エンドブレイカーの戦い⑭~背負いし宿業の果てに
●堕ちたる英雄の果て
風が戻って来た。しかし、それは革命の再来ではなく、悲劇の延長。
革命の望む気高き志も、人々から課せられた願いも忘れ、彼女は自ら悪となることを決めた。他でもない、彼女自身の
想いのために。そのためであれば、もはや世界がどうなろうと、人々がどうなろうと、彼女の与り知るところではないと。
「……革命少女ゼファー。まさか、こんな形で戻ってくるなんてな」
エンドブレイカーであれば、その名を聞いた者は数多いだろう。そう言って、エスカ・ブランシェール(跳ね馬の群竜士・f39110)は少しだけ伏し目がちに、あらたなる11の魔物について説明を始めた。
「もう既に知っているやつもいるだろう? 11の魔物の1柱、ウシュムガル。そいつと合体しているのは、他でもないラッドシティの革命騒ぎで倒れた、あのゼファーだってことをさ」
革命少女ゼファー。彼女が革命のリーダーに選ばれたのは、正に偶然といったところだった。
偶々、彼女の正義感が強かったから。偶々、彼女が武器を拾ったから。偶々、彼女の前に悪徳を働く者が存在していたから。それらが重なり、自らの意思で悪への反抗の意を示したゼファーは、瞬く間にスラム街の英雄として祀り上げられた。本人の意思など関係なく、スラムに住まう全ての人々の希望を、一方的に押し付けられて。
そんな人々の期待に応えるべくゼファーは彼女なりに頑張りはしたが、所詮は無知な一人の少女に過ぎない。革命はマスカレイドに乗っ取られ、良いも悪いも関係なしに上流階級の人間全てを断罪するような流れとなって、挙句に失敗。それでも己を曲げることのできなかったゼファーは、ついに禁断の力……喋る武器の言葉に耳を傾け、マスカレイドへと堕ちてしまった。
「思えばさ……既にその時点で、あいつはもう限界だったんじゃねぇかって思うんだよな。期待と希望と責任の全部を押し付けられて、それでもあいつなりに頑張って……なんとかして革命を成功させようとした結果、周りが見えなくなっちまったんだ」
手段と目的が入れ替わってしまったことさえ、当時の彼女は気づけなかった。だが、その心が悲鳴を上げていたからこそ、彼女は自由と安らぎを求め、ユートピアたるキマイラフューチャーに転生を果たしてしまったのかもしれない。
もっとも、その転生先でも怪人として元の住民に大迷惑をかけ、挙句に戻ってくれば11の魔物と合体して再び人に害を成す存在になったとなれば、もはや放っておける事態ではない。同情する生い立ちこそあれど、今の彼女はオブリビオン。どれだけ崇高な理想や夢を掲げたところで、それらは全て世界を破壊するために使われることになる。
「正直、可哀想って気持ちもあるけどさ……でも、やっぱりあたいは今のゼファーを認められねぇよ。やり直す機会も、協力して歩んで行く道も……手を差し伸べてもらえるチャンスは何度もあったのに、あいつはそれを全部蹴って、最後はマスカレイドになることを選んじまったわけだしな」
厳しい言い方をすれば、それは逃げだ。人間、誰しも失敗はするし、自分だけでは抱えきれない業を背負ってしまうこともある。しかし、そんな時に手を差し伸べてくれる人々を頼り、過去のわだかまりにも決別する覚悟を決め、やり直す道を選ぶこともできたはず。
ところが、ゼファーは最後まで我を通すため、共存共栄ではなく闘争の道を選んだ挙句、今度は自らのエゴで世界を破壊しようとしている。彼女の望みは、キマイラフューチャーで出会った怪人仲間のラビットバニーとエイプモンキーを復活させること。そのためには、弱者を踏み躙り世界を食らい、どれだけ多くの人間が死んでも構わないとさえ思っている。
「こんな風になっちまったら、あたい達にできることは『殺してでも止める』って方法だけさ。まあ、それさえ難しい程に、今のゼファーは悪い意味で吹っ切れてやがるけどな」
かつて自分を唆した喋る剣のダイアモードを再び手にしたゼファーは、その能力の全てを攻撃力とスピードに全振りしている。防御など考えていないため、あらゆる攻撃は命中さえすれば彼女にとって致命傷となるが、しかし超絶的なスピードで先制攻撃を仕掛けてくる上に、その後もスピードに対応できなければ、攻撃を全く当てられないまま一方的にやられてしまうだろう。
「ゼファーの先手に対応するための時間は、戦場に転送されてからの一瞬だけだぜ。ユーベルコードの発動は間に合わねぇし、達人級の特殊技能持ちでも先手取れねぇくらいには速いから、それ以外の何かに頼って凌ぐしかねぇな」
だが、そこさえ凌いでしまえば、こちらにも十分に勝機はある。必ずしも攻撃的なユーベルコードを使わずとも、何らかの攻撃を当てさえすれば、ゼファーはそれだけで大ダメージを受けるのだ。
「ゼファーは根っからの悪人じゃねぇ。元は普通の女の子だったんだろうに……それをここまで歪ませちまったのは、当時のあいつに頼りまくったスラムの連中や、そもそものきっかけを作った長老衆……それに、あいつに最後の最後で信じてもらえなかった、あたい達エンドブレイカーにもあるんだろうさ」
どこか皮肉気な口調で、エスカは言った。悪というなら、ラッドシティにいた殆ど全てが悪だった。それら全ての業を受け、そして背負わされる形で、一人の少女は世界を破壊するエゴの怪物へと堕ちてしまった。
ゼファーに逃げるなというのであれば、それらの過去と向き合い、彼女を倒すことの業を受け止めることもまた、逃げずに戦うというひとつの姿勢なのだろう。そう、自嘲気味に呟きつつも、エスカは猟兵達を、ゼファーの待つ天翔回廊ヘイズワースへと転送した。
雷紋寺音弥
こんにちは、マスターの雷紋寺音弥です。
このシナリオは戦争シナリオになります。
1章で終了する特殊なシナリオです。
以下の条件を満たすとプレイングボーナスが得られます。。
ゼファーについて思うところのある人は色々といるでしょうが、今の彼女は自身のエゴ曲げるつもりはないようです。
●プレイングボーナス
敵の「超スピード」と先制攻撃に対処する。
先制攻撃に対しては、ユーベルコードや技能「先制攻撃」での対処は無効となります。
対処が甘かった場合は問答無用で苦戦や失敗の判定が出る可能性もありますので、ご了承ください。
第1章 ボス戦
『ウシュムガル・ザ・ウインドゼファー』
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POW : アクセラレイト・デザイア
全身を【エリクシルの輝き】で覆い、自身の【誰に邪魔はさせないという意志の強さ】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD : ゼファー・タイフーン
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【嗤う剣ダイアモード】から【勢いを増し続ける竜巻】を放つ。
WIZ : 嘲笑せし斬風
【嗤う剣ダイアモードから放たれる衝撃波】を【スピード怪人の加速能力】で加速し攻撃する。装甲で防がれた場合、装甲を破壊し本体に命中するまで攻撃を継続する。
👑11
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レクス・マグヌス
【心情】
スピード怪人『ウインドゼファー』、エンドブレイカーに因縁があるようだが
僕個人にとっても、かつて一敗地に塗れた相手として記憶に残る相手だ
【戦闘】
「やはり先に詠唱をさせてくれる相手ではないか」
「覚悟」で攻撃を耐え「誘導弾」で「地形の利用」が可能な狭い場所へ誘導
移動範囲の少ない、超スピードの意味がない狭い場所で「拠点構築」「拠点防御」して戦闘
「貴女の欲望の所以、多少は理解した。だが、その上で今度こそ!」
「嵐よ起きろ!今こそ大いなる戦いのときだ!」
「フェイント」で気をそらして動きを誘導
UCの「属性攻撃」を叩き込む
ここで彼女に勝てても彼女を討つ資格はあるのか
また出会う奇跡があればその時こそ決着を
●ザ・リベンジマッチ
嘲笑う剣と怪人の力を携え、11の魔物と融合して戻って来た革命少女ゼファー。彼女は以前、この世界でマスカレイドとして討たれた存在。故に、この戦いは彼女にとって逆襲とも呼べるものだったが、それは何も彼女に限ったことではない。
レクス・マグヌス(嵐をもたらすもの・f07818)にとっても、それは同じことだった。彼は以前、キマイラフューチャーにてスピード怪人となったゼファーと戦っているが、その際に手酷いやられ方をしたのは、彼の記憶の中で未だに強く残っている。
ゼファーの武器は圧倒的なスピードによる先制攻撃。故に、ユーベルコードの使用は間に合わないと忠告されていたにも関わらず、レクスはそれを話半分にしか聞いていなかった。だが、その結果として彼は殆ど何もできないままゼファーに翻弄され、挙句の果てには温情を掛けられて見逃されたのである。
自分の甘さが招いた結果とはいえ、これはレクスにとって苦い記憶だった。だからこそ、ここでリベンジを果たさねば、過去の過ちを延々と引き摺ったままになってしまう。
『ギャハハハハ! あそこの鈍足が相手かぁ? コイツは余裕だなぁ!』
「……黙れ。気が散るだけだ」
ゼファーが剣を振るう度に、嗤う剣ダイアモードが不愉快な言葉と共に衝撃波を放つ。そのスピードは目で見て避けられるようなものではなく、受け身を取るにしても、咄嗟に身を固めるのが精一杯。
「……っ!? やはり先に詠唱をさせてくれる相手ではないか」
衝撃波の直撃を食らい、レクスの身体が吹っ飛ぶ。そのまま路地裏に転がりつつ炎の矢を放つが、それらは全てゼファーの超絶的なスピードにより、掠めることもなく避けられてしまう。
『下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるってことか? そいつは甘すぎる考え……って、熱ぃ! おい、俺を盾にすんな!』
「追尾性能を持つ魔法の矢か……。だが、当たる寸前で弾けば造作もなく避けられるな」
目にも止まらぬ速さでダイアモードを振るい、ゼファーは放たれた矢を悉く叩き落して行く。その度にダイアモードが文句を叫ぶが、そんなことはお構いなしといったところか。
「さすがに手強い……。しかし……」
身体の痛みを堪え、レクスは気力だけで立ち上がった。ダメージを軽減する策を用意していなかったので、今のレクスには肉を斬らせて骨を断つような戦法しか使えない。
こちらの挙動に合わせ、ゼファーは更に距離を詰めてくる。狭い路地裏では自慢の機動性を生かすことこそできないだろうが、それでも直線距離で一気に間合いを詰められれば、そこでレクスの敗北は確定する。
「この戦いで、私は友を取り戻す! 誰にも邪魔はさせない!」
路地裏を拠点に見立てて守りを固めるレクスだったが、せいぜい利用できるのは無造作に置かれていた木箱程度。当然、そんなものではゼファーの放つ衝撃波を防ぐことはできず、木箱は一瞬で木っ端微塵に砕かれて、破片がレクスへと突き刺さった。
「貴女の欲望の所以、多少は理解した。だが、その上で今度こそ!」
しかし、その破片に紛れる形で、レクスは辛うじて衝撃波の直撃を避けていた。どれだけスピードが速くとも、進入角度の限られる場所では、それだけ攻撃の軌道も予測しやすい。これが接近戦であれば防御も間に合わず切り刻まれていただろうが、幸いにしてゼファーの攻撃は直線的な軌道しか取れない衝撃波に限られていた。
「嵐よ起きろ! 今こそ大いなる戦いのときだ!」
今度こそ本命だとばかりに、レクスは再び炎の矢を放つ。その数は、少なく見積もっても600本は下らない。文字通り、路地裏を埋め尽くす程の量であり、それらを一斉にゼファーへと放ったのだ。
『おいおい、マジかよ!? 早く止まれ! 後ろに下がりやがれ!』
「無茶を言うな! この状態でブレーキを踏めば、私達の方が転倒して大惨事になる!」
加速中のゼファーは急に止まれず、そして面を制圧された状態では、逃げ場など何処にもなかった。右も左も、上も下も炎の矢だらけ。空間を埋め尽くした火矢は、まさしく巨大な炎の壁となって、ゼファーとダイアモードを飲み込んで行く。
『ギェェェェッ! 熱ぃぃぃぃっ!!』
「くぅっ……! この本数……さすがに捌き切れない!!」
どれだけ素早く剣を振るおうと、全身目掛けて同時に襲ってくる矢を全てジャストなタイミングで弾き落とすことなど不可能。脚に多大なる負担が生じることは承知で急ブレーキを踏み、そのまま矢を払いながら後退するゼファーだったが、急所を守るのが精一杯。
「どうやら、一矢は報いることができたな……。だが、ここで彼女に勝てても彼女を討つ資格はあるのか……」
傷ついた肩を抑え、燃えながら吹っ飛んで行くゼファーを横目にレクスは呟く。
確かに、これで借りは返した。しかし、彼女の生い立ちや今現在置かれている状況を考えると、ここで自分が彼女を討つことは、色々な意味で正しくないとも思えていた。
これで勝負は1勝1敗。もし、次に何かのきっかけで彼女が蘇ることがあるのであれば、その時は本当の意味で決着をつけようとレクスは誓う。猟兵としてオブリビオンの彼女に敵対するのではなく、ただ純粋にどちらが強いのか、真に証明するために。
成功
🔵🔵🔴
神崎・零央
俺とキングは一心同体。
俺はちっぽけなガキだけど、コイツと一緒ならなんだって出来る。
この想いだけは絶対揺るがない。アイツを止めるぞ、キング!
「「ガオオオオオーッ!」」
ゼファーに負けまいと気合いを込めてキングと雄叫びをあげる。
アイツの意思を少しでも揺るがせて、UCの威力を落とすんだ!
向かってくるゼファーは野生の勘を研ぎ澄まして気配を感知。
「今だ!」
キングの背からジャンプし、キングはケルベロスベビーに退化。
ゼファーをやり過ごす!
「キング、ぶちかませーっ!」
すかさずケルベロスに戻ったキングの口から、
必殺の電撃をゼファーの背目がけて発射!
ベビーに戻ったキングは動けないので抱えて撤収。
じゃあな、ゼファー!
●絆と友情
友達のためなら世界を破壊することも厭わないウインドゼファー。しかし、絆の強さなら負けはしないと、神崎・零央(百獣王・f35441)は相棒のキングと共に、ウインドゼファーの前に降り立った。
自分とキングは一心同体。自分だけならできないことも、キングと一緒であれば何でもできる。そう信じているからこそ、少年と獅子はウインドゼファーを正面に見据え、全力の咆哮で迎え撃つ。
「「ガオオオオオーッ!」」
それは今の二人にできる精一杯の抵抗。しかし、ゼファーは何らスピードを落とさず、むしろ加速して零央に迫ってきた。
『ギャハハハハ! そんなんでビビると思ってんのか? 可愛いガキだな、おい!』
「猛獣を持ち出し威圧すれば怯むとでも? ……舐められたものだ」
ダイアモードが嘲笑い、ゼファーは怒りにも満ちた視線を零央に向け、最大の速度で突っ込んできた。野生の本能で生きている魔獣や、あるいはバルバやピュアリィであれば通用したかもしれないが、ゼファーの覚悟は獅子の咆哮程度では、何ら揺るがぬものだった。
「私の友に対する想いを、その程度で一蹴できると思うな! 私の想いを愚弄した罪、万死を以て贖うがいい!」
『ギャハハハ! 完全に怒らせちまったなぁ! どうする、ガキンチョ?』
ゼファーの速度が更に増した。そのスピードは、一瞬で数キロの間合いを詰め、衝撃波で大地が避ける程。スピード怪人の本気を出した今の彼女は、発射されたライフル弾を後ろから走って追い抜き、そして受け止めるだけの速度を持っているのだ。
「今だ……っ! ぐぁっ!?」
野生の勘でゼファーが突っ込んで来る角度を察知し避けようとした零央だったが、意識してから身体を動かして避けられるようなものではなかった。咄嗟に飛んで避けようとするも、彼の身体能力よりもゼファーのスピードの方が当然のことながら速い。キングは幼体に退化することで身を縮めて難を逃れたが、零央は真横からゼファーの突撃を食らってしまい、ダイアモードによって身体を大きく斬り裂かれてしまった。
「お前の操る獅子とお前の絆はそんなものか? 私の友に対する想いを、その程度で否定できると……ふざけるな!」
『ギャハハハハ! ガキはおとなしく、ママのおっぱいでも飲んでた方が良かったのさ!』
未だ怒り冷めやらぬゼファーが零央を睨みつけ、ダイアモードがここぞとばかりに嘲笑してきた。悔しさに身体が震える零央だったが、痛みで身体が痺れて立ち上がるのもやっとな状況。
このままでは、確実に殺される。武器さえ持たない零央には、今のゼファーとダイアモードを止める術はない。だが、彼にはまだ最後の切り札が残されていた。それは即ち、ゼファーが格下であると判断した、零央とキングの絆である。
「ま……まだ……だ……。キン……グ……ぶち……かませぇぇぇぇぇっ!!」
今の零央には、腹の底から声を出すだけで精一杯だった。それでも、口の中に鉄のような味が広がりながら、鮮血と共に吐き出した声は、眠れる獅子の持つ真の力を呼び覚ます。
「ウゥゥ……オォォォォォォッ!!」
瞬間、小さな猫のような姿になっていたキングが突如として獅子の姿に戻り、凄まじい電撃を放射した。背後から恐るべき殺気を感じて避けようとするゼファーだったが、もう遅い。電撃が伝わる速度は光と同等。いかにゼファーが速いといえど、光速で迫る攻撃を、察知してから避けるのは不可能であり。
「……っ! ぐぁぁぁぁぁっ!!」
『グゲェェェェッ!! この……クソ猫がぁぁぁぁぁっ!!」
ゼファーの全身を電撃が迸り、ダイアモードがその手から落ちる。使い手の手から離れてしまえば、ダイアモードとて単に煩いだけの刃物に過ぎない。そして、電撃により感電したゼファーもまた、全身が痺れてしばらくはまともに動くことは不可能だ。
「よ、よくやったぞ……キング……。じゃあな、ゼファー!」
力を使い果たして幼体に戻ってしまったキングを抱き上げ、零央は去った。殆ど苦し紛れの相討ちであったが、それでもゼファーの心からは、先の零央に向けた怒りの感情は消えていた。
「なるほど……どうやら、絆の力を甘く見ていたのは、私の方だったようだな……」
『感心してる場合じゃねぇだろ! それより、さっさと俺様を拾いやがれ!』
喧しく叫ぶダイアモードだったが、ゼファーはその言葉に耳を貸すことはない。身体が痺れて動けないというのもあるが、それを抜きにしても、零央とキングの間の絆には、自分がラビットバニーやエイプモンキーに対する想いと、何の違いもないということが理解できてしまったから。
苦戦
🔵🔴🔴
ソフィア・アンバーロン
相手はだだのオブリビオン
変に思い入れしたらダメ…うん
開始早々、ゼファーの攻撃を防ぐため
霊的防護、幸運、闇に紛れるを利用して装甲となる壁に隠れて攻撃を受けます
それすら間に合わないなら杖を構え、攻撃の受け流そうとします
ゼファーが壁(装甲)を破壊や自身に攻撃しつづけている間を利用して、幸運と影縛りを使い動きを妨害してみるよ
その後はユーベルコードで大鎌さんを呼び出して僕の血を吸わせて、肉体強化と高速移動でゼファーに貫通攻撃と切断の大鎌さんでの斬撃でダイアモードごと斬るよ
距離が空いたから呪殺弾を撃ち込むよ
ゼファーのスピードとパワーに追いつけるとは思ってないよ闇に紛れたり、影縛りで行動を阻害しつつ攻撃だよ
●嗤う剣と黒龍骨の大鎌
己の意思とは関係なく革命の聖女として祭り上げられ、しかし多くの悪意に触れ過ぎた結果、道を誤ってしまった一人の少女。
そこだけで見ればゼファーもまた、かつてこの世界を取り巻いていた悪意の犠牲者なのかもしれない。だが、それでも彼女の所業が許されることではなく、世界を破壊する理由とて擁護できるものでもない。
「相手はただのオブリビオン。変に思い入れしたらダメ……うん」
あまりに数奇なゼファーの運命に対し、ソフィア・アンバーロン(虚ろな入れ物・f38968)は敢えて考えるのを止めた。
元より、相手は凄まじい速度でこちらへ攻撃を仕掛けてくるのだ。自問自答などしていれば、その間に何もできずやられてしまう。
敵の武器は剣より放たれる衝撃波。咄嗟に身を隠す場所を探すソフィアだったが、ここは街のド真ん中。わざわざ自分が不利な場所で戦うことを選ぶ者はおらず、それはゼファーも同じこと。障害物があったとしても、それらはオブジェや街灯、あるいは街路樹といったものであり、城壁のような便利な壁が、そうそう都合よくあるわけでもない。
『ギャハハハハ! 逃げろ、逃げろぉ! さもないと、バラバラだぜぇ?』
ダイアモードから不快な笑い声が響くと共に、凄まじい衝撃波がソフィアを襲った。唯一、隠れることができた壁は、しかし単なる民家の塀に過ぎなかったので、あっという間に破壊されてしまった。
「そんなところに隠れても無駄だぞ! さあ、覚悟を決めろ!」
壁に沿って逃げるソフィアに合わせ、ゼファーが次々と衝撃波を繰り出してくる。その度に壁が破壊され、ソフィアはどんどん追い詰められて行くのだが、起死回生の策がない。
影を縛って動きを止めようにも、それを用いるための媒体が今の彼女には存在していなかった。影を縛るための技術があったとしても、何を以てそれを発動させるのかが明確でなければ、技術は宝の持ち腐れ。頭の中で念じるだけで勝手に相手の影が縛れるというなら、もはやそれは単なる技能ではなくユーベルコードの域である。
ここは闇に紛れて逃げた方がいいだろうか。いや、ダメだ。そもそも真夜中でもない街の中に、闇に紛れて逃げられる場所など殆どない。それに、闇を使った技と影を使った技は、実は思いの他に相性が悪い。暗闇では影が生じないため、当然のことながら影を使って何かをすることができず、両立は殆ど不可能なのだ。
(「こうなったら、こっちも武器を出すしかないよね」)
ついに最後の壁が砕かれたところで、ソフィアはいよいよ逃げ場を失った。運だけで避けられるのもこれまでと判断し、彼女もついに覚悟を決める。
「大鎌さん! 獲物はアレ! 行くよ!」
腕に刻まれた傷から血を流し、それを代償とすることで、ソフィアが呼び出したのは漆黒の大鎌。それを見たダイアモードの様子が、今までとは異なり一変する。
『おいおい、なんだよ。お前も俺様と同じようなやつを使えるってか?』
「…………」
大鎌は何も答えなかったが、少なくとも自我を持っていることだけは確かだった。互いに自我を持つ武器と武器の戦い。『黒龍骨のデヴァイス』を振り上げたソフィアは、衝撃波攻撃のお返しと言わんばかりに、デヴァイスから呪いの弾を発射する。
「遅いな。その程度の弾速で、私を捉えられると……っ!?」
足元を狙い放たれた呪殺弾を、ゼファーは難なく避ける。が、しかし、避けたと思ったのは彼女だけで、弾は彼女の足元にある、彼女の影を直撃していた。
『おい、なにやってんだ! 速く動かねぇとやられちまうぞ!』
「くっ……! な、なんだ……これは……。身体の自由が……」
ここに来て、ようやくソフィアの作戦が功を奏した。呪いの弾を放ったのは、ゼファーを傷つけるためではない。彼女の影を撃つことで、その場に影ごと呪詛の力で縫い留めるためだ。
「大鎌さん! 勝負に出るよ!」
自慢のスピードを殺されたゼファーに、ソフィアは一気に距離を詰めて、デヴァイスで斬り掛かった。それをダイアモードで受けるゼファーだが、ソフィアの攻撃の勢いは殺せない。斬撃の余波は、そのままダイアモードを貫通し、ゼファー自身の身体も斬り裂いた。
「……っ! なんてやつだ!!」
『ギャハハハ! やるじゃねぇか、ご同胞! こいつは面白くなってきたぜぇ!』
ゼファーの鮮血を浴びながら興奮して叫ぶダイアモード。もっとも、ゼファーには戦いを楽しむという趣味などないので、彼女は咄嗟の判断から、再びダイアモードに衝撃波を発射させ。
「……この距離で撃ってくる!?」
呪殺弾で相殺するソフィアだったが、互いの攻撃が至近距離で炸裂した衝撃で爆発が起こり、二人はそのまま吹き飛ばされてしまった。幸いにして負傷は殆どなかったが、それでもソフィアが顔を上げれば、ゼファーは既に撤退していた。
「まさか、腕が使えなくても衝撃波を出してくるなんて……」
敵の衝撃波は、あくまでダイアモードが繰り出すもので、ゼファーが力任せに風を起こしているわけではないということか。どちらにせよ、咄嗟の機転で最悪の事態は避けられたと、ソフィアは安堵の溜息を吐いた。
成功
🔵🔵🔴
禍神塚・鏡吾
対先制攻撃
装甲で防がず、空振りを狙います
装備のミラーシェイダ―による光学迷彩で姿を隠し、空中浮遊で真上に逃げます
そして電脳魔術で私の立体映像を2体作りだし、ゼファーの前に横並びに配置
横に薙ぐ方向に衝撃波を撃つよう誘導します
攻撃
直接剣で斬られないよう十分距離を取ります
そして敢えて姿を現し、UCで動きを封じましょう
嗤う剣の動きをね
撃てると思った衝撃波が撃てなければ、必ず隙は生じます
そこで装備のハングドマン・イン・ザ・ミラーにゼファーを攻撃させます
心情
彼女は自分が何をしているか承知の上で、自らが望む未来を掴もうとした
その決断を否定する言葉を私は持ちません
ゼファーを倒すのは、彼女が11の怪物だからです
●正義というなのエゴ
こちらが反応するよりも速く、凄まじい速度で攻撃して来る相手。正直、受け身さえ取るのが難しいのだが、しかし禍神塚・鏡吾(魔法の鏡・f04789)には秘策があった。
(「どれだけ速いといっても、相手は『目で視て』攻撃してくるはずです。ならば……」)
鏡のヤドリガミである鏡吾にとって、視覚を騙すのは得意技。邂逅と同時に光学迷彩で姿を消し、すぐさま真上に飛翔する。
『ギャハハハハ! 臆病風に吹かれて姿を消しやがったか?』
「どこへ隠れても無駄だ! まとめて斬り捨てる!」
無論、それで狼狽えるゼファーではなく、真一文字に衝撃波を飛ばしてきた。だが、それらは全て空を切り、周囲の建物を破壊するだけだ。
『なんだぁ? マジで消えちまったのか?』
「そんなはずはない。近くにいる気配は感じられる」
広範囲を纏めて攻撃すれば当てられると踏んでいたゼファーだったが、まさか鏡吾が真上に逃げ、しかも浮いているとは思うまい。その隙を突いて、鏡吾は自分の立体映像を投影し、ゼファーの前に横並びにする形で配置する。
「……っ! そこか!」
再び横薙ぎに放った衝撃波で攻撃するゼファーだったが、やはり攻撃は空振りだった。相手が立体映像では無理もない。そうしてゼファーが無駄な攻撃を繰り返している内に、鏡吾は十分に距離を取り、敢えて光学迷彩を解除し姿を晒す。その手に持った1枚の鏡に、ゼファーとダイアモードの姿を映し出した上で。
「この鏡を御覧なさい。世界で一番美しい人が、そこに映っています」
「美しい? ……下らぬ世辞で、私を籠絡するつもりか!」
舐められたと感じたのだろう。いきなり意味不明な問いかけをされ、ゼファーは怒りのままに剣を振るって来た。が、しかし、何故か発射されるはずの衝撃波が出ない。ここに来て、何故にダイアモードがサボるのか。訝し気に思い刃を見つめれば、なんと籠絡されていたのは、ゼファーではなくダイアモードの方だった。
『ギャハハハハ! そうだぁ! 俺様は最強! 俺様は最高! この世で最も強くて美しくて、そして危険な刃だぜぇ!』
鏡吾が放った呪いを受けて、ダイアモードは完全に自己愛の塊と化し、攻撃することも忘れて自己陶酔するだけになっていた。これでは、もはや単に口煩いだけの重い剣に過ぎない。呆れた様子で溜息を吐くゼファーだったが、直ぐに気を取り直して剣を構え。
「……ならば、直に斬り捨てれば良いだけの話だ!」
一気に距離を詰めて鏡吾を斬り裂こうとするも、今度は彼女の足に激痛が走る。見れば、鏡吾の持つ鏡には奇妙な魔物が入り込んでおり、それはゼファーの鏡像を、鏡の中で攻撃していた。
「くっ……! これも鏡を使った呪いの類か……!」
攻撃しようにも剣は役に立たず、相手はこちらに触れずともダメージを与えられる。今やゼファーは完全に鏡吾の術中に嵌っており、抜け出すことは困難だ。
「ならば……その鏡だけでも叩き割って……」
「おっと、そうはさせませんよ」
強引に距離を詰めようとするゼファーだったが、その前に鏡の中に潜む魔物は鏡から飛び出して近くのガラス窓へと逃げ込んだ。この魔物、鏡面のように反射する物体の中であれば、鏡と見なして自由に出入りが可能である。今度はゼファーの右腕に激痛が走り、彼女はダイアモードを手放してしまい。
「うぅ……で、でも……まだ!」
それでも強引に拳だけで窓を割ったが、しかし鏡の中にいる魔物は倒せなかった。
「無駄ですよ。鏡を割ったところで、小さな鏡になるだけです」
魔物が鏡の中にいる限り、倒す術はないと鏡吾は告げる。そうこうしている間にも、鏡の魔物は次々と逃げ込む対象を変えて行き、その度にゼファーの身体が傷ついて行く。
「貴方は自分が何をしているか承知の上で、自らが望む未来を掴もうとした。その決断を否定する言葉を私は持ちません……」
もはや抵抗する術もなく、翻弄されるゼファーへと鏡吾は言った。
そちらを倒すのは、あくまで世界を滅ぼす11の怪物だから。友を救うために世界を壊すのも、世界を救うために哀れな少女を殺すのも、どちらも正義であることに変わりはない。
そう、これは異なる正義のぶつかり合い。そこにあるのは互いのエゴのみ。互いの存在を賭けた、異なる世界に生きる者の生存競争に他ならないのだから。
「私のハングドマン・イン・ザ・ミラーは、鏡のように反射する物体であれば、どこにでも入り込むことができます」
静かに呟くようにして告げながら、鏡吾はゆっくりと仮面を外して行く。そこに向かって一直線に突っ込んで行くゼファーだったが、しかし彼女は胸元に激し痛みを覚え、そのままバランスを崩し転がって行く。
「鏡、ガラス、湖面に刀身……そして、私の瞳の中にもね」
仮面が外れ、ゼファーを見つめる鏡吾の瞳の中には、そこに映し出された彼女の姿を屠る魔物の姿が!
そして、魔物の攻撃を受けたゼファーはスピードを制御できないまま大地を転がり、盛大に近くの家の塀に激突した。
大成功
🔵🔵🔵
ティオレンシア・シーディア
ま、事情だの過去だのがあるってのはお互い様なわけだし。冷たいようだけど結局のところ「為した業と因縁が追いついた」としかあたしは思えないのよねぇ…
「前回」は身一つで相対したけれど…今回は、あたしにも頼れる協力者がいるのよぉ?
転送された瞬間○瞬間思考力でゴールドシーンにお願いして防壁を展開。ゴールドシーンの本質は「願いを叶える」ことで、あたしが普段魔術文字を描く理由は「有する意味で祈りを具象化して効果を底上げする」ため。実は特に動作しなくても「お願い」すれば聞いてくれるのよねぇ。
装甲破壊までの一瞬の隙をついて●黙殺を起動、一気に包囲撃滅するわぁ。紙装甲は対処しきれない物量で潰す…定石でしょ?
●追いつかれた者の末路
度重なる激闘の果てに、ウインドゼファー肉体は、既に限界に近づいていた。
いかに11の魔物と融合しようと、与えられた傷は容易に癒せない。戦いを止め、この場から逃げ去れば話は別だが、そのような選択はゼファーの辞書には載っていない。
「まだ……まだだ……。私は……ここで倒れるわけには……いかない……」
次に何かをされたら、そこで自分は終わる。それでも進むしかないと、ゼファーは戦うことを止めようとはしない。
『ギャハハハハ! 逃げて力を蓄えりゃ、いくらでもチャンスはあるってのになぁ? 本当に融通の利かねぇ堅物だぜ!』
ダイアモードの嘲笑にも、もはやゼファーは何も返さなかった。ただ、目の前に猟兵が……ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)が立っているのを見つけると、彼女目掛けて躊躇うことなく衝撃波を放って来た。
「うわぁぁぁぁぁぁっ!!」
傷ついた身体で力を振るったことで、スピード怪人の能力を使っただけで、ゼファーの身体に亀裂が走る。ウシュムガルと融合していなければ、とっくに全身がバラバラになっているはずだ。しかし、それでも放たれた衝撃波は寸分狂わずティオレンシアを捉え、彼女を吹き飛ばさんと真正面から迫る。
(「『前回』は身一つで相対したけれど……今回は、あたしにも頼れる協力者がいるのよぉ?」)
もっとも、ティオレンシアはその時既に、ゼファーの攻撃に対する準備をしていた。
相手のスピードを考えると、何かできるのは一瞬だ。ならば、思考するだけで張れる防壁を張れば良いと、ティオレンシアは先んじて『ゴールドシーン』に祈っていたのだ。
「……っ! 黄金の壁だと!? だが……それも全て貫き押し通す!」
ティオレンシアの願いを受けてゴールドシーンが壁を展開してくれたものの、それは瞬く間にダイアモードから放たれた衝撃波によって砕かれた。だが、そこに更なる追い打ちが加わるよりも先に、今度はティオレンシアの手にしたペンから、大量の矢が放たれた。
「あたし、魔道の才能は本気で絶無だもの。お願いねぇ、ゴールドシーン」
複雑な機動を描き飛来する、1000本以上は下らない矢の嵐。それらが自身の身体を貫く前に、とにかく超高速で前進するゼファーだったが、それでもティオレンシアは不敵な笑みを浮かべており。
「あら、残念。まだ、あたしの攻撃は終わっていないわよ?」
「なにっ! ……うわっ!!」
ゼファーがダイアモードを振り下ろそうとした瞬間、ティオレンシアが空中に描いた魔術文字から、凄まじい数の刃が溢れ出す。その数は、先に放たれた魔力の矢に勝るとも劣らない。それらが全て、一斉にゼファーの正面を埋め尽くし、襲い掛かって来たのだから堪らない。
「紙装甲は対処しきれない物量で潰す……定石でしょ?」
平然とした顔で笑って告げるティオレンシアだったが、ゼファーにとっては笑い事ではない。単に手数を稼ぐだけの攻撃であれば捌けたかもしれないが、面を制圧される形での攻撃には、ゼファーの能力は滅法弱い。
「う……ぁぁ……」
仮面が半分だけ割れ、その中から少女の顔が現れた。ウインドゼファーではなく、革命の聖女として持ち上げられたゼファーの素顔。もっとも、その瞳には革命を志して戦っていた時の輝きはなく、ただ一人の寂しさに飢える少女のそれが、悲しみと悔しさに染まっていただけだったが。
「ま、事情だの過去だのがあるってのはお互い様なわけだし……冷たいようだけど結局のところ『為した業と因縁が追いついた』としか、あたしは思えないのよねぇ……」
そんなゼファーに、ティオレンシアは淡々と告げる。
自分からは決して率先して行動を起こさず、偶然から反抗の意を見せた少女に期待と希望と義務と責任を全て押し付け、それでいて革命の進みが悪くなると、直ぐに彼女を裏切る形でマスカレイドの甘言に耳を傾けたラッドシティの下層市民達。
確かに、彼らの暮らしは貧しく、故に悲劇の下を生み出したのは当時の貴族領主や長老衆達だったかもしれない。だが、それを理由に一人の少女へ重責を負わせ、そして最後に裏切ったのは他でもないラッドシティの市民である。
そこに至るまでの過程にて、ゼファーには何度もやり直すチャンスがあった。しかし、彼女はそれらを全て棒に振り、革命に従わない貴族領主や都市国家から逃げ出す豪商達を全て悪だと糾弾し……その果てに、最後は力を貸してくれたエンドブレイカー達をも裏切って、ダイアモードの言葉に耳を貸し、エリクシルに手を伸ばそうとしてマスカレイドへと堕ちた。
「私に……業が……追いついた、か……」
力なく手を伸ばすゼファーだったが、もはや剣を握る力もない。珍しくダイアモードが軽口を叩かないと思っていたが、よくよく見れば、既に剣は折れていた。
「では……私は……どうすれば良かったの……。ラビットバニー……エイプモンキー……ダイアモード……エリクシル……誰でもいい……教えて……」
瞳に涙を浮かべ、ゼファーは誰に尋ねるともなく問いかける。しかし、そこにかつての友や力を求めた先に出会った存在の名前は挙がっても、エンドブレイカー達の名前が挙がることはない。
「……本当に、最後まで不器用な子ねぇ。あなたを信じて、あなたを救おうと手を伸ばしてくれた人達は、最初から一番近くにいたっていうのに……」
そんなゼファーに、ティオレンシアはどこか哀れみにも似た表情で溜息を吐き、そして静かに言葉を切った。
ゼファーに罪があるとすれば、それは無知故の罪だろう。スラム出身の彼女は、当然のことながら教養などない。いかに強い正義の心があったとしても、為政者としては壊滅的に無能なのだ。
だからこそ、足りない部分は何なのか、エンドブレイカー達の言葉に耳を貸すべきだった。自分だけの力でなんとかしようとせず、仲間や隣人を信じるべきだった。
それをしなかったが故の悲劇。その終着点が今である。スラム出身の無知な少女には、あまりに重すぎる枷かもしれないが……それでも、咎を背負う覚悟なしに人の命を奪ってはならないし、他者の意見を聞き入れないのであれば、その結果として生じる責任と業は、全て自分で背負わねばならない。
「あたしみたいに、無能な部分は無能だって認めて、協力者にお任せすればよかったのにねぇ」
ゴールドシーンを片手に、ティオレンシアは改めてゼファーのいた場所を見つめた。だが、その時には既にゼファーの肉体もダイアモードも消滅し、ただ割れた仮面が残されているだけだった。
大成功
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