獣人世界大戦⑲〜吾は世界の病、汝らの絶望~
●五卿六眼『始祖人狼』
吾は世界に根ざす病。
闇の如く払う事の能わぬ過去。
如何に汝らが希望を望もうとも、吾が前では儚き願いと知れ。
故に、吾は絶望として汝らの前に立つ。
全ては祈りより始まろうと、罪深さと共に在るのだから。
嗚呼、そうだ。何を識り、何を得ようとも変わりはしない。
排除する為にこの爪牙と剣を鳴らそう。
はじまりの猟兵を、それに手を伸ばすもの、その一切を朽ち果てさせ、斬り刻む。
吾は人狼が祖なり。
その過去は揺らぐ事なく、今を蝕み続けよう。
――理由さえ、貴様ら六番目の猟兵に渡しはせぬ。
それだけは吾のもの。
あの刹那に生きた吾のみのもの。
絶望の海に貪られてなお、消え去らぬものなり。
過去は変えられぬ。変えてはならぬ。
故にただ遍く全てを、未来をも吾という業病に蝕まれるとだけ心得よ。
産まれた魂が罪を抱くように。
生きる命は、いずれ尽き果てるように。
「この傲慢。この絶望。この病。……払うほどの力が汝にありしか?」
そして、脈打つ心が、衝動が。
この吾を許さぬ者と識るが故に、獣人病の始祖として剣を執るのだ。
●グリモアベース
「ついに、獣人戦線に隠れていた『五卿六眼』の一柱、始祖人狼の行方が解りました」
告げるのは秋穂・紗織。
予知した未来は明るいものではなくとも。
だからこそ、目の前に立つ猟兵たちは望むように変えられると柔らかに微笑んでみせる。
過去は変えられずとも、未来はどのようにでも求められるのだから。
「全ての人狼の始祖、即ち、『人狼病』の根源であるかの存在」
背から『血脈樹』を生やせば、恐ろしき病が戦場全てに満ちる。
その病の影響は動植物は当然の如く。
それどころか、足下の大地や周辺の空気に至る至るまで。
戦場のあらゆる全てが、『鎧を纏い、剣を手にした人狼騎士』へと変貌し、始祖人狼の名に従って猟兵たちへと襲い懸かる。
「無尽蔵に現れるこの人狼騎士たちを退けなければ、始祖人狼に攻撃が届く事はありえません」
個が弱く、脆い――などという事もない。
それどころか、足場や空気だったものが唐突に敵の群れと化す状況にも応じなければならない。
まさしく戦場が、世界が、牙を剥いて猟兵たちへと迫る状況。
「予知した私としては、瞬間での決着。疾風迅雷の如く攻めて人狼騎士を崩し、始祖人狼に一太刀を……というのをお勧めします」
なぜならば、人狼騎士は無尽蔵。
時間をかければかけるほど、その数は増し、猟兵たちを取り囲む波状攻撃を構築する。
剣を届かせる為に距離を詰めようとすれば壁となる。
祈りを詠唱として紡ごうとすれば、四方八方からの切っ先。
弓矢に銃弾を放つ隙間も時間もない程の群れはさながら津波。
「もっとも、どのように人狼騎士の波状攻撃を崩し、始祖人狼へと攻撃を繋ぐかも難しいものですが」
それこそ果敢に、捨て身であれ、負傷厭わず斬り込むのが妥当ではと秋穂は語る。
何しろ同士討ちを怖れることもないのだ。
人狼騎士こそが、自身を壁とし、剣とし、迫るのだから。
「ただし他に手段はあるでしょう。皆さんの、己が誇る強さにて、未来と勝利を掴みください」
柔らかく微笑み、秋穂は猟兵たちを戦場へと見送る。
遙月
いつももお世話になっております。
或いは、はじめまして。
MSの遙月です。
この度は獣人戦線にて潜んでいた『五卿六眼』の一柱、『始祖人狼』との決戦をお届け致します。
シナリオ傾向としては戦闘となります。
始祖人狼の影響で無尽蔵に現れる人狼騎士。
そしてそれを出現させる病の人狼化。
このふたつに対処し、なおかつ、始祖人狼へと一撃を届けてください。
中々に難しいものですので、ご注意を。
また今回の執筆は公開から即座に受け付けを開始させて頂きます。
一方でプレイングの〆切は24日の夜とさせて頂くつもりです。
出来るだけ早く書き上げていきますが、シナリオ完結への成功数の関係でお届けをお待たせしましたら申し訳御座いません。
どうぞ宜しくお願い致しますね。
●プレイングボーナス。
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プレイングボーナス……無限に現れる人狼騎士をかわし、始祖人狼を攻撃する/大気や大地などなどの「人狼化」に対処する。
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第1章 ボス戦
『始祖人狼』
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POW : 天蓋鮮血斬
【巨大化した大剣の一撃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : 血脈樹の脈動
戦場内に、見えない【「人狼病」感染】の流れを作り出す。下流にいる者は【凶暴なる衝動】に囚われ、回避率が激減する。
WIZ : 唱和
【3つの頭部】から、詠唱時間に応じて範囲が拡大する、【人狼化】の状態異常を与える【人狼化の強制共鳴】を放つ。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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ロラン・ヒュッテンブレナー
連携×
始祖人狼、ぼくも病に罹患した人狼だけど、あなたの思い通りにはならないよ
狂気も苦痛も飲込んだ、人狼としてのぼくがあなたを倒すの
死の循環、接続
右目が闇色に染まって右頬に紋様が浮かび上がる
同時にUC発動
万物の刻を急速に早送りして風化させる波動を結界から放つよ
ぼくがこの場にいるだけで、周囲は無生物に至るまで終わりの刻に向かって風化していく
それはあなたも例外じゃないはず
生み出される端から塵に返し、狼の脚力で走る
跳び跳ねて空中で結界を足場にさらにジャンプ
共鳴で狂気と浸食に見舞われても、封神武侠界の桃の香りで理性を繋ぎ止めて、活性化する人狼の力を使って懐まで!
ぼくの牙を受けてみるの
特大の波動を放つよ
その声は、決意は、ひとりではなかったから。
どれほどの闇が広がろうとも足掻き、進み続けたから。
ロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)は折れなかった。大切な誰かと共に、道を歩み続けた。
だからこそ、雪の降りしきる凍土の世界にこれほどに響くのだ。
ひとりきりで立つ過去の残滓に、微かにでも臆すことなどある筈もなく。
「始祖人狼、ぼくも病に罹患した人狼だけど」
この身、この寿命を蝕む病は対峙するものが引き起こした災厄。
確かにこの命、長くはなくとも。
「あなたの思い通りにはならないよ」
絶望などに染まりはしない。
永久の闇夜でも消し去れぬ想いが、紫の眸の裡で脈打つ。
ロランの心は、魂は決して崩れないのだと、眦を決して始祖人狼と向き合う。
「狂気も苦痛も飲込んだ、人狼としてのぼくがあなたを倒すの」
「吾という祖を倒し、後継でも言うか? 面白い。面白い、だが」
死の循環に接続したロランの右目が闇色に染まり、頬に紋章が浮かび上がる。
ダークセイヴァーにて巡っていたその理の力。
狂気に苦痛。絶望に悔恨。
すべてを飲んだロランより流れ出す。
「だが吾の病なしで、この今があったか。過去を否定しては、何も進まん。病を受け入れよ、絶望した事実を踏んでなお荒野を駆けよ」
「言われずとも」
未来という未知を進むが為、ロランが放つのは風化を促す波動。
ロランがいるだけでこの場の周囲は無生物に至るまで終わりの刻に向かい、風化して朽ち果てていく。
「風化、死の循環。これから逃れられないのは、始祖人狼、あなたも例外じゃないはず」
「が、まだ吾には届かん」
始祖人狼の言葉の通り、風化など意に介さず無数の人狼騎士がロランへと殺到する。
風化して塵となったものから産まれる人狼騎士。
塵となりつつも牙を剥き、剣を振るう病の先兵。
キリがない。いいや、このままでは押し込まれる。
生み出される端から塵と化しつつも、劣勢を悟り狼の脚力で走るロラン。
大地を蹴って飛び跳ね、空中では結界を足場にして更にジャンプ。
空を流れる冷たき風や雪さえも人狼騎士となり、その剣がロランの背に突き刺さるがそれでもなお前に。
三つの頭部から、遠吠えめいた詠唱を続ける人狼騎士の懐へと一気に迫る。
ロランの心身を襲うのは強制共鳴による狂気と侵蝕。
だが、かつて封神武侠界で得た桃の香り――その甘く、清らかな力を受けて、抗ってみせる。
これもまた、ロランが自ら歩んだ人生の強さ。
あらゆる世界を渡りし猟兵が、病に打ち克つ知識と研鑽。思いの強さ。
「この心は、ぼくのものだ!」
「――――」
否、吾が病に蝕まれた以上、吾のもの。
そう詠うように吠える始祖人狼の三つの頭。
共鳴を起こす病の唱和に、ついにロランは打ち勝ちながら懐へ。
「この思いも、覚悟も決意も、魂も。あなたに渡したりしないよ!」
むしろ共鳴によって活性化された人狼の力を使って、更に循環の波動を強めるロラン。
一撃に懸けるは、さながら祈りめいて。
「ぼくの牙を受けてみるの」
至近距離から離れたる死の循環の力。
始祖人狼の鎧を透過し、その血肉を風化させ生命力を崩壊させる特大の波動。
始祖人狼が詠唱を止め、大量の血を吐き出す。
内臓への損傷。循環器官の狂い。
それでも。
「よき牙だ」
そう口にした理由は、果たして何なのか。
問い掛ける余裕はなく、ロランは風化の波動を続けて叩き込み続ける。
大成功
🔵🔵🔵
紫・藍
あやー。
全てを人狼に変える始祖さんが不変を謳うとは……。
いいえ、道理でもありますかー。
人狼化したものは更に変わること無く、人狼こそが変化の袋小路とも言えますからねー。
ええ、でしたら、魅せつけちゃいましょう!
変革を!
藍ちゃんくんでっすよー!
(黙るのでっすけどねー!
生じる片っ端からブラックホールで全て吸い込み、その隙に高速移動で飛び込んじゃいましょう!
ブラホは感染の流れを変えるのにも役立つのでっす!
引力で明後日の方向に流れを変えれば、見えずとも藍ちゃんくんは下流にならないのでっす!
引力は騎士さん達の減速にも役立ちますしねー!
ではでは始祖さんを吸い込んじゃいましょう!
ご満足、いただけましたかー?)
