熱狂! サマーコミックフェスティバル!
●戦いのサマーシーズン
「ヘイ!
猟兵!
クソ熱いな!」
照り付ける太陽によって汗をダラダラと流しながら、ルクス・キルクルス(36の世界の果てまで・f38588)が集まった猟兵たちに挨拶をする。
その片手には普段携えている武器ではなく、なにやら分厚い冊子が握られていた。
表紙にはこう書いてある――【サマーコミックフェスティバル】と。
「これはシルバーレインの世界で行われている同人イベント……まあ簡単に言うと、色々なジャンルの創作者たちが集まって自費出版のコミックを売ってるイベントなんだよ」
コミック、とは言ったがそのカバー範囲はそれだけにとどまらない。
小説もあれば写真集もあるし、論文もあればレシピ本なんかもある。
はたまた手作りのグッズも置いてあるし、コスプレを楽しむ人々でもあふれかえっている。
もちろんそういうものを買いに来るだけの人々だって立派な参加者だ。
「好きな人には夢のようなお祭りであり、その一方で欲しい物を手に入れられるかどうかという戦場でもあるわけだなこれが」
ちなみにルクスが手にしていたものはこのサマーコミックフェスティバルのサークルカタログである。
参加者たちはこれを参考に自分の目当ての『お宝』を探しに行くのだ。
「そんなサマーコミックフェスティバル……通称【サマコミ】にオブリビオンが現れることが予知された」
一転、シリアスな表情を浮かべるとルクスはそう猟兵たちに告げた。
そしてグリモアキューブから予知した映像を流せば、そこには会場の各所で大爆発が起こっている大惨事が映っていた。
爆発の中心にはいつも天使のような姿をしたオブリビオンがいるのが分かる。
「あいつの名前は『千連天使バクシエル』。サマコミの会場に集まった参加者の積み重なった爆死の無念や怨念が形を成したもので……うっ、頭が……ッ!」
説明途中でルクスが頭を抱えて座り込んでしまった。己にもめちゃくちゃ心当たりがあるのだろう。
引けなかった大好きな推し……引けなかった超人気キャラ……引けなかった久しぶりにピックアップされたキャラ……引けなかった期間限定キャラ……エトセトラエトセトラ。
人々のこういった苦い記憶が実体化したオブリビオン――それが千連天使バクシエルなのである。
「はぁはぁ……というわけで、この大惨事を回避するためにみんなにはサマコミに参加して対処にあたって欲しいんだよね」
何故か片膝をついて苦しみながらルクスがそう頼み込む。
幸いバクシエルが出現するまでにはいくらか時間があるので、その間は自分の好きなジャンルブースを回ってみても良いだろう。
もちろんサークル側で参加しても良い。スペースならどうにかする、とルクスは語った。
「ああそうだ、ちなみにバクシエルはその名の通り爆死を司るオブリビオンだからその逆……つまりは神引きの経験を語ると弱体化するから参考にしといて」
結構重要なことをさらっと語りながら、ルクスはグリモアキューブを展開させる。
向かう先は二つの意味で戦場と化すイベント会場だ。
春告鳥咲良
OPをご覧になっていただきましてありがとうございます。
MSの春告鳥咲良と申します。
夏らしいシナリオを書こうと思ったのでこうなりました。これも夏です。
●第1章・日常『同人フェス開幕!』
オブリビオン出現までの間、サマーコミックフェスティバルを楽しみましょう。
同人誌を買うも良し、売る側になるも良し、コスプレして参加したりも良しです。
●第2章・ボス戦『千連天使バクシエル』
出現したオブリビオンとの戦いです。出来れば会場から引き離して戦えるとなお良いでしょう。
OPで語った通り、神引きの経験を語ると弱体化します。参考までにどうぞ。
どちらか片方だけの参加、途中参加は大歓迎です!
皆さまのご参加お待ちしております。
第1章 日常
『同人フェス開幕!』
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POW : 会場を駆け回って同人グッズ集め
SPD : コスプレ会場を見て回ろう
WIZ : 実は同人グッズを頒布する側・コスプレする側です!
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南青台・紙代
アドリブ歓迎
【WIZ】
仕事ではなく趣味で書いた小説本を持ち込んで頒布。
(ムキムキの強面男二人が大正時代でカフェを巡り
甘味を食べるだけのやまなし・おちなし・いみなし本)
こういう交流会(イベント)はどこの世界においても
心身ともに盛り上がるものであるなぁ。
だからこそ、この会場で暴れようとするオブリビオンを
許してはおけないのである。
どこに出現しても向かえるよう【聞き耳】を立てながら【索敵】。
……むっ。我輩の【第六感】にピンときた。
お向かいのサアクルの本が好みの予感。
折を見て一冊入手しておくのである。
(真面目にやってはいるがワクワクが止められない)
(腐っている)
●集まれ同好の士
熱気渦巻くサマーコミックフェスティバル。
規則正しく並ぶ長机の間を多くの人々が行きかっていく。
そんな人の波を眺めながら、南青台・紙代(言の葉綴りし青蛇女・f23355)はあるスペースの一角に腰を下ろしていた。
目の前の机の上には自らが綴った小説本(ムキムキの強面男二人が大正時代でカフェを巡り、甘味を食べるだけのやまなし・おちなし・いみなし本)が綺麗に陳列されている。
ちなみに紙代のジョブは『文豪』ではあるが、これは仕事ではなく単純に趣味で書かれた作品だ。
その道のプロもここではただの参加者。それがサマーコミックフェスティバル。
「こういう
交流会はどこの世界においても心身ともに盛り上がるものであるなぁ」
「すいません、これ試し読みしてもいいですか?」
「構わぬぞ」
ふらりと立ち寄ってくれた参加者の女性にそう促せば、彼女はウキウキとした表情で本を手にしてページを捲る。
こうして直に手にしてくれる者やその反応を見て取れるのもまた醍醐味。
だからこそ、紙代は思う。
(この会場で暴れようとするオブリビオンを許してはおけないのである)
猟兵として。創作者として。
譲れないものを心に抱き、いつどこにオブリビオンが出現しても対応できるように細心の注意を払う。
眼で、耳で、感覚で、会場内をくまなく注視していけば――、
(むむっ)
紙代のセンサーに引っかかるものがあった。
だがしかし、そこにオブリビオンの姿形や気配はない。
センサーに引っかかったのはまた別の物。
(お向かいのサアクルの本が好みの予感)
その眼が、耳が、感覚が捉えた、一冊の本。
ジャンルはオリジナルなのか二次創作なのかまでは分からないが、とにかく輝いて見える一冊の愛の結晶。
ここであんな逸品に出会えるとは! これだから交流会とはあなどれない!
「すいません、これ一冊ください!」
「む、ああ、感謝するのである」
興奮冷めやらぬのは目の前の女性とて同じ。
紙代は冷静さを取り戻し、同好の士に自著を一冊手渡して代金をいただく。
そしてその女性はなんと紙代が目を付けたサークルスペースにも足を運んでいくではないか。
同好の士が認めたものならば、きっと紙代の好みにも合うであろう。期待値は高い。
(折を見て一冊入手しておくのである)
オブリビオンに注意を払うのは当然として、やはりこの空気感にワクワクは抑えられない。
ここはサマーコミックフェスティバル。
たくさんの『好き』が入り混じり、交差する、夢のお祭りなのだから。
大成功
🔵🔵🔵
中村・裕美
「……こういうイベントは……ワクワクするものが……あるわね」
同人誌も通販で購入できたり電子化が進む昨今、とはいえそうした販売方法ができるのは有名どころが多い。だからこそ、ここでしか見ることのできない『お宝』に遭遇できることだってある
「……不思議よね」
正直、人とコミュニケーション取るのは苦手だし、普段は人混みの多いところは行きたくないが、同じ趣味を持っている人たちの集まりと思うと、少し気が楽になる
「……これと……既刊も全部お願いします」
そんな中、気に入った本を買うが、少し楽になってもやっぱりキツイ
水分補給しながらカタログに目を通しながら休憩
「……次は……どのあたりを回ろうかしら?」
●現場でしか分からないものもある
「……こういうイベントは……ワクワクするものが……あるわね」
一般参加者として会場に潜り込んだ中村・裕美(捻じくれクラッカー・f01705)はカタログを片手に通路を練り歩き、たくさん並ぶサークルの作品に目を向けていた。
同人誌にしろ、なにかしらの創作物にしろ、最近は通販で購入できるものも多い。
もちろんこれはこれで遠方に居ても好みの作品を手に入れることが出来る素晴らしい仕組みだが、現場には現場でしか味わえない楽しみというのもある。
例えば。
「……あれ、もう十数年前の作品の二次創作本ね。あっちは有名作家のマイナー作品ジャンルの本……」
なかなかお目にかかることの出来ないお宝をこの目で『発掘』する。
その時の興奮や喜びは筆舌にし難いものがある。
この感覚はきっと現実に体験してみないと分からないものだろう。
「……不思議よね」
裕美が小さく呟く。
本来中村・裕美という人物は人とコミュニケーションを取ることが苦手な部類だ。なんだったら人込みに飲まれるような場所には行きたくないのが本音。
しかし、こういった同じ趣味を持った仲間たちが集めっているとなると、少しだけその感覚も薄れていける。
きっと裕美と同じような感覚を持っている人間は他にもいるかもしれない。
それでもここに足を踏み入れたからには立派な参加者だ。
「……これと……既刊も全部お願いします」
「はい! ありがとうございます!」
途中絵柄が気になって立ち寄ったサークルの作品が良かったので、全作品を大人買いする。
こういう場所だと何故か財布のひもが緩くなりがちなのは何故だろうか。永遠の議題だ。
購入した本をリュックにしまうと、裕美は一息つこうと会場の端の方へと歩いていった。
「……ちょっと疲れた、休憩しよう」
外に屋台が並ぶイートインスペースの一角で、ごくごくと持参したスポーツドリンクを飲む。
ここは中心地に比べればまだ人は少ない。裕美はふうっと胸から息を吐き出した。
テーブルの上に置いたカタログを開き、このエリア近辺のサークルを一通りチェックする。
「……次は……どのあたりを回ろうかしら?」
苦手だと、疲れたと、そう言いながらもその顔にはゆるりと笑みが浮かんでいる。
オブリビオンが襲来するまでの間、裕美はその時間をひたすら楽しむことに決めたのだ。
大成功
🔵🔵🔵
シン・クレスケンス
【POW】
『コミックフェスティバル?お前がコミックを読んでるところなど見た事がないが⋯』と闇色の狼の姿のUDC「ツキ」が人混みに半ばぼやきながら。
仔狼くらいのサイズで顕現させ鞄の中にいてもらっているのですが、場所柄ぬいぐるみと思われ逆に目立たない様子。
「本は全般好きなので、時にはコミックも読みますが⋯今日のお目当てはここです」
カタログを指し示し。
こちらで頒布されると情報を得た(【情報収集】)ある論文。
魔術研究の参考になりそうなことが書かれているようでして。
当然ながら、著者はご自身の論文が魔術的意味合いも含むなど知る由もないでしょうけれど。
同好の士とつい盛り上がってしまいました(【コミュ力】)。無論、魔術云々は伏せて話していますが。
「来てみて良かったです。また一歩研究が進みましたね」
『こんなところまで来たと思ったら、結局研究かよ。ワーカホリックめ』とツキは呆れた様子ですが、僕としては気分転換にもなりました。
―――
ちなみに
「 」はシンの発言
『 』はツキの発言(一般人もいるので念話)
です
●玉石混合、その中の玉
『コミックフェスティバル? お前がコミックを読んでるところなど見た事がないが……』
シン・クレスケンス(真理を探求する眼・f09866)の鞄の中からひょっこり顔を出した狼……UDCの「ツキ」が念を使ってボヤいてくる。
