獣人世界大戦⑱〜白き虎は骸の雨に踊る
●雨の中渾沌の虎は踊る
(何度でも【再孵化】せよ。死ぬ事は赦さぬ)
骸の海そのもののような渾沌氏の声に有頂天道人の意識は浮上する。
つい先程猟兵に敗北を喫した
機械化義体は元通り、そして右半身の渾沌の力は増した事を武人である彼は直感で感じ取っていた。
『師父よ、この俺に更なる力を与えてくださるのか!』
死を赦されず何度も戦いに駆り出される事に苦痛を感じるオブリビオンもいるのだろうが、有頂天道人は違った。
『カカッ、
機械化義体も塗り替える、凄まじい力が湧いてくる……!』
その力で何を為すか。
決まっている。『はじまりの猟兵』を捕縛し、この力を与えた師父の元へと連れてくる。
猟兵はきっとまたその目論見を砕きに来るのだろうが関係ない。
この強大な力を以て目的を遂げるーーそれだけだ。
グリモアベース。
「獣人世界大戦も第三戦線へと突入しました。新たな超大国の首魁も現れてきているようですが……今回もこれまでの戦線で戦った有頂天道人を撃破してきてほしいのです」
トラのグリモア猟兵、禹・黄風(武の頂を・f40009)が集まった猟兵達に要請する。
「有頂天道人は確かに先の戦線で撃破されたように見えました。ですが、彼が師父と呼ぶ渾沌氏『鴻鈞道人』の力で再孵化し、更により濃く『渾沌化』を纏った状態で帰ってきたようなのです」
一部では再生怪人という概念があるとのことですが幾らなんでも早すぎませんか、と真面目な表情で黄風は言う。
「復活した有頂天道人は
渾沌の諸相を身に着け、鴻鈞道人の命によって『はじまりの猟兵』を捕縛しようとしています。それを阻止できねば例え始祖人狼を撃破し戦争に勝利してもはじまりの猟兵は拉致されてしまうでしょう。それを防ぐために皆さんのお力を貸して下さい」
そして黄風の説明は彼の得た予知の情報へと移る。
「有頂天道人がいるのは森の中、それなりに木々の間隔も開いていて戦闘に支障はなく身を隠すぐらいは出来そうです。ですが『骸の海』が凍ることなき雨と化して降り注いでいて、そこに立つ者の肉体を急速に蝕んできます。元々
機械化義体を装備している有頂天道人は、今や全身を渾沌化したことで骸の海を浴びても肉体汚染どころかそれを自らの力に変えてしまう厄介な特性を有しています。その上でこれまでの戦いで苦戦させてきた技量は健在、渾沌氏に至った力を開放して理解不能な領域に至った拳技で戦ってきます。全身に渾沌を帯び戦場内全ての敵の行動を妨害し、不可解な姿勢のまま高速で移動しながら何らかの状態異常を与えてくる、更にその血液に触れたなら血液を除去するまで知覚が渾沌で埋め尽くされてしまうという不明瞭ーー渾沌で何でもありな要素が増えているようで、対処が極めて難しくなっています」
だが必ず突破口はあるはずだと黄風は説明を締め括り、彼のグリモアである巻物を広げて転送の準備を開始する。
「はじまりの猟兵が捕縛された場合どうなるかは未知数です。戦争の勝敗には関係ない戦いにはなりますが、目論見通りにさせれば間違いなく碌な事にはならないでしょう。……第一第二戦線でも戦ってきて、今度こそ三度目の正直と行きたいところですね」
そうトラの青年は話を締め括り、グリモアを光輝かせて猟兵達を包み込んだ。
転送された先はロシア戦線の森、しとしとと降り始めた骸の海の雨の向こうに、新たな力を得たトラのコンキスタドールは待ち構えている。
寅杜柳
オープニングをお読み頂き有難うございます。
全部白の逆で全部黄色もありそうな。
このシナリオは獣人戦線の『ロシア戦線』でコンキスタドールの『渾沌氏「有頂天道人」undefined』と戦うシナリオとなります。
戦場には骸の海が凍ることなき雨と化して降り注ぎ、そこに立つ者の肉体を急速に蝕みます。有頂天道人自身は
機械化義体を装備している上、全身を渾沌化したことで逆にそれを自身の力に変えてくるようです。
また、下記の特別なプレイングボーナスがある為、それに基づく行動があると判定が有利になりますので狙ってみるのもいいかもしれません。
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プレイングボーナス:骸の海による肉体汚染に対処する/骸の海による有頂天道人の強化に対処する。
