ここはUDCアースのとある都市、その都市の雑踏の中をクライドは歩いていた。
彼はこの地訪れたのは猟兵としてオブリビオンを探してのこと。とはいえそれだけが目的でもない。クライドはファストフード店に立ち寄るとそこでハンバーガーを購入し、ついでにレジの若い娘に微笑みかけた。こうやって様々な世界のかわいい子と出会える事……それは猟兵の特典だとクライドは考える。たがらこの海賊は猟兵の仕事をしているのだ。こうした欲望に忠実な所は実に海賊らしいとも言える。
だが今回は相手の反応が悪く、脈が無い様だった。クライドは店を出るとハンバーガーにかぶりついて肩をすくめる。
「ま、こんな日もある」
軽く腹ごしらえを終えるとゴミをポケットに押し込んでクライドは周りを見渡した。人が多く行き交う街中は様々な広告に溢れており路上にはコスプレ衣装の呼び込みが数人見られる。
「さて……メイドカフェだっけか」
そう呟いて、クライドは歩き出した。
邪神に仕えるメイドのオブリビオン。その居場所を確認して、いけそうなら倒して一仕事を終える。それが今回UDCアースを訪れた目的なのだ。
「「「おかえりなさいませご主人様~♪」」」
店員のメイドさんに迎え入れられクライドは客席のひとつに座った。店内をぐるりと見渡すが明らかな怪しい所は見られない。至って平均的な萌えメイドの給仕をコンセプトにしたカフェだろう。
「初めてのご主人様ですね。今日は私がお給仕しちゃいます♪」
水を持ってきた娘はクライドにそう言うと、首を小さく傾げて微笑んだ。
金髪のツインテ―ルに青い瞳。まるで人形の様に可愛らしくとても魅力的だ。その姿にクライドは心が飲み込まれそうになるが、しかしそんな気持ちをぐっと抑え込む。何故ならここの何処かにオブリビオンが潜んでいるからだ。そしていま最も怪しいのが、この少女だった。
(オブリビオンは猟兵をひと目で見抜く……そしてこの娘は俺が入店したら真っ先に接客を中断してこっちに来た。他に手の空いている娘が居るにも拘らずだ)
それはクライドを手早く堕として無力化するためだろう。
(とはいえ確たる証拠もないし、こんな所で戦う訳にはいかないな。……試すか)
猟兵はどんな姿であろうとその世界の住人に違和感を与えない加護を持つ。そのためクライドもバスタードソードを堂々と持ち歩けているのだが、その武器にクライドは手をかけてみた。反応があれば彼女はオブリビオンである可能性が高い。
「……ご主人様、ここでは他のご主人様のご迷惑になります」
彼女は武器をしっかり認識していた。その上で現れる表情は困惑では無く敵意――クライドが何をしにここに来たのかを知っている顔だ。
「ここでやるのは俺にとっても不本意だ。あんたも自分の狩場が壊されるのは嫌だろう? ……そこで提案だ。屋上に行かないか?」
こうしている間にもクライドにはサキの放つ魅了が次々と圧し掛かっていた。けれどクライドは精一杯魅了が効かないフリを続けていく。これは、賭けだ。相手が魅了で攻め続けたらクライドはここで堕ちてしまう。だが魅了が効かないと騙されてくれたら戦いやすい場所へと誘導できる。
「……分かった。屋上だね」
サキは頷き、クライドは賭けに勝った。
「それじゃあ、悪く思うなよ! いくぜ!」
オブリビオンの『小悪魔メイド・サキ』を屋上へと誘導したクライドは、すぐさまバスタードソードで攻撃を開始する。しかし相手も戦えない訳では無い。小手調べと放ったクライドの大振りは難なくかわされて回避と同時に毒を塗ったフォークを投げられた。だが、クライドはそれをソードで弾いて防ぐ。
クライドはサキが隣のビルへ逃げないよう逃走経路を塞ぐ様に立ち回っていた。対するサキは徐々に追い詰められて苦戦していく。
「このままいけそうだな。悪いが倒させてもらうぜ!」
「きゃああっ!」
クライドの放つ斬撃がサキの服を切り裂いた。白い肌が次々と露わになっていき、サキはついに倒れ伏す……。クライドはその前に立つと、バスタードソードを振り上げた。
「これで終わりだ……!」
「もう……乱暴なのね。でもぉ、『こういうのも好きなんでしょ?』」
その時だ。サキは猫なで声を出して恥ずかしそうな上目遣いをし始めた。これまで効かないと思っていた魅了で改めて勝負に出たのだろう。
サキは上目遣いと猫なで声スカートをゆっくり捲り始める……破けたソックスから見えていた生足が、太もものあたりで姿を見せる。それは白く、ソックスとの境目でプニっと柔らかそうだった。しかも激しく動いたために汗ばんでいて、濡れた内股が艶やかに光を返している。そして、スカートのその先は見えそうで見えない。
クライドの動きが止まった。
サキは続けて両腕を前に出し、胸を強調するポーズでぺたんと座る。魅了が
効いていると
確信された。
「ねぇ、『こういうのも好きなんでしょ?』」
「くっ……」
「『サキのこと、虐めないでほしいな』」
心の中からサキに敵対する心が急速に消えていく。しかしクライドも気力を振り絞って抵抗する。
「うおおおお!!!」
バスタードソードが振り下ろされた――だが、その一撃はサキに当たることは無かった。バスタードソードはサキを大きく反れて床に突き刺さる。クライドはわざと外したのだ。
それを見るや、サキは勝利を確信した笑みでクライドにぎゅっと抱き着いた。そしてクライドの手を自分の胸に押し付けて頬を赤らめ潤んだ目でそっと囁く。
「ねぇ、『サキのお願い、聞いてくれる?』」
このユーベルコードでクライドは堕ちた。海賊は欲望に弱いのだ。
欲に呑まれてしまえばその先は堕落。小悪魔メイドの支配下になってしまう――。
この後暫く行方不明となったクライドは、帰って来た時には無一文になっていたという。
ちょうどその間、サキに貢ぐ客がひとり増えていたそうなのだが果たしてそれがクライドだったのかは定かではない。
成功
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