人狼の遠吠えは、さながら災厄を呼ぶ禍歌。
病あれ。絶望あれ。吾はそういうものなれば、それにて世界を埋めていく。
覇者に似た精神は、それが他者の輝きを尊ぶならば王の器である。
が、他者を踏みにじるならば、それは殺戮の徒に他ならない。
何より。
「あやー」
戦禍を払い、吹き飛ばす歌を紡ぐ者こそ紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)。
始祖人狼の遠吠えに、歌になりえない獣の唸りに、僅かに戯けてみせる。
さながら喜劇に立つ、愚かなる姫のように。
「全てを人狼に変える始祖さんが不変を謳うとは……」
首を傾げた、直後には軽やかに笑ってみらる姿。
「いいえ、道理でもありますかー」
浅慮に見える藍の貌と表情。
されど、語る言葉はさながら戯曲の名台詞。
「人狼化したものは更に変わること無く、人狼こそが変化の袋小路といえますからねー」
そう語る藍に、隻眼と言葉を向ける始祖人狼。
「否。吾は病にかかったあらゆる命と人生、未来とあるもの。人狼病にて歪み、捻れ、されどと切望する者の魂の鼓動にてあるもの」
つまり。
「病とは、未来にある命を一方に蝕みながらあるもの。吾は、命ある限りの絶望なり」
死の側にあるのではなく、生の側にあるもの。
死に至る病こそが人狼病の本質。即死ではなく、短命という生き方を強いる業。
なら。
そんな強制と歪みを、まるで魂に枷を嵌めるというのならば。
「ええ、でしたら、魅せつけちゃいましょう!」
何をと問われれば、歌い上げる。
「変革を! 藍ちゃんくんでっすよー!」
しかし、その後に訪れたのは唐突なる沈黙。
黙るといういう事によって生じた虚を纏った藍が高速で走り抜け、まるで津波のように襲い懸かる人狼騎士たちの隙間を縫っていく。
そして放射されるのは超重力の渦。
如何に人狼騎士が命を惜しまない病の走狗であっても、全てを呑み込む重力には逆らえず、次々と飲まれていく。
いいや、飲まれる前に重力によって肉体が押し潰され、崩壊していく。
「雑兵では無理か」
異常なまでの重力の負荷は始祖人狼の身体にも及び、肉体が軋み、肉が潰れて血が噴き出していた。
それでもなお強大な剣を以て歩む始祖人狼。
「壮大な範囲と規模の技だ。が、
罪深い刃はその規模で争うものではない。ぶつかり合い、その深度でぶつかるもの」
どれほどの規模、概念であれど。
剣の一振りと相違ない。どちらが優劣であるかは、如何にその
罪深い刃に縋り付く祈りを見せられるか。
つまりは技としての理解度。技としての使い方。
それこそ噛み合わない現象同士ならば、質を問い合うこととなる。
「衝動。それが雌雄を決する。鋼の刃が惑星をも断つ世界に吾らは至っているのだから」
それを語りて示すが如く、始祖人狼の剛剣が閃く。
理不尽を覆す希望。或いは、それを呑み込む絶望。
藍の放出した超重力は、それを越える血脈樹の脈動を帯びた剣にて斬り崩されていた。いいや、
罪深い刃そのものが壊されている。
「真理、現象、そのようなものに左右はされぬ。吾と汝が想う祈りのぶつかり合いこそが全て。汝だけが己が意を通せると思う勿れ――通すならば相応の想いと技を用意せよ」
祈りの深度、その純度が強さ。
超新星の熱を越える投石とてありうるのだ。
いいや、故にこそ始祖人狼も無傷ではない。これほど雄弁に語るとは、つまりは相応に負傷してしまったからこそ戦意失わぬ為に吠えている。
藍の
罪深き刃と真っ向から勝負し、斬り崩してみせたのだ。
腕は重力に囚われて潰され、全身からは夥しい血を流している。
まさに真っ向勝負。その雌雄を決するべく、始祖人狼は歩み出す。
ならば。
ならばこそ、祈りは譲らないと再び藍は虚を纏って疾走する。
大成功
🔵🔵🔵
ブラミエ・トゥカーズ
余等、病は物を言わず、静かに人を殺すモノぞ。
貴公が真に病の根源であろうが、犬の姿をした以上、貴公は犬である。
そもそも動植物問わず人狼にするなど、風情がないぞ?
真の姿
手枷足枷をした中世風村娘の形に凝縮した転移性血液腫瘍ウイルスの集合体
すぐに分散に空気中に紛れたり血脈樹に感染する
人の細胞より小さい細菌で人のサイズを作っているウイルス全てを人狼化させ物量で諸共に押しつぶす
その数は37兆を超える
潰れず生き残った人狼は共食いさせる
血がある限りウイルスは滅びない
貴公は無限に人狼を作れるといったな。
だがこの星はそれを支え切れるかな?
ついでに人狼相手なので財布に余っていた500円相当の銀貨を投げつける
降り積もる雪は、さながら死の色彩。
白さはさながら屍蝋にも似て、病の気配を強めている。
だからこそ、ブラミエ・トゥカーズ(《妖怪》ヴァンパイア・f27968)というモノはこの場に訪れてしまったのか。
或いは人狼病の始祖でもある筈のものの過ぎたる言葉に、反感を得たのか。
「余等、病は物を言わず、静かに人を殺すモノぞ」
唇より紡ぐは、病の在り方。
不安に囀り、息を切らして血を吐き、苦しみを吠えるのは侵されるものの側。
沈黙をもって死を届けるのが病の本質。
何かを語る必要などありはしない。
何かを語り、怖れるのは病に蝕まれるモノだけでよい。
「貴公が真に病の根源であろうが、犬の姿をした以上、貴公は犬である」
ましてや、犬の如く吠えてみせる威勢はむしろ気品を失う。
病のなんたるかを司るモノとしては、同族と見做すことも出来ない。
そんな静かなブラミエの視線に、始祖人狼は深く頷く。
「なるほど、吠えすぎるは犬か。汝の言葉、覚えておこう」
そう言いながら、巨大な剣を構える始祖人狼にブラミエは酷薄に微笑む。
「そもそも動植物問わず人狼にするなど、風情がないぞ?」
「血を吐かせ、腫瘍で醜く変化させるものとて大して変るまい。いいや、人狼の矜恃として貰いたいが――」
そうして始祖人狼が隻眼で睨んだ瞬間、ブラミエを取り囲むのは無数の人狼騎士。
「まずは、汝が犬と嗤った爪牙を受けよ」
「ふん」
ブラミエの身体に突き刺さる幾つもの剣。
狼の顎がブラミエの麗しき肌を、柔らかな肉をと貪り、爪が引き裂いていく。
筈なのに、ブラミエはただ薄く笑うだけ。
いいや、吸血鬼としたの型を意地する為の封剣を代償に真の姿へと変貌してみせたのだ。
その姿は、カタチだけ見れば手枷、足枷をされた中世の村娘。
が、そこに凝縮した血液ウィルスの集合体こそがブラミエの真の姿。
「つまりは、ひとの細胞より小さい最近。それを、どうやって剣で斬り、牙で穿つ?」
だからこそ、殺到する人狼騎士の攻撃は全て無為。
全ては霧の中で足掻くように、ブラミエの身体を通り抜けていく。
ならばと始祖人狼の三つの頭がそれぞれに詠唱をはじめていた。
「吾も汝も病というのならば、病の本領でこそだ」
「ほう。病の支配力で勝つというのか」
既に空気に、そして始祖人狼の血脈樹にと感染しているブラミエ。
だが、そこからはまさに拮抗だった。
ウィルスを人狼化させ、物量で諸共に押し潰す。
それがブラミエの狙いだったが、始祖人狼の意思までは左右出来ない。
むしろ人狼化したウィルスが膨大過ぎると解れば同士討ちさせるし、元々のサイズを巨大化もさせない。
さながら抗体である白血球と最近の闘争。
見に見えないほど小さく、だが命を奪い合う死の舞踏が互いの間に繰り広げられる。
「血がある限り、ウイルスは滅びない」
「が、そのウイルスさえも人狼化させて、隷属するが吾」
支配力。強制共鳴。その一点において、始祖人狼はブラミエを上回っている。ブラミエを構築する筈のウィルスは、ブラミエ自身を攻撃し続けて相打ちとなっている。
「が――殺せぬか」
それでも膨大な数のブラミエというウィルスの悉くを人狼化させ、支配するには至らない。
むしろ始祖人狼の手に浮かぶのは血液腫瘍。病による影響、死に至る衰弱を受けているのだ。
「まるで千日手だな」
「互いが互いを殺すのに至るのにどれほど時間がかかるか」
ブラミエに感染すれば、一夜にて影響は出る。死に至らすまで数時間ですむ。
が、始祖人狼ほどのモノならばそうはならず、また、始祖人狼もブラミエを確殺するには病以外の方法がいる。
「ならば、今でなくともよかろう。吾は、既に汝に巣くうものなり。汝は、吾に巣くうものなり。因果は成された。この過去は覆らない」
そう言いながら、始祖人狼は踵を返す。
相手にしない。少なくとも、互いが互いを蝕み合うこの状況は、放置しても何も問題ない。今ある全力で他の猟兵を潰し、残った力でブラミエを屈服させる。
「逃げるのか? 犬であれば尻尾を振って、そうすればいい」
言葉と共に財布に余っていた銀貨を始祖人狼へと投げつけるブラミエ。
それを受けてなお、獰猛に嗤う始祖人狼。
「ああ、犬と思った狼が再び訪れる時を待て。恐怖も絶望も、その時に」
互いの身に、互いの病を宿しあい。
病たるふたつは、視線を交わした。
始祖人狼は放置してもいずれ死ぬ。自ら手を下す必要もない。
それが病のもたらす無慈悲な死でもあった。
大成功
🔵🔵🔵
神酒坂・恭二郎
さて、やっと御大将のおでましか
ここで人狼病を終わりにするかね
人狼騎士の群れに対し、風桜子をこめた「スペース手拭」をムチのように振り回す布操術で蹴散らし、負傷を恐れずに近づく【功夫、ロープワーク】
ある程度踏み込めたら、人狼病警戒で手拭は捨てる
次の手は、両掌に風桜子を籠めて打ち鳴らした【衝撃波】で、引き付けた周囲の人狼騎士達を周囲の空気ごと【吹き飛ばす】
ここが勝機
この瞬間的に場が真空状態となった一刹那を活かす。風桜子による【推力移動】で飛ぶように【切りこみ】、全ての風桜子を籠めて眩く煌く『箒星』の一撃に賭ける【覇気、早業、切断、鎧無視攻撃】
「神酒坂風桜子一刀流……箒星ってなもんか」
雪と氷の混じる風が吹く。
さながら、冷たき死のように。
これより如何なる熱があれど、過去は変わらぬと告げるように。
それでも――この戦を終わりとするのだ。
「さて、やっと御大将のおでましか」
おおよそ生命が根付かない永久凍土。
その奥にて巨大な剣を構える始祖人狼に、鋭い眼差しを送る男。
神酒坂・恭二郎(スペース剣豪・f09970)は病にも、五卿六眼の脅威にも臆すことなく対峙していた。
「ここで人狼病を終わりにするかね」
告げれば、始祖人狼は低く嗤う。
「否。吾が消えても、吾と病があった過去は変わらぬ。吾を排斥すれば、病という過去だけが消え果てるか?」
なんとも愉快。これがヒトの愚かさ。
そう嗤う始祖人狼に悪意はなく、ただ純粋に問いかていた。
「そうして変わらぬ今と未来が存続するか? 因果を逆転させ、なお成立する世界があるものか?」
「さて、ね」
確かに。
いきなり病が消え果てる事はないだろう。
始祖人狼が根源だとしても、既に汚染は数多の世界に広がっている。
因果というのならば、始祖人狼が骸の海より浮かび上がっていない間だけは人狼病というものは消えているのか。
「そんな難しいことは俺には解らないさ。だが、これからを防ぎ、蝕まれるひとりでも救えるのなら、そこに刃の意味はあるってものだろう」
「…………」
「第一、刃ってものは斬ってみないと解らない。存外、斬ることで全てが片付くかもしれないだろ。――それが物語における悪役の存在理由さ」
自信に溢れるが、悪そうな笑みを浮かべて構える恭二郎。
対する始祖人狼も、ならばと頷いてみせた。
「善い。剣で決着を付ける古来の仕来りも、また善い」
告げるや否や、恭二郎に殺到するのは無数の人狼騎士。
まるで津波のような様。何体いるのかと数えるのが馬鹿らしくなるほど。
「ああ、全て迎え討てばいいだけさ」
人狼騎士の群れに対し、恭二郎が手にしたのはスペース手拭。
風桜子を込めて強化したそれをムチのように振り回す布操術は、猛然と攻め懸かるばかりの人狼騎士をいなす柔らかなる技。
所詮は獣性。
ひとの磨き上げた技の前では、容易く打ちのめされるもの。
されど、その数はもはや理不尽に等しい。幾ら柔らかに靡き、したたかに打ち据え、鋭く斬り払う布操術といえど全ては打ち払えない。
なのに進む。恭二郎は臆すことなく、果敢に前へと踏み込んでいく。
「そろそろか」
はらりと手放したスペース手拭。これもまた人狼病を宿し、変貌しかねないと判断したのだ。
あと一息で巨剣を構える始祖人狼に届くならば、それで十分。
後はこの身で斬り拓くのみ。
両の掌に風桜子を籠め、打ち鳴らして生じさせるのは衝撃波。
引きつけた周囲の人狼騎士達を周囲の空気ごと吹き飛ばし、僅かではあっても始祖人狼に至る間隙を作り出してみせる。
――ここが勝機。
むしろ、二度、三度と繰り返せばそれに慣れた始祖人狼に呑み込まれる。
空間ごと吹き飛ばした刹那を活かすべく、風桜子によって加速した推進移動で飛ぶように切り込むは、さながら飛燕の姿。
されど、それを読んでいたかのように、恭二郎の黒い双眸と巨剣を振り上げる始祖人狼の隻眼が睨み合う。
「いざ、尋常に――」
「雌雄、決しようぞ」
始祖人狼より放れたるは大地ごと粉砕する天蓋鮮血斬。
だがそれより僅かに早く閃くは、一撃に賭す剣豪の秘技。
全ての風桜子を籠めた銀河一文字の刀身は、眩く煌めいていた。
銀河剣聖壱の型より放たれた風桜子斬撃波は、さながら地より宙へと奔る流星の如く。
始祖人狼の剣撃を弾き返し、鎧の上からその身を深く斬り裂き、後方へと吹き飛ばしていく。
「神酒坂風桜子一刀流……箒星ってなもんか」
恭二郎もまた風桜子の枯渇状態となり、掠れた息を続けている。
深く捉えた、確かな一刀。
疑いなく深手である。が、命には届いていない。
むしろ、嗤う狼の声がより楽しげとなっていた。
「ったく」
だが、この勝負は全力のぶつかり合い。
全身全霊を籠めた一太刀に全てを懸けたふたり。
その勝者は疑いなく。
「名を聞こうか、吾に刃を届かせた雄よ」
始祖人狼の尋ねる声に、恭二郎は剣豪としての名乗りを響かせた。
勝利を得たこの戦場にて己が名を、闇と病を払いし剣の名を。
大成功
🔵🔵🔵
サーシャ・エーレンベルク
あなたにも、過去の残影として相応の覚悟があるのでしょう。
でも、譲る気はないわ。
これまで、あなた達は私たち獣人を徹底的に打ちのめしてきた。
だったら、あなたという絶望を切り開いてこそ、白兵剣戟士というもの!
【白冰冬帝】で冰の女王たる真の姿へ変身。
全てが人狼騎士へと変質する。それこそがあなたの人狼病の弱点。
あらゆるモノが意志と肉体を持つのであれば、私のユーベルコードはその全てを包み込む!
戦場内に凍結嵐を喚び起こして、生み出される騎士たちを物言わぬ氷像へと変えていくわ。
生み出された瞬間、凍結させて制圧していく。
私を見れば絶望によって騎士たちの動きは鈍る。それが好機。
疾駆し、始祖人狼に一撃を叩き込む!
凍て付く雪風を斬り払うは凛烈なる刃。
物心ついた時には既に少女兵だった。
生きる為に剣を握っていた。銃弾を撃ち続けていた。
数多の修羅場を潜り抜け、それでも誇りを失わう事はない。
白狼の耳と尾のように、何処までも清冽なる姿は戦塵の中でも、ひとの眼を奪う。
かつての戦場を征く誰かに、生きる人々に呼ばれた名は『戦場の白き剣』。
常に最前線を征く白兵剣戟士こそサーシャ・エーレンベルク(白き剣・f39904)。
凜としたその風貌は、始祖人狼を前にして僅かにも揺らぎはしない。
「あなたにも、過去の残影として相応の覚悟があるのでしょう」
サーシャの唇が、冷たく鋭い声を放つ。
さながら戦場にて鳴る銀鈴の如き声色。
受ける始祖人狼も、また王が如き威容があるが、今のサーシャはそれを子越えていた。
「でも、譲る気はないわ」
「……ほう」
サーシャと始祖人狼。
その間に、永久凍土の風より冷たく、張り詰めた空気が満ちる。
「これまで、あなた達は私たち獣人を徹底的に打ちのめしてきた」
サーシャの金の双眸に浮かぶのは、勇猛なる戦意。
如何なる困難、戦場をも踏破する。
絶望、病。だから何だと、その手にする竜騎兵サーベル――ヴァイス・シュヴェルトを掲げてみせるのみ・
「だったら、あなたという絶望を切り開いてこそ、白兵剣戟士というもの!」
「面白い」
ならばと巨剣を構え、病の気を漂わせる始祖人狼。
「始祖を越えてみせよ、凜然たる白狼の女傑よ」
「無論、言うまでも無く――『凍てつき、冰れ』」
示してみせると、剣を振るい自らを真の姿へと変貌させるサーシャ。
白冰冬帝と成った彼女がただいるだけで、戦場を凍結嵐が包み込む。
「全てが人狼騎士へと変質する」
始祖人狼の能力。病の脅威。
だが、それもサティの前でのみあれば……。
「それこそがあなたの人狼病の弱点」
世界の全てが意思と肉体を持ち、獰猛なる病の先兵となる。
無尽蔵の兵力にして、兵略も戦術も覆す異能。
この始祖人狼という王ひとりが立っていれば、勝ちに繋がる。
だが。
「あらゆるモノが意志と肉体を持つのであれば、私のユーベルコードはその全てを包み込む!」
白冰冬帝たるサーシャを目撃した全員に絶望の感情を与え、凍結嵐によって全てを凍て付かせるのだ。
生み出される人狼騎士たちを、生まれた次の瞬間には物言わぬ氷像へと変え、凍結させて制圧していく。
ただそれも、この始祖人狼の意思の届かぬ領域ならばだろう。
「して、如何に」
「っ」
絶望に飲まれ、けれど、躊躇うことなく。
それこそ死へと飛び込むが如く、身を凍らせながら人狼騎士たちがサーシャへと迫る。
動きは鈍りつつも、恐ろしい勢いで進む人狼騎士。
「これが、吾の病だ」
王が為に、始祖が為に。
絶望の上からでも支配され、隷属し、命を捨てる人狼騎士たちは脅威以外の何者でもない。
だとしても……。
ああ、だしても。
「それでも」
サーシャにとって、そのような事は何時ものこと。
互いに絶望を知り、されど挫けることなく進み続ける心は、どんな戦場でもあったこと。
サーシャは絶望如きで足を止めるのか。
否ならばこそ、敵もまたそのようにあるだけ。
いいや、過去もそうだったからこそ、サーシャは今までのように突き進むだけ。
「過去は変わらないように。私が生き抜いた戦場の記憶が、あなたへと私を導く」
サーシャに怖れなどなく、凍結嵐を伴いただ前へ。
人狼騎士の群れの隙間を縫い、刃で斬り払い、死と病の波濤を駆け抜けていく。
前へ、前へと疾駆し、竜騎兵サーベルを振りかぶる。
始祖人狼もまた隻眼でサーシャを捉え、絶望に凍て付くことなく巨剣を振り上げていた。
「これで、終わりよ!」
それよりも僅かに早く。
空より鮮血の剣が墜ちるより早く。
冷たき白刃の切っ先が、始祖人狼の身へと届く。
氷刃の一閃――闇を斬り裂き、戦乱を終わらせるべく、根源たる始祖人狼の鼓動へと届く。
大成功
🔵🔵🔵
館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎
無尽蔵に現れる人狼騎士を片っ端から斬っていたら
始祖人狼に辿り着くまでに消耗し切ってしまいそうだな
必要最低限だけ斬って辿り着きたいところだ
指定UC発動、白き魂の靄を纏いながら走り出す
黒剣を上下左右、足元にも振り回して「属性攻撃(聖)」の「衝撃波」を連射し迫る人狼騎士を退けつつ
「ダッシュ」+UC効果の高速移動で一気に駆け抜けよう
血脈樹の脈動は抵抗せず、凶暴なる衝動を受け入れる
俺自身の憎悪と衝動に突き動かされるまま
一気に突撃して「捨て身の一撃、鎧砕き」で斬りつけてやる
後先省みていないと言われようが知ったことじゃない
一太刀を始祖人狼に届かせるためなら、何でも使うだけさ
凍土の白雪に飲まれることなき、黒き騎士の姿。
復讐の旅は終わり、未来へと向かう剣なれど。
しかし、今一度だけは過去の闇に、五卿六眼の残る一柱へと切っ先を向ける。
「お前は此処で断たせて貰う」
告げるは館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)。
左右で違う眸の色が、ゆらりと戦意に燃えるかのよう。
「ほう。かの
闇の棲まいの出自か。匂う、匂うぞ。あの暗がりの、血だまりの臭いが」
「…………」
鼻を鳴らし、嗤う始祖人狼。
異形ではある。が、覇者の如き威容をも纏う。
「喰らう魂は美味か? 果たした復讐の願いは、今も胸を焦がす火であるか?」
「答える義理はない」
他の五卿六眼が討たれたことを知っているのか、始祖人狼は巨剣を手に歩み寄る。
「ならば、屍に聞こう」
始祖人狼の全身より放たれる瘴気――人狼病の波動。
大地が、雪が、風が、樹木が数え切れないほどの人狼騎士へと変貌する。
無尽蔵の兵力。
病にて支配されるが故、乱れることのない指揮。
狂奔こそすれど、それは獣の性質。決して崩れることのない軍団が、津波のように敬輔の元へと殺到する。
(片っ端から全てを斬っていたら、消耗し切ってしまいそうか)
相手取ることは不可能ではなくとも、消耗戦に持ち込まれれば勝ち目は消える。
必要な処を、必要最小限だけ斬り崩し、隙を作って始祖人狼の元へと辿り着かなければならないだろう。
結果として身に幾つもの傷が負えども、始祖人狼という存在と真っ向から戦うのならば必然ともいえる。
ならばと魂魄解放を発動させた敬輔。
手にする黒剣がかつて喰らった魂を、白き靄として身に纏い高速で疾走する。
眼前には敵である人狼騎士の、波濤の如き群れ。
だが、左右にも後ろにもとあるならば、この戦地に安全な場所などないのだ。
上下左右、足下にもと黒剣を振りかざし、聖なる衝撃波を放った迫る人狼騎士を退ける敬輔。
捨て身で迫る人狼騎士の剣に、相打つように身を貫かれてもなお、怯むことなく前へと踏み出す。
一気に前へ。
決着の場へと躍り出るのだと、白魂を纏い、黒剣を振りかざす騎士の姿。
「善い」
異形の王として頷く始祖人狼の姿が、ついに敬輔の前へと現れる。
だが、それは敬輔が血脈樹の脈動の影響下に置かれたという事でもあった。
「っ」
見に見えない人狼病感染の流れ。
鼓動を突き破るような凶暴な衝動に囚われ、回避が困難となる。
まるで他の人狼騎士たちのように、ただ捨て身で突き進む狂戦士のように……。
「それで、いい」
構わないのだと敬輔は頷き、抵抗することなくその衝動を受け入れる。
「俺は、そういうものだ」
元々に胸に根付き、いまだに燻る憎悪と衝動。
報復を、復讐を。望む昏き想いに従い、一気に突進する敬輔。
「復讐を果たし、お前を倒し、この想いにケリをつける!」
敬輔が振りかざす一撃は、文字通りの捨て身の一撃。
後先顧みていない処ではない。
ただ一太刀を始祖人狼へと届かせる為の、心魂を燃やすほどの渾身の一撃。
漆黒の一閃が、白雪の世界に瞬く。
続くのは鮮血の血飛沫。色褪せた凍土の世界に、鮮やかな滴が零れていく。
始祖人狼の鎧を砕き、肉体へと至る黒剣。
今まで喰らってきた魂が、この怨敵を果てさせよと狂おしく脈動する。
だが、敬輔も無事ではない。
その背に突き刺さるのは人狼騎士の無数の刃。
肩口より深く届くは、始祖人狼の巨剣。
だが、それでも。
「まだ、お前の命を奪うまで
……!!」
胸の奥に脈打つ狂騒に全てを燃やすのだと。
本当の意味で、あの闇から解放される為に……。
「この剣を、止めはしない!!」
柄を握り、深く抉り。
自らもまた刃で深く傷つきながら、敬輔は始祖人狼の肉体を斬り裂きながら黒剣を振り払う。
「見事なる復讐の魂剣――という言葉さえ、お前のようなモノには、呪いとなろう」
「…………」
「怨敵に褒められた剣は、どのように感じる?」
鮮血を吐きながら嗤う始祖人狼。
その呪詛に似た言葉に心を蝕まれながら。
それでもと敬輔は黒剣を再び突き刺した。
残るものは悲しみか、解放か。
怨嗟か、喜びか、それとも……。
ただひとつだけは解る。
闇夜を払う剣たる想いと魂が、消え去る事はない。
大成功
🔵🔵🔵
キリカ・リクサール
【紫闇】
アドリブ歓迎
ああ、見せてやろうか
私達こそが、奴の
Désespoirだと言う事をな
初手で放たれる天蓋鮮血斬は回避一択
躱せば一瞬だが巻き込まれた人狼騎士の群れに穴が開くだろう
回避したらUCを発動
猛毒の霧になり、魅夜を守るように包み込む
フッ…何者にも魅夜を傷つけさせはしないさ
それじゃあ、行こうか!
