獣人世界大戦②〜激突!猟兵対大要塞
●paranoia
それらは人間の様に。
それらは獣の様に。
人外未知の動力が唸りを上げて、鋼鉄の獅子達を尽く喰らい尽くす。
『クソ! 主動力ダウン。バイパス接続して補器から立ち上げろ!』
『やってます! ただでさえ狭いんだから怒鳴らないで!』
煙を上げる二脚の人型戦車がたたらを踏んで、ぐいと重苦しい上体を立ち上げる。二人乗りの二脚戦車――指揮車両だろうか、計器が剥き出しの棺の様な空間に押し込まれた二つの魂は、眼前の地獄に抗おうと必死の形相でその脅威と対峙していた。
『接続完了、内圧上昇――再起動!』
『ターゲットを照準に捉えた。対ショック!』
ずどん、と地を揺らす砲声が暗闇に響く。さながら螺旋階段の様に地下へと延びる足場から噴煙と爆光が広がった。放たれた砲弾は命中――否、寸前でその威力は妖しげな煌きに呑み込まれた。
『当たってない! 来る……』
その言葉が彼らの最後。まるで魔法の様に空間から現れた砲弾が二脚戦車を無慈悲に穿つ。
二脚戦車が放った砲弾が
そのまま撃ち返されたのだ。
爆光を浴びたキャバリアが禍々しいシルエットを浮かべ、獣のように咆哮した。
地獄は終わらない。この果て無き螺旋の迷宮の様に。
「
傾注! これよりブリーフィングを始める」
ロザリア・プライム(ヤッハ隊・f39987)は集結した猟兵達へ敬礼すると、早速作戦の説明を始める。
「敵はゾルダートグラード軍、攻略対象はアルプス山間部の迷宮要塞――そこには異世界のキモいキャバリアがうじゃうじゃいるって話だ。嫌だねぇ」
背後のスクリーンに巨大な建造物と薄気味悪いキャバリアが映し出されると、存外故郷にこんな奴らが跋扈している現状を憂いているのだろうか、ロザリアは心底嫌そうな顔をして話を続ける。
「作戦はそいつらを
片っ端からブッ倒すだけだ。シンプルだろう?」
ニヤリと口端を釣り上げて、片手をピストルに見立ててキャバリアを撃ち抜く仕草。確かにシンプルな戦いだが、それなら
この世界の戦力でも十分に通用するのではないか? 誰かがぼそりと言葉を漏らしたが、頭を振ったロザリアが残念そうにそれを否定した。
「この世界の
人型戦車じゃあ相手にならん。君達だけが頼りだ」
続けて直近の戦闘ログが示される。それはこの世界の人型戦車が蹂躙される、正に地獄の様な有様。
「戦場は地下深くへつながる巨大迷宮……って話だが、こいつらは途中のでっかい縦穴に潜んでいる」
その地獄の口へ飛び込もうというのだ。こちらも相応の装備や技術が無ければ対応出来ないだろう。
「つまり縦穴を降下しながら敵群を突破しつつ掃討する事が目的だ。だが無理せず途中で撤退してくれていい。残念ながら敵はほぼ無尽蔵に湧いてくるみたいだからな……誰だこんなの作った奴」
故にギリギリまで戦ったら、グリモア猟兵の力で強制的に転移させられる。そうして敵の戦力を可能な限り削る事がこの作戦の目的だ。先走って最奥部を目指そうとも途中で勝手に退場させるから気を付けて、と付け加えロザリアはウインクした。
「それじゃあ出撃の時間だ。
幸運を祈る!」
ブラツ
ご無沙汰しておりました。ブラツです。
このシナリオは1フラグメントで完結し、
「獣人世界大戦」の戦況に影響を及ぼす特殊な戦争シナリオとなります。
本シナリオはゾルダートグラード軍アルプス国家要塞内部に座する、
クロムキャバリア製の最新鋭キャバリアの掃討が目的です。
戦場は地下迷宮最奥部へと続く、縦穴めいた巨大な空間です。
転送後、そのまま降下しつつ迎撃に上がる敵キャバリアの大群を徹底的に攻撃して下さい。
また、一定時間の戦闘で強制転移される事で戦場を撤退する事になりますが、
撤退はこちらで描写しますのでプレイングに盛り込まないで大丈夫です。
以下の点に注意する事で、非常に有利な状況になります。
●プレイングボーナス:キャバリアを用いた集団戦闘に対処する。
敵キャバリアのユーベルコードを利用する事は勿論、
集団戦闘に対するアプローチが成功すれば大きなボーナスになるでしょう。
●今回の注意事項
時間制限ありの戦争シナリオにつき概ね四~六名様のプレイングからの採用になります。
内容如何や人数的に止むを得ず流してしまう場合もありますので、
予めその点をご了承頂ければ幸いです。
募集はシナリオ承認後即時受付いたします。
それでは、よろしくお願い致します。
第1章 集団戦
『エヴォルグ量産機Renatus』
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POW : 虚式魔法EVOL『re:Cycle』
敵のユーベルコードを【捕食し魔法陣】に呪文として記録し、戦闘終了まで詠唱で使用可能。敵を倒せば戦闘後も永続。
SPD : 虚式魔法EVOL『re:Birth』
【全方位に現実をも侵蝕する魔力式侵蝕細胞】を最大レベル秒間連射し続け、攻撃範囲にダメージと制圧効果(脱出・侵入を困難にする)を与える。
WIZ : 虚式魔法EVOL『re:Boot』
【無数の侵蝕魔弾を放つ魔法陣】に【命中時に自身を強化する捕食還元と強化修復】のルーンを宿して攻撃する。対象が何らかの強化を得ていた場合、それも解除する。
👑11
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神酒坂・恭二郎
なんともタフなミッションだねぇ
ま、こう言うのも悪くはない
スーツ姿に刀一本担いで自由落下する
歓迎の迎撃射撃は、風桜子を込めた切っ先を突き出して受け止め【ジャストガード、オーラ防御、衝撃波】、そして脱力で柔らかくいなして捌く【受け流し、優しさ】
集団戦闘はサイズ差を活かす。要所要所で風桜子の【推力移動】で連中が互いを邪魔とするように立ち回り、呼吸を呼んで肉薄する
相手はユーベルコードを捕食する。使うなら一瞬で確殺だ
零距離で切っ先を突き付け、その頭部か動力部を「石動」【鎧無視攻撃】で仕留める
後は時間の終りまで、手際よくこれを繰り返すだけだ
「銀河の大戦じゃ飽きる程にやったからね。慣れたもんさ」
オクト・パスフォルド
降下任務か。惑星の無い故郷では無縁だったので興味深いな
触手を広げて降下し、迎撃の魔力式浸食細胞は広げた触手の調整で空気抵抗を変え、軌道と速度を変化させる事でいなす
制圧効果に対しては、脊椎を持つ生き物では不可能な体の変形により切り抜けよう
集団戦に対しては、触手を伸ばして敵機に取り付き、上手く盾にするのがコツだ。触手と脊椎を持たぬ利点を生かした立ち回りで、攻撃の抑止もしくは同士討ちを誘発する
「気合いだっ!!」
敵の動きに迷いが見えたら、すかさず一撃必殺の「捻り拳」で撃破していきたい
● The Jaeger Strikes Back
「降下任務か。惑星の無い故郷では無縁だったので興味深いな」
重力に身を任せ真紅の不定形が落下する。エヴォルグの肉片か――否、それは星々の戦場を駆け抜けたオクト・パスフォルド(マルス星人の宇宙海賊・f43245)の姿。バチバチと舞い上がる火の粉を払い、宙に浮かぶエヴォルグ目掛けてオクトは獰猛な触腕を雷の様に伸ばした。
「だが、要領は空間戦闘と何ら変わらん!」
一閃、巨大な首筋に取り付いた不定形のマルス星人は『覇気』を浴びせてエヴォルグの自由を奪った。途端、のたうちながら苦しむエヴォルグ目掛け、散開していた敵の群れが一斉に襲い掛かった。狙いは取りついたオクト――エヴォルグより放たれた肉片が飛礫となって、不定形を圧し潰さんと嵐の如く迫り来る。
「背中を狙うか? 甘いな」
にゅるりと体勢を変え首筋から胸元へ――自由を奪ったエヴォルグ自体を盾にして、オクトはするりとその場を抜ける。対多数の乱戦ならば敵そのものを盾として矛として使えばよい。宇宙海賊らしいアドリブを利かせ、オクトは瞬く間にエヴォルグの一体を制圧した。
「!?」
ならば、と残るエヴォルグの追撃はより苛烈さを増していく。小柄な敵を一つだけ狙うから倒せない――ならば、
味方ごとまとめて潰せばよい。飛礫の嵐はさながら一塊の巨大な弾幕と化して、オクトの行く手を遮った――その時。
「――なんとも」
オクトの背後が眩い光に包まれる。光は渦を巻いて飛礫を傘に弾かれた雨粒の様に飛び散らし、その中央――後光を浴びた端正なシルエットがオクトの目に映り込む。スーツ姿に刀一本の男が、まるで猫をあやす様に滑らかな手付きで『
銀河一文字』を振り抜いて、暴れ舞う飛礫を捌いていたのだ。
「タフなミッションだねぇ」
「助かる。見た所同郷か?」
「似たようなもんさ。スペース剣豪の神酒坂だ。よろしくな」
「俺は銀河のアウトロー、オクト・パスフォルド」
男――神酒坂・恭二郎(スペース剣豪・f09970)は口端をニヤリと歪め、自ら纏った
風桜子の推力で一気にエヴォルグへと間合いを詰める。
「
宇宙の騎士か、こんな所で出会うとは」
「
内宇宙の剣も捨てたもんじゃあ無いぜ?」
互いに宇宙の戦士、それも歴戦の勇士だ。余計な言葉を交わす事も無くオクトは恭二郎の後に付いて、その影から触腕を伸ばしエヴォルグの動きを止める。同時に霞の構えから放たれた一突きがエヴォルグの中枢を瞬く間に貫いた。
「ま、こう言うのも悪くはない」
コンマ秒の戦い――宇宙の戦いで染みついた流星の如き一撃瞬殺の戦術。位置とタイミングは
風桜子が教えてくれる。その意のまま、その威のままに動くだけで敵は倒れる。途端、残るエヴォルグが一斉に魔方陣を展開し、その手から長大な光剣を見せつけた。対象の攻撃を模倣する
超常か……だが。
「そうだ。気合いだっ!!」
仕組みは真似られても達人の技までは真似れまい。恭二郎の『石動』は零距離で致命傷を与える技。ならばその前に、僅かに離れた間合いから一撃をくれてやればよい。
「ヒュウ! 旦那もやるじゃないか」
「お前もな、剣豪」
恭二郎の影から伸びた豪烈なオクトの触腕――『一撃必殺』の拳はにべも無くエヴォルグの頭部を粉々に打ち砕く。ならば、とその超常をコピーしたエヴォルグの両腕が肥大化し、宙を駆ける二人を囲む様に包囲を狭める。何とも、分かり易い連中だ。
「銀河の大戦じゃ飽きる程にやったからね。慣れたもんさ」
「ああ。多勢に無勢だからと……」
舐めて貰っては困る。力には技、技には力――二つの超常に翻弄されたエヴォルグ達は、時には間合いを詰められ瞬く間に叩き切られ、時には不意打ちのつもりが視界外から伸びる触腕に叩きのめされる。あの時の物量はこんなもんじゃない。思うよりも早く、感じるままに倒す。ただそれを繰り返すだけの事。
嵐の様に過ぎ去った二つの流星の後には、悪意の塊だった肉片が只落ちていくだけ。
止められると思うな。荒れるのはここからだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リグノア・ノイン
友人のシリル様(f35374)と
Ja.縦穴への降下作戦、了解致しました
通常で在れば対応し辛い戦いかと思われますが
シリル様と私の翼であれば対応可能です
「宜しくお願い致します。シリル様、ロボ様」
敵が無限というのであればこちらも無限を
「Weiß of Pfeil」に乗り込み
空を駆けながら【Geschützturm "Lignoa"】で
スパークで止まる敵へ無限掃射を行います
「
Generaloffensive.」
敵の虚式魔法は強力ですが物量作戦が強みの集団
広大とは言え範囲の限られる縦穴内で
制圧効果による後続の進行を阻害する愚策
「その行軍は
Rote Punkte.」
シリルーン・アーンスランド
お友達のリグノアさま(f09348)と
ご一緒に参上致しました
なるほどこれは厳しい戦いとなりましょう
わたくしにキャバリアはございませぬが
その代わりロボさまがおわします
「お役に立てますかと」
メガリス・さまよえる舵輪を詠唱し
現れ出でたるロボさまにいつも通り一礼を
「ロボさま、あれなる敵どもにどうか雷の鉄槌を!」
ロボさまから放たれるスパークにて
一撃で壊れるべくは鉄くずと化し
それでも尚動くものは
「リグノアさまお願い致します!」
わたくしの武器にても止め刺しましょう
リグノアさまとロボさまに謝しつつ
更に前へ
攻撃は技能にて躱し
敵の強化をも上回る連続攻撃を!
雲霞の如き鉄騎勢とて無限は絶てましょう
必ずや全ての掃討を!
●The Pride of Steel
「
Ja――縦穴への降下作戦、了解致しました」
明滅する契機に囲まれたコクピットの中、リグノア・ノイン(感情の渇望者・f09348)が静かに呟く。身に纏うは巨大な白銀の竜の如きキャバリア『Weiß of Pfeil』――その肩に小柄な影が一つ。
「なるほど、これは厳しい戦いとなりましょう……ですが」
金髪を風に棚引かせた少女、シリルーン・アーンスランド(最強笑顔の護り風・f35374)は胸に秘めた思いと共に、地獄へと続く深い穴をリグノアと共に降りていく。
「通常で在れば対応し辛い戦いかと思われますが、シリル様と私の翼であれば対応可能です」
「ええ、
ただ厳しいだけです。十分お役に立てますかと」
わたくしにキャバリアはございませぬが、その代わりロボさまがおわします――ギュッと固く唇を結んで、シリルーンは手にした
舵輪を虚空でがらりと大きく回した。
「宜しくお願い致します。シリル様、ロボ様」
「この暗闇を貫く為に、心ある全ての為に――キャプテンさま……!」
途端、眼下から殺到する無数の飛礫を遮って暴風が巻き起こる。それは行くべき場所を見定めたかつての大いなる力の片鱗。たとえ道は果てしなくても、この航海に迷いは無い。
「ハナさま! 皆様! どうかお力お貸し下さいませ!」
シリルーンの呪文と共に、大いなる力は周囲に転がるキャバリアの残骸を引き寄せて新たな鋼鉄の肉体を顕現する。それは白竜と対になる様な、漆黒の
巨大なマシン。
「ロボさま、あれなる敵どもにどうか雷の鉄槌を!」
十二気筒を轟かせ、少女の命に従いマシンは万華鏡の様な極彩色の雷を解き放つ。飛礫だった肉片は一瞬で消し炭となり、その先にたむろするエヴォルグの群れの尽くを焼き焦がした。シリルーンの『メガリス・さまよえる舵輪』はかつての奇跡を行使する
超常――『さまよえる舵輪』の権能を解放したシリルーンを止める事など出来はしない。
「リグノアさま! お願い致します!」
「
Ja――
Generaloffensive」
シリルーンが漆黒のマシンに飛び乗った姿を確認し、続けてリグノアが
超常を解放する。己に刻まれたシステムが脈動し、同期した白竜の装甲が音を立ててパズルの様に解放――隙間から漏れ出る光は
荒ぶる超常の牙、雷を受けて機能停止したエヴォルグを穿つ様に、幾千幾万の光弾が豪雨の如く突き立てられた。
光の雨に貫かれたエヴォルグが続々と墜落する。それでも尚、無尽蔵に近い彼奴等の迎撃は止まらない。必滅の超常の代償に足を止めた白竜目掛け、特攻するエヴォルグが加速する。光弾の雨を身に受けながらもその威は止まらず――しかし突如現れた漆黒の一撃が、寸での所でその命脈を断ち斬った。
(ええ……これからも共に進みましょう、キャプテンさま)
回転重槍を携えたマシンはリグノアを狙うエヴォルグの群れへ飛び込んで、嵐と共に悪意を断つ。
「――その行軍は
Rote Punkteです」
そしてリグノアの無限掃射は止まらない。敵の虚式魔法は強力だが所詮は物量作戦が強みの集団――広大とはいえ範囲の限られる縦穴内で、制圧効果による後続の進行を阻害する愚策に過ぎない。初動の雷撃で連携を失ったエヴォルグなど烏合の集団。そして数は少なくともこちらの手数は倍以上、圧倒的火力を誇るのは猟兵達の方だ。
雲霞の如き鉄騎勢とて、歴戦の猟兵を甘く見過ぎた。
死と隣り合わせなのは、この世界だけでは無い。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵

朱鷺透・小枝子
壊して壊して壊しまくる!
シンプルだ。分かりやすい!!
『暗黒星雲創装』回点号に暗黒星雲のルーンを刻み【操縦】
メガスラスター展開【推力移動】
機体を通し、サイキックシールド展開【シールドバッシュ】
あらゆるユーベルコードを喰らう暗黒星雲の力で敵が展開している虚式魔法、浸食細胞、魔法陣を食い破り!斬艦刀変形フォースサーベルで敵機集団を【なぎ払い切断】
るぅうううううらああああああああ!!!!
ウィングブースター【空中機動】機体を【吹き飛ばし】高速飛翔!
【瞬間思考力】人工魔眼の【動体視力】で機体を制御、敵機を視認し、
斬艦刀で敵機をなぎ払い、時折ブースターをウィングキャノンに切り替え
【レーザー射撃】でなぎ払う!
イーブン・ノルスピッシュ
異世界由来のキャバリアなど持ち出されてしまっては、ますます手に負えなくなる
こんなものを要塞の外へのさばらせる訳にはいかない
此処で絶たなければならない、必ずだ!
落下しながら、敵機を足場変わりに蹴り付けて空中機動
改造銃に括り付けた擲弾発射器で爆発と破片を撒き散らし、目眩ましの煙幕代わりにして吶喊
此方の攻撃を捕食され止められたにしても、使用に詠唱が必要ならば、発動までに幾らかの隙がある筈だ
機体に取り付いたまま、詠唱を完了される前に炸薬を装填し直し、炎を纏わせたパイルバンカーを叩きつける
吹き飛ばした機体を別個体にぶつけ、ダメージを稼ぐと同時に詠唱と連携を妨害する
弾薬が底をつくまで、可能な限り数を減らす
●Panzer Jaeger
猟兵の襲撃によりエヴォルグの勢力は明らかに落ちていた。幾らほぼ無尽蔵に湧き出すとはいえ新たに生み出すには時間が掛かる。そして手勢が弱まれば要塞内に前哨を築く事も難しくはない。何より――。
「こんなものを要塞の外へのさばらせる訳にはいかない――此処で絶たなければならない、必ずだ!」
苛烈な蒼き炎を纏った獣人――イーブン・ノルスピッシュ(
死を焚べて灯る鬼火・f40080)が目眩ましの榴弾でエヴォルグの進軍を抑えつつ、怒りと共に咆哮する。異世界由来のキャバリアなど持ち出されてしまっては、ますます手に負えなくなる……絶対に殲滅しなければ!
「喰えるものなら喰ってみろ! 早贄にしてやる!」
滾る闘志を炎に変えて、
炸裂槍の尖端を眼下のエヴォルグに向けるイーブン。狙いは詠唱の僅かな隙――手にした『ノルスピッシュ
L50-50』にマウントされた対機甲兵器用の切り札は揺らめく炎の照り返しを受け、ギラリと鈍い光を放つ。
『……!?』
ざくり、と肉を貫く音と同時に、爆発した炸薬の轟音が辺りに響く。イーブンの
超常たる『
イオカステの慟哭』は、自身の威力を極大に高める必殺の技。その反動で高く舞い上がったイーブンは次の獲物に狙いを定め、剥き出しの牙に殺意を込めて必勝の雄叫びを上げた。
「そうだ、壊して壊して壊しまくる! シンプルだ。分かりやすい!!」
不意に巨大な影がイーブンを覆う。新手か……いや、爆音と共に舞い降りた翼は味方の猟兵か。展開した
光の壁が爆風と肉片を遮り、その奥に端正なキャバリアのシルエットが浮かび上がる。
「爆圧の反動で空中戦か! 見事!」
「巻き込まれたくなければ近寄るな! 次!」
叫ぶイーブンを横目に朱鷺透・小枝子(
亡国の戦塵・f29924)はニヤリと目を細める。自身と同じ恐れを知らぬ
狂戦士か。キャバリアを用いずにエヴォルグを原始的な炸薬兵装のみで、しかも生身で斃すとは――面白い! だが小枝子の背筋にぞわりと悪寒が走る。視線の先、モニタに映るエヴォルグ共はいつの間にかその手に巨大な槍を顕現させていた。
「フン、奴ら
早贄を真似るつもりだな! ハハッ!」
敵を真似る
超常、確かにイーブンの技をこの大群が一斉に放つとしたら戦場そのものが崩落しかねない。しかしその対策は既に織り込み済み――ギラリと歯を剥き出しにして小枝子が叫ぶ。
「ではそれが封じられればどうするか――!!」
刻め、暗黒星雲――小枝子のキャバリア『回天号』から放たれた超常『
暗黒星雲創装』の闇がアメーバの様に広がって、たちまち無数のエヴォルグ達を呑み込んだ。
エヴォルグが放つ虚式魔法、浸食細胞、魔法陣を食い破り、暗黒の闇はその尽くを無力化した。力を奪われれば
真似る事も出来まい――鮮やかな緑のキャバリアはその手に巨大な
光の斬艦刀抜き放ち、無力化されたエヴォルグ共を一網打尽に薙ぎ払う。
「るぅうううううらああああああああ
!!!!」
「おおおおぉぉぉぉぉらああああああ
!!!!」
外周に逃げたエヴォルグ目掛け、空を舞う蒼炎の鉄槌が迸る。弾薬が底をつくまで、可能な限り数を減らす――一つでも多く滅ぼし、一つでも多くの生命を救う為に。
「刻みつけろッ
!!!!」
猛り狂う二つの炎は止まらない。光刃、光弾、爆発、炸裂――圧倒的な暴力は圧倒的な数的優勢すら無き物にする。地獄はここで終わらせるという固い決意はやがて、戦場に沈黙を齎した。
終わりなき戦いを終わらせる時は、もう近い。
大成功
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