機神の座/少女の檻
せまくて、くらい、はこのなか。
それが、わたしのいるべきせかい。
わたしを「つくった」ひとたちは、こういっていた。
おまえは「えらばれた」そんざいだと。
いだいな「神の座」にすわることをゆるされた、とくべつなこどもだと。
あのひとたちが、なにをいっているのか、わたしにはわからない。
わたしはただ、ここにすわっているだけ。
そして「ちから」をつかい、これをうごかすだけ。
あーれす。
それが、わたしのいるべきせかいのなまえ。
『EP-L217。出撃だ』
あのひとたちが、わたしのなまえをよぶ。
わたしはいうとおりにして「ちから」をつかう。
そのたびに、わたしのなかから「なにか」がうしなわれていく、きがするけど。
それが、なんなのか、わたしはしらない。
『システム・オールグリーン。戦闘モードに移行』
せまくて、くらい、はこのなか。
このせかいが、わたしのすべて。
●
「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「クロムキャバリアのとある小国家に、決戦兵器として秘蔵されているオブリビオンマシンがあります」
このオブリビオンマシンはサイキックキャバリアの一種で、搭乗者の超能力を動力として強大な力を発揮する。
その力を背景にして某国は近隣国に圧力をかけており、周辺地方ではにわかに軍事的緊張が高まっている。これだけでも危険な事態だが、このオブリビオンマシンの実態はそれ以上に危険な非人道兵器なのだ。
「某国が秘蔵するオブリビオンマシン――『アーレス』は乗り手を選び、優れた超能力者にしか動かせません。そしてパイロットから際限なく超能力のパワーを絞り取り、最終的には死亡させてしまいます」
このマシンを稼働させるために、某国は遺伝子操作によってあらかじめ超能力が発現するようにデザインされたアンサーヒューマンを「生産」し、パイロットとしての調整を施している。すでに何人もの人造超能力者が、マシンの生体動力炉としてその生命を消費された。
「現在、アーレスのパイロットは『EP-L217』と名付けられた少女で、定期検査や調整の時を除いたほとんどの期間をコックピットに接続された状態で過ごしています。普通の人間のような体験はほとんど無く、情緒の発達も希薄なようです」
初めからオブリビオンマシンの生贄として作られた彼女には、それが不幸だと悲しむような知識も感情もない。
このままでは遠からず先任のパイロット達と同じように、短い命を戦場で使い果たして死ぬことになるだろう。
「このオブリビオンマシンを危険視した近隣国のひとつが、『アーレスのパイロット誘拐』を依頼しました」
猟兵達にリミティアが要請するミッションは、この依頼を受諾したキャバリア乗りの傭兵として、『アーレス』が秘匿されている某国の軍事施設に潜入。該当オブリビオンマシンの撃破並びにパイロットを
救出することだ。
「某国の優位性を保つ秘蔵戦力であるアーレスは、厳重な警備下にあります。基地内には多数の探査型ドローンが配置されており、発見されれば直ちに警備キャバリア部隊が急行する仕組みです」
ミッションを完遂するためには、アーレスを発見する前に余計な戦闘は避けたい。ドローンの索敵範囲を避けて移動するか、発見される前にハッキングや物理攻撃で無力化するか。いずれにせよ密かに潜入しなければならない。
「首尾よくアーレスの元にたどり着いても、パイロットはコックピットに常時接続状態です。救出するためにはまずマシンを破壊しなければなりません」
EP-L217の超能力で強大化した『アーレス』は、もともとこの地方で闘争を司る巨神と伝えられているキャバリアだ。その性能は格闘戦に傾向しているが、重力波生成機構の応用により遠距離や一対多数の状況にも対応してくる。
「自律稼働システムも搭載されているため、乗り手の意思に関係なく侵入者を認識すれば襲い掛かってきます。パイロットの負担も考慮して、迅速に撃破して下さい」
戦いが激化すれば、それだけ動力にされたEP-L217にかかる負荷も大きくなる。長引けば命も危うくなるだろう。
作られた命とはいえ、このままオブリビオンマシンのパーツとして使い捨てられる一生は、あまりにも救いがなさすぎる。だからこその「救出」がリミティアからの要請だった。
「アーレス撃破後は、パイロットを連れて速やかに脱出を。秘蔵のマシンが破壊されれば基地側も反応するでしょうし、長居は無用です」
潜入時よりも脱出の難易度は高くなると想定されるが、無事に基地の外まで逃げきれればひとまずは安心だ。
大本の依頼を出した隣国までEP-L217を連れていけば、彼女の人権と身の安全は保証されると言質は取ってある。
「EP-L217さんのパイロットとしての能力は、あくまで『アーレス』ありきのものです。同格のキャバリアを保有・開発する力は周辺国には無いため、彼女が再び戦場に立たされることはないでしょう」
アーレスを破壊してしまえば、彼女のようなキャバリアに乗るためだけの人造超能力者が作られる事もなくなる。
国家間の軍事的緊張も緩くなり、しばらくは――いつまで続くかは分からないが、この地方には一時的な平和が訪れるだろう。
「危険なオブリビオンマシンを破壊し、罪なき命を救い、戦争を回避するために。皆様の力をお貸しください」
説明を終えたリミティアは手のひらの上にグリモアを浮かべ、クロムキャバリア某国の軍事基地へと道を開く。
乗り手を動力炉として酷使し、命さえ奪う邪神の如きオブリビオンマシン。はたして猟兵達はその稼働を止めることができるのか。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」
戌
こんにちは、戌です。
今回のシナリオはクロムキャバリアにて、オブリビオンマシンの動力源として利用されている超能力者を救出する依頼です。
1章では某国の軍事基地に忍び込み、秘蔵されたオブリビオンマシンの元に向かいます。
基地内は多数の探索ドローンが飛び回っており、発見されると警備のキャバリアが駆けつけてきます。
見つからないようにドローンを回避、もしくは無力化する作戦を立てて挑んでいただければ幸いです。
2章ではオブリビオンマシン『アーレス』とのボス戦です。
パイロットであるアンサーヒューマンの少女『EP-L217』は、遺伝子操作によって発現した強力な超能力を、マシンの動力として利用されています。
コックピットと物理的に接続されているため、救出するためにはマシンを破壊する必要があります。戦闘でかかる負荷を考慮すれば、迅速に撃破するのが望ましいでしょう。
無事にアーレスを撃破できれば、3章はEP-L217を連れて基地から脱出します。
脱出時の詳しい状況等は実際に章が移行してから説明しますが、少女を連れて基地の外まで出られればミッションは成功です。
パイロットとして生まれた彼女のその後については、誘拐依頼を出した隣国が保証してくれる見通しが立っています。もちろん個人的に彼女を支援したいというプレイングも歓迎です。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 冒険
『危険因子を探知しまシタ_』
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POW : ドローンを破壊しながら通過する
SPD : 捕まる前に高速で通過する
WIZ : ドローンのシステムへ介入を試みる
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ヒビキ・ノッカンドゥ
生産ラインが確立された「部品」1つで、戦略レベルで優位性が保たれるなら本当に安い
戦国時代といった様相の世界なら、それを選ぶのは当然だっていうのは解るよ
特別なことは出来ないのでドローンの索敵範囲に入らないよう、ドローンの型を機体や武装のもつセンサなどで遠方から「見切り」、観測範囲を推定
「推力移動」と「早業」で監視網をかいくぐる高速移動で駆け抜ける
同エリアにいる自分以外の猟兵が動きやすいよう「スナイパー」で遠方の施設を「騙し討ち」してドローンの注意がそちらへ向くように「時間稼ぎ」
本当に解るよ。その選択は
君たちの安寧を乱したいわけじゃないけど……
ごめんね、僕らはそれを許しちゃいけない立場だから
「生産ラインが確立された『部品』1つで、戦略レベルで優位性が保たれるなら本当に安い」
あえてドライな観点から、ヒビキ・ノッカンドゥ(月の響・f17526)は某国のとった戦略を評価する。倫理観を無視するのであれば、人工的に作り上げたパイロットで強力なキャバリアを動かすのは有益なのだろう。それで自国の権益や国民の安全が守られるのなら。
「戦国時代といった様相の世界なら、それを選ぶのは当然だっていうのは解るよ」
小国が乱立するクロムキャバリアでは多くの地方で争いが絶えない。このような手段に訴える国家もゼロではない。
――そう考えながらもヒビキが今回の依頼を受けたのは、理性と合理性以外の点から思うところがあったのだろう。
「特別なことは出来ないから、普通にドローンの索敵範囲に入らないよう行くしかないね」
某国の軍事基地に潜入したヒビキは、搭乗機「鸕鶿草」や武装のセンサーを使って巡回中のドローンを遠方から観察し、型番の特定を行う。こちらの世界でも何度か依頼を受けたことがあるので、既製品なら観測範囲の推定も可能だ。
「この型ならこの辺りが死角になるかな……よし、見切った」
索敵に引っかからないルートを割り出した彼女は、機体のスラスターを静かに吹かし、基地内を高速で駆け抜ける。
ドローンの監視網を掻い潜るよう、慎重に、かつ迅速に。ドローンの音を除けば基地は静まり返っており、まだ侵入を察知された気配はなかった。
「ついでに、ちょっと掃除もしていこうか」
警戒の最も厳しいエリアを突破したところで、ヒビキは機体を反転させ多目的ビーム砲「Howling at the Moon」を構える。照準先はそこそこ重要そうに見える遠方の施設。目的は同エリアにいる自分以外の猟兵のための時間稼ぎだ。
「照準よし。発射」
月にも届くと謳われた咆哮と共に、束ねられたエネルギーの閃光が施設を穿つ。たちまち基地内にはアラートが鳴り響き、探索ドローンの注意がそちらへ向いた。非常事態に応じるシフトの変更が、監視網に一時的なほころびを生む。
『当基地への攻撃ヲ確認』『危険因子を探知シマス……』
今のでドローンのAIは、こちらの侵入目的が基地自体への攻撃だと誤認しただろう。本当の目標であるオブリビオンマシン『アーレス』、並びにパイロットの周辺から多少でも注意を逸らせれば御の字だ。後から来る猟兵達も、きっとこの状況を利用するだろう。
「僕も今のうちだね」
ヒビキは発射位置を特定される前にビーム砲をしまい、鸕鶿草と共に速やかにその場から移動する。騙し討ちを仕掛けておいて捕まるなんて情けないヘマはしない。ターゲットとの交戦に入るまでは絶対に捕捉されてはならないから。
「本当に解るよ。その選択は」
基地の奥に進みながら、ヒビキはこの国の人々に向けてぽつりと呟く。諸外国から見れば侵略の脅威でも、自国内にとっては最強の守護神。神に生贄を捧げるが如く、パイロットの命を使い捨てにしても、この国はオブリビオンマシンの武力に頼る選択をした。
「君たちの安寧を乱したいわけじゃないけど……ごめんね、僕らはそれを許しちゃいけない立場だから」
正義の味方と言うほどでもないが、それでも猟兵として、オブリビオンが絡んだ問題を知った以上は放置できない。
普段はおっとりとして人並みに自堕落なヒビキだが、引き返そうという気はなく、視線はまっすぐ前を向いていた。
大成功
🔵🔵🔵
エリー・マイヤー
機械文明が発展した世界は、人間も部品扱いされがちですね。
社会という機構を回す上で、必要な事ではあるのでしょうが…
部品としては、きちんと手入れをして利用して欲しいところでしょうか。
耐用年数を超えても稼働するくらいに。
さて、そんなボヤキは置いといて仕事をしましょう。
とりあえず【念動ロケーション】と【念動バブル】を同時使用。
後者でドローンのカメラやマイクから身を隠しつつ、前者で周辺の状況を把握します。
視聴覚を遮断すれば、ドローンはこちらを感知できないとは思いますが…
念のため、ドローンと鉢合わせしないようなルートで移動しましょう。
もし見つかったら、念動力でドローンを破壊してその場を離脱ですね。
「機械文明が発展した世界は、人間も部品扱いされがちですね」
それは社会が効率化を求めた果てに行き着く典型なのか。アポカリプスヘル生まれのフラスコチャイルドであるエリー・マイヤー(被造物・f29376)としても、他人事とは思えぬ話だった。生命に対する倫理観や価値観の変化は、時にこういった暴走を引き起こす。
「社会という機構を回す上で、必要な事ではあるのでしょうが……部品としては、きちんと手入れをして利用して欲しいところでしょうか。耐用年数を超えても稼働するくらいに」
キャバリア1機を稼働させるために、何人ものパイロットの命を使い捨てにするのは、被造物目線でも思うところがある。あるいは、これもオブリビオンマシンの呪いに狂わされた結果なのかもしれないが――いずれにせよ放置する事はできなかった。
「さて、そんなボヤキは置いといて仕事をしましょう」
運動は苦手なエリーだが、こそこそと相手にバレずに工作活動を行うのは得意なほうだ。サイキッカーである彼女の得意分野は念動力で、【念動ロケーション】や【念動バブル】など、潜入に役立つサイキックの使い方も心得ている。
「だいたいわかりました」
無指向性の念動波による反響定位で周辺の状況を把握した彼女は、泡状の念動力で自分の全身を包む。この泡は光を歪め、空気の流れを遮断することで、外部から視聴嗅覚での感知を不可能にする代物だ。生命体の五感は勿論のこと、機械的なセンサーさえこのユーベルコードは欺く。
「視聴覚を遮断すれば、ドローンはこちらを感知できないとは思いますが……念のため、ドローンと鉢合わせしないようなルートで移動しましょう」
泡の効果を確かめるためにわざわざ危険を侵す必要もないと、エリーは密やかに移動を開始する。彼女の脳内には念動ロケーションによって確認できた基地内部の状況がマッピングされており、視界の外にある通路や障害物、ドローンの位置や移動ルートまで鮮明に分かる。
「もし見つかったら、念動力でドローンを破壊してその場を離脱ですね」
最悪のケースも想定しているものの、今のところ基地側が彼女を見つけるどころか、潜入に気付いた気配さえない。
超能力者用のキャバリアを秘蔵する軍事基地が、超能力による潜入を察知できないのも皮肉な話だが。異なる体系下で開発され、実戦も通じて練度を上げたエリーの念動力は簡単に対処できるものではない。
「思ったより楽に済みそうですか。仕事が早く終わるのはいいですね」
結局エリーは一度も探索ドローンの監視に引っ掛からないどころか、遭遇すらほとんど無いまま基地の重要区画まで足を進める。念動バブルのおかげで煙や匂いが外に漏れないとはいえ、道中で煙草を吹かす余裕すら彼女にはあった。
「まあ、途中が楽だったぶん終点が厄介なこともありますが」
体を使うのが苦手なエリーとしては、オブリビオンマシンと直接殴り合いをするのは遠慮させて頂きたいところだ。
得手の念動力を駆使してどう敵と立ち回るか、頭の中でシミュレーションを重ねながら、彼女はいざ深部へ向かう。
大成功
🔵🔵🔵
シルヴィ・フォーアンサー
……上には上がいるんだね。
『不幸せな環境は比べるものでもない、君も救助対象も同じだ』
……そっか、そうだね、それじゃお仕事頑張ろう。
指定コードで機体ごと透明化して潜入決行。
見えない音が聞こえないといっても接触したり移動の痕跡で怪しまれる可能性があるから慎重に。
ドローンと見張ってる兵士を索敵してできるだけ見られてない所を通ってくね。
どうしてもドローンの警戒下を通る場合はハッキングかけて一時的にこっちの制御下において何も異常なしってことにさせて通過するよ。
「……上には上がいるんだね」
キャバリア操縦のために人工的に作られた人間。それは、とある犯罪組織の遺伝子操作を受けて生まれた、シルヴィ・フォーアンサー(自由を求めた脱走者・f41427)も同じだった。だが奴隷であった当時の自分よりも、完全な使い捨ての「部品」である「EP-L217」のほうが、扱いとしては悲惨に感じる。
『不幸せな環境は比べるものでもない、君も救助対象も同じだ』
「……そっか、そうだね、それじゃお仕事頑張ろう」
その思考をたしなめたのはサポートAIの「ヨルムンガンド」だった。信頼する相棒の言葉でシルヴィは気を持ち直し、ミッションに意識を集中する。この軍事基地で生まれて死ぬ定めの少女を、外の世界に連れ出すのが今日の仕事だ。
「……透明になーれ」
シルヴィを乗せたクロムキャバリア《ミドガルズ》は、【フリージング・カモフラージュ】によって光の反射を操作する氷に覆われ、操縦者ごと透明化する。これにより外部からの視聴嗅覚での感知は不可能となり、機体の隠密性能は格段に向上する。
(見えない音が聞こえないといっても、接触したり移動の痕跡で怪しまれる可能性があるから慎重に)
その上でシルヴィは機体とユーベルコードの性能に胡座をかかず、慎重な操縦で基地の警戒網をくぐり抜けていく。
国家の最高戦力であるオブリビオンマシンの秘蔵場所というだけはあり、基地の警備は厳重だ。哨戒の兵士は勿論、多数の探索ドローンが侵入者に四六時中目を光らせている。
『ここで5秒待機だ。次のドローンの巡回をやり過ごせる』
「……わかった」
サポートAIの力も借りてドローンと見張りの兵士を索敵し、できるだけ見られてないポイントを通過するシルヴィ。
今のところは順調だが、先に進めば警備はさらに厳しくなる。ドローンの数も増えてきて、簡単には通れないところが増えてきた。
「……ここは仕方がない、か」
やがて、どうしてもドローンの警戒下を通らざるえをえない状況に直面すると、彼女は探索ドローンにハッキングをかけた。それ専門の訓練を受けたハッカーではないが、キャバリア乗りの嗜みとして電子戦の心得はある。一時的に機体のシステムをこちらの制御下に置くくらいなら容易だ。
『……異常ナシ』
ハッキングされたドローンは侵入者の痕跡を認識できずに素通りしていき、シルヴィはその隙にこの場を通過する。
透明化に頼ればもう少し強引な突破も可能だろうが、見つかった場合のリスクが大きい以上慎重になり過ぎることはない。それが彼女とヨルムンガンドの判断であった。
「……行こう」
ミドガルズのセンサーは、この先にある大きなエネルギー反応を検知している。恐らくはそれがオブリビオンマシン「アーレス」のもの。今回の目標にして最大の脅威に近付きつつあることを認識して、少女は警戒を強めるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
UC常時
…アーレス…アーレスか…バーラントで名前を聞いたことがあるな
あの国の神様だったか
「マーズ君の別名でもあるんだぞ?」(銀髪少女)
ま、可愛い女の子を誘拐するのは盗賊の嗜みって奴だ
やってやるぜ!きっとこの後素敵なお礼タイムまった無しだな!
「ひゃっはー☆」
【属性攻撃・迷彩】
光水属性を自分達に付与
光学迷彩で姿を隠し水の障壁で音や熱源に匂いを隠蔽
【情報収集・戦闘知識・視力】
ドローンの動きと索敵能力を正確に把握
効率的な潜入ルートを把握
【念動力・空中戦】
念動力で浮かびながら進む
可能な限りドローンを回避
光学迷彩でまず解らんだろうが念には念を入れておく
それでも邪魔なのは静かに念動力で潰しながら突破!
「……アーレス……アーレスか……バーラントで名前を聞いたことがあるな。あの国の神様だったか」
「マーズ君の別名でもあるんだぞ?」
闘争を司る巨神と謳われ、某国の守護神として讃えられるオブリビオンマシン『アーレス』。カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)はその名を別の国でも耳にしたことがあった。相方の「メルシー」が言うようにモチーフの被りが起こっても不思議ではない名前だが、どうにも気がかりではある。
「ま、可愛い女の子を誘拐するのは盗賊の嗜みって奴だ」
とはいえそんな懸念要素は彼にとって重要ではない。敵の軍事基地に忍び込み、キャバリアという檻に囚われた少女を攫うなんて、いかにも彼好みのミッションだ。やる気の裏にある下心を隠そうともせずに、自称天才魔術盗賊は仕事を始める。
「やってやるぜ! きっとこの後素敵なお礼タイムまった無しだな!」
「ひゃっはー☆」
某国の基地に潜入したカシムは、魔術的な光学迷彩を自分とメルシーに付与し、さらに水の障壁で音や熱源に匂いを隠蔽する。機械的な技術によるものではない隠密は、この世界ではあまりメジャーではないだろう。探索ドローンの目も欺けるはずだ。
「これでまず解らんだろうが念には念を入れておく」
盗賊として身に着けた技と慎重さで、彼は物陰からドローンの動きを観察し、その索敵能力を正確に把握していく。
カメラやセンサーの感度や視界が分かれば、あとはそいつらが振り向くのに合わせて移動するだけだ。お互いに死角を補うような配置と巡回経路にはなっているが、それも完璧という訳ではない。
「メルシー! 魔力を回すからお前も手伝え!」
「了解だよご主人サマ♪」
カシムの指示でメルシーは念動バリアを展開し、音もなく宙に浮かびながら移動する。今は【対人戦術機構『詩文の神』】で銀髪少女の姿をしているが、彼女の正体は界導神機『メルクリウス』。奇しくも『アーレス』と同じ神々の名を冠するキャバリアである。
「ここまですれば見つかる事はないだろ」
効率的な潜入ルートの把握と飛行によるドローンの回避。万全を期したカシム達の隠密はまだ誰にも気付かれない。
それでも邪魔なものに出くわした時は、念動力の手を伸ばし、警報を響かせないよう静かに握り潰す。傍目にはまるで空中でドローンが自壊したように見えるだろう。
「突破!」
「ほいきたー☆」
グシャグシャになったドローンの残骸をばら撒きながら、颯爽と基地内部を翔けていく少年少女の二人組。厳重な警備を嘲笑うかのような手慣れた調子で、彼らは目当ての"お宝"の元に向かう。神の如きオブリビオンマシンの脅威も、その足を竦ませる理由になりはしなかった。
大成功
🔵🔵🔵
フェイルシア・インパーサ
オブリビオンマシンは利用するモノではありません。
彼らには明確な意思がある……かの国はマシンを利用しているのではない、贄を捧げているだけなのです。
贄となる子供の命も考えずに。
贄を与えられたオブリビオンマシンが何を思うのかさえ考えようともせずに。
まずは侵入と行きましょうか。
【乱レ桜ノ舞】で花びらとなり貨物に混ざりましょう。
搬入されたらすかさず脱出して今度は排気口に入り込みます。
機体が厳重に管理されているのであれば、その空間までの空調ぐらいはあるはずです。
ドローンには補足されないルートを選んでおりますが
もし見つかりそうなら花吹雪で視界を塞いで壊してしまいましょうか。
「オブリビオンマシンは利用するモノではありません。彼らには明確な意思がある……かの国はマシンを利用しているのではない、贄を捧げているだけなのです」
実際に自らがオブリビオンマシンと出会い、その乗り手となった経験から、フェイルシア・インパーサ(騎士姫の造花・f04276)は某国の所業をこのように断じた。マシンの動力源として作りだした超能力者を"消費"し、それで国家の指導者達はマシンを制御したつもりでいるかもしれない。
「贄となる子供の命も考えずに。贄を与えられたオブリビオンマシンが何を思うのかさえ考えようともせずに」
斯様に血塗られた手段で一時的な権勢を手にしても、遠からず破綻は見えている。この愚挙を一刻も早く止めさせるために、彼女は今回の依頼を受けた。『アーレス』という神の名を冠されたオブリビオンマシンが何を考えているかまでは分からないが、およそ人の幸福に繋がることではあるまい。
「まずは侵入と行きましょうか」
いかに厳重に警備された基地とはいえ、外部との接触を一切断つことはできない。そこに目をつけたフェイルシアは【乱レ桜ノ舞】で自分の肉体を桜の花弁に変え、基地に搬入される貨物の中に紛れた。輸送を担当する兵士らはそれに気付かぬまま、彼女を基地の内部に運び込んでくれる。
(何処だって花は咲き乱れますわよ?)
搬入が完了すればすかさず貨物から脱出して、今度は近くの排気口に。花弁化した体の特性を活かせば、どんな狭い隙間でも入り込み、人体では不可能な潜伏が可能だ。探索ドローンによる警戒網も、こんな侵入ルートまでは想定していまい。
(機体が厳重に管理されているのであれば、その空間までの空調ぐらいはあるはずです)
基地内に張り巡らされた換気ダクトの中を通って、フェイルシアは基地のさらに奥へ。途中で道が途切れていた時は素早く抜け出して、別の排気口まで移動する。密やかにひらひらと舞い踊る花弁の群れに、気付いた者はまだいない。
(……流石に、そろそろ厳しくなってきましたね)
件のオブリビオンマシンの元に近付くにつれて警備も厳重となり、ドローンの数も増えてくる。捕捉されないルートを選んでも限界はあった。彼女の潜伏する排気口の傍に、一機のドローンがカメラアイを光らせて近付いてくる――。
『異常を、探知……――???』
その瞬間、勢いよくドローンの視界を覆ったのは桜の花吹雪。異変により機体の反応が遅れた隙に、フェイルシアは肉体の一部を実体化させてルーンソードを振るう。精霊の属性を宿した魔法の刃は、一太刀で標的を真っ二つにした。
「急ぎましょう」
警報を上げさせる暇は与えなかったはずだが、ここからはますます敵の警戒も強まるだろう。それまでにマシンの元までたどり着けるかどうか――彼女は緊張の面持ちで花弁に戻り、空調を通した最短経路をひたすらに進むのだった。
大成功
🔵🔵🔵
黒影・兵庫
(「誘拐じゃなくて保護って言って欲しいわね。そう思わない?黒影」と頭の中の教導虫が話しかける)
誘拐でも保護でもやることは一緒なので俺は特に気にしませんでした!
(「んーもうちょい反骨心も育むべきだったかな?それはそれとして、どうやって基地内に潜入する?」)
ここはUC【F.E.C】で電子兵さんをお呼びしてドローンや警備システムを『ハッキング』していただき無力化します!
後は『気配感知』能力を向上させた{蜂蜜色の靄}の結界を構築し『情報収集』しながら進むことで
人目につかないように基地内に潜入しようと思います!
(「OK!じゃあ作戦開始ね」)
はい!せんせー!
(誘拐じゃなくて保護って言って欲しいわね。そう思わない? 黒影)
黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)の頭の中にいる教導虫「スクイリア」が、ちょっと不満げな調子で彼に話しかける。今回の依頼はオブリビオンマシンの動力にされているパイロットを「誘拐」せよとの事だったが、実質的な目的には対象の身柄の安全も含まれている。ならストレートにそう言ったほうが引き受ける方も気分が良いものだ。
「誘拐でも保護でもやることは一緒なので俺は特に気にしませんでした!」
(んーもうちょい反骨心も育むべきだったかな?)
これに対して兵庫の反応はあっけらかんとしたもの。滅私奉公、品行方正、公明正大を美徳と指導し、彼をこのような真っ直ぐな性格に育てたのは、間違いなく「せんせー」であるスクイリアの教導の賜物だろう。それ自体はとても良いことだろうが、たまにちょっとだけ不安になる。
(それはそれとして、どうやって基地内に潜入する?)
今回の目標は厳重に警備された軍事基地の内部にいる。愚直に突撃すればすぐに見つかって警備部隊に包囲される。
オブリビオンマシンと戦う前に、キャバリアも含んだ軍隊と戦うのは得策ではない。作戦はあるのかと尋ねる教導虫に、兵庫は自信ありげな態度で答えた。
「ここは電子兵さんをお呼びして、ドローンや警備システムをハッキングしていただき無力化します!」
ユーベルコードで召喚される特殊な虫達を指揮するのが彼の能力のひとつ。呼べる虫の種類は多岐に渡り、物理戦闘だけでなく電子戦に対応した虫もいる。ハイテクなセキュリティで守られた基地を攻略するなら、ここは彼らの手を借りるのが一番効果的だろう。
「後は気配感知能力を向上させた『蜂蜜色の靄』の結界を構築し、情報収集しながら進むことで、人目につかないように基地内に潜入しようと思います!」
(OK! じゃあ作戦開始ね)
「はい! せんせー!」
教導虫から納得と承認を得たところで、兵庫は自らが立てた作戦を実行に移す。まずは【F.E.C】による電子兵の召喚から。彼が「誘導灯型合金破砕警棒」を振ると、プログラムやエラーコードでできた胴体と、レーザーの触覚や足を持つ、ムカデに似た奇妙な虫の群れがわらわらと現れる。
「電子兵さん! バグらせちゃってください!」
号令に応じて一斉に飛び立った虫達は、複雑な幾何学模様を描いて基地の端末やドローンに向かうと、それらを稼働させるシステムに齧り付いた。こいつらを構成するコードはコンピューターウイルスのようにプログラムを崩壊させ、機能を停止させる。
(ドローンが止まったわ。今のうちよ、黒影)
「はい!」
この隙に兵庫は「蜂蜜色の靄」を基地内に薄く広げて、動いている物体や生物の気配を感じながら移動を開始する。
まだ稼働中のドローンや警備兵と鉢合わせないよう、慎重に。誰にも気付かれぬまま施設に潜入を果たした後は、引き続き電子兵を指揮しながら進む。
「怪しいのは……こっちか!」
警備の厳重さから逆算すれば、オブリビオンマシンが隠されていそうな場所も見当がつく。高度なセキュリティが張り巡らされているほど、今の彼らにとっては潜伏も容易い。作戦通りの展開に手応えを感じつつも油断はせず、兵庫は虫達とともに先を急ぐのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ノア・クレムリィ
調整されたアンサーヒューマンを動力炉として扱う。そのような機体の存在を許しておくことはできません。確実に撃破しなければ。
【UC:アドバンテージ・アンサー】(WIZ)発動、〈ジャミング〉でドローンの探知を妨害しながら警戒網を掻い潜りましょう。いくら厳重とはいえ、完全無欠ではないはず。補給コンテナや燃料庫等、遮蔽に優れた〈地形の利用〉で素早く進みましょう。出会い頭のドローンは光学式の〈迷彩〉を起動し、周囲に溶け込み〈目立たない〉ようやり過ごします。
どんなに正当な理由があろうとも、未だ何も知らぬまま戦う彼女の犠牲を許容することはできません。先を急ぎましょう。
(愛機搭乗/アドリブ等々歓迎)
「調整されたアンサーヒューマンを動力炉として扱う。そのような機体の存在を許しておくことはできません」
非合法なアンサーヒューマン製造施設で生まれたノア・クレムリィ(海駆ける鋼鉄の竜騎兵・f30572)にとって、今回の事件は他人事とも言い切れぬ一面があった。同時に軍人としても、乗り手の超能力と生命を犠牲にする非人道兵器は断じて認めがたい。
「確実に撃破しなければ」
騎士然とした凛々しき決意を胸に、彼女は愛機《ガンド》に乗って某国の軍事基地に潜入する。内部には多数の探索ドローンが飛び回り、ここが重要な施設だと物語っているが――戦場での華々しい功績だけが、軍人の仕事ではないと証明しよう。
「いくら厳重とはいえ、完全無欠ではないはず」
多くの戦場を体験してきたノアの頭脳は、水上・遮蔽・高所等の地形で有利な戦術を的確に導き出す。補給コンテナや燃料庫等、探せば幾らでもあるささやかな遮蔽物を利用して【アドバンテージ・アンサー】を発動させながら進む。
「ジャミングも機能しているようですね」
付近にいるドローンの探知機能にも妨害を入れておけば、そう簡単に見つかりはしないだろう。警備の目とカメラの死角、巡回コースに遮蔽物の位置を正確に把握すれば、安全に移動できるルートも自然に見えてくる。アンサーヒューマンの優れた瞬間思考力は、この局面で大いに役立っていた。
「……おっと。危ない所でした」
とはいえノアの戦術も完全無欠という訳ではない。遮蔽の切れ間でドローンと鉢合わせになりかけた彼女は、咄嗟に光学迷彩を起動して、機体を周囲の風景に溶け込ませた。その場で物音を立てないようじっと静止し、向こうが通り過ぎるのを待つ――。
『異常ナシ』
幸い無事にやり過ごせたようで、ドローンはそのまま巡回コースに沿って去っていった。ノアはほっと息を吐くと、より一層警戒を強めて移動を再開。どうやら先に進むにつれて警備も厳重になっているようだが、それは厳重に守るべき何かがあることを示唆している。
「どんなに正当な理由があろうとも、未だ何も知らぬまま戦う彼女の犠牲を許容することはできません」
先を急ぎましょう、と呟いてノアは愛機の推力を上げ、迅速にオブリビオンマシンの元へと向かう。自らの意思で戦いの道を選択した彼女と違って、ここにいるマシンの乗り手はまだ、戦いという行為の意味さえ理解していないのだ。
ただの部品として少女が「消費」されてしまう前に、なんとしても助け出す。鋼鉄の竜騎士を駆るノアの平静な振る舞いの裏には、海賊然とした荒々しい闘志が秘められており、解き放たれる時を静かに待っていた――。
大成功
🔵🔵🔵
エリュファシオン・アルティウス
今回は慎重に動こう…
私はUC怪盗一文字〜NEXT ・GENERATION〜を発動して姿を変えた
お願い、ラウール…
逆行怪盗皇・ラウール・アナザーワンを発動して呼び出して影に潜んで貰う
行くよ…!
素早くガンナイフから呪殺弾を放ち1体だけになったドローンを撃ち落として漢数字『一』に変身してドローンの隙間に入り能力を解除して再びガンナイフから呪殺弾を放ち攻撃して破壊する
今の内に!
移動時には迷彩を使用して姿を消してドローンの探索を回避しながら進む
ラウール…!
どうしても回避出来ない進路にドローンがあったのでドローンの影からラウールが現れてドローンを破壊
よし!何とかバレずに進めたぞ!
待っててね今助けるから…!
「今回は慎重に動こう……」
某国の軍事基地に潜入し、秘蔵されたオブリビオンマシンを破壊してパイロットを誘拐する。このミッションの第一段階に参加するにあたって、エリュファシオン・アルティウス(“やんきー”を目指す『時間逆行』を使う不思議な旅人・f39208)は【怪盗一文字 〜NEXT・GENERATION〜】を発動した。
「IT'S SHOWTIME!」
彼女が「爺や」と呼ぶ人物から手に入れた、このユーベルコードは自分の肉体を漢数字の『一』に変異させる。加えて次元操作に怪盗の技、透過能力といった特性を得られるため、今回のような隠密作戦には非常に適した能力だろう。
「お願い、ラウール……」
さらにエリュファシオンは【逆行怪盗皇・ラウール・アナザーワン】を発動し、召喚した怪盗皇「ラウール」を自分の影に潜ませる。彼は作戦中にもしもの事があった場合のサポート要員だ。皇の冠名に恥じない怪盗としての能力は、いざという時に頼りになる。
「行くよ……!」
かくして準備万全で基地に乗り込んだ彼女は、巡回中のドローンを「シャドウ・ガンナイフ」で素早く撃ち落とす。
見つかる前に先手を取って破壊するのが基本方針のようだ。達人のレベルまで鍛えられた彼女のクイックドロウは、標的に警報を上げる暇すら与えない。
『危険因子を探知しまシタ――』
1機だけ残ったドローンがアラームを鳴らそうとするが、エリュファシオンは瞬時に全身を漢数字『一』に変化させてドローンの隙間に入りこむ。そのまま能力を解除すれば、元の形に戻ろうとする圧力によってドローンは内側から破壊されていき――追撃の呪殺弾が完全にとどめを刺す。
「今の内に!」
邪魔者を一掃したエリュファシオンは、新手やって来る前に迷彩で姿を消した。一度隠密に徹してしまえば、もはや基地内のセキュリティや探索ドローンのセンサーでも彼女を探知するのは難しい。鉢合わせになるのさえ避けられれば安全に移動できるだろう。
「ラウール……!」
どうしても回避出来ない進路にドローンがある時は逆行怪盗皇の出番だ。影からぬうっと姿を現した6翼の魔人が、神速の斬撃でドローンを真っ二つにする。バチバチと火花を上げる残骸を尻目に、エリュファシオンはまた先を急ぐ。
「よし! 何とかバレずに進めたぞ!」
潜入開始からかなりのハイペースで、彼女は基地の重要区画まで到達していた。オブリビオンマシン『アーレス』の格納庫もこの辺りにあるに違いない。それは即ち、マシンの動力源として利用されている哀れなパイロットの少女も、近くにいるということだ。
「待っててね今助けるから……!」
人間をマシンのパーツ扱いして消費するなんて非道な所業を、エリュファシオンの義侠心は決して許しておけない。
誓いの言葉をささやきながら隠密行動を続ける彼女の視線は、薄暗くなっていく基地の最深部を見据えていた――。
大成功
🔵🔵🔵
ガイ・レックウ
【SPD】で判定
『アーレスねぇ…ま、やってみるか』
【ハッキング】でのドローンとレーダーの偽装と【戦闘知識】で基地の状況を把握しながら潜入していくぜ。機動戦艦『天龍・改』とキャバリアは上空で見つからないように待機させておくぜ
「アーレスねぇ……」
戦いの神の名を冠したオブリビオンマシンとは、すいぶん大層なものだとガイ・レックウ(
明日切り開く
流浪人・f01997)は思う。虚仮威しであれば良いのだが、そいつが乗り手の超能力を絞り取り、命すら蝕む代物だと聞いては放ってもおけまい。
「ま、やってみるか」
かの機体と立ち会うには警備の目を掻い潜らなければいけないと聞いて、彼は気負いのない調子で作戦に参加する。
自身のキャバリア『スターブラスト』及び、特式機動戦艦『天龍・改』は
殲禍炎剣の攻撃を受けないギリギリの上空で見つからないように待機。マシンを見つけるまでの探索は、本人が生身で行うつもりだ。
「これでもハッキングの心得はあるんでな」
ガイは基地のレーダーと探索ドローンのセンサーに不正アクセスを仕掛け、こちらの反応を偽装して誰もいないように見せかける。これ自体は一時的なものだが、目眩ましが効いている隙にその場を通り抜けてしまえば、敵はこちらを見つけられない。
『異常ナシ』
音もなく疾走する流浪人の姿に気付かぬまま、探索ドローンは平時のルートを巡回するのみ。この間にガイは基地の奥に進む。オブリビオンマシンの格納庫について正確な情報はないが、彼はすでに大凡の当たりを付けている様子だ。
「基地や城と呼べる物は、どこの世界も大差ないな」
様々な世界での戦闘経験を元にして、ガイは基地の状況を把握している。監視の目を掻い潜る隙間を見抜くのもそうだが、警備の厳しい所には大概重要なものが隠されていると相場は決まっている。故に向かうべき方角は明白なのだ。
「虎穴に入らずんば虎子を得ず、だ」
慎重に、それでいて迅速に、時には大胆に。堂に入った動きで潜入を続けるガイの目線は、常に目標に向いている。
この世界に絶望をもたらすオブリビオンマシンを絶ち、ひとりの少女に希望をもたらしてみせよう。それが、猟兵となった自分の使命でもあるのだから――。
大成功
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朱鷺透・小枝子
(自分は故国の為、戦う為の存在だった。
与えられた命を全うできるなら、それは名誉だった。)
『眼倍』【情報収集】軍事基地内構造、ドローンの配置を把握し、進入路、脱出路を予め頭に叩き込みながら、ディスポーザブル02【操縦】重力制御で音なく【空中機動】ドローン回避。
【迷彩】02の透明化能力でドローンのセンサーを誤魔化し、軍事施設内を移動する。
(それは今も、変わってない。
…それはそれとして、件の少女たちの扱いには、思う所もある。
猟兵となる前であれば、こんな事思わなかったのに。)
「だがそれ以上に、無為に命を喰らうオブリビオンマシンの存在を看過はできない。……破壊してやる!」
(自分は故国の為、戦う為の存在だった。与えられた命を全うできるなら、それは名誉だった)
朱鷺透・小枝子(
亡国の戦塵・f29924)の境遇は、今回の誘拐対象である『EP-L217』に似ている点もある。とある小国家で造られ、死ぬまで使い潰されるはずの人形。違う点は彼女が兵舎で兵士としての訓練と教育を受け、そのことを肯定的に捉えている事だろう。
(それは今も、変わってない。……それはそれとして、件の少女たちの扱いには、思う所もある。猟兵となる前であれば、こんな事思わなかったのに)
故国は滅び、亡霊のように生きている自分にも、まだ心境の変化を起こす余地があったということか。その事に彼女自身が誰よりも驚きつつ、足は自然と件の軍事基地に向かっていた。終わるべきところで負われなかった自分が、似た境遇の娘を終わらせないために働くというのも不思議な話だ。
「眼倍起動」
小枝子は人工魔眼を用いたユーベルコード【眼倍】により、まずは基地内の構造とドローンの配置を把握する。透視や遠隔視等の超能力で拡張された視野は、本来なら見えるはずの無いものも見せ、敵基地の内情をつまびらかにする。
「ディスポーザブル02、出撃」
得られた情報を元に進入路と脱出路を予め頭に叩き込むと、彼女は六本腕の軽装キャバリアに乗って潜入作戦を開始する。この異形のオブリビオンマシン「ディスポーザブル02」は高機動性能が売りであり、重力制御による無音飛行で空中を機動する。
(ドローンの巡回ルートは予測通り。問題はない)
音もなく宙を翔ける小枝子のキャバリアは、探索ドローン群の監視網の隙間を縫うように回避する。もしドローンの視界に入っても、この機体には透明化能力も備わっている。通常のセンサーならいくらでも誤魔化せる目算はあった。
『異常ナシ。巡回を継続しマス……』
侵入者を発見できなかったドローンが別の区画に移動するのを待って、小枝子は基地の奥深くへと進む。その様子をもし見られる者がいれば、鋼鉄の蜘蛛を連想するだろう。戦場で死ぬことを定められ、死してなお獲物を探し続ける、恐るべき猛毒を秘めた蜘蛛だ。
(件の少女は、ずっとこの基地の中か、キャバリアのコックピットしか世界を知らないのか)
無機質で冷たい軍事基地の様相をモニター越しに眺めながら、小枝子は思考を巡らせる。以前なら気に留めなかった事をふと意識するのは、やはり心境の変化なのだろう。自分が「もう死んでいる」という事実にまだ気付かないまま、亡霊はある種の成長を遂げていた。
「だがそれ以上に、無為に命を喰らうオブリビオンマシンの存在を看過はできない。……破壊してやる!」
変わるものがある一方で、変わらないものもある。それは、祖国を滅ぼしたあのマシンどもは「敵」だという殺意。
神の名を冠せられ、闘神の如く奉られていようが関係ない。よりシンプルな思考で闘志を燃え上がらせながら、彼女を乗せたキャバリアは敵の元に向かう――。
大成功
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安野・穣
(アドリブ連携歓迎)
人為的にデザインされた超能力者にサイキックキャバリア…
ま、他人事と聞き流すこたできねえ単語の数々っすよね。『カサンドラ』。
…使い捨てるために作られ、それを不幸だと思う知識も感情もない、か…
いや、考えるにしても辿り着くのが先か。
『ジェード』展開、【時雨】発動。
範囲内のドローンの行動プログラムに<ハッキング>で介入。
優先して捕捉、追尾する対象を侵入者ではなく同じドローンに変更。
こういうのは相互衝突を防ぐため予めプログラミングされてるもんですけど…
それが正常に働かなければどうなりますかね?
同族同士で気を取られてる隙に先を急ぎますか。
「人為的にデザインされた超能力者にサイキックキャバリア……ま、他人事と聞き流すこたできねえ単語の数々っすよね。『カサンドラ』」
かつて、とある小国家が古代超能力者の遺伝子を用い、超能力と高度な情報処理能力を併せ持つデザイナーベビーを開発した。その実験体、安野・穣(with"CASSANDRA"・f30162)は愛機『カサンドラ』のコクピットで陰気な顔をしながら、自身の生まれと今回の
誘拐対象を重ね合わせていた。
「……使い捨てるために作られ、それを不幸だと思う知識も感情もない、か……」
無知で無垢なまま死ねるのなら、それはある意味幸せなのだろうか。少なくとも彼には選びようのなかった人生だ。
優れたESPと頭脳を持って生まれた穣は、自分を造りだした祖国の破滅という未来さえ予測してしまった。ロクでもない世界と否応なく向き合わされてきた彼は、外の世界に少女を連れ出すことが本当に幸せか即答できない。
「いや、考えるにしても辿り着くのが先か」
まずはミッションのほうに集中しようと、穣はコンタクトレンズ型電脳端末「ジェード」を起動し【時雨】を発動。
展開された電脳空間を介して周辺の探索ドローンにアクセスすると、それらの行動プログラムにハッキングで介入を仕掛けた。
『不正なアクセスを確n……――』
はらはらと降り注ぐ光の粒子のエフェクトに触れたドローン群は、強制スリープモードに移行する。本来は構造解析と心身治療を行うための診察プログラムだが、このように敵を眠らせるのにも使える。攻撃を受ける心配がなければ、安心して弄り回せるというわけだ。
「まあ特筆するところもない、普通の探索ドローンっすね」
電脳魔術士たる穣の手にかかれば、機体にかけられたセキュリティを解除してプログラムを改変するくらい朝飯前。
ちょっとばかり数が多い以外には手こずる要素もなく、あっという間にドローンの対象認識ルーチンに手を加える。
「こういうのは相互衝突を防ぐため予めプログラミングされてるもんですけど……それが正常に働かなければどうなりますかね?」
優先して捕捉、追尾する対象を侵入者ではなく同じドローンに変更してやってから、スリープモードを解除。再起動したドローン群は周辺の探索を再開するが――基礎となる定理を変えられてしまった時点で、もうそれは索敵用には使えない代物となっていた。
『目標確認』『目標確認』
それは文字通りの"お見合い"だ。互いを最優先で捕捉すべき対象と認識したドローンは、じっとセンサーを向けあうだけで動かなくなる。不正なプログラムの書き換えにより生じたエラーが、軍事基地の警戒網をマヒさせてしまった。
「同族同士で気を取られてる隙に先を急ぎますか」
もはや注目される対象ではなくなった穣は、キャバリアに搭乗したまま悠々と移動する。目指すは例のパイロットとオブリビオンマシンがいる格納庫――基地の人員がドローンの異常に気付き、プログラムを修正する頃には、全てが終わっているだろう。
大成功
🔵🔵🔵
ノエル・カンナビス
教育を受けていないから自身の状況も解らないし、暴力的権威に盲従することに疑問もない……なんて、普通のことですし。
貧しい国の軍隊は大概そんな感じです。
単なる敵兵でしかないのに、生命に配慮する必要あります?
そも、何故その近隣国は、パイロットの誘拐を依頼したんでしょう。
人工超能力者の生きたサンプルが欲しい以外に考えにくいですが。
オブリビオンマシンもろとも戦死させた方が慈悲じゃありませんかね。
まあ、どうでも良いです。任務は任務。
クローキングユニットの熱光学迷彩と、統合センサーシステムによる相殺型ECMとで、量産ドローン程度の探査は躱せます。
バイブロジェットの騒音までは消せませんから、地上を歩きましょ。
「教育を受けていないから自身の状況も解らないし、暴力的権威に盲従することに疑問もない……なんて、普通のことですし」
傭兵として多くの戦時国の実情を見てきたノエル・カンナビス(キャバリア傭兵・f33081)は、この手の事例を特別なものとは考えていなかった。主義主張がどうこうでなく、見慣れた日常であり些細な風景と認識している節がある。
「貧しい国の軍隊は大概そんな感じです。単なる敵兵でしかないのに、生命に配慮する必要あります?」
その発言も、どうせなら仕事は楽に済ませたい、という以上の意図は読み取れない。高性能オブリビオンマシンとの戦闘が確定しているミッションで、戦闘中に余計なタスクや注文を増やしたくはない。パイロットと動力がイコールなら、そこを潰すのは合理的でさえある。
「そも、何故その近隣国は、パイロットの誘拐を依頼したんでしょう。人工超能力者の生きたサンプルが欲しい以外に考えにくいですが」
わざわざ暗殺ではなく誘拐と依頼されたところにまた、きな臭いものを感じずにはいられず。オブリビオンマシンもろとも戦死させた方が慈悲じゃありませんかね――とノエルはぼやくが、クライアントの要望に逆らってまでやる気があるかと言うと、別にそうでもない。
「まあ、どうでも良いです。任務は任務」
どんな仕事であれ受ける受けないはこちらの自由で、受けた以上は傭兵として手は抜かない。いつものように彼女はキャバリア「エイストラ」を起動し、目標のいる某国軍事基地に潜入する。その態度は終始冷静沈着で無表情――に見えて、単純にマイペースでローテンションなだけかもしれない。
(クローキングユニットの熱光学迷彩と、統合センサーシステムによる相殺型ECMとで、量産ドローン程度の探査は躱せます)
外部機器とのリンク能力に長けたレプリカントであるノエルは、普通のパイロットの操縦とは異なり、キャバリアを外装パーツのように"増設"し、拡張された機能の一部として操作する。無駄のないモーションで駆動するその機体は、二重のシステムによって敵の索敵機能を欺いていた。
『異常ナシ』
すぐ近くを探索ドローンが通っても、迷彩で風景に溶け込んだ「エイストラ」は見つけられない。電子的なセンサーも全て「正常な」結果を返すばかりだ。いくら数を揃えて監視網を強化しても、それでは埋まらない性能差があった。
(バイブロジェットの騒音までは消せませんから、地上を歩きましょ)
静音性を意識した慎重な挙動で、ゆっくりと基地内を移動するノエル。物音を聞かれるか余程近くまで迫られない限り、彼女の隠密が見破られることは無いだろう。気を抜けない道中だが、裏を返せば油断しない限り失敗もまずない。
その仕事ぶりは余計な事はせず淡々として的確で、傭兵として文句なしに満点。無感情な表情を崩すことなく、彼女は目標の元に迫りつつあった――。
大成功
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第2章 ボス戦
『アーレス』
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POW : 機神刻衝拳
【貫手】で装甲を破り、【蹴撃】でダウンさせ、【掌底】でとどめを刺す連続攻撃を行う。
SPD : 戦哮重獄波
【収束や拡散等、多様に性質を変える重力波】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ : 剛覇尾衛攻
【テールアンカー】が命中した敵を【先端部のクロー】で追撃する。また、敵のあらゆる攻撃を[先端部のクロー]で受け止め[テールアンカー]で反撃する。
👑11
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探索ドローン群による警戒網を突破した猟兵達は、設計上の間取りから秘匿されたスペースを基地内部に発見する。
その場所こそまさに、某国が秘蔵するオブリビオンマシン『アーレス』の格納庫に他ならなかった。
『――コードに一致しない侵入者を確認。非常時対応マニュアルに基づき、自己判断モードで起動』
機械と鋼でできた玉座の間を連想させる、巨大な空間で猟兵達を待っていたのは、魔神の如く禍々しいキャバリア。
通常のキャバリアとはまったく異なる設計思想で造られた、機械仕掛けの魔神。闘争を司るとも伝えられる、この国の守護神。それは猟兵の侵入を感知すると、自らの意思で動き始めた。
『"EP-L217"バイタル正常。戦闘出力の抽出に問題なし。機体保全の為、敵性侵入者の排除を最優先とする』
このオブリビオンマシンを稼働させるには、優れた超能力者のパイロットが要る。
そのために開発されたアンサーヒューマンの少女『EP-L217』は、おそらく今もアーレスのコックピット内にいる。
外部との交信を禁止されているのか、現在彼女がどのような状態でいるかは分からないが――この魔神は乗り手の力を根こそぎ搾り取る。生命まで蝕まれるほどの消耗を味わっているはずだ。
今回のミッションはパイロットの
誘拐。そのためには『アーレス』を破壊する必要がある。
このオブリビオンマシンが原因で周辺国との緊張が高まっている点を鑑みても、猟兵としては無視できない存在だ。
対する『アーレス』も、ここまで侵入した猟兵を逃がすつもりはないらしい。
『システム・オールグリーン。戦闘モードに移行』
闘神の名を冠するキャバリアから、囚われの少女を誘拐せよ。
猟兵達に課されたミッションは、これより最大の難関に突入する。
ガイ・レックウ
【POW】で判定
『こいつはスターブラストじゃ、きついか…天龍・改!コスモ・スターインパルスを緊急射出!!その後、砲撃支援!!」
天龍・改に指示を飛ばし、コスモスターインパルスを発進させて、飛び乗る。
『神の名をもつオブリビオンマシン…倒して見せる!!』
【オーラ防御】を多層式に纏い、【リミッター解除】【限界突破】させた軌道で突撃しつつ電磁機関砲での【制圧射撃】とブレードでの【鎧砕き】での【二回攻撃】しつつ【戦闘知識】で相手の動きを【見切り】、ユーべルコード【炎龍一閃】の斬撃を叩き込んでやるぜ!!
「こいつはスターブラストじゃ、きついか……天龍・改! コスモ・スターインパルスを緊急射出!! その後、砲撃支援!!」
眼前に立ちはだかるオブリビオンマシン『アーレス』から、想像以上の強大さを感じ取ったガイは、上空に待機させていた機動戦艦に指示を飛ばす。それに応じて発進するのは特空機1型・改『コスモ・スターインパルス』。実験機から改良を重ね、さらなる機動力向上と強度アップを果たした彼の愛機である。
「神の名をもつオブリビオンマシン……倒して見せる!!」
そのコクピットにサッと飛び乗ったガイは、巨大な漆黒のマシン相手に堂々啖呵を切り、交戦状態に突入する。そこに救わなければなあぬ人がいるなら、真の神であろうと倒してみせよう。使命を負った男の背中に逃走の文字はない。
『【機神刻衝拳】起動。目標を排除する』
アーレスは無機的な発声と共に背中の翼状スラスターを広げ、ガイを乗せたコスモ・スターインパルスに急接近してくる。キャバリアとしては大柄な機体だが、機動性能も運動性能も通常機とは比べ物にならない。パイロットから絞り出した超能力のパワーが、物理法則を超えた挙動を可能にしているのか。
「やはり、やるな!」
接近と同時に貫手を繰り出してきたアーレスに対し、ガイは多層式に纏ったオーラで防御を固める。装甲の貫通力に長けた攻撃ならコレで耐えて、こちらからも突撃を掛ける。出力のリミッターを解除した彼のキャバリアはエネルギーウイングによる限界以上の機動性を発揮し、敵機の懐に飛び込んだ。
「食らえ!」
コスモ・スターインパルスの基本装備は『試製電磁機関砲1型・改』と『特式機甲斬艦刀・烈火』。高出力パルスマシンガンによる制圧射撃を浴びせつつ、特殊合金製の刀で斬りつければ、アーレスの黒い装甲の一部が砕け、裂けた。
『損傷確認。対象の脅威レベルを更新』
警戒度を増したアーレスは蹴撃を放つが、ガイはギリギリの挙動でそれを回避。キャバリアだろうと人体を模した動きをするのなら、死合いで培った彼の経験が活きてくる。間髪入れずに繰り出される掌底も見切り、直後に訪れる隙を突く。
「さて、一手……仕掛けるか!!」
コクピットの中でガイが百花獄炎刀『ヴァジュラ』を握りしめると、その妖力がキャバリアの持つ太刀にも伝わる。
発動するは【炎龍一閃】。妖刀に封じられた獄炎の力を解き放ち、灼熱の斬撃にて敵を焼き切るユーベルコードだ。
「食らえ!!」
『――……!』
咄嗟に回避行動を取ったアーレスの翼の一部を、斬艦刀・烈火がバターのように切断する。重力制御機構を用いた三次元回避でも、彼の全力を躱しきることはできなかった。機動力の減少した敵機はカメラアイを点灯させ、侵入者――猟兵の脅威レベルをさらに引き上げるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
エリー・マイヤー
おー、なんかめっちゃエネルギーバチバチしてますね。
人の命を使うだけあって、恐ろしい出力です。
まともに攻撃を食らったら、軽く死ねそうですね。
いやまぁ、ぶっちゃけ私は踏まれるだけでも即死コースなんですが。
そんなわけで、【念動ジャック】で身動きを封じてから攻撃します。
できれば完全にコントロールを奪って、パイロットを引き剥がしたいとこですが…
まぁ、さすがに抵抗されて無理でしょうね。
とりあえず、機体制御を一時的に混乱させられれば十分です。
動かなければエネルギーの消費も減って、結果的に動力源への負担も減るでしょう。
その間に、念動力で羽をむしったり尻尾を捻り切ったり装甲を引き剥がしたりして戦力を削ぐ方向で。
「おー、なんかめっちゃエネルギーバチバチしてますね。人の命を使うだけあって、恐ろしい出力です」
センサーに検出された強烈なエネルギー反応に、マイペースな態度のまま感嘆の言葉を呟くのはエリー。これが某国の守護神と謳われるオブリビオンマシン『アーレス』の力か。データによると、その膨大なエネルギーは重力波の生成すら可能にするという。
『テールアンカー射出。目標を破壊する』
そのアーレスはエリーの姿を視界に捉えるなり【剛覇尾衛攻】を放ってきた。自在に動く機械仕掛けの尾の先端には巨大なクローが取り付けられており、重装キャバリアの装甲さえ抉れそうである。闘神の名を冠するだけあって、その機体はまさに全身武器といった様相を呈していた。
「まともに攻撃を食らったら、軽く死ねそうですね。いやまぁ、ぶっちゃけ私は踏まれるだけでも即死コースなんですが」
乗機を持たず生身で参戦するエリーにとっては、オブリビオンマシンの攻撃は全て致命傷になり得る。それでも然程慌てた様子がないのは肝が据わっているのか、対抗策をすでに用意しているのか――あるいは両方か。彼女の胴体に突き刺さる寸前で、テールアンカーの動きがピタリと止まる。
「ちょっと借りますよ」
今回の敵がサイキックキャバリアの一種であることは、エリーにとって幸いだった。強烈な思念波によって指揮系統を上書きし、サイキックエナジーを動力とした物品を操作する【念動ジャック】が、アーレスに対しても有効となる。
『動力系統に外部からの干渉を確認。プロテクトを展開――』
アーレスは自らの意思で念動ジャックに抵抗するが、それでも十全な動きは封じられる。より優れた術者がいない限り、大抵の場合においてサイキックエナジーはエリーの味方だ。それは彼女の超能力のコントロールが、アーレスの中にいるパイロットを上回っていることを意味していた。
(できれば完全にコントロールを奪って、パイロットを引き剥がしたいとこですが……まぁ、さすがに抵抗されて無理でしょうね)
思念波で間接的に対象と繋がっている今なら、あの黒いオブリビオンマシンの中にいる『EP-L217』の存在も感じ取れる。超能力のパワーを提供する動力源として乗せられた少女は、操縦を機体の自律行動に任せて沈黙している。その思念は弱々しく憔悴しているが、まだ生きてはいるようだ。
「とりあえず、機体制御を一時的に混乱させられれば十分です。その間に、戦力を削ぐ方向で」
敵機が動かなければエネルギーの消費も減って、結果的に動力源への負担も減るだろう。念動ジャックによる拘束が効いている間に、エリーは攻撃へと移行する。くゆらせた煙草の煙が念動力のベクトルに沿って揺れ――不可視の力がオブリビオンマシンを圧迫する。
『念動系サイキック反応を検知……前例のない出力……脅威レベル、更新……!』
キャバリアの3分の1にも満たない華奢な女性の思念が、物理的な力となって巨大な機神の翼を毟り、尻尾を捻り、装甲を引き剥がす。これほど強力なサイキックの使い手は歴代のパイロットにもいなかったか、アーレスの声には明らかな動揺が混ざっており。警戒の強さを示すように、重力波の出力が増していく――。
大成功
🔵🔵🔵
黒影・兵庫
(「これが例のオブリビオンマシンか…{要塞蠍}で防御を固めて軍隊虫に攻撃をさせる戦法が堅実で確実ね」と頭の中の教導虫が話しかける)
確かに!しかしそれは俺だけが安全な戦法です!時間が掛かればかかるほどEP-L217さんの生命力は削られるのでは?
(「そうはいっても他に方法が無いでしょ」)
いいえ!あります!{要塞蠍}で敵の攻撃をわざと喰らって受け止めている隙にUC【一寸鋒矢】で飛び出してカウンターで一気に決めるって戦法です!
(「ちょっと待って、それって生身で戦うってことよね?」)
はい!せんせー!その通りです!ハイリスクでハイリターンです!
(「はいじゃないわよ…はぁ、利己心も育むべきだったかな…」)
(これが例のオブリビオンマシンか……{要塞蠍}で防御を固めて軍隊虫に攻撃をさせる戦法が堅実で確実ね)
事前に聞いた情報と実物を見た印象から、教導虫スクイリアはもっとも安定して勝算のある戦い方を兵庫に伝える。
兵庫が所有する多脚戦車型キャバリア「要塞蠍」は重装甲に特化しており、敵の攻撃に耐えながらの持久戦に向いた機体だ。故にその提案は妥当なものだったが――。
「確かに! しかしそれは俺だけが安全な戦法です! 時間が掛かればかかるほどEP-L217さんの生命力は削られるのでは?」
あの『アーレス』はパイロットの超能力を動力としており、ただ戦うだけで乗り手を危険に晒す代物だということは再三伝えられてきた通りだ。そんな相手に長期戦を挑めば、先にパイロットの方が限界を迎えてしまうかもしれない。それでも勝ち負けで言えば勝利だが、そんな勝ち方を兵庫は認められなかった。
(そうはいっても他に方法が無いでしょ)
「いいえ! あります! {要塞蠍}で敵の攻撃をわざと喰らって受け止めている隙に、【一寸鋒矢】で飛び出してカウンターで一気に決めるって戦法です!」
厳しい口調で脳内から話しかけるスクイリアに、兵庫は力強く反論する。機体の防御力を盾ではなく囮に使い、隙を作って攻勢をかける作戦だ。これなら短期決着を見込めるため、アーレスのパイロットへの負担は少なく済むだろう。
(ちょっと待って、それって生身で戦うってことよね?)
「はい! せんせー! その通りです! ハイリスクでハイリターンです!」
当然ながら要塞蠍の装甲をあてにできない状態でオブリビオンマシンの反撃を食らえば、兵庫も無事では済まない。
端からそのリスクを承知の上でやる気まんまんの兵庫に、スクイリアは(はいじゃないわよ……)と頭を抱えたい気持ちになった。
(はぁ、利己心も育むべきだったかな……)
正しいと信じた行いのためなら自分の命も顧みない、滅私奉公の精神は美徳だが、身内からすれば気が気ではない。
とはいえ、一度兵庫が覚悟を決めた以上、教導役である自分の言葉でもその意志を曲げさせるのは難しいと、彼女もよく分かっていた。
(……本当に危なくなったら撤退よ。いいわね)
「はい! せんせー!」
しぶしぶながらの言葉を承認と受け取って、兵庫はいざ「要塞蠍」を発進させる。人型よりもサソリに近い異形のフォルムをしたキャバリアが向かうのは、闘神の名を冠する悪機「アーレス」。あえて攻撃を喰らいに行くかのような、被弾を顧みない突撃だ。
『新たな敵性反応……重装型キャバリアの接近を確認。対甲装備で対応』
鋏と尾を振りかざして迫る要塞蠍に対し、アーレスは【機神刻衝拳】を発動。巨体に見合わぬ俊敏さで間合いを詰めると、腕部クローによる貫手を放った。格闘戦に特化した本機の攻撃の前では、分厚い蠍の装甲も絶対とは言えない。
「捕まえたぞ、この野郎!」
だが要塞蠍はその攻撃を躊躇なく正面から受け止めると、アーレスの腕をがしりと鋏で挟み込んだ。これで相手は拳を引くことができず、距離を取ることができなくなる。その直後に兵庫はハッチを開いてコクピットから飛び出すと、【一寸鋒矢】を発動させた。
「何兆! いやそれ以上の虫さんたちの思いを込めたこの一撃! 止められるものなら止めてみやがれ!」
虫たちへの信頼と絆を力に変え、今まで共に戦ってきた虫たちのオーラで身を包む。この瞬間、兵庫の全身は蜂蜜色に輝きながら、弾丸のようにアーレスへと飛んでいった。敵も咄嗟に空いている腕でガードしようとするが、反応が間に合わない。
『――
……!!!! オーバーフレームに損傷、駆動性25%ダウン、装甲30%破損……』
まさに乾坤一擲と呼ぶべき兵庫の一撃は、悪しきオブリビオンマシンに大きな損害を与え、後方へと仰け反らせた。
攻撃が直撃した箇所の装甲は大きく剥がれ、露出した内部構造からバチバチと火花が散る。まだ倒れはしなかったものの、短期決着という彼の目論見に、戦いの流れは大きく傾いた――。
大成功
🔵🔵🔵
シルヴィ・フォーアンサー
……目標発見だね。
『依頼内容を考えれば出し惜しみは無しだな、最速で処理したまえ』
シルエット・ミラージュで分身して重力波を放とうとするのをパラライズ・ミサイルで妨害。
複数のパラライズ・ミサイルで完全に麻痺した所でクリムゾン・ウィンドで強化。
ロケットパンチをガトリング砲保持したまま打ち出して瞬間思考力で誘導弾として機体と並列操縦。
ミサイルとハイペリオンランチャーを腕部の関節部に撃ち込みながら接近して
ロケットパンチのガトリング砲も関節部位に集中射撃。
トドメに肘部からのビームサーベル✕2で片腕切断して貰ってく。
……攻撃バラけさせて両方腕落とせそうならそうするけど。
……ふぅ、後は他の人にお任せかな。
「……目標発見だね」
『依頼内容を考えれば出し惜しみは無しだな、最速で処理したまえ』
基地の最奥にて鎮座するオブリビオンマシン『アーレス』を確認直後、シルヴィは「ミドガルズ」のシステムを戦闘モードに移行した。ヨルムンガンドが言うように、あのマシンの中には救出対象のパイロットがいる。無事に確保するためには迅速な撃破が必須課題だ。
『高速接近する未知のキャバリアを確認。優先撃破対象に指定』
対するアーレスも彼女を脅威と認識したらしく、カメラアイを点灯させて腕を上げる。すると掌の中にエネルギーの球体が生じ、センサーが異常な数値を検出する――EP-L217のサイキックパワーから生成された重力波が、周囲の空間を歪めだしているのだ。
「止めるよ」
敵がその重力波を【戦哮重獄波】として放つ前に、シルヴィは【シルエット・ミラージュ】を発動。搭乗中のミドガルズの精巧な残像分身を作り出し、本体と合わせて【パラライズ・ミサイル】を一斉発射する。降り注ぐミサイルの雨は着弾点で高圧電流を撒き散らし、戦場に強力な電磁場を発生させた。
『重力波制御に、エラー発生……』
この電圧によって機体システムの一部をマヒさせられたアーレスは、重力波の球体を維持できずに攻撃を中断する。
シルヴィはそこで手を緩めずに、14機の分身と共にパラライズ・ミサイルを全弾撃ちきり、敵機の動きを完全にマヒさせる。
「本気で行く……当てたら凄い」
役目を終えた分身達が消えていくのを横目に、シルヴィは続けて【クリムゾン・ウィンド】による自機強化を行う。
真紅の疾風を纏ったミドガルズが、通常時を遥かに超えるスピードで疾走する。この状態は被弾時のダメージも増大するが、攻撃力と回避力が大きく向上する切り札のひとつだ。
「ヨル、照準サポートお願い」
『了解』
彼女は左右の手に保持したガトリングガンをアーレスに向けると、腕部に組み込まれたロケットパンチ機能を作動。
キャバリア本体から分離射出された両腕は、パイロットの瞬間思考力とAI制御によって誘導弾の如く飛翔し、銃弾を敵機に浴びせ掛けた。
『損傷拡大……システム復旧を最優先』
高圧電流によるマヒからまだ立ち直れていないアーレスは、飛び回る腕からの銃撃を避けられずに耐えるしか無い。
加えてシルヴィを乗せたミドガルズ本体も、両腕を切り離してもまだ武装が残っている。両肩部のミサイルポッドやバックパックの荷電粒子ビーム砲「ハイペリオンランチャー」など、使えるものは全て使い切る勢いだ。
「装甲は厚いみたいだけど……重量級なら関節への負荷も大きいよね」
『おそらく重力波で負担を軽減する設計になっているのだろうな』
彼女が放つ全ての射撃は、敵機の関節部に集中されている。どんな堅牢な装甲でも完全にガードしきれない箇所に、攻撃を受け続ければどうなるか。まるで悲鳴のような音を立ててアーレスの片膝が砕け、がくりとバランスを崩した。
「……攻撃バラけさせる余裕はないかな。片腕だけ、確実に貰ってく」
大きな隙を晒した敵機の元に、急接近するシルヴィの愛機。その肘部に内蔵された「RX-Aビームサーベル」が、青い斬撃の軌跡を描く――まばたきする暇もない刹那のうちに、アーレスの右腕は根本から切断され、地面に落下した。
「……ふぅ、後は他の人にお任せかな」
『――……!』
十分な損傷を与えて戦闘機能も削った。これ以上深追いして反撃を食らう前に、シルヴィは機体を急速離脱させる。
その短い交戦時間のうちに、闘神と謳われたオブリビオンマシンは深手を負い、憎々しげに身を震わせていた――。
大成功
🔵🔵🔵
ノア・クレムリィ
機神アーレス、何とも禍々しい守護神がいたものですね。これ以上、犠牲を強いる訳にはいきません。必ず、此処で終わらせましょう。
【UC:竜騎換装】(POW)を発動。移動力を5倍に射程を半分、近接強襲形態へと換装します。
パイロット奪取を果たす為にも、損傷覚悟で〈切り込み〉、速度を生かして接近戦を仕掛けましょう。狙うは関節部と動力部の機能停止、短機関銃の〈零距離射撃〉とランスの〈貫通攻撃〉を叩き込みます。機神の近接格闘はその軌道を〈見切り〉、致命的な損傷からは逃れましょう。
貴殿と言葉を交わすのはその機体を止めてからにします。いざ、尋常に――!
(愛機搭乗/アドリブ負傷等々大歓迎)
「機神アーレス、何とも禍々しい守護神がいたものですね」
某国が守護神として秘蔵してきた兵器の実態は、目の当たりにしてみれば聞きしに勝る邪悪なオーラを放っている。
果たして、これまでに何人の命を奪い、また奪い続けるつもりなのだろうか。搭乗者さえ使い捨てにして殺戮を繰り広げるオブリビオンマシン『アーレス』は、まさに邪悪な闘神そのものであった。
「これ以上、犠牲を強いる訳にはいきません。必ず、此処で終わらせましょう」
誓いの宣言と共にノアは【竜騎換装】を発動し、乗機「ガンド」を近接強襲形態へと換装。攻撃の射程と引き換えに移動力を大幅に引き上げる。敵もまた近接格闘に特化した機体だと言うが、ここで肉薄することを恐れて勝機はない。
『新たな敵性機体を確認。
聖共和連邦製量産型キャバリアとデータが一致』
急速接近するノアの機体を捕捉したアーレスは、即座に【機神刻衝拳】を発動。貫手の構えを取ったその腕は、標準的なキャバリアの装甲を紙のように突き破る。けして防御面に特化している訳ではない「ガンド」では、当たりどころ次第では即大破もあり得るだろう。
「貴殿と言葉を交わすのはその機体を止めてからにします。いざ、尋常に――!」
しかしノアは臆さない。パイロット奪取を果たす為にも損傷覚悟で切り込んでいき、速度を活かした接近戦を挑む。
右手には汎用短機関銃《メルビレイ》、左手には試作対艦突撃槍《ノーチラス》。堅実さとロマンを組み合わせた装備編成だ。
『目標を破壊する』
重力波を帯びて繰り出されるアーレスの貫手。ノアは移動速度を落とさぬまま、少しだけ機体の姿勢を変えて躱す。
掠めた指先に肩部の装甲を抉り取られるが、戦闘継続に支障はない。お返しとばかりに短機関銃のトリガーを引き、零距離射撃を叩き込む。
「連邦竜騎兵の力を見せましょう」
『損傷軽微。攻撃を継続』
連射力と取り回しの良さが《メルビレイ》の長所だが、それだけでオブリビオンマシンを停止させることは難しい。
銃撃を浴びながらアーレスはお構いなしに蹴撃を放ち、体格差でガンドをダウンさせようとする。ノアは辛くもその軌道を見切り、体勢をやや崩しながらも直撃を避けた。
『破壊する』
アーレスは繰り返し同じ言葉を発しながら、今度は渾身の掌底を放つ。ダウンには至らなかったものの体勢が崩れたのを好機と判断したか。しかし歴戦の竜騎兵であるノアの経験と技術はマシンの想定を上回る。近接強襲形態の運動性と飛行ユニットの推力を利用し、潜り込むように必殺の一撃を躱す。
「――捉えた」
その直後、がら空きになった敵機の脇腹目掛けて《ノーチラス》の矛先が突き立てられる。貫徹力と破壊力に性能を特化した対艦突撃槍の一撃は、重力波で強化されたアーレスの装甲すら刺し貫き――先端部に仕込まれた炸薬が、敵機内部で炸裂した。
「パイロットを解放して貰います」
『――
……!!』
刺突と爆発、二つのダメージを同時に叩き込まれたアーレスの機体の一部が爆ぜ、装甲とパーツが辺りに散らばる。
無論、パイロットを傷付けないためにコクピット付近は狙っていない。まだ敵機が動きを止めぬとあらば、ノアは即座に追撃の体勢に入り、再び槍を突き立てるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ノエル・カンナビス
ふーむ。
主目的がパイロットの誘拐となりますと、手数は打てませんね。
細々と敵を削れば、それだけパイロットも消耗します。
しかし大きいのを叩き込むとパイロットが危険……。
スタンナーで超能力の供給を制限しますか。
パイロットを保護するために機体ではなくパイロットを殴る、
というのも酷い話ではありますが。
スタンナーであれば肉体ダメージを入れずに集中を削げます。
統合センサーシステムの超音波暗視装置にEバンク電力を投入。
高出力の麻痺超音波で意識を刈り取ってしまいましょ。
あとは両腕のビームブレイドx2を使って、
ダッシュ/見切り/操縦/武器受け/カウンターからの鎧無視攻撃/切断で、
首なり腕なり叩き斬りましょうかね。
「ふーむ。主目的がパイロットの誘拐となりますと、手数は打てませんね」
いかにして依頼内容に沿いつつ敵機を撃破するか、無表情のまま思案を巡らせるのはノエル。壊す前に死なせてしまってはいけないのが悩ましいポイントだ。通常の火器等で細々と敵を削れば、それだけパイロットも消耗してしまう。
「しかし大きいのを叩き込むとパイロットが危険……スタンナーで超能力の供給を制限しますか」
思案した結果彼女が至ったのは、敵機の動力源を断つ作戦だった。「エイストラ」に搭載された外部スピーカーは、出力を上げれば音響兵器としても使える。キャバリアを破壊するほどの威力はないが、兵士の戦意を削ぐ対人鎮圧装備としては有効な代物である。
「パイロットを保護するために機体ではなくパイロットを殴る、というのも酷い話ではありますが」
ケガはさせないので我慢してもらおうと、ノエルは統合センサーシステムの超音波暗視装置にエネルギーバンクの電力を投入。超過供給による一時的な出力上昇をもって【ソーノ・スタンナー】を発動する。暴力的なレベルに高められた超音波が、ヒトには聞き取れない周波数で戦場に響き渡った。
「ノンリーサル、鎮圧します」
『――異常な音波を感知』
この麻痺超音波は肉体ダメージを入れずにパイロットの集中を削ぎ、最終的に意識を刈り取る。たとえコックピットにいても完全には防げないほどの音圧だ。外部から「EP-L217」とやらの状態は分からないが、効果のほどは間接的に分かる――敵機『アーレス』の生成する重力波が、明らかに出力を落としたからだ。
『パイロット保護のため、コクピット内の音声を遮断する』
「もう遅いですよ」
アーレスも対策は講じてくるが、ノエルとしては期待通りの結果はすでに得られた。超能力は使い手のメンタルの影響を受けやすく、精神をかき乱されれば大幅に出力が落ちる。まだ意識が残っていたとしても、高圧超音波を浴びせられたEP-L217はもう十分な動力をマシンに供給できない。
「あとは適当に解体させてもらいましょうかね」
超音波を鳴り響かせたまま、ノエルは機体両腕部に内蔵された仕込み刀タイプのビームブレイドを起動。動きの鈍ったアーレスに白兵戦を仕掛けた。射撃戦を避けたのは前述の理由通り、パイロットにこれ以上の消耗を避けるためか。
『【機神刻衝拳】起動……』
本来格闘戦を得意とするアーレスだが、それは万全な出力を前提とした話。ユーベルコードの構えを取るまでの動作は見るからに鈍く、突き出された貫手に本来の威力はない。ノエルは巧みな操縦技術と見切りのセンスで攻撃を躱し、そのまま自機の間合いに踏み込んだ。
「出力不足なら、こんなものですね」
カウンターとして振るわれたビームブレイドが、貫手で突き出された左腕を斬る。切断には至らぬが、損傷は深い。
すでに右腕を失っているアーレスが、このうえ左腕まで壊されれば格闘戦能力の低下は避けられない。眉ひとつ動かさずに己の戦果を確認した傭兵の少女は、深追いせず次の一撃を見舞うチャンスを窺うのだった。
大成功
🔵🔵🔵
フェイルシア・インパーサ
二度とこのオブリビオンマシンによる犠牲者を出さないために……
その宿命、私達が解放して差し上げますわ!
ローズさん、貴女から託されたユーべルコードを使わせて頂きます。
『ゴデチアの花々よ、その華麗なる花弁の加護よ、皆を手助けして下さいませ』
どれほど正確な戦闘技術を身に着けたところで
受け止められなければ意味を為さないでしょう
戦場全体に広がる花吹雪、傘が無いのであれば打たれ続けるだけですわよ
視界を閉ざしたところで魔力の[残像]を放って[フェイント]を織り交ぜながらも着実に攻めていきましょう
残像を受け止めクローを突き出したのでれば好機
伸ばし切った腕に剣戟を振るい[部位破壊]を狙います
「二度とこのオブリビオンマシンによる犠牲者を出さないために……」
会敵した『アーレス』の禍々しい機体を睨みつけ、フェイルシアはそう呟く。このマシンが存在している限り、使い捨ての動力源として生まれ、外の世界を知らぬまま死んでいく、そんな哀れなパイロットが造られ続けることになる。
「その宿命、私達が解放して差し上げますわ!」
パイロットに声が届いているかどうかは分からないが、その発言は自身への決意表明でもあった。彼女は瞳に強い意志を宿し、宿縁の愛機たる「偽神ガミザーヌ」に乗って闘神と対峙する。奇しくも神と呼ばれるキャバリア同士、負けるつもりは微塵もない。
「【剛覇尾衛攻】起動。侵入者を排除する」
アーレスのスピーカーから無機質な機械音声が流れると、腰に接続されたテールアンカーが蛇のように持ち上がる。
自在に動くその尻尾と先端部のクローは、変幻自在にして強烈な攻撃を可能にする。さらに防御からのカウンターにも利用可能な攻防一体の装備だ。
「ローズさん、貴女から託されたユーべルコードを使わせて頂きます」
これに対してフェイルシアは【華やかに舞うゴデチアの加護】を発動。詠唱とともにゴデチアの花弁による花吹雪が吹き荒れ、戦場を埋め尽くしていく。傍目に見るだけならば美しいその光景は、敵対する者に死を招く嵐でもあった。
「ゴデチアの花々よ、その華麗なる花弁の加護よ、皆を手助けして下さいませ」
『未知のユーベルコードを確認。防御を優先……』
アーレスはテールアンカーを振るって花吹雪を払い散らそうとするが、いかんせん数が多すぎる。受け止めきれなかったゴデチアの花弁は、機体に触れるとダメージを与える。一見無害そうな一枚一枚に、尋常ではない量の魔力が込められていた。
「どれほど正確な戦闘技術を身に着けたところで、受け止められなければ意味を為さないでしょう。傘が無いのであれば打たれ続けるだけですわよ」
戦場全体に広がった花吹雪の中央で、にこやかに微笑むフェイルシア。その勢いは和らぐどころか増す一方で、敵にダメージを与え続けながら戦場を真っ赤に染めていく。このユーベルコードは単なる攻撃手段ではなく、目眩ましとしての用途もあった。
「ガミザーヌ、私達も参りましょう」
花吹雪が敵の視界を閉ざしたところで、フェイルシアは愛機を駆りて接近戦を挑む。偽神が携えしは乗り手の愛剣を模した長剣「ルーンキャバリア」。魔力を行使しやすいようにルーンが刻まれた武器で、切れ味のほうも申し分ない。
『敵機接近……』
魔力の残像を放ってフェイントを織り交ぜると、視界を制限されたアーレスは反射的に反応してしまう。残像を受け止めクローを突き出す、その瞬間こそが好機。花吹雪に紛れて近付いた偽神が、伸ばしきった尾に剣戟を振るう――。
「貰いましたわ!」
『――!!』
ルーンの輝きを帯びた斬撃は見事テールアンカーを破損させ、折れたクローの一片が地面に散らばる。痛みを知らぬはずの機神にも、動揺した反応が見て取れる。それは機械故に理解しているのだろう、自身の劣勢と敗北の可能性を。
大成功
🔵🔵🔵
ヒビキ・ノッカンドゥ
どうもお嬢さん。人攫いだよ
単独で戦略規模の戦力をどうにか出来るとは思わない
UCによる大量の射撃投射で防御を飽和させる狙い
損傷が与えられるなら尚良し。【リミッター解除】【全力魔法】により霊力を使用限界より引き上げて砲へ出力。流星雨のような糸状のビームを殺到させる
1手で終わってあげるほどお人好しじゃない
【早業】で砲から剣へ切り替え【見切り】と【推力移動】で肉薄。【鎧無視攻撃】で関節部を狙って攻撃
【オーラ防御】で肉薄の間は可能な限りやり過ごす
せっかくのリスクだ。腕や足の一本くらいは欲しいものだね
勝手に剣を使うとウチの「もう一人」がうるさいし
貴方は天秤の支援者でもあるけど、少しその天秤、揺らせて貰うよ
「どうもお嬢さん。人攫いだよ」
禍々しき闘神の中にいるはずの少女に向けて、ヒビキはおどけるような調子で声をかける。聞こえていればいいなと期待を込めつつ、もし聞こえずともやることは変わらない。ここでオブリビオンマシンの部品として死ぬ定めを、変えてやるのが彼女の仕事だ。
『パイロットの喪失は当機の稼働における深刻な障害。不穏因子は排除する』
無論『アーレス』は全力をもって侵入者を抹殺しようとする。更新された脅威度に応じて出力が上昇し、重力の波動が戦場に烈風を巻き起こす。人道や倫理を無視した兵器とはいえ、それが一国の守護神と謳われるほどの力を持っているのは事実だ。
(単独で戦略規模の戦力をどうにか出来るとは思わない)
幸いここには他にも猟兵仲間がいるのだからと、ヒビキは敵機の戦力を少しでも削ぎ落とすことに注力する。多目的ビーム砲「Howling at the Moon」を【形態・繊月】の広域制圧モードに切り替え、リミッター解除により霊力を使用限界より引き上げて出力。青き光を溜めた砲口から、流星雨のような糸状のビームが解き放たれた。
「【剛覇尾衛攻】起動……」
アーレスはテールアンカー先端部のクローを用いてビームを受け止めるが、激闘により尾部の破損も蓄積しており、本来のしなやかな動きが損なわれている。なにより大量に拡散、屈折して殺到する全てを防ぎきるのは不可能だった。一発あたりのダメージは決して高くはないが、受け損なったビームは着実に損傷を与えていく。
「1手で終わってあげるほどお人好しじゃない」
繊月の掃射を終えたヒビキは手慣れた早業で砲から剣に装備を切り替え、「鸕鶿草」の推進力で敵機に急接近する。
狙いは装甲の隙間にあたる関節部。砲撃だけが彼女の得手ではないことを示すように、精妙な斬撃が繰り出された。
『敵機の白兵戦パターンを予測。対応行動を実行』
しかし近接距離での戦闘はアーレスの得意分野でもある。万全でない機体ながらクローで斬撃の"芯"を外して受け、テールアンカーでのカウンターを仕掛けてくる。やはり一筋縄ではいかないかと、ヒビキはオーラを全開にして防御膜を張り、直撃を逸らした。
「せっかくのリスクだ。腕や足の一本くらいは欲しいものだね。勝手に剣を使うとウチの『もう一人』がうるさいし」
このあと別人格のほうに何を言われるか想像しつつ、ヒビキは現在の戦闘に集中する。反撃のために尾が伸び切った瞬間なら、ガードの体勢が一時的に崩れる――そこを狙って彼女はもう一度、推力と魔力を乗せた斬撃を叩き込んだ。
「貴方は天秤の支援者でもあるけど、少しその天秤、揺らせて貰うよ」
『……!! 左脚部破損、修復困難……!』
今度こそ標的を捉えたその一撃は、損傷の大きかったアーレスの左脚の、膝関節から先をばっさりと斬り落とした。
敵の得意距離で、確かな戦果をあげてみせたヒビキは笑みを浮かべて、片足をなくしたマシンが崩れ落ちるさまを見下ろすのだった。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
此奴がアーレスか
「ご主人サマが偵察に行ったアーレス大陸の神様だね☆マーズ君の別名でもあるんだぞ☆」
あー…神話としての起源が被ってるって奴か
ま、ぶちのめすのは変わらねー
【情報収集・視力・戦闘知識】
アーレスの動きや重力波の攻撃範囲と動きを可能な限り捕捉
…重力ってのはそれだけで厄介だな
「ヘカテちゃんみたいだねー☆」
だが手がねー訳じゃねー
【属性攻撃・迷彩】
光水属性を機体に付与
光学迷彩で存在を隠し水の障壁で熱源隠蔽
【空中戦・念動力・弾幕】
UC発動
超絶速度で飛び回りながら念動光弾を叩き込み動きを妨害
【二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み】
鎌剣で切り刻み同時にパーツを容赦なく強奪!
中々珍しそうだから貰ってくぞ!!
「此奴がアーレスか」
「ご主人サマが偵察に行ったアーレス大陸の神様だね☆ マーズ君の別名でもあるんだぞ☆」
某国が秘蔵する最強兵器こと、オブリビオンマシン『アーレス』と対峙したカシム。メルクリウスのコクピットからメルシーが語るところによれば、この地方を含めて、かの戦神の名は様々な地域で神話と共に伝えられているようだ。
「あー……神話としての起源が被ってるって奴か。ま、ぶちのめすのは変わらねー」
由来がどうあれ――それこそ、こいつが本物の神様だとしてもカシムのやる事は同じだ。女の子の命を犠牲にして動く兵器など、この世に残しておく理由がない。こうしている間もパイロットの「EP-L217」は消耗しているのだから。
『損傷率50%を突破。最大警戒レベルで危険因子を抹消する』
ここまでの激戦で大きなダメージを負ったアーレスは、左手にエネルギーを収束させ【戦哮重獄波】を放つ。収束や拡散等、多様に性質を変える重力波による攻撃は、本機が持つ特殊機能にして最大の武器だ。回避困難なだけでなく、威力も量産型キャバリアを圧潰させるくらいは容易い。
「……重力ってのはそれだけで厄介だな」
「ヘカテちゃんみたいだねー☆」
カシムはメルクリウスを後退させ、敵機の動きや重力波の攻撃範囲を可能な限り捕捉するよう努める。なまじ身内に同種の力を使う者がいるぶん、その脅威は理解しているつもりだ。万物を制圧する不可視の力を潜り抜け、敵に攻撃を届かせるとなるとさらに難しい。
「だが手がねー訳じゃねー」
頼りとするのは、ここまでの道中使ったのと同じ魔法。光学迷彩で機体の存在を隠し、水の障壁で熱源を隠蔽する。
アーレスのセンサーはあのドローン共より高性能だろうか? だとしても簡単には見つからない自信がある。それは魔術盗賊として身に付けた研鑽の成果だ。
『目標をロスト……センサーに反応なし……』
アーレスもあらゆる感知機能を使って消えた標的の所在を探るが、そのために重力波の制御に乱れが生じる。これを見逃さなかったカシムは【神速戦闘機構『速足で駆ける者』】を発動。神機の足と背に装着された高機動ウィング『タラリア』を展開し、超高速の三次元機動を開始する。
「加速装置起動……メルクリウス……お前の力を見せてみろ……!」
俊足の伝令神の名を冠した機神は、カシムを乗せて超絶速度で飛び回りながら念動光弾を放つ。重力波の隙を狙って叩き込まれたそれは見事にアーレスを捉えた。ダメージはそれほど大きくはないが、妨害と牽制の用途としては十分。
『不可視の高速飛翔体……観測、困難……』
光弾が飛んでくる方角は見えても、高速移動するメルクリウスの所在はそれだけでは捉えられない。機械音声に動揺が混じりだした時、カシムはさらに機体の速度を上げて敵機に急接近し、鎌剣『ハルペー』による機動攻撃を放った。
「中々珍しそうだから貰ってくぞ!!」
神機の振るった鎌は疾風の如く敵機を切り刻み、剥がれ落ちたパーツは容赦なく強奪されていく。この手癖の悪さは流石盗賊と言うべきだろうか――カシムの行動を咎められる輩はここにはいない。パーツを失ったアーレスの損傷度はいよいよ危険な領域に到達していた。
大成功
🔵🔵🔵
バーン・マーディ
(対峙する機神)
成る程…アーレス…マーズよ
それは貴様の別名であったな?
「その通りですバーン殿。アーレスとは戦場の狂気の具現…自分で言うのもなんですが…荒神と言えるでしょう。」
そうか…ならば…その蹂躙に反逆せん
マーズよ…貴様の反逆を示せ
「然りぃ!」
【戦闘知識】
アーレスの重力波の性質と威力や範囲も把握
「まるでヘカテイアのようですな!」
【切り込み・怪力・オーラ防御・鎧無視攻撃・鎧破壊・二回攻撃】
UC発動
破壊のオーラを纏い重力波に拮抗しながら突撃!
軍神の剣を以ての連続斬撃を叩き込み正面からの力比べ
マーズよ今こそ我等の叛逆を示す時よ!
破壊のオーラを侵食させ崩壊へと導く!!
「成る程……アーレス……マーズよ。それは貴様の別名であったな?」
「その通りですバーン殿。アーレスとは戦場の狂気の具現……自分で言うのもなんですが……荒神と言えるでしょう」
悪の正義を貫く闇黒騎士、バーン・マーディ(ヴィランのリバースクルセイダー・f16517)の問いかけに、破城神機『マーズ』が答える。今、彼らの目前に立ちはだかるオブリビオンマシン『アーレス』は、まさに戦場に災禍をもたらす荒神そのものであった。
「そうか……ならば……その蹂躙に反逆せん。
マーズよ……貴様の反逆を示せ」
「然りぃ!」
主人の命に応えて機神が咆哮する。その機体より発せられるパワーは、こちらも破壊の力を司る神に相応しいもの。
数奇な巡り合わせによって相対した二柱の戦神。そこに起こる必然は闘争であり、最後に立っているのは一方のみ。これは、まことの戦神の名を賭けた戦いである。
『データにないキャバリアを認識……脅威レベル、未知数』
アーレスもまた眼前の機体に最大級の警戒をもって【戦哮重獄波】を発動し、膨大な重力波エネルギーを拡散する。
かつては
神聖騎士、現在は
闇黒騎士として様々な異能力者と戦ってきたバーンは、その知識と経験を元に重力波の性質・威力・範囲を把握し、適切な間合いを取る。
「まるでヘカテイアのようですな!」
マーズの僚機にも重力を操る神機はいるらしい。故にその力の強大さは分かるが、戦神たるもの恐れてはいけない。
叛逆を示せと命じられた通り、かの機神は【城壁の破壊者】を発動。破壊のオーラを身に纏い、重力波と拮抗しながらもう一体の戦神の元へと突撃していった。
「マーズよ今こそ我等の叛逆を示す時よ!」
「はッ!!」
肉薄したバーンとマーズは、正面からの力比べをアーレスに挑む。軍神の剣をもって叩き込まれる連続攻撃は鋭く、重く、エネルギーを纏わせることでさらに破壊力を増す。ただのマシンには生み出せない、熱い意志の宿った攻撃だ。冷たい鋼の装甲で防げるようなものではない。
『未知のエネルギー反応を観測……!』
このようなキャバリアとの交戦経験は、おそらくアーレスも無かったに違いない。されどこの間合いは本機の領域。
得手の格闘にて立ち回り、軍神の剣とも互角に撃ち合う――が、ここまでの戦闘で負ったダメージの差が響いたか。猛攻に押されて体勢を崩したところに、捌ききれなかった斬撃が胴体へ突き刺さる。
「今ここに叛逆の刃を突き立てん!!」
荒ぶる闘志に満ちたバーンの咆哮と共に、マーズは剣を通じて破壊のオーラをアーレスに侵食させ、崩壊へと導く。
黒き装甲が分解され、パーツが剥がれ落ち、フレームが砕けてゆく。機神対決の軍配がどちらに上がったかはもはや明白であろう。崩壊する鋼と機械が奏でる音色は、まるで滅びゆく神の悲鳴のようだった――。
大成功
🔵🔵🔵
エリュファシオン・アルティウス
今助ける!オーさん!
『オォォー!』
オーさんは調停龍パラダイム・パラドックスに変身する
攻撃しろ、パラダイム・パラドックス!
敵がUCを発動して重力波を放って来たのでパラダイム・パラドックスは反重力属性ブレス攻撃を放ち素早く相殺した
ラウール、いや…THE・ANOTHER・ONE!
UC無限逆行神皇・THE・ANOTHER・ONEを発動して敵に真言を放ち攻撃
?!この光は…!
私が持っていた神剣が輝きアナザーワンも光を放つ
あの子を助けるんだ!
『放て…無限逆行奥義を』
アナザーワンの声が聞こえその声に従う様に指定UCを発動した
これで終わりだ!無限逆行奥義!
敵は回避しようとしたが何故か回避しても袈裟斬りが炸裂した
「今助ける! オーさん!」
『オォォー!』
邪悪なオブリビオンマシンから少女を救い出すために、いざ『アーレス』へ挑むエリュファシオン。彼女の相棒であるオオサンショウウオ型バイクの「オーさん」が、勇ましい咆哮とともに巨大なドラゴン――「調停龍パラダイム・パラドックス」に変身を遂げた。
『損傷率65%……戦闘継続困難。緊急事態につき出力制限を解除』
一方、追い詰められたアーレス側も全力をもって猟兵達を排除すべく、パイロットに負担をかけながら出力を増す。
人造超能力者のパワーを出力にした重力波生成機構による、【戦哮重獄波】の波動がエリュファシオン達を襲った。
「攻撃しろ、パラダイム・パラドックス!」
エリュファシオンが指示を飛ばすと、調停龍は口から反重力のブレスを吐き、アーレスの重力波を素早く相殺する。
この間に彼女は今一度怪盗王ラウールを召喚。潜入活動中も役に立ってくれたが、かの王の本気は対オブリビオンマシン戦でも発揮される。
「ラウール、いや……THE・ANOTHER・ONE!」
発動するのは【無限逆行神皇・THE・ANOTHER・ONE】。真の姿であるアナザーワンと化したラウールが、物理法則を超越した真言を放つ。この力は重力波はもちろんのこと、既存の法則下における汎ゆる防御手段を貫通し、アーレスにダメージを与えた。
『未知の攻撃を確認……対抗マニュアルなし……』
立て続けに発生する未知の事象に、アーレスの対応能力は追いついていなかった。だがここで、誰にとっても未知の現象が起こった。エリュファシオンの持っていた神剣「THE・ANOTHER・ONE」が輝き、それと呼応するかのようにアナザーワンも光を放ちだしたのだ。
「?! この光は……!」
何がトリガーになったのかは分からない。しかし、これは恐らく進化の証。無限逆行神皇とエリュファシオンの力が共鳴して、新たなユーベルコードが完成しようとしている。その異能は、果たしてなんのために生まれ出る力なのか。
「あの子を助けるんだ!」
『放て……無限逆行奥義を』
確固たる決意をもって叫ぶと、頭の中にアナザーワンの声が聞こえ、その声に従う様にエリュファシオンは新たなるユーベルコード――【無限逆行奥義・ANOTHER・BREAKER】を発動した。衝き動かされるように体が自然に動き、神剣を構えて敵に斬りかかる。
「これで終わりだ! 無限逆行奥義!」
『新たなエネルギー反応。緊急回――
……!!』
アーレスは回避行動を取ったが、避けたはずの袈裟斬りが何故か突き刺さる。このユーベルコードは過程を無視し、ダメージを与えたという結果だけを残すのだ。まさしく必中不可避の一撃を受けたオブリビオンマシンの機体からは、パーツの破片が血飛沫のように散らばり、いよいよ満身創痍の様相を呈するのだった。
大成功
🔵🔵🔵
安野・穣
(アドリブ連携歓迎)
うるせえよ。俺が聞きてえのは
機体じゃなくてその内の声だ。
乗り手が何思おうとてめえで勝手に動く、
生命が供給されるならそれでいい、なんて
…ああ、交信が禁じられているのかする意志がねえのかは知らねえけれど!
語りかけねえ、聞こうともしねえのは…そこに人はいないと認めてるみたいで嫌なんだよ!
『カサンドラ』!重力波を生成するのは機体の機能でパイロット自身の能力ではないなら、
生成機構を壊せば攻撃を封じると共にパイロットの生命力の使い先をひとつ潰せるはずだ!
『ジェード』『アズライト』展開…時間はかけられないが、
<瞬間思考力>で機構を把握し『ポイボス』で穿ってみせる…!
『損傷率70%突破。緊急リカバリー手段を実行……』
「うるせえよ。俺が聞きてえのは
機体じゃなくてその内の声だ」
無機質な機械音声を垂れ流す『アーレス』に、険しい視線と声を向けるのは穣。自律行動で戦っているとはいえ、あれは無人兵器ではなく、パイロットを乗せた有人兵器。だのに完全に乗り手の意志を蔑ろにしている事実に腹が立つ。
「乗り手が何思おうとてめえで勝手に動く、生命動力が供給されるならそれでいい、なんて……ああ、交信が禁じられているのかする意志がねえのかは知らねえけれど! 語りかけねえ、聞こうともしねえのは……そこに人はいないと認めてるみたいで嫌なんだよ!」
生まれや境遇がどうあっても、そこにいるのは確かに"人"だ。それを無視して戦う気はないし、これ以上無視させるつもりもない。訴えても聞き入れて貰えない苦しさを知っているからこそ、この点に関して彼は人一倍敏感であった。
『【戦哮重獄波】起動。最大出力で敵性因子を破壊する』
いまだパイロットの声は聞けぬまま、アーレスはユーベルコードによる重力波を生成。収束も拡散も自在な禍々しき力をもって、侵入者の完全排除を目論む。対する穣は乗機の名を叫び、こちらも出力全開にて迎え撃つ構えを取った。
「『カサンドラ』!」
かつて絶望の底にいた彼の前に現れたそのキャバリアは、搭乗者との相乗効果で大規模な超能力行使を可能にする。
この点においてはアーレスと類似した、それ故に比肩する能力を持っていると言えるだろう。翼のように展開されたスラスターで重力波を躱し、反撃の為のエネルギーをチャージしていく。
(重力波を生成するのは機体の機能でパイロット自身の能力ではないなら、生成機構を壊せば攻撃を封じると共にパイロットの生命力の使い先をひとつ潰せるはずだ!)
そのために穣は「ジェード」と「アズライト」を展開し、ESP能力で構築したネットワークを戦場全域に広げる。型式も異なるオブリビオンマシンすら、彼の頭脳ならば解析可能だ。もっとも警戒すべき敵機の特殊機能――それ故に、エネルギーの消費率も最大であろう機能に狙いを絞る。
「時間はかけられないが、穿ってみせる……!」
必ずやり遂げるという覚悟のもとで研ぎ澄まされた穣の瞬間思考力は、またたく間にアーレスの全機能を把握した。
重力波生成を司る機構はコックピットのすぐ近くにある。もし狙いを外せばパイロットにも危険が及ぶ恐れがある。だが――外すつもりは毛頭ない。
「狙った箇所を確実に。別にそんな動いて暴れ回る必要はない」
レーザーライフル「ポイボス」を構え、【霹靂】発動。遠隔透視能力により見透かした装甲の向こう、穿つべき対象を正確に捕捉して穿つ。これぞESPとキャバリアの性能を合わせた超精密狙撃――長剣の如き砲身より放たれた閃光が、過たずオブリビオンマシンを捉えた。
『……重力波生成機構、破損
……!!』
アーレスの発した機械音声は、そこが正しく狙い通りの機関であったことを語っていた。穣はすぐさま砲身の冷却、並びに第二射の発射体制に入る。なぜなら彼には視えたからだ。透視したマシンの中にいるパイロットの姿を。機械に高速されるようにしてコックピットに座らされた、うつろな目をした少女の姿を。
大成功
🔵🔵🔵
『……あなたたちは、どうして』
それはテレパスの一種だろうか。機械音声とは異なる少女の声が『アーレス』の中から響く。
自分を助け出そうとする者達。自分の知らないヒト達の声は、コックピットの彼女に届いていた。
その理由は、彼女にはわからない。だけど、不思議とあたたかいものを感じていた――。
朱鷺透・小枝子
迅速に、完膚なきまでに、
ディスポーザブル02操縦、アーレスへと吶喊!
【空中機動】躯体に生やした灼熱光剣の推力で、テールアンカーの直撃を躱しながら【早業】『禍集・無量呪躯』を発動
もう誰も殺せぬように!こいつを!!
乗機02を取り込み、その狂気を【闘争心】でねじ伏せ、既に取り込んでいた分と合わせ禍集壊腕展開。
【追撃】のクローをサイキックシールドで【オーラ防御】
即座に複腕の【怪力】でクローを挟みこみ固定
【念動力】劫火の霊障をクローからアンカーテールへ伝わらせ【焼却】
溶かし、千切り取る!!
壊し尽くせぇええええ
!!!!!
【継戦能力】02の重力制御能力で自身に掛かる敵の重力波を打ち消し、灼熱光剣で【推力移動】
【肉体改造】破壊したテールアンカーを自身の禍集壊腕に取り込み、腕を更に硬く、剛く、強くして、アーレスの放つ貫手に、その拳を叩きつける!
ぉおおおおおおおおお!!!
殴り抜けたなら追撃
アーレスの
中の精神以外、
肉体を破壊する損壊灼熱弾の【弾幕】で壊し、修復できぬよう己に取り込む。
「ディスポーザブル02、全速前進!」
その二つを本作戦の重要事項として心に刻み、小枝子は異形の多腕キャバリアを操縦して『アーレス』に吶喊する。
パイロットの力と生命を絞り取り、戦場に破壊と殺戮をもたらすオブリビオンマシン。忌まわしき怨敵を目の当たりにした彼女の心は、怒りと闘志で燃え上がる。
『損傷率75%。これ以上の損傷は、許容されない』
新たなる脅威の接近を認識したアーレスは、火花がスパークする機体を自律稼働で強引に駆動させ、テールアンカーを蛇のように伸ばす。ひと突きで並の量産型キャバリアを破壊せしめる威力を秘めた【剛覇尾衛攻】が、最後の悪足掻きとばかりに牙を剥いた。
「迅速に、完膚なきまでに、」
脳内の器官と興奮剤注入により、心は苛烈なる狂戦士に、精神は冷徹なる兵士と化した小枝子は、躯体各部より無秩序に生える「
灼熱光剣」の出力をブースターに利用し、異次元の空中機動でテールアンカーの直撃を躱す。そして敵機との近接距離に迫ると、烈火の咆哮と共に【禍集・無量呪躯】を発動させた。
「もう誰も殺せぬように! こいつを!!」
それは異様なる光景。パイロットが乗機を操るのではなく、乗機そのものを取り込み、融合・合体・変形していく。
ディスポーザブル02とは単機ではなく群体のオブリビオンマシンの総称を指す。すでに彼女は何体もの同型機を体内に取り込み、その力を我が物にしていた。
『異常な集束エネルギー反応を検知』
異変を察知したアーレスの目前で、小枝子の姿が変わっていく。肌は鋼鉄の如き黒褐色に、額には第三の眼が開き、圧縮したオブリビオンマシンの狂気を闘争心でねじ伏せ、4本の「禍集壊腕」を展開する。その姿は三眼六臂の破壊神、阿修羅を連想させるものだった。
『脅威レベル未知数。至急、排除を――……!』
"それ"が動きだす前に追撃を試みるアーレスだが、突き出したクローは透明な「サイキックシールド」に阻まれる。
一体どれだけのマシンを喰って己を強化してきたのか。恩讐が生み出す超能力は『EP-L217』の出力とも遜色なく。そのまま小枝子は複腕の怪力でクローを挟みこむと、劫火の霊障「
禍集焔業」を送り込んだ。
「壊し尽くせぇええええ
!!!!!」
クローから伝わった霊障の熱は、すでに破損著しかったアーレスのアンカーテールを溶かし、千切り取る。小枝子はそれすらも自身の禍集壊腕に取り込むことで、腕を更に硬く、剛く、強くする。悪霊である彼女とオブリビオンマシンとの間に、もはや境界などひどく曖昧なものだ。
『危険、危険、危険
……!!』
防衛本能の如くアーレスが発する重力波は、ディスポーザブル02にも搭載されていた重力制御能力で打ち消される。
少女は、あるいは少女であったものは、躯体と共に取り込んだ灼熱光剣のエネルギーを全て推進力に転換して接近。超至近距離より敵機が放った貫手に、己が壊腕を叩きつけ――そして、殴り抜ける。
「ぉおおおおおおおおお!!!」
もはや小枝子は言葉を発さず、ヒトの形をした破壊の権化として、敵機を徹底的に破壊する。撃ち込まれる「損壊灼熱弾」の弾幕で破壊されたオブリビオンマシンの機体は、彼女に取り込まれ二度と修復はできない。唯一それを免れるのは、彼女が敵と認識しなかったもの――アーレスの
中にいる精神だけだった。
『損傷率80……90……ひゃ……』
文字通り完膚なきまでに破壊された『アーレス』は、ノイズ混じりの機械音声と共に機能を停止する。
闘争と破壊の神として畏れられ、数多の生命を奪ってきたオブリビオンマシンが、ここに敗れ去ったのだった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 冒険
『崩壊する施設から脱出せよ』
|
POW : 散乱する障害物を破壊して進路を拓く
SPD : 崩壊が進む前に全速力で出口を目指す
WIZ : 比較的安全な脱出ルートを探り出す
|
猟兵達との激戦の末、完全破壊されたオブリビオンマシン『アーレス』。
そのコクピットブロックのハッチが開き、中から1人の少女が姿を現す。
「……あなたたちは だれ?」
白く、か細く、脆い印象を受けるその少女こそが、アーレスのパイロット「EP-L217」だ。
生まれつき遺伝子操作を施され、戦神の生贄になることを宿命付けられたアンサーヒューマンの超能力者。
彼女は、自分がおかれた現在の状況を、まだ認識できていないようだ。
「この『あーれす』を こわしにきた なら。わたしも こわすの?」
物心つく前からパイロットとしての教育を受け、外界の事物を知らないEP-L217は、無垢な子供のようなものだ。
自分の命の価値さえ教えてもらえなかったから、生死に対する恐れもない。
ただ、これまで会ってきたわずかな基地の人間達と、ここにいる人達は違う。それは感じているようだった。
『――……警告。警告。本基地の自爆プログラムが起動されました』
だが、その問いに猟兵達が答える前に、けたたましい警報が基地内に鳴り響く。
戦闘による被害の影響か、最重要機密たる『アーレス』が破壊されれば自動的にそうなるよう仕組まれていたのか。
ゴゴゴゴゴと地鳴りのような音を立てて、基地全体が崩壊を始めている。
「……ここはもう 30ふんごに ばくはつする。はやく にげたほうがいい」
少女は基地のある方角を指差す。脱出口はそちらという事だろうか。
しかし彼女自身はコックピットの中から動こうとはしない。「逃げろ」という命令が出ていない以上、その小さな箱の中が彼女のいるべき世界だから。
猟兵達に出された依頼はパイロットの
誘拐。
自発的に逃げる気がないなら連れ出し、再び警備の目をかい潜って、崩壊する基地から脱出しなくてはならない。
往路と比べて難易度は格段に上がったが、オブリビオンマシンという最大の脅威は排除したのだ。無理ではない。
ここからが、ミッションの最終段階。
戦神と共に墓標と化そうとしている軍事基地で、猟兵達は脱出のための行動を開始する――。
ガイ・レックウ
【SPD】で判定
アドリブ可、連携可
『悪いな…拐いに来たぜ、お嬢ちゃん!』
アーレスのコクピットにとびこみ、パイロットを抱きかかえ、脱出。【オーラ防御】でパイロットの少女と自分を防護するぜ。
ドローンを【ハッキング】しつつ、ユーベルコードを発動【特式脳波コントロールシステム】により機動戦艦『天龍・改』から支援砲撃することで脱出路を切り開くぜ
『君は今日ここで自由になる…自分の意味を探していくことだ!』
「悪いな……拐いに来たぜ、お嬢ちゃん!」
脱出のタイムリミットが迫る中、ガイの行動は問答無用だった。破壊されたアーレスのコックピットに飛び込むと、ぽつんと座ったきりの少女を抱きかかえる。EP-L217自身に逃げるつもりがないのなら、力ずくでも連れ出すまでだ。
「なぜ?」
「今は分からなくても、すぐに分かるさ」
快男児という言葉が似合う笑みをにっと浮かべ、少女の疑問に答えるガイ。彼は自身と少女の周りにオーラで防護膜を張ると、コックピットから駆けだした。この基地はもう長くは保たない――完全に崩壊する前に、脱出しなければ。
「まだドローンは動いてるのか……仕事熱心だな!」
往路でも障害となった探索用ドローンは、無人機であるがゆえに基地の崩壊中も平常稼働中のようだ。今見つかれば厄介な事になると判断したガイは、持ち前のハッキング技術でドローンの索敵を誤魔化しつつ進む。さらに、上空で待機させていた機動戦艦『天龍・改』の存在がここで活きた。
「システム起動! 遠隔操作……開始!!」
キャバリアを介した【特式脳波コントロールシステム】によって戦艦を遠隔操作し、支援砲撃を実施。天より降り注ぐ砲弾が倒壊した瓦礫や障害物を吹き飛ばし、脱出路を切り開く。こんな状況下では隠密を徹底するよりも強引に突き進んだほうが良いだろう。
「少し揺れるぞ、しっかり掴まってな!」
少女とはいえ人間一人を抱えているのに、ガイはそれを重荷に感じるふうもなく、軽快な動きで脱出路を疾駆する。
上から降ってくる瓦礫もオーラで防ぐか回避しており、EP-L217には傷一つ付けないよう細心の注意を払っていた。
「どうして わたしを つれていくの?」
マシンの破壊及び基地からの脱出が任務であるなら、自分はただの足手まといでしかないはず。EP-L217もそれは自覚しており、無表情ながら困惑しているように見える。キャバリアのパーツに過ぎなかった自分を、なぜ助けるのか。
「君は今日ここで自由になる……自分の意味を探していくことだ!」
まだ自分という存在の価値を知らない少女に、ガイはそう語った。なぜ多くの猟兵が彼女を拐うためにここに来たのか、その理由はこれから彼女自身が学んでいけばいい。ここを脱出さえすれば、知るための時間は沢山あるのだから。
「………」
EP-L217はガイの告げた言葉の意味を無言で考えているようだ。視線を彷徨わせながら、着物の袖をぎゅっと掴む。
機神の座という名の檻から連れ出され、少女の生きてきた世界は崩壊した。その先には彼女が想像もつかない、無限の世界が広がっている――。
大成功
🔵🔵🔵
ノエル・カンナビス
EP-L217。
機体喪失および基地放棄により、指揮系統が変更されました。
あなた自身も放棄されており、現在あなたの指揮権保有者はあなた自身のみです。
また、この地の実効支配者は我々ですので、当面あなたは我々の管理下となります。
よろしいですか?
解りやすく言えば、いーから付いて来なさい。
さて。
標的は誰ぞが運んでくれるでしょう。
もはや「警備をかい潜」る必要もありませんし、火力を制限する意味もありません。
全速で先行し、脅威は全て粉砕して、脱出路を拓きます。
せっかくのパーティです。派手にやりましょうか。
「EP-L217。機体喪失および基地放棄により、指揮系統が変更されました。あなた自身も放棄されており、現在あなたの指揮権保有者はあなた自身のみです」
道具として育てられた子供にはこう言ったほうが通りが良いだろうと、ノエルは事務的な命令口調でEP-L217に告げる。指揮系統の変更というのはもちろんでっち上げだが、基地自体が崩れ始めている現状で、その真偽を確認するすべはない。
「また、この地の実効支配者は我々ですので、当面あなたは我々の管理下となります。よろしいですか?」
「……りかい した」
もともと反抗心というものを育まれていなかったEP-L217に異論はない。アーレスも破壊された今、目の前にいるのが新しい管理者だと言うなら従うだけ。ヒトとしてはやや不安になる従順さだが、今はとにかく時間が惜しい状況なので、話が早いほうが助かる。
「解りやすく言えば、いーから付いて来なさい」
「……りょうかい」
一気に砕けた調子になった指示に従って、EP-L217は基地からの脱出に同意した。それを確認するとノエルは彼女の身柄を他の猟兵に任せ、自身は「エイストラ」に乗って先行する。崩壊の進む基地ではアラートが鳴り止まず、警備網も平常には機能していない。
(標的は誰ぞが運んでくれるでしょう。もはや「警備をかい潜」る必要もありませんし、火力を制限する意味もありません)
ここからは全速で突破し、脅威は全て粉砕して、脱出路を拓く。往路の静寂から一転して騒がしくなったが、考えるべき事はシンプルになった。アーレス戦で消耗したものの弾薬やエネルギーもまだ残っており、道中で尽きる心配をするほどではない。
「せっかくのパーティです。派手にやりましょうか」
ノエルは淡々とそう言いながら全武装の制限を解除し、立ち塞がる瓦礫や障害物、探索ドローンや警備キャバリア等を片っ端から破壊していく。肩部に取り付けられたプラズマキャノンとミサイルポッドが唸りを上げ、プラズマライフルが閃光を放ち、ビームブレイドが道を切り開く。どんな脅威も彼女の足を一瞬たりとて止めることはできない。
「H・S・F、ラディエイション」
大きな瓦礫や隔壁が道を塞いでいる時は、【ハーデンド・ショックフロント】を発動。全方位に超音速で放射される高硬度衝撃波が、周囲の障害を吹き飛ばす。本来は砲弾やミサイルなどを弾き飛ばすための近接防御兵装だが、攻撃に使用しても高威力を誇る代物だ。
「ざっとこんな所でしょう」
ノエルが先行して豪快に立ち回れば、誘拐対象を連れた後続の味方はそれだけ楽をできる。護衛よりもこうした役柄のほうが性に合っているのか、彼女は快調にキャバリアを疾走させる。最大戦力であるアーレスを喪失した今、これを止められる戦力は基地に残されていなかった――。
大成功
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エリー・マイヤー
ごきげんよう、名も知らぬパイロットさん。
生体パーツ輸送の依頼を受けてまいりました、輸送業者のエリーです。
これからアナタを輸送しますので、なるべく抵抗しないようお願いします。
あ、他に運んで欲しいものがあれば、ついでに運びますよ?
とか適当な事を言いつつ【念動レビテーション】で引力を相殺。
崩落を抑えつつ、瓦礫の落下による殺傷力を低減します。
そして輸送対象と自身を念動力で加速して移動開始。
速やかに基地を離脱しましょう。
そういえば、道中のドローンとかキャバリアが残ってましたか。
まぁ、地上用の無人機なら無重力下ではマトモに動けないはずです。
飛び道具だけ念動力で防ぎつつ、無視して進みましょう。
「ごきげんよう、名も知らぬパイロットさん。生体パーツ輸送の依頼を受けてまいりました、輸送業者のエリーです」
オブリビオンマシンの中にいた無垢な少女に、エリーは丁寧で事務的な態度で語りかける。人間的な扱いを受けてこなかった「EP-L217」には、こう言ったほうが理解されやすいと判断してのことか。現状は説得にあまり時間をかけていられないのも事実だ。
「これからアナタを輸送しますので、なるべく抵抗しないようお願いします。あ、他に運んで欲しいものがあれば、ついでに運びますよ?」
「……なにも ない」
少女に私物と呼べるものはなく、せいぜい着ているパイロットスーツくらいだろう。自発的に逃げる素振りを見せないが、強引に連れ出されれば大して抵抗することもない。話が早くて助かりますと、エリーは煙草の紫煙を揺らした。
「では無重力体験ツアーへご案内です」
などと適当な事を言いつつ、エリーは【念動レビテーション】で引力を相殺。周囲に無重力空間を作り上げることで基地の崩落を抑えつつ、瓦礫の落下による殺傷力を低減する。帰路の安全をある程度確保しつつ、こちらの移動速度も上げられる便利なユーベルコードだ。
「重力の変化には慣れていると思いますが、気をつけてくださいね」
「はい」
そうして彼女は輸送対象と自身を念動力で加速させ、浮遊する瓦礫の間を飛ぶように移動する。基地内はどこもかしこも大騒ぎの様子で、崩壊に巻き込まれないよう慌てて逃げていく兵士の姿なども見える。大半はこちらにかまっている余裕などなさそうだが、そうではないものもあった。
「そういえば、道中のドローンとかキャバリアが残ってましたか」
もうじき基地ごと消えるというのに、自律稼働する無人機たちは律儀に職務を遂行している。往路のように鉢合わせないルートを通っている暇はないので、どうしても見つかるのは避けられなかった。浮遊移動する侵入者の姿をカメラが捉える。
「まぁ、地上用の無人機なら無重力下ではマトモに動けないはずです」
幸い【念動レビテーション】には、敵を浮かせて移動を制限することで、こちらの回避率を向上させる効果もある。
高空飛行や宇宙進出を封じられたクロムキャバリアの兵器は、重力下での運用のみ想定されている。それゆえエリーが作った無重力の範囲では、接近はおろか照準を合わせるのにさえ苦戦している様子だ。
『機体制御にエラー発生。バランサー修正……失敗』
警備キャバリアにできる事といえばバラバラと雑に銃弾をばら撒くくらい。たまたまこちらに飛んできたものだけをエリーは念動力の盾で防ぎ、あとは無視して先に進む。どうせ追ってはこれない以上、相手をするだけ時間の無駄だ。
「爆発まで時間がありませんね。急ぎますよ」
「……りょうかい」
少女は無抵抗なまま見えない力に引っ張られ、先を行く青髪の女性の背中を見る。その無垢な瞳が何を考えているのか、窺い知ることは難しいが――ただの生体パーツにすぎない自分を助けようとするヒトたちへの疑問、そして興味が、少しずつ芽生えだしているようだった。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
『禍集・壊塵非生』三眼六臂状態継続
……破壊は既に為した。自分は貴殿を壊さない。
それだけ言って、事前に頭に叩き込んでおいた基地の構造を元に、【瞬間思考力】で脱出できるルートを複数構築。疾くこの場を後にしよう。【怪力】でEP-L217が入ったコックピットを持ち上げ、02の機能である透明化【迷彩】で姿を隠し、重力制御能力で【推力移動】迅速に連れ出す。
先に取り込んだアーレスの、多様に性質を変える重力波で基地の崩壊を止める、ドローンを排除する、障害物や壁を破壊する等して脱出路を確保。
それから、他に彼女を連れ出す味方が居るならばそちらに彼女を任せて全速で行動しよう。
あの娘は自分とは違う。まだ、大丈夫だ。
「……破壊は既に為した。自分は貴殿を壊さない」
【禍集・壊塵非生】により三眼六臂状態の変身を維持したまま、小枝子は敵機のパイロットにそう告げた。彼女が打ち壊すべき敵はオブリビオンマシンであって、動力源として使われていた哀れな少女ではない。ここに来た依頼内容を彼女は忘れた訳ではなかった。
「……どうして」
EP-L217がなにかを言い返す前に、小枝子はくるりと踵を返して走りだした。この基地の構造は事前に頭に叩き込んである――それを元に、瞬間思考力で脱出できるルートを複数構築。往路で培った経験が、ここで大いに活きてくる。
(疾くこの場を後にしよう)
折角目的を果たしたのに、アーレスの残骸ともども瓦礫の生き埋めなど笑えない話だ。小枝子はその身に取り込んだディスポーザブル02の透明化迷彩で姿を隠し、重力制御能力で地面を滑るように高速移動する。どうやら他のメンバーに先行して脱出路を確保するつもりのようだ。
「止まれ」
禍集壊腕をすっと伸ばすと、見えざる重力波が基地の崩壊を抑え込む。アーレスの機体の一部を取り込んだことで、以前よりも多様に重力の性質を変えられるようになった。アンカーテールの装甲を纏った彼女の複腕は、以前より更に禍々しさを増していた。
「壊れろ」
敵から奪った力を存分に奮って、小枝子は脱出の障害を次々に排除していく。まだ生きている探索ドローン、崩落した瓦礫や閉じた隔壁など、立ち塞がるものは全て破壊し、道をこじ開ける。やはり崩壊に伴って往路とは道も変化しているようだが、その辺りも柔軟にルートを適宜再構築していく。
(皆、遅れずに来ているか。ならば良し)
EP-L217の身柄の安全は、他の味方が確保しているようだ。彼女を連れ出す役割はそちらに任せて、小枝子は全速で行動を続ける。見ての通りと言うべきか、この形態は護るよりも壊すことに長けている。必要とあらばコックピットごと持ち上げて運びもしようが、やはり適材適所に専念したほうが効率的である。
(あの娘は自分とは違う。まだ、大丈夫だ)
オブリビオンマシンに全てを奪われ、その呪いをあえて取り込み破壊の権化と化した自分。この昏く終わりの見えない戦いの道から離れ、マシンのパーツではなくただの人として生きる道がEP-L217には残っている。そのために小枝子は全力をもって道を切り開く。
「壊れろ……!」
伸ばした腕の延長線上、捩じ切れるように壊れていく障害物を睨みつけ。三眼六臂の魔人は基地の外へとひた走る。
基地崩壊までのタイムリミットは残り少ない。だが、このペースでいけば十分に間に合うと、彼女の脳は計算結果を弾き出していた。
大成功
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ノア・クレムリィ
はじめまして、EP-L217。私は貴殿を壊しに来たわけではありません。さぁ、行きましょう。あまり時間は残っていないようですから。
帰還するまでが作戦、気を抜かずに脱出を目指します。〈戦闘演算〉により倒壊する施設や退避する敵兵を避けつつ脱出口を探しましょう。退路を塞ぐ瓦礫や警備等は【UC:粉砕明星】(POW)で〈地形破壊〉の一撃を見舞って突破を試みます。
貴殿には戦いについても、それ以外についても知らないことが多いはず。これは極めて個人的ではありますが……私は貴殿に、あの籠の外を知ってほしい。私が大海を知った時のように、貴殿にも世界があるということを。
(愛機搭乗/アドリブ等々大歓迎)
「はじめまして、EP-L217。私は貴殿を壊しに来たわけではありません」
敵機のコックピットから出てきた儚げな少女に、ノアは警戒させぬよう穏やかな微笑みと丁寧な態度で話しかけた。
猟兵にとってオブリビオンマシンは破壊すべき敵だが、それに利用されていただけのパイロットは救出対象である。もちろん彼女も戦う力のない少女に追い討ちをかける趣味などない。
「さぁ、行きましょう。あまり時間は残っていないようですから」
「……はい」
他の猟兵からの説得も受けて、EP-L217は幾分素直になったようだ。こくりと頷く彼女を見てから、ノアは来た道を振り返る。帰還するまでが作戦、まだ気を抜かずに脱出を目指す。あちこちから聞こえる崩壊の音が、この基地が自爆するまでのリミットを伝えていた。
「すでに大騒ぎになっているようですね」
倒壊する施設、退避する敵兵。アーレスの破壊から始まった混乱を避けつつ、ノアは「ガンド」に乗って脱出路を探す。往路での経験を元に戦闘演算をフル回転させ、なるべく出口まで近いルートを模索するが――一度通った道が瓦礫で塞がれていたりと、一筋縄ではいかない。
「対潜爆雷は、投げるだけが使い方ではありません」
彼女は機体から星球式鎚矛のような見た目をした収束爆雷を取り出し、思いきり叩きつける。ひときわ派手な破砕音と共に瓦礫は跡形もなく吹き飛ばされ、爆発の後には道ができた。丁寧に除去している時間などない以上、今はコレが脱出への最適解だ。
「あまり乗り心地は良くないかもしれませんが、ご辛抱を」
「だいじょうぶ」
コックピットにEP-L217と二人乗りになった状態で、ノアは機体の速度を上げる。基地自体が崩壊しつつある現状は警備も満足に機能しておらず、強行突破するのはさほど難しい事ではなかった。爆雷付きの棍棒を振り回すキャバリアに近付きたがる兵士もそうはいないだろう。
「貴殿には戦いについても、それ以外についても知らないことが多いはず」
目線は警備の動きや脱出ルートを確認しつつ、彼女はEP-L217に語りかける。生まれてから基地とコックピットの中だけが居場所で、本来なら外界に一度も触れぬまま一生を終えるはずだった少女――年齢に比する知識や経験の欠落の多さは、ここまでの反応からも察せられた。
「これは極めて個人的ではありますが……私は貴殿に、あの籠の外を知ってほしい」
ノアもまた非合法なアンサーヒューマン製造施設で生まれ、本来ならろくな生き方をしないはずだった。だが、そこを脱走して海に出た時から、彼女の世界は大きく広がった。籠の中にいては味わえなかった喜びと悲しみ、様々な感動を手に入れることができた。
「私が大海を知った時のように、貴殿にも世界があるということを」
「わたしにも せかい が……?」
この少女にも、広い世界で沢山の知見に触れてほしいというノアの願いを、EP-L217は興味深そうに聞いていた。
今はまだピンとこないかもしれない。だが、外に出ればきっと分かるはずだ。崩れゆく檻の中をキャバリアは駆け、自由と解放を目指して突き進む――。
大成功
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フェイルシア・インパーサ
器は喪われました
これで生贄が捧げられることはもう、無いでしょう…
もう二度と彼女達のような犠牲者が出ないように、
子供の未来が捧げられるなどということがないように、今は最後まで任務をやり遂げましょう
最早一刻の猶予もありませんわ!
真正面を突き進むこそが最短の脱出経路、
インパーサが奥義にてあらゆる障害を吹き飛ばして差し上げましょう
[高速詠唱]でできる限りの魔力を圧縮して[地形破壊]を込めて放ちます
進行方向はこの国ができるだけ届かないところが良いですわね
例えば敵対国の町やまだ進行していない地域等
情報が足りなければ[世界知識]で確認しましょうか
最早この少女の未来を奪うものは存在しません
してはなりませんから
「器は喪われました。これで生贄が捧げられることはもう、無いでしょう……」
破壊された『アーレス』の前で、フェイルシアは静かに祈りを捧げる。それは、これまでに機神のパイロットとして生み出され、犠牲にされた多くのアンサーヒューマン達に対する鎮魂だ。ヒトとしての生き方を知らぬまま"消費"された彼らの魂も、これで少しは安らぐだろうか。
「もう二度と彼女達のような犠牲者が出ないように、子供の未来が捧げられるなどということがないように、今は最後まで任務をやり遂げましょう」
決戦兵器の破壊をトリガーに、存在意義を失った軍事基地は崩壊を始めた。まるで全てを道連れにするかのように。
ようやくオブリビオンマシンの呪縛から解き放たれた少女を、ここで死なせる訳にはいかない。騎士姫の誇りにかけて、彼女は改めて誓いを口にした。
「最早一刻の猶予もありませんわ!」
もはや隠密行動など気にする意味もない現状では、真正面を突き進むこそが最短の脱出経路。フェイルシアを乗せた偽神ガミザーヌは、崩れゆく基地の中を全速前進で駆け抜ける。無論、その途上には幾つもの障害物が立ち塞がるが、気にする事ではない。
「インパーサが奥義にてあらゆる障害を吹き飛ばして差し上げましょう」
【悠久に咲き輝く愛すべき造花】――それは、かつて咲き誇った栄華の贋作。桜色のオーラを纏った無数の花嵐が、進路上にある全てを散らしていく。とうに仕えるべき家を失った今でもなお、彼女は由緒正しきインパーサの跡取りとしての誇りを失っていない。その気高き心より生じた造花は決して枯れず、輝き続けるのだ。
「最果てより想う…かつて栄えた理想郷、朽ちて変わらぬ我が忠誠! 受け継がれし騎士の奥義、今こそその身に焼き付けなさい!!」
できる限りの魔力を圧縮して放つフェイルシアの奥義は、入り組んだ基地の地形を更地に変えるほどの威力で、強引に脱出路を作り上げる。そこをまっすぐに進みながら、彼女はこの基地を脱出したさらに先の事について考えていた。
(進行方向はこの国ができるだけ届かないところが良いですわね。例えば敵対国の町やまだ進行していない地域等)
今回の事件を国側が知れば、せめてパイロットだけでも回収しようと追手を差し向けるかもしれない。そうした介入を避けるためには、速やかに国外に脱出するのが一番だ。元々今回の「誘拐」を依頼した国などが丁度良いだろうか。
「最早この少女の未来を奪うものは存在しません。してはなりませんから」
脱出に並行して少女の安全を確保するための情報を集め、彼女の行く末が少しでも明るいよう計らうフェイルシア。
咲き乱れる桜色のオーラの輝きは、まるで少女の未来を照らす導のように。あとから付いていくEP-L217の目にも、それははっきりと視えていた。
「………」
少女がその輝きに、騎士姫の見せた誇りに、どのような感情を抱いたのかは分からない。だが何かは感じたはずだ。
なぜなら、どんなに眩しい光でも、彼女は目を逸らそうとも瞼を閉じようともせず、ずっと見つめていたから――。
大成功
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ヒビキ・ノッカンドゥ
SPD
人攫いの最後の仕事だね
ハッチを開けて、少女へ肉声で
女の子を壊すなんて悪趣味は持ってないよ
怖いロボットから女の子を攫ってこいなんてお仕事を請け負っただけ
だから、攫われてくれないかな?こちらから出せる条件はそうだね。沢山お話をしよう
ハッチに乗り、手を。皆がそうするだろう。誰かの所へ収まってくれればそれでいい
【リミッター解除】した【推力移動】で【空中機動】し最短距離
自機に乗ってくれていればオブリビオンマシン以外で急激な機動に耐えられるか判らないので【オーラ防御】で破片を防ぐ
【全力魔法】で常に己から機体へ供給
自分だけなら機動で回避
色んな話をしよう
そうだね、赤い頭巾を被った女の子の話なんてどうかな
「人攫いの最後の仕事だね」
ここからが依頼の総仕上げだと、ヒビキは「鸕鶿草」のコックピットハッチを開け、EP-L217に直接顔を合わせる。
元凶とも言えるオブリビオンマシンは破壊され、戦いは終わった。これ以上戦闘を続ける意思はないと示すために。
「女の子を壊すなんて悪趣味は持ってないよ。怖いロボットから女の子を攫ってこいなんてお仕事を請け負っただけ」
「……さらう?」
肉声で声をかけると、EP-L217は不思議そうに首をかしげた。この場所から出るという発想自体、彼女にはなかったことだ。機神の座という檻に閉じ込められていた少女にとって、それは生まれて始めての外の世界へのお誘いだった。
「だから、攫われてくれないかな? こちらから出せる条件はそうだね。沢山お話をしよう」
ハッチに乗り、手を差し出す。きっと他の皆もそうするだろう。自分でなくても誰かの所に収まってくれればいい。
EP-L217は少し迷ったようだったが、やがてとことこと自らの足で歩き、ヒビキの手を取った。ここまでの皆の説得も影響しているのだろう――ささやかではあるが、それは彼女からの明確な意思表明だった。
「おはなし きいてみたい」
「よし。じゃあ行こう」
ヒビキは笑いながら少女をコックピットの中に招き、エンジンを起動。基地自爆までの制限時間も刻一刻と迫る中、彼女の方針は極めてシンプル。とにかく最短距離を最大速度で駆け抜けるのみだ。リミッターを解除したスラスターが唸りを上げ、爆発的な推進力が機体を飛翔させる。
「大丈夫?」
「うん」
仮にもパイロットとしての訓練と調整を受けてきたのだ、加速による急激なGもEP-L217は気にしない様子だった。
しかしオブリビオンマシン以外の機体で、彼女がどこまで激しい機動に耐えられるかは分からない。そのためヒビキは極力安全運転を心がけながら、立ち塞がる障害に対処する必要があった。
(あとは帰るだけだから、ガス欠を気にする必要もないしね)
彼女は全周に強力なオーラバリアを展開し、落ちてくる瓦礫の破片を防ぐ。バリアに必要な霊力は常に己から機体へ供給し、防御を切らさない。自分だけなら回避できるようなものでも、今回は同乗者に負担をかけないことが第一だ。
「そうだね、赤い頭巾を被った女の子の話なんてどうかな」
降りしきる瓦礫の雨にオーラの傘をさしながら、ヒビキはコックピットで少女に色んな話をする。親が子に読み聞かせるようなおとぎ話に始まり、外の世界ではありふれた話題を中心に。きっと少女にとってはどれも物珍しく、好奇心を刺激される話ばかりだろう。
「ん もっと きかせて」
まるで殻から出たばかりの雛鳥のように、EP-L217は未知なる話に耳を傾ける。無機質だった瞳に微かな光が灯る。
オブリビオンマシンに乗っていた時は分からなかったが、実は好奇心旺盛なのかもしれない。これで彼女が外の世界に少しでも興味を持ってくれればいいさと、ヒビキは楽しげに話を続けるのだった。
大成功
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カシム・ディーン
あー…全く…仕方ねーな
コックピットから出ねーなら…それごと持ってくまでだ!
取り合えず…僕らは依頼を遂行するだけだ
おめーがこれからどうするかは…まぁのんびり決めればいい
【情報収集・視力・戦闘知識・瞬間思考】
周辺状況と基地の構造を把握
脱出経路を即座に見出せば
コックピットブロックごと持って脱出!
UC発動
合体はさせず散開
【属性攻撃・迷彩】
光水属性を機体と竜達に付与
光学迷彩で存在を隠し水の障壁で熱源隠蔽
【二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み】
竜達は複数で警備に群がり武装を強奪して無力化
生きてる人間が居たら加えて脱出
まぁ…猟兵は基本人殺しちゃいけねーらしいからな
そして僕は天才ですしね…やってやるさ
「あー……全く……仕方ねーな。コックピットから出ねーなら……それごと持ってくまでだ!」
自発的に脱出の意志を見せないパイロットに対して、カシムの対応はシンプルだった。破壊されたアーレスの残骸からコックピットブロックを引き剥がし、荷物のように持ち上げる。かなりの重量だが、メルクリウスの出力ならなんとか運搬は可能だ。
「取り合えず……僕らは依頼を遂行するだけだ。おめーがこれからどうするかは……まぁのんびり決めればいい」
丁寧な説得などは他の奴らに任せる。本人が自発的にそこから出てくる意思を示すまでは、こうして運んでやろう。
今はとにかく立ち止まっている時が惜しい。彼は周辺の構造と状況を把握すると、出口までの経路を即座に見出し、崩れゆく基地からの脱出を開始した。
「万物の根源よ……帝竜眼よ……文明を構成せしめし竜の力を示せ……!」
脱出行のサポートとして、カシムは【帝竜眼「ダイウルゴス」】を発動し、小型ダイウルゴスの群れを召喚。合体による強化はさせずに散開させ、進路の確認や偵察などに使う。メルクリウスも含めて各個体には魔法の光学迷彩と熱源隠蔽を施し、往路同様の索敵対策も万全だ。
「緊急事態発生、緊急事態……うわぁっ?!」
突如として基地の崩壊が始まったことで、警備体制にも大きな動揺が見られる。竜達はそこを突くように群れをなして襲いかかり、武装を強奪して無力化していく。彼らの統率された動きはダイウルゴスという1つの文明であり、この逼迫した状況下でも一切乱れなかった。
『まだ生きてる人間が居たら、咥えて脱出しろ』
カシムからそのように命令を受けていたダイウルゴス達は、基地内の生存者を見つけると確保も行う。自力で脱出できそうならそれでいいが、これだけ混乱していると逃げ遅れる連中も相当数いるだろう。そうした無駄な犠牲者を出さないための措置だ。
「まぁ……猟兵は基本人殺しちゃいけねーらしいからな。そして僕は天才ですしね……やってやるさ」
彼としてもここの兵士や職員に個人的な怨みがある訳ではない。あくまで優先するのは自分達の脱出だが、余裕があるなら他のことにも手を回す。何より、ここで連中を見捨てることは彼のプライドを損なうことだったらしい――自信に満ちた笑みを浮かべて、自称天才魔術盗賊は神機と帝竜を操る。
「………」
そんなカシムの様子を、EP-L217はコックピットブロックからじっと見ていた。口ではあれこれ言いつつも、本来は敵であり、助ける義理もないはずの相手を助ける。それは、今まで彼女が見たことも聞いたこともない行動であった。
「ん? もういいのか」
「……うん ありがとう」
それが、どんな心境の変化をもたらしたのか分からないが。彼女はカシムにお礼を言うと、他の猟兵の誘いを受けてコックピットから出ていく。崩壊を前に立ち尽くしていただけの子供が、またひとつ自分の意思で何かを決断した瞬間だった。
大成功
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安野・穣
(アドリブ連携歓迎)
…嫌だっつっても連れて行かれてもらうっすよ。
闘争と資源の奪い合いはこの世界の常っしょ。
ただ…チッ、息つく暇も無しか…!
『ジェード』『アズライト』展開、鳥型で出力した『スピネル』を先行させ
その座標へ【飛雲】で転移、再び先行の繰り返し。
彼女の移送を任せるとしても先んじて露払いは必要っすからね、
警備が手薄な場所から場所へ転移して進むぞ…!
誰だ、どうしてなんて、本当に内にしか居場所がない奴の
疑問じゃねえでしょうよ。
誰だ、って問いは自分が誰かって答とセットっすよ。
外に出されて何をすべきか分からないなら…
例えば、番号じゃない自分の名前を考えてみるとこから始めてみたらどうすか。
「……嫌だっつっても連れて行かれてもらうっすよ。闘争と資源の奪い合いはこの世界の常っしょ」
救出対象であるEP-L217に、穣はあえてぶっきらぼうな態度で言った。オブリビオンマシン――兵器のパーツとして扱われてきた少女には、こんな言い方のほうが理解できるかもしれない。彼女があくまで自分をモノと認識するなら、戦利品として持ち帰るまでだ。
「ただ……チッ、息つく暇も無しか……!」
穣はさらに何かを言おうとしたが、近くで建物が倒壊する音を聞き、舌打ちひとつ。ここも安全とは言えない以上、早急に動く必要がありそうだ。少女を連れて無事にここから脱出するルートを導きだすために、彼は再び『ジェード』と『アズライト』を展開する。
「彼女の移送を任せるとしても先んじて露払いは必要っすからね」
電脳空間を通じて周辺状況を確認した穣は、警備の手薄な所を見つけると従者召喚プログラム『スピネル』を起動。
鳥型で出力したそれを指定ポイントまで先行させると、その座標に【飛雲】でテレポート。このユーベルコードは本人の他にも一緒に転移する物を選べるため、要救出対象のいる今回のケースでは非常に便利なプログラムだ。
「次はこっちだ……!」
持ち前の情報処理能力でルートを策定し、スピネルに座標を確保させ、ユーベルコードで転移。この繰り返しで彼は警備の手薄な場所から場所へと進む。往路と比較すれば崩落で使えなくなった道がある一方、混乱による警備の隙間は大きくなっており、彼にとっては悪くない状況だ。
「誰だ、どうしてなんて、本当に内にしか居場所がない奴の
疑問じゃねえでしょうよ」
「……?」
ひとまず中間地点に到達した穣は、次の座標にスピネルを向かわせている間、さっき言えなかった話の続きをする。
彼の指摘に、EP-L217はきょとんと目を丸くして首を傾げた。本人にとっては何気なく口にしたその言葉の意味を、まだ理解していないらしい。
「誰だ、って問いは自分が誰かって答とセットっすよ」
オブリビオンマシンのパーツとして「製造」された、自我の希薄な人造超能力者。しかし、コックピットという狭い世界に閉じ込められていても、この少女は己の存在を自覚し、他者に問いかけることで自己を認識しようとしている。それは機械の部品ではありえない、ヒトである証だと彼は言った。
「外に出されて何をすべきか分からないなら……例えば、番号じゃない自分の名前を考えてみるとこから始めてみたらどうすか」
最初のうちは戸惑いもあるだろう。だが、この少女に関してはそこまで心配はいらなそうだと思いつつ、穣はひとつ提案を送った。名前は自我を確立させる大事な要素のひとつだ。EP-L217という部品番号ではなく、ヒトとしての名前を得ることが、ヒトとして生きる最初の一歩にもなる。
「なまえ……かんがえて みる。ありがとう わたしのこと おしえてくれて」
「別に、大したことはしてねえっすよ」
お礼を言う少女にひらひらと手を振ったところで、先行させたスピネルから信号が来た。次の転移への準備が整ったところで、穣は再びユーベルコードを発動――ちぎれ飛ぶ雲のように、全てを浚う風のように、崩れゆく基地の外へと飛んでいくのだった。
大成功
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黒影・兵庫
壊す?とんでもない!俺達はEP-L217さんを誘拐しに…あっ誘拐といっても安全で安心な場所に連れていくって意味で
(「黒影!そんなことよりあと30分で爆発よ!」と頭の中の教導虫が話しかける)
そうですね!話の続きは逃げた後にしましょうか!
というわけでせんせー!お願いします!
(UC【蜂蜜色の奔流親】を発動しオーラ状の教導虫の抜け殻を創造する)
「えっ!?アタシが黒影とこの娘を運ぶの!?さっきのアーレスにぶつけた一寸鋒矢で飛んでけばいいじゃん!」
一寸鋒矢だとEP-L217さんに負担がかかるので…千変万化する今のせんせーなら最短距離で基地から脱出できるはずです!
さぁ急いで!
「こんのクソガキぁ!後で覚えてなさいよ!ほら、嬢ちゃんもしっかり捕まって!」
大丈夫!俺が信じる限りせんせーは無敵!ということは永遠に無敵です!
(「身内に対する配慮を最優先で教え直さなきゃねぇ…!」)
「壊す? とんでもない! 俺達はEP-L217さんを誘拐しに……あっ誘拐といっても安全で安心な場所に連れていくって意味で」
ようやく会えた救出対象ことEP-L217に、兵庫は懇切丁寧に自分達の目的と事情を説明しようとする。それは律儀で生真面目な彼らしい対応であったが、今まさに基地が崩壊しようとしている状況では、いささか悠長にも感じられた。
(黒影! そんなことよりあと30分で爆発よ!)
「そうですね! 話の続きは逃げた後にしましょうか!」
「……わかった」
頭の中から教導虫に急かされると、彼は話を打ち切って脱出の手筈にかかる。EP-L217もそれを拒みはしなかった。
自爆までに残された時間は長くはない。なるべく最短距離かつ最速で、基地の外に向かうための移動手段が必要だ。
「というわけでせんせー! お願いします!」
兵庫は【蜂蜜色の奔流親】を発動し、自らの想像力とオーラから蜂蜜色に輝く女性のヒトガタを創造する。これは教導虫になる以前の"せんせー"ことスクイリアを模した抜け殻で、彼女が操作する仮の肉体として使うためのものだ。
「えっ!? アタシが黒影とこの娘を運ぶの!? さっきのアーレスにぶつけた一寸鋒矢で飛んでけばいいじゃん!」
自分の意思で動かせるボディを手に入れたスクイリアだが、代わりに教え子からお願いされた内容はハードだった。
単に速度の出る移動手段が要るだけなら他にも手段はある。わざわざ自分に運ばせる必要はあるのかと、脳内からではなく肉声でツッコミを入れる。
「一寸鋒矢だとEP-L217さんに負担がかかるので……千変万化する今のせんせーなら最短距離で基地から脱出できるはずです!」
兵庫が創造した教導虫のための体は、素材となったオーラと同様にいくらでも形状を変えられる。これなら救出対象を保護しながら移動できる、というのが彼の考えだった。確かに、キャバリアのコックピット内でもなく剥き身のまま少女を抱えて運ぶよりは、負担は少なそうである。
「さぁ急いで!」
「こんのクソガキぁ! 後で覚えてなさいよ!」
ああだこうだ言っている時間はない。今度は自分が急かされる側となったスクイリアは、悪態を吐きつつも兵庫とEP-L217を抱えて立ち上がった。その全身から発せられる蜂蜜色の輝きが、二人を包み込むようにして外部からの衝撃を遮断する。
「ほら、嬢ちゃんもしっかり捕まって!」
「え……うん わかった」
言われるままぎゅっと少女がしがみつくのを待って、スクイリアは背中に翅を生やして飛び立った。そのスピードは鳥よりも速く、蜻蛉のように機敏で、蝶のように優雅だ。崩れ落ちた建物の瓦礫などをひらりひらりと躱し、出口までの最短ルートを突き進む。
「大丈夫! 俺が信じる限りせんせーは無敵! ということは永遠に無敵です!」
【蜂蜜色の奔流親】の強さを支えているのは兵庫の想像力だ。彼が教導虫に向ける信頼の深さが、そのままユーベルコードの効力に表れている。どんなに無茶に思える頼みでも、それは彼にとって「せんせーなら当然できること」で、無茶振りではないのだ。一切の疑念を挟まぬまっすぐな思いが、スクイリアに無敵の力を与える。
(身内に対する配慮を最優先で教え直さなきゃねぇ……!)
信頼され過ぎるというのもある意味困りものだ。今回の一件を通じて教育方針を修正する必要性をひしひしと感じたスクイリアは、決心を固めつつスピードをさらに上げる。まずはここから無事脱出しないことには今後もなにもない。
幸いにして、逃げられないという心配だけはする必要がなかった。スクイリアの全身に漲る凄まじいパワー――兵庫の篤き信頼がある限り、どんな障害も彼らを阻むことはできないのだから。
大成功
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エリュファシオン・アルティウス
さっきの戦闘で力が…
『オォォ…』
オーさんが心配そうに私を見上げていると
『エル君、助けに来た…大丈夫かい?』
オーさんがUCでマック社長を呼んだらしい
『まずオーさんはエル君を乗せてほしい』
社長はオーさんに指示を出しオーさんは私を乗せて行動開始
ありがとうオーさん…
『成る程、まずは一つずつ破壊するか』
社長は重力操作で他の警備ドローンを破壊しながら近道を通りながら走り抜ける
こんな状況で言うのも変ですが…最初に会った時に何故私が猟兵だと分かったのですか?社長…
最初に会った時に何故自分を猟兵だと分かり、エリクシルにも立ち向かえたのか疑問に思ったので聞いてみた
『君と出会う数週間前に…別の世界から来たという人物に会ってね、最初は半信半疑だったけど目の前に首だけで消滅しかけのオブリビオンを見せられたら信じるしか無かったよ…止まってエル君達』
とドローンを重力で押し潰した後再び私達は走り出す
『その後彼に超常現象などを視認出来る眼鏡を渡されて去って行ったんだけど…まさか本当に猟兵を見つけるとは思わなかったんだ…』
「さっきの戦闘で力が……」
『オォォ……』
基地崩壊までのタイムリミットが迫る中、エリュファシオンは地面に膝をついたまま立ち上がれずにいた。新たな力を発揮してアーレスと戦った反動か、相当に消耗しているようだ。オーさんも心配そうな表情で彼女を見上げている。
『エル君、助けに来た……大丈夫かい?』
そこにふと現れたのは一人の男性。異世界の都市国家ラッドシティで企業を営む【社長・マック・カルジェル】だ。
彼は今回の依頼には参加していなかったはずだが、どうやらオーさんがユーベルコードで召喚したらしい。この状況では助けが必要だと判断したのだろう。
『まずオーさんはエル君を乗せてほしい』
現着してすぐさま状況を把握したマックは、てきぱきと指示を出してエリュファシオンをオーさんの背中に乗せる。
建物の崩落の音が先程から大きくなっている。ここも猶予はあまり無いだろう。極力崩れていないルートを選んで、行動開始だ。
「ありがとうオーさん……」
『ゆっくり休んでいるといい』
頼れる相棒の感触を確かめながら、しっかりと背中に掴まるエリュファシオン。今の彼女はこうしているしかない。
彼女に微笑みかけながら、安全確認のために先行するのはマックだ。急いで脱出したいところだが、ここはまだ敵地である。警戒を怠っては足元をすくわれる。
『成る程、まずは一つずつ破壊するか』
もはや護る意義のなくなった基地を、律儀に巡回する探索ドローン。その生き残りを発見したマックは、重力操作で彼らを墜落させて破壊し、出口までの近道を開通させる。全てを処理している暇はないので、ルートを確保したら全力で走り抜けるのみだ。
「こんな状況で言うのも変ですが……最初に会った時に何故私が猟兵だと分かったのですか? 社長……」
疾走するオーさんの背中で揺られながら、エリュファシオンは以前から気になっていた疑問をふとマックに尋ねた。
彼女と出会った当時のマックはまだ、企業社長とはいえただの一般人だった。異世界を渡る猟兵の存在なんて、荒唐無稽なおとぎ話と思われても可笑しくはなかったのに。
『君と出会う数週間前に……別の世界から来たという人物に会ってね』
視線は前に向けたまま、マックはエリュファシオンの質問に答える。どうやら彼は、その謎の人物から猟兵やオブリビオンなど、一般人の知らない世界の真実について聞かされていたらしい。果たしてその人物も猟兵だったのか、あるいはまた別種の存在だったのかは、今でも分からない。
『最初は半信半疑だったけど目の前に首だけで消滅しかけのオブリビオンを見せられたら信じるしか無かったよ……止まってエル君達』
また探索ドローンがやって来た。警報を上げられる前に重力で押し潰し、仲間がいないのを確認した後、一行は再び走りだす。話ばかりにかまけている状況ではないが、マックの語る内容が興味深いのもまた事実だ。その謎の人物は、少なくともオブリビオンを己の手で倒せる力があるのか。
『その後彼に超常現象などを視認出来る眼鏡を渡されて去って行ったんだけど……まさか本当に猟兵を見つけるとは思わなかったんだ……』
これがマックとエリュファシオンが出会う前の経緯だった。聞けば聞くほど、その人物への謎が深まる内容である。
果たして彼らがその人物と再び会うことはあるのだろうか。分からないが、兎にも角にも今はここから出なければ。休みなく移動を続ける一行は、なんとか基地の外に迫りつつあった――。
大成功
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シルヴィ・フォーアンサー
……取り敢えず連れてこうか。
『のんびり説明してる暇もなさそうだしな』
君を連れてくのがお仕事なの、それはもう壊れてそこに居ても何も意味ないからついてきてくれると嬉しいんだけど。
と声かけて連れ出そうとする他の猟兵でもシルヴィでも一緒に来てくれるなら良し、まごつくようなら時間ないし無理やり乗せて連れ出すね。
誰かが潜入してるのはバレただろうし派手にいこう、ハンドレッド・イリュージョンでミドガルズの複製を146機召喚。
瞬間思考力で並列操縦して囮として防衛部隊を相手させて本体は脱出目指し邪魔な敵だけ蹴散らして進むよ。
脱出できたら一応お別れ前に挨拶はしとこうか。
世の中痛いものや怖いものあるけど楽しいこともあるよ。
取り敢えずモフモフ(したもの)をモフモフ(抱きしめ)するのがシルヴィのおすすめだね。
『言葉足らずだな君は……それだと意味不明だろう』
うるさいし、じゃ縁があれば……名前ないと不便だね。
エルとかどう? 他にも候補出るかもだから好きなの選ぶか自分で思いついたらそれで良いけど。
じゃあ、またね。
「……取り敢えず連れてこうか」
『のんびり説明してる暇もなさそうだしな』
自発的に脱出する意思を見せない『アーレス』のパイロット――EP-L217を見て、シルヴィとヨルムンガンドはひとまず行動を優先することにした。こうしている間にも基地の崩壊は進み続けており、さっさと逃げなければ自分たちの身まで危うい。
「君を連れてくのがお仕事なの、それはもう壊れてそこに居ても何も意味ないからついてきてくれると嬉しいんだけど」
「……りょうかい」
幸い、少女はこちらの意向に抵抗するつもりもないらしく、シルヴィや他の猟兵たちの声かけには素直に応答する。
まごつくようなら無理やり乗せて連れ出すつもりだったが、話が早い。二人乗りで少々手狭になったコックピットのハッチが閉まると、『ミドガルズ』のスラスターが再び唸りを上げた。
「誰かが潜入してるのはバレただろうし派手にいこう」
往路の慎重さとは真逆に、復路のシルヴィは【ハンドレッド・イリュージョン】でミドガルズの複製を146機召喚。
アンサーヒューマン特有の瞬間思考力でこれらを並列操縦し、囮として基地の防衛部隊の相手をさせる。まだ内部に残っている探索ドローンなどの相手も、こいつらに任せてしまおう。
『不明機体を確認――』
各所で鳴り響く断続的な発砲音。基地にいた手勢もほとんどは逃げ出したらしく、音の数は多くない。武装ごと複製されたミドガルズ部隊はまたたく間にそれらを排除し、生じた間隙を縫って本体は脱出を目指す。潜入の時点で大体の基地の構造は頭に入っており、多少崩れていても道に迷うことはない。
『ッ、なんだ貴様
……!?』
「どいて、邪魔」
律儀に持ち場を守っていたのか、それとも逃げる途中だったのか。運悪く鉢合わせた警備キャバリアを、シルヴィは挨拶もなしに蹴散らして進む。オブリビオンマシンと戦う前に余計な騒ぎを起こしたくなかった、さっきまでとは話が違う。統率も取れていない単機の量産型くらい敵ではない。
『あと少しで出口だ』
「ばくはつまで あと1ふん」
無機質なAIと少女の声に急かされながら、無言で機体操縦に意識を集中する。表情に焦りは見せず、スラスターの出力を最大まで上げて――外壁を飛び越え、基地の敷地外へと出る。その直後、背後から一際大きな爆発音が上がった。
『脱出成功だ』
「……ふう」
小さく息を吐いてシルヴィが後ろを振り返ると、もうもうと立ち昇る黒煙が空を覆っていくのが見えた。救出対象を含めて、逃げ遅れた味方は誰もいない。この状況では追手もすぐにはかからないだろうし、あとは隣国との国境線まで少女を連れていけばミッションコンプリートである。
「……たすけてくれ、て ありがとう、ございます。 ……これで あってる?」
「……どういたしまして」
EP-L217はまだ脱出できたという実感がなさそうな様子で、たどたどしく感謝の言葉を口にする。命令を与えられ、従う以外のコミュニケーションを取ってこなかった彼女には、誰かにお礼を言うのも始めてのことだろう。シルヴィはいつもと変わらぬ素っ気なさで、それに応えた。
「……これから どうすれば いいのかな」
コックピットの外に出れば、そこはEP-L217にとって始めて生身で感じる「世界」。肌や髪を撫でる風、硝煙の混じる土の匂い、まぶしい太陽の光。これまでセンサー越しの情報として受け取ってきた刺激に戸惑いながら、彼女は今後の身の振り方について悩んでいる様子だった。
「世の中痛いものや怖いものあるけど楽しいこともあるよ」
別れの時が来る前に、一応挨拶はしとこうかと、シルヴィはそんな彼女に声をかける。自分も組織を脱走してすぐの頃は戸惑うこともあった。自由を手に入れても良いことばかりでは無かった。それでも外の世界は多くのものを与えてくれた――どんな楽しいことに出会えるかは、これからの行動次第だろう。
「取り敢えずモフモフをモフモフするのがシルヴィのおすすめだね」
「………??」
重要な部分が擬音で占められたシルヴィの提案に、きょとんと首をかしげるEP-L217。動物やぬいぐるみのようなモフモフ(したもの)を抱きしめると気持ちよくて楽しい、というニュアンスのようだが、普段無口な反動かうまく伝わっていない。
『言葉足らずだな君は……それだと意味不明だろう』
「うるさいし、じゃ縁があれば……名前ないと不便だね」
ヨルムンガンドのツッコミに眉根を寄せつつ、別れの挨拶を言おうとしたところで、シルヴィふとそれに思い至る。
『EP-L217』とはキャバリアのパーツとして付けられた型番。これからヒトとして生きていくのなら、そのまま名乗るのは不都合もあるだろう。
「エルとかどう?」
「……エル……」
それが、シルヴィから新しい名前の提案だとEP-L217が理解するまでに、少々の間があった。ぱちぱちと目をまたたかせて、口の中でエル、エルと、何度も繰り返し反芻する。始めて誰かに与えられたものを、体に馴染ませるように。
「自分で思いついたらそれで良いけど」
「……ううん。エル きにいった」
他の猟兵からも名前を考えてみてはとの提案はあった。その上で、彼女は自分で考えて「エル」という名を選んだ。
その表情に相変わらず変化は乏しかったが、ほのかに頬が赤みを増したような気がする。それは高揚感――あるいは喜びの証だろう。どうやら気に入ったようだ。
「じゃあ、またね」
「うん また ね」
かくして、EP-L217改め「エル」となった少女は、シルヴィたち猟兵にぺこりと頭を下げて、ひらひらと手を振る。
ここで別れても、同じ世界で生きていくなら、いずれまた会う機会もあるだろう。再会の約束を交わした少女は脆く儚げで――けれども、その瞳にはヒトとしての意思の光が宿っていた。
その後、隣国の保護下に置かれた少女エルは、検査と監視下に置かれながらも、身分と人権の保証を与えられた。
まずは必要最低限の常識や知識を学び、ゆくゆくは普通の子供と同じ学校に通ったり、養子の話なども持ち上がっているそうだ。
機神の座に囚われた少女は、己の足でヒトとしての道を歩み始めた。鋼の檻を壊してくれた猟兵たちの存在を、心に深く刻みつけて――。
大成功
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