触れる者は跡形もなく溶かす猛毒だが、霧を操作すれば中にいる魅夜には影響はない
そのまま、周囲から湧いて出てくる人狼騎士を殲滅しながら始祖人狼の元へと二人で突っ込もう
UCを解除したら、ナガクニを抜いて魅夜と共に一撃を喰らわせよう
過去に囚われた世界の敵よ
確実な【死】以外、お前が掴むものは何もない
黒城・魅夜
【紫闇】
希望の紡ぎ手たるこの私の前で絶望を誇る愚か者
身の程知らぬ大言壮語の報いは確実な滅びです
さあ参りましょう、キリカさん
あなたと共にある限り私に絶望などあり得ません
敵の一撃はオーラを張り巡らせ敵の挙動の起こりを見極め
心眼と見切りでタイミングをずらして回避
殺意丸出しゆえに読みやすい動きです、ふふ
キリカさんと共に人狼騎士どもの群れを突破
こんな時でもあなたのぬくもりを感じます、キリカさん
私もまた限界突破した呪詛を結界として周囲に展開し
人狼どもを滅ぼしながら
衝撃波を後方へ推進力として使い超高速で移動
間合いです、薄汚れた野良犬よ
真なる牙の鋭さはあなたにではなく
ダンピールたるこの私にあるのだと知りなさい
血も凍て付く戦場。
降り続ける雪は氷となり、大地を覆っていく。
さながら全てを閉ざす絶望、未来を奪う病のように。
此処に立つ始祖人狼を根源として、流れていく闇であった。
けれど。
始祖人狼がどれほどの脅威であろうとも、臆すことなく挑んでみせる。
「希望の紡ぎ手たるこの私の前で、絶望を誇る愚か者」
黒城・魅夜(悪夢の滴・f03522)は希望の紡ぎ手であるのだから。
夜闇のように複雑で美しい黒を纏う乙女は、絶望の病たる始祖人狼へと視線を向ける。
さながら刃のように鋭く、そして麗しき黒の双眸。
「身の程知らぬ大言壮語の報いは確実な滅びです」
必ずや成すという破滅を告げ、ゆっくりと前へと踏み出す。
これが魅夜ひとりであったのなら、ここまで強く響かせる事はなかっただろう。
だが、魅夜をひとりにはさせないと伴う足音があるから、何処までも想いは強くなる。
何にも負けないと、無条件に信じられる。
「さあ参りましょう、キリカさん」
名を呼ばれたキリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)は、微かに微笑んでみせていた。
「あなたと共にある限り私に絶望などあり得ません」
名を呼ばれ、共にある限りと信頼されるのなら。
至上の喜び。魅夜の想いを決して裏切れないのだとキリカも微笑んでみせる。
「ああ、見せてやろうか」
始祖人狼の強さを軽んじなどしない。
だが、それをふたりで越えていくのだ。
「私達こそが、奴の
Désespoirだと言う事をな」
絶望と名乗るものに希望という滅びを。
如何なる者にも静かに絶望は迫るのだとキリカの唇が紡いだ瞬間、始祖人狼は嗤った。
「希望は何処より生まれる? 絶望という病より、その苦しみから逃れる為に現れるのだ」
始祖人狼が振りかぶる巨剣に集まるのは無数の血管。
巨大化し、天蓋を覆う鮮血の大樹の如き刀身がふたりへと放たれる。
それこそ破滅の一撃。
まともに受ければ、何も残らない単純故の暴威。
「自分たちが光であると語る衝動は、猟兵の咎か」
始祖人狼の言葉と共に墜ちる天蓋鮮血斬。
キリカも魅夜もこれには回避に専念する。
魅夜はオーラを張り巡らせ、始祖人狼の挙動の起こりを見極めていた。
のみならず、心眼で見切るは攻撃の意思。
肉体が剣を振るう動きを伴うより早く、魅夜はキリカの手を取り回避へと動いていたのだ。
「殺意丸出しゆえに、読みやすい動きです。ふふ」
或いは傲慢。もしくは矜恃か。
五卿六眼の一柱として立つが故に、決して捨て去れない。
が、その力もやはり尋常ではない。
始祖人狼が轟音を響かせ大地に突き刺されば、大地が割れて砕け、大量の土砂が周囲に飛び散る。
さながら爆撃。土砂といえど、身に受ければタダではすまない。
「フッ……」
だが、それに見事に反応して見せたのはキリカだ。
身を猛毒の霧へと変化ざ、魅夜を守るようにと包み込む。
「何者にも魅夜を傷つけさせはしないさ」
今は触れられずとも、この愛しき乙女を守るのだと甘い毒霧が、愛情故の殺意を宿して揺らめく。
次の瞬間、周囲に飛び散った土塊と石たちが無数の人狼騎士へと変貌し、キリカと魅夜へと殺到するが、毒霧に苦しみ、暴れながらも地に伏し、跡形もなくその姿を消していく。
「それじゃあ、行こうか!」
「ええ、いきましょう。キリカさん」
毒霧を操り魅夜を守りながら狼騎士を殲滅していくキリカ。
さながら希望を届ける為の闇の騎士乙女。
紡ぐものは死であり、滅びであり、
Désespoir。
されど、それが世界の希望を紡ぐこととなる。
ああ、だからこそ。
魅夜はキリカのぬくもりを感じて、柔らかく微笑んだ。
触れたものを溶かす毒霧だからこそ、決して魅夜の肌に触れないようにと細心の注意を払うキリカの思いが解るのだ。
取り囲む毒霧は、あくまで魅夜を送り届けるがため。
ならばと魅夜も限界突破した呪詛を結結界として張り巡らせ、無尽蔵に湧き出す人狼騎士たちを滅ぼしながら進む。
「さあ」
「いきましょう」
あと一息だとふたりで頷けば、衝撃波を後方へと放ち、推進力となって突き進む魅夜とキリカ。
超高速で迫るふたりの黒き乙女を前に、隻眼で睨む始祖人狼。
「おっと。その剣はもう振らせはしないよ」
ユーベルコードを解除したキリカが肉体を取り戻し、抜き放ったナガクニを向けるのは始祖人狼が持つ巨剣へだ。
鍔元を打ち据える一撃は始祖人狼が攻めへと動き出す起点を捉え、切っ先を見当違いの方向へと弾き飛ばしてみせる。
そうなれば、後は魅夜がトドメを届けるのみ。
「間合いです、薄汚れた野良犬よ」
魅夜がさらに肉薄し、始祖人狼の懐へ。
剣も奮えず、拳とてまともに放てない至近距離。
だが、魅夜のダンピールの牙が妖艶な輝きを帯びていた。
「真なる牙の鋭さはあなたにではなく」
そうして魅夜が噛みついて穿つのは始祖人狼の肉体だけではなく、魂までも。
「ダンピールたるこの私にあるのだと知りなさい」
優雅にも冷たく。
さながら死の触れあいの如く始祖人狼の喉に触れる魅夜の牙。
始祖人狼から夥しい血が溢れ出し、赤く汚れることを嫌った魅夜はひらりと身を翻す。
言葉を借りれば薄汚れた野良犬。
ああ、血を飲む価値もなければ、浴びる理由とてありはしない。
故に控えよと、苦し紛れに伸びた始祖人狼の腕を短刀で斬り払うのはキリカだ。
「過去に囚われた世界の敵よ」
始祖人狼が伸ばした手は、何も掴む事は出来ず。
「確実な【死】以外、お前が掴むものは何もない」
虚空を切り、滑り、死へと墜ちていく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
柊・はとり
ああ…そうだな
どれ程の痛みを強いられようが
俺に許されるのは『未然に防ぐ』事までだ
過去さえ変えられるような奴は最早人間じゃねえ
だからあんたの言ってる事はある程度理解できる
だが希望を持つなってのは異議ありだぜ
即効性が必要だ
このUCが発動する事はそれこそ『祈る』しかない
例えどんな状況でも
俺は探偵にしかなれない事を信じろ
成功すれば外界と戦場に境が生じ
敵の無限湧きはある程度抑制できる筈
剣でなぎ払いながら本体へ接近
探偵の枠が埋まったなら
残りは容疑者と被害者と犯人だけだ
あんたはどの未来を選ぶ
お前の人狼化と俺の探偵化
どっちの業病が強いか決めようぜ
剣さえ握れない
祈るしか出来ない奴が居るんだ
そいつらの為に俺は戦う
身にも心にも冷たい風が吹く。
降りしきる雪は絶望の色であり、凍て付いた大地は悲嘆に染まる。
そんな光景を痛ましいと思うのは、ひとの情があればこそ。
あらゆる命を否定し、あらゆる生き方を拒む。
いいや、蝕んで死へと落とす無常なる在り方。
その上で、心や想い、祈りや衝動さえも否定する始祖人狼。
「ああ……そうだな」
吹き抜ける雪風にも似た、しんと冷たい声を紡ぐのは柊・はとり(死に損ないのニケ・f25213)。
異形の王が如き姿を、薄青の眸で映しながら続けていく。
「どれ程の痛みを強いられようが」
はとりの声色の裡に、痛みはあったかもしれない。
だが、それは余りに多くに触れて、擦り切れてしまっていた。
まるではとりの眸の色のように、薄く、薄く。もう誰にも届かない祈りのように。
「俺に許されるのは『未然に防ぐ』事までだ」
はとりの唇がなぞるのはこれは摂理。時の流れという逆らえないもの。
いいや、きっと覆してはいけない。
花が散るのを悲しいと惜しんでも、その花びらが大地へと還ることで次へと巡る。
形あるものは終わり、終わったからこそ次が始まる。
過去を覆してしまえば、今あるものさえも変質してしまうのだ。
それがもたらすものが幸せか不幸かなんて、分かりはしないけれど。
