●キマイラフューチャーのとある道端
キマイラのマウリー・タウミーは道端に座り込んでいた。キリンの耳はへにゃりと折れ、シマウマの尻尾はピクリとも動かない。すぐ傍のギターケースは閉じられたまま、ただ地面に置かれていた。
通行人はそんな彼の様子を気にする様子もなく、彼の前を通り過ぎていく。だがもし、彼がギターを手にし演奏したならば、道行く人々の少なくない数がそこで立ち止まったであろう。それほど、彼のギターの演奏は素晴らしいものであった。――そう、そのはずであった。だが今以前と同じようにギターを演奏をしたとしても、誰も見向きはしないだろう。なぜなら、彼の【輝き】は失われてしまったのだから。
●グリモアベース
集まった傭兵たちを見渡しながら、草壁・行成は語り掛ける。
「厄介なオブリビオンが出たようだ」
行成はかいつまんで事情を説明していく。道端でギターの演奏をし、その演奏技術でそれなりには人気のあったマウリー。しかし、いつ頃からか彼の演奏を見る為に立ち止まる者たちは減っていき、ついには誰一人、彼の演奏に足を止める者がいなくなったのだ。そんな日々にマウリーは意気消沈し、路傍の演奏者から路傍の物置になってしまったのだ。それでも自らのテリトリーに足を運んでいるのは、長年の習慣なのだろう。
「これにはオブリビオン、怪人が関わっているのだが、どうやら【輝き】を奪えるらしい」
行成は手元のグリモアを見つめながら、表情を険しくする。キマイラフューチャーは住民のほぼすべてが遊んで暮らしている世界だ。ではもし、その娯楽を提供するアーティストたちの【輝き】がなくなってしまうとどうなるか。考えたくもない未来だ。
「怪人の詳細まではわからなかったものの、その特殊性から、怪人を倒せば【輝き】も元に戻ると考えられる。だが」
そこで行成は言葉を区切る。それはグリモア猟兵としての頼みなのか、それとも元プロデューサーとしての個人的な頼みであるのか。未だその先の言葉がどちらの気持ちであるのか、答えが出なかったからだ。それでも、彼は口にした。
「彼に、マウリー・タウミーにまずは会ってあげて欲しい。そして、元気づけてやって欲しいんだ。運動に誘ってあげてもいい。ギタ―演奏者ではない才能を見出し、再プロデュースしてあげてもいい。怪人を倒せば輝きを取り戻せる、と希望を持たせてあげてもいい」
傭兵たちであれば、どんな些細な情報からでも怪人を探し出す事が出来るだろう。わざわざマウリー・タウミーに接触する必要はない。やはり、わがままだろうか、と行成は口を噤む。
だが、猟兵たちは笑って頷いてくれた。任せてくれ、と。
行成はそんな猟兵たちの温かみを信じ、改めて頭を下げた。
「どうか、キマイラフューチャーの未来を、マウリー・タウミーを救って欲しい」
ゲンジー
●挨拶
こんにちは。ゲンジーです。ハートフルストーリーのようなお話に出来ればなぁ、と思っています。キマイラフューチャーは楽しいお話がたくさんで、楽しいですねぇ。
●シナリオについて
第一章ではマウリー・タウミー(男・17歳ぐらいかな?)を元気づけてあげてください。そののち、ボス怪人を守る怪人集団を倒し、元凶のボス戦へと移ります。怪人たちの元に向かった後は、避難誘導は必要ありません。怪人との戦いのみに集中して大丈夫です。
●プレイングについて
あまり深く考えなくても大丈夫です。フラグメントを参考に、マッチョにしたい、アイドル目指してみない? 未来は明るいぞ! 等々皆様のマウリーを元気付けたいという思いをプレイングに込めて送ってもらえればOKです。
共同プレイングNGの場合、「共同NG」「共N」等記載頂ければ配慮いたします。
それでは、皆様のプレイング、お待ちしています。
第1章 冒険
『ナクシモノ』
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POW : 筋トレや体を動かして鬱を吹き飛ばそうとします
SPD : 別のアートで大成すれば、輝きは戻るので別の方法を探します
WIZ : 輝きを奪った怪人を特定し、討つことでアーティストに元の輝きを戻そうとします
👑11
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ベル・オーキィ
遊んで暮らせる世界とはうらやましい!!
ともあれ!奪われたものは取り戻し、盗人には報いあれかし、ですね!!
私の行動は【マウリーと会い、彼が『輝き』を奪われていること、私たちが取り戻すことを伝える】こと!
彼に被害を自覚させ、怒りを煽るように仕向けます!怒りは強いエネルギーです!私たちが怪人を倒すまで、きっと彼を支えてくれるでしょう!!
彼は猟兵を知らないでしょうから、私のことは同じく『輝き』を奪われた被害者としておきましょう!怒りを共有しやすくなるはずです!
「私の故郷だと、麦泥棒は滅多打ちにする習わしでした!だから此処でもそうします!あなたのそれ(ギターを指さし)がそうせよと言っています!!」
●グリモアベースにて
「遊んで暮らせる世界とはうらやましい!! ともあれ! 奪われたものは取り戻し、盗人には報いあれかし、ですね!!」
とんでもない声量でベル・オーキィ(騒乱魔道士の弟子・f08838)が他のグリモアへ語り掛ける。他のグリモアはうるさそうに感じながらも、頷いた。
「まずは私がマウリーくんに、怪人の事を教えてあげますね!」
キマイラフューチャーの世界へと移り行く景色の中、ベルはそう宣言した。
●キマイラフューチャーのとある道端
今日もまた、マウリー・タウミーはいつもの道端に座り込んでいた。
(ああ……俺何やってんだろ)
演奏するでもなく、しかし家に引きこもる訳でもなく。ただ無気力に普段の場所に座っている。そんな彼に声を掛ける者がいた。
「こんにちは! マウリーくん! あなたに伝えなければならない事があります!!」
「な、なんでしょう……」
ベルである。ウェーブがかった髪を揺らしながら、マウリーへと詰め寄る。勢いと声量に圧され、マウリーは話を聞く以外の選択肢を選べなかった。
「あなたの輝きは奪われたのです! 怪人に! 心当たりはありませんか!?」
ベルがマウリーに問う。そういえば、とマウリーは振り返る。
「イソギンチャクみたいなのを連れたティラノサウルス頭のやつが俺の演奏を見ていた事があった……そう言われればあの時からだ……」
「やはり! 私もそうだから、わかります! 怒りますよね、怒って当然です!」
マウリーが怒りを自覚した事を察知するや否や、ベルがその怒りを共感し、煽っていく。
「私の故郷だと、麦泥棒は滅多打ちにする習わしでした! だから此処でもそうします! あなたのそれがそうせよと言っています!!」
ベルがマウリーの傍にあるギターを指さす。マウリーが相棒として大切にしているギターだ。今のマウリーを見たら、確かにギターはそう言うのかもしれない。
「私が、私たちが怪人を倒し、あなたの輝きを取り戻して見せます! だから、これからあなたを尋ねる人たちを信じてあげてください!」
ベルの言葉によりマウリーの心に灯った「怒り」はきっと、彼を無気力なままにしないだろう。
成功
🔵🔵🔴
リコリス・ミトライユ
マウリーさん、もともとギターをやっていたってことなら、
音感はあるほうだと思うのです。
だから、ダンスに誘ってみようと思います。
新しいことをやってみるっていうのも、大事なことですしね。
もしかしたら、事件が解決した後にも役立つかもですし。
最初から激しいダンスも良くないですし、
ワルツとか、ゆったりした音楽の踊り方を教えましょう。
本当は男の子がリードするものですけど、
今回はあたしがステップを教える形で、踊りますね。
ちょっとくらいぎこちなくても、気にしないっ。
ぴったりとひっついて、内緒話。
「どんなのを弾いていたか、教えていただけますか?」
「スランプから脱したら、弾いてみてくださいませんか?」
なんて。
「怪人が俺の輝きを……許せねぇ……!」
マウリーの心に怒りが灯っいた。それは心の支えとなるが、先に進める一歩とはまだ成りえていない。
「こんにちは、マウリーさん」
そんなマウリーへと優しく声を掛ける女性がいた。リコリス・ミトライユ(曙光に舞う薔薇・f02296)である。随分と薄着な為、色白の肌が惜しみなく露出されている。それはとある部分も同じで、そこに視線をいかせぬよう、マウリーはどうにかリコリスのガーネット色の瞳へ集中させる。
「な、何でしょう」
「私とダンスをしませんか?」
「え? いや、俺、ダンスとか踊ってみたみたいなのやった事なくて」
「ふふ。大丈夫です。さあ」
リコリスはマウリーの手を引いて、立ち上がらせた。先ほどのベルの言葉を思い出しながら、マウリーは言われるがままである。
「ワン、ツー、スリー。ワン、ツー、スリー」
選曲はワルツ。曲こそ流れていないが、リコリスのスカイダンサーとしての技術でカバーしている。マウリーは手取り足取り教わるワルツのステップに必死で、下ばかり見ている。
「どんなのを弾いていたか、教えていただけますか?」
「き、基本はロックとかですね」
「わぁ、かっこいいです」
「いや、俺なんか、ちっとも……」
下ばかり見ているのはぎこちなく動かす足を見る為だけではない。リコリスの、上半球が露になったたわわな実りを直視する為でもある。マウリーは男なのだ。仕方ない。
「ふふ。謙遜しないでください。スランプから脱したら、弾いてみてくださいませんか?」
「……考えとく」
ややぶっきらぼうな答えにも、リコリスは「きっとですよ?」とにこりと微笑んだ。そんなリコリスの笑顔は、マウリーのモチベーションを確かに回復させた。マウリーはこの時のワルツのステップとリコリスの「感触」を、きっと一生忘れる事はないだろう。
成功
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リルア・ルリア
『今、わたしはこの若者のための素晴らしい喜びを知らせに来たのでしゅ』聖書ルカ2:10改変
早速コードを発動して二人の聖歌隊を出したら、マウリーさんの前に三人並んでしゃがみこむわ!
じーーーっと顔を見つめて、じーーーっとギターケースを見つめて、じ〜〜〜っと顔を見つめるの。
そのあと聖歌隊の二人に、元凶の怪人探しをお願いして、リルは彼のために歌うわ。
怪人は、場違いな輝きを放ってるかも!
「ねえ、そのギターで伴奏をつけて欲しいの。輝きが無いなら、リルがお兄さんに負ぶさって一緒に輝いてあげるわ」
そう言ってマウリーさんの背中によじ登って、聖者らしくピカピカしながら、励ますことのできる歌を歌うわ!
神羅・アマミ
「えー、今日はぁ、ギターを演奏してみようと思いますのじゃー、デヘヘー」
マウリーがいつもいるという道端で、設置したカメラの前に気持ち悪いヘラヘラした半笑いを浮かべ立ちます。
イェチューバー(そんな名称実在するかは知らない)として動画製作・配信デビューをするという逃げ道を彼に提示してあげたい。
最早公害寸前の前衛芸術、ポリスの出動待ったなしという彼女の致命的に低い演奏&歌唱スキルが、限りなくハードルを下げこの世界に飛び込むきっかけになってくれると思うのです!
でもそれ以上に、「どんなに下手糞でも聴衆がつかなくても、愛と情熱があったから音楽の道を選んだ」という気持ちを究極的には思い出してほしい(偉そう)!
暗峠・マナコ
ごきげんよう、キレイなお方
ここでキラキラしたものが観れると聞いたのだけれど、ご存知ないですか?
あはは、嘘をついても無駄ですよ、あなたがキラキラしたモノだというのは知ってます
私は自分が輝く方法は知らないけれど、「キレイなモノ」は沢山知っているのですよ
星空って知ってる?宝石って知ってる?とてもキレイなキラキラしたものです
けれどそれは、違うのでしょう
失ってしまったのはきっと「貴方の輝き」なのでしょう
よければ一緒に歩きませんか?
街中をよく観て、強く惹かれるモノがあれば、きっとそれがあなたの輝きです
あなたが奪われた輝きを一緒に見つけましょう
貴方の輝きを貴方が見つけられないワケわないのですから
明智・珠稀
■心境
人々の輝きを奪うだなんて、あぁなんと非道いことを…!
く、ふふ、怪人に負けない私の愛をもってして、マウリーさんに輝きを取り戻してみせましょう、ふ、ふふ…!
■行動
ふ、ふふ。
はじめまして、マウリーさん。
私、明智珠稀と申します…!
ぜひ、私とセッションしていただきたいのです…!
(愛用の三味線を取り出し)
貴方の音色と混じり合いたい…!
(三味線で激しいロックを)
(共に演奏できたら)
あぁ、素晴らしい音色…!
激しく美しいです…!(恍惚)
私はとても興奮しております、心地好いです、マウリーさんはいかがでしょう?
観客おらずとも、楽しく演奏できれば
そこに輝きはきっとついてきます、ふふ…!
※アドリブ大歓迎です!
――『今、わたしはこの若者のための素晴らしい喜びを知らせに来たのでしゅ』聖書ルカ2:10改変
●キマイラフューチャーのとある道端
「あれがワルツか……ちょっと勉強してみようかな」
頬を緩ませながらマウリーは一人つぶやく。【輝き】を失っていたマウリーだが、ベルとリコリスによってモチベーションはかなり高まっていた。しかし。
「…………」
マウリーはちらりと地面に置いたギターを見る。まだ、それを取り出そうという気持ちにはなれていない。
「……にしてもあれは……動画配信者、なのか」
マウリーの座る道端から少し離れた道端で、何やら少女がごそごそと機材を組み立てている。ようやく機材が形を成してきて、マウリーでもカメラであると認識出来た。少女はむふー、と満足そうに機材を眺めた後、カメラの前でギターを取り出した。和装にはやや不釣り合いではあったが、華やかな色合いの着物であるからか、不思議と似合ってもいた。
「えー、今日はぁ、ギターを演奏してみようと思いますのじゃー、デヘヘー」
神羅・アマミ(凡テ一太刀ニテ征ク・f00889)がカメラに向かってヘラヘラと気持ち悪い半笑いを浮かべている。猟兵が演奏する、という物珍しさから見物人もそこそこいる。
(動画配信、か。ああ、音MADとかちょっと作ってみたいと思った事あったっけかなぁ)
マウリーは動画サイトの事を思いながら、アマミを見やる。どういう演奏をするのか、気になったという事もある。だが、マウリーの期待通りにはいかなかった。
アマミに演奏と歌唱の才能がなかったのだ。かきならすギターは最早公害寸前。気持ちよくなってきたのか歌も歌いだしたが、あまりにひどい。見物人たちもいそいそとその場を去っている。ポリスを呼ばれるのも時間の問題かもしれない。
「まじか……演奏出来ない猟兵もいるんだ……ん?」
アマミの演奏に気を取られていたが、いつの間にかマウリーを見つめる子供たちがマウリーの前にしゃがみこんでいた。一人はリルア・ルリア(天使の歌う小夜曲・f05670)である。そして、もう二人はユーベルコード『三人寄れば聖歌隊(リトル・リトル・クワイヤーズ)』により召喚されたリルアそっくりの聖歌隊である。三人はじーーーっとマウリーの顔を見つめた。
「え、え?」
そして次に視線をギターケースに向けると、やはりじーーーっと見つめる三人。穴が空くほど見つめたあと、またマウリーの顔をじ~~~っと見つめてきた。
「えっと、何か?」
マウリーが三人へ話かけると、リルはそれには答えず、二人の【聖歌隊】へこしょこしょと何かを告げた。二人の【聖歌隊】はこくりと頷くと、その場を離れていった。
混乱するマウリーだが、リルはすっくと立ちあがり、歌を奏でた。
その歌声は、極上であった。機械の体から奏でられるとは、いや、機械だからこそなのか。聴く者を癒す、天上の調べ。
何が何やらわからぬまにも、歌に聞き入っていたマウリーに、ふとリルが歌を止め、語り掛ける。
「ねえ、そのギターで伴奏をつけて欲しいの。【輝き】が無いなら、リルがお兄さんに負ぶさって一緒に輝いてあげるわ」
え? とマウリーが言葉を返す暇もなく、リルがマウリーの背中へとよじ登った。そして、ピカピカと光ながら、マウリーを励ますような歌を奏でる。
(はは……そんな無茶苦茶な)
物理的に背中で輝かれているが、無論【輝き】が戻る訳もない。だが、マウリーの活力は少しずつ戻ってきている。
ちらりとギターケースを見て、手を伸ばす。かちり、かちりと枷を外す。……が、そこまでだった。
(本当に【輝き】を奪われたからなのか。俺の演奏がへたっぴだったからじゃないのか)
少し離れた場所で演奏を続けているアマミを見る。彼女は、へたっぴだ。見物人は避けて通っている。だが、それでも演奏し続けている。それは、何故なんだろう。
「ふ、ふふ。はじめまして、マウリーさん。私、明智珠稀と申します……!」
そんなマウリーの思考は新たな猟兵の出現で遮られた。明智・珠稀(ダンピールの妖剣士・f00992)が胸に手を置きその長身を折り曲げながら、マウリーへ丁寧におじぎする。左手には、むしろこっちをアマミが持っているべきではというべき三味線を持っている。
「ぜひ、私とセッションしていただきたいのです……! 貴方の音色と混じり合いたい……!」
顔が近い。あまりの美形に思わず変な気を起こしそうになるマウリー。背中でマウリーを励ます歌を歌い続けているリルがいなかったら危なかった。
珠稀はマウリーの返事を待つ事無く、マウリーの隣へ座り(距離が近い)、三味線を弾き始める。
(うまいな……)
ちらちらと横目でマウリーを見る視線がなければ、ゆっくりと聞き入っていたいぐらいだ。三味線とは思えない、激しいロック。だが、まさに和洋折衷。三味線だからこそ味わえる深みと、ロックゆえの激しさが、嫌味なく調和している。『サウンド・オブ・パワー』。珠稀のユーベルコードであるが、それは確かな技術に裏付けされたものである。。
珠稀の三味線はリルの歌声と合わさり二重奏(デュオ)となり、より聴く者の心を揺さぶっていく。道行く人が立ち止まらないのが不思議なぐらいだ(アマミのせいである)。
(誰も見てないってのに。楽しそうに)
気付けばマウリーはギターを手に取っていた。そして、奏でていた。即興の三重奏(トリオ)を――いや、アマミと合わせて、四重奏(カルテット)を。
「あぁ、素晴らしい音色……! 激しく美しいです……! 私はとても興奮しております、心地好いです」
恍惚な表情を浮かべながら、珠稀がマウリーへ問いかける。
「マウリーさんはいかがでしょう?」
聞かれるまでも、言うまでもない。マウリーは無心に、演奏を続ける。珠稀も、その答えで十分、とやはり演奏を続ける。
何も考えず。誰かが見ているかどうかなんて関係なく。
ただただ下手くそなギターを弾き鳴らす羅刹と。背中で励ましの歌を歌う機械人形と。色目を使いながら三味線で見事なロックを奏でるダンピールと。アマチュアレベルのギターを鳴らすキマイラと。
(楽しいなぁ……そっか、俺は音楽をやってるのは、これだからだよな……! でもさ!)
誰も立ち止まる事はない。なにせ、そこに【輝き】はないのだから。いつの間にか、マウリーは演奏を止めていた。
「ごきげんよう、キレイなお方。ここでキラキラしたものが観れると聞いたのだけれど、ご存知ないですか?」
そんなマウリーに暗峠・マナコ(トコヤミヒトツ・f04241)が声をかけた。黒い液体状の彼女だが、優しい表情をしている気がした。
マウリーは静かに首を振る。
「あはは、嘘をついても無駄ですよ、あなたがキラキラしたモノだというのは知ってます」
そっとマウリーの頬へ手をそえるマナコ。
「私は自分が輝く方法は知らないけれど、「キレイなモノ」は沢山知っているのですよ。星空って知ってる? 宝石って知ってる? とてもキレイなキラキラしたものです」
自然の営みにより出来る、景色と嗜好品。それらの輝きを、人々は求めてやまない。
「けれどそれは、違うのでしょう。失ってしまったのはきっと「貴方の【輝き】」なのでしょう」
それは偶然の賜物かもしれない。努力の結晶なのかもしれない。
「よければ一緒に歩きませんか? 街中をよく観て、強く惹かれるモノがあれば、きっとそれがあなたの【輝き】です」
マナコはマウリーから溢れる涙を拭ってやった。
マウリーは思い出していた。一生懸命に練習した日々を。足を止めてくれた人がいた初めての日を。「応援してるよ」と言っってくれた人がいた事を。ああ、だからオブリビオンは奪えたのだろう。それは捨てていた過去だ。だが、彼はそれを礎に未来に生きているのだ。奪われていい訳がない。
「また見て欲しい……俺はこんなにうまくなってるって、みんなに伝えたいから……!」
マウリーの慟哭に、マナコは微笑む。マナコがちらりとマウリーの背中に乗るリルへ目をやると、こくりとリルが頷いた。【聖歌隊】の二人を使い、怪人探しを平行していたリルは、めぼしい場所がいくつかある、と視線で語り掛けた。マナコもまた、こくりと頷く。
「さあ、涙を拭いて。あなたが奪われた輝きを一緒に見つけましょう。貴方の輝きを貴方が見つけられないワケはないのですから」
マナコの言葉に、マウリーは涙をぬぐい、頷いた。
「俺の輝きを、取り戻してください!!」
尚、この時撮影し、とある動画サイトに投稿したアマミの動画の再生数は18で止まったという。
大成功
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第2章 集団戦
『イソギンチャク怪人』
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POW : テンタクル・テンペスト
予め【触手を振り回しておく】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD : ウネウネ・アネモネ
自身の肉体を【ウネウネモード】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
WIZ : ポイゾナス・ポリプ
【頭部】から【毒針のついた触手】を放ち、【麻痺毒】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
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●とある広場
リルの【聖歌隊】二人の下調べで、怪人たちが群れている場所は特定できた。都市から少しだけ離れた広場で、とある怪人たちは歌い踊っていたのだ。
そんな怪人たちの中心にいるティラノサウル怪人を指さし、マウリーが告げる。
「あいつです。あいつが、俺の【輝き】を持ってます!」
その言葉に猟兵たちは頷いた。そして、マウリーを安全な場所へと逃がすと、怪人たちの元へ近づいた。
「ああん、猟兵じゃねぇか! 何の用だ? 俺たち歌って踊ってるだけだぜ!?」
ティラノサウル怪人の言葉に、ぎゃはははと笑う怪人たち。確かに傍目にはそうだろう。だが、猟兵たちは知っている。【輝き】を奪われた本人から聞いたのだから。元凶は奴である、と。
猟兵たちが聞く耳を持たない事に気付いたティラノサウル怪人は慌てて告げた。
「や、やれ! お前たち! 俺を、俺様の輝きを守れ!」
イソギンチャク怪人たちがティラノサウル怪人を守るようにし、猟兵たちへ襲い掛かる。まずはイソギンチャク怪人たちをどうにかしなければ、絶対にティラノサウル怪人へと届かないだろう。
猟兵たちもまた、臨戦態勢を取った。
神羅・アマミ
「て、テメーかー!妾の【輝き】を奪ったのはー!ゆるせねー!再生数18の怒り、その身で受け止めろー!」
お門違いの逆恨みも甚だしい。
完全に頭が血が昇った状態で真っ先にティラノ怪人を目指します。
ユーベルコード『見切』を発動し、迫り来る触手を掻い潜ることができる一点を全く雑に予想。
もし抜けられたらば単騎駆けで大将の首級を挙げに勇み足、あわや前後を挟まれそう…というところで自称盾キャラの設定を思い出し(設定言った)踵を返します。
偶然という形でモブ怪人どもを撹乱・分断すると共に、結果他の猟兵と共に逆に挟み撃ちに持ち込み、殲滅を加速させるのが理想です。
「おっといけねー!妾は弱きを守る最強の盾じゃったぜー!」
ベル・オーキィ
いたぁ!盗人め!百発か、二百発か、ともかく滅多打ちです!!
私の行動は《【『泥土に浮かぶもの』の怒り】で相手の身動きを封じ、仲間たちの手助けをする》こと、そして《敵が『テンタクル・テンペスト』の予備動作を見つけ、前線の仲間に知らせること》!
敵の足を止めれば戦闘は確実に有利になるはず!ユーベルコード使用時は敵との距離を開き、『ウネウネ・アネモネ』で攻撃されないよう注意を払います!
また、敵との距離があれば『テンタクル・テンペスト』も確認しやすいはず!仲間が手痛い一撃を受けないよう注意を送ります!声の大きさには自信がありますから!!
「さあ、空が翳って嵐が来たぞ!どうしたどうした輝きとやらは!!」
「いたぁ! 盗人め! 百発か、二百発か、ともかく滅多打ちです!!」
「て、テメーかー! 妾の【輝き】を奪ったのはー! ゆるせねー! 再生数18の怒り、その身で受け止めろー!」
ベル・オーキィ(騒乱魔道士の弟子・f08838)と神羅・アマミ(凡テ一太刀ニテ征ク・f00889)の怒声が重なり、思わず二人は顔を見合わせる。そして、互いにこくりと頷きあった。
(きっとこやつも再生数が伸びなかったのじゃな! その辛さ、わかるのじゃ!)
(何か怒ってるけど、たぶんこれ逆恨みだ! でも怒りはいいエネルギーになるし、まぁいっか!)
意思疎通は全く出来ていなかったが、お互いにやる事は同じ。些細な事だろう。
アマミは頭に血が上ったままに、勢いをつけて真っ先にティラノ怪人へ、つまりはイソギンチャク怪人の群れへと突っ込んでいった。無論、怪人たちが素通りさせるはずもない。
イソギンチャク怪人たちは自身の肉体を【ウネウネモード】へ変えると、一斉にアマミへと触手を伸ばしていく。
「クハハ! そのような攻撃など、妾には当たらぬのじゃ!」
アマミはかっと目を見開き、瞳だけを左右へ動かす。そして、見つけた隙間へ迷いなく駆け出した。その瞳はイソギンチャク怪人から伸ばされた触手の軌道を読み、伸縮性、弾力性を加味したうえで幾重も折り重なりながらアマミへ向かってくる触手のわずかな隙間を読み切った訳ではない。ただてきとうに何となく空いていた気がする隙間へ走っていっただけだ。それこそがアマミのユーベルコード『見切(ミキレ)』なのであった。
「ティラノサウル怪人、覚悟ォ!」
そんなユーベルコードでも、不思議とイソギンチャク怪人の隙間を縫ってアマミは着実に群れの中を駆けていく。数はそれなりにいるものの、怪人たち同士の距離が近すぎた。伸ばした触手が互いに当たらぬような位置取りがなかなかうまくいかず、上手く当てられないのだ。だが、距離が近いのであれば別の攻撃手段がある。
アマミがティラノサウル怪人まであと半分、というところで、近くにいたイソギンチャク怪人たちはアマミへとその頭部を向けた。そして、【毒針のついた触手】をアマミへ向けて放つ。当たれば【麻痺毒】が全身に回り、取り残されたアマミは無事ではすまない。血のように赤い触手がアマミへ襲いかかる。
しかし、その触手はアマミへ届く事はなかった。触手は吹き荒れる風に煽られ、どれもがでたらめな方角へと惑わされる。イソギンチャク怪人たちの頭上に、いつの間にか【小規模な嵐】が巻き起こっていたのだ。
「驟り漂え! 毒蛇を運ぶ、黒き車軸よ! 『泥土に浮かぶものの怒り(イラ・フロタルバッロ)』!」
ベルのユーベルコードである。騒乱魔法により生み出された嵐は【暴風雨】となり、イソギンチャク怪人たちの触手をあらぬ方向へと乱していく。
「さあ、空が翳って嵐が来たぞ! どうしたどうした輝きとやらは!!」
騒乱魔法は術者の怒りを自然に伝え、天変地異を起こす魔法である。ベルの怒りは天に満ち、身勝手な怪人たちへすさまじい雨と風となり襲い掛かる。
「アマミさーーーん! 大丈夫ですかーーーーー!!」
そんな【暴風雨】にも負けないベルの声は、雨風で少しは頭の血が引いたアマミの耳に容易く届いた。ベルの声でアマミははっとする。
「おっといけねー! 妾は弱きを守る最強の盾じゃったぜー!」
そして元来た道をすたこらと駆け戻っていくアマミ。自称盾キャラはその本懐を思い出す。
アマミの特に意味のない単騎駆けではあったが、イソギンチャク怪人たちは大きく二つに分けられた事となる。そして、ベルのユーベルコードにより、その多くは身動きが取れなくなっている。
成功
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暗峠・マナコ
許せないわ。
あなた達の歌や踊りはキレイじゃないわ。
許せないわ。
自分は身を晒さず他のものを盾にするなんてキレイじゃないわ。
許せないわ。
私達の道を塞ぐ、あのうねうねしているモノは、キレイじゃないわ。
今は少女の形をとっていますが、私とて正しい形を持たないトコヤミヒトツ。
【バウンドモード】で腕を伸ばして、あのやかましく動くキレイじゃないうねうねしたモノたちを一纏めにしてみせましょう。
トドメはキレイな皆さんにお任せしますね。
キラキラ輝く皆さんに正してもらえるのであれば、このキレイじゃないモノたちもキレイになることでしょう。
「許せないわ。あなた達の歌や踊りはキレイじゃないわ」
暗峠・マナコ(トコヤミヒトツ・f04241)は銀の瞳に怒りを燃やす。目の前のティラノサウル怪人も、イソギンチャク怪人も、マナコの瞳にはキレイなモノに見えなかった。
「許せないわ。自分は身を晒さず他のものを盾にするなんてキレイじゃないわ」
少女を形どっていたマナコだが、その身がぐにぐにと波打っている。それは吹き荒れる嵐によってか、マナコの瞳に宿る怒りによってか。
「許せないわ。私達の道を塞ぐ、あのうねうねしているモノは、キレイじゃないわ」
マナコは自身の両腕を【バウンドモード】へ変える。ブラックタールの彼女と、ユーベルコード『バウンドボディ』との相性は抜群だ。腕を敢えてどろりと形をタールへ「戻し」、伸縮性と弾力性を与える。
イソギンチャク怪人たちも嵐によって思うようにはいかずとも、それでも猟兵たちへ向け触手を伸ばしてくる。一つ一つの威力は減衰していても、いくつかがまとめて当たれば、やはりダメージは相当なものとなるだろう。
マナコは構わず自らの腕をイソギンチャク怪人へと伸ばした。二十を超える触手に対し、わずか二本の触手はあまりに頼りない。しなりながらマナコの腕を打ち据えようとした触手の一本は――さらにマナコの「腕から伸びた腕」により、逆にはじき返された。
正しい形を持たぬトコヤミヒトツ。その体の応用力に、その場の猟兵たちも思わず息を吞む。
イソギンチャク怪人たちの触手を弾きながら、腕から伸びた腕はさらに腕を伸ばし、怪人を一人、また一人と捕えていく。やがて、その場にいた全てのイソギンチャク怪人たちが、マナコの腕に捕らわれた。
「トドメはキレイな皆さんにお任せしますね」
そう言って、マナコはわずかに残った少女部分で笑顔を作る。キラキラ輝く皆さんに正してもらえるのであれば、このキレイじゃないモノたちもキレイになることでしょう。
そんな儚い期待を抱きながら。
こうして、マナコの触手により全てのイソギンチャク怪人は捕らえられたのであった。
大成功
🔵🔵🔵
明智・珠稀
く、ふふ…
あのイソギンチャクさんがマウリーさんの輝きを…!
ウネウネは個人的には縛られたくなる大好物ではあります、が
それ以上に今の私はマウリーさんに輝きを取り戻すことに夢中です、ふふ。
さぁ、私の妖刀とその触手を交わせましょう…!
■戦闘
妖刀にてイソギンチャクの頭部目掛けて斬撃を
触手伸ばして来たら距離を取り、【妖刀解放】を使用し
高速移動、衝撃波で触手を切り落とす。
「あぁ、斬り応えがありますね、ふふ…!」
寿命縮むのも気にせず、軽やかに楽しそうに。
仲間と声を掛けあい連携意識
「こちらの触手は私にお任せください、ふふ…!」
自分や仲間が触手受けたら
「どんな味がしましょうか…」と
【吸血】
※アドリブ大歓迎です!
「く、ふふ……あの怪人がマウリーさんの輝きを……!」
普段であればウネウネぬらぬらの触手を見れば興奮で涎の一つでも垂らしたであろう明智・珠稀(和吸血鬼、妖刀添え・f00992)だが、今この時ばかりは奪われたマウリーの【輝き】を取り戻す事に夢中である。すらりと妖刀【閃天紫花(センテンシケン)】を鞘から抜き、構えた。
「さぁ、私の妖刀とその触手を交わせましょう……!」
だが、触手への興奮は抑えきれていないようで、ギラギラと目を輝かせながら、マナコが捕えているイソギンチャク怪人へと向かっていく。ああ、後でマナコさんに縛ってもらえないかな、などとも思いつつ。
「こちらの触手は私にお任せください、ふふ……!」
アマミが二つに分断させた右半分の群れへ斬り込んでいく。暴風雨とタールにより身動きの取れないイソギンチャク怪人たちはやられるがまま、ただ撫で斬りにされていく。だが、さすがはオブリビオンと言うべきか。そんな状況からでも触手を【ウネウネモード】へと変え、珠稀へ放っていく。
「おっと、ふふ……縛りプレイや鞭プレイは大好物ですが、今は遠慮しておきましょう」
伸びてきた触手から一旦距離を取り、ユーベルコード『妖剣解放』を発動する。今まさに触手が珠稀を捉えたと見えた次の瞬間には、既に珠稀はそこにいない。高速移動により再びイソギンチャク怪人たちの群れへ接敵すると、怨念を纏わせた妖刀で斬りかかる。その斬撃は衝撃波を生み、さらに周囲のイソギンチャク怪人が刻まれていく。
「あぁ、斬り応えがありますね、ふふ……!」
寿命が縮むのも気にせず、軽やかに、楽しそうに。半数のイソギンチャク怪人は珠稀により、斬って捨てられた。
成功
🔵🔵🔴
熱海・靖久
■心情
青春の輝き…それを奪うだなんて許せないよね。
遅ればせながら、僕も参戦させていただくよ。
僕だってダンサーなんだ。これから更に輝きたいし、ね。
それに…あの怪人たちのダンスはなんだか許せない僕だよ。
■行動
数が多そうなので【オルタナティブ・ダブル】で
もう一人の自分(他の人格の『春』)を召喚。
「ケケケ。あの気持ち悪いのぶっ倒そうぜ、靖久」
「楽しそうだね」と苦笑しつつ
シューズでのスライディングで転ばせたり、蹴りやパンチ等
肉体攻撃をメインに、触手を掴んで振り回したりのパワープレイを。
「僕世代だって輝けること、証明してみせるよ」
無表情、しかし熱い眼差しで敵と戦う。
【アドリブ大歓迎】
「青春の輝き……それを奪うだなんて許せないよね。遅ればせながら、僕も参戦させていただくよ」
熱海・靖久(多重人格者のスカイダンサー・f06809)が一歩歩み出た。
「僕だってダンサーなんだ。これから更に輝きたいし、ね。それに……あの怪人たちのダンスはなんだか許せない僕だよ」
靖久にも覚えがある。路上でのパフォーマンスは、少なくない者が通る道だ。だが、誰もが最初から多くの人たちが足を止めるようなパフォーマンスを出来た訳ではない。それでも日々通い続け、技術を上げ、たくさんの人が足を止めてくれるようになったのだ。そして、もっともっと、とさらに自らを輝かせようと努力していくのだ。その【輝き】を、あっさりと奪い去った怪人を、許せる訳がない。
「行こうか、春」
ユーベルコード『オルタナティブ・ダブル』。靖久の隣に、【もうひとりの自分】が召喚される。姿形は同じだが、その表情にはどこか若々しさを感じさせる。
「ケケケ。あの気持ち悪いのぶっ倒そうぜ、靖久」
「楽しそうだね」
靖久は苦笑しつつ、戦闘準備を始める。トントン、と片足のつま先で地面を蹴り、レガリアスシューズの機能を活性化させる。
「僕世代だって輝けること、証明してみせるよ」
靖久と春は同時に動いた。シューズから噴き出る圧縮された空気は二人を加速させ、瞬時にイソギンチャク怪人たちの眼前へ運ぶ。マナコに捕らわれている分断された左側の怪人たちは、自らの両腕を触手のようにウネウネと靖久と春へと伸ばした。
だが、靖久はそれらの触手を掴むと、逆に自らに引き寄せ、拳を叩きこんだ。イソギンチャク怪人はその一撃であっさりと昏倒する。さらに迫りくる触手をステップを踏むようにかわすと、近くの怪人をすらりと伸びた脚で蹴り倒す。
少し離れたところでは、春が触手を掴んで振り回し、周囲の怪人をなぎ倒していく。
(春は派手だなぁ……おっと)
などと思考していると、触手が横殴りに靖久へ向かってきたため、身をかがめた。靖久はそのついでとばかりに、そのままスライディングし、目の前の怪人を転ばせる。そして流れるように起き上がりながら、倒れた怪人を踏み抜き、さらに近くの怪人へハイキックを見舞う。
「ケケケ。さあさあ、もっと戦おう(おどろう)ぜ」
「さあ、闘い(ダンス)は始まったばかりだよ」
春は楽し気に、そして靖久は無表情ながらも、熱い眼差しで怪人と戦い(おどり)を続ける。
成功
🔵🔵🔴
第3章 ボス戦
『ティラノサウルス怪人』
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POW : ザウルスモード
【巨大なティラノザウルス】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD : ティラノクロー
【鋭く長い爪】による素早い一撃を放つ。また、【装甲をパージする】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ : 学説バリエーション
対象の攻撃を軽減する【羽毛モード】に変身しつつ、【体から生えた鋭く尖った針のような羽毛】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑17
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猟兵たちの手により、イソギンチャク怪人たちは全て倒れた。後方でただ眺めていたティラノサウル怪人は、組んでいた腕を解く。
「数だけじゃ猟兵は倒せねぇか」
怪人は覚悟を決め、その大きな顎で猟兵たちを威嚇する。
「てめぇらの【輝き】は何故だか奪えねぇが、倒しちまえば関係ねぇ。おら、かかってこいや!」
神羅・アマミ
「はあああ!?嘘こいてんじゃねー!テメーは妾の【輝き】をも奪ったじゃろがー!!」
余裕ぶっこいた態度に怒り心頭、怪人の殲滅を心に深く刻みます。
盾キャラとして敵をいの一番にブッ叩くべくコード『緞帳』を発動。
無謀な単騎駆けで身体能力を極限まで高めつつ、技能『捨て身の一撃』とのシナジーを狙います。
パージによる加速と回避のみが不安要素ですが気にしない。
再生数二桁…たった一言「つまんね」とだけ吐き捨てられたコメント…ただでさえ少ないのに更に減っていくフォロワー…全ての哀しみの感情がアマミの全身に流れ込み、今必殺の一撃とならん!
「オラー!吐けー!吐き出せー!妾の【輝き】を早く返しやがれー!!」
ありません。
「はあああ!? 嘘こいてんじゃねー! テメーは妾の【輝き】をも奪ったじゃろがー!!」
「え、いやだから奪えないって」
「じゃかあしいー!! 覚悟出来てるんじゃろなー!」
怪人の余裕ぶった態度がいけなかったのか、アマミの話を聞かないところがいけなかったのか、とにもかくにもアマミは怒り心頭。怪人滅すべしと深く心へ刻み込む。 そしてやる事はもちろん、特攻だ。自称盾キャラが特攻するのはおかしいのではないか? なるほど一理ある。だが、事アマミにおいてはそれこそが武器となる。例えいの一番、敵が最も元気で五体満足な状態であろうと、単騎でただ特攻す。バフもデバフもも知った事かと駆けていくその姿こそ、アマミであるのだから――ユーベルコード『緞帳』。無謀な単騎駆けはアマミの身体能力を極限にまで高める。
「話を聞かん奴だな! まあいい、捻りつぶしてやるわ! 『ザウルスモード』!」
ティラノサウル怪人は巨大化し、その身をティラノサウルスへと変えた。その全長、十メートル。それでいて、既存のイメージである手の短さはなく、むしろ振るえば地面を簡単にそぎ落とせるほどに巨大化している。もはや広場の半分近くが彼の攻撃範囲となった。
「ゴガアアア! オオオオオ!」
だが、そこに理性はない。ただただ動くものを屠らんとする、野生だけがある。
しかし、そんなことこそアマミにとってどうでもよい。再生数二桁……「つまんね」とだけわざわざ書き捨てられた一コメ……0のマイリス……減っていくフォロワー……それら全ての哀しみの感情が、アマミの全身を駆け巡る!
「ヴォアアアアア!」
動くアマミへ向かって、その巨大な腕が振り下ろされる。だが構わずアマミは駆け抜ける。そこに計算などない。ただただ怒りと哀しみによって突き進むのみ!
「オラー!」
前傾姿勢となったティラノサウル怪人の横っ面へ、全ての感情を乗せた必殺の一撃を叩きこむ! たまらず怪人はふらりとぐらつき、距離を取った。アマミはその場で地団太を踏みながら抗議する。
「オラー! 吐けー! 吐き出せー! 妾の【輝き】を早く返しやがれー!!」
無論元からそんなものありはしない。
成功
🔵🔵🔴
リコリス・ミトライユ
いつきさん(f04568)と協力して戦いますね。
ここは音楽の力で何とかして、
奪ったものが本物ではないことを証明しましょう。
いつきさんの鳴らす笛の音に合わせてダンスを。
和の音楽と言うのは、少し慣れはしませんが、
そこは友達ですもの、合わせて見せないと。
【スカイステッパー】で跳んだり跳ねたりのダンスをしながら、
要所要所で上へ下へ、キックを叩きこんであげますっ。
それに、ジャグリングの要領で【トリック・アンド・トラップ】で
呼び出した「おもち」を投げつけます。
装甲や羽毛に当たってくれればちょうどよし、ですよ。
これに火が通れば、熱いし、べたべたで取れなくもなりますし。
ちっちゃくて、戦えないと甘く見ましたね。
雨宮・いつき
真摯に芸事に打ち込んだ輝きは、その人の生き様…命であるといっても過言ではないです
それを奪うだなんて…リコリスさん(f02296)と協力して、みっちりとお灸を据えてあげます!
さぁさ、出ませい【御狐戦隊】!
輝きを奪おうとしたなら、輝きを以ってお仕置きです!
【天狐の横笛】でアップテンポな和風曲を奏で、
踊るような足運びで身を躱しながら管狐に攻撃指示
リコリスさんが仕掛けたトラップに誘い込むように管狐と自分を囮に立ち回ります
トラップに掛かるか、一向に掛かる気配がないなら管狐達を一斉に飛び掛からせ…
【学説バリエーション】で管狐を防ごうとしたら本命の【フォックスファイア】を撃ち込む!
羽毛なら炎には弱いはずっ!
「真摯に芸事に打ち込んだ【輝き】は、その人の生き様……命であるといっても過言ではないです」
雨宮・いつき(歌って踊れる御狐様・f04568)も創作活動を嗜む身。その苦労も、その喜びも、どれだけ価値あるものか、身に染みている。それゆえに、怪人の所業を許せる訳がない。それは並び立つリコリス・ミトライユ(曙光に舞う薔薇・f02296)も同様だ。
「あなたの奪った【輝き】が、あなたの物ではない事を、本物ではない事を証明しましょう」
いつきとリコリスは巨大化したティラノサウルス怪人を見上げる。小さな二人は、だが臆した様子は微塵もない。
「僕たちの」
「あたしたちの」
いつきは銀色の獣奏器を以て。リコリスは水晶色のレガリアスシューズを以て。
「音楽で!!」
いつきは演奏家として。リコリスは舞踏家として。怪人を倒す為に前へ進み出る。
「さぁさ、出ませい『御狐戦隊』!」
いつきが70匹もの小型の管狐を召喚すると、次々に怪人へと向かわせる。今はただ動くものを攻撃するティラノサウルス怪人だが、その数に翻弄され、一瞬動きが止まる。その隙にいつきとリコリスは怪人への距離を詰めた。
「輝きを奪おうとしたなら、輝きを以ってお仕置きです!」
いつきは【天狐の横笛】を取り出し、演奏を奏で始める。管狐たちはその音色を聞き分けながら、いつきと息を合わせ、怪人の振り下ろされる手を、尻尾を、噛みつきを巧みに避けていく。
そしてリコリスもまた、いつきの奏でる笛の音に合わせて踊っている。空中を滑るように移動しながら、やはり怪人の猛攻を避けていく。
(和の音楽と言うのは、少し慣れはしませんが、そこは友達ですもの、合わせて見せないと)
聞きなれない和楽器とはいえ、しかしリコリスの動きにそう迷いはない。管狐たちがするりするりと素早い動きとはまた違う、流れるような体捌き。不思議と体はうまく動いてくれていた。その事を不思議に思い、リコリスはちらりといつきを横目で見る。友人である為、時折いつきが演奏している姿を見る事もあった。普段のいつきの演奏は、静かに笛を鳴らすものばかりであったはずだ。だが、今は違っていた。どう息継ぎをしているのかもわからないような、アップテンポな和風曲。それは戦闘用だからなのか。あるいはリコリスの為であるのか。
くすり、とリコリスは笑い、それならばとダンスのテンポを上げていく。スカイダンサーは、その情熱が昂れば昂るほどに、戦闘力を上げていく。【スカイステッパー】で空中を跳ねながら踊り回るリコリス。そして間隙を見ては怪人の胴体へ鋭い蹴りを放っていく。
だが、超耐久力を得ている怪人へのダメージはあまり通っているようには見えない。事実、暴れ回る速度は低下していない。そして、怪人は反撃を開始する。
右腕の装甲の一部を【パージ】すると、その瞬間爪が鋭く長く、鋭利になる。そして、素早くその巨大な右腕を薙ぐように振り回した。
「! リコリスさん!」
いつきが思わず演奏を止め、リコリスの名を叫ぶ。
「……っ、わたしは大丈夫です! 続けてください!」
リコリスは管狐たちが庇った事もあり、間一髪攻撃を避けていた。リコリスの言葉に、いつきはすぐに演奏を再開させる。
「次は、これです!」
怪人の攻撃に怯むことなく、リコリスは『トリック・アンド・トラップ』を用い、おもちを召喚した。――この時期ならおもちはお菓子なのである。
ジャグリングの要領で召喚したおもちたちを投げつけていくリコリス。そして、その機を見ていつきは残った管狐たちを一斉に飛び掛からせた。管狐とおもちのコラボレーションである。
多方面からの攻撃に、怪人は本能的に『学説バリエーション』を展開、【羽毛モード】に変身する。だが、それこそいつきたちが狙っていた好機。
「羽毛なら炎には弱いはずっ!」
いつきはすかさず『フォックスファイア』を発動。威力を分散させないために、14個の狐火を一点集中。羽毛立っている部分へ撃ち込んだ。
「ガアアアアアア!」
狐火は羽毛に対し表面フラッシュ現象を起こし、怪人の表面を瞬間的に丸焼きにした。羽毛は全て燃え尽き、いくつか怪人の体に取り付いたおもちはいい感じに焼き上がる。
怪人に取り付いたおもちは、今後装甲のパージ時に障害となるに違いない。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ベル・オーキィ
さあて、盗人めを退治してやりましょうか!!
マウリーさんに届くよう、とびきりでっかい一撃で!!
私の行動は≪【『土を裏返すもの』の怒り】で遠距離からティラノサウルス怪人を狙い撃ちする≫こと!
仲間たちに気を取られているティラノサウルス怪人を地面ごと吹き飛ばしてやりましょう!出し惜しみなしの【全力魔法】です!!
【『土を裏返すもの』の怒り】は連発できません!使用するごとに移動して、相手に位置を気取られないように注意しなければいけませんね!
いい一撃が入ったら、マウリーさんに見えるよう高々と拳を振り上げて誇示してやりましょう!
「マウリーさん、見ていますかあ!あなたの怒り、しっかり叩き付けてやりましたよ!!」
「さあて、盗人めを退治してやりましょうか!! マウリーさんに届くよう、とびきりでっかい一撃で!!」
ベル・オーキィ(騒乱魔道士の弟子・f08838)が怪人へと啖呵を切る。凄まじい怒声のように聞こえるが、この程度、ベルにとってはちょっと声を張った程度である。ベルは早速、ユーベルコードを発動させる為の準備を始めようとするが、その前に。
「アマミさーーん! リコリスさーーん! いつきくーーん! カウントお願いしまーーす!」
三十メートル離れた先、怪人を翻弄している三人へ向け、ベルが叫ぶ。それに対し三人からの返答はない。だが、ベルの声がたかが三十メートル先で聞こえないはずがない。それはベル自身が自覚している。怪人が理性を失っているのは好都合であった。
そして、叫ぶと同時に、ベルは儀式を開始した。
それは怒りを現す儀式である。何故怒り、如何様に怒り、何程の怒りだったのか。それらを天に地に、自然へ伝える為の儀式である。それ即ち、騒乱魔法。
時間にして10秒。カウントきっかりに、アマミ、リコリス、いつきは怪人の傍を離れている。リコリスのおもちにより、ティラノクローの速度が出ていない事も関係しているのかもしれない。
「『滾りて裂けろ! 蹄を喰らう、ピエドラの牙よ!』」
詠唱は怒りのままに、怒声のように。ユーベルコード『『土を裏返すもの』の怒り(イラ・ヴェルタスエロ)』が発動する。
ティラノサウルス怪人の足元の地面が盛り上がったかと思うと、轟音と共に大爆発した。地面のすぐ下で、マグマ水蒸気爆発が起こったのだ。本来はただの地面では起こりえないそれは、しかしベルの出し惜しみない全力のユーベルコードにより発現したのであった。
ティラノサウルス怪人はすぐ足元での大爆発を防ぎようもなく、少なくないダメージを負う。
「マウリーさん、見ていますかあ! あなたの怒り、しっかり叩き付けてやりましたよ!!」
ベルは高々と拳を振り上げ、遠くマウリーに届かんばかりの声を張り上げた。そして、再度怪人をこらしめんとしたところで。
「あ! こらあ!!」
だが、ベルが二撃目の準備をしようとしたところで、怪人は本能のままにこれはまずいと、その場を走り去って行くのであった。
成功
🔵🔵🔴
暗峠・マナコ
豚に真珠じゃダメなのです、猫に小判じゃダメなのです、貴方にその【輝き】ではダメなのです。
キレイでないお方、あなたにも本来ならば自分の【輝き】があったはず。
人の【輝き】は愛でれこそ、自分が持っては意味のない石ころになるものです。
再犯防止のためにオススメしましょう、自身の【輝き】を磨くこと
【レプリカクラフト】でティラノサウルス怪人を模したロボット的な偽物を作り出します。
ちょっと造形は荒いのは認めますが、それでも損なわれない貴方自身の【輝き】を私は見捨てはしません。多分、なんかあるはずです。
この偽物が勝ったらきっとそれで、貴方が見落としていた貴方の輝きを見つける手助けになるでしょう。多分。
熱海・靖久
あれが輝きを奪うボス…。
(あれ、あんまり輝いてない?奪った輝きはどこに行ったんだろう?と無表情に思いつつ)
とりあえず、あの怪人を倒せば皆の輝きは戻るんだよね
『春』、行くよ
(【オルタナティブ・ダブル】でもう一人の自分『春』を召喚)
「ケケケ。あいよ、靖久」
『春』と共にレガリアスシューズで機動力を上げ、惑わせるような動きを。
【スライディング】で足元を狙い、蹴りとパンチで攻撃を。
敵がザウルスモードになったら
「『春』、頼むよ」と、早く動いてもらい敵の気を引き
タイミングを合わせ【力溜め】&【二回攻撃】を
他にも仲間がいれば連携を意識
【かばう】や【吹き飛ばし】使用。
「僕は諦めないよ」
攻撃受けても凛とした表情で
明智・珠稀
く、ふふ。
さぁ、貴方を倒しマウリーさんや皆様の輝きを取り戻してみせましょう…!!
(天使のような白い羽根を生やした真の姿に覚醒し、微笑みながら)
■戦闘
妖刀にて接近攻撃。【殺気】と共に【力溜め】、【鎧砕き】な重たい一撃を。
敵の攻撃にはスピードを上げ【残像】を攻撃させたり【武器受け】で対抗を
「ふ、ふふ。私の輝きは奪えませんか?残念ですね、しかし倒される気もさらさらありません…!」
【青薔薇吐息】で背に背負うサウンドウェポン【三味線】を青薔薇の花弁に変え、妖刀と共に攻撃を。
■心情
無事に倒せたら…輝きでキラッキラバージョンなマウリーさんとも
セッションしてみたいですね、ふふ…!
※アドリブ、絡み大歓迎です!
リルア・ルリア
『穴を掘る者は、自分がその穴に陥り、石をころがす者は、自分の上にそれをころがす』聖書蔵言26:27
「つまり、自分がやったことは全部自分に返ってくるにょよ!!」
ミレナリオ・リフレクションで巨大化したティラノサウルス怪人の幻影を作り出し、本体の巨大化を打ち消すわ!
怪人の攻撃は全部これでカウンターできるわっ。
さっきの触手の戦闘に参加しなかったのは、このコードを確実に成功させるために怪人の行動や癖をずっと見張っていたの!
けっして触手が気持ち悪かったり、今この作戦を思いついたわけでもにゃいにょにょ!(かみかみ
(あれ、あんまり輝いてない? 奪った輝きはどこに行ったんだろう?)
ティラノサウルス怪人をやや遠くに眺めながら、熱海・靖久(多重人格者のスカイダンサー・f06809)は疑問に思う。それは怪人が理性をなくしながら戦っているという光景からではなく、靖久のアーティスト目線での感想であった。
「人の【輝き】は愛でれこそ、自分が持っては意味のない石ころになるものです」
暗峠・マナコ(トコヤミヒトツ・f04241)が誰にともなく呟く。それは無表情であった靖久の思考を読んだ訳ではない。ただ、キレイなモノを好む彼女の目にも、靖久の目と同じものが見えるのかもしれない。
「なるほど、それもそうだ。それで、材料はこんなものでいいかい?」
「はい、ありがとうございます」
靖久は運んでいた鉄材をマナコの近場に置いた。現在、マナコはあるものを急ピッチで制作中なのである。靖久と同様、明智・珠稀(和吸血鬼、妖刀添え・f00992)とリルア・ルリア(天使の歌う小夜曲・f05670)も材料集めを手伝う為、近場を漁っている。
「さすがに十メートル越えともなると、『レプリカクラフト』でも圧巻だねぇ」
「ええ、ガジェッティアとしての腕が鳴るのです」
雑談に興じながらも、マナコから伸びるタール状の腕がテキパキと動いている。イソギンチャク怪人たちを倒し終え、すぐさま広場の外で着手されたそれはほんの数分で既に半分以上の完成度という、驚くべき速さで出来上がりつつある。だが、それでも完成にはまだ少し時間と材料が足りていない。そんな折、怪人のいる広場からとてつもない爆音が響いた。
「奴さんこちらに近づいているようだ。少し、足止めをしておこう」
ベルの攻撃を受け、ティラノサウルス怪人は広場からマナコと靖久のいる場所へ向かって来ていた。それを見て取った靖久は時間稼ぎをするために、ユーベルコードを発動する。
「『春』、行くよ」
「ケケケ。あいよ、靖久」
靖久の隣に、靖久そっくりの姿形をしたもうひとりの自分、春が召喚される。そして、息を合わせて怪人へと向かっていく。
レガリアシューズで機動力を上げた二人は怪人を惑わす様に動き回る。その動きにつられ、怪人はあちらこちらへ視線を送ってしまう。その隙を逃さず、スライディングの要領で足元へ滑り込むと、靖久は拳を、春は蹴りを怪人の脚へと喰らわす。
「オオオオ!」
だが怪人はまだ倒れない。ザウルスモードの耐久力を越えるには、まだ足りない。それを理解しながらも、靖久と春は機動力を活かし、怪人を惑わしていく。
●完成! ティラノサウルス怪人・ロボ!
「く、ふふ。完成ですか?」
「はい。お手伝いありがとう。珠稀さん、リルアさん」
「どういたしましてなにょ!」
ほんの僅かに足りなかった材料が珠稀とリルアによって運ばれてくるや否や、マナコのレプリカクラフトが出来上がった。
「ふ、ふふ。しかし、これで何を?」
珠稀が誰もが抱くであろう疑問を、マナコへ尋ねる。
「怪人の【輝き】を見つけるお手伝いですよ」
珠稀から目を逸らしながら、マナコが答える。
「く、ふふ。これで、ですか?」
「ちょっと造形は荒いのは認めますが、それでも損なわれない怪人自身の【輝き】を私は見捨てはしません。……多分、なんかあるはずです」
マナコが完成させたのは、ティラノサウルス怪人のザウルスモードを模した、巨大ロボ、その名もティラノサウルス怪人・ロボである! 大きさやある程度の形こそ似ているが、しかし随分と荒い。わずか十分とかからず完成させたにしては、十分なのかもしれないが。
「この偽物が勝ったらきっとそれで、怪人が見落としていた怪人の【輝き】を見つける手助けになるでしょう。……多分」
本当にそう思っているのか、てきとうな事を言ってるだけなのか、残念ながらブラックタールであるマナコの表情から珠希は察することは出来なかった。
「そんな事よりも、早くしてあげないと靖久さんと春さんに悪いです。さあさあ、乗りましょう。参りましょう」
マナコは上体はそのままに、下半身をタール状にすると、ティラノサウルス怪人・ロボの表面へ貼りつき、ぬるぬると登っていった。ブラックタールの体は非常に便利である。
「わぁい!」
リルアも待ってましたとばかりにティラノサウルス怪人・ロボへ登ろうとするが、レース生地のフリフリの洋服では上手く登れず、「へぶ」と滑り落ちてしまう。
「く、ふふ。お手伝いしましょう」
見かねた珠稀がリルアを抱き上げ、肩に乗せた。
「ありがとうなの!」
「いえいえ。ミレナリィドールを一度肩に乗せてみたかったのです……ふふ」
「?」
珠稀の言葉の真意はわからず、リルアは首を捻る。だが、珠稀がするするとロボを登っていく様に、リルアは大層喜び、すぐにその事は忘れてしまうのであった。
●進め! ティラノサウルス怪人・ロボ!
靖久と春が怪人の猛攻をしのぐ事数分。そろそろ決定打がほしい、と思っていたところに、ずしん、ずしん、と鈍い足音を響かせ、近づく影があった。
「来たね」
そこにやって来たのは、巨大ロボ、ティラノサウルス怪人・ロボであった。
「豚に真珠じゃダメなのです、猫に小判じゃダメなのです、貴方にその【輝き】ではダメなのです」
マナコと珠稀、そしてリルアを頭頂に乗せ、ロボはガション、ガションと機械関節を鳴らしながら、怪人へとの距離を詰めている。
「再犯防止のためにオススメしましょう、自身の【輝き】を磨くこと」
怪人の為にとマナコがこしらえた、ちょっといびつなロボが咆哮する。
そして、きゃいきゃいと高い位置から見る景色にはしゃいでいたリルアは、はっと気づく。
――『穴を掘る者は、自分がその穴に陥り、石をころがす者は、自分の上にそれをころがす』。聖書聖書蔵言26:27より。
「つまり、自分がやったことは全部自分に返ってくるにょよ!!」
リルアは聖書の一文を思い出すと、ミレナリオ・リフレクションを用い、ティラノサウルス怪人・ロボへ幻影を纏わせた。マナコとリルアとのユーベルコードの合作である。理屈上、ティラノサウルス怪人・ロボは怪人のザウルスモードを解除できる存在となったのである。
「さっきの触手の戦闘に参加しなかったのは、このコードを確実に成功させるために怪人の行動や癖をずっと見張っていたの! けっして触手が気持ち悪かったり、今この作戦を思いついたわけでもにゃいにょにょ!」
むふん、と胸を張るリルア。噛んだ事はともかくとして、そのアイデアを無駄にはしまいと猟兵たちは動き出す。
「く、ふふ。さぁ、貴方を倒しマウリーさんや皆様の輝きを取り戻してみせましょう
……!!」
珠稀は背中に天使のような白い羽根を生やし、真の姿へ覚醒する。ふわりとロボの頭上から浮き上がると、微笑みながら妖刀を抜いた。
「ふ、ふふ。あなたの【輝き】はいかほどでしょう……!」
空中へ飛び上がると、空を滑るように怪人へ接近した。
怪人は珠稀を振り払おうと腕を振るうが、既にそこに珠稀はおらず、残像をむなしく切り裂くのみである。翼をはためかせながら珠稀は一気に怪人の袂に近づくと、妖刀による一撃を放った。鎧を砕くほどの一撃は、怪人の表面へヒビを走らせる。
「『春』、頼むよ」
「ケケケ、自分(ひと)使いが荒いぜ? 靖久」
珠稀に合わせ、靖久と春もまた動いた。春がレガリアシューズでさらに機動力を上げ、敢えて怪人の視界に入るようにと走る。
「オオオオ!」
怪人は春の動きに釣られ、ティラノクローを放つ。無論、それは誘ったものである故、容易く避けられる。その機を逃さず、靖久と春はアイコンタクトを取り合いながら、タイミングを合わせる。
「行くよ!」
「あいよ!」
怪人の足元へ素早く潜り込み、両足へ強力な連撃を与える。二度、三度と繰り返されてきたそれは、超耐久力を持つザウルスモードでさえも膝を折るに足るほどの数だ。怪人はその場で膝を折ると、たまらず防衛本能を働かせ、学説バリエーションを発動させようとする。だが、おもちのネバネバがひっかかり、うまく発動ができずにいる。その間隙を狙い、マナコが手元の簡易リモコンのレバーを前へ倒した。ロボは前へ前へと進んでいく。
「そうさちゅ!」
リルアが叫び、ティラノサウルス怪人・ロボが膝をついたティラノサウルス怪人へと体当たりを行った。文字通りの相殺。ロボは崩れ落ちるが、ティラノサウルス怪人もまた、ザウルスモードが解除される。
「こ、こんな事が……」
怪人は元の大きさへと戻ってしまい、しかしダメージによりその場で動けずにいた。何とか顔だけ上げると、目の前に珠稀が降り立ち、見下ろしていた。
「く、ふふ。あなたの【輝き】はこんなものですか? それとも、私から奪ってみせますか?」
「ぐぐ……ガアアア!」
猟兵から【輝き】は奪えない。今改めてこの場で口に出す事はもはや敗北宣言に等しい。怪人は返事の代わりに、その大きな口で珠稀へと噛みつこうと珠稀へ襲い掛かる。
「ふ、ふふ。私の輝きは奪えませんか? 残念ですね、しかし倒される気もさらさらありません……!」
珠稀の周囲に青薔薇の花弁が舞う。花弁は意思を持つかのように怪人へと降り注ぎ、全身をずだずたに切り裂いていく。ユーベルコード、『青薔薇吐息』により青薔薇の花弁となったのは珠稀の三味線である。マウリーとのコラボを経た為なのか、まるで暴風のように青薔薇は吹き荒れる。まるでマウリーの仇を取るかのように。
同時に、珠稀は妖刀を逆袈裟に振り上げ、前傾となっていた怪人の首を綺麗に斬り落とした。青薔薇により視界も動きも制限された怪人に、なす術はなかった。
周囲に散らばる怪人を模したロボの残骸が、せめてもの情けにと、キラリと夕日を反射した。
●輝く君をもう一度
そうして、一連の事件は終結した。怪人の奪った【輝き】が本当にマウリーの元に戻ったのか、機械で測れるものでなし、実態はわからない。しかし。
マウリーが小気味よいギターをかき鳴らす。それに負けじと珠稀が三味線を鳴らし、いつきが横笛でメロディを整える。リルアが極上の歌声を音楽に乗せ、リコリスと靖久が音楽に合わせて踊る。その様子をベルとマナコがニコニコと眺める。アマミは演奏と歌唱は今回だけは禁止され、録画作業に専念している。
既に人が通る事はない時間となっており、道端で演奏してもギャラリーが立ち止まる事はない。それでも、彼らは構わず演奏を続けている。みなが笑顔で、楽しそうにしているその光景を人は、「輝いている」と形容するのかもしれない。
輝く君をもう一度見たいと願った心優しき、あるいは心熱き猟兵たちは、この時の【輝き】を生涯忘れる事はないだろう。
大成功
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