エンドブレイカーの戦い④〜繊月、巨樹に仇成る者
永遠の森エルフヘイム──それは世界創世の時より存在するという、高さ数千mを誇る巨大樹木群を基に形成された、古く美しき森の都市国家だ。
その悠久を、エルフは森と共に在る。木々のふところを揺り籠に、梢の囁きの子守歌で育まれ、森のすべてが遊び場であり、エルフの営みは全て森にあった。この森のエルフに知らぬ枝はなく、行けぬ幹はない。森の中である限り──負けるはずはないのに!
「アハ、アハハハハ!」
耳をつんざく笑い声が、幾重にも重なり響き渡る。潜む影が群れを成し、枝を跳ね回り木々を行き交う。只人であれば見失う影を、エルフ達は目ざとく見つけ素早く射貫けど、獲物は波のように押し寄せる。負けはしない、だが、勝てもしない。じわり、じわりと戦線が後退すれば焦りは滲み、エルフの指先からは矢じりが滑り落ちる。──そうしてまた、襲い掛かる爪の鋭さに倒れる者がひとり、またひとり。
エルフヘイムの森陰で、数えきれないほどの三日月が、爛々と輝き笑っていた。
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「ヤアヤア、猟兵の皆々サマご機嫌よう!血沸き肉躍る、終焉に抗う戦争の開幕だよ!」
パチンとひとつ鳴り響く音の後、靴底をカツカツと鳴らしながらバロン・ドロッセルは芝居ぶった調子で登場すると、猟兵達に向かって仰々しく幕を切る。
「舞台はエンドブレイカー、永遠の森エルフヘイム!見上げても見果てぬ巨大な大樹群に坐する、美しき森の都市国家にさっそく先兵がお出での様子で忙しいったら!猫の手だって借りたいみたいだよ!」
参ったね、とバロンは茶化すと、わざとらしく肩を竦めて、携えたステッキを片手でくるりと回してみせる。
「エルフヘイムは森の住人、エルフ達の独擅場だけど、地の利だけじゃ押し寄せてくるピュアリィの勢いを抑えられない。それなら皆々サマで人の和を足そうって話だねェ、至って単純だろう?」
含み笑いを混ぜ込みながらそう語り、猟兵たちをぐるりと見渡すと、ひと呼吸の後に言葉を続ける。
「襲来してきているのは半人半猫のピュアリィだ。甘ァい猫撫で声で誘惑してくる魅惑的な子猫ちゃんだけど…見た目に油断すると、あっさりやられちゃうかもね。──いいかい?敵が強敵なればこそ、地の利も忘れちゃいけないよ」
永遠の森、エルフヘイム。高さ数千を誇りそびえるその巨大な樹木たちは、エルフたちと悠久を育み共に過ごした存在だ。新たな守護者と成る者が、彼らのように森を駆け回る事ができたならば、それは大きな力となるだろう。
「サア、サア、覚悟は決まったかな、皆々サマ!」
高々と声を張り上げ両手を広げるバロンの姿は演者のよう。さりとて、バロンは一介の案内人に過ぎない。グリモアの輝きを捻ると、バロンの背後には大きな扉が出現する。
「張り切って終焉に抗っていこうじゃないか!健闘を祈るよ、猟兵の皆々サマ!」
仰々しくお辞儀をするとバロンは扉を差し出す。ゆっくりと開く扉の隙間からは、鬱蒼とした森の香りが零れ落ちた。
後ノ塵
後ノ塵です。はじめまして、あるいはこんにちは。
戦争シナリオになります。一章完結となるため、できるだけサクサク進めていきます。オープニング公開時からプレイングを受け付け、順次執筆させていただきます。
エルフヘイムのエルフたちに加勢し、迎撃する集団戦です。
森の地形を利用して戦うことで、プレイングボーナスとなります。
皆様のプレイングお待ちしております。奮ってご参加のほど、どうぞよろしくお願いします。
第1章 集団戦
『フェルプール』
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POW : アサルトクロー
【鋭い猫の爪】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【味】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
SPD : ブレインクラッカー
【敵の頭部に飛びついて爪】で近接攻撃し、命中した部位ひとつをレベル秒間使用不能にする。
WIZ : キャットダンス
一緒に【ダンス】を行った全員に、ひとつ頼み事ができる。成功率は、対象が[ダンス]を【魅惑される】程増加する。
👑11
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キアナ・ファム
■WIZ
ギルタブリルら3体の怪物の話は、散々アタイの爺様や伯母から聴いてはいたが……
なれば、妖精騎士が生まれたという、エルフヘイムはアタイにも「地の利」はあるっていうもんだな!
さぁ行こうぜ、パトリシア!ラズワルド様まで動いているとあっては、
黙っちゃおれん!
【UC】発動させて[地形の利用]も使って、妖精の矢で討伐するぜ!
(ギリギリまで近距離攻撃はしない)
ただ、元々陽気でダンス大好きなパトリシア(や、召喚妖精)がノってしまわないかが心配だが、一応[オーラ防御]でガードだ
まぁアタイに「体型の劣等感」は無いし
(「デカ女」呼ばわりされたほかは)
色香に惑うことなくやってやるぜ
※アドリブ・連携共に歓迎
エルフヘイムの森に満ちる張り詰めた空気を感じ取りながら、キアナ・ファムは祖父や伯母から聞かされてきた話を思い返していた。
エンドブレイカー世界を窮地に陥れた大魔女スリーピング・ビューティと──ギルタブリルら三体の怪物。これまでに散々と聞かされてきたその脅威、その冒険。かつての終焉の再来に湧き上がる気持ちは数あれど──今、キアナの胸にあるのは闘志のみ。
「さぁ行こうぜ、パトリシア!ラズワルド様まで動いているとあっては、黙っちゃおれん!」
隣に浮かぶ小さな妖精パトリシア──共に世界を巡った相棒に力強く語り掛けると、キアナはユーベルコード碧羽滑空を発動する。背中に生えた妖精の羽で素早く飛翔すると、ピュアリィの群れを迎撃しているエルフたちの元へと向かう。
既に交戦中のその姿は劣勢とは言えずとも、枝を飛び交うピュアリィの群れの動きに翻弄されているようだった。キアナはその手に妖精をつがえると、淡く輝く無数の矢を打ち放つ。狙いを付けないその一手はされど無数。雨のように降り注ぐ輝きは、敏捷に飛び交う群れの四肢を射抜いてゆく。
「支援が来たわ!」
援護射撃に沸き立つエルフたちの歓声を通り抜けながら、キアナは近寄る敵に狙いを定めて、矢継ぎ早に妖精を放っていく。
絶え間なく森の中を飛び回りながら、木の影に隠れて次の矢を放てば、今度はピュアリィの群れが翻弄される番だった。
「ニャアアッ!」
影に潜んでいたピュアリィたちは次々に悲鳴を上げて数を減らしていくも、倒れた群れの先頭を盾にしながらキアナに近付こうと奮闘する。だが、無数の妖精が織りなすその弾幕は、そう容易くは抜けられない。
「むうぅっ!鬱陶しい妖精ニャアッ!」
「つっまんないデカ女ニャッ!」
「誰がデカ女だって!?」
非難囂々のピュアリィたちの野次の中に、聞き逃せない言葉が混ざり、思わずキアナの頭にカチンとくる。沸き立つ激情は一瞬であれど、揺さぶられた感情に妖精を放つ指先がブレれば、援護射撃がただひと拍、その勢いを失った。
「今ニャッ!」
「誘惑しちゃうニャ~!」
隙間はほんの僅かなものではあれど、矢の雨さえ止めばピュアリィたちの本領発揮である。素早くキアナの元へ接近すると、キアナと妖精たちに向かって愛らしいキャットダンス──そのユーベルコードを披露する。
「お前らも一緒に踊るのニャ~」
「お願いニャン!」
リズムを取って陽気に体を揺らしながら、枝の上で器用にくるりと回転すると、手招き、ならぬ猫招き。愛嬌のある笑顔を振りまくその姿には危うく毒気を抜かれかけるも、キアナは素早くオーラ防御を展開する。
陽気でダンス好きなパトリシアと妖精たちは一瞬ふらりと惹かれるが、キアナの展開したオーラの壁はピュアリィの誘惑を和らげる。ブンブンと頭振って、キアナの傍に寄り添った。
「アタイたちには、そんなチャチな誘惑は効かないぜ!」
「ほんっとうにつまんない奴ニャッ!」
いよいよ激昂し牙を向くピュアリィたちに、先ほどまでの愛らしさは残ってはいない。枝を蹴って飛び上がると爪を振り上げ、次々にキアナへ襲い掛かる。キアナの眼前に幾つもの爪が迫り閃く──されど、キアナにとってはもはや脅威ではない。
「私たちを忘れているわ、ピュアリィ!」
「ニャッ!?」
キアナの元へ引き付けられたピュアリィの群れは、既にエルフたちが包囲していた。たじろぐピュアリィの姿を尻目に、エルフの弓矢がピュアリィたちに降り注ぐ。
「アタイたちの勝ちだ!」
慌てふためき逃げ惑うピュアリィに向かって、キアナは勝鬨を上げるとパトリシアの名を冠する剣を振り抜いた。
ほんのひと時退けられても、戦線は未だ深刻だ。叔母から引き継いだ妖精騎士の誇りを携え、キアナは力強く大樹の枝を蹴ると、次なる脅威の元へと翔ける。
「さあ、まだまだ飛ぶぜ、パトリシア!」
大成功
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ムゲン・ワールド
【夜見(f37905)と】
麗しい見た目の敵達だ。これだけ数が多いと壮観だな。戦争という大ごとでなければ、自ら飛び込んで大軍相手に遊んでみたいところだが。
今回はこちらにも麗しいお嬢さんがいるからな。
※夜見との関係はムゲンがナンパして一緒にお茶したくらいの関係
夜見ほどではないが、木々の枝枝を飛び移り、位置を悟られないようにしよう。合わせてUC発動。敵から感知されない状態にして、待機だ。
夜見が敵の機動力を奪ったら、こちらの出番。
動きも集中力も鈍った敵をUCを交えた【「教会」時代の仕込み杖】による【不意打ち】攻撃で仕留めていく。
至近距離で麗しいお嬢さんを見られるのも悪くはないな。
虹ヶ崎・夜見
【ムゲン(f36307)と】
あはは、本当に可愛い女の子と見れば、誰にでも言うんだねー。
ま、いいや。私の力が人助けに使えるって言うなら、使ってあげる。
※ムゲンとの関係はナンパされて一緒にお茶したくらいの関係。今回の出撃もムゲンから誘われた
へぇ、森の木々を利用しての戦闘? 確かにこれはパルクールアスリートとして燃える状況じゃん!
UC発動。木々の枝を利用してパルクールして移動しながら、【バトロワ式サブマシンガン二丁】で射撃! 射撃!
攻撃が命中したら、威力アップ? 当てられるものなら当ててごらん!
私の仕事はこんかもんかな。約束通り、また食事奢ってよね。
刻一刻と脅威の迫るエルフヘイム。果ての見えぬ大樹を見上げれば、枝ぶりに隠れて潜む影が幾つもの群れを成している。ちらり、ちらりと焦らすように姿を見せて影に潜む姿は、警戒や様子見と言うよりも此方をからかう様に行き来して、蠱惑的な誘惑を振り撒いているようだった。
「麗しい見た目の敵達ですね。これだけ数が多いと壮観です」
戦争という大ごとでなければ、自ら飛び込んで大軍相手に遊んでみたいところだが。続けて浮かんだ言葉は声には乗せず、ムゲン・ワールドは殊勝な笑みを浮かべる。
相変わらずのムゲンの言葉に、あははと晴れやかな笑い声をあげるのは虹ヶ崎・夜見。スポーツの前の準備に全身の屈伸運動を繰り返しながら、上を見上げるムゲンの背中に呆れの滲む言葉をかける。
「本当に、可愛い女の子と見れば、誰にでも言うんだねー」
「いえいえ。今回はこちらの麗しいお嬢さんを優先していますとも」
「調子良いなー」
笑顔のムゲンに軽く言葉を返しながら、夜見は両手の指を絡めて腕を持ち上げると、ぐぐっと腕を伸ばして背を伸ばす。
今は紛れもない緊急事態。目の前のムゲンは夜見にとって、ナンパされてお茶をした程度の顔見知りだが、彼が猟兵である限り基本的なことは揺るがない。
「ま、いいや。私の力が人助けに使えるって言うなら、使ってあげる」
夜見は最後にすうっと大きく深呼吸を繰り返してから、ぴょんっと一つ跳ねると両手を叩いて払う。これで運動前のアップは終わり、準備は万端だ。
夜見は細く息を吐くと体を屈めて姿勢を低くする。大きく腕を振りながら力強く大地を蹴って、そのまま枝へ飛び移った。
「それになんたって、パルクールアスリートとして燃える状況なのよね!」
そして、夜見の晴れやかな言葉は瞬く間に遠ざかる。枝を行き交い幹を蹴り、あっという間に森のいずこかへ姿を消すパルクールアスリートを見失ったのは、ピュアリィたちも同様らしい。獲物を失った群れのざわめきが落ち着かぬ隙に、ムゲンもまた素早く──勿論、夜見ほどではないが──木々に飛び移り、ユーベルコードを発動すると闇のオーラを全身に纏い、その姿を眩ませる。
「当てれるものなら当ててごらん!」
「ニャッ、ニャニャアッ!?」
どこからともなく響いてくる、夜見の快活な声。だが、その声の主が居る場所を──幹を、枝を、茂みを行き交う夜見の姿を捕捉できたところで、予想もできない動きにピュアリィの群れは対応できてはいなかった。そうして大樹を駆けながら、ぐるぐると周囲に円を描くように飛び跳ねる夜見は、ピュアリィの群れを翻弄し、攻撃を回避しながら、一箇所に集めていく。──準備は万端!
「見せてあげるよ、パルクールアスリートによる、本当の三次元シューティングって奴を!」
夜見は声を張り上げ、ユーベルコード──縦横無尽・弾丸包囲網を発動する。縦横無尽に駆け回る夜見の二丁拳銃から放たれる射撃は、機動力と集中力を奪うもの。予測不能の弾幕となってピュアリィたちに襲い掛かる。
「ニャ、ニャァ…」
片っ端から機動力と集中力を奪われたピュアリィたちは、持ちえた敏捷さを失い夜見を追いかけられずにへたり込む。半猫の群れの視線こそ夜見に向いてはいるが、木の上に下にと散らばるその姿に覇気はない。敵意を失っておらずとも、機動力の体のだるさが勝ってしまえば動けない…否、動きたくないのが猫の定め。どこか気だるそうに欠伸をもらしていた。
「私の仕事はこんなもんかな。約束通り、また食事奢ってよね!」
姿を潜ませるムゲンの返事は勿論ないが、夜見は気にせず奢ってもらう食事に想い馳せる。アスリートは体が資本、体を作るのは美味しい食事。運動の後の栄養補給は、アスリートには大切なのだから。
「もちろんだ、夜見」
夜見が仕事を終えたなら、後はムゲンの役目だ。聞こえぬ返事を返しながら、ムゲンは動きの鈍ったピュアリィの一体に近付くと、不意打ちであっさりと仕留める。だが、唐突に崩れ落ちた仲間を見れば、やる気を失ったピュアリィだとしても警戒心を高めるというもの。
近くのピュアリィが次々に周囲に爪を振り上げるも、ムゲンのユーベルコード、黒影剣──全身を不可視に包むその闇のオーラは、触れるだけでピュアリィの生命力を奪っていくもの。振り上げられた爪は力なく降ろされる。脱力するピュアリィの腕を取り、愛しむような眼差しで、ムゲンは躊躇いもなく刃を振り下ろした。
「ああ…至近距離で麗しいお嬢さんを見られるのも、悪くはないな」
穏やかな声でそう囁くムゲンの言葉が届く相手はひとりと居ない。光を失った瞳を眠りに閉ざし、次の無防備な獲物に向かっていった。
大成功
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佐伯・晶
森の中で猫科の獣人種族の相手か
ちょっと厄介そうだね
まともに戦うのは大変そうだし
広範囲に影響するUCを使って対処するよ
できれば陣取るのは多少は開けた場所がいいかな
静寂領域を使用して敵を彫像に変えていこう
徐々に石化するだけでも機動力を奪えるしね
視界が確保できる場所なら
ガトリングガンで迎撃しつつ
相手が完全に彫像に変わるまで時間を稼ぐよ
射撃が難しそうな場所から
ワイヤーガンを木の枝にひっかけて登ったり
振り子のように移動したりして時間を稼ごう
飛び掛かられると面倒だからできるだけ
距離をとって戦う事に徹するよ
時間は味方だしね
あらあら、素敵な彫像がたくさんですの
自分に融合している邪神が喜びそうなのが難点だけどね
「森の中で猫科の獣人種族の相手か、ちょっと厄介そうだね」
エルフヘイムの森の防衛線。合流した自警団のエルフたちと顔を見合わせながら、佐伯・晶は眉根を寄せる。森の戦場に散らばるピュアリィの群れは、己の能力を活かして気ままに飛び回る遊撃隊。こちらの機動力を凌駕する群れを相手に、各個撃破では手が足りない。
「まともに戦うのは大変そうだし、広範囲に影響するUCを使って対処するよ。場所は…できれば、多少は開けた所がいいかな」
少しの逡巡の後、晶が提案するのは己の力を最大限に活かす作戦。猟兵のユーベルコードの力であれば、できない事はない。晶の言葉を受けてエルフは大きく頷く。
「ならば、この先にある伐採地が良いだろう。猫は我らが誘導してこよう」
「ありがとう、助かるよ」
晶の真剣な眼差しに、エルフたちは一瞬驚きに目を見開くと、そのまま声を上げて笑い出す。戦場の緊張感など何処へやら。エルフの一人が、きょとんと目を瞬かせる晶の肩を叩く。
「おかしなことを言う。助けに来てくれたのは、猟兵たちだろう?」
切り開かれた森の中、晶はひとり佇む。自警団の誘導は上手くいっているのだろう、木々のざわめきは次第に嵩を増し、敵対者の存在を告げてくれる。徐々に高まる緊張感の中で、ピュアリィたちの騒々しい笑い声が近づいてくる。晶は静かに呼吸を整えると、ユーベルコードを発動する。
──さあ、皆様を優しい微睡みにご招待致しますの。
晶の内側で、邪神が笑った。エルフヘイムの清廉な空気はほんの一瞬で遠ざかり、邪神の神域がこの戦場に広がってゆく。
「な、なんニャアッ!?」
その変化はピュアリィの群れにも機敏に感じ取れるもの。毛を逆立ててたじろぐ猫の群れのその上空、その虚空から出現するのは、森羅万象に停滞を齎す邪神の神気。命を奪い、命を止めるその気配に、慌てて逃げ出そうとするピュアリィに向かって、エルフの弓矢が襲い掛かる。
「時間を稼ぐよ!」
晶は声を張り上げると、自身もまたガトリングガンで応戦する。静寂領域は敵の体を徐々に石化し自由を奪う力。ピュアリィの群れが彫像に変わるまでが勝負だった。
「しゃらくっせぇニャアッ!」
だが激高したピュアリィは静謐な神気の痛みも浸食も顧みずに、素早い動きで晶の元へ飛び掛かってくる。晶はすかさず、素早くワイヤーガンを取り出すと、背後の枝にフックを引っ掛けてそのまま大地を蹴って走り出す。ワイヤーが巻き上がる慣性を利用しながら、そのまま枝から枝へ、振り子のように次々と移動し、ピュアリィを翻弄していけば、ほどなく待ちわびた味方がその姿を現した。
「ニャア、ニャアアッ!」
次々に悲鳴を上げるピュアリィの群れ。その手に、その足に、その体に──確かな無機物がその色を覗かせる。本来の色を失いながら、冷たい彫像の姿を晒すピュアリィたちは、苦痛に喘ぎながら大地に、枝に倒れ伏す。
──あらあら、素敵な彫像がたくさんですの。
融合している邪神の歓喜が、晶の内側にうるさく響く。戦場に散るピュアリィの彫像には、ひとつとして同じシルエットはなく…ただ一様に、その表情に苦悶の色を見せていた。
大成功
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クロム・チタノ
反抗起動、良い夢を邪魔するけたたましい鳴き声、万死に値します
敵状況確認、未だこちらに気付いて居らず、此より奇襲を開始します
木陰より失礼、答えは必中です
敵一体撃破を確認、敵群大混乱中、木陰を移動しながら状況把握前に更に追撃を開始
一体、二体、三体、敵四方に離脱、しかし無意味
大勢で居れば迂闊に此方も手出し出来なかったものを・・・
離散してくれたお陰で仕留め安く為りました
気付く暇等与えません、確実に死角から全個体射ぬいて差し上げましょう
隠密奇襲続行、次は貴女方が狩られる側、どうぞ死の恐怖を堪能下さい
──反抗起動。
クロム・チタノの良い夢を邪魔するのは、けたたましいピュアリィの鳴き声。歓喜に酔いしれる群れの喧騒は、騒々しく煩わしく──耐えようのない程、耳障り。
「万死に値します」
冷たく抑揚のない言葉は誰に聞き届けられることもなく、ただエルフヘイムの木々の囁きに紛れ込む。クロムもまた己の身を木陰に隠しながら、群れの死角に回り込む。
自警団のエルフを一時退けたピュアリィの群れは、己らのささやかな功績に酔っていた。静かに潜むクロムには気付く様子もなく隙だらけ。なればこそ、クロムは瞬きひとつせずに、奇襲を開始する。
音もなく反抗之弓を構え、ユーベルコード──狙いは必中を発動すると、そのまま素早く矢を放つ。その答えは必中、ただひとつ。
「敵一体撃破を確認」
クロムの零度の囁きは、ピュアリィたちの混乱に容易く飲まれる。襲撃に驚き慌てふためく半猫の、そのけたたましい鳴き声は煩わしくて、耳障り。だが眉ひとつ動かさずに、クロムは木陰を移動しながら再度追撃を開始する。
一体、二体、三体。混乱する敵群の動きを把握する前に、ただ視界に入った無防備な急所に狙いを定め、淡々と、黙々と。流れ作業のようなクロムの追撃は的確にピュアリィたちを射抜き、戦場に満ちる鳴き声を確実に減らしてゆく。
「四方に離脱、しかし無意味」
また一体の猫を射抜きながら、クロムは群れの状況を再度、把握認識する。大勢で固まり互いを守れば、クロムとて迂闊に手を出せなかったものだが、ピュアリィの群れには混乱を律する統率者がいないようだった。
姿の見えぬ襲撃者相手に、仲間を押しのけ我先にと離散するピュアリィの姿は、クロムにとって非常に仕留めやすい絶好の獲物だった。
「気付く暇等与えません、確実に死角から全個体射ぬいて差し上げましょう」
冷たく抑揚のない言葉。されどどこか、彩りの滲む声。クロムはやはり瞬きひとつせぬままに、隠密奇襲を続行する。
──次は貴女方が狩られる側、どうぞ死の恐怖を堪能下さい。
一体、二体、三体。クロムの良き夢を妨げる、ピュアリィのけたたましい鳴き声は、着実にその数を減らしていった。
大成功
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クローネ・マックローネ
絡みOK、アドリブ歓迎
【SPD判定】
頭数が足りないのなら、こちらで用意するよ。
大丈夫。
この手の【拠点防御】はワタシの得意分野の一つなんだよね。
負ける気は、全然しないよ。
UCは「ワタシの空飛ぶドラゴニアンちゃん達」を使用。
森の木々の上や間を飛び回りながら、射撃武器で攻撃してもらうよ。
炎系のドラゴンブレスは木が燃えちゃうから無しだね。
自警団の皆とドラゴニアンちゃん達の【集団戦術】で、この状況を乗り越えるよ。
猟兵たちの加勢によって、エルフヘイムの森の戦況は徐々に、優勢へと傾きつつあった。だがそれでも広大な森の中、潜む敵の数は未だその全容を晒し切ってはおらず、度重なる戦闘の中でエルフの自警団には拭いきれない疲弊も蓄積しつつある。
だからこそ、この戦場この戦況はクローネ・マックローネの最も得意とするものだ。
「まだ頭数が足りないのなら、こちらで用意するよ」
「何者だっ!?」
「大丈夫、援護しにきた猟兵だよ」
疲弊の滲む自警団の元へ、前触れもなくその姿を見せる漆黒の美女。突き付けられる警戒をものともせずに、クローネが両手を上げて正体を明かせば、自警団のエルフたちはほっと胸を撫で下ろす。
「この手の拠点防御はワタシの得意分野の一つなんだよね。だから、カワイイドラゴニアンちゃん達に頑張ってもらうね」
そう言いながら、クローネはやわらかな動作でその手に持った宝珠を揺らめかせると、ユーベルコードを発動する。ワタシの空飛ぶドラゴニアンちゃん達──宝珠の生み出す揺らめきと共に出現するのは、漆黒の肌を持つ女性ドラゴニアン。粛然たるその数はゆうに、百を越える。
「これならば…!」
「うん、そうだね。負ける気は、全然しないよ」
一瞬で現れた美しき増援に、自警団のエルフたちは驚きと共に大きく沸き立つ。エルフ達の高まる士気に、クローネは穏やかに微笑んだ。
「自警団の皆とドラゴニアンちゃん達の集団戦術だよ。炎系のドラゴンブレスは木が燃えちゃうから無しだね」
クローネの念押しにドラゴニアン達は大きく頷くと、漆黒の翼を一斉に広げて敵の元へと飛び去って行く。森に広がる宵闇のような一団、それを追うようにエルフの自警団もまた、エルフヘイムの木々を駆ける。クローネも追随しながら、彼らの後ろ姿に笑顔を向ける。
ドラゴニアンの一斉射撃によって炙り出されたピュアリィの群れをエルフが射抜く。圧倒的多数によるシンプルな集団戦術は、予想以上に効果的だった。
攻めど進めど、或いは退けど。ピュアリィ達はその得意の敏捷さを発揮できずに、ひとり、またひとりと倒され勢いを落としてゆく。そうしていよいよ、最後の一体がその背を撃たれ枝の上から墜落する。
「ほらね。クローネちゃん達の勝ちだね♪」
勝鬨を上げるエルフ達の姿に、クローネはにっこりと微笑んだ。
成功
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