バトル・オブ・オリンピア④〜銀輪は波も剛腕も打ち砕き
「なはは、アスリートアースでの戦争はスポーツの祭典なんか! なんともそれらしいってか、むしろだからこそ激しい戦いになるんやろな」
ポンポンポンと慣れた手つき、いや足つきでグリモアであるサッカーボールをリフティングしながら、グリモアベースに集った猟兵たちにウルスラ・ロザーノ(鈴振り燕・f35438)は説明を始めた。
「そんじゃ、準備運動をしながらボクの話を聞いてな?」
かつてデビルキングワールドで起こった戦争、7thKING WAR。敵の首魁である『魔王ガチデビル』は猟兵たちの手で討ち果たされた。……と思われていたが、なんと奴は生きていた!
「まあその辺の経緯は置いといて。とにかくガチデビルがデビルパワーでダークリーガーたちのトップを目覚めさせたら、なんか見込み違いで古代バトリンピア時代の祭典、『バトル・オブ・オリンピア』の復興を宣言してまったらしいで。
さっすが、トップオブトップのアスリートは考え行動もスケールが違うねー!」
かなりアスリート寄りの発言になっているウルスラの関心はともかく。猟兵たちがすべきは勝利、それだけは普段の戦争と変わりない。
「皆に参加してもらいたいのは自転車競技や。アスリートアースにおいて『最も名誉あるスポーツ』と呼ばれるトライアスロン、それ二番目の自転車パートやな」
ただのレースと侮るなかれ。綺麗に舗装された単純なコースを走るわけではない。そして選手間で直接攻撃が許されているのがアスリートアースでの特徴だ。
「もちろん、より速く走って最後のマラソンに突入するのが大目的。でも過酷な環境のコースを走破する自転車操縦の技量と体力、戦闘で優位を掴む力量も必要になるよ」
しかも今回ダークリーガーたちは、うまく連携攻撃をしてくる。
「トレイン、って用語は知っとるかな? 自転車のチームレースで、同じチームの選手たちが一列に並んで走っとるの。
本来は風の抵抗を減らして体力を温存するとかそーいう意味合いやけど、奴らはそんな数珠つなぎの状態から、波状攻撃のようにこっちにダイレクトアタックかましてくるんや」
まともに食らったら即退場とまではいかないにせよ、レースで大きく引き離されるのは間違いない。
「逆に、うまいこと凌いで反撃すれば有利になるはず。そんで今回レースで競る相手は『闇の巨漢レスラー』や。つまり格闘技を連携してくるから気ぃつけてな」
相変わらずボールを地面に落とさないまま、淀みなくウルスラは説明を続ける。
「もひとつ、コースについてなんやけど。海岸沿いギリギリの道路で、時々見上げるほどの高い波がばっしゃーん! って襲い掛かってくるコースでね。急カーブとか傾斜とかはあらへんけど、最初っから波が来るのを期待した作られたレース用道路らしいわ」
波をかぶることによる視界の低下やスリップ、あるいは波に攫われての海中落下。様々なアクシデントが発生する可能性のあるコースだと想定して作戦を組む必要があるだろう。
「単純にこんな真冬やで波を被ったら超寒いしな。真横はずっと海、こんな状況じゃなけれれば最高に景色がええコースなんやけど。
それと一応言っとくと、すべての行動は自転車を操縦しながらや。自転車停めんと使えへんようなユーベルコードとか、本末転倒なんで注意してや」
そして当然ながら、自力で漕ぐ必要があることだけは覚えておかねばならない。これは自転車レースなのだから。
「さて、そんじゃ準備運動も心構えも万端かな? 皆の勝利を信じとるよ! 頑張ってな!」
ぽおん、とヘディングで一際空高く上げたサッカーボールが輝く。猟兵たちはレース会場へと転送されてくのであった。
雨森
OPをご覧いただきありがとうございます。雨森です。
バトルサイクル再び。
今回はアスリートアースでの戦争シナリオです。
その中のトライアスロン競技内の一パート、自転車レースとなります。
ダークリーガーたちよりも速くゴールまで走り抜けましょう。
●コース…海岸沿いを走る道路。コース自体は平坦でほぼ真っすぐだが、時々横の海から数メートル以上の高い波が来る。
●プレイングボーナス…コースに合わせた作戦を立てる/敵のダイレクトアタックに対処する。
それでは、皆様の素敵なプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『闇の巨漢レスラー』
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POW : 馬殺し
対象の【首を抱えて投げ飛ばした後、そのまま対象】を【スリーパーホールド】で締め上げる。解除されるまで互いに行動不能&対象に【窒息】属性の継続ダメージ。
SPD : 虫殺し
【ハンマーパンチ】【膝蹴り】【DDT】で攻撃し、ひとつでもダメージを与えれば再攻撃できる(何度でも可/対象変更も可)。
WIZ : 「そんなもんかオラ! 効いてねぇぞ!」
【挑発的アピール】の継続時間に比例して、自身の移動力・攻撃力・身体硬度・勝負勘が上昇する。
👑11
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バルタン・ノーヴェ
POW アドリブ連携歓迎
HAHAHA!
レッツエンジョイ、バトルサイクル!
レンタルバイクを漕いで行きマース!
ガチデビルの野望は勿論、ダークリーガーたちにも負けないでありますよ!
平地はパワー頼りの豪快なアクセルで、波をものともせずに突っ走りマース!
レスラーの馬殺しは掴まれなければ良いのであります!
近づいてきたら内蔵式ウェポンラックの弾幕で追い払いマース!
そうこうしているうちに前に出れば作戦開始!
「六式武装展開、鉄の番!」
勢いよく振り下ろしたチェインハンマーに、レスラーがダウンすればグッド!
避けられても地形を破壊して、後続車を海に叩き落とす二段構えであります!
怪我はしないようお気をつけてくだサーイ!
「HAHAHA! レッツエンジョイ、バトルサイクル!」
レースが始まると同時に、バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)はフDf難通りにテンション高く元気よく飛び出した。
「ガチデビルの野望は勿論、ダークリーガーたちにも負けないでありますよ!」
技術水準が高い各種武装を駆使するバルタンだが、逆に自転車となると手持ちにはない。今回はレンタルバイクでの参戦だ。もちろんスポーツの本場アスリートアース謹製、バルタンの体格に完璧にフィットしたバイクが用意された。
まるで昔から愛用していた相棒かのような心地よさを感じながら、バルタンはペダルを漕いでいく。
「この程度の波など、何するものぞー!」
どぱーん!
なるほど高波は脅威だ。だがそれ以上のパワーをもってすれば問題などない。身体で波をぶち抜きながら、バルタンは濡れたコースを豪快に走り抜ける。
「行かせるかよ!」
そんな彼女の細首へ伸ばされる、闇の巨漢レスラーの太い腕。捕まったら落車どころかレース復帰も難しいだろうが、冷静に見極めて身をひねって躱す。
「女性に対するエスコートがなってまセーン! ファイア!」
バルタンの背から生えた内蔵アームドフォードの銃口が、ダークレスラーへと向く。非殺傷ゴム弾の弾幕を受けたレスラーは、さすがというべきかよろめくだけであった。
そうして小さな交戦を続けていたが、バルタンは気を見計らい一気に勝負に出る。
一際大きな高波を凌いだ直後、ペダルを踏んで一気にダッシュ! ダークリーガーたちの前に出ると、
「ここで俺たちを突き放す気か?」
「いいえ、ワタシはレースで勝つより戦う方が得意! ここで決めマース!
六式武装展開、鉄の番!」
見よ、いずこからか取り出されたるは巨大なチェインハンマー。
「レスラーであろうが一撃KOデース!!」
潮風を切り裂き、ハンマーが最前列のレスラーに振り下ろされる!
「そんな見え見えの大振りの攻撃、当たるかよ!」
「ごもっとも! でもレスラーらしく、先頭のアナタが受ける方が良い選択だったでしょうね!」
――ゴガン!
バルタンの言う通り、彼らは選択を間違えた。道路に叩きつけられたチェインハンマーは、あっさりと道路を粉砕した。
穿たれた大穴、飛び散るアスファルト。高速で走行をしているレーサーに、目の前の道路に突如発生したトラブルを避ける術はない。文字通り交通事故のような勢いで吹き飛び、トレインで走行していた一団はそのまま海へと落下していく。
「怪我はしないようお気をつけてくだサーイ!」
一応の声掛けはしつつ、バルタンは先へと進むのであった。
大成功
🔵🔵🔵
リィムス・インファルクス
話は全て聞かせて頂きました!
此度は自転車競技でご奉仕ですね!
然らば、リィムス行って参ります!
自転車を漕いでコースを走ってゆきます。
襲ってくる波に対しては【念動力】にて斥力場を形成、直接浴びせかかってくる波を避けましょう。
濡れた路面への対処は…何とか姿勢制御頑張ります!
と、ダークリーガーの皆様が参りましたね。
なんと一糸乱れぬ縦列隊形!
ですが、あの隊形ですと、先頭の方が急に止まってしまったら大変なコトになりそうですね。
ええ、ですので先頭の方には止まって頂きます!
メイドビーム!!(UC発動)
恐らく起こるのは大クラッシュ。
そのダメージで正気に戻って頂ければと!
然らば私は引き続きご奉仕に参りますので!
彼女の姿は、レースにおいて一際に目立っていた。
「私、頑張ります!」
スポーツ先進世界であるアスリートアースにおけるスポーツウェアは非常に多彩だ。しかしそうであったも、さすがにメイド姿で自転車を漕ぐリィムス・インファルクス(
宇宙侍女・f40194)は異色の部類に入る。
ツインテールを爽快になびかせながらの全力疾走……街中であれば財布を忘れて急ぐメイドだと勘違いされた、かもしれない。
「お話はすべて聞かせて頂きました! 此度は自転車競技でご奉仕です!」
……とりあえず言動行動を限界まで擁護してみたが、それでも足りないかもしれない。まあひとまず、意思や経緯はどうであれレースで勝てばよいのである。
スポーツ選手らしくない姿形ではあるが、リィムスはメイドリアン星人。ご奉仕を完璧に遂行するために様々な能力が高い。
「むっ、波ですか!」
どっぱあんと見上げるような高さの波が襲い掛かってくるも、まるで透明の傘に当たったかのようにリィムスを避けていく。リィムスが発生させた念動力による斥力場だ。
「メイドがアクシデントで濡れるなど恥ですから」
まともな(?)メイドルールを唱えつつ、濡れた路面に注意しながらリィムスは走る。余計な挙動を必要としない波対策は、リィムスの順位を順当に上げていた。
そんな順調に走るリィムスを妨害し、追い付かんとする者たち。
「おいおい、なんでメイドさんが居るんだ? 今はレースだ容赦はしねえぞ!」
何故かメイドにさん付けをするダークリーガーが、後方から迫る。
「なんと、一糸乱れぬ縦列隊形!」
振り向くリィムスの目に映るのは、見事なトレイン走行を行っている巨漢レスラーたち。さすがダークリーガーは自身の本来の競技以外もスポーツが上手い。このままではメイドが巨漢レスラーに酷い目に遭うという凄惨なイベントが!
「ですが、あの隊形ですと、先頭の方が急に止まってしまったら大変なコトになりそうですね」
……ということにはならない。別にレスラーたちもヒールとして真面目だし。
「ですので、頭の方には止まって頂きます! メイドビーム!!」
「え」
実際に何が起こったのか分からない、というのが大方の感想だろう。トレインの先頭で引っ張っていた選手が、リィムスから放たれたビームを食らい即座に意識を喪失する。密接して走行していた選手たちに次の瞬間起こるのは、接触による大クラッシュだ。
ドガァン!と派手な音を立てて吹き飛ぶ巨漢レスラーたち。中には海に放り出された者もいる。
「そのダメージで正気に戻って頂ければと! 然らば、私は引き続きご奉仕に参りますので!」
奉仕の邪魔をするのであれば容赦は不要。気遣いを残しつつもリィムスは全力走行を続けるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
フリル・インレアン
ふええ!?このまま楽しくサイクリングって、アヒルさん本気ですか?
一応競技ですし、武装も許可されてましたよね。
私達も何か用意した方がいいのではないですか?
そうです、アヒルさんが前かごから飛び出して攻撃すればいいんですよ。
それは嫌だって、どうしてですか?
このコースは波を被るから錆びてしまうって、それは普通にサイクリングしてても同じなのではないですか?
私がサイクリングに集中してれば、全然違うってどういうことですか?
ふえ、ダークリーガーさん達です。
何をされても戦おうとしちゃダメなんですね。
それにプロレス技を自転車に乗りながら出したらバランスが取れないって、確かにそうですね。
波音が騒々しいぐらいのコースを、レーサーたちが走り抜ける。
「んしょ、んしょ……ふええ」
そんな中で、一際気の抜けたような声を上げながらフリル・インレアン(大きな
帽子の物語はまだ終わらない・f19557)は必死にペダルを漕いでいた。もちろん本人的には非常に真剣なのだが。
フリルたちが位置しているのはレーサーたちの中では後方、激しく交戦している選手たちは先に見ながら走っている状況だ。ダークリーガーたちも、追いついてこない選手をわざわざ速度を落として潰すことはしないらしい。
そして急くフリルを、前かご(フリル用特製自転車装備)に入ったアヒルさんが窘める。
「早く追い付かなきゃ……ふええ? このまま楽しくサイクリングって、本気ですか?」
直接攻撃ありの過激なレースだ、武装も許可されている。交戦を想定しなくてはならないはずだが……。
「そうです、アヒルさんも前かごから飛び出して攻撃すればいいんですよ。……それは嫌だって、どうしてですか?」
アヒルさん曰く、このコースは波を被るから錆びてしまうためらしい。なるほどガジェットと塩水の相性は最悪なのである。普通にサイクリングしていても同じなのでは? とも思うが、そうでもないらしい。
なにせ『フリルがサイクリングに集中していれば、全然違う』のだから。
「……? どういうことですか?」
フリルは気づいていなかった。そもそもこのコースは高波が時々襲い掛かるはずだが、それに気づかずアヒルさんと会話しながら走っていることを。フリルもアヒルさんも本来ならすでに海水でびしょ濡れになっているはずなのだ。
だが、そうではないのだ。フリルが
たった一人の生存者であるがゆえに。
「ふえ、ダークリーガーさんたちです」
そんなこんなで必死にペダルを漕ぎ、いよいよトレイン走行している闇の巨漢レスラーたちに接近する。
不戦をきつく申しつけられているフリルに対して、気づいた敵はパンチなどを打ってくるが……不思議なことに、攻撃を仕掛けようとしたタイミングで濡れた道路でスリップしたりしてうまくいかない。
「ふえ、プロレス技を自転車に乗りながらバランスが取れないって、確かにそうですね」
当たり前のようで本筋を外した感想を抱きつつ、フリルは戸惑うダークリーガーをそのまま追い抜いていくのだった。
大成功
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ミア・ミュラー
トライアスロン……足を使うものならわたしも、やれるはず。勝利を目指して、頑張るよ。
ん、カーブがなくてスピード勝負できるのは、いいね。波はそよ風の腕輪で受け流して流されるのを、防ぐ。波をかぶって体が冷えると動きも悪くなる、から。だから挑発のお返しに、向こうには北風の杖をけしかけてどんどん冷やして、あげよう。あんな格好してるしたぶん、効くよね。
そうしてこっちに攻撃してきたら、【土盾】で、防ぐ。向こうは強くなってるけど、わたしも走ってる間魔力を溜めたしきっと、大丈夫。一列に並んでくれるなら、好都合。後ろに繋がったのも盾を飛ばしてまとめて、海まで届くくらい吹き飛ばして、あげる。
レーサーたちがもうすぐゴールという状況となり、その先頭を走っているのはミア・ミュラー(アリスの恩返し・f20357)であった。
「トライアスロン……足を使うものならわたしも、やれるはず。勝利を目指して、頑張るよ」
懸命にペダルを漕ぐミアの目はひたすらに前を、ゴールだけを見つめている……というわけではない。むしろ他の選手たちが追いかけてくる後方に意識を割いていた。
可愛らしい少女という外見をしているがミアは『逃げ』のスペシャリスト。アリスラビリンスでオウガから逃亡するために鍛えた健脚は自慢ができるほどのもの。もちろん自転車のようなツールを駆使したこともある。
「ん、カーブがなくてスピード勝負できるのは、いいね」
波こそ厄介な障害ではあるが、逆に言えばそれに対策ができていればこのコースは他にテクニカルな点は少ない。そよ風の腕輪に魔力を込めて風を生み、波を受け流す。それに、波をかぶって身体を冷やしてしまう事態も避けられるのは大きなメリットだ。
「そのままゴールできると思っているのか? 俺たちを振り切れるなんて思うな!」
「やっぱり、来たね」
後ろから掛けられる大きく太い声に、思わず振り返る。普段なら確認もせずに逃げ一択だが、ミアは応えざるをえない妙な力を感じて反応を返してしまっていた。
こいつらと交戦しなければ逃げ切れない……そんな思いが湧き上がる。だが。
「お返し、するね」
「うおっ!」
ミアの闘争本能が、スピードを落としての接近戦を否定する。北風の杖を振るい、潮混じりの寒風をどんどんとダークリーガーたちに叩きつけた。
「ぐわー、寒いぃ!」
「そんな格好してるから、だよ」
激しくレースをしている分には身体を冷やすために問題ないかもしれないが、意図的に寒風を吹き付けられたらさすがに寒いだろう。
「だが所詮は寒いだけだ!」
挑発は止め、寒さで震えながらもトレイン走行でミアに迫るダークリーガーたち。
だが、彼らの攻撃はミアに届かない。
「そう、まだ戦うんだね」
魔力で生み出した土の盾の数々が、ミアの周囲に浮かび上がる。レース中に十分に溜めた魔力をつぎ込んだそれらは、意気軒高なレスラーが伸ばしてきた腕をうまく弾いた。
「一列に並んでくれるなら、好都合。まとめて吹き飛ばして、あげる」
レスラーたちにも力負けはしていない、そう判断したミアは、連なった状態のダークリーガーたちに渾身の力で土盾を叩きつける!
「ぐ、ぐあーっ!」
盾の直撃を受けた面々は、盛大に海へと吹き飛ばされていく。そして、逃げ切ったミアは無事に一着でゴールを通過する。
トライアスロンの第二種目、自転車レースは猟兵が勝利するのであった。
大成功
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