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獣人世界大戦⑲~餓狼の哥~

#獣人戦線 #獣人世界大戦 #第三戦線 #ワルシャワ条約機構 #五卿六眼『始祖人狼』

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「獣人戦線での戦いも佳境を迎えている。先輩たち、準備はいいか」
 イミ・ラーティカイネン(夢知らせのユーモレスク・f20847)はグリモアベースに居並ぶ猟兵たちに、いつになく険しい表情を向けながらそう言った。
「いよいよ第三戦線まで進み、連中の中枢にまで踏み込んでいる。あとは敵の首魁……『始祖人狼』を撃破する段階だ」
 イミの言葉に猟兵たちはごくりと生唾を飲む。この獣人世界大戦において、『始祖人狼』はまさに大ボスだ。
 『始祖人狼』を撃破できなければこの戦いは敗北となり、獣人戦線はさらなる戦火に呑まれることになる。なんとしてでも勝利せねばならないのだ。
「『始祖人狼』はワルシャワ条約機構……ロシアから東ヨーロッパにかけての、広大な平原で先輩たちを待ち構えている。だがそこまで辿り着くことは容易ではないだろう」
 手の中でグリモアの内包されたガジェットを弄びながら話すイミに、猟兵たちは眉根を寄せた。話す内容もそうだが、イミが今の段階で予知した内容を映像として見せていないのも珍しい。
 猟兵たちにちら、と視線を向けると、イミは手の中のガジェットを起動させた。投影された映像には、悍ましい見た目をした『人狼』が、まるで雲海のように大地を埋め尽くす様が。
 広大な平原で、とイミは話したのに、平原の草すら見えない。どころかその草から湧き出すように人狼が現れているのだ。
「何故なら、『始祖人狼』は足元の大地、周辺の草木、どころか大気に至る戦場の全てを自身の齎す『人狼病』によって人狼と化すからだ。ただの人狼ならまだしも、鎧をまとって剣を手にする人狼騎士として、だ」
 そう話しながらイミはますます眉間にしわを寄せた。つまりは敵が、次から次へと無尽蔵に湧き出してくる、ということか。
 猟兵たちが漏らした疑問に、いっそ無慈悲にイミはうなずく。
「そうだ。足元からだけではない、空中からも敵が現れる。先程まで足場や空気だったものが、次の瞬間には敵と化す。それらを躱し、対抗し、『始祖人狼』を攻撃しなければ勝ちはない」
 身を固くする猟兵たちの前で、イミは映像の投影を終えて手の中のガジェットを回転させた。彼の背後でポータルが開き、乾いた風が獣のニオイをはらんで吹き込んでくる。
「ここで勝てなければ獣人戦線の世界は崩壊の一途をたどる。だが、そうはならないと信じているぞ、先輩たち」


屋守保英
 皆さんお久しぶりです。屋守保英です。
 獣人戦線の危機ということで、重たい腰に鞭打って立ち上がりました。
 僅かながらでも助力ができればと思います。よろしくお願いいたします。

●目標
 ・五卿六眼『始祖人狼』×1体の撃破。

●特記事項
 このシナリオは戦争シナリオです。
 一章のみで構成された特別なシナリオです。
 大気や大地などなどの「人狼化」に対処すること、また、無限に現れる人狼騎士をかわし、始祖人狼を攻撃することでプレイングボーナスを得られます。

 また、依頼の成功と完結を優先するため、いただいた全員のプレイングを採用できるとは限らない旨、ご了承ください。

●戦場・場面
(第1章)
 ワルシャワ条約機構の中央部に位置する広大な平原です。
 人狼騎士に満ちた戦場で、『始祖人狼』が背中から「血脈樹」を生やして皆さんを待ち構えています。

 それでは、皆さんの力の篭もったプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『始祖人狼』

POW   :    天蓋鮮血斬
【巨大化した大剣の一撃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    血脈樹の脈動
戦場内に、見えない【「人狼病」感染】の流れを作り出す。下流にいる者は【凶暴なる衝動】に囚われ、回避率が激減する。
WIZ   :    唱和
【3つの頭部】から、詠唱時間に応じて範囲が拡大する、【人狼化】の状態異常を与える【人狼化の強制共鳴】を放つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

キング・ノーライフ
アドリブ連携可
狂気の獣の主がお出ましか、
こやつ等が何を思って戦っているかは知らんが問答は無意味。
さっさと倒すしかあるまい。

【ヴァーハナ】に乗り、【内臓ガトリング砲】で【制圧射撃】しながら運転で突っ込む、横からは【鼬川の指輪】で鼬川を呼んでの【衝撃波】で纏わりつくのを防ぐ。気休めかもしれんが【結界術】と【浄化】で人狼病と名の付く病や呪詛なら周囲の人狼騎士出現のわずかな抑制を図る。

地形の変化や人狼を【運転】で迅速に突破し、そのまま突っ込むと見せかけ土壇場で車外に鼬川を飛び出させ、最大威力の【風刃】を叩き込ませ、すぐに鼬川を回収して撤退。

王は被害を減らして勝つ為なら自らを囮にもするのだ、覚えておけ。



●轟音なりし
 黄金の装甲車がエンジンを全開にしながら走る。運転席でハンドルを握りながら、キング・ノーライフ(不死なる物の神・f18503)はまっすぐに人狼の海の向こうに座す始祖人狼を見つめた。
「狂気の獣の主がお出ましか」
 まさに強大で、凶悪な獣の王。目の前に広がる、ヴァーハナを取り囲んでは襲いかかってくる人狼騎士の群れを生み出す張本人だ。
 そんな、最早人狼の「個」を認識することすら難しい目の前の状況を、助手席に座る鼬川・瞬太は呆れを孕んだ声で現した。
「やっべぇな、マジでどこを見ても人狼ばっかじゃん。俺一人でどうにかしろって言われても、実際どうしろってんだよ、ご主人サマ」
「そう言いながらも、絶えず衝撃波を放って人狼を弾き飛ばしているではないか」
 瞬太のぼやく声に、そっと目を細めながらキングは返した。ヴァーハナがこの人狼の海の中を突き進んで行けているのも、瞬太が絶えずヴァーハナの周囲から放っている衝撃波が連中を弾いているからだ。
 この芸当は他の面々では難しい。多方面に一度に、断続的に攻撃を放つことが出来るのが瞬太のアイデンティティだ。キングの口角がすっと持ち上がる。
「お前だからこそ喚んだのだ。大気がどうなろうと、地面がどうなろうと、お前の風ならどうとでも出来るだろう?」
「ハッ」
 キングの問いかけに自信満々に瞬太が笑った。ぐ、と背筋を伸ばしつつ瞬太がニヤリとしながら言う。
「そこまで言われちゃ、やらねーわけにはいかねーよ。やっぱご主人サマだよな」
「何年侍らせていると思っている」
 当然こうして話している間も、瞬太の放つ衝撃波は止まらない。また一発放たれたそれが人狼の群れを跳ね返した。
 その瞬間をキングは見逃さない。ぐっとハンドルを握りながらアクセルを踏む足に力を入れた。
「飛ばすぞ、鼬川。準備はいいか」
「おっ、行くってか? りょーかい!」
 キングの言葉にいっそ気軽な様子で、瞬太が声を上げた。次の瞬間、全力で踏み込まれたアクセルがエンジンに爆音を上げさせる。
 全力全開、人狼を弾き飛ばし、踏み潰しながらヴァーハナが駆けた。ぐんぐんと速度は上がり、そのまま始祖人狼が眼前に迫る――と思われた瞬間だ。
「っおぉぉぉっ!!」
「っっ!!」
 ば、と窓が開けられる。同時にキングが急ブレーキ、からのドリフト。遠心力が働いて瞬太の身体が窓から外に飛び出した。
「しゃおらぁぁぁっ!!」
 次の瞬間、瞬太の手から特大の風刃が放たれた。超密度で練り上げられた風の刃が人狼たちを切り裂き、同時に始祖人狼の身体に真一文字の傷を刻んだ。
 そのまま落下を始めようとする瞬太の身体を、キングがヴァーハナの天井で受け止める。そこから天井を開くことで瞬太の身体を車内に回収し、再び助手席に彼を座らせた。
「――っとぉ!」
「よくやった。撤退するぞ」
 再びアクセルは踏み込まれ、一直線に始祖人狼から距離を取る。道中の人狼どもは気にすることなく踏み潰し、瞬太が一つ息を吐く中でキングは微笑んだ。
「王は被害を減らして勝つ為なら自らを囮にもするのだ、覚えておけ」
「へへ、もちろん。あいつは覚えるも何も無いだろうけどな」
 主人の言葉に瞬太がもう一度にやりと笑う。始祖人狼が何を思う間もなく、黄金の車体は地平線の向こうへ消えていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

