3

獣人世界大戦⑫〜ゾルダートグラード第二首都『九龍城』

作者：黒代朝希

---

「諸君、痛ましい報告を既に知っているだろうが……10日の時点で、すでに我がゾルダートグラードの首都『無限軌道都市ベルリン』は『六番目の猟兵』に制圧された」
　切り株代わりに平らに均したウラル山脈の一つの山に腰を掛け、ゾルダードグラード幼女総統『ギガンティック』は自らの直属である総統親衛隊に語り掛ける。
「勿論、吾輩はこの事態を予測した上で『はじまりの猟兵』の確保を優先した。手に入れさえすれば首都奪還はおろかゾルダートグラードがこの世界を支配する事すら夢ではない」
　だからこそ『始祖人狼』……ワルシャワ条約機構が手中に収める事を阻止するべく『ギガンティック』はゾルダートグラード総軍を率いてウラル山脈へと進出したのだ。
「だが、吾輩は総統だ……リスクヘッジはしなければならない」
　そう言って指を鳴らし、ゾルダートグラードの機械化技術で虚空に投影したのは――現在人民租界のオブリビオン兵を蹂躙するサイバードラゴンシティ『九龍城』。
　幼女総統はこれに目を付け、万が一の時に備えて作戦を提示する。
「総員、万一の時に備えてサイバードラゴンシティ『九龍城』を制圧し鹵獲するのだ。現地住民は『オブリビオン兵化』させて構わん。兵力はいくらあっても困らんからな」
　そう言って『ギガンティック』は均していない山脈に立てかけておいた自らの愛銃を手にして出撃準備を整えていく。
「諸君、吾輩は重力戦闘下において間違いなく最強の幼女……しかし万一に備えて悪い事は無い。勝利した際においても兵力になるのは間違いないだろうからな」
　激を飛ばし、総統閣下はゾルダートグラード軍を動かし『九龍城』を制圧しに行くのであった――

「という訳で、現在ゾルダートグラードはサイバードラゴンシティ『九龍城』を狙っているわ。これを九龍城のアウトローと第一戦線の期間を用いて開発された『サイバーパンク兵装』を用いて迎撃して頂戴」
　点心を食べながら金色の長い縦ロールを靡かせるシカの獣人のグリモア猟兵、レヴィア・イエローローズ（亡国の黄薔薇姫・f39891）は九龍城に集まった猟兵にブリーフィングを行っていく。
　今回『無限軌道都市ベルリン』……ゾルダートグラードの首都が陥落した事を受け、幼女総統は万一の時に備えて戦力確保を兼ねて『九龍城』を制圧しに行く様だ。
「とはいえ、これはチャンスよ。九龍城のアウトローやサイバーパンク兵装を用いれば、大きくゾルダートグラードや『ギガンティック』そのものの戦力を減らす事が出来るからね」
　そうして戦力を減らしていけば、ゾルダードグラード軍諸共『ギガンティック』は撤退するはずだ。
「だけど、あのでっかいチビッ子は『自身よりも小さい存在を蹂躙する事』に長けているわ。巨大な体躯を誇るオブリビオンに対する様に戦う事は命取りになるわね」
　だからこそ『ギガンティック』を倒す為には『相手の巨体を利用「しない」戦い方』が重要となる。
　其れを編み出し実行すれば、勝利へと繋がるだろう。
「それじゃあ、頑張って頂戴。わたくしは一度ベルリンに撤退させて貰うわ」
　そう言ってグリモア猟兵として、レヴィアはベルリンに転移していくのであった。

