エンドブレイカーの戦い⑤〜煌きのウォーターウェイ
巨大な水瓶より落ちる水が無数の水路となって都市を巡る水の都――水神祭都アクエリオ。
遥かな水瓶を仰ぎ立ち尽くす猟兵達に、一人の女が声を掛けた。
「あなた達、『猟兵』さんね?」
それは、栗色の長い髪が印象的な女だった。村娘のような抑えた服装の割に、目鼻立ちは妙に華のある女だ。彼女は両手を膝に揃えて一礼すると、穏やかな声色で続けた。
「初めまして、私はクリスティナ。この水神祭都アクエリオのエンドブレイカーよ。……これって、舞台に上がるより緊張するわね?」
こほんと小さく咳ばらいをして、女――クリスティナ・ミルフィオッリ(千紫万紅・f39073)は元々いい姿勢をいっそう正し、猟兵達に向き直った。
「私達エンドブレイカーの世界を狙って、『11の怪物』が動き出したそうなの。私も詳しいわけではないのだけれど……このまま何もしなければ、私達の世界は毒蛇『バシュム』の毒に侵されて、滅びてしまう。それだけは確かよ」
だからお願いと唇を引き結び、女は真っ直ぐに猟兵達を見つめて言った。
「私達の世界を守るために、あなた達の力を貸してほしいの」
戦いの舞台は勿論ここ、水神祭都アクエリオ。無限の水を湛える巨大な水瓶を中心に発達した運河とゴンドラの都では、今、エリクシルによって蘇生されたモンスターやマスカレイドが、『ゴンドラ海賊』と化して暴れ回っている。これに対し、現地の勇猛な冒険者やゴンドラ乗り達が都市国家の守護神であるペンギン――もとい『水神アクエリオ』を旗印に掲げて水上の戦いを繰り広げているものの、彼らだけでは到底、エリクシルの勢力には対抗できないだろう。
そこでエンドブレイカー、そして猟兵達の出番である。
「『海賊』達はゴンドラに乗って、アクエリオの各地を襲撃しているわ。これを止めるためには、私達もゴンドラで彼らを追い掛けるしかないと思うの。アクエリオの水路は、住んでいる私達でも把握できないくらいあちこちに伸びているから、敵を追うのも簡単ではないと思うけれど……」
それでも今は、やるしかない。
美しき水の都を守るため、猟兵達はゴンドラに乗り青い水路へと滑り出す。
月夜野サクラ
お世話になります月夜野です。
以下、シナリオの補足となります。
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●概要
・戦争シナリオにつき、1章で完結となります。
・個別リプレイを想定しておりますが、組み合わせた方が面白くなりそうだな、という場合はまとめてリプレイにする可能性があります。指定の同行者の方以外との連携がNGの場合は、その旨をプレイング内でお知らせください(ソロ描写希望、など)。
・受付状況等をお知らせする場合がございますので、マスターページとシナリオ上部のタグも合わせて御確認を頂けますと幸いです。
●プレイングボーナス
ゴンドラを操り、ゴンドラ海賊を追跡する。
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敵となるのは、エリクシルによって蘇生されたマスカレイドボアヘッドの海賊達。
戦場はアクエリオ内の水路としてあり得る場所であれば、自由に演出頂いて構いません(お任せでもOK)。
水没した街や森を足下に望む深い水路、華やかな中心街を抜ける入り組んだ水路、放棄領域の寂しい水辺など、思い思いに駆け抜けてください。
それでは、ご参加を心よりお待ちしております!
第1章 集団戦
『ボアヘッド』
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POW : ボアクラッシュ
自身の【牙】を【長大】化して攻撃し、ダメージと【大量出血】の状態異常を与える。
SPD : 剛鬼投げ
【接近して敵を掴んで】から【投げ技】を放ち、【抑え込み】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ : 集落形成
レベルm半径内を【バルバの集落】とする。敵味方全て、範囲内にいる間は【凶暴性】が強化され、【知性】が弱体化される。
👑11
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ラリーサ・ヘリアンサス
もう、幾度終焉を視たかわからない。
水神様の慈愛満ちるアクエリオに、
そんなものは似合わないと、教えて差し上げないと。
一人でゴンドラを駆るのははじめてだけど、そうも言っていられない。
運河のほとりで最低限のバランスを掴んだらボアヘッドを追うわ。
敵の船の真横に乗りつけ、ソードハープを手に戦う。
そんなに力はないけれど、相手の影響か今なら力も増しているもの。
狭い船の上に満ちる、なんて。お仲間が溺れているのも気付かないのね。
一斉に襲いかかる素振りが見えたら、
アウィンの遺した歌で力を弱め、水面へいなすわ。
あいにく、今の私たちは手を取り合っているの。
加わりたかったら、武器を手放してからまたおいでなさい。
この世界に生まれ落ち、ガーディアンの力を
授かって。以来、もう何度こんな終焉を視たかは分からない。
滔々と水を落とすアクエリオの水瓶を遥かに仰ぎ見て、ラリーサ・ヘリアンサスはアッシュブラウンの瞳を細めた。
「――抗いましょう」
水神の慈愛に育まれた、美しきアクエリオ。清らかな流れを湛え栄えるこの街に、醜悪な終焉は似合わない。かの怪物達がそれを知らぬというのなら、教えてやるまでのことだ。
流れる運河に並走してしばし走り、船着き場に揺れるゴンドラへ。桟橋を通るのももどかしく飛び乗れば、黒い外套とスカートが風をはらんでふわりと舞う。大きく傾いだ船体に一瞬狼狽えながらもどうにかバランスを取って、ラリーサは櫂を握り締めた。
「ごめんなさい。借りていくわね」
船着き場に立ち尽くす持ち主らしき老人ににこやかに声を掛け、女はすうと息を吸い込んだ。アクエリオのゴンドラを駆るうえで欠かせないものは、力と、技術と、そして『歌』。歌うことならばそれは、魔曲使いたる彼女の領域だ。
(「一人でゴンドラを駆るのは、初めてだけど……」)
甘えたことは言っていられない。今は一刻も早く、この街を荒らしまわる『海賊』達を駆除しなければ。ビロードのように滑らかな歌声に共鳴して、ゴンドラが滑り出す。建物に囲まれた狭い水路をすり抜けて、追うは『亡者』どもの海賊船だ。
(「……いた!」)
酒場の看板を掲げた建物に隣接する水路に、一艘の舟が止まっている。そしてその船上から今まさに上陸しようとしているのは、仮面をつけた猪頭のバルバ――ボアヘッド達である。
「やめなさい!」
今にも酒場の扉をうち壊さんと斧を振り上げたバルバ達に向けて、ラリーサは鋭く一喝する。元より力自慢というタイプではないが、敵の能力の影響もあって腕には力が漲るようだ。敵船の真横に乗りつけたゴンドラの縁を蹴り、ソードハープを握り締めて、歌い上げるのは七勇者『アウィン』の歌――ふごふごと鼻息荒く突っ込んでくるボアヘッドの群れを、ラリーサは軽やかにいなして運河へと突き落としていく。もはや歩道の上には敵の姿がないことを確かめてから、女はようやく歌うのをやめ、水面に沈みゆく過去の獣人達を振り返った。
「あいにく、今の私たちは手を取り合っているの。加わりたかったら、武器を手放してからまたおいでなさい」
ごぼりと大きな気泡が澄んだ水面に浮かび上がり、嗤う仮面が砕け散る。そして黄泉がえりの獣達は、溶けるように消えていった。
大成功
🔵🔵🔵
ダーティ・ゲイズコレクター
私はダーティ!ダーティ・ゲイズコレクター!
凶悪で極悪で劣悪で最悪な魔王ダーティとは私のことです!
ゴンドラを操ったことはありませんが
『念動力』を使えば流れに乗りつつも
自由に動かすことができるでしょう!
さてさてやってきましたは中心街からちょっと離れた路地裏の入り組んだ水路!
海賊さんたちはきっとあちこちに潜んで不意打ちを狙っているんでしょう!
殺気の籠った視線が大量に向けられています!視線ありがとうございます!
そして{ダーティアイ}はそんな皆さんの視線を見逃しません!
UC【積悪!穢澱虚兵蹂躙陣】で召喚した私そっくりの兵隊の皆さんと一緒に
水路を使って死角から不意打ち返しです!
さぁ海賊狩りの始まりですよ!
聳える巨大な水瓶から流れ落ちる豊かな水は網目状の運河となり、アクエリオ市街の至るところにまで伸びている。それはうらぶれた路地裏や、打ち捨てられた旧市街なども例外ではない。華やかな中心街に背を向けて往くことしばらく、ダーティ・ゲイズコレクターはひとけのない路地裏の入り組んだ水路を走っていた。
「ふふん。正しいやり方は知りませんが、私の念動力をもってすれば、ゴンドラの操縦なんて自由自在です!」
ダーティは、この世界のエンドブレイカー達が言うところの『外』の世界からやってきた。三十六の世界の一つ『デビルキングワールド』より訪れた、泣く子も黙る(自称)魔王様だ。そして虎視眈々と『8th KING』の座を狙う経験豊かな魔王の勘が、告げていた――この寂れた路地には、よからぬ者達が潜んでいる。そして彼らは物陰から、獲物となる誰かがここを通りかかるのを待っているのだ。
「いいですね、この視線! 殺気の籠った視線が大量に向けられています! ありがとうございます! その熱ーい視線にお応えして、悪の一花咲かせてお見せしましょうっ!」
氷の蒼と炎の紅。
二つの色に輝く瞳は、敵の視線を見逃さない。両脚を肩幅の広さに、堂々と胸を張ってダーティは朗々と吼えた。
「穢れの澱より出でし憐れなる傀儡どもよ! 冷たき意思に従いて、現世を蹂躙せしめよ!」
呼び掛けに応えて現れるのは、彼女自身と瓜二つの兵士達。号令と共に路地裏へ散開する彼女達は、闇に潜んだ海賊達をその背中から襲うだろう。
「私はダーティ! ダーティ・ゲイズコレクター! 凶悪で極悪で劣悪で最悪な魔王ダーティとは私のことです!」
どこからかともなく聞こえくる獣達の悲鳴を耳に、あははと高らかな笑い声を上げて娘はゴンドラの床を踏み鳴らした。さあ――『海賊狩り』の始まりだ。
大成功
🔵🔵🔵
ローカスタ・マイグラトリア
海賊でござるか…
迷惑千万でござるな
平和な営みの象徴を暴虐に用いるなぞ言語道断
其の蛮行の代償は高く付くで御座るよ
拙者手が多い故、ゴンドラを漕ぎながら攻撃する等朝飯前で御座る故…
果敢にゴンドラを駆って海賊共に目にモノを見せてくれ様ぞ
【ナイフ投げ】で油断を誘い、本命の【手裏剣投げ】を見舞うで御座る
逃げるならば足を止めるは定石に御座ろう?
其の隙に【創世神の棘(ソーン)】で追撃するで御座るよ
狙うは漕ぎ手で御座るが、余りにも乗員が多いならばゴンドラ其の物を沈めるで御座る
どれ程泳ぎが達者で在ろうと、ゴンドラの速度に劣らば無意味
如何な状態であれ、動きの鈍った輩なぞ恐るるに足らず
某の投擲より逃れる術無しに御座る
「海賊でござるか……迷惑千万の輩でござるな」
滑るゴンドラの船上に水路の先を見据えて立ち、ローカスタ・マイグラトリアは誰にともなく口にした。堂々と組んだ一組目の腕の下では、もう一組の腕がせっせと長い櫂を運んでいる。こんな芸当ができるのは、バルバが一種『インセクテア』である彼ならではだろう。バッタのようなその表情は読みづらいが、金に輝く複眼には、平和を乱す者達への確かな怒りが燃えていた。
「ゴンドラは、この地の平和な営みの象徴。それを暴虐に用いるなぞ、言語道断! 蛮行の代償は高く付くでござるよ」
征く舟の舳先の向こうには、猪頭のバルバ達を載せたゴンドラの背中が覗いている。恐らくはその舟もまた、どこかの船着き場から掠奪してきた者なのだろう。実に許せぬと義憤のままに、ローカスタはゴンドラを漕ぐ手を速めた。追われていることに気付いたか、ボアヘッド達の何体かは舟を漕ぐのをやめて、斧を手に此方を振り返ったが――。
「拙者、手が多い故」
守る手も、攻める手も、人より一組多いのがインセクテアの誇りだ。ゴンドラを漕ぐ手はそのまま上の手でナイフを掴み取り、ローカスタは船上のボアヘッドを目がけて投げつける。
「海賊共に目にモノを見せてくれようぞ!」
投げつけたナイフが、斧の腹に当たって船底に落ちた。が――それは所詮、フェイクだ。ナイフの影に隠して放った手裏剣は水上で大きく弧を描き、攻撃を防いだと得意気に嗤うボアヘッドの側頭部に突き刺さる。一体がもんどり打って倒れるのを見届けて、ローカスタはゴンドラの櫂から手を離すや背中の翅を広げて飛び立った。
「逃げるならば足を止めるは定石にござろう?」
足、それは即ち漕ぎ手。ぎらりと光った複眼に導かれ、集う創世の棘はたちまちのうちに残るボアヘッド達を絡め取り、物言わぬ石の塊に変えていく。ドンとその背に蹴りを見舞って水路へと突き落とし、忍びは無人の船上に降り立った。
「某の投擲より逃れる術、なしにござる」
戦いは、まだまだ序の口。討つべき敵を探し求めて、忍びは水の都を駆け巡る。
大成功
🔵🔵🔵

マウザー・ハイネン
一斉に多数の都市国家攻めてくるとは大魔女も吃驚な作戦。
けれどその作戦、真っ向から潰された場合悲惨な事を万能宝石に刻み込んで差し上げましょうか。
この思い出深いアクエリオは店も開いてましたし、荒らさせなどさせるものですか。
自前のゴンドラに乗り込み海賊ボアと交戦。
下層の水没し自然に浸食された廃墟で、街に出てくる前に仕留めましょう。
歌うのは優雅な水鳥の歌、UC起動し奇襲警戒しつつ吹雪で体力を奪い海賊ボアを撃破していきます。
ボアの集落…沸き立つ凶暴性を闘争心に変えて勇壮な歌に切り替えランスで真っ向からボア達をボコり叩き落としましょうか。
…シンプルがやはりいいですよね(知性やや弱体)
※アドリブ絡み等お任せ
「一斉に多数の都市国家を攻めてくるとは……さしもの私も想定外です。大魔女もびっくりの作戦ですね」
冷ややかな表情はぴくりとも動かさぬまま、マウザー・ハイネンは言った。彼女にとって、このアクエリオは思い出深い街だ。一時期は店を開いていたこともあるし、『深海』を巡る戦いもまた、忘れ得るものではない。
「あなた方の思い通りになど、させませんよ」
多面作戦を取れるだけの戦力には素直に感心するが、それを真っ向から潰された時どうなるのか。あの醜い万能宝石に、刻み込んでやらねばなるまい――じろりと細めた瞳に静かな怒りを燃やして、マウザーは水鳥の歌を唇に乗せ、入り組んだ水路を駆け抜ける。ゴンドラ三つ分ほどの距離を置いて前を行く舟には、仮面のついたボアヘッド達が乗り組んでいるようだ。
つかず離れず進む舟は細い路地を抜け、大河を抜けて、やがて人里離れた下層へと入り込んでいく。
「どこへ行こうと言うのです?」
放棄領域。打ち捨てられた街の残骸が密かに眠る都市国家の下層を、この世界の人々はそう呼称する。水没した都市を自然が侵食して創り出すアクエリオの放棄領域は、退廃的な魅力を醸し出していた。だがそこには、奪うべきものなど何もないはずだ。
(「大方、ここを抜けてどこか別の場所から市街へ出るつもりでしょうが……」)
勿論、そんなことを許すつもりはない。街へ出て人に危害を加える前に、ここで仕留めて終りにしよう。
ひゅるり、吹き込んだ風に連れられて、季節外れの吹雪と冷気がボアヘッド達の駆る舟を取り巻く氷獄を編み上げる。狼狽えるその背に直接ゴンドラで乗りつけて、マウザーはナイトランスを右手に構えると疾風の如くに突き入れた。
「ボアアア!」
砕かれた仮面が粉々に割れて砕け散り、吹き飛ばされた獣人達が次々と盛大な水柱を上げ沈んでいく。ふうと小さく息をついて、女は言った。
「シンプルが、やはりいいですよね」
この世界に仇成す者は赦さない。どんな相手であれ、真正面から挑み、破り、世界の果てまでぶっ飛ばすのみである。
大成功
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明・金時
水路を漕いでいこう
とは言えゴンドラ漕ぐのは初だからな
速度は余り出せそうにねェが――
味方とすれ違ったり併走出来そうな水路を選んで進もう
勿論敵も追跡するが
その道中声かけて
なァ
お前らを助けに来たぜ
けどよ、ここは……
ゴンドラ乗りにとっては故郷
冒険者にとっては魅力ある旅先
悔しくはなかったか
大切な場所で我が物顔で振る舞われることが
このアクエリオを、自分の手で護れればと
そうは思わなかったか?
その想いが少しでもあったならよ
俺について来い!
その為の力、俺が与えてやる!
其ハ神ノ光也
同意してくれた連中と一緒に敵を追いかけ倒していくぞ
俺自身は草凪(薙刀)で受け流しからの反撃だ
力を合わせてやってやろうぜ!
運河に架かる石橋に、煉瓦を敷き詰めた川沿いの舗道。水神祭都アクエリオの瀟洒な街並みに、不釣り合いな剣戟が渡る。敵は『海賊』――魔物からマスカレイドまでいかにも寄せ集めの集団だが、エリクシルによって蘇ったその力は決して侮れるものではない。その上夥しい数が次から次へと迫り来るとあれば、どんなに屈強な冒険者とて気後れすることもあるだろう。今まさにこの街角で、マスカレイドボアヘッドの海賊達を相手取っているゴンドラ乗り達がそうだった。
「くそっ、次から次にきりがないな!」
「応援はまだか!?」
打ちつける斧もその主も、相手にしているものそれ自体は変わっていないはずなのに、疲労のせいか一撃一撃が段々重くなってくるように感じられる。このままでは押し切られるのも時間の問題か――そんな弱音が胸を掠めた、その時だった。
「なァお前ら! 手を貸そうか?」
どこからか、誰かの呼び掛ける声がした。その出どころを探して視線を廻らせると、建物に挟まれた水路の向こうから一艘のゴンドラが近付いてくるのが見えた。櫂を操る手つきはベテランのゴンドラ乗りとは見えないが、威風堂々とした佇まいはかつてこの街を救ったエンドブレイカーのそれにも重なる。けれども彼は――明・金時は、エンドブレイカーではない。この世界の外より来たる『猟兵』だ。
「助けに来たぜ! けどその前に、聞きてェことがある」
半ば呆然と見つめるゴンドラ乗り達を見渡して、金時は形のよい唇の端を歪めた。
「悔しくはなかったか。大切な場所で我が物顔で振る舞われることが――このアクエリオを、自分の手で護れればとは思わなかったか? ……思っただろ?」
この街に暮らす人々にとって掛け替えのない故郷であり、辺境を往く旅人達のオアシスでもあるアクエリオ――その輝きを、死に損ないの海賊どもなどに奪わせるわけにはいかない。
思ってるに決まってるだろ、とやけっぱちな声が返れば、男は我が意を得たりと笑みを深くした。
「だったら俺について来い! その為の力、俺が与えてやる!」
手にした薙刀の柄で船底を突き、大仰な仕種で腕を広げて金時は言った。
「力を合わせてやってやろうぜ!」
川風に翻る外套の背に円環を描く、後光が輝きを増していく。溢れた光は傷つき疲れたゴンドラ乗り達の心身を癒し、再びその手の武器を振るう力を与えてくれるだろう。そして他でもない彼らの手で、この水の都を守るのだ。
大成功
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ラティニア・エルティンバー
(アドリブ&連携可)
アクエリオの平和は、私が守るわ!
ゴンドリエーラとして、エンドブレイカーとして、猟兵として!
(【歌唱】を歌い、【ゴンドラ漕ぎ】の適切な水路を導き出して襲撃現場に先回りを試みる)
(現地民に対して)
みんな!ステラマリスのリコよ!私が来たからには海賊達に好き勝手させないわ!
周囲に怪我人や逃げ遅れた人がいたら救助するわ。
普段から不測の事態に備えて、【水泳】も【救助活動】も身につけているわ。
リーファ!あのボアヘッドさん達を眠らせてあげなさい!
(ヒュプノス召喚!)
怪我人はヒュプノスの力で回復させるわ。
水飛沫を上げて走るゴンドラの左右を、美しい街並みが飛ぶように過ぎ去っていく。舟の舳先に手を添えて、ラティニア・エルティンバーはキッと行く手を睨みつけた。
「ゴンドリエーラとして、エンドブレイカーとして、猟兵として! アクエリオの平和は、私が守るわ!」
星霊建築の空を仰ぎ、ゴンドラ乗り達の歌に耳を傾けて。仲間と共にこの水路を駆け抜けた鮮やかな日々は、今も色褪せることなくこの胸に息づいている。そしてこれからもそう在り続ける。だから――こんなところで奪わせはしない。
風に乗って運ばれてくる不穏な怒号と剣戟を頼りに、ラティニアは自らも歌を歌いながら、複雑に入り組んだ水路を抜けて『海賊』達の襲撃の現場へと急行する。そうして入り込んだ路地裏では、既にアクエリオのゴンドラ乗り達と仮面のついたボアヘッド達とが交戦を開始しているようだ。
「みんな! ステラマリスのリコよ! 私が来たからにはもう、海賊達に好き勝手させないわ!」
リーファ、と一声呼べば、現われた白い毛玉――もとい羊の姿をした星霊がくるんと丸まって、空中を跳ねるようにボアヘッドの群れへ向かっていく。壁際に追い詰められた手負いのゴンドラ乗り達を見て取ると、ラティニアは素早く続けた。
「あのボアヘッドさん達を眠らせてあげなさい!」
「ひゅぴ!」
分かった、というように鞠のような身体を弾ませて、ヒュプノスはボアヘッド達の周囲をぐるぐる、ぐるぐると回り出す。羊が一匹、羊が二匹――無意識に目で追ううちにいつの間にか吸い込んだ催眠ガスは、敵を覚めない悪夢へと誘う。そして昏倒した獣人達の間を悠々とすり抜けると、ラティニアは傷ついたゴンドラ乗り達を助け起こした。
「もう大丈夫よ。さあ、立って――一緒にこの街を守り抜きましょう!」
眠りの星霊が振り撒く癒しの力は、傷ついた手足にもう一度、立ち上がるための力をくれる。戦いはまだまだ序盤――押し寄せる悪意を跳ね返し、美しい世界を守るためには、一時たりとも立ち止まってはいられないのだ。
大成功
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マシュマローネ・アラモード
◎
アクエリオのゴンドラですわね、この美しい景色を壊すのは決して許せませんわ、友との思い出に誓って!
UC
継承される王の伝説!
デバフはそのまま相手に返し、ゴンドラからゴンドラへ、推力移動による飛翔から斥力(吹き飛ばし)で、薙ぎ払っていきましょう!
敵ごと船を戦鎚で沈めつつ、自分のゴンドラを斥力の応用で呼び寄せ、次の戦場へ。
街の中から、放棄領域、水没した街を巡り、会敵した海賊を撃破していきましょう。
この街に暗い滅びの影は必要ありませんもの!
好きになった街を守る……それはとても誇らしい気持ちだから。
「水神祭都アクエリオ。相変わらず素晴らしい眺めですわね!」
白に近い長い銀髪を吹きつける川風に靡かせて、マシュマローネ・アラモードは陽光に輝く水路を行く。エンドブレイカーの世界に点在する都市国家の中でも、このアクエリオの景観は格別だ――物の美醜も分からぬような『怪物』などがこれを壊そうするなんて、決して許せることではない。
「友との思い出に誓って、この美しい街に手出しはさせません! いざ、我が王の血統の証を以て!」
身体中を流れる神と王の闘気が、胸の前に差し出した掌の先に収束し、自我を持つ守護精霊の姿を取って飛び立っていく。戦に臨む準備は万端と白く輝く杵を構え、マシュマローネは一段、加速した。追うは『海賊』ボアヘッド――いかにその数が多くとも、目に映る敵はすべてこの杵で沈めてみせよう。
「――行きます!」
川幅の広い運河の先に、点々と浮かぶ敵船の数は一つ、二つ、三つ――四つ。一番手前の一艘に狙いを定めて、マシュマローネは駆るゴンドラの縁を蹴る。そして杵に内蔵したエンジンを全開に吹かし、水面すれすれを駆け抜けると、船上の獣人を力いっぱい薙ぎ払った。
パンと仮面の割れる音がしたかと思うと、吹き飛ばされた獣の体が高い水柱へと変わる。一体落とせば次、また次と、マシュマローネはゴンドラからゴンドラへ飛び移りながら、白い仮面のボアヘッド達を青い水底へ叩き落としていく。最後の一艘を舟ごと沈めて難なく自身のゴンドラへ舞い戻ると、少女は勝ち気な笑みを浮かべた。
「この街に、暗い滅びの影は必要ありません。さあ――どんどん参りましょう!」
蔓延るすべての敵を駆逐するまで、立ち止まってはいられない。好きになった街をこの手で守ることができる、そんな至上の誇りと喜びを胸に、兎の皇女は青い水路を突き進む。人々が日々を営む街は勿論、打ち捨てられた廃墟でさえ、この街には海賊どもが触れていいものなど何もないのだ。
大成功
🔵🔵🔵
アレンカレン・マイグラント
※連携・アレンジ大歓迎
戦場:入り組んでいる街中の水路
世界が滅んでしまうなんて…と、とんでもない!
気持ちばかり焦るけど、まずは深呼吸
先生の教えを思い出す
『自分のできることから、ひとつずつこなしていきましょうね』
…うん、大丈夫
ゴンドラは少しだけ漕いだことがあるし
師匠が漕ぐゴンドラに乗ったこともあるもの
っでもこんなに入り組んだところ漕いだことないよおおお!?
あわわごめんなさいどいてくださぁい!
こ、こういう時、師匠は…
『まあ楽しんどけって。こんだけスピード上げりゃ涙もふっとぶだろ?』
そういえば、怖くて泣く私に笑ってゴンドラを加速させたっけ…
うう、師匠のばかばか!
こ、こうなったら…次は私が師匠を泣かせちゃうくらい、乗りこなせるようになってやるんだ!
アクエリオ様!力を貸してくださぁい!
[ゴンドラ漕ぎ]の経験を活かして海賊を追跡!
って、攻撃どうしよぉぉ!
(バルカンがにゃーにゃー鳴き)
サニーが攻撃担当してくれるの?
ありがとう!火炎弾をいっぱい作って乱れ打ちして!
街や人々に火が移りそうになったら消火するよ
「どうしよう……このままじゃ、世界が……」
アクエリオ中心部を流れる幅広の運河から、少し街中へ入り込んだ細い水路の船上に、アレンカレン・マイグラントは立っていた。並ぶ建物の隙間から見上げる空は青く、満ちる水は清らかで、世界は凡そ滅亡の危機に瀕しているとは思えぬほどに美しい。だがどんなに信じられなくとも、これは現実だ――毒蛇『バシュム』の毒は今この時も母なる大地を蝕みつつあり、戦わなければ、抗わなければと考えるほどに焦りばかりが膨らんでいく。けれど。
不安に眉を寄せながら、少女は深々と息を吸い込んだ。
(「ううん――だめよ。このままじゃ、だめ」)
世界が滅んでしまうなんて、とんでもないことだ。だがそのとんでもなさに翻弄されて成すべきことを見失うのが、ここに至っては一番まずい。そうだ――『先生』だって、言っていたではないか。
(「自分のできることから、ひとつずつこなしていきましょう。……そうよね、先生?」)
この戦いが終わりを迎えるその日まで、胸を押し潰すような不安が消えることはないだろう。けれどそれに向き合ってでも、成さねばならないことがある。ちっぽけな自分にもできることが、きっとあるはずだ。
「うん。……大丈夫!」
誰にともなく口にして、アレンカレンはゴンドラの櫂を握った。世界を巡る壮大な戦いを勝利に導くものは、いつだって目の前の小さな勝利の積み重ねなのだ。
「よーし、まずは海賊退治から頑張るぞっ!」
ゴンドラの操船は初めてではないし、『師匠』のゴンドラに同乗したこともある。だからきっと大丈夫と信じて、アレンカレンはゴンドラ乗りの歌を唇に乗せる。滑るように動き出したゴンドラの行く手、細い水路のその先には、仮面のボアヘッド達を乗せた『海賊船』の背中が覗いていた。
「待ちなさーい! って、え? え?」
いざ、と加速したはいいものの、今一つコントロールの仕方が分からない。停泊した無人のゴンドラや、建物から建物へと渡るロープにぶつかり、引っ掛かりそうになって、アレンカレンは船上を右往左往する。
「こんなに入り組んだところ漕いだことないよおおお!? あわわごめんなさい、どいてくださぁい!」
がつん、ごつん。ありとあらゆる障害物にぶつかりながら、少女を乗せたゴンドラは狭い水路で迷走する。そうこうしている間にも敵船は遠ざかり、このままでは距離が開いていくばかりだ。
(「ど、どうしよう――こんな時、『師匠』だったら
……!」)
『まあ楽しんどけって。こんだけスピード上げりゃ涙もふっとぶだろ?』
涙目になって船の舳先にしがみつく少女の脳裏に、懐かしい声が反響する。そうだ――そういえば、あれはそういう人だった。怖いと泣いた彼女に笑って、いっそうスピードを上げるような――。
ありがたいようでありがたくない師の教えを胸に、ブンブンと若草色の髪を振ってアレンカレンは喚いた。
「うう、師匠のばかばか!こうなったら次は私が師匠を泣かせちゃうくらい、乗りこなしてやるんだから!」
もう、どうにでもなあれ。覚悟を決めて息を吸い、少女は力の限り声を張った。
「アクエリオ様! 力を貸してくださぁい!」
それは、全力の神頼み。一瞬、船体が浮くような感覚の後、急加速したゴンドラはあらゆるものを跳ね飛ばして狭い水路を突き進む。にゃあにゃあと物言いたげに鳴く星霊バルカンの声で随分と敵船に近づいたことを知り、アレンカレンは肩を跳ね上げた。
「って、攻撃どうしよぉぉ! さ、サニー、お願いっ!」
「みゃっ」
分かっているよというように、肩に停まった黒猫は炎の尻尾を一振りした。生まれ出ずる無数の火炎弾は矢の如く海賊船に降り注ぎ、文字通り尻に火のついた獣人達が次々と水路に飛び込んでいく。しかし、沈みゆく敵の姿にほっとしたのも束の間――。
「あれ? えっ? 待って、止まって、待っ――ぎゃ――!」
ゴンドラは急に停まれない。勢い余ったアレンカレンのゴンドラは無人の敵船に乗り上げて、狭い水路に挟まるような形でようやく停止したのだった。
大成功
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