村崎・ゆかり
大気が、大地が、人狼騎士に変わる。
でも、前例が無いわけじゃない。召喚魔王パラダルク。彼は猟兵のユーベルコードまで下僕に変えた。始祖人狼、あなたはその域じゃないでしょ。

ともかく、自分を守らなきゃ。
「オーラ防御」「狂気耐性」「霊的防護」「毒耐性」「環境耐性」を自身に付与。あたしにそう簡単に干渉出来るとは思わないで。

「全力魔法」「範囲攻撃」氷の「属性攻撃」「串刺し」「仙術」で寒氷陣。
地表の更に深い岩盤から氷槍を生やし、戦場全域の人狼騎士を貫く。もちろん、始祖人狼も一緒よ。
氷槍を人狼に変えられても、後から後から氷槍は地表を破って生えてくる。

さあ、華々しい消耗戦といきましょう! そして人狼病に終止符を!



●崩壊なりし
 数多の人狼が次から次から、戦場のあちこちのあらゆる物から変貌して生まれ出ずる中、村崎・ゆかり(“|紫蘭《パープリッシュ・オーキッド》”/黒鴉遣い・f01658)はまっすぐに始祖人狼を見つめていた。
「大気が、大地が、人狼騎士に変わる……でも」
 自身の周囲にある何もかもが人狼騎士に――敵に変わっていく中でも、その声は冷静だった。
 彼女にはこうした敵の能力に、確かに覚えがあったのだ。似たことをしてくる敵だけではない、これ以上のことをやってくる敵も、過去にいたなら慌てることもない。
「前例が無いわけじゃない――召喚魔王パラダルク。彼は猟兵のユーベルコードまで下僕に変えた」
 デビルキングワールドで相対した召喚魔王の一人「パラダルク」。森羅万象に関わる全て――猟兵の手にする武器も、ユーベルコードも我が物にし、ドラグナーガールに変えてしまうあの能力は、明らかに始祖人狼のそれを上回るものだ。
 故に、ゆかりは慌てない。冷静に自身の周囲に守りを張る。
「始祖人狼、あなたはその域じゃないでしょ?」
「唱和:|罪深き刃《ユーベルコード》に縋る吾々、それを我が物にする術はなし」
 ゆかりの言葉に始祖人狼が声色を変えずに返した。自身にそれは出来ない、と返すあたりは素直とも言えるが、自身に出来ないことを把握しているのは賢しいとも取れる。
 その声に、かすかに目を細めて。ゆかりは防御を一層固くする。
「そうよね、だからこそあなたと、あなたの人狼は、あたしに干渉できない」
 ゆかりの纏うオーラと防御に、人狼騎士の剣や爪が弾かれる。ならば後は攻めに転じるだけだ。早口で、しかし確実に詠唱を紡いでいく。
「古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。冷たく凍えし絶望の爪牙よ。地の底より目覚めて、大地を闊歩する傲慢なる衆愚を穿ち貫け――」
 周囲の、否、戦場全体の空気が凛とする。一気に空気が冷え込んだことを、毛皮を持つ人狼たちはどうして認識しただろうか。ゆかりの手が鋭く振るわれる。
「疾!!」
 発した瞬間、地面が揺れた。揺れた地面を突き破り、人狼たちの足元から幾本、幾十本、幾百本もの氷の槍が出現した。人狼病の蔓延により氷の槍の表面から人狼騎士が湧いてくるものの、それよりも槍に貫かれて絶命する人狼の方が何十倍も多い。
 槍に腹部を貫かれながら、始祖人狼が鋭い歯をむき出しにした。
「唱和:吾々諸共、この地全体を制圧するその刃――腹立たしき」
「御生憎様。これで終わりと思わないことね」
 始祖人狼の言葉にゆかりは微笑んだ。氷の槍はまだまだ止まらない。人狼と変わっても、変わった傍から新たな槍が突き出してその命を奪っていく。
 いたちごっこだ。人狼が全て骸となるか、ゆかりの呪力が尽きるかの勝負だ。
「さあ、華々しい消耗戦といきましょう! そして人狼病に終止符を!」
 高らかに声を上げながらゆかりが腕を振る。また飛び出した氷の槍が、始祖人狼のふとももを大きく穿った。

成功 🔵​🔵​🔴​

館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎

草木はともかく、大気や地面をも人狼化するとは…
始祖人狼の名は伊達じゃないということか
正直至難だが、今は人狼騎士の群れを突破して
始祖人狼に一太刀浴びせてやる!

指定UC発動、白の靄を纏いながら「ダッシュ、地形の利用」+UC効果の高速移動で人狼騎士の間を一気に駆け抜ける
行く手を遮る人狼騎士は挙動を「見切り」つつ避け
もし足元から現れたら「ジャンプ」で蹴り飛ばしつつ回避
回避困難な場合は黒剣から「衝撃波」を放ち吹き飛ばそう

血脈樹の脈動はあえて抵抗しない
裡から湧き上がる凶暴なる衝動を受け入れ
ありったけの憎悪を黒剣に籠めて
「2回攻撃、怪力」で叩き斬り…いや、叩き潰してやる!!



●吶喊なれば
 戦場を埋め尽くす人狼騎士を見つめながら、館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)は表情を歪めた。
「草木はともかく、大気や地面をも人狼化するとは……始祖人狼の名は伊達じゃないということか」
 戦場のあらゆるものを人狼病に感染させ、人狼と化すその能力。まさに脅威という他はない。敬輔の頬を冷や汗が伝った。
 だが、ここで恐れ、退くわけにはいかない。黒剣を構え直して決意を口にする。
「正直至難だが、始祖人狼に一太刀浴びせてやる!」
 力強く宣言する敬輔に向けて、始祖人狼はゆるく手を伸ばした。その手の先から、視えない『何か』が放たれていく。
「唱和:疾く蔓延れ、吾が『人狼病』」
「っ……!」
 その『何か』が戦場を満たした瞬間、敬輔の裡から耐え難い衝動が湧き上がった。
 凶暴で、凶悪な、心の奥底より溢れ出す破壊衝動。ともすれば精神を呑まれ、途端に狂乱するであろうそれを、敬輔は押さえつけない。むしろ、それを受け入れながら彼は地を蹴った。
「喰らった魂を、力に替えて」
 途端に、敬輔の身体を白い靄が覆った。黒剣がかつて喰らった魂が敬輔を包み込み、彼に力を与える。そして白い靄が戦場を高速で駆け巡るや、人狼騎士が次々と斬り伏せられ、吹き飛ばされていった。
 魂魄解放による高速移動で、衝動のままに人狼騎士の群れを突き進んでいく敬輔に、始祖人狼はかすかに鼻を鳴らした。
「唱和:衝動を受け入れ、それを力とする様、見事なり」
 感嘆する間もなく、目の前に敬輔が現れる。一気に黒剣を振りかぶり、ありったけの憎悪を籠めて、振り抜いた。
「お前の生命――ここで叩き潰す!!」
 肩口に叩き込まれる黒剣。攻撃を受けた鎧が、ばきりと音を立ててひび割れた。
「唱和:オォォ……!」
「甘い――もう一撃!」
 苦悶の声を上げる始祖人狼、その隙を敬輔は見逃さない。返す刃でもう一閃、始祖人狼の胴体目掛けて切り込む。刃を受けて、胴の鎧が鈍い音を立てた。

成功 🔵​🔵​🔴​

サエ・キルフィバオム
アドリブ歓迎

無限に出現する兵士、やっかいだね
まぁ、無限に出現するってのを逆手に取る手段もあるって事、見せちゃおっかな!

【血脈樹の脈動】の流れは人狼病の広まりを見ればどこが下流かは分かりそうだから……、敢えてその下流に入り込んでみよっと
当然あたしも人狼病の影響を受けるけど、それを【一狐の腋に如かず】で受けるのが狙い!
人狼騎士同士が殺し合いをしていないなら、私も人狼病の影響下にある状態なら敵判定をすり抜けられるよね
木を隠すなら森の中、人狼の群れに隠れるなら人狼って感じで、人狼状態で始祖人狼に近づいて攻撃を仕掛けていこう