「過去さえ変えられるような奴は最早人間じゃねえ」
そう、ひとの領分を越えてしまう。
むしろ、それはオブリビオンの行う今への略奪に似てしまう。
だからこそ線を引くように。
助けられなかった命を、防げなかった事件を。
冷たい罪の痛みとしてはとりは抱き、外に漏らさず、ただ冷淡に語ってみせる。
――自分が救われたいからと、過去を変える傲慢さは欲しくない。
それはまた、誰かの大切な過去も変えてしまうことだから。
願わくば、奇跡を求めることを否定もしないけれど。
「だからあんたの言ってる事はある程度理解できる」
未来へと歩くこと。
はとりが出来るのはそれだけだと、偽神兵装『コキュートス』の凍て付いた刀身を構えてみせる。
応じて巨剣を構えなお始祖人狼の、厳かなる言葉。
「理解できる、が? ああ、猟兵たちが、だが、という言葉で衝動を語るのは何時も見てきた」
「なら解るだろう」
鋭い双眸で始祖人狼を睨むはとりが、より冷たい声を届ける。
「どんなにお前が正しいとしても――希望を持つなってのは異議ありだぜ」
どんなに苦しい過去と記憶を背負おうとも。
その躰が本当は屍だとしても。
「来る筈の明日に、理想を抱いて何が悪い」
そして、はとりは自らの希望を見いだせずとも、誰かの希望の為にと戦いにと身を投じる。
事件を解決する名探偵として、死と共に寄り添いながら。
「成る程。猟兵そのものだ。だからこそ、『はじまり』は渡さぬ」
「いいや、欲しいのは希望と明日だって言っているだろう」
結び合わない言葉。
ならば、後はもはや言葉は不要。
始祖人狼の三つ首が吠えるようにと詠唱を重ね、人狼化で蝕む強制共鳴をを周囲に放つ。
同時に放たれる人狼病の気配。
あらゆるものが人狼騎士へと変わり、始祖人狼の走狗へと化す現象。
まともに戦うことさえ困難。
なら、ただはとりは祈ることしか出来ない。
必要なのは即効性。人狼病の影響が起きるより早く、はとりの血脈に合歓眼呪いに似た業病が訪れること。
自分の意思では引き起こせず、だが、だからこそはとりの魂さえも絡み取る呪詛。
祈る。願う。縋る。
はとりを探偵として成り立たせるその呪いに、ただただ想いを馳せる。
否定して事などないだろう。
俺はずっと探偵で居続ける。
だからこそ、探偵であるはとりはこんな戦場では死ねない。消えられない。
――探偵は、探偵らしく事件現場で死ねよ。
そんな誰かの冷たい声がはとりの胸の奥底で、響いた瞬間、世界が白く染まる。
「……なんだ?」
始祖人狼さえも驚愕を隠せずに声を揺らした。
真白き吹雪が周囲を包み込み、外界と戦場に境が生じている。
いいや、むしろこの場と外で世界そのものが異なっている。
クローズドサークル。誰かが死ぬ為の場。探偵の為の舞台。
無尽蔵に湧く筈の人狼騎士も、吹雪に包まれた瞬間からその数を増やせない。
推理小説の大前提として、犯人となりうるものは後から登場出来ないというように。クローズドサークルとなれば、もうそこから登場人物は増えないというかのように。
「なあ、こういうのは初めてか?」
雪を踏みしめ、氷刃で残る人狼騎士を薙ぎ払って進むはとり。
はとりは勇猛なる戦士ではない。
知略に長けた術師でもなければ、祈りにて奇跡を起こす正者でもない。
「探偵の枠が埋まったなら、残りは容疑者と被害者と犯人だけだ」
だが、彼は探偵。どうしようもない探偵。
罪を犯した犯人を、無慈悲に奈落に突き落とすのが探偵という業。
例え救いたくても、救えないモノとして、はとりは始祖人狼へと語りかける。
「あんたはどの未来を選ぶ?」
「――――」
罪を犯し、喰らう側だからこその始祖人狼。
犠牲者という選択を行う事は出来ず、ならば、後は探偵に破滅させられる犯人という役しか取れない。
いいや、始祖人狼は世界を蝕む犯人そのもの。
その罪咎は贖うことなどできず、破滅させられて当然のもの。
「お前みたいなのが犯人だと、罪悪感を感じずにすんで助かるぜ」
冷たく笑うはとりは、もう始祖人狼のすぐ傍に。
暴力的ではない。だが、何処か理不尽な冷たい力に怖れを感じながら、始祖人狼は巨剣を振るう。
「お前の人狼化と俺の探偵化」
対するはとりも、全力を籠めてコキュートスの凍て付く刃で迎え撃つ。
響き渡るのは、冷たい音色。
全てが凍て付いてくような、美しいのに何処か悲しい――終わりへと向かう音。
「どっちの業病が強いか決めようぜ」
さあ、どちらの呪いが強いのかと問うはとり。
その姿はやはり、何処か悲しく、寂しく、だが誰も彼もを傍に寄りつかせないほどに冷たく、鋭い。
「強さ、強さであるならば、吾は負けぬ。必ずやこの剣で、吾の存在を! 吾の願いを!」
吠えたる始祖人狼に、ああと頷き、再びはとりは正面から剣戟を交わす。
一撃が重なるごとに腕が、足が、身が軋む。
強烈に過ぎる始祖人狼の剛剣。本来であればはとりが受け止める事のできないと自覚するほどのそれを、探偵という業病で越えていく。
犯人の思いを受け止めるまで、探偵は倒れることが出来ないというかのように。
いいや、はとりが受け止める思いは犯人だけではなかった。
「剣さえ握れない」
それでも生きている。
それでも生きて、幸せを求めている。
「祈るしか出来ない奴が居るんだ」
そんな弱くて、けれど、確かな心を抱くひとたち。
儚く、脆く、それでも美しい心のために。
「そいつらの為に俺は戦う」
彼らが呪いの連鎖に巻き込まれないようにと、はとりはコキュートスの氷刃を奔らせた。
魂を、病を斬り裂くような冷たい瞬き。
始祖人狼の身体を斬り裂き、血を零させる。
呪いは、病はこれで消えずとも、新しい犠牲者を産まない為に。
けれど。
ああ、けれどと。
はとりの心の底で、どうしても凍て付かないひとひらへの情が、微かに揺れた。
人狼病。三つ首。異形の姿。
強さがなければ広まらなかった理不尽な惨劇。
「お前が人狼病の根源というのなら――本当の最初の病の犠牲者は、お前だったのかもな」
そうして広がってしまった、病と呪いという事件。
冷艶な眸と刃に、はとりはその顛末を映しす。
大成功
🔵🔵🔵
アネット・レインフォール
▼静
錬鉄の――いや。剣の零れる音が聞こえる
有限と無限…
能力もだが六眼や反射速度も分が悪いな
――強敵との対峙が避けられず、且つ勝ち星を拾いたい時、どうすればいいか?
昔、そんな問答を聞いたような…あれは誰だったか
…しかしあの大剣、滅茶苦茶恰好良いな?
後でリゼ達に頼んで回収して貰おう。業物っぽいし(第六感
▼動
動植物等は結界術で覆い少しでも無限沸き対策を
間合いを詰めつつUC発動
騎士は己の分身で時間を稼ぎ、刹那だが一対一の剣術勝負に持ち込む
このとき1人分は保留か只の電撃+居合で偽装
皎剣を手に居合や早業の連撃を斬浴びせ斬重ねる
横薙ぎと見せかけ、体軸を入替え逆側面からの袈裟。
中・下段に攻撃を集中&意識を向けさせ、上が本命…と見せかけ損傷部狙い等々
刻が許せば異国の流派も織り交ぜて
イカサマ…ではないが、次の一撃は俺が貰おうか――!
敵の攻撃に乗じて負傷覚悟で突き技を放ち、双方串刺し状態に
闘争心で意識を保ち、残した一撃で斬上げて切断を行う
頭一つは潰しておきたいが…
…分身と入替わる偽装をした方がラクだったかもな
冷たき雪風が吹く、凍て付く大地。
命の根付く事を拒むようなその場所で、錬鉄の。
いいや、剣の零れる音が響く。
耳を澄ませば、それは獰猛なる獣の遠吠えに似るもの。
重厚な刃金が轟いて風を巻き上げ、大地を抉って土砂を撒き散らす。
眼前の敵を、ただ斬り潰し、斬り壊し、突き進む姿はさながら覇者の剣。
ただそれは暴力だった。
理不尽なまでの力で、全てをねじ伏せるものだった。
それこそが始祖人狼という、異形と人狼病の王の剣威。
加えれば人狼病によって無尽蔵の兵を生み出し、支配する者だ。
力尽きることなく、命を落とすことを惜しむこともない人狼騎士が、雪崩のように迫り来る。
「有限と、無限」
その姿を見つめる漆黒の眸はアネット・レインフォール(剣の異邦人・f01254)のもの。
武人としての透徹とした眼で全てを捉え、分解して把握し、アネットと始祖人狼の違いを把握していく。
「能力もだが、六眼や反射速度も分が悪いな」
始祖人狼は武人にはあらず。
兵を指揮して束ねる軍神に等しいものだ。
その上、率いる人狼騎士は恐怖も絶望もせず、ただ命令に従って盲信するものたち。
獰猛さは獣そのもの。
が、知性と共にあるのはまさしく一糸乱れぬ兵のもの。
そんな兵力の数が無尽蔵に湧きだしてくるのであれば、まさしく戦場での絶望だ。
だというのに、アネットの漆黒の眸は凪いでいるかのように穏やか。
対峙し、戦意を秘め、けれど何かに思い悩むような姿ではない。
むしろ、かつてを思いだして唇に緩やかな弧を描いた。
――強敵との対峙が避けられず、且つ勝ち星を拾いたい時、どうすればいいか?
