「緊急!!緊急指令です!」
何時にも増して慌てた様子のメリッサ・ファルマシーは、猟兵たちが集まったグリモアベースへ飛び込んできた。
「あぁ、集まっていますね!!!皆さん、た、大変ですぅ!」
はぁ、はぁ、と肩で息をしながらそう言い切り、少し息を整えてメリッサはまた話し出す。
「ワルシャワ条約機構はご存知でしょうかぁ?えぇ、ロシアの…そう、超大国。つまりはオブリビオンですぅ。
あそこは大きな一つの国ではなく、小さな国々の軍事同盟によりできた条約機構なんですぅ。ここまでは宜しいでしょうか?」
例えるなら、他の超大国が林檎や桃と言った果物だと考えると、ワルシャワ条約機構は房付の葡萄のような超大国と言えるだろう。房という同盟で繋がっているだけで、本質的には小さな粒の集合体なのだ。
「ワルシャワ条約機構のオブリビオン部分は中核やそれに近い一部の上層部だそうで、付き従う小国はオブリビオンではないんですぅ。
小国達はワルシャワ条約機構には逆らえないんですぅ。しかも、ワルシャワ条約機構は気まぐれに条約の改変や打切りを行うらしく、日々翻弄されて、裏切りに怯えながら過ごしているとかぁ。」
さながらトカゲの尻尾切りだ。ひどい話、上は遊び感覚らしい。
代わりは掃いて捨てるほどいるということか。
「そして、今回向う小国はワルシャワ条約機構に所属する…いえ、所属
していた国になりますぅ。
……えぇ、お察しのとおりです。この国は…裏切られましたぁ。」
暗い顔で、メリッサはうつむきながらそう言った。
戦時中ではさして珍しい状況ではないという事実もまた、悲痛なことだ。
「彼等は侵略行為や略奪行為を行いましたが、それもこれも全てワルシャワ条約機構による隷属的支配によるものですぅ。彼等は…あの六つの瞳から逃げる術を知らなかったのです。」
メリッサの言う六つの眼とは、
五卿六眼と呼ばれるロシア上空に浮かぶ監視目的の大呪術だ。
アレがある限り、こちらや小国達の動向は上層部に丸見えだ。裏切りが起きない、起こせない。圧政の証だった。
「彼等はまだ裏切りを知りません。切り捨てられた彼等の国には現在ワルシャワ条約機構の軍が行軍中ですぅ。急ぎ、救援に向かわなければいけません!」
市民をどうしようもない現状から救うのも、猟兵の役目だ。猟兵達は、思い思いの気持ちを胸に、出兵を覚悟したことだろう。
「説明が長くなりましたね。この作戦は急を要します。まず、猟兵の皆さんには小国に向かっていただきますぅ。そこで、小国のみなさんに協力を仰ぎ、行軍中のワルシャワ条約機構に応戦してくださぃ。
しかし、六つの眼のせいでこちらからの接触は筒抜けですから、行動は慎重かつ迅速にお願いしますぅ。」
こちらの行動は
五卿六眼により、監視されている。
それはつまり、隠密などは意味をなさない事を意味していた。
「あぁ、そうですぅ。あちらは雪の積もった極寒の地になりますぅ。ぜひとも風にはお気をつけて…御武運を祈りますぅ。
では、転送しますぅ。」
転送された大地は一面が白銀だった。積もる雪は優に20センチは超えていて、豪雪地帯と言っても過言ではなかった。
そんなぺんぺん草も生えないような場所でも、暮らしている者達が居た。
小国と言うにはあまりにも小さい、大きめの街のようなその場所が、今回救う、移民も多く住まう小国だった。
彼等は慎ましくも賑やかに、くらしを続けようとしていた。
それが叫びと硝煙に変わるか、明日も続いていくのか。
未来は君達に託された。
人参が嫌いな田中になりたい人
この猛暑続く夏、皆様いかがお過ごしでしょうか。
私は死んでいます。人参が食べたい田中になりたい人と申します。
今回は、こんな暑い日に雪の積もる豪雪地帯のシナリオとなります。わりと真面目に書きました。
……なんか、読みにくい気がしますが…まぁ、あの…フィーリングで、お願いします。
※このシナリオでは、モブを多く登場させて、現地住民との協力をテーマに執筆いたします。そういうのが苦手な方はご自衛下さい。
1章では現地住民の軍隊と接触し、協力を取り付け、武器の手入れとともに作戦を練って下さい。練ってねってねるねるねって感じですね!
2章ではコウモリ獣人の非人道的な爆撃兵が大群で襲ってきます。雪を活かしたり、爆発をうまく活かして一網打尽にしてやりましょう!
3章では、この小国の裏切りを決定したブタ将軍にヤキを入れていただきます。けちょんけちょんのヤキブタにしてやりましょう!
全章通して、現地住民との協力を入れていただけると、プレイングボーナスを贈呈いたします。
皆様のプレイングを楽しみにお待ちしております!
第1章 日常
『武装整備』
|
POW : 損傷した武装を修理する
SPD : 武装を改造し、新機能を搭載する
WIZ : 武装を点検し、状態を保つ
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四軒屋・綴
※なんでも歓迎
寒暖差ッ!これではととのってしまうなッ!!という訳で行き倒れた俺を助けてくれ綺麗な毛並みの軍人さんッ!!(キメ顔)
そんな訳で一宿一飯の恩義を返すとしようッ! ユーベルコードを発動し道や広場、民家の雪かきだッ!コートの余りとスコップはあるだろうかッ!?ショベル?うーむ……まぁ集めた雪は街の外周に固めて積んでおくぞッ!!
この降雪で雪の進軍もあるまい、武装として必要なのは『防壁』、そして対空火器の『陣地』。
雪を建材にすれば迷彩効果は充分、内部の加工と補強で急場凌ぎの物は出来上がる。
狙われたのはこの国だ、抗うも諦めるも自由だが…一宿一飯の恩義、返す権利を俺にくれないだろうか?
豪雪降り積もる白銀の大地に降り立った猟兵たち。
しかし、まぁ、転送前の気温は夏だったわけでして。
「寒暖差ッ!これではととのってしまうなッ!!」
寒暖差という最大の敵を前に四軒屋・綴は雪にその身を埋めていた。
「という訳で行き倒れた俺を助けてくれ綺麗な毛並みの軍人さんッ!!」
「えぇ…」
…猟兵なだけあって、元気なようだが。
急に現れて倒れた四軒屋に警戒したのか近寄ってきたのは熊の獣人の軍人は、思いっ切り(なんだコイツ…)のような瞳で四軒屋を見下ろしていた。
「……まぁ、見捨てるわけにはいかないか…」
そんなこんなで、四軒家は軍の駐屯地へと運ばれた。
「なる程…遂に…か。あぁ、もう終わりなのか…この国は。」
駐屯地、休憩室にて。
簡単なスープとパンを平らげた四軒家(どうやって食べてるのか謎だが
ワルシャワ条約機構の裏切りと進軍を伝えた。それを聞いた綺麗な毛並みの熊の軍人は、絶望しきったような顔をしていた。
「何をそこまで絶望しているんだッ!まだ終わったわけではなかろうッ!」
「いいや、終わりさ。そうやって潰れた国を何個も見た。……潰した国もな。」
「………」
暫く、静かな時間が流れた。
「食べ終えたのなら貴方は逃げるといい。どこでその情報を知ったのか知らないが、本当ならば、貴方は無関係だ。生き延びるための選択をしてくれ。」
苦虫を噛み潰したような顔をした軍人は、そう言い残して休憩室を出ようとする。
「いいやッ!俺はまだ一宿一飯の恩義を返していないのだからなッ!」
「……は?!」
そんな重苦しい雰囲気を壊すように、四軒屋は響く声で高らかにそんな事を言い出した。しっかりとポージングまで決めて。
「いやいや、話聞いてたか?危ないから逃げろってば。」
「一宿一飯の恩義を返さないわけにはいかないからなッ!!」
「聞けよ。というか、泊めてないぞ。一飯の恩義しかないぞ!」
四軒屋はそのままの勢いで表へと飛び出していった。
大雪が降ったあとのその街や訓練場は雪が深く積もっており、ざくりと足を踏み入れれば足の甲を覆い隠してしまいそうなほどだ。当に白銀の世界。
「『在・倍・列・車ッ!』さぁ!雪かきをするぞッ!!」
「「「「ジョキッ
!!」」」」
四軒屋のUBにより呼び出された133体もの分身が、白銀の訓練場に所狭しと現れた。
「軍人さんッ!コートのあまりとスコップはあるだろうかッ!?」
「あ…あぁ、あるぞ。スコップで雪かきする気か?ショベルじゃなくて?」
「ショベル?うーむ…まぁ大きい方を頂きたいッ!!」
きなりの事に戸惑いを隠せない熊の軍人だったが、四軒屋の声を聞き、指定のものを倉庫からたんまりと持ってきてくれた。
「ではッ!!雪かきッ!!開始だッ!」
それらを分身たちに装備させ、自身も
シャベル片手に雪をかき始めた。
彼らの働きは凄まじく、連携や各々の力強さもあり、みるみるうちに民家や道路から雪はなくなり、街をぐるりと取り囲むような雪壁が作り出されたのだった。
「なぁ!一体どういうことなんだ…!?なぜ急に雪かきなんか…進軍してきてるって話だろう?!」
「この降雪で雪の進軍もあるまい、武装として必要なのは『防壁』、そして対空火器の『陣地』。」
「…!!」
「雪を建材にすれば迷彩効果は充分、内部の加工と補強で急場凌ぎの物は出来上がる。」
「お前…まさか、諦めないっていうのか?ワルシャワ条約機構の進軍に対抗しようと…」
淡々と話し出す四軒屋の話は、どれも進軍に対抗し、街周辺や市街戦を想定するものだった。
「狙われたのはこの国だ、抗うも諦めるも自由だが…一宿一飯の恩義、返す権利を俺にくれないだろうか?」
「………だから、一泊はしてないだろ。
ああ、いいさ。私達に奇跡を魅せてくれ。」
二人は熱い握手を交わし、軍の到着に備えるのだった。
成功
🔵🔵🔴
バロメリアン・マルゴール
目的:現地民が戦う準備を整える
行動:軍と情報共有の後、市民を避難させる
まずはコミュ力を活かしてこの国の軍のトップに話を通そうか
系統だった指揮には上層部に話を通すのが一番だからね
サリュー、ムッシュー。オレは呼ばれた兵士でね
ここの偉い人って、誰か教えてくれるかい?
軍に現状を伝え協力を要請した後は、市民だね
人の多い場所で歌を披露し人目を惹きつけてから、告げよう
まもなく、ワルシャワの軍がココへやってくる
だが、恐れないでくれ、ムッシュ-
戦いは軍と、オレ達猟兵が引き受ける
そして、戦えぬものは広場や地下に纏まって隠れて欲しいんだ
絶望に染まらぬよう、歌に載せて人々へ情熱の光は届けた
さあ、ゲリラライブといこうか
音すら凍らせる真っ白な白銀の世界に降り立った猟兵たち。
そのうちの一人…バロメリアン・マルゴールは、その街の住民たちとの協力のため、その歩みを進めた。
ザクザクと歩むたびになる音が、コツコツという石畳と蹄の打ち合う音に変わった頃。
「何者だっ!?」
この街への来客は余程こなかったのだろう。街へ入った途端にバロメリアンに話しかけてきたのは屈強な熊の軍人だった。
警戒というより、こんなところに来た困惑が大半と言った様子だ。
バロメリアンは飄々とした様子で、軽い挨拶から入った。
「サリュー、ムッシュー。オレは呼ばれた兵士でねここの偉い人って、誰か教えてくれるかい?」
「呼ばれた兵士…?なぜそんなものが来る必要があるんだ?…まあ、いい。我が国のポリシーは来るもの拒まずだからな。」
頭にハテナを浮かべた軍人は、バロメリアンを軍の本部へと案内する。さほど頭は固くないお人好しのようだ。
「メルシー。恩に着るよ。」
話がトントン拍子に進んでいくようで、バロメリアンとしてはとても都合のよく進んでいく。
(…それにしても、警戒心なさすぎないかこの国。)
都合はいいけれど。なんて、思いながら、バロメリアンは案内に従う事にした。
随分あっさりと軍部の中央に案内されたバロメリアン。
なんだか本当にこの国が不安になってきた所で、最高司令官の執務室の門戸を叩いた。
出迎えたのは、屈強な、初老の髭の濃いクマの軍人だった。
「いらっしゃい、お客人。茶でも出せればいいのだがね。なにか用かね?」
「ボンジュール、ムッシュー。単刀直入に言おう。間もなく、ワルシャワの軍が攻めてくる。」
「ほう…それで?我々にただ絶望を届けに来たのですかな?」
初老の軍人はその言葉に一瞬目を丸め、すぐに訝しむようにそう答えた。
「まさか!オレ達はそれを伝えて、なおかつそのまま支援するためにここに来たのさ。
どうか、我々に支援させてはもらえないだろうか。」
バロメリアンはまっすぐとした横長瞳孔の瞳を真摯に向けていた。その目を見れば、嘘などは気配もない。
「…冗談ではない…のか。ああ、遂にか。
喜んでその話を受けよう。こちらこそ、よろしく頼みたい。」
蹄の手と熊の手の握手はどうにもうまく行かないけれど。そんなものじゃないだろう?握手ってのは。
そうして、軍部との協力を取り付けたバロメリアンは、次の対象だとばかりに国の一番広い広場へとやってきた。
物珍しい外の客ということもあり、なんだなんだと見物人はそれなりに集まってきた。
バロメリアンは持参した無線式スタンドマイクにしっかりと声を乗せ、優しげな声色で、語りかけるように話しだした。
「みんな、聞いてくれ。まもなく、ワルシャワの軍がココへやってくる」
その声を聞いて、どれだけの人の顔が絶望に落ちたか。
それもそうだ。それは、つまり死刑宣告と同義なのだから。
「だが、恐れないでくれ、ムッシュ-。戦いは軍と、オレ達猟兵が引き受ける。」
どこからか、軽快なメロディラインがきこえてくる。しかし、それは情熱を持ったバロメリアンの声すら不安げに耳に入れるような民衆には聞こえなかった。
「そして、戦えぬものは広場や地下に纏まって隠れて欲しいんだ。」
ああ、でも、ほら、見えるだろう?冷たい白さの白銀の世界に、音を届けた暖かい毛皮を纏う希望の光が。
「さぁ!ゲリラライブと洒落込もうか!一曲目は…『m'aider』」
自由への道の第一歩は、軽やかな歌声とともに進められた。
大成功
🔵🔵🔵
エドゥアルト・ルーデル
拙者が本当の世界大戦を教えてやる
現地民でも野良軍人でもいてもいいが対空射撃はとにかく火器の数が必要ですぞ
足りねぇよなぁ!そんな訳でUCで創造つくって遊ぼ!軍用機召喚!こいつは拙者の世界のどこぞの国の戦略爆撃機でござる
大戦時は防御火器をわんさか積んでたんでござるよ…なのでお前ら!こいつからどんどん機銃と装甲板引っぺがして即席の対空砲座をこさえるんだヨ!
後は訓練でござるな!という訳で召喚しておきましたJu87でござる
どうよこの素敵な爆撃機は…アカを刈り獲る形をしてるでござろう?
拙者乗り込んで上飛ぶから拙者に向かって対空射撃の練習するんでござるよ!え?射撃が甘かったらマジで爆弾落とすけど???
白に視界が支配されるような白銀の大地に降り立った猟兵達。寒暖差にやられる者も多い中、エドゥワルド・ルーデルは街に介入を始めていた。
「拙者が本当の世界大戦を教えてやる」
軍は懐疑的でありつつも、賛成するお人好しな軍人達により、猟兵への協力がゆっくりと着実に取り付けられていた。
そして、エドゥワルドに協力しようと集まった数人の軍人たちは、軍の広い屋外演習場にてエドゥワルドを迎えていた。
「ようこそ。我が国へ。我が国の危機を教えてくれた貴殿らのために、我々が手伝える事ならば進んでしよう。」
気のいい笑顔で出迎えてくれたのは軍帽で耳が隠れた階梯5の、なんの獣人だかわからないような男の軍人だった。
「早速だが、対空射撃はとにかく火器の数が必要ですぞ。」
この国に行軍しているのはコウモリ獣人による爆撃兵隊。つまり、相手は飛んでいる。
しかし、この国の対空設備はあまり良いものとは言えなかった。
これも、ワルシャワ条約機構の上層への有効打を潰すため、ワルシャワ条約機構により制限されていた事柄の一つだった。
威力は対人のためあまり気にしなくても良いが、問題はその量。
両手で数えるほどしかないこの国の対空設備は、軍隊を相手取るにはあまりにも心許ない。
そう、圧倒的足りない。
「足りねぇよなぁ!そんな訳でUCで創造つくって遊ぼ!軍用機召喚!
Aerial warfare!」
突如としてそう言い放ったエドゥワルドの背後には、一瞬の内に彼のUBにより召喚…否、この場合創られたというべきか。軍用航空機がそこにはあった。
「素晴らしい機体ですね。しかし、これをどう…?」
軍帽の軍人が声をかける。
「こいつは拙者の世界のどこぞの国の戦略爆撃機でござる。
大戦時は防御火器をわんさか積んでたんでござるよ…なのでお前ら!こいつからどんどん機銃と装甲板引っぺがして即席の対空砲座をこさえるんだヨ!」
「えっ…?!ええっ?!」
「さっさとするでござる!」
「サ、サーイエッサー!」
突如召喚された異国の機体を解体しろと言われれば、まぁ、誰だって戸惑うというわけで。
困惑したような顔で、軍人たちはエドゥワルドの指示の元、航空機の装備から対空装備をせっせと組み立てたのだった。
「後は訓練でござるな!という訳で召喚しておきましたJu87でござる」
ババーンと効果音がなる幻聴を聞くような登場をしたのは、ドイツ空軍の航空機、Ju87である。
「どうよこの素敵な爆撃機は…アカを刈り獲る形をしてるでござろう?」
「アカ…?」
…あんまり獣人戦線の獣人にそういうジョークは聞きにくいらしい。
「拙者乗り込んで上飛ぶから拙者に向かって対空射撃の練習するんでござるよ!」
「ええ!そんな的扱いなんてさせられませんよ。お客様に。ほかになにか…玉をなるべく逸らせるように…」
「え?射撃が甘かったらマジで爆弾落とすけど???」
マジ顔のエドゥワルドに、軍人たちは(コレは本物だな…)と覚悟を決め、来るべき戦いのための訓練に臨むのだった。
コレが、エドゥワルドの言う本物の世界大戦を教える。に当てはまったのかは知らないが。
軍人たちの顔つきはエドゥワルドの指導前より格段に良くなったのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ラスカル・ノース
なんか、寒い地方は感覚的に生まれた場所(カナダ)を思い出すんだぜ。
あの2人(ブラジルのアマゾン出身のカワウソ&マダガスカル出身のキツネザル)は今の暑さはへっちゃらだろうが、この寒さに放り込まれたらギャーギャーわめくだろうぜ。
というわけで、オレっちがやってきたぜ!
てめぇら、手助けに来たぜ!
暖房の調整したり機械の整備手伝ったり武器の整備したりさせていただくぜ!
相手が機械でなきゃ、まだどうにか出来るぜ!
これが対空砲台か、来る敵次第で使うぜ!
地面に降り積もった雪は踏みしめられて固くなりただの氷へと成り下がっていく。
真夏の猛暑が続く世界からやってきた猟兵達は、何も人だけではない。
喋るアライグマである、ラスカル・ノースはそのロシアの寒さに、感覚的に生まれ故郷であるカナダを思い出していたのだった。
ロシアとカナダは最低気温に差はあれど、基本寒い国なのは変わらないのだ。
ラスカルはふと、知り合いの二人を思い出す。
アマゾン生まれのオオカワウソと、マダガスカル生まれのワオキツネザルの二人だ。
どちらもなかなかに暖かい熱帯地域の生まれのため、猛暑の続く夏の元の世界ならば快適だろう。
(でも、この寒さに放り込まれたらギャーギャーわめくだろうぜ。)
寒さに対する強さという面で言えば、アライグマであるラスカルのほうがよほど優れているのだ。
そんな取り留めのないような事を考えつつ、ラスカルは街へ急いだ。
実は、あまり時間もないのだ。
寒さの残る雪の街には、肉球の付いた足跡が断続的に続いていた。
「てめぇら、手助けに来たぜ!」
猟兵との協力体制を急ピッチながらに取り付けた軍内の、後方支援のための設備を調整している軍人たちが集まる部屋に飛び込むやいなや、てラスカルはそう言い放った。
「これはこれはアライグマの猟兵のお方ですね?今回はご協力誠にありがとうございます。」
「へへっ!いいってことよ!」
後方支援を行っている、軍事エンジニアのネズミの獣人の軍人がラスカルを出迎えた。
他の世界では物珍しい賢い動物も、この世界では獣人の0階梯と何ら変わりが無い姿であることにより、軍人には普通の獣人との見分けもついていないことだろう。
軍用設備のなかには、この寒さに対抗するための暖房や、現場との通信を安定させる通信機器。
なにより、対空砲や固定砲台といった、固定して使う砲台が準備されていた。
…しかし、ここの軍ではあまりそういった類のものは使わなかったようだ。軍事エンジニアはかなり調整に手間取っていた。
「オレっちに任せな!これくらい朝飯前だぜ。」
軍事エンジニアに許可を取り、ラスカルが工具を持ち出してガチャガチャと調整を始める。
なんということだろうか。あんなに手間取っていたのが嘘のように滑らかに設備達は動き出したのだ。
「す、素晴らしい機械技術ですね…さすがは猟兵さん。」
「へへ、それほどでもねぇぜ。」
困っていた軍事エンジニアに感謝をされて、少々照れたラスカル。
そんな彼の眼の前にあったのは、少し前に組み立てられた即席の対空設備ではなく、昔からこの国が保有する、旧式の対空砲だ。
あまり使われた痕跡もないその対空砲に、ラスカルは興味を示したのだ。あまり、旧式の対空砲なんて見ないからだろう。
「これが対空砲台か、来る敵次第で使うぜ!」
相手が機械でなければ、なるとかなるという自信を胸に。
ラスカルは軍用施設の調整をして回った。急な戦争に軍人たちはてんやわんやとしていたから、ラスカルは軍人に紛れて軍の機械的な調整を請け負った。
そんなラスカルは皆から感謝され、少々団欒とした交流がすすんだ。
しかし、忘れるな、と釘を差さんばかりに、行軍中の軍隊を発見したとの放送が入る。
その声を皮切りに、後方支援用の施設であるその場所にまで、氷とのように張り詰めた空気は辺り一帯を支配していたのだった。
成功
🔵🔵🔴
第2章 集団戦
『コウモリ爆撃兵』
|
POW : 無差別爆撃
戦場にレベル×5本の【焼夷弾】が降り注ぎ、敵味方の区別無く、より【多くの被害と死者が出る】対象を優先して攻撃する。
SPD : 反響定位
【超音波】を体内から放出している間、レベルm半径内で行われている全ての【攻撃】行動を感知する。
WIZ : 空飛ぶ悪魔
戦場内で「【助けて・死にたくない・怖い・熱い・神様】」と叫んだ対象全員の位置を把握し、任意の対象の元へ出現(テレポート)できる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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四軒屋・綴
※なんでも歓迎
幸守の名も此処に至れば冗句に過ぎないか。
防壁外、少し距離を取って布陣、いざとなれば戻れない距離ではない、それに……暴れるには少々手狭だなッ!
ユーベルコード発動ッ!第二の防衛ラインを構築しつつ対空設備を増やすッ!出発進行と行くぞッ!!
先ずは一発ッ!……当たらんな、航空機と違って『神経が通ったように』避けてくる。
だが
集音機付きの特製弾を打ち上げたことで反響定位に使われる超音波は解析完了ッ!
後は使用する砲弾から逆位相の超音波を放出させればジャミングとステルスの両立だッ!近接信管で叩き落とし尚動けるなら俺が叩くッ!
俺達の熱は充分以上、存分にととのっていけッ!!
バサバサと耳障りな羽音が連なり、空は黒に埋められた。
遠くに見えたその光景は、夜が来たかのようだが、そんな幻想的なものではない。
ピカリと光るのは、星なんてキレイなものでもない。
降り続く白い雪は、爆撃という名の残酷な雨にかわるのだ。
空を埋め尽くしたコウモリ爆撃兵の軍隊は、今当に、この国を殲滅しようとしていたのだった。
「
幸守の名も此処に至れば冗句に過ぎないか。」
四軒屋・綴はそれを防壁の外、いずれ戦場になるであろう場所にてそれを眺めた。
差し迫る危機の最中、四軒屋は至って冷静に状況を見て、初めの一手を考えていた。
(防壁外、少し距離を取って布陣、いざとなれば戻れない距離ではない、それに……)
「暴れるには少々手狭だなッ!『銃・砲・列・車ッ!!』」
四軒屋の声に呼応するように呼び出されたのは蒸気機関車型自走防壁。つまりは武装した蒸気機関車型の動く壁だ。
この位置の壁は雪で創られた防衛ラインよりも、外側の第二の防衛ラインとなる。
何より、この防壁には対空設備が多く備わっているのだ。随分とこの戦場にお誂え向きだろう。
国の軍人達もその防壁に乗り込み、戦いへの備えを固めていた。
「出発と行くぞッ!!」
白い雪に白い蒸気が浮かび上がり、ゆっくりと動き出した線路要らずの列車は、雪をその熱で溶かしながらスピードを上げてゆく。
先頭に佇む四軒屋は、コウモリの大群達を見つめながら、戦地へと至るであろう場所へ赴く。
数分もしない内に黒い雲のような塊は射程圏内に入った。
「発射ッ!!まずは一発だな!」
そして、四軒屋が予め発射準備を整えた対空砲をがその雲を穿つ。
しかし、その玉が当たることはなかった。
まるで
蜘蛛の子散らすように、穿った部分だけが不自然に雪空を見せていた。
それもそのはず、航空機のような鉄の塊とは違い、彼らは空を飛ぶ生身の獣人だ。ましてや、コウモリは鳥と違い、羽全体が手の構造となっている。そのため、空中でも回避能力が高い。
よほどの速度と正確性でなければ、ヒットすることすら厳しいだろう。しかし、それをわからぬ猟兵ではない。
今打ち上げられた対空砲には、とある仕掛けがあったのだ。
先程の砲撃は開戦の合図となり、防壁を目指し火薬の雨が降る。
しかし、移動を続ける防壁には当たらない。熱を蓄えたそのスピードは優に戦車や戦闘機を超えていた。
下でその光景を見ていた四軒屋は、とある軍人の報告を受けた。
「周波数の解析終わりました!いつでもいけます!」
「ご苦労様だッ!!」
先程打ち上げた対空砲の弾丸には、
集音器がとりつけられていたのだ。
コウモリは
反響定位により周囲を把握している事が多い。軍ならばなおさら状況把握のため利用していることだろう。
反響定位は自分自身が出す超音波の反響で周囲を把握している。
つまり、その周波数と逆位相の周波数を流せば…
「撃てッ!!」
その四軒屋の掛け声に合わせ、第二の砲撃が始まった。
その砲撃には先程解析が完了した周波数の逆位相の物を発するように加工がされている。
相手側の情報を邪魔する『ジャミング』とこちら側の動向を探らせない『ステルス』を同時に行う、四軒屋の奇策だったのだ。
そうして、混乱したコウモリ兵たちの中に、近接信管を打ち上げる。
すると、どうだろうか。先程打ち上げた際は一生当たる気のしなかったコウモリ兵たちは、その爆撃も落とせずとも逆に爆破されて、上空からボトボトと落ちてくるのだ。
しかし、地上に落とされても尚、戦意を失わない兵士が、この防壁へ未だ攻撃を諦めきれず突撃してくるのだ。
その、大きな体に内包された火薬の量から見るに、恐らく自爆でもされたら被害は免れない。
「俺が叩くッ!!」
その異変にいち早く気づいたのも、それにいち早く反応したのも、四軒屋だった。
四軒屋は片手に獲物を構え、防壁を飛び出して行く。
「俺達の熱は充分以上、存分にととのっていけッ!!」
四軒屋の内包する蒸気機関により、その一撃は重くも熱い教師のような一撃だった。
高所から落ちて虫の息であるコウモリ兵達は、その最後の力を振るうことなく、その雪に埋もれていったのだった。
さしずめ、高温のサウナからの雪へのダイブといったところか。
そうして、その一角のコウモリ兵は姿を消したのだった。
大成功
🔵🔵🔵
バロメリアン・マルゴール
目的:敵の攻撃を他者から逸らす
行動:注目を集めつつ「音」を破壊する
相手は空飛ぶソナー持ちの兵士か
他の猟兵達の武器が有効に働くだろうね
オレは前線に出て、仲間と離れて行動するよ
観客の目がオレを向いてる間に、仕留めてくれ、頼むぜみんな!
と事前に現地兵達を鼓舞し頼んでおくのさ
ここからはオレのライブの時間さ!
m'aider!
歌で敵の注目を集めるだけじゃなく
歌に合わせ敵の傍に直接アーティストフォースを顕現させて唐突に攻撃したり
超「音波」をオレの大きな歌声でかき消すことも試みるよ
こちらへの爆撃は、光の魔術壁で受け流すぜ
多少喰らっても立ち上がるのを見せて勝者のカリスマで仲間を奮起させ
彼らが敵を倒す時間を稼ごう
真っ白い雪に影が落ち、黒い影が空を覆い尽くす。
黒いコウモリの大群の襲撃は、今、始まったのだった。
「相手は空飛ぶソナー持ちの兵士か……」
バロメリアン・マルゴールはその目でその大群の接近を目視し、ゲリラライブを一区切りとし、急いで前線へと向かった。
前線は既にコウモリの爆撃兵により落とされた焼夷弾などの爆撃により、莫大な被害を受けていた。雪が溶ける事で火の手が回ることは無いが、対空砲や戦車は一部原型を留めていないものまである有り様だ。街や森に火の魔の手がかかるのも時間の問題であろう。
しかし、バロメリアンは前線の中の最前線、いの一番に狙われるような開けた場所にひとりでに立ちはだかった。
「
観客の目がオレを向いてる間に、仕留めてくれ、頼むぜみんな!」
後方にいる仲間の猟兵や一般軍人に声をかけた。
「ここからはオレのライブの時間さ! 『m'aider!』」
手にした無線式のスタンドマイクから響く歌声。その鋭い歌声は、虹色の音符という戦場には似つかわしくないメルヘンな音符を生み出す。どこまでも届きそうなその声は、戦場中に響き渡った。
しかし、そんな目立つ行動に、敵軍が黙っているはずもなく、バロメリアンのその歌を止めようと進んでいったコウモリ兵すら引き返してバロメリアンに狙いを定めていた。
コウモリは音に敏感だ。大きな耳はエコーロケーションの為のものだが、それ以上にこの状況では音を拾いすぎてしまう。
「〜♪〜〜♪」
タンク役として、ヘイトなんて買いすぎても問題はない。むしろ歓迎するくらいだ。
我慢ならないと言った様子のコウモリ兵は空から急降下を行った。その体で、そのまま体当をして簡単に黙らせようとしたためだった。
バロメリアンの死角となる背中をめがけ、残り数秒で命中するという所。
「キキッ?!」
突如として現れたアーティストフォースにより、その体当は失敗に終わる。上空にも現れたソレは、バロメリアンの歌に合わせて攻撃を繰り返す。
羽に傷を負い、高度を落としたものや、攻撃を避けることに夢中になるコウモリ達などは他の猟兵達の的でしか無くなる。
しかし、的と言うには些か避けるのがうまい。
それもそのはず、コウモリはエコーロケーションという技術で超音波を介し、敵の攻撃を察知することができるからである。
……そう、超「音波」なのだ。
「音楽で負ける気は無いさ!」
キンと張り詰めた琴の様に、靭やかで鋭いその歌声は、コウモリの超音波をかき消すのに十分の声量と周波数を持っていた。
ただの旗振り役のように、鼓舞だけでは終わらず、敵の妨害、ヘイト管理をそつなくこなすバロメリアンは、戦場を有利に進める為に必要ならない存在になっている。
当に、勝利へと導く神様のように。
戦場には硝煙の香りが漂い、白い静寂の雪原なんて跡形もなくなっていた。雪はいつの間にか冷たさを失い、雪に埋もれて休んでいた短い草が、戦火に焼かれ燃えていた。
「キキィー!」
コウモリ特有の甲高い声がきこえ、バロメリアン目掛けてその爆弾を落とした。簡潔に始末しようとしたためだ。
「くっ……いや、まだまだ、こんな物で倒れないさ!」
バロメリアンはそれに対し、光の魔術により作られた壁と、激痛耐性で、その場に崩れ落ちることなく立っていた。
多少
体毛の端が焦げたが、そんな物どうだってことではない。
その後ろ姿は、誰よりもカリスマに満ち溢れていた。
戦場を明るく照らすそのカリスマという光は、溢れんばかりに煌めいていたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
エドゥアルト・ルーデル
ホント戦争は地獄だぜフゥ―ハハハァー!
という訳で飛んでる奴らの更に上からこんにちはでござる
また軍用機召喚ですぞ!次は戦闘機なBf109とか!ドンガメの爆撃部隊が護衛なしでいたらもう…ネ
パクパクですぞ!
ダイブ&ズームで頭を押さえるように上から圧をかけて対空陣地に追い込みでござるよ!オラッ必死こいて撃ち落としな!訓練しただろ!
空と地上とで挟み撃ちでござる、エアランド・バトルと行こうじゃないの
いいぞォ!逃げる奴は獣人だ!逃げない奴はよく訓練された獣人でござる!
地上に落ちて無力化した連中は…燃やそうぜ!おあつらえ向きに焼夷弾なんか持ってるし燃えやすくて丁度いいでござろう?
火をつけろ、生き残った者全てに
けたたましい銃声が鳴り響く戦場。既にコウモリ兵の侵攻が始まっているその場所は、雪原なんて跡形もなく、火事と赤い海に覆われていた。
空は黒い影が光を通さぬ程に敷き詰められ、地上はそんな地獄のような有り様。
「ホント戦争は地獄だぜフゥ―ハハハァー!」
そんな地獄の中、高らかに笑う男が一人。(自称)歴戦の軍人、エドゥアルド・ルーデルだった。
空を覆い尽くすほどのコウモリ兵達は、飛び交う対空砲にその数を少々減らしながらも、未だに数え切れないほどの数を有していた。
エドゥアルドはそんなコウモリ兵達にどう対抗するのか。
下からねらう?いいや、ひと思いにドッカーン?いやいや。
「
Luftflotte!!上からこんにちはでござる!」
答えは、『更に上空から攻撃する』だ。
今回エドゥアルドが呼び出した機体はBf109。バチバチの世界大戦時に使用された戦闘機であり、その重さにしては薄く小さい翼が特徴的な機体である。
エドゥアルドは機体に乗り込み、離陸をするとすぐに急上昇する。コウモリ兵もただ傍観するだけではないが、旋回能力に優れたBf109はエドゥアルドを乗せて、あっという間にコウモリが飛行する高度の上まで到達した。
コウモリ達は旋回や攻撃力、旋回能力に優れはするものの、獣人に色々と着せている状態なのだ。そりゃ遅いはずである。
そのせいで固い装甲も護衛もなしに襲ってくる割にはとてつもなく遅い。
「パクパクですぞ!」
どこかのお嬢様みたいな事を言いながら、エドゥアルドは戦闘機を自身の手足のように扱いながら、ダイブ&ズームでコウモリたちへ圧をかけ、地上へ追い込む。
コウモリ兵達はあくまでも爆撃兵だ。上方向への攻撃手段など無きに等しく、エドゥアルド操る航空機の圧に負け、下へと追い込まれていく。
そして、その追い込まれたコウモリ兵たちを下からの対空砲が打抜く。
エドゥアルドとの訓練の成果がこの短期間で発見されたかは不明だが、追い込まれた獲物を打つだけの簡単なお仕事だ。
勿論、上からも射撃され、地上と上空、どちらからも攻撃を受け、挟み撃ちの形となった。
「いいぞォ!逃げる奴は獣人だ!逃げない奴はよく訓練された獣人でござる!」
さながらその姿は追い込み漁にかかる魚の群れのようだった。
対空砲が空を切り、戦闘機が機関銃をぶっ放す。
そんな危険なものにサンドイッチされてしまったコウモリ達は次々と、先程とは比べ物にならないくらいのスピード感で撃破され、ボトボトと地上へと落ちてゆく。
黒い影はみるみるうちに減っていき、キィキィというコウモリのいやに甲高い鳴き声が戦場には響き渡った。
コウモリ達が落とした焼夷弾による火災は、皮肉にもコウモリ自身がその体で蓋をして鎮火することになったのだ。
空が見えてきた。きれいな、綺麗な青い空だ。
コウモリ兵の大半は落ちた時に致命傷を負い、そのまま死んでゆく。しかし、ただ単に皮膜を破られ落ちた死にぞこないが結構な確率で存在していた。
飛べない豚は何とやらというが、飛べないコウモリに価値はない。
このまま這いつくばって大人しくしてくれるならいいが、軍人なんて特攻思想を持っていてもおかしいことではない。
空の敵を殲滅しきったエドゥアルドは航空機から降り、コウモリが落ちきった戦場を一瞥し、なにやらいいことを思いついたといった顔をした。
「地上に落ちて無力化した連中は…燃やそうぜ!おあつらえ向きに焼夷弾なんか持ってるし燃えやすくて丁度いいでござろう?」
一見荒唐無稽におもえるその発案は、結構理に叶っていた。
この地帯は雪が降り続く雪原地帯、湿度は低く、火を放つにはちょうどいい。
エドゥアルドの言う通り、焼夷弾のお陰で燃えやすさは段違いだ。
この先も使うであろう国の近くにこんな大量の死体があっても困るだけ。いっそ燃やしてしまえば土に還るのも早いだろう。
エドゥアルドの指示のもと、軍人質により、生きている者、生きていないもののに全てに火が付けられた。
ぱちぱちと燃え盛る火は、様々な要因からその勢いを増していった。
そうして、この一角の戦闘は一旦の終わりを告げたのだった。
青い空、燃える大地の行く末は、未だに見えては来ない。
大成功
🔵🔵🔵
ラスカル・ノース
あー、コウモリが襲撃してきたんかよ!!
だったら、対空砲使いつつガジェットショータイムで奴ら自体を無効化してやるぜ!!
テメェらコウモリは超音波で獲物の昆虫を探るってのを聞いたことがあるぜ!!
なら、それを逆手に取ってやるぜ!!
イルカなどの研究で、現代科学も、その手を応用するのを作れるようになったしな!
てなわけで、錯乱音波兵器、喰らえ!!
…とりあえず、オレっちも、耳はいいからノイズキャンセル付けて我慢しておくぜ。
こうすれば、奴らも混乱するだろうし、対空砲火で撃ち落とすのみだぜ!
ぎゃははははぁ!!格好の的だぜ
「あー、コウモリが襲撃してきたんかよ!!」
黒い空はキラリと光る何かを落とし、キャーという甲高い声とともに、白い雪は二重の意味で赤い海に変わっていた。
ラスカル・ノースは国の防壁にほど近い場所で、その行軍を発見していた。
それは色合いだけ見れば夕焼けに照らされた海と夜が来た空という、なんともロマンチックな風景だろう。しかし、その光景が意味するのはロマンチックの欠片もない、ただの殲滅という一番恐ろしいシンプルな出来事だった。
「撃てッー!!」
その司令官の一声で、辺りに設置された対空砲が一声に放たれる。のだが、命中率はそんなに良くはない。
なんたって、ただの爆撃機ではなく、コウモリなのだ。よく避ける。操縦ではなく、体を動かすだけなのだから。
「だったら、対空砲使いつつガジェットショータイムで奴ら自体を無効化してやるぜ!!」
しかし、コウモリが故につける弱点があるというものだ。
「テメェらコウモリは超音波で獲物の昆虫を探るってのを聞いたことがあるぜ…だったら、それを逆手に取ってやるぜ!」
コウモリの持つ技術、エコーロケーションは周囲に超音波を放ち、それの跳ね返りで周囲を把握すると言った、暗闇に暮らすコウモリならではの能力だ。しかし、それは時に便利でもあり、弱点にもなりうる。
「『ガジェットショータイム』!錯乱音波兵器、喰らえ!!」
ラスカルがそう言い放つと同時に、戦場に現れたのは所謂対空戦車のような砲台を携えた、不思議な形のガジェットだ。
ダァッーン!ダァッーン!とガジェットから放たれるその弾丸は、火花を飛ばしながらコウモリの群れへと突っ込んでいった。刹那、戦場にはけたたましいモスキート音のような、コウモリの超音波を模した錯乱音波が鳴り響いた。
激しい超音波を放つその玉は、一部の動物や年若い人間などには超爆音に聞こえることだろう。
(…とりあえず、オレっちも、耳はいいからノイズキャンセル付けて我慢しておくぜ。)
勿論それはアライグマであるラスカルにも影響がある…のかもしれない。実際にその音量を真に聞いたらそれはそれは耳が壊れるレベルの爆音なのだ。ちょっと聞いてみよーで聞けるレベルじゃない。
そんな攻撃を受けたコウモリたちはどうだろうか。音の反響だけで状況を把握してしまうのだ。それはそれは聖徳太子もびっくりの良い耳をしている。
それに加え、いきなりの超音波を至近距離で味わえば、それはコウモリを、数分間ほぼ盲目状態にできるのと同義だ。
視覚より聴覚が優れているコウモリは、芽はさほど良くない。それに加え、夜行性のためあまり昼目は利かない。つまり、耳が聴こえないのは情報がなくなるのも同意だ。それらはただ耳を潰すだけではなく、混乱という戦場で最も陥ってはならない状態にするのには十分であった。
事実、混乱したコウモリ兵達は情報の欠落により、動けなくなる者、仲間内でぶつかる者、あらぬ方向に飛んでいくもの等様々だ。
戦場でそんなことをしていたら、ただの獲物にしかならない。
「ぎゃははははぁ!!格好の的だぜ!!」
二度目に放たれた砲撃は通常の対空砲。つまり、相手を撃ち落とす為の物だ。
普段のコウモリ兵達ならばエコーロケーションで軽く避けれる所、そんな所まで考えが至っていない様子のコウモリたちにはラスカルの発言どおり格好の的に過ぎなかった。
空に打ち上がった対空砲は真っ直ぐにコウモリ兵に的中し、そのままコウモリ兵は墜落していった。
そんな単純な光景も、本来は全くもってあり得なかったのだ。
次第に後方の現地軍人達も射撃を繰り返し、コウモリ達が混乱から回復する頃には、撤退を余儀なくされるほどにコウモリ達は撃ち落とされていた。
そうして、その一帯には赤い津波は来ず、またいづれ訪れるであろう真っ白な雪原になるために、のための白い雪が降り続いていた。
大成功
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第3章 ボス戦
『俗物軍人『ブタ将軍』』
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POW : トンカツ作戦
戦闘用の、自身と同じ強さの【レベル×20体の歩兵】と【レベル÷10両のパンツァーキャバリア】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
SPD : ビフカツ作戦
【サーベル】を向けた対象に、【自身が指揮する兵士達の機銃掃射】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ : カツレツ作戦
【信号弾】を合図に、予め仕掛けておいた複数の【兵隊】で囲まれた内部に【カノン砲から発射される榴弾】を落とし、極大ダメージを与える。
👑11
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バロメリアン・マルゴール
目的:敵の迅速な無力化
行動:ボスだけを声で攻撃する
素敵なお偉いさんは今回の街みたいに人の言葉に耳を傾けてくれるんだが
ダメなヤツって聞く耳持ってくれねぇんだよな
将軍殿、アンタはどっちのタイプだい?
この世を滅ぼすくらいの雑な指揮でお仲間を失ったのかい?将軍殿!
少なくともアンタの指揮は、この小国にすら劣ってるぜ!
声は銃よりも遅い
だが、障壁に邪魔されず、自分が壁の後ろに隠れながらでも、敵陣の中心に潜む将軍殿まで届かせることなら出来る
体に傷を負わせずとも
心を傷つけ指揮を無茶苦茶にすれば軍団なんて瓦解して敗走集団に早変わりさ
さぁ、行こう
兵士諸君、
その力を貸してくれ!
ブタというのはよく悪いイメージが先行し、良いイメージに繋がらない人をよく見かける。
しかし、ブタのイメージは間逆なことが多い。太っていると思われがちだがその実体脂肪率は15%ほど。不潔なイメージを持たれるが実際にはとても綺麗好きな生物である。
ブタの名誉のために言っておくと、ブタは思ったより救いようのない生物でもないということだ。
ヒューヒューと冷たい風に乗って香ってくる焦げ臭い火薬と鉄の香りが、その場所で起こっていたことを物語っていた。
ブタの風上にも置けない俗物軍人ブタ将軍。彼が引き起こした戦争という犯罪は、あまりにも重い。
バロメリアン・マルゴールは、元凶となるその人物の出現を聞きつけ、ライブ会場から急ぎその場へと駆けつけた。
ブタ将軍は保身しか考えないようなクズ野郎のため、急いで駆けつけたとはいえ、先程までなかったはずのその本拠地はすでに建設され、部下たちがわやわやとアリの巣のように蠢いていた。
「素敵なお偉いさんは今回の街みたいに人の言葉に耳を傾けてくれるんだが。ダメなヤツって聞く耳持ってくれねぇんだよな
将軍殿、アンタはどっちのタイプだい?」
無論、民衆に微塵も耳も興味も傾けないような
人物だとは、答えを聞かなくても明らかだ。
しかし、偉い人というのは保身に走りがちとはよく聞くが、このアリの巣状態では相手の狙い通り、こちらには手も足も出せない。
せいぜい、部下を倒している間に逃げられるのが関の山と行った所だ。
しかし、そんなこと、歌にとってはなにも関係がなかったのだが。
声は銃よりも遅い。しかし、実体のない歌は障壁や人数差など関係ないのだ。
小国の軍人たちも引き連れたバロメリアンは、その手に持ったマイクのスイッチをオンにした。
「さぁ、行こう!兵士諸君ムッシュー、その力を貸してくれ『m'aider』!」
「了解!」
戦場には軽やかに流れ出す歌。
猟兵や獣人戦線の住民にとっては聞き馴染みのあるユーベルコードのメロディはバロメリアンによってダイタンなアレンジが加えられ、その曲は人々の心を揺さぶる。
その歌を聞いた敵兵は迷いなくバロメリアンを見つけ出し、攻撃を開始しようと中を構えた。
しかし、その引き金は引かれることなく終わった。
「引けっ!お前ら!上官命令だ!」
「はぁ?敵がそこに…」
「おい!あっちにピンクの羊が居るぞ!」
突然の粗暴な声。そして、それを皮切りに次々と騒ぎ出す兵士たち。それは、彼らの混乱を示していた。とうぜん敵がいると示した方向は的外れ、ピンクの羊なんて実在しない。
しかし、旗から見れば馬鹿馬鹿しいことも当人たちは真面目と思って行動しているのだ。
「今だ!さあ行こう!」
バロメリアンが歌の間に挟む掛け声によって、国の兵士達は混乱した敵兵を押しのけて進む。敵兵は今や敗走集団と同義だ。
「誰だ貴様等!まさか虹色の羊か?」
あっさりと見つかった将軍は精神を攻撃され正気を失っていた。
必死にサーベルを向け威嚇をするが、すでに包囲された将軍には集中砲火する部下も、まともな剣技をするだけの正気も残っていなかった。
肉体には傷一つついていないが、それでも歌の力というのは強大で、それでいて素晴らしく恐ろしいものだ。この将軍の敗因は耳栓でもつけておかなかったことだろう。
仲間も居ない、追い詰められた豚に待つのはトンカツか、ヒレカツか、カツレツか。
少なくとも、この
戦場を作り上げた報いを受けてもらわねばならない。
「この世を滅ぼすくらいの雑な指揮でお仲間を失ったのかい?将軍殿!少なくともアンタの指揮は、この小国にすら劣ってるぜ!」
大成功
🔵🔵🔵
ラスカル・ノース
裏切者って誰だよ?
ちと、これは調査が必要だぜ。
何かわかったか?
電話盗聴?マジか。
豚が裏切者かよ。
んじゃ、豚野郎を〆てくるぜ。
…よぉ、逃げるんじゃねぇよ、豚野郎。
大喰らいで無能だろ、テメェ。
んで、裏切って、情報をワルシャワの熊公に渡したとか。
図星じゃねぇかよ。
さて、屠殺といくぜ。
〔豚は死ね〕ってよく言った言葉だぜ。
ハンマーを装備(UC使用)、豚の額に強烈に打ち付けて終わりだぜ!!
時は少し戻り、コウモリ兵がぼとぼとと撃ち落とされ、轟々と白い雪の上を赤い火炎が燃え盛る頃。
「た、大変です!裏切り者がいます!」
「は?裏切者って誰だよ?」
後方に戻り戦後の復興に向け後方支援をしていたラスカル・ノースはネズミの軍人からそんな裏切り者などという藪蛇事を聞いた。
「ここ、見てください。我が国の国際電話のログなのですが…ほら、コレ。電話盗聴の可能性があります。もしかしたら、この戦争と関係があるかも……」
「マジかよ。ちと、これは調査が必要だぜ」
全くもって素人にはわからないような小さな小さな痕跡だが、確かに電話の盗聴の形跡は見て取れた。
布を糸にするのは難しいが、綻びを足がかりにすればそれはかなり容易になる。今まで影も形もなかったものがその小さな痕跡からどんどんと顕になっていくのだ。
調査を進めれば、それはとても狭いこの国の国土から聞かれていることも、それがどのアタリから聞かれていたのかも、まるわかりだった。大戦時代には情報は百の兵士より価値があるものだ。もし電話盗聴なんてされていたら、この時代では、それこそ
国が一つ滅ぶレベルの情報が抜かれているということになる。
「これは…もしかして…」
「何かわかったか?」
「ええ……裏切り者がわかりました。この国でも悪名高い、ワルシャワ条約機構から派遣されたブタの指導員ですね……薄々わかってましたが」
報告をするネズミ獣人の重々しい表情からも、そいつを話題に出したくないのはひしひしと伝わってきた。それほどまでに嫌われているのだろう。いつも元気なキャラであろうこの軍人を陰らせるとは相当だ。
「豚が裏切者かよ。んじゃ、豚野郎を〆てくるぜ。」
「はぁ?待って下さい、あの
人は見た目はアレですけど実力は相当なものですよ?!」
報告を聞いたラスカルはやる気十分といった様子で街が上がるが、それを阻止するネズミの軍人。
それはそうだ。恩人には死んでほしくはないのだろう。
「大丈夫だぜ。俺に任せておけって。そんじゃ、言ってくるわ」
「あ、ちょっと!」
しかし、そんな静止は猟兵にはあらぬ心配である。
広くないこの小国の中で、ましてや避難中の人が居ない街ではブタ将軍の居場所なんて探るまでもなく明らかであった。
ブタ将軍は外にいる部下達と合流するため軍の施設からわざわざ死角となっている部分を堂々と闊歩していた。
ラスカルはその姿を見つけるやいなやすぐに後ろから声をかける。
「…よぉ、逃げるんじゃねぇよ、豚野郎」
「誰かね?この私の歩みを止めるのは」
豚に真珠とは言うが、軍人にしては豪華なサーベルを持ち、金のかかっていそうな腹を揺らしてラスカルへと向かう。
ラスカルはそんな救いようのないブタ野郎を挑発するように嘲笑うように次の言葉を言い放つ。
「テメェに名乗る名なんてねぇよ。どうせ大喰らいで無能だろ、テメェ。
んで、裏切って、情報をワルシャワの熊公に渡したとか。」
「……はっ、私は元からこの国の味方なんてしたことがないが?」
「図星じゃねぇかよ」
ひりついた空気が二人を包む。戦争とは違う、冷戦のような空気感。
その均衡を崩したのはブタ将軍だった。
「しかし、こんな所で私を止めたのが運の尽きだな。『トンカツ作戦』開始だ。」
静かに宣言する将軍。気がつけば狭い道にはいっぱいの歩兵とパンツァーキャバリアがラスカルを包囲し、一気にその広い道は裏路地の行き止まりと同じことになっていた。
しかし、それはブタ将軍も同じこと。自ら出口を塞いだのと同義である。
「〔豚は死ね〕ってよく言った言葉だぜ!『ガジェットショータイム』!」
ちょこまかと動くラスカルにキャバリアや歩兵など数がいるだけの木偶の坊にすぎない。
敵の攻撃を避けつつ、UBにより作り出されたお手性の不思議な形をしたガジェットをハンマーとして扱い、相手の懐に潜り込んだ。
「さて、屠殺といくぜ!!」
「グハッ……!」
バコン! といい音を鳴らし、ブタ将軍はその顔面を石畳の道路に打ち付けられ、そのご自慢の鼻を見事に突き刺していた。
一撃必殺。ラスカルの放った重たい一撃に重たい体を支えきれなくなった足から崩れ落ち、自重とハンマーの威力は石畳と地面を割るほどに至ったらしい。
いつの間にか歩兵達は跡形もなく消え去り、ブタ将軍は額から血を流す大怪我を負ったのだった。
大成功
🔵🔵🔵
エドゥアルト・ルーデル
性根の腐った豚野郎!
もしやこの世界だと豚野郎は罵倒にならない…?
うろたえるな小僧ども!数がなんだ、なんの為に対空陣地作ったと思ってんだヨ!水平射撃する為だろ!
対空砲の対地射撃はミートチョッパーと呼ばれるぐらいですぞ
さあ諸君らは今から牧師でござる…神を否定した
異端者共の歩兵をポークチョップにしてやるんでござるよ!今夜はごちそうだね!
拙者は戦車と豚野郎を叩きに行こうか…ホイ軍用機召喚、Ju87G!こいつは翼に対戦車砲を付けた素敵爆撃機でござるよ
空から戦車に素早くアツアツの徹甲榴弾をプレゼントできますぞ!豚野郎にも届けようね!
神を信じたくなってきたでござるか?今は神じゃなくて拙者に祈れよ
煌めく白雪は、轟々と燃え盛る炎に溶かされ、薄い赤色となって戦場の土に染み込んでゆく。
赤い土に革靴の足跡をつけ、葉巻の燃えカスを添えて歩いているのは、その後ろにぞろぞろと首輪をつけた犬のような配下を引き連れ歩く、ブタの将軍。
かつて仲間だった物すら汚物とみなし、それを踏みつけ、蹴りつけながら歩みを進めていた。
それを少々引目の、即席でできた対空陣地の中からその姿を目撃していたのは、無精髭を生やした軍人の格好をした男。エドゥアルト・ルーデルであった。
彼のいる即席対空陣地には小国の軍人がその時を待ちながら、この国を襲うことを策略した将軍殿に恨みを燃やしていた。
「この性根の腐った豚野郎!………ん?もしやこの世界だと豚野郎は罵倒にならない…?」
死体をいいように扱うブタに罵倒をあげるも、かえってそれは果たして罵倒になるのか疑問になってしまったようだ。種族的に。
ちなみにこの場合豚野郎はたぶん罵倒に入る。人間をエテ公と呼ぶのとたぶん表現的には近しいものがあると思う。枕詞に腐ったってついていたならそれなりの罵倒にはなるだろう。
「おいおい……任務とはいえ、やばくないか?数もさ…」
「エドゥアルトさん、相手は『あの』俗物軍人様ですよ……?」
「ざっと数えてこっちの倍は居るぞ……装備は俺等の比じゃない」
ざわざわとしだしたのは対空基地に待機している小国の軍人達だ。
敵兵の数は余裕でこちらの兵のおおよそ2倍。装備の質は当に豚に真珠と言った所。前線に出るわけでもないのに無駄に豪華で高機能な装備を身に着けていた。数が増えるほど指揮というのは取りにくくなるものだが、一糸乱れぬ動きはどこか病じみた物を感じる。
つまり、絶望を感じるには十二分なスパイスが揃っていたということになる。
「うろたえるな小僧ども!数がなんだ、なんの為に対空陣地作ったと思ってんだヨ!水平射撃する為だろ!対空砲の対地射撃はミートチョッパーと呼ばれるぐらいですぞ!」
「エドゥアルトさん……」
恐れ慄く兵士達に怒号を飛ばすエドゥアルト。狭い陣地内で、気づかれぬよう小さな声ではあったものの、それは軍人達の背中を押すには十分な声量だった。
「さあ諸君らは今から牧師でござる…神を否定した異端者アカ共の歩兵をポークチョップにしてやるんでござるよ!今夜はごちそうだね!」
「……とにかく、エドゥアルトさんの言う通りだ!総員持ち場に付けっ!撃つぞ!」
引き締まった様子の小国の軍人達はエドゥアルトの言うことを完璧には理解しきれていないが、まあ、励ましだろうと考え持ち場へとついた。
「撃てっ!」
構えられた対空砲からくる掃射攻撃は地上を蹂躙するには素晴らしすぎる火力だった。
当然、それはどんな装備をしていても変わらない。不意をついた高火力攻撃とはほとんど不可避の即死攻撃と遜色はないからだ。
戦場に鳴り響く対空砲の音は、次第に勢いを増していた。
然しながら、当然対物の銃ではないため、こういった物は戦車には弱い。仲間が蹂躙される地獄のような光景の中、戦車は確実な意思を持ってこちらを目指していた。
また、周りの歩兵が肉壁となり守ることで、ブタ将軍にもその鉛玉は届いていない。どこまでも腐れ外道な将軍サマは部下の命などどうでもいいらしい。
「拙者は戦車と豚野郎を叩きに行こうか…ホイ軍用機召喚
Luftflotte、Ju87G!」
エドゥアルトにより、召喚されたのはJu87G。愛称としてシュトゥーカと表記したほうがわかるものも居るだろうか。急降下爆撃機の一種であり、かの大戦中、悪魔のサイレンと恐れられていたとか。
その特徴は何より、羽に取り付けられた対戦車砲といった所だろうか。
Ju87Gに騎乗したエドゥアルトはそのまま上空へと飛び上がり、戦場を見渡す程に高くまで飛び立った。敵は未だ射撃を続ける小国の軍人達に夢中であり、わりと近くで飛び立った戦闘機などには見向きもしてくれない。
その為、Ju87Gの弱点たる装甲の弱さも、燃費の悪さもこの状況ならまずまず関係はない。
「アツアツの徹甲榴弾をプレゼントですぞ!豚野郎にも届けようね!」
急降下し始めた機体からはサイレンのような音が聞こえ、ようやくブタ将軍も戦車も、その上からの刺客に気がついたらしい。しかし、ソレももう遅い。
ブタ将軍と戦車達に向けられた対戦車砲から放たれる徹甲榴弾は今更気づいた間抜け共に回避できる道理は当然なく、その身に突き刺さって炸裂した。
対物の球には動きの鈍い戦車に特攻であり、一気にその数を減らすことに成功する。いずれ全滅することだろう。
生身のブタ将軍も、流石に部下に守らせたが、それをできるのも時間の問題だろう。
「神を信じたくなってきたでござるか?今は神じゃなくて拙者に祈れよ」
戦場を舞台とした蹂躙劇は、敵の殲滅を持ってしてしか終われない。
大成功
🔵🔵🔵
四軒屋・綴
※なんでも感激
さて、大将首のお出ましか。
少々考えがある、何人か手を貸して欲しい。
合縁奇縁、旅は道連れだ、一緒に行くか『綺麗な毛並みの軍人さん』?
ユーベルコードを継続発動ッ!
砲撃は任せたぞッ!無駄に敵陣を突っ切り名乗り口上を爆音放送しつつ周囲をぐるっと爆走して敵と町の間に停止ッ!
前線を上げて撃ち合いだッ!
機銃と榴弾で進行を阻み装甲防壁で耐えるとしても敵は大群、そう長くは持たないか。
という訳で操作権限を味方に任せて軍人さんと敵陣の裏手にこっそり飛び降りておいたッ!
俺達のような手合いは【存在感】こそ一番の武器だ、隠すことを含めてな。
合体の時間だなッ!!ヒーローマスクの特性を発揮し強化合体ッ!熊蒸連結ベアジョークここに発進ッ!!ほら軍人さんポーズをとるんだポーズをッ!!
左腕の『シュートケムール』『アッツィーコウル』で歩兵を牽制、右手の『バリアランチャー』による射撃で敵ユーベルコードの核となるサーベルを弾きながら突撃ッ!蒸熱と衝撃のジョウキング
拳骨だッ!
風の鳴る寒空の下、転がったコウモリの山を踏みつけながら、焦げ臭い肉の匂いに鼻をつまみ、葉巻に火をつける豚の軍人が一人。
この国への進軍計画を進めた張本人にして、極悪非道な俗物軍人。誰が呼んだかブタ将軍。
そんな彼が、戦場へと重い腰をあげて出陣してきたのだった。
「さて、大将首のお出ましか」
四軒屋綴はどっしりと構え、その様子を離れて見下ろしていた。
「少々考えがある、何人か手を貸して欲しい。
合縁奇縁、旅は道連れだ、一緒に行くか『綺麗な毛並みの軍人さん』?」
「無論だ、明日の為に、力を貸してくれ『蒸気機関のヒーローさん』」
一宿一飯の恩義とはよく言ったものだが、それを言えばまた一飯の恩義だろとツッコミが入るのはわかりきったこと。この戦場に、この仲間に恵まれる縁というのは非常に摩訶不思議な物だったりするのである。それこそ、繋ぐものがそんな一時の恩義であろうとも。
綺麗な毛並みの熊の獣人の軍人を筆頭に、数名の軍人は自らの国の平穏を願い、それを叶えるためのヒーローへと期待と尊敬の眼差しを向け、命すら投げ捨てる覚悟を決めていた。
「『
銃・
砲・
列・
車ッ!!』トリガーは任せたぞッ!」
「サーイエッサー!!」
少し前のコウモリ殲滅にも使用した自動走行防壁は雪をかき分けて、軍人と四軒屋を乗せて、無駄に敵陣を突っ切っていた。
『勇・蒸・連・結ッ!ジョウキングッ!!』
コレまた意味がよくわからないがとにかく爆音の口上を四軒屋が放送し続けていた。
列車はぐるりと敵陣を突っ切り、爆走の限りをつくし、やがて街と敵の間へと停車した。
あまりの急激な出来事に敵兵達はポカンとしており、ブタ将軍ですら例外ではなかった。
「う……撃てぇぇ!!」
一拍遅れて、敵兵のそんな慌てた声が聞こえる。
「迎え撃つぞ!!!」
そして、それを皮切りに列車を挟んだ銃撃合戦が始まったのだった。
弾幕を弾薬で制すような、質量の押し付け合い。弾け飛ぶ薬莢の嵐は銃撃音と共にその戦争の激しさをけたたましく耳に訴え続ける。弾け飛ぶ血かなにかの飛沫が、少しだけ視界を汚した。倒れた軍人の明日なんて誰一人として気にしては居ない。明日は我が身どころの悠長な場所ではないのだ。
そんな中でも、四軒屋は至って冷静に戦況を把握していた。
(機銃と榴弾で進行を阻み装甲防壁で耐えるとしても敵は大群、そう長くは持たない、か……)
はじめは奇襲のような形で仕掛けたこちら側が優勢であったが、兵隊の物量格差というのは戦場において、なにか画期的な作戦でもない限り=で強さに直結する。そのため、短期決戦ならばともかく、物量で負けているこちら側は時間がかかればかかるほどにジリ貧となるのだ。
「そういうことは予測してで操作権限を味方に任せて軍人さんと敵陣の裏手にこっそり飛び降りておいたッ!」
「こ、声がデカいだろう……!」
……現在四軒屋がいるのは、台詞の通りに敵陣の裏手。回り込む前の位置だ。色々とあったものの、素晴らしいほどに降り積もった雪は変わらす潜伏を容易にしてくれる。
「俺達のような手合いは【存在感】こそ一番の武器だ、隠すことを含めてな」
「ならいいが……それより、どうする?少ないが、けして楽ではないと思うが」
一応奇襲の警戒はしているものの、敵軍は前面の味方軍の相手に手一杯であり、ブタ将軍の警護に数人の近衛と、外部の警戒をする警備員的な軍人程しか四軒屋の障害にはならないだろう。
しかし、それ故に厄介でもある。卑怯なブタ将軍の事だから、恐らく自分の警護にあたらせている人物は少数精鋭のエリート。そして、ブタ将軍自身も戦えるときたものだ。限りなく面倒な戦いを強いられていた。
「合体の時間だなッ!! 熊蒸連結ベアジョークここに発進ッ!! ほら軍人さんポーズをとるんだポーズをッ!!」
「おいなんなんだコレポーズは決めんぞこんな戦場で!!」
四軒屋が高らかにそう宣言し、ポージングを決める。横でぎゃいぎゃいと悪態をつく軍人だったが、文化の違いなのかと諦めて、最終的には渋々と行った形でポージングをキメた。
その体はみるみるうちに変形、合体をし始める。
その姿は蒸気機関車を彷彿とさせるものの、熊の要素も詰め込んだなんとも血と硝煙の香るこの戦場に似つかわしくない、まさしくヒーローといった姿へと変わった。
「行くぞ軍人さん!! 狙うは大将首だッ!!」
「あぁ……やってやろうぜ!!」
そう、息を合わせて軍人と四軒屋達には駆け出した。
狙うは大将の首一つ。雪原に残る茶色と赤と黒を踏み抜いて、体に悪い黒い煙を掻き分けて、今、第二の奇襲がはじまった。
四軒屋はまっすぐにブタ将軍の下へと向かう。が、それを安安許すようでは近衛は務まらないというものだ。一足先に気がついた近衛は四軒屋の進行方向へばっと飛び出し、迎え撃とうとしている。しかし、四軒屋にはそれは既に予想済みの行動であった。
「甘いッ!!」
左手より放たれる砲撃。それは歩兵の意表を突くのに十分すぎる火力を持つ。まさしく異世界の技術に恐れをなした軍人は、歴戦の戦士であったのだろうか。しかし、それはわからぬままにあっけなく鎮圧されてしまった。
「ブタ将軍ッ!!その命もらい受けるッ!!」
「なにっ! あの近衛をやっただとっ!? まっ」
スピード感を落とさずにブタ将軍へと突っ込んでゆく四軒屋。不意をつかれたブタ将軍は慌ててサーベルを四軒屋に向けるものの、彼の右手に搭載されたバリアランチャーにより、そのサーベルは弾かれて始末まった。
将軍のユーベルコードの発動の核はほとんどがこのサーベルの為に、もうこの攻撃手段もユーベルコードも失ったブタ将軍は、ただの豚と評して構わないだろう。
「終わりだッ!! 蒸熱と衝撃のジョウキング拳骨ベアナックルだッ!」
「まっ!!!」
最後に彼が何を言おうとしたのかなど、それはきっと些細なこと。
豚将軍は四軒屋が放つナックル攻撃を受け、それはそれはキレイな放物線を描いて、空中を舞ったのだった。
大成功
🔵🔵🔵
こうして、雪原を襲った戦争騒ぎは終わりを告げた。
条約機構というパトロンを失ったこの国の未来は、決して楽な道では無いだろう。当座は凌いだが、まだまだワルシャワに、文字通り目をつけられ続けるのだろう。
しかし、なにも暗い話だけではない。
現に、この戦の終結がわかった時に溢れた、市民たちの安堵の笑顔と、それを喜ぶ兵士たちの姿は、きっと何よりも美しい。
此処から先、この国はどんな未来を歩むのかはまだ誰もわからない。しかし、希望を諦めないというのはどんな兵器より強かなのだ。
ありがとう猟兵、また会おう猟兵。
願わくば、この白い雪がまた汚されることが無いことを。