●偽装なれば
 戦場を埋め尽くすように存在する人狼騎士を見やり、サエ・キルフィバオム(突撃!社会の裏事情特派員・f01091)は愛機のメルク・フィクターのコックピットから飛び降りつつつぶやいた。
 見れば見るほど、どこまでも人狼がいる。これをどうにか乗り越えていくのは至難の業だ。
「無限に出現する兵士、やっかいだね……ただ、まぁ」
 だが、サエはぺろりと舌を舐めずった。向こうが物量で攻めてくるからと言って、物量で対抗しないといけない、なんて決まりはない。
「無限に出現するってのを逆手に取る手段もあるって事、見せちゃおっかな!」
 そう言ってニヤリと笑うサエ。対して始祖人狼は眉をぴくりとも動かさずに手を伸ばした。
「唱和:我が人狼病の闇に呑まれよ」
 そこから放たれる不可視の人狼病。波のように広がるそれは、戦場の大気を、地面を、次々に人狼へと変えていく。その流れは、サエにも視えていた。
「ふんふん、なるほど……じゃあ、こっちかな」
 そうつぶやくとサエは敢えて、人狼病の下流、それも流れの濃いところに飛び込んだ。みるみるうちに人狼病が体を蝕み、サエの身体が狐のそれから狼のそれへと変貌していく。
 それが狙いだ。人狼病を受け入れ、人狼と化しながらも始祖人狼の傘下に降らず、逆に人狼の膂力や素早さを我がものとしたサエを、人狼たちは明らかに見失い、戸惑っている。
「グルル……!?」
「ふふっ、狙い通り! 木を隠すなら森の中、人狼の群れに隠れるなら人狼、ってね」
 にやりと口角を持ち上げながら、サエは人狼たちの間を駆け抜ける。何にも邪魔されずに自身の前に現れたサエを見て、始祖人狼は明らかに険しい表情をした。
「唱和:人狼なれど我が配下に降らぬとは……腹立たしき」
「人狼病に感染したら脅威ではない……って思ったでしょ。ざーんねん♪」
 おどけたように言いながら、サエが糸を振るう。人狼化したことによりますます強靭になった糸が、始祖人狼の皮膚に食い込み血を噴き出させた。

成功 🔵​🔵​🔴​

サーシャ・エーレンベルク
……私たちは、あなたたちの戦争の道具でも、蹂躙される弱者でもない。
あなたが否定し排斥しようとした獣人たちがどれほど力強く生きようとしているのか、私の剣で示しましょう!

【白冰冬帝】で冰の女王たる真の姿へ変身。
全てが人狼騎士へと変質する。それこそがあなたの人狼病の弱点。
あらゆるモノが意志と肉体を持つのであれば、私のユーベルコードはその全てを包み込む!
戦場内に凍結嵐を喚び起こして、生み出される騎士たちを物言わぬ氷像へと変えていくわ。
生み出された瞬間、凍結させて邪魔者は叩き斬り、制圧していく。
私を見れば絶望によって騎士たちの動きは鈍る。それが好機。
疾駆し、始祖人狼に一撃を叩き込む!



●氷結なれば
 サーシャ・エーレンベルク(白き剣・f39904)は愛用のサーベルを握りながら、戦場に立つ始祖人狼をまっすぐに見つめた。
「……私たちは、あなたたちの戦争の道具でも、蹂躙される弱者でもない。あなたが否定し排斥しようとした獣人たちがどれほど力強く生きようとしているのか、私の剣で示しましょう!」
 オオカミとして、獣人戦線に生きる民として、この戦いに負けるわけにはいかない。その決意は揺るぎなく、サーシャの瞳もまた力強く輝いていた。
 その光を見たか、始祖人狼が僅かに目を見開く。
「唱和:ならば示してみせよ、その決意」
 言うや、手にした大剣が一気に巨大化した。人狼騎士たちも巻き込んで振るわれるその一撃を、身をかがめて避けながらサーシャは目を細める。
「全てが人狼騎士へと変質する……それこそがあなたの人狼病の弱点」
「唱和:何を宣う」
 弱点、とまで言われてさすがに腹が立ったか、始祖人狼が眉間にシワを寄せた。だが、次の瞬間だ。
「――凍てつき、冰れ」
 途端に、サーシャの服装が変化した。ヴェールを纏い、分厚いキルトを身に着けたその姿は、まさしく女帝と呼ぶにふさわしい。
 そしてそれを目にした周囲の――否、戦場に立つ全ての人狼騎士が、例外なく身をすくませた。
「ガ……!?」
「ガォォ……」
 その感情は絶望だ。絶望を覚えたその端から身体が凍りつき、人狼騎士は物言わぬ氷像と化していく。
「あらゆるモノが意志と肉体を持つのであれば、私のユーベルコードはその全てを包み込む!」
 そう、生命ならば、意思と肉体を持つならば、サーシャのユーベルコードが作用する。恐怖と絶望に覆い尽くされ、そして戦場を包む氷の嵐で凍結するのだ。新たに生まれてこようと、そこに違いはない。
 さしもの始祖人狼も、言い知れぬ絶望に眉間を寄せていた。
「唱和:冬の厳しさなど何するものぞ、と言うべきではあるが、こうまで苛烈では凍えるも已む無し」
「絶望せよ、絶望せよ。それが生命あるものである限り、逃れることは出来ない!」
 その最中にサーシャが一気に距離を詰める。振るわれたサーベルの刃が、始祖人狼の首の一つを斬り飛ばした。

