エンドブレイカーの戦い⑭〜速く、疾く
●
かつて瓦礫しか無かった其処は、人々の手によって都市国家という営みへと変化を遂げた。
『天翔回廊ヘイズワース』。平和を取り戻した世界の象徴でもあるかのようなその都市国家に、今、再び戦火が舞い降りる。
「ヒャヒャヒャ、まさかお前が再び、この俺『嗤う剣ダイアモード』を手に取るとはなあ! 昔より躊躇が感じられねぇのは、長い人生を経たせいか!?」
「違う。私には、蘇らせたい人達がいるんだ。長い人生を共に歩んだ私の大切な友達……ラビットバニーとエイプモンキー。彼らは強大すぎて、ウシュムガルの力では弱い私しか蘇生できなかった。でも、他の『11の怪物』と沢山のエリクシルを手に入れれば、あるいは……!」
「ギャハハハ! お前正直、今、イイ目をしてるぜえ!!!」
「エリクシルを掌握するには時間が必要だから、猟兵に邪魔される訳にはいかない。
かつて革命に生きた私が、今は自らのエゴで、彼らをこの世界から放逐しようとしている。
だけど、それで構わない。誰にも、邪魔は、させないッ!」
●
「憧れってのは、理解と最も遠い――なんて云うよな」
ひとりごちるジャスパー・ドゥルジー("D"RIVE・f20695)は、猟兵達が集まる気配に顔を上げた。
「よっ。今回ぶん殴りに行って欲しいのは『11の怪物』の一柱、ウシュムガルって奴のところだ。より正確には、ウシュムガルとウインドゼファーって奴が合体した存在だ」
ウインドゼファーは、かつてキマイラフューチャーで起きた大戦『バトルオブフラワーズ』で猟兵達が斃した筈だ。だが、同じく滅ぼした筈の『ドン・フリーダム』がCGとして残されており、猟書家にコンコンコンを齎したりと未だ暗躍している。その一端で怪物ウシュムガルとコンタクトを取ったフリーダムは、ウシュムガルとゼファーを融合させ、復活させたのだという。
「フリーダムの奴、往生際が悪いっつーか、相変わらず何考えてるかわかんねーっつーか……。まあとにかく復活したゼファーは、この地で大量のエリクシルや、他の怪人たちの力を集めようとしているみたいだ。その理由が、奴と一緒にバトルオブフラワーズで斃された怪人幹部、エイプモンキーとラビットバニーの蘇生だっていうんだよな」
そこまで説明して、ジャスパーは長い爪で耳を搔いてみせた。
「単に同僚としてじゃなくて、苦楽を分かち合った友人関係だったらしいな。聞けばゼファーって奴は、そもそもこの世界の出身だったらしい」
動乱の都市に革命を齎した革命聖女ゼファー……しかし結局彼女は都市の状況が悪化していく中、真なる平和と革命を望み、嗤う剣ダイアモードを手にエリクシルを求め、そして散っていった。
「誰にも……都市の為に協力し合うエンドブレイカー達にも、苦悩を打ち明ける事が出来なかったのかもな。革命の象徴として相応しく振る舞わなきゃってさ。孤独だったゼファーは死んで蘇った先で、初めて対等に接することが出来る、友達って呼べる存在に出逢えたらしい。だから今のあいつは、聖女としてこの世界の平和を望むのでもなく、オブリビオンとして世界の破滅を望むのでもなく、ただ純粋に友達の為に戦っている」
あの時と同じ、嗤う剣ダイアモードを手に。
「その証拠に、文字通り決死の覚悟で猟兵を屠ろうとしてくるぜ。元々スピード自慢だったゼファーだが、怪人とダイアモードの力まで加わってるからとんでもねえ。スピードだけでいうなら、今まで俺らが戦ってきたどの強敵でさえ敵わねえし、複雑な都市国家内でも一切スピードを落とすことなく立ち回れるみたいだ。先手を取る事は考えない方がいいぜ。ただその超速度を活かすために、奴はあらゆる護りを棄てている。ほんの少しでも攻撃を当てる事が出来れば、それだけで大ダメージになる筈だ」
とはいえ、あらゆるものを凌駕する超スピードの前でそれが並大抵でない事は明らかだ。しかしかつてエンドブレイカーは、猟兵は、彼女に打ち勝ってきた。きっと今回も可能な筈だと、ジャスパーは告げる。
グリモアが都市国家への道を拓く。猟兵達を誘導しながら、ジャスパーはぎざぎざの歯を見せて笑った。
「覚悟ガン決まりの奴をへし折るのに必要なのは、それを上回る覚悟かもな。ま、きっとあんたらなら問題ないぜ」
ion
●お世話になっております。ionです。
『ウシュムガル・ザ・ウインドゼファー』戦をお届けします。
オープニング公開と同時にプレイングを受け付けます。追加オープニングなどはございません。
物理的に締め切るまではプレイングを送って頂いて大丈夫です。
締め切りタイミングはタグなどで告知予定ですが、戦況によっては早めに閉め、また一部プレイングをお返しする可能性もございます。
●プレイングボーナス
これに基づく行動をすると判定が有利になります。
=============================
プレイングボーナス……敵の「超スピード」と先制攻撃に対処する。
=============================
ウインドゼファーは超スピードを活かした先制攻撃と立ち回りを繰り広げてきます。
単純なスピード勝負では、まず追いつくことができないでしょう。
(というのを承知の上で敢えてスピードで勝負するというのもアツいと思います!)
反面一切の守りを棄てており、猟兵の攻撃は掠る程度でも大ダメージを与える事が出来ます。
それでは、皆様の格好いいプレイング、お待ちしております!
第1章 ボス戦
『ウシュムガル・ザ・ウインドゼファー』
|
POW : アクセラレイト・デザイア
全身を【エリクシルの輝き】で覆い、自身の【誰に邪魔はさせないという意志の強さ】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD : ゼファー・タイフーン
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【嗤う剣ダイアモード】から【勢いを増し続ける竜巻】を放つ。
WIZ : 嘲笑せし斬風
【嗤う剣ダイアモードから放たれる衝撃波】を【スピード怪人の加速能力】で加速し攻撃する。装甲で防がれた場合、装甲を破壊し本体に命中するまで攻撃を継続する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
マシュマローネ・アラモード
◎
【嵐】
先制対策……ここまで速ければ斥力フィールド(吹き飛ばし)を乱気流の要領で、私の周囲には嵐のように進路を逸らす力場を展開しましょう。
【戦場を穿つ】
ここまで高速となると。
UC、ブリリアント・フルバーニアン!
スピードに追いつくにはこちらも加速が必要ですが、それでは足りませんわ。
目標は戦場全域、進路上に斥力の衝撃を加えて、落下物や障害物を生成、動きを捉えたところで、斥力を集束、弱点に一気にダメージを与えていきましょう!
ご友人の為という心意気こそ汲みますが、それが世界を壊してしまう愛だというのなら、私が愛する世界を護る為に剣となりましょう!
●
ウインドゼファーの身体を覆う宝石が赤く光り輝く。
あらゆるものを凌駕するスピードで振り下ろされた剣は、虚しく宙を切った。
「ヒャヒャヒャ! 避けられてやんの!」
「……黙れ」
耳障りな嗤い声の剣に低く告げ、ゼファーは再度猟兵へと迫る。
斬撃が当たらずとも、その風圧だけで人間ひとりなど容易く吹き飛ばせる程の速度だ。だが確実に銀の猟兵を捉えた筈の刃は空中で弾き飛ばされるように軌道を変え、風もその長い髪をたなびかせるに留まった。
嵐のような爆風の真ん中で、相も変わらずマシュマローネ・アラモード(第十二皇女『兎の皇女』・f38748)が静かにたたずんでいる。
「磁力か……?」
「反発してるな。スピードに特化したお前には些か分が悪いんじゃねェのか!?」
「ならば、その力ごと吹き飛ばす風となるまで!」
赤き輝きが増していく。願いに応えるように。
「何が待ち構えていようと、私はもう後には退けない! 絶対に、負けないッ!」
「――ご友人の心意気こそ汲みます。わたくしも、大切な家族や友人の命がかかっていたら、正しい路を歩めるか判りませんもの」
愛すべき、護るべき民のために権能はある。受け継いだマシュマローネはその意味を、その重さをよく理解しているつもりではある。それでも彼女自身は未だ幼い少女だ。聖女と呼ばれたゼファーもまたそうであったように。
「しかしそれが世界を壊してしまう愛だというのなら、私が愛する世界を護る為に剣となりましょう!」
「正しさだけでは何も成し遂げられない。真にお前が正義の剣ならば私を止めてみせろ!」
豪華絢爛な衣装を纏い、兎の皇女が空を駆ける。圧倒的なスピードを誇る今のマシュマローネでさえ、ゼファーには遠く及ばない。
しかし彼女には王の闘気がある。進路上に斥力の衝撃を加え、落下物や障害物で少しずつゼファーの往く手を阻んでいった。
「邪魔だ!」
剣戟が岩を斬り捨てる。その先にマシュマローネがいた。
「ええ。止めてみせますとも!」
狙い澄ましたように瓦礫がゼファーへと降り注ぐ。護りを失った身体に、それは深々と突き刺さった。
大成功
🔵🔵🔵
サツキ・ウカガミ
ウインドゼファー……ボクは、キミがゼファーだった頃しか知らないけれど、かつて仲間だった者として、キミを止めるよ。
[居合]の構え。[気配関知]した相手の攻撃を[見切り]、[武器受け]かカウンターで反撃したい。
けど……飛べて、ダイアモードで遠距離攻撃できるキミなら、そんな構えのボクにわざわざ近づかずに遠距離攻撃で攻めて来るんじゃない?
距離があると、超スピードでも多少は目で追いやすいね。竜巻を放った瞬間を[見切り]、【瞳術『忍夜皐曲者』・蝦蟇】で足を捕縛、引き寄せる。自分で放った竜巻に巻き込みつつ、ボクの元まで引きずりこんで、改めて[居合]。
ボクの目が開いているうちは、この世界で好きにはさせないよ!
●
かつてエンドブレイカー達は、革命聖女と共にあった。
人々が幸せに暮らすラッドシティを実現する。その理想を一身に背負う少女は、素朴で真面目で、ひたむきな存在だった。
だからこそ彼女は選んでしまった。理想の為の近道を。
「ウインドゼファー……ボクは、キミがゼファーだった頃しか知らないけれど、かつて仲間だった者として、キミを止めるよ」
サツキ・ウカガミ(
忍夜皐曲者・f38892)の言葉に、ゼファーは静かに振り返る。腰を落とした居合の構えで、少女忍者はゼファーを見据える。オブリビオンとして蘇ったゼファーの表情は伺えない。
「エンドブレイカーか。お前達はいつでも私の邪魔をするな」
「ギャハハ、だからオレと完全合体しておけばいいって云っ……痛ェ! おいおいもうちょっと丁重に扱ってくれません!?」
けたたましく響く声に耳を貸さず、ゼファーはただ剣を振るう。嘲笑うように震える剣から衝撃波が放たれた。阻むものごと斬り刻む斬風の動きを追うサツキの瞳に、名前と同じ花の紋様が浮かぶ。
『ボクの眼をもって命ずる、近こうよれ!』
「――!」
ゼファーが体勢を崩す。足下が見えない糸に絡み取られたかのように引っ張られる。彼女が放った竜巻へと。
「おいおい、こりゃやべェんじゃねえのか!?」
引き摺り込まれながらもゼファーは剣を横に薙いだ。圧倒的な速度からの剣圧が竜巻を切断する。それでも完全に消し飛ぶ前の風が彼女の脚を斬り刻んだ。
それでも彼女は呻き声ひとつ上げず、ただ斃すべき相手だけを見据えていた。
(「キミは、変わらないね」)
悲しいまでにまっすぐなひと。だからこそただの革命の象徴として以上に、彼女は慕われていたのだろう。それがますます彼女を孤独にさせていたのだとしても。
「ボクの目が開いているうちは、この世界で好きにはさせないよ!」
水面の月すら両断する白刃一閃。鎧と宝石で武装した華奢な身体に、深々と赤を刻み込む。
――キミが皆を救いたかったのと同じくらい、キミに救われて欲しい人もいたんだよ。
大成功
🔵🔵🔵
紫・藍
あやー。
ダイアモードから放たれる衝撃波を加速し攻撃する、でっすかー。
あくまでも放った後に加速するというのなら、その一瞬こそが隙なのでっす!
突っ込むのでっす!
加速される前の、衝撃波に向かって!
無防備に!
最初から直撃させれば装甲破壊などによるタイムロス――加速させる間も与えないで済みまっすので!
当然滅茶苦茶痛いのでっすが、それでも加速能力との合せ技としてくらうよりは全然マシなのでっす!
アウィンさんが教えてくれまっしたから、
根性で乗り切れと!
それに、ええ。
これくらいの覚悟が無ければお嬢さんには届かないっでしょうから!
ところででっすねー。
対象を失った加速能力。
どこにいったとお思いでっすかー?
な、なんと藍ちゃんくんを加速させお嬢さんに届かせたのでっす!
藍ちゃんくんのファンになってしまったのはダイアモードさんでっしょうか、ウシュムガルさんでっしょうか、お嬢さんでっしょうか!
血だらけで立ち上がるエモさは、時に絶対無敵をも凌駕する……。
ラビットバニーのおねえさんが教えてくれたことなのでっす!
●
ドン・フリーダム直属の幹部の一人であり、かつて聖女と呼ばれたウインドゼファー。
埒外の怪物の一柱、ウシュムガル。
そして『嗤う剣ダイアモード』。
単体でも恐るべき存在が融合し、手を組み、立ちはだかる。
「あやー」
どこか呑気な顔な様子で都市国家に降り立ったのは紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)だ。
「ダイアモードから放たれる衝撃波を加速し攻撃する、でっ――……」
みなまで云わぬ間にゼファーが剣を振るう。猟兵が“何らかの手段”で敵対者の攻撃を事前に識り、それに応じた戦い方をしてくる事を、かつて彼らに敗れたゼファーは理解している筈だ。
対策が取られてしまうのなら、その対策が追い付かぬほどのスピードで打ち破ればいい。
シンプルだが強力な戦術を前にして、藍は。
衝撃波の中へ、無防備に突っ込んでいった。
「! 馬鹿な!」
「ヒャヒャヒャ、ぶちのめされる前からイカれてやがるぜ、あいつ」
今、ゼファーは嗤う剣ダイアモードから放たれる衝撃波を、持ち前の能力で加速させながら放った。逃げても避けても無限に加速し続ける斬風にいつかは追い付かれ斬り刻まれ続けるのなら、最初から正面突破してしまえばいい。
無論無傷で済むわけがない。藍が一番誇れる姿である可憐なドレスはずたずたに裂け、流れる血で昏く濁っている。それでも藍は藍くるしい藍ドルの笑みのままだ。
「アウィンさんが教えてくれまっしたから、
根性で乗り切れと!」
この世の理さえも越え、蘇ったエンドブレイカーがいる。
その意志を繋いだ者達にだって、斃れても倒れても潰えぬガッツがあるはずだ。
「それに、ええ。これくらいの覚悟が無ければお嬢さんには届かないっでしょうから!」
藍は進む。ウインドゼファーへと距離を詰める。防御手段を持たぬゼファーはそのスピードを活かして距離を取る。
「おい、何だかおかしいぜ……」
ダイアモードが笑みを消した。追いつくはずがないのだ。ただのいち猟兵が、ゼファーのスピードに。
なのに今、藍は少しずつゼファーへと接近している。一体何故なのか。
「ところででっすねー」
あっけらかんと藍が告げる。
「お嬢さんの加速能力、発揮される前に対象を失ってしまいましたっよね。あれ、どこにいったとお思いでっすかー?」
「まさか」
「ご名答! 今まさに、藍ちゃんくんはお嬢さんの力を味方につけているのでっす!」
生命どころか無機物、はたまた自然現象に至るまで、虜にしてしまう藍ドルの瞳。
「でもでも、それだけじゃないでっすよね? もう一人、ファンになってくれた人がいると藍ちゃんくんの勘が告げているのでっす! ダイアモードさんでっしょうか、ウシュムガルさんでっしょうか、お嬢さんでっしょうか!」
「は、はァ!? ……おい、まさか」
剣が素っ頓狂な声を上げる。
柄を握るその人、ウインドゼファーは無言だった。
「お前かよ!? 道理でおかしいと思ったぜ! あいつの速度もおかしいがお前の速度も妙にトロかったもんなァ!?」
「……ラビットバニーを、思い出したんだ」
昂揚を隠しきれない、上擦った声が呟いた。
「今、彼女が傍にいたら、きっとたまらず叫んでいた事だろうな、と」
「ええ。そうです。ラビットバニーのおねえさんが教えてくれたことなのでっす!」
血だらけで立ち上がり、不可能を可能にしようと藻掻くその姿。
「「エモい」」「と」「っす!」
重なった言葉。にかりと歯を見せて笑う藍は、傷だらけの身体が軋む事さえも厭わず、怪人を怪人たらしめる超高速で、ウインドゼファーに体当たりした。
宝石と鎧に包まれた華奢な身体がひしゃげ、地面に叩きつけられる。
大成功
🔵🔵🔵
イングリット・イングラム
長い人生を共に歩んだ友達を蘇らせる――
貴方は自らがオブリビオンとなっただけでは飽き足らず、
自らの大切なものをも歪んだ形で蘇らせ、世界を穢そうというのですね
その傲慢、この剣をもって正します
強化された知覚で敵の動きを《感知》
速い。《風》……いえ、《雷》ですら追い付くのは難しいかもしれません
ならば、《光》の速さで追い掛けましょう
敵の複雑な動きに対応できるのは一瞬だけ
攻撃を剣と《防護》で防御
防ぎきれなかった傷を治癒しつつ、《光》の速さで追撃
UCを込めた剣で敵の存在そのものを世界から切り離します
オブリビオンは、世界への悪意を植え付けられて生み出された歪んだ複製物
その紛い物を貴方は友と呼ぶのですか?
●
優しげな、しかし厳かな声が戦場に響く。
「貴方の傲慢、この剣をもって正します」
生と死のルーンが浮かぶ剣は、イングリット・イングラム(教団剣士・f35779)が所属する教団の象徴。生と死の境界を侵し世界を穢すオブリビオンを処断する為に彼らは存在する。
「傲慢だと?」
仮面に素顔を隠したゼファーが問い返す。
「はい。貴方は自らがオブリビオンとなっただけでは飽き足らず、自らの大切なものをも歪んだ形で蘇らせ、世界を穢そうとしている。傲慢以外の何物でもありません」
エリクシルは。
願いを正しい形で叶える事などない。彼女も知っている筈だ。
「そうかも知れない。それでも私は、もう止まらないッ!」
「ッヒャヒャ! つくづくイイ目になってきたな、お前!」
禍々しい剣の哄笑と共に、衝撃波が吹き荒れる。音もなく――否。
(「音より速いのか」)
翳した剣と、咄嗟に召喚した防護を司る精霊がイングリットを護った。衝撃の後にようやく耳を劈くほどの音が轟く。
しかし斃すべき存在への道を阻まれた斬風は貪欲な獣のように牙を剥き続けた。このまま暴風を受け続ければ接近する事さえ難しいと判断したイングリットは自ら守りを和らげる。皮膚のあちこちが裂ける感覚がした。
傷は癒せばいい。それよりも成すべきことを成せない方が、教団の使徒である彼にとっては耐えがたい事だ。
(「『風』では到底追い付けない。『雷』ですら――となれば」)
召喚せしは光の精霊。速度の頂点に立つその恩恵を不死の身体で最大限発揮し、イングリットは肉薄する。
振り翳した剣に、オブリビオンを、そのユーベルコードを否定する
力を乗せて、振り下ろした。
「がはっ……!」
ゼファーが膝をつき、血を吐く。静かにイングリットは歩み寄った。
「オブリビオンは、世界への悪意を植え付けられて生み出された歪んだ複製物。その紛い物を貴方は友と呼ぶのですか?」
「ああ。形に拘って何の意味がある……ようやく巡り合えた、大切な、友だ」
荒い息で、けれどはっきりと、ゼファーが答えた。
「お前には、わかるまい」
「……そうですか」
再びイングリットが剣を振り下ろす。
だがその時には、彼女はその超速度で姿をくらませていた。
大成功
🔵🔵🔵
シル・ウィンディア
怪人として一回、そして、エンドブレイカーの時代でも対峙した。
想いが強い人なのは、あの頃と一緒ってことか。
…でも、それを許しちゃうと、世界が壊れちゃうから
だから、止めるっ!
スピード勝負でかなわない。
それなら、こっちは威力で…
見切ることができないのなら、第六感を信じて…。
そして、多重詠唱で魔力溜めと同時にUCの詠唱を開始。魔力溜めは高速詠唱で隙をさらに減らすよ。
敵UCは…
本体に命中するまでなら、命中させればいいんでしょっ!!
致命箇所を外すように見切り、ダメージをもらいつつ…
当てたってことは、動きは少し止まるよね
限界突破で全力魔法のUCで撃ち抜くよっ!
これが、わたしの一撃。
遠慮せずもってけーっ!!
●
「想いが強い人なのは、あの頃と一緒ってことか」
あのひたむきさを、シル・ウィンディア(青き流星の魔女・f03964)は知っている。それゆえに自分が正しいと信じる道を曲げないまま、彼女は散っていった。
「……でも、それを許しちゃうと、世界が壊れちゃうから。だから、止めるっ!」
「ウヒャヒャ、生前の知り合いか? 時を超えた感動のごたいめーんって奴か?」
「さあな」
仮面で素顔を隠すゼファーの感情は伺えない。嗤う剣の揶揄にも淡々と答えるばかりだ。その奥に潜む激情は、ダイアモードからの衝撃波となってシルに襲い掛かった。
――それであなたは幸せなの?
あるエンドブレイカーは、孤独な聖女に問いかけた。
聖女は答えた。何を言っているの?
嗤う剣は代弁した。彼女にはこの道しか残されていないと。
「私は」
暴風が猟兵を、かつてのエンドブレイカーを呑み込んでいく様を見つめながら、ゼファーは誰にも届かぬ呟きを零した。
「きっと、今。とても、しあわせだ」
全てを排除した先に、友が待っている――。
暴風が弱まっていく。その中心にいた筈の青い猟兵は、だがしかし二本の脚で確りとその場に立っていた。
「あいたた、致命傷を避けてもやっぱりすごい威力だね」
小さな身体のあちこちに血を滲ませ、それでも気丈に笑ってみせる。ゼファーが再び剣を振るいあげた。衝撃波が巻きあがる前に、シルの魔術が炸裂する。
十分な詠唱時間を稼げる相手ではない。それでも絶対に止めてみせるというシルの覚悟が、己の限界を超えて魔術を研ぎ澄ませた。疾風の聖女を凌駕するほどに。
「六芒に集いて、全てを撃ち抜きし力となれ――ヘキサドライブ・エレメンタル・ブラスト!! これが、わたしの一撃! 遠慮せずもってけーっ!!」
六つの属性を束ねた魔力砲撃が、カウンター気味にゼファーを、ダイアモードを貫いた。
大成功
🔵🔵🔵
鹿村・トーゴ
波乱の運命に弄ばれた聖女さまか
死んだ友達に戻って欲しい
切実な願いだな
でもあの赤い石願い歪めるんだろ
そんなのに縋るほどの願望
必勝のための捨て身
こりゃー手強いねェ
>先制攻撃
あの速さを追うのは至難だし
【野生の勘と地形の利用】建物の陰と【念動力】で直撃の衝撃を幾らか凌ぎ【激痛耐性】で耐え意識を保つ
同時に【情報収集】
竜巻を避けるルートおおよそ割り出す
初擊を耐えたら即にUC行使
【カウンター】気味に全鏃を高威力で撃ち込む
幾らか大剣に弾かれても良い
その音【聞き耳】拾い野生の勘頼りに接近位置判断、全長の七葉隠を念動で【投擲】し【串刺し、暗殺】狙う
相手は超速
UCも七葉隠れも当たれば相対速度と衝撃は跳ね上がるはずだ
●
後先考えられねーんだよと、その“飴行商”はからから笑う。
三佐吉と名乗りれんげのはちみつ飴を売り歩く赤髪の羅刹は、かつて恋をした。
「波乱の運命に弄ばれた聖女さまか。死んだ友達に戻って欲しい……切実な願いだな」
鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)にも、叶うならばもう一度逢いたい人がいる。その道を選ばないのは知っているからだ。この世界に存在する“願いを叶える宝石”エリクシルは、決して使用者の望む形でそれを叶えてはくれない。
「そんなのに縋るほどの願望。必勝のための捨て身。こりゃー手強いねェ」
ざり、と道端の小石を踏みしめる。トーゴに気づいたウインドゼファーが、既に傷だらけの全身を軋ませながら竜巻を放った。
「ッ、と!」
路地裏に身を翻す。周辺の地形は既に凡そ頭に叩き込んだ。足を使っての調査ならお手の物だ。少しでも竜巻の勢いを殺すように障害物の多い小道を駆ける。駆ける。それらを吹き飛ばしながら竜巻が迫る。追いつかれる直前に念動力をぶつけて可能な限り威力を殺す。それでも貪欲に獲物を狙う獣のように、竜巻はトーゴの全身に食らいついた。
飛びそうになる意識を精神力で繋ぎ止め、トーゴは黒曜石の鏃を無数に放つ。ぬらりと光る表面にはべったりと毒が塗りこめられている。
剣が嗤うように震え、鏃を弾き飛ばした。それでもいくつかはゼファーを掠める。それだけで充分だった。返す刃が再び竜巻を起こすが、既に毒が回っているのか威力も速度も先程のものに遠く及ばない。遠距離戦では分が悪いと判断したゼファーが地を蹴り、トーゴへ迫る。
それこそがトーゴの狙いだった。迎え撃つのは十三尺にも迫る巨大忍刀。圧倒的速度で迫るゼファーは、その透明な刀身を見定める事が出来なかった。
己の誇る超速のまま、七葉隠れにその身を差し出す形となる。
串刺しにされ、夥しい量の血を吐いて、それでも女は、友を諦めなかった。
大成功
🔵🔵🔵
出水宮・カガリ
あの時のスピード怪人、か。
その出自。願い。知った以上は、お前を許容できない。
英雄としての振る舞いも。ひとを脅かすことも。今、希望に目覚めることも。
元より、カガリは不動の城門。
こちらの姿を見せる前に、『神座の飾紐』『死都の紋章』から結界を張らせてもらうな(拠点防御・限界突破・結界術・侵入阻止)
境界の全力で、拒絶の壁を築こう。
初撃を『鉄門扉の盾』『不落の傷跡』で受けた後は【出水宮神都】を展開する。
あちらの攻撃が当たる時に、『内なる大神(オオカミ)』『大神の神眼』の力で。僅かでも、敵の動き。鈍らせることができれば。
カガリが再び、お前を閉ざす。
その眼、その口、その意志。閉ざしてしまえば、苦しみも無い。
●
超技術に支えられた、キマイラ達の楽園。
それを脅かす怪人たちの幹部に、出水宮・カガリ(死都の城門・f04556)も出逢ったことがある。
「あの時のスピード怪人、か。その出自。願い。知った以上は、お前を許容できない。英雄としての振る舞いも。ひとを脅かすことも。――今、希望に目覚めることも」
「ならば私を止めてみせろ」
「云われずとも」
大きく振るった剣から衝撃波が放たれる。空間ごと切断するような風を、カガリは真正面から受け止めた。
「カガリがいる限り、お前は、止まる」
不動の城門。霊力と髪を束ねるリボンと黄金都市の紋章による結界、そして傷の刻まれた盾が。嗤う剣の力を、宇宙から迫る怪物の力を、覚悟を決めたひとりのオブリビオンの力を、受けきった。
再びゼファーは剣を振るう。カガリのグリモアが黄金色に、エリクシルを求める存在を静かに見据える眼差しが黄金色に輝いた。すべての傷と痛みを拒絶する紅桜が竜巻に吸い上げられ、内側からその力を掻き消した。
息を呑むゼファー。泉木花は未だゆらゆらと辺りを漂っている。生きるものには治癒を。死にゆく者にも穏やかな眠りを。万象の痛みを拒絶するカガリの願い。
「カガリが再び、お前を閉ざす。その眼、その口、その意志。閉ざしてしまえば、苦しみも無い」
カガリの脳裡に今も浮かぶ、黄金都市が崩れゆく姿。逃げ惑う人々の悲鳴。苦痛。
鉄門扉はそれらを鎖す。たとえ敵対存在であろうと。
ぐらりとゼファーの頭が揺らぐ。このまま眠りに落ちてしまえば、あとは緩やかな死が彼女を骸の海へと沈め――
「……けない」
ぐ、と柄を握る手に力が籠る。
「負けない。私は、立ち止まるわけには、いかないッ!」
漆黒の刃を手に突きたてる。その痛みで覚醒したゼファーは、振り抜いた剣戟で泉木花を吹き飛ばした。
異変に気付いたカガリが再び術を練るより速く、ゼファーは行方をくらませていた。
「選ぶのか。穏やかな結末よりも。苦しみに塗れながら、友の為に、生きる道を」
たとえ、その先に地獄しかなくとも。
大成功
🔵🔵🔵
シリン・カービン
確かに、速い。
ですが私はあなたを狩ると決めた。
私の目は、決してあなたを逃さない。
マントとチュニックを脱ぎ捨て、装備もすべて外し、
身に着けているのは精霊護衣のみと、究極の身軽状態になります。
肌が褐色に変わると額に開く第三の目。
真の姿となり、精霊猟銃と数種の精霊弾を手にすれば準備は完了。
視界が開けた高い位置で俯せになり感覚を研ぎ澄ませます。
真の姿になって強化された能力は、ウインドゼファーが
どれほど速くても見逃さない。
先制攻撃の竜巻を察知したら、氷の精霊弾と炎の精霊弾を矢継ぎ早に発射。
この場に到達する前に、水蒸気爆発を起こして竜巻を霧散させます。
ウインドゼファーを視界から逃さず、UCを発動。
UCによる加速で、超高速で照準、狙撃、装填を繰り返します。
近寄る前に撃つ。離れる前に撃つ。攻撃を放つ前に撃つ。
「あなたは、私の獲物」
どんな運命を辿ってこようとも、どんな想いを抱えていようとも、
無慈悲にあなたを撃ち砕く。
それが獲物への礼儀。それが猟師の矜持なのだから。
●
身躱しの魔力が込められたチュニックも、狩猟のマントも、全て脱ぎ捨てる。
精霊護衣で急所だけを護る究極の身軽状態になったシリン・カービン(緑の狩り人・f04146)の皮膚が褐色に染まり、額にはまるで宝玉のように第三の目が開く。
真の姿を解放したシリルは防御だけでなく攻撃手段も必要最低限だ。ボルトアクションライフル型の精霊猟銃と数種の精霊弾。猟兵となって以来、シリンは一般的なエルフが扱うような弓ではなく銃を愛用するようになった。
多くの武装は油断を生み、却って足元を救われる事もある。シンプルに速度だけを研ぎ澄ませた相手を狩るのに小細工は不要だ。
相手と同じように、最も得意な分野で、迎え撃つ。
シリンは開けた高台に伏せ、空を自在に飛翔するゼファーの様子を伺っていた。既に傷の深い彼女は積極的にこちらに近寄って来る様子はない。
(「保身に走るようなタイプには見えませんが、友の為に死ぬわけにはいかないという事なのでしょうね」)
代わりに速度で撹乱し、死角から嗤う剣での攻撃を仕掛けてくるつもりのようだ。だがゼファーがどれほど速く疾く駆けようとも、真の姿を解放したシリンの三つ目が、銃口という四つめの視線が、ぴたりとゼファーを捉えて離さない。
「確かに、速い。ですが私はあなたを狩ると決めた」
狩り人の目は、絶対に獲物を離さない。
それが獣であろうと、オブリビオンであろうと――己のエゴのままに世界を呑み込む怪物であろうと。
「ヒヒッ、お前のスピードについてきてるぜ、あの女」
ゼファーの持つ剣が震えている。嗤っている。
取り柄であるスピードが通用しない事にも、一応は共闘関係にある剣からの嘲りにも反応を示さず、ゼファーは静かに剣を振るった。
「私の風は、阻むものを逃さない」
空気が唸る。竜巻がシリンへと襲い掛かった。並みの銃では対応しきれぬほどの速さでシリンは引き金を立て続けに二回引いた。氷と炎の精霊弾が放たれ、竜巻に吸い込まれていく。内部でぶつかり合った弾丸が水蒸気爆発を起こし、竜巻を無力化した。
ゼファーが再び竜巻を放つ。しかし爆風の向こうにシリンの姿はなかった。
微かに息を呑むゼファーの背後から、かちゃりと乾いた音がする。咄嗟に身を翻した彼女の肩を弾丸が掠めていった。それだけでゼファーの身体は大きく吹き飛ばされる。
後方に吹き飛ばされながらもゼファーは剣を振るおうと腕を引く。その手を銃弾が弾いた。ならばと距離を取ろうとしても、その先を見据えたように弾丸が阻む。
「あなたは、私の獲物」
静かに。ただ事実を述べるように呟くシリンの声が、はっきりと響いた。
近寄る前に撃つ。離れる前に撃つ。攻撃を放つ前に撃つ。
速度を増したかつてのスピード怪人に、あるいは疾風の聖女に追いつくための、真の姿。そして時の精霊の加護。精霊銃。その全てが、無慈悲に獲物を撃ち抜くために存在する。
「エイプモンキー。ラビットバニー。私は――私は!」
たった一撃でさえ致命傷の筈のゼファーは立て続けに銃弾を喰らい、それでも漆黒の剣を振り抜いた。
「あなた達を蘇らせる! こんなところで、死ぬわけには、いかない――ッ!!」
剣が手から滑り落ちる。ゼファーの腕が不自然に折れ曲がっていた。それでも発生した竜巻は彼女のありったけの覚悟を乗せ、今までのどんな攻撃よりも速く、凄まじい風量を伴ってシリンへと牙を剥く。
「あなたがどんな運命を辿ってこようとも、どんな想いを抱えていようとも、私のやるべきことは変わらない」
シリンもまた、ありったけの銃弾を叩きこむ。
侮辱ではない。これは、狩る側から狩られる側への、最大の敬意。
決して手を抜かない。獲物への礼儀であり、猟師としての矜持だ。
聖女としてではなく、オブリビオンとしてでもなく、ただ友と再び過ごす時を求めた覚悟を、真正面から迎え撃ち、貫いた。
声なき悲鳴が響き渡る。赤い仮面がばらばらに砕けた。たなびく金髪が彼女の顔を隠して――それが見える前に、白い輝きに包まれて消えていった。
後には静寂だけが残った。
マントとチュニックを纏った緑の狩り人は、振り返る事無く静かにその場を後にした。
大成功
🔵🔵🔵