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ロスト戦記4~公開処刑リバースセレモニー

#クロムキャバリア #ロスト戦記 #第四話 #ロスト共和国


● ロスト共和国某所
 その日。
 ロスト共和国のマスコミは、ある裁判の結果を一斉に報道した。
 聖都エリュシオンをオブリビオンの大軍から守った救国の英雄。
 バレット兵団という伝説的な部隊を率いた、先の大戦の戦女神。
 今はテロリストの首領となり、活発なテロ活動で社会を混乱に陥れる元凶として捕らえられた兵団長グランマミネルヴァ・ラストの有罪が確定し、公開処刑されるのだという。
 公開処刑を報じた新聞を握り潰したバレット兵団の幹部・スタンは、薄暗がりの中で拳を机に叩きつけた。
「公開処刑だと!?」
「しかも、グランマが命がけで守った聖都エリュシオンで!」
「公開処刑までに必ず救出するんだ!」
「でも、救助に向かった諜報員はみんな失敗したわ。それに、戦力もほとんど残されてないし、救助した後どうすれば……」
 気炎を上げる兵団員達に、一人が冷静に告げる。思わず押し黙ったスタンは、地図の一点を指さした。
「戦力ならある。指揮官シス……いや、セレネが取ってきたキャバリアがまだ手つかずで残っている。これを使って、公開処刑当日にグランマを救助するんだ」
「でも、これを全部使ったらもう戦力が……」
『おやおや、何かご入り用の様でございましょうか?』
 突然掛けられる聞き覚えのない声に、その場にいた幹部全員が一斉に一方向を見た。闇の中から染み出すように現れた黒いローブの男は、警戒も顕に銃口を向ける幹部の姿にくつくつと笑った。
『そう焦ることはございませんよ。私は、貴方様方の味方ですから』
「お前は誰だ!」
『ご安心下さいませ。私は『フェザー』で一介の武器商人を営んでいる者です。此度は、とあるスポンサー ・・・・ 様と共に、貴方様方にご協力させて頂きたくはせ参じました』
「フェザーの……。確か、セレネが取引した商人か」
『はい。その通りです』
 銃口を無視した黒いローブの男は、机に目録を置くとスタンに向けて差し出した。警戒しながらも目録に目を通したスタンは、驚いた顔で男を見た。
「これは……! 本当にこれだけ用立ててくれるのか!?」
『ええ、勿論。セレネ様もご存知ですが、我等の商品の品質は保証致します』
「ううむ。あのアーマーワンを納品した業者なら、間違いないだろう。支払いも待ってくれるんだな?」
『ええ、無論です。只、少々納期にお時間を頂きたく存じ上げます。流石に聖都エリュシオンにこれだけの機体を運び込むとなると、少しお時間が掛かってしまうのですよ。無論、契約書は用意させて頂きますが』
「分かった。それでいい」
「これで、グランマを救出できるわ!」
「銃殺なんてさせるかよ!」
『皆様のご活躍 ・・・ を心よりお待ちしております』
 恭しく一礼した男の周囲で、パチン、パチン、と火打ち石を叩く音が響く。何の音かと見直せば、男の姿はもうそこにはない。無意識に緊張していた息を吐いたスタンは、眉をしかめると男がいた空間を凝視した。いくら見ても、そこに男はもういない。
「薄気味悪い男だ」
「でもこれで、勝算が見えてきたわ!」
 明るくなった見通しに、幹部たちは安堵の息を吐くと作戦会議を始める。作戦を詰めた幹部たちは、頷き合うとそれぞれの持場へと立ち去った。

● グリモアベースにて
「仕事だよアンタ達」
 冷静な声で言ったパラス・アテナ(都市防衛の死神・f10709)は、グリモアに映し出された映像を猟兵に示すとロスト共和国の現状を説明した。
 前回の戦いで壊滅状態に追い込まれたバレット兵団は、起死回生の一手としてグランマ奪還を計画している。公開処刑当日、現在手元にある戦力の全てを投入して郊外から同時多発的に攻撃を仕掛け、混乱に乗じて潜入した精鋭部隊でグランマを奪還。郊外の拠点まで退避するというのが計画だ。
 その後、追加納入されるキャバリアや武装で戦力を立て直して再起リバースを図るのだ。だが。
「この「追加納入されるキャバリアや武装」ってのが厄介でね。全機オブリビオンマシンなんだよ」
 この戦力を手にしたバレット兵団は、全員間違いなくオブリビオンマシンに汚染され尽くされ、傀儡となり破滅する。それを止めるためには、オブリビオンマシンが納品されるより前にバレット兵団を壊滅させ、戦線から撤退させなければならない。
 バレット兵団の第一陣は、聖都エリュシオン各所に潜伏している。潜伏場所を調査すれば、その後の戦いを有利に進めることができるだろう。
 聖都エリュシオンには、前回までの戦いで知り合ったセレネやエリクがいる。彼らに話を聞くのもいいだろう。
「今後の行く末は、アンタ達に掛かっているよ。思う通りに行動しておくれ」
 そう言ったパラスは猟兵達を見渡すと、グリモアの道を開いた。


三ノ木咲紀
 オープニングを読んでくださいまして、ありがとうございます。
 #ロスト戦記 第4話をお届けに伺いました。

 第一章は冒険です。
 情報収集フェイズになります。
 聖都周辺に潜伏したバレット兵団の位置を調査してください。第二章でプレイングボーナスが入ります。
 また、バレット兵団の調査とは別に情報収集をすることができます。
 今接触できるNPCの居場所と、調査できる場所は以下の通りです。1箇所を指定して冒頭に丸数字を記入してください。無い場合や複数箇所の場合はプレイングで判断します。
 ①~⑦は調査できる場所、・はそこにいるNPCです。

① 私立エリュシオン学園【お金持ち学校】
・エリク(大統領子息)
・アキ(エリクの護衛)
・セレネ(大学生)
・学生や教職員
② 聖都庁舎【警戒が厳重】
・アレス(大統領)
・フユ(大統領補佐官)
・聖都庁舎職員
③ エリュシオン拘置所【警戒が特に厳重】
・ミネルヴァ(グランマ)
・看守や職員
④ 酒場兼食堂【新鮮な魚介類や地酒が美味しい】
・サヴィーナ(セレネの元副官で現フリーの傭兵)
・新聞記者や市民
⑤ バレット兵団潜伏先【廃ビルの中】
・スタン(バレット兵団幹部)
・バレット兵団団員
⑥ 青十字協会本部【白亜の美しい建物】
・ナツ(青十字協会幹部)
・青十字協会職員
⑦ 中央広場【公開処刑の準備が進んでいる】
・市民や関係者

 その他、調査したい場所や人などありましたらプレイングまでお願いします。
 エリュシオンと黒服の男には接触できません。
 清浄な水を湛えた水源の湖の湖畔に広がる街です。
 心のままにプレイングをお掛けください。
 断章追加予定です。プレイング受付開始時期はタグにてご連絡します。

 それでは、よろしくお願いいたします。
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第1章 冒険 『調査任務』

POW   :    足を使って情報を得る

SPD   :    話術を駆使して情報を得る

WIZ   :    ハッキングなどで情報を得る

👑7
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● さいごのねがい
 エリュシオン拘置所の奥深く。最も警戒が厳重な場所に足を踏み入れたセレネは、瞑想するグランマの監禁部屋に入った。
「グランマ……」
 背筋を伸ばして座るグランマに話しかけるが、彼女は答えない。しびれを切らしたようにグランマの前にしゃがんだセレネは、肩を掴むと閉じた目を覗き込んだ。
「グランマ、お願い。起き上がるって言って!」
「アンタまでそれを言うのかい」
 ため息と共に目を開けたグランマは、泣きそうなセレネに頭を振った。
「何度来ても、答えは同じ……」
 言いかけたグランマは、ふいに表情を歪めると激しく咳き込んだ。うずくまるグランマの背中を慌ててさすったセレネは、咳の発作が収まるのを待つと体を支えてベッドに寝かせた。その軽く細い体に、医師の言葉が現実味を帯びて胸に突き刺さってくる。
「医者に聞いたわ、グランマはもう長く生きられないって! せっかく帰ってきてくれたのに、こんなのあんまりよ!」
「人は、死ぬのが、当たり前だよ」
「でも、病気を治して長く生きられる手段があるのに……」
「私はねセレネ」
 静かだが有無を言わせぬ口調に、セレネが押し黙る。グランマの真剣な視線を受け止めたセレネは、息を呑んで次の言葉を待った。
「長生きしたいなんて、これっぽっちも思っちゃいないんだよ。自分の人生の引き際を見誤ったら、復讐に呑まれて私は私じゃいられなくなる。そんなのは真っ平なんだよ」
「……」
「だからねセレネ。私の最後の我儘を聞いてくれるかい?」
「何……?」
「公開処刑の最初の一発を、アンタが放って欲しいんだ。打診が行ってるはずだよ」
「私にグランマを殺せっていうの!?」
「空砲でも構いやしないよ。後のことは処刑人が始末してくれる。……私は魂を賭けて守ると誓ったアンタを、守りきれずに死なせたんだ。アンタに殺されるなら本望さ。それ以外のものに殺されたら、死んでも、死に切れやしない」
「そんな……!」
「頼んだよ」
 それだけ言うと、グランマは糸が切れたように眠りにつく。細い手を握ったセレネは、ゆらりと立ち上がるとその場を立ち去った。
ベティ・チェン

水や食料、携帯トイレ等準備
UC使用
刑務官の入出勤に合わせ拘置所内侵入
数日グランマ牢前に潜む
何もなければ処刑日迄潜む

セレネ又はセレネを操る起き上がりエリュシオンが来たら牢内に入るのに合わせ牢内へ
部屋隅に陣取り会話確認
セレネ情報が入った深夜、UC使用のまま寝入っているグランマの口塞ぎ腕捻りあげ耳元で会話
次の扉開閉に合わせ脱出

「キミは、そんなにセレネが憎いか。守れなかった自分のプライドが、大事か。…毒親」
「キミの、しようとしたことは。セレネに、一生消えない傷を、つける。セレネを傷付けて、一生忘れられない存在に、なる。…満足か」
「それとも。セレネの心が、死んで。中身がエリュシオンだけになるのを待って、殺すか。それなら失敗も、プライドも、何もかも満足できる」
「キミの、せいで。兵団も、壊滅する。共に消えて、満足か」
「これが、殺す依頼なら。ボクは喜んで、キミを殺す。依頼するか、キミの死を、今」
依頼あれば即座に背後からクナイで肝臓刺し捻って即死させる

「ボクは、セレネの絶望に、なれない。問題ない」


森宮・陽太

他者絡みアドリブ大歓迎
もし潜入不可能なら却下可

…バレット兵団について最も詳しいのはグランマだろう
拘置所は警戒が特に厳重らしいが…あえて潜入を試みるか

「視力、世界知識」で拘置所の建物の配置を観察し把握したら
通用口や死角から見張りの目を盗み潜入だ
潜入したら適当な看守を指定UCで篭絡した後「グラップル」で気絶させ衣服を奪う
気絶した看守は、拘束後猿轡かましてゴミ箱かロッカーに隠そう
奪った衣服で看守に変装したら、何食わぬ顔でグランマの居場所を調べ、足を踏み入れるぜ
もし他看守や職員にバレそうになったら指定UCで“仲良く”なって切り抜ける

…グランマか
安心しろ、俺は猟兵だ

バレット兵団は公開処刑の場であんたを助けようとしているが
供与された武装がヤバい代物だ
このままだと、バレット兵団は目的を果たせず破滅する

俺たちはそれを止めに来た
彼らが潜伏しそうな場所に心当たりがあれば教えてくれ

…起き上がりか?
俺は良くは思ってねえな
そもそも、失われた命は戻らねえんだ…

…ところで
グランマの顔は俺が“初めて”見る顔か?




 青白い顔をしたセレネが、ゆらりと牢を出ていく。潜んだ天井裏からその姿を見送った
ベティ・チェン(迷子の犬ッコロホームレスニンジャ・f36698)は深夜、音もなく牢に着地すると眠るグランマを睨みつけた。
 この数日、ベティは牢の天井裏にあるわずかな空間に身を潜めていた。刑務官の入出勤に合わせて侵入し、世界を分かつ神意を発動させて機を伺った。偽神兵器が齎す神威を纏ったベティは、視聴嗅覚での感知が不可能になっている。それでも過酷な潜入に違いはないが、水も食料も持ち込んだのだから楽な方だ。
 ここ数日、グランマは取り調べと食事や睡眠の時間以外をほとんどすべて瞑想して過ごしていた。何故動こうとしないのか疑問だったが、その答えはグランマの口から明かされた。そのあまりに身勝手な理由を思い出したベティは、ふつふつと湧き上がる怒りのままにグランマに飛びかかった。
 眠るグランマの口を塞ぎ、ベッドと背中の間にベティの体を滑り込ませる。そのまま腕を捻りあげれば、目を覚まし身じろぎするグランマの耳元で囁いた。
「キミは、そんなにセレネが憎いか。守れなかった自分のプライドが、大事か。……毒親」
 耳元で囁かれる毒舌に、グランマは眉をしかめる。何のことか分からない様子のグランマに再び苛立ちを覚えたベティは、セレネにした仕打ちを分からせてやるように舌鋒鋭く言葉を発した。
「セレネに、自分を、殺させる。……キミの、しようとしたことは。セレネに、一生消えない傷を、つける。セレネを傷付けて、一生忘れられない存在に、なる。……満足か」
「一生消えない傷が、一回で済むんだ。上等じゃないか」
 口の端を歪めるグランマに、ベティは腹立たしげに締め付ける力を強めた。グランマにクビにされたと言って、あれだけ泣いていたセレネだ。下手したら心が死んでしまう。もしかしたらそれが狙いか。
「セレネの心が、死んで。中身がエリュシオンだけになるのを待って、殺すか。それなら失敗も、プライドも、何もかも満足できる」
「殺したって死にはしないよ。あの子は起き上がりだからね」
 静かに答えるグランマに、ベティは更に力を込めた。
「なら、なおのこと、悪い。これから一生、グランマを殺したっていう十字架を、背負わせるのか」
「遅かれ、早かれさ。あの子以外に殺されたら、私は死んでも死にきれない」
「試して、みるか?」
 腕の中で身じろぐ、枯れ木のような体に嗜虐心が刺激される。
 ああ。ここで殺してやろうか。ベティが暗殺してしまえば、少なくともセレネの心の傷の方向を、自分自身からベティに変えることができる。
 心を昂らせたベティは、苦無をグランマの右肋骨の間、肝臓の真横に突きつけた。鋭い切っ先が衣服を裂き、肌の真上で静止する。あとひと突きするだけで、グランマを確実に殺すことができる。セレネが背負う十字架を、ベティが代わりに背負うことができる。
「これが、殺す依頼なら。ボクは喜んで、キミを殺す。依頼するか、キミの死を、今」
「やめろベティ!」
 突然掛けられる聞き覚えのある声に、ベティは一瞬硬直する。その隙に苦無を叩き落した青年の姿を、ベティは睨みつけた。