第1章 ボス戦 『幼女総統「ギガンティック」』

POW   :    幼女キーック！！！！ 単純で重い【幼女キック】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。 SPD   :    超超巨大ビィーム！！！！ 【超超巨大砲『シュリヒトゲヴェーア』】から、レベル×5mの直線上に【超超巨大ビーム】を放出する。【魔力】を消費し続ければ、放出を持続可能。 WIZ   :    斯様な結末、吾輩は断じて認めない！！！！ 全身に【終焉を巻き戻す「エンドテイカーの魔力」】を帯び、戦場内全ての敵の行動を【巻き戻されてゆく時間の流れ】で妨害可能になる。成功するとダメージと移動阻止。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「古い本の言葉に『争いは同じレベルの者同士でしか発生しない』という一節があるわ。レベルが違う者の攻撃は争いではなく一方的な蹂躙になるのよ」
　だからこそ川村・育代（模範的児童・f28016）……様々な事情で学校に行けない子供たちのための教育支援用に製作されたバーチャルキャラクターであり、教育支援用バーチャルキャラクターとして子どもたちと接する中で、いじめで不登校になった子の怒り・悲しみ、病気で長期入院している子の苦しみ・死の恐怖など、様々な負の感情を吸収して自我と猟兵としての力に目覚めた『六番目の猟兵』はユーベルコードを駆動させる。
　その名は『拡大アップスケーリング』……自身の『身長』を『最も近接する対象』と『同値にする』というユーベルコード……
　即ち、幼女総統と同じ身長になるという効果を発揮するのだ。
「何と……吾輩と同じ大きさになるだと……？」
「今まで蹂躙ばかりだったんでしょうけど、これから同じレベル（同じ大きさ、同じ幼女）のあたしが『争い』を教えてあげる」
　そう言って格闘戦として柔道の技を仕掛け、まずは一本背負いで『ギガンティック』を地面に叩き付ける。
「ごっ！？」
「近づいて格闘に持ち込めばライフルの銃身を押さえればライフルは無力に出来るから」
　これは護身術の知識と技量だろう。
　教育支援用のバーチャルキャラクターとしての知識で、育代は『ギガンティック』を追い詰めていく。
「電子悪霊のあたしの体は呪詛の塊……呪詛の込められた一撃は痛いわよ」
「あぐっ！」
　顔面に頭突きを、胴体に膝蹴りを叩き込まれてうずくまる『ギガンティック』。
　そこに育代は寝技を仕掛けて幼女総統の関節を締め上げていくのであった――