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それでは、ご武運を。
皆様のご参加をお待ちしております。
第1章 ボス戦
『渾沌氏「有頂天道人」undefined』
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POW : 渾沌孤拳 undefined nackle
全身に【undefined】を帯び、戦場内全ての敵の行動を【undefined】で妨害可能になる。成功するとダメージと移動阻止。
SPD : 渾沌奇脚 undefined asault
【undefined】姿勢のまま、レベルkm/hで移動できる。移動中は、攻擊が命中した敵に【undefined】の状態異常を与える。
WIZ : 渾沌妖血 undefined blood
術者の血液に触れたあらゆる対象は、血液が除去されるまで、全ての知覚が【undefined】で埋め尽くされる。
👑11
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神酒坂・恭二郎
さて、そろそろ決着の頃合いだな有頂天道人
骸の海に対し、風桜子を通したスペース手拭を頭上で大きく、更に大きく、どんどん大きく広げて天蓋とする。単純だが雨には傘だ【武器の巨大化、オーラ防御、結界術】
渾沌孤拳への対応は難しい。どうした物やら
幸いに相手は後の先の技だ。じりじりと間合いを詰めながら圏内に入り、拝むように頭を下げ、【居合】の斬撃を狙う
この行動への妨害の成否、ダメージは相手次第と【覚悟】で受け止め
そのまま両掌を打ち鳴らして風桜子の波で領域を満たす【見切り、カウンター】
「疾ッ!!」
渾沌孤拳を一刹那だけ無効化し、すかさず片手一本突きを放って勝負を賭ける【覇気、残像、早業、急所突き、鎧無視攻撃】
●
宇宙剣豪と渾沌拳士
降りしきる骸の雨の中、再孵化時に『渾沌氏』の領域に至った力を解放して渾沌化した白き毛並みを濡ら有頂天道人は血管樹の森を歩く。
そして、足を止める。その視線の先には頭上に天蓋を展開した神酒坂・恭二郎(スペース剣豪・f09970)。
「さて、そろそろ決着の頃合いだな有頂天道人」
風桜子を通すことで強度を増して巨大化する特性のあるスペース手拭いで作られた天蓋は、降り続く骸の海の雨を弾いてその真下に居る恭二郎を守っている。
雨には傘、単純な理屈である。
円形の天蓋はさらに巨大化し有頂天道人と恭二郎の両者の頭上を覆い、円の外へと雨を逃がしていく。
『カカッ、気が早いぞ猟兵!』
有頂天道人が渾沌化した全身に更に白く蠢く渾沌を帯びる。それは闘気のような非実体にも見えるし、何らかの触手や刃のような物体にも見える
曖昧なもの。
(「どうした物やら」)
思考する恭二郎。あらゆる行動を帯びた渾沌で妨害し、それで妨害されてしまったなら移動までも封じられてしまう対応に困る有頂天道人の技。
だが妨害とはこちらの行動に対して行われる、つまり後の先の技であるからこちらが行動しなければ向こうもユーベルコードで直接何かする事は難しい。
とはいえ有頂天道人は武人としても卓越している。向こうから仕掛け恭二郎の防御行動に対して妨害を仕掛けてくることすらあるかもしれない。
それでもやる事は変わりない。神経を尖らせながら互いにじりじりと間合いを詰めて。
(「ここだ」)
有頂天道人から7メートル、ユーベルコードの間合いまで接近した恭次郎は拝むように頭を下げる。
「挨拶は大事さ。何事においてもね」
構えを崩さぬ有頂天道人にその姿勢から納刀していた『銀河一文字』の柄に手をかけ居合を仕掛ける。
当然トラのオブリビオンは渾沌でそれを妨害、触手のように伸びてきた渾沌が恭二郎の腕を打ち据える――そこまでは覚悟済。
見切りダメージを最小に抑えるようにガードするが、居合が妨害されたことにより移動が封じられる。前に出る事は出来なくなったが、次の為には腕が動けばそれで充分。
両掌を打ち鳴らし一拍手、【拝一刀】の動作により周囲に
風桜子の波が広がり7メートル内の領域を満たす。
場を祓い清める波が有頂天道人に命中したほんの一刹那、妨害のユーベルコードが無効化され足が動くようになる。
「疾ッ!!」
その瞬間に銀河一文字を抜き放ちながら一息に距離を詰め片手一本突き、鋭い光線のようなまっすぐな一刀が渾沌を貫いた。