 ベティの手から叩き落した苦無を、部屋の端に蹴り飛ばした森宮・陽太(未来を見据える元暗殺者・f23693)は、反射的に咳き込むグランマの背中をさすった。
 バレット兵団について最も詳しいのはグランマだろう。拘置所は警戒が特に厳重らしいが、あえて潜入を試みた陽太は看守の服装をしていた。拘置所の建物を観察しおおよその構造を把握したら、通用口や死角から見張りの目を盗み潜入。適当な看守を篭絡した後、気絶させて拘束して猿轡かましてロッカーに放り込んで鍵かけて。
 奪った衣服で看守に変装し、何食わぬ顔でグランマの居場所に足を踏み入れたらベティとグランマの声がしたのだ。ベティのユーベルコードは、声までは隠蔽できないのだ。
 他の看守は籠絡して遠ざけてあるから、多少話もできるだろう。ようやく落ち着いたグランマに、陽太は静かに話しかけた。
「看守が、何の用だい?」
「安心しろ、俺は猟兵だ」
「猟兵が、何の用だい?」
 再び問い直したグランマは、ヘッドボードに背中を預けると陽太とベティを見渡した。落ち着いた様子に安堵した陽太は、用件を伝えた。
「バレット兵団は、公開処刑の場であんたを助けようとしている」
「そうかい」
「だが、供与された武装がヤバい代物だ。このままだと、バレット兵団は目的を果たせず破滅する」
「……」
「俺たちはそれを止めに来た。彼らが潜伏しそうな場所に心当たりがあれば教えてくれ」
「キミの、せいで。兵団も、壊滅する。共に消えて、満足か」
「ベティ」
 冷酷な目で見下すベティをたしなめる陽太に、グランマは静かに問いかけた。
「共に消えられるなら、まだいいんだけどね。……猟兵の」
「森宮・陽太だ」
「陽太。アンタは起き上がりを知ってるだろう。どう思う?」
「起き上がりか? 俺は良くは思ってねえな。そもそも、失われた命は戻らねえんだ……」
「そうだね。それが正常だ。……私はね。絶対に成し遂げたいことがある。それが完遂すれば、桁違いに多くの人が死ぬ。ウェルディンでもリ・ヴァル帝国でもね。私が起き上がったら、死なないから誰も止められない。それが嫌なら私を殺して、『個人的な悲劇』の範囲で収めておくれ」
「成し遂げたいことって、何だ?」
「エリュシオンを殺す。そうなりゃ水源は枯れ果てる」
「そんな……!」
「バレット兵団が潜んでいそうな場所は……」
 陽太を無視したグランマは、早口でいくつか地名をあげる。具体的にどういった場所かまでは現状分からないが、追加調査をすれば分かることだ。地名を記憶する陽太に、グランマはベッドに潜り込むと手をひらりと振った。
「用件はそれだけかい? なら寝かせておくれ。……ベティとか言ったか」
「なに」
「アンタがセレネの友達でいてくれて、心強いよ」
「友達……」
 目を大きく見開いたベティは、何かを振り切るように首を大きく横に振った。
「ボクは、セレネの絶望に、なれない。問題ない」
「そうかい」
 それだけ言ったグランマは、静かに寝息を立てる。牢を後にした陽太は、拘置所を出ると仲間に情報を共有するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

雁帰・二三夫

「わたくしクロムキャバリア世界の経験値を穏便に積みたかっただけなのですが…公開処刑?」

「電流や銃器はあってもガス噴霧の罠まではないと思うのですよ」
尾行されないよう注意し廃ビル群へ
多人数が潜伏可能で他から監視可能な2箇所は出入口ある廃ビル探し
大まかな目星後自分も隠れて出入り人数確認
潜伏先確定したら可能な限り物陰伝い内部突入
視聴覚頼りUC連発
兵団員眠らせ制圧
区画制圧したら増援に注意しつつ本人達の衣服で手足縛り拘束
全制圧後ゆっくり幹部探し
所持品や衣服から目星つけた該当者のみ起こし会話

「わたくしは猟兵です。団長救出を私達に任せて退いて貰えませんか」
「貴方達が手配した機体、全てオブリビオンマシンなのですよ。貴方達がその機体で出撃するなら、私達はまず貴方達を排除する必要が生じます。貴方達も私達も、誰も処刑中止に間に合わなくなります」
「これは兵団壊滅と兵団員の起き上がり化を狙った敵の攻撃です。私達が団長を救出する代わりに機体入手先を教えて欲しいのです。貴方にはそれを他の拠点とも交渉して欲しいのです」




 ざわつく雑踏を見渡した雁帰・二三夫(引きこもりたい住所不定季節労働者・f37982)は、飛び交う不穏な単語に頭を掻いた。
「わたくしクロムキャバリア世界の経験を穏便に積みたかっただけなのですが……公開処刑?」
 有識者の持論を書きたてた新聞を覗き込んだ二三夫は、公開処刑の正当性を訴える論調に肩を竦めると号外をゴミ箱に放り込んだ。何かを煽り立てるような書き口は、処刑される当人を崇拝する人間を掻き立てるには十分だろう。だが、予知によるとそれは破滅への第一歩らしい。これを止めるには、何と言っても当人に働きかけるのが一番だ。
 近隣の地図を手に入れた二三夫は、廃ビルが立ち並ぶエリアを眺めると潜伏先の目星をつけた。
 探すのは、多人数が潜伏可能で他から監視可能な2箇所は出入口ある廃ビル。条件に合うビルの数は予想以上に多く、時間がかかりそうだ。覚悟を決めて片っ端から当たろうとした時、猟兵ホットラインが鳴った。
 陽太が聞き出した地名に、赤ペンで丸をつけていく。二三夫が目星をつけたビルと照合すると、一気に候補が絞られていく。目星をつけた廃ビルを張り込んだ二三夫は、スタンとかいうリーダーが地下へと入っていくのを見ると指を弾いた。
「ビンゴ。あそこですね」
 スタンが地下へ潜って、少し待って行動を開始。可能な限り物陰伝い内部突入すると、警備らしい男の肩を叩いた。
「誰だ!?」
「お疲れ様です。少し休憩しませんか?」
 にっこり笑って浮かべる菩薩のようなアルカイックスマイルを見た兵団員たちが、次々に眠りについていく。深く眠った男の服を脱がせては、それでしっかり縛って転がして……の作業を繰り返し、見咎めた兵団員に再び笑顔を振りまいて。
 笑顔を連発して頬がひきつりかけてきた時、最後の扉にたどり着いた。
「電流や銃器はあっても、ガス噴霧の罠まではなくて良かったですよ」
 筋肉痛を起こしかけた頬をさすった二三夫は、幹部がいる部屋に入ると微笑んだ。
「誰だ……」
疲れた戦士おっさんには……良質な休息が必要なんですよ。今は誰よりもわたくしが休みたいので、とっとと寝てください」
 だいぶ私情が入った詠唱と同時に放たれるアルカイックスマイルに、その場にいた全員が眠りにつく。もうしばらく微笑みたくないかな。
 さておき手早く制圧した二三夫は、スタンを見つけ出すと軽く頬を張り叩き起こした。気がついたスタンは、二三夫をにらみつけると警戒も顕に言った。
「お前は誰だ!?」
「わたくしは猟兵です。早速ですがスタンさん。団長救出を私達に任せて、退いて貰えませんか」
「何を馬鹿なことを! 冗談じゃない!」
「伊達や酔狂でこんなことは言いませんよ。……貴方達が手配した機体、全てオブリビオンマシンなのですよ。貴方達がその機体で出撃するなら、私達はまず貴方達を排除する必要が生じます」
「そんな馬鹿な」
「信じなくても結構ですが、貴方達も私達も、誰も処刑中止に間に合わなくなります。これは兵団壊滅と兵団員の起き上がり化を狙った敵の攻撃です」
「それが本当だったとして、俺達を助けてお前たちに何の得がある?」
「私が欲しいのは、あなた方が交渉した男の情報です。私達が団長を救出する代わりに、機体入手先を教えて欲しいのです。貴方にはそれを他の拠点とも交渉して欲しいのです」
「ううむ……」
 唸ったスタンは、二三夫の提案に首を横に振った。
「残念だが、俺は何人かいるバレット兵団のナンバー3の一人に過ぎない。最年長のまとめ役だが、血気盛んな若いのは止めても止まらないだろう」
「そうですか」
「それに、他の猟兵もそう思っているのか?」
 スタンの指摘に、二三夫は肩を竦める。確かに、二三夫はこの件に関わる猟兵の総意を伝えている訳ではないのだ。
「お前さんがどんなに強くても、一人じゃどうしようもない。期日までに、過半数の猟兵の合意を取り付けてくれ。そうすれば、こちらも仲間たちとの交渉の余地がある。だがその場合でも、全員は止められないと思ってくれ」
「それで結構ですよ」
「機体入手先は、相手との信頼関係もある。グランマの指示があれば教えよう」
「分かりました」
 頷いた二三夫は、スタンと連絡先を交換すると廃ビルの外へと出た。照りつける太陽を眩しそうに見上げた二三夫は、仲間猟兵と連絡を取るとその場を後にした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ネリッサ・ハーディ
【SIRD】のメンバーと共に行動


正式なアポを取って、大統領との面会を求めます。恐らくエリク救出に局員が貢献したSIRDの長と名乗れば、そう無碍にはされない筈。戦闘する気は毛頭ありませんが、念の為周囲に夜鬼放ちます。

多忙の中、時間を割いて頂きありがとうございます、大統領閣下。
本題に入りますが…今回の公開処刑の件、どういうおつもりなのでしょうか?仮にグランマを処刑した場合、バレット兵団の反発は必至。これではまるで、バレット兵団が暴発するのを望んでいる、と私には感じられるのですが?それとも、他に何か意図がおありなのでしょうか?

最後に、エリクさんについての考えや今の境遇にしたのは何故か、を聞きます。




 公開処刑にざわつく市街地を抜けて聖都庁舎へと向かったネリッサ・ハーディ(クローク・アンド・ダガー・f03206)は、受付にアポイントメントを伝えると丁重に待合室へと通された。
 周囲を見渡し、聖都庁舎内の情報をチェック。戦闘する気は毛頭ないが、こちらになくてもあちらにあるかも知れない。念のため夜鬼を放ち警戒するネリッサを、職員が迎えに来た。
 身分証明やボディチェックを受けること数回。応接間のドアをノックし入室したネリッサを、ソファに座っていた男が出迎えた。
 ロスト共和国大統領のアレス・レナトゥスは、鋭い目をした壮年の男だった。高級なスーツに身を包んだ男は、かつて軍人だったのだろう。鍛えられた体をした男からは、拭いきれない軍の気配がした。
 入室したネリッサは、柔和な笑みを浮かべた大統領に敬意を示すと凛とした口調で名乗った。
特務情報調査局SIRD局長の、ネリッサ・ハーディです。多忙の中、時間を割いて頂きありがとうございます、大統領閣下」
「きみがエリクを救ってくれた、暴走列車の英雄スタンピード・ヒーローか。お会いできて光栄だ」
 立ち上がり握手を求める大統領に握手で応えたネリッサは、勧められたソファに腰掛けた。絶妙なタイミングで出される香り高いコーヒーをたしなみ雑談で場を和ませたネリッサは、カップをソーサーに置くと本題に入った。
「……ところで。今回の公開処刑の件、どういうおつもりなのでしょうか?」
「どういう、とは?」
「仮にグランマを処刑した場合、バレット兵団の反発は必至。これではまるで、バレット兵団が暴発するのを望んでいる、と私には感じられるのですが?」
「私はロスト共和国大統領としては・・・・・・・・・・・・・、治安維持に責任がある立場。今やテロリストと化したバレット兵団を叩かなければ、市民の生命と安全が守れないのですよ」
 ニヤリと微笑みコーヒーを口にする大統領に、ネリッサの指摘が間違っていないことを悟った。大統領側としては、バレット兵団はかつて政府側として戦ったとしても、いやだからこそ、治安のためには叩いておきたいのだろう。
個人としては・・・・・・、他に何か意図がおありなのでしょうか?」
「さて。質問の意図を図りかねますね」
 困った顔をして肩を竦める大統領は、したたかな政治家の顔をしている。例え裏になにかあっても、それを追求するには手札が少ない。話を変えたネリッサは、エリクについて尋ねた。
「エリクさんはお元気ですか?」
「ええ。おかげさまで」
「先日エリクさんにお会いした時、「お父様のことはよく分からない」と不安そうでした。その後、話はされたのでしょうか。友人として気になります」
「ちゃんと話もできました。バレット兵団のセレネ嬢を救いたい、という希望を叶えるように、最大限努力したつもりです」
「そうですか」
「あの子とは離れ離れの時間が長かった。これからはその溝を埋めて……」
 そう言った大統領は、目を細めるとふいに口ごもる。コーヒーを飲み干して誤魔化す大統領の態度に、ネリッサは再び問うた。
「ご子息をそんなに愛していらっしゃるのでしたら、今の境遇にしたのは何故なのでしょう? 本国で教育を受けさせた方が、エリク君にとっても……」
「分かった風な口を聞くな!」
 ふいに激高した大統領は、ネリッサの視線に我を取り戻すとソファに座り直した。目頭を抑えた大統領は、頭を振るとため息をつく。
「あの方の意向に逆らえるなら、とうの昔に……。失礼。私としてもそうしたかったのですが、そうもできない事情がありまして。特にあの子の母親が旧リィズ王国に亡命しようとしてからは……」
「旧リィズ王国?」
 突然出てきた第三国の名前に、思わず聞き返す。しまったと言うように言葉を濁した大統領は、立ち上がると秘書官を呼んだ。
「あの子は、この共和国にとって……いや、起き上がりにとって最も大切な子です。仲良くしてくれてありがとう。次のアポがあるので、ここまでで」
「ネリッサ様、こちらへ」
 口を閉ざした大統領からは、もう何も聞き出せないだろう。素直に立ち上がったネリッサは、大統領に握手を求めた。
「承知しました。本日はありがとうございました」
 握手した後に慇懃無礼に出口へ誘導する秘書官に従い、ドアの外へと出る。黙って見送る大統領の視線を背にしたネリッサは、聖都庁舎を後にすると仲間と情報を共有した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラムダ・マルチパーパス
SIRDの皆様方と共に行動
アドリブ及び他者との絡み歓迎
⑦で情報収集

さて、バレット兵団のグランマ様の公開処刑という話ですが…わたくしは、その公開処刑が行われるという中央広場を重点的にサーチ致しましょう。
恐らく、バレット兵団が仕掛けてくるとしたら、グランマ様の移送中か、この中央広場でしょうね。中央広場の地形や道路網を調べ、どの辺から敵が来るかを予測。できれば、刑務所から広場までの護送ルートも分かれば良いのですが…まぁ難しいでしょうね。

それと広場付近での市民や関係者に話を伺ってみます。皆さん、今回の公開処刑をどう思ってらっしゃるのでしょうねぇ。

知り得た情報は、通信で局長様や白斗様に逐次報告します。


藤崎・美雪

他者絡みアドリブ大歓迎

あー…黒幕はグランマの存在自体を最大限利用するつもり?
バレット兵団に対する罠という見方もできなくはないが…さすがにないか
ま、素直に止めよう、うん

私は中央広場であえて市民たちに聞き込もう
関係者の目や耳が届かぬ場所にいる市民を捕まえて
「コミュ力、礼儀作法」で丁寧に接するよう心掛けながら
この広場全体を見通せそうな場所がないか聞いてみよう

