獣人世界大戦⑲〜選択
その病毒に蝕まれた者は、真なる姿を晒さずにはいられない。
生命を直接削り取るかのような激しい苦痛、抗いがたい凶暴化……ヒトとしての尊厳は剥ぎ取られ、赤裸々な己自身を露呈する。
病毒を制するか、病毒に制されるか。
猟兵は選択を迫られるだろう。
内面を食い破って姿を現す、狂おしき『狼の頭』を全身に生やしながら。
「五卿六眼『始祖人狼』、ダークセイヴァーの真なる支配者の一柱であり、ワルシャワ条約機構を大魔術『
五卿六眼で監視していた黒幕だ」
サク・スミノエ(花屑・f02236)が示す戦場は、獣人世界戦線において勝敗を決するところ。すなわちこの始祖人狼を倒せば猟兵に勝利がもたらされる。
「最後のボスゆえに、その力は強大そのもの。全ての人狼の祖であるということは『人狼病』の根源であるということに他ならない。動植物どころか大気や水など、ありとあらゆるものを人狼化させる病毒は猟兵であっても平等に侵食し、激しい苦痛と狂暴化の発作を引き起こす」
まるで対象を魂から殺そうとするかのような、恐ろしい病毒による苦しみはそれと引き換えにある変化を猟兵に与えるのだという。
「全身から無秩序に『狼の頭』が生えた真の姿……この状態においては、あらゆる能力が増強される。もっとも、その状態で長く戦い続けるのは猟兵であっても心身がもたない。変身と共に始祖人狼に最大最強の一撃を加え、ただちに離脱してくれ」
ツヅキ
OP公開直後よりプレイング募集しています。
こちらに届いたものから順次リプレイをお返しする予定です。
●第1章
五卿六眼『始祖人狼』との決戦です。
戦場には人狼病が満ち、その病苦は猟兵でさえも激しい苦痛と狂暴化の発作をもたらします。同時に全身から狼の頭を生やした真の姿と変え、攻撃力の増大も与えるため、これを生かした最大最強の一撃を始祖人狼に与えつつ、戦場を一気に離脱してください。
●プレイングボーナス
苦痛と狂気に耐えて戦う/「狼頭にまみれた真の姿」に変身し、最大最強の一撃を放つ。
詳細はOPをご参照ください。
それでは、よろしくお願いします。
第1章 ボス戦
『始祖人狼』
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POW : 天蓋鮮血斬
【巨大化した大剣の一撃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : 血脈樹の脈動
戦場内に、見えない【「人狼病」感染】の流れを作り出す。下流にいる者は【凶暴なる衝動】に囚われ、回避率が激減する。
WIZ : 唱和
【3つの頭部】から、詠唱時間に応じて範囲が拡大する、【人狼化】の状態異常を与える【人狼化の強制共鳴】を放つ。
👑11
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ロラン・ヒュッテンブレナー
アドリブ連携○
※ヒトと狼のはざまで踊るから続けて真の姿で登場
う、くぅ…
心臓が…
でも、始祖人狼が立ってるなら、ぼくもまだ引けないの
もう一度致命的な共鳴を受けて意識が飛び掛かる…
狂気に染まるなか、別の遠吠えを聞いて…
音狼?ぼくの人狼としての人格が咆えてる…
きみも、挑みたいんだね…
桃の香りを限界まで吸い込んで意識を保つよ
音狼に身を任せて、たくさんの狼の頭を生やして
それでも、ぼくはぼくの、人狼ロランのまま、最後まで戦ってみせるよ
全ての口から天に向かって咆吼
唱和に対抗するの
満月の魔力を乗せた音撃で浸食しつつ、味方に魔力を供給するフィールドを展開
後を託すの
意識が残ってる内に走って撤退なの
館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎
何度人狼病になり、苦痛や狂気で正気を削られようとも
始祖人狼は、ここで討たなきゃならない
…ダークセイヴァーと獣人戦線、両方の世界を苦しめてきた元凶
この黒き森で討つ
あえて狂気を受け入れ全身狼頭に塗れた状態で真の姿解放
狂気を宿した憎悪の騎士と化し
わざと「人狼病」感染の流れに身を委ねる
凶暴なる衝動に襲われ、脳裏も視界も真っ赤に塗りつぶされるが
一撃しか与えられないなら視界は関係ない
俺自身が元々持つ憎悪と人狼病感染による凶暴化
双方に突き動かされるまま「範囲攻撃、衝撃波」+指定UCで狼頭とともに人ならざる咆哮を上げ攻撃
何度も人狼病に侵されたことで覚醒したUCだ
己が根源で果てろ!!
