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獣人世界大戦⑧〜侵略機械を穿つ虎

#獣人戦線 #獣人世界大戦 #第一戦線 #人民租界 #シャングリラ・シュミセン #昊然一家


●侵略機械
 中国、須弥山型都市シャングリラ・シュミセンと呼称される構造の都市。
 突如出現した有頂天道人により、電光輝くこの街は瞬く間に制圧されてしまった。

「退け! 射程範囲に入るな!」
「老人と子どもを優先して避難させろ! 動ける奴は壁を作れ!」
「無理だ……! 粒子砲が——うわあああっ!?」
 怒号と絶叫が混ざり合い、混沌と化す。山の麓に広がる都市はまさに激戦地となっていた。
 路地から現れたのは、カーキ色に塗装された巨体。肩に背負うように増設された荷電粒子砲の砲身を検知した生命体に向け、パンツァーキャバリアは青白い砲撃を放つ。
 爆破、炸裂。地面を抉り、建物が吹き飛ぶ。
 モノアイによる索敵から逃れたトラの獣人が、防壁越しにその様子を覗き見ていた。
「くそ……一体だけなら俺が高圧刃ドスで俺が諸共……!」
「やめろ! 数が多すぎる! 誰かが死んでも天蓋ルーフにゃ行けねぇ!」
 得物を握り締めるが、仲間に引き留められる。
 有頂天道人は現在、須弥山型都市の頂上に位置する有頂天天蓋ウチョウテン・ルーフに居座っている。しかし人民租界の兵器が配備されているため、排除しない限り到達は不可能。その排除すら実質的に困難な状況だ。キャバリアの射程は広く、身を晒せば荷電粒子砲による砲撃が待っている。
「じゃあどうすんだ……!」
「諦めるなああああッ!!」
 上空から、荒々しい声が響いた。
 獣人たちが空を見る。建物の屋上から、右腕を金属に換装したトラが降ってきた。
「おらああああああッ!!」
 腕を引いて、全力で振りかざす。落下の衝撃の乗った拳は重厚な機械をへし曲げ、大きく殴り飛ばした。
「ハオランの兄貴!」
「あの野郎……兵器を放って自分はお山の大将たぁ、同族とは思えねぇ……! 怒りで己が壊れそうだ!」
 ハオランと呼ばれたトラは再び構えを取る。音を検知したパンツァーキャバリアが、通りへと集合しつつあった。
 どの程度持つかはわからない。少なくとも時間稼ぎにはなるだろう。そうした合理的判断もあったが、ハオランの内側に湧いた憤怒がいつまで経っても収まりそうになかった。
「俺はチャウ・ハオラン、昊然ハオラン一家の頭領……この都市のドンだ!」
 咆哮は、戦場へと消えていった。

●グリモアベース
 地図を抱え、ヴァンダ・エイプリル(世界を化かす仕掛人・f39908)は猟兵たちを出迎えた。
「お疲れさま~。いやはやみんな、いい戦いっぷりだね!」
 獣人大戦争の開戦から早数日。各地で起こる戦闘や事件に、猟兵たちは対処していた。
 その健闘を称えてから、ヴァンダは足元に地図を広げる。猟兵や敵の駒を丁寧に並べ、いつになく仰々しく説明を始めた。
「今回の任務は中国、須弥山型都市の……麓の方。有頂天道人が一度にたくさん須弥山型都市を制圧しちゃったのは知ってるよね?」
 どういう理屈か、有頂天道人は複数体出現。同時に人民租界の軍勢を各都市に放ち、自身がいる場所への道を封鎖しているのが現状だ。
「この封鎖を解いてほしいんだ。みんなで人民租界をぽいぽいぽーいってしてさ!」
 敵の駒が彼女の手で払われる。なるほど、役割そのものはシンプルだ。
 でもね、とヴァンダは説明を続ける。
「すっごく数が多いんだよね。みんなが行っても時間が足りないくらい。だから、現地の人たちと協力するといいんじゃないかな!」
 猟兵の隣にすーっとトラの駒を並べる。この街はバンというマフィアの互助組織が存在するそうだ。サイバネによる肉体改造や仙術殺法を身につけた彼らなら、敵にも抵抗可能だという。
「組織の名前は昊然一家。チャウ・ハオランってトラさんがボスだよ。……もしかしたら、聞いたことある人もいるかもしれないね」
 くすっとヴァンダが笑う。
「短気で怖いけど、いい人だよ。信用した人には背中を任せる柔軟さもあるし。逆にいえば、信頼されないと味方になってくれないかもね?」
 ハオランらと協力するためには信を得る必要がある。住民の避難を手伝ったり、支援したり……この街での冒険の経験があれば、それを示すだけでも十分だ。
 説明を終え、ヴァンダは手を打ち鳴らす。地図と駒が消え、グリモアが現れた。
「封鎖を解くだけじゃなくて、できれば平和を守ってあげてね。まーそこんとこは上手くやって!」
 グリモアは瞬いて、猟兵たちを戦火が覆う電飾の都市へと送るのだった。


堀戸珈琲
 どうも、堀戸珈琲です。
 カンフーだと攻撃を避けて敵で敵を殴らせる技が好きです。

●シナリオフレームについて
 このシナリオは戦争シナリオであり、1フラグメントで完結します。

●最終目的・プレイングボーナス
 集団敵を討伐する。
 また、このシナリオフレームには、下記の特別な「プレイングボーナス」があります。

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 プレイングボーナス……現地住民の信を得、彼らと協力して敵を蹴散らす。
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●NPC
 チャウ・ハオランとその子分。基本的に全員がトラです。
 サイバー武侠マフィアのボスと構成員で、拳法や火器で全員ある程度戦うことができます。
 ハオランは右腕を機械に換装しており、それを用いた格闘を行います。
 過去シナリオの登場キャラクターですが、特に絡みがある必要はありません。

●プレイング受付について
 オープニング公開後から受け付けます。
 完結優先となるため、内容に問題がないプレイングも却下される可能性があります。

 それでは、みなさまのプレイングをお待ちしています。
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第1章 集団戦 『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』

POW   :    試作型荷電粒子砲収束式
敵を狙う時間に比例して、攻撃力・命中率・必殺率が上昇する【荷電粒子】を武器に充填し続ける。攻擊すると解除。
SPD   :    試作型荷電粒子砲連射式
レベルm半径内の対象全員を、装備した【大口径荷電粒子砲】で自動的に攻撃し続ける。装備部位を他の目的に使うと解除。
WIZ   :    近接防御火器システム
【全身に装備されている対空機関砲】で射撃している間、射程範囲内の味方全員の行動成功率を若干増やし、敵全員の成功率を若干減らす。
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神酒坂・恭二郎
やれやれ、無茶苦茶しやがるなあいつら
住民の避難路を前に仁王立ちし、飛んできた粒子砲を風桜子を帯びた愛刀で受け止め、そして上方に受け流す事で避難を助ける【ジャストガード、オーラ防御、受け流し】

「トラの大将、このままじゃジリ貧だ。良けりゃあ力を貸してくれ」

侠客の仁義【礼儀作法】で筋を通し、協力を依頼する

やる事はシンプルだ
風桜子を刀を床に刺し、街を覆う電脳網を龍脈に見立て、電龍の守護明神を呼び出し、場の荷電粒子の動きを阻害する【龍脈使い、結界術】

「今だ、頼んだぜ兄さん達」

後の始末は怒りに燃えるトラの兄さん達がやってくれるはずだ




 大通りは避難を急ぐ住人で溢れ返っていた。
「振り向くな! 全力で走れ!」
「落ち着け! 兄貴が敵を引き寄せているうちに逃げろ!」
 組員に誘導され、大勢の人々が一方向に向かって走る。避難は順調に進んでいるように見えた。
 建造物を破壊して、複数体のキャバリアが道路に突っ込んでくるまでは。
 悲鳴が場を染め上げる。不安は伝播し、全員を巻き込む混乱に化けた。我先にと群衆が押し合う中、キャバリアの砲身に光が灯る。
 迫りくる危機。人々は退避に焦る。
 その人波を掻き分け、単身でキャバリアに向かう人間がいた。
 装填された粒子砲が放たれ、一面は消し炭となる——はずだった。
 群衆を飲み込む寸前、光は突然上空へと曲がる。
 光が曲がった地点に立つのは神酒坂・恭二郎(スペース剣豪・f09970)。愛刀——銀河一文字を斜めに構え、兵器の群れを睨んで静止していた。
「やれやれ、無茶苦茶しやがるなあいつら」
 力を抜き、軽く剣を払う。
 自分たちの前に仁王立ちする恭二郎の登場に、住人たちが歓喜に湧いた。
「逃げろ逃げろ! 次が来るぞ!」
 振り返って一喝。それでようやく状況を思い出し、住人たちは避難を再開する。呑気だな、と息を吐く恭二郎に向けて、複数体のキャバリアは容赦なく粒子砲の装填を開始した。
「やるか? 何度撃っても同じだぞ?」
 愛刀を握り、構えを取る。連続で発射された砲撃に、恭二郎は目を見開いた。
 砲撃が到達する直前、刀は風桜子を帯びる。その刀を居合切りの要領で振るい、光を受け止め弾き飛ばす。砲撃に応じてそれを何度も繰り返す。
「襲撃があったのはここか——な、なんだッ!?」
 現場に駆けつけたハオランと子分たちも息を呑む。生身の人間が、刀一本で粒子砲を薙ぎ払い続けているのだから。
 攻撃が止んだ瞬間を突いて、恭二郎はハオランへと視線を投げた。
「トラの大将、よく来てくれた。俺は神酒坂・恭二郎。見ての通り、住民を守るので手いっぱいってところだ」
 名乗り、淡々と状況を説明。
「このままじゃジリ貧だ。良けりゃあ力を貸してくれ」
 筋を通し、軽く頭を下げる。侠客の仁義に則った頼み方をされては、ハオランも断れない。
「当たり前だ! ……しかし、接近は——」
「何、やることはシンプルだ。見てな!」
 言い放つや否や、恭二郎は刀を都市の地面へと突き刺した。刀にまとった風桜子は、都市に張り巡らされた幾重もの配線——電脳網を流れていく。
 いわば雷電の龍脈。そこから顕現するは、電龍の守護明神。
 キャバリアをも圧倒する巨躯が、雷光を放って吼える。放たれた稲妻は荷電粒子の集合を粉砕。装填が中断されるエラーを捉え、キャバリア群も誤作動を起こす。
「今だ。頼んだぜ、兄さんたち」
「よくわからんが……承知した! お前ら、直接攻撃カチコミだああああッ!!」
 龍に続いて虎が吼える。真正面から、子分を引き連れたハオランが突っ込む。
 斬撃が、砲撃が、棒立ちの敵に襲いかかる。立場は逆転し、兵器は次々廃材と化す。
「らあああああッ!!」
 ハオランの雄叫びとともに強烈な右ストレートが繰り出される。機械の胴を粉砕し、容赦なく一撃で破壊した。
「さて、この場は怒れる兄さんたちに任せるとするか」
 蹂躙の様子を眺めつつ、恭二郎は次の区画へと足を向けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ベルト・ラムバルド
アドリブ上等

マフィアか…しかしまぁ武侠って奴を見せつければ彼等は強力してくれるのだろう?
いいだろう!ベルト・ラムバルドがそいつと騎士道を見せつけ彼等の協力を得ようじゃないの!

キャバリア乗って颯爽参上!
盾を構えて鉄壁の如き盾受けで敵の機関砲から彼等を庇おう!

私は騎士ベルト・ラムバルド!訳あって君達を助けに来た!協力を願う!
ついでにUCを発動して存在感といい匂いを放って説得力をマシマシにして協力を得て見せよう!

協力を得たら絆攻撃と集団戦術でマフィアと共に攻撃!
二刀の剣を振るい敵群をズタズタに切り捨ててやるー!

虎に翼!騎士にキャバリア!これが揃えば負けるわけないだろー!?




 都市を襲う侵略機械。厄介な武装は肩に担いだ荷電粒子砲だけではない。
 発射間隔の長い主砲を補う、機体の各所に取り付けられた対空機関砲。粒子砲を避けて懐に飛び込んだ敵を蜂の巣にする、弱点を補完するような武装だ。
 故に装填から発射までも短く、複数体での射撃が重なれば一帯を覆う弾幕となる。
「クソがああッ! 銃がうざってェ!」
 瓦礫の裏に身を隠し、ハオランが叫ぶ。猟兵が到着して戦局が傾くかと思った矢先、敵は攻撃方法を切り替えた。粒子砲を避けるという戦略も立ち消え、攻めあぐねていた。
 部下も周辺に潜んでいる。いつでも飛び出せるが、攻撃に間隙がない。
 苛立つハオラン。その真横を、甲冑騎士のような黒い機体が抜き去った。
 唖然とするハオランの目の前で、機体は巨大な盾を地面に突き立てる。通りを遮断するような防壁となり、銃弾の雨から侠客たちを庇った。
「なんだコイツはッ!?」
「間に合ったようで何よりだ!」
 機体がハオランの声に応じる。頭部が動き、甲冑の隙間から赤い瞳で彼を捉える。
「私は騎士ベルト・ラムバルド! わけあって君たちを助けに来た! 協力を願う!」
 自身の機体——パロメデスに搭乗して颯爽参上したのはベルト・ラムバルド(自称、光明の暗黒騎士・f36452)。名乗りを上げた瞬間、パロメデスに後光が差す。
「眩し……くねぇ!」
「すさまじい……圧倒的存在感だ!」
「この男ならできる…!」
 潜んでいたハオランの部下たちが歓声を上げる。あとめちゃくちゃいい香りも漂ってきて、それも盛り上がった。キャバリアからなのに。
 湧き上がる部下を尻目に、ハオランは静かに答える。
「騒がしい野郎だな……嫌いじゃねぇ。頼らせてもらうぜ」
「ならば決まりだな!」
 弾丸を弾きながら、パロメデスが盾を持ち上げる。攻撃の止んだ一瞬を突き、盾を敵に向けて投擲した。
 薙ぎ払われるパンツァーキャバリアに狙いを定め、パロメデスは両手に剣を握る。巨大な西洋剣とビームセイバーを手に、勢いのまま突撃する。
「ついてこい! 私が道を切り開く!」
「と、騎士様がご要望だ……お前ら行くぞ!」
 飛び出したベルトを追うように、マフィアたちもその後ろに続く。
 鋼鉄の剣が敵機体を貫き、光の刃でさらに焼き切る。銃弾を剣で受けては振り回し、敵をズタズタに切り捨てていく。
 前方で盾となり剣となるベルトに乗じてマフィアたちも暴れ回る。それぞれの得物が炸裂し、乱撃によって敵を打ち砕く。
「義に応じて悪を斬る! これが私の騎士道だ!」
「殊勝な心掛けだな! ほらよ、受け取れ!」
 キャバリア群の懐に潜り込んだハオランが、機械腕によるアッパーで機体を次々と上へ殴り飛ばした。その意図を汲んで、ベルトは笑いを零す。
「いいトスだ! もちろん応じてみせよう!」
 無防備に宙を舞う敵に向かって、パロメデスは空高く跳び上がった。
「虎に翼! 騎士にキャバリア! これが揃えば負けるわけないだろう!?」
 回転とともに剣を何度も振るい、敵の群れを一刀両断。
 華麗に着地を決めるパロメデスの後方で、鋼鉄の残骸が地面に落下する。それには目も向けず、ベルトは次なる敵へと向かう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天羽々斬・布都乃
「相手は戦車ですね!」
『いや、どうやら、きゃばりあ、というやつじゃな』
「どちらにせよ、やることに変わりはありません」

天羽々斬剣と布都御魂剣を構え、未来視を発動します。
戦車の元まで一気に駆け抜け、懐に飛び込みましょう!

「――ここです!」

未来視により敵の動きを読み、回避不能の一撃を叩き込みます!
――が。

「いなり~、腕が痺れました~」
『まあ、鋼鉄の塊を斬っても効かんじゃろうなあ』

何か手はないかと敵の弱点を探しますが――

『布都乃、いかん、避けるのじゃ』
「なっ!?
きゃあああっ!」

敵の強力な一撃が近くに炸裂し、吹き飛ばされてしまい。

『布都乃、次の攻撃が来る前に隠れるのじゃ!』
「けど、今の攻撃で脚が……」




 行進するパンツァーキャバリアの列を前に、一人の少女が立ちはだかる。
「相手は戦車ですね!」
『いや……どうやら、きゃばりあ、というやつじゃな。無人で動く兵器らしいのう』
「どちらにせよ、やることに変わりはありません」
 肩に乗る子狐の式神・いなりと言葉を交わし、天羽々斬・布都乃(未来視の力を持つ陰陽師・f40613)は身構えた。天羽々斬剣と布都御魂剣を握り、敵群を見据えることに集中する。
 意を決し、走り出す。接近する布都乃を敵のモノアイも捉えた。粒子砲を布都乃に向け、装填を開始。布都乃が到達するより速く、青白い光が砲撃となって発射される。
 直後、布都乃の右目が金色に輝く。
「視えました!」
 頭の中で展開する未来の映像。迫る砲撃を横っ飛びで回避し、さらに敵との距離を詰める。後ろに控えるキャバリアも連続して粒子砲を放つが、布都乃は容易く避け続けた。
 あっという間にこちらの間合い。懐に飛び込み、胴を狙って交差するように剣を振る。
「――ここです!」
 叩き込まれる、回避不能の一撃。
 だが、金属の鳴る音が響いて剣は弾かれた。
「わぎゃっ!?」
 反動で後ろに弾き返される。
 びりびりびり。剣を握る両手が痺れて震えていた。
「い、いなり~、腕が痺れました~……」
『まあ、鋼鉄の塊を斬っても効かんじゃろうなあ』
「じゃあなんで行かせたんですか!?」
『同じ鋼鉄でも蒸気内蔵は斬れておったからのう。あれは一応生き物と聞くし、まだ布都乃は鉄を斬る領域ではなかったということか』
「そんなぁ……」
 自分の不出来を恥じる時間はない。何か手はないかと顔を上げると、一台のキャバリアの砲口が自分へと向いているのに気付いた。
『布都乃、いかん! 避けるのじゃ!』
「なっ!? きゃあああっ!」
 回避行動を取るより先に粒子砲が発射される。咄嗟に直撃は免れたが、衝撃を食らって布都乃は大きく吹き飛ばされた。
「うぐっ……!?」
『布都乃、次の攻撃が来る前に隠れるのじゃ!』
「けど、今の攻撃で脚が……」
 着地の際に足を挫いたのか、動かそうとすると痛みが走る。何とか立とうともがく。その間にも、砲撃に向けて敵は準備を整える。
 砲口に光が集まり、満を持して発射された。予想される衝撃と激痛に、布都乃は顔を背ける。
「おらああああああッ!」
 粒子砲が布都乃を貫く寸前、トラの獣人がそこに飛び込んだ。座り込む布都乃を抱え、光線の射線上から逃れる。走り抜けた数秒後、元いた地点は跡形なく焼き払われた。
 瓦礫の裏に潜み、トラは布都乃を下ろす。間違いない。伝え聞いた武侠の頭領、ハオランだ。
「あの……」
「話はいい。それよりお前――敵の動きが読めるのか?」
 突然能力を言い当てられ、布都乃は呆気に取られる。
「はい、右目から未来視が」
「未来ィ? 理屈はわからんが……なら、俺に指示しろ」
「へ?」
「俺がお前の得物になってやる」
 これまた唐突な提案。どういう風の吹き回しで、と考えている間にも、ハオランは瓦礫の表に回った。
「斬れねぇ相手に向かうその意気や良し。腕がなくても心があるなら十分だ」
 機械の右腕を回してから、ハオランは布都乃を一瞥する。
「実力が足りないなら一人で戦おうとするな。その力、役立ててみせろ」
『布都乃、あの者の言う通りじゃ。指示を頼んだぞ』
「……わかりました」
 問答無用でハオランが駆けていく。敵の砲身が向くのを見て、布都乃の迷いも消える。声を張った。
「右、左……跳んで!」
 未来視に沿って指示し、ハオランが粒子砲を避ける。
 跳び上がり、ハオランは強烈な拳を敵群へ打ち込んだ。懐で暴れ回り、兵器は殲滅されていく。
 その光景を眺め、誇らしさと悔しさを、布都乃は同時に感じるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

鳴上・冬季


「ここで退かぬこそ貴方らしい。お陰でこちらも間に合った」
嗤う

「お久しぶりです、昊然一家の頭領さん。貴方達の助力に参りました。支援と避難誘導はお任せを。…鏖殺せよ、真黄巾力士火行軍」
追加UC
式神(騒霊)の召喚
・制圧射撃し行動阻害5体
・砲頭から徹甲炸裂焼夷弾連射し鎧無視・無差別攻撃で敵を蹂躙5体
・上記2班をオーラ防御で庇う5体
上記15体を1隊として10隊計150体黄巾力士召喚
各黄巾力士760体騒霊式神召喚
敵の武装と駆動をどんどん使用不能にしながら敵撃破
7隊を昊然一家の支援に3隊を救助に回す
自分は普段連れ歩く黄巾力士と空中から戦場俯瞰
竜脈使い全黄巾力士強化

「戦果は貴方に。さあ都市防衛を、昊然さん」




 キャバリアの行軍は打ち払われ、天蓋への封鎖は解かれつつある。だが、戦闘が長期化するにつれて発生するのが兵士の疲弊と負傷。率いる将に闘気があれど、連れられる兵は徐々に脱落していく。
 現在、それが顕在化しようとしていた。
「ちぃ……! このままじゃジリ貧だ……!」
 疲れ切った部下を眺め、ハオランは悪態をつく。予想していた事態ではあったが、ここで退いては武侠としての名に恥じる。
 視界の端では、キャバリアが今も通りを荒らしていた。誰かが相手しなくてはならない。
「お前らは休んでろ。俺一人でもあいつらを始末して――」
「待ちなさい」
 聞き覚えのある声に引き留められ、ハオランは振り返った。
「この危機的状況でも強気に出られるとは。しかし、ここで退かぬこそ貴方らしい。お陰でこちらも間に合った」
 微笑をたたえ、鳴上・冬季(野狐上がりの妖仙・f32734)は軽く頭を下げた。
「お前は……!」
「お久しぶりです、昊然一家の頭領さん。貴方たちの助力に参りました。支援と避難誘導はお任せを」
 再会に震えるハオランをよそに、冬季は援軍を召喚する。
「……鏖殺せよ、真黄巾力士火行軍」
 広々とした通りを埋め尽くすように、頭部に砲頭を備えた人型戦車――黄巾力士の部隊が並ぶ。その数にして150体。かつて戦場で見た壮観な光景を思い出し、ハオランは息を呑んだ。
「久々に見たが、やはりすさまじい景色だな。お前の術には唸る他ない」
「これで感心されては困りますね」
 既に圧倒されているハオランを見て、冬季の口角が上がる。
 黄巾力士それぞれが印を結んでいた。
「今回は、それ以上です」
 式鬼神招来急急如律令――黄巾力士が一斉に召喚術を発動した瞬間、騒霊の群れが空を占拠した。1体の黄巾力士につき760体、つまり総計……などと数えるまでもなく大量だとわかる。
「……俺は何を見ている?」
「少なくとも、悪夢ではありませんよ。敵にとってはそうかもしれませんがね」
 困惑続きのハオランの背を、冬季はとんっと叩く。
「戦果は貴方に。さあ都市防衛を、ハオランさん」
「つくづく考えが読めんな、お前は」
「なに、私は仙の本質に従っているだけですよ」
 連れ歩く本体の黄巾力士に乗り、冬季は上空へと飛翔する。飄々としたその態度に息を吐き、ハオランもまた目の色を変えた。
「ここまで数が揃えば仕方ねぇ。地獄を作るぞ、お前ら」

 そこから先は、まさに冬季が望んだような鏖殺だった。
 威嚇射撃で怯んだ個体に徹甲炸裂焼夷弾が連射され、抵抗の間もなく鎮圧。粒子砲は障壁を張る前衛に防がれ、反撃によってキャバリアは破壊される。
 何より無慈悲なのが宙を舞う騒霊の群れだ。騒霊は触れた瞬間に武装と駆動部品に不具合を生じせ、次々と戦場の真ん中で機体の行動を停止させて回る。動かぬ的など格好の獲物。自由を奪われ、その直後に敵は破壊されている。
 そして黄巾力士ばかりに意識を割けば――。
「鬱憤晴らしといかせてもらおうか!」
 ハオラン率いる昊然一家が横から殴りかかってくる。部隊で動く黄巾力士と違い、こちらは神出鬼没。支援部隊を巧みに操りながら、最大火力をぶつけてくる。

 その様子を、冬季は空から眺めていた。戦局は転じ、救助も順調。龍脈の力で黄巾力士を強化しつつ、頬杖をついてほくそ笑む。
「それでこそ、あのとき生きてもらった意味があるというものです」
 光悦とした表情で、冬季は嗤う。

大成功 🔵​🔵​🔵​

皐・芽衣
相変わらず攻めっ気が強いのう、ハオラン!
そして久しぶりじゃな、皆!
わしも一緒に戦わせてもらおうかの!

肩からの砲撃が面倒な感じか。荷電粒子砲?
荷電か……なら、その対応はわしに任せて貰おう!
わしの【神羊拳・器械套路『雷霆万鈞』】の敵ではないわ!

キャバリアの位置と射線を[見切り]、
偃月刀「鉅角」を振り回し、それに飾られた宝貝「雷公羊毛」から
[範囲攻撃・電撃]を放ち続ける。
荷電した粒子を撃っておるんじゃって?
電撃で磁場を弄れば、狙った所には飛ばんじゃろ。
当たらない兵器など怖くないわ! 行くぞハオラン! 皆!

磁場が狂っているうちに[ダッシュ]で接敵して、
【雷霆万鈞】による[鎧無視攻撃]でパンツァーキャバリアを破壊したり、
「鉅角」の飾り紐「幌金羊毛」で[捕縛]し[体勢を崩]させたり、
[捕縛]した砲身を[ロープワーク]で動かし別キャバリアを撃たせたり、
再度電撃を放って磁場を狂わせ、移動する仲間のサポートをしたり。

さぁ、さぁ! 全部蹴散らしてやろう、皆!


笹竹・暁子
※アドリブ連携歓迎
あの声は…
親書配りに別地域へ飛び立つ間際だけど、知り合いの声を聞いて放置なんて流儀に反するわ!
〔サウス〕!戦闘態勢に移行!

方針:敵の行動妨害や弱体化狙い

敵は陸戦型
なら狙いはやはり――
【推力移動】の低空飛行による【滑空・陽動・軽業・早業・羽を飛ばす】で敵の脅威度をこちらに引き付けるわ!
射出した〔霊刃羽〕で味方への銃弾を防ぎつつ【指定UC】で霊力の狩猟縄を形成、敵に絡みつかせ【捕縛】!
エネルギーを強制放出させるこの縄なら、彼らの手に負える範囲にできるはず!

ハオランさん!今よ!

声を掛けつつ脇目はふらない
ギリギリをかすめて飛びぬけて
次が来る

彼らならこの連合計画の親書も、託していける




 戦局はこちらに傾き、キャバリアの軍勢もいよいよ追い詰められつつあった。
 勝利まではあと一息。だが敵はその状況を逆手に取り、天蓋への道を塞ぐように籠城の構えを取った。
「もう少しだってのに……攻め込めねぇ!」
 睨み、ハオランが舌打ちする。
 飛び込めば、正面の通りと路地に陣取ったキャバリアから集中砲火を食らう。
 それでも誰かが行かねば敵は剥がせない。
「俺が出る。その隙に砲撃を食らわせろ!」
 止める間もなく、ハオランは通りのど真ん中を走って敵に向かっていった。
 機関砲から放たれる銃弾の雨。金属の右腕を突き出し、凌ごうとした。
 そのとき、ハオランの眼前に舞い込んだ無数の羽が、彼に迫る弾丸を弾く。
「ハオランさん! 無事でよかった!」
 大鳥型の飛行体が、上空から地表へと飛来する。天球心核コアコックピットにて、笹竹・暁子(暁を臨む一夜の為に ~雀のお宿の外仲居~・f39919)は知人との再会を喜ぶ。
「その機体……暁子か!」
「別地域へ飛び立つ間際だったけど……知り合いの声を聞いて放置なんて、流儀に反するわ!」
 ホバリングを挟み、暁子の搭乗する飛行甲冑――サウスは再び飛行へと移行。推力移動による低空飛行で敵の上すれすれを通り抜ける。
 巨体の出現に、キャバリアの照準もサウスへと向く。対空機関砲に加え、荷電粒子砲の砲口までもが空舞う鳥を狙う。
「敵の注意は引けたわ、狙い通りね。それにしても……空ばかり見てると、足元を掬われるわよ?」
 敵軍の背後。路地裏から、小さな影がキャバリアに近づく。
 偃月刀――鉅角を取り回し、それに飾られたふわふわの雷公羊毛ライコウールから電撃を放出。空気中に雷が走った瞬間、砲身に集合していた粒子は霧散していった。
「どこを見ておる? 敵はここにおるぞ!」
 果敢に飛びかかり、接近と同時に鉅角を振るう。重厚な装甲を砕き、キャバリアを派手に吹き飛ばした。勢いよく他の機体も巻き込み、轟音が戦場に響き渡る。
 横転した機体に飛び乗って、皐・芽衣(金色一角のメイメイ・f35724)は呆気に取られるトラの頭領に呼びかけた。
「相変わらず攻めっ気が強いのう、ハオラン!」
「芽衣! お前まで!」
「そして久しぶりじゃな、皆! 他の区画で応戦しておったが……わしも一緒に戦わせてもらおうかの!」
 挨拶を済ませ、芽衣は素早く攻撃に切り替える。
 機体を蹴って降り、キャバリアの懐へ滑り込む。脚の間から鉅角を振り上げ、脚部と胴部の接続を断つ。傾いた敵を刃で大きく切り裂けば、機体に灯っていたモノアイが消滅する。
「さぁ、さぁ! 全部蹴散らしてやろう、皆!」
「言われるまでもない! お前ら、最後の大仕事だ!」
「頼りになるわね……でも、油断しないで! 次が来る!」
 声をかけるが脇目は振らない。建物を掠めるように暁子の機体は敵に突っ込み、芽衣とハオランの軍勢がその後ろに続いた。
 サウスが羽ばたき、霊刃羽クイル・ビットをばら撒く。砲撃を遮る弾幕として機能し、その盾を乗り越えて芽衣が接近を完了させる。
 駆け抜けるその際に真横から刃を叩きつけ、敵を粉砕。柄を回転させ、振り向くと同時に真紅の飾り紐――幌金羊毛をキャバリアへ放つ。紐は敵の胴部に絡みつき、引っ張ることで力が拮抗する。
「ただ鉅角をぶん回すだけのわしではないぞ!」
 踏み込み、紐を握ってさらに引く。勢いに打ち負け、キャバリアは無様にも転がった。
「叩けハオラン!」
「応、任された!」
 体勢を崩した敵機にハオランが肉薄する。走りながら機械の右腕を振り上げ、振り抜いた拳によって鋼鉄が歪んで曲がる。すさまじい衝撃に、キャバリアは一撃で沈黙した。
「どうだ!」
「流石ね、ハオランさん! その勢い、利用させてもらうわ!」
 混戦に持ち込み撃破していく地上部隊への加勢のため、暁子もサウスを駆使して場を荒らす。羽を散らして再度弾幕を展開――するように見せかけ、羽は空中で互いに繋がって大きな縄へと変化する。
 形成された狩猟縄ボーラが砲身を構える敵複数をまとめて縛る。引き裂こうと暴れるが、霊力によって構成された縄は物理的には取り払えない。むしろ暴れるほどに身体を支配し、保有エネルギーを流出させる。
「流石の支援だ! お前ら、やれ!」
 ハオランの号令で、部下たちは一斉に敵に襲いかかった。荒く乱暴な攻撃だが、縛られていては対処できない。斬撃も砲撃も避けられず、まとめて袋叩きにされていく。
「このままいけば敵を殲滅できそうじゃな――む?」
 戦場を見渡していた芽衣が異変を察知する。
 路地に隠れていた一機のキャバリアが、粒子砲を構えて武侠たちを狙っている。無差別な連射で焼き払うつもりだ。
「させん!」
 一気に通りを走り抜け、柄を振り回す。しなる幌金羊毛を砲身に絡ませ、力任せに引っ張る。
「伏せろ、皆!」
 芽衣の声を聞き、武侠全員が身を伏せた。
 粒子砲が乱射され、光があちらこちらに放出される。地上に立っていたキャバリアの群れが砲撃に焼かれ、大きな傷跡を残して残骸となる。

 しばしの沈黙。
 連射が止まった一瞬をついて拘束を解き、芽衣は鉅角で敵を斬り伏せた。
「皆、無事か!?」
「大丈夫、こっちは誰も負傷してないわ」
 上空から安否確認を終えた暁子の声が響く。安堵の息を吐き、ハオランも身を起こす。
「久々に肝が冷えたな……。ここらの敵は全滅させたか。残るは――」
「あの一群だけね」
 一同が見据えるは、天蓋への道。相手も最後の戦力を集結させ、防衛に当たっている。
 鉅角の柄を肩に担ぎ、芽衣が敵を睨む。
「あの荷電粒子砲、やはり面倒じゃのう。じゃが、数が増えても対応できよう。ここの先陣はわしが切る!」
 言葉通り、芽衣は単身でキャバリアの軍勢に突撃する。
 青白い光を砲口に凝集させ、敵は連射の構えを取る。それを視界に収めながら、芽衣は鉅角を高々と掲げた。
神羊拳シンヨウケン器械套路キカイトウロ……雷霆万鈞ライテイバンキン!」
 雷公羊毛から解き放たれた雷光が、辺り一帯を駆け巡る。強い電撃は磁場を狂わせ、砲口から撃ち出された粒子を乱雑に捻じ曲げた。
「自分が何を扱っておるか、わかっておらんようじゃの。荷電した粒子は磁場の状態に左右される……当たらない兵器など怖くないわ!」
「えぇ、もうそれは無用の長物! そこよ!」
 芽衣によって生じた隙を突くように、暁子がサウスを操る。
 霊刃羽から狩猟縄を紡ぎ、追い打ちするように敵群へ被せた。絡む縄は機関砲の使用も逃走も許さない。
「ハオランさん! 芽衣さん! 今よ!」
「行くぞハオラン! 皆!」
「応よ!」
 芽衣を先頭に、ハオランたちが続く。動けない敵に鉅角を、機械腕を、それぞれの得物を突きつける。
 破砕と爆撃が炸裂し、脅威は粉々に打ち砕かれていく。
「この街を守るのは俺だあああああッ!」
 吼えるハオランの声が耳に流れる。
 変わらない荒々しさに微笑を浮かべ、芽衣は最後の一機に向かう。
「これで終いじゃ!」
 繰り出された刃が装甲を破る。破壊の音を立て、敵の野望は砕かれるのだった。

 昊然一家と芽衣を眺め、暁子はサウスを着陸させる。
 元々この地を去る予定だったが、駆けつけて正解だった。街の防衛と封鎖の解除に成功しただけでなく、ハオランたちの力量も再確認できた。
「彼らならこの連合計画の親書も、託していける」
 落ち着いたらハオランに親書を渡して、今度こそこの地域から飛び立とう。
 しばらくは、この勝利の余韻に浸っていたかった。


 都市を襲撃するキャバリアの撃退に成功。
 天蓋を占有する有頂天道人の撃破を目指し、猟兵たちは進軍を続ける。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年05月10日


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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト