万乳の盗賊退治～罪を憎んで乳を憎まず
「おう姉ちゃん。有り金置いてってもらおうか」
「ふむ？」
サムライエンパイア、とある宿場町近くの街道。武器を持った盗賊達に取り囲まれた双丘神・万乳（大一大万大乳・f25407）は、首を捻りながら相手を見回した。
「金がないならその乳を置いてってくれても良いんだぜぇ……？」
「ふぅむ。わしの乳に目を付けた事は、褒めてやっても良いのじゃが……おっと」
お頭らしき男がニヤニヤ笑いで手を伸ばしてくるが、それひらり、ひらりとかわし、あしらっていく。相手がムキになって掴みかかってくれば、半身で透かした挙げ句、乳ではたき込んで転ばせて。
「散々悪事を重ねて来たのじゃろう。ちょいと仕置きが必要じゃのう」
「ぐえっ……て、めぇ……ん？ な、なんだっ、うぉっ！？」
そして無造作に掌を向けると、そこから放たれる光が相手を包み込む。眩しさに目を閉じた盗賊達が、目を見開くと――お頭の姿はなく、代わりに大きな胸の美女が転がっていて。
「な、なんじゃこりゃあっ！？」
その美女は目を見開き、自分の姿を見下ろす。まるで自分の身体が、自分の身体でないかのような驚愕。
慌てて身体を起こそうとするものの、美女の乳房は万乳のそれよりも大きく、そして見た目以上に重い。立ち上がるのにすら難儀して、じたばたとうつ伏せのままもがく。
「て、てめぇ、戻しやがれっ！」
「……お、お頭？」
万乳に喰ってかかるその美女の様子に、遅ればせながら他の盗賊達も事態に気づく。その美女は万乳のユーベルコードによって、お頭が変身させられた姿だ。
何が起こったかとざわつく部下達に気づくと、お頭の顔が真っ赤に染まる。
「て、てめぇら、見るなっ！ 見るんじゃねぇ……ん、ぁっ……！」
爆乳――いや、超乳美女に変えられ、立ち上がる事もできずにもがく姿に、威厳も何もあったものではない。
それどころか、乳が地面に擦れると変な声を上げてしまい、ますます羞恥に染まる顔。刺激自体はごくごく些細な物なのだが、男であるなら決して有りえぬ刺激のせいで、どうしても声が漏れてしまって。
「と、とにかくっ、んっ、戻せぇっ……」
「その胸は自身の心が悪に染まっているほど重くなるのじゃ」
こちらを懸命に見上げ睨むお頭に、万乳は厳かな表情で告げる。まさしくそれは、乳のお告げを告げる伝道師が如く。
「つまり、心を入れ替えて世のため人のために尽くせば、次第に軽くなっていくぞい」
「ふざ、けんなっ、殺すっ……ぐええっ！？」
もちろんお頭は、そんな言葉では納得しない。だが、怒りと殺意を露わにすれば、ますます胸が重くなり、地面にめり込んでしまう。
さながら土下座でもするような格好のお頭を見下ろし、やれやれと首を振って。そして万乳は、周囲の盗賊達に視線を向け直す。
「安心せい。罰を受けるのはおぬし一人ではないぞ？」
「ひっ
……！？」
あまりの状況に立ち尽くしていた盗賊達が、視線を向けられ我に帰る。彼らは引き攣った声を漏らし、慌てて逃げ出そうとするが……当然逃がすつもりはなく、その背に光を浴びせていく万乳。
「ひぃっ、お、俺の身体がぁっ！」
「む、胸が重……た、立てねぇ……！」
あちらこちらから上がる、阿鼻叫喚の悲鳴。恐怖に青ざめ、羞恥に赤くなり、懸命にもがく盗賊達。
やはり胸が重く、まったく立ち上がれない。全ての相手が地面に這い蹲ったのを見下ろしながら、やれやれと首を振って嘆く。
「全く、どいつもこいつも、邪心に満ちておるのう。一人ぐらいは立てんのか」
「ひ、ひぃぃ……化け物ぉ……ん、ひぅ……」
もはや万乳に対する恐怖すら覚え、這って逃げようとする盗賊達。だが当然、うつ伏せに這えば胸が擦れ、満足に前に進めない。
さりとて仰向けになれば、今度は重い胸が身体を抑えつけるので、動けない。何より、万乳にその胸を見下されるのが恥ずかしく……かと言って両腕で隠しきれる大きさではない。
「ひぃぃ……た、助けてくれぇ……」
「じゃから、心を入れ替えれば、軽くなっていくと言うておろうが」
諭すようにそう言って、やれやれと首を振る万乳。もっと彼らが本当に心を入れ替えられるかどうか、そこまでは万乳の関知する所ではない。まあ、彼らは盗賊として散々に罪を重ねて来たのだ。これだけの罰を受けても、文句を言える立場でもあるまい。いややっぱり、流石にこれは少しは文句言って良い気もするが。
――あと、軽くはなると説明したが、身体が男に戻るとは、一言も言っていない。
「汝に出ずるものは汝の乳に反る。その乳はおぬしらの、罪と徳の形じゃ」
伝道師としてそう告げた万乳は、身を翻した。背を向けても横から見える程の乳を揺らしながら、悠々と立ち去っていく。
「乳を以て貴しとなす、じゃ。精々、励むことじゃな」
――その後、宿場町周辺に盗賊が出る事はなくなった。代わりに人助けをする超乳美女の一団が現れるようになったとか、ならなかったとか。
成功
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