仇死原・アンナ
アドリブ歓迎
五卿六眼…!忌々しき闇なるモノを屠る為にッ!
この世界を救う為に…さぁ行くぞ…私は…処刑人だッ!!!
鉄塊剣と餓血刀を抜き振るい戦おう
激痛耐性と狂気耐性の加護で苦痛と狂気に耐えつつ自我を保ち
【血玉覚醒】で真紅の瞳に無数の狼頭を生やした炎纏う真の姿の封印を解こう
鉄塊剣を振るい怪力で巨大化した剣を武器受けで防ぎ受け止めて
餓血刀で敵の鎧の隙間に突き刺し傷口をえぐり魔喰と吸血による生命力吸収で敵の力を溜めよう
貴様をここで屠る為に…生かしてなるものか!
我が名はアンナ!
常闇の世界の…処刑人が娘也!
地獄の炎纏わせた鉄塊剣を振るい重量攻撃で叩きつけてやろう!
狼め…虚無へと帰れッ!
皆城・白露
(連携アドリブ歓迎)
(これが、オレを蝕んできた病の、根源)
わざわざ誘ってくれなくても、オレは元々人狼だし
(今のオレの中には、もっと別のものも混ざっているけど)
そんなに掻き混ぜようとしなくても…オレは、きっともう滅茶苦茶だ
獣と人が混ざり合った歪な姿になり(真の姿)、更にそこから、腹の傷跡が裂けて顎に変わり、異形の触手と翼が生える(【渾沌の浸食】使用)
異形の身から、所かまわず狼の頭が生える
(暗いところが呼んでる。もう眠れと言われてる気がする)
(でも…今はオレのままで、戦いたい。人か獣か、生きてるのか死んでるのかもよくわからない、このオレのままで)
獣の四肢と異形の肉、生えた狼の頭、全てを敵に叩き込む
「う、くぅ……」
人狼化の病毒による汚染が戦場に満ちている。ロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)は自分の心臓を抑え、苦しげに呻いた。
だが、まだ斃れるわけにはいかない。
まだ、あいつが立っている。
あいつ――始祖人狼、人狼病の元凶は真っ赤な舌を牙の間から見せつけて嗤った。お前たちでは勝てないとでも言うかのようなそれだった。
「いい加減、慣れてきたよ」
「何と言った?」
「いや、わかって来た、というべきかな」
館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)の姿が変わりつつある。
纏う黒鎧が生き物のように頭部を覆い、禍々しい煉獄のようなオーラを噴き出す。憎悪というものを具現化すればきっと、このような姿になるのだろう。煉獄のオーラは破壊衝動そのものとなって敬輔に襲いかかる。脳裏も視界も真っ赤だ。獰猛な狼頭が内部から食い破るように頭をもたげ、周囲に鮮血をまき散らす。
これが始祖人狼のばら撒く病毒の成れの果て。
その者の真の姿を暴き、狂暴なる衝動に堕とし、狼頭を宿す異形へと変える。
「五卿六眼……! 忌々しき闇なるモノを屠る為にッ! 処刑人の覚悟を見よッ!!」
仇死原・アンナ(処刑人、地獄の炎の花嫁、焔の騎士・f09978)は全身を襲う激痛に堪え、狂気をねじ伏せながらその両手に剣と刀を抜き払った。
黒髪の合間から覗く瞳が――さっきまで髪と同じ漆黒であったはずのそれが、今は血のような真紅に覚醒している。
渦巻くような黒き地獄の炎と葬送の炎がアンナの周囲を渦巻き、恐るべき真の姿を解き放った。まさに地獄からの使者としか言いようのない、他者を威圧する、忌むべき、普段は封印されしアンナの真相である。
(「……これが、オレを蝕んできた病の、根源」)
どうしてだろう、皆城・白露(モノクローム・f00355)の胸に浮かぶのはその元凶に対する憎しみなどではなく、どこか懐かしいような切ない痛みだった。ようやく出会えた。もはや長すぎて、自分の一部となってしまったこの存在。
――もっとも、
混ざりものである白露にとってはいまさら異物が体内を食い破ったところで、ひどく乱暴に掻き混ぜられたところで、既にきっと滅茶苦茶であることに違いはないのだけど。
「あくまで抗うか、六番目の猟兵よ!」
始祖人狼の攻撃に対し、アンナはとっさに鉄塊剣を振るった。
人並外れた怪力がなければ持ち上げることすらできないだろう錆色の乙女が巨大に過ぎる刃を受け止めた瞬間、全ての重みを受け止める足元が地面に大きく沈み込んだ。
「くッ……」
「沈め!」
「否ッ!」
己に喝を入れるアンナの目に咆哮する敬輔が映った。
限界まで牙を剥き、喉の奥が見えるほどに顎を開いて、己を侵す狂暴化の衝動を攻撃に変換する。元から敬輔が身の内に秘めていた憎悪と人狼病感染による狂暴化が複雑に絡み合い、互いを高め合い、逃げ場のない攻性音波となって始祖人狼に襲いかかったのである。
まるで共鳴するように、敬輔を食い破った狼頭も同時に吼えた。
何度も、何度も何度も――人狼病に侵された経験が覚醒を促したのだ。始祖人狼は巨大化した剣を盾にするが、到底防ぎきれるものではない。
「己が根源で果てろ!!」
「ぐう……ッ」
ついに始祖人狼の手が剣から外れ、吹き飛ぶ刃が地面に突き刺さった。それを虚ろな瞳で見つめる異形がいる。例えるなら、獣と人が中途半端に混ざり合ったかのような。
ある者は化け物と呼ぶだろう。
また、別の者なら悪魔。あるいは怪物か。
いずれにしても尋常ならざる姿なのだ、白露の真の姿というのは。だが、まだ終わらない。まだ深く沈める、もっと染まることができる。
白露は己の最も深いところへ潜っていった。
腹の傷が裂け、顎に代わる。
異形の触手と翼が生える。
――渾沌。
生が発生する以前の、未定義の、ぐつぐつと攪拌される段階の。
なんて白く、なんて虚ろで、震えるほどに不気味であるのか。
「貴様
……!?」
異形の身からところかまわず狼の頭を生やした白露にあの始祖人狼でさえ驚嘆する。だが白露にはどうでもいいことだ。
(「暗いところが呼んでる。もう眠れって? でも……オレはオレのままで戦いたいんだ。人か獣かもわからない、それどころか生きてるのか死んでるのかさえもよくわからない、このオレのままで」)
その想いが、駆逐されかけた意識をすんでのところで繋ぎ止める。
オレは、オレのままで。
――だから。
「そこに居ろよ、すぐに行くから」
戦場に衝撃が迸った。
始祖人狼の巨体に、翼で羽ばたき、獣の四肢で駆けた異形が全身に生えた狼の頭ごと体当たりするみたいに突っ込んだのだ。音速を超える速度での激突は始祖人狼に深刻なダメージを与え、周辺の木々を薙ぎ倒して巨大なクレーターのような跡地を生成した。
「う……ぐッ――」
その時、苦痛を耐え忍んでいたロランは聞き覚えのある遠吠えを聞いた。
「音、狼?」
はっとして、その正体に思い至る。
それはロランの人狼としての人格だ。戦う意思を示すための吠え声だ。彼も挑みたいのだ。この元凶に勝ちたいのだ。
「うん、ぼくもだよ……」
お守りのサシェを握り締め、胸いっぱいに吸い込んだ芳香が頭をクリアにしてくれる。音狼それは狂気。だけど大丈夫、身を任せよう。
たくさん生えてくる狼頭だって、みんな仲間なんだ。
「ぼくはぼくの、人狼ロランのまま、戦ってみせるよ――最後まで」
ロランが立ち上がった時、そこには真の姿なる狼がいた。天を仰いで咆吼。唱和に対抗するかのように、全ての狼の口から一斉に。
満月の魔力を乗せた音撃が一直線に始祖人狼を穿った。
「さあ、今なの!」
「承知したッ!」
仲間へ魔力を供給するためのフィールドにアンナが踏み込むと、満月の魔力が地獄の炎をさらに激しく燃え上がらせる。
最後に残されたひとかけらの理性が消える前にロランは走った。
「逃がすものか……がはッ!?」
アンナの餓血刀が始祖人狼の纏う鎧の隙間を通り、反対側の胸元から血濡れた白刃を晒している。傷口を抉るように回転させると、さらに血を吐いた。
「お、おのれ……」
「貴様をここで屠る為に……万が一にも生かしてなるものか! 我が名はアンナ!
常闇の世界の……処刑人が娘也!」
始祖人狼の頭蓋を砕いたのは、あまりにも重い鉄塊剣の一撃だった。
「狼め…虚無へと帰れッ!」
刹那、地獄の炎が巨大な火柱を上げる。獣人戦線の夜空を黒と赤で染め上げる炎は始祖人狼の全てを焼き払うまで収まる気配がみられない。
「ウォオオオオッ――!!」
大成功
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印旛院・ラビニア
「いい加減さ、諦めたらどうかな?こっちだって何回も戦うのしんどいんだから」
真の姿(統制機構での自分の姿)に狼を生やした姿で対峙するよ
「別の君とは何度も戦ってきたんだ。手短に行かせてもらう」
【高速詠唱】【召喚術】で【回復力】のあるモンスターを召喚して痛みを軽減させつつ向かうよ
今までの始祖人狼との【学習力】で学んだ経験を立ち回りに【チューニング】。回避力が下がろうが、相手の攻撃を狼の生やした腕で噛み付くように受け、そのままUCによる【マキシマムカウンター】で最大限のサーベルによる斬撃をお見舞いするよ
「始祖人狼。その思惑の先に何があろうが、止めさせてもらうよ」
あー、痛いししんどい
白斑・物九郎
猟師のお出ましっスよ
ビビりなさいや、狼さんよ
白斑・物九郎――始祖人狼を【
狩猟】りに来た
●POW
●「狼頭にまみれた真の姿」に変身し、最大最強の一撃を放つ
こちとらキマイラ
『ガチキマイラ』で『獣頭が生える感覚』は慣れっこですわ
しっかし、野放図に生えて来んのはフツーに動き辛いトコですわな……
ならこの真の姿を整えるまで
――【ワイルドドライブ】
今の体を自分の力のモザイクでいっぺん覆ってから……次に右腕に集中!
俺めの真の姿は『モザイクの奔流と化す右腕』
この右腕に狼頭の繁茂を集中させて、狼の巨頭を形成してやるんですわ
この右腕を、真っ向ブッ込む!
狼の巨頭の咬合力で大剣に食らい付きざま――押し切る!
サーシャ・エーレンベルク
始祖人狼との戦いで、これまで幾度となく経験した、頭の中を支配する狂気、体中を走る激痛……相変わらずひどいものね。
少しでも目を閉じれば、終わりでしょう。
けれど、負けられない。
始祖人狼がユーベルコードを否定するならば、今を生きている獣人たちも、戦争で死んでいった獣人たちも……その全てが、無意味なものになってしまう!
……あなたの暴虐を、此処で断つわ!
狼頭にまみれた冰の女王の姿に変身、周囲に氷のオーラを発散して、病の大元である病原体の活動を停滞させる。
強大な剣、爪牙……押し負ける? いいえ……この一撃だけは!
ユーベルコードを発動、剣を抜き、征く!
私の全て……獣人の想い全てを込めて、始祖人狼へ一撃を!

鈴鹿・小春
人狼病とは直接関係ない…筈だけど、
クルースニクだしこの世界の為にも頑張って勝つよ!
浄化の結界を僕の周囲に展開し真の姿へ。
…うーんワイルド、でも無秩序なのはちょっとね!
激痛と狂気は耐性で堪えつつ一気に飛び込み仕掛ける。
巨大化した剣は集中して軌道見切り、つうれんをぶつけてそこを支点に空へ跳ねて小通連に持ち替えUC起動。
空中からの兜割りから四連突き、薙ぎ払いから顎への切り上げまで連続で命中させ気を練り込んだ白虎の
一撃を胴体に叩き込む!
痛いし苦しいけどだからこそ絞り出せる最大の単発火力、これでどうだ!
※アドリブ絡み等お任せ
真の姿は素の姿から大きな変化なしで狼頭があちこちに生えた姿
獣人世界大戦も佳境を迎えた。
猟兵の前に立ちはだかる五卿六眼が一柱の始祖人狼、あれを倒せば全てが終わる。
「いい加減さ、諦めたらどうかな? こっちだって何回も戦うのしんどいんだから」
印旛院・ラビニア(エタらない人(仮)・f42058)はやれやれと肩を竦めた。普段は隠されている真の姿……ゲーム内とは違う、どこか怯えたような瞳にそれでも強い意志を浮かべて。身体を食い破ってまた新たな狼頭が吼えた。
「これで最後だ。お互いにな」
「別の君と、いったい何度戦っただろうね。そろそろ決着をつけなくちゃ」
すごく体は痛むけれど、大丈夫、まだ動ける。召喚モンスターが魔法を唱え、ラビニアの苦痛を和らげてくれる。
――いける。
始祖人狼の巨大化した大剣が戦場を穿ち、激しい攻撃を猟兵に向けて叩きつけた。おやおや、最初から全力で来てくれるとは光栄だ。
「ちょっとはビビりなさいや、狼さんよ。こちとら猟師のお出ましっスよ」
白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)はまずからかうように笑ってから、一瞬で真顔になった。
「白斑・物九郎――
始祖人狼を【
狩猟】りに来た」
ドッ、と大地を蹴った。
まるで弾丸みたいに。
体の奥底が悲鳴をあげている。
狼頭が突き出して咆哮。
だが、物九郎はキマイラだ。それはつまり、慣れっこだということだ。もっとも、野放図に生えてくるのはフツーに動き辛いので……。
「何!?」
突如、物九郎の体をモザイクが覆い隠したので始祖人狼は驚愕の声を上げた。
だがここは戦場だ。
一瞬の隙が命取りとなる場所だ。
「よそ見している暇があって?」
サーシャ・エーレンベルク(白き剣・f39904)はいまや
冰の女王として周囲に極寒の冷気を放つ核そのもの。
「静まりなさい……」
氷の吐息が病毒を眠らせる。
これまで幾度となく経験した、頭の中を支配する狂気も体銃を走る激痛もそれでいくぶんかは和らいだ。
誰が目を閉じるものか。
誰が諦めるものか。
「悪足掻きだな」
三つの首で唱和する始祖人狼の戯言などくそくらえ。
「あなたはユーべルコードを否定した。けれどそれでは、今を生きている獣人たちも戦争で死んでいった獣人たちも……その全てが無意味なものになってしまう。だから私はそれを否定する! そして、あなたの暴虐を此処で絶つわ!」
「いいだろう、勝負だ六番目の猟兵。吾々と貴様たちの勝った方が戦争の勝者となるだろう……!」
始祖人狼の背で脈打つ真紅の樹海が病毒をまき散らす。サーシャは氷のオーラで抗い、立ち向かった。あれに侵されたら身動きが取りづらくなるが、ラビニアは既に始祖人狼との戦いを何度も学習していた。
「なんの!」
敵の動きを先読みして狼頭の生えた腕を割り込ませる。剣を噛み砕くように受け止め、捨て身の一撃を解き放つ絶好の機会を作り出せば。
「しまッ――」
「始祖人狼。その思惑の先に何があろうが、止めさせてもらうよ」
痛いし、しんどいのは事実。
それでもラビニアはサーベルを薙ぎ払い、最大威力の斬撃を始祖人狼の胴体に叩きつけた。鋭いカウンターに始祖人狼でさえも対応しきれず、巨体を傾がせる。
「ぬ、うッ」
よろめく始祖人狼を鈴鹿・小春(万彩の剣・f36941)はじっと見つめた。
クルースニクとはルーツを異にする人狼の起源。それでも他人事とは思えなかった。勝利に貢献するにはまず、何をするべきか?
「当然、病毒に耐えて攻撃を仕掛けなきゃね。つうれん!」
襲い来る巨大剣の軌道を見切り、ぶつけたつうれんを支点にして空へと跳ね上がる。小通連に持ち替えたところで起動するのは、銀狐八点衝――妖狐と白虎の共演だ。
「せやぁ!」
まずは兜割りで頭部を狙い、それから四連突き、薙ぎ払い、顎への切り上げまで息を持つかせぬ連続技を見舞う。
「ぐッ」
始祖人狼の耐久力の凄まじさにサーシャは舌を巻いた。
「……押し負ける? いいえ、最後まで諦めないわ!」
「これでどうだ!」
苦痛を噛み殺して発動する小春の白虎絶命拳が始祖人狼の腹部を穿ち、サーシャの剣閃が――己の全て、獣人の想い全てを込めた一撃が、飛び込んだ絶好の間合いから放たれた。真一文字にヴァイス・シュヴェルトを振るった瞬間、激しい血しぶきと共に始祖人狼が一歩後退する。
「猟師の真骨頂をご覧あれ」
ゆらりと、物九郎だったものが立ちはだかった。
それは右腕だ。
それは狼頭が繁茂した異形の塊だ。
それはモザイクの奔流と化した右腕だ。
それは――物九郎めの真の姿だ。
やることはただひとつ、この右腕を真っ向ブッ込んでやればいい。さあお立合い、狼の巨頭はてめぇの大剣に食らい付いて離しやしないだろう。
「同胞に邪魔された気分はいかがですかい?」
モザイクの奔流に押し切られた方の始祖人狼はもはや立ち上がり戦うだけの力を残していなかった。
「これが、六番目の猟兵、その実力……か……」
長い戦いの最後の唱和を残し、始祖人狼は息絶える。あともう少しでこの戦争も幕を下ろすだろう。そして猟兵の勝利はもはや揺らがぬところまで来ていた。
大成功
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