普段使役しているときよりも小さいサイズなのでこの人込みの中では目立っていない。むしろぬいぐるみかなにかと思われていることだろう。幸いこの会場には『推しぬい』なるものを持ち込んでいる参加者も多い。
シンはあくまでも一人のふりをして、念話で会話を続ける。
(本は全般好きなので、時にはコミックも読みますが……今日のお目当てはここです)
開いたカタログの一角を指し示せば、ツキが少しだけ首を伸ばして覗き込んできた。
『コミックエリアとは遠いな』
(ここは真面目な論文が多いそうで……ああ、あそこです)
ミリタリーな論文、歴史的な論文、なんか凄いマニアックな論文、様々なテーマがひしめき合う中、シンはとあるスペースの前に立った。
一応ツキは鞄の中にするりと身を隠す。
「すみません、少し中身を拝見させていただいても?」
「! ああ、はいどうぞ!」
サークルスペースの主はシンの声掛けに驚いたように声をあげ、机の上の一冊を差し出した。
真っ黒な表紙に赤い文字。いかにも禍々しい雰囲気の本。
ぱらりとページをめくるシンにサークル主がおずおずと話しかけてくる。
「お兄さんもお好きなんですか? 【都市伝説】」
そう、ここに並ぶ論文は全て都市伝説に絡むものばかり。
メジャーなものはもちろん、地方のマイナーな伝承までこれでもかと書き綴られている。
これもまた愛の一つであろう。
「ええ、こういった不思議な現象には興味がありまして。科学的であったり民俗学的な観点での興味もありますが、時には理由が付かない現象もありますから」
「分かります分かります! もちろん理屈を付けようと思えば付けられるんでしょうけど、私はその中に『本物』が絶対にあると思うんですよ!」
サークル主が興奮した様子でそう語る。
『本物』。それは確かにあるだろう。現にシンの鞄の中にそれはいる。
この本の中にもいくつか魔術などの不可思議が関わるような『本物』が混ざっているだろう。手にした瞬間からそれはなんとなく感じていた。
しかしそのことを目の前の著者は知らない。あくまでも趣味で都市伝説を集めただけの、普通の一般人だ。
「……それで、実際に足を運んで調べてみた物もあるんですけど、結局空振りでした」
「なるほど、それでここの記述はより詳細なのですね」
「今度また別の場所に行こうと思っていて、次こそは! って思ってます!」
そんな話をひとしきりしてからその本を買い、都市伝説紀行を綴ったブログのURLを教えてもらってシンはその場を去った。
(つい盛り上がってしまいました)
『良いのか、あいつ。結構ヤバい臭いがしたぞ』
(大丈夫ですよ。こっそり魔法薬を撒いておきましたので、しばらくは安心でしょう)
あのサークル主から感じたのは、この本と同じ気配だった。
あのまま放っておけば少なからず痛い目にあっていたかもしれないが、一応可能な限りの防御策は取った。
それにこの気配を紐解いていけばより強力な魔術を発現させる可能性もあるだろう。
そうすれば防御策も強固になる。自らの魔術の成果が見て取れるのは良いことだ。
第一、あれだけの語らった相手が酷い目に合うのはなんだか目覚めが悪いだろう。
(来てみて良かったです。また一歩研究が進みましたね)
『こんなところまで来たと思ったら、結局研究かよ』
ワーカホリックめ、とツキは鞄の中でやれやれと首を降る。
ゆさゆさ揺れる鞄をものともせず、シンは満足げな表情を浮かべて通路を歩いていった。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィクトリア・ヴィッカース
SPD・アドリブ共演可
わひー、暑いですねえ…
しかしそれでもこれだけの人が集まるというのは凄いですね!
皆さんの情熱というものを感じますよっ!
この平穏を守るためにも私頑張りますとも!
とは言えわたくし創作というものには疎いので…
コスプレエリアでも見て回るとしましょう!