聞いたら指定UCで呼んだもふもふさんを向かわせ確認してもらう
その後、猟兵全員と情報共有だ

…これは完全に私的な質問ではあるが
救国の英雄たるミネルヴァさんは、なぜテロ活動に身を投じたのだろうな?
市民たちの視点でどう見えていたのか、聞いてみたい




 公開処刑が行われる中央広場に立ったラムダ・マルチパーパス(ドロイドは電気羊の夢を見たい・f14492)は、改めて周囲の様子を確認した。
 市街地にある広々とした広場の周囲には、政府関係の建物などの大きな建物が立ち並んでいる。拘置所は中心市街地から外れた場所にあり、直線距離で繋ぐ道は当日通行止めになるようだ。まさか真っ直ぐここを通りはしないだろうが、見せしめに通るかも知れない。今ここでパッと見ただけでは、なんとも言いようがなかった。
 まだ日があるためか閉鎖などはされていないが、武装した兵士がパトロールしていて威圧的な雰囲気を出していた。
「やはり、物々しい警備ですね」
「あー……黒幕はグランマの存在自体を最大限利用するつもり?」
 同じく中央広場を調査する藤崎・美雪(癒しの歌を奏でる歌姫・f06504)が、ラムダの隣でぽそりと呟く。軍人の装備を横目で確認したら、軍人に睨まれたので肩を竦めて立ち去る。物見遊山の見物客だと思われたのだろう。呼び止められはしなかったが、これ以上ここにいても仕方がない。中央広場を抜け出した二人は、人目につきにくい路地に入ると周囲の地形を改めて確認した。
 公園の周囲は高い建物。地図を広げて中央広場に赤丸をつければ、その地理的状況がひと目で分かる。バレット兵団が潜伏している可能性の高い拠点の場所も書き加えれば、当日の動きがなんとなく読めてくる。
「恐らく、バレット兵団が仕掛けてくるとしたら、グランマ様の移送中か、この中央広場でしょうね」
「そうだな。バレット兵団に対する罠という見方もできなくはないが……さすがにないか。ま、素直に止めよう、うん」
 腕を組み何かに納得した美雪と共に町中に歩き出したラムダは、二十代の若い女性二人に話しかけた。
「なんだか、物々しい警備ですね。ここで何かあるんですか?」
「今度、ここで公開処刑があるのよ」
 さらりと言う女性に、ラムダは興味深そうに繰り返した。
「公開処刑、ですか」
「お茶を奢るから、詳しい話を聞かせてもらっても?」
「いいわよ」
 軽く答える若い女性二人を誘ったラムダと美雪は、手近なカフェの席についた。カフェラテを美味しそうに飲む女性に、ラムダは改めて尋ねる。
「私達は旅行者なのですが。公開処刑なんて穏やかじゃないですね。皆さん今回の公開処刑をどう思ってらっしゃるのでしょう?」
「そりゃ嫌よ。……10年前かな。この街が敵の大軍に襲われた時、私はまだ12歳くらいだったわ。避難所に隠れて、すごく怖かったのを覚えてる」
「私も。よく生きてられたわよね。その時、守ってくれたのがエリュシオンを守っていたバレット兵団で」
「戦争には勝ったけど、グランマのお孫さんが亡くなったって。その後全然表舞台に立たなくなったけど、1年前に突然あの犯行声明でしょ?」
「正直、ショックよね。イーステル州の大規模断水、バレット兵団の仕業だって聞いたわ」
「サウスタウンもでしょ? 何か事情があるかもだけど、お願いだからやめて欲しいって思うわ」
「本当本当。断水は辛いもの」
 口々に言い合う女性の話に礼を言ったラムダは、更に詳細な調査に向かうのだった。


 ラムダと別れた美雪は、改めて市民に聞き込みを開始した。行き交う市民を見渡して、聴き込む人を選ぶ。さっきは二十代前半の若い女性だったから、今度は中年以上の男性がいいだろう。見方がきっと違うはずだ。
 関係者の目や耳が届かない場所にいる市民に話しかけた美雪は、礼儀正しく一礼するととりあえず道を尋ねた。和やかに話をしてくれる男性に礼を言った美雪は、慎重に本題に入る。
「ありがとう。……少し気になっているのだが。救国の英雄たるミネルヴァさんは、なぜテロ活動に身を投じたのだろうな?」
 美雪の問に、男は腕を組み首を傾げた。
「うーん。起き上がりを否定して、起き上がりをなくすんだ! みたいなことを言ってたから。何かあったんじゃないか?」
「グランマは誰かに操られてるんだ! グランマは俺達の命を守ってくれたのに、その俺達の生命を守ってくれる起き上がりを完全否定するだなんてするはずがあるものか!」
「陰謀論だろ? ま、お前の気持ちも分かるよ。僕も起き上がりだし」
「俺もだ! この街じゃ、起き上がってない人の方が少ないからな」
「この公開処刑でグランマが起き上がってくれたら、きっと考えを改めてくれるさ。なにせ、起き上がりは皆、エリュシオンの民で仲間だからな」
「そうか」
 ヒートアップしたように口々に言い合う男たちに、美雪は腕を組み考え込んだ。さっきの女性も男性たちも、市民達は「グランマはテロリスト」「起き上がりを否定」「水施設を破壊している」といった情報のみを与えられているようで、それ以上の新しい情報はなさそうだ。そう思い礼を言った美雪は、物陰でもふもふさんを召喚すると広場周囲にある建物を指差した。
「もふもふさんや。この周囲にある高い建物を調べてきてくれないか?」
「ンベメ!」
 敬礼したもふもふさんが、138体のもふもふした小動物の影になり四方へと散る。すぐに目につく高い建物は兵士が警戒に当たっていて、近づくには何らかの手立てが必要だろう。
 この広場のシンボルなのだろう。大きな時計台が設置されている場所の周囲は仮設の壁が作られ始めていて、軍人が慌ただしく動いている。建物からも離れ、狙撃も通じにくい。あそこがグランマの処刑場所なのだろう。
 そうすると、少なくとも南側から北上するルートは確実だろう。ここから少なくとも1部隊が侵入してくるに違いない。
 更に詳しく地形を調べた美雪は、情報を共有するとラムダと合流するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

九十九・白斗
【SIRD】
局長が情報収集するのはよくわかるが、ラムダ・・・
クロムキャバリアはインターネットとか普及してないだろうし、行けるのか?
(戦闘ドロイドが中央広場で情報収集すると聞いて訝しんでる)

まあいいや、変に器用なところがあるしよくわからん方法で何とかしそうだ

俺は酒場で情報を集めてくる
酒代は経費で落ちるか?

酒は潤滑剤だ
酔わせりゃ情報も落ちてくるだろう


店に行ったら「今日は俺の誕生日なんだ、皆一杯おごるから祝ってくれよ。マスターみんなに酒を出してくれ」

一杯やりながら、酒場の人間に話を聞いて回ろう




 ラムダと美雪が情報収集をしている頃。
 中央広場にほど近い酒場へと足を運んだ九十九・白斗(傭兵・f02173)は、賑わう店内を覗き込んだ。まだ夜には早い時間だが、気の早い呑兵衛達が酒肴を囲って陽気に喋っている。中に入ろうとした白斗は、視界の端を横切るラムダの姿に思わず視線をそちらへとやった。
 若い女性数人を、カフェに誘っているらしい。ラムダも美雪も女だから、酒場よりカフェというのはなんとなく分かる。そういえば今頃、局長も情報収集に大統領と面会しているはずだ。
 殲禍炎剣ホーリー・グレイルにより小国家単位に分断されたクロムキャバリア世界でインターネットが発達しているかどうかは小国家による。戦闘ドロイドが中央広場で情報収集するには不利なのでは? と訝しんだが、直接人と会って話を聞くならば情報が手に入るだろう。白斗もラムダに倣うとしようか。
 酒場に足を踏み入れた白斗は、賑やかな店内に表情を崩すと常連のような気軽さでカウンター席に座った。
「親父。今日は俺の誕生日なんだ、皆一杯おごるから祝ってくれよ。マスターみんなに酒を出してくれ」
「いいのか?」
「嬉しいねぇ」
 白斗の声を聞きつけた陽気な呑兵衛が、白斗の隣にグラスと共に移動してくる。商売のチャンスとでも思ったのだろう。店のマスターはしばしカウンターの裏側にしゃがむと、青いラベルの酒瓶を取り出した。
「お? それはおめでとう! なら秘蔵の酒を出させてもらうよ!」
「いよっ! 待ってました!」
「ブルーラベルの10年ものだ。深層水仕込みの逸品だぜ?」
「いいのかよ親父? この酒蔵はもう無いんじゃないか?」
「バレット兵団に破壊されてな。いい酒を作る連中だったのに。だが憎い兵団がなくなる前祝いだ! ぱあっとやってくれ!」
 予想以上に大きな歓声に、白斗は振り返った。噂を聞きつけた呑兵衛達が集まっているらしい。ユーベルコードの効果とはいえ、大変なことになってきた。
 ブルーラベルの10年ものがどんな酒かは分からないが、高そうな瓶とラベルの酒はそれなりに値が張りそうだ。それを全員にとなるといくらかかるのか。酒代は経費で落ちるか? と脳裏をよぎるが、猟兵には言い値の給料がある。問題ない。
 グラスに注がれる琥珀色の酒は、見た目はウイスキーに近い。ロックで受け取った白斗は、芳醇な薫りの中に感じる違和感に思わず手を止めた。
 骸の海の匂いがする。改めて嗅ぎ直したが、もう普通のアルコールに紛れて分からない。思わず動きを止めた白斗に、マスターは怪訝そうな顔をした。
「どうした?」
「いや。旨そうな酒だと思ってな。今日は俺の奢りだ、盛大にやってくれ!」
「お大尽に乾杯!」
「「「「「乾杯ーー!」」」」」
 鳴らされるグラスに干される酒。グラスを呷った白斗は、喉を滑り落ちる芳醇な酒に思わず目を細めた。スモーキーな味わいの奥にあるラズベリーを思わせる甘さがたまらない。
「旨いな。これはどういう酒なんだ?」
「これはエリュシオンの深層水仕込みでな。青十字社が運営してた酒蔵の蒸留酒ウイスキーだ」
「そうか」
 出された白身魚のあんかけを食べれば、ふわりと柔らかい白身魚に甘酸っぱいあんが絡んで旨い。だが気にしてよく味わえば、骸の海の風味がする。初めて中枢に来た白斗だから分かった程度だが、確かにする。
 今すぐどうこうなるレベルではないし、自然界にもそのくらいは染み出していると言われればそれまでかも知れない。違和感を胸に抱いたまま、白斗は大いに酒盛りを楽しむのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『アーマーワン』

POW   :    ドレスアップ・コール○○!
自身の【キャバリア】を【武装換装し、その戦闘における最適な形態】に変形する。攻撃力・攻撃回数・射程・装甲・移動力のうち、ひとつを5倍、ひとつを半分にする。
SPD   :    チェンジマイズ
防具を0.05秒で着替える事ができる。また、着用中の防具の初期技能を「100レベル」で使用できる。
WIZ   :    シンクロ・オーバードライブ
【戦場に最適な支援武装】と合体し、攻撃力を増加する【EPインゴットエクステンダー】と、レベルm以内の敵を自動追尾する【BX拡散ホーミングレーザー】が使用可能になる。
👑11
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 公開処刑当日。
 アーマーワン部隊を率いた若い指揮官・ヤングは、血気盛んな部下たちを前に大声で檄を飛ばした。
 目の前にいるのは、アーマーワン部隊。グランマを救助するまで、ヤングと部下は諦めない。10年前の戦争で救われた命を、今こそ返す時が来たのだ。
「諸君! 今、我らがグランマの命は風前の灯火である! 大統領はあろうことか、グランマの孫娘のセレネに、最初の一発を放たせ用としている! こんな非道を許してもいいのか!」
「許せない!」
「極悪非道なことを!」
 口々に言い合う部下たちを落ち着けたヤングは、拳を振り上げると中央広場を指さした。
「今こそ立ち上がり、グランマを救助するぞ!」
「「「おー!!!」」」
「全員、突撃!」
 アーマーワンに乗り込んだ部下たちの先頭に立ったヤングは、立ちふさがる正規軍のキャバリアを排除しながら一直線に中央広場へと躍り込むのだった。

※ ※ ※
 判定の結果、セレネはグランマに最初の一発を放つために刑場に立ちます。エリュシオンではありません。
 ヤングに従ったアーマーワン部隊は、一気呵成に中央広場に躍り込んでいきます。
 スタン達の部隊は、半分以上の猟兵が「グランマを救助する」というプレングを掛けたら猟兵達の指示に従います。なければ、ヤング隊の援護のために各所で戦闘を開始します。
 表立ってバレット兵団に加勢したり正規軍の妨害をしたりグランマを救助しようとすると、今後ロスト共和国内での猟兵の立場が著しく悪化しますのでご注意ください。
 便宜上、正規軍のキャバリアもアーマーワンとします。

 中央広場の時計台の足元に特設された舞台の上で公開処刑が行われます。周囲は警備が厳しく、ドーナツ状に間を開けて民間人が詰めかけています。
 周囲の建物は軍人が警戒していますが、広場ほどではありません。

 セレネはグランマと同じ舞台に立ちます。その後ろには、処刑人達がいます。処刑が始まる前に、何らかの手段でセレネと話をすることは可能です。何もしなければ、セレネはグランマの望みを叶えることを優先します。
 エリクと大統領は、特別席で公開処刑を見守っています。この章での接触はできません。
 目隠しをされたグランマは、時計台の足元に設置された処刑台に連れて来られます。抵抗はしません。拘置所からの移送ルートはある程度割り出せます。

 それでは、よろしくお願いします。
ベティ・チェン
「昨日の敵は、今日の友。今日の友は、明日の仇敵」
「敵と味方なんて、2秒で入れ替わる。好きな敵と嫌いな味方は、いて当然」
「セレネ。キミは本当に、グランマの望みが殺されることだと思うのか」
「グランマは。自分も、キミも、ロスト共和国も犠牲にして。エリュシオンを、屍人を止めたいだけ。望みはたった1つしか、叶わない。キミも、望め、セレネ。キミのたった1つを。そのために何が出来るかを」
「ボクは、猟兵だ。オブリビオンを倒し、世界を守る。だから。グランマを助け、ロスト共和国に潜むオブリビオンを、倒す。今日ボクは、キミの敵になる」
「選ばねば、流される。それも、選択。選べ、セレネ」
移動前セレネと話したらスペランサに騎乗
必要なら短距離飛行し直接中央広場へ
巨神の大剣でUC使用
グランマを銃殺しようとする敵を(必要ならセレネごと)吹き飛ばし処刑台ごと抱えて逃走
鼻血や血涙流しつつスペランサ専用武装も惜しまず使用
パレット兵団の騎乗していない団員にグランマを引き渡したら共和国の追手も兵団の騎乗者もまとめてUCで弾き飛ばす


ネリッサ・ハーディ
【SIRD】のメンバーと共に行動

情報収集の観点から、共和国軍とバレット兵団が交戦する隙に、グランマとセレネさんの身柄を押さえます。
猟兵である事を悟られない様フード付外套で変装。中央広場付近で両軍が交戦しているタイミングを見計らって、UCで周囲の混乱を拡大しつつ、両者に接触、そのまま脱出を試みます。

(グランマに対し)不躾ながら、あなたの自己満足にセレネさんを巻き込むのは、如何なものでしょうか。それに、残り余命少ないとおっしゃいますが、その残った時間で、まだやれる事はあるのではないでしょうか?
ああ、それとこれを。(以前セレネから受け取った手紙を出し)これでようやく、セレネさんの依頼を果たせました。


ラムダ・マルチパーパス
SIRDの皆様方と共に行動

コマンドを確認。これより、グランマ様及びセレネ様の救出の為、局長様達を全力で支援致します。

現れたバレット兵団機に対し攻撃を加えつつ、状況とタイミングを見計らい、処刑が行われる中央広場に向けてUCの特殊煙幕弾を射出、中央広場を攪乱し、局長様達が救出し易く且つ脱出し易い様に支援致します。
もし、共和国軍機が脱出の妨げになった場合、誤射を装って手足を射撃して行動をし阻害。

(故意ではなく事故である事を装う為に、あえて全周波数帯の無線で)ありゃ、申し訳ありません。どうやら、わたくしのFCSが不調の様です。まぁ戦闘では偶に起きてしまう不幸な事故な訳でして。以後気をつけます、はい。


雁帰・二三夫
グランマ救助

「ロスト共和国の起き上がり推進政策は、結局屍人帝国がやっていることと同じです。屍人帝国に与する必要、ありますか?」

「オブリビオンが率いる敵性国家に下るより、反抗する貴方達と組む方が良いとわたくしは思います。ただ、わたくし達猟兵の第一義はオブリビオンの排除です。貴方達がその機体を捨て再起を目指すのでなければ、合流先でわたくし達が貴方達を排除しなければならなくなるのをお忘れなく。敵の敵も敵、という三つ巴の争いになるかどうかは貴方達次第です。ではグランマ救出後にまたお会いしましょう」

「すみませんリアスさん。貴方と相性が良い合体技は必ず作りますから」
他の猟兵が仕掛けなければ飛行し直接中央広場へ(他者が仕掛けるならそちらへ行き支援)
リアスに背中のキャノン砲連射依頼
操縦席飛び降り熱血バット振り回し敵吹き飛ばす
操縦席へ戻りつつリアスにグランマを拘束柱ごと引き抜いて貰いスタンの方へ移動
距離稼げたらグランマ解放し共に操縦席へ
スタン達が機体を降りるのを条件にグランマ引き渡し敵機をキャノン砲で破壊


藤崎・美雪
【闇黒】
【WIZ】
アドリブ連携大歓迎

あのー…陽太さん
そこで私に協力要請して来るとか、相当肝が据わってますネ
そもそも、エリク誘拐を阻止した一因は私の歌なんだぞ?
ま、グランマ処刑の阻止及び救出の方針には賛同できるから、協力するが
…いや、市民たちの反応が、世論誘導どころか洗脳の気配すらあったのでな

私は市民たちとよく似た衣服に着替え、ガスマスクを用意した上で、処刑を見物する市民たちに紛れて待機
その上で、バレット兵団に繋ぎを取れる猟兵経由でスタンたちに要請
「バレット兵団は正規軍のキャバリアを足止め後、即機体を放棄し撤退してくれ!!」
異論出そうだけど、オブリビオンマシンは残しておけぬので、機体放棄はマジで頼む…

後は煙幕弾やら閃光手榴弾やらで刑場が煙に閉ざされたら
指定UC発動しネズミサイズのもふもふさんを限度いっぱいまで召喚
もふもふさんのうち20体程度は、眠り粉散布で刑場周辺の人間と正規軍キャバリアの搭乗員を纏めて眠らせてくれ
残りは中央広場にて魅了の踊りをして、市民たちの気を惹きつけてもらいたい


森宮・陽太
【闇黒】
【SPD】
アドリブ連携大歓迎

話を聞いて、腹は決まった
この処刑、阻止させてもらう

俺はエリク誘拐に加担した身
大統領やその側近たちにはテロリストと認識されているだろうから、グランマ救出に動いたとしても不自然ではないはず
他猟兵達の立場を徒に悪化させないために、あえて大立ち回りを買って出よう
美雪、無茶を言うがサポート頼むぞ

煙幕弾と閃光手榴弾、ガスマスク用意
グランマの移送ルートを割りだしたら、移送担当者のひとりを「グラップル」で気絶させ、「早業、変装」して「目立たない」ように入れ替わりたい
無理なら素直に移送ルートを追跡

処刑開始直前、グランマとセレネの位置を確認次第、煙幕弾→閃光手榴弾の順で「投擲」し正規軍無力化を狙う
刑場が煙幕に包まれたら指定UC発動し『零』を召喚
『零』、セレネの耳元で「後悔はないか」と囁き気を逸らしたら首筋に手刀入れ気絶させてくれ
俺は変装を解きつつ「死ぬのはまだ早い」とグランマの耳元で囁き拘束を解く
ふたりを確保したら「怪力」で抱え上げ、移送ルートを「ダッシュ」で逆走し撤退だ




 公開処刑前夜。
 セレネが宿泊するホテルに忍び込んだベティ・チェン(迷子の犬ッコロホームレスニンジャ・f36698)は、部屋で一人マスコットを弄ぶセレネの前に立った。ホテル全体もこの部屋の前にも警備がいるが、そんなもの目隠しをしているようなものだ。
 突然の来訪に驚いたセレネは、目元をこすると慌てて立ち上がった。
「ベティ、どうしてここに?」
「ボクは、シノビ。どこにでも、いる」
「そう」
 頷いたセレネは、力なくベッドに座る。ボロボロの猫のマスコットを手のひらに置くセレネの前にしゃがむと、ベティは視線を合わせた。
「セレネ。キミは本当に、グランマの望みが殺されることだと思うのか」
「グランマは、生半可な決意であんなこと言ったりしないわ」
 拳を握り締めたセレネは、何かを堪えるように口元を引き締める。顔を上げたセレネは、ベティの目を見返すと決意を込めて言った。
「私はグランマの望みを叶えてあげたい。たくさんのものをくれたグランマに返せるのはもう、それしか……」
「グランマは。自分も、キミも、ロスト共和国も犠牲にして。エリュシオンを、屍人を止めたいだけ。望みはたった1つしか、叶わない」
「一つでも叶うなら……」
「キミも、望め、セレネ。キミのたった1つを。そのために何が出来るかを」
「私の、望み……?」
 真剣に訴える声に、セレネは目を見開くと震える声で言った。自分の望みを叶えても良い。そう言われて驚き、戸惑う気持ちはよく分かる。ベティ自身の「魂の望み」を叶えても良いと言われれば、きっと同じように戸惑うかも知れない。だが、ベティには揺るぎない軸があった。
「ボクは、猟兵だ。オブリビオンを倒し、世界を守る。だから。グランマを助け、ロスト共和国に潜むオブリビオンを、倒す」
 ベティの強い意志に、セレネの目に少しずつ力が戻ってくる。要請が来ていたと言っていたから、周囲にも最初の一発を放つよう言われていたのだろう。もしそれに従うのであれば、ベティはそれも構わない。だが。
「もしキミが、グランマを殺すなら。今日ボクは、キミの敵になる」
「ベティ……」
「選ばねば、流される。それも、選択」
「……私は」
「選べ、セレネ」
 ベティが言った直後、ノックの音が響いた。話し声を聞きとがめたのだろう。兵士の声が聞こえる前に跳躍したベティは、セレネの部屋を後にする。
 言うべきことは言った。あとはセレネ次第だ。ホテルの影に染み出したベティは、愛機の許へと帰還した。


 同時刻。
 巨神G-O-リアスに搭乗した雁帰・二三夫(引きこもりたい住所不定季節労働者・f37982)は、グランマ救助のために独断で刑場へ向かうヤング隊の前に立つと背面の翼を広げた。バレット兵団のスタン隊長達に話は通した。あとはヤング隊を止めれば、全バレット兵団は一時的に猟兵たちの指揮下に入る。ヤング隊が妙な時に動かれても困るのだ。
 道を塞ぎ立つ二三夫機に、行軍を一旦中止したヤング隊は警告の通信を発した。
『そこのキャバリア! 道を開けてもらおうか!!』
「バレット兵団のヤング隊ですね。スタン隊長からの伝言を伝えに来ました。『我々バレット兵団は猟兵兵団と同盟を結び、グランマ奪還のために作戦行動を共にする。スタン隊は指示があるまでポイントβで待機せよ』とのことですよ』
『なんだって!?』
 猟兵兵団って何ですかね? と内心思いながらも伝言を伝える二三夫に、ヤングは驚愕の声を上げる。
 スタンが出した条件に、猟兵達は完璧に答えたのだ。過半数どころかすべての猟兵が、グランマ奪還に向けての協力と行動を惜しまないと約束してくれたのだ。今度はバレット兵団が応える番だろう。だが。
『信じられるか! そこをどけー!』
 納得できないと駆動音を上げたヤング機は、RXキャバリアソードを高速振動させると二三夫機に襲い掛かった。射程を削り攻撃力を五倍に引き上げた攻撃は、まともに食らえばG-O-リアスといえども大ダメージは免れない。
「やれやれ。やはり止まってはくれませんか」
 肩を竦めた二三夫は、ギリギリまで攻撃を引き付けると握った拳をヤング機の腹に叩き込んだ。コクピットは避けたものの見事に吹き飛ばされたヤング機は、仲間に支えられると二三夫機に回線を開いた。
『くっ……! 一つ答えろ! 猟兵兵団はなぜ、俺達に協力する!? お前たちは共和国側じゃないのか?』
「ロスト共和国の起き上がり推進政策は、結局屍人帝国がやっていることと同じです。屍人帝国に与する必要、ありますか?」
『屍人……帝国?』
「オブリビオンが率いる敵性国家ですよ。そこに下るより、反抗する貴方達と組む方が良いとわたくしは思います。ただ、わたくし達猟兵の第一義はオブリビオンの排除です。貴方達がその機体を捨て再起を目指すのでなければ、合流先でわたくし達が貴方達を排除しなければならなくなるのをお忘れなく」
『……』
「警告はしました。ヤング隊が明日の処刑でどう立ち回るのかまでは、何も言いません。ですが敵の敵も敵、という三つ巴の争いになるかどうかは貴方達次第です。バレット兵団本体も我らの味方であることをお忘れなく。ーーではグランマ救出後にまたお会いしましょう」
 それだけ告げた二三夫は、ヤング隊に背を向け明日に備えるためにバレット兵団の拠点へと帰還した。


 処刑当日の夜が明けた。
 雲一つない晴天にむけて昇る朝日に目を細めた藤崎・美雪(癒しの歌を奏でる歌姫・f06504)は、隣に立つ森宮・陽太(未来を見据える元暗殺者・f23693)の姿をチラリと見た。
 陽太はロスト共和国の一般兵の姿をしている。最初の計画ではグランマの移送途中に潜り込む予定だったが、他の猟兵と打ち合わせた結果広場からにしたらしい。対する美雪は、ロスト共和国の流行を適度に手に入れた「無難な婦人服」を着ている。例え見とがめられても、何とでも言い訳は立つだろう。
 周囲の状況を確認する陽太に、美雪は話しかけた。
「あのー……陽太さん」
「なんだよ」
「ここで私に協力要請して来るとか、相当肝が据わってますネ」
「グランマから話を聞いて、腹は決まった。この処刑、阻止させてもらう」
 決意を込めた陽太の言葉に、美雪はやれやれ、と肩を竦めて首を振る。
 猟兵達が選んだのは移送ルートを襲撃するでも、拘置所から誘拐するでもなく公衆の面前で堂々とグランマを奪還するというものだ。今まで一貫して共和国側のスタンスを取ってきた美雪にとって、ある意味裏切りのような気分になってくるのは気のせいか。
「そもそも、エリク誘拐を阻止した一因は私の歌なんだぞ? ま、グランマ処刑の阻止及び救出の方針には賛同できるから、協力するが」
「無茶なことはするな、とハリセンが飛んでくるかと思ったぜ?」
「……いや、市民たちの反応が、世論誘導どころか洗脳の気配すらあったのでな」
 冗談めかして言う陽太に、美雪は肩を竦めた。思い浮かぶのは、先日会った女性たち。その後ラムダの聞いた話と総合しても、ひとつの疑念が浮かび上がったのだ。
 美雪の言葉に首を傾げた陽太は、気を取り直して広場を見渡した。
「俺はエリク誘拐に加担した身だからな。大統領やその側近たちにはテロリストと認識されているだろうから、グランマ救出に動いたとしても不自然ではないはず。それに、だ」
 にやりと笑った陽太は、続々と届く猟兵達の連絡に作戦を再確認した。
「猟兵の立場を徒に悪化させないためには、あえて大立ち回りをするのが効果的なんだよ。美雪、無茶を言うがサポート頼むぞ」
「承知した。民間人の保護は任せろ」
 そう言って拳を合わせた陽太は、兵士の制服の襟を正すと何食わぬ顔で配置につく。その姿を見送った美雪は、処刑時刻まで近隣のカフェに潜り込むのだった。


 時は過ぎ、グランマの処刑時刻が刻一刻と迫っていた。
 一般兵士として群衆の整理に当たっていた陽太は、演説人の演説の後に舞台に立つセレネの姿を仰ぎ見た。青い顔をしたセレネが今、何を考えているのかは分からない。処刑人たちと共にグランマの前に立ったセレネは、グランマと最後の会話を交わすと位置についた。
 セレネが銃を構え、空気が凍り付く。その場のすべてがセレネに集中した瞬間、陽太は隠し持った煙幕弾を投擲した。
 処刑人を中心に煙幕が立ち上がる。続けて閃光弾を投げつけた陽太は、煙幕に紛れ舞台に上がると己の過去とも呼べる人格『零』を召喚した。
 煙幕の中に零を残した陽太は、グランマの許へと駆け寄る。騒ぎの中でも静かに佇むグランマの護衛についた陽太は、耳元で囁いた。
「死ぬのはまだ早い」
 怪訝そうなグランマの監視についた時、煙幕の中から気絶したセレネを抱えた零が駆け寄ってくる。混乱から立ち直った正規軍がすぐに煙幕の中から抜け出し、陽太たちに向けて銃口を構えた。
「バレット兵団の手の者か!」
「ザンネン」
 声と同時に、二機のキャバリアが刑場に向けて飛翔する。ベティが駆る巨神スペランサが、巨神の大剣を繰り偽神兵器解放を乗せた斬撃で陽太を中心に処刑台を丸く切り裂く。同時に滑り込んだ二三夫の巨神G-O-リアスが、陽太と零、グランマとセレネを乗せた処刑台を床ごと持ち上げた。
「ええい、全員射殺しろ!」
 ようやく状況に対応した共和国の将校が、処刑人に指示を出す。銃を構えた処刑人が陽太達に銃を放つ寸前、G-O-リアスから二三夫が飛び降りた。
「すみませんリアスさん。貴方と相性が良い合体技は必ず作りますから。……燃え上がれフレイムリンガー!」
 相棒の巨神に一言詫びた二三夫は、着地と同時に熱血バットをフルスイングした。近距離で振り回される熱血バットが処刑人たちを100メートル吹き飛ばし、駆け付けた正規兵に叩きつけられる。振り切ると同時にG-O-リアスに戻った二三夫は、即座に飛翔すると作戦通りの方向へと飛翔した。
「ええい、バレット兵団の連中を捕らえろ!」
 将校が怒鳴るが、近辺にいた兵士は眠りについていて即応できない。その隙に飛翔した二機のキャバリアは、混乱の続く中央広場を下に見ながら合流地点へと向かうのだった。


 一方その頃。
 中央広場に続く大通りの警備に当たっていたラムダ・マルチパーパス(ドロイドは電気羊の夢を見たい・f14492)は、中央広場方面から巻き起こる混乱と銃声に振り返った。
 同時に入る猟兵ホットラインを受け取ったラムダは、中央広場にいるネリッサ・ハーディ(クローク・アンド・ダガー・f03206)の指示に得物を構えた。
『バレット兵団各員に連絡。グランマ及びセレネ確保を確認。これより第二段階へ入ります』
『スタン隊了解』
『グイベル01よりハンマー05へ。目標確保を確認。これよりポイントθへの退避に入ります』
「コマンドを確認。これより局長様達を全力で支援致します」
 全体を見渡し指揮を執るネリッサが号令を出した直後、バレット兵団が一斉に攻撃を開始した。警備の隙を突いた絶妙なタイミングで仕掛けられる攻撃に、共和国軍もアーマーワンで応戦する。共和国軍から指示を受けたラムダは、襲い掛かってくるヤング隊の機体に攻撃を仕掛けた。一度は独断でグランマ救助に向かっていたヤング隊だが、その後復帰したらしい。だが、ここで手を抜いたことがバレると今後の行動に差し支えてくる。全力で応戦しなければ。
『シンクロ・オーバードライブ起動!』
 声と同時に放たれたEPインゴットエクステンダーが超強化され、BX拡散ホーミングレーザーを放ちながら中央広場から飛んでくる猟兵達の方へと飛んでいく。振り返ったラムダは、共和国軍に向けて一直線に飛ぶインゴットエクステンダーに向け特殊煙幕展開スモークスクリーン・デプロイメントを放った。
「背部連装マルチ・ランチャーに対電子及び対赤外線用煙幕弾装填、射出」
 詠唱と同時に砲口を向けた連装マルチ・ランチャーから対赤外線及び対電子を攪乱する特殊煙幕弾が放たれ、赤外線・電波及び視界を妨害する煙幕が張られる。猟兵達に追いすがる共和国軍のキャバリアが、ラムダのユーベルコードの煽りを受けてインゴットエクステンダーごと動きを止める。
 その隙を突いたベティ機が、G-O-リアスの傍を離れると追いすがるキャバリアに向けて衝撃波を放った。一撃で大ダメージを与えたあの攻撃は、搭乗者に相当な負荷を掛けているに違いない。
 追手のキャバリアを吹き飛ばした隙に、ラムダの頭上を通過した猟兵達はバレット兵団と合流し距離を稼ごうと遠ざかる。遠くなっていく機影に、隊長が怒声を上げた。
「逃がすか!」
「逃がしません!」
 隊長機が猟兵達に銃口を向けるのと同時に猟兵達に銃口を向けたラムダは、射線上に隊長機を置くとその手足を撃ちぬいた。バランスを崩した隊長機の銃弾が、明後日の方に飛ぶ。キャバリアを降りた兵士は、真っ赤な顔でラムダに抗議した。
「貴様! どこの所属だ!」
「ありゃ、申し訳ありません。どうやら、わたくしのFCSが不調の様です」
「整備くらいちゃんとしておけ!」
「スミマセン。まぁ戦闘では偶に起きてしまう不幸な事故な訳でして。以後気をつけます、はい」
「貴様が言うなぁ!? ……本部に連絡しろ! 至急応援を要請する!」
 通信機にしがみつく男に適当に謝ったラムダは、遠ざかっていく機体を見送ると中央広場の方を見た。
(「あとは局長たちが脱出するだけですね。武運を祈ります」)
 ラムダの視線の向こう側で火の手が上がる。収まる気配のない混乱を振り返ったラムダは、そっと隊を抜け出すと合流地点へと急いだ。


 時は少し遡る。
 フード付き外套で変装したネリッサは、美雪と陽太に指示を出した。
「作戦を開始します!」
『了解だ!』
「もふもふさん!」
「「「「「ンベメ!」」」」」」
 ネリッサの隣で待機していた美雪が、もふもふさんに指示を出す。美雪の召喚に応じて待機していた138体の小さなもふもふさん達は、一斉に行動を開始した。
 直後放たれる、煙幕と閃光。動きを止めた隙を突いたもふもふさんの一部が、予定通り刑場の周囲を警備していた兵士達を眠らせていく。零からセレネ確保の報告を受けたネリッサは、ベティと二三夫に行動開始を指示した。
 現れるキャバリアの攻撃に、轟音が響く。何か異常な事態が起こったのだとようやく気づいた群衆に混乱が広がっていくのが分かる。このまま放置すれば、パニックから将棋倒しになり死者が出かねない。ネリッサの視線を受けた美雪は、ひとつ頷くと残りのもふもふさんに指示を出した。
「もふもふさん、魅了の踊りを頼むぞ!」
「「「「「ンベメ!」」」」」
 群衆に紛れて配置されたもふもふさんが、人々の頭上を飛び跳ねながら魅了の踊りを踊りだす。東南アジアの踊り子を思わせる衣装をまとったもふもふさんの踊りは、群衆の目を引いたのだろう。その場に立ち止まり踊りに魅了された群衆は、頭上を通過する猟兵達のキャバリアを気に止めた様子もない。
 キャバリアを追撃する正規軍の姿を確認したネリッサは、続けてバレット兵団とラムダに指示を出すと美雪を振り返った。
「第二段階完了しました。これより退避します。ーー行きましょう美雪さん」
「心得た……」
「お前たち、そこで何をしている!」
 美雪が頷いたとき、兵士がこちらに歩み寄ってくるのが見えた。眉をしかめたネリッサは、そっと詠唱を開始する。ネリッサから気を逸らすように兵士に歩み寄った美雪は、困った風に両手を広げた。
「何か用かな? 我々はここでグランマの処刑を見守っていたのだが……」
「嘘をつくな! 不審な連中め、こっちへ……」
「フォーマルハウトに住みし荒れ狂う火炎の王、その使いたる炎の精を我に与えよ」
 詠唱と同時に、背後のビルの屋上から火の手が上がる。黒い煙がもうもうと上がるのを見上げたネリッサは、虚空を指さした。
「不審な人影が隣のビルに行きました!」
「なに!? 貴様ら、そこを動くな!」
 それだけ言い置いた兵士は、慌ててビルの方へと走っていく。各所で火の手を上げたネリッサは、混乱に乗じてその場を脱出するのだった。


 その場から逃げ延びた猟兵達は、郊外の廃校舎に逃げ込むと周囲を警戒した。黒服の男から供与されたアーマーワンを全機自動操縦にして、バレット兵団の拠点の一つに向けて飛ばしてある。しばらくは安全だろう。
 猟兵達と合流し、旧保健室に足を運んだ美雪は、ホッと安堵の息を吐いた。
「バレット兵団が即機体を放棄してくれて助かったぞ。異論が出るかと思ったが……」
「グランマの引き渡しは、スタン達が機体を降りるのを条件にしましたからね」
 自慢げに胸を張った二三夫は、交渉の成果に満足そうに微笑んだ。これで、バレット兵団はすべてのキャバリアを失い実質壊滅した。幸い団員が捕らえられたという報告は聞かないが、これからどうするのかはまた話し合う必要があるだろう。
 悲壮な顔をするバレット兵団には一瞥もくれないベティに、陽太は尋ねた。
「ベティはよく、グランマを救助することに賛成したな?」
「昨日の敵は、今日の友。今日の友は、明日の仇敵。敵と味方なんて、2秒で入れ替わる。好きな敵と嫌いな味方は、いて当然」
 陽太をチラリと見て頬を膨らませ腕を組むベティに、ラムダはおかしそうに微笑んだ。
「確かに、その通りですね」
 猟兵達の会話を聞いていたネリッサは、ベッドのヘッドボードに背中を預けて座るグランマに相対した。一通りのあいさつを交わしたネリッサは、真剣な目でグランマを見た。
「不躾ながら、あなたの自己満足にセレネさんを巻き込むのは、如何なものでしょうか」
「私はそういう、自己中心的な人間なんだよ」
「それに、残り余命少ないとおっしゃいますが、その残った時間で、まだやれる事はあるのではないでしょうか?」
「あぁ。こうして生き残った以上、やることは一つだ」
「グランマ……」
 心配そうなセレネの声に、グランマは応えない。頑なな態度にため息をついたネリッサは、手紙を取り出すとグランマに手渡した。
「ああ、それとこれを。これでようやく、セレネさんの依頼を果たせました」
「セレネの……?」
「あ、それは……」
 照れたように手紙を奪おうとするセレネを制したグランマが、手紙に目を通す。少し笑みを浮かべたグランマは、封筒に戻すとバレット兵団員を見渡した。
「皆には心配と手間を掛けさせたね。指示は明日、改めて出す。今日のところはゆっくりしとくれ」
「「「「「イエス、マム!」」」」」
 一斉に敬礼するバレット兵団員が、それぞれにあてがわれた部屋へと散っていく。猟兵を見上げたグランマは、ヘッドボードに背中を預けた。
「アンタ達も。心から礼を言うよ。だが今日は疲れた。細かいことは明日にさせとくれ」
「承知しました」
 頷いた猟兵達は、セレネだけを部屋に残すと旧保健室を出るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『休戦協定会談』

POW   :    情熱と勢いで会談参加者達の説得を試みる

SPD   :    市井の人々になるべく悲劇が及ばないよう、会談内容を誘導する

WIZ   :    堂々と会談の場で演説し、主張を述べる

👑5
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● 廃校舎の近くで
 廃校舎から去っていく車列に大きく手を振ったセレネは、もう二度と会えないであろう仲間たちの姿に感傷に浸っていた。
 バレット兵団は壊滅した。兵員も少なくキャバリアも無い。ロスト共和国国内にプラントは存在しないため、新しく奪取することも難しい。黒服との取引は、猟兵との約束ですることができない。
 八方ふさがりの中、グランマは兵団員達を南へと逃がした。昔の伝手を辿り国外脱出の手筈を整え、ロスト山脈の向こう側へと送る。それが彼らにしてやれる最後のことだった。全部の手筈を整えていたのはグランマで、セレネは手伝ったに過ぎないのだが。
 目深に被ったフードの下で目を細めているグランマに、セレネは敢えて明るく言った。
「……行っちゃったね」
「そうだね。アンタも行きな。追いかければまだ間に合う……」
「何度も言うけど。私はもう、グランマの側を離れないって決めたの。嫌だって言ってもついていくからね?」
「セレネ……」
「お願いよ。……私が死んだとき、グランマに看取って貰えなくて、ちょっと寂しかった。恨んでる訳じゃないのよ? またこうして会えたんだし。だからね。グランマは私が看取ってあげる。寂しい思いはさせないわ」
「そう。なら、地獄の底までついてきてもらう」
「望むところよ。何をするの?」
「決まっている」
 口元に邪悪な笑みを浮かべたグランマは、聖都エリュシオンの方を睨みつけると指鉄砲を突きつけた。
「エリュシオンを殺して復讐を果たす。私の望みはそれだけ。その先が地獄に続いててもね」
「分かったわ。……行きましょう」
 頷いたセレネは、最後のジープに向けて歩き出していった。

● エリクの私室で
 以前猟兵に教えてもらった連絡先を握り締めたエリクは、公邸の私室のベッドに座ると緊張の面持ちで受話器を握り締めた。
 公開処刑当日。エリクは特別席でグランマとセレネが連れ去られたのを見ていた。見たことのないキャバリアがグランマを連れ去った。その中にいた誘拐犯の一人に、エリクは見覚えがあった。
 セレネを連れ去ったのは、エリクを捕まえようとしたあの金髪の男に間違いない。バレット兵団員だろうあの男が何者なのかは分からないし、彼らの行方は軍が追っている。だが、エリクは何もしないでいることはできなかった。
 以前、猟兵はエリクに連絡先を教えてくれた。父親について何かあったら連絡するよう言われていたが、父親のことじゃなくてもいいだろう。そう信じたかった。連れ去られたセレネを、助けて欲しかった。意を決して電話をかけようとした時、掛けられた声にエリクは飛び上がって驚いた。
「何をしてるんだいエリク?」
「わわっ! と、父さん!」
 慌てて振り返ったエリクに、大統領は苦笑いをしながら隣に座った。
「ノックはしたよ。そんなに思いつめて、どうしたんだい?」
「ねえ、セレネの行方は分かった?」
「いや。まだ掴めていないよ」
「僕、猟兵にセレネを助けてってお願いしようと思うんだ! 報酬は……僕のおこづかい全部で足りるかな?」
「猟兵。エリクを助けてくれた暴走列車の英雄スタンピードヒーローだね。先日その中の一人にお会いしたよ」
 少し考えた大統領は、一つ頷くとエリクと向き合った。
「お前がお金の心配をしなくていい。報酬は私が払うから、もし猟兵が会ってくれるというのならば、そこに同席させてもらうよ」
「本当に? ありがとうお父さん!」
 嬉しくなって父に抱き着いたエリクは、早速通信機のスイッチを入れるのだった。

● エリュシオンの夢
 白い花に埋もれるように、一人の老人の遺体が安置されていた。やせこけた頬の男は、過酷な闘病生活を物語るように目の下に消えない隈を作っていて、枯れた唇には深い皺が刻まれていた。
 死んだ男をじっと見下ろしたエリュシオンは、ただ呆然と立ち尽くしていた。
 気が付いたら一人だった。孤独という概念すら無かったエリュシオンは、一人の少年・ロスと出会った。バラ色のほほをした少年は、彼女の姿に臆することなく手を伸ばすと部屋の外へと連れ出してくれた。
 それから世界は鮮やかな色彩に包まれた。少年を通じて知り合ったたくさんの人々。愛すべき人に囲まれ情を知り、孤独を知った懐かしい日々。エリュシオンに光をくれた少年はやがて大人になり、年老いて病を得て倒れた。
 彼だけではない。エリュシオンの愛した人たちは次々に病に倒れ、苦しみ抜いて死んでいった。彼らはなんて、儚く脆いのだろう。
 どれくらい泣いたのか。ぼんやりと虚空を見つめたエリュシオンに、一人の男が語りかけた。
「エリュシオン様」
 顔を上げたエリュシオンは、そこにいる黒服の男に視線だけ投げた。しばらく前からロスに仕えている異国の男。ロスの死を看取ったのも彼だという。
「ウインター」
「ロス様の遺志を継ぐのです。ロス様は常々仰っていました。『皆、健康で長生きして欲しい。誰も死なないで欲しい』と。この遺志を継げるのはエリュシオン様、あなただけなのです」
「遺志を……継ぐ……」
「そうです。誰も死なず、病にも倒れず。人類共通の夢を叶えましょう。私たちと一緒に」
 甘く囁く言葉に、エリュシオンはゆらりと頷いた。ロスの夢を叶えよう。そうすればきっとまた、褒めてくれるに違いない。
 ウインターの手を取ったエリュシオンは、彼の一族と共に青十字社を設立。後に「起き上がり」と呼ばれる技術の確立のために共に歩んでいくのだった。

 追想から目覚めたエリュシオンはーーエリュシオンを宿したナツは、目の前に空いている大きな穴を見下ろすと涙を流した。
 あれからどれくらい時間が経ったのだろう。エリュシオンが歩んだ道は平坦ではなかったが、起き上がりの技術はあと一歩で完成というところまで来ていた。
 だが。これでいいのだろうか。
 死を何よりも拒否しながら不死を否定する彼女の民の思考は、理解が及ばない。人類共通の望みを叶えているだけなのに、なぜ理解してくれないのだろう。考えても考えても答えは出てこない。
 ふいに掻き曇った空から、大粒の雨が落ちる。涙を流すエリュシオンは、ただ一人そこに佇むのだった。

※ ※ ※
 第三章は日常です。フラグメントは参考程度でお願いします。
 一か所だけにプレイングを掛けることができます。分身系のユーベルコードを使っても、一か所以外は全て接触できなかったという扱いになります。同様に、二か所以上にプレイングを掛けても、メインと思われるプレイング以外はすべて失敗となり描写はしません。
 また、精神干渉系のユーベルコードも効果を発揮しません。
 黒服の男との交渉は、アーマーワンを全て破棄したことでご破算になりました。この章での接触はできません。
 プレイングの冒頭に、下記のアルファベットをお書きください。無ければプレイングで判断します。

A グランマとセレネ
 第二章の終わりの翌日になります。
 バレット兵団員には「どこかで隠居してのんびり暮らす」と伝えてありますが、グランマの復讐の炎は消えていません。何もしなければ復讐への道をひた走ることになりますので、何かしらのメンタルケアがあると良いかも知れません。

B 大統領とエリク
 バレット兵団に誘拐された(と思っている)セレネ救出を、猟兵達に依頼します。どんな情報を伝えるのか、また引き出すのかはお任せします。
 護衛として、補佐官のフユと護衛のアキ、複数の兵士たちが控えています。第二章で身元が分かる行動をした猟兵は、不利な状況になりますのでご注意ください。

C エリュシオン
 青十字社の要人であるナツの体を借りたエリュシオンが、中央広場に佇んでいます。
 エリュシオンを捕らえたりすることはできませんが、話をすることは可能です。

D その他
 マスターよりで名前の出たNPCとは接触することができます。誰に会い、どんな話や行動をするのかをプレイングまでお願いします。

 プレイング受付期間はタグにてご連絡させていただきます。
 それでは、良き交渉を。
追記
 描写がなくても、猟兵はエリクと連絡先の交換をしていると思われるので、Bへの参加はどなたでも可能です。
ラムダ・マルチパーパス
SIRDの皆様方と共に行動
アドリブ及び他者との絡み歓迎
選択肢:A

復讐、ですか?・・・アーカイブ検索・・・検索完了。
復讐とは、自らの利益を侵害された個人や団体が、その報復として加害者に対し害悪を加えること。
なるほど、グランマ様はそのエリュシオンとやらに対して、復讐を試みようという訳ですね。しかし、わたくしのアーカイブのある偉人の言葉に、復讐程高価で不毛なものはない、というのがあります。また、許すことは復讐に勝る、という言葉も。
僭越ながらグランマ様の復讐心を知るには、グランマ様とエリュシオンの関係性から知る必要がある、と愚考致します。それにエリシュオンとは一体何なのでしょうか?人ですか?物ですか?


森宮・陽太

【闇黒】
他者絡みアドリブ大歓迎
発言者は陽太、零、どちらでも構いません

…はぁ
まさかあんな展開になるとは思ってなかったぜ

今さらだが、撤退中にやっておきたいことがふたつある
ひとつは美雪との情報交換
特に水関連の施設をグランマが破壊した話は事前に聞いておきたい
もうひとつは処刑台の破壊
瓦礫を四方八方にばら撒き、証拠隠滅と追手の撹乱を行い時間稼ぎだ

よぉ、セレネ
驚かせて悪かったな
…俺が二人いた気がする?
ま、カラクリはこんなところだ
(指定UCで『零』を召喚し、同席させる)

…グランマ
俺たちはグランマの復讐の動機を知らねぇが
セレネが死に、起き上がりと化したことだけが動機とは思えねぇんだ
…何か、起き上がりに関する根本的な事実を掴んだからじゃねぇのか?
例えば、水が媒体になっている…とかな

俺は復讐を肯定する
嘗て、知り合いが復讐を成し遂げるのに手を貸したからな
だが、起き上がりに骸の海が絡むなら…この国に未来はねぇぞ
なら…数多の犠牲を払ってでも止めるしかねぇ

ああ、参考までに聞かせてくれ
兵団員たちの行き先はどこだ?




 ふいに降り出した雨に打たれながら、森宮・陽太(未来を見据える元暗殺者・f23693)は廃校舎の校庭に集まったバレット兵団員達の姿を見守っていた。
 グランマ誘拐は成功した。これまでの情報は、猟兵間ですべてすり合わせを済ませたが、処刑台の破壊まではできなかったようだ。処刑台の上には今、エリュシオンがいる。これから接触すると連絡を受けて通信を切った陽太は、昨日の顛末を思い出すとため息をついた。
「……はぁ。まさかあんな展開になるとは思ってなかったぜ」
 あの時、最初からテロリストとして認定されているであろう自分が、表立った行動をして目くらましになろうと思っていたのだが。まさか刑場ごとキャバリアで持ち去るだなんて誰が想像しただろうか。
 思わず遠い目をする陽太に、ラムダ・マルチパーパス(ドロイドは電気羊の夢を見たい・f14492)が感情を見せにくい声で応じた。
「アーカイブのデータと照合したところ、陽太様のおっしゃる「あんな展開」とは、79%の確率で猟兵の雁帰・二三夫様とベティ・チェン様の行動のことと思われます。何か問題が発生したのでしょうか?」
「いや、問題って訳じゃねえよ。昨夜のうちに情報交換は済んでるし、ただの気分の問題だ。……よぉ、セレネ」
 こちらに向かって歩いてくるセレネに気軽に手を上げ、世間話ついでに二人でいたことのネタばらしをして零を紹介した陽太は、黙って見守るグランマに向き合った。
「グランマ。話、聞こえちまったんだけどよ。これからエリュシオンに復讐しに行くんだって?」
「止めても無駄だよ」
「止めねよ。……俺は復讐を肯定するからな」
「あなたも誰かに復讐したことがあるの?」
 セレネの問いに、陽太は首を横に振った。
「俺の、じゃねえよ。以前、知り合いが復讐を成し遂げるのに手を貸したんだ。復讐を否定するならそんなことしねえよ」
「そうかい。なら、私たちのことは放っておいておくれ」
「そうしてえのは山々だけどよ」
 冷静に言った陽太は、改めてグランマと向き合った。復讐心は否定しない。傷つけられた心の当然の防衛反応だ。だが。
「だが、起き上がりに骸の海が絡むなら……この国に未来はねぇぞ」
「最初から未来なんざないね。エリュシオンと青十字を崇めるこの国にはね」
「なら……数多の犠牲を払ってでも止めるしかねぇな」
「国の未来はアンタに任せた。私は私情で動かせてもらう」
「そうか」
 陽太が頷いたとき、ラムダが一歩前に出た。


 陽太とグランマの会話を聞いていたラムダは、先ほどから繰り返し出てくる「復讐」という単語についてデータベースに検索を掛けた。普段使われない単語について、きちんと意図のすり合わせをしなければ、すれ違いは大きくなるばかりだ。
「……検索完了。復讐とは、自らの利益を侵害された個人や団体が、その報復として加害者に対し害悪を加えること。この認識で合っていますか?」
「間違っちゃいないよ」
「なるほど、グランマ様はそのエリュシオンとやらに対して、復讐を試みようという訳ですね」
「それが今の私の、生きる目的だよ」
 口の端を歪めるグランマに、ラムダは頷いた。グランマの復讐に正当性はあるのか。なぜそこまで思いつめるようになったのか。それを知らなければ、賛成も反対もできない。まずは情報を集めなければ。
「僭越ながらグランマ様の復讐心を知るには、グランマ様とエリュシオンの関係性から知る必要がある、と愚考致します」
「グランマ。俺たちはグランマの復讐の動機を知らねぇが。セレネが死に、起き上がりと化したことだけが動機とは思えねぇんだ」
「……」
「……何か、起き上がりに関する根本的な事実を掴んだからじゃねぇのか? 例えば、水が媒体になっている……とかな」
 ラムダと同じことを思ったのだろう。陽太もグランマに問いかける。しばらく押し黙ったグランマは、小さく息を吐くと静かに語りだした。
「……エリュシオンは自分の目的のために、青十字と一緒にこの国の裏側で暗躍していたのさ。ずっと昔からね」
「エリュシオンの目的とは、何なのですか?」
「あの女の目的は、起き上がりを完成させること。そしてその因子を、全人類に伝播させること。少なくとも、ロスト川流域諸国は巻き込みたいようだね」
「そんなこと画策してたのかよ!」
「あの女は博愛主義者なのさ。最悪のね。起き上がりの完成のために、あの女は戦争を、青十字は医療福祉を利用した。西のロスト共和国と、東のシキ帝国。十年前の終戦まで聖湖エリュシオンを挟んで睨み合った二か国は、泥沼の戦争をしていた。私はその戦争ですべてを失った。夫も、息子も、孫たちも。上官も部下も何もかも全部! 最後の戦いで、セレネを見殺しに守ったのは、全ての元凶様だったんだ。ざまぁないね」
 興奮したように一息にまくし立てたグランマは、少し気が抜けたように穏やかになる。人に話すことで、心に渦巻く復讐心が言語化されて同時に昇華されたのだろう。
 黙り込んだグランマに次にかけるべき言葉を検索したが、やはりまだ情報が足りない。
「では。エリシュオンとは一体何なのでしょうか? 人ですか? 物ですか?」
「さてね。そこまでは知らないよ。ただ、人間じゃないことだけは確かさ」
「グランマはどうしてそれを知ったんだ?」
「終戦後、故郷に帰った私がセレネに連れ戻されたとき、セレネは転移のユーベルコードを使ってね。行きついた先は聖湖エリュシオンの中央島の地下深くだった。そこで全部を知ったのさ」
「理解しました」
 頷いたラムダに、セレネがグランマの手を握る。顔を上げたグランマは、フードを目深に被るとジープへ向けて歩き出した。
「おしゃべりが過ぎた。もう行くよ。邪魔をするなら容赦しないからね」
「グランマ様」
 ラムダの呼びかけに、グランマは立ち止まる。言葉を待つグランマに、ラムダは今掛けられる最高の言葉を贈った。
「わたくしのアーカイブのある偉人の言葉に『復讐程高価で不毛なものはない』というのがあります。また『許すことは復讐に勝る』という言葉も」
「……」
 何も答えない背中に、陽太はバレット兵団が去った方角に視線を送ると問いかけた。
「ああ、参考までに聞かせてくれ。兵団員たちの行き先はどこだ?」
「ロスト山脈の南側さ。それ以上は言えないね」
「そうか」
 頷いた陽太の答えに、二人は今度こそジープに乗り込む。砂塵を上げながら去っていく車を見送ったラムダと陽太は、雨雲の隙間から注ぐ陽光に目を細めるとその場を後にした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

雁帰・二三夫

(森宮陽太さんにお願いしたいことがあったのですが…)
会えなかった場合猟兵の連絡網?で(ご友人が自由都市でリズさんから持ち帰った石がメガリスか確認できますか?)と連絡
C情報も全猟兵に連絡

「貴女は…エリュシオンさんですかね?わたくし猟兵の雁帰二三夫と申します。聞きたいことがありまして…貴女は、メガリスだったりコンキスタドールだったりします?」
「アリスの鍵爪の男の影がミラージュに出たと聞きまして。貴女もオーシャンか銀雨辺りから流れ着いた影なのかなあと」

「いえ、知りたかっただけです。よろしければ貴女もどうぞ」
答えられる質問なら包み隠さず全て答える
「わたくし達が分かりあえないのは当然です。だから分かりあえる部分だけは分かりあってもいいかなと思いまして」

「人は死を望まないが不死も望まない。貪欲に生きること、不老不死が1番の望みだからじゃないですか」
「絶対叶わないからこそ望む、そういうものもあるんです」
「死して変容しないものはないと、本質的に理解するからです。自分の偽物を愛せる人はいないでしょう?」


北条・優希斗
C
蒼(f03681)さんと
…噂には聞いていたけれど
俺があなたに会うのは初めてか
初めまして、アキさん…否
『エリュシオン』さん、と呼ぶべきかな?
…人の命は儚くて脆い
そうだね…その通りだ
…だからこそ
人として俺は、あなたに聞きたいことがある
…そうやって、『苦しみ抜いて』死んでいった人達を見て…
あなたは『起き上がり』と言う結論に辿りついた
…まあ、その結論は理解できない訳では無いんだけれど
ただ1つだけ、確認させて欲しい
それを経た『人』の記憶が持続し続けるのならば
その痛みと悲しみすらも『人』は抱え続けなければいけない
…その重みを、あなたは考えたことは無いのか?
…蒼さん。君は『エリュシオン』の想いをどう思う?
…俺は、君が俺達『人間』の想いを尊いと感じている気がする
だから君の想いをエリュシオンに伝えて欲しい
…俺の我儘なのは重々承知なんだけれど
それでもエリュシオンの在り方と蒼さんの在り方は―
(以て非なる…そんな気がして、仕方ないから)
(蒼さんに微笑)
ありがとう、蒼さん
俺では伝えられない想いを…伝えてくれて 


神宮時・蒼
【C】
北条様(f02283)とご一緒

此処は、今まさに、戦禍の、真っ只中、なのですね

まずは北条様のお話を
お話をしている間、エリュシオン様の表情の機微を確認
話題を振られたら、はっとしたように北条様を一度見つめて

…え、と。貴女様が、起き上がり、と言う、結論へ、到った、理由を、ボクは、知りません
…ですが、切欠となる、誰かが、いらっしゃった、の、でしょう

…ボクは、ヤドリガミ
―其れ故、死の恐怖について理解が出来ません
けれど、人間は。誰かの痛みに、誰かの喪失に寄り添う事が出来る
それは素晴らしい、事だと、思います

…だから、人は前を、未来を見据えて、精一杯、「今」を歩いて、行く、のです
―其の摂理を外れて生きて行くのは、本当に幸福なのですか?


…後悔ではなく、未来を
…誰か、ではなく、大切な人の言葉を
…大切な方は、今の貴女を見て、笑って、くれますか?

…ボクは、ボクを創って、くれた方に、恥じない、在り方をしたい、です
…人でもなく、物でもなく。一人のモノとして

…ボクは、そう、思うの、です、北条様


藤崎・美雪

【闇黒】
他者絡みアドリブ大歓迎

事前に1章で得た情報を陽太さんに伝えておく
インフラの中でも水だけに破壊対象を絞っている理由は判らぬが
他猟兵と得た情報を合わせれば、グランマの復讐の動機が見えてくるかも知れぬな

中央広場に行く前に、1章の記憶を辿ってみよう
集まっていた市民の中に、起き上がりでない、特に小さな子供はいただろうか?
見た目で区別はつかぬかもしれぬが…

2章の格好のまま、傘を手に広場へ
私はナツさんと面識があるから、雰囲気が違えばわかるだろう

傘はいるかね?
ナツさん…否、エリュシオン

私は、不死が人類共通の望みとは考えておらぬよ
生きとし生けるもの、いつかは死ぬが
だからこそ、人は自らの記憶を、経験を、知識を、他人に伝え
未来を繋ごうとするのではないかね?

未来を繋ぐための生命のサイクルを
起き上がりは…断っている気がしてならんのだ
もし、未来を担う子供が生まれないなら
この国に待っている未来は、永遠の安寧ではなく、緩やかな滅亡だろう

なぜ疑ったのかって?
市民たちの言動から世論誘導の気配を感じ取ったからだよ




 ふいに降り出した雨に傘をさした藤崎・美雪(癒しの歌を奏でる歌姫・f06504)は、人もまばらな中央広場に立つエリュシオンの姿に目を細めた。
 処刑予定日翌日の早朝の中央広場は、前日の混乱と混沌が嘘のように静まり返っている。群衆の目の前でグランマが連れ去られるという異常事態にも関わらず死者は出ず、怪我人が出た程度で済んだのは僥倖と言えた。
 昨日、群衆の中に小さな子供がいたかを思い返したが、見た記憶はなかった。人が押し掛ける公開処刑の現場を小さな子供に見せよう、という大人はあまりいないだろうから仕方のないことか。
 陽太との連絡を終えた美雪がエリュシオンに歩み寄ろうとした時、低いうなり声を上げながら通信端末を睨みつける雁帰・二三夫(引きこもりたい住所不定季節労働者・f37982)の姿に思わず振り返った。
「うーむ。森宮・陽太さんにお願いしたいことがあったのですが……」
「陽太さんは私の知り合いだが……。何かあったのか?」
 思わず首を傾げる美雪に、二三夫は頭を掻きながら通信端末を操作する。何やら文章を打っているようだから、メールでも書いているのだろう。
「いえね。陽太さんのご友人が、自由都市でリズさんから持ち帰った石がメガリスか確認できるか聞いておきたかったのですが……」
「いやそういうことは、この土壇場で突然聞かれても答えようがないと思うのだが!?」
 思わず裏拳ツッコミを入れた美雪は、腕を組むと難しい顔で考え込んだ。少し前に自由都市ウェルディンで起きた事件は、美雪も関わりがある。疑問に思うのはもっともだが、やはり美雪にもどうすることもできない。ひとつ頭を振った美雪は、エリュシオンに歩み寄るとそっと傘を差しかけた。
「傘はいるかね? ナツさん……否、エリュシオン」
「あなたは……」
 顔を上げたエリュシオンに、美雪は微笑みかけた。涙を流す彼女にハンカチを差し出すと、涙を拭って鼻をかむ。少し落ち着いたエリュシオンに、美雪はそっと問いかけた。
「何を泣いていたんだね? 良ければ話を聞かせてくれないか?」
「……。私はかつて……」
 淡々と語る内容に耳を傾けた美雪は、いつの間にかやんだ雨に傘を閉じた。早朝のまだ暗い空は不安定な色をしていて、それがエリュシオンの心を現わしているような気もする。
 話を聞き終えた美雪は、静かに自分の考えを伝えた。
「……私は、不死が人類共通の望みとは考えておらぬよ」
「ですが、人は死を恐れ、忌避するもの。そうではありませんか?」
「生きとし生けるもの、いつかは死ぬがだからこそ、人は自らの記憶を、経験を、知識を、他人に伝え、未来を繋ごうとするのではないかね?」
「人が自分の記憶を伝えることと、不死であることには何の因果関係も無いでしょう? 不死者ならば、人に記憶を伝えないのですか?」
「それはそうだが、そういうことではないのだよ」
 まっすぐ見据えてくるエリュシオンの問いに、美雪は自分の言わんとしたことを噛み砕いて伝えようと言葉を選んだ。猟兵もデッドマンのような不死者はいるが、彼らが人に記憶を伝えていないかと言われるとそうとも言えない。だが、終わりが無ければ果たして技術の継承をしようとするだろうか。
 そう告げようと口を開きかけた美雪は、いつの間にか背後に立っていた二人の猟兵に思わず絶句した。


 音もなく舞台の上に降り立った北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)は、少し離れた場所に佇むとエリュシオンの語りを黙って聞いていた。エリュシオンの語る過去の話に思うところを感じた優希斗は、隣に立つ神宮時・蒼(追懐の花雨・f03681)に視線を送るとそっと囁いた。
「……俺は、君が俺達『人間』の想いを尊いと感じている気がする」
 蒼はヤドリガミと呼ばれる種族だ。人間ではない。器物が破壊されない限り死なないのだから、ある意味不死とも言える。だからこそ、思いを伝えることもできるだろう。
「だから君の想いをエリュシオンに伝えて欲しい。……俺の我儘なのは重々承知なんだけれど、それでもエリュシオンの在り方と蒼さんの在り方は--」
『(以て非なる……そんな気がして、仕方ないから)』
 最後まで語らない優希斗に、意図を汲み取った蒼は小さく頷くとエリュシオンをじっと見つめる。そんな彼女に頷きを返した優希斗は、絶句する美雪の隣に立つと小さく微笑みエリュシオンの前に立った。
「……噂には聞いていたけれど、俺があなたに会うのは初めてか。初めまして、ナツさん……否、『エリュシオン』さん、と呼ぶべきかな?」
「わたくしはナツの体を借りて、ここにいるに過ぎません。『私』が動くには少々、障りがありますから」
「そうですか」
 頷いた優希斗は、目を閉じるとエリュシオンの回想を噛み締めた。おそらく、エリュシオンの原体験とも言える出来事。辛い別れを体験したのならば、不死の伝播に結論が至ったのは必然かも知れない。
「……人の命は儚くて脆い。そうだね……その通りだ」
 その感覚は、優希斗も知っている。数々の予知の中でも見続けてきた。だが。
「……だからこそ。人として俺は、あなたに聞きたいことがある」
「なんでしょう?」
「……そうやって、『苦しみ抜いて』死んでいった人達を見て……あなたは『起き上がり』と言う結論に辿りついた」
 その結論は理解できない訳では無いのだけれど。
「ただ一つだけ、確認させて欲しい。それを経た『人』の記憶が持続し続けるのならば、その痛みと悲しみすらも『人』は抱え続けなければいけない。……その重みを、あなたは考えたことは無いのか?」
 優希斗の問いに、エリュシオンは静かに目を閉じた。しばらく考えたエリュシオンは、目を開けると優希斗をまっすぐ見返した。
「……人は、辛い思いを抱え続けることは困難です。人は、忘却する生き物です。よくも悪くも。辛い気持ちは癒して昇華して、忘れてしまいます。そこに不死も可死も関係ないと考えます」
「そうか」
 頷いた優希斗は、そっと後ろを振り返った。黙って静かにエリュシオンを見つめていた蒼に半身を引いて場を渡すと、そっと背中を押した。
「……蒼さん。君は『エリュシオン』の想いをどう思う?」
「私、は……」
 息を呑んだ蒼は、唇を噛むとエリュシオンの前に立った。


 エリュシオンの話を黙って聞いていた蒼は、はっとしたように優希斗を見返すと、小さく頷きエリュシオンの前に立った。
「……え、と。貴女様が、起き上がり、と言う、結論へ、到った、理由を、ボクは、知りません。……ですが、切欠となる、誰かが、いらっしゃった、の、でしょう」
「はい。ですが、もうとうの昔に失われてしまいました」
 懐かしそうに目を細めるエリュシオンに、蒼は改めて向き合った。話の内容からしても、彼女は人間よりも何倍も長く生きているのは間違いないだろう。ヤドリガミである蒼と同じだ。
「……ボクは、ヤドリガミ。本体の器物が、破壊されない限り、死ぬ、ことはありません。ーー其れ故、死の恐怖について理解が出来ません」
 氷晶石と琥珀のブローチとして作られた蒼は、ヤドリガミとして顕現してからも長い時間を生きてきた。本当ならば死ぬような傷を負ったことも、一度や二度では到底効かない。軽率に身を削る道を選んできた蒼は、死の恐怖について理解ができない。
「けれど、人間は。誰かの痛みに、誰かの喪失に寄り添う事が出来る。それは素晴らしい、事だと、思います」
「はい。私も、そんな人間を何人も見てきました」
 静かに言うエリュシオンに、蒼は改めて伝えた。蒼にしか伝えられないことを。
「……だから、人は前を、未来を見据えて、精一杯、「今」を歩いて、行く、のです。ーー其の摂理を外れて生きて行くのは、本当に幸福なのですか?」
「人の幸不幸は、他人に定義されるものではありません。人の魂は、その人だけのもの。ただ、私は私が後悔しないように生きている。それだけです」
「……後悔ではなく、未来を。……誰か、ではなく、大切な人の言葉を。……大切な方は、今の貴女を見て、笑って、くれますか?」
「……分かりません。もう、会えませんから」
 自嘲気味に微笑むエリュシオンの手を取った蒼は、彼女の目をのぞき込むとふわりと微笑んだ。
「……ボクは、ボクを創って、くれた方に、恥じない、在り方をしたい、です。……人でもなく、物でもなく。一人のモノとして」
「創ってくれた方に、恥じない在り方……」
 答えるエリュシオンの手を離した蒼は、黙って見つめる優希斗を振り返った。
「……ボクは、そう、思うの、です、北条様」
「ありがとう、蒼さん。俺では伝えられない想いを……伝えてくれて」
 わずか笑みを浮かべて感謝を伝える優希斗の隣に駆け寄った蒼は、じっと見つめるエリュシオンにふわり微笑んだ。


 猟兵達の話を噛み締めるように聞き入ったエリュシオンに歩み寄った二三夫は、まるで旧友にでも会ったかのように手を上げた。
「貴女は……エリュシオンさんですかね? わたくし猟兵の雁帰・二三夫と申します。聞きたいことがありまして」
「なんでしょう?」
「……貴女は、メガリスだったりコンキスタドールだったりします?」
 突然される斜め上の問いに、エリュシオンは面食らったように目を見開いた。同様に驚きを隠せない猟兵達に頭を掻いた二三夫は、兼ねてから考えていた仮説を披露した。
「アリスの鍵爪の男の影がミラージュに出たと聞きまして。貴女もオーシャンか銀雨辺りから流れ着いた影なのかなあと」
「おっしゃっている意味が……よく分かりません」
「おや、ご存じない? よく思い出してごらんなさい。アリスやオーシャンじゃないかも知れません。どこか別の世界から落ちたとか転移したとか転生したとか、記憶にありませんか? ひょっとしたらどこかのアースでトラックに轢かれて死んだと思ったらこの世界だったとか……」
「私は、死んだことも転移したことも無いので、分かりません」
「こらこら二三夫さん。エリュシオンが困惑しているではないか」
 苦笑いを浮かべた美雪から再び裏拳ツッコミを入れられた二三夫は、腕を組むと考え込んだ。助けを求めるように猟兵達を見ているエリュシオンの態度から、本当に何を言われているのか分からないのだろう。どこか異世界から転移した訳ではない。そう結論づけた二三夫は、ササっと手を差し出した。
「いえ、知りたかっただけです。よろしければ貴女もどうぞ」
「どうぞ、とは?」
「質問ですよ。答えられることならば何でもお答えしますよ」
 どうぞどうぞと促してみれば、寂しそうに眉根を寄せたエリュシオンは小さくため息をついた。
「さきほどからお話を伺いましたが、誰もわたくしの考えにお味方は、してくれないのですね」
「わたくし達が分かりあえないのは当然です。だから分かりあえる部分だけは分かりあってもいいかなと思いまして」
「分かり合えること……。では質問です。人は本当に、不死を望まないのですか?」
「人は死を望まないが不死も望まない。貪欲に生きること、不老不死が1番の望みだからじゃないですか」
「望むのでしたらなぜ……」
「絶対叶わないからこそ望む、そういうものもあるんです」
 二三夫の答えに、エリュシオンははっと目を見開いた。何か思い当たることがあったのか。考えたエリュシオンは、
「……。私は、人を不死にはできます。ですが、死んだ人を復活させることはできません。いずれはと思っていますが、難しいとも感じています。ですがあきらめはしません。それと、同じなのでしょうか」
「そうなのでしょう」
「では、人が死を恐れるのは……」
「死して変容しないものはないと、本質的に理解するからです。自分の偽物を愛せる人はいないでしょう?」
 噛んで含めるような二三夫の言葉に、エリュシオンはうつむいたまま答えない。黙ってしまったエリュシオンに、美雪はそっと語りかけた。
「未来を繋ぐための生命のサイクルを、起き上がりは……断っている気がしてならんのだ」
「……」
「もし、未来を担う子供が生まれないなら、この国に待っている未来は、永遠の安寧ではなく、緩やかな滅亡だろう」
「愛する民を、滅亡などさせません」
 きっぱりと言ったエリュシオンは、顔を上げると微笑んだ。
「人は不死を望みます。同様に、子を持ち、育てることも望みます。エリクはこの世界で唯一の、起き上がり同士の間に生まれた子供・・・・・・・・・・・・・・・・。希望の霊薬エリクシル。彼の因子を取り込むことができれば、起き上がりは子を持つことができます」
「なんだって!?」
 面食らった美雪をよそに、エリュシオンは子供のようにはしゃいだ声を上げた。
「まだもう少し熟成の時を待ちたかったのですが、そろそろとりかかった方が良いのかも……」
「待て待て! エリクはまだ12才かそこらだろう? 子の親になるには早すぎるのではないか!?」
「そうですよね。そこが問題なのです。最近不確定要素が多すぎて、計画を早めようと思っていました。ですが、不確定要素の一つがきちんと話ができる相手のようですので、もう少し考えた方が良いかもしれません」
 深く頷いたエリュシオンに次の言葉を継ぐ暇もなく。一礼したエリュシオンは、にっこり微笑んだ。
「……本日はとても有意義な話ができて、とても嬉しかったです。またお話しましょう。それでは、失礼いたします」
「待てエリュシオン!」
 美雪の呼びかけに応えずに一礼したエリュシオンの全身から、力が抜ける。倒れたナツを受け止めた美雪を見守った二三夫は、ふいに感じる気配に振り返った。


 エリュシオンの話に集中していた猟兵達は、周囲を取り囲む特殊部隊の姿に臨戦態勢を整えた。兵士の中から一歩前に出た大統領補佐官のフユは、口元に笑みを浮かべると手を差し出した。
「警備兵からの報告で来てみれば。グランマ誘拐の実行犯が、まさか本当に素顔を晒して刑場に現れるとは思ってもみませんでしたよ」
「いやぁ」
 照れたように頭を掻く二三夫は、臨戦態勢を整える猟兵達に倣って詠唱を開始した。スパに放り込めば、逃げる時間は稼げるだろう。ひりつくように睨み合ってしばし。口を開いたのはフユだった。
「ここで事を構える気はありません。ナツの身柄を渡してください。そうすれば、見逃しましょう」
「おい、いいのか?」
暴走列車の英雄スタンピードヒーローの実力は、よく分かっていますから」
 意味深な言葉に、美雪は視線を明後日の方へと向けた。ナツもあるがフユとも面識がある。視線を逸らし誤魔化すように口笛を吹く美雪に、優希斗は声を掛けた。
「美雪さん」
「ナツさん、を、渡しましょう」
 蒼の言葉に、美雪は頷く。眠るナツを兵士に渡した美雪は、兵士が作る広場の出口への道を歩き出した。
「あなた方とは、もっと良い関係を築けると思ったのですが。残念です」
 フユの言葉を背中に受けた猟兵達は、広場を抜けるとグリモアベースへと帰還した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

九十九・白斗
飲みすぎちまったな
酒場から出てくると、処刑やらバレット兵団のごたごたは終わったようだ
まあ、他の猟兵がうまくやったようなので問題はないだろう

酒場で気になったのは青十字協会と湖のことだ
酒にしろ、魚にしろ、躯の海を感じた
自分でもどういう感覚かはわからないが、オブリビオンに感じる負の感覚がした
なので湖と青十字協会に行ってみる

エリュシオンのことはよくわからないので、会っても軽く話すくらいかな
「この辺りや湖で、オブリ…、いや、死んだ人間が復活したとか、そんな話はないかなと思ってな。いや、変なこと聞いて悪かったな」

そのあとは湖にいっていろいろ調べよう
【索敵】【幸運】【偵察】などの技能を駆使してな




 外から感じた不穏な気配に、九十九・白斗(傭兵・f02173)は飛び起きた。
 眠りから速攻目覚め、緩んだ神経を叩き起こし尖らせる。即座に片膝をついた白斗は、音もなくドア脇の壁に張り付くと外の気配を伺った。
 特殊部隊と思われる軍が、中央広場に陣を敷いている。意識は白斗ではなく別の方を向いているが、こういった手合いが動くときは大抵碌なことがない。
 白戸が監視する中、兵士たちが向いているのは中央広場に設えられた舞台の方向だった。舞台の上には四人の猟兵達と、見知らぬ女。何か話をしているようだが、さすがに内容までは聞こえない。何かあったら援護できるように準備していたが、幸い何事もなく立ち去る猟兵達の姿にホッと胸を撫でおろした。
 その段になって、白斗はようやく周囲を見渡した。周りにいるのは、泥酔してマグロになって眠る市民たち。転がる酒瓶と食い散らかされた料理。その様子と中央広場を重ねて考えた白斗は、バツが悪そうに頭を掻いた。
「飲みすぎちまったな」
 情報収集のために酒場に行って、流れで酒盛りになって。突っ伏して眠るマスターの胸ポケットに白紙の小切手を突っ込んだ白斗は、外に出ると清浄な空気を肺いっぱいに吸い込んだ。吐き出す息が酒臭いのが、申し訳なく感じるくらいだ。
 どうやら、処刑やらバレット兵団のごたごたは終わったようだ。詳しいことは報告書を読めばいい。他の猟兵がうまくやったようなので問題はないだろう。
 周囲を散歩した白斗は、白亜の建物を見上げた。看板には「青十字協会 エリュシオン支部」とある。
 酒場で気になったのは、青十字協会と湖のことだった。酒にしろ、魚にしろ、骸の海を感じた。自分でもどういう感覚かはわからないが、オブリビオンに感じる負の感覚がしたのを克明に覚えていた。
 青十字協会の建物は、明かりがついている部屋もあるが明らかに閉館していた。時刻は夜が明けたくらいだから、仕方がないか。ふらりと歩き回っていると、守衛と思われる男に声を掛けられた。
「おい、こんな時間に何をしている?」
「散歩だ。目が覚めちまってな」
「そうか。さっさと行け」
「そうだ。聞きたいんだが。この辺りや湖で、オブリ……、いや、死んだ人間が復活したとか、そんな話はないかなと思ってな」
「死んだ人間は復活しないだろう。起き上がりは死なないからな。お前、何者だ?」
「田舎から処刑を見物に来たんだが、飲みすぎちまってな。いや、変なこと聞いて悪かったな」
 アルコール含みの呼気に眉をしかめた守衛が、追い払うように手を振る。ついさっきまで泥酔していたのが功を奏したのは、けがの功名ということにしておこう。
 そのまま立ち去った白斗は、湖の方へと歩き出した。朝靄のかかった湖は神秘的な雰囲気があり、雨上がりの雲の切れ間から差し込む陽光に照らされて鮮やかな紅色に染まっていった。
 美しい景色に口笛を吹いた白斗は、靄の中に見える影に目を凝らした。湖の中央に小島がある。そこへ向けて桟橋のようなものが出ているから、船でしか行けないのだろう。静かに佇む建物に何か不審なところがある訳ではない。なんとなく見ていた白斗は、船着場に現れた男たちの一団に目を向けた。
 さっき倒れた女が、抱きかかえられたまま船に乗せられる。身なりのいい男も船に乗り込むと、沖合の小島に向けて出港する。
 朝靄の中に消えていく船影を、白斗はじっと見送るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ネリッサ・ハーディ
【SIRD】のメンバーと共に行動


エリクさんと大統領に再び面会し、色々情報を探ります。
特に大統領には、グランマを奪回した事やリズ誘拐を阻止した事を悟られぬ様に注意します。

エリクさんの依頼には快諾し、セレネの身柄がこちらにある事は隠しておきます。ついでに、エリクさんの母親や亡命に関して聞いてみます。

大統領には街での噂を聞いた体で、死者を蘇らせる秘宝があるらしい、という話をし、同時にアダムカドモン(名前自体は出さずに)武器商人が暗躍している、という話をして反応を見ます。

(護衛のアキさんに)ところで、ハルさんの姿が見えませんが…何か別任務なのでしょうか?他の局員からよろしく伝える様言われてまして。




 エリクからの依頼に応じたネリッサ・ハーディ(クローク・アンド・ダガー・f03206)は、見覚えのある応接間に再び足を運ぶと大統領に挨拶した。
 つい先日も、ここで大統領と面会した。あの時と違うのは、大統領の隣にエリクがいることか。
「ネリッサ・ハーディ、参りました」
「ネリッサさん! 来てくれたんだね!」
 立ち上がったエリクは、嬉しそうに微笑むとネリッサに駆け寄ってくる。元気そうな姿に笑みを返すネリッサは、苦笑い含みの大統領の声に顔を上げた。
「エリク。客人に対して失礼だろう」
「ご、ごめんなさいお父さん」
 慌てたエリクは、大統領の隣に戻ると今更ながらに神妙な顔をする。そんな自分がおかしかったのか、すぐに表情を崩すと年相応の笑顔を浮かべた。
「ネリッサさん、来てくれてありがとう! 僕、とっても嬉しいよ!」
「お久しぶりです、エリクくん。元気でしたか?」
「もちろん!」
 大きく頷いたエリクの顔は血色も良く、どこか傷ついている様子もない。父親との関係を心配していたが、呼び方が「お父様」から「お父さん」に変わっているところを見ると良好なのは本当だろう。
 大統領とも大人のあいさつを交わしたネリッサは、先日の処刑でグランマと一緒にセレネが連れ去られたと聞いて驚いた表情を浮かべた。
「そうですか。セレネさんがテロリストに……」
「僕、セレネのことが心配で。お願い、ネリッサさん。セレネをテロリストから取り返して!」
「承知しました。すぐに動きましょう」
「本当に!? ありがとうネリッサさん!」
 嬉しそうにはしゃぐエリクの顔を見ていると、良心の片隅がチクリと痛む。セレネを誘拐したのは猟兵で、ネリッサは全体の指揮と逃走補助をしたのだ。セレネが元気なことも知っているし、グランマと一緒に逃亡生活に入ることも承知している。だが、そんなことはおくびにも出さない。
 喜ぶエリクに、ネリッサは世間話ついでのように尋ねた。
「そういえば。エリクくんのお母さまはお元気ですか?」
「……。いなくなっちゃった。お母さまと一緒にリィズ王国に行って、ウェルディンまで戻ってきて。朝起きたら、どこにもいなくて。お母さまはロスト山脈に向かったって、もう戻らないから、これからはハルとアキが面倒を見ますって……」
「そうですか。辛いことを思い出させて、申し訳ありません」
 涙を流すエリクに、ネリッサはハンカチを差し出した。ロスト山脈は、ある標高以上登ると消失ロストしてしまうのだという。
「ずっと泣いてる僕に、ハルとアキはお母さまのお葬式をしようって提案してくれて。お父さんも呼んだけど、来てくれなくて」
「あの時は忙しくてね。済まなかった」
 困ったように背中を撫でた大統領に、エリクは顔を上げる。なんとか微笑んだエリクは、話題を変えようとネリッサを見つめた。
「……そうだ、リズは元気? あれから連絡も取ってなくて」
「お元気ですよ」
「良かった」
 微笑むエリクに笑みを返したネリッサは、思い出したように視線を上げると大統領を見た。
「そういえば。街のうわさで聞いたのですが、死者を蘇らせる秘宝があるらしいですね」
「ほう。まあ都市伝説でしょ」
 言いながらコーヒーを飲む大統領の表情をよく見てみるが、特別な変化は見られない。ネリッサの問いに、エリクは首を傾げた。
「死者を蘇らせる……。ねえ、それがあったらお母さまも蘇るのかな?」
「起き上がりとは違うのですか?」
「起き上がりは死んでないでしょ?」
 きょとんとするエリクに、この国の人々の起き上がりに対する認識を目の当たりにする。起き上がりは死者である、という認識がそもそもないのだ。倒れたらすぐ起き上がったのならば、確かに「死んだ」という認識にはなりにくいのか。
「ウェルディンでは、謎の武器商人が暗躍しているという話も聞きました。ロスト共和国にも影響がないか、心配です」
「武器商人ですか。ロスト共和国内にも多く出入りしていますよ。そもそも、ロスト共和国内にプラントはありません。なので国内のキャバリアは全て、輸入品になります」
「そうですか」
 この答えに、ネリッサは驚いた。国内では諸外国と変わらないくらいキャバリアを見かける。それらが全て輸入品なのだとしたら、暗躍はしていない。堂々と商売をしているということになる。
 頭の中で内容を精査したネリッサは、護衛のアキを振り返った。
「ところで、ハルさんの姿が見えませんが……何か別任務なのでしょうか?」
「ハルはウェルディンに残ってるぜ」
「そうですか。他の局員からよろしく伝える様言われてまして」
「伝えとくよ」
 軽く答えるアキは、特別に表情を変えない。報酬の話などをまとめたネリッサは、大統領執務室を後にした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ベティ・チェン

屋上等隠れエリク監視
屋根がない場所でエリクと護衛の距離が開いた瞬間マッハ12で飛び込み拐う
風圧庇い都市外廃墟まで飛行
2人きりで話す
永続誘拐か戻り解放かはエリク次第

「キミは、自分が大統領の、父の弱味だという自覚は、あるか。起き上がりは、ただの死者だと。殺しにくく変容しただけの、死体だという自覚は、あるか」

「この国には。まだ生きている人と、キミを人質に。人を殺す、化け物オブリビオンがいる。それは、キミの父に、人を殺せと命じ、監視させている。キミの、父は。キミと妻を1度、逃がし損ねた。ボクは、ボク達は。キミが生きてるうちしか、助けられない」

「キミが本気で、キミ一人で化け物から逃げるなら。セレネのところまでは、連れていける。キミは一人で、生き延びる術を学ばなきゃ、いけない。本気で殺しに来る化け物から一人で、逃げ続けなきゃいけない」
「戻れば。キミは化け物がキミを殺すと決める日まで、父の枷としてのうのうと生きられる。家畜として」

「セレネが人を、殺したら。ボクはセレネも、殺す」
「選べ、エリク」




 ネリッサが大統領を訪ねた日の深夜。
 大統領公邸に忍び込んだベティ・チェン(迷子の犬ッコロホームレスニンジャ・f36698)は、息を殺して機会を待った。エリクと猟兵の会談は応接間で行われ、エリクが一人になる機会はなかった。ネリッサも側にいたし、わずかに夜鬼の気配もした。ならば、別の機会を狙うのみ。
 深夜を回ったころ、好機が訪れた。眠れなかったのだろう。カップを手にベランダに出たエリクが、手すりにもたれて外を見ている。周囲に護衛の姿はない。即座に詠唱を完成させたベティは、一気に飛び込みエリクを掻っ攫うとマッハ12で飛翔した。
 風圧から庇い、市街地を抜け廃墟に入る。人の気配のない廃ビルに入ったベティは、状況についていけないエリクを下すと転がっていた木箱に座らせた。パジャマ姿のエリクは、何度か瞬きをすると月明かりに照らされたベティの姿に驚きの声を上げた。
「ベティさん!」
「久しぶり」
「どうしたの? こんな夜更けに」
「二人きりで、話したいことが、ある」
「なあに?」
 緊張の面持ちのエリクの目を覗き込んだベティは、どう言えば分かるのかしばらく迷った。ベティはしゃべるのが上手ではない。だから、思ったことを率直に言った方がいい。
「単刀直入に、聞く。キミは、自分が大統領の、父の弱味だという自覚は、あるか」
「どういう……」
 戸惑うエリクを目力で黙らせ、回答を待つ。普通ではない視線に気おされたエリクは、戸惑いながらも答えた。
「お父さんにとって、僕は家族だから。弱味っていったら、そうなのかな」
「起き上がりは、ただの死者だと。殺しにくく変容しただけの、死体だという自覚は、あるか」
 ベティの問いに、エリクは不審そうに首を傾げた。
「起き上がりは起き上がりでしょう? 倒れても起き上がったんだから、死んでないよ。記憶もあるんだし。起き上がらなかったのが死者だよ。学校ではそう教わったよ」
「そう」
 冷淡に応じたベティは、エリクの認識に思わず舌打ちした。そもそも死者だと認識されていないのならば、市民権だってそのままだ。実際、聖都では起き上がりは市民権を持ち、人口も大多数を占めていると情報は回っている。迫る危機を伝えなければ。焦る気持ちは、言葉をより一層飾らないものにした。
「この国には。まだ生きている人と、キミを人質に。人を殺す、化け物オブリビオンがいる。それは、キミの父に、人を殺せと命じ、監視させている。キミの、父は。キミと妻を1度、逃がし損ねた。ボクは、ボク達は。キミが生きてるうちしか、助けられない」
「え、なに? なんの話をしてるの?」
 目を白黒させるエリクに、いらだちが隠せない。言葉が通じるが話が通じない。危機感を持っていない相手を守るのは難しいのだ。だが、やるしかない。
「キミが本気で、キミ一人で化け物から逃げるなら。セレネのところまでは、連れていける。キミは一人で、生き延びる術を学ばなきゃ、いけない。本気で殺しに来る化け物から一人で、逃げ続けなきゃいけない」
「セレネの居場所を知ってるの? なら教えて! 助けに行かなきゃ!」
「エリク、話を聞いてる?」
「聞いてるよ! でも、僕は起き上がりが化け物とか思わないよ! だってお父様だって、ハルだってアキだって学校の友達だって、起き上がりなんだ。セレネだってそうだよ。起き上がりがそんなに危険だっていう、証拠はあるの?」
「証拠……」
 問われて、ベティは思わず口ごもった。エリクを納得させる証拠が、今提示できるだろうか。起き上がりは骸の海の気配がするし、その在りようはオブリビオンに酷似している。だが、骸の海を察知できるのは基本的に猟兵だけだと考えてもいい。
 今まで会った起き上がりには理性があり、暴走したり一般人に危害を加えたりといったことは聞いていない。いうなれば、まだ暴走していないだけのオブリビオンか。一番たちが悪い。
 起き上がりは危険だということを、いくら伝えたところで今のエリクには伝わらないだろう。焦れたようなエリクが、ベティに言った。
「ねえ、僕を家に帰して」
「戻れば。キミは化け物がキミを殺すと決める日まで、父の枷としてのうのうと生きられる。家畜として」
「言っている意味が分からないよ」
「セレネが人を、殺したら。ボクはセレネも、殺す」
「セレネはSIRDの局長さんに見つけてもらうようにお願いしたから、大丈夫だよ。帰ってきたら、僕が守ってあげる」
「そう」
 それだけ答えたベティは、エリクを抱きかかえると再び詠唱を開始する。元のベランダに戻したベティは、何も言わずに跳躍すると夜の闇へと消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年10月31日


タグの編集

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🔒
#クロムキャバリア
#ロスト戦記
#第四話
#ロスト共和国


30




種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト