●壊れゆく
まだ寒いね、と洗濯モノを入れた桶を脇に抱えた老婆に少女は
褶を肩にかけた。
桜枝のつぼみはまだ青いが、雲1つもない空を見上げると隣の家から若い女性が顔を出す。
「おはようございます。洗濯日和ですね」
「おはよう。ええ、まだ寒いですが……」
庶民はいつもと変わらぬ日常を過ごす。
町の外れに出来た妖の裂け目が開き、低級の妖達が咆哮を上げながら飛び出た。
●陰陽師ッ!
「新たな世界、アヤカシエンパイアにて妖の侵攻を予知しました」
と、言うと神山・琥珀(白銀の妖狐・f01799)は画面にアヤカシエンパイアの世界を映した。
「町外れに『妖の裂け目』が開き、妖達が町に向かい人々を食べるという予知です。
皆さんには妖の裂け目から出てくる妖の討伐をお願いしたいのです。
討伐の際は陰陽師達によって裂け目の周囲に町の人達は立ち入りを禁じられていますので、そこは安心して戦いに集中して下さい」
琥珀が予知内容を説明しつつ、予知で見た妖の姿を映す。
「これが『ガゴゼ』……人々を喰らう低級の妖です。
そして、それを統べているのが
鵺。
皆さんも1度は耳にした事がある妖ではないでしょうか? 強敵ではありますが、力を合わせればきっと皆さんならば勝てるでしょう。
妖の裂け目を塞いで、町に平和な暮らしを維持して下さいね! 皆さんから良い報告をお待ちしておりますね!」
そう言って琥珀は猟兵達を笑顔で見送った。
龍真 神
オープニングに目を通して頂きありがとうございます。
龍真 神と申します。
よろしくお願いします。
新しい世界ですね。
お久しぶりです!
レベルを気にせずに参加出来るシナリオとなっておりますので、気軽に参加して下さい。
3章の日常のみNPC同行可能です。
★二人以上で参加する場合は、【相手の(ID)】や【チーム名】の記載をお願いいたします。
※チームは最大でも3人が限度となりますのでご留意ください。
★NPCのキャラは、MSページに載ってい全員は同行可能です。
プレイングにNPCと同行の記載していない限り、リプレイで描写は一切しません。
同行希望でお任せしてくださっても可能です。
★ほぼ『おまかせ』プレイング可能なシナリオとなっております。
第1章 集団戦
『ガゴゼ』
|
POW : 餓えたる鬼の牙
【無数の牙が生えた口】で近接攻撃し、与えたダメージに比例して対象の防御力と状態異常耐性も削減する。
SPD : 童子寄せ
【掻きむしるように振るった爪】による近接攻撃の軌跡上に【妖気の渦】を発生させ、レベルm半径内に存在する任意の全対象を引き寄せる。
WIZ : 鐘音咆哮
【喉】から大音量を放ち、聞こえる範囲の敵全員を【気絶】状態にする。敵や反響物が多い程、威力が上昇する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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蓬江・神燐
龍真 神マスターにおまかせします。かっこいい蓬江・神燐をお願いします!
即身仏の臘月の陰陽師×女房、16歳の女です。
普段の口調は「女性的(我、貴様、呼び捨て、じゃ、のじゃ、のじゃ~、かのう?)」、スイッチが入ると「饒舌(我、てめぇ、おい、言い捨て)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
●餓える
妖の裂け目が出来た場所へ転移した蓬江・神燐(火神を従える者・f42811)の瞳にガゴゼの群れを映す。
乳白色に濁った無数の眼が神燐へ向けられ、拷問器具の様に醜く開いている口を開き咆哮を上げた。
「やるじゃよ~覚悟の準備は出来たかえ?」
するり、と袖から人の様な形をした紙が神燐の体を覆い、その身に式神を宿らせた。
「町の人達を喰わせるにはいかないのじゃ」
ガゴゼ達が人間の様であってそうでない太い腕を振り上げた。
低く唸り声を上げながら神燐の影から犬の姿をした式神が飛び出し、振り上げられた腕に牙を立てる。
「(……多い、じゃが――)」
陰陽師である神燐にとってガゴゼはよく知る妖、大振りな動作で攻撃してくるのは予備動作だけで分かる。
地面を蹴って駆け出し、脇をスルリと通り抜けてガゴゼの背後を取る。
「ほれ、後ろまで見える様になったじゃろう?」
ガゴゼの頭部を掴み、力任せに回すとヒトガタの頭部を引き千切るかの様に取れると同時に塵と化して消えた。
「うぉあ!」
ガゴゼ達が首を伸ばして神燐の腕に噛み付いた。
「残念じゃが、紙では腹は膨れても美味くはないぞ?」
神燐の腕は無数のヒトガタへと変わり、ガゴゼ達の大きい口へと吸い込まれる様に自ら突っ込んでいく。
群れを成した渡り鳥の影の様に動き、口から入り腹部を貫き終えたら神燐の袖の中へ納まった。
「この辺は大丈夫じゃろう。残党がいないか見回ってくるかの」
犬の式神の嗅覚を頼りに神燐は、群れからはぐれたりしたガゴゼを探す為に座敷式神を呼び出した。
大成功
🔵🔵🔵
クロエ・メルシェ
【羊狼】
食欲全開で迫られるのは悪くないけど、相手がなぁ……。
歯並び悪いし、臭そうだし。
ルカがあれぐらい積極的だと最高なんだけど。
……ごめんごめん。真面目にやるから安心して。
っていうか、私はいつでも真面目だよ?
リボルバーを構えて精神集中。
鈍化した体感時間の中で敵の頭部を狙って射撃し、ヘッドショットで1体ずつ撃破を試みる。
引き寄せを使われたら抗わず、腰を地に着けて滑りながら集中射撃。
手元に寄せられる前に撃ち倒す。
ルカがUCを発動したらライフルに持ち替え、射線を気にせず火力全開。
物質透過を利用してルカの体越しに銃弾を叩き込む。
……いいなぁ、ルカに食べてもらえて。
一匹残らず潰したくなってきたぞ~?
ルカ・ベルトリオ
【羊狼】
人喰いのバケモノ……か。
俺もそう罵られたことがあったな。
彼らには俺がアレと同じに見えてたってことか……。
仕方ない。俺だってこうなる前ならきっと――
……今割と真剣に悩んでるから、その期待の視線はやめてくれないか?
考え込むのが馬鹿らしくなった……。さっさと始めよう。
UCを発動し、物質透過能力を獲得する。
敵の攻撃は物理主体。すり抜ければ躱せるはずだ。そのまま背後を取ってナイフで連撃を仕掛ける。
引き寄せには逆らわず、利用して一気に間合いを詰めにいく。
加速する飢えは、嚙みつきで敵の血肉を捕食して満たす。
味も気分も最悪だが、背に腹は代えられない。
なるべく早く終わらせよう。
●渇望
「(人喰いのバケモノ……か)」
ルカ・ベルトリオ(君の味を知りたくない・f42736)は毛に覆われて、猫の様に仕舞う事の出来ない鋭い爪が剥き出しの手へ視線を落とした。
「(俺もそう罵られたことがあったな。
彼らには俺がアレと同じに見えてたってことか……。
仕方ない。俺だってこうなる前ならきっと――)」
階梯4の灰色狼であるルカは、転移されて景色が変わると同時に視線を上げた。
汚れた布を被った人の様な姿をした妖“ガゴゼ”がサイファイヤの様な青い瞳に映る。
醜く広がった口はだらしなく開かれたままで、獣や虫とは違う円形状に沿って生えた牙は不気味だった。
「(食欲全開で迫られるのは悪くないけど、相手がなぁ……。
歯並び悪いし、臭そうだし。
ルカがあれぐらい積極的だと最高なんだけど)」
クロエ・メルシェ(Eat me baby・f42735)が一瞥すると、その視線に気が付いたルカは嘆息する。
「……今割と真剣に悩んでるから、その期待の視線はやめてくれないか?」
「……ごめんごめん。真面目にやるから安心して。
っていうか、私はいつでも真面目だよ?」
と、眉間にシワを寄せるルカの顔を見上げながらクロエは小さく首を傾げた。
「(考え込むのが馬鹿らしくなった……)
さっさと始めよう」
ルカがクロエの前に出ると、ゆっくりと深呼吸すると同時に陸上選手の様にスタート姿勢を取った。
「ええ」
クロエが頷くと、ガゴゼ達と二人の間に紫色に帯びた妖気の渦が発生した。
●妖と獣
ルカがユーベルコード『アサシネイト・ビースト』を発動させると、弱肉強食衝動のままガゴゼの群れへと駆け出した。
「(やはり、見た目通り、か……)」
ルカはガゴゼ達の妖気の渦に引かれるがままに身を任せ、大きな口で
獲物を喰らおうとする。
しかし、餓えを満たす為に本能のままに動くガゴゼよりも、ルカは殺す為の技術の前では赤子の手を捻るかの様に背後を取れる。
軍服に仕込んだアサシンダガーを手にすると、心音がする位置へと正確に深く刃を差し込んだ。
クロエが間髪入れずにユーベルコード『バレットタイム』を発動し、手にしているリボルバー銃でガゴゼの額を撃ち抜く。
「(贅沢は言ってられないか)」
アサシンダガーを引き抜き、ルカは迫りくるガゴゼの群れで先頭を歩く個体の腕に噛み付いた。
未知の味、獲物としての質は最悪であってもユーベルコードを使った代償としての飢えを満たす事は可能だった。
「(味も気分も最悪だが、背に腹は代えられない)」
ほぼ骨と皮しかないと言っても過言ではないガゴゼだが、ルカは牙で砕く様に口の中でミンチにしながら胃へと流し込む。
「なるべく早く終わらせよう……」
と、呟きながらルカが“食べなれない部分”を吐き捨てた。
「(……いいなぁ、ルカに食べてもらえて)」
後方からクロエがルカの背中に切望の視線を向けていた。
その為の
私のハズなのに、
彼は常に飢えを満たしているのは
別の餌だ。
「一匹残らず潰したくなってきたぞ~?」
クロエの胸が苦しい、スナイパーライフルを構えてガゴゼの群れへ銃口を向ける。
犬は背を向けるのは信頼の証だと聞く、ならば大元であるオオカミも同じかもしれない。
そういう部分では少し優越感を感じながらルカの背中を見つめながらクロエは、ガゴゼをスナイパーライフルで撃ち抜くと口元を緩ませる。
何時か、美味しく、喰らって貰える未来を夢見て――
今日は妖の屍を積んでいく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フィオナ・グファジェン
「がごぜ。ぐわごぜ?ぐーふぁーごーじぇ」
なーんか私の名前と響きが似てるような。ちょっと訛ると近くなるような。
ご先祖様に東から来た人がいるなんて聞いた覚えもありますけど。そういえばUDCだとがごぜってブリガトーンと縁があるんでしたっけ?
それはともあれ!オブリビオンはご先祖様ではないですし、やっつけちゃいましょう!
人形を囮にしながら背後から接近して、UC使っちゃいますよ!
決まれば後は眺めてるだけですねー。付かず離れずの「私を攻撃しようと思える」位置にいましょう。
相手は逆のことしかできませんので、「敵」の私ではなく「味方」を攻撃しちゃうかもしれません。初撃を外してもすぐ感染は広がるので安心ですねー。
●同士討ち
「がごぜ。ぐわごぜ? ぐーふぁーごーじぇ」
フィオナ・グファジェン(Brigadoon・f17254)が妖の名前を繰り返し発した。
「なーんか私の名前と響きが似てるような。ちょっと訛ると近くなるような」
UDCのアースの『ブリガトーン』と縁があった様な、と考えはするものの同じ名前であっても世界が違えば同姓同名の“ナニカ”という事を思い出す。
「サムライの世界にも似ているけど……なんか、それよりも古い感じがします」
アヤカシエンパイアへ転移されたフィオナは、周囲を軽く見回しながら呟いた。
巨大な頭部を揺らしながら妖の裂け目からガゴゼの群れが次々と現れ、獣の様な呻き声を上げながら
新鮮な肉に向かって走り出した。
「塗り潰す漆。染め上げられる大地。漆黒の名を蝗と嘯く。歪に枯れ行く牙の名を、忘却だけが知っている。仮初を謳え、その名は――」
フィオナが詠唱を終えるとユーベルコード『Gévaudan sang(カレユクキバ)』が発動し、狼の形をした大型人形をガゴゼの群れへと飛び込ませた。
飢えたガゴゼの群れは、狼の形をした大型人形を生きている狼だと思い手を伸ばす。
「オブリビオン以前にこの世界にはご先祖様ではないですし、一網打尽にしちゃいましょう!」
ガゴゼの群れの背後を取ったフィオナは病毒を放って感染させた。
「全部が感染できなくても、この数程度なら同士討ちで残った最後の一体を倒せば良いだけですねー」
感染者は己が意思と逆の行動言動を取る、ガゴゼの群れは感染した個体から仲間を喰らい更に感染を拡大させて数を減らしていった。
「あなたで最後っ!」
味方も全滅してしまいぽつん、と佇むガゴゼに向かって狼の形をした大型人形が喰らいつくと力無く倒れた。
大成功
🔵🔵🔵
無門・華蓮
平和とは斯くも脆いものか。急ぎ妖の裂け目を塞がねばな。
だがこうして駆けつける事ができたのも仏の導きあってこそ。喜んで役目を果たすとしよう。
あれがガゴゼか。なるほど人喰らいの妖らしい貌をしている。
良い、わしは全てを受け入れると決めている。お主のような醜き者も浄土に行けるよう計らうのがわしの務めよ。
「醜き者」に腹を立てたかは定かではないが、爪を振るいわしを引き寄せようとしているな。
ならば受け入れよう。引き寄せられた先、ガゴゼの爪がわしに触れる前に【回向之法】にて爆ぜるがよい。
妖だからとて浄土に往けぬ訳ではあるまいよ。
さあ、次に浄土に往きたい者は誰だ?遠慮はいらんぞ。
●還れ
「喜んで役目を果たすとしよう」
無門・華蓮(乾坤獨歩・f42835)が凛とした声で答えた。
これも仏の導き、と静かに両手を合わせながらグリモアベースから予知された現地へと転移する。
「あれがガゴゼか。なるほど人喰らいの妖らしい貌をしている」
と、呟きながら華蓮は顔を上げた。
餓鬼とは全く違う風貌ではあるものの“人を食す”事に特化した意味では、丸呑みしながら効率よく挽き肉にして胃に流し込めるであろう円形の口から死臭が放たれていた。
「良い、わしは全てを受け入れると決めている。
お主のような醜き者も浄土に行けるよう計らうのがわしの務めよ」
慈悲を含めた笑みを浮かべながら華蓮は、ガゴゼの群れの前で歩みを止めて両手を合わせたまま直立不動のまま見据えた。
妖気の渦の生温い風が頬を撫で、グンと牛車で吹き飛ばされたかの様に華蓮の体が弾き飛ばされた。
ムワッ、と死臭が濃くなったかと思えばガゴゼの大きな口が眼前に迫っていた。
「浄土へ案内してやろう。さあ、受け入れよ」
華蓮の掌がガゴゼの額に当て、ユーベルコード『回向之法(エコウノホウ)』を発動させるとグシャリ、と大きな頭部が捻じれると爆ぜた。
「妖だからとて浄土に往けぬ訳ではあるまいよ」
サラリ、と華蓮の眼前でガゴゼが塵と化して骸の海へと帰した。
「さあ、次に浄土に往きたい者は誰だ? 遠慮はいらんぞ」
静かに着地すると華蓮は両手を合わせた。
言葉は通じない、ただ新鮮な肉を求めるガゴゼの群れは獲物に向かって進むだけだ。
華蓮が動かずとも引き寄せられては、千手観音の様に流れる様に掌を当てて次々とガゴゼを骸の海へと帰したのであった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『鵺』
|
POW : 無限進化体
【巨大な異形の獣の肉体】に【無限進化ユーベルコードのエネルギー】を注ぎ込み変形させる。変形後の[巨大な異形の獣の肉体]による攻撃は、【弱体化】の状態異常を追加で与える。
SPD : 怨嗟響鳴
全身を【無限進化ユーベルコードのエネルギー】で覆い、自身が敵から受けた【攻撃の威力】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
WIZ : 鵺の雷撃
【トラツグミの如き叫び声】を放ち、命中した敵を【雷撃】に包み継続ダメージを与える。自身が【敵に触れて力を奪取】していると威力アップ。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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●脈動
ドン。
妖の裂け目が脈打つ様に震え、裂け目が広がって能面の様な顔が出てきた。
周囲を一瞥すると、ガゴゼの群れが居ない事に気にしていない様子で
鵺は頭を空へ伸ばした。
大きい。
蒸気機関、あるいはたたら場の様に口から湯気を放った。
虎の様で低い獰猛な獣の様な鳴き声と共にバチ、バチと空気に電気が走る。
尾がドン、と地面に叩き付けて足元が揺れた。
晴天だった青空は鉛色に染まり、猟兵と鵺の間に湿った風が吹き抜けた――
無門・華蓮
なるほど聞きしに勝る恐ろしい姿だ。しかし何者が相手であろうとわしの務めは変わらん。
一切救世。いざ参らん。
鵺からはあくまで距離を取り、遠間から仕掛ける腹積もりであったが、よもや雷を操るとは恐れ入った。
かくなる上はわしも本気を出さねばならんな。
【神威】にて雷撃も、鵺も、空間ごと消滅させてやろう。
この術は最早わしの意思で止める事も叶わぬ。
ここが町外れでよかったぞ。巻き添えに消える物も少ないからな。
例外があるとすれば平安結界か……。
陰陽師たちの仕事を増やしてしまうかもしれん。火急の事態故許せよ。
●雷鳴咆哮
「嗚呼、なるほど」
感情を出さずに無門・華蓮(乾坤獨歩・f42835)は呟いた。
ガゴゼの様に単純な感情は一切、無い。
「(あれは――)」
己は支配するべき強大な力を保有している、と王者としての器があるべきと言えば良いのだろうか。
全身に威圧を感じながら華蓮の背に、一筋の冷や汗が静かにゆっくりと伝った。
「一切救世。いざ参らん」
生きたまま仏と成り、極楽浄土を経て猟兵と成った身である華蓮は、このアヤカシエンパイアに住む力無き人々の為に身を削る覚悟を決めると
鵺の能面の様な顔へ視線を向けた。
「Grrrrrr」
強大な体から低くトラツグミの叫び声を放つと、破裂音と共に雷が地面に落ちて焦がす。
「(よもや雷を操るとは恐れ入った……)ならば――」
華蓮は手にしている六環金錫を地面に突き刺し、鵺との距離を測るとユーベルコード『神威』を発動させた。
両手を合わせ、手の中に出来た光球を鉛色の空へ放つ。
薄暗い空が眩しい程に光を放ったかと思えば、鵺の頭上から霊波光線が放たれた。
「Grrrrrr!!」
「ここが町外れでよかったぞ。巻き添えに消える物も少ないからな……だが」
霊波光線の光が消え、ガゴゼの様に簡単には倒れぬ鵺の姿を見据えた。
妖の裂け目がある周辺のみ雲は消え、光が差し込むと雷は止み木片から煙が上がった。
「今、わしが出来るのはこれが限界なのか?」
否、他の猟兵達も鵺が現れた事には気が付いているであろう。
華蓮は踵を返し、近くに居た陰陽師に声を掛けた。
「陰陽師たちの仕事を増やしてしまうかもしれん。火急の事態故許せよ」
これからもっと激戦が行われるであろう、と戦場に佇む鵺を一瞥しながら華蓮は六環金錫を地面から抜き。
鵺が町へ侵攻を進めない様に足止めをするのであった。
大成功
🔵🔵🔵
クロエ・メルシェ
【羊狼】
大物が来たね。あれがヌエ?
みょうちきりんな姿だけど、体形自体は獣の枠組み内。
狙うべき場所は分かりやすいかな。
……う~ん、撃っても手ごたえが無いなぁ。
単に頑丈ってだけじゃない。何か厄介な能力を持ってそうだね。
アレをやるから。ルカ、頼んだよ。
羊が一匹、二匹……。
数えてUCを発動。自分とヌエの眠気を誘う。
完全に眠らせなくても、集中力を削ぐだけで十分。
ルカがあいつの能力を奪取する隙を作る。
(頬を叩いて眠気を覚ます)
……よし。後はルカを援護しながら、ライフルでしっかり狙って射撃を続ける。
尻尾の蛇の不意打ちが特に厄介そうだね。
動きを見せたら、優先で狙って動きを封じておきたいな。
ルカ・ベルトリオ
【羊狼】
全身バラバラな獣の形質……。キメラってやつか?
あんなのが虚空から湧いて出るなんて、この世界も平穏には程遠いか。
クロエのUCで隙が出来たら、俺もUCを発動。ヌエに噛みついて肉片を捕食。
奴から虎の
右前脚と、UC【 怨嗟響鳴】をコピーする。
クロエに援護を任せて前衛を張り、ある程度の攻撃は敢えて受けて自身を強化。
生命力吸収で回復しつつナイフで切り刻む。
身体構造が獣に近いなら
獣人戦線の医術の知識も通じるか?
太い血管や靭帯の位置を見切り、部位破壊を狙う。
使ってみて実感するが、出鱈目な能力だな。
野放しにすれば無限に進化するって訳か。
こいつは必ず、ここで屠らなければ。
●未知の力
「あれがヌエ?」
日差しの眩しさに目を細めながらクロエ・メルシェ(Eat me baby・f42735)が呟いた。
「全身バラバラな獣の形質……んなのが虚空から湧いて出るなんて、この世界も平穏には程遠いか」
新たに見付かったばかりの世界、相棒のクロエもそうだがルカ・ベルトリオ(君の味を知りたくない・f42736)自身も文明も何もかもが違うと同時に未知数過ぎて少し頭を使い過ぎてしまう。
「みょうちきりんな姿だけど、体形自体は獣の枠組み内……う~ん、撃っても手ごたえが無いなぁ」
スナイパーライフルでクロエが
鵺の頭部を撃ち抜くが、能面の様な額を貫くどころかかすり傷を作って弾丸は潰れて音も無く地面に落ちる。
「単に頑丈ってだけじゃない。何か厄介な能力を持ってそうだね。
アレをやるから。ルカ、頼んだよ」
と、クロエが言うとルカは小さく頷いた。
ユーベルコード『ヒュプノスシープス』を発動させる為にゆっくりと数え始めた。
「羊が一匹、二匹……」
クロエが数が進めていくと、ふわふわと足元から軽くなっていく様な空気が漂う。
鵺から圧が少し緩み、動きがやや鈍くなっているのを感じたルカは駆け出した。
「すまん。勝手に借りる」
ルカが猛獣よりもはるかに大きく太い腕に牙を立て、剛毛な毛が口内に刺さるのも気にせずに噛み千切った。
筋張ったお世辞にも美味しいとは思えないが、ガゴゼよりもはるかにマシな肉片を飲み込んだ。
「(これは――……)」
己の右腕が隆起し、目の前にいる鵺と同じ虎の腕へと変わるがルカはあまりにも大きな力に目を見開いた。
衰えを知らぬ力、それも強大な力だ。
扱えるのか? と、不安もありつつ鵺を倒す為に扱わなければならない、という猟兵としての使命感で力の抑制を試みる。
痛みで夢見心地から現実へ戻って来た鵺は、己の体を異形へと変形させると同時に雷を放った。
「(……よし)」
クロエが頬を力強く叩き、眠りそうな脳みそまで衝撃を与えて目を覚まさせた。
ルカが雷の間を駆け抜け、借りた『怨嗟響鳴』でエネルギーを吸収しながら肥大化した虎の腕で鵺を切り裂いた。
「Grrrrr!!」
カタカタ、と顎を動かしながら鵺がルカに噛み付く。
しかし、今は異形の巨体の鵺の攻撃は見切られてしまいルカは回避する。
「……っ! 出鱈目な能力だな」
互いにエネルギーで無限進化し、ルカは弱体受けても生命力を補填が出来て効果は無いだろう。
しかし、鵺はルカ達に触れれば力を奪えば今降り注がれている雷の威力が上がるとなれば、簡単には近付けないであろう。
「(ルカ……)」
クロエはルカへと視線を向けた。
普通ならばスナイパーライフルでも倒せるハズなのに、鵺は己の肉体を異形化させて無限進化という理解出来ない事をしているのだ。
クロエの弾丸が雷によって弾かれてしまい、歯痒い思いをしつつ撃つしかない。
ルカに疲れの色が見え始めた。
「こいつは必ず、ここで屠らなければ――」
ルカが吠えると同時に、肥大化した虎の腕で鵺の片腕を吹き飛ばした。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
黒風・白雨
ここがアヤカシエンパイアなる世界か
なるほど確かに、あの頃の日の本と似ておるようじゃ
懐かしささえ感じるかもしれぬ
さて、それはさておき
この地の飯もまだじゃというのに、おぬしのような輩に暴れられてはかなわぬ
その裂け目より追い返し、いや、前菜として喰らうてやろうか
まずは煙管を天に向け、雷雲を招来
神鳴をもってその巨体を打ち据えよう
手負いの身のくせ、これで止まらぬとは見事じゃな
ならば、力づくで屈服させてやろう
〈仙術〉の縮地で一気に距離を詰める
大地をも砕く《力》を纏った腕で身体を引き裂き
併せて「無限進化体」の効果を剥ぎ取り、捻り潰す
今度はこちらの番じゃ
《竜神体》の本性を顕現し、その肉体に喰らいつこう
●知る景色
煙管を吹かしながら黒風・白雨(竜神・f31313)は金の瞳を細めた。
「ここがアヤカシエンパイアなる世界か……なるほど確かに、あの頃の日の本と似ておるようじゃ」
竜神として長い時を生きる彼女にとっては少し昔に見た懐かしい風景に思いを馳せたいが、目の前の空間に布を裂いた様な異空間とその前に佇む
鵺の姿。
「この地の飯もまだじゃというのに、おぬしのような輩に暴れられてはかなわぬ」
白雨は唇から煙管を離し、天を示すと青空は雷を帯びた暗雲に再び覆われた。
「源頼政の様にまでとはいかぬが、
雷上動の如く
……
神鳴を受けるがよい」
と、白雨が声高らかに言うと閃光が走り、鵺の体を雷が貫いても小さく体を揺らすだけであった。
効いていないと白雨は察すると地を蹴り、鵺の視界には忽然と白雨が消えて見えたであろう。
仙人が扱う縮地を視覚で捉える事はほぼ不可能だ。
「手負いの身のくせ、これで止まらぬとは見事じゃな。ならば、力づくで屈服させてやろう」
『ッ!?』
他の猟兵達から受けた攻撃は確実に鵺を弱らせていたのであろう、白雨のユーベルコード『
暴威』で無限進化させている力の源を鵺の体の一部事引き裂いた。
「その裂け目より追い返し、いや、前菜として喰らうてやろうか」
と、言うと白雨の体は、白き髭を靡かせて漆黒の鱗を持つ巨大な竜神――本来の姿へと変えた。
「今度はこちらの番じゃ」
鵺を頭から丸呑みし、嚥下し終えた白雨は大口を開けたままの妖の裂け目を摘まむ。
現地の陰陽師達が慣れた様子で裂け目を完全に閉じ、白雨が人の姿へと戻り綻びが無いのを確認すると満足げに微笑みながら踵を返した。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『季節の祭り』
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POW : 祭りの会場を歩き回り、巡り尽くす
SPD : 祭りで催される遊戯に挑戦する
WIZ : 祭りの風景を眺め、歌を詠む
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●春は来たれり
妖の群れは討伐された。
なんなら、寒い、寒いなんて言っていたらいつの間にか桜が開花している。
庶民からしたら、梅も桜も色が違う程度ではあるものの楽しめればそれで良い。
雅楽で静かに食事や酒を楽しんだり、蹴鞠などで遊ぶ事も出来であろう。
町の人々は猟兵を快く受け入れ、助けてくれた英雄として祭りを楽しむ事を勧める。
※注意
私(MS)は短歌とか全く出来ません。
平安の事は調べますが、同じ名前の似た様で違う世界! と、思っておりますので半分ファンタジーな気持ちで気軽にどうぞ!
某米作りゲームな感じで!
平安時代には砂糖、無いんだって……甘くない揚げ物はある。
クロエ・メルシェ
【羊狼】
【SPD・アドリブ歓迎】
お祭りだってさ。
せっかくのお誘いだし、羽を伸ばそうよ。
ルカも、
異世界じゃ後ろ暗いこと無いんだし。
何も急いで立ち去らなくていいじゃん。
ご飯ぐらい食べて帰ろう。
生演奏を聴きながらお食事って、貴族にでもなったみたいだね。
この不思議な音楽、
雅楽っていうんだっけ?
落ち着くというか、スッキリするというか……。
心が洗われるってこういう感じかな?
お料理は……すごく素朴な味だね。素材の味って感じ。
私は結構好きかな。野菜類が多いのも高評価だし。
どう?ルカにはちょっと薄味すぎるかな?
……バレたか。
残念ながら、雅楽の音色でも私の欲望は洗浄しきれなかったみたい。
ルカ・ベルトリオ
【羊狼】
【SPD・アドリブ歓迎】
これで仕事は終わりか。
それじゃ、さっさと退散しよう。
……祭り?俺達が?
……そうか。ここでは『野良の軍令暗殺者』ってバレる心配自体、無意味か。
せっかくの誘いを無碍にするのも悪い。
お言葉に甘えよう。
花を眺め、音楽を聴きながらの食事か……。
こんな贅沢は想像もつかなかったな。
料理の味?
確かに、味が濃い軍用の糧食に慣れてると薄味には感じるな。
けどまぁ、普通のモノが食えるってだけで、俺には最高のご馳走だよ。
……あとは、そうだな。
クロエが俺の食ってるとこを凝視してこなければ、もっと最高なんだが。
せっかく綺麗な花が咲いてるんだ。頼むからそっちを愛でてくれ。
●―ルカ視点―
「……っぺ」
ルカ・ベルトリオ(君の味を知りたくない・f42736)は川の水で口をすすいだ。
ガゴゼの肉は、市街戦の腐敗した死体よりも臭く、長期戦で獲物を暗殺する為に知らぬ土地でそこら辺のドブ臭いカエルよりも不味かった。
妖の裂け目が閉じられ、気が付けば枯れ木の様な木の枝に芽吹いていた蕾が花開いていた。
「ねぇ」
「それじゃ、さっさと退散しよう」
クロエ・メルシェ(Eat me baby・f42735)の
三日月様な眼で何故か俺をじっと見つめくる。
いつもの
病気かと思えば、町で春祭りをするという話をしてきた。
「……祭り? 俺達が?」
と、思わず顎に手を添えながら呟いた。
「せっかくのお誘いだし、羽を伸ばそうよ。ルカも、異世界こっちじゃ後ろ暗いこと無いんだし」
クロエがぎゅっ、と俺の腕を両手で掴むと子供の様にコチラを見上げた。
「(……そうか。ここでは『野良の軍令暗殺者』ってバレる心配自体、無意味か)」
そうだ、ここは俺達が居た世界とは文明や理が全く違う、という事を猟兵に覚醒し、グリモアベースに訪れた時にグリモア猟兵から説明してもらったのを思い出す。
「せっかくの誘いを無碍にするのも悪い。お言葉に甘えよう」
戦うだけが猟兵ではない。
これからも、別の世界へと戦いへ赴く事が増えるであろう。
ならば、少しでも世界の文化を知るのも大切だ。
そう思い、クエロに腕を引っ張られながら祭りの中心へと連れられて来た。
シンプルな料理が見た事もない食器に盛られており、思わずスンスンと鼻を動かしてしまった。
「生演奏を聴きながらお食事って、貴族にでもなったみたいだね」
と、隣でクロエが言った。
木製の笛、ギターの様な楽器が緩やかで、表現し難くて知らない曲を奏でいる。
「そうだな」
箸、なんて棒が二本で食べ物を掴む事さえ怪しい状態なので、木製のスプーンやフォークを使い鴨肉を食べる。
塩や味噌、醤油といったシンプルな味付けであったが、軍用レーションよりかは味は薄く感じる。
いや、ガゴゼという不味い肉を食べたからこそ美味しく感じているのかもしれない。
「私は結構好きかな。野菜類が多いのも高評価だし。どう? ルカにはちょっと薄味すぎるかな?」
穀物、野菜の漬物、野菜の酢和え、野菜の塩ゆでと副菜は木の実や野菜ばかりだ。
「けどまぁ、普通のモノが食えるってだけで、俺には最高のご馳走だよ」
と、言いながら有難く頂いた。
小さな町、土と木で出来た民家、毎日の食事は今日の料理と同様のモノは出されないであろう。
「……あとは、そうだな。クロエおまえが俺の食ってるとこを凝視してこなければ、もっと最高なんだが」
塩で味付けした猪肉の塊を焼いただけのを俺は齧りながら嘆息する。
どんな世界に行っても
彼女の思考は変わらないな、と思いながら美しく薄桃色の花で覆われた桜の木を見上げた。
●―クロエ視点―
美味しい、ピクルスみたいな料理や煮ただけの甘い大根、
四角い白い物体はこの世界の主食である白米によく合う。
花見で賑やかで、町の人々は妖から守ってくれたから、と招待してもらったので遠慮なくルカを誘おうと声を掛けた。
でもね、やっぱり『仕事は終わったから帰ろう』とする。
元々居た世界とは違う、それにもっと知りたかったし、ルカにも知って欲しかった。
戦う事しか知らない私達。
争う世界で、国の兵という名の駒として生きている私達にとって、猟兵という力を得たのは幸運なのかもしれない。
「この不思議な音楽、雅楽ガガクっていうんだっけ? 落ち着くというか、スッキリするというか……心が洗われるってこういう感じかな?」
知らない世界で、知らない音を知る。
知らない世界で、文化に触れる。
知らない世界で、知らないルカの顔が見れる。
私の視線は気が付けばルカの
口へと向けていた。
それに気が付いたルカは、嘆息しながらクイッと鼻先を桜や梅の木に向ける。
「せっかく綺麗な花が咲いてるんだ。頼むからそっちを愛でてくれ」
「……バレたか」
どんなに神聖で、美しい音の芸術である雅楽であっても私の
欲望を浄化する事は不可能だった。
もし――
その時が来たら、春には花見と雅楽を共に楽しんだ記憶はルカの一部として
一つになった私は、ルカの中で一緒に同じ景色を見れるだろうか?
分からない。
でも、その時になってみなきゃね。
食べて、私はルカの――
捕食対象なんだからね。
大成功
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