昔、そんな問答を出したのは誰だっただろうか。
問答である以上は明確な応えはなく、その場で出していくだけだ。
そして、過去に出した応えを更なる善き応えによって塗り替える。
まさしく武の在り方。
過去の強さに拘らず、次の瞬間には新しき強さを得ようとする。
「ある意味では、獣の貪欲さか。俺も」
が、自覚するかこそ己を律し、矜恃をもって背筋を伸ばさせる。
それは獣たちの持たない、未だ見ぬ強さを求める武人の輝き。
例え産まれ持った膂力や速度、反射神経で劣れど、慢心することなく突き進む刃は時と共に磨き上げられていく。
あらゆる世界と戦場を渡り歩いたアネットならば、その鋭さは言うに及ばず。
「……しかし」
と、アネットが視線を向けたのは始祖人狼の操る大剣だ。
巨躯と腕力に似合った巨大な一振り。
「あの大剣、滅茶苦茶恰好良いな?」
時代と戦場を渡り歩き、朽ちることもなければ褪せることもない。
むしろ使い込まれた歴史が、物語が、そのまま刃金を鍛え上げているかのよう。
「後で頼んで回収して貰おう。業物っぽいし」
まだ触れてもいない巨剣。
だが、アネットの第六感はあれが銘刀であることを悟っていた。
同時に、それを握る始祖人狼とことより斬り結ぶという事に、闘争心が脈打ち熱を帯びる。
「さて、それではいくか」
呟くや否や、アネットは戦場へと駆け抜けていく。
その姿はさながら、一振りの刃が戦地を斬り裂くかの如く。
ただ一直線へ、討つべき始祖人狼へと一気に間合いを詰めていく。
「ほう?」
自らへと突き進む凜々しき闘気に、始祖人狼がその隻眼と切っ先を向ければ、アネットは高々と名乗りを響かせる。
「九天無刃流、アネット・レインフォール――参る!」
「心意気や善し。ならばその刃、五卿六眼が始祖人狼、吾が牙が受けて立とう」
互いに切っ先を向け合い、鋭い戦意を飛ばし合う。
病に気配が蠢くより早く、アネットが紡いだのは結界術。
動植物等は結界で覆い、少しでも病に触れることを防いで、人狼騎士が無限に湧くこことを防ごうとする。
人狼騎士の発生を阻めるのは僅かな間だろう。
だが、その間隙に切り込み、刃を閃かせるが武人の技。
「刹那に命と刃を瞬かせる。それが、剣士の誇りだ」
アネットとて解っていたことだが、人狼騎士の発生を全て防ぐのは無理。
眼前に群がる人狼騎士たちを見てアネットは不敵に笑ってみせる。
それが超常の技、脅威だとしても、ただ刃を以て越えてみせるのだと。
『絶技・雷刃千仭戟』
一息にと間合いを詰めながら、アネットはユーベルコードを繰り出す。
それは雷刃の瞬きにして、幾重にも別れる剣光。
戦場に現れるのは七百を越えるアネットの分身たちだ。
それらが超高速な雷刃居合い斬りを放ち、縦横無尽にと人狼騎士たちを切り裂いてく。
「ふむ。成る程……」
数であれば無尽である始祖人狼がいずれは勝つだろう。
だが、僅かな間の時間稼ぎであればアネットの技を映した分身たちが必ずや成す。
ひとつひとつの力ならば、確実にアネットが勝っており。
「ならば、吾と対峙する本体の狙いは短期決戦」
隻眼でアネットを睨む始祖人狼は、決して愚かな獣ではない。
異形と病の王。五卿六眼。人狼の始祖たるもの。
その名は伊達ではないのだと肌で感じながら、始祖人狼の眼前に辿り着いたアネットは不敵に笑ってみせる。
「ああ、無論。お前との斬り合い、その技、存分に楽しませて貰う」
アネットが柄にと手にかけるは翼が刻まれた白き大剣――皎剣【忍冬白焔】。
「――ッ」
鋭利な剣気と息と共に、居合にて純白の剣閃が放たれる。
美しく、麗しく。
さながら羽ばたく白鳥の翼。
磨き上げられた武人の矜恃と技は、かくも美麗なる刃を紡ぐのか。
「っ」
巨剣にて受け止める始祖人狼、だが体勢を崩して後ろへと流れていく。
膂力、体格、反射神経。全てで勝っていようとも、アネットの剣技の鋭さを止める事を叶わないのだ。
「技では、俺の勝ちだな」
そのまま諸手へと持ち替え、繰り出すは早業の連撃。
雪よりなや白い剣光が幾重にも繰り出され、皎剣の切っ先が始祖人狼の鎧ごと切り裂かんと吠え猛る。
が、虚実織り交ぜての技。
アネットの振るう剣は、命を奪う獣の牙などでは断じてないのだ。
横薙ぎと見せかけ、するりと体軸を入れ替えて放つは逆側面からの袈裟。
「ぐっ」
読みを外した始祖人狼。
それでもと自らの反射神経でアネットの剣撃を受け止めるが、より不利へと体勢を乱してしまう。
ならばと始祖人狼が姿勢を戻す前にと、矢継ぎ早にと繰り出される無数の斬撃。
体格で劣るならばそれを逆に利用するまでと、中段と下段を主としたアネットの斬撃。
いいや、この武人がそのような攻撃ばかりだというのか。
短期決戦を目指す以上、刃が狙うは急所の筈。ならば上、鎧に守られていない頭と首が狙いか。
現に跳躍をしようと脚を撓めたアネットを見て、始祖人狼が巨剣を翻す。
「が、それは外れだ」
アネットの上段への攻撃はフェイント。
動きの流れに騙され、上へと向いた守りを掻い潜ってアネットの皎剣が始祖人狼の脚部を切り裂く。
「ほう」
吹き出る鮮血。
痛みを覚えながら、けれど始祖人狼の隻眼は揺るがない。
技で劣り、明らかに劣勢へと立たされながらも、始祖人狼は徐々にアネットの剣の輪郭を、次の動きと狙いを捉えはじめている。
「凄まじい剣だ。吾という絶望に届くほど。が、それで、次は如何にする?
命に届かねば、いずれは汝が負ける」
「解っているさ」
鎧に包まれた始祖人狼の身に、深手を負わせるのは難しい。
体力と気力の差も明確であり、守勢を固めた始祖人狼をアネットが討つよりも分身たちが消え去るのが先。
だが、それだけで屈する訳にはいかないと深く踏み込むアネット。
世界を渡り、異国の技を学んだ武人。間合いに踏み込むと同時に始祖人狼の腹部に掌底を叩き込み、下段にと脚を伸ばして足払い。
崩す事には要らずとも再び流れを乱し、続けて地より跳ね上げるは皎剣の一閃。
巨剣で阻むことも出来ず、鎧の板金でなんとか受ける始祖狼。
その狼の貌が嗤っているのは、どれほどアネットが技を繰り出そうとも、自らの剛剣ひとつで覆せると解っているから。
そして、その瞬間は来る。
アネットの放つ動きは刺突。ついに読み切った始祖人狼が巨大化された剣を振り上げ、猛然と斬り砕こうとする。
だが、それもまたアネットの手の内。
既に構えた刺突の動きは止められず、必ず自らの身に始祖人狼の天蓋鮮血斬を受けようとも……。
「イカサマ……ではないが、次の一撃は俺が貰おうか――!」
「ならば耐えてみせよ。吾の絶望の剣を!」
始祖人狼の大上段からの一撃に乗じて、アネットが取ったのは負傷覚悟の捨て身の一撃。
相手の攻撃の勢いを利用し、攻め懸かる隙へと放つ白の一閃。
皎剣が始祖人狼の首の一つを貫いて穿つが、同時にアネットの身を深く切り裂く天蓋より振る巨刃。
双方串刺し。
夥しい血液が零れて流れ、互いの身体を染めていく。
だが、これでは始祖人狼が嗤うように、敵の勝利。生命力、体力。生物としての耐久性がが違い過ぎるからこそ、これではまだ足りない。
「まだ、だ」
まだ足りない。
アネットが勝利を得るには、更に深く、命と魂に届く程に切り裂かなければならない。
燃え上がる闘争心は激痛と肉体の限界を凌駕し、意識を闇の底から拾い上げさせる。
「これで、終われ!!」
「お、ォォォォ!」
残る力を悉く燃やし尽くしながら、始祖人狼の首へと刺さった皎剣を一気に斬り上げ、頭部を切断していく。
地より天へと走る純白の流星。
皎剣の刃の煌めきは闇を裂いて病と呪いを払う、清らかなる白翼の姿。
我が身を厭わぬ、果敢なる闘志と闘気が成したもの。
頭部のひとつでしかない。
が、確かに頭のひとつを潰したアネットの刃。
「……分身と入れ替わる偽装をしていた方がラクだったかもな」
よろめきながら後方へと下がる始祖人狼を見つめながらアネットが呟く。
事実、アネット自信ももはや戦えないのだと膝を付いていた。
意思と闘志の問題ではない。生きる肉体の限界点。
だが、それでも。
「俺の、勝ちだ」
告げるアネットに始祖人狼は反論が出来ない程、深くその身と命を切り裂かれていた。
大成功
🔵🔵🔵
月白・雪音
…遍く命、そして命を育むべき大地、大気をも等しく人狼と変ずる病。
かの常闇の世界に蔓延する人狼病の源流とはこれほどのものでしたか。
ユーベルコードとは弱き者こそが縋るモノ…、その意味する所は何か。
それに縋り、貴方が為そうとしたは何か。
貴方が真に弱き者であるかも含め気に掛かる言ではありますが…。それらを語る気は無いのでしょう。
なれば今この時を以て語る言の葉は最早無し。
命は孰れ尽き果てる、それは過去も未来も変わらぬ理。
されど今を生きる命を過去の威を以て脅かすとあらば其れは理に非ず。
その刃を、齎される絶望を、貴方という病を。我が武を以て阻みましょう。
兵は無限、されど私には大軍を薙ぎ払う術は無し。なれば無傷とは参りませんか。
UC発動、残像の速度にて人狼の間隙を縫い、野生の勘、見切りで攻撃、人狼化を察知し経路選択
進行の妨げになる者に絞り怪力、グラップルによる一撃を以て排除する
落ち着き技能の限界突破、無想の至りを以て齎される衝動を抑え技を練り、
殺人鬼としての業を併せ始祖人狼へと最高速度、最大威力の一撃を
あらゆる生命が根付くこと。
色付き、花咲き、薫ることを認めない凍土の大地。
降り積もる雪は絶望の白さと冷たさで、あらゆる植物を撫でる。
大地を吹き荒れる風は氷を含んで、存在する物を傷つける。
これが絶望。誰も彼も、認めず抱きしめない世界なのか。
ましてや、此処に渦巻くは人狼病という世界の災禍。
命の許される過酷なる場のあらゆるものが、惨劇を巻き起こす人狼騎士たちへと変貌していく。
「……遍く命、そして命を育むべき大地」
その様を見て、冷たく、静かに。
唇より吐息と言葉を、思いのひとひらを零すは月白・雪音(月輪氷華・f29413)。
そこに情動の揺らぎはなく、どのような感情を乗せているかは解らない。
ただ氷のように澄み渡る声が美しく響くだけ。
「大気をも等しく人狼と変ずる病」
ふと見れば、先ほどは何もなかった空間に、無数の人狼騎士がいる。
さながら混沌の渦。
何もかもが変貌し、人狼へと墜ちていく。
始祖人狼の爪牙として、走狗として。
どんな心も、思いも、形も色も全て許さない。塗りつぶすというかのような暴力めいた在り方に、雪音は静かに瞼を下ろした。
「かの常闇の世界に蔓延する人狼病の源流とはこれほどのものでしたか」
ああ、なんということか。
知らぬものとはいえ、このようなモノを見過ごしていたのか。
寿命を蝕み、満月の度に狂気と苦悩をもたらす業病。
生き方を定め、縛り、さながら従えさせるのは狂徒の病。
ならば、独り立つあの始祖人狼は狂王か。
確かに異形めいた姿である。
覇者めいた威圧に、王の如き存在感。
が、隠そうともしない禍々しさは、まさに今を生きる者の敵。
過去の残滓。常闇を統べる五卿六眼の一柱。
なぜ、この存在を許し、認めることが出来るだろうか。
今と未来に生きる、力なき民の幸せの為に戦う雪音が、どうして斯様な理不尽を無視できようか。
ふわりと。
体重を感じさせない柔らかさで、まるで雪が舞うが如く雪音は一歩を踏み出す。
その深紅の双眸は、今に在る全ての災禍をただ静かに映し、浮かべていた。
「
罪深き刃とは、弱き者こそが縋るモノ……」
雪音は始祖人狼の語った言葉をゆっくりと半数していく。
何も出来ず、祈ることしか出来ないかのような。
だからこそ何より罪深く、衝動のままに世界さえも歪めるのが
罪深き刃の正体なのか。
「その意味する所は何か」
確かなる真実は過去に、忘却の裡へと流されてしまっている。
だが、それでも目の前の始祖人狼はいまだにソレへと爪を突き立てようとしている。
「それに縋り、貴方が為そうとしたは何か」
冷たくも凛と響く声色で、戦場に言葉を落としていく。
沈黙する始祖人狼。故に、拾うものはない。
ああ、語るということが渡し、譲るということなのか。
彼にとって、それほどに大切なものだというのだろうか。
「貴方が真に弱き者であるかも含め気に掛かる言ではありますが……それらを語る気は無いのでしょう」
沈黙もまた意思の表れ。
魂のように、死しても渡さぬという始祖人狼の思いであれば、それもまたよし。
そもそも、この場ではどのような言葉に意味があるのだろう。
嘘と虚飾を入り交じった、美しい言葉ならいいのだろうか。
猛る遠吠えと悲哀の絶叫に似た、切ない声なら許されるのだろうか。
いいや否。此処はもう、命を賭した戦場。
「なれば今、この時を以て語る言の葉は最早無し」
ただ雌雄を決するべく、互いの武と力をぶつけ合うのみ。
「同じ獣の衝動を持つものならば、名乗りとて不要でしょう。――忘れぬと、互いの
力に相手を刻み込むだけ」
「然り。そして吾は、絶望として静かに残るのみ」
ふるりと身を揺らす雪音。
真白き身は雪華のように、しなやかに美しく。
されど、寸鉄も異能も帯びぬヒト。ただ研ぎ澄ました技を持って、未来を求めるモノである。
故に無尽蔵に湧き上がる人狼騎士に抗う術は持たない。
だというのに、あくまで静かに、静かに想いを胸に灯す。
語る言の葉はなし。されど、想う心の花はあり。
命は孰れ尽き果てる。ああ、それは過去も未来も変わらぬ理だろう。
雪は溶け、花は散り、月は沈んで、葉もまた枯れる。
流れる水は岩をも穿つが、いずれはその水の行方も変わるかもしれない。
されど。
されど、今に生きる命を、この瞬間に心を脈打たせるものを。
過去の威を盛って脅かすとあれば、其れは理に非ず。
――ただの暴力。理不尽を押しつけるヒトの咎。
そのようなものは許せぬと、雪音は柔らかな肢体で旋律を刻む。
ふわり、ふわりと雪のように見えても、その内側は迅き脈動。
猛吹雪のような苛烈さを抱き、けれど雪の欠片のように緩やかに見せる技。
ああ、美しいと手を伸ばせば、その指先を凍て付かせる美しくも冷たき武。
死の色彩に他ならない。
終わりの慈悲と、死神である。
「その刃を、齎される絶望を、貴方という病を」
だからこそ、雪音はここで宣言するのだ。
始祖人狼の命を、存在を刈り取るべく、この指先で触れるのだと。
「我が武を以て阻みましょう」
白月のように透き通る美貌で、あなたを看取る。
この細やかな指先で、繊細なる死をあなたに届けるのだと。
ゆっくりと握り絞めた拳を掲げてみせれば、始祖人狼も応じるかのように残る首を振る。
それは獣の死合いには、なんとも似合わぬ姿。
凜々しく、美しく、気高き闘争の様子。
これより、命と存在、何より己が矜恃を懸けての決闘が始まる。
狂徒の王として告げるは始祖人狼。
「ならば、病の先兵。退けてみよ。吾の病は、武をも蝕む」
大地が、樹木が、雪と風が。
あらゆるが一斉に人狼騎士へと変貌し、剣と牙を雪音に向けて殺到する。
尽きせぬ兵力が、一兵に至るまで死兵として攻め懸かる。
世界が壊れでもしない限り兵は無限。自らが死ぬことを怖れぬ人狼騎士が、雪音の白い柔肌を裂こうとする。
されど、雪音には大軍を薙ぎ払う術はなし。
猛火の嵐とでもなれば、この大軍は払えるだろうか。
稲妻と化して真っ直ぐに軍勢を斬り拓き、始祖人狼の元に辿り着けばどのように容易いか。
が、雪音の身はあくまで静かなる武。
明鏡止水の心境と、そこに浮かぶ凍月の武こそが雪音の力。
――ならば、無傷とは参りませんか。
そう、深紅の双眸を細める貌から想いを読み取ることは出来ず。
されど、決して諦めなど抱かないのだと、見るもの全てに思わせる。
故に、此処に本領を発揮する
拳武。
弱きヒトが至りし闘争の極致は、逆に言えば死からの回避だ。
弱く、脆きものが、それでも願いを叶える為の祈りこそが武芸の始まりでもあるのだから。
ふわりと、淡き雪のように揺らぐ雪音の姿。
人狼騎士の剣が突き立てられれど、それは残像。
無数の切っ先が、牙と爪が突き立てられるその瞬間に、雪音は人狼騎士の隙間を縫って突き進む。
音もなく速やかに。
されど、冷たい死に気配を伴って。
見切るは群れの動き。
微かにでも合間があれば、雪音はしなやかに身を滑り込ませる。
が、どうしても衝突するモノには、ただ静かなる一撃を、その命へと届かせるのだ。
下からの掌底による頭部破砕。
飛び上がって着地の地点にいた人狼には、弧を描く蹴撃で首をへし折る。
勢いを殺すことなくそのまま着地して疾走。阻むものの胸部を滑り込みながらの打撃で粉砕していく。
前へ、前へ。
ふわり、ふわりと雪のように白く瞬き。
気づけば現れる美しき死神の姿として、始祖人狼の眼前へ。
が、その刹那、雪音の虎の尾と耳がぴくりと跳ねる。
「見事、吾という絶望へと見事辿り着いた」
雪音の身体が感じたのは、自らの奥から湧き上がる恐ろしい程に凶暴な衝動。
血脈樹を生やした始祖人狼を源として、あらゆるを汚染する病の流れが放たれている。
見えず、臭わず、感じることのできない、心魂を蝕む病。
衝動はただ目の前にものを討ち果たすことだけを感じ、捨て身への攻撃へと雪音を動かそうとする。
が、そうすれば始祖人狼の巨剣の前に雪音は儚く散るだろう。
それほどの猛威を帯びた剣が振り上げられ、吠え猛るが如く振り下ろされたのだ。
だが、ならば。
ならばこそと、心と衝動を落ち着かせ、刹那であれ雪音に心境に凪ぎを紡ぐ。
回避を激減させる全てに抗うは不可能。
されど、衝動を抑えながら技を練ることならば。
無想への至りは刹那。
されど、それを持って獣の衝動を、産まれ持つ殺人鬼の業と咎を統べ、ただ一撃へと練りあげ、凝らしていく。
振り上げられた巨剣より早く。
懐へと踏み込み、その心臓へと一撃を。
最高速度にして、最高威力。後先を考えずともよい、死の一撃を始祖人狼の鎧の上より、その心の蔵へと叩き込むのだ。
雪音の身が放つ真白き瞬きは、さながら月の落涙。
清らかに、静かに、そして冷たく――死を届ける無常の雫が、始祖人狼の身へと墜ちる。
触れた始祖人狼の鎧が歪み、その肉体の深部まで衝撃が駆け巡った。
眼、口、耳の毛細血管から吹き上がる鮮血。浸透した撃は心臓のみならず、肉も骨も、血管も内臓をも内部から傷つけている。
静謐さを称える美しい技だった。
だが、無慈悲なまでの死と破壊を届ける業だった。
「お、おおお!!!」
それでもと食らい付くように巨剣を雪音に振り下ろす始祖人狼。
だがもはや勢いは減じている。躱すという意思は働かないが、迎え撃つという獣の本能が雪音を動かした。
するりと、三日月の如く弧を描くと雪音の美しき脚。
しなやかに旋転し、速やかにと迫る巨剣の側面を打ち据え、その機動を弾き返す。
反動は無論ある。触れた剣撃の重さで雪音の繊細な身は軋み、衝撃のみで雪音は後ろへと飛ばされた。
だが――確かに死を届けたのは、雪音だけ。
死と絶望の剣を退け、痛みなどないかのように静かなる美貌で、始祖人狼を見つめる雪音。
ああ、と。
吐息をひとつ。
もしや、と胸に秘めた言葉は呑み込むばかり。
言の葉はないと告げたばかり。
膝を付き、苦しみながら血塊を吐く始祖人狼が応えることは決してないのだから。
問うてはいけない。
だからと、その言葉は雪音の心の奥に閉じ込める。
――あたなは、自らに迫る死を退けるつもりはないのかと。
死んでも構わない。死など怖れない。
死んでも叶えたいという衝動が、自らを壊しても縋り付きたいものが。
はじまりを求め、奪い、誰にも渡さないという願いだったのだろうか。
そんな命を蝕む病の根源。人狼病。
されど。
それを振りまいた罪咎は、決して許されることはない。
どのような理由があっても、ソレに慈悲の情にて触れるは死のみだった。
氷の華が凍て付いた荒野に佇む。
月の如くに凛として、透き通るような氷の花びらを見せて、ただ過去の残滓を見つめる。
今と未来に生きるものなれば、過去に在った願いを。
そこより産まれた理不尽な力を。
それをねじ伏せた、自らの暴力を。
冷たく、冷たく、悲しくと――己が業を見つめていた。
大成功
🔵🔵🔵
ゾーヤ・ヴィルコラカ
あなたがどれほど絶望的だとしても、わたしはあなたを倒して見せるわ。ここで人狼病の元凶を断ち切りたい、それが猟兵であるわたしの願いよ。覚悟なさい始祖人狼!
辺りの空間を聖痕の魔力で満たして、人狼化の病魔を遠ざけるように〈多重詠唱〉〈高速詠唱〉の〈結界術〉を展開するわね。集まってくる人狼騎士を盾と剣で〈吹き飛ばし〉たら【UC:聖魔氷槍】(SPD)を発動よ。〈祈り〉を籠めた〈全力魔法〉の一撃に全てを賭けるわ!
故郷はいつだって、絶望と傲慢に満ちていたわ。でも、だからって今日を、未来を諦めたりなんかしないの。あなたの絶望と傲慢がどれほど強大でわたしの力が及ばないとしても、止まる理由になんてならないわ。さぁ、まだまだ行くわよ!
(アドリブ連携負傷等々歓迎)
永久にと雪氷が大地を覆う。
決して逃れられない真白き絶望のように。
ただ生きること。それさえ許さず、認めない闇の病のように。
ああ、この世界は
故郷と色彩は違えど、同じ過去の残滓に脅かされているのだ。
だからこそ、この胸にあるぬくもりを。
希望という熱を届かせようと、ゾーヤ・ヴィルコラカ(氷華纏いし人狼聖者・f29247)は声を響かせる。
「あなたがどれほど絶望的だとしても、わたしはあなたを倒して見せるわ」
ふんわりと柔らかなゾーヤの声色も、この時ばかりは熱を帯びていた。
求めるものがある。
願うものがあるのだ。
それが出来るかどうかは関係なく、胸の衝動に従うだけ。
「こで人狼病の元凶を断ち切りたい、それが猟兵であるわたしの願いよ」
さながら祈るかのような切実さ。
ゾーヤは緑の双眸をするりと揺らし、始祖人狼を見つめる。
雪が降る。
絶望と病に終わりはないのだと、世界が囁くように。
ならばと澄んだ声で、ゾーヤは告げるのみ。
「覚悟なさい始祖人狼!」
必ずやここで倒すのだ。
ゾーヤもまた蝕まれた人狼病。
いいや、その苦しみを抱えた数多のひとを知るが為に、己だけではなく皆の為に為すのだと守護の長剣と盾を構えてみせる。
「元凶、ああ、確かに。確かに。……その願いだけでという衝動こそが、猟兵が証か」
ならばと爪を鳴らし、牙を剥き、隻眼にてゾーヤを睨み巨剣を構える始祖人狼。
「吾もまた、それを理由としてお前を討とう。はじまりに近付くものは、皆、朽ち果てるべし」
もはや後は何を語らうというのか。
求める願いの為に、未来を得る為にと戦意を燃やすふたり。
辺りの空間に漂うのは始祖人狼の病の気配のみではない。
満ちるはゾーヤの雪の結晶のような模様をした氷鼻の聖痕より溢れる清らかなる魔力。
むしろ神性を帯びるものが扱う霊力に似たそれが、人狼化の病魔を遠ざけるようにと結界を作り上げていく。
幾重にも重なり合うそれは、さながら氷華が結び合うかのよう。
病魔と魔力が鬩ぎ合い、ゾーヤの結界の端が崩れても高速で紡ぎなおされていく。
「届かぬか」
嗤う始祖人狼に焦りは見えない。
むしろ愉快とばかりに剣を大地に突き立て、爛々と隻眼にて戦意を燃やす胃。
「ええ、届かせないわ」
受けて立つゾーヤもまた凜然と向き合い、幅広の刀身を持つ長剣と十字の紋章の刻まれた盾を掲げてみせる。
例え目の前の五卿六眼のひとりだったとしても、ゾーヤは決して怯まない。
いいや、あの凄惨な闇夜をもたらした一柱なのだ。負けはしない。必ずゆ勝つのだと、鼓動と共に決意は研ぎ澄まされていく。
本当の夜明けの為に。
あのダークセイヴァーに
希望をもたらす為にと、雪の降りしきる戦場にて相対する。
両者譲らぬ意思の激突。
さながら光と闇が絡み合い、互いを消し合おうとするような状況。
それは不意に、終わりを迎えた。
「ならば、人狼同士。この爪牙と剣で決着を付けようぞ」
「っ」
ゾーヤの周囲にて脈打つ禍々しい気配。
大地が、雪が、風が樹木が。あらゆる全てが病に侵され、支配され、始祖を盲信する人狼騎士となってゾーヤへと殺到する。
ゾーヤの紡ぐ結界の内側には決して発生しないが、その外側から黒い津波のように迫る敵の群れ。
数を数えるのは馬鹿らしくなり、全て戦うなんて闘争心に溺れた愚かさだ。
だからこそ、一瞬に懸けるのみ。
刹那に全力を賭して闇と病を打ち払うのだと、ゾーヤの澄んだ緑の双眸が鋭く始祖人狼を捉えていた。
「ええ、行くわ。必ず、あなたへとこの切っ先を届けてみせる」
告げるや否や、集まってくる人狼騎士を構えた盾と剣で吹き飛ばし、聖痕から溢れる魔力を氷嵐の如く吹き荒らす。
阻む為の結界を、今度は攻める為の方陣へ。
満ちる清らかな力は人狼騎士たちを打ち払い、その群れを崩せば一気に駆け抜けるゾーヤ。
縋り付く人狼騎士は盾で打ち据え、長剣で斬り払う。
人狼病感染の流れは魔力の氷嵐にて狂わされ、ゾーヤの身を捉えることも出来ない。
「が、それは一瞬だ」
「それで十分よ。あなたは、きっと強いのね。絶望を抱いたことがないくらい、産まれた時から強い。だから、始祖だった」
ゾーヤは静かに唇より紡ぐ。
決意と覚悟を鼓動に秘めて。
儚くも果敢に、その命を賭して闇を斬り裂く刃として。
「けれど、だから絶望を前に抗う強さを、希望をあなたは知らない。その
光を、あなたは抱けない」
「…………」
それが戯言ではない事は、敵群を突破しようとしたゾーヤがその身をもって証明している。
盾でも剣でも払いきれない人狼騎士の剣に爪。
それらがゾーヤの身体に届き、装束の上から肉を斬り裂く。鮮やかな血を噴き出させる。
それでもなお、一瞬も止まらず、減速もしない。
むしろ傷を負えば負うほど加速し、人狼騎士たちでは届かない存在へとなっていく。
絶望を抱いてなお産まれる希望。その強さ。
ああ、解らない。何故、そこまで必死になれるのか。
己が命が惜しくはない狂戦士など数多といる。
復讐に眼を澱ませた騎士など、ああ、一体どれほどか。
だが、ゾーヤのその眸は星明かりの如く澄み渡るばかり。
祈り、願い、求める衝動のままにひた走る。
「ああ、吾が討つべき猟兵! 今はそこにいたか!」
ゾーヤのその姿に、始祖人狼は過去の残滓としてゾーヤを最大の敵と認めた瞬間でもあった。
さながら傷だらけになりながらも、飛翔するかのように迫るゾーヤにと始祖狼は最大の警戒を持って迎え討つ。
「いいえ、何時でもわたしのようなひとは、衝動と想いを抱くひとはいた」
が、首を振るってみせるゾーヤ。
語る言葉は過去の、そして故郷の世界。
でも決して憎しみや敵意、悲しみに染まったものではなかった。
「
故郷はいつだって、絶望と傲慢に満ちていたわ」
言葉を切っ先に乗せ、敵を斬り払って始祖人狼へと肉薄する。
「でも、だからって今日を、未来を諦めたりなんかしないの」
ただ純粋に、決して朽ち果てることのない希望を語る。
どれほどに理不尽な現実に、闇の前には儚い灯火だとしても。
数多のひとの胸に宿り、そしてゾーヤにと託されたもの。
産まれた村で唯一の希望とされた、あの時のことを思い出しながら。
それはもう、過ぎ去った過去ではあるけれど。
「あなたの絶望と傲慢がどれほど強大でわたしの力が及ばないとしても、止まる理由になんてならないわ」
あのか弱き村人たちも。
ただひとつ、ゾーヤという希望を見つけた時はきっと救いと幸せを覚えたように、暖かく笑った筈だから。
そうして誰かを守り、癒やしたいとゾーヤの今の心にと繋がるものだから。
「過去は不変。でも、未来は手に入れられる。いいえ、手に入れさせて貰うわ!」
そうして一際強く冷たい輝きを放つゾーヤの氷華の聖痕。
始祖人狼を守るべく立ち塞がる最後の騎士へと剣を突き立て、その身を蹴って頭上へと跳躍するゾーヤ。
見れば着地の瞬間を狙って始祖人狼が巨剣を振りかざしているが、それより早く、ゾーヤの聖痕が雪色に輝いた。
『――届いてッ!』
ゾーヤの聖痕の魔力により紡がれたのは浄化を纏った氷槍。
美麗なる造りはさながら氷で紡がれた百合のよう。
透き通る氷の刃にとゾーヤが籠めるのは、ただただ一途な祈りばかり。
これにかける。全てをこれに。
全身に全霊を尽くし、この一撃にて人狼病の元凶を、根源を絶つのだ。
冷たく切っ先が輝いた瞬間、流星の如く奔る聖魔氷槍。
空気を斬り裂き、空間を穿ち、希望の白光として流れる一筋。
「ならば、吾もまた」
躱せないと見た始祖人狼が巨剣を振るい、真っ向から聖魔氷槍を迎え討つ。
巨剣と氷槍。互いが互いを破壊しながら鬩ぎ合う。
これもまた光と闇の激突。希望と絶望の衝突。
だからこそ譲れないと、美しい音色が響き渡った。
巨剣に罅が走る。氷槍に亀裂が走る。
両者の全力を尽くした一撃に、双方の武器が砕け散ようとしていた。
その僅かな前に、氷槍へと触れるのは優しき祈りを帯びた指先。
一度放った氷槍の柄に指を絡ませ、更なる祈りを届けるゾーヤの美しき救いの手。
氷華の聖痕から再び魔力が伝わり、壊れかけの氷槍がその姿を取り戻す。
より強く、輝かしさを増した穂先が、ゾーヤの祈りと願いで更なる未来を斬り拓くのだ。
「さぁ、まだまだ行くわよ!」
「なッ
……!!」
確かに全力を尽くした筈のゾーヤ。
全てを振り絞った一撃だった筈だと始祖人狼が驚愕し、隻眼を見開いている。
確かに全てを振り絞った。
だが、ひとは絶望という無からでも、心から希望や祈りを、衝動を生み出すのだから。
無からの更なる全力。
想いの力が、魂さえも覆すという
奇跡。
「そう。絶望したことのない、あなたには解らなくても、わたしにはある力なの。……わたしに、託された想いがあるの」
そんな儚くも鮮烈な、優しくも強い祈りによって、ついに始祖人狼の巨剣が砕かれる。
闇を、病を、そして絶望を打破した音色が世界に響き渡る瞬間だった。
そして勢いのままに氷槍が始祖人狼の三つ首のひとつを捉え、その首を斬り落とす。
「吾を討てど、病は消えぬ。因果は、既に在る。傷つけられたものは、傷つけたものを消しても癒やされぬ。そんな道理も知らぬというか」
大量の血を吐きながら、吠える始祖人狼。
死を前に激しく震え、怒りとも憎悪とも見えない感情をちらつかせている。
ああ、このような衝動ばかりのものに。
吾が噛み殺すべき儚き祈りのものに、討たれるなどと。
「ええ、知っているわ」
けれど、ゾーヤの声はなんとも柔らかだった。
踊るようにと身ごと氷槍を旋回させ、慈悲を届ける。
「だから、これから私が出会うひとを。わたしが癒やしてみせるの。これから傷つくひとを、みんな守ってみせるの」
慈愛とも、願いともつかないゾーヤのその言葉。
ただ偽りなどなかった。
「傷つけることで癒やされる筈なんてない。だから――傷を、病を癒やすために。あなたのいない未来を、明日を、希望を求めるわ」
故に、槍より放たれるは氷華一閃。
それは余りに静謐で、穏やかで。
氷の花びらを纏う、麗しき閃きだった。
病の根源たる始祖人狼、その最後の首を斬り落とし、払い清める。
それでも後に残る数多の傷は、病は。
ひとつ、ひとつに触れて、癒えていく。
数多の時と、ひとの心によって、癒やされていくものだから。
痛いという気持ちを。
苦しいという記憶を。
なかったことにするのではなく、いつか、それでもと優しく微笑むことのできるように。
憎しみと悲劇の連鎖たるあの闇夜の世界で生まれた、
闇の救済者として願うのだった。
大成功
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