『カカッ、俺の拳を上回るとはな!』
手応えはあったが渾沌の身体には致命傷には僅かに届かなかったようだ、雲耀の一刀を受けながらも軽やかに跳ねて恭二郎から距離を取り骸の雨に身を晒す有頂天道人。
無効化が解けて追撃は叶わないが、恭二郎は再び愛刀を構え次の攻撃に備えるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
アドリブ・連携歓迎
死ぬことは赦さぬって、オブリビオンなんだからもうとっくに死んでるだろうに。
まあいいや、まだ死んでないって言い張るなら死ぬまで倒すとしようか。
さて、とりあえず骸の海の雨をなんとかしようか。
対毒大型投槍『ティフォン・スティンガー』を上に向かってぶん投げて、
発生させた竜巻で雨を槍に向かって吸い込ませて、
自分にも有頂天道人にも当たらないようにするよ。
ついでにこれなら血液を飛ばしてもこっちには届かないしね。
後は【引網蜘蛛】で糸を伸ばして捕まえようか。
捕まえてしまえば知覚が何で埋め尽くされようが引き寄せてぶん殴るくらいは問題ないしね。
まったく、使いっ走りがいつまでも出てくるんじゃないよ。
●竜巻は雨を呑む
「死ぬことは赦さぬって、オブリビオンなんだからもうとっくに死んでるだろうに」
何とも理不尽な渾沌氏『鴻鈞道人』の言葉ににペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)はぼやく。
かつて
銀の雨の降る世界で交戦した神将『史・睡藍』は本人の言によれば骸の海で何度も傭兵として戦わせられ憎悪していたらしいが、有頂天道人は寧ろ復活して戦えることに感謝しているようだ。
「まあいいや、まだ死んでないって言い張るなら死ぬまで倒すとしようか」
死んでないなら死ぬまで滅ぼす、巨人サイズの対毒大型投槍『ティフォン・スティンガー』を構え空を見上げる。
骸の海の雨は止む気配はない。ざあざあと凍る事なく降り続ける雨は肉体を蝕んできて、強靭な生命力を持つペトニアロトゥシカでも汚染を受けていては少々厳しいだろう。
だからまずこの雨を何とかする為に、大型投槍をキマイラの怪力で空に向かってぶん投げる。
放たれた巨大投槍には溝が刻まれている。高速で大気を斬り裂くと同時にその溝により発生する気流は竜巻を形成して周囲のものを吸い上げ空へと巻きあげていく。
有頂天道人は身じろぎ一つしないが、軽いもの――例えば周囲の骸の海の雨などはその吸引力に抗う事は出来ない。
一瞬周囲の雨が止んだようになって、有頂天道人は驚きの表情を一瞬見せてすぐにペトニアロトゥシカへと竜巻の暴風を突っ切って襲い掛かる。
今のかのトラの血液は渾沌の妖血、触れてしまったならば取り除くまで全ての知覚を埋め尽くされてしまうという厄介な代物だが、幸い遠距離から飛ばして付着させてくるような戦いは届かないからか仕掛けてこないようだ。
「逃がさないよ」
手首にある出糸突起を渾沌のトラに向けてユーベルコード【引網蜘蛛】を起動、蜘蛛の糸が伸ばされて有頂天道人へと付着する。
サイバーカンフーマスターの技量であれど伸び粘着する蜘蛛糸は瞬時に対応するのは難しい。引き剥がされる前にペトニアロトゥシカは怪力で蜘蛛糸を引っ張り有頂天道人を引き寄せ、毛に覆われた猩々の剛腕を顔面に叩き込み命中。
殴った衝撃で口から出血した有頂天道人、その血液は至近距離のペトニアロトゥシカに触れ、彼女の知覚は白き渾沌に埋め尽くされる。
感じ取る事は出来ない、けれど糸が繋がっているならば引き寄せて再び拳を叩き込むことはできる。
二、三撃拳を辺りで当たった感覚がなくなる。蜘蛛糸を引き剥がされ離脱されたのだろう。
或いは知覚できないだけで離脱間際に一撃貰ってしまっているのかもしれないが、少なくともまだ動けるようには思える。
まずは付着した妖血を剥がさねばと、猩々の腕にべっとりついた血を地面の辺りに擦りつけにかかるペトニアロトゥシカ。
拳は数発叩き込むことはできたが、蜘蛛糸を剝がせる程度にはまだまだ元気なのだろう有頂天道人、
「まったく、使いっ走りがいつまでも出てくるんじゃないよ」
今は渾沌に埋め尽くされ知覚できないかのトラに向けて、キマイラの女はそう呟いた。
大成功
🔵🔵🔵
夜刀神・鏡介
死んだ奴を何度も蘇らせて戦場に向かわせるとは……もしかして、鴻鈞道人の陣営は人手不足か?
結構なパワーアップをしたようだが、とはいえ一度倒した相手に負ける道理はないって事を教えてやるとしよう
神刀の封印を解除。神気を纏う事で身体能力を強化すると共に浄化の力で肉体汚染に抵抗
完全には無効化しきれんが、奴と戦う時間が得られれば良し
そして廻・漆の秘剣【蒼鷹閃】を発動。まずは大きくジャンプをして、手近な木の上に飛び乗り、飛び移って移動していく
変わった姿勢のまま高速移動ができるとして、立体的な移動は対応できるのかな
樹上から斬撃波で攻撃と、枝を落としたり木を切り倒す事で動きを妨害。隙を作って直接の斬撃を叩き込む
●神気の剣と渾沌の拳
雨を吸い込み巻き上げていた竜巻が消え、再び骸の海の雨が降り注ぐ。
キマイラの女から離れた有頂天道人に向かい、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は雨の木々の間を疾駆する。
(「死んだ奴を何度も蘇らせて戦場に向かわせるとは……もしかして、鴻鈞道人の陣営は人手不足か?」)
思考しながら骸の海の雨がじわじわ浸食してくる感覚を感じる彼。神刀【無仭】の封印を解除して刀身から溢れる無形の神気を纏っており、肉体汚染に幾らか抵抗は出来ているが長時間はもたないだろうと予測する。。
けれどこの有頂天道人と戦う時間位は十分もつだろう、そう考えて斬るべき敵の全身を観る。
左半身の黄の毛並みは右半身と同じように白く渾沌化している上、左腕の
機械化義体にまでうっすらと広がっているようにも見える。
見るからに相当パワーアップはしているようだが、
「一度倒した相手に負ける道理はないって事を教えてやるとしよう」
『カカッ、再戦を挑み勝利するのもよくある話よ!』
鏡介に向き直った有頂天道人は構えて高速で向こうから突っ込んでくる。体勢は先の戦いでも見たサイバー渾沌拳の構え、その姿勢を崩さぬままの高速はユーベルコードによるものだろう。
機械化義体の瞬発力から繰り出される鋭い拳を鏡介はユーベルコード【廻・漆の秘剣【蒼鷹閃】】を起動して蒼の神気に強化された身体能力で宙に高く跳ねて回避する。
「神刀解放。駆けて刻め、蒼き爪痕――廻・漆の秘剣【蒼鷹閃】」
蒼の神気を纏った彼は頑丈な木の枝に着地、そこから木々の間を飛び移りながら有頂天道人を翻弄する怪奇人間の剣士に、トラの拳士は姿勢を維持したまま一直線に跳んだ。
立体的な鏡介の動きにも即座に対抗してくるのは流石の練度、だが鏡介は即座に樹上から刀を振るい斬撃波を放ち迎撃。
対する有頂天道人は斜めに飛んだ勢いそのままに構えから拳を繰り出し斬撃波を打ち消す。が、同時に真上から斬撃波により切断された大ぶりの枝が落下してきてかのトラの勢いを阻む。
そこだ、と隙を見出した鏡介が枝を蹴り有頂天道人へと突進、空中で交錯した瞬間に神刀の刃で混沌の胴を斬り裂いた。
手応えは感じた、着地し振り返る鏡介の眼に渾沌を血のように噴出しつつ体勢を回転して立て直し地面に着地する有頂天道人の姿が見えた。
ぎらりと蒼の眼が光る。まだかの道人の戦闘意欲は失せてないようだ。
まだまだ雨は降り止まぬ。戦える時間ももう少し――その時間を無駄にせぬ為に、鏡介は神気を纏いながら再び雨の中を走り出した。
大成功
🔵🔵🔵
レン・ランフォード
随分と長く戦場にいるなと思いましたが
「再孵化でリスポンしてたんだね…」
「種は割れた。後はクソ道人共々ぶち殺してやればいいさ」
雨に耐えるために霊的防護を施した大典太弐式に騎乗
これで義体にも対処できます
貫通してきても持ち前の邪心・狂気耐性と気合で耐えます
敵の攻撃は第六感と機体の高性能を駆使し敵の攻撃を見切り
武器受け・受け流します
隙をついてUCを発動
戦場移動で雨を遮断、戦場内に響く神曲が敵を弱め此方を強くし
そして此方の機体と貴方につき蝕む渾沌を悪性と判断、強制浄化の対象とします
ようこそ、殺し間へ
それでも相手は強敵、油断せず確実に詰めましょう
●忍者対渾沌氏
有頂天道人はこの獣人世界大戦の開始――第一戦線から第二、第三戦線までずっと猟兵達と場所を変えながら戦い続けてきた。
普通なら一つの戦線で倒されてもおかしくはなく、二つの戦線でも幼女総統レベルのような規格外。
そんなトラのオブリビオンに対し随分と長く戦場にいるなと思っていたレン・ランフォード(
近接忍術師・f00762)だが、
「再孵化でリスポンしてたんだね……」
復活させてくる黒幕がいた、言われてみれば実にシンプルな理屈である。
『種は割れた。後はクソ道人共々ぶち殺してやればいいさ』
多重人格者の彼女の別人格の『錬』が主人格の『蓮』へと語り掛けてくる通りだ。鴻鈞道人は今回の戦線では相対できないのは口惜しいが、いずれは相対する機会もあるだろう。
「それじゃ行くよ、私たち!」
レンはそう呟いて搭乗していた『大典太弐式』を発進させる。キャバリアとして新造された金属のボディは霊的防護を施されている。
骸の海の雨の中でもある程度戦うには問題はない。
『成程、キャバリアを持ち込んできたか! だがこの
機械化義体も劣らないぞ!』
高揚する有頂天道人の出血は既に止まっていて、再びサイバー渾沌拳の構えを取る。
元々高性能かつ渾沌の強化を受けた機械化義体の出力は巨体の大典太弐式にも劣らない。その超速度から繰り出されたトラの飛び蹴りを忍者刀のような巨大な刃で受け止めて流す。
本来はそう容易い事ではない。操縦者であるレンの見切りの力あってこその業。
受け流されつつも左腕の機械化義体からガスを噴出して即座に体勢を立て直し追撃を仕掛けてくる有頂天道人、その猛攻を予測と直感で見切り大典太弐式の高性能で受け流し、そして弾き飛ばした。
攻撃が途切れた隙を突き、レンがユーベルコード【隔離結界・浄土「響征陣」】を起動すれば、有頂天道人と猟兵は血管樹の森から廃村へと転移する。
「結界発動、転移完了」
桜が咲き、空には満月が輝く――骸の海の雨の降らない結界の中。
結界内には味方を強化し続け敵を弱体化し続ける神曲が響き続け、有頂天道人の勢いは僅かに衰えている。
それもその筈、神曲の効果はもう一つ、術者であるレンが判断した悪性異常が解ける強制浄化の力を持つ。
渾沌を悪性異常と判断したのならば有頂天道人を覆う渾沌もまた浄化される――渾沌が濃すぎて完全浄化には至っていないようだが、十分弱体化にはなっている。
「ようこそ、殺し間へ」
それでも有頂天道人は構えを解かぬままに高速でレンに接近、攻撃を叩き込もうとする。
だが、減じた速度の一撃は反撃も十分可能。大典太弐式はそれを躱し、返す刀で一刀をオブリビオンに見舞ったのだった。
大成功
🔵🔵🔵
鳴上・冬季
「骸の海と言う戦法が限られる戦場ですが。貴方が邪仙の弟子である以上、何度でも立ち塞がりますとも」
嗤う
「合一・真黄巾力士」
追加UC
仙術・万病回春
全長3mの黄巾力士に融合
鋼の身体に仙術とオーラ防御で骸の海の悪影響を更に遮断
返り血含めた混沌の諸相undefinedによる知覚と行動への制限はUCで解除
敵の攻撃は仙術+功夫で縮地(短距離転移)し回避
まず上空から
金磚の誘導弾に雷属性乗せ制圧射撃
行動阻害しながら義体へダメージ
同時に砲頭から徹甲炸裂焼夷弾連射
鎧無視・無差別攻撃で蹂躙し敵の混沌の諸相の総量を削っていく
敵の攻撃パターンある程度読み込んだら縮地で接敵
攻撃回避しながら貫手
体内から雷撃で焼き尽くす
●渾沌破るは破天荒
黒き和風のキャバリアの巨大な刀が渾沌を斬り裂きその身体は宙に放り出された。