…え、写真ですか?構わないですとも!
もしかしたらコスプレイヤーと思われているのかも知れませんが、皆様と一緒にイベントを楽しむのも悪くありませんね!
市民の皆様方とのふれあいもわたくしの使命でありますゆえっ!
…ところで爆死とは何の事なのでしょうかね?
●非日常コスプレ体験?
「わひー、暑いですねえ……」
ところ変わって屋外のコスプレエリア(撮影可)。
多くのコスプレイヤーやカメラマンたちがごった返す中、ヴィクトリア・ヴィッカース(変幻自在の武装セキュリティ・f39607)はそう言ってカンカン照りの天を仰いだ。
しかしここに集まるのはこの暑さにも負けない熱を持った猛者たち。
その熱気はあまりそういう分野に明るくないヴィクトリアにもしっかりと伝わってきている。
故に、彼女はその拳を太陽に向かって突き上げてみせた。
「この平穏を守るためにも私頑張りますとも!」
「「おおー!!」」
「え?」
ふと視線を真正面に戻せば、二人のカメラマンがこちらに向かって歓声をあげていた。
「お姉さんカッコイイですね!」
「今のポーズも決まってたましたよー!」
「え、ありがとうございます……?」
その意味するところがすぐには分からなかったが、褒められているのは確かなのでヴィクトリアはお礼を言った。
「素材も豪華でまるで本物みたいだ! 凄い力作ですね」
「写真撮らせてもらっても良いですか?」
「……写真ですか?」
その質問でようやくピンときた。
おそらくヴィクトリアの格好がコスプレの一種だと勘違いされているのだろう。
これは本当の警備の一環であるし、そもそもヴィクトリアはウォーマシンであるため素体は全て『本物』だ。無論、コスプレではない。
しかし、
「構わないですよ!」
ヴィクトリアは快く承諾してみせた。
褒められるのも悪い気はしなかったし、この二人の熱に水を浴びせるのも野暮というもの。
承諾を受けたカメラマンの二人が頭を下げる。
「「ありがとうございます!」」
「あの、目線こっち貰っても良いですか?」
「その次は僕の方もお願いします!」
「はい!」
それにこうしてこの世界の人たちと一緒に楽しむのも悪くはない、とヴィクトリアは思う。
(市民の皆様方とのふれあいもわたくしの使命でありますゆえっ!)
パシャパシャとフラッシュを浴び、時にポーズなんかを決めたりしているうちに、いつの間にか周囲には軽い人だかりが出来ていた。
「すみません、私も撮って良いですか?」
「はいどうぞ!」
「僕はこういうポーズで撮りたいんですけど、大丈夫ですか?」
「こうでしょうか!」
すっかりコスプレイヤーの気分に夢中になったヴィクトリアは格好良い決めポーズを取ったり、この短時間でファンになってしまった参加者とツーショットを取ったり、時にはサインを求められたりなんかしながらも、本来の目的は忘れずにいた。
あと、最初に抱いたっきりの疑問も。
(……ところで爆死とは何の事なのでしょうかね?)
その答えは、もうそろそろ明らかになる。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『千連天使バクシエル』
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POW : 爆死チェイン
レベルm半径内に【爆死の波動】を放ち、命中した敵から【自制心】を奪う。範囲内が暗闇なら威力3倍。
SPD : 次こそは報われる
【抱いた爆弾】から、戦場全体に「敵味方を識別する【狂気の熱風】」を放ち、ダメージと【幸運への妄執】の状態異常を与える。
WIZ : 無差別爆死
【無数の爆弾】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
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●千連天使、爆臨!
時間も流れ、人の波も増えてますます盛り上がるサマーコミックフェスティバル。
その人々の熱気が形になったような靄がゆっくりと天井付近に集まっていく。
じわじわと大きくなるその靄はそのうちに実態を得ていった。
可憐な少女の形になった靄がにっこりと笑う。
「ふふふ……みんな爆死してしまえばいいんだわ!」
ここにいる人々の爆死の無念が、怨念が、千連天使バクシエルとなって降臨してしまった。
放置しておけば予知の通り大規模な爆破事件が起こってしまうだろう。
その前に猟兵たちは動き出す。
人々の夏の思い出を悲劇で終わらせないためにも。
中村・裕美
「……爆発するのは……非リア充だけで十分よ」
そう言って空間を【早業】で【ハッキング】して【ステルスボム】で相手を先に爆破する
「……それと……人の楽しみを奪おうとする……オブリビオンもね」
神引きの体験が相手を弱体化させるのであれば
「……ここで……記念に取っていた神引きのスクショが役に立つとはね」
過去に色々なソシャゲで超レアを引いたり神引きしたりした時に撮っていたスクリーンショットの画像データを直接相手の脳内をハッキングして転送する【精神攻撃】を行う
「……私は帰りの電車が混む前に帰りたい派なの。……さっさと終わらせるわ」
そして引き続き爆破爆破
●神引きメンタルアタックシーケンス
千連天使バクシエルが降臨した瞬間、会場内にどよめきや悲鳴が響き渡る。
逃げる人波に飲まれそうになりながらも、中村・裕美はバクシエルの元までどうにか辿り着いた。
眼鏡のレンズ越しに、天使によく似たオブリビオンを見上げる。
「まずはあなたから爆発させてあげる!」
「……爆発するのは……非リア充だけで十分よ」
バクシエルの攻撃が発動する寸前、周囲の空間がぐにゃりと歪んでいつの間にか屋外へと移動していた。
ついでに言えばこの屋外の景色もあくまでフィクション。裕美が空間をハッキングして生み出した特製のフィールドだ。
これで周囲への被害はある程度は防ぐことが出来るだろう。
そして、こちらの攻撃の余波も。
「……設置…完了」
視認した位置――バクシエルを囲む形に座標を設定。
裕美が何をしているのかバクシエルには見えないだろう。現に攻撃が飛んできていることになど気づかず、こちらへと攻撃の照準を向けている。
バクシエルの視線が裕美を捉えている隙をつき、裕美は小さく合図を慣らす。
「………起爆」
ささやかな声。それに比例した大爆音。
バクシエルの周囲に設置された【ステルスボム】が立て続けに連鎖爆発を起こしたのだ。
途端に白煙に包まれるバクシエル。
だが向こうもただでは終わらない。
「こいつを浴びなさい!」
白煙を晴らす熱風が吹き荒れた。
腕をクロスして直撃を躱す裕美であったが、その精神には異常が走る。
(う……これは、ガチャが引きたい欲……)
バクシエルの爆弾から放たれた狂気の熱風は、その人の中にある幸運への妄執を呼びだすものだ。
簡単な言葉で言えば、ガチャで当たりのキャラが引きたくなる。引くまで絶対回し続けたくなる。
バクシエルらしい、なんとも厭らしい精神攻撃だ。
裕美はスマートフォンを手にしてしまうが、衝動にはなんとか抗いゲームとは違うアプリを操作する。
「神引きの体験が相手を弱体化させるのであれば……これを見て」
そう言って裕美がスマートフォンをバクシエルに向かって掲げる。
画面に映し出された『あるもの』を見たバクシエルは、急激に顔を青ざめさせた。
「な、な、な、なによそれーーー!!!」
画面に映し出されていたのは、裕美がやっているソシャゲのガチャ画面スクショであった。
虹色に光る背景と共にSSRの文字が輝いている。しかもこれ無料単発ガチャだ。やばいな。
「いやぁーーー!! そういうのいやなのーー!!」
バクシエルは爆死を司るが故に、神引きには弱い。
それが真実だと確認した裕美は、スマートフォンのアルバムの中から同じようなスクショをいくつか選択していく。
最高レアを10連一発で引いた時の画像。最高レアを2枚抜きしたときの画像。
バクシエルが嫌がりそうな被写体だけをチョイスして、スマートフォンを彼女へと向ける。