大成功 🔵​🔵​🔵​

「ふむふむ、じゃあ作戦としては正面から撃ちあうかな。電気をありったけ集めれば最大出力で撃てる！」
　コスプレ姿で通学路の自警活動を行っていた物理攻撃主体の戦闘スタイルを用いる自称正義の魔法少女、天代・ころね（通学路の自警団・f23060）は自身の『魔法』――彼女に取って物理攻撃とは『現実に基づいた魔法』なのだ――を用いて、まずはキャバリア用の超巨大荷電粒子ビーム砲を半分にぶった切って歩兵用に改造した『ハイペリオンバスターライフル』の引き金を引く。
　エネルギー供給はアウトロー達にお願いしてもらい、標準を『ギガンティック』に合わせていく。
「――『採算度外視で完全充填状態の荷電粒子砲を撃つ魔法フルチャージハイペリオンバスターライフル』、120%まで充電したら電気代がすごい事になったんだから絶対に避けないでよ！」
　効果・威力・射程が3倍に増幅された『ハイペリオンバスターライフル』は、迫り来る超超巨大砲『シュリヒトゲヴェーア』から射出される砲弾諸共『ギガンティック』を飲み込んでいく。
「が、ゴホッゴホッ！」
　しかし流石は超大国が一つの頂点に立つオブリビオン……簡単には滅されない。
「反撃だ！――『超超巨大ビィーム！！！！』」
「ならあとは……盾とかバリア的なサイバーパンク兵装で防御して私が蒸発しないようにどうにかしてもらうんだよ」
　瞬間、サイバードラゴンシティ『九龍城』はころねと支援していたアウトローを護る様にバリアを展開。
　莫大なサイズとエネルギー量を誇るビームを受け止めていく。
「最後は相手が大きいからって適当じゃなくてちゃんと狙う！」
　ユーベルコードの第二射を発動し、今度は『ギガンティック』の急所を狙って『採算度外視で完全充填状態の荷電粒子砲を撃つ魔法フルチャージハイペリオンバスターライフル』を叩き込むころねであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「高速詠唱早業先制攻撃でマインドポリューション発動☆――精神世界の中ならサイズ差なんて無くなるわ♪」
　ユーベルコード『マインドポリューション』によって『ギガンティック』の精神を『欲望解放精神汚染✕大食い✕魔喰』という技能を組合わせで脳髄を締め上げていくアリス・セカンドカラー（不可思議な腐敗の混沌魔術師ケイオト艶魔少女・f05202）。
「外側、つまり肉体はお互いに動けなくなってるけど、精神世界の中ではまぁ……」
　幼女総統を『料理なかよし』しているアリス。
　精神世界でのたうち回りながらも、幼女総統はユーベルコードを用いて抵抗していく。
「や、止めろぉっ！」
「だってまぁ……このユーベルコードと精神世界、私の『妄想』だしね。実質脳くちゅって事よね」
「脳科学的に言うな！　吾輩も捕虜を使って研究部にやらせているから余計怖いわ！」
　見た目は巨大とは言え可憐でも悪逆非道を成す超大国が一つ、ゾルダードグラードの総統。
　様々な機械化技術の研究プロジェクトも進めているのだろう。
「あらあら明晰夢の中での戦いははじめて？大丈夫、とっても気持ちよくしてあげるから♪」
「舐めるな！　吾輩は重力戦闘下に置いて最強の幼女！　例え精神世界だろうが蹂躙して見せるわ！」
　そう言ってにじり寄るアリスと自身の尊厳と脳細胞をかけた『ギガンティック』との戦いが明晰夢の中で始まるのであった――

大成功 🔵​🔵​🔵​

「ここが此度の九龍城デスネー！――可能なら制圧したベルリンも持ち込みマショー！」
　じゃあついでに、と言わんばかりにここぞという場面で『無限軌道都市ベルリン』がサイバードラゴンシティ『九龍城』の隣に並び立つ。
　裸も同然なサイバースーツを身に纏った姿になったバルタン・ノーヴェ（雇われバトルサイボーグメイド・f30809）――ユーベルコード『模倣様式イミテーションスタイル・戦闘機械都市マザー・コンピュータ』を発動して骸の海からマザーのデータを抽出。
　バルタンを中枢に『無限軌道都市ベルリン』とサイバードラゴンシティ『九龍城』が合体して、戦闘機械都市と化していく――
「この地のアウトローたる皆様と、用意されてる兵装のパワー！――文字通り結集してギガンティックに応戦しマショー！」
　この際、巨躯を利用する事になるのはバルタンの方になるだろう。
　ユーベルコードの効果で既に合体した『戦闘機械都市』は、幼女総統のサイズをも超えている――その名は。
「――『機動城塞ノイン・ドラッヘ』、ドイツ語で九龍という意味であります」
　既に二つの巨大機械都市が合体した『機動城塞ノイン・ドラッヘ』は一時的に『六番目の猟兵』と化している。
　しかし『ギガンティック』の方も負けじと幼女キックを繰り出してノイン・ドラッヘを揺らしていく――
「細かい兵装の機動は場内の皆様に任せて、ワタシは歩行とキックへのガードに集中しマース！」
　オブリビオン・フォーミュラの一人にしてフィールド・オブ・ナイン第2席である『マザー・コンピュータ』の姿と能力を模倣したバルタンは、総指揮を担当して各兵器の細かい操縦をアウトロー達に任せながら進撃していく。
「……ダメか。総員撤退！このままでは奪還したとしても『無限軌道都市ベルリン』に重篤な機能不全が起きる可能性が否めない！」
　そうして、状況を見切った『ギガンティック』は退却していくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2024年05月13日