東国討魔戦線~MIYABIの罠~
●平安を護る者たち
「御機嫌よう、皆。よく来てくれたね」
グリモアベースにある作戦会議室、招集に応じた猟兵たちをカタリナ・エスペランサ(閃風の舞手・f21100)は一礼で出迎えた。
今回の予知は新たに発見された“アヤカシエンパイア”で起きる事件に関するものだと彼女は告げる。
そこは平安時代の日本列島に似た世界。
かつて発生した「
禍津妖大戦」によって妖蠢く死の大地と化した日本全土を陰陽師たちが「平安結界」で覆い、人々から滅びた大地と妖を隠蔽しているのだ。
猟兵は貴族や陰陽師といった平安結界の護り手と協力し、危険な妖の殲滅を目指して戦う事になる。
「特に「禍津妖大戦」最大の激戦地となった
東国には、しばしば「過去の激戦の記憶」に引き寄せられるように強大な妖が出現する事があるようでね」
現在は東国を拠点とする坂東武者が主に討伐に当たっているが、今回予知されたのは彼らが返り討ちに遭う結末。
坂東武者を助け妖を撃破する事が今回のミッションとなる。
「妖を率いる大将の手勢を倒し、隠れて力を蓄えようとする大将を見つけ出して撃破。流れは単純だね」
坂東武者と連携する事が出来れば今回は勿論、今後の戦いも有利に運ぶ為の一因となるだろう。
「新しい世界ではあるけれど、キミたちならきっと上手くやれるさ。素敵な土産話を期待してるよ」
グリモアの放つ輝きと共に、豪奢な装飾の施されたゲートが開いて。
ふーみー
当シナリオをご覧くださりありがとうございます、ふーみーです。
此度は新世界アヤカシエンパイア!
一章は『鬼面の群れ』との集団戦。
各個分断された状態での戦いを強いられている坂東武者達に助太刀し、妖たちを殲滅してください。
どんな武者(イケメンとか美少女とかパワー系テクニック系など)と協力したい等プレイングにあれば参照する他、以後の章でも協力する形になります。
二章は冒険。
猟兵の助力が無ければ全滅必至の「恐ろしい罠」が待ち受けているため、これを突破してください。
詳細は二章開始時の断章にて。
三章は『天狗』とのボス戦。
これを討ち取る事で今回の事件は解決となります。
また、試験的に難易度オプションも実施しています。
興味のある方はMSページをご覧ください。
それでは皆様の健闘をお祈りしています。
第1章 集団戦
『鬼面の群れ』
|
POW : 爆裂鬼火
着弾点からレベルm半径内を爆破する【鬼火】を放つ。着弾後、範囲内に【恨みの炎】が現れ継続ダメージを与える。
SPD : 鬼火翔け
【鬼面状の体】から【鬼火】を噴出しながら、レベル×5km/hで直進突撃する。2回まで方向転換可能。
WIZ : 鬼火雨
レベル×5km/hで飛翔しながら、【降り注ぐ鬼火】で「🔵取得数+2回」攻撃する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
●人妖死闘最前線
猟兵の転移した戦場は荒涼とした野原らしい。
不気味な鬼火に分断された空間を鬼面の群れ――空飛ぶ悪霊の大群が我が物顔に席捲している。
そして先客はもう一人、無数の鬼面を相手に孤軍奮闘していた坂東武者。
激しく火花を散らしていた両者はほとんど同時、新たに現れたあなたに気付いたようだ。
武者が素直で友好的か、警戒心の強いひねくれ者か、等々……それは出会った者次第かもしれない。
シモーヌ・イルネージュ
ここがアヤカシの世界か。初めてのところはワクワクするね。
ここのアヤカシ達がどんな強さなのか、楽しみだ。
組むならば、アタシがこういう性格だから、武人らしく、さっぱりした奴だといいな。
早速だけど、そこのサムライ。助太刀するよ!
黒槍『新月極光』で戦おう。
突っ込んで来る相手ならば、槍が対応しやすいね。
UC【烈風打破】を発動して、相手の突撃を跳ね返そう。
ただ、このUCは正面しか受け止めないから、他の方角からの攻撃への対応は坂東武者に頼むよ。
跳ね返した敵は反撃で、なぎ払って倒す。
そして、また方向変えて、の繰り返しで敵を減らしていこう。
はは、いくらでも敵がいるな、ここは!
●月華暴勇、阻むもの無く
「ここがアヤカシの世界か。初めてのところはワクワクするね」
新たな世界――そして新たな敵、新たな戦い。
期待に胸を躍らせ、シモーヌ・イルネージュ(月影の戦士・f38176)は戦場に降り立った。
「早速だけど、そこのサムライ。助太刀するよ!」
「そうか、味方なら有難い。拙者は
竜胆、よろしく頼むぞ!」
「シモーヌだ、楽しくやろうぜ!」
打てば響くように名乗りを返したのは見るからに武人肌の偉丈夫。
裂帛の気合いと共に斬撃を放てば空気が震え、その剛剣は間合いの外を飛んでいた鬼面さえ叩き斬る。
「良い戦いぶりだ、アタシもアゲていこうか!」
【鬼火翔け】――戦士としては幸いな事に、
獲物にはまだまだ事欠かない。
鬼火を噴出しながら高速で突撃してくる妖に、シモーヌは黒槍『新月極光』を構え相対する。
「風とともに舞い、すべての力を吹き飛ばす盾と成り、刃と化せ」
『――――!?』
風車のように回転させた黒槍が鬼火を散らし、そのまま風圧と薙ぎ払いを以て鬼面をも叩き割る。
新手の力量も分からぬまま愚直にも正面から突っ込んできた鬼面の一団は【
烈風打破】の前に一網打尽。
黒き回転は全ての攻撃を防ぎ止め、多勢を物ともせずに吹き飛ばし、薙ぎ払う。
「洗練された技だ。良き武を見せてくれる!」
「そいつはどうも。ただ、この技は正面の相手が専門でね」
「成程な、承知した!」
どちらからともなく背中を預け、呼吸を合わせる。
警戒し変則的な方向転換を活用する鬼面を時に力尽くで捻じ伏せ、時に竜胆の牽制とシモーヌの迎撃で薙ぎ払い、絶えず襲い掛かる鬼面の群れを次々と蹴散らしていく。
「ふむ……」
大立ち回りを繰り広げる片手間に、少し考える。
そんな余裕があるのは戦い易いからだ。
救援対象だった
竜胆が足手纏いという事は無く、シモーヌと連携する太刀筋は豪快だが的確。
確かに敵の策略で彼が孤立していたのは事実ではある。
自分の助力が無ければ時間こそ掛かっただろうが、その武勇と返り討ちという予知がどうにも結びつかない。
「
如何したか、シモーヌ?」
「まぁいいか。いや、なんでもない!」
答えの出ない謎を放り捨てる。
順当に勝てるならそれで良し、竜胆の実力をして及ばない程の困難が立ち塞がるならそれも良し。
そこに不安や憂いは無く、唯まだ見ぬ強敵への期待が戦士の胸を弾ませる。
「はは、いくらでも敵がいるな、ここは!」
「まだまだ序の口よ、雑兵を散らせば大将首はもっと手応えがあるぞ!」
「そいつは楽しみだな! 早いとこ平らげてボスにお目に掛かるとしようか!」
まずはウォーミングアップ代わりの大暴れ、快進撃は軽やかに。
大成功
🔵🔵🔵
鐘射寺・大殺
ここが、アヤカシエンパイアの東か。なるほど随分と荒れておるな。
よっぽど激しい戦があったようだのう!
さて、此度の遠征は武者たちとの共闘であったな。
よし、あの薙刀を持っている豪傑に加勢するぞ!!
【炎の魔王軍】を引き連れ、《悪のカリスマ》《大軍指揮》で統率するぞ。
敵は宙に浮いておるの、ならば飛び道具で攻めるがよいか。
戦力配分としては、今回は騎兵と歩兵を少な目に。その分弓兵と
宮廷魔術師を多めに編成しよう。
まずは《エネルギー弾》《矢弾の雨》を放ち、遠距離攻撃せよ!
ある程度ダメージを与えたら、我輩は
ワイバーンの有栖川に騎乗し、空中から襲撃してやろう。
グワハハハハ、お面など《引き裂き》蹴散らしてくれるわ!!
●進撃の魔王軍と薙刀の豪傑
「ここが、アヤカシエンパイアの東か。なるほど随分と荒れておるな」
鐘射寺・大殺(砕魂の魔王・f36145)は破壊の痕跡も色濃い周囲の地形を睥睨する。
平安結界に護られた……その実、
禍津妖大戦によって妖蠢く死の大地と化した世界。
「よっぽど激しい戦があったようだのう!」
特に最大の激戦地となった東国の荒廃は他の地域と比べても群を抜いている。
いずれこの地の復興に臨む日がどれほど先になるか、それは現時点では杳として知れない事だが。
今はそれよりも――。
「さて、此度の遠征は武者たちとの共闘であったな」
その所在は上空を飛び回る鬼面の行く手を見れば明瞭だった。
地を揺るがし天を衝く程の衝撃波。
身の丈より更に長大な大薙刀を振るう豪傑が、押し寄せる鬼面の群れを相手に大立ち回りを繰り広げている。
「よし、あの薙刀を持っている豪傑に加勢するぞ!!」
雄々と轟く鬨の声。
剣の悪魔の魔王が号令に従い、異境に顕現した【炎の魔王軍】が隊列を組む。
気風漂う圧倒的な存在感は豪傑、そして鬼面たちの意識を引き付けるに充分で。
「むっ、これは面妖な。さては妖どもの新手か!!」
「加勢するぞ!!!」
「なんだ味方か!!!」
不幸な行き違いは無かった。よかった。
【鬼火翔け】――
ユーベルコードを扱う敵は有象無象の妖とは一線を画するが、大殺麾下の魔王軍とて後れを取るものではない。
朗々と響く号令に従い、戦局に合わせ編成された軍勢のエネルギー弾と矢弾の雨が鬼面の群れを迎え撃つ。
本能のままに暴れるばかりの鬼面に戦術や連携という思考は存在せず、その動きは容易く乱れた。
「俺は坂東武者が末席に名を連ねる者、武者小路
堕留遁! 加勢に感謝する!」
「フハハハ、良い心掛けだ! ではこの鐘射寺大殺の力も見せてやるとしよう!!」
平安らしからぬ響きの名前は異世界の系譜を汲んでいるのかもしれないがそれはさておき。
空中の敵を物ともせず薙ぎ払う豪傑に手柄を独占はさせまいと、
黒鱗黒翼のワイバーンを駆り大殺もまた飛翔する。
魔王軍の攻撃で手負いとなり鬼火の弱まった妖では魔王の武勇に太刀打ちできる筈も無い。
「グワハハハハ、お面など引き裂き蹴散らしてくれるわ!!」
「ぬぅ、俺も負けてはおられんな! 飛ぶか!!」
「飛ぶのか!!」
流石に飛行ではなく跳躍の類だったが本当に撃破ペースが微増した辺りは坂東武者の底力か。
魔王軍の援護を受けながら競い合うように妖を狩る二人が鬼面の群れを殲滅するのに、そう時間は掛からなかった。
大成功
🔵🔵🔵
天宮・紫苑
アドリブ・連携:可
初めての世界というのは何時でも少々緊張するものですね。
「それでも、いつも通り……敵は確実に打ち倒すのみ」
坂東武者さんに助太刀するといたしましょう。
「横入り失礼、助太刀に参りました」
現地に到着と同時にUCを発動します。
UCを発動してしまえば、後は時間の問題です。
坂東武者と自身の安全を優先して、無理をしないように敵の相手をします。
防御と回避を重視しつつ、坂東武者に向いているものを優先して攻撃します。
「これはまだ前哨戦……無理せず怪我なく行きましょう」
●闇を以て妖を祓う
初めての世界――未知の戦場、未知の敵。
情報が不十分である事の危険性を知ればこそ、天宮・紫苑(人間の魔剣士・f35977)の緊張は自然な事だった。
「それでも、いつも通り……敵は確実に打ち倒すのみ」
その程度では臆する理由にならないのもまた、紫苑にとっては当然の事。
転移した先は既に敵の策によって隔絶された空間。
夥しい数の鬼面の群れが襲い掛かる先に意識を向ければ、妖の軍勢と単身渡り合う坂東武者の姿がある。
「よもやこの東国、平安結界の外に単なる迷い子という事もあるまい。何者か」
「横入り失礼、助太刀に参りました」
紫苑の訪れと共に一帯を覆うは【黒影の領域】、闇のオーラは触れた敵の生命を吸収する。
飛び交う鬼面の動きが不意を突かれたように乱れる。
数こそ多いが個々の実力には幾分劣る尖兵、此度は領域の射程外へ逃れる程の力も持たないと見ていいか。
「不躾な誰何を詫びよう。私は坂東武者が末席、
如月と申す」
「お気になさらず。猟兵の紫苑と言います」
短い名乗りを交わしながらも油断は無く、生命を吸収されながらも鬼面の放つ【爆裂鬼火】への対処は同時。
砲弾の如く襲い掛かる鬼火を危なげなく受け流し、広がる恨みの炎がもたらす灼熱も冷静に見極め影響外へ逃れる。
返す斬撃で手近な面を叩き斬り……深追いはしない。
集中砲火を浴びせんと残る鬼面が集まるのを察知すれば、包囲が完成する前に地を蹴り立ち位置を変えて。
「連中、目に見えて弱っているな。この術の力か」
「敵に逃れる力が無い以上、後は時間の問題です」
盤面は整った。
空中を飛び交う鬼面の群れも力尽きるまで長くは掛からないだろうが、死に物狂いの抵抗は最後まで油断できるものではないと改めて口にするまでもなく知っている。
高い技量と冷静な判断力に裏打ちされた如月の立ち回りは奇しくも紫苑と似通ったもので、故に合わせやすい。
互いに死角を補い合うように、時として力尽き墜落する動きさえ最期の突進に変える鬼面の猛攻を捌き続ける。
「これはまだ前哨戦……無理せず怪我なく行きましょう」
「承知した。血気に逸るのも未だ尚早か」
ややもせず、最後の鬼面が地に墜ちて……
残心を取る武者と魔剣士、二人の姿には傷らしい傷も無く。
大成功
🔵🔵🔵

アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。
美少女武者ならテンションあがるけど、いぶし銀のイケオジ武者も捨てがたい(つまりおまかせ)
ま、誰であれ救うことには違いはないわ、妖刀『薄墨爛漫桜』を手にいざ参る。
命を惜しめ、惜しんだ上で捨てて拾って切り捨てよ。ナマクラはそうして鍛えて、そうして躾けて、ようやっと真打ちと呼べようものよ。(詠唱……と見せかけて薄墨爛漫桜の
中二病に火を灯す
ポエム。捏造可)
鯉口を切り、
神速の抜刀術。ただの一閃ではあるが
多重次元屈折現象による
剣戟結界で無数の鬼面を
一気に切り捨てましょう。
「秘剣、裏桜花・
裂乱」
演出としては納刀後一泊遅れて血桜を咲かすイメージで。
ま、雑な範囲攻撃では取り零しもあるだろうけど、坂東武者と協力すれば残党処理も早く終るでしょう。
●繚乱、或いは虎視眈々
「加勢ですか、敵の術を破……あ、あれ? 女の子?」
「心配しなくていいわよ、加勢だから♡」
ぱぁっと輝いた武者の顔が困惑に変わるのと対照的に、アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の
混沌魔術師艶魔少女・f05202)はにんまりと笑みを浮かべた。
年季の入った魔銀の業物を振るい、上空より襲い掛かる鬼面の群れ相手に大立ち回りを繰り広げる純真そうな少女――いや、少女ではない。アリスには分かる。
「これは大当たりかしら? 燻し銀(物理)は兎も角」
「大当たり……?」
「こっちのハナシ❤」
さておき、誰であれ救う事に違いは無い。
「刀型東方妖怪、妖刀『薄墨爛漫桜』」
少女がおもむろに【妖刀『
薄墨爛漫桜』】を抜き払えば、それだけで場の空気が塗り替わる。
「命を惜しめ、惜しんだ上で捨てて拾って切り捨てよ」
口ずさむように謡いあげ、おもむろに鯉口を切り一閃。
届く筈がない。鬼面の群れが所狭しと飛び交う上空は妖刀の間合いの遥か外だ。
「ナマクラはそうして鍛えて、そうして躾けて、ようやっと真打ちと呼べようものよ」
「…………っ!」
まさか、と坂東武者がアリスの視線の先を追う。
違和感に気付くのはそう難しくない。
忙しく飛び回る鬼面の【鬼火翔け】が、その一角だけ凍てついたように静止していたのだから。
「――秘剣、裏桜花・
裂乱」
空間が歪む。
神速の抜刀術は多重次元屈折現象を引き起こし、生じる剣戟結界は巻き込まれ撓む領域圏内を斬り刻む。
残心からの流麗な納刀、一拍遅れてズタズタに引き裂かれた鬼面が血桜を散らし消滅していく。
「わぁ……!」
「という事でお手伝いに来たわ。あなたの名前を聞いてもいいかしら?」
「は、はい! 僕は
葉月と言います!」
「アリス・セカンドカラーよ。よろしくね❤」
可憐な外見と魔性の魅力、
心の青春に火を灯す詠唱と絶世の剣術。
より取り見取りに詰め込まれた属性は
第一印象で葉月の
少年心を掻っ攫うのに充分過ぎた。
「ま、大味なのは玉に瑕だけど。取り零しの処理は手伝ってくれる?」
「任せてくださいっ!」
空間の限定された戦場とはいえ上空を埋め尽くす程の鬼面の群れを、妖刀の一振りが無造作に消し飛ばす様は寧ろ爆弾でも投げ込むに近いか。
網の目をすり抜けるように斬撃から逃れた鬼面へと機敏に間合いを詰めては一刀の下に斬り裂く葉月の姿には猟犬めいた健気さと小動物のような愛嬌がある――ように見えるのはアリス視点だからだろう。
なお当然のように空中ダッシュしているのが坂東武者のデフォルトなのか葉月クオリティなのかは定かでない。
「散りてその血で刃を磨け。斬りて喰らうが刀の理、喰い研ぎ澄ますは唯斬る為に」
「喰い研ぎ澄ますは唯斬る為に……」
「あら、興味があるなら教えてあげてもいいわよ? 手取り足取り、じっくりと❤」
「いいんですか!? ……あぁいえ、これは純粋にアリスさんの剣術への好奇心でですね……!」
敵の多勢を良い事に当たるを幸いの大雑把さで繰り返す超越の抜刀、その絶技と詠唱に見惚れながらも高速で翔ける鬼面を息一つ乱さず正確に両断する魔銀の剣閃。
仮にも
超常の御業を扱う妖の大群を相手取りながら、殲滅など片手間に済ませてしまえる余裕がある。
それはつまり……葉月たち坂東武者をして返り討ち必至の罠がこの先に待ち構えているという事。
「ふふっ、楽しみね❤」
「ええ。他種の妖を従える首魁は、配下全てを合わせたより猶強いと相場が決まっていますから」
戦意は一向に衰えぬまま、顔を上気させ気合いを入れる葉月。
この先に待ち受ける危機を彼は未だ知らない――。
大成功
🔵🔵🔵
カイム・クローバー
↓
警戒心の強い坂東武者に睨まれるが、ンなモンは涼し気に受け流して。
我が物顔で空を飛んでるアレが標的かい?なんて問いかける。
何者だ、なんて聞かれたらこう、答えようか。
──ゴミ掃除を依頼された便利屋さ。
男口調で面皰を付けた武者の顔は見えず。
只、声で女らしいことは分かった。実直で忠誠心が強い性格らしい、鎧のアチコチが欠けてるってのに、声には疲れが微塵もない。
武者からすると、決闘に水を差した邪魔者、ぐらいの扱いかもな。
ま、良いさ。
お節介で休んでな、って告げたつもりだったが、刀をこっちに向ける始末。
どうやら、俺は敵ではなくとも怪しい存在扱いらしい。
肩を竦め──オイオイ、敵はアッチの方、だろ?
(銃口を武者の真後ろから飛来した面に向けて、銃撃)
納得はしていないようだが、一時共闘ってワケだ。
UCで次々撃ち抜いて、息がある相手には武者が止めを刺す。
押し寄せる面を寸断なく両断する技の冴えはなかなかのモンだ。
ま、軽薄でヘラヘラした男はお嫌いの様で、終始険しい眼差しがこっちに向かって来てる気がするが、ね。
●月のこころは冬模様
第六感という程のものではないが、何とはなしに雰囲気から感じ取れる事もある。
怪訝、緊張、警戒心……完全武装に顔を隠した坂東武者の友好的とは言い難い視線を涼しげに受け流し、上空を我が物に飛び回る鬼面の群れをカイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)は物見遊山のような気楽さで指さした。
「なぁ、アレが標的かい?」
「……何者だ」
事前の説明を抜きにしたとしても答えは傍目にも明らかだ。
会話の取っ掛かりにと投げかけた言葉に直接の返事は無く、代わりに不機嫌な誰何が向けられる。
「──ゴミ掃除を依頼された便利屋さ」
その程度で常の余裕が揺らぐ事もなく――やや困った事に――どこか煽るように軽薄な笑みも常通り。
(さて……と)
彼女の実直な気質は声の調子だけでなく、迷いの無い戦い様の力強さからも見てとれた。
時として鬼面の【鬼火翔け】を直接に捌く鎧は所々が欠けながらも、まるで疲弊を感じさせる事が無い。
(名前が彫ってあるっぽいのはまだ触れない方がいいのかね)
鎧の端の方、影になる部分に刻まれた
早月の二文字はひとまず見て見ぬふりをしながら。
加勢など無くとも倒しきるという自負があればこそ、彼女には救援も寧ろ邪魔者と映っているのかもしれない。
「ま、良いさ」
「ふん。命を無駄にしたくないなら、余計な真似はしない事だ」
カイムとしてはお節介で休んでいるよう告げたつもりだったが……
早月の刃はそちらにも向く始末。
やれやれと肩を竦めたすぐ傍を斬撃波が通り過ぎ、その背後に迫っていた鬼面を叩き斬る。
どうやら巻き込まれて死ぬ事は無い程度に守ってくれるつもりはあるらしい。
同時、邪魔をするなら容赦はしないという警告も兼ねていたのは間違いないだろうが。
「──オイオイ。敵はアッチの方も、だろ?」
意趣返しのように双魔銃をクイックドロウ、早月の真後ろから飛来した面を撃ち抜きウィンクを飛ばす。
相変わらず顔は面皰に隠れ見えないものの、その奥で苦虫を噛み潰した表情をしているのはなんとなく分かった。
「気に食わん。小賢しい分断も、雑魚の群れも、胡乱な新手も……さっさと終わらせるに限る」
「一時共闘ってワケだ。Don't think, feel! 楽しくいこうぜ?」
紫雷纏う【
銃撃の輪舞曲】、百と五十に迫る研ぎ澄まされた銃撃が鬼面の群れを蹂躙する。
景気よくばら撒かれる銀の弾丸に追い立てられ、或いは被弾のダメージで高度を下げた面を薙ぎ払うは早月の剛剣。
この世界の一般的な坂東武者と言えば、妖を自らに憑依させる術を除けば無能力者であると聞いているが……押し寄せる面を纏めて両断する技の冴えは中々のものだと口笛一つ。案の定睨まれた。
(ま、軽薄でヘラヘラした男はお嫌いの様で……終始険しい眼差しがこっちに向かって来てる気がするが、ね)
余所見するだけの余裕があるのは良い事か、と笑みを苦笑の色に変えつつ。
坂東武者の御機嫌以外に危険らしい危険も無く、やがて鬼面の群れは残らず一掃されて。
危険な妖の群れの征伐は順調に進んでいた。
……かのように思われたのだが――――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 冒険
『歌会に潜む闇』
|
POW : 参加者のふりをして歌会に潜入する
SPD : 警備の者のふりをして歌会に潜入する
WIZ : 給仕の者のふりをして歌会に潜入する
|
●窮極結界MIYABI
坂東武者と協力し膨大な鬼面の群れを全滅させるのと殆ど同時、戦場の空間に異変が生じる。
武者たちを分断していた妖しい鬼火は霧へと変わり、東国の荒野に似つかわしくない煌びやかな御殿が現れた。
「ホッホホホホ……麻呂は天狗様の右腕にして最後のしもべ、とても高度な結界術を操る妖……」
声の主は姿を見せる事なく、耳障りな笑い声だけを響かせる。
まるで平安結界の内側、都の宮中を思わせる光景。
あなたたちを取り囲むように貴族らしき人々の姿もあるが、いずれも実体無き幻のようだ。
「そち等は時の流れぬ牢獄に囚われたのじゃ。永劫その力を天狗様の養分として捧げ続ける事、光栄に思うがよい」
猟兵によってはこの時点で違和感に気付くだろう。
閉ざされた異空間の概念的な頑強。封鎖は不自然な程に強力で、何らかの絡繰がある事は間違いない。
「なに、逃れたいならばそこで“
雅”を示せばよいだけの事。尤も野蛮な武者共には天地が百度ひっくり返っても不可能であろうがなぁ! ホーホホホホホッ……!」
言われてみれば何かを待ち望むような
貴族の幻影に囲まれた状況は平安式オンステージ状態と捉えられなくもない。
恐らくは突破方法を態々説明した事も含め、条件を付ける事で本来有り得ない程に術の強度を高めているのだろう。
その強固さから逆算するに、要求される“
雅”とやらのハードルは極めて低いと察せられる。
……問題があるとすれば本来の標的であった坂東武者か。
此度の戦いに臨んだ者は武に全てを捧げてきたが故に学問・作法・芸能といった分野に非常に弱い。
如何に強大な妖にも一歩も引かない無双の強者は今、気品漂う宮中の雰囲気に呑まれ完全に心が折れている。
此処はすっかり借りてきた猫のようになってしまった彼らに代わり、猟兵が一肌脱ぐ必要があるだろう。
※という事で箸休めの大喜利フェイズ……もとい恐怖の幻術結界です。
一句詠んだり踊ったり、料理裁縫彫刻漫才エトセトラ、芸術っぽい事なら何でも“
雅”判定で結界を破壊可能。
特に坂東武者と協力せずとも突破できますが、折角なので巻き込んでみるのもよいでしょう。
ただし今回の坂東武者たちは上品な雰囲気に本能的に弱い為、野に咲く一輪の花より無力になっています。
なお結界破壊と同時に仕掛け人の妖も爆死するため、この章突破後はそのまま天狗とのボス戦になります。
区切・終
あ?雅?んなもん知ったこっちゃないが、打破しないといけないようだな。生憎こちらは話のネタには事欠かない。
「――こんな話がある。一人の武士を目指す男の話だ」
キセルパイプを扇子代わりに始めるのは『落語』。
平和な平安時代に『武士』であろうとする男。しかし仕えるべき主君も居らず、当然なことながら死地もない。どうにか主君と死地を求めて歩んでいく。その道中で本人にしか見えない化け物退治と洒落込んだり、主君をようやく見つけたと思いきやそれはからかわれているだけで――と、概ねドン・キホーテの翻案だ。いいところでわざと切り上げようとする。
ぶっきらぼうな男だが芸事には秀でている。
「……さて、続きは聞きたいか?」
●Rakugo-the-overkill
「あ? 雅?」
乱暴に頭を掻きながら目を眇めたのは区切・終(飢餓文学・f42796)。
見れば観客役らしき貴族の幻影、塩を掛けられた青菜の如き元坂東武者、無暗に強固な妖の結界。
絵面はさておき、曲がりなりにも武力では破れぬ死地であった。
「んなもん知ったこっちゃないが、打破しないといけないようだな。生憎こちらは話のネタには事欠かない」
ぶっきらぼうな様子は不機嫌を隠す気も無く、しかし其処には不安も迷いも無い。
為すべき事は分かっている。ならば為すまでの事。
「――こんな話がある。一人の武士を目指す男の話だ」
座布団の敷かれた舞台にどかりと腰を下ろし、キセルパイプを扇子代わりに始めるのは『落語』。
平和な平安時代に『武士』であろうとする男。しかし仕えるべき主君も居らず、当然なことながら死地もない。
どうにか主君と死地を求めて歩んでいく。その道中で本人にしか見えない化け物退治と洒落込んだり、主君をようやく見つけたと思いきやそれはからかわれているだけで――
話の大筋は概ねドン・キホーテの翻案だ。
モデルがあるだけ語るのは容易い……そんな事は無い。そのように安い仕事を彼はしない。
『騎士』を『武士』に差し替えたが故の細部の変化。
聞き手である平安貴族(幻だが)に合わせたエピソードのチョイス、テンポを損なわない程度の設定の補足。
何より終が選んだのは単なる文章ではなく落語、即ち語りの芸である。
声の調子に表情、淀みなく紡がれる言葉の緩急。
扇子代わりのキセルパイプ一つを時に刀、時に筆や釣り竿と様々に見立て高座の上、男一人で無数の登場人物が繰り広げる人間模様を演じてみせる。
(ふん……中々どうして悪くない)
物語に演じる悪役とシンクロするように口の端に悪どい笑みを浮かべる。
妖の罠だという結界、幻に過ぎない平安貴族たち。それと途方に暮れる迷い犬と化した坂東武者。
なんともつまらない舞台にも思えたが……邪魔が入らないのは当然として、夢中に聞き入る聴衆の姿。
さながら掌で踊らされるように話の展開に一喜一憂する様子は語りの手応えを掴むに十分なものだ。
物語はいよいよ佳境。
主人公を騙そうとする悪党、垣間見える不審な様子を疑問に思いながらもその悪意には気付かない主人公。
時に奇妙なすれ違いの生むちょっとした喜劇を挟みながら、遂に真相が白日のもと晒されて――
おっと、と物語から意識を引き戻すわざとらしい声。
話を切り上げる素振りを見せ、身を乗り出す聴衆をにやりと見渡す。
「……さて、続きは聞きたいか?」
『お、おのれ本職の風流人が紛れ込んでいようとは……ぐわあああああああああ!!』
突然に響いたのは結界を張った妖の断末魔。
許容量を超えて溢れた
雅は結界を破壊し、術者を爆散させて猶も足りない反動は天狗にまでダメージを与える。
「御後が宜しいようで」
大仰な散り様に溜息一つ、消えゆく幻に一礼で〆て。
大成功
🔵🔵🔵

アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。
あらあら、結界術なら私もエキスパート、この程度なら鵺鳴く夜で破れるけれど……まぁ、ここは”
雅”とやらにノルといたしましょうか。
坂東武者でも、いえ坂東武者だからこその”
雅”もあることだしね。
武と舞は互いに相通ず。つまり剣舞。研ぎ澄まされた武の極致は舞と同一となる。
とかなんとか説明しながらこっそりと葉月さんの魔銀の業物に薄墨爛漫桜の分霊を
株分けして、人造生命の創造と武器改造で付喪神化させちゃいましょうか。
さぁ、葉月さん。あなたにも聞こえるはずよ、その愛刀の声が。今ならあなたの”
雅”を見せてあげられるでしょう?
●叫べ、我が名は――
「あらあら、結界術なら私もエキスパート、この程度なら鵺鳴く夜で破れるけれど……」
一変した戦場を見渡すアリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の
混沌魔術師艶魔少女・f05202)の表情は不敵な笑みを崩す事無く、視線の先には池に投げ込まれた泳げない犬のように生気を失っていく
葉月の姿。
「まぁ、ここは”
雅”とやらにノルといたしましょうか」
打ちひしがれる少女――もとい少女と見紛う少年武者の元へ、
ユーベルコードの妖刀を携えたまま歩み寄る。
せっかく加勢に来たのだ。坂東武者でも……否、坂東武者だからこその”
雅”を示すのも一興だろう。
「武と舞は互いに相通ず。つまり剣舞。研ぎ澄まされた武の極致は舞と同一となる……お分かりかしら?」
「ぅ……うぅ、ん……」
(これは重症ね……)
結界の効果以前に雰囲気でダウンしている葉月だが見方を変えれば精神的に無防備という事。
邪な意味だけでなく――アリスの技量を以てすれば暗示・教導の類に活かす事も難しくない。
「研ぎ澄まされた武の極致は舞と同一となる。あなたの鍛えてきた武は
雅にも通じる筈よ」
等と吹き込む言葉は目的の半分。
葉月の扱う魔銀の業物へ自然に手を触れ宿すは株分けした薄墨爛漫桜の分霊、魔術的パラダイムシフトによる世界観の転換をコンセプトとする混沌魔術が付喪神としての新たな生を創りだす。
「ところであなたの装備、随分と使い込まれているわね」
「はい、お
祖父様のそのまたお
祖父様の代から伝わる当主の証で……」
メンタルケアも概ね完了。
人語を発せられるまでに持ち直した葉月の話を聞きながら、魂の定着した手応えに一つ頷く。
「ならばきっと応えてくれるわ――さぁ、葉月さん。あなたにも聞こえるはずよ、その愛刀の声が」
「あはは……確かに憧れはしますけど、そんな奇跡のような話……が……っ、まさか
……!?」
聞こえる……と、感激に打ち震える声。
元より先祖伝来の得物が正当な継承者と相性の悪い筈もなく、更に言えば付喪神には薄墨爛漫桜――ユーベルコードの使い手であるアリスの要素も含まれている。即ちノリが良い。
少年
心に直撃する展開、まして我が身の事ともなれば興奮の程も察せようか。
「今ならあなたの”
雅”を見せてあげられるでしょう?」
「『生きれば死に、死ねば生きる。我等、
唯妖を斬るものなれば』」
(ハジメテでこの適応力……中々の資質(青春力)(中二病)ね❤)
刀と共鳴するように熱に浮かされた様子で謳いあげる早月を見守る。ノリノリである。
抜刀、何らかの剣術の型を繰り出す早月の動きは先の鬼面と戦った時以上に鋭く冴えて。
「『――斬り咲け、
銀月地獄花』」
『馬鹿な、挫折からの復活ばかりか新たな力の覚醒展開だと……!? ぐわあああああああああ!!』
残心、目線を向けてキリッと決めれば響くは結界を張った妖の断末魔。
許容量を超えて溢れた
雅は結界を破壊し、術者を爆散させて猶も足りない反動は天狗にまでダメージを与える。
或いは新生した魔銀の剣閃に散るように、幻の結界は崩れ去るのだった。
大成功
🔵🔵🔵
シモーヌ・イルネージュ
『をかし』を示せばいいんだな?
だったら、持ってるよ。
チョコバーと飴だけど、これでいいか?
お菓子じゃなくて、雅??……そういうことは早く言えよ。
でも、それはヤバいな。
そういうのは得意じゃないんだ。竜胆なんとかならないか?
こんなことなら、騎士団の講習、ちゃんと受けとくんだったな……
手持ちの中で何とかなりそうなのは。
ショットガンの弾の中から火薬を取り出して、
UC【炸裂星雨】を使って、空にぶん投げれば、即席花火の出来上がり!
これで雅を稼ごう。
●
幻は火の花と散りゆきて
「『をかし』を示せばいいんだな?」
シモーヌ・イルネージュ(月影の戦士・f38176)は慌てず騒がず。おもむろに懐をごそごそと漁る。
「だったら、持ってるよ。チョコバーと飴だけど、これでいいか?」
『お菓子ではないか!!』
ブブー、と効果音が響いた。
『この場で“をかし”とは即ち雅! ただ取り出すだけでは風流も趣もまるで足りぬわぁ!』
「お菓子じゃなくて、雅?? ……そういうことは早く言えよ」
ぼやく。
惜しい手応えはあった気もしなくもないがお菓子では不足か。
シチュエーションを演出する小道具として用いる等、有用な発想がスムーズに出てくるなら苦労は無いのである。
「でも、それはヤバいな。そういうのは得意じゃないんだ」
シモーヌの気質も生粋の戦士のそれであり、さらりと洒落た一句を詠むような柄ではない。
困った、と同じく結界に囚われた道連れを見る。
「竜胆なんとかならないか?」
「…………うぐ、ぅ……」
「し、死んでる……」
命に別状は無いのだが先刻の豪胆に比べれば死人に等しい。
がっかりしてめそめそしている坂東武者は横にさせつつ頭を捻る。
「こんなことなら、騎士団の講習、ちゃんと受けとくんだったな……」
最初に聞かされた説明によればこの結界は時の流れない牢獄、幸か不幸か時間の流れを気にする必要は無い。
ひとまず荷物を並べ、どうにか状況を打開しようとチョコバーを齧りながら考える。
「そうだな、何とかなりそうなのは……」
目を付けたのはショットガン。
弾種変更で様々な任務に対応可能な弾丸の中から一般的な火薬を選んで取り出し、さて、と宙に放り投げて。
「我に従え。我が尖兵となり、その姿を、力を大地に示せ」
【
炸裂星雨】――その手より放たれた火薬は空中で分裂し、爆発を連続させる。
『ホーッホホホホ、無駄な抵抗よ! この結界を武力で破壊する事は出来ぬぅ!』
「そうかい。でもさ、即席とはいえ……綺麗な花火だろう?」
『ッ
…………!!!』
「お、効いてるな?」
分かり易い反応に安堵の息を吐き、ぽいぽいと追加の花火を打ち上げる。
一発ごとに結界が震撼し、空間に入った亀裂から崩壊が始まって。
『し、しまった……麻呂とした事が、このような手で結界を破られるなど……! ぐわあああああああああ!!』
響く痛恨の断末魔と共に結界は打ち砕かれ……舞台は再び戦場へと回帰を果たす。
大成功
🔵🔵🔵
鐘射寺・大殺
ぬう、出口が見当たらぬ。妖が生み出した幻術か!
なんと、この魔王に芸を披露して楽しませよと申すか。
…よかろう、我輩が本当の宮廷音楽というものを聞かせてやろう。
ただし、デビルキング流のな!!
殺害ギターX-DEATHを携え、《楽器演奏》で
ゴリゴリに歪ませたヘヴィメタル・ギターサウンドを奏でる。
フハハハ、悪魔の音楽といえばメタルに決まっておろう!
耳の穴かっぽじってよく聞くがいい!
ギターの音圧で生まれた《音響弾》《衝撃波》に、
《覇気》をのせたシャウトを幻影どもに目掛けてぶつけてくれるわ。
「我輩の歌を聞けっ!!」
グワハハハ、未体験の衝撃に皆ひっくり返っておるわ。
平安貴族には些か先鋭的すぎたかのう!!
●砕魂の魔王――或いは雅の破壊者
「ぬう、出口が見当たらぬ。妖が生み出した幻術か!」
戦場の光景が一変するのと同時、抜かりなく視線を走らせた鐘射寺・大殺(砕魂の魔王・f36145)は閉じ込められた状況をいち早く察知する。
虚空に響く術者の声が告げるのはこの結界の
法則。
「なんと、この魔王に芸を披露して楽しませよと申すか」
不遜な要求に対し大殺の口許に浮かぶのは不敵な笑み。
デビルキングワールドに生きる住民のこうした状況への適応力は押しなべて非常に高いのだ(※魔王調べ)。
「……よかろう、我輩が本当の宮廷音楽というものを聞かせてやろう。ただし、デビルキング流のな!!」
ドドン、と取り出した悪魔的エレキギターはその名も殺害ギター・X-DEATH。
堂に入った構えから放たれるゴリゴリに歪ませたヘヴィメタル・ギターサウンドの旋律は瞬く間に空間を支配した。
「フハハハ、悪魔の音楽といえばメタルに決まっておろう! 耳の穴かっぽじってよく聞くがいい!」
幻術に作り出された結界空間に通常の攻撃は意味を為さない。
だが――“雅”であれば話は別だ。そしてこの結界に於いて“雅”の守備範囲は異様に広い。
ヘヴィメタの爆音は幻影の貴族や調度品を巻き上げ、文字通りの嵐を巻き起こす。
「我輩の歌を聞けっ!!」
覇気に満ちた【
魔王の威厳】の
シャウト、そこに生じる混沌の圧倒的破壊空間はまさに歯車的
雅の小宇宙。
雅とは魂を震わせるもの。
届く。メタルを知らぬ者にも、音に込められた魂が殴りつけるような力強さで伝播する。
平安の世界観にとって大殺のもたらした未体験の衝撃は、あまりにも。
「グワハハハ、平安貴族には些か先鋭的すぎたかのう!!」
『なんたる、なんたる暴虐……ッ! これが
文化的衝撃の力だと言うのか……! ぐわあああああああああ!!』
高らかな哄笑と破壊的旋律を轟かせ、砕魂の魔王が君臨する幻想宮廷に響くは術者の断末魔。
許容量を超えて溢れた
雅は結界を破壊し、術者を爆散させて猶も足りない反動は天狗にまでダメージを与える。
演奏のクライマックス、上機嫌なシャウトがトドメとなり結界は微塵に砕け崩れ去って。
大成功
🔵🔵🔵
天宮・紫苑
アドリブ・連携:可
“雅”ですか、確かにあまり馴染が無いものではありますが……。
「流石に苦手意識が強すぎませんか?」
今回はUCやら武力やらでは何ともならないようですが、
まぁ、やれるだけ頑張ってみましょう。
「といっても、私もあまり得意ではありませんが……」
坂東武者の如月さんの様子を見つつ、短歌でも詠んでみましょう。
「坂東に 猛る武の技 士の覚悟 地に膝つけど また立ち上がる」
「如月さん、ここで心折れたまま終わる、なんてことはありませんよね?」
それにしても、即席で作った短歌の出来は
「イマイチといったところですかね」
「これが“雅”判定されると良いのですが……」
●呼び覚ますは破れた矜持
「“雅”ですか、確かにあまり馴染が無いものではありますが……」
コミックや音楽に諸々の創作物、或いは実際に平安時代含む歴史に根差した文化の数々。
人並みに知ってはいるからこそ天宮・紫苑(人間の魔剣士・f35977)も、
雅を示すという突然のお題にハードルの高さを感じはする。するのだが……。
「流石に苦手意識が強すぎませんか?」
「この世界は……私の生きられる場所では……ない……」
「浜辺に打ち上げられた深海魚みたいな感想ですね……」
視線の先にはこの世の終わりのように消沈し打ちひしがれる
如月の姿。
結界がもたらす作用はまだ微々たるものだと言うのに、隅っこで小さくなり背景に同化しかけている様子は先程共闘した時とはダメな意味で見違えるようだ。
さて、と改めて現状を確認する。
武力に秀でた如月たち坂東武者を完封する為に無数の条件付けを重ね強化されたと思われる結界の頑丈さは出鱈目なレベル、ユーベルコードや武力で突破できるものではない。
とはいえその分、正規の攻略法として用意された“雅”のハードルは特に低い。
やれるだけ頑張れば勝算は充分にあると一つ頷く。
「といっても、私もあまり得意ではありませんが……」
“
雅”の披露というテーマでこれだと言える程に突出した分野の心当たりは無い。
ならば平安というこの世界、自分たちを封じ込めるこの結界に即したものなら相性が良い可能性はあるか。
朽木が風化するように色を失っていく如月を見ながら一首考える。
「――坂東に 猛る武の技 士の覚悟 地に膝つけど また立ち上がる――」
「…………む……ぅ……」
ぴくり、と僅かに反応があった。
武力を封殺し“雅”を絶対とする結界の内側なればこそ、示す雅に宿ったものが力を持つという事もあるだろうか。
「如月さん、ここで心折れたまま終わる、なんてことはありませんよね?」
「……そう、だな……坂東武者として…………妖に屈する、訳……には……」
刀を持つ手に力が戻る。
武ではどうにもならない領域で未だに無力である事に変わりはないが、魂が抜けているより余程上等だろう。
「それにしても、即席で作った短歌の出来は……イマイチといったところですかね」
自分でもなんとなく分かる。
まず上等な歌を詠む為の専門知識に明るくないのだ、現代に残るような名歌に及ぶべくもない。
「これが“雅”判定されると良いのですが……」
『お……おおお……あな口惜しや……斯様な詠の雅に麻呂の結界が……! ぐわあああああああああ!!』
「大丈夫だったようですね」
重要だったのは心――或いは短歌という形式のクリア。
無念の断末魔と共に結界は打ち砕かれ、舞台は再び戦場へと回帰を果たす。
大成功
🔵🔵🔵
カイム・クローバー
……お菓子?なんだそりゃ?
なぁ、アンタ。『お菓子』って何か分かるかい?
……ンな借りてきた猫みたいにビビるなよ。
要するに。あの
貴族の幻影がStanding ovationするような芸術を見せりゃ良い。
俺?句なんざ嗜むように見えるか?
絶望的だ、ってんなら諦めるのは早いぜ。
歌も踊りも演技も──最高の相棒が居る。(指鳴らし)
よぉ、カタリナ。察しの通りの状況だ。
お客様方が満足しないと俺を先に通してくれないらしい。
だが、生憎とそっち方面は疎くてね。頼りにしてる武者サマもあの状況だ。
悪いが、手を貸してくれないか?
舞を頼みたい。
舞台に合わせた、豊穣の舞のイメージ。
もう一つのUC、【便利屋の仕事】で白を基調とした露出の少ない舞姫のような衣装に彼女を変えて。
豊穣を意味する稲穂を手に、足首や手首に秋の季節を告げる小さな鈴。
舞台の中心で踊る彼女はさぞかし美しいだろう。
──俺が見たいだけじゃないか、って?
細かい事は良いじゃねぇか。ほら、きっと客席総立ちと拍手喝采はもうすぐさ。
●雅遊天粋、
幻影をも魅せて
「……お菓子? なんだそりゃ?」
結界を破る為に必要なのだという条件に空惚けてみせたのはカイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)。
単純な力では破壊不可能らしき結界、実態なき幻の他には先程共に戦っていた坂東武者一人のみ。
「なぁ、アンタ。『お菓子』って何か分かるかい?」
「ぅ……うぅ……菓子、違う…………
雅……」
その
武者と言えばガクリと音が聞こえそうな程に項垂れて刀を杖代わりに身体を支え、支えきれずにそのままズルズルと隅っこまで逃れて小さくなる。
震えているのかカチャカチャと具足の鳴る音も合わせ、夜に出くわせば落ち武者の亡霊にしか見えないだろう。
「……ンな借りてきた猫みたいにビビるなよ」
「ふ……仮に今は判らずとも後々になって自分の無作法と恥を思い知り精神的に死ぬ事になる……お前もなぁ……!」
「成程、こいつは重症だ」
命に別状は無い筈だが既に色々ダメになりつつある様子を見て肩を竦める。
恐らく程度の差はあるにせよ坂東武者たちが揃ってこの調子なら全滅の末路も必然か。
「要するに。あの
貴族の幻影がStanding ovationするような芸術を見せりゃ良い」
「滑れば末代までの烙印になるぞ……うっ古傷が……」
「俺? 句なんざ嗜むように見えるか?」
「……思えば恥の多い人生だった――」
「おいおい。絶望的だ、ってんなら諦めるのは早いぜ」
突発的自滅から走馬灯回想を始めそうになった早月を制し、にやりと不敵に笑ってみせる。
話は単純だ。雅、風流、芸術……それがこの結界の
法則なら勝算は充分以上。
勝利の分かりきった展開に恐れる事などありはしない。
「歌も踊りも演技も──最高の相棒が居る」
パチンと指を鳴らす音一つ、呼びかけに応えるは【
万華鏡の微笑】。
虹色に煌めく羽が舞い、人狼の旅芸人が
舞台に降り立つ。
「よぉ、カタリナ。察しの通りの状況だ。
お客様方が満足しないと俺を先に通してくれないらしい」
「大まかには予知していたけれど、なんとも……ユニークなシチュエーションだね?」
武力の通じない結界、死屍累々の坂東武者たち。
今にも天に召されそうな武者を視界の片隅に、言葉を選ぶ人狼と苦笑を交わす。
「だが、生憎とそっち方面は疎くてね。頼りにしてる武者サマもあの状況だ。悪いが、手を貸してくれないか?」
「勿論! お呼びとあれば力になるよ☆」
二つ返事に頷いた相棒へのオーダーは舞台に相応しい豊穣の舞。
自身も観客側に回る前に彼女に触れて【
便利屋の仕事】、演目に合わせた衣装を誂える。
「ステージの為のとっておきだ。頼んだぜ?」
「手際の良い事じゃないか。まったく……キミが見たいだけだろう?」
「細かい事は良いじゃねぇか」
ほら、と笑って送り出す。
――
紗蘭、と響く鈴の音色。
絡繰仕掛けの金糸雀は妙なる神楽笛の旋律を奏で、紡ぐ祝詞は厳かに空気を震わせる。
やがて歌と舞は静から動へ。躍動と共に金の長髪がたなびき、豊穣の喜びを意味する稲穂が揺れる。
短くも長くも感じられる時間が過ぎ去り――沁み入るような余韻を残し、舞は一礼で締め括られた。
沸き立つ人々を得意げに見渡し、軽い足取りでカイムの元へ戻る。
「
アタシの御仕事はこんなものかな。キミたちの活躍にも期待してるよ?」
「任せな、次はこっちが見惚れさせてやるよ」
『お、おのれ本職の風流人を呼び寄せようとは……ぐわあああああああああ!!』
舞手の退場と同時に響いたのは結界を張った妖の断末魔。
許容量を超えて溢れた
雅は結界を破壊し、術者を爆散させて猶も足りない反動は天狗にまでダメージを与える。
砕け散った結界が消え去る先、討つべき妖の首魁たる天狗の姿はすぐ其処に。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『天狗』
|
POW : 箒星
【流星の如く輝く霊力】によりレベル×100km/hで飛翔し、【スピード】×【加速時間】に比例した激突ダメージを与える。
SPD : 輝く星焔
高速で旋回する【星の如く輝く狐火】を召喚する。極めて強大な焼却攻撃だが、常に【天狗(アマツキツネ)が鳴き声】を捧げていないと制御不能に陥る。
WIZ : 天狗流星
レベル秒間、毎秒1回づつ、着弾地点から半径1m以内の全てを消滅させる【狐尾型の星光】を放つ。発動後は中止不能。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
●怒り猛るは妖の首魁
坂東武者たちを封殺する結界は崩れ去り、戦場は再び一変する。
もはや鬼面の姿も無く只管に広がる荒れ果てた古戦場、あなたたちの眼前に座すは一体の
天狗。
『異界の者ども……貴様らも平安結界などという往生際の悪い幻想に肩入れするか』
敵意と共に低く唸る妖は凶兆を告げる流星の化身。
力を吸い上げる筈だった結界が破壊され既に手傷を負っているが、無数の妖を従え災厄を振り撒く力は健在だ。
此処で逃せばそう遠くない内、人々の暮らしを護る結界に害を為す事は間違いない。
戦場の空気を吸って息を吹き返した坂東武者と共に討ち果たし、妖の征伐を完遂せよ。
鐘射寺・大殺
アレが妖軍団の親玉か。流石に先程のお面とは
妖気の格が違うのう。だが、これだけは断言しておくぞ。
我ら悪魔は、妖よりも絶対に強い!今からその証拠を見せてくれるわ。
【メタリックデビル】を発動し、巨大な悪魔型ロボットが
アヤカシエンパイアの大地に立つ。
グワハハハハ、これぞ魔王の権能よ!!
皆の者、ゆくぞ!と堕留遁はじめ
乗せられるだけの武者を体に乗せて《空中戦》よ。
振り落とされぬよう掴まっておれ!弓は持ったか!?
《武器に魔法を纏う》強化を施してやろう。
箒星と化した天狗を《空中機動》で追いかけ、破壊光線を撃って攻撃!
さらに暗黒剣を《ぶん回し》追撃をかけてくれるわ。
我らに挑もうなど千年早いわ、出直してまいれ!!
●空を征すは鋼の城
『滅びるがいい、皆悉く――』
「アレが妖軍団の親玉か」
超音速の【箒星】と化して飛翔する天狗の姿に鐘射寺・大殺(砕魂の魔王・f36145)は目を細める。
先に全滅させた鬼面全てを合わせたより猶も強大な妖気、圧倒的なポテンシャルを十全に活かすに足る体躯と技術。
数多の手勢を従え平安結界を破壊せんとするその力は妖の王たるに相応しい。
「だが、これだけは断言しておくぞ。我ら悪魔は、妖よりも絶対に強い!」
今も上空より殺意を撒き散らす流星の化身を見据え、しかし魔王の不敵な笑みは陰る事を知らない。
猟兵として重ねた知見と実力に裏打ちされた生来の
自負。
自信に満ちた高らかな哄笑は戦場に立つ坂東武者たちの士気をも引き上げる。
『吠えるがいい。貴様のような輩は実力で捻じ伏せるのが手早いものだ』
「此方の台詞よ。今からその証拠を見せてくれるわ」
溢れ出したのは光か闇か。
長身の少年の姿は消え失せ、
【メタリックデビル】がアヤカシエンパイアの大地に立つ。
「グワハハハハ、これぞ魔王の権能よ!!」
「天晴、なんと雄々しく勇ましく刺々しい姿か……!」
「皆の者、ゆくぞ!」
「「「応ッ
!!」」」
「振り落とされぬよう掴まっておれ! 弓は持ったか!?」
「「「応ともッ
!!!」」」
堕留遁をはじめとした坂東武者たち――結界破壊に伴い合流していたのである――が重装備を物ともせず飛び乗る。
変幻した魔王はその眼をギラリと輝かせ、箒星にも見劣りしない速度で飛翔した。
『小賢しい。一撃で打ち砕いてくれる』
「フハハハ! 者ども、奴に我等の力を見せつけてやるのだ!!」
「存分に射落としてやろう! ガハハハッ!」
『なにッ
……!?』
莫大な霊力による凄まじい速度、その全てを激突の破壊力と為す事こそ箒星の真骨頂。
生半可な攻撃を寄せ付けず大地をも粉砕する突撃が……武者たちの次々に射かける強弓を受けて揺らぐ。
違和感。
多少の手傷こそあれど必勝を確信していた天狗の計算が狂う。
『そうか、武者共に強化を……ッ!』
「判断が遅い!」
好機、体勢を崩した天狗を大殺の破壊光線がまともに撃ち抜く。
遂に
足の止まった獲物へ肉薄、ロボットの巨躯に見合う巨大な暗黒剣を振り被って。
「我らに挑もうなど千年早いわ、出直してまいれ!!」
『おの、れェェ
……!!』
勝負を決するは大上段からの黒き一閃。
怨嗟の尾を引きながら、災いの星は地に墜ちる。
大成功
🔵🔵🔵
天宮・紫苑
アドリブ・連携:可
後は親玉を倒すだけですね。
「往生際が悪いと言いますが、止めを刺せない程度の実力が妖の限界なのでしょう?」
坂東武者の如月さんに前衛を担って頂き、私はズルく立ち回りましょう。
隠れ潜んで不意を打つ、私らしくいきましょう。
「如月さん、姿を隠しての戦いが私のやり方なので……すみませんが、前衛はお願いします」
如月さんに伝えたらUCを発動、姿を隠します。
如月さんから離れすぎないようにします。
敵の攻撃にカウンターを狙う、もしくは、如月さんとの戦いで隙が見えたら攻撃します。
攻撃は全力で、攻撃後は姿は隠したまますぐに移動。
持てる技能の全てを使って確実に仕留めます。
「往生際良く、散ってください」
●戯言などは吐き捨ていけと
わざわざ正面に現れたなら話は早い。
後は親玉を倒すだけだと、天宮・紫苑(人間の魔剣士・f35977)は天狗の姿を見据える。
「往生際が悪いと言いますが、止めを刺せない程度の実力が妖の限界なのでしょう?」
『抜かせ。余程その命を捨てたいと見える』
「分かり易い反応をどうも。図星を突かれたと自白しているようなものです」
言葉の代わりに返ってきたのは衝撃波だった。
正確には天狗の【箒星】、音より速い飛翔の余波と言うべきだろう。
叩きつけるような暴力を受け流し、紫苑はその身に闇を滲ませる。
「如月さん、姿を隠しての戦いが私のやり方なので……すみませんが、前衛はお願いします」
「引き受けよう」
鬼面を掃討した時の怜悧を取り戻し、淡々と応じる武者の口許が僅かに笑みの形を作って。
「良い啖呵だった」
「ありがとうございます。……御武運を」
【黒影剣・気魄】――紫苑を覆った闇のオーラが揺らめき、そして視聴嗅覚の感知から消え失せる。
『尻尾を巻いて逃げたか。無様な事よ』
「そう思うなら油断していればいい。元より貴様を討つは我ら坂東武者の御役目だ」
『ふん。思い上がりが過ぎるぞ人間!』
「ッ……!」
上空での加速から一直線に放たれる突撃が生む破壊力は比喩でなく流星に等しい。
咄嗟の反応で受け流した如月の刀が半ばから圧し折れ、砕けた大地の欠片が散弾めいて撒き散らされる。
「――其処です」
一太刀。
吹き荒れる暴虐を突っ切り、攻撃直後の隙を逃す事なく叩き込んだ闇纏は生命力を奪う。
『小癪な……!』
「如月さん、まだやれますよね?」
「これで決める」
闇に身を隠した紫苑の声が聞こえる事は無い。武者の声がまるで返事のように重なったのは、きっと偶然だろう。
確かな事は――この天狗に再びの飛翔をさせはしないという共通認識。
武者が予備の刀を抜き払い、魔剣士が再び大太刀に渾身の力を込める。
『おのれ、人間風情がァ……!』
「往生際良く、散ってください」
それが妖の断末魔。
交差する斬撃が天狗を斬り裂き、此度の征伐に幕を引くのだった。
大成功
🔵🔵🔵
シモーヌ・イルネージュ
↑
雅はやっぱり性に合わないな。
肩が凝るよ。
やっぱりこっちの方が体が楽だ。
天狗がここのボスか。
これは強そうだ。
楽しめそうだね。
黒槍『新月極光』で戦うよ。
いざ勝負だ!
……とは言ったものの、こいつはヤバいな。
洒落になってないよ。
槍を合わせる前にこっちが消し飛びそうだ。
あれは反則だろ。
あんな物騒なものを出されたからには、
アタシも覚悟を決めるしかないな。
UC【獣性解放】を発動。
あとは野となれ山となれ、だ。
竜胆、悪いけど、後始末は任せるよ。
頼りにしてるからさ。
●星墜つ死地に衝動は目覚め
「雅はやっぱり性に合わないな。肩が凝るよ」
「全くだ、いや助かった! 大きな借りを作ってしまったな!」
「気にするなよ。アンタも復活したようで何よりだ」
やはり純粋な戦闘の方が気も体も楽だと、シモーヌ・イルネージュ(月影の戦士・f38176)は伸びを一つ。
宙に浮き悠然と見下ろす天狗に改めて意識を向ける。
「これは強そうだ。楽しめそうだね」
「無論、異種族の妖をも統べる紛れも無い王の一角よ!」
まだ十分に攻撃は届く間合いだ。
ただ存在するだけで肌の痺れるような威圧感に溌溂と笑みを浮かべ、構えるは極光の如き黒檀の槍。
「いざ勝負だ!」
『……ふん』
坂東武者と息を合わせた挨拶代わりの一撃が標的を捉える事は無かった。
恐らくは肉体を用いた運動ではなく霊力による移動。
単純な速度も然る事ながら、何より厄介なのは一切の予兆が無い事か。
「やりづらい小技を使うな。でも――」
『踊れ。それが蛮勇の対価だ』
「ッ、来るぞ!」
「っと
……!?」
本能と竜胆の警告はほぼ同時。
咄嗟に飛び退った目の前に星光が散り、直前まで立っていた空間が抉られるように消し飛ぶ。
足を止める暇もない。
半径1mという決して狭くない範囲を消滅させる【天狗流星】が、毎秒1回のペースで降り注ぐのだ。
ごく僅かな予兆を捉え星光が発動するまでの刹那、一度でも対応を誤れば事実上光速の攻撃を放たれてから凌ぐ術などそう有りはしない。
「……とは言ったものの、こいつはヤバいな。洒落になってないよ」
「シモーヌ、まだ生きているか!」
「なんとかね! あれは反則だろ……!」
交わす声で互いの無事を確かめる。
まだ健在らしい分だけ最悪からは遠いが、しかし拙い状況だ。
竜胆もシモーヌ同様、視線一つでも逸らす余力は無いという事なのだから。
三十と幾らかの流星をどうにか凌ぎ、敵の攻撃は一向に止まる気配が無い。
「あんな物騒なものを出されたからには、アタシも覚悟を決めるしかないな」
……故に、腹を括る。
「あとは野となれ山となれ、だ」
「シモーヌ?」
「封を解け。我が力を示せ。さすれば我は敵の血肉を捧げよう――」
ただならぬ気配を感じ取った坂東武者の声を他所に、呼び起こすは【
獣性解放】。
理性を喪失することで純粋戦意の戦闘体と化す、ある種の禁じ手。
「竜胆、悪いけど、後始末は任せるよ。頼りにしてるからさ」
「ああ、思いの外早く借りを返す事になりそうだ――任せろ、行ってこいッ!」
夢に微睡むように薄れる意識の中、交わした言葉はそれが最後。
言語にならない雄叫びが空気を震わせ、戦士は闘争心の命ずるままに飛翔する。
「――――――――ッ!!」
『貴様、よもや……!』
秒単位で立て続けに襲う星光の破滅は戦闘力を劇的に向上させた今のシモーヌでも容易に突破できるものではない。
牙を剥き獰猛に嗤う。
その身を星光が抉る。止まらない。肉が削げたのも寧ろ好都合だと言わんばかりに更に加速する。
彼女は元より多少の手傷を恐れはしないが、その手の勇猛とは次元が違う。
10倍にまで向上した回避性能――だというのに負傷を避けるという発想自体が存在しない。
致命傷さえ避ければ
より無茶な機動で強引に殴れるという、その一点にポテンシャルを集約させる。
或いは、だからこそと言うべきか。
天狗の思考が及ばぬ蛮勇は確かに、最速最短で獲物を戦士の間合いに捉えた。
渾身の一撃をその身に受けても天狗は容易く沈まない。
構わない。激痛に怒り狂う妖へと幾度も追撃を叩き込み、遂に地に墜ちれば坂東武者と共に滅多斬りに斬り刻む。
「まさに悪鬼羅刹も斯くやという姿でな! 俺も骨の髄の震える心地がしたものだ!」
「結果オーライって奴さ。でも、記憶が曖昧なのは勿体ないな」
……それは決着の後、手当を施しながらの一幕。
大成功
🔵🔵🔵
カイム・クローバー
息を吹き返した武者を見て、肩を竦める。
さっきまでこの世の終わりのようなツラだったってのに『戦場』と見るや息を吹き返してやがる。
あの地獄から連れ出した俺に感謝の言葉ぐらいあっても良いだろ?
連れ出したのが俺じゃなくて、さっきの女性の方だってんなら……違いない、と言って笑おう。
…で、だ。武者サマ。アレをどう見る?
鳴き声に呼応するように星の如く煌く狐火。
怖いなら下がってても良いんだぜ?言ったろ?こっからは
俺の仕事さ。
――だが、気に入らない余所者に平安結界を任せるのが不安だってんなら。
やる事は互いに一つだ。さぁ、どうする、早月?
どさくさに紛れて名前を呼んだって睨まれるか?
緊張をほぐしてやっただけさ。
(剣を構え、刀身に紫雷が奔り)
狐火は俺が。フィナーレはアンタに譲ってやる。ビビるなよ?なんて笑いながら。
一瞬だけUCにて真の姿を解放し、紫雷の刺突にて天狗の鳴き声を止める。
【串刺し】時の衝撃は狐火を揺らし、その炎の勢いを呑み込もうと。
俺の仕事は果たしたぜ。後は――
アンタの仕事だ。
●災討つ刃は荒ぶれど鈍らず
妖の爪牙と武者の剛剣が激しくぶつかり合い火花を散らす。
結界が破れ天狗が姿を見せるや否や、
早月は刀を抜き速攻を仕掛けていた。
「やれやれ。さっきまでこの世の終わりのようなツラだったってのに『戦場』と見るや息を吹き返してやがる」
直前までの姿が嘘のように覇気に満ちた姿にカイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)は肩を竦める。
「あの地獄から連れ出した俺に感謝の言葉ぐらいあっても良いだろ?」
「……それはお前の手柄ではないだろう」
「ははっ、違いない!」
鍔迫り合いの形になったのは束の間、狐尾による追撃を嫌い後退した早月の不機嫌な声に笑って返し。
それから、天狗の響かせる鳴き声に改めて視線を移す。
「……で、だ。武者サマ。アレをどう見る?」
「ふん……早々に切り札を切ったか。他の攻防に割く余力は奴にもあるまい」
天狗の前面に展開され荒ぶるは【輝く星焔】の狐火。
まだ間合いの外にも関わらず肌を削られるような灼熱、耐えきれないとばかりに周囲の枯れ草も燃え上がる。
まるで一つの銀河を目にしているような感覚さえ抱くのは単なる見た目だけでなく、内包し今も加速度的に増し続ける莫大なエネルギーを無意識に感じ取っている為か。
このアヤカシエンパイアという世界の在り方を維持する平安結界を破壊せんとする妖、その群れを率いた首魁の力。
手を打てずにいれば戦場全体が星焔に呑まれ灰燼と化すにもそう時間は掛からないだろう。
「怖いなら下がってても良いんだぜ? 言ったろ? こっからは
俺の仕事さ」
中々に壮観だと口笛を一つ。
憮然として厳めしい誂えの大太刀を構える武者に怯んだ様子はない。
「侮るな。平安を脅かす者ならば、たとえ神仏だろうと恐れるものか」
(守るべき平安っぽい空気に弱いのはそういう事か?)
時に思った事を言葉にしないのも武士の情けか。いま敢えて言及する程の事でもない。
「――だが、気に入らない余所者に平安結界を任せるのが不安だってんなら」
やはり余裕を崩さない軽薄な笑みは焚き付けるように。
「やる事は互いに一つだ。さぁ、どうする、早月?」
「っ……!」
恥ずかしいものでも見られたように鎧の端に刻まれた名前を手で押さえ、言葉にならない抗議の唸り声を上げる。
狐火の脅威を理解していない筈もないだろうに、不届き者に名前を呼ばれた方が余程一大事とでも言いたげな様子を可笑しそうに笑って……おもむろに構えた魔剣、その刀身に紫雷が奔った。
「狐火は俺が。フィナーレはアンタに譲ってやる」
「……しくじったらあの世でも延々祟るからな」
「そっちこそビビるなよ?」
命を預けるに等しい提案、応じる葉月の声に不服はあれど不信は無い。
これまでの戦いを通じてその腕前を理解できないほど坂東武者は鈍くない。
力を溜める隙を逃さず星焔で焼き払おうとする天狗、その前にカイムが立ちはだかる。
『無謀にも我が前に立つか、人間』
「無謀はどっちか、すぐに分かるさ――どれぐらいの威力か愉しみだ」
紫雷の魔力が全身に広がり、漆黒の翼が空を打つ。
尾を引く金色の眼光を残す疾走は音さえ遥か置き去りに、魔剣の切っ先が正面から逆巻く狐火に突き立つ。
引き延ばされたような時間の中、拮抗は須臾にも満たない。
真の姿に解き放たれた力は星焔を穿ち、鳴き声を捧げていた天狗の喉まで貫いて沈黙を強いる。
「俺の仕事は果たしたぜ。後は――
アンタの仕事だ」
「いいだろう、巻き込まれるなよ不埒者ッ!」
即応する声は既に想定より近くから。
【
目覚めし邪神の片鱗】に怯む事も、狐火への防御を考える事も無いが故の最速の踏み込み。
神さえ恐れぬとの意気込みに偽りは無かったらしい。
吹き散らされた星焔を突っ切り全身全霊をただ一太刀に注ぎ込む。
破壊の全てを斬撃に集中させる、武者の剛力と繊細さを兼ね備えた一閃は余波一つ起こさない。
縫い留められた天狗を真っ二つに両断し、その身は爆ぜるように消し飛んだ。
大成功
🔵🔵🔵

アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。
む、これは……消滅攻撃。
私だけならともかく葉月さんまで護るとなると、死がふたりを分かつまでを発動させましょう。これで私が葉月さんをかばって葉月さんが健在である限りどちらも死ぬことはない。
薄墨爛漫桜はUCから召喚術の技能に格落ちしてるけど、今回の指定UCで技能強化されてるから子細無し。
「狂い咲け薄墨爛漫桜……卍かゲフンゲフン
オーバーロード!!」
そいや、葉月さんにも強化された技能が共有されてるからオバロはともかくリミッター解除と限界突破はできるのよね。
中二病に拍車がかかりそう。
さて、レベル秒を悠長に待つ理由もなし、
薄墨爛漫桜に魔力供給&エネルギー充填して鞘と刀身を共鳴させ
魔を打ち祓い狐尾型の星光を封じる破魔の音色を響かせるわ。
「妖の息吹、玖の型、鵺鳴く夜』
後は葉月さんと協力技とかできるといいわね
●繋がる瞬間 目覚める永遠
「ふッ――」
初手、不意を突くように速攻を仕掛けたのは
葉月。
懐に飛び込む勢いを乗せ一閃、そのまま目元を狙う刺突へと派生させれば天狗は上空へ飛び上がり間合いを空ける。
「む、これは……」
まずアリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の
混沌魔術師艶魔少女・f05202)がその兆しを感じ取った。
追撃を中断し後退した葉月の頭上、星光を遮った結界が抉り取られるように消し飛ぶ。
【天狗流星】――威力に範囲に速度、そして持続時間にも秀でる問答無用の消滅攻撃。
特異な再生能力を修めているアリス自身はまだしも、見たところ生身の葉月が受ければ致命傷は免れ得ないか。
「となると、こうしましょうか。葉月さん」
「なんでしょう!」
「受け入れて♥️」
「はいっ! ……え、それってどういう――」
「重ねた想いは一つに。紡いだ絆は何よりも強固」
浮かび上がった魔術刻印からするりと伸びて二人を繋ぐは【固い絆の赤い糸】。
リンクした感覚は互いの技能をも桁違いに増幅させた上で共有し、互いの存在を相互補完の形で結びつける。
「【
死がふたりを分かつまで】――わたし達が一緒なら不可能なことなどなにもないわ♥️」
「凄い……刻が見える……!」
「まだまだ、こんなものじゃないわよ。私たちならもっとイケるわ?」
毎秒絶えず降り注ぐ災厄の星光を時に武者の心眼で見切り、時に混沌魔術の結界で遮り、共有した感覚を舞踏のリズムでも刻むように馴染ませる。
増強した自前の技能で
薄墨爛漫桜を維持、葉月とのリンクも利用して即興で術式を構築。
「狂い咲け薄墨爛漫桜……卍かゲフンゲフンオーバーロード!!」
「はっ……!」
引き出すは紛れも無い超克の力。術者の意の儘にデザインされた混沌が真の姿を描き出す。
妖刀は溢れるポテンシャルを反映したように一回り伸長し、装束は元の可憐さはそのまま随所に武者らしい和風の意匠が現れ、羽織った上衣の裾が風に翻る。
「天元に咲け銀月地獄花……『顕現せよ我が内なる牙!』」
葉月もまたアリスの変化を手本として即座に続いた。
彼自身は猟兵でないが故に疑似的なものだが、アリスと繋がっている今に限れば遜色ない。
霊力の余波は燃える
地獄花の花弁となって舞い散り、装束は並び立つアリスのそれとお揃いに。
新たに生じたもう一振りの小太刀を携え、二刀流の構えで標的を見据える。
「さて、あちらが撃ち尽くすまで悠長に待つ理由もなし」
変わらぬ暴威を伴い降り注ぐ星光を無造作に斬り払い納刀。
眼前に掲げ魔力を注ぎ込んだ妖刀の刃と鞘が共鳴し、凛と鳴る破魔の音色を響かせる。
『ッ……貴様、我が流星を……!』
「妖の息吹、玖の型、鵺鳴く夜――さっきの結界を張ってた妖は勝手に爆死しちゃったし、代わりにね?」
捕えたのは標的を性癖の海に沈める封殺結界。
天狗はすぐさま振り払おうとするが、
青春最高潮の二人を前にその隙は致命的に過ぎた。
「我等、咲き誇りし剣の華。血と刃の輝きを以て魅せる者」
「汝、天に在りし凶星なれば、天に果てて散るがいい」
振るう双剣が引き起こすは多重次元屈折現象。
結界内部に生じた数多の斬撃が天狗を襲い、無尽蔵の生命力さえ削り取って
心臓を露出させる。
「「斬華繚乱――無余涅槃の彼方へ還れ!!」」
双剣が合一した彼岸の太刀、神速の抜刀と共に閃いた桜の妖刀、交差した斬撃が一つに重なる。
最期は怨嗟の断末魔ごと斬り裂かれ、妖の首魁は塵と消えるのだった。
大成功
🔵🔵🔵