メロウ・メロウ・ショコラ
●メロウ・メロウ
硝子の扉を開いた先は――甘い甘い、香りが満ちる。
赤、ピンク、黄に白に。陽光差し込む硝子の温室にて、咲き誇るは色合いも濃淡も様々な花々。色も形も様々で、花弁の多い薔薇のような花もあればガーベラのような花も。
けれどどれも近付けば、ふわりと鼻をくすぐる香りがするのだ。
さあ、花々の中でひと時の憩いを楽しもうか。
何せ今時期はバレンタイン。
学生たちにとって、こんなにもときめく日はそう無いのだから。
●ショコラ色
「皆さんに、アルダワ魔法学園で生徒さん達のお手本になって欲しいんです」
ラナ・スピラエア(苺色の魔法・f06644)は開口一番、そう語る。――もう詳しい説明は不要だろう。大きな戦いの終わったアルダワ魔法学園では、猟兵達に教師となる依頼が多々ある。今回もその一つだと云う。
「なので、迷宮に行って欲しいんですけど……その前に、今学生の間で大人気のカフェでのお茶会を楽しんで下さい!」
楽しそうな笑顔でラナは言う。
其処は硝子で出来た温室にあるカフェ。
学生達の魔法研究は様々だが、その成果の一つである『メロウ・スイート』と云う花が溢れる温室だ。香り高い花々は色も形も様々だが、一つの共通する特性がある。
「このお花、食べれるんです。飲み物やお菓子の飾りつけに用いられたり、香り付けや甘味付けに此のカフェでは使われているみたいなんですよ」
特に不思議なのは飲み物に入れた場合、匙でかき混ぜると花は崩れそのまま溶けていく。――すると花の香りや甘味が飲み物に溶けていく。簡単に言えば砂糖やフレーバーシロップと同じなのだが、花と云うだけで特別な演出となるのだ。
「生徒の皆さんが頑張った証です。折角ですから、味わってみてはどうでしょう?」
丁度今はバレンタイン時期、チョコのお菓子を多く扱っていると云う。
チョコはショコラティエが手掛けた一級品。濃厚なテリーヌやタルトの他、エクレアならば上にチョコが掛かっているだけなので比較的さっぱり食べられるだろう。
そんなチョコ尽くしの中、特に人気なのはショコラパフェ。甘さもフルーツソースも選べるので、各々の好みのパフェを提供してくれるだろう。ちなみに、添えられる果物もソースに合わせた形になる。
「特に、今の時期だけの限定で。2人で来店した方には申告次第で特別な飾りを付けてくれるみたいです」
恋人ならばストロベリー味のハートを。家族ならばシトロン味の月を。友人ならばブルーベリー味の蝶を。チョコの美しい細工として、パフェに添えてくれるらしい。サービスの一つなのだが、申告が無ければ勝手に飾ることは無い。逆に事実は関係なく、申告さえすればその飾りを添えてくれるらしい。
カフェを十分満喫したら、その後は迷宮に侵入することになる。
此処も綺麗な花に囲まれているが、迷路のようになっているので要注意。――難易度自体は低い場所のようなので、適当に歩いても脱出出来ない程では無いだろうが。
「この迷宮の敵は、ユキウサギウミウシさんです! 可愛いです!」
キラキラと苺色の瞳を輝かせて、ラナは語る。
名の通りウミウシの種類の一つなのだが、その姿はなんともマスコットっぽい丸みのある愛らしさ。円らな瞳にぷにぷにでつるつるな身体をしていて、『みゅー』と鳴くその鳴き声も相まって敵とは思えない存在だ。
さほど強くはなく、猟兵ならば軽くぽかっとすれば倒せるほど。
「ただ、彼等は基本集団行動です。進路の邪魔をしますし、倒そうとするととっても素早く逃げちゃいます」
逃げ足だけが取り柄な、ほぼ無害な存在。ただしその増殖力は凄まじいらしく、放っておくことも出来ないのだとラナは言う。
「なので逃げないようにする手段が必要かも? あ、こちらが敵意を見せなければむしろ近付いて来る友好的な子みたいですよ」
その辺りを気を付ければ、特に難しく考える必要は無いだろう。折角だから思う存分楽しんでしまうのも問題は無い筈。
「世界はどこもバレンタイン一色です。折角ですから、皆さんも楽しんで来て下さい」
肩の力を抜いた笑顔で、始終ラナは猟兵へと語る。
偶にはこんな、和やかな日を楽しんでも良いだろう。
――甘い、甘いお菓子を楽しもう。
――キミと、二人で。この特別な日に。
公塚杏
こんにちは、公塚杏(きみづか・あんず)です。
『アルダワ魔法学園』でのお話をお届け致します。
●シナリオの流れ
・1章 日常(花やかなお茶会)
・2章 集団戦(ユキウサギウミウシ)
●1章
学園の中にある、魔法の花に囲まれた温室でのお茶会です。
丁度バレンタイン時期なので、バレンタインっぽいチョコのお菓子が沢山あります。
ショコラテリーヌ、ショコラタルト、ショコラエクレア。
特に人気なのはパフェ。チョコアイスと生チョコレートのソースをふんだんに使ったものです。間のソースはラズベリー、オレンジ、キャラメルから選べます。チョコもビターからスイートまで甘さをお好みで調整してくれます。
今の時期だけ恋人はハート、家族なら月、友達なら蝶の飾りが付きます。(申告制なのでプレにてしっかり記載下さい)
●メロウ・スイート
生徒達の魔法研究の末生まれた花。
薔薇のような香りで食べると甘いです。
飲み物に浮かべて見目の華やかさの演出は勿論。
スプーンでかき混ぜると溶けるので、香りづけ、風味付けに用いられています。
色が濃くなる程香りも甘さも強くなるので、お好みのものを手に取って下さい。
●2章
真っ白で地上で暮らせるようになったウミウシ的な災魔。
大きさは片手に乗るくらい~両手で抱けるくらいと様々です。
大体密集していて、先に進む邪魔をします。邪魔をするだけです。
えいっと叩くだけで倒せるくらい弱いですが、逃げ足は速いです。
●その他
・全体的にお遊びです。
・どちらかだけのご参加も大丈夫です。
・同伴者がいる場合、プレイング内に【お相手の名前とID】を。グループの場合は【グループ名】をそれぞれお書きください。記載無い場合ご一緒出来ない可能性があります。
・受付や締め切り等の連絡は、マスターページにて随時行います。受付前に頂きましたプレイングは、基本的にはお返しさせて頂きますのでご注意下さい。
以上。
皆様のご参加、心よりお待ちしております。
第1章 日常
『花やかなお茶会』
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POW : カフェでまったり過ごす
SPD : お菓子を購入する
WIZ : 温室の花を観賞する
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●ショコラ・メロウ
硝子扉を開けた先――そこは甘くも華やかな香りに満ちていた。
視界に広がる鮮やかな色は、陽光が射し込みキラキラと輝いている。温室故に真冬にも関わらず、上着も必要ない程の温かさ。
花に囲まれた中央のテーブルには、花瓶に色とりどりの花が生けられている。これこそが生徒達の研究成果の『メロウ・スイート』で、この花の花弁を一枚、二枚――はたまた花全てを手に取り、飲み物に浮かべることが出来るのだ。
甘く漂う香りはショコラの香り。
この時期だけのスペシャルスイーツは、どれもショコラティエの自信作。特別なパフェを楽しみたいならば、そっと言葉を添えてみて。
甘い甘いショコラと共に、華やかなひと時を過ごしましょう。
一年で一番、愛に溢れたこの日を祝して。
ルシエラ・アクアリンド
【リヴィ:f39603】と
アルダワ魔法学園に興味があるだろう彼を日頃の感謝を告げる為誘う
私は風を駆使し、彼は魔法剣士且つ探求心が人一倍あるのは知っている
学生に負けず劣らずなのかな
はにかむ様子に小さく微笑う
シャルムーンディという呼び名が馴染み深いこのバレンタインという日
きっと込められる想いは同じなのだろう
このカフェに溢れる人々様子を見ているとふわりと微笑みが出てくる
チョコレートは勿論だけれども花を上手に利用している様で目移りしてしまう
こうした花を見ているだけでも癒されるね
リヴィも割と甘い物が好きなのは新発見
学生の頑張りに感謝し有難くお勧めのパフェを頂こうか
添える果物はマスカット
細工は友人の物、で
リヴィ・ローランザルツ
【ルシエラさんf38959】と
感謝は此方の方なのだけど誘いは魅力的で
確かに興味があり何れゆっくり訪れるつもりだったし学生が学ぶ事にも興味がある
何というか見透かされている様で
でも嫌という訳じゃないから浮かんだのは少し照れた物かもしれない
カフェの場所は出来れば人が居すぎない席
彼女は其方の方を望む筈だから
ゆっくり花を存分愛でてくれると良いな
俺も甘い物は好きな方で見目にも惹かれ流石に目移りする
指摘通りだし否定するつもりもないから小さく笑って応える
文字通り実った努力に感謝しつつ目玉というパフェに舌鼓を打つ
希望した苺をお礼ですと述べルシエラさんに
花も見ごたえがありますね
そうですね、友人の物で頼みましょうか
●
硝子扉を開いた先に待つのは、花溢れる夢のような世界。
鼻をくすぐる芳しい香りも、色とりどりの鮮やかさが瞳に映る様も見事で。これが此処アルダワ魔法学園の生徒達の努力によるものだと想えば、リヴィ・ローランザルツ(煌颯・f39603)は自然と感嘆の吐息を零していた。
そんな彼の姿を見て、予想通りだとルシエラ・アクアリンド(蒼穹・f38959)は小さく笑む。――彼女が今日誘ったのは、彼へと日頃の感謝を告げる為。そして、何より日々魔法剣士として探求を続ける彼が此の学園に興味があるだろうと思ったから。
「感謝は此方の方なのだけど……」
彼女のその言葉にリヴィはほんの少し戸惑ったように笑う。確かに、興味があったのは事実。いずれゆっくりと訪れるつもりではあったし、学生が学ぶ事にも学校と云う文化が無かった世界出身故興味深い。ただ、なんというか――見透かされているような気がしたから。でもなぜだろう、嫌という訳では無い。
言葉の裏に含んだその心を表すかのように、彼の口許から零れる笑みは温かくて。その照れを含んだはにかみに、ルシエラは小さく微笑んだ。
「シャルムーンディという呼び名が馴染み深いこのバレンタインという日。きっと込められる想いは同じなのだろう」
好きな席を、と案内されリヴィが選んだ席間が広めにとられた席に腰を下ろしながら、彼女はどこか眩しそうに瞳を細めながらそう紡ぐ。
エンドブレイカーの世界では、想いをチョコレートに込めて贈る祝日である。それが別の名前で、同じような催しとして数多の世界でも過ごされていることがほんの少し不思議だったのだが、こうして楽しそうに笑う生徒達の姿を見ればどこの世界も同じなのだと、言葉ではなく心で理解する。
皆笑い、チョコレートを手に語り合っている。――その中には何かを贈っている者もいれば、そわそわと落ち着きない者もいて。それは馴染んだ土地でも見られた姿だ。
「そうですね」
同じ世界の出身として、彼女の言おうとしている事はなんとなく分かる。こくりと頷きを返しながら、楽しそうにカフェを見渡すルシエラの姿を見遣るリヴィ。――彼が此の席を選んだのは、彼女が此処を望む筈だと思ったからなのだが、恐らく正解だろう。
席の横には花壇が広がり、より香りを楽しめる。露を纏った花弁は硝子天井から射し込み光を浴びてキラキラと輝き、まるで宝石のようにも見える。
「こうした花を見ているだけでも癒されるね」
しかもこれは、ただの花では無く。学生達が研究をした結果の、魔法の花。そう思えばより美しく感じ、自然と笑みも零れてしまう。テーブルの上に飾られた花瓶の花へそうっと指先で触れてみれば、それは普通の花弁と同じ感触でルシエラは興味深げに息を吐く。
「花も見ごたえがありますね」
甘いとの噂だけれども、それはどれ程の頑張りが必要だったのだろう。文字通り実った努力に感謝の想いを心に宿らせ、彼等はメニューを前に注文を伝える。
「学生の頑張りに感謝し有難くお勧めのパフェを頂こうか。細工は友人の物、で」
「そうですね、友人の物で頼みましょうか」
黄緑に輝くマスカットと、ルビーのような苺と共に。
友の証であるブルーベリーの大きな蝶を飾ったパフェは、宝石箱のように輝いている。
その鮮やかさに、思わず見惚れたのは二人同じ。
「リヴィも割と甘い物が好きなのは新発見」
「そうですか?」
不思議そうに瞳をひとつ瞬いて。けれど否定するようなことでも無いから、小さくリヴィは笑った。ルシエラが長めの匙を手にそっとクリームとマスカットを掬えば。
「お礼です」
その一言と共に、リヴィは頭に飾られた薔薇型の苺を彼女のパフェへと咲かせた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ティタ・ノシュタリア
【💫💫】
わあっ、きれいなカフェ……。
目を輝かせてきょろきょろ
ほんとですっ。芸術品みたいっ!
どれでもいいんですか?
すこし考えて、手にとったのは青い薔薇
奇跡のお花を、あなたとの二度目のバレンタインに添えたくって
お互いのいろですか?ふふふ、たしかにっ!
メニューもバレンタイン一色ですねっ。
む、マシュマローネはパフェですか?ではでは、私もおんなじものを!
紅茶が届けばそうっと青薔薇を浮かべて、香りを楽しんで
パフェをひとくち
ふふっ、おいしいっ!
ビターな味……でもでも、えへへ。
いっしょだと、あまあまですね?
あまい、あまい日
今年もいっしょなのがうれしくって
スイートなお花たちに、負けないくらいの笑顔を咲かせて
マシュマローネ・アラモード
【💫💫】
モワ!お友達のプリンセスのティタとご一緒に!
『メロウ・スイート』!
モワ、素敵なお花ですわ……!温室の特別な環境で育てられる……芸術品のよう!
少し大きめの淡いピンク色のお花をいただいて、紅茶に浮かべてみましょう!
ティタは青いお花を?ふふ、なんだかお互いの色のよう……!
ゆっくりと溶けながら、香りを感じるひとときに、和やかに。
きっとその瞬間も美しいでしょうから!
『パフェ』
お味は、ラズベリーの酸味とカカオの香りを鮮明に表現する少しビターな味わいに!
モワ!一緒だからちょうど合う、そんなあまさですわね!
魔法の花の香りと一緒に楽しむ甘いひととき、微笑むあなたと一緒に迎えるこの日を祝福するように。
●
溢れる程の色と、花をくすぐる芳しい香りに満ちた世界。
(「わあっ、きれいなカフェ……」)
透き通る硝子天井から射し込む陽射しに、キラキラと輝く花々が美しく。ティタ・ノシュタリア(夢を見る
宇宙・f38779)は大きな緑色の瞳をキラキラと輝かせる。愛に溢れる世界は何処を見ても美しく、ついつい視線はあちらへこちらへ。
「モワ、素敵なお花ですわ……! 温室の特別な環境で育てられる……芸術品のよう!」
ほうっと吐息を零した時、目の前に座るマシュマローネ・アラモード(第一皇女『兎の皇女』・f38748)が花瓶に飾られたメロウ・スイートを見て声を上げた。素直に、真っ直ぐに感情を表す彼女の姿に、ティタも直ぐに頷きを返す。
「ほんとですっ。芸術品みたいっ!」
弾む声を返しながらそっと花弁に触れてみれば、指先に伝わるのは普通の花弁と同じ質感。これが溶けると知識としては知っていても、本当なのかと不思議に思ってしまう。
赤に、黄に、白に――数多の色の花の中、どれにしようかと一瞬迷い。ティタが手に取ったのは、透き通るような青の薔薇。
「ティタは青いお花を?」
「奇跡のお花を、あなたとの二度目のバレンタインに添えたくって」
不可能とされていた青は、奇跡と言われる神秘的な花。その透き通る色を手の中でくるくると回しながらティタが微笑めば、マシュマローネは迷うことなく淡いピンクの花を取る。他よりも少し大振りの花弁は愛らしくも美しく――。
「ふふ、なんだかお互いの色のよう……!」
「お互いのいろですか? ふふふ、たしかにっ!」
手の中で咲くその可憐さに素直にマシュマローネが紡げば、一つ瞳を瞬いた後ティタは頷き。互いに顔を見合わせながら、くすくすと楽しげに乙女たちは笑みを零す。
それはまるで、小鳥のさえずりのような。愛らしい音を響かせながら、運ばれてきた温かな紅茶へと二人同時に花を落とす。
青と、淡いピンクが紅に咲く。
くるり、くるりと匙でかき混ぜればその花弁は崩れていき、ふわりと華やかな香が広がる。その香りを胸いっぱいに吸い込めば、良い香りだとまた二人は笑みを零し合った。
一口、紅茶でお喋りに花咲いた喉を潤して。
次は長い匙を手に取って、目の前に置かれたパフェへと視線を移す。
真っ赤なラズベリーソースと、ビターなチョコレートのコントラストが美しい。赤い果実の飾りが映えていて、つい匙を入れるのも戸惑ってしまう。
ちらりと互いに視線を合わせ、頷き合って同時にチョコソースとクリーム、そしてラズベリーをぱくりと一口。ラズベリーの酸味とカカオの香りを鮮明に表現出来るとマシュマローネが想った通り、深くも鮮やかな味わいが舌に広がっていく。
「ビターな味……でもでも、えへへ」
深いカカオの香りと甘酸っぱいラズベリーの味わいを堪能しながら、小さくティタが微笑む。その瞳はどこか好奇心で輝いていて、真っ直ぐにマシュマローネを見つめると。
「いっしょだと、あまあまですね?」
へにゃりと微笑んで、彼女は紡ぐ。その言葉にマシュマローネは大きく頷くと、同じように瞳を輝かせた。
「モワ! 一緒だからちょうど合う、そんなあまさですわね!」
それはこのパフェの見目や味だけでなく、この瞬間を二人で共有出来るからこそ感じる感動なのだろう。一口、また一口と。口に運べば深く深く、あまさに満たされる。
一年で一番、甘い甘い日。
去年に続き、今年も一緒に過ごせる事がこんなにも幸せで、温かくて――。
咲き誇る花に負けぬ程、笑顔と会話を咲かせる乙女たちのお茶会。
それは溶ける程に甘い魔法の花が寄り添う、祝福の時間。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ナザク・ジギタリス
世話になった人がアルダワ出身だというから来てみたんだ
それと、不思議な花とチョコが堪能できるって聞いて
ヒトは甘いもの好きが多いよね
おれも今日はうんと甘くしてもらおうかな
ミックスベリーのショコラパフェと
濃いコーヒーに、うんと濃い色のメロウ・スイート
すごく香り豊かな花だ
大切に育てられてきたんだなって、おれにもわかる
それにこのパフェの味も素晴らしいものなんだって
味覚センサーが感じ取る濃厚な甘さに、酸味と、ほどよい苦味
それぞれが互いの良さを引き立てあってるみたい
まだ自分の食の好みはピンと来てないんだけど…
カフェにいる人達、みんなすごく幸せそうだ
だから多分、おれも美味しいって、幸せって感じていると、思う
●
透き通る硝子天井から射し込む光が、ナザク・ジギタリス(とおり雨・f41230)の透き通るボーンチャイナの肌を照らす。
溢れる程の花の香。すみれ色の大きな瞳に映されるのは鮮やかな色。
その美しくも幻想的な魔法で出来上がった世界に、彼はひとつ息を吐いた。
――世話になった人がアルダワ出身だというから来てみた。
それがきっかけの一つだった筈なのに。いざ触れてみればその未知に包まれた世界は、機械仕掛けである彼の心を不思議な心地へと運んでいく。
後は、不思議な花とチョコレートを堪能出来る、というのも楽しみにしていたけれど――周りから弾む声がナザクの耳に届く。
その声を聴けば、ヒトは甘いもの好きが多いのだと改めて思った。
「おれも今日はうんと甘くしてもらおうかな」
だから、彼も『同じ』にしようと今日は思う。鮮やかな赤と茶のコントラストが美しい、ミックスベリーのショコラパフェと濃いめの珈琲。――そして、その珈琲に浮かべるのはうんと濃い、青に近い紫色をしたメロウ・スイートを。
カップの中の漆黒へと紫を咲かせてみれば、熱のせいかふわりと香り立ちが強くなる。
「すごく香り豊かな花だ」
すんっと鼻を鳴らし、素直にナザクは感嘆の言葉を紡ぐ。――触れた花弁の感触と、この香りだけで、大切に育てられてきたのだとナザクにも分かる程。
そっと匙でかき混ぜれば花は崩れていき、自然と珈琲と溶け合っていく。珈琲の深く芳ばしい香りの奥に咲く花の香りを楽しんだ後、喉を潤せば甘さの後に珈琲の苦味が伝わってくる。相反するのに、喧嘩をしない。そんな甘味もまた、生徒達の努力の証なのだ。
ぱちぱちと幾度か瞳を瞬いた後、ナザクは次にパフェへと視線を向ける。
幾層にも重なったパフェは芸術品のようで、上に飾られたベリーの色合いが華やか。そうっと小さな匙でチョコレートとベリーを掬って口にすれば、更に深い香りと、濃厚な甘さと、ベリーの酸味と――そしてカカオの程よい苦み。
その一つ一つを捉えるのは、ナザクの味覚センサー。ヒトのそれとは少し違うけれども、確かに彼の舌を、心をヒトのように満たしていく。
それが己の食の好みなのかは、まだ機械人形である彼には分からない。けれども――。
(「カフェにいる人達、みんなすごく幸せそう」)
パフェを、ショコラ菓子を、お茶を――友や大切な人と楽しむ人々は皆幸せそうな笑顔で語らい合っている。その姿を見れば自然と、ナザクは胸元に手を当てる。
(「だから多分、おれも美味しいって、幸せって感じていると、思う」)
変わらぬ表情で、そう思う彼の眼差しは。どこか心地良さそうに細められていた。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィンデ・ノインテザルグ
友人のスバル(f40152)と参加。
社員寮で日頃からよく行動を共にしているが
こうして連れ立って出掛けるのは初めてか。
魔法研究の一端を垣間見れるとは…実に興味深い。
…ふむ、期間限定のサービスか。
ならばそれをオーダーしてみようか。
ショコラパフェに舞う、友情の証の蝶。
青に近いそれは
灰に沈んだ世界の中でも鮮やかに浮かび上がって見える。
これが魔法の力…?
私の眼でも判ると顔を上げれば、蝶とスバルの眸が同じ色だと気付いて。
思わず口元を抑えて破顔してしまいそうだ。
別におかしなことなど何も…。
笑みが零れることが、まだ気恥ずかしい。
美味いかと尋ねたら聞き返されそうだな。
私の感想は…ずっと憶えていたい、そんな味だ。
蒼乃・昴
ヴィンデ(f41646)と
彼は同僚であり友人で気が合う人だ
一緒に居ると楽しい
パフェに舞う蝶を見て
こういう優しい魔法が俺には珍しく
つい目で追いかけてしまうが…
ヴィンデが笑っているような気がして視線を戻す
ん?
何かおかしかったか?
ほう…?
何もない、か
そんな事は無いだろう
そう言いつつ、心の中では嬉しく思う
時折悲しげな表情を見せる君が、今だけでも心癒されてくれているのならそれだけで…
(ヴィンデはこういう魔法が好きなのか?)
(まぁ、微笑みたくなるというのも分かる。確かに綺麗だしな)
(俺がこんな魔法を使えたら、またこうして笑ってくれるのだろうか)
あぁ、美味しいぞ
君は?
……そうか。俺もそんなふうに思っていたよ
●
花溢れる愛らしい空間に腰を下ろし、ヴィンデ・ノインテザルグ(Glühwurm・f41646)は目の前の蒼乃・昴(夜明けのプレアデス・f40152)を見てふと思う。
――社員寮で日頃からよく行動を共にしているが、こうして連れ立って出掛けるのは初めてか、と。
此の場に満ちた華やかさは此の世界の魔法研究の一端。それもまた興味深いと思いながら、目の前に置かれたパフェの装飾である蝶の青紫が瞳に焼き付く。
灰に沈んだ世界の中でも、鮮やかに浮かび上がって見えて――ひらひらと、優雅に飛び回っているかのようにヴィンデは見える。
(「これが魔法の力
……?」)
私の瞳――夜に沈んだその瞳でも分かると顔を上げれば、また彼の瞳が蒼を捉える。
だってその蝶は、目の前に座る昴の瞳と同じ色だと気付いたから。
思わず口許を抑え破顔を隠す彼の行動に、昴は一つ瞳を瞬いた。それは訝しむ行動では無い、彼もまたパフェに舞う蝶に囚われてしまったから。優しい魔法が彼には珍しくて、つい目で追いかけてしまった時、ヴィンデが笑っているような気がしたから視線を踊る蝶から彼へと戻す。
「ん? 何かおかしかったか?」
冷静に、何時も通りの様子で昴が問い掛ける。その真っ直ぐな問いにヴィンデ口許を抑えながら首を振ると。
「別におかしなことなど何も……」
「ほう……? 何もない、か。そんな事は無いだろう」
変わらず零れてしまう笑みを隠す彼の行動へと、そんな風に昴は返してしまうけれど。その内心は嬉しく思っているのだ。――時折悲しげな表情を見せる君が、今だけでも心癒されてくれているのならそれだけで……と想うから。
(「ヴィンデはこういう魔法が好きなのか? まぁ、微笑みたくなるというのも分かる。確かに綺麗だしな」)
必死に隠している事が分かるから、言葉にはしない。けれどしっかり昴には伝わっていて、心の内では普段とは違う彼のその様子を考えてしまう。
芳しい花と甘いチョコの香り。
色とりどりの鮮やかな色に満ちた中咲く、生徒達のお喋りの声。
それは全て此の世界の、楽しさを表す光景で――彼等だからこそ生み出せた魔法が、此処にはあるのだろう。日々の努力の裏にある、日常の華が。
(「俺がこんな魔法を使えたら、またこうして笑ってくれるのだろうか」)
そんな華を、抗争の中兵器として生まれた自分にも作り出すことは出来るだろうか。
そっと蝶へと触れながら、瞳を細める昴。そんな彼の前で、ヴィンデはぱくりとパフェを頬張る。爽やかな果実のソースと、濃厚なチョコレートの味わいが口に広がる不思議な心地。添えられた蝶の彩り添えたパフェは美味しくて――彼へと感想を問おうと思った時、一瞬だけ聞き返されそうだと戸惑いが生まれた。
けれども、今同じ物を共有しているのだから、問い掛けることは普通な筈。だからヴィンデは、少し遅れてパフェを口にする昴へと「美味しいか?」と問い掛ける。
「あぁ、美味しいぞ。君は?」
やはり――そう、ヴィンデは思った。
普通よりも長い匙を揺らしながら、暫し考え言葉を選ぶヴィンデ。
そして、導き出したのは――。
「私の感想は……ずっと憶えていたい、そんな味だ」
灰の中に鮮やかに輝く緑の瞳を瞼で隠しながら、そう紡ぐ。その言葉に昴は小さく口許をやわらげると。
「……そうか。俺もそんなふうに思っていたよ」
こくりと頷き、素直に彼は紡いだ。
甘さと芳しさと、鮮やかな蝶の色。
色も、味も、香りも――全てが、消えないように。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ミルナ・シャイン
大親友ジゼル(f34967)と。
お花に囲まれてのお茶会、楽しみですわね!
ふふ、ジゼルはやっぱりチョコが気になります?
ではショコラパフェにしましょうか。
わたくしはソースはラズベリーで、チョコは思いっきりスイートに!
蝶の飾りも華やかで可愛いですわね!
濃いピンクの薔薇のようなメロウ・スイートを紅茶に浮かべて。
他の世界にもエディブルフラワーというのはありますけれど、飲み物に溶けるというのがまたティータイムにぴったりですわね。
パフェもスイートなチョコに甘酸っぱいラズベリーがアクセントになって美味しい♪
もちろんですわ、はい、あーん。
ジゼルのも一口、こっちはちょっぴり大人味かしら、こっちも美味しいですわね。
ジゼル・サンドル
ミルナ(f34969)と。
ああ、それにチョコのお菓子も色々あるみたいだからな!
やっぱりショコラパフェが食べたいな。
ソースは瞳の色にちなんだオレンジで…そうだな、ほんのりビターくらいが合いそうか。
わたし達は大親友だから…飾りは蝶か。
紅茶に浮かべるメロウ・スイートもオレンジ色のガーベラを。
ガーベラってあまり香りを楽しむイメージはないが…これはすごいな、ちゃんと甘い香りがする。
パフェも美味しい!オレンジとチョコって合うよな…
ミルナのも美味しそうだな、ちょこっともらってもいいだろうか?
あーん、でパクリ。うん、こっちも美味しい!ラズベリーの甘酸っぱさでキュンとする可愛いパフェだな。
わたしのもどうぞ。
●
「お花に囲まれてのお茶会、楽しみですわね!」
「ああ、それにチョコのお菓子も色々あるみたいだからな!」
魚の尾を揺らす仕草はミルナ・シャイン(トロピカルラグーン・f34969)の楽しげな心を表しているかのように軽やかで、弾む声で紡ぐ彼女へとジゼル・サンドル(歌うサンドリヨン・f34967)は大きく頷きを返した。
鼻へと運ばれてくる芳しい花の香りの中に混じる、甘いチョコレートの香り。その香りの主を探そうかとジゼルが辺りを見回せば、その出所は分からない程あちらこちらの席でチョコレートのお菓子が並んでいる。
「やっぱりショコラパフェが食べたいな」
その中でも特別並んでいて、鮮やかに輝いて見えたのが幾層にも重なる芸術的なパフェ。赤やオレンジに視線を奪われながら彼女が紡げば、ミルナは小さく笑みを零す。
「ふふ、ジゼルはやっぱりチョコが気になります? ではショコラパフェにしましょうか」
彼女がチョコレートが好きなことは知っているから、何だか微笑ましく想ってしまう。けれど、この時期に此処へと訪れたのならやはりそれしか無いだろう。各自の好みに調整出来るというのも、皆が頼む理由の一つ。
注文をして、暫し待てば品が届く。
ティーカップの紅色を揺らした後、まずは花瓶に生けられた花を一輪。――濃いピンクの薔薇のような花弁を抱くメロウ・スイートをミルナがカップへと咲かせれば、倣うようにジゼルもガーベラの形をした花を咲かせた。
紅茶の熱にか、乗せた瞬間にふわりと香る芳しい薔薇のような花の香。
「ガーベラってあまり香りを楽しむイメージはないが……これはすごいな、ちゃんと甘い香りがする」
その香りを深く胸に吸い込んだ後、ほうっと吐息を零しジゼルは零す。――見目はガーベラのようではあるが、やはり研究の結果出来上がった特別な品。アクセントとして楽しめるように考えられた結果なのだろう。どこか不思議そうに小首を傾げながら語る彼女の姿を眺めながら、ミルナは匙を取る紅茶をくるくるとかき混ぜる。――すると、紅茶に浮かべた薔薇は崩れ、消えていった。
「他の世界にもエディブルフラワーというのはありますけれど、飲み物に溶けるというのがまたティータイムにぴったりですわね」
その儚くも美しい様に瞳を輝かしながらミルナが語れば、二人は嬉しそうに微笑み合い紅茶を口にする。香り高い紅茶と花の香り、そして優しい甘さが広がれば。安堵したように息を零してしまう。同時の仕草にまた笑い合って、次はパフェへと向き直る。
「パフェも美味しい! オレンジとチョコって合うよな……」
「スイートなチョコに甘酸っぱいラズベリーがアクセントになって美味しい♪」
ミルナは自分の瞳と同じオレンジのソースを。ミルナは甘酸っぱさがチョコレートに合うラズベリーを口にし、互いに瞳を輝かせながら頬を押さえる。
「ミルナのも美味しそうだな、ちょこっともらってもいいだろうか?」
そのままちらりと、嬉しそうなミルナの姿が気になったのかジゼルが問う。チョコレートが大好きな故のその行動に、どこか微笑ましく想いながら彼女は頷いた。
「もちろんですわ、はい、あーん」
ソースとチョコレートを絡ませて、匙を差し出せば素直にジゼルは一口。甘いチョコレートと共に口に広がるのはベリーの酸味。
「うん、こっちも美味しい! ラズベリーの甘酸っぱさでキュンとする可愛いパフェだな」
見目の愛らしさにぴったりな味わい――飾られた、お揃いの蝶の飾りもまたその愛らしさを更に魅せるようで。嬉しそうに語る彼女は今度は、と自分の匙を差し出した。
「こっちはちょっぴり大人味かしら、こっちも美味しいですわね」
同じでも、全く違う味わいに。弾む心を隠せずにそう紡いだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
蓮見・双良
【空環】
杜環子さんの手を取りながら2人席に並び座り
杜環子さんは何にしますか?
僕は折角ですからショコラパフェを
甘さは控えめで…ソースはオレンジ系
あ、それ良いですね
キャラメルのくだりには愛おしさが一層増して
僕のにもメロウ・スイートを…彼女の髪色のような白い花を
添えて貰えますか?
…あ、僕は彼女の恋人です
さらりとにこやかに申告し
彼女の申告をそっと期待
触れた掌は柔く握り返し
あなたにだけ見せる微笑みを
僕の、先に少し食べてみませんか?
言いながら先に一口匙に乗せ、微笑みと共に彼女の口元へ
美味しいですか?
なら良かった
勿論です
一匙貰い、まるで彼女の心の味の様な甘さに浸り
あなたの好きな甘さ、想いの甘さ
決して忘れない
壽春・杜環子
【空環】
そらくんにエスコートされつつ、席へ
…気づけばなんだかいつの間にかわたくし慣れてきております。ふしぎ
悩んで、そらくんとお揃いでパフェに
甘さは一番あまいの!メロウスイートでおめかしは出来る…?
ソースはキャラメル。焦げるとそらくんの御髪のようなお色になるでしょう?
そらくんの手を取って、指を絡めて温かな―そう、わたくしたちは恋人
言ってもいいか今まで散々迷ったけれど…わたくしはもう、貴方の愛から目が逸らせない
だから少しずつ、向き合うように
そらくんが選んだ味を一番に頂くなんて贅沢ですこと。ふふ
優しい甘さとカカオらしい苦味や酸味、貴方の選んだ味だもの
さ、わたくしの飛び切り甘いの…食べてくださる?
●
硝子扉を開いた先の幻想的な景色の中、蓮見・双良(夏暁・f35515)にエスコートされ歩く自分が、すっかり慣れてしまっているとはたと気付き壽春・杜環子(懷廻万華鏡・f33637)は瞳を幾度か瞬いた。
そんな彼女の姿に追求はせず微笑んで、席へと導くと双良は己も腰を下ろしメニューを開く。ショコラの言葉が並ぶ中から、選ぶのならばやっぱりパフェ。甘さ控えめにオレンジを、と注文をすれば杜環子は反対に――。
「甘さは一番あまいの! メロウスイートでおめかしは出来る……?」
期待に満ちたのか弾む声で紡いだ後、そうっと窺うように杜環子は紡ぐ。勿論です、と店員に返されれば、彼女は嬉しそうに微笑んだ。
「あ、それ良いですね」
そんな彼女の笑みに心満たしながら、素直に彼女の発想に感心する双良。そんな彼の透き通る青い瞳に視線を吸い寄せられれば、硝子天井から射し込む光にキラキラと輝く茶色の髪に視線が止まる。
その輝きから目を逸らせずに、杜環子は唇を開き――。
「ソースはキャラメル。焦げるとそらくんの御髪のようなお色になるでしょう?」
紡がれたその言葉に、双良の心はきゅっとなる。これは愛おしさなのだと、今の彼ならば分かるから。小さく微笑むとそれなら、と彼も重ねるように願いを一つ。
「僕のにもメロウ・スイートを……彼女の髪色のような白い花を、添えて貰えますか?」
そんな二人を微笑ましげに見つめる店員が「他にご注文は?」と問い掛ければ。
「……あ、僕は彼女の恋人です」
忘れていた、と最後に双良は一つ零す。――それはさも当然と言いたげな程、何時ものにこやかな笑顔でのさらりとした言葉運び。そのままちらりと杜環子を見れば、彼女は瞳を伏せながらテーブルの上に乗せられた双良の手へと己の細い指を絡め。
「――そう、わたくしたちは恋人」
こくりと、静かに頷きながら彼女は紡いだ。
そのまま瞳を開けば、視線の先には貴方が居る。――言ってもいいか、今まで散々迷って来た。けれども、もう。わたくしは貴方の愛から目が逸らせない。
少しずつ、少しずつ向き合おうと。そう考えている彼女の心がよく分かる。彼女が言葉として紡いでくれたことが嬉しくて、真っ直ぐに自分を見る眼差しが愛おしくて。双良は重ねられた掌を柔く握り返すと、世界に一つの特別な笑みを返した。
甘くも芳しい香りに満ちた空間。
楽しげなお喋りに包まれるのも、学生の多い此の世界ならではの音色。その賑やかさは双良の知る世界とどこか近い気もして、彼が静かに微笑んだ時、思ったよりも早く品が運ばれて来た。白の花と水色の花と、そして愛の証のハートを添えたショコラのパフェ。
その鮮やかさに杜環子が万華鏡のように瞳を輝かせた時、双良は一つ問い掛けを。
「僕の、先に少し食べてみませんか?」
オレンジ色とショコラが絡んだ匙を差し出しながら、笑みを零す。双良のその行動に杜環子は瞳を細め。
「そらくんが選んだ味を一番に頂くなんて贅沢ですこと。ふふ」
戸惑い無く、素直に。口を開ければ広がるのは爽やかなオレンジの香りとほんのりビターな大人のチョコレート。優しい甘さとカカオらしい苦みが広がるその味わいは、貴方が選んだ貴方らしい味。
素直に紡がれた感想にどこか嬉しそうに微笑む双良へと――お返しのように杜環子も匙を差し出した。自身の髪と同じ色、と紡いでくれた味わいが匙の上で輝く。
「さ、わたくしの飛び切り甘いの……食べてくださる?」
「勿論です」
小首を傾げ問い掛ける杜環子へと、こくりと頷き口を開く双良。
じわり、広がる甘い甘い味わいは心の底から溶ける程。
それはまるで、彼女の心のような甘さだと想い瞳を閉じる。
満ちて、満ちて――あなたの好きな甘さ、想いの甘さを決して忘れないと彼は誓う。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
海藤・ミモザ
【海鍵】
凄い可愛い素敵~~!
あっ、ドルデンザ!ここの席にしよ!
(って座るの隣!?ひえ近っ…!
(むー…彼は飄々としてて何か悔しい…
(悩む横顔、可愛い
ふふ、そりゃあアルダワだもん
迷っちゃうけど…うん、やっぱりパフェにしよう!
甘さ普通でブルーベリーのソース!
ミモザの花めくメロウ・スイートも添え
ド、ドルデンザ…!?
手へのキスと笑みの意味を察し瞬間沸騰
わっ…わ、わた、私達は、こ…っ、こここここい、びとです!
え…?貰って良いの…?ありが…
はっとして掌で顔隠し
絶対、顔緩んでるもん…
ばか…!
もう蕩けちゃいそう
甘い花束に綻びつつ
…ドルデンザにも、これ(ミモザの花)…
口に合うと良いけど
重なる掌
点る頬
ああもう…狡い
ドルデンザ・ガラリエグス
【海鍵】
花を食べる?
不思議ですね、まるで魔法—…そうでした、そういうお国でしたね
ミモザと共に席へ花を眺められるよう並んで腰を掛けながら一緒にメニューと睨めっこ
…迷いますね
全部天然ですし
え…そうかなるほど、異界ではこれが普通
珈琲と…ビターなテリーヌを、スイート・メロウの花束と共に
ミモザは決まりましたか?
恋人の申告は、ミモザの手を取って口づけをして示す
メロウ・スイートの花束を貴女へ
せっかくの日ならではの花で貴女を飾りたかったんです
隔してても髪の隙間から覗く赤くなった耳…でも、
抱き寄せて頬を擽り、見せてくださいと強請る
彼女の手を包むように取り花を食む
うん、甘いです。けれど私の好きな味だ、貴女のように
●
「凄い可愛い素敵~~!」
くすぐる花の香と溢れる色彩に、海藤・ミモザ(millefiori・f34789)は大きな瞳をキラキラと輝かせながら声を上げる。
そのまま花壇の直ぐ傍の席、数多の花が見える特等席を見つけると此処にしようとミモザはソファ席へと腰を下ろした。そんな真っ直ぐな彼女の様子を微笑ましく眺めていたドルデンザ・ガラリエグス(拳盤・f36930)は、さも当たり前のように目の前の席――では無く、ミモザの隣へと腰を下ろす。
ふわり、彼の体重により揺れるソファ。
(「って座るの隣!? ひえ近っ
……!」)
予想外のその行動と距離の近さに、身体を強張らせるミモザ。彼はそんな彼女の心中は分からないまま、メニューをぱらぱらと捲り眉を寄せる。
「花を食べる? 不思議ですね、まるで魔法-……そうでした、そういうお国でしたね」
此処がどんな世界なのかを思い出し、自分で完結させるドルデンザ。そんな飄々としたいつも通りな彼の姿が少しだけ悔しく想いつつも、メニューに悩むその横顔が可愛らしく想いどうでもよくなってしまう。
「ふふ、そりゃあアルダワだもん」
だから素直に笑みを零し、言葉を返すミモザ。その彼女の言葉にドルデンザは顔を上げると瞳を瞬き、またメニューへと視線を戻す。
「え……そうかなるほど、異界ではこれが普通」
溶ける甘い花。その愛らしい存在は、サイバーシティ生まれの彼の中には無い感覚。どこか感慨深げに呟いて、悩みに悩んだ末――。
「珈琲と……ビターなテリーヌを、スイート・メロウの花束と共に」
やっと決まった品を聞き、ミモザはどこか嬉しそうに微笑んだ。――そんな彼女がパフェを注文したから、ドルデンザはミモザの手を取るとその甲へと口付けを。
「ド、ドルデンザ
……!?」
不意な行動に顔を真っ赤に染め上げて動揺するミモザ。そんな彼女の姿を甘い眼差しで見つめる彼の姿を見て、その行動の意図を察すれば更に顔が赤くなる。
どうしよう、一瞬戸惑い視線が泳ぐ。けれどミモザは意を決し、深く息を吸うと――。
「わっ……わ、わた、私達は、こ……っ、こここここい、びとです!」
噛みながらも精一杯、明確な言葉として彼女は紡いだ。
心臓が強く、強く鳴り響く。隣に座る彼に聞こえてしまうのでは無いか――そんな心配を胸に待っていれば、運ばれてきた品々に無意識にほっと息を吐くミモザ。
彼女の挙動の一つ一つに魅せられながらも、ドルデンザは注文した薔薇のようなメロウ・スイートの花束をミモザへと差し出した。
「え……?」
「せっかくの日ならではの花で貴女を飾りたかったんです」
その行動にミモザは瞳を瞬く。驚く彼女の姿を隣でじっと見つめながら微笑むドルデンザの姿も、その行動も嬉しくて、幸せで。
「貰って良いの……? ありが……」
そっと手を伸ばし掛けて、ミモザははっとし両掌で顔を隠す。
(「絶対、顔緩んでるもん……」)
どうしようかと戸惑う彼女。そんな彼女は必死に己を隠しているけれど、隠し切れない耳から真っ赤な様子が伝わってきて、ついドルデンザは笑みを零す。
けれども、それだけでは足りない――。
「見せてください」
そっと抱き寄せて、頬をくすぐり直ぐ近くで瞳を合わせる。真っ赤になった顔と、熱により潤んだ瞳のまま。
「ばか……!」
ただそれだけが、ミモザの返せる精一杯の言葉だった。
もう、蕩けちゃいそう。その言葉は音にはせずに心に秘めて、そうっとミモザも花束を差し出す。己の名と同じ、淡い黄色のミモザの花束を。
「……ドルデンザにも、これ」
真っ赤のまま差し出されたその花を、手を包むように取り。そうっと一つ食めば。
「うん、甘いです。けれど私の好きな味だ、貴女のように」
彼は真っ直ぐにミモザを見つめ、小さな声でそう紡いだ。
重なる温もりも、甘い声も全てが。
――ああもう……狡い。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
朧・ユェー
【月光】
花の香りが充満している
えぇ、とても素敵な空間ですねぇ
綺麗な色とりどりな花達
形も匂いも違ってでもキツい訳じゃ無く、優しい香り
ルーシーちゃんは、淡い黄色のお花?
なるほど、向日葵の様な元気で美しく咲いてる花ですね
僕は…紫色の花にしましょうか
小さな花達が沢山咲いたブルーベリーの花の様な
甘酸っぱい香りがします
おや?この花は食べられるみたいですよ?
お砂糖の香りだそうです
せっかくなのでコーヒーの中へと浮かばせて
ゆっくりと混ぜる
溶けていく花はコーヒーの香りを更に引き立てる
一口飲めば、淡い優しい甘さ
ルーシーちゃんはどうですか?
パフェ?
えぇ、良いですよ
一緒のを頼みましょうか?
ルーシーちゃんが頼み事をするという事は何かあるのかな?と思ってにこにこと笑顔
一緒のショコラパフェを頼む
チョコやソースは選べるのですね
ではビターチョコにソースはラズベリー
はい、この子は娘で大切な家族です
おやおや、なるほど
月が飾られて来る
嬉しい言葉と嬉しいサービスに更に笑顔がほころんで
ふふっ、ありがとうねぇ
はい、食べましょうか
ルーシー・ブルーベル
【月光】
お部屋にお花がいっぱいね!なんてステキな空間なの
学生さん達には感謝しなくっちゃ
あちこちのお花に近寄って、胸いっぱいに甘い香りを吸い込めば幸せ
ルーシーはね、淡い黄色のお花がいいなって思うの
ふんわりした花弁の……このコ!優しい甘い香りでうっとりしちゃう
ゆぇパパはどれにする?
紫!本当だわ、甘酸っぱい香りがする!
キレイなうえに食べられるなんてステキなお花ね
パパの真似をしてミルクコーヒーにお花を浮かべて
自然と溶けるのに任せながらも一口
……ううん、良い香り!おいしい!
あのね、パパにお願いがあるの…
一緒にパフェを食べてもらっても、いい?
頷いて頂けたなら、いそいそワクワク
店員さんをお呼びするわ
すみません、ショコラパフェをお願いします!
ルーシーはスイートチョコにソースはオレンジに
そして大事な言葉
わたしたちは親子で家族、です!
届いたパフェにはお月さまのチョコ細工が
えへへ、気づいた?パパ
家族だけに贈ってくれるお心遣いなんですって!
これをパパと食べたくて
かわいいから少し勿体ないけれど
早速頂きましょう!
●
硝子の扉をくぐれば、満ちる香りにルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)は深く深く息を吸い込む。
「お部屋にお花がいっぱいね! なんてステキな空間なの」
鮮やかな色と共に飛び込む芳しい香り。そしてほんのちょっぴり混じる甘さは溢れる程のショコラから。その幸福に満ちた世界に、ルーシーは大きな青い瞳を煌めかせる。そんな嬉しそうな娘の姿を見れば、朧・ユェー(零月ノ鬼・f06712)も自然と笑みが零れた。
「えぇ、とても素敵な空間ですねぇ」
嬉しさを身体全体で表しているかのように、ぴょんっと軽やかに跳ねながら辺りの花へと鼻を近付けるルーシー。薔薇に、ガーベラに、マーガレットに――形は知っているそれと一緒なのに、薫るのは生花とは少し違う。甘さと華やかさを含んだ独特の香りは、ちっとも嫌では無く胸を躍らせる。
そんな彼女に倣うように、ユェーも直ぐ傍に咲く小さな花弁の白い花へと近付く。すんっと鼻を鳴らしてみれば、キツイ訳では無く優しい香りが胸に満ちる。
「学生さん達には感謝しなくっちゃ」
一つ一つ楽しみながら、くすくすと小さな笑い声を零しながらルーシーは心からの想いを言葉にした。こんなにも幸せに満ちた、素敵な魔法へと――。
そんな優しい彼女の姿に、ユェーは口許をやわらげる。どれも違う花に見えるけれども、メロウ・スイートと云う同じ特性を持つことが不思議だ。けれども、だからこそ各々の一番を選ぶことが出来る。
それならば――。
「ルーシーはね、淡い黄色のお花がいいなって思うの。ふんわりした花弁の……このコ! 優しい甘い香りでうっとりしちゃう」
ぴっとルーシーが指差したのは、温かく淡い黄色の花弁。ふんわりした多くの花弁を抱くそれは、色合いもあり元気に咲く向日葵のようにも見える。
「ゆぇパパはどれにする?」
「僕は……紫色の花にしましょうか」
こてりと小首を傾げ、真っ直ぐに見つめながら娘に問われれば。改めてぐるりと辺りを見回した後――ユェーの指先が触れたのは、小さな花弁を沢山抱いた花。ブルーベリーの花のようなそれへと鼻を近付ければ、甘さの奥に酸味を感じるきゅんとする香り。
「甘酸っぱい香りがします」
「紫! 本当だわ、甘酸っぱい香りがする!」
彼の言葉にとことこと近付いて、一緒に鼻を近付けてみれば彼の言う通りで。ルーシーの選んだ黄色の花とは全く違う香りに心がウキウキするのが分かる。
本物の花を食べられる――だけでなく、甘味や香り付けとして使う為に研究された品。
「キレイなうえに食べられるなんてステキなお花ね」
選んだ花を一輪手に取って、改めて鼻に近付けながらルーシーは語る。それは好奇心に満ちた学生達だからこそ、考えられたものなのかもしれない。
ふわりと香り立つのは、花や甘味とはまた違う芳ばしい香り。
カップの中で揺れる漆黒の液体――珈琲カップを手元に寄せると、ユェーは迷うことなく選んだ紫の小さな花弁を珈琲の上に浮かべていく。
熱が加わればふわりと広がる甘酸っぱい香りが強くなる。珈琲と混じるその香りをカップを近付け楽しんだ後、くるりと匙を回せば花は儚く消えていく。
「! ルーシーも!」
その珈琲を一口、優雅に楽しむ父の姿に、真似してルーシーも黄色の花をカップの中へと。――彼とは違う、ミルクたっぷりのミルク珈琲に黄色が咲けば一気に華やかになる。
添えられた匙を使わずに、熱により花が溶けていく様をじいっと見つめるルーシー。はらはらと花弁が零れ、溶けていく様は儚くて――すっかり溶け切ったところで一口。
「ルーシーちゃんはどうですか?」
そんな彼女の様子を静かに見守って、こくりと喉が鳴ったところでユェーは問い掛ける。娘の様子を伺う優しい色のお月さまを見返してルーシーは。
「……ううん、良い香り! おいしい!」
満面の笑顔で、そう答えていた。
そのまま――ちらりとメニューへと少女は視線を移す。踊るショコラのお菓子の名前。その中からどうしても、気になるものがあるのだ。
「あのね、パパにお願いがあるの……」
カップを置いて、膝に手を置いて。改めて願う愛しい娘の言葉にユェーもまたカップを置いた。いい子の彼女が改めて言うのならば、真剣に聞きたいと思ったから。
「一緒にパフェを食べてもらっても、いい?」
遠慮がちに紡ぐ彼女。――小さな子ならばもっと真っ直ぐに、おねだりしても良いのに。そんな姿が愛おしいと思いながら、お願いをしてくれたことが嬉しくて。
「パフェ? えぇ、良いですよ、一緒のを頼みましょうか?」
直ぐに頷いてくれた彼の言葉に、顔を上げればルーシーの頬は淡く染まる。そのまま手を挙げ店員を呼べば、メニューを聞き取る女性へ――。
「すみません、ショコラパフェをお願いします!」
真っ直ぐに、高らかに、そう告げた。
スイートなチョコにオレンジのソース。ビターなチョコにラズベリーのソース。
各々の好みを言葉にした後、ちらりと瞳を見合わせくすりと一つ笑みを零して――。
「わたしたちは親子で家族、です!」
真っ直ぐに店員を見て告げるルーシー。
その言葉を音にしてみれば、とくんと胸が大きく鳴り熱くなる。その幸せな音を確かに感じ瞳を輝かせる娘の姿を前にして、ユェーは一層瞳を細めた。
「はい、この子は娘で大切な家族です」
こくりと頷き、包み込むような優しい言葉を掛けてくれる。
そんな親子の姿に、「素敵な親子さんですね」と微笑ましそうに笑ってくれる店員の姿に、ルーシーはほんの少し照れくさそうに笑った。
二人同時に珈琲を口にして、ほうっと息を吐いた時。直ぐに運ばれてきたのは幾重にも層が重なる鮮やかなショコラパフェ。――その天辺には、月のショコラが。
「えへへ、気づいた? パパ。家族だけに贈ってくれるお心遣いなんですって!」
そのお月さまを真っ直ぐに青い瞳に映して、嬉しそうにルーシーは語る。――ユェーの家族と言える事が嬉しくて、これを一緒に食べたいと思って此処に来たのだ。
そんなウキウキした彼女の様子がその眼差しから伝わるようで、ユェーも同じようにお月さまを瞳に映しながらそっと微笑む。
「ふふっ、ありがとうねぇ」
優しくも温かなサービスと、自分と、と想ってくれた愛しい娘へ。
その証はキラキラと輝いているように見えて、食べてしまうのは勿体ない。匙を片手に触れるのについ躊躇してしまうけれど、アイスが溶けてしまうから――。
「早速頂きましょう!」
「はい、食べましょうか」
満面の笑顔でルーシーが紡げば、ユェーは頷く。
そうっと匙を入れ、オレンジとラズベリーを口にする。芳醇なショコラの香りと酸味と甘みのあるソースを味わえば、溶ける心地が親子を包み込んだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ディフ・クライン
ヴァルダ(f00048)と
受講数を大幅に減らしたけれど、未だ学園に籍を置いている
研究には都合がよかったし、彼女と共に通えるのも嬉しかったから
俯き気味の貴女に「大丈夫だよ」と笑って
席に着けば微笑んで「恋人なんです」と店員に告げる
折角だからハートの飾りが欲しいもの
「ね?」と笑めば
意を決した貴女の言葉に目を丸くした
そこまでは言わなくても、と思いはしたものの
メニュー表に隠れる貴女を見たらそんな思いも飛んでしまって
ふふ、ヴァルダありがと
彼女の手を掬う
顔を上げてくれたら
頬を朱に染めながらも、嬉しそうに笑うオレが見えるだろう
予想外のことに驚きはしたけど、婚約者だって宣言してくれた貴女が愛らしい
ラズベリーソースのビターショコラパフェ
ふふ、ちゃんとハートが飾ってある
チョコとソースをたっぷり絡めたそれをスプーンで掬ったら
はい。頑張ったヴァルダにお礼とご褒美
オレのハートをどうぞ召し上がれ?
なんて差し出したら貴女は食べてくれる?
一枚、二枚
花弁を丁寧に手に取り紅茶に浮かべれば
解けて香る
甘やかで愛しい、君との時間
ヴァルダ・イシルドゥア
ディフさん(f05200)と
週末だけ通うようになった魔法学園
いまだに彼のご学友とすれ違ったりしてしまったらどうしようなんて
ディフさんの愛を知っているのに、臆病なわたしは学園で隠れるように行動しがちで
今だって緊張に胸を高鳴らせている
えっ、あっ
席に着くなりあなたはわたしを恋人だと言ってくれる
それなのにわたしは俯いてばかりで、それではいやで、だから、
こっ……こ、婚約者、です!
上擦りひっくり返った声が店に響いて
一瞬の静寂にかっと全身に血が昇る
消えてしまいたくてメニューの影に隠れるわたしの手を、あなたが掬ってくれるから
ヴァルダも、ちゃんと……いいたかった、です
告げればあなたが愛しげに目を細めてくれるのが嬉しくて
ちょっぴりだけ自分のことを褒めてあげたい気持ちになった
オレンジソースのショコラパルフェに飾られたハートがなんだか誇らしくて
勿体なくてなかなか食べられずにいたら
あ、
反射で口に含んでしまって頬が熱くなる
差し出されたハートが眩暈がしそうなほどに甘いのは
わたしが日毎に想いを募らせているせい?それとも
●
ディフ・クライン(雪月夜・f05200)にとっては、此のアルダワ魔法学園の地は慣れ親しんだものだ。生徒として通い、自宅の工房も此の世界。
だからこの溢れる程の色も、生徒達の活気も、彼にとっては馴染んだものだけれど――最近になって、学園へと足を運ぶ楽しみが増えた。ヴァルダ・イシルドゥア(燈花・f00048)と共に、週末だけでも一緒に通うことが出来るようになったから。
以前よりも随分と受講数は減らしてしまったけれど、彼女と共に通えることが嬉しくて。こうして学園内の施設の扉をくぐる足取りは軽いディフとは対照的に、ヴァルダは心配そうにディフの影からきょろきょろと辺りを見渡している。
きゅっと握った掌は、彼女の緊張の証。
――彼のご学友とすれ違ったりしてしまったらどうしよう。
そんな心配が、彼女の心を満たしている。
彼の愛を疑うことは無い。少し勇気は持てたけれど、未だ臆病な彼女が真っ直ぐに此の場で行動するにはもう少し時間が掛かるのだろう。とくとくと逸る心臓の音を響かせながら、身を強張らせる彼女へと――。
「大丈夫だよ」
そっと屈み、その長い耳元へとディフは言葉を紡ぐ。
優しい言葉、甘い眼差し、温かな笑顔。
彼の全てを傍で感じ、小さくヴァルダは息を吐いた。――ほっと、安堵したようなその息の後の彼女の身体は、ほんの少し力が抜けていて。行こうとディフは彼女の手を取る。
エスコートするように案内された席を引き、彼女を座らせる。そのまま目の前の席へと腰を下ろせば、注文を取りに来た店員へと――。
「恋人なんです」
「えっ、あっ」
さらりと、自然にディフは紡いだ。あまりの早さにヴァルダはみるみる顔を真っ赤に染め上げて、それ以上は紡げなくなり――そのまま俯いてしまう。
そんな目の前の彼女の姿に微笑むディフ。折角だからハートの飾りが欲しい、と。ヴァルダへと同意を求めるように、彼は覗き込むように彼女を見る。
彼が、待ってくれている。
それが痛い程に伝わってくる。彼は、わたしを恋人だと言ってくれた。それなのに俯いでばかりの自分が嫌になり、きゅっと膝の上に乗せた両の手を握り締めると。
「こっ……こ、婚約者、です!」
精一杯に絞り出した声は上擦り、ひっくり返った声が店内に響き渡る。
振り絞った勇気の分だけ、思ったより大きくなってしまった己の声に慌てて両の手で口を押えるヴァルダ。けれど、零れてしまった言葉はもう消せない。
一瞬訪れる静寂。
自分のしてしまったことが恥ずかしくて、顔だけでなく身体中に血が巡り熱くなっていく。穴があったら入りたい、とはこういった事を言うのだろうと思いながら、慌てて手元のメニューを手繰り寄せるとヴァルダは自身を隠した。
そんな彼女の一挙手一投足を青い瞳に映しながら、ディフは小さく笑む。
――そこまで言わなくても、と想いはした。けれども、精一杯に言葉を紡いでくれた彼女が嬉しくて、今こうして恥ずかしさに隠れる彼女の姿が愛おしいと強く想う。
「ふふ、ヴァルダありがと」
その溢れる想いを伝えるかのように、慌てる彼女の手を掬いあげた。そんな二人の様子を見て、「仲がよろしいですね」と微笑ましそうに紡ぎ店員は去って行く。
その姿を見送った後、掌の熱を確認するかのようにヴァルダは恐る恐るディフを見上げた。巡る熱のせいか顔は変わらず赤く、橙の瞳も潤んでいる。
改めて魅せてくれた彼女の顔が嬉しくて、つい自然とディフの口許に笑みが零れた。
「ヴァルダも、ちゃんと……いいたかった、です」
ぽつり、ぽつり。
緊張に声を微かに震わせながらも、己の心を伝えるヴァルダ。彼女の予想外の言葉に驚きはしたけれど、婚約者だと宣言してくれたことが嬉しいと改めてディフは想う。
彼女の言葉に更に瞳を細め、仄かに頬を染め嬉しそうに彼が笑ってくれるから――ヴァルダはちょっぴりだけ、自分のことを褒めてあげたい気持ちになった。
静かに口許に笑みを咲かせた時、丁度ショコラパフェが運ばれてくる。ラズベリーの赤色と、オレンジの橙色が煌めくショコラはふわりと甘い香りが漂い、勿論お願い通りピンクのハートの装飾が天辺に。
「わ、あ……」
「ふふ、ちゃんとハートが飾ってある」
ハートに見惚れるヴァルダを見ながら、同じようハートを喜ぶディフ。幾層にも果実のソースとチョコレートが重なるパフェは芸術品で、トップに飾られた果実を崩すのもためらう程。長めの匙を手にしながら、どうしようかと迷うようにヴァルダがパフェを色々な角度から眺めていれば――。
「はい。頑張ったヴァルダにお礼とご褒美」
その言葉と共に、ディフから匙が差し出されていた。
真っ赤なソースと、ビターなショコラと果実が一緒になった特別な一口。そしてそこには、愛の証であるハートの装飾が乗っていた。
「オレのハートをどうぞ召し上がれ?」
にこりと、愛おしげに瞳を細めながら微笑んで、彼はヴァルダへと促す。考える間も無く、流れるようにぱくりと口で受け止めてしまった後――ヴァルダは己のしたことの重大さに気付き、熱くなる頬を隠すように両の手を頬へと当てた。
身体の熱が上がるのと同時に、広がるのは甘酸っぱいラズベリーとビターなショコラ。深い深い味わいの奥に、とろける苺は特別なハートだろう。それが、眩暈がしそうな程に甘く感じる気がするのは――わたしが日毎に想いを募らせているせい? それとも――。
とくん、また心臓が強く鳴る。
ゆっくり、ゆっくりその熱を味わいながら。ディフを見上げれば彼は嬉しそうに微笑んでいた。ヴァルダが、自分が差し出した想いを食べてくれて嬉しいと思ったから。
そのまま流れるように自身もパフェを口にすると、一旦匙を置きディフは手元の紅茶のカップを寄せ。透き通る紅色へ、彼は一枚、二枚とメロウ・スイートの花弁を浮かべる。
くるくると回り、溶けていく花弁。
紅茶の熱により立ち上がる香りは増し、華やかな甘さがディフの鼻をくすぐっていく。
一口味わい――ほう、と零れる吐息は幸福の証。
解けて、香る。甘い、甘い愛しいひと時。
それは君と一緒だからこそ味わえる、特別な時間。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『ユキウサギウミウシ』
|
POW : あそんで
【ミニぷにぷに】【ミニもちもち】【ミニつるつる】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
SPD : ともだち
自身の身長の2倍の【めっちゃ移動が早いシロイルカ】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ : ぶんしん
レベル×1体の、【背中】に1と刻印された戦闘用【自分の分身】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
👑11
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●ユキウサギ
温かな温室カフェを後にし、迷宮の扉を潜った先――其処に待つのもまた、花だった。
花で出来た壁により、迷路と化した迷宮。むせるような花の香りは、人々と惑わせ迷わせているのかもしれない。けれども、此処は初心者向けの場であり、命の危険は無いのだろう。花自体にも害がある仕掛けは無いようだ。
だから――ただ迷路を突破すれば良いのだけれど。
『みゅー』
『みゅ、みゅー?』
『みゅうううう』
あちらこちらから聞こえてくる、なんとも気の抜ける声。愛らしいその声の出所は、探すまでも無く目の前にみちっと詰まった白い存在。
ユキウサギウミウシ――それが彼等の個体名。
身体を揺らせばぷるっと揺れ。触覚らしき頭や尻尾らしき後ろの飛び出た部分をぴるぴる動かしている。それはまるでご機嫌な様子にも見えて、なんとも危機感が無い存在。
けれども彼等は確かに災魔であり、今もこうして猟兵達の行く先を塞いでいる。
『みゅう?』
ぱちぱちと瞳を瞬き、目の前に現れた猟兵の様子をじいっと静かに見ていても。
寒いのか、寂しいのか。ぎゅうっと寄せ合い詰まったまま微動だにしなくても。
倒さなくてはいけない存在であり、倒すことが生徒達の模範となるのだ。
――ちなみに、ユキウサギの名のせいか触れるとほんのり冷たいらしい。
ナザク・ジギタリス
困ったな
手加減とか、優しく斃すというのは、不得手なんだ
昔のおれよりも余程無害な存在に見えるけれど
放置したら学生たちが困るんだよね
わかった、一緒に遊ぼう
あなた達は何が好き?
追いかけっこ?ならおれが鬼をやろうか
ともだちのシロイルカさんを呼びたいの?それはいいけど…
その速さはちょっと反則じゃないかな
遊び疲れたらお昼寝しよう
ヒトみたいにあたたかくはないけれど膝に乗る?
ちいさな寝息が聞こえてきたら
苦しまないように一撃でやっつけていく
目を醒まさないよう、音を立てないように気を付けるよ
…うーん
「良心が痛む」ってこういう事をいうんだね
●
「困ったな」
水晶のようなすみれ色の瞳を瞬いて、ナザク・ジギタリスは独り言つ。彼の言葉に反応したのか、目の前の白は『みゅ?』とナザクを見上げた。
その姿は昔の自分よりも余程無害な存在に見える。けれども、このまま放置しては学生達が困るとも聞いた。――手加減とか、優しくたおすのは苦手だけれど。
『みゅう、みゅう』
じわじわと近寄り、ナザクの足元にくっついてくる子。その数がどんどん増えていつの間にやら囲まれてしまっていた。けれども何か攻撃する訳では無く、ただただナザクの周りに集まっているだけの子達。
「わかった、一緒に遊ぼう。あなた達は何が好き?」
一つ息を零した後、しゃがんで距離を近付けるとナザクは問い掛ける。『みゅー』と嬉しそうに彼等が鳴いて、くるりと背を向ける仕草を見せる。
「追いかけっこ? ならおれが鬼をやろうか」
彼等の意図を何となく理解したナザクは、頷きながら立ち上がる。するとどこからかシロイルカが現れ、宙をくるりと回ってみせた。お友達だと言うように鳴いた後、期待した眼差しを向けるシロウサギ――友達も一緒に、と言っているのだろう。いいけど……と紡げば彼等はシロイルカの背に乗り、逃げろとばかりに加速する。
「その速さはちょっと反則じゃないかな」
あっという間に姿が見えなくなった彼等。一人残されてしまった自分の姿を確認して、小さな声で彼は紡ぐ。――人ならば、つい笑みを零していたことだろう。
随分と素早いけれど、決して本気で逃げる訳では無い遊びの追いかけっこ。ナザクの姿を見守るように、辺りをくるくる泳ぐ彼等の姿を追い掛けていれば――何時の間にやらシロイルカは消えて、ナザクの周りにはまた沢山のシロウサギ。
『みゅぅ、みゅぅ……』
小さな声で、瞳をゆるゆると閉じそうになる姿は眠たそうにも見えて。疲れた彼等にお昼寝をしようと、ナザクは誘った。
「ヒトみたいにあたたかくはないけれど膝に乗る?」
言い切らぬうちに一匹がナザクの膝に乗る。白磁の肌は柔らかくも無くひんやりとしているけれど、ひんやり具合ならユキウサギも一緒。自分も自分もと、次々に膝に乗ろうとするけれど、小さな身体であるナザクの膝の上には限界がある。暫く辺りをうねうね動き、諦めたのかユキウサギは彼へと身体を預けた。
ゆるゆる瞳を閉じれば、心なしか垂れるようにその身体が広がったように見える。
『みゅぅー……』
聞こえだす小さな寝息。すっかり囲まれてしまったけれど、今ならば優しく送ることが出来るだろう。起こさないように動きを抑えて、音を立てないようにと気を付けながら彼は衝撃波を放ち彼等を海へと送っていく。
意識が無い為か、ただ静かにその姿は消えていく。ほんの僅かな時間であんなにも囲まれていた白達は全ていなくなり、残されたのはナザク一人。
「……うーん。『良心が痛む』ってこういう事をいうんだね」
消えゆく彼等を見て、胸へと手を当てるナザク。
――ちくりと、痛む心が自分にもあるのだろうか。
大成功
🔵🔵🔵
リヴィ・ローランザルツ
【ルシエラさんf38959】と
何かと彼女を見てきたからこの展開は想像に容易く
同時に変わらないなとも思う
『構いませんよ、俺も見てみたいですし』と
存外少女の様に振舞う事の多い彼女は下手をすれば俺より年下の様で
嬉しそうに礼を述べる様子に釣られる
愛らしい様とそれを微笑ましく見つめている彼女を交互に
エンドブレイカーとして猟兵として過ごした日々は
彼女の方が圧倒的に長いし経験豊富だけど
俺だって同じ様に思う事がある
けどそう思う事は別に悪いという事でも無いし
別段生真面目でもその人の一部なのだから寧ろ良いと思う
なにせ、人の事は言えませんから
少し可笑しくなって笑ってしまうな
誘導しつつ動き最後は彼女に合わせUCを使用
ルシエラ・アクアリンド
【リヴィf39586】と
実際実物を目にすると
分身で愛らしいのが増えるのも
合体してイルカに乗っているのもとても可愛らしそうだよね等と呟いて
振り向きざまに『どうかな?』と目でお伺い
予想通り彼らしい回答にありがとうねと心から感謝を
思った以上に可愛くて
何だかショーを見ている様な気分にもなるけれど
長年、エンドブレイカーと呼ばれていた時分から時折こういったケースもあった
成すべき事は確りと行なうけれど
無害だったら良かったのにね
そう思う事は今だって変わらない
それでもこの路を歩むと決めたのだから
我ながら生真面目過ぎ思うけど
せめて自我が有耶無耶なうちに柔らかい羽根に包まれて眠れる様
祈りつつ魔導書用い合わてUC発動
●
『みゅう』
白いぷにぷにが沢山。
花の色溢れる場だからこそ、真白のその身体は妙に目立っているようにも感じる。そんな彼等を見て、ルシエラ・アクアリンドは緑の瞳を輝かせた。
身体を寄せ合ったり、積み重なったり、限界まで詰まった彼等は可愛い。けれど――。
「合体してイルカに乗っているのもとても可愛らしそうだよね」
ちらりとリヴィ・ローランザルツを振り返りながら彼女は紡ぐ。その眼差しは音にはせずに「どうかな?」と伺っているように見えて、その姿にリヴィは小さく笑った。
「構いませんよ、俺も見てみたいですし」
幾度と、彼女の事は見てきた。もう大人と言われる年齢であり、リヴィよりも随分と年上な彼女。けれどもこうして少女のように振る舞う事が多いのをリヴィは知っている。
だからこれは、予想通りなのだ。
予想していたからこそ、するりと自然に唇から零れた言葉。そんな彼の同意に、ルシエラは嬉しそうに笑うと礼を零しユキウサギ達へと近付いていく。
『みゅ?』
『みゅう??』
彼女が近付いたことで、やっと人が居る事を認識したのだろう。小さな彼等はルシエラを見上げて、ぱちぱちと瞳を瞬く。それはまるで『なあに?』と言っているようにも見えて、危険などまるで無さそうな様子に自然と口許が和らいでしまう。
そっと優しく風を呼び、冷たい冷気が足元を抜けていけば――反応するように彼等は互いに顔を見合わせ、鳴き声を上げたかと思えばどこからか現れるシロイルカ。真っ白同士顔を寄せて何かを喋るとぴょんっと彼等の背へと乗り。水の無い花園の宙をただただ楽しげに、戯れるように泳ぎ出す。
シロイルカが尾びれを揺らし優雅に泳ぐと、宙を飛びあがる。
その姿は美しく、楽しげで――此処が海では無いかと錯覚するほど。とても早く、普通ならばその姿を追うのも難しいだろう。けれども数多の経験を積んだエンドブレイカーであり猟兵である彼等ならばしっかりと見える。
「何だかショーを見ている様な気分」
水生生物とは無縁であろう場で行われる、イルカとユキウサギの戯れはつい瞳で追ってしまう程。互いに白いから余計に惹かれるのであろう。その様にルシエラは、口許を和らげながら素直な感想を言葉にした。
そんな嬉しそうな彼女と、愛らしい彼等を交互に見ながらリヴィは頷く。
愛らしく、見ているとどこか優しい気持ちになる彼等。
こういった経験は、エンドブレイカーと呼ばれていた時から何度もあった。過程がどうであれ、成すべきことは今も昔も変わらない。自分がこの場へ足を運んだ理由で、自分の使命。それはしっかりと頭では分かっているが――。
「無害だったら良かったのにね」
ずっと頭の片隅にあった、己の素直な想いをぽつりと言葉に零す。
けれども、この路を進むと決めたのだから――きゅっと両手を握り締め、覚悟を確認するルシエラ。そんな自分が、我らながら生真面目過ぎると思うとほんの少し眉を下げて語る。そんな、自分よりも圧倒的に経験豊富な彼女の姿を瞳に映しながら、リヴィは首を振りながら瞳を細めた。
自分だって、同じように想う事がある。
けれどそう思う事は別に悪い事ではないし、別段生真面目でもその人の一部なのだからむしろ良いとすら彼は想うのだ。
「なにせ、人の事は言えませんから」
緑の瞳を交差させ、小さな笑みと共にリヴィは語る。その背を押すような彼の言葉に、ルシエラは自然と笑みを返していた。
そう、別れなければいけない。だからこそ今この瞬間をしっかりと焼き付けよう。
『みゅうー』
楽しげな声が聞こえてくる。
この声が悲しみに変わらないように――せめて柔らかな羽根に包まれて眠れるように、祈りを込めて使命を果たそう。
どこか遠くで、波の音が聞こえた気がした。
大成功
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ヴァルダ・イシルドゥア
ディフさん(f05200)と
まあ。かわいい!
ですが……こまりました、これでは通れませんね
もしもし、こんにちは
ここを通してくださいませんか?
怖がりの寂しがりやさんたちとお伺いしました
武器は持たずにそっと手を差し伸べたなら、触れることは叶いましょうか
……。……ディフさん、もちもちです!
ディフさん?
腕の中でくにゃくにゃと形を変えながら寄り添ってくれるのが擽ったい
振り返ればあなたが口元を押さえて震えているものだから、目を瞬かせて歩み寄り
……えい!
こんなふうに笑っているあなたの姿が珍しくて
思わず悪戯心が湧いて、抱えたウミウシさんを彼の眼前へと導いた
優しくしろいからだを撫ぜて落ち着かせてあげましょう
迷宮の中は冷たくて、寂しくて……こうして寄り合っていたのかも
おうたは好きかしら……ほら、こわくない
破蕾香に子守唄を乗せて眠りを誘う
夢の中で痛みも恐怖も感じないまま、『あたたかかった』と思えるように
眠りに落ちたちいさな子らを見つめたなら、ディフさんの名前を呼んで
降り注ぐ浄化の光の中、わたしは歌い続けましょう
ディフ・クライン
ヴァルダ(f00048)と
迷宮に来るのは久しぶり
さて問題の子らは…
……
……ふ、ふふ、すご、ほんとに、みちっと詰まってる……っ
おもちみたい、ふふふっ
詰まってる子たちを見て
なんだか笑いが止まらなくなってしまって
堪えようとしてみるけど零れ出てしまって困った
そうしたら目の前に突然現れた子と至近距離で目が合って
……はは、もちもちぷるぷるしててホントに可愛いね
ごめん、ありがと。落ち着いた
そろそろちゃんとしないとね
ひんやりとしたウミウシを撫でたら漸く落ち着いた
貴女の腕の中にましろの子を返してもう一度撫ぜ
……皆一緒がいいんだね、きっと
抱き上げたウミウシと楽しそうに戯れる貴女もとても愛らしい
出来るならこのまま仲良く遊んでいられたら良かったんだけど
花雨と彼女の子守歌が優しく辺りを包み込む
名を呼ばれて頷いた
冬を手繰る身だが
この子らに寒さや傷みを齎すことは、彼女もオレも望まないから
――おいで、リュミエル
浄化の力籠めた閃光の槍を上に放とう
光の雨となって花と共に降り注いでおくれ
この子らがこのまま静かに眠れるように
●
色に溢れた世界で、通せんぼするように詰まった白。
「まあ。かわいい!」
ぎゅうっと身を寄せ合い、まったりと寛いでいる彼等を前にヴァルダ・イシルドゥアは喜色の声を上げた。大小様々な白くて丸い存在が、沢山。姿が見えても襲ってくる様子は無く、ただじいっとその場に居るだけ。
「ですが……こまりました、これでは通れませんね」
道いっぱいに詰まったユキウサギ達。むしろ道を塞ぐだけでは場所が足りないのか、所々積み上がっていたりもする。互いの身体をぎゅうぎゅうと押し付けているのは、寒くて暖を取っているのだろうか、それとも距離感が分からないのだろうか。
「……。……ふ、ふふ、すご、ほんとに、みちっと詰まってる……っ」
その様子を前にして、ディフ・クラインはおもちみたいだと思わず笑い声を零す。
学園に籍は置いているけれど、迷宮へと足を踏み入れるのは随分と久しぶり。事前情報にどんな子達だろうとは思っていたけれど――まさかここまでとは思わなかった。
小さく笑い声を零す彼に微笑んで、横を通り過ぎるとヴァルダはユキウサギ達の元へと進み出る。ヴァルダの存在に気付き『みゅ?』と反応する彼等へと。
「もしもし、こんにちは。ここを通してくださいませんか?」
ヴァルダは笑顔で、優しくそう声を掛けた。
その手には相棒の槍は無い。――怖がりの寂しがり屋だと聞いた彼等を、怖がらせないようにとのヴァルダの心遣いだ。そのおかげか彼等は警戒することも無く、じっと見つめるヴァルダを見上げぱちぱちと瞳を瞬いた。
友好的に接すれば、逃げることはない。その話を思い出し、そうっと遠慮がちに細い手を伸ばしてみれば――ユキウサギは逃げはせず、そのままヴァルダの指を受け止める。
ひんやり。指先に伝わる冷たさは仄かに冷たい水に触れたよう。そしてぷにっとしてつるっとした感触は不思議な心地で、けれどどこか癒されるのは何故だろう。
そのままそうっと掬い上げてみれば、素直に受け入れた彼はヴァルダの腕の中で、くにゃくにゃと形を変えながら寄り添おうと近付いて来る。
「……。……ディフさん、もちもちです! ディフさん?」
その感触にヴァルダは橙色の瞳を輝かせると、興奮を共有しようと愛しい人を振り返る。けれどその先、何時もヴァルダを優しく見守ってくれる彼は口許を押さえ、先程と変わらずただただ笑い声を零している。
珍しい彼の様子にヴァルダは不思議そうに瞳を開く。
彼を見て、腕の中のユキウサギを見て――そのまま笑い続ける彼の元へと近付けば。
「……えい!」
ほんの少しの悪戯心で、彼の目の前へとユキウサギウミウシを導いた。
ぱちぱち、円らなおめめが瞬いて。ディフの青い瞳と視線が交わる。
『みゅー?』
その瞳と不思議そうに零れる鳴き声に、ディフはほんの少しびっくりして瞳が逸らせなくなる。恐る恐る、導かれるように白い子へと手を伸ばして触れてみれば――ひんやりぷるっとした手触りが、彼の意識を戻させた。
ディフの手に、少しくすぐったそうに身を揺するユキウサギ。けれど嫌では無いらしく、もっともっとと言いたげに身体を擦り付けるから、ディフはそのまま撫でてやる。
「……はは、もちもちぷるぷるしててホントに可愛いね。ごめん、ありがと。落ち着いた」
ふうっと息を吐いて、現実へと戻してくれたヴァルダへとお礼を述べるディフ。何がツボだったのかは自分でも分からないが、彼等の姿がやたらと面白くて、笑いを堪えようと思ってもどうしても止められなかった。そんな彼の珍しい姿に、ヴァルダは嬉しそうに微笑みを返し、自分もその子を撫でてやる。『みゅぅー』と零れる声は出会った時とは違いどこか嬉しそうで、気付けば二人の足元にはユキウサギ達が集まっている。
『みゅー』『みゅうう』と、皆して鳴いて足元をうごうご動く様は構って欲しい、自分も抱き上げて欲しいと言っているようで。二人は顔を見合わせ笑い合うと、その場でしゃがみ彼等を撫でてやる。
「迷宮の中は冷たくて、寂しくて……こうして寄り合っていたのかも」
「……皆一緒がいいんだね、きっと」
細めた瞳には、寂しさの色が宿っている。
触れたからこそ分かる、彼等の気持ち。こうしてただ触れ合っているだけで嬉しそうにしてくれる姿は愛らしくもいじらしく、災魔と云えどその心に寄り添いたいと思う。
「おうたは好きかしら……ほら、こわくない」
しゃがんだその膝へと昇ってくる子をそっと抱き上げてやるヴァルダ。撫でながら優しい笑みを零す彼女の姿に愛らしいと――ついディフは見惚れてしまった。
『みゅう~』
心地良さそうに、嬉しそうに瞳を細めるユキウサギ。尻尾のような飛び出た部分をぴるぴる動かしているのはご機嫌の証なのだろうか。嫌がってはいないと分かる様に、出来るならこのまま仲良く遊んでいられたら良かったと思うけれど――彼等は災魔で、ディフ達は猟兵。此の地で生きてきたディフならば、その役割は誰よりも分かっている。
だから――ヴァルダと視線を合わせ頷き合えば、彼女は歌を紡ぎ出した。
同時に舞い散る花雨。共に添えるは眠りへ誘う子守歌。
優しく包み込むようなヴァルダの歌声に、直ぐにユキウサギ達は眠りへと落ちていく。リラックスしたからか溶けたように歪んだ身体。『みゅう……』と零れる声は寝言なのだろう。心地良さそうに眠る彼等を見つめながら。
「……ディフさん」
ヴァルダは、彼の名を呼んだ。
――せめて、彼等が夢の中で痛みも恐怖も感じないまま、『あたたかった』と思えるようにと祈りを込め、彼女は両の手を組む。その想いを受け止めて、ディフはこくりと頷けば手元を操り精霊を呼ぶ。
――おいで、リュミエル。
それは浄化の精霊。
普段ならば冬を操る彼だけれど、今日ばかりは相応しくないと思った。だって、この子達に寒さや痛みをもたらすことは、ヴァルダもディフも望まないから。
呼ばれたリュミエルはディフへと寄り添うと、彼の命を受け閃光の槍を上へと放つ。そのまま――キラキラと輝く光が、雨のように降り注いだ。
ヴァルダの作り出した花雨と、ディフの作り出した光の雨が花園へと降り注ぐ。
響き続ける優しい子守歌。
美しい花と雨に満ちた世界で、心地良さそうに眠っていたユキウサギ達は次々とその姿を消していく。哀しげな声を上げることなく、穏やかに。
それは、やさしいやさしい世界。
鼻をくすぐる花の香が、永久の世界へと導いた。
大成功
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朧・ユェー
【月光】
おや?前に何か居ますね?
どうやら通れないようです
きゅ?
ルーシーちゃん可愛い声がしますよ
おやおや、ユキウサギ……と思いましたがウミウシですねぇ
ウミウシとは海の生き物でウネウネと身体を動かして移動する子で
ウサギのカタチで更に可愛さアップですね
手のひらサイズの子を手に乗っけてみる
退治するのを躊躇いますね
指でなでなでした後、ツンツン
ふふっ、ルーシーちゃんが好きな子みたいですね
そっとその子を捕まえて
ルーシーちゃん、あの子はかなり大きめですね
ルーシーちゃんが抱っこしたら……どちらも可愛らしい
ぬいぐるみを抱っこしてるみたいです
僕も?そっと抱っこしてみると
確かにぷにとしてヒンヤリですね
連れて帰りたい気持ちはわかりますが
困ってる方もいらっしゃるので
緋喰
ユキウサギウミウシを紅く染めて
痛くない様にそのまま喰べてしまいましょう
ルーシー・ブルーベル
【月光】
わわわ、お花いっぱいの迷路ね
こんな迷路だったら楽しいわ
う?ゆぇパパ、どうしたの……あら本当
フシギな姿をしたコ達がいるわね、パパ
きゅ、ってお声もかわいいわ!
ウミウシ?ウミウシってなあに?牛?
まあ……本来は海に住んでいるコなのね
確かにあのぴょんって飛び出たところがウサギさんみたい
黄色いからルーシーの髪にも似てる気がする
なんて、二つ結いの髪を揺らしてみせ
パパの手の上のコをつん、とつついてみる
わあ、ぷるぷる
自分でも小さなサイズを手に乗せてみて
……ひゃああ腕を登ってきたわ!?
ど、どうしたらいい??パパ!
わ、あのウミウシさんはヌイグルミのララより大きい
近寄って抱きあげると、ひんやりぷにっとして
ちょっと心地よいかも……
パパも大きなコ抱っこしてみて!
夏に居てくれたらとっても助かりそうね
ね、気持ちいいでしょう?
なんだか名残惜しくなってしまったわ
これが災魔でなかったら一匹くらい……うう、そうね
生徒さんたちの為でもあるし
ええ、せめて痛くないように
『蒲公英の散花』
さあ、お還り
●
視界に溢れる色。香る生花。
「わわわ、お花いっぱいの迷路ね。こんな迷路だったら楽しいわ」
大きな青い瞳に色を映して、楽しそうにルーシー・ブルーベルは声を上げる。
迷宮内にも関わらず天からは陽射しのような光が射し込み、まるで庭園を散歩しているような気分。広大な花園迷路と云うのもまた、そんな気分にさせるのだ。
けれど――。
「おや? 前に何か居ますね?」
突然現れた花と花の間の道に、何か白いモノが居るのに気付き朧・ユェーは瞳を瞬く。ルーシーよりも背が高い為よく見通せるのだろう。彼の言葉にルーシーも前をじいっと見つめると、確かに何かが居る。
――『みゅ~』
聞こえる音は風に乗り二人の耳へと届く。それは彼等の鳴き声なのだろうと、顔を見合わせれば二人は楽しそうに笑みを零し合った。
軽い足取りで迷路を進めば、目の前にはみちっと詰まったり積み上がった白い子達。『みゅう』と云う鳴き声を零しながら、ただただそこに彼等は存在する。
「おやおや、ユキウサギ……と思いましたがウミウシですねぇ」
通れない程詰まった彼等、さてどうしようかとユェーは小首を傾げる。そんな彼から零れた言葉に、ルーシーは不思議そうにぱちぱちと瞳を瞬いた。
「ウミウシ? ウミウシってなあに? 牛?」
ただ純粋に、真っ直ぐに問われた質問。その言葉にユェーはルーシーを見ると、目の前の白いユキウサギ達を見ながら、分かりやすい言葉を選び言葉を紡ぐ。
「ウミウシとは海の生き物でウネウネと身体を動かして移動する子で、ウサギのカタチで更に可愛さアップですね」
「まあ……本来は海に住んでいるコなのね」
何でも答えてくれる物知りなパパ。
その姿をどこか誇らしく想いながら、目の前の子をよく見ようとその場でしゃがむルーシー。じっと見つめればその子もルーシーを見つめ返し、互いにぱちぱちと瞳を瞬く。
風に揺れるぴょんっと飛び出た二本の触覚らしき部分。ゆらゆら――それは確かに兎のようにも見えて。
「黄色いからルーシーの髪にも似てる気がする」
どう? と自身の二つ結の髪をルーシーが揺らせば、お揃いだと思ったのかユキウサギもゆらゆらと揺れる。――そんな一人と一匹の姿に微笑ましく想い、笑みを零しながらユェーは揺れるその子をすくいあげる。
『みゅう~』
大きなユェーの掌サイズのその子は、恐れることなくむしろ嬉しそうに鳴いた。変わらずゆらゆら身体を揺らし、二つの触覚を動かす様は愛らしくも和む程で。
「退治するのを躊躇いますね」
少しだけ困ったように笑いながら、ユェーは指で彼を撫でてやり、そのままつんっと突いてみる。ひんやり、つるりとぷるっとした感触は初めて触れるもので、少し驚いたように声を零してしまった。
「わあ、ぷるぷる」
ユェーの事を羨ましく想い、ルーシーも彼の掌の子を優しくつついてみる。ぷるんっとした感触が心地良く、つい嬉しくなってしまい。足元に寄って来た小さな小さなルーシーの掌サイズの子をすくい上げてみれば――。
「……ひゃああ腕を登ってきたわ!? ど、どうしたらいい??パパ!」
うごうごと、ルーシーの細い腕を昇ってくる子。嫌では無いし怖くも無い。けれどどうすれば良いかと、わたわたとルーシーは父へと助けを求める。
「ふふっ、ルーシーちゃんが好きな子みたいですね」
その姿を微笑ましく想いながら、ルーシーの腕を昇る小さな子を捕まえて自分の肩へと導くユェー。どうやら高いところが好きな子らしく、どこか満足そうに鳴いた。
ふうっと、安堵したようにルーシーは息を吐く。逸る心臓を押さえるように胸に手を当てる彼女へと微笑んで、ユェーは彼女の名前を呼ぶ。
「ルーシーちゃん、あの子はかなり大きめですね」
「わ、あのウミウシさんはヌイグルミのララより大きい」
彼が指差した先。のんびりしている子は触れた子よりも随分と大きく見えて、初めてのお友達である青兎のララより大きい。ルーシーはととっと近寄り、様子を見て。そうっと両手を伸ばし抱き上げてみれば――大人しく彼は抱き上げられる。身体を包み込むような、ひんやりでぷにっとした感触は。
「ちょっと心地よいかも……。パパも大きなコ抱っこしてみて!」
瞳を閉じて身体中でそのぷにぷにを楽しんだ後、くるりと振り返るとルーシーは大きな子をユェーへと差し出した。大きなユキウサギを抱っこするルーシーの姿に、どちらも可愛らしいと和んでいたユェーは、目の前の子と瞳を合わせ瞳を瞬く。
「僕も?」
聞き返せばルーシーがこくりと頷くから、笑顔で頷きその子を受け取る。ルーシーとの体格差により包まれ具合は随分と違うけれど、小さい子とは全く違う感触。腕いっぱいに包まれるひんやり感とぷにっと感は、とても心地良く。
「確かにぷにっとしてヒンヤリですね」
「夏に居てくれたらとっても助かりそうね。ね、気持ちいいでしょう?」
彼の言葉にルーシーは、どこか満足そうに笑みを零す。
そんな親子の元に、自分も自分もと言うかのようにユキウサギ達が集まってくる。『みゅう』『みゅうー』と鳴く声は全く敵意など感じず、一匹一匹ルーシーが撫でてやれば心地良さそうに瞳を細める。――身体を揺すり喜びを表現する者、ルーシーの手が心地良いのかその身を擦り寄せる者。反応は様々だけれど、皆嬉しそうなのは一緒だ。
だからだろう――別れが、悲しいと思うのは。
「なんだか名残惜しくなってしまったわ。これが災魔でなかったら一匹くらい……」
撫でてやりながら、ルーシーは悲しそうに零す。けれど、ユェーは首を振った。
「連れて帰りたい気持ちはわかりますが、困ってる方もいらっしゃるので」
父らしく子を窘めるその言葉に、ルーシーはユェーを見て、ユキウサギをまた見ると残念そうに瞳を伏せる。いくら敵意が無いとは言え、災魔であり危険な存在であると小さいながらも猟兵であり、数多の経験を積んだルーシーは分かっている。
「……うう、そうね。生徒さんたちの為でもあるし」
だから、残念だけれど。確かな覚悟を持ちそう語った。
でも、せめて――痛くないようにと願いを込めて。
辺りに放たれるのは蒲公英色の炎。彼女の覚悟に合わせるように、ユェーも白の彼等を紅く紅く染め上げる。
それは痛みを感じないように、祓い一瞬で命を奪う優しき一手。
「さあ、お還り」
炎を操り、ユキウサギ達へと温かき色を宿していくルーシー。ぱくりと的確に喰い尽くすユェーの行動にも迷いは無い。
『みゅぅー』
最後に聴こえたその声は悲しいものでは無く。どこか嬉しそうに聴こえた。
大成功
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