CPW/Triangle【冷徹な土建屋企業の撃退】
●
サイバーザナドゥにおいて
巨大企業群が築き上げた輝ける都市の下層よりも下、鈍色の郊外に点在する薄汚れた最下層エリア。
都市開発が進む一方で積み上がったジャンクの山が連なりし廃棄場跡地、通称『ダストエリア』にそれは生まれた。
元は開発企業が運用していた巨大運搬用路、それらはジャンクや『汚染』が積み上がっては分岐を増やし、高度を増し、路線を増やして──やがてハイウェイと呼ぶに至るまでの規模となっていたのだ。
都市最下層のダストエリアでは当然ながら治外法権もいい所の無法地帯となっている場所も少なくない、だが一部のハイウェイにおいてはアウトローを束ねる文字通りのカリスマ的スターの存在を筆頭に小規模の
集落が増えつつあった。
──そんな環境の中で生きるアウトローたるハイウェイの男達は、ある時に不可解な襲撃を受ける。
「これは……無人機だと? どこかのキャンプが寄越した兵隊かと思ったが、どういう事だ!?」
「おい見ろ、焦げ付いてない内部のインプラントを調べて見たら出て来たんだ。データ収集機を兼ねたブラックボックスだぞ……
企業製だ!」
「ここはダストエリアのハイウェイだぞ?! 何だって企業様が俺達のキャンプに殺人マシンなんぞ送り込んで来たんだ!?」
高架下に聳え立つ廃ビルが横倒しになり並び立つ
集落の一つ、そこで濛々と黒煙を噴き上げている一機の機械兵器を数人の男達が額に汗を浮かべて取り囲んでいた。
それは突然、数時間前に襲って来た。飛行能力を有した戦闘ドローンだった。
ハイウェイスターと称される者とキャンプ内の戦闘が可能な
サイコブレイカーを呼び戻して、時間を掛け戦闘ドローンの搭載弾薬が尽きかけてようやく倒せたのだ。
恐ろしく手強い相手だったが、その中身を暴いた彼等は互いの顔を見合いながら困惑の表情を浮かべ口々に喚き合うしかない。少なくとも彼等は名のある『叛逆のスター達』とは無縁の走り屋でしかなく、彼等の中でリーダーとして知られているハイウェイスターに至っては子会社ながらに企業案件を幾つもこなしているのだから。
つまり、上層に目を付けられるほどの反乱分子ではない。ただの虫けらに過ぎない筈なのだ。
「どうなってやがる……俺達が何をしたってんだ……どうすりゃいいッ!?」
意気消沈した仲間を見遣りながらこぼす憤り。
ハイウェイスター、
集落の頭目『アルファス』は舞い込んだ異常事態を前にどうすべきか考えあぐねるのだった。
●【グリモアベースにて】
シック・モルモット(人狼のバーバリアン・f13567)は会議室めいた個室内に設置されたテーブルを猟兵達との間に挟み、予知の続きを語った。
彼女の前にはいくつかのまとめられた資料が置いてある。
「──……このハイウェイギャング達とその周辺に暮らすダストエリア居住民が大勢、企業から送り込まれたオブリビオンによって虐殺される事が分かっている。
オブリビオンはおおまかに分けて二種類、その存在も確認した。第一波と見られる大規模襲撃に送り込まれていたのは、企業製オブリビオンの『シェルタード』と呼称された戦闘兵器だ。
このオブリビオンは幾つかの企業が前例となる過去の戦闘や奪取データを
基に、比較的安価に量産されつつあるみたいだね……殲滅に投入されたこともあって今回の仕事ではシェルタードをあちこちで見かけると思った方が良さそうだよ」
そこで区切った彼女はそれまで手をつけていなかった資料を手に取った。
「続くのは第二波、これに関してはなるべく私でも調べたがちょっと情報が少なかった。だからこれは予知で見た限りの情報の共有になる」
シックがそう言いながら資料に目を向けるよう促された猟兵達は、そこに記載された文面と『サイバーザナドゥ』における現地企業勢力についての情報を読み始めるのだった。
●襲撃者たち
ハイウェイを占拠していたストリートギャングの殲滅が完了しつつある最中、崩れかけた道路上に一機の輸送機が降りる。
何の保護フィルターも介さずに降り注ぐ濁った雨の下、頭部全体を覆うタイプのバイザーデバイスを被ったスーツ姿の男二人が輸送機から出て来た。
スーツの胸元に浮かぶ
エンブレムは社員証のようだった。
「……特に何もない、捨て置かれダストエリアに呑まれたハイウェイじゃないか。こんな所に幹部は何を考えて中継基地まで設置して殲滅部隊を組んだのだ」
黒いバイザーを被った特級社員はバイザー内部の
拡張視界で何かを操作しているのか、虚空に手を伸ばしては忙しなく指先を躍らせている。
傍らでそれを眺めている白いバイザーの男が小さく首を傾げて応えた。
「社内に流れている噂によれば今回の計画は、シムラ上級社員が企画したらしいですよ。彼は私達より後期の研修手術を受けたサイキッカーであり先読みに優れた社員だそうです、恐らくはこのハイウェイスター達の殲滅も何らかの布石と見るのが正しいのでしょう」
そんな会話の最中、男達の足元で突如起きた地響きによって亀裂が走る。
特級社員らしき男達に焦りはない。直後、彼等が視線を巡らせた先の高架下から大量の白煙と黒煙を纏いながら現れた全高2mほどの人型機械兵器が改造バイクらしき車体を巨大な大剣でグシャリと潰していた。
白煙の中で撒かれる血煙と共に『ぱぁん』という何かが弾けた音が鳴り響く。
「……無人兵器、T-DB・トライアングル型か。我等が企業【TCD】と提携にある他社技術を流用したものらしいが……随分ゴタついたハリボテだ、数多のデスブリンガーの戦闘データの中からアセンブルした
強襲白兵戦タイプの人型兵器の試作では本職の仕事には劣るだろうに」
「上層部はデスブリンガーを雇う事を嫌っていると聞きます、加えてあの無人兵器の開発元も確かそういった理念を持っていた筈。此度の作戦で量産を視野に入れたデータ収集運用しているのを見るに、想定されているのは──」
「……企業戦争か、土建屋企業の我が社には縁が無いと思っていたがな」
大型のウォーマシンが背部スラスターからプラズマジェットを吹かして飛行し、ダストエリア上空を旋回して索敵する様を眺めている男達は変わらずに会話を続ける。
「……ハイウェイスターが率いていた連中には犯罪歴が無かったらしいな。ウチとの付き合いは無かったのか?」
「ええ、ありません。ですが過去に、我々と敵対関係にあるデルタ社やトライセル社からの依頼を受諾した経歴はあったようです」
「……こんな所に住み続けているくらいだ、大した関係にあるとは思えんな」
「この当該地区において『洗浄作業』を終えられれば現状は土地管理企業への取引が数件立ち上げられる可能性がある程度です、火種作りにも実績作りにも適しているとは思えません──……シムラ上級社員の先見とやらに期待しましょう。
これで何が来るのか」
やさしいせかい
初めましてやさしいせかいです、よろしくお願いします。
今回は予知した事件が発生する前に現地入りした上で情報収集からスタートしてこちらから襲撃を掛けて被害を減らす作戦となります。
「シナリオ詳細」
『第一章:日常(捜索パート)』
該当するダストエリア上を通るハイウェイ沿いから出会うハイウェイギャングや、ダストエリア内の居住民を訪ねて襲撃に来るオブリビオンを派遣した企業『トライアングル社』について情報収集しましょう。
割と腕っぷしだったりハイウェイでの走りを評価して協力に応じてくれますが、彼等はダストエリアで自由に生きているというのもあり少し不真面目です。脅しも色香も使って胸が痛まない相手となります。
『第二章:集団戦』
第一章での情報収集により特定した、ダストエリアの一画に建設された中継基地周辺で集団との戦闘です。
敵は生体脳を搭載した全長2.5mの非人道的殺戮兵器、シェルタードと呼称されたオブリビオン。
脳は薬物によりタガが外されて殺戮衝動全開で標的を抹殺するように行動し、ハイウェイ周辺を巻き込む勢いで戦闘になるでしょう。
『第三章:ボス戦』
第二章からほぼノンストップで始まるボス戦です。
全高2m程度の無人機である人型兵器は数多のデスブリンガーの中から白兵戦を意識してアセンブルされた
特化機体のようです。
その他詳細は三章になってからのOP開始時に描写等で判明します。
●当シナリオにおける描写について
三章全てにおいて描写(リプレイ)中、同行者または連携などのアクションが必要な場合はプレイング中にそういった『同行者:◯◯』や『他者との連携OK』などの一文を添えて頂けると良いかと思います。
以上。
皆様のご参加をお待ちしております。
第1章 日常
『ハイウェイ・ラン』
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POW : とにかく先頭を突っ走る
SPD : 急カーブで華麗なハンドルさばきを見せる
WIZ : 仲間との並走を楽しむ
👑5
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アス・ブリューゲルト(サポート)
「手が足りないなら、力を貸すぞ……」
いつもクールに、事件に参加する流れになります。
戦いや判定では、POWメインで、状況に応じてSPD等クリアしやすい能力を使用します。
「隙を見せるとは……そこだ!」
UCも状況によって、使いやすいものを使います。
主に銃撃UCやヴァリアブル~をメインに使います。剣術は相手が幽霊っぽい相手に使います。
相手が巨大な敵またはキャバリアの場合は、こちらもキャバリアに騎乗して戦います。
戦いにも慣れてきて、同じ猟兵には親しみを覚え始めました。
息を合わせて攻撃したり、庇うようなこともします。
特に女性は家族の事もあり、守ろうとする意欲が高いです。
※アドリブ・絡み大歓迎、18禁NG。
諏訪野・みすず(サポート)
サポート役をします。「心配することはないよ。みすずちゃんが必ず治すから」「コッチはみすずちゃんに任せてね。無理に突っ込んじゃダメだよ」アドリブ、共闘歓迎です。
●
ダストエリアの空気は良いとは言えない。
積み上げられたスクラップの山はまだ良い方で、気候により産業廃棄物と骸の海に汚染され切った土壌から発生した混合有毒ガスが滞留している盆地など、とにかく毒性の極まった環境も少なくないのだ。
「だからハイウェイなのだろうな」
サングラス越しに目を伏せ、揺れる蒼銀が納得した様に口溢す。
グリモア猟兵から伝えられた話からアス・ブリューゲルト(蒼銀の騎士・f13168)が足を運んだのは、ハイウェイスターの居たとされるスラム街──
集落の方だった。
酷い環境の場所もあるが、元は
巨大企業群が運用していた高速道路でもある。いまや高架下も例外なく荒れ果てているとはいえ風通しが良く、何よりも汚染された雨風を物理的に凌げることから、スモッグ対策に外付け導入したと見える大型送風機や空気清浄機といった機械が点在していた。
「環境への適応と、時期を見て移動する為の拠点選びに欠かない利点。この近辺はスモッグの流れや天候に注意すれば他のダストエリアよりも幾分かマシなんだろう」
「……それでも、経済的にやりくりのしようがない人々は相応に苦労してると思う」
「ああ、そうだな」
歩みを進めるアスの背中を追いながら、今回行動を共にしている諏訪野・みすず(不思議系ダンサー・f00636)が周囲の人々に目を向け眉を潜めていた。
彼女の目についたのは年端もいかない子供の姿だ。
一人や二人ではない。十人ほどの少年少女たちが腰に薄汚れた拳銃を差して駆け回り、その向かう先はスクラップや廃棄場から引きずり出して来たような大型の機械や残骸の山。そこに踏み込んでは日銭を稼ぐ名目なのか別の目的か、みすずには知れない事情から常に必死になって生身らしい手足を傷つけないように気をつけながら漁り続けている。
アスとみすずは大人の姿を探し出して近付く。
「……あ? なんだ、テメェらはァ」
「トライアングル社について何か知る者がいないか探している、もしくはこの付近で企業のあやしい動きを見た者がいないかをな」
「なにか知らないかな?」
煙草を片手に歩いていた黒のライダージャケットを着こんだ男を見つけたアスとみすずが歩み寄ると、やはりそこには警戒心が剝き出しになった様子が映る。
だがほんの数秒ほどアスの事を男がまじまじと観察しながら、ぽつりと一言こぼす。
「……良いモン着てるじゃねえか」
「なんだ」
アスはその声に自身の纏う装備の事だと気づくと、小さく首を傾げてみせた。
「企業のなんだ、テメェらは」
「俺達はメガコーポの味方ではない。敵でもないがな」
「スクープ屋ってわけでもねーみたいだが、生憎だったな。此処ではどこぞの企業を知ってる奴は少ねぇ、それこそ都市の方で聞き込みでもするかサイバースペースでも漁った方が良いぜアンタ」
「このハイウェイに関する事だ」
煙草から散った灰がチラチラと火の粉を瞬かせる。
アスの眼差しをサングラス越しに見たハイウェイギャングの一員らしい男は、しかし口の硬そうな反応だった。
「……悪いな、他を当たってくれ」
──今度は少年少女たちがスクラップを集めている傍で高架下に伸びている鉄柱に背を預けて立つ、薄汚れた毛皮のコートを羽織った長身の女にアスが話しかけに行く。
訝しげに睨みつけて来た女だったが、しかしすぐにその反応が変わった。
「トライアングル社だぁ? なにさ、ウチのボスの同業か何かなのかい」
「なにかご存知なんですね」
「あたしぁ知らないよ! でもウチのボスはたまに企業の仕事を請け負う事があんのさ。こないだは確か……そうだね、トライ……なんとかの企業から依頼を受けてたのは知ってるよ」
そこでアスが口を閉ざす。
(──……いささか口が軽すぎる、なぜだ)
説得のつもりなど無かったアスにとっては余りにもトントン拍子な展開に思えた。
「えっと、それならそのボスはどこにいるのか聞いてもいい?」
「はっはー! 知らないよ! でもウチのボスは仕事じゃない日は『上』で走ってるよ、仲間と一緒にね」
「そうか、わかった」
「まだ他の連中に話を聞きに行くのかい?」
「そうだが……不都合だったか?」
まるで引き留めるかのような口ぶりの女にアスがサングラス越しに視線を向ける。
すると毛皮のコートを羽織った女は肩を
竦めながら小さく笑って見せた。
「いーや、どうせ同じ話しか聞けないだろうにと思っただけさね。でもまぁ、強いて言えばそろそろウチのボスが上を通る頃合いだよ」
「戻って来る時間なのかな」
「『橋の振動』だよ、これはボスが駆るマシンがそろそろ近い証拠……ってわけさ」
(……そうか、この女が背を預けていたのは)
ハイウェイスターの帰還が近いと告げる女の背後にアスが視線を向けると、確かにその預けた背がもたれているのはハイウェイの支柱だった。
ここまでの口ぶりや子供たちのそばに立っていた事、そして慣れたようにボスの到着を予感している様はある種の説得力を持っているように思えた。
「わかった、ありがとうお姉さん!」
みすずが彼女に礼を告げる。
──……アスと共にハイウェイへと上がったみすずは、暫し待ちながら自身の脚部武装にユーベルコードを発動して蒸気エンジンを装着させる。
「さてと、それじゃあ少し……久々に全力で走ろうかな!」
高架橋を伝う振動が増すにつれ、姿を見せ始めるハイウェイギャングの集団。
アスとみすずは彼等にレースを持ち掛けるのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
オリバー・ハートフォード
こりゃ走りがいのあるハイウェイじゃねぇの。こういう道をガンガンかっ飛ばしてる連中となら話が合いそうだぜ。よぉブラザー! 今日は非番でな、ひとっ走りいいかい?
【WIZ:並走を楽しむ】ぜ。白バイの〈運転〉で一団を〈追跡〉、追いついたら後はスピード勝負、満足して停まるころには同じ風を味わったダチになってるハズさ。マシンの話をしながら、目的について〈情報収集〉だ。
最高の走りだったぜ! いいカスタムだ、加速が特にイカしてるぜ。実はちょっとばかし、聞きたいことがあってよ……最近この辺でトライアングル社ってのがコソコソ隠れて何かしてるらしいんだが、何か知ってるか?
(WIZで挑戦、アドリブ連携等歓迎)

メンカル・プルモーサ
…まずはハイウェイギャングに情報を聞かないとか…
……取り合えず改造装甲車【エンバール】に乗ってハイウェイに行って…
…ハイウェイギャングに情報収集しようか…
その過程で走りの勝負を仕掛けられたらそれに応じるとしよう…
…不真面目とは言ってもハイウェイギャングやってるぐらいだし…勝負の約束を反故にする事も無いだろう…
…ギャング達から『トライアングル社』の情報を集めたら軽くハッキングをして動きを調べてみるとしようかね…
…襲撃予定があるなら何かしらの兆候は見えるかな…物資や兵器の動きとかね…
佐藤・和鏡子
愛車の救急車で現地に乗り付けて情報を集めようと思います。
予熱で思いきりタイヤを空転させて盛大に煙を出して目立たせたり、レースを持ちかけて持ち前の運転技術を生かしてアピールしてみようと思います。
車の運転は私も得意ですから。
アドリブ・連携全て大歓迎です。
どんどん動かしてください。
向こうも私と同じく車好きの様なのでその辺も生かして話してみようと思います。
●
──……かつての
巨大企業群が思い描いた大都市の姿とは、どのような物だったのだろうか。
濁った空に幾つものライトが伸びている景色が広がる一方、都市から離れた下層である
ハイウェイでは巨大な高架橋が朽ち行くばかり。
都市開発、または各々の企業が拠点を築き上げる際に使用しては打ち棄てた、巨大運搬用路。幹線道路というには大きく作り過ぎたがゆえにダストエリアとして数えられてしまうまでに『不要』となってしまった、いまや都市内部に身を置けぬならず者や貧困層が移り住む過去の道標でしかない。
汚染物質を含んだ雨に打たれ続け朽ちかけたハイウェイ──だが、かつての企業が用いた技術は長い時を経てもなお高架下に安住の地をもたらしている。
そこで生きる事を強制された者達にしてみれば反吐が出るだろう。しかしそれでも確かに、メガコーポが築き上げた栄華の陰で生きる者は居るのだ。
「なるほど、
こっち側にはこんなエリアがあったんだな」
湿った空気を掻き分けるように疾走する一台の白バイ。
都市側から封鎖された高速道路に入って暫し走らせた先、上下左右で交差する様に拡がり入り組んだ地形を生み出している高架橋の最中で、黒いヘルメットを被ったライダーが目元から青白い灯火を揺らして見せる。
「──こりゃ走りがいのあるハイウェイじゃねぇの。こういう道をガンガンかっ飛ばしてる連中となら話が合いそうだぜ」
眼光を妖しく揺らし残像を引きながら、オリバー・ハートフォード(
殉職巡査・f39597)は
白塗りの自動二輪のアクセルを回す。
ばたばた! と風の煽りを受けてヘルメット同様に黒く染まった愛用のジャケットがはためいて空気を打ち鳴らす。
オリバーの向かう先はダストエリアを高架下に持つ区域だ。
「そろそろだと思うが……おっ、見つけたぜ!」
白バイに備え付けられた無線機を片手に操作して『仲間』へと報告をひとつ。
次いで、彼は白バイの操作盤の内にあるスイッチレバーに親指を掛けようとして──寸前で止める。
(おっと、逮捕するわけじゃないんだから
サイレンは要らねぇか!)
風を切る最中で思わず笑い声が喉元の骨身からこぼれた。カカカッと。
そんなオリバーがバイクを加速させる前方に見えて来たのは複数の改造されていると見える単車や自動四輪車──つまり、今回探していたハイウェイギャングの集団だった。
「ハハ……ッ、おぉい!? あれ見ろ!」
「なんだ!? こんなトコに
ポリスが何しに来やがった……!」
「逃げるぞ!」
ギャルルルルッ!!
急加速急発進する際にタイヤが濛々と白煙を撒き散らし、直後に数台のクルマたちが一斉に逃走し始めてしまう。
なんという反射行動、これは前科もあれば余罪もありそうだとオリバーが苦笑交じりに唸る。
「目が良い──……ハハァン? さてはお前等、オレのバイクに見覚えがあるな? よくこんな所にいたもんだ」
オリバーの駆るバイクには薄く、企業製である事を示すマークと高速取締りのホロエンブレムが
刻印されていた。
この一瞬でそれを判別できるとなると、機械化義体にわざわざ映像記録として保存済みだったデザインだと見える。サイバーアイを通したか。
あるいは過去に同企業と提携にある署の警官に追跡された事があるのだろうか。
「まぁいいさ、ハッハー! よぉブラザー! 今日は非番でな、ひとっ走りいいかい?」
「なんだテメェはァー! 俺達のシマで点数稼ぎってんなら容赦しねえぞッコラー!」
「それオレ以外の警官に言うなよ、銃弾といっしょに追っかけて来るからな!」
威勢のいい四輪車に並びながらオリバーがヘルメットから青く眼光を覗かせ、ハイウェイギャングの一員らしきドライバーへ目を向ける。
互いの車体が左右に揺れ動く。
だがオリバーの白バイはつかず離れずを維持していた。振り切る事も、アタックのフェイントで減速させる事も叶わない相手だと悟った四輪車のドライバーが額に汗を浮かべて声を張り上げる。
「くっそ、このクルマじゃ撒けねえ……おい白バイの警官! お前ホントに何の用だ!?」
「なんだ聞いてなかったのか? さっきも言ったぜ」
ハイウェイを走り抜ける数台のバイクとクルマ、それぞれがスピードを上げていく中で向かう先に幹線道路が途切れた箇所が視界に映る。
なんの躊躇いも無ければ問答も無い。
オリバーがアクセルを回すのと同時、先行して逃走しているバイクや並走する四輪車もそれぞれエンジン音を掻き鳴らして加速していた。
数秒の間、風が吹き荒れ────一斉にハイジャンプする。
ギャルルルル! と響き渡るハイウェイギャングのいずれかが出すタイヤのスリップ音に次ぎ、飛び移った下層の幹線道路を車体が跳ねる衝撃音が複数続く。
着地時に減速してしまった四輪車を追い抜きながら、先頭にいた改造バイクに追いついたオリバーがピュイと口笛を鳴らしてみせる。
「──お前らと走りたいだけだ。まずは風を感じようぜ、ブラザー!」
「……上等だ。おい、ウチの『ボス』の所までこのまま
競争だ!」
●シフトアップ!
濁った空が明確に曇天と呼べるほどの黒雲で埋め尽くされ始めた頃、サイバーザナドゥの都市内でも使用可能に調整された通信端末へ幾つかのメッセージが表示される。
カツカツ、と端末の画面を指先が操作する。
メッセージの内容を読み取った少女は静かに画面を切り替え、
車内を照明が点き照らし出す。
「……まずはハイウェイギャングに情報を聞かないとか……」
パッと白く照らされた車内で顔を上げる灰色の髪を揺らす少女、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は後部座席を立ち運転席へと移った。
彼女は数時間前にサイバーザナドゥに入り、それからハイウェイギャングとされる集団が都市郊外のダストエリアにて作っている
集落の詳細について調べていた。
そうする事で大まかな事件発生時のエリア範囲を絞る事も出来る上、さらに言えば仲間の猟兵の中には広域の範囲指定を持つユーベルコードを使う者もいる。件のオブリビオンをけしかけたメガコーポ、トライアングル社について知るハイウェイスター達を見つけるまでの繋ぎに探る意味はあった。
しかし、サイバースペースやダークウェブを探りながら情報収集をして待機していたメンカルが新たな手掛かりを見つけるよりも先に、仲間のオリバーからの目標発見の通信を受けて自身もハイウェイに繰り出す事となったのだ。
ほう、と息を吐きながらメンカルは『クルマ』のエンジンを始動させる。
「……ヤタ、メレテー、ファンタスマゴリア、起動……」
片手間に操る術式。青白い光が固有の意味を持つ記号と紋様を描き出し、次いで彼女の意思に呼応してそれらが展開されていく。
「──自己判断型伝令術式をセンサー部位と同期、車外集音機器を操音作寂術式で強化、電子機器による索敵や上空からの視認性を現影投射術式の応用で減衰……アルヴィス、マルチヴァクをエンバールと同期……完了。ひとまずはこれで行動してみようか」
メンカルが一息ついたのと同時にかかるエンジン。いつの間にか、車内を照らしていたライトが彼女の操る術式と同様に青白く染まって揺れていた。
少女の掛ける眼鏡のレンズに映し出される電子と魔法を合わせた文字列や紋様が、新たに視界情報として追加表示してくれる。
『悪いな、先にレースをスタートさせてるぜ!』
「……ん。よし、こっちも行くよ」
座席にてシートベルトをしたメンカルが術式で補強した無線機越しにオリバーへ応答した直後、彼女の身体が僅かに座席シートに沈んだ。
ある程度の衝撃緩和効果を帯びた術式を車体に掛けているメンカルは一切の躊躇なくアクセルを踏み込んでいたのだ。
【改造装甲車エンバール】──クエーサービースト・マインドミナBVAの甲殻を装甲やVBA装甲車系統の規格パーツにあてがい、メンカルの術式や思念との感応性を高める事であらゆる環境において適応させたマシンである。
数人乗り込む事の出来る車内にはメンカルの私物や魔法の道具や置かれ、それとなく彼女の纏う雰囲気に『馴染んだ』様子が伺える。少なくとも、居心地は悪くないと少女の友人たちにも評価されていた。
──……そんなメンカルの乗車するエンバールは彼女の望む結果をもたらす。
「走行中のマシン……あれか」
急発進した装甲車が容易く近場に
聳え立っていた橋脚を垂直に駆け上がった直後、崩れかけたハイウェイを半ば崩落させながら一直線に走り抜けていく。
ウインドウにポツポツとした雫が着き始め、どうやら雨が降りそうだと予感しながらメンカルは勢いよくハンドルを回してアクセルペダルの横に設置されたブレーキではない黄金色のペダルを踏み込んだ。
後部の乗車口にある窓から見える外で瓦礫と白煙が撒き上がって行くのが映っているが、メンカルは地上や下層の
ライン上に人がいない事を確認済みである。
そこから十数秒ほど走行すれば右方に見える別路線の高架橋を数台のバイクやクルマが走り競い合っているのを発見し、彼女は手元のハンドルを横に切りながら片手で魔法陣から鎖のような起動紐を引いて操作する。
クラッチ操作にも似た動きで行われたそれは、一種のブーストだ。車体の装甲を形状変化で空気抵抗を減衰させながら、魔法による風力噴射での反作用をもって前進させる。地上戦での運用時を想定して組んだ物だった。
再びメンカルの背中がシートに沈み、かくして──。
ゴォッ!! と大気を裂き音の壁を一瞬だけ破った衝撃波を背にして右側の
サーキットめがけ突っ込んで行った改造装甲車エンバールは、突発的なレース状態となっていたハイウェイギャングたちに驚きをもって歓迎される事となるのだった。
●ハイウェイスターズ!
──やがて雨が降り始めた頃、無数の高架橋が並び上下に入り乱れているダストエリア上のハイウェイで無数の走行音が地を震わせ唸りを上げていた。
走行しているのは十数台の改造バイクや改造四駆車のようで、濛々と白煙を上げながら幹線道路を爆走している。先頭を行く改造した大型バイクに跨るライダーの男は
機械化義体の身体らしいサイバーアイを巡らせて舌打ちをする。
「妙な連中が現れたようだな……企業の手下かどうか知らねえが、『ここ』で俺達に挑むって事の意味を教えてやるぜ!」
無線機越しに聴こえて来るのは『ヘルメット脱いだらガイコツだった』『ゴツイ装甲車のくせにワールドハッキングみたいな技を使って来る』『異様過ぎてマッポの中でもやべー奴かもしれない』だのと、無視するにはワクワクする内容ばかり。ダストエリアのハイウェイを駆ける男として、ハイウェイギャングたちはこぞってレースに参加しようと急いでいたのだ。
と、そこへ──曇天に覆われていたサイバーザナドゥの空から濁った雨粒が降り注ぐ中、猛然と駆け行くハイウェイギャングの集団に一台の
救急車が数本の道路を挟み近付いていた。
次第にその救急車が向かう先にいたハイウェイギャングの集団の姿が沈んでいく。どうやら救急車の走る路線とは異なり一層下の幹線道路を往くらしい。
だがやがて、異なる道路を用いて接近して行った救急車は自身の行く道とは外れた下線の道路に向け頭を振るように急カーブする。
車体が勢いよく地を滑り、火花を散らしながら幹線道路沿いの朽ちかけたガードレールやフェンスを薙ぎ倒して突っ切る。
ギュオッ! と風を切りながら宙に浮く救急車の運転席で、ふわりと銀髪が浮く。
「やっと見つけました……よっと!」
ガゴォンッ! と車体が大きく音を立ててハイウェイギャングのレースに飛び入り参加した佐藤・和鏡子(リトルナース・f12005)がハンドルを切り、スリップを防ぎながら割り込んで行く。
グリモア猟兵の予知を元にして事件の手掛かりを掴むべく、猟兵達がそれぞれハイウェイ周辺の情報収集に集まっている中で和鏡子は愛用の救急車に乗り込みハイウェイ上を捜索していたのだ。
そんな折にオリバーからの無線を聞きつけ走らせてきた彼女は偶然、レース状態となっていた猟兵の所へ急ぐハイウェイギャング集団を見つけたのだった。
「なんだァ!? 誰だ呼んだ奴は、救急車が来たぞ!」
「まて、企業製じゃない……だがあのクラシックカーはなんだ! ただモンじゃねえぞー!!」
文字通りの飛び入りを果たした和鏡子の救急車の姿に面食らうハイウェイギャングの男達が口々に喚きながら、なんとか追い抜こうとアクセルを全開にしてエンジンの駆動音を響かせる。
和鏡子がハンドルを握る片手間にミラー越しに後続を確認する。
「ひとつ、ふたつ、みっつ……約半数、結構抜いてる状態からスタート出来ましたね。ここからは腕の見せ所でしょうか?」
幹線道路が下りを見せた時、一気に加速しながら側面に並んで来た改造バイクがそれぞれ和鏡子の救急車を追い抜こうとする。
しかしそこで細かく車体を揺らし、一瞬だけフェイントをかけると並走していたバイク達が反射的に減速する。きたねえ! とライダー達が声を上げた。
「
救急車に道を譲るのはドライバーやライダーの良心的なものを感じられて、私は良いと思いますよ!」
「レスキューだぁ? おいおい、
警官の次は高速ナースに登場だと? 誰が通報したんだ、なぁ!」
「大丈夫ですよ。私達は少し皆さんと一緒にレースに興じたいだけですから」
「白バイが追っかけて来てウチのモンがレースおっぱじめたと思えば、今度は棺桶の登場だろ。ハハッ、どこのモンか知らねえがこっちは生きた心地がしねーなァおい!」
「ふふ、心配性ですね」
「いや何笑ってんだ嬢ちゃん」
雨粒を掻き分けるようにハイウェイ上を駆け抜ける複数の車体。思っていたよりも小心者らしい集団を傍目に、和鏡子がアクセルを踏んだ。
それは前方に現れた急カーブ車線に際し、同時にハンドルを切りながら一瞬だけドリフトさせながら
バーンナウト──運転技術とユーベルコードを合わせた技をもって驚異的な旋回と加速発進で周囲の走行車を追い抜いてしまう。
ハイウェイギャング側も負けていない。
車体を強引に傾けてドリフトスライドしながら和鏡子の救急車に並び続けるバイクがひとつ。
無線機越しに喚きながらも高速を維持したまま追随し、さらには高速で異様な動きを見せる救急車と綺麗に並ぶ改造バイクに和鏡子が思わず視線を向けた。
「もしかして……ハイウェイスターのリーダーさんですか?」
「どういう動きしてんだその救急車! って、あん? 知らずに挑んでたのか。そうだ、俺がこのチームのリーダーだ」
「なるほど、流石良いカスタムですね。ご自身で手を加えたのでしょうか?」
複数の──しかし飛び入り時点に比べ数の減ったエンジン音が和鏡子の周囲で唸り声を上げる一方、意外なタイミングで競争相手が探していた人物であると分かる。
「まぁな! ハッ、俺のエンジンは自作でな。ちょっとやそっとじゃトバねぇ様に出来てる、見ろよこの走りっぷりを! 企業製のカスタム機にも負けてないぜ!」
「さすがですね。私も愛用しているこの救急車には自信があります、個人的に気に入っているのはステアリングでして……あとでお話をしませんか!」
「どうやら話せる奴みたいだな、良いだろうこっちも聞きたい事がある! だがその前に聞かせろ、別の所に来てる白バイとかも仲間なんだろう、なんだって急に挑んで来た!」
不意に途切れる幹線道路。
それを、和鏡子含めた猟兵やハイウェイギャングの一部とそれらを率いる
頭目のハイウェイスター『アルファス』は軽々と飛び越えて下層の道路に着地して突き進んで行く。
無線越しに聴こえて来る仲間の声やハイウェイスターのアルファスからの問いかけに、和鏡子はミラー越しに穏やかに微笑みを返して見せる。
「私たちは、皆様の相談に乗れるかもしれません」
──……そうして進むうち、ついに合流を果たす
競争者達。
「ボス……! なんですかいそっちの救急車!?」
「俺達に挑みに来たついでに悩み相談もやってくれるらしい、愉快なレースになりそうだぜテメェら!」
「聞いてくれアルファス、あっちの白バイよく見たらガイコツだったんだ。お、俺ぁ電子ドラッグはキメてねーぜ?!」
「気をつけろ! あっちの装甲車に体当たりかましたらこっちが何故か吹っ飛ぶぞ!」
「銃はしまっとけ! こいつらは面白い客だ、少なくとも……走りてえらしい──!」
ハイウェイスターのアルファスが自身の
愛車を僅かながら高速機動用の形態らしき姿へと変形させ、ハイウェイギャングの手下の男達を統率しようと先行して隊列を整えさせながら猟兵達と何度も
位置を入れ替え、走行速度をなるべく落とさずに一時の休息を挟んでいた。
一方で合流を果たした猟兵達はそれぞれハイウェイギャングの出方を見ながらも、どこで落とし所を図るかと機を見ている。
「おいおいそのバイク、イカしてるな! そのパーツには見覚えがある。航空機開発の企業が出してるエアロウィングだった筈だ。何故そいつを選んだ?」
「あぁッ? そりゃ、この真っ赤に開く翼の浪漫もそうだが何よりも最高に
飛べるからよ! そこの白バイ、アンタの相棒も細かな所が制式とは違うようだな!」
「ああ、好きに使わせて貰ってるぜ。お前らみたいな走り屋に追いつくだけじゃない、手に馴染む様になってんのさ!」
オリバーの駆る白バイがルート上にあった瓦礫のジャンプ台を利用して飛んだ傍、ハイウェイスターの駆るカスタムバイクが風を切り裂いて滑空して並ぶ。
ギュォオオオッッ!! と轟き、響き渡る駆動音。
先頭に躍り出る度、入れ替わり立ち替わり。その順位を変動させるはそれぞれが乗るマシンの特性に差があるが故だろう。
だが意外にも──彼等よりも次第に前へ出始めているマシンの姿が在った。
細かなハンドル捌きもさることながら、巧みに変則的なギア操作を駆使してライダー達を翻弄していく和鏡子の救急車である。
「あの救急車……たまにタイヤが火を噴いてるぞ」
「バーストしねえあたり、よっぽどの足を使ってやがる。つーかたまに後ろに張り付くと中が覗けるんだが、ありゃ内装も普通に救急車だぞ!? ガワはともかくエンジンと各部パーツは並みじゃねぇ……ッ!」
「おすすめのお店を教えましょうか? 最近、キャンペーンをしているそうなので!」
何度目かの急カーブコーナーで和鏡子が勢いよく車体をドリフトさせ、白煙と火花を撒き散らし、隣り合う改造装甲車エンバールと共に後続のハイウェイギャングのマシンを牽制して突き放しながら言い放つ。
「……そういえば」
ハンドルを片手に握りながら、オリバーとアルファスの会話を傍受している自身の術式内臓情報収集機器に目を向けるメンカルが口溢す。
──言われて気づいたが、このレースの終わりとはどういう終着になるのだろうか。
その呟きは彼女の車内だけに落ちて、それからすぐに彼女の掛ける電子型解析眼鏡【アルゴスの眼】に新たな情報が出力される。
それは、レースと同時進行でダークウェブ上を探っていた情報収集術式に引っかかった『
Triangle Construction Industry』の動きに関する物だった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
サマエル・マーシャー
※id=188642の姿で参加
まずは情報収集ですか…それで対策が打てる案件だといいのですが。
ハイウェイ周辺を戦場予定地であると定義してUCを発動。
住民の皆さんに救いを。ダストエリアで暮らしている以上、生活に様々な問題を抱えておられるでしょうから。それを広域に渡って一瞬で解決します。(様々な機器の修復や生活必需品・食料の供給など)
これで私の力を示すことができれば真面目に話を聞いてくれる気になるでしょう。私はあなたたちを救いに来たのです、と。
信じられないと言われた場合は『今あなたたちが私に殺されていないこと以上の証明がありますか?』とでも。(アイテム『神の如き者は誰か』を剣聖レベルで振るいながら)
●救済のセラフ
猟兵、見知った者も含めた彼等はこぞってハイウェイギャングへの接触を図るために高架橋へと上って行った。
サイバーザナドゥで綺麗な空が見える時と場所は少ない。見上げれば、汚染された大気に濁された空がほとんどだからだ。
その点を踏まえれば、ハイウェイに一定数の人が集まる心理は理解出来なくもない。
弱者は時として選べない。
住む場所も、見たい物も、抗う術を持つ事さえ。
自由を好む性質として知られる走り屋たちの中からハイウェイスターと呼ばれ、そのカリスマをもって企業に仇成す者が現れるのも、巨大な力に抑圧された者の数が多いからこそ。
ならば、例え
スターと呼ばれようとも
巨大企業群に反する行為すら選べない者がいる世界とは。オブリビオンの集団によって殲滅され多くの人々にとっては『居た』事すら知らぬまま消える者達の住む場所とはどんなものか。
──その答えがこの、
高架下の廃棄場だった。
「おねーちゃんはどこからきたの」
「…………」
電子の残滓を散らしながらブーツが音を立てる。
曇天は次第に雨の気配を見せている最中、サマエル・マーシャー(
電脳異端天使・f40407)は薄暗い高架下のダストエリアを探索していた。
いや、探索というよりも『見に来た』という方が良い気がする。何となくだがサマエルはそう思っている。
物見遊山とは異なる観測、ただ彼女はそこに在るモノを見に来たのだ。
「まずは情報収集ですか……それで対策が打てる案件だといいのですが」
急ぎの文は静かに書け、ということわざを見知った旅団の誰かが言っていた気がする。
今回のグリモア猟兵が見た予知は二つのパターンを視ていた。前兆となる企業製オブリビオンの襲撃時、そして企業の主力と見られる戦力が投入された後の様子だ。
現時点で猟兵達が調べた限り、どうやら既に前兆となる襲撃が遭った後のようだ。つまりその後の主戦力が襲って来るまでの偏差予測は現状、困難となる。
果たして、ハイウェイスター達からトライアングル社とその手先であるオブリビオンの手掛かりを得られるものか。サマエルには僅かながら訝しむ思考が残っていた。
「おねーちゃんはなにがすき」
「…………」
サマエルの視界の隅に映る黒い影。
崩れかけた掘っ立て小屋にかかった灰色のシートの奥にある闇から、幼い少女の声が消え入りそうな音を模してサマエルに語り掛けて来ていた。
風が吹けば消えてしまいそう。
(……風が吹きましたね)
「おねーちゃんはだれがほしいの」
(どうやら大丈夫そうですね)
サマエルは声の主を一瞥してから、鉄屑が積み上がって狭苦しい迷路と化したダストエリアへ向き直った。
湿った風が通路を吹き抜け、
彼女の纏う性質と性能を秘めた
ホロドレスノイズのジャケットと共に胸元の赤いスカーフが揺れ動く。
「ここは狭く、息がし辛そうですね。ああ……だからハイウェイに上る者達を羨み、一種の羨望と共に『あやかろう』としているのでしょうか」
「おねーちゃんはどんなこえがすき」
「私もこれまでに幾つかのダストエリアを訪れました。それに比してもここは陰鬱で、救済を必要としている……それもこれも、全ては空に架かる橋の所為ではないでしょうか」
狭い空、濁った空気、人の気配も、何もかもが陰に埋もれている。
ノイズが走る。
揺れる銀光の混じった青い髪の下で、サマエルの赤き瞳が無機質に向く。視線の先では幾人ものダストエリア住民と見える人々が往来をつくり、雑貨ながらに露店商を営む姿もあれば子供たちがスクラップをサイバネ工房らしき小屋に運び込んで行く姿もあった。
一見すればそれらは普通の街並み──おおよそダストエリアやスラム街にしては平和なものに見えるだろう。
「ああ」
選べなかった者が行き着いた場所、生まれついての日陰者は未来に期待などしない。
未来無き彼等は道標を欲しているのだ。だから高架下の陰に住み着くしかなかったし、汚染された黒い雨を凌ぐ事に精一杯で何も考えられない、ただの骸になろうとしている。
一刻も早く救わなければならない、と彼女は思った。
「おねーちゃん」
ノイズが走る。
「──……【ヤルダバオート・プログラム】、起動」
折り畳まれていた物が弾かれるように広がるサマエルの翼。
青く光る電脳空間の残滓を散らし、彼女の頭上に浮かんでいた天使の輪から一瞬で波紋が翼と共に拡がって行く。
不可視のそのユーベルコードは彼女の示す領域内の法則を書き換え、彼女の価値観に基づいた救済をもたらすのだ。
(今回は規模が不明瞭でしたが、少し歩いてある程度は把握出来ました。数ブロック先の
集落も含めこのハイウェイ周辺一帯に展開すれば────?)
ふと、そこでサマエルは思考に掛かっていたノイズが止んだことに気付いたのだった。
●偽りの種子
──サマエルが発動させたUCが限定的に世界の法則を書き換え、ダストエリアに変化をもたらした。
ハイウェイ周辺に点在していた
集落のあちこちに設置されたブルーライトの街灯が青白く街並みを照らし出し、サイバネ工房やスクラップ処理場から子供たちが沢山の機器や食糧を抱えて自らの住む家に持ち帰って行く姿が見えるようになっていた。
陰のあった表情に灯る笑顔。
そして、大人達はといえば集落の広場にこぞって集まり互いに何かを見せびらかし合っている。
「見ろよこれ! このマシンなら何処へだって行ける!」
「いったい誰がこんな大量の物資を寄越したんだ……『ヤルダバオート・C』なんて見た事ないメーカーだぞ」
「そんなのはどうだっていい! やった! 俺達はこれでこんな所から出て行けるぞ!」
そこでもやはりペースト系の食糧や企業名が存在しない医療薬品を持ち寄る者達がいて、その隣では新しい義足を片手に持ちバイクに寄り掛かる者がいた。
生活必需品だけでなく高架下に居着くしか出来なかった者達のもとへ、小型のバイクや機械化義体の機動力系パーツが重点的に現れたのだ。
サマエルが定義した範囲内に生活拠点を置いていた者達は突然の施しに目を丸くしては動揺こそしていたものの、それでもなお得た物の『価値』によって無視できる様だった。
そこへ少女は歩いて行く。
彼等は、天からの施しではなく同じ地に堕ちた者を受け入れ易い事を彼女は知っていたから。
「私はあなたたちを救いに来たのです」
幼くも妖艶に聴こえる声が静かにダストエリアの住民達に届く。
その声に振り返ったそこに現れた、サマエルという一目見れば分かる異物を前に彼等は思わず口を閉ざした。
「お聞きしたいことがあります。この周辺で最近、企業が送り込んだ殺人兵器に襲われる事件があったでしょう……詳しい情報を知る人物をここへ呼んで欲しいのです」
広げられた純白の翼が音も無く羽根を揺らす一方で電子の波紋を散らすその姿は、バーチャルキャラクターや電脳空間から出て来た存在であると示している。だが背丈や容姿こそ目立つもののそれ以上に注目される点はないはずだった。
しかし、既にそれはサマエル自身が示している。
『何が出来るのか』を充分に教えた彼女を前に、ダストエリアの住民たる大人たちはすぐに数人ほどその場から走り去って行く。
「まっ、待っててくれ! 呼んで来る! そこに、そこに居てくれ!!」
「キャンプの外の
小屋に企業兵器の残骸があるんだ! いま、持って来るよ!」
数分もしない内に、彼女の周りには多くの子供と女性が集まり住民達が囲んでいく。
この辺りのハイウェイを複数のエリアに分けて統率している頭目たちの存在。都市から流れて来たマフィアやヤクザを追い返しているハイウェイギャング、ハイウェイスターの人数。数日前に当該地区のハイウェイスター『アルファス』が巨大企業群のひとつである『デルタ社』からの依頼を受けていた事、襲撃事件があってから彼等は周辺の警戒に当たっていた事。
断片的で抽象的なものも多いが、それでも情報が集まって来た。
「……私の羽根には触れない事をおすすめします。お話を全て聞いてからなら構いませんが」
大勢の人が、サマエルを崇拝している声を上げたり吐き気を堪えながら大量の食糧を流し込んで『もっとください! もっとください!』と訴えて来る最中、彼女はそっと背後から翼に手を伸ばしていた子供たちに目を細めて囁いた。
そうするうちにやがて──広場へと先の走り去って行った者が数人戻って来る。
「天使サマ! なぁ、コイツだよ! コイツが急に第二ブロックの連中を襲って来たのを、ウチのボスがどうにか倒したんだ」
「ひっ! 例のバケモンじゃねえか!?」
「おい、確かそいつはトドメを刺さずに頭部の生体脳を生かしてるんだろ? 天使サマならそいつから情報を引き出せるんじゃねえか!」
数人が引きずり出して来たオブリビオンの残骸。
ボロボロになったそこには、戦闘痕以外にも無数の足蹴にされた跡や打撃痕が多く見られていた。
サマエルはそれに近付いて……同時に住民達がそこから距離を取った。
「────……ああ」
ああ、と彼女は思った。
そういえばこの辺りに来てから自身のそばで発生していた『ノイズ』が、気付けば消えていた。
「……それがあなたの救済に繋がったのなら」
サマエルの左手がジャケットの袖の奥からしゅるる、と出て来て指先に赤い電子の糸を伴いながら。オブリビオンの残骸へ手を伸ばす。
【神の悪意】によって物理的透過を用いながら左手を残骸の頭部に差し込んだサマエルは、ボロボロのパネルの内側からずるりと生体部位を取り出した。
何かの糸が切れる。
残された機械的な残骸部分が黒い残滓となって消えて行くのを声も出せずに見守る住民達。それを一瞥した天使の少女は手のひらに乗せた『意識部分のみ安楽死させられた生体脳』へと視線を落とす。
ふわり、ふわり、と。背にした翼から散り舞う白い羽根が電子の
歪みを生んで、開いた小さな穴にサマエルが生体脳を優しく注ぎ入れる様にして取り込んだ。
今度はノイズではなくはっきりとした声がその場で囁かれる。
『つれていっておねーちゃん、わたしのきゅうせいしゅさま』
何が起きているのかわからない住民達をよそに、サマエルはその声に無機質に応えた。
「そうですね……そろそろ行きましょう。
あなたが溶け切ってしまう前に」
ポツポツと、雨が降り始める。
濁った空から降り注ぐ汚染され黒く濁った雨だ。
口々に何事かを必死に言いながら、手にした物資以上の物を得ようと取りついて来るダストエリアの住民から興味を失ったようにサマエルが雨天の中へ飛び立った。
(グリモア猟兵が見たという予知の中にあった『雨』が降り始めた。複数のハイウェイスターの存在、警戒のために散ったハイウェイギャング……彼等に見つけられなかったその理由は)
飛翔する少女が向かうのは、集落から離れた高架橋の少ない位置。
雨に晒され続け土壌さえ汚染されつつあるエリアには人の気配がまるでない。
だが、それ以外なら。
「──見つけました」
選べない者達には見つけられない、選べる者だけが見つけられる場所。
そこに、オブリビオンの待機中継基地はあった。
大成功
🔵🔵🔵
木霊・ウタ
心情
どうも裏がありそうなカンジだけど
オブリビオンが命と未来を奪おうってんなら
お望み通り止めてやるぜ
行動
光あれば影あり
俺の影が立体的になって
文字通り影人間っぽい俺の姿になる
ハイウェイスターのリーダーを探す
スター達が屯っている所を探せば
そこにいるか
そいつらからリーダーの場所を聞き出す
素直じゃない時には
多少痛めつけることになるけど
頼んだぜ
見つけたら
爆炎跳躍で
上下入り乱れる複雑な地形も最短で移動
あんたがリーダーか
企業のメカに襲われたんだろ
それを解決する為に来た
巻き込まれて迷惑ってのはわかってるけど
このままだとアンタら殺されるぜ
ケツをまくって逃げ出すか?
それもアリだろう
やり合うだけが能じゃないし
ハイウェイスターなら逃げ切れるかもな
けどダストエリアに住む皆がターゲットだ
全員を逃す手立ても時間も足らない
ここはあんたらの居場所なんだろ
俺たちが手を貸す
奴らを追い出すんだ
中継基地がある筈だ
最近出来たばかりの
そこを叩く
あんたらやダストエリアの誰かなら
その場所の見当がつくんじゃないか
教えてくれ
●
──青白く照らし出す街灯が点々と出現する最中、黒い雨が降り始める。
灯し出された広大な廃棄場の輪郭を傍目に、浮き彫りになった高架下を往きながら木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)は頭上のハイウェイを見上げた。
「そろそろか」
サイバーザナドゥ普及のサポータージャケットを普段の装いに羽織っている彼は、腰元から流れて来る無線端末の声に耳を傾けていた。
ノイズが混ざった音。
そこでは味方猟兵たちがこぞって
高架橋運搬用幹線道路を駆け抜け、ハイウェイギャング達とレースに臨んでいる様子が伺える。
高架橋を伝う走行音と振動、それをウタが察しながら仲間からの報告を頼りにタイミングを合わせる。ユーベルコードを発動する、その機会を。
瞳から瞬いて揺れ落ちた赤い光がウタの首筋を伝い落ちる。
──ザン、と何かが衣服の下で走った。
燻ぶる火種の如く、青年の右腕に巻かれた黒布から火の粉が散って炎が瞬く。
息吹のように吐き出された火の粉が彼の足元で蠢き、地面を這い回った後。僅かな焔の残滓が映し出した影絵をなぞる様に輪郭を描き出し始めたのだ。
音も無く浮き上がったその立体は映像とは明確に異なる質量を持って、ウタの背後に全く同じ背格好を模した姿となって立ち上がる。
「
高架線内側を任せる」
「──……」
ウタの指示に返答は無い。代わりに、背後から飛び立った『影』が軽快な動作と共に高架橋へと駆け上がって行った。
影の追跡者──数あるウタのユーベルコードの中でも追跡時に用いる能力だ。
五感を共有している『影』が黒い雨の降りしきる視界の中、幾つかの道路を飛び越えて向かう先を高速で走り抜ける一団を発見する。
猟兵達とレースに興じているハイウェイギャング達だ。
黒い影の分身が煤めいた残滓を軌跡に残し、高速マシンで駆け抜ける一団に追随する速度で追いかけて行く。
その視界、僅かにダブった五感を傍目にしながら。本体と呼べるウタ自身もまた高架橋へと跳躍していった。
ジュゥ! と鳴り響く『骸の海』含み汚染された黒い雨を焼く音。
「こんな土地に、メガコーポは何を求めて来たんだろうな」
ジャケットの下から燕尾の如く伸びる金色の焔。雨に曝されようとも衰えない猛火を背にして飛翔して来たウタは、雨の音を掻き消さんばかりのマシンによる爆音を背にしながら呟いた。
高架橋の上から見渡せる景色。そこに在るのはサイバーザナドゥの都市部に比べれば捨て置かれたも同然とよく分かる、貧しいスラムとジャンクの山が築いた迷宮である。
何も無いとは言わない。
そこに人が住める土地があるのならば、多様な見識を以てすればどんな場所だろうと一定の価値を埋めるのだろう。ましてや巨大企業群に並ぶ存在ならきっとそうだ。
だが、分かり易く金のかかった大量のオブリビオンを投入してまで手にしたい物があるとは、猟兵としての視点を持ったウタにも想像が難しかった。
つまりこれは、裏がある。
「……時間はまだあるか」
どうにも裏がある感じだと理解しながら、しかしそこにオブリビオンが罪無き人々の命と未来を奪おうとしているのなら──……やはり自分のやる事は変わらないとウタは思う。
「ヒャッハー!! いいぜ、イイぜぇッ! デッドヒートだァ──ッ!!」
「飛ばせ飛ばせぇ!」
「もう誰も俺達を止められねえぜーッ!!」
──半ばドップラー気味に通り過ぎ様に半狂乱に叫び散らかしていくハイウェイギャング達。
彼等の楽しそうな声が数瞬遅れてやって来たマシンの爆音と、猟兵達のユーベルコードによって掻き消されて行くのを一瞥しながら。ウタが一度だけ軽く背伸びしながら背骨と首をコキリと鳴らして息を吐いた。
「お望み通り止めてやるぜ」
直後、高架橋を一条の炎が駆け出す。
誰に告げるでもなく吐き出した言葉を置き去りにして、彼は自らの生み出した『影』と共に二つのコース上を行く一団を追走し始めた。
……もっとも、彼はマシンに乗っていない。
従って彼等の興じている ❝レースに付き合う義理❞ は無いのだ。
────ロクな整備もされずにギャング達の暴走ルートに使われているハイウェイは所々に亀裂が入っている。
グォンと唸るエンジンと爆裂めいた炸裂音を奏でるマフラーに次いで、四輪駆動が火花と白煙を撒きながら半ば崩落してうねりあるカーブと化した道路を滑走する。下手にスピードを落とせば滑落し、あるいは後続車に衝突されて吹き飛ばされてしまうからだ。
続く猟兵達のマシンもそれぞれそうしたカーブを越える最中、後方から追いすがって来た『影』に何人が気づいただろうか。
「あぁ……ッ?!」
意外にも、人間大の人影が単独で道路を高速で駆け抜けながら追走して来る光景に最初に気付いたのは猟兵ではなくハイウェイギャングの一員だった。
バイクに跨りながらショットガンの銃口でガリガリと地面を削りながら車体を傾け、カーブをいなしている際、たまたま真横を一瞥した事でウタの放った追跡者に気付いた為だった。猟兵の反応が遅れたのは、そうした超人めいた存在が見せる光景は猟兵達にとっては殆ど見慣れた姿だったからだろう。
そして、ハイウェイギャングの一員が気づいたのをきっかけに周囲の猟兵達がコースに隙間を作る。車体を傾けたりインコースに滑り込む事で、ウタのユーベルコードが入り込む余地を与えたのだろう。
だがウタの『影』は軽やかに跳躍して黒煙めいた残滓を軌跡に、カーブの外へとアッサリ飛び出して行ってしまう。
音も無く退場したその様は、見ていたギャングの男達を拍子抜けさせるには充分だったろう。
そんな彼等が次に驚愕したのはその『影』を見失ってから暫しの間を置いた時だ、今度は廃ビルの並ぶコースに差し掛かった際に突如先頭集団の一角に頭上から人影が降って来たのである。
「ハァッ!? 飛び降りか……!」
「……ッ、いや違ェ……走ってやがる! ボディアーマーの類かと思ったが、ンだありゃァ!!」
難なく走り続けながらも、軽快な走行と周囲のマシンや車体を飛び移りながら移動する『影』の存在に男達が騒ぐ。
しかしそんなハイウェイギャング達に意にも介さず、トラック型のクルマにしがみつきながら周囲を見回した『影』は静かに頷いて見せた。
そして、僅かな煤を残して『影』は再び消えた。今度は完全に存在を消していた。
──見つけたのだ、目当ての人物を。
●
二つのグループに分かれながら、猟兵達とのレースに興じていたハイウェイギャングの頭目『アルファス』は自らの愛車であるカスタムバイクに跨り頭上に意識を向けた。
(……降って来たか、もうしばらくは気持ちの良いレースがしたかったもんだがな)
濛々と白煙を上げながら疾走するマシンの数々を背後に、アルファスはヘルメットの内部でバイザー越しの景色に溜息をひとつ吐き棄てる。
黒い雨だ。
ダストエリアはどこもかしこも『そう』だが、サイバーザナドゥにおいて満足な設備のあるメンテナンスを受けられない者や生体部位の多い者は必然的に短命となる。
早い話が、命を蝕む汚染物質からの影響をモロに受けるからだろう。実際のメカニズムはともかく、メガコーポの恩恵とは縁遠いアルファス達アウトローやダストエリア出身者は大抵そのように認識していた。
(クソったれのゴミ溜めの山を見下ろしながら風を切る。それが最高だってのによ)
冷たい、黒く濁った雨に長時間曝されれば──ハイウェイスターとも称されるアルファスといえど身体に障る。
レースはお開きにすべきだろう。
その終着はどうしたものかと、そこまで考えながらアルファスがバイクのアクセルを全開にして車体を振り乱す。バイクの後部から特殊機構によって弾き出されたナノマシンが残像を後ろに作り出し、追いすがって来た猟兵のクルマを相手に牽制していた。
戦闘機のフレアのような使い方の分身だった。
「はッ……! さて、さて、先ずは歓迎してやるよ何処のどちら様とも知れねえがな! 次に聞くぜ、なんだってウチの直近の事情に詳しい?
俺はクイズが嫌いだ、だから当てずっぽうに答えるが……つまりよォッ! テメェらがメガコーポの手下だってんなら辻褄も合うんじゃねえのかって事だ──!!」
カスタムバイクの分身を乱れ撃ちながら、ギャルン! と勢いよく回転してアルファスが叫ぶ。
その視線の先には、つい先ほどまでレースで競い合っていた猟兵のマシンではなく。どういうわけか全身から爆炎を燃え滾らせた青年が異常な速さで迫り来る光景があった。
強化人間。サイボーグ。超能力者。どんな呼び方でもいい、ウタのような存在を目にしたアルファスが脳裏にメガコーポの存在をチラつかせ警戒を露わにするには十分な理由があった。
一方で──金色の爆炎を奔らせながら跳躍して、時には廃ビルの壁面さえも蹴り砕きながら飛び移り、最短距離で常に距離を詰めに来ているウタは真っ直ぐに視線をアルファスに注いでいた。
「ッ……!」
咄嗟に銃を構えるアルファス。
「あんたがリーダーか?」
過ぎ行く廃ビルの一つから一気に飛び込んで来たウタが獄炎を右腕から揺らして、【焔摩天】の刀身を半身に沿わせて防御姿勢を取る。
猛然とアルファスのカスタムバイクが高速で回転しながら銃撃を撒いた後、体勢を立て直しながら加速する。
空中で幾つも散る火花を置き去りに、濡れた路面へ着地してからノーモーションで背部の炎翼を一度だけ羽ばたかせてから一直線に飛翔したウタがアルファスをついに追い抜く。
一瞬だけ追い抜かれた事でアルファスが悪態を吐きそうになるが、しかし次の瞬間には『それどころではない』と察して表情を強張らせた。
そう、単身生身で突入して追跡して来たウタにとってはこれはレースではない。
ガックン! と車体が跳ねる様に揺れたと思った直後、アルファスは車体後部にいつの間にか驚異的なバランス感覚で立っていたウタの姿に気付いた。
「……マジかよ、どんな化け物だ」
「もうこっちの話しは聞いてるかもしれないが、俺達はアンタ達の味方だ」
ヘルメット越しに聴こえるウタの声は、真剣なものだった。
──銃撃を防いだ、先ほどの大剣で切り裂かれれば絶命は免れない。そう考えたアルファスは手を挙げる代わりに降参の意を示すために口笛を吹いてから「参った」と答えた。
「……それで? 何をしに来た」
「企業のメカに襲われたんだろ、それを解決する為に来た」
「解決たぁ随分と事情通らしいじゃねえか。相手が何なのかは分かってるつもりだ、俺達は関係ないスタンスで居させて貰うぜ」
崩落した道路をカスタムバイクが飛び越え、車体と共にウタの身体が宙に浮く。
ドン、と。目にも止まらぬ爆炎を吹かせて自身ごとバイクを路面に縫い付ける様に着地させたウタから、莫大な熱量の残滓たる焔が散った。
「っ……」
有無を言わさぬまま、彼は続ける。
「巻き込まれて迷惑ってのはわかってるけど、このままだとアンタら殺されるぜ。
──今みたいにケツをまくって逃げ出すか?
それもアリだろう。やり合うだけが能じゃないし、ハイウェイスターなら逃げ切れるかもな」
バイクを走らせながら怒りを滲ませたアルファスがヘルメットの中で歯を食い縛る。
何も言い返さないのは、ウタが言わんとしている事を読み取ったからだ。
「けど、今回アンタらが相手しようとしてるメガコーポにとっては……ダストエリアに住む皆がターゲットだ。
相手はハイウェイスターを追い回す事を想定してる、俺達みたいな高速戦闘は得意の機体。きっとダストエリアの住民は逃げられない。それに全員を逃す手立ても時間も足らない」
ウタの言う言葉が全てだった。
ハイウェイを牛耳る一方で、弱いが故に独りでは生き延びられない彼等ハイウェイギャング『アルファスの一味』はダストエリアの住民を置いて我先にと逃げ出す訳にもいかなかった。
選ぶ立場ではないのだ。もう既にアルファス達は銃口でもナイフでも何でもいい、とにかく喉元に最悪を突き付けられ自らの生殺与奪の権を握られた状況に追い詰められていたのだ。
そんな彼等、アルファスを諭すようにウタが声を重く乗せる。
「ここはあんたらの居場所なんだろ、俺たちが手を貸す──奴らを追い出すんだ」
彼は言う。
選べないのなら、選べないなりの精一杯を掴めと。
「…………見ての通り俺達は掃き溜めに生きてる、借りを返せるほど潤っちゃいねーくらいには乾いてるぜ。どうしろって言うんだ?」
「ひび割れてたって、水を流せば固まるくらいには立派だろ? ──教えてくれればいいんだ、敵は中継基地をこのエリアに作ってる。
最近出来たばかりなんだ、そこを今から叩けばきっと間に合う。アンタらや住民の誰かなら、その場所の見当が付くんじゃないか?」
「中継基地? ──……そうか、あれはリサイクル系の。短時間の作戦仕様だってんなら…………ポイントは絞れる」
ウタの言葉を噛み締める様に聞き入って、それから──彼は静かに片手で仮想デバイスを操作して周辺一帯を模した簡易マップのデータを作成して見せた。
カスタムバイクが地面を半ば滑りながら速度を緩めて行く。
やがて車体が停止した時、アルファスはウタに数枚のマップデータを端末にまとめて渡した。
「手を借りても良いんだな?」
「返せない貸し借りになるくらいなら、これは借りじゃない……『協力』するよ」
マップデータを受け取ったウタはそう応えて、アルファスの前で力強く笑って見せたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『シェルタード』
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POW : AA-77『ヴァージンロード』
自身が戦闘不能となる事で、【内蔵ワイヤーを射出、拘束した】敵1体に大ダメージを与える。【正気をキックさせられた生体脳が命乞い】を語ると更にダメージ増。
SPD : MIM-22『嫁入り道具』
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【マイクロミサイルポッド】から【無数の自動追尾ミサイル】を放つ。
WIZ : BW-5-IB『お手玉』
【脳波コントロール】によって、自身の装備する【追従型殺人ドローン編隊】を遠隔操作(限界距離はレベルの二乗m)しながら、自身も行動できる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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御門・ななお(サポート)
猫の魔喰者(モンスターイーター)×力持ち、10歳の男です。
普段の口調は「男性的(俺、呼び捨て、だ、だぜ、だな、だよな?)」、年上には「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
●
──黒い雨が降りしきる中、ダストエリアの一画に建設されていた中継基地を猟兵達が次々に発見する。
雨に濡れていくジャンクの山。
汚染された環境ゆえにダストエリアの住民は近寄らないその場所に、トライアングル社のエンブレムが刻まれた企業兵器【シェルタード】の集団が起動されていた。
猟兵とて、得手不得手というものがある。基地を取り囲む誰かがその気配を敵に感知されてしまう事は間々あることだった。
反重力による高速機動で飛行、疾走するシェルタードが列を成してダストエリアに散って行こうとする。
黒い雨に混じり気配を溶かした猟兵を索敵に走り始めた敵、そんな彼等の前に現れたのは──瓦礫の上にちょこんと座る一匹の『猫』である。
「ぅぅう……なーぉう」
鳴いた。
その毛並みは柔らかな丸みを帯びた茶白。
茶トラの尾を濡らすイエネコ然とした様は紛れも無く猫である。
ゆえに──シェルタードは索敵センサーで彼を捉えた後、その場を素通りしようとした。
「……うぉーぁ」
とにかく意外であるが、しかしその場でシェルタードの通過を許さなかったのはセーフ判定が下されたばかりの猫自身であった。
心なしか低めの声音で鳴いて見せた茶白猫が瓦礫の上からたんっ、と跳躍した直後。頭上に伸びていた傾いた電柱らしき石柱を足場に軽やかに蹴りつけ、柔らかな毛並みを一瞬だけ逆立ててからクルンと宙返りしながら小さな前足の肉球を眼下にまで迫ったシェルタードの頭頂部めがけて振り下ろした。
【────!?】
刹那に奔る衝撃が茶白猫の一撃を受けたシェルタードの視界を明滅させる。
落石、あるいは瓦礫の崩落にでも巻き込まれたかのような重さ。ダメージそのものは特筆するほどではないにせよ、無視できないのはセンサー類が捉えた衝撃の出所が体高わずか25.4cmの小動物から繰り出された猫パンチという事実である。
濁った水溜まりにシェルタードの機体が叩きつけられて一度跳ねた後、交戦モードに突入した周囲の機体も高速で飛翔しながら茶白猫を囲もうとする。
「なぁーぉぅ!」
威嚇の一鳴き。
次いで、初撃を見舞ったシェルタードを回し蹴りのように反転しながら後ろ両足で蹴り上げ。機体が浮いた隙間に滑り込んだ茶白猫──猟兵『御門・ななお(くいしんぼうばんざい・f41883)』が凹凸激しい機体の一部をがぶっとして勢いよく振り回した。
周囲に集まって来ていた他の敵に衝突させ、振り回した勢いそのままに瓦礫の山へと投げ放ち突っ込んでしまう。
雨に濡れて大変不服だったのだが、意外とフワフワ浮いてる敵が吹っ飛びやすいと少し楽しみを見出しつつあった猫ななおは軽く身震いして、泥水を跳ね落としながら駆けて行く。
「うるる、なーおぉ……!」
(意訳:さっきオレの事見てるやつがサカナ缶もってたなー、これ終わったら貰いに行こ!)
猟兵達が戦闘を開始する。
──その先陣を切ったのは、一匹の『猫』だった。
成功
🔵🔵🔴
佐藤・和鏡子
敵の速度と数がかなり厄介なので、出足を潰して他の方の攻撃の起点を作ろうと思います。
具体的には敵の放つワイヤーを運転技術を駆使して躱し、その勢いを使って救急車(停止のユーベルコードにより運転技術とV8エンジンの馬力で超加速した武器)で体当たりを行い敵をスピンさせて停止させます。(運転で狙いを付けて重量攻撃で威力をさらにアップ)
ビリアードのように吹き飛ばした敵をさらに他の敵にぶつけるなどしてできるだけ多くの敵を巻き込んで停止させます。(吹き飛ばしでより遠くまで飛ばし、範囲攻撃でさらに巻き込みます)
一部の特殊な訓練を受けたドライバーしか使えないピットマニューバ、体感していってくださいね。
●
──黒い雨の中を突っ切る、一台の救急車がマフラーから重低音を響かせる。
ガラス面を伝う濁った雫をワイパーブレードが拭い落とすそばから、瞬く汚染された雨粒の奥に見据える光景を前に、
佐藤・
和鏡子(リトルナース・f12005)はハンドルを切った。
ほとんど座席に縫い付けるかのようにキツく締められたシートベルトに自身を委ね、彼女の主観で車外前方の景色が一回転する。
黒煙を僅かに揺らして転がっていたオブリビオン、『シェルタード』の残骸をサイドウィリーで踏み台に──車体を横転気味に飛ばす事で前方から一直線に襲って来た一条の
鉄線を躱してみせたのだ。
「よい──しょ、っと……!」
車内に響き渡る『ガリガリ』と摩擦する金属音。
紙一重、救急車の
装甲を掠った鉄線が高速で引き戻されて大元のシェルタードの機体に収納されていくのが見えた。
内臓されているあのワイヤーには先端部に磁石を兼ねた小型アンカーがある、直撃した場合にどんな効果があるかは容易く想像できる。
ズウン、と重い衝撃に揺らされるもアクセルを踏む足はそのままに、和鏡子はハンドルを片手に握り締めながら手元の操作盤に手先を走らせる。
着地から息吐く暇も無く、ドリフト走行で振り回した車体後部の角でガキンッ! と何かを弾き飛ばす。
──続くハンドル操作、無茶苦茶な慣性が乗った救急車の向きを正した直後に、二機のシェルタードの間を抜けた和鏡子が座席そばにぶら下げていた無線機を操作して定型文を送信する。
──……決め手は任せる、それだけのメッセージだった。
「その出足、潰させて貰います」
和鏡子がハンドルを切る。
其処はダストエリアに点在する
キャンプにほど近い高架橋、彼女が真っ先に対応したのは仲間からの通信で事前に知らされていた居住区に繋がるルートであり、予想通り進行しようとしていたオブリビオン達と遭遇した所だった。
じきに後続の猟兵達が彼女の元へと追いつくだろう、既に別のポイントでは中継基地を中心に戦闘が巻き起こっているのだから。
それまで敵の足を止める──その思考にEnterを打って。
【────『Qgpxhw』】
【──『Qgpxhw』】
ハイウェイを駆け抜けて来るシェルタードの集団が、二機の敵を掻い潜った和鏡子の後ろから迫って来る。
飛び交う暗号化された広域音声が不気味に木霊する一方で、和鏡子の乗る救急車の後輪が空転して雨で濡れた路面をギャルルル! と激しく唸らせ、蒸気めいた白煙が立ち昇る。
追い抜かれていたシェルタード達も挟撃のために旋回している。
そして、周囲からマイクロミサイルが放たれるのを合図に──和鏡子は一気に発進と同時に超加速させた。
正面の二機を相手にハンドルを切り、初撃のミサイルを蛇行回避でさばいた後。続くワイヤー射出攻撃に対して、遭遇時に見せた時と違いドリフトで滑走しながら左右の車窓を開け、運転席を通過させてやり過ごす。
黒い雨の粒が車内で散る刹那、和鏡子が片手でハンドルを切り旋回しながら車窓を閉じて、ワイヤーが敵の元へ戻る前に救急車の車体で巻き込んでシェルタードの体勢を大きく崩してやった。
【──!?】
高速で発進したのと同時に、音速の壁を破った速度を維持しながらの超機動──あり得ないものを目にしたシェルタードからエラーが発される。
バキン、とワイヤーが巻き込まれた救急車の方から切断音が鳴り響く中、直後に重低音響かせるエンジンの唸りに次ぐ突撃によって鼻先を体当たりされたシェルタードが吹き飛び、ハイウェイそばの半壊したビルの側面に突っ込んで停止する。
ギャルルッッ──!!
ハイウェイで無数のマイクロミサイルが爆発する最中、和鏡子が駆る救急車がその車体を超加速させながらに制御して、他の敵機にも体当たりを見舞ってみせる。
「────そこです」
大型車両が暴れるには狭いはずの戦場で、真正面から超加速したまま突っ込んで来る相手に混乱するシェルタード。
そこへ突き刺さる救急車。
ガッコォン! と衝撃が雨粒を吹き飛ばした直後に二機目のオブリビオンが勢いよくスピンしながら吹っ飛んでいく。
半ば浮遊していた事が災いしたか、制御を失った機体はミサイルポッドから少量ながら誤爆を撒き散らして後続のシェルタードの集団に和鏡子が意図した通りに突っ込んで、数機を巻き込んで機能停止に追い込まれていく。
白煙を散らし、吹き荒ぶ雨風を切り裂きながら──車体の状態をそれとなく車内のモニターで確認した和鏡子がさらにハンドルを切る。
高速で体当たりを繰り出す救急車両が火花と衝撃を散らし、猛然とドリフトしながら翻弄してくる相手に攻めあぐねる企業兵器たち。
半ば混戦に持ち込みながら凄まじい勢いで車体を正確に敵にぶつけ、和鏡子が誇るピットマニューバーが成す
業によって次々にシェルタード達が互いをビリヤードの如く衝突し合い、巨大企業群が想定していた高速機動を奪われて散り散りになる。
連携を奪い、兵器としての強みを奪う事で挫いたアドは彼女の──猟兵達にとっての有利となる。
「──後は任せましたよ、皆さん」
小さな体から大きく息を吐き出し、和鏡子の声が無線を通して味方へと伝わっていく。
大成功
🔵🔵🔵
サン・ローゼンベルク(サポート)
口調:女性的(私、あなた、呼び捨て、なの、よ、なのね、なのよね?)
考えるよりも先に身体が動くタイプで、自分がこうだと思った事を中々曲げない頑固者。
人が好きな故に人助けをしている感じです。
基本の戦いはウィザードブルームで飛びつつ【Gradius Fantasm】や【Graceful Rose Rain】を使い舞うように戦います。
ユーベルコードは基本的には使える物は全部使いますが、血統覚醒は余程じゃないと使いません。
後はおまかせします!
政木・朱鞠(サポート)
確かに集団相手の対応は厄介だけど悩む時間が勿体ないし、困っている人をほったらかしにしてたら、あっと言う間に未来が過去に喰い潰され無いように、今は目の前のターゲットを倒すことに集中しないとね…。
死ぬこと以外はかすり傷とまでは言わないけど、ここで退くわけには行かないよね。
戦闘
相手は多勢…手数で押し負けないようにしないとね。
武器は拷問具『荊野鎖』をチョイスして、『咎力封じ』を使用して動きを封じて、【鎧砕き】や【鎧無視攻撃】の技能を使い【傷口をえぐる】でダメージを与える戦法を取ろうかな。
アドリブ連帯歓迎
●
黒い雨が降りしきる最中、ハイウェイの周囲で衝撃音が連続する。
濛々と立ち昇る白煙や黒煙はそのまま、オブリビオンの残骸ないしは敵『シェルタード』の機体がそこに在る事を、敵味方双方に報せていた。
──高架橋を爆走する救急車が高速ドリフトで弾き飛ばしたシェルタードが吹き飛ぶ。
轟く衝撃に次いで廃ビルから爆発が起きる。
しかし中継基地から次々に起動したシェルタードが飛び立ち、交戦する猟兵達の元へと殺到しつつあった。
「“忍法”────!」
救急車が旋回する隙を狙うシェルタードの集団が迫る中、降り注ぐ黒い雨に混ざって上空から蒼い『狐火』がシェルタードを急襲する。
意志を持つかの如く飛翔して降り注いだ狐火は的確にオブリビオン達のセンサー部位や頭部カメラ、機体を打ち抜いて機動性を殺して。直後、瞬く間に四方から飛来した『鎖』がシェルタード達をその場に縫い付けてしまった。
ドリフト旋回しながらエンジン音を響かせていた救急車の内部に、無線越しの声が入る。
『──……ではこちらはお任せします』
「ええ、後は前衛が片付けるわ。そちらは他のルートを進行中の勢力の足止めをお願い」
シェルタードの内臓ミサイルポッドが開口しようとするのを、ギシギシと金属音掻き鳴らして“イバラ”を模した鎖が引き締まって閉ざし黙らせる。
雨に濡れた狐耳がヒクン、と揺れ動く。
片耳に装着された通信機から『了解』と返答があった後、改造された救急車がハイウェイを駆け抜けて行く様を政木・朱鞠(狐龍の姫忍・f00521)が横目で見届けた。
【────】
ガシュン、と雨粒を引き裂いて空気の壁を貫いた音が鳴り響く。
去り行く味方へ視線を移したのを見ていたか、その隙を逃さなかったシェルタードの一機が頭部ブレードのそばに内蔵されたアンカーを射出したのだ。
「意外と泥臭い戦い方をする……使われているのは単純なAIではなく、移植された頭脳というのは本当みたいね」
シェルタードから返答は無い。
当たり前のようで、しかしその根底にある規格というものの闇の深さに、朱鞠は溜息を漏らした。
(会話の余地、いいえそもそも戦闘以外での無駄な機能を廃された兵器。手心を加える意図は元より無かったけれど──)
ビシィッ──!!
──高架橋を一度だけ強烈な振動が奔ったのと、朱鞠が【荊野鎖】による拘束を解かれたと察知したのは同時。
音も無く朱鞠が身を翻しながら幾つかの火花を散らし、シェルタード達からの攻撃を弾いた直後。拘束に絡めていた鎖が『軸』としていた高架橋自体が崩落する。
シェルタード達は反重力装置を利用した飛翔機体である。オブリビオン達は落下せず、そのまま急加速して、身に纏う様に引き寄せた鎖と共に空中を舞う朱鞠へとミサイルポッドを開口させて発射しながら突貫した。
無数の白煙の軌跡が走った直後に紅蓮が連続する。
跳躍で揺れる金色の髪。
黒い雨混じりの粉塵と瓦礫がダストエリアの地上へ降り注ぐ中、朱鞠が鎖を一閃させる。瞬く金属音、射出されたワイヤーを荊野鎖で弾いた彼女が廃ビルや飛来して来た瓦礫を足場に三次元機動を描いて飛び交う。
「──お楽しみはそこまでよ」
粉塵のカーテンが赤黒い宝剣によって引き裂かれる。
「合わせるわ」
逸早く味方のユーベルコードを読み取った朱鞠が波打つ荊野鎖を操り、数体のシェルタードを捕縛して一瞬だけ縫い留める。
その鎖を沿う様に伝い流した狐火が機体を包み込んで焼く一方、その頭上から一直線に降り注いで来た赤黒い宝剣──UC【
グラディウスファンタズム】がシェルタード達を串刺しにして破壊してみせた。
黒い雨に紛れて上空に配置された『魔法剣』が不気味に切先を地上に向ける。
朱鞠が後ろへ飛び退いた直後、その場へ次々に飛翔する赤黒い魔法剣がオブリビオン達を襲い始める。
「お疲れ様、そっちはもう終わったの?」
「……人員が足りてる様だったから、こっちに来てみたの。隣いいかしら」
「もちろん」
朱鞠が退いた先で、まるで蜃気楼が浮かび上がるように姿を現したのは氷雪の様に透き通った白い肌、真っ赤に揺れる瞳を宿したダンピールの乙女。
サン・ローゼンベルク(雪原の太陽・f40044)が悠然と立ち並び、黒い雨を降らせている空に向かって手を伸ばした。
幾何学模様に展開した赤黒い魔法剣がそれぞれ飛翔しながら刃を打ち鳴らし、上空からけたたましい金属を掻き鳴らす。
響き渡る警鐘を、宣戦布告として受け取った増援のシェルタード達がミサイルを降らせながら包囲しようとする。だがそのマイクロミサイルの弾幕は
サン達に到達する前に、飛来した魔法剣による迎撃によって一発残らず撃ち落とされた。
爆砕を切り裂いた刃の行方は疑う余地も無く。
サン・ローゼンベルクの揮った掌に従い斉射された魔法剣が怒涛の雨と化して振り注ぎ、朱鞠の荊野鎖と狐火がシェルタードを足止めしたそばから射貫き爆散させていくのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
木霊・ウタ
他者との連携OK
心情
メガコーポやオブリビオンに
命の灯と
命が創り出していく未来の輝きを
消されてたまるか
ダストエリアを
ここに住む皆と
皆の居場所を守り抜くぜ
戦闘
殺戮兵器にあちこち行かれたら厄介だ
全機、いや人間の成れの果てか
全員すぐに海へ還す
迦楼羅を炎翼として顕現
空中戦だ
振りかぶった焔摩天に炎を溜め
一拍の後に振り下ろし
紅蓮の衝撃波を放つ
何体かを撃墜・融解させたり
うねる熱風で錐揉み状にさせた中を
不死鳥の如き音を轟かせながら突っ切り
勢いのまま吹き飛ばしたり
突撃して機体を融解させ穴をあけたり
焔摩天で両断したりしながら
無尽に翔け
空に爆発の花を咲かせていく
無理やりオビリビオンにされちまって
可哀想に
あんたらも犠牲者だ
元へ戻してやれなくて悪ぃ
せめて海へ還してやる
ドローン編隊もおんなじだ
高熱や熱波で
溶かしたり爆発させたり
オーバーヒートで操作不良にさせて無力化
あらかた片付けたら
基地そのものを叩こうとするぜ
事後
…鎮魂曲はお預けみたいだな
ちょいと待っていてくれ
すぐだ
●雨天に見合う者
──ハイウェイ周辺にて展開されていた中継基地の幾つかが襲撃され、オブリビオン率いるメガコーポ側もいよいよ本気になろうとしていた。
突如現れた猟兵達を第三勢力ではなく、ダストエリアに隠れ住んでいるハイウェイギャングに与する者達として認識する事で、まずはその敵勢力の後方を打つ動きに入っていたのだ。
スラムや
キャンプを襲撃すれば、猟兵達の統率や連携が乱れると判断したのだろう。
「……という流れになる筈だったんだが、な」
「シェルタードの全機起動を確認済みです。戦況は一見して五分ですが、損耗率に関するデータ収集率にエラーが起きていますね、恐らくは状況判断プログラムが自身の状態を把握するよりも早く撃破されているのでしょう」
「……奥の手はどうなっている? なぜアレをさっさと出さない」
黒い雨に打たれながら、ハイウェイそばに佇んでいたビルの屋上で白と黒のバイザーデバイスを被ったスーツ姿の男達が会話している。
淡々とされる話の中で確かにあったのは、困惑だ。
丁寧な口調で話す白いヘルメット型のデバイスの男は苛立ちを隠せずにいる黒いバイザーの男に、諭すように答えた。
「襲撃者の情報を送信した時点から、シムラ上級社員が敵のシェルタードとの交戦を観戦するために主戦力の投入にストップをかけているのです。
その後の反応を見るに、どうやらシムラ上級社員は本作戦におけるイレギュラーの介入を予見していたようですね。さて、一体どこから湧いたのやら」
「……分かっているのか? 奥の手とて最強の兵器ではない、シェルタードが全機撃破されたとなれば後手に回った所で敗北は必至だぞ」
「シムラ上級社員に社内プロジェクトにおけるレベル3の指揮権が有るので、まぁ我々に火の粉は降りかからないでしょうが……企画の失態は自身の立場を死に近付けるようなものの筈。かの新参者は何を考えているのか……わかりませんね」
男達がそこで会話を切る。
雨に濡れているスーツが内側から『バツン』と弾けて降り積もった水滴を弾いた後、黒と白のヘルメット型の頭部デバイスをゆっくりと背後に回す。
廃ビルの屋上から見える景色は、闘争の中で見る火花や破壊の狼煙ばかり。そんな彼等の視界が移った先には、ダストエリアの外に見えるサイバーザナドゥ都市部の光と、そして自分達が搭乗して来ていた輸送機があった。
「────
巨大企業群の連中か、アンタ達」
輸送機がある、その手前に。
黒々と燃ゆる炎を右腕から垂れ流しながら歩み寄る一人の青年が、スーツの男達に声を掛けて来ていた。
白と黒のバイザーが動く。
──この状況で都合よく青年が迷い人な訳が無い。
「逃げますよ」
「……了解だ、チッ」
白いバイザーの男が立体映像で展開したキーボードへ指先を走らせる一方、青年の手に真紅の大剣が金色の焔と共に握られる。
衝撃波と熱風が吹き荒れようとしたその瞬間。黒いバイザーの男がスーツの背中を突き破って露出させた機械仕掛けの『翼』を羽ばたかせ、無数の羽根を模した
苦無を自分達の正面足元へばら撒いた。
それが何か、敵の行動を理解するよりもまず「焼き尽くす」と判断した青年が同じく背部から金色の焔を噴出させて、加速と同時に距離を詰める。だがその強襲は間に合わず、寸前で男達の足元にばら撒かれた羽根型の苦無が爆発を連続させ瞬いた閃光によって一時的に見失ってしまった。
瞬時に爆炎を切り裂く大剣。
ビュオッ、と風を切った先には──雨降る景色が広がる空間に残された一筋の『裂け目』が閉じる瞬間が映るのみだった。
「逃げられたのか……」
鮮やかな手際で逃走されてしまった事に僅かに歯噛みしながら、しかし眼前に拡がる光景に意識をすぐに戻す。
燃え盛る炎を纏った大剣【焔摩天】を手に、背中の炎翼を開いて飛翔した木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)が背後に残されていたメガコーポの物と思しき輸送機を爆炎で吹き飛ばしてから、一直線にハイウェイへと行く。
「こんな所で高みの見物を決め込んでいた奴等に──メガコーポやオブリビオンに、命の灯と命が創り出していく未来の輝きを消されてたまるか……!」
●
『迦楼羅』を炎翼として顕現させたウタは爆炎による加速で飛翔しながら、敵集団を眼下に
大剣を握り締める。
黒い雨を蒸発させながら飛行する彼の周囲で白煙が尾を引く。その最中に薙ぎ払った真紅の刃が錐揉み状の焔を上空に描き出していた。
そのまま、加速を乗せたウタの焔摩天が大気を切り裂いた。
──そこから放たれたのは、蒸発させた黒い雨から『
かき集めた』汚染物質の粒子を斬撃に混ぜた黒き刃。
「ダストエリアに住む皆の……皆の居場所を、好きにはさせない──!」
放たれた黒き刃はまるで降りしきる雨に紛れて投下されたかのように、音も無く中継基地から出て来て間もないシェルタードの集団を直撃した。
ハイウェイさえ両断し、地面ごとオブリビオン達を切断した事で、眼下の地上で爆炎が連なるのが見える。
(……!)
ウタの焔摩天が、斬撃に引き寄せられるように一瞬だけ強烈な重さに傾いてしまう。
しかしそこから体勢を崩さずに、むしろ一気に急降下の姿勢に入った彼は大剣の切先を下方へ向け背部の『迦楼羅』を羽ばたかせて飛翔する。
猛火を滾らせながら一直線に突き刺さった焔摩天を中心に爆炎がドーム状に広がった中から、ウタが一歩踏み出して右腕の拳を握り締めて薙ぎ払う。地上を飛行していた一団が、マイクロミサイルのポッドから照準機能にエラーを生じた事で無残に撒き散らして爆散していった。
黒煙と熱が吹き荒ぶ最中で、僅かにウタの頬を液体が汚す。
「……無理やりオビリビオンにされちまって可哀想に。あんたらも犠牲者だ、元へ戻してやれなくて悪ぃ」
左腕で頬を拭った彼はそれが血液の類であると察し、燃えながらにして骸の海へと還って逝くオブリビオンの残骸を見下ろしながら『迦楼羅』を大きく広げて言った。
「せめて海へ還してやる」
その言葉に深い意味は無い。
彼にとっての鎮魂とは、一言で済ませられるものではないのだから。
そこで──黒い雨が降る曇天を震わせる、羽音にも似た振動をウタの耳が感じ取った。
シェルタードの集団は未だその数が多い。殺戮兵器である敵のオブリビオンを一機でも無力な市民の元へ通せば何が起きるかは明白、数で劣る猟兵であるウタ達にしてみれば厄介だ。
「一機、いや、あれは人間の成れの果てか。とにかく全員──すぐに海へ還す」
シェルタードのブレード型頭部に刺さった焔摩天を振り回しながら引き抜いたウタは、『拾った音』を追う様に飛翔する。
雨天へと舞い上がった紅蓮と金色の火花が文字通り瞬いた後、大気に衝撃波を残してオブリビオンの集団を追撃に向かう。嘶く不死鳥の如き炎の渦が叫びが、そのままウタの焔摩天の軌跡に応じて音を変えていく。
圧倒的な速度。
莫大にして膨大な熱量。
そんな炎弾とも言えるウタが一直線に距離を詰めた結果、シェルタードの集団はその進攻を止めて迎撃態勢に入った。
────ギュオォッッ!!
【──ッ!?】
ジェット噴射の如く爆炎を吹かせながら滑空して来たウタが、振りかぶった焔摩天を横薙ぎに一閃させる。直前に閃く真紅の輝き、警鐘を思わせる発光は彼がその握り締めた刀身に獄炎を溜めたが故である。
横薙ぎの一閃、その僅か一拍後に不死鳥が雄叫びを轟かせて回転しながら振り下ろした刃から、紅蓮の衝撃波が幾重にも連続して空中を奔る。
吹き飛ぶように撃墜されたシェルタードの残骸へ残心のようにウタが獄炎を放つ。その熱風の奥から、ワイヤーが射出されて彼の胸元や肩を貫き穿った事で鮮血が散る。
「無駄だ」
散った鮮血をまるで糧とするかのように、片腕で焔摩天を振り回して宙に舞う血飛沫を散らしたウタがその刀身を赤く染め上げて告げる。
直後にワイヤーを切り裂きながら背中の迦楼羅で背後のシェルタードを打ちのめし、機体表面を融解させ、一瞬の隙を衝いて加速したウタが焔摩天を走らせてミサイルポッドを切り飛ばしてからオブリビオンの機体を蹴り足で地上に落として見せた。
ジュゥゥ、と激しく揺れ動く水分が蒸発する音。
ウタの体躯が爆炎を背に獄炎を纏った大剣を切先に構えて飛翔する最中、周囲からけたたましい羽音が群がる。
小型のドローン兵器がシェルタード達から飛び立ったのだと、彼が瞬時に判断して。全方位に向けて焔摩天を奔らせながら高速で飛び回る。凄まじい三次元機動を維持しながらにしてうねる熱風で追走するドローンを翻弄しながら撃墜するウタは、さらにその勢いを維持したまま先ほどの『黒い炎斬』を再現すべく急加速した。
可能な限り加速を維持しながら、焔摩天でドローンやシェルタードを切り裂き薙ぎ払う傍らに、蒸発させた黒い雨から集めた粒子を獄炎と共に刃に帯びさせる。そしてそれを、一呼吸の間に放つ斬撃に乗せる。
──【ヴォイドブレーザー】。
黒い粒子を帯びた刃が音速の数倍に到達しながらにして放たれた事で、斬撃として高い破壊力を得た獄炎の一撃だった。
(……っ、と。技やユーベルコードに落とし込むには工夫が必要か)
黒き刃を放った事で生じる空間の歪みには、何か吸い込まれるような感覚があった。僅かに速度を落としながら頭を振ったウタは地上に刻んだ深い亀裂のような跡を一瞥してから、息を吐く。
無数の残骸を焼き尽くしながら、ウタが周囲の無力化を終えて辺り一帯を見回す。
中継基地には未だ戦っている仲間もいるようだが、既にグリモア猟兵によって次なる危機を示唆されている。
「……鎮魂曲はお預けみたいだな。ちょいと待っていてくれ、すぐだ」
ゆえに、ダストエリアの住民に差し迫った脅威がなくなった今。ウタは速やかに中継基地を叩こうと炎翼を羽ばたかせて飛んで行った。
眼下に広がる残骸の中から霧散していく黒い残滓。
還って逝くオブリビオン達に、“おくりびと”としての言葉を掛けながら。
◇
────そして彼が向かった中継基地から姿を現したのは、複数の人型兵器だった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『人型頭脳戦車T-DB』
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POW : 破壊の一撃
単純で重い【デスブレイド】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : デスランページ
【背部スラスター】から【プラズマジェット】を噴出しながら、レベル×5km/hで直進突撃する。2回まで方向転換可能。
WIZ : 高速学習型頭脳戦車
敵を狙う時間に比例して、攻撃力・命中率・必殺率が上昇する【戦闘データの蓄積】をして【刃の超高熱化】を武器に充填し続ける。攻擊すると解除。
👑11
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北条・優希斗(サポート)
『敵か』
『アンタの言う事は理解できる。だから俺は、殺してでも、アンタを止めるよ』
『遅いな』
左手に『蒼月』、右手に『月下美人』と言う二刀流を好んで戦う剣士です。
自らの過去を夢に見ることがあり、それを自身の罪の証と考えているため、過去に拘りと敬意を持っております。その為オブリビオンに思想や理想があればそれを聞き、自分なりの回答をしてから斬ります。
又、『夕顔』と呼ばれる糸で敵の同士討ちを誘ったり『月桂樹』による騙し討ちを行なったりと絡め手も使います。
一人称は『俺』、口調は年上には『敬語』、それ以外は『男性口調』です。
見切り、残像、ダッシュ等の機動性重視の回避型の戦い方をします。
シホ・エーデルワイス(サポート)
助太刀します!
人柄
普段は物静かで儚げな雰囲気ですが
戦闘時は仲間が活躍しやすい様
積極的に支援します
心情
仲間と力を合わせる事で
どんな困難にも乗り越えられると信じています
基本行動
味方や救助対象が危険に晒されたら身の危険を顧みず庇い
疲労を気にせず治療します
一見自殺行為に見える事もあるかもしれませんが
誰も悲しませたくないと思っており
UCや技能を駆使して生き残ろうとします
またUC【贖罪】により楽には死ねません
ですが
心配させない様
苦しくても明るく振る舞います
戦闘
味方がいれば回復と支援に専念します
攻撃は主に聖銃二丁を使用
戦後
オブリビオンに憎悪等は感じず
悪逆非道な敵でも倒したら
命を頂いた事に弔いの祈りを捧げます
●
──その兵器は
巨大企業群が権威の下に示す、力の象徴を目指した物だった。
今や多くの人間が企業なくしては『ヒトらしく生きる』事などあり得ないように、少なくともそう思わせるように、支配者達が作り上げたチカラとは人間を越えた所にある。
シェルタードが安価に編成できるようになった殺戮兵器ならば、その全高2m超の人型兵器はサイバーザナドゥにおける一級のデスブリンガー達を雇わずとも運用出来る、安価な傭兵を目指した物だ。
設計段階では机上論ながらに最強の白兵戦特化でアセンブルされ、こと相手が人型で尚且つ地上戦ならば無類の強さを誇るとされていた。
炎纏う大剣が人型兵器と切り結ぶ。
猟兵と対峙する無数の企業が奥の手、オブリビオン『人型頭脳戦車T-DB』は中継基地ごとに配置されていた様だ。
その数こそシェルタードほどではなくとも、単騎の戦力は
シェルタードよりも遥かに高い。
「……あの動き、どこかのデスブリンガーを元にしているのか」
黒い雨の中で二刀の刃を揺らす北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)が距離隔てた味方の戦闘を一瞥しながら、敵の動きを思い出す。
人型特有の可動範囲。
だが時折人外ならではの膂力や動きをして見せる人型頭脳戦車は、その設計思想の中に歪んだ意思を感じられる。
「人を出し抜きたかったのだろうが……飼われる場所を間違えたようだな」
人型兵器といえどオブリビオンである以上はシェルタードの事もある。内部にて機能している頭脳の一部に、人間が使われているのは想像に難くない。
「共に戦います、僅かではありますがダストエリアの住民の避難も出来ました。あとは中継基地に残されたオブリビオンを倒すだけです!」
「ああ……背中は任せたよ」
優希の背後に降り立つ銀髪碧眼の少女、シホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)が二丁の聖銃を構える。
────ドゴォッッ!!!
何処かの中継基地で轟く爆発音を合図に、優希斗達の対峙する基地から出て来た人型兵器が猛然と巨大剣を背から取り出して襲って来た。
背部ブラスターからプラズマジェットを吹かせて、砲弾のように突っ込んで来た人型兵器を相手に優希斗が二刀の剣閃を奮う。甲高い金属音と火花が散り、衝撃波が吹き付ける最中で残像が人型兵器の前後を行き交い、直後に振り抜かれた巨大剣が暴風を撒き散らす。
黒い雨粒が切り裂かれて周辺を叩く。
だが人型兵器が一撃見舞った刹那に優希斗が上体の関節部を的確に刺し貫き、頭部へと重い二刀による斬撃が叩き込まれ。その隙を縫うように後方からシホが魔弾を撃ち込んで。
閃く剣戟、加速した人型兵器からの鋭い斬撃の嵐を正面から左の『蒼月』でいなし、右の『月下美人』で優希斗が巨躯の動力部や関節を切りつけて動作を着実に削いでいく。
高速での打ち合いを支援するシホが、少しでも敵のセンサーをかく乱する意図で彼等の周囲を駆け回りながら射撃を繰り返していた。
「そこ……です、止まりなさい──!」
聖銃による連射を繰り返す最中に、優希斗が執拗に打ち込んでいた関節部やオブリビオンの阻害された動作の中に生じた『隙』を狙い、ユーベルコード【神すら束縛する咎人の鎖】を使って拘束する。
脚部と肩部に絡ませる様に展開されたシホの【魂鎖】は内部にまで食い込みながら、優希斗が作った隙を大きく抉じ開ける役目を担う。
「────斬る……!」
二刀の刃が冷たく光った瞬間、人型兵器がぎこちなく振りかぶった巨大剣が宙を裂いてる間に優希斗の姿が消え。直後に無数の斬撃と化してオブリビオンを襲った。
【────……ッ!】
ギシィ、と軋みを上げて悲鳴のように崩れ落ちる人型兵器。
ナノマシンらしき燐光が全身から漏れ出る様は、あたかも人がその身から鮮血を散らす様にも見えて。
それを見届けたシホが優希斗の隣でオブリビオンに祈りを捧げるのだった。
成功
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エジィルビーナ・ライアドノルト(サポート)
私はエジィルビーナ、エジィでもルビーでも好きに呼んでくれていいよ。
困ってる人がいるなら助けたいし、倒さなきゃいけない強い敵がいるなら全力で立ち向かわなきゃ。全力で頑張るからね!
実は近接戦闘以外はあんまり得意じゃないんだけど……あっ、畑仕事ならチェリから教えてもらったから、少しはわかるよ!
力仕事はそんなに得意じゃないけど、足りない分は気合と根性でカバーするから任せといて!
☆
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
イネス・オルティス(サポート)
『この鎧は一族伝統のものよ、それがどうかしたの?』
アックス&ウィザーズ辺境のどこかにある隠れ里に住む一族の女戦士
〔一族伝統の鎧〕のビキニアーマーを愛用し主に〔巨獣槍〕という槍を使う
”ダッシュ”で近づき”なぎ払い”、”串刺し”等をよく行う
ボン・キュ・ボンのナイススタイルで、ビキニアーマーを普段使いしている
恥ずかしさ耐性のあるイネスは、周りの視線を気にしません
そのビキニアーマー姿の存在感で、無意識に誘惑してしまう事がありますが
イネスにそのつもりはありません
アドリブ・絡み・可 ””内技能
描写はセクシーレベルまで
キャバリアには乗らず生身で戦います(他の人のキャバリアを足場にする等はあり)
●
「この先は皆が住んでるんだ、絶対に行かせるもんか────!」
轟音。
土砂を浴びながら、衝撃波に負けじと『紅玉』の石突を地に突き立てて踏ん張りその場に留まる赤髪の少女。
ダストエリアにほど近い高架橋の陰にあった中継基地、そこから出て来た『人型頭脳戦車T-DB』と対峙していたのはエジィルビーナ・ライアドノルト(シールドスピアの天誓騎士・f39095)だった。
デスブレイドと称される人型兵器の固有武装、巨大剣がその刃に鋼をも融解させる超高温を帯びて光らせる。だがその大剣が生む切れ味よりも恐ろしいのは単純な質量、人型兵器のインプットされたデスブリンガーの総合戦闘データに基づく白兵戦特化プログラムによって再現された動きにある。
「やぁッ!」
人型兵器が半身を引いて構えた直後に繰り出す逆手持ちの巨大剣による切り上げ。対するエジィルビーナが穂先を小刻みに奮い、盾槍による一瞬の弾き返しで軌道を反らしながら、懐に飛び込んで人型兵器の胴体に魔法を撃ち込む。
小規模の爆発めいた火炎が人型兵器を後方へ吹き飛ばし、退かせたのを機に呼吸を整え、黒い雨に打たれてずぶ濡れになった赤い髪を片手で掻き上げる。
「はぁっ……! はぁ、ッ! 少し疲れて来たかもー!」
あえて声を張り上げながら呼吸を不必要に落ち着かせ過ぎず、お腹に力を籠めて盾槍を振り回しながら構え直すエジィルビーナ。
吹き飛ばされて瓦礫に突っ込んだオブリビオンは、健在だ。とにかく硬い印象を受けた。
土砂を撒き散らしながら再度立ち上がった人型兵器がバチバチと機体から電流を鳴らし、ダメージを伺わせているものの、今一つ決め手を打ち込まないと決着は遠いように思えてしまった。
「……!」
──そこで、頭上から感じた気配にエジィルビーナがひくんとエルフ耳を跳ねた直後。
人型兵器が一直線に背部ブラスターからジェットを吹かせて突撃して来た瞬間、赤茶色の残像がズダンッ! と勢いよくエジィルビーナの前に降り立ち、身の丈に迫る槍を突き出してデスブレイドを弾き返して見せた。
ガィィンッ、と鳴り響く重い衝撃音。
「助太刀、構わないかしら?」
「……ありがとう! 行こう、一緒に!」
美しきビキニアーマーの女戦士が並び、エジィルビーナは頭一つ違う彼女と共に戦う意思を見せるように互いの穂先を構え並べて応じる。
光り輝くオーラを感じさせるそのビキニアーマーの持ち主、イネス・オルティス(隠れ里の女戦士・f06902)もまたそれに倣い槍を強く握る。
新手、だが相手が己との間合いを五分に出来る槍の使い手と分かると──人型兵器のデスブレイドを握る姿に変化が生じる。
二対一。
体格差に因らぬパワーの持ち主など、義体の種類に富んでるがゆえにサイバーザナドゥでは常識だ。女子供に見えるからと油断などもってのほか。『元』となったデスブリンガーがそうであったように、人型兵器もまた全力で臨むスタイルとなったのだ。
「行くわよ、どっちが強いか教えてあげましょう!」
「もっちろん、私達が勝つって分からせてやるんだから!」
人型兵器が背部のプラズマジェットを吹かせて突っ込んで来た瞬間、二つの穂先が同時に横薙ぎに振るわれた。
左右に薙ぎ払い、片やエジィルビーナが姿勢を低くしながら踏み込み。片やイネスが薙ぎ払いの勢いに持ってかれずに力強く跳躍して『巨獣槍』を突き出す。
デスブレイドが初撃の薙ぎ払いに弾かれた人型兵器は、すぐさま半身を翻すと共に超重量の巨躯から繰り出した回し蹴りでエジィルビーナの槍の突き上げを打って逸らす。片腕が肩部から回転して、デスブレイドが振り回されるのと同時に背部ジェットで浮き、跳び膝蹴りめいた足蹴でイネスの突きを弾き上げた。
「──解き放ち、突き穿つ……はぁッ!」
【────!!】
刹那、眩い閃光と共にイネスが一瞬だけビキニアーマーのオーラを強めながら巨獣槍を人型兵器に突き刺した直後。
エジィルビーナのユーベルコードで強靭と化して強力になった盾槍が人型兵器の装甲を貫き、イネスと共に上下からオブリビオンを刺し貫いて破壊したのだった。
成功
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宙音・ナナシ(サポート)
基本戦術は、・・・集団戦の時と同じかな・・・。仲間を守ることを中心に真正面からぶつかって格闘技で攻めていくよ。
どちらかといえばタイマンのほうが好みだね。
相手の攻撃にも臆したりはしないし、攻撃チャンスを作れそうなら相手の攻撃を避けずに、踏ん張って反撃に繋げてみたり・・・。
こんな戦い方してるから、痛撃を多く受けることもあるけど・・・、私は耐久力には自身があるからちゃんと耐えて反撃できるはずだよ・・・!
遠距離攻撃はやや苦手だけど・・・耐久戦しているうちに攻略できる場合もあるから絶対に諦めないよ!
ツッコミは任せて。
アドリブ、絡み、連携、お色気展開、何でもOK。
全会原・タイガ(サポート)
『やってやらぁ!』
人間のゴッドハンド×バーバリアン
口調:ぶっきらぼう(オレ、アンタ、だ、だぜ、だな、だよな?)
呪いで女性の体になった不良男子です。荒々しい性格ですが曲がったことが嫌いで困っている人がいれば迷わず助け悪には怯まず立ち向かいます。
豊満な自分の体型を気にしており、からかわれたりすると怒ります。
戦闘は武器を持たず自らの肉体と呪いの力で発動するユーベルコードで戦います。
呪いの力によって発動する一部のUCは本人の意思とは無関係に発動してしまうことが多く、追い詰められてヤケクソになった時を除き肉体に変化が起きたら驚いたり恥ずかしがったりします。
シリアス、ギャグ、お色気、アドリブ連携何でもOK
●
────上空を一条の爆炎が奔った直後、とある中継基地で爆発が巻き起こる。
ダストエリアの各所で始まったメガコーポとの戦闘は徐々に終結を迎えつつある中、
巨大企業群がその矛先を無辜の市民に向けていた事もあり、油断出来ない状況が続いていた。
猟兵達がそれぞれ掴んだ敵の中継基地にてシェルタードを撃破し、次いで現れた強力な人型兵器を相手に善戦を続ける最中。全会原・タイガ(男は度胸!女でも度胸!・f23916)が受け持っていたエリアでは二体の人型兵器がハイウェイギャングと交戦していた。
基本的には猟兵達が相手しているが、しかしそれでも単騎で戦うには厄介な性能のオブリビオンである。ハイウェイギャングの人員を半ば庇いながら戦っていたタイガは、黒い雨に濡れたシャツの下で汗だくになりながら踏ん張っている状態だった。
「……泣き言もいってられないのは、分かってるんだけどよ。連戦に次ぐ連戦ってのは熱い反面普通にキツイよなァ……!」
躍り掛かって来る人型兵器を相手に一歩も退かず、タイガが拳で装甲に覆われた巨躯と正面から打ち合う。
デスブレイドの斬撃を紙一重で躱しては渾身のカウンターで打ち抜き、強撃に次ぐ連打でリーチと体力に優れたオブリビオン人型兵器を相手に怯ませ。側面から薙ぎ払われた別個体の人型兵器の攻撃を潜り抜け、雄叫びと同時に巨大剣の刀身を蹴り上げて弾く。
だがそうした戦い方では長く善戦させることは難しく、次第にタイガの身体には僅かなダメージが残っていく様だった。
「はぁ……はぁ……っ」
疲労が回って来たのか、少しずつ周囲に巡らせていた意識が散漫になって来る。
そうした中、突如。
タイガの周囲で銃撃していたハイウェイギャング達がどよめきを上げた。
「?」
男達の反応を見て訝しげに首を回したタイガが振り向いたそこには、シェルタードの残骸を片手に引きずりながら駆けて来た姿があった。
ブリーフィングで顔合わせはしていた小柄な銀髪碧眼の少女。
タイガと同じく肉弾戦を好む猟兵、宙音・ナナシ(異能改造体少女1st・f42852)だった。
「──お待たせ……隣の敵は、私が相手する」
シェルタードの残骸を人型兵器に目掛けて投げつけるナナシ。
投げつけられた物体を人型兵器のデスブレイドが一閃して火花が散る最中、頼もしい助っ人の参上にタイガが安堵して息を吐いた。
「タイマンじゃ長引いちまう、やるなら同時にだぜ」
「ん……それなら全力で行く?」
「ああ、そっちに合わせる。オレのユーベルコードはちょっと特殊で……って、ひゃぁああっ!? ちょ、今これかよぉ……っ!」
味方の参戦に安堵してしまったせいか、タイガが敵と睨み合いながらナナシと交わしていた作戦会議の途中。突然自らの胸元──だけに限らず、全身がみるみるうちに大きくなり、裂けた衣服が所々ビリビリと破けてしまう。
羞恥に髪色同様、まっかに耳を染めるタイガ。
だが同時に彼女が自身に宿した力もまた膨れ上がるのを感じていた。
そういう呪われた力なのだと、彼女がそう語ったのを見てナナシが小さく微笑む。
「……私も似たような物だから」
「えっ?」
ポツリと聴こえた声にタイガが聞き返すが、その返答を待つ暇はそれ以上無かった。
二体の人型兵器が背部のプラズマジェットを噴出させ、瞬時に砲弾の如く突撃して来たのと同時に。ナナシが地面を勢いよく殴りつけて土砂が爆発する。
黒い雨にぬかるんでいた泥がカーテンとなって人型兵器たちに被った事で、僅かな隙が生まれる。
そこへ飛び掛かる、二人の少女達の拳。
「しゃぁあ──!!」
羞恥に悶えそうになりながらも、ユーベルコード【
義岩貞津苦母泥】による恩恵で人型兵器とほぼ同等の体格となったタイガが全力の拳をデスブレイドに打ち込む。
鈍い衝撃が雨粒を吹き飛ばす。
瞬く間に体高2m超の人型兵器とタイガがそれぞれ互角の速度で殴り、切りつけ、刃と拳が幾度と交わっては火花と鮮血が散って互いに弾かれる。
その拮抗を終わらせたのは、タイガが一瞬だけ姿勢を低くした所へ飛び上がって来たナナシだ。デスブレイドの刀身を正面から肘打ちで弾いて逸らした後、しなやかに振り抜いた後ろ蹴りで人型兵器の頭部のカメラアイを叩き割って吹き飛ばしたのだ。
「やるなら、いま……!」
「っし、任せろ!!」
吹き飛んだ人型兵器を追う様に二人で跳んだ彼女たちは、泥を被っていた所から味方機の危機を察したもう一体の人型兵器へと距離を詰め、タイガが渾身の拳でデスブレイドを叩き落した直後にナナシの神速の水面蹴りで膝を砕いて地に膝を着かせた。
次いでタイガが膝蹴りで頭部を打ち上げ、阿吽の呼吸で合わせたナナシが掌底を叩き込んで胴体を通う動力回路を衝撃で破壊する。
瞬く間の連撃が決まり、凄まじい衝撃波に次いで人型兵器が爆散した。
「これで……トドメ……──!!」
爆風の中を突っ切るように駆け出したナナシが雨に濡れた地を蹴り、土砂を撒き散らしながら一直線に駆け抜ける。
少女の内を駆け巡る強化細胞。
奔り、漲る力のままに。ナナシが衣服をタイガのように散らしながら超加速して砲弾の如く人型兵器へと飛び掛かった。
────【神速・弧刃蹴】。
神速にして全力で繰り出す、超人が成す絶技。
人型兵器の装甲をひしゃげさせて蹴り砕き、千切り飛ばしてなお切り裂き、破壊し尽くしたナナシが勢いそのままに雨の下で着地した後。
戦いの終わりを告げるように吹き飛んだ人型兵器たちの爆散の音が、幾度と連続して響き渡ったのだった。
成功
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