成功 🔵​🔵​🔴​

ロラン・ヒュッテンブレナー
連携×

真の人狼病は、無茶苦茶で、悲劇を撒き散らす物だったんだね
なら、ぼくは人狼としてその暴挙を止めるの!
生み出される人狼騎士さんたち、ごめんね…

死の循環、接続
右目が闇色に染まって右頬に紋様が浮かび上がる
同時にUC発動

万物の刻を急速に早送りして風化させる波動を結界から放つよ
この波動は、無生物に至るまでを終わりの刻に向かって風化させる
それはあなたも例外じゃないはず

波動が届かないなら、周りを塵にしながら狼の脚力で走って迫る
跳び跳ねて空中で結界を足場にさらにジャンプ
共鳴で狂気と浸食に見舞われても、封神武侠界の桃の香りで理性を繋ぎ止めて、活性化する人狼の力を使って懐まで!

人狼はもうあなたの物じゃない



●風化なれば
 ロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)は傷を負い、血を噴き出し、しかしまだ倒れずに立って人狼病を撒き散らす始祖人狼を見ながら、そっと悲しげな顔をした。
「真の人狼病は、無茶苦茶で、悲劇を撒き散らす物だったんだね……なら、ぼくは人狼としてその暴挙を止めるの!」
 人狼として、人狼病に罹患した一人として、こんな暴挙を捨て置けるはずがない。人狼病に苦しむ人々を救うためにも、逃げるわけにはいかなかった。
 そんなロランを睨みつけながら、始祖人狼が吼える。
「唱和:汝、人狼なれば、吾々の偉大さを知るだろう。邪魔立ては許さぬ」
「グルルル……」
 人狼騎士たちも剣を構えながらロランに向かってくる。だが、ロランは逃げず、しかし隠れもしなかった。立ったまま、ゆるりと手を伸ばす。
「人狼騎士さんたち、ごめんね……死の循環、接続」
 その瞬間、ロランの右目が闇色に染まった。同時に右の頬に紋様が浮かび、ロランの左目に輝く陣と同じ魔法陣が手の先に現れる。
 途端にロランの周囲に結界が構築された。その結界から放たれる波動が、周囲の人狼騎士の身体を急速に、みるみるうちに風化させていく。
「グル――!?」
「ガ――」
 鎧も、毛皮も、一切が風化して崩れ去っていく。それは死の循環だ。生命のサイクルを急速に早回ししていくその波動が、始祖人狼の身体をも蝕んでいた。
「唱和:これは……生命が、急速に――!」
「この波動は、無生物に至るまでを終わりの刻に向かって風化させる……それはあなたも例外じゃない」
 ロランの言葉通り、周囲の草木も、大地までもが風化し、死に向かって全力で駆け抜けていた。みるみるうちに死の荒野に変貌していく戦場。始祖人狼も耐えきれずに、ついに膝をつく。
「唱和:腹立たしい、腹立たしい……! このような形で、吾々が――」
「終わらせる――はぁぁっ!!」
 憎らしそうに牙を剥く始祖人狼。それにロランは一気に肉薄すると、魔法陣の浮かんだ拳を一気に押し付けた。
 それが終わりの一撃だった。始祖人狼の身体がぐらりと傾ぎ、死体も残さずに風化して消えていく。
 風に飛ばされ、一切の生命が消え去った荒野で、ロランはそっと死の循環との接続を解除する。
「……人狼はもう、あなたの物じゃない」
 ぽつりとつぶやいたその言葉もまた、乾いた風に飛ばされていった。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2024年05月26日


挿絵イラスト