誰もがこれで決まりか、と思える程に鋭い一撃を受けた有頂天道人は、けれどその青の瞳に闘志を宿らせ空中で回転しつつ着地を決める。
息を荒げているがまだ倒れない、はじまりの猟兵を拉致するという目的を遂げる為に、白虎が渾沌を蠢かせサイバー渾沌拳の構えを取れば周囲に再び骸の海の雨が降り始める。
雨の中、トラの視線の先には周囲の桜の廃村に似つかわしくない、キャバリアより一回り小さい3メートル程の人型の『黄巾力士』が一機。
先の戦線でもこの戦線でも幾度となく暴れ回った鳴上・冬季(野狐上がりの妖仙・f32734)の宝貝、それを見た有頂天道人は肉食獣の獰猛な笑みを浮かべる。
『カカッ、それだけでこの渾沌の力を解放した俺に勝つつもりか!』
「骸の海と言う戦法が限られる戦場ですが。貴方が邪仙の弟子である以上、何度でも立ち塞がりますとも」
涼しい顔で黄巾力士と合体している冬季が嗤う。先の戦場では幾度となく交戦した相手であるが、
「合一・真黄巾力士」
既にユーベルコード【合一・真黄巾力士】を起動して黄巾力士と合体した冬季が空へと浮かび、自作宝貝の金磚を構える。
骸の海の雨は先に仕掛けた猟兵の
殺し間の強制浄化に阻まれその量も力を大いに減じており、その上で冬季の仙術によりコントロールされたオーラに守られた鋼の体を侵し切るのは難しいだろう。
雨も血も、いずれを利用するにしても護りのオーラに覆われた人型宝貝の内側へ直接打ち込むしか活路はない。
覚悟を決めたのかトラは金磚から放たれる雷の誘導弾を機械化義体の瞬発力と武人としての経験と反射神経で致命傷を躱しつつ廃屋の屋根に飛び乗り即座に黄巾力士へ跳躍、これまでのダメージによる流血を指で拭うと黄巾力士の至近距離から弾丸のように放つことでオーラの防御を突破して直に血液を触れさせる。
しかしここでもう一つ、黄巾力士が起動しているユーベルコード【仙術・万病回春】が起動して万病回春の仙術が自動発動、冬季の知覚を埋め尽くそうとしていた渾沌の知覚異常をそのまま有頂天道人に反射して返した。
『何重に対策しているんだテメェ!』
自身の知覚を塗り潰されながらも叫ぶ空中の有頂天道人に、冬季は嗤いつつ黄巾力士を一旦着地させ縮地の短距離転移、距離を取りつつ金磚の砲塔から徹甲炸裂焼夷弾を空中のトラに連射して吹き飛ばす。
攻撃を知覚できない状況ではさしもの有頂天道人も回避しきれず、その身を覆う白き渾沌の諸相がその質量を削り飛ばされ総量を減らして墜落。
砲撃で帯びていた雷により機械化義体の一部も機能不全を起こしている、所謂詰みに近い状況。それでも有頂天道人は力強く吠え、再び上空へ飛翔せんとする黄巾力士へとサイバー渾沌拳の構えのまま高速で突っ込んでいく。
しかしそのパターンを冬季は既に見切っていた。有頂天道人の二倍ほどの体格の黄巾力士はその大柄な体で再び縮地、短距離転移し瞬時にトラの死角に飛び込んで低い姿勢から胴体へと貫手を放つ。
雷撃を帯びた一撃に胴体をぶち抜かれ、直後内側から凄まじい雷撃で焼かれ有頂天道人の身体が跳ねる。
その一撃でとうとう限界を迎えた白虎は、渾沌を血のように吐き出して地に倒れ伏した。
『ちく、しょう……済まない師父、だがまだ……』
それを最期に有頂天道人の動きは止まり、その体は解けるように消滅していった。
再孵化されて師父の望みを叶えんと奔走していた有頂天道人は、ここに一度斃された。
されどはじまりの猟兵を拉致から護るためには、まだこのサイバーマフィアのトラを撃破し続けねばならぬだろう。
長く続いた獣人世界大戦の終焉も近い。少しでも求める未来を掴み取るために、猟兵達はグリモアベースへと帰還し、そして次の戦場へと向かうのだった。
大成功
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