獣人世界大戦⑩〜歌よ、獣よ、災いたれ
曇天の戦場に、美しい歌声が高らかに響き渡る。
レコードの針が飛ぶように、歌は途切れず幾度も幾度も繰り返す。揺り籠のように、波のように。戦場の命の悉くが尽きて終わるまで──或いは、途切れても尚。
カラス羽の黒き天使は機械のようにぎこちなく、両手を頭上に掲げる。胸元の拡声器からその喉から、響き渡るのは美しくも確かに壊れた歌の色。
そうして歌声に誘われ、我なき獣が群れなし荒れ狂い、駆け回る。戦場の命を屠る、そのために。
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「みんなに向かってもらう場所は中国、遼東半島先端部に存在する『旅順要塞』だよ!」
獣人世界大戦、第一戦線。グリモアベースに集まった猟兵たちに向かって、布津御魂・アヤメはさっそく大きな声をあげる。
旅順要塞──異世界人が神隠しによって飛ばされてくる「流れ者の宝庫」楽浪郡を近くする、幻朧帝国の租借地だ。故に彼らを巻き込んだこの幻朧帝国軍はとりわけ混沌と化している。
「この戦場の幻朧帝国軍は、異世界から飛ばされてきたオブリビオン兵団を率いてるんだ!
要塞を守ってる敵将は『機械仕掛けの歌姫マリア』、マリアが引き連れてるのはGGOのバグプロコトル『アマルガムビースト』だよ!
マリアは歌声の範囲攻撃や回復で戦場全体を支配してるけど、その穴を補うみたいにアマルガムビーストが駆け回っているんだよ」
マリアが歌い、獣が走る。至って単純な構造だが混沌の戦場では厄介なものだろう。
「アマルガムビーストはGGOから飛ばされてきたままで、機械化義体こそしてないけど、マリアの歌のせいですごく厄介だと思うんだ…。
でも、なんとかアマルガムビーストに対応すれば、マリアに届く勝機がある筈だよ!」
アヤメは拳を握り締める。多様な敵の攻撃を搔い潜るのは至難のこと。それでも猟兵ならば乗り越え、敵将を撃破することも可能だろう。
「第一戦線も終盤…だから、ここが踏ん張りどころだよね!みんな、頑張って!」
アヤメが猟兵たちへ向ける眼差しは信頼と期待だ。猟兵たちは応えるように頷いて、歌声と獣がひしめく混沌の戦場へ向かっていった。
後ノ塵
後ノ塵です。はじめまして、あるいはこんにちは。
10日16時締め切りの、一章完結の戦争シナリオとなります。オープニング公開時からプレイングを受け付け、順次執筆させていただきます。
プレイングボーナス:敵の率いる「異世界オブリビオン兵団」に対処する。
異世界オブリビオン兵団は下記をご参照ください。
『アマルガムビースト』
『POW:バグプロトコル・クロー』自身の【爪】が触れた対象に【バグ】を注ぎ込み、身体部位をねじ切り爆破する。敵との距離が近い程威力増大。
『SPD:アマルガム・ゲイル』【魔獣のオーラ】を纏いレベル×100km/hで疾走する。疾走中は攻撃力・回避力・受けるダメージが4倍になる。
『WIZ:ミューテーション・プロトコル』【体表面に出現する「魔獣の顎」】で敵の肉片を捕食する。自身の身体部位ひとつが変異し、敵のユーベルコードひとつを使用可能になる。
皆様のプレイングお待ちしております。奮ってご参加のほど、どうぞよろしくお願いします。
第1章 ボス戦
『機械仕掛けの歌姫マリア』
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POW : アリア「我が血肉は怒りの炎に焼き裂かれ」
【胸に埋め込まれた拡声器】から【戦場全体に響き渡る歌声】を放ち、敵及び周辺地形を爆発炎上させる。寿命を削ると、威力と範囲を増加可能。
SPD : アリア「いざ行かん、怒りに震え身を任せ」
【自身の喉】から、戦場全体に「敵味方を識別する【荒ぶる歌声】」を放ち、ダメージと【混乱とバーサーク】の状態異常を与える。
WIZ : アリア「止まるまいぞ、鉄を纏う古強者よ」
自身の歌う「【アリア「止まるまいぞ、鉄を纏う古強者よ」】」を聞いた味方全ての負傷・疲労・状態異常を癒すが、回復量の5分の1を自身が受ける。
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神臣・薙人
歌声だけでも厄介ですが
隙間を埋める存在がいるとなると
更に気が抜けませんね
初手でアマルガムビーストに白燐蟲で攻撃
命中した相手に桜花燐光撃使用
敵陣を潰しつつ
最短距離でマリアの元を目指します
魔獣の顎には噛み付かれないよう警戒
距離を詰められたら白燐蟲を呼び
逆に噛み付かせて距離を取らせます
間に合わなければ蟲笛で弾き
UCを写し取られないよう注意
射程に入った段階でマリアにもUC使用
その後は相手が効果範囲から出ないよう位置を取ります
アマルガムビーストの傷は
マリアの歌で癒されるでしょうが
反動で本人も多少の傷を負う筈
そこに追い打ちをかけるように
UC効果に重ねて白燐蟲をけしかけます
さて、どちらが先に倒れるでしょうね
「歌声だけでも厄介ですが…隙間を埋める存在がいるとなると、更に気が抜けませんね」
神臣・薙人は緊張を言葉に滲ませる。厄介な敵というならば、気を引き締めるまで。薙人は柔らかな眼差しに鋭さを潜ませ、戦場を馳せる。
狙うは歌姫マリアといえど、まずは周囲の露払い。ころりと丸い白燐蟲を呼び寄せ蟲笛を短く鳴らせば、蟲はすぐさまアマルガムビーストに狙いを定める。
白燐蟲が群れなし攻撃をしかければ、薙人は瞬きひとつでユーベルコードを発動する。
「その傷は、もう消えない」
静かな言葉と共に、アマルガムビーストに浮かび上がるのは桜花の刻印。白燐蟲はもはや薙人の命がなくとも獣へ食らい付く。容易く一頭を退けて、薙人は最短距離でマリアの元を目指してゆく。
マリアへ近付けば近付くほど、獣の包囲は密度を増して猛威を振るう。次々に襲い掛かってくるアマルガムビーストの群れは、その体表にユーベルコードを輝かせると顎を出現させる。
鋭い牙に肉を抉り取られれば、ユーベルコードを奪われる──恐るべき速度で近付く獣にも、薙人は落ち着いて蟲笛を鳴らし白燐蟲を嗾ける。一頭を退け二頭をすり抜け、白燐蟲の攻撃を掻い潜ってきた魔獣の顎を蟲笛で弾いて切り抜ける。白燐蟲の噛み付きに怯んだ獣の懐を素早く潜り抜け、薙人はマリアを視界におさめる。獣の包囲は未だ崩し切れていなくとも、ここはもう桜花燐光撃の射程内だ。
蟲笛へ息を吹きこみ、戦場に細く響くは龍の声音。白燐蟲はマリアへ素早く接近し攻撃を与えると、ユーベルコードが桜花の刻印を花開く。歌姫と獣の織りなす満開の桜を、白燐蟲は啄み食らい付く。
マリアの喉が大きく震え、戦場に高き歌が響き渡る。【アリア「止まるまいぞ、鉄を纏う古強者よ」】──黒き天使の歌声は獣たちの傷を癒しゆく。されど一度開いた桜花は未だ散る事はなく、群がる白燐蟲は止めどない。そして、獣たちを治癒するマリアの癒しもまたその反動で、彼女のその身を蝕み削ってゆく。
「さて、どちらが先に倒れるでしょうね」
歌声に重なるは龍の声音。更に数を増した白燐蟲はさらに追い打ちをかけて、獣たちごと歌姫を蝕んでゆく。潰えぬ歌声が悲鳴となって掻き消える、その瞬間まで。
大成功
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馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第一『侵す者』武の天才
一人称:わし 豪快古風
武器:黒燭炎、四天霊障
ふむ、なるほど…考え方としてはわかる。
隙間を埋めるのは大切であるからな。
しかして…手段はある。
先制攻撃にてUCを使用。狼達よ、いくがよい!
狼達を形作るは炎であるからな、肉片とかないのよ。しかもUCときた。オブリビオンしか焼かんからな、これ。
さらに、四天霊障での広範囲重量攻撃で押し潰し、わしにも近づけさせん!
ま、敵は回復してくるであろうが…削りたい相手が勝手に削れることになるからな。
それに、四天霊障での押し潰しは止めとらんし…わし自身も突撃して、黒燭炎での突きをやっておったりするからな!
「ふむ、なるほど…考え方としてはわかる。隙間を埋めるのは大切であるからな」
戦場を埋める歌と獣。一見すれば隙のない布陣に、馬県・義透は大きく頷く。
「しかして…手段はある」
不敵に笑う義透の、その表層に現れるは第一の悪霊『侵す者』…此度の戦場に相応しき武の天才。故にこそ、それが敵将といえど賞賛は惜しみなく──そして、歩みは天賦の武人たらしめるが如く。
「わしに流れていた力よ、形になれ」
黒燭炎を高々と突き上げて、取り巻く炎にユーベルコードを宿し解き放つ。
「狼達よ、いくがよい!」
四天境地・火──炎は百を超えた狼を形作り、アマルガムビーストの包囲を崩すべく、一斉に飛びかかる。
紅輝の魔断狼に裂かれ咬まれれば、アマルガムビーストは炎を吹き上げ荒れ狂う。オブリビオンを焼き尽くす炎は、魔獣の瞳にどう映ろうか。されど獣とて怯えるばかりではない。焼けた体で炎狼へ果敢に向かってゆけば、延焼する体表にユーベルコードを輝かせる。
新たに出現した顎が焼けた我が身ごと紅輝へ噛み付く。肉片を捕食すれば力を奪える…さりとてそれは、肉であればの事だ。
「はっはっは!当てが外れたものよな!」
義透の豪快な笑い声と共に、獣はその身の内側から炎に焼かれ、次々と倒れ付す。紅輝の炎は戦場を広がりゆくが、義透は黒燭炎を握り構えると躊躇いもなく炎へ飛び込み、獣を貫いた。炎狼が焼くのはオブリビオンのみ、義透に恐れるものはない。
「さらに、四天霊障で押し潰してやろう!わしにも近づけさせん!」
獣の群れが狙うべき相手を改める前に義透はやはり先手を打つ。視界すべてを埋める霊障に押し潰されれば、獣は術無く膝が落ちる。
だがそこに、ふいに響くのは黒き歌声。歌姫マリアの喉が大きく震え、獣の歩みに再びの力を求める──【アリア「止まるまいぞ、鉄を纏う古強者よ」】その癒やしは戦場に降り注ぐ。
「ま、回復してくるであろうが…削りたい相手が勝手に削れることになるからな」
高々と響く歌声に、獣の群れは力を取り戻す。しかし再び立ち上がろうとも、紅輝の炎は未だ獣に纏うたまま、そして戦場もまた四天霊障に潰されたままだ。マリアの歌声は獣を癒せば癒やすほど、その対価を彼女が受け止める。
「ならば、わしと根比べといこうか!」
縦横無尽に駆け回る紅輝の魔断狼を引き連れて、義透は戦場を駆ける。
獅子奮迅の活躍を見せる義透の黒燭炎が獣を貫き、マリアの体が軋むのは、もう間もなく。
大成功
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リィンティア・アシャンティ
歌には歌を
こちらも歌で立ち向かってみましょう
アマルガムビーストへのダメージは癒されてしまいますが
こちらが歌を続けられなくなるよりも先に、歌姫さんが倒れてくれると信じます
たくさんの敵に大鳥の幻影を向かわせて
回復しなくてはならない数も増えるよう試みます
こちらは小鳥の幻影が癒してくれますが
捕食されないように気を付けないといけませんね
ルノにも敵の動きを警戒してもらい、攻撃を受けることがないように気を付けます
もしもの時は、盾で受けてカウンターで何とか……凌ぎましょう
接近されてしまったら一撃で倒せないと大変だと思うので
周辺の様子や自分の位置に注意するのはしっかりとです
この戦いを乗り越えて次に繋げますように
ベアトリーチェ・ヴィオラ
バフと殲滅技に特化したボスを取り巻くように攻防速のバランスに優れた群れエネミー……良い配置ね、私も大好きよ。並のプレイヤーなら苦戦してくれるかもしれないけれど……お生憎様、私は
敵役だから。
迫ってくるアマルガムビーストを〈マヒ攻撃〉で硬直させ〈捕食〉するわ。しっかり味わってスキルを解析したらUC発動……この子たちの『バグプロトコル・クロー』を連発よ。彼女の歌声が響いて我が身を焦がしても構わず前進、上手く勢いづけば10秒くらいで薙ぎ払えるかしら?
血と鉄の香りに満ちたこの場所に響く貴女の歌、とっても素敵よ。だから御礼に、貴女を黒に染めてあげるわ!
(POW/アドリブ連携負傷等々歓迎)
バフと殲滅技に特化したボスを取り巻くように、攻防速のバランスに優れた群れエネミー。ここは獣人戦線なれど、
戦場の
敵将らしい布陣はベアトリーチェ・ヴィオラには馴染み深いものだ。
「良い配置ね、私も大好きよ。並のプレイヤーなら苦戦してくれるかもしれないけれど……」
だからこそ、ベアトリーチェの唇からは賞賛が零れ落ちる。惜しむらくは、ベアトリーチェが並のプレイヤーなどではないこと。
「お生憎様、私は
敵役だから」
妖艶な微笑みの目前へ、迫り来るのはアマルガムビースト。ベアトリーチェは怯まずに素早く麻痺攻撃で獣を硬直させると、胸元に大花を開き捕食する。肉食花に飲み込まれる獣の姿の異様さもさることながら、秘めた表情に恍惚を滲ませ味わうベアトリーチェの姿もまた──美しくも、異様なものだろう。
そうして獣を味わい解析したスキルを抱き留めて、ベアトリーチェはアマルガムビーストのユーベルコードを開花させる。
「血と鉄の香りに満ちたこの場所に響く貴女の歌、とっても素敵よ。だから御礼に、貴女を黒に染めてあげるわ!」
花開くのは『バグプロトコル・クロー』、花から這い出た爪が迫る獣たちを薙ぎ払う。効果はほんの十秒、だからこそベアトリーチェは地面を蹴って群れの中へと飛び込む。
拡声器から響き渡るのはノイズ混じりのマリアの歌声。【アリア「我が血肉は怒りの炎に焼き裂かれ」】──爆発がベアトリーチェを焼き焦がし、戦場を炎上させる。…されど、ベアトリーチェは構わず前進する。昂然たる振る舞いで進むベアトリーチェの姿の前には、燃え盛る炎はさながらレッドカーペットだ。花の爪を連続で振り被り、獣をねじ切り爆破させて、群れを蹴散らしながら果敢に進むその足は、されど半ばで力尽きかける。けれど、ベアトリーチェは微笑みを崩さない。
「私は
敵役だけれど……
猟兵でもあるの」
背後から朗々と響き渡るのはマリアの歌声とは異なる、光を宿す柔らかな歌声。神々しい小鳥の羽ばたきがベアトリーチェを包み込み、その傷を瞬く間に癒してゆく。
「まあ素敵。癒されるのって心地が良いのね」
「無理をなさらないでくださいね。この戦いを乗り越えて、次に繋げますように」
「ふふ、そうね。まだこれからだもの」
リィンティア・アシャンティは柔和な表情を心配にひそめベアトリーチェに寄り添うと、今度は決意の眼差しをマリアへ向けて、大きく息を吸い込む。
「歌には、歌を。こちらも歌で立ち向かいます!」
リンティアが再び紡ぐのは柔らかな歌の続き──眠る光のための歌。流麗な歌声に呼び出され、禍々しい大烏たちがアマルガムビーストに立ち向かう。幻影の翼が波のように次々に獣の体を撫でゆけば、獣の群れはたちまち痛みに苛まれてゆく。そうして力尽きる獣の数が増えてゆけば、マリアもまた音色を変えて癒しの歌を、【アリア「止まるまいぞ、鉄を纏う古強者よ」】を戦場に響かせる。
傷を癒した獣は再び立ち上がり、体表に増えた魔獣の顎を向けてリンティアへ襲い掛かるも、その動きは妖精ルノの警戒の中だ。
歌いながら踊るようにリンティアは巧みに距離を取る。警戒をすり抜け近付いてきた獣の顎を盾で受け止めてカウンターを返せば、怯んだ隙にベアトリーチェがすかさず追撃する。リンティアだけの一撃では倒れない敵ならば、仲間と手を取り合うだけだ。猟兵たちは視線を交わせ頷くと、混沌の戦場を歌い踊りゆく。
リンティアの歌声が高く遠く伸びあがる。光の響きと共に大烏の羽ばたきは勢いを増してゆき、そして黒き天使の歌声がほんの僅かに、けれど確かに掠れてゆく。
重なり合わぬふたつの歌声。焼けた戦場に響く美しい音色に、大烏がひとつ大きく羽ばたいた。
大成功
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印旛院・ラビニア
アドリブ連携歓迎
「色々な世界からオブリビオンが来てるみたいだけど、異世界の力を借りて戦うのはこちらも一緒だよ!」
【高速詠唱】【召喚術】でカードから戦乙女達を召喚。【回復力】のある【浄化】【破魔】の力で状態異常やダメージから防いでもらう
「アマルガムビースト……こっちもGGOで散々ゲームやっていたんだ。こいつらのパターンぐらい読めているよ!」
高速移動されても動きを【見切り】、こちらへの攻撃を【カウンター】するように斬って捨てる
「さ、反撃は任せたよ、ジークヒルデ」
状態異常を受け付けない【神滅の戦乙女・ジークヒルデ】によろ魔剣のビームで直線上にいるビーストごと歌姫マリアを吹き飛ばすよ
幾度の戦いを経てゆけば、機械仕掛けの歌姫の歌声はいよいよ勢いをひそめ。それでもマリアは声を、喉を振り絞る。
「色々な世界からオブリビオンが来てるみたいだけど、異世界の力を借りて戦うのはこちらも一緒だよ!」
混沌の戦場もいよいよ終幕。フィナーレを喝采に彩るべく、印旛院・ラビニアが召喚するのは異世界の戦乙女達だ。
新たな役者にマリアは歌う。【 アリア「いざ行かん、怒りに震え身を任せ」】──喉を震わせ放たれるのは荒ぶる歌声。敵にはダメージと混乱を、獣には狂化を。猛々しい歌声は戦場を怒りに惑わし荒ばせる。
されど、戦乙女の纏う【浄化】と【破魔】の力の前には歌声の惑いなど無為なことだ。それはラビニアを守護するヴェールとなり、状態異常もダメージも防ぎ切る。
マリアが震える両手を掲げれば、アマルガムビーストが魔獣のオーラを纏いなりふり構わず敵へ襲い掛かる。その目にも止まらぬ疾走は恐るべき速度をもってラビニアに迫るが、ここに居るプレイヤーはそれに対応できないほどライトゲーマーではない。
「こっちもGGOで散々ゲームやっていたんだ。こいつらのパターンぐらい読めているよ!」
猛り狂っていてもアマルガムビーストはどこまでもGGOのエネミーだ。予備動作の一挙一足から動きを予測し見切り、ラビニアは獣の突撃を完璧に回避する。過ぎ去りざまにカウンターを仕込めば、獣はあっさりと斬られるのだから、どれほどの数を用意しようとも、見極めてしまえばそれは簡単な作業ゲー。
始めこそ終わりの見えない猛攻であれど、数を減らせば最後は僅かな手勢と壊れかけのマリアが残るのみ。
「さ、反撃は任せたよ、ジークヒルデ」
フィナーレを飾るのは神滅の戦乙女・ジークヒルデ。
「行け、ヴァルグラム・ノヴァ!!」
神滅の戦乙女・ジークヒルデは魔剣ヴァルグラムを掲げると、その切っ先をマリアへと突き付ける。
青く輝く魔剣が神殺しの光線を解き放つ──直線状を貫く光線に僅かに残ったアマルガムビーストも一掃される。
戦乙女の審判に、戦場の幕が下ろされる。零れ落ちた拡声器にはもう、歌声は響かなかった。
大成功
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