6
妖探し

#アヤカシエンパイア


●藤原学校
 平安京。アヤカシエンパイアと呼ばれる平安時代の日本に似た世界の首都である。
 その京中に藤原学校と呼ばれる教育機関があった。
 歴史はまだ浅い。権勢を誇る平安貴族、藤原家正が二十年程前に創設したばかりである。
 だが、既に多くの優秀な卒業生を輩出しており、その評価は高い。
 実はこの学校、妖殲滅を目的としてその術を学ぶ為のものであった。
 その為、平安貴族の子弟のみならず、戦う力を認められれば出自を問わず門戸が開かれていた。
 これは創設者であり出資者でもある藤原家正の方針である。

 これからも妖と戦う優秀な戦士を数多く輩出するはずであった藤原学校であるが、最近閉鎖が囁かれている。
 家正が病に伏し、その後継者は学校事業の継続をしない姿勢を見せていたのだ。
 学校運営には莫大な資金が必要となる。その資金は藤原家の荘園の為に使うべきという考えらしい。

●グリモアベース
「まあ、学校の存続自体は私達が関わることではない」

 妖と戦う者を育成する技術の蓄積。
 あの世界にはあった方が良いとは思うがな、と付け加えるながらグリモア猟兵のアッティラが言う。
 では、なぜこの話をするのか。
 それはくだんの藤原家正の病が自然のものではなく妖によるものという予知を得たからだ。
 だが、今回の予知は不明瞭だ。
 家正の病が妖のものであることは確かだが、ではどの妖の仕業かと言うと定かではない。
 どうも巧妙に人に化けて京中に紛れ込んでいるらしい。

「だから、まず誰が妖かを調べなければならない。ちなみに容疑者は現時点ではぜんぜん分からない」

 堂々と駄目な発言をするアッティラ。ではどうするのかという問いに彼女は答える。
 ぜんぜん分からないが妖は家正付近にいるということ。
 だが家正は高位貴族でしかも病に臥せっている。いきなり押しかけるのは難しい。
 だから藤原学校でまずは情報収集をすれば良いということ。
 そこで妖に当たりをつけて……後は流れで、という事だ。確定できれば最悪、闇討ちをかければいい。

「そうそう今、藤原学校には久我雅隆という平安貴族が臨時講師として逗留している。彼は猟兵のことを知っているので、正体を明かして協力してもらうのもいいかもしれない」

 妖と戦う力を求めている学校だ。力を示せば特に協力がなくても潜り込むことはできるだろうが。
 そんなアッティラの助言を受けた後、猟兵達は平安結界に覆われた世界へと転移されていく。


淵賀
 初めまして。またはお久し振りです。
 今回はアヤカシエンパイアで潜入捜査っぽいことをした後にアヤカシ退治となります。

 全三章構成(🏠日常 →⛺冒険 →👿ボス戦)

 第一章について。
 藤原学校で藤原家正周辺に関しての情報を収集して貰います。POW、SPD、WIZは特に気にしなくてOKです。
 侵入方法を特にプレで触れない場合、力を示して体験入学中みたいな感じで扱います。
 こんな立ち位置で侵入したいというのがあればプレで教えて下さい。
 また、久我雅隆という貴族に接触した場合、猟兵である事をあかせば協力的です。

 この章で情報収集する事によって妖の候補が判明する思います。

 第二章について。
 第一章で判明したことを基にプレをかけて頂ければと思います。

 第三章について。
 多分、きっと妖が誰なのか分かっていると思います。襲い掛かって倒しましょう。

 以上です。
 プレイングは各章全て受付開始のタグを入れてからとなります。
 締切もタグにてお知らせいたします。
 それではお付き合いいただければ幸いです。よろしくお願いします。
56




第1章 日常 『対妖技能講習』

POW   :    対妖用武術の道場に行ってみる。

SPD   :    霊符や式神の作成教室に行ってみる。

WIZ   :    貴族の私塾に行ってみる。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●不穏な噂
 京内にある藤原学校。この妖との戦い方を学ぶ教育機関はなかなかの敷地面積を持つ。
 周囲を高い壁で囲まれているのは妖を知らぬ人々にその学びを見られない為か。
 剣や槍、弓と言った武器、あるいは素手での戦い方、武術を学ぶ道場。
 霊符や式神の作成方法、陰陽術の基礎等、魔術的な事を学ぶ教室。
 妖の種類や生態、これまでの戦いの歴史、戦術等の教養を深める研究室。
 様々な分野の学び舎が内包されており、そこで数多くの者達が研鑽を積んでいる。

 だが最近は落ち着かない空気が流れていた。
 学校の創始者であり出資者、要である藤原家正が病に倒れ、存続が危ぶまれている為だ。

「家正様の病は自然のものでないのと聞く」
「ご子息の家顕様は最近人が変わられた様な」

 人が集まれば根拠のない、だが不穏な噂話がそこかしこで成されているのが聞こえるだろう。
 猟兵達は家正の病が人に化けた妖によるものであることを知っている。
 だが、妖が誰に化けているかは不明。その手掛かりを得るべく藤原学校に入り込んだ猟兵達は調査を開始する。

 ================================
 この章では聞き込み等で情報収集をして頂きます。
 普通に噂を聞いても良いですし、決め打ちしても良いかもしれません。
 もちろん、良さげなユーベルコードがあれば使ってみるのも良いでしょう。
 藤原学校の生徒は十代前半から三十代くらいまで男女問わず数多くいます。
 適当に噂話を聞いていれば多分、妖が見えてくると思います。

 久我 雅隆 18歳 平安貴族(正四位上) 剣豪×刀剣士
 源氏の名門久我家の現当主。国摩真人を始祖とする「鹿島の太刀」の達人。
 鵺退治の功績で加階された返礼の為に平安京を訪れている。
 鵺退治では猟兵に助けられており、その知見を得ているので事情を話せば協力を得る事が出来る。
 今は藤原学校で臨時の剣術講師をしている。
寿乃葉・アタラ
またこの門をくぐる事になろうとは
見渡せば様々な思い出が蘇る
――1年で出ていく事になったけど

ともかく今の私がこうして式を扱えるのも、ここの基礎があってこそ
閉校は忍びないし、協力するわ

方針:OBとして各所の整備援助の名目で調査

【指定UC】で〔護法童女〕を召喚
機材整備と同時に【情報収集・かわいい・集団戦術】で話を収集
「はーい、おまかせー!」「おうわさほんとー?」

久我殿とは初対面だけど、坂東で名を聞いたかも
今後の事も考えて挨拶しておこう
…え、伝説の瑞獣事件?
ああ…つい興味で瑞獣型式神を組んで校庭に穴をあけたアレ、伝わってるのね…(遠い目

※可能なら当時の教師陣からは問題児扱いされて早期卒業した扱いを希望



●言霊の姫君
 藤原学校。その正門の前に一人の女性が立っていた。すらりとした長身に豊かな黄金の髪を持つ端麗な容貌の持ち主。何処か超常的な雰囲気を纏うこの女性の名を寿乃葉・アタラ(言売ことうりの式神使い ~機甲式神操者~・f43106)と言う。

 アタラは無表情ながらもその内心は感慨深い思いがあった。
 実は彼女はこの藤原学校の卒業生であるのだ。門をくぐり中を見渡せば様々な思い出が蘇ってくる。
 まあ、一年で出ていく事になったので、そこまで長い期間いた訳ではないのだが。

 一年間。決して長い期間ではないがそれでも今のアタラを形作る貴重な時間ではあった。
 式神を使うアタラであるが、その基礎を学んだのは此処であったからだ。
 その思い出の地が閉校するのは忍びない。それが彼女がここを訪れた動機である。

「おや、アタラ姫、久しぶりだね」
ひい様はお久し振りですと仰っています」
「うん、元気そうで何よりだ。今日はどうかしたのかね?」

 好好爺と言った容貌の老人が顔を見せたアタラを懐かし気に歓迎する。
 老人の名は賀茂忠典。アタラに式神の基礎を教えた師であり、優秀な陰陽師である。
 アタラは無言で会釈をして、彼女の傍らに控えているその言葉を式神が代弁する。
 言葉を発しないアタラを気にした様子もなく話を続ける忠典。慣れた様子である。
 それもそのはずで式神作成の術を覚えてからのアタラは基本的に式神に己の言葉を代弁させており、それは在学中も同様であった。
 勿論理由はある。アタラは生まれながらに強い『言霊』の力を持っていた。
 この為、彼女の話す言葉は相手に影響を与えずにはいられない。それが彼女にとって負担であった。
 かつてアタラが藤原学校の門を叩いたのは、この言霊の影響を受けにくい式神を扱う術を会得したいというのが大きな理由であったのだ。

 ともあれアタラは忠典から校内各所の整備援助をする許可を得る。
 これでアタラと彼女の式神が自由に校内を動いていも怪しむ者も咎める者もいない。

 【開帳・式神御殿の従者たちヒッタツ・シゴトニン】。

 式神の術をユーベルコードの域までに極めたそれにより、仙人級の護法童女を二十体召喚する。
 アタラに指示を受け、愛らしい外見の護法童女達が校内に散って行く。
 
「はーい、おまかせー!」「おうわさほんとー?」

 童女達の仕事は表向きの機材整備をしながらの情報収集である。

 童女達を見送った後、グリモア猟兵が触れていた協力的な貴族、久我雅隆に接触する事を考える。
 今後の事を考えると顔を見知っていた方が良いと思ったからだ。
 それにアタラには雅隆の名を坂東で聞いた覚えがあった。
 何でも剣の天才で若くして『鹿島の太刀』を極めて関東の多くの妖を退治したとか。
 また、一年ほど前に家督を継ぐ為に西国に帰国したとも聞いていた。

 武勇伝から猛々しい荒武者を想像していたが実際に会ってみた雅隆は静謐な印象を受ける細身の若者だった。
 物腰も柔らかいが成程、佇まいに隙がなく実力者である事は分かる。
 アタラが皇族である事で最初から丁寧な扱いであったが、猟兵である事を告げるとそこに親しみが加わった様だ。

「僕に出来る事があればなんでも仰ってくださいね」

 協力を取り付けることに成功する。雅隆との邂逅は上首尾に終わったと言えるだろう。
 ただ、自分の名前を聞いた時、『伝説の瑞獣事件』に触れられたことには思わず遠い目になってしまったが。

 興味本位で瑞獣型式神を組んで校庭に大穴をあけた事件はアタラの名前と共に語り継がれている様だった。
 実のところアタラ、恩師と言える忠典以外の教師陣からは問題児扱いされていたのだ。
 一年で卒業したのも式神の術を修得したというのもあるが、それを名目に卒業と言う形で放り出されたという話でもある。

 さて、そんな感じでアタラと雅隆が交流している間に童女達が多くの噂に基づいた情報を集めてくる。

 藤原家正が体調を崩したのは今年に入ってから。壮健であったのに急速に衰えており、医師も原因不明だという。
 嫡男である藤原家顕はこれまで家正路線を継承するという話だったのが、家正が倒れてから急に藤原学校の閉鎖を言い出した。
 閉鎖を言い出したのは今年、結婚したばかりの正室、坂東から嫁いできた華子姫の影響ではないかということ。
 家正が病床に倒れた後、藤原家の家人で姿を見かけない人が多くいること。

 等々である。
 得られた情報からアタラは妖として怪しい人物について考えるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

桐藤・紫詠
何も潜入するだけが情報収集の王道、というわけでは無いです
余は聴覚を強化し、その射程範囲を136万キロ平方メートルとしてその精度を射程範囲に比例させる
とは言えここまでの射程範囲は過剰でしょう……
この藤原学校周辺の地域に強化した聴覚の射程範囲を絞り、その中で重要そうな情報を精査していきます
家正殿の看病の周辺、医師がいるらしき部屋、その他ご子息の周辺
その辺りを千里眼が如き聴覚で精査すれば真相は分かるでしょう

ついでに学校の授業の内容や久我家の当主の動向等も聴覚で把握し、最善の準備態勢を整えられるようにしましょう



●順風耳の姫君
 藤原家正の病の原因となる妖探し。多くの猟兵達が藤原学校に何らかの形で赴く中、皇族の姫君、桐藤・紫詠(黄泉詩の皇族・f42817)は平安京にある自身の屋敷に戻っていた。

「何も潜入するだけが情報収集の王道、というわけでは無いです」

 自信を持ってそう断言する紫詠。それでは彼女の情報収集の方法はと言うと。

 道教に『順風耳』という鬼神がいる。
 千里先まで見通す眼を持つ鬼神『千里眼』の対となる神でこちらはあらゆる音を聞く事が出来る。
 伝承では億万の音から悪の兆候を聞き分けて仕える神に報告するという役割を持つ。
 まさに神の権能というべきだが紫詠はユーベルコードによりそれを再現する事が出来た。

 【平安詩浄土変・我が五つよ、久遠の彼方となれワガイツツヨクオンノカナタトナレ

 これは五感、すなわち視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の内一つを超強化する権能を持つ。
 超強化とは精度を比例させる形で感覚の有効範囲を途方もなく拡大するというものだ。

 これをこの度の藤原家正の病の原因である妖探しの為に使用するというのが紫詠の考えだ。
 強化するのは『聴覚』。これにより紫詠は鬼神『順風耳』の如き何事も聞き逃さぬ耳を手に入れる。
 彼女の今の実力であればアヤカシエンパイア全体、日本全土を覆う事もできるが今回の件では藤原学校周辺、藤原家正が滞在している屋敷周辺で十分であろう。

 藤原学校での教員達、生徒達の会話。
 藤原家正屋敷での家正周辺、子息の動向、医師の様子。
 
 これらの音を聴きとり、重要そうな情報を精査する。
 藤原学校での噂は以下の通り。
 家正が病に伏せたのは今年に入ってからで、急速に衰えている。医師にも病名は分からないらしい。
 嫡男の藤原家顕はもともと武闘派の平安貴族であり、学校にもよく鍛錬に訪れていたのだが、最近は屋敷から出る事も稀だという。学校閉鎖は父である家正が倒れてから言い出している。
 華子姫という坂東の貴族の娘が今年、家顕に嫁いでいる。家顕の変化はこの姫君の影響ではないかと言う。
 ついでとばかりに鵺退治で縁のある久我家当主の動向も探ってみると、他の猟兵達に協力する様だ。

 藤原学校で様々な情報が入手できた反面、家正屋敷での情報収集は芳しくなかった。
 もともと平安貴族の屋敷、寝殿造は霊的防御に優れてユーベルコードの権能も及びにくい。
 それでも紫詠の実力であれば問題ない筈だが今回はそこに妖気的な防御も加わっている様で何とも聞き取りにくい。
 だが、これで妖が家正の屋敷にいる事はほぼ確定といっていいだろう。

 情報を整理しながら紫詠は妖退治の準備を始める。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ハル・エーヴィヒカイト
アドリブ連携歓迎

▼心情
強力な気配ならUCで辿ることも出来ようが、相手に感づかれる可能性もある。ひとまずは真っ当に情報を集めるとしようか

▼潜入
まずは雅隆に接触
まさか彼ほどの手練れが妖に取って代わられていることなどあるまいが
念のため[心眼][気配感知]で本人であることを[見切]った上で協力を仰ぐ
以前の依頼で面識はあるため、事情を説明した上で彼と同様の臨時講師としての立場を用意してもらおう
あとは授業をしっかりと受け持ちつつ、生徒たちから噂話などを[情報収集]
授業と授業の合間には職員室のような場所があればそちらで講師からも話を聞き、雅隆とも集めた情報を交換しよう



●臨時講師ハル
 人に化けている妖。だが誰に化けているかは全く不明だという現状。
 最初にどう動くかをハル・エーヴィヒカイト(閃花の剣聖・f40781)は考える。
 妖は十中八九、強力な存在であろう。ならばそれを辿るユーベルコードをハルは使える。
 だがそれを使えば相手に気付かれる可能性も高いだろう。
 誰が妖か不明な状態での使用は状況次第では無用な被害を生みかねない。

「ひとまずは真っ当に情報を集めるとしようか」

 そういう結論となった。
 ハルは藤原学校へと赴き、まず久我雅隆に接触する。彼とは少し前に鵺退治で共闘した仲である。

「ハルさん、お久し振りです」
「ああ、久しぶりだ。と言ってもそれほど経っていないが――」

 笑顔でハルを迎える雅隆。ハルも笑みを浮かべつつ挨拶を返すがその実、注意深く雅隆を観察していた。
 今回の妖が誰に化けているか全く不明だ。ハルの知る限り雅隆は相当な手練れである。そんな彼が妖に取って代わられている可能性は極めて低いと思ってはいるが可能性が無でない以上は油断しないのがハルである。

「――何を警戒しているんですか?」

 雅隆も武の達人である。ハルの見極め様とする微かな挙動に違和感を抱き、素直に訊ねてくる。
 その様子も覚えていた気配も雅隆本人に違いない。そうハルは判断する。

「ああ、すまない。実はな――」

 雅隆本人であるとすれば事情を話すことに躊躇はない。
 藤原家正の病の原因。正体不明の人に化けた妖。全て話して雅隆に協力を要請する。

「そんな事が――分かりました。勿論、僕も協力しますよ」

 雅隆は協力を快諾。その後、彼の仲介もあってハルも藤原学校の臨時講師となる。
 雅隆に聞いたところ、彼が臨時講師を務めているのは数日前からでそれもあと少しで終わる様だ。

 生徒達からあるいは同僚の講師達との会話の中から情報収集するハル。
 学校閉鎖の可能性もある現状、それに関する話を集めるのは難しいことではなかった。
 同じように情報を収集してくれている雅隆と情報交換をする。

「それでは有力な候補は――」
「ええ、家顕さんの奥さん、華子姫本人か坂東から彼女について来た付き人が怪しいと思います」

 藤原家正の嫡男、藤原家顕の正室華子姫。彼女が輿入れした少し後に家正は病に倒れた。
 それ以来、家顕も様子が変わっている。
 家顕も怪しいことは怪しいが主犯と言うよりは誑かされているあるいは術中にあると考えた方が平仄が合う。

「雅隆は家顕とは面識はあるのか?」
「ありますけど――」

 家顕と雅隆の仲が良いようなら、面会を頼み、その伝手で華子姫の様子を確かめることを考えるハルだが雅隆の歯切れが悪い。理由を聞くと雅隆が坂東から帰って来たばかりの頃、家顕と試合をする事になりそこで鎧袖一触で破って以来敵視されているとのこと。

「なら仕方ないな」
「すいません」

 容疑者は絞られつつある。次の一手を考えるハルであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神城・星羅
ふむ、藤原家正卿の主宰なさる藤原学校。

私は家族があんな事にならなければ入学を予定していたところ。

立場としては入学希望の貴族の娘として潜入しましょう。

従4位という立場を明かすだけで久我様には私が猟兵である事がわかると思いますので、下の身分なので最大限の敬意を持って接します。

当主様に拝謁するのは畏れ多いですが、これも務めなので。事情を話してお話をお聞きしたいところ。差し支えなければU Cを発動して金鵄を召喚して視覚が共有できることをお伝えします。最終手段ということで。

あ、まず名前を名乗ってから。情報は導きの八咫烏を【偵察】【伝令】で滞りなく。藤原学校も久我様もお守りしたいですね。



●幼き平安貴族
 神城・星羅(黎明の希望・f42858)は従四位上の平安貴族である。
 彼女と初対面でこれを知れば多くの人が驚くこととなるだろう。
 それと言うのも彼女は僅か八歳であるのだ。
 平安貴族は妖を討伐する事で功績を挙げると加階される。
 武の実力者であれば若くして高位に上る事も珍しくないが流石に星羅の若さでは異例だ。

 そんな星羅が今、藤原学校を訪れていた。
 勿論、人に化けた妖、その正体を探る為であるが胸中には複雑な思いもあった。

「生徒として通っていたかもしれない」

 これである。平安貴族の娘として生を受けた星羅。
 五人兄妹の末娘であり、厳しいながらも可愛がられて育てられていた。
 星羅自身、家族の役に立てる様にとの思いもあり、平安貴族の務めを果たす為に努力していたので適齢となれば妖との戦いの術を学べるこの学校に入学していた可能性は高い。
 だが、そうはならなかった。妖の襲撃により家族は彼女一人を残して喪われたからだ。
 少し感傷的な気分になりながらも入学希望の貴族の娘として潜入する事に成功する。

 星羅はまずはとグリモア猟兵が触れていた平安貴族、久我雅隆に接触する。

「君の年齢で従四位上? ひょっとして君は――」
「はい。私は猟兵の力を得ています」

 猟兵に関する知見を持つ雅隆である。
 星羅の年齢に合わぬ身分、そして立ち振る舞いから実力を悟って猟兵であるかを尋ねてくる。
 もともと星羅は隠すつもりはない。
 素直に猟兵である事を伝え、また今回の事件の事も話して協力を仰ぐ。
 現時点では雅隆の方が位階が上の為に礼儀正しい。

「そうか、君もなんだね」

 礼儀正しい星羅の様子に感心しつつも雅隆は口を開く。
 話を聞けば他の猟兵も彼に接触をしており、既に情報収集を始めているということ。
 そこに星羅も加わることになった。

「せっかくだから普段は授業を受けて観たら?」

 『金鵄』による視覚共有や『導きの八咫烏』による情報伝達体制を整えた後に雅隆に提案される。
 それを受けて少しの間、学生の気分を味わう星羅であった。

 幾日かの後、纏まった情報によると妖が化けていると思われるのは藤原家正の嫡男家顕の正室華子姫かあるいは彼女と共に坂東から来た付き人。この二人が最も怪しく、次点で家顕本人か。
 この情報を得て星等は次の行動を考えるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

花乃宮・百合姫
百合姫としての参加
久我氏とはカキツバタとして百合姫様の護衛を行っていたときに
アヤカシ退治に協力したことは覚えている

あの時以来の出会いとなるけど
果たして偽物であるとバレないといいな

「お久しぶりでございますです」
おかしなお嬢様言葉になってしまうが
しばらく病に臥せっていたという設定を利用して後遺症ということにしておく

百合姫は周囲の生徒の噂を聞いておこうと思い
あちこちの噂を耳にする

具体的には
周囲の生徒にもなにか妙な行動を取る人がいないかを聞いておきたい。



●偽りの姫君
 花乃宮・百合姫(平安貴族(従五位下)の百華隊の陰陽師・f42926)。
 面会を求めているという姫君の名前を聞いて久我雅隆はしばし記憶を探り、すぐに思い当たる。
 かつて妖退治を共に行った事があったはずだ。
 妖退治の名門として名高い花乃宮家の姫君の名前が百合姫だった。
 彼女の率いる護衛隊、確か『百華隊』と言ったか。その練度が高かったことも記憶に残っている。
 それと同時にその百華隊による謀反があったという風の噂も思い出す。
 自分を訪ねてきたという事は無事であったのだろうと考えつつ雅隆は百合姫の元に向かう。

「お久しぶりでございますです」
「お久し振りです」

 姿を現わした雅隆に百合姫はやや緊張しながら挨拶をする。少しおかしな言葉遣いになっているのには理由があった。
 実のところこの百合姫は雅隆の記憶にある本物の百合姫ではない。
 謀反を起こしたという百華隊の隊長の一人、カキツバタと呼ばれた少女である。
 何故、そのカキツバタが百合姫を名乗っているかと言うと色々と物語があったのだが、此処では既に本物の百合姫が鬼籍に入っており、瓜二つであったカキツバタが百合姫を務めている事さえ覚えておけば良い。

 そして、この百合姫カキツバタは雅隆と本物の百合姫が共闘した際、護衛としてその場にいた。
 特に交流はなかったが、本物の百合姫を知る存在であるのでバレないか不安であったのだ。
 言葉遣いもそうだが元々庶民出身の百合姫には貴族としての立ち振る舞いは怪しいところがある。
 百合姫を務める様になってから花乃宮家の者に教え込まれているが付け焼刃の部分があるのは否めないのだ。

 幸いな事に雅隆からの追及はなかった。
 雅隆としては以前と雰囲気が違っているという思いはあったが、花乃宮家で困難を受けた事は伝え聞いている。
 まだ年若い百合姫の様子が変わっても仕方ないだろうという考えだ。もともと個人的な付き合いがあった訳でもない。

 百合姫はその様子に安堵しつつ自身が猟兵である事、藤原家正の病の原因に妖がいる事を話し、協力をお願いする。
 雅隆は百合姫が猟兵である事を驚きつつも快諾。
 他にも猟兵が雅隆に接触しているのでその情報共有と百合姫自身が生徒として通えるように取り計らってくれた。

 噂話に耳を傾けながら過ごす事数日。自身で集めた情報、雅隆や他の猟兵からの情報が集まる。
 妖が化けている可能性が高いのは藤原家正の嫡男、藤原家顕の正室、千葉華子。
 あるいはその付き人、乳姉妹である牧子だという事が分かる。二人とも藤原家正の屋敷から外には出ないという話だ。
 百合姫が少し怪しんでいた藤原学校の講師や生徒の中には不審な人物がいない様で一安心ではあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

八秦・頼典
●POW

嗚呼、懐かしき学び舎が閉校とは寂しきかな
瞳を閉じれて耳を澄ませば青春の日々を思い出すよ
まぁ、ボクは基礎の物覚えが早かった分、隙あらば余った時間を鍛錬に使わず美しき塾生を口説いていた生意気盛りな問題児でもあったけどね
はっはっは!

まずは近況報告も兼ねて家正殿の見舞いに参ろうか
こうして星の位まで出世できたのも師のお陰だしね?
用事の建前が済んだら調査開始と行こう

そうだな…久我殿に手合わせを願うがてら何か変わった事はないか尋ねてみようか
鹿島の太刀は如何なるものかの後学も兼ねれるしね

それも済んだら懐かしい先生方にも顔出ししておこうかな?
後悔後先立たず、事件解決しても藤原学校が閉鎖しては会えないしね



●星の位の平安貴族
 対妖の術を学ぶ藤原学校には実戦的な訓練が積める様に広場が幾つかある。
 その一つに今、二人の平安貴族が立っていた。
 一人は華やかな印象を与える美貌の青年、八秦・頼典(平安探偵陰陽師ライデン・f42896)。
 もう一人は静謐な雰囲気を持つ秀麗な青年、久我雅隆だ。

「嗚呼、懐かしき学び舎が閉校とは寂しきかな。瞳を閉じれて耳を澄ませば青春の日々を思い出すよ。
 まぁ、ボクは基礎の物覚えが早かった分、隙あらば余った時間を鍛錬に使わず美しき塾生を口説いていた生意気盛りな問題児でもあったけどね。
 はっはっは!」

 学舎を見ながら芝居がかった様子で語る頼典。雅隆はどう反応したモノか困っている。
 頼典は同じ平安貴族と言っても正三位。正四位上の雅隆より二つ上の位階にあるし、何と言っても正三位は公卿に等しい俗にいう星の位にある。格としては雅隆を遥かに上回ると言える。
 頼典の出自となる八秦家は渡来系民族を祖とする一族でそこまで格の高い一族ではない。
 にも拘らずこの位に頼典があるのは彼の実力によるものである。
 頼典が猟兵であると聞いて雅隆は納得したものだ。

 今、二人が広場にいるのは頼典が雅隆の振るう『鹿島の太刀』との手合わせを望んだからだ。
 頼典とすれば人に化けた妖関連の情報を雅隆から聞くついでに興味を満たせればといったところか。
 『鹿島の太刀』はその名の通り鹿島神宮の祭神、軍神である武御雷神からの神託によって授かった奥義を伝えていると聞く。今の時代からは遥か後代の話となるが剣豪塚原卜伝もこの系譜に連なる。

「遠慮はいらないよ」
「では参ります」

 互いに本気ではない。だが、常人では及びもつかない打ち合いの後に雅隆から情報を得る。
 彼は他の猟兵とも連携しているとのことで妖が誰に化けているか、ほぼ絞り込めていた。
 候補は藤原家正の息子の妻、坂東から嫁いできたばかりの華子姫かその付き人牧子の二人。

 それを聞いてさもありなんと頼典は頷く。
 実は頼典、藤原学校に来る前に藤原家正の屋敷に足を運んでいた。
 藤原学校の卒業生であり、家正とは縁がある。
 そして、星の位まで高まった自分であれば見舞いを断られる事はないと考えたのだ。
 だが、結果として家正との面会は叶わなかった。
 嫡男家顕が丁重に持て成してくれたが家正は重篤で面会できる状態にないという。
 無理強いする局面でもないので素直に引き下がったが、家顕には微かな瘴気を感じた。
 その時は家顕が妖に取って代わられたかとも考えたが、彼の妻あるいはその付き人が妖であるならば強い影響下にあってもおかしくはないだろう。

 だいたいの目途が立ったと、雅隆に礼を言って頼典は学生時代に世話になった講師達に会いに行く。
 妖は程なく退治されるだろう。だが、それで学校が存続されるかは不明だ。
 後悔後先立たず。一寸先は闇の世界である。会える時に会っておいた方がいいだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
「手の込んだ事をしてくれる。
それだけ此処を潰したいんだろうが。
なら余計に止めなきゃならないな。」

学校には体験入学のような形で潜入。
研究室や図書室の文献で
人に化ける妖や病の様な呪いの書物を重点的に調べる。
また、犯人が自分の手掛かりとなる書物を処分した事も考え
不自然になくなっている物(シリーズの一巻のみない等)
があれば人にその内容を尋ね調べたり
他の書物から内容を推測。

研究員や司書に家正が病に倒れた前後に
位の高い人物が出入りしなかったか聞き。容疑者を絞る。

情報収集後、久我雅隆に面会を求め猟兵である事と目的を明かし。
容疑者を遠目からでも確認する機会を持てないかと伝え。
可能なら観察力でその情報を明かす。



●書庫の術士
 藤原学校の書庫には膨大な数の書物が収められている。
 対妖の術を学ぶ教育機関とあって、妖に関する書物が多い。
 妖の外見や能力、習性等々。
 『彼を知り己を知れば百戦殆からず』という孫子の言葉はこの時代、既に日本に伝わっていた。
 それ故に藤原家正は妖に関する書物を集め、また実際に戦った者達に詳細な情報を聞き資料として残していた。

 普段は研究員達が出入りするその書庫に周囲の者達とは趣を異にする衣裳の青年がいた。
 室内でも目深にフードを被り容貌ははっきりとは分からない。ただ見えている口元から秀麗な面立ちなのは予測できる。その青年の名前はフォルク・リア(黄泉への導・f05375)。彼は体験入学という形で先日から藤原学校に滞在していた。

 書庫にいるのは膨大な妖関連の文献から今回の件の手掛かりを掴めないかと考えたからだ。
 妖の能力などが書き記されている文献。
 その中から人に化ける妖や病の様な呪いを使用する妖を調べたいという事でもあるし、仮に犯人である妖が学校に侵入しているとすれば、自身に関する文献を処分していることも考えられる。
 もしそうなら不自然になくなっているものから推測する事もできるだろう。

 フォルクの調べたところ、不自然になくなっている文献はなかったが、伝え聞く家正の病状から怪しい妖を推定する事に成功する。
 魂喰たまくらひ――人の傍に潜み、徐々に近しい人間の精気を啜る鬼。
 この鬼に精気を喰らわれた者の症状とよく似ている。また妖術や幻術をもって人を惑わすとも言う。
 家正の屋敷に最近入った者、かつ当主である家正に近づける者が怪しいだろう。

 此処まで情報を整理してからグリモア猟兵が触れていた平安貴族、久我雅隆に会いに行く。
 己の考えに当てはまる人物がいるかを確かめる為だ。猟兵である事を明かせば雅隆は協力的であった。
 その結果、今年に入ってから家正嫡男に東国から姫君が輿入れしていることを知る。
 一般的に輿入れ後も姫君の実家から侍女が残る。
 送り届けた武士達は帰国しているという話だから候補はこの二人だろう。
 姫君の方の名を華子、侍女の方の名を牧子というところまでは分かった。

 何処かで入れ替わったか。妖にとっても平安貴族は危険な敵のはずだ。
 にも拘らずわざわざ藤原家正の屋敷に潜り込んだのはあるいは藤原学校を潰す為か。だとすれば。

「手の込んだ事をしてくれる。それだけ此処を潰したいんだろうが。なら余計に止めなきゃならないな」

 そう胸の内で独り言ちながら雅隆に容疑者の二人を何処かで確認できないかを訪ねる。
 己の【観察力】であれば実際に目にすれば看破できる自信があった。
 しかし、答えは芳しくなかった。二人とも家正の屋敷から出る事はないということだ。
 歌会等の催しがあれば歓迎の為に出てくることも考えられるが、家正の病を考えれば近くに開催される事はないだろう。
 どう確証を掴むべきか。フォルクは考えるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『妖に魅入られて』

POW   :    一発殴って正気に戻す

SPD   :    操られる前の自分自身を思い出させる

WIZ   :    かけられた幻惑の術を解除する

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●藤原家正
 藤原家正は権勢を誇る藤原北家の重鎮である。
 平安貴族らしい平安貴族で若い頃より妖討伐に奮闘。数々の武勲を持つ。
 と言っても家正の武の才は平凡だ。
 弛まぬ鍛錬をしているが、戦士としての実力は中の上といったところか。
 その程度の実力の彼が生き残り続けているのは危機管理、事前準備等の才に秀でていたからだろう。
 
 そんな彼が『藤原学校』の設立を考えたのは自身より若い戦士達の死を数多く見たからだ。
 戦わなければ滅亡する世界だ。戦って死ぬのは仕方ない。しかし、避けられる死は厭うべきだ。
 妖と最前線で戦う平安貴族の死亡率は高い。
 故に次世代がまともな教育も受けぬまま平安貴族を継ぎ、戦い、未熟故に死ぬ。
 自分より遥かに武の才がある者達がだ。
 それを家正は憎んだ。
 家正には政治、経営の才はあった様で妖退治と並行して行っていた荘園経営は順調。
 資産も莫大なものとなる。
 家正はそれを学校設立に使った。妖との戦い方、生き残り方を身につける教育機関。
 戦士は多いほど良いという持論から平安貴族以外でも妖との戦いに役立つ才があれば受け入れる学校。
 藤原学校の創立。家正三十五歳の時の事である。

 それから二十年。藤原学校は家正の望んだ通り、数多くの優秀な戦士を輩出している。
 嫡男家顕は自分と違い武の才に恵まれていた。
 それだけに天狗になっていた部分もあったが昨年高い鼻を折られてからは初心にかえって修行に励んでいる。
 現在、正室を迎えに東国に赴いているが、帰国後は家督を譲るのも良いだろう。
 五十五歳。鍛錬は怠っていないがそろそろ体力に翳りがある。
 隠居の身になれば東国に赴き、妖退治をしながら何処かで斃れるのも良さそうだ。
 政治家、教育者として有能と言う評価を得ている家正だが、本人としては最期は戦士でいたかった。

●藤原家顕
 家正嫡男。今年で二十四歳。
 武の才に恵まれ、藤原学校でも親の七光りなしに優秀な成績で卒業している。
 妖との戦いも順調に功績を挙げており、それ故に増長した部分もあった。
 しかし、ちょっかいを出した姫君の久我雅隆と試合となり瞬殺される。
 悔しさは勿論あったがそれより武の頂きの遠さを知ったのが良かった。
 それ以来、修行を一からやり直している。
 自身を瞬殺した雅隆の事を実のところ尊敬しているが、藤原家正の嫡男を手加減なしに倒したことでいろいろあった様で隔意を持たれている様だ。いつか気兼ねなく剣の手合わせが出来れば良いが、等と思っている家顕だが雅隆に自分が敵意を向けていると思われているとは露とも知らない。
 現在は嫁を迎えに東国に赴ている。嫁は東国に大きな荘園を持つ千葉家の姫君。
 妖との激戦区である東国を支える為の家正の方針による嫁取りだが家顕に不満はなかった。

●藤原家正
 家顕が千葉華子を連れて東国から無事帰国する。
 家正は内心、眉を顰める。華子姫、綺麗な面立ちではあるがどことなく生気が感じられない。
 家顕も同様だ。「長旅の疲れです」と言う家顕にゆっくり休む様に告げる家正。

 それから数日。
 何故か言語化できない違和感を覚えた家正は陰陽頭を呼ぶ様に家人に申し付ける。
 家正が病に倒れたのはその日のことだ。なお、陰陽頭の元に家人は訪れていない。

●作戦
 猟兵達と久我雅隆の調査により、藤原家正の病の原因となる妖の候補が絞られた。
 藤原家正の嫡男、家顕に嫁いできた千葉華子。またはその侍女牧子だ。
 家顕に関しては妖術で操られていて洗脳下にある可能性が高いと結論付けられる。
 華子と牧子、一択であれば藤原屋敷に強襲を掛けて襲う事も考えられるが、二択だと少し躊躇がある。
 話し合いの末にある作戦が決まる。
 華子と牧子は屋敷から出ないのでどうしようもないが家顕は朝廷に出仕している。
 その屋敷外で洗脳を解く。
 洗脳が解けた家顕から事情を訊けば、華子か牧子、どちらが妖か絞り込めるだろう。
 また、彼の協力を得られれば障害なく妖との戦いに持ち込むことも可能なはずだ。
 猟兵達は家顕の洗脳を解く方法を考える事にする。

 ================================
 第一章の皆さんの行動により人に化けた妖の候補が二人まで絞り込まれています。
 この章では妖に操られていると思われる家顕を屋敷から出たところで捉まえて正気に戻って貰おうという話です。
 ユーベルコードを使ったりアイテムを使ったり、他にも何か思いついた方法があれば試して頂き、解除してあげて下さい。
 久我雅隆は引き続き、何か依頼すれば協力してくれます。
桐藤・紫詠
縛られし 武の意を解くは 父子草

父と子の縁よ、妖の洗脳から家顕を開放しなさい
黄泉詩を歌い、その黄泉詩の具現化によって父子草を展開
そのまま妖術に縛られた家顕を開放していきましょう

更に『琴鳴る剣』――黄泉詩の『最重要本質』を内包する琴にして野太刀を琴として演奏し、家顕の洗脳解除……家顕の『最重要本質』に働きかけていきましょう

どれだけ妖術で惑わし縛ろうとも……人が胸に宿す『最重要本質』を砕く事は不可能
さぁ、己の『最重要本質』を――『剣』を思い出して妖術から解放されなさい、藤原家の嫡男よ



●家顕解放 紫詠の場合
 平安歌人。
 この存在は既に滅んだ世界であるアヤカシエンパイアで人々が生存している要因の一つである。
 和歌により実体ある幻想を齎し『平安結界』を維持するのだ。
 そしてこの具現化する幻想は和歌を詠む者の技量次第で応用が利き精度が増す。
 桐藤・紫詠。皇族の姫君であり陰陽師でもある彼女は同時に和歌の名手でもある。
 妖の洗脳を受けているという藤原家顕。この解呪を彼女は和歌の力を以て為そうと考えていた。

 藤原家顕が朝廷に出仕する通り道。予め把握しておいた道筋で紫詠は家顕を呼び止める。
 紫詠は黄金の瞳に漆黒の髪を持つ美女である。
 だが、現状の家顕はそれだけならば興味なく足も止めなかっただろう。
 しかし紫詠は皇族。自ずと醸し出される「格」、雰囲気がある。
 生粋の平安貴族である家顕はそれ故に足を止めた。

「何か用かなお嬢さん?」

「縛られし 武の意を解くは 父子草」

 尋ねる家顕に紫詠は答えず、代わりに朗々と歌を詠む。
 すると歌に呼応する様に内容が具現化して家顕の周囲に父子草が彼を包む様に出現する。
 詠んだ和歌を具現化するのは平安歌人の一般的な業であるが、今回用いたのは【平安詩浄土変・黄泉詩の基礎ヨミウタノキソ】。ユーベルコードの域まで高められた和歌、黄泉詩である。
 影響力は一般的な和歌に勝る。

「これは――」

 突然、周囲に現われた父子草の光景に何故か目の離せなくなる家顕。
 父と子の縁により妖の洗脳を解かんとする紫詠の想いが込められた風景だ。
 その効果を確実に受けている様子である。
 あと一手。
 そう考えた紫詠は所持する『琴鳴る剣』―琴の形をした野太刀―を奏で始める。
 この剣は黄泉詩の『最重要本質』を内包してその能力を発揮する。
 演奏によって家顕の『最重要本質』に働きかけて洗脳解除の一助にしようと言うのだ。

「どれだけ妖術で惑わし縛ろうとも……人が胸に宿す『最重要本質』を砕く事は不可能。
 さぁ、己の『最重要本質』を――『剣』を思い出して妖術から解放されなさい、藤原家の嫡男よ」

 演奏が終わり立ち尽くす家顕の表情は憑き物が落ちた様な晴れやかなものであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神城・星羅
貴族の後継ぎの方にとって正室の方とその侍女はは重要かと思います。だからこそその身分を利用する妖がいるのですよね。私も正室の子ですし、近侍の方にもお世話になったのですよね。

犯人が正室の華子様でも侍女の牧子様どちらでも利用された家家様がお気の毒ですので、屋敷から出てきた家顕様に失礼して癒しの響を指揮棒から癒しの響を失礼にならない近さで当てて解呪を心見て見ます。

覚えたての術ですので解呪が成功するのは運次第なところはありますね。

洗脳が解けましたら事情を説明します。混乱しているでしょうし、外見だから丁寧に。

事が成しませんでしたら後続の皆さんにお任せします。後を託すのもいいと新しい家族から聞きましたし。



●家顕解呪 星羅の場合
 人に化けた妖の候補は藤原家顕正室の華子かその侍女である牧子。
 その結論を受けて神城・星羅は成程、と納得したものだ。
 貴族にとって正室とその正室を支える侍女は家を保つに当たって重要な存在だ。貴族の当主に直接化けられるならそれに越したことはないが、それが出来ない場合、確かに正室やその侍女は狙い目にはなるだろう。

 星羅自身、正室の子である。侍女にもお世話になった。その在りし日を思い浮かべて家顕を気の毒に思う。
 安らぐべき家庭に妖が紛れ込んでいるのは不幸としか言いようがないだろう。
 しかも、その妖に洗脳までされているとのこと。何とか助けてあげたいと思う。星羅は優しい少女なのだ。

 朝廷に出仕する家顕の後をつける星羅。
 適度な距離で『音律の指揮棒』を振るい【癒しの響イヤシノヒビキ】を発動する。
 これは微弱な風を飛ばして命中した味方一人に肉体強化、負傷回復、意識回復効果を与えるもの。
 今回期待されるのはその内の意識回復だ。
 指揮棒には陰陽師の力を増幅する効果があり、権能が増幅された癒しの微風が家顕に命中する。

「――ッ!」

 家顕も優秀な戦士なのだろう。微風が当たるという何でもない自然現象。
 それに何者かの意思を感じ取って刀の鯉口を切りながら振り返る。
 そこに居たのはまだ幼い少女だ。

「お嬢ちゃん……ん? これは……」

 星羅に誰何の声を掛けようとした家顕が言葉を詰まらせる。
 【癒しの響】の効果が出てきたのだ。

「どういうことだ……華子、父上……」

 混乱した様子の家顕。それを見て星羅は妖の洗脳が解けたと判断する。

「家顕様、大丈夫ですか?」
「ああ、うん、いや何故、私の名を。君は?」
「私は神城星羅、実は――」

 妖の呪縛から解放された家顕に星羅は丁寧に事情を説明し始めるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

花乃宮・百合姫
華子様と牧子様、どちらがアヤカシであるかは謎。
ならば家顕どのに話を聞くことが重要となる。

しかしどうすればいいだろう…
百合姫様のような浄化の術を使うことは出来ない…
ひとまず家顕どのを無理矢理抑えて様子を見るしかなさそう。
雅隆様にも洗脳を解く呪文をやってもらうしかないか…

式神に押さえてもらったうえで、とりあえず軽く頭を叩いて見よう…

上手く言ったら詳しいことを聞いておかないと。
どちらかがおかしくなっていないかということを


ハル・エーヴィヒカイト
アドリブ連携○
▼心情
多少手荒な真似になっても仕方あるまい
家顕の洗脳を解く事を優先しよう

▼作戦
屋敷から出たところで接触
[心眼]で彼に掛けられた術の源たる妖気を[見切り]、[破魔]の力を加えたUCを放つ
相手の戦う力や意志だけを断ち斬るこの技だが今回は見切った患部の[部位破壊]だけを試みる
失敗しても被害はないが戦う意思や武器まで破壊してしまうとこの後の協力に支障が出てしまうかもしれないからね
洗脳を解除したら事情を説明した上で華子と牧子それぞれの怪しい点について確認を取ろう

「ところで雅隆が君に嫌われていることを気にしていたぞ?」
と最後に余計な世話を焼いておこう
ずっと根に持つタイプには見えなかったからね



●作戦会議 百合姫&ハル&雅隆
 藤原家正の病の原因である妖。人に化けて潜むその妖の候補を家正の嫡男家顕の妻、華子姫とその侍女牧子まで絞り込んだ猟兵達だが問題は次の一手だ。
 家顕は妖の洗脳下にあると思われるのでそれを解き、彼から話を訊く事が出来れば特定できると考えられるが。

「しかしどうすればいいだろう……」

 花乃宮・百合姫は悩んだ。百合姫カキツバタには本物の百合姫の様な浄化の術を使う事は出来ない。
 彼女が生きてこの地に居れば、解呪を試みて貰う事も出来ただろうが、自分には「取りあえず殴って様子を見る」と言う力技しか思いつかない。

「雅隆様は洗脳を解く呪文などを使えますでございましょうか?」
「そうだね、邪心だけを斬る、精神だけを斬る、そういう技はある」

 だけどそれで洗脳状態を解除できるかは分からないと雅隆。
 ちなみ百合姫の怪しい丁寧語はスルーである。ここ数日で百合姫の個性として受け入れている。

「ハルさんはどうですか?」
「俺も雅隆と同じ様なものだ。戦う力や意思だけを断ち斬る技はある」

 雅隆に訊かれたハル・エーヴィヒカイトが答える。現在、百合姫、ハル、雅隆の三人で策を練っていた。
 ハルが言うにはその技の精度を上げ、妖に洗脳された意思だけを斬る事が出来れば解き放たれるかもといったところだ。三人共にこれならば確実に成功する、という手段を持ち合わせていない。
 となれば……。

「ひとまず家顕どのを無理矢理抑えて様子を見るしかなさそうですね」
「ああ、多少手荒な真似になっても仕方あるまい。家顕の洗脳を解く事を優先しよう」
「あはは……」

 とりあえず力技で解除を試みるという意見の一致を見た百合姫とハル。
 雅隆は困った様な笑みを浮かべているが協力する気ではいる様だ。

●解呪
 藤原家正屋敷を出て朝廷に出仕する家顕。その後を百合姫とハルが尾行する。
 家顕の進路は決まっている。
 人通りの少ない場所に面識のある雅隆が待ち受け、声を掛けたところで、という作戦だ。
 家顕に敵視されていると思っている雅隆ではあるが同じ平安貴族である。
 いきなり喧嘩になる事はないだろうという判断だ。

「家顕殿」
「――雅隆か?」

 やや緊張した雅隆が声を掛けると、その声の主を確認した家顕は意外そうな顔をするものの「久しぶりだな」と普通の挨拶をする。「ええ、お久し振りです。少しお話があって――」等と言って更に人気のない場所に誘導する雅隆。家顕は素直についてくる。そこで。

「お覚悟!」
「――何!?」
「失礼」

 潜んでいた百合姫の式神達が一斉に襲い掛かる。咄嗟に刀を抜く家顕だが、その刀を雅隆がするりと奪う。
 その次の瞬間、家顕は式神達に抑え込まれてしまった。

「雅隆、どういうことだ!?」
「すいません。少しだけ我慢してください」
「とりあえず軽く頭を叩いて見ようか……」
「いや、まず俺が試そう」

 無造作に頭を叩こうとする百合姫を止めるハル。
 普通に殴るよりは意思に直接作用する己の技の方が成功確率は高いだろう。
 しばし精神集中をしたハルは家顕を見据える。
 視るべきは表層的なものではなく彼に掛けられた術の根源、妖気の残滓。

「――白翼千華」

 破邪の力を秘めた白刃がハルから放たれ家顕に命中する。苦悶の声を上げて気を失う家顕。
 式神達が手を放し、雅隆が確認したところ家顕には傷一つない。
 安堵しつつも問題は洗脳が解かれたかである。

「成功でございますか?」
「手応えはあったね」
「邪気の様なものが消失した感じはありましたね」

 百合姫が首尾を尋ねればハルは手応えありという。雅隆もその意見に賛成の様だ。
 その後、目を覚ました家顕は果たして洗脳から解放されていた。
 混乱する家顕に事情を説明して協力を要請する百合姫、ハル、雅隆であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

八秦・頼典
●SPD

恩師の家正殿との面会は叶わなかったが、嫡男の家顕殿が丁重に持て成してくれたお陰でだいぶ絞り込めたね
家顕殿が妖に取って代わられたかとも考えられるが…残念ながらその確証は得られていない
家顕殿が妖でなければ、残る容疑者は嫁いできた華子様とその侍女牧子

しかし、屋敷の前で一悶着を起こせば彼女らに気づかれてしまう
ここは家正殿の屋敷から出廷される道を本日の方違えから逆算して待ち伏せるのが上策かな?

方違えの為に朝早くから出廷された家顕殿の牛車通り道にボクの牛車を置いて通行の邪魔をしようか
で、出てきたところを【憑物祓い】でパシーンとね?
久我殿に習ったばかりの鹿島の太刀を試す良い機会だし、事情聴取と行こう



●家顕解呪 頼典の場合
 藤原家正の病の原因の人に化けた妖。
 その正体について陰陽師探偵『ライデン』の異名を持つ八秦・頼典は推理する。
 藤原屋敷を訪れ、家正との面会を願ったがそれは叶わなかった。
 だが家正の嫡男、家顕と相対した事で分かった事がある。
 家顕から感じた微かな妖気。
 家顕が妖に取って代わられた可能性はあるが頼典の勘では白だ。
 だが妖の影響下にはある。
 家顕は年上だが藤原学校の卒業生としてその能力はある程度知っている。
 易々と操られる人物ではない。
 となれば彼が心を許す人物こそ怪しい。
 ならば容疑者として残るのは嫁いできた華子様とその侍女牧子だろう。

「さて、どうするか――」

 華子と牧子、どちらが妖か確証を得たいと考えた時に家顕の事が頭に浮かぶ。
 屋敷から外に出ない女二人と違い、家顕は朝廷に出仕している。
 勿論、毎日と言う訳ではないが頼典の立場であれば家顕が出仕する日を把握する事は可能だ。
 その日の『方違え』を考慮して家正の屋敷からの進路を割り出してその途上で待ち伏せするのが上策か。
 あまり屋敷の近くで騒動を起こせば屋敷内にいるであろう妖に気取られる可能性がある。
 ある程度離れた場所で仕掛けるのが望ましいだろう。

 そして、その日。
 朝廷に向かう家顕の乗った牛車の道を塞ぐ様に頼典の牛車が置かれていた。
 戸惑う藤原家の従者達。
 急速に出世している八秦頼典の名は彼等も知っており、藤原家と言えど権高に退かす訳にはいかない。
 その状況に家顕が牛車から姿を現わす。

「一体どうした? ――ッ!?」

 牛車から出た瞬間、何者かが迫る気配を感じる家顕。咄嗟に迎撃態勢を取るが襲撃者、頼典は久我雅隆との手合わせで習得したばかりの『鹿島の太刀』の体捌きで疾風の如く掻い潜る。
 パシーンと響く、小気味いい音。
 『檜扇』に『無明の霊気』を籠めた一撃。【憑物祓いツキモノバライ】の発動である。
 悪しき魂のみに打撃を与えるこの一撃は家顕の魂を縛った妖気を砕く。

「やあ、家顕殿。気分はどうだい?」

 妖の呪縛から解き放たれた家顕を相手に事情聴取を始める頼典であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

寿乃葉・アタラ
私は東国を活動範囲にしているけど、前線地域を転々としているから…
残念ながら荘園持ちの千葉家の情報は噂程度だと思う
けれど家正校長のご子息で、久我殿同様武名を持つなら、家顕殿の話は聞いたかもしれない
そう易々と操られる方ではない気がするけれど…まずは気を取り戻してもらわないと

方針:過去話から本人の意識を刺激する

頃合いを見て、久我殿に手引きを頼んで紹介してもらう
私とは藤原学校の卒業生同士ではあるし…まさかたった一年の在校期間に顔を合わせてはいない、と思う、たぶん
でも名前だけで久我殿ちょっと引いた気がしたし、その辺りから話を繋げていこう
…黒歴史だけど

学校での思い出、東国の感想、ご内儀の話…
久我殿とどこか剣呑な雰囲気になりそうだったら、間に入って【指定UC】の坂東武者と綴った護符を二人に手渡す

吹き込んだ言霊は「思い出せ」
付与する技能は【エピソード記憶】
僅かでも術を浄化し、更に本人の強い意志が戻れば、妖術を破る一助になる筈

二人は共に有能な武者
互いのわだかまりが解消できれば、平安の地の大いなる力になる!



●家顕解呪 アタラの場合
 藤原家に嫁いできた千葉家の姫君とその侍女。この二人のどちらかが妖が化けていると考えられている。
 藤原家顕の正室となったこの東国の姫君、千葉華子に関して寿乃葉・アタラは記憶を探る。
 アタラの主戦場は東国であるが、皇族である彼女は一定の地を拠点とせずに前線地域を転々としている。
 その転々とした地の中に千葉家の荘園はあったか……。
 しばし、考えて噂で聞いた程度と結論を出す。
 千葉氏と言えば平氏の系譜で上総国、下総国辺りに勢力を築いていたな、という程度だ。
 当然、姫君の名前など聞いた事はない。

 翻って藤原家顕の事を考える。家正の嫡男。アタラ同様に藤原学校の卒業生でもある。
 言わば同窓生である。
 年齢も近いが、アタラの記憶の限りでは彼女の一年と言う短い在学中に交流した事はない。
 アタラが主に式神の術、陰陽師の分野を学んでいたのに対して家顕は聞く限り武術系を主に修めていたようなので在学期間が被っていたとしても面識がなくても不思議ではない。
 とは言え、向こうはこちらの名前を知っているかもしれないな、との思いが浮かぶ。
 何せ卒業生でもない短期の臨時講師である久我殿久我雅隆が自身のエピソードを知っていたのだ……。

 久我殿ちょっと引いてた気がするな、と己の黒歴史を思い出しアタラは無表情の中で恥じらう。
 まあ家顕殿と接触した際に話のタネにはなるだろう……。
 
 そうアタラは家顕との接触を考えていた。
 妖の術中にあると思われる家顕の洗脳状態を解き、話が聞ければ華子と侍女牧子のどちらが妖かはっきりとするだろう。また彼の協力が得られれば、その後の妖討伐も円滑に進める事が出来るはずだ。
 家顕の主戦場が畿内である為に具体的な功績は知らないが優秀な戦士であるとは聞いている。
 何か切っ掛けがあれば妖の術を破れるだけの意志の力はあると考えられる。
 アタラはその切っ掛けを与えるつもりであった。
 協力を約束してくれている久我雅隆に家顕と対面できるように手引きしてくれるように依頼する。

「アタラ様と家顕殿をですか? ……分かりました。やってみます」

 雅隆は少し考えてから了承する。
 彼自身としては家顕は苦手な相手ではあるが、話は妖が関わっているのだ。
 そんな事を言っている場合ではないという事だろう。
 とは言えのんびりと事前の面会約束等の手順を踏んでいれば家中の妖にバレる可能性がある。
 アタラと雅隆は出仕途上の家顕を捉まえる事にした。

 出仕中に雅隆に呼び止められた家顕は怪訝な顔をしつつも対応する。
 その対応は妖術に操られているという感じではないが、雅隆の感覚は家顕に妖気の残滓を感じていた。
 アタラが家顕に話がしたいと言っていることを伝える。

「アタラ様? 皇族の姫君が私に何の話が――」
「アタラ様も藤原学校の卒業生。同門として最近、東国に出向いた家顕殿にお話を聞きたいそうです」

 家顕は華子姫を迎えに東国に出向いている。
 その時の話をアタラが聞きたがっているという雅隆に家顕は訝し気な顔をしつつも了承する。
 そして――。

 場所を移してアタラ、家顕、雅隆で歓談が始まる。
 といっても雅隆は近侍よろしくアタラの傍に控えている感じだ。
 学校での思い出、東国の感想、ご内儀の話、アタラの問いかけに家顕は答える。
 家顕からしたら何故、アタラが面識のない自分に話しかけてきているか分からないが、皇族の姫君だ。
 失礼のないようにと言う対応である。
 だが、それも一歩踏み込んだ話をするまで。華子と牧子のどちらが妖かを探る話になると一変する。
 警戒心を剝き出しにしたというか不快そうなと言うか家顕本人もよく分からない感情のうねりの様だ。

「家顕殿。こちらをどうぞと姫様が仰っています」
「ああ――これは? うっ」

 家顕に護符を渡す式神。ちなみにこれまでの会話、普段通りアタラの言葉は式神によって伝えられている。
 ごく自然に対応していたのは家顕も流石の上級貴族の一員といったところか。
 ともあれ、護符を受け取った家顕は清浄な空気が流れる様な感覚を受ける。
 渡された護符はアタラのユーベルコード【言祝ぎのお守りキミニコエガ・トドクヨウ】で作成されたもの。
 アタラの言霊が吹き込まれた浄化の力を持ち、技能をも付与する特別製だ。吹き込まれた言霊は「思い出せ」。
 護符の力が家顕の心を揺さぶる。
 そこでアタラが自らの声で問いかける「華子殿と牧子殿、その出会いを思い出すのです」と。
 護符により黒い靄の様なものを自身の心に感じていた家顕、アタラの声でそれを振り払う事に成功する。

「……これは。まさか」

 雰囲気の変わった家顕にこれは成功かと、アタラ、雅隆は混乱する家顕に問いかける。
 家顕の術は見事に解けていた。その後、家顕の話を聞いて妖が誰が化けているかが確定する。

 妖は華子姫の侍女牧子。

 状況を把握した家顕はアタラ、雅隆と共に妖討伐の為に藤原屋敷へと向かう。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『魂喰の蓮華姫』

POW   :    真なる魂喰の衝動
自身の【魂喰の本質と共に暴食衝動 】を解放し、物質透過能力と3回攻撃を得る。ただし毎秒加速する【他者の魂や生命力への渇望】を満たし続けないと餓死。
SPD   :    八千矛ヤチホコ之舞台
【己の鋭い牙や爪 】が命中した敵から剥ぎ取った部位を喰らう事で、敵の弱点に対応した形状の【装束を身に纏い武器を手にした凶戦姫】に変身する。
WIZ   :    奴延鳥ぬえ乃翠爪
かつて喰らった「【雷獣・鵺 】」の魂を纏い、2倍ダメージ・2回攻撃・自動反撃を有した【伸縮自在の翡翠の鬼爪】を装備する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●魂喰の蓮華姫
 その鬼は名を蓮華姫と言う。妖術、幻術を得意として人や獣の精気や魂を喰らい糧とした。
 かつては大和国に拠点を持つ鬼軍団の首領の愛人であったが、これは藤原家正率いる軍に攻め滅ぼされている。
 辛うじて難を逃れた蓮華姫は人中に身を隠した。
 人の中に潜み、密かに人の命を啜りながら人間社会を勉強する。
 その過程で自分を苦難に陥れた元凶が藤原家正であること。彼の築いた藤原学校のこと等を知る。
 復讐を考えるが守りは堅くその隙は無かった。
 だが、最近、藤原家顕が東国千葉家に嫁取りに行くことを知る。
 そこに機会を見い出した蓮華姫。
 先行して東国に赴き様子を探る。
 流石に坂東武者の千葉家の姫君、華子姫に直接成り代わる事は出来なかったがその侍女牧子を喰らい、成り変わる事に成功。華子姫、それから周囲を妖術に捕らえる。
 その後訪れた家顕を三日夜餅の儀等一連の儀式が終わった心の隙を突き幻惑。
 平安京に帰る家顕一行と共に藤原家正屋敷に入り込んだ。
 首尾よく家正を病に倒す事に成功した後、すぐに殺す事は出来たが家正が心血を注いだ藤原学校の崩壊を見せてからと考えた。家顕にそれをさせようとするが妖術に囚われながらも即座の廃校を認めようとせず、じわじわと家顕への支配力を強めているのが現在の話であった。

●魂喰討伐
「牧子――妖は屋敷の東対に居る」

 正気に戻った藤原家顕の証言により人に化けた妖は華子姫の侍女牧子と特定される。
 早速討伐の方法を考える猟兵達。
 と言っても場所さえ特定できれば後は強襲するだけだ。
 問題は藤原屋敷の人々が巻き込まれないかだが。
 病に伏せる家正は妖がいる家屋とは離れた場所なので問題はない。
 だが、牧子は普段、華子姫と同じ部屋にいることが多いとのことで、華子姫に害が及ばないようにする必要がある。

「華子は私が護る」

 家顕はそう言っているので彼に任せても問題ないかもしれない。
 久我雅隆は念の為、家正の護衛に赴くつもりとのこと。
 ただし、この配置は猟兵の要請によっては覆る。彼等は今回の件では猟兵に指揮権を預けている。

 藤原家正の屋敷に巣食う鬼退治が始まる。

 ================================
 第二章までの皆さんの行動により妖の正体が判明しました。
 敵は華子姫の侍女牧子を喰らって成り代わった鬼姫。蓮華姫となります。
 彼女は気付かれたことに気付いていません。
 家顕の情報通りに屋敷の東対に華子姫と共に居ます。
 皆さんはそこに強襲を掛ける事になります。
 一緒にいる華子姫は家顕が護ると言っているので彼に任せても良いかもしれません。
 また離れた場所にいる家正は久我雅隆が守りに行く予定です。
 これ等の配置は猟兵の意見によって変えても構いません。
桐藤・紫詠
奇襲を仕掛けられるというのは良いですね
殲血の大祓矢で余の血液を結晶化させ生成された血の矢を構え、そのまま『謡の護符』で詩を読みとある属性の式神を呼び出す
――未来属性、ホワイトディアブロ
白き魔の 番える早矢よ 御灯なり
――未来属性召喚完了……『既に妖の未来そのものに血の矢は着弾している』――

時間軸を超えて既に着弾していた血の矢からUC発動
妖の全知覚が『無限に時間を輪廻する『世界と生命の回帰』』で埋め尽くされていく
――其れは世界の全てと全ての生命が帰滅と想像を繰り返す情景
妖の盟主や将ならともあれ、一介の妖に耐えられる情景ではありません
そうして妖の精神を廃させていく――



●魂喰退治 紫詠の場合
 藤原家正の屋敷に潜り込んだ妖。華子姫の侍女に化けた魂喰の蓮華姫。
 その正体さえ絞り込めれば退治する事はそこまで難しいことではない。
 そう桐藤・紫詠は判断する。
 家顕を正気に戻して味方につけられた事が大きい。何しろ妖が棲むのは彼の家なのだ。

「奇襲を仕掛けられるというのは良いですね」

 作戦の打ち合わせの後、紫詠はそう言って微笑んだものだった。
 そうして紫詠と妖、蓮華姫は対峙する。

 【奴延鳥乃翠爪】

 最強の妖とも呼ばれる雷獣『鵺』の魂を纏った鬼姫に対して自らの血を結晶化させて生成した矢を構える紫詠。
 皇族である紫詠の血で作成された矢は『大祓』の概念を宿す。
 蓮華姫の鵺の力を宿した翡翠の鬼爪が紫詠の身を切り裂くのが早いか、紫詠の大祓の血矢が妖を貫くのが早いか。
 緊迫した空気の中、紫詠が口を開く。

「白き魔の 番える早矢よ 御灯なり」

 朗々と紡がれた黄泉詩。その詩に感応して紫詠の懐の『謡の護符』が輝く。
 それは歌詞になぞらえた召喚獣を招来する権能を有する護符だ。
 呼び出された存在は未来属性、ホワイトディアブロ。既に妖の未来そのものに血の矢は着弾している。
 紫詠はそういう未来を確定させるつもりであり、蓮華姫にはそれに対する備えはなかった。

「――!?」

 気がつけば血の矢が自らを貫いている事に驚愕する蓮華姫。いつの間に、だ。
 とは言え大祓の概念を宿しているとはいえそれで蓮華姫を祓うには至らない。
 だが、本番は此処からであった。蓮華姫に確かに接触した紫詠の『血』。
 それを起点に【平安詩浄土変・真理とは鈍色なるかなシンリトハニビイロナルカナ】が発動する。
 これは血に触れた対象にそれが除去されるまで無限に時間を輪廻する『世界と生命の回帰』を体感させる。
 それを受けた蓮華姫は精神世界で無限の輪廻を体感し――外から見れば無防備な姿を晒す事となる。
 勝負ありであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神城・星羅
愛しの君の朔兎様(f43270)と参加

ここまで覚悟が決まってるなら私は何もいいません。他の方の意見次第な所もありますが、駆けつけてくださった朔兎様も同じ意見のようなので。

配置が変わらないようなら、せめて護りの狼と導きの狼を家顕様と華子様の傍に残しますね。

近づくには姿を知られない事が重要なので守護の神楽衣装をまといます。知られる可能性はありますが守護の力がありますし迎撃もできるので。

朔兎様に前の対応をお任せし、遠距離の攻撃の対応に。性能はすごいですが耐え切れば良いだけですので。【残像】【幻影使い】【回復力】で凌ぎながら【誘導弾】【音響弾】を連発。

確かに一人では厳しいですが、朔兎様がいますので。


源・朔兎
愛しの君の星羅(f42858)と参加

星羅と合流して事態は把握した。幸せな家庭に入り込んで最悪な終焉を迎えさせようとしてるんだな?

とりあえず他の方の意見次第だが俺と星羅からは口出しはしない。俺は妖退治に集中するぜ。

まず【迷彩】駆使して相手に接近。俺の見た目の弱点と言えば遠距離攻撃かな。武器が接近向きだからな。普通に部位食われるのは遠慮したいので【残像】【幻影使い】【心眼】駆使して攻撃を回避!!

まあ、正直攻撃一度見れば【カウンター】で月白の短剣投げれるしな。遠距離攻撃されても【ダッシュ】すれば近づける。双月の秘技叩き込む。

世界はお前一人の欲望でどうにかできるものじゃない。人の心の力侮るなよ!!



●魂喰討伐 星羅&朔兎の場合
 華子姫の侍女牧子。彼女が残念ながら妖らしい。
 妖術による洗脳状態を神城・星羅によって解き放たれた藤原家顕からの情報を基に妖退治の方法を考える。
 星羅にとって嬉しい事に源・朔兎(既望の彩光・f43270)が合流している。
 朔兎は星羅にとって初恋の君であり、朔兎もまた星羅との初対面時に運命を感じたという相思相愛の仲だ。
 将来を誓い合った二人である。
 星羅を心配して合流した朔兎だが事態を把握して憤る。

「幸せな家庭に入り込んで最悪な終焉を迎えさせようとしてるんだな?」

 それは許せないと朔兎。彼は武術を好み高い戦闘力を持つ。頼もしい戦力だ。
 その後の打ち合わせで家顕は妖との対峙した際は近くにいるであろう華子姫の護りに注力すること。
 妖討伐の主体は猟兵達が受け持つ事が決められて一同は藤原家正の屋敷に向かう。

 家正が病に倒れている現在、屋敷の主は家顕である。
 家顕は堂々と屋敷の門を潜る。星羅と朔兎は共に屋敷内に入った後、予めの打ち合わせ通り姿を隠す。
 妖に可能な限り悟られないのが肝要だ。

「華子はいるか」
「家顕様、どうかされましたか?」

 家顕は今日は朝廷に出仕している筈である。帰宅には早いと思いつつ華子が向かえる。
 傍には牧子の姿もある。
 牧子を睨みつつ素早く華子と牧子の間に入り込む家顕。何時でも抜き放てる様に刀を構える。

「家顕様?何を?」
「華子は下がっていろ」
「――そなた、正気に戻っておるな」
「牧子?」

 怖ろしい様子の家顕、それに対する牧子の様子もおかしい。華子は戸惑う。
 洗脳の妖術を使う妖だが、警戒している手練れの平安貴族に効果を発揮させるのは至難だ。
 殺すしかない。即座に判断して牧子のを剥がして正体を現す。
 鋭い牙と角を持った雷を纏った女の鬼。蓮華姫の出現である。

「仕方あるまい。そなた等を殺し、家正を殺し、姿を隠すとするかのう」

 藤原学校が滅びた姿を家正に見せつけてから殺すつもりだったが此処に至って未練は身を亡ぼすと即座に切り替える。この見切りの早さが蓮華姫が今日まで生き延びてきた理由であったが。

「そうはいかないぜ!」
「させません」

 朔兎と星羅が蓮華姫の不意を突く形で乱入する。
 この二人、息を潜め気配を殺して、この瞬間を待っていたのだ。
 朔兎の双剣が蓮華姫を襲う。

「――伏兵かえ!」

 月読の技。三貴子の一柱の名を冠する超絶的な技巧で攻める朔兎。これに蓮華姫は鋭い爪で応戦する。
 朔兎の後方からは星羅が彼と息を合わせて巧みに弓を弾いて音波による遠距離攻撃をする。
 二人による怒涛の攻めに蓮華姫は後退を余儀なくされた。
 最初の目的、家顕と華子から蓮華姫を引き離すという意図は達成されたといって良い。
 さらに攻め立てる朔兎をひとまず見送り星羅は家顕と華子に駆け寄る。
 二人は無事の様だ。
 混乱状態の華子を落ち着かせようとする家顕に護りの狼と導きの八咫烏を護衛として残し、朔兎の後を追う。

「何者じゃ! そうかそなた等が家顕の妖術を解きおったな!」
「世界はお前一人の欲望でどうにかできるものじゃない。人の心の力侮るなよ!!」

 怒りを露わにして攻勢を強める蓮華姫の一撃。
 【八千矛之舞台】を発動させた凶悪なその一撃に朔兎は【双月の秘技ソウヅキノヒギ】による神業でカウンターを合わせる。蓮華姫の絶叫が響き渡る。

「おのれ! おのれぇ!!」

 深手を負い、まさに鬼の形相となり【 奴延鳥乃翠爪】を発動。最強の妖と謳われる雷獣・鵺の魂を纏う蓮華姫。
 戦闘力を膨大化させて朔兎を襲う。
 伸縮自在、雷速の鬼爪に流石の朔兎も傷を負い、劣勢になるかと思われたが。

「朔兎様は私が護ります」

 そこに星羅が合流。
 【守護の神楽衣装シュゴノカグライショウ】の権能によって戦場を舞う鳥の羽が朔兎の傷を癒す。

「星羅、助かる!」

 蓮華姫の攻撃、変幻自在の雷速と言えど朔兎も武を極める者である。
 幾度か傷を負うもののその度に星羅に癒される事により戦線を維持、徐々に蓮華姫の動きを見極める。

「おのれぇぇ!!!」
「終わりだ!!!」

 雷速の鬼爪を掻い潜った朔兎の渾身のカウンターが蓮華姫に炸裂する。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

八秦・頼典
●POW

まさに『将を射んと欲すれば先ず馬を射よ』か
成り変わられた侍女の牧子は不幸であったが、妖にとっては不倶戴天の敵であらされる家正殿に更なる絶望を与えようと調子に乗ったのが幸いか
正気にお戻られた家顕殿が華子姫を、病に伏せる家正殿は雅隆殿が警護するならボクは思う存分と鬼姫のお相手に専念できるけど…念を押しておこうか

まずは魁として疾走る阿近あこん吽近うこんの強襲で華子姫と離させそう
累が及ばない藤原屋敷の隅へと追い立てさせれば、今度はボクがお相手だよ
魂喰の衝動を非物質なる霊力の『霊剣鳴神』にて牽制
さて、ここでも『鹿島の太刀』の御業をお借りしよう
武御雷神の奥義、冥土の土産に篤と御覧あれ



●魂喰征伐 頼典の場合
 将を射んと欲すれば先ず馬を射よ。
 そんな言葉が自然に八秦・頼典の脳裏に浮かぶ。
 藤原家正を仇と狙う今回の妖。家正を直接狙うという困難を避け、周辺から忍び寄る事を選択した様だ。
 そしてそれは成功している。
 兵法に通じているとも思えないが悪知恵の回る敵ではあるだろう。
 とは言え詰めが甘いとも言える。
 現在の妖の姿、華子姫の侍女牧子。本物は間違いなくこの世の者ではないだろう。
 また、今日まで幾人かは命を落としていることも間違いない。
 だが彼女等犠牲者は不幸であったが、妖にとっての最大の目的、家正はまだ生きている。
 どうも藤原学校を滅ぼす事で家正を絶望させてから殺すつもりであったようだが……。
 その野望は叩き潰す。そう頼典は決意する。

「それでは家顕殿が華子姫を、雅隆殿が家正殿の警護に当たるという事でよろしいか?」

 頼典の確認に家顕と雅隆、二人の平安貴族が頷く。
 雅隆の実力は手合わせしたので知っている。猟兵の上澄みと比べても遜色ないだろう。
 故に心配はいらない。対して家顕は不安が残る。
 一般の平安貴族としては上澄みではあるだろうが妖の傍にいるであろう華子姫を護りきれるか。
 自分の目の前で万が一にも犠牲者を出すつもりはない。頼典は念を押す事にする。

 藤原家正屋敷。案の定、華子姫と牧子は同じ部屋にいた。
 無言で部屋に踏み込む家顕。華子と牧子の間に位置取る。
 驚く華子と素早く事態を察知する妖。
 妖の判断は早い。即座にその正体、『魂喰の蓮華姫』の姿に変じると家顕に襲い掛かろうとする。
 それを迎え撃つ家顕。その横合いから高速で二つの塊が蓮華姫に襲い掛かる。

「――なんじゃ!?」

 咄嗟に迎撃する蓮華姫。二つの塊は『阿近』と『吽近』と呼ばれる霊獣である。
 高い戦闘力を持つ頼典の式神であった。
 霊獣二体の強襲への対処により家顕、華子との距離を離される蓮華姫。
 これは二人の安全を確保する為の頼典の策である。
 そして、霊獣達に追い立てられた先に待つのは勿論、彼等の主、頼典だ。

「此処からはボクがお相手だよ」
「そなたの仕業か」

 静かな輝きを放つ霊剣を携えて待ち受けていた頼典を睨みつける蓮華姫。
 頼典の力量が並々ならぬと見て【真なる魂喰の衝動】を解放させる。
 物質透過能力と圧倒的な攻撃速度を齎す衝動だ。
 ただし代償として他者の魂や生命力への渇望、激しい飢餓感に襲われる。

「喰らうてくれる!」

 超高速で迫る蓮華姫。その攻めを霊剣で受ける頼典。
 頼典の振るう霊剣は『霊剣鳴神レイケンナルカミ』。伸縮自在の霊気の剣である。
 尋常の剣であれば蓮華姫の物質透過の力により擦り抜けられ鬼の爪が身を裂いていたかもしれない。
 しかし、非物質である霊気の剣は透過を許さない。
 結果として爪と剣による打ち合いになる。激しい打ち合いとなるがどちらが優勢かは直ぐに顕在化する。
 化け物そのものの身体能力に任せた超高速で攻める蓮華姫だがそこに技はない。
 対して頼典には技がある。
 元々、高い技量を持っていたが、先日『鹿島の太刀』の極意に触れた事により更に冴え渡っている。

「武御雷神の奥義、冥土の土産に篤と御覧あれ」

 言い放つと同時に放たれる雷光の一撃が蓮華姫を真っ二つに切り裂く。

大成功 🔵​🔵​🔵​

寿乃葉・アタラ
華子姫が犯人でなくてひと安心だけれど、敵が侍女に扮しているのはやはり厄介
千葉家の方々も影響を受けているでしょうし…
ここはお味方の力を信じ、道を拓きましょう

方針:獲物を装い華子姫の確保と味方の支援

家顕殿に同道し、華子姫に引き合わせてもらう
理由としては…東国からきた姫に、気疲れがないかと陣中見舞いに来た、とか
改めて自覚したけれど、皇族相手に無下にはできないでしょうし、妖としても手籠めにする機会と私を狙ってくるんじゃないかと

心付けの品として扇子と人形に扮した〔護法童女〕を贈りつつ様子を窺い、【礼儀作法】に反するような言動や、私を偽物となじったり家中の人々を呼ぶようなら【威厳・大声・情報伝達・破邪・浄化】で一喝

目を覚ましなさい!

周囲が正気に戻り正体を現すなら【指定UC】を発動
渡した護法童女に【フェイント】で隙を作らせ、家顕殿と共に姫を奪還
〔あやめ〕と〔凛天護輪〕で攻撃を凌ぎ【結界術・拠点防御】で安全圏を作る
『私を護る』時に私の式神は最大限の力を得る
式神と家顕殿の防衛なら、たやすく突破はさせないわ


ハル・エーヴィヒカイト
アドリブ連携○

▼心情
魂を食い、人間に成り代わるか。度し難い。ここで引導を渡してくれよう

▼作戦
家正、華子の護衛については元々の方針に則る
特に華子は家顕の妻なのだろう? 死ぬ気で守ることだ
我らは魂喰を強襲しそのまま全力で撃破する

▼戦闘
強襲と同時にUCを発動
この戦場を幾億の微細な白刃で包み込み、自身や家顕、華子を含めた全ての味方に攻防強化を付与しつつ魂喰にダメージを与え続ける

「鵺を纏ったか。生憎既に斬った相手だ」
そう言い捨てるもあの鬼爪による強化は脅威だ
[念動力]操作した刀剣による[乱れ撃ち]で相手の攻撃回数を上回るだけの飽和攻撃を繰り出し
相手の攻撃は[心眼]で[見切り]、[霊的防護]を備えた白刃の[結界術]で家顕達の方には向かないように[受け流]す
さらに[カウンター]で奴の二回攻撃や反撃に対して反撃を加え、とにかく手数で上回りあの鬼爪の[部位破壊]を試みよう
「まずはそちらを祓わせてもらう」


花乃宮・百合姫
【連携・アドリブ歓迎】
姫にとって侍女は大切な存在。
そのものの命を奪い、姫の命を狙うなど許すわけには行かない…

【攻撃】
気配を消して身を隠し妖が襲いかかろうとしたら、素早く苦無を投げてその動きを封じて攻撃に参加する。

華子姫と家正殿には式神を向かわせて護らせれば、彼らだけよりも安全に違いない。
攻撃を仕掛けて人がほとんどいない場所にやつを移動させる必要がありそうだ。

あとはユーベルコードを発動させ、敵を完膚なきまでに仕留める。
攻撃を仕掛けたところに手裏剣を打ち込んでその手足を封じて見せよう。

大事な人の命を奪ったものには報いを与える…!



●魂喰成敗 アタラ&ハル&百合姫の場合
 猟兵達の活躍により正気を取り戻した藤原家顕。
 彼の話により藤原家正の屋敷に隠れ潜む妖の正体が明らかになる。
 家顕の妻、華子姫の侍女牧子。東国から来たこの女が妖であった。
 そこから妖退治の方法を猟兵達と家顕、久我雅隆によって話し合われるが、その胸中は各人様々である。

 例えば寿乃葉・アタラ。普段は東国で活躍している彼女は心情としては坂東贔屓である。
 華子姫本人が妖ではなく一安心という思いはあったが、家顕との結婚時点で侍女に妖が成り代わっていたという事は華子姫の実家、千葉家の者達にも影響があっただろう。その時点で騒ぎが大きくなるのは妖としても都合が悪い筈なので多くの犠牲者が出ているとは思えないがそれでも何らかの影響があったのは間違いないだろう。
 心配であると遠い東国千葉家に思いを馳せる。

 例えば花乃宮・百合姫。
 本物の百合姫も侍女を頼りにしていたし、姫君となった今現在の自分もいつもお世話になっている。
 姫にとって侍女は大切な存在なのだ。
 その侍女の命を奪い、姿を奪い、あまつさえ姫自身にも危害を加える様など許す訳には行かない。
 そう怒りを燃やす。
 そして、それとは別に気にかかる事もあった。
 アタラ姫だ。この皇族のお姫様は様々な場所で活躍しているという。
 自分は覚えはないが本物の百合姫と会った事があるとおかしく思われてないかな、バレないと良いな等と思っている。実のところアタラは活躍する時は機甲式神メイガス、要するに巨大ロボに乗っているので私的な交流はないと言って良い。勿論本物の百合姫ともなく、これに関しては杞憂であった。

 最後にハル・エーヴィヒカイト。
 アタラ、百合姫と違いこの世界の出身ではない彼にあるのは妖に対する単純な敵意だ。
 魂を食い、人間に成り代わる度し難い存在。此処で引導を渡すのが役目だと思い定める。

「華子は家顕の妻なのだろう? 死ぬ気で守ることだ」
「言われずとも守って見せる」

 妖退治のおり、家顕が華子を雅隆が家正を護るという方針に定まり、ハルが家顕に発破をかける。
 洗脳から解かれたばかりの際は戸惑いが見られた家顕だが今は気力が充実している様に見える。
 この分なら大丈夫だろうと思う。雅隆に関しては以前の鵺退治で力を見ており何の心配もしていない。

「それでは強襲を掛けるか」
「お待ち下さい。ひい様から提案があります」

 屋敷の主である家顕を先頭にした強襲でも妖退治に問題はないだろうが、同室にいるであろう華子姫の安全にはやや不安が残る。この少しの不安を潰す為にアタラから提案がなされ、最終的にその案が採用された。

 藤原家正屋敷。
 家顕が皇族の姫君を伴って帰宅したという知らせが華子姫に齎され、妖の化けた牧子もそれを一緒に聞く。
 何でもその皇族の姫君は東国で活動しており、東国から嫁いできた華子をねぎらいに来たとのこと。
 政治権力を持たない皇族であるが、この世界に住まう人々に貴賤を問わず尊崇される存在だ。

「どうしましょう?」
「失礼のない様にお会いしましょう」

 突然の貴賓の来訪に戸惑う華子に牧子がごく常識的な返答をするが、その心中は邪悪なものだ。
 皇族の姫君、もし妖術で支配下に置く事が出来ればいろいろと使い道がある。そんな心づもりである。

 アタラが華子の部屋に迎え入れられ、交流が始まる。
 最初にアタラから心づけの品として扇子と人形が贈られて華子は嬉しそうだ。
 遠く東国から嫁いできた彼女は平安京に知人は居らず、訪ねてくる者もいない。
 また、妖である牧子により周囲の環境を支配されている為に孤立しているといってよい。

ひい様が華子姫だけにお話したいことがあると仰っております。
 申し訳ありませんが、少し離れて頂いてよろしいでしょうか?」
「……勿論です」

 ある程度、打ち解けたところで通訳を務める式神が牧子に向かって言う。
 式神を通訳に使う風変わりな姫君に僅かな疑念を抱くが此処で逆らう必要もないと従う牧子。
 この状況こそがアタラの待ち望んでいた瞬間であった。

「家顕殿!」

 アタラの肉声が屋敷に響く。即座に乱入して来る家顕、ハル、百合姫。
 この瞬間、牧子、妖は謀られたことを理解する。

「おのれ!」

 鋭い牙に猛々しい角、雷を纏った『魂喰の蓮華姫』の姿を現わす妖。
 牧子の姿が崩れ落ちて鬼姫が生じる瞬間を見た華子の悲鳴が響く。
 罠に嵌められたことを理解した蓮華姫はその首謀者であろう、アタラに向けて襲い掛かる。
 【真なる魂喰の衝動】を解放させた狂暴な力のままにだ。

「術技は御身に、魂は胸に――英傑らの御業、御覧じろ!」
「我が眼前に集え世界。降りそそげ破邪の光塵、白蓮雪華」

 その瞬間、アタラとハルのユーベルコードが同時に展開される。
 アタラのものは【再現・坂東前線の戦闘技巧カゼト・クモト・ニジニ】。
 この秘術は式神達を強化するものだがそれだけに留まらず味方に勇気を敵に威圧を与える権能も持つ。
 通訳を務めていた式神、護法女房『あやめ』とアタラの手元に掌サイズで控えていた式神『凛天護輪りんてんごりん』が一瞬で巨大化してアタラを護る様に前に立った。

 一方のハルのものは【境界・白蓮雪華キョウカイ・ビャクレンセッカ】。
 戦場全体を幾億の微細な白刃で包み込む秘技だ。この白刃は敵を傷つけ、味方を攻守共に強化する。
 二つの秘法で強化された式神達は最初の蓮華姫の猛攻を見事に凌いでみせる。

 ならばと切っ先を家顕と華子に向ける蓮華姫だが、この時の為に予め華子に渡していた扇子と人形が効果を発揮する。扇子は華扇鳥、人形は護法童女。どちらもアタラの式神。当然、こちらも強化されている。
 家顕も伊達に平安貴族はしていない。家顕と式神二体の守備でこちらでも蓮華姫は成果を上げられない。

「おのれ、おのれぇ!!」

 白刃に苛まれ、思う様にいかずに苛立つ蓮華姫に百合姫の投擲した苦無が突き刺さる。

「大事な人の命を奪ったものには報いを与える……!」
「小娘がぁ!!」

 百合姫の放った苦無はただの苦無に非ず。百合姫カキツバタの秘技、【狂乱・神風杜若キョウランカムカゼカキツバタ】の権能により妖すら蝕む猛毒を持つ。
 【八千矛之舞台】により強化された鬼の爪が百合姫を襲うがその動きは鈍い。
 身を侵す猛毒、絶え間なく続いている白刃の攻撃による影響だ。
 それに比べて百合姫は万全の上に白刃により強化されている。危うげなく攻撃を凌ぐ。

「そろそろ年貢の納め時だな」
「人間風情がぁ!!」

 白刃とは別の無数の刀剣をその身の周囲に浮かばせたハルが止めを刺さんと近づく。
 怒りの声を上げた蓮華姫は最期の足搔きか【奴延鳥乃翠爪】を発動させる。
 最強の妖とも呼ばれる『雷獣・鵺』の魂を纏う、絶対的な戦闘形態。
 しかし、既に百合姫の猛毒に蝕まれ、白刃による傷を全身に負って万全とは程遠く。
 反対のハルはアタラと自身の秘技により強化されている。

「鵺を纏ったか――だが、生憎既に斬った相手だ」

 死力を振り絞った蓮華姫の連撃をハルの剣技が上回り、遂には首を刎ねられて決着を迎える。

●その後
 蓮華姫の討伐は成った。その後の話を少しだけしたい。

 屋敷の人間は全て蓮華姫の妖術の影響下にあった。
 といっても家顕以外は人格を変える様なものではなく違和感を覚えない様にするものであったようだ。
 あまり変えれば他家に不信感を抱かれるという蓮華姫の判断だったのだろう。
 家顕に関しても藤原学校を潰す方向で思考誘導を掛けていただけの様だ。
 残念ながら数人は既に喰われて亡き者となっていたが……。
 ともあれ生者は全員、アタラの言霊により解呪されている。

 家正の病は完治した。そもそも病ですらなく、定期的に蓮華姫がその魂、生気を吸っていたのだ。
 長く病床にあった為に弱ってはいるが復帰の意志は強く。すぐにリハビリを始めている。
 猟兵達には感謝しており、即座の褒賞の他、何かあった際の後ろ盾になってくれると言う。

 家顕は妖術の影響下にあった事を恥じ、より一層の鍛錬に励んでいる。
 久我雅隆との仲はハルやアタラの働き掛けにより蟠りが解けて友人と言える間柄になった様だ。

 華子は牧子の事で大きな衝撃を受けたが家顕の支えもあり、持ち直している。
 後に分かった話だが千葉家への蓮華姫の影響は藤原屋敷の人々と同じ様なもので、家正の手の者が調べに行った時には既にその影響も消えていた様だ。蓮華姫が死んだからであろう。

 久我雅隆は討伐後すぐに自らの本拠である摂津国の荘園に帰国した。
 もう少し早く帰国する予定だったのを猟兵に付き合って帰国を延ばしていた様だ。

 戻らない命はあれど猟兵の活躍により蓮華姫は退治された。
 妖に対するつわものを養成する藤原学校も存続して行くだろう。
 平安結界で覆われた儚い世界の日常は続く。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年04月29日


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アヤカシエンパイア


30




種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠蓮条・凪紗です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト