エンドブレイカー奮闘録〜ルシア・ナドソコルの場合〜
ルシア・ナドソコル
●時間軸
「第六猟兵」にエンドブレイカー世界が実装される前(2020年前後のイメージ)
●状況
「宿敵」『ゴーレムメイカー』イシュトヴァーンがゴーレム工場
●宿敵との関係性
10年以上前にルシアの仲間が、ゴーレム大量生産による大規模テロを止めた
ルシア自身は本ノベルが初遭遇だが、事前に聞いた情報から危険度を理解している
●戦闘
1.イシュトヴァーンのグラヴィティゾーンとルシアのフロストシールで魔術戦を行う
2.イシュトヴァーンの無明斬を躱して、ルシアのアクスブーメランでとどめを刺す
●セリフ
ルシア「実力者であることは聞いていましたが、これほどのものとは」
イシュトヴァーン「今度こそ! ゴーレムの統べる理想社会を作るために!」
ルシア「話を聞かない御仁、というのも聞いた通りですか」
イシュトヴァーン「(倒されて)エリクシルよ……次こそは我が願いを……」
ルシア「今度姿を見せることがあれば、次こそは確実に終わらせないといけないですね」
これは外世界から「猟兵」と名乗る戦士達がやってくる少し前の話。
「ここですか」
ランスブルグで大量のゴーレムを用いた大規模なテロを行おうとしていた指名手配犯、イシュトヴァーンが潜伏しているという情報を受けてルシアはある建物の前に立っていた。
件のテロ未遂事件の際にルシアはイシュトヴァーンと対峙していない。だがその鎮圧に携わった仲間から事前に情報を聞いており、危険度は把握していた。
「……よし」
一息入れてからルシアは吹き曝しになった室内へ足を踏み入れる。
罠の類は仕掛けられておらず、一階から見渡せる二階部分にもゴーレムはおろか人の姿もない。だがぽっかりと床に口を開けた地下に通ずる階段には砂埃の上に人が往復した痕跡がはっきりと残されていた。
ルシアは不意打ちに備え、詠唱を行いながら金属製の段をなるべく静かに降りる。
『我が魔術の前にひれ伏せ』
そして一番底に辿り着くや否や、球体に歪んだ球体が真正面から近づいてきた。
『煌めけ、蒼氷刃』
蒼く輝く短剣から発せられた魔法の霜が球体の周りに張り付き、氷塊に変わる。しかし出来たそばから外圧によって全体にヒビが入り、粉々に砕け散った。
「実力者であることは聞いていましたが、これほどのものとは」
「こんなに早く見つかるとは……だが今度こそ! ゴーレムの統べる理想社会を作るために!」
地下室に置き去りにされた資材の影から現れた老人が仮面越しに喚き散らす。
この仮面こそ、誰かを怨み、誰かに憎まれ、本能の赴くまま生きる物が
棘によって変異した全ての生命の敵、マスカレイドの証である。今は
万能宝石の力で蘇ったイレギュラーもいるが。
ただ、マスカレイド化する以前から「機械やゴーレムこそが人類に代わり世界を統べるべき」という狂気を孕み、貧民街に住む者を攫って実験の材料にするなど問題行為を繰り返し、星霊術士の集いから追放された彼には当然の末路と言えるだろう。
「話を聞かない御仁、というのも聞いた通りですか」
氷が割れても強い重力場がその場にしばらく残っているから無闇に近づくな、との仲間からの助言を元にルシアは辺りの状況を観察する。
そこには茣蓙や毛布、食べ終わった容器などここで生活していた痕跡だけでなく、ゴーレムを作るための術式が描かれた紙も山積みになっていた。
だが肝心のゴーレムの姿はない。おそらくは先日のテロで全兵力を使い果たしてしまったのだろう。一先ずは目前の彼に集中するだけで良さそうだ。
大きな杖にもたれかかるようにイシュトヴァーンが前に出てくる。その動きから重力場が解けたことを察したルシアは「七本指」を構えて、彼が射程に入ってくるのを待つ。
『非力な老人と思うたか』
するとイシュトヴァーンは曲げていた背筋をピンと伸ばして一気に歩調を速め、杖の中に仕込まれていた刀を抜き払う。ルシアはその一振りを咄嗟に避けたが、驚きからか斧剣を放り投げてしまった。
相手が空手になったと見て、イシュトヴァーンは勝ちを確信したように笑いながら剣を振り上げる。
しかしルシアも同じように笑っていた。
『隙あり!』
放り投げたのではなく意図を持って投じられていた斧剣は弧を描くように反転し、イシュトヴァーンの背中を抉って内臓を潰す。その衝撃にイシュトヴァーンは声を失いながら倒れ伏した。
「エリクシルよ……次こそは我が願いを……」
弱々しく伸ばした手から体が崩壊を始め、塵も残らず空気に溶けていく。
「今度姿を見せることがあれば、次こそは確実に終わらせないといけないですね」
ルシアは当座の討伐証明として、床に転がった仕込み杖を拾い上げた。
成功
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