞわり、と震え、濡れた音が響く。蒼の服の下で何かが蠢いている。いや、服そのものが意志を持ち、内へ向けて蠢いていた。
「うわぁぁぁん! 気持ち悪ぃぃぃ!」
ぬるりとした触手服へと変えられた服が蒼をも弄ぶ。だが、悪魔の効力が及んだのは蒼の服のみでなく。
「な、なんだこれは!? 私を、私の服を、このような……ッ」
狂信者の服もまた触手服へと変えられていた。繊維の一つ一つが微細な触手となって肌をくすぐり、集まって太さを増した触手が嬲る感触が二人を襲う。
だが蒼は感じ取っていた。UDCに纏わりつく触手が生命力を奪い、着実に狂信者を弱らせていっていることを。
(このまま頑張れば、なんとかなるかも……)
そう思い、耐えようとする蒼をあざ笑うかのような悪魔の声が聞こえる。
『素敵なお洋服に似合う顔になってきたじゃない』
「ひぃやぁぁ!? そんな、いやだぁぁ!!」
さらに苛烈さを増してゆく触手服の蠢きに蒼も狂信者も翻弄されていった。
成功
🔵🔵🔴
アトシュ・スカーレット(サポート)
性格
悪ガキから少し成長したが、やっぱり戦うのは好き
大人に見られるように見た目的にも精神的にも背伸びしている
目の前で助けられる人がいるなら積極的に救おうとする
口調は「〜だな。」など男性的
戦闘
【呪詛(腐敗)】と「棘」を組み合わせ、万物を強引に腐敗させる方法をついに編み出した
前衛も後衛もやれる万能型だが、前衛の方が好き
複数の武器を同時に操ることも可能
高速戦闘も力任せの戦闘も状況に応じて使い分ける
(装備していれば)キャバリアにも対応可
光や聖属性は使えません
非戦闘
聞き耳などを駆使した情報収集を中心とする
化術で動物に化けて偵察することも
「こんな所に隠れていたとはな」
地下へと下りたアトシュ・スカーレット(神擬の人擬・f00811)はぐるりとあたりを見渡した。
地下は広く、天井も高い。動くのに邪魔になるような障害物も無く、薄闇である事を除けば視界も悪くない。祭儀を行なっていた為か閉塞感はない、ガランとした空間。
これなら気兼ねなく戦えそうだ――。
本物のUDCを突き止め、ここまで来たのだ。今までのように手を抜く必要も最早、ない。
魔剣を抜き、戦闘に意識を向けるアトシュの前には一人の男。ネットロアUDCであるエリート教信者。
「く、次々と……! だが、まだ! 私の情熱は……!」
顔色からも消耗が見える狂信者へと距離を詰めるアトシュ。相手は武装らしい武装は持っていない。力で圧すか、技で詰めるか。相手の力量を計るため、正面から斬りこんだ。
様子見で放った一撃は、しかし跳び退こうとした狂信者を斬り裂いていた。速度も技もアトシュには及ばないだろう動き。これならさっさと片付けられるか。そうアトシュが思った矢先。
「私の情熱は、この程度で潰えはしない!!」
自らの傷に構わず狂信者が跳ねた――いや、飛んだ。これまでとは比較にならない速度で狂信者が飛んでいる。
「戦いらしくなってきたな。いいぜ、スピード勝負ならのってやる」
不敵に口の端に笑みを刻み、アトシュは狂信者を見上げる。出鱈目な動きで飛び回っているが、飛び道具などを使ってくる気配は無い。ならば向こうが何かするには接近してくるはず。敵の姿は視界に捉え、アトシュは呼気を整え敵の出方を見る。
「キサマの! 衣服も! 剥ぎ取ってやろう!」
哄笑と共に左右上下に軌道を変えながら突っ込んで来る狂信者。アトシュの死角に入るように高速で後ろへと回りこみ、服へと手を伸ばそうとした刹那。
雷が迸った。
「天翔る雷よ、この身を喰らいて全てを引き裂け! 」
【加速術・雷光式(クロックアップ・トネール)】の雷の魔力を纏ったアトシュが狂信者よりも疾く、身を翻し魔剣を振う。狂信者はまだこんな所で止まれるかという思いでアトシュの剣を潜ってさらに手を伸ばそうとするも返す刃が落とされる。落雷の如き閃光と轟音。雷を纏ったアトシュの魔剣は狂信者を斬り裂き、吹き飛ばした。
「ダメージは与えたが逃がした、か」
だが手ごたえはあった。アトシュの剣はたしかに、ネットロアUDCに深く傷を与えていた。
成功
🔵🔵🔴
鈴乃宮・影華(サポート)
「どうも、銀誓館の方から助っ人に来ました」
銀誓館学園所属の能力者……もとい、猟兵の鈴乃宮です
かつての様にイグニッションカードを掲げ
「――
起動!」で各種装備を展開
友人から教わった剣術や
体内に棲む黒燐蟲を使役するユーベルコードを主に使用
TPO次第では
キャバリアの制御AIである『E.N.M.A』が主体となるユーベルコードを使用したり
『轟蘭華』や乗り物に搭載した重火器をブッ放したり
「
神機召喚――
起動!」からのキャバリア召喚で暴れます
例え依頼の成功の為でも、他の猟兵に迷惑をかける行為はしません
不明な点はお任せします
傷を負いながらも何とか距離を離したエリート狂信者の前に、新たな人影が立塞がった。
「どうも、銀誓館の方から助っ人に来ました」
銀誓館学園所属の能力者……もとい、猟兵の鈴乃宮・影華(暗がりにて咲く影の華・f35699)だ。
「く、しつこい奴らめ……だが丸腰で何ができる!」
相手が武器を持ってないと見るや語気強く息巻く狂信者の前で影華は一枚のカードを抜き放つ。
「
神機召喚 ――
起動!」
掲げたイグニッションカードから武装が展開される。地下とはいえ十分な広さのある空間、そして相手が脱衣特化であるならば。
「巨大ロボ……だと!?」
驚愕の声を上げる狂信者の眼前で影華の召喚したキャバリアが身を起こす。
「あなたの戯れもこれで終わりにしましょう」
巨大なガトリングの砲口が狂信者を捉える。制御AIである『E.N.M.A』のサポートもあればこの距離で外す道理もなく。
「だが! 私は諦めはしない!!」
それでもキャバリアに乗る影華に向けて疾駆する狂信者に向けられた重火器が掃射された。射撃の爆音と床の砕ける音が過ぎ去ったころには狂信者の姿は残っていなかった。倒せたのでなければ、影華から服を剥ぐのを諦めて逃げたか。
「ちょっとやりすぎましたか……ええ、そうですね。戻りましょうか」
『E.N.M.A』の分析でも相当のダメージは与えているはず。これ以上の深追いは避け、影華は後を託すのだった。
成功
🔵🔵🔴
クローネ・マックローネ(サポート)
普段の口調は「クローネちゃん(自分の名前+ちゃん、相手の名前+ちゃん、だね♪、だよ!、だよね★、なのかな?)」
真剣な時は「クローネ(ワタシ、相手の名前+ちゃん、だね、だよ、だよね、なのかな? )」
強調したい時は「★」を、それ以外の時は「♪」を語尾につけるよ♪
基本は一般人の安全を優先で♪
多少の怪我は厭わず積極的に動くね♪
シリアスな場面では状況の解決を優先するよ
コメディ色が強い場合はその場のノリを楽しむ方向で動くね♪
えっち系・状態変化系もばっちこいだよ♪
絡みOK、NG無しだよ★
UCは少人数を召喚する系か単体攻撃系を優先して使うよ♪
状況に応じてMS様が好きなのを使ってね★
後はMS様におまかせするね♪
「ごほッ、ひどい目にあった……」
ほうほうのていで逃げてきたエリート狂信者。次こそは衣服を剥ぎ取る相手をと巡らせた視線の先に黒い人影が映る。クローネ・マックローネ(快楽至上主義な死霊術士・f05148)である。猟兵の姿を認め、警戒する狂信者にクローネの明るい声が響いた。
「クローネちゃんの名前はクローネちゃん♪よろしくね★」
こちらを攻撃してくる様子もないくろーねのよクローネの様子に狂信者の警戒心も緩む。男装の麗人を剥ぐのも悪くない――そう狂信者が思うを感じたか、クローネも誘うように笑みを浮かべる。
「ならば遠慮なく……いくぞ!」
自らの欲求に従い、狂信者が真っ向から手を伸ばす。音もなく脱がされ、取られるクローネの着衣。一枚、また一枚と嬉々として脱がしてゆく狂信者の動きが止まった。
眼前の女以外の視線を感じる。謀られたか、と焦り周囲を見回す狂信者。その視線の先には黒肌の色っぽい女螺旋忍軍の姿が。
「あ、やっと気が付いた♪」
うまく悪戯が成功したと笑うクローネ。何が何だかわからない狂信者。クローネの放っていた【ワタシの影の追跡者(ブラック・ニンジャ・シャドウ・チェイサー)】も満足げに闇に消える。元より極めて発見されにくい追跡者、いたずらで姿を見せなければ狂信者が知る事もなかっただろう。
「なんだ……なんなのだ!?」
混乱する狂信者の目の前でクローネの姿が溶ける。ブラックタールであるクローネが人の形状を解いただけなのだが、度重なる異常事態は狂信者をさらに追い詰めていた。
ヒトと思っていたモノが溶ける。ならばさっきまで自分が剥いでいたのは何だったのか……。
声なき悲鳴を上げ、狂信者は一目散に逃げだした。
その心に、そして信念にまで及ぶトラウマを刻まれながら。
「もっと遊びたかったのにな~★」
残されたクローネは少し残念そうな声を残し、次の楽しみを探して去るのだった。
成功
🔵🔵🔴
宙音・ナナシ
絡み/アドリブOK
何はともあれ相手の出方を伺わないとね…。
そう思って睨み合いになり、次の瞬間相手が動くと…
強制脱衣テクニックによってパーカーを引っ剥がされてしまうよ。
私はまさかそんな事されるとは思わず、怒って【グラップル】と【電撃】で攻撃。
ただ、相手の思い通りにならないよう冷静に戦うよ。
なるべく奪われた服を取り返せるように立ち回って、取り返したらUVを思いっきり叩き込んでフィニッシュだよ。
幾度かの交戦を経て『間違った方向のエリート狂信者』には決して少なくないダメージが蓄積していた。だが、その目にはまだ諦めはない。
「まだだ、この程度……集めた衣服を、この情熱を失うことに比べれば……!」
ふらつく足取り、ぎらつく視線。完全に不審者であるその様子を目にした宙音・ナナシ(異能改造体格闘少女・f42852)はどうしたものかと思案する。
「何はともあれ相手の出方を伺わないとね……」
近接主体のナナシが戦うには自分の距離まで近づかなければならないが、何を考えているか分からない相手に近づくのは相応のリスクが伴う。殴り合いになってもナナシの身体能力ならば滅多なことでは遅れはとるまい。そう考え姿を見せたナナシにエリート狂信者の視線が吸い寄せられる。
「ハハッ、武器も持たず姿を見せるとは……キサマから剥いだ服も供物に加えてくれる!」
舌なめずりでもしそうな勢いでナナシに視線を這わせる狂信者。不審者というより変質者か。値踏みをするような視線を感じながらナナシは狂信者の動きを見る。相手も武器は持っていない様子。それなら素手で掴みかかる、格闘を仕掛けてくる、辺りが想定か。どう動くか……ナナシが身構え、睨み合いになって数瞬。狂信者が動いた。
(近づいてくる……なら、あいつの攻撃を受けてカウンターか、それとも……)
攻撃される、と読んだナナシ。だが、狂信者の動きは想定の斜め上を行った。
「邪神の為、己の為、漢達の夢の為……その服はいただく!」
狂信者が狙ったのはナナシではなく、ナナシの服。ナナシの反応が遅れた僅かな隙に狂信者は素晴らしき強制脱衣テクを使って事を終えていた。
「なにを……きゃあ!?」
ナナシの着ていたパーカーがない。解放されて弾むたわわな胸を腕で押さえるナナシ。
「ふふ……この手触り、ぬくもり……まさに至高!」
高らかに変態的な発言をする狂信者。思ってもいない事態にナナシの頭に血が上る。
「返して! 私のパーカー!」
「脱がした服を、何故返す必要がある!」
怒りのままにナナシの振う拳が雷撃を帯びる。狂信者はパーカーを奪った達成感に酔いしれたまま、怒りの猛撃を何とかしのいでいた。
隙あらば他の衣服も奪おうとするエリート狂信者だったが、手を伸ばせばナナシに逆に掴まれそうになる。天賦の才か、培った経験か、この状況下でもナナシはこれ以上相手の思い通りにならないように動いていた。そして膠着してきた状況にしびれを切らした狂信者が強引に服を脱がしにかかった隙に、ついにナナシは自分のパーカーをつかみ取る。
「しまった! 私の(奪った)パーカーが!」
エリート狂信者の意識がパーカーに取られた隙を見逃すナナシではない。取り返したパーカーを翻して袖を通し、そのまま伸ばした腕が狂信者を捕まえた。
「掴んだ……もう、逃がさない」
対の手でファスナーを上げてパーカーを着直したナナシは帯電させた腕でそのまま狂信者を持ち上げる。そして頭上でホールドしたまま狂信者を床にたたきつけた。【帯電式スーパーパワーボム(タイデンシキスーパーパワーボム)】が炸裂し、薄闇を鮮烈な雷光が照らす。一度たたきつけ、そのまま胴の筋肉だけで持ち上げ、さらに叩きつける。床に狂信者が打ち付けられるたびに、硬質な床が爆ぜる音と帯電した電撃が迸る音が響いた。
「これで……フィニッシュだよ」
最後に全力で狂信者を叩きつけるナナシ。周囲の床は砕けて凹み、ちょっとしたクレーターのようになっている。もうもうと吹きあげられた床の破片と粉塵が晴れるころ、その中心に居たのはナナシだけだった。
……・・・・・。
……ネットロアUDCが倒され、辺りに静寂が戻る。
ふと気が付くと、周囲は朽ちた廃ビルになっていた。
―――これは私の友人が体験した話です。
身ぐるみを剥がされた友人が、日が昇ってからもう一度雑居ビルを訪れると。
そこは人ひとりいない廃墟だったそうです。
なんでも昔にヤクザの抗争があって、死人が出てから誰もいなくなったそうです。
ただ、そこで可愛がられていたネコチャンが、いまでも―――。
ネットロアはUDCが原因だったのか。
その発端は別にあったのか。
語るもの無き静寂に、かすかにネコの鳴き声が聞こえた。
大成功
🔵🔵🔵