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神社の境内に座ったフィッダ・ヨクセム(停ノ幼獣・f18408)は、目の前をゆっくり移動するきらびやかな
山車に目を細めた。
UDCアースの地方都市で、毎年開催される秋祭り。笛太鼓が賑やかにかき鳴らされ、大きな車輪の大きな
山車がキラキラに飾り付けられ、五穀豊穣に感謝し無病息災を祈りながら村の鎮守の神様の許へと帰る。どこぞの祇園の大祭りほど大きくはないが、その分地元の住人が自信と誇りを持って運営している雰囲気が心地よい。
法被に襦袢、股引に地下足袋で決めた老若男女が、独特の掛け声を上げながら山車を引っ張り町を練り歩く。年に一度の祭りを心待ちにしていた人々を見ていると、自然フィッダの頬も緩んでくる。
片膝を立てて心地よい空間に身を委ねていたフィッダは、視界に飛び込んでくる長身の男の姿に思わず顎が掌から落ちた。緑の長い髪を高らかに結い上げて、皆と同じ法被に襦袢姿の男には見覚えがあった。知り合いのグリモア猟兵・リオンだ。リオンはフィッダと目が合うと、ぶんぶん手を振りながら駆け寄ってくる。その姿に、思わず尋ねた。
「……なにやってンだ?」
「やあフィッダさん。見ての通り祭りに参加してるのさ」
胸を張ったリオンは、フィッダの隣に座るとペットボトルを差し出した。有り難く受け取り封を切るフィッダに、リオンは不思議そうに首を傾げた。
「フィッダさんは参加しないの?」
「したら観察できねェだろ? 俺様にとッて祭りは楽しむものじゃなくッてな。「眺めるもの」なンだ」
「へえ、変わってるね」
ヒラリ手を振るフィッダに、グリモア猟兵は目を丸くする。お祭り好きの男には理解しにくいだろうが、フィッダにはフィッダの思いがある。
「イイヨ、俺様は変わり者。それも、個性ッてやつだろ? 笑ッて、今日が過ごせたらそれでいいさ」
「そっか。じゃあ、おにーさんの勇姿を見ててよ♪」
「ついでにな」
それじゃ、と手を振り祭りに参加するリオンの背中に手を挙げて、プカリとタバコを吹かす。タバコの煙越しに祭りを見れば、調子がいい祭り囃子が合いの手を入れてくれて。
賑やかな音楽に人々の掛け声。何を言っているのかは分からないが、楽しそうなことは分かる。
年に一度のハレの舞台。祝い、祈り、寿ぎ騒ぐお祭り日。フィッダは片隅で、この場の空気を味わえればそれでいい。
のんびり見守るフィッダの前で、秋祭りは夜遅くまで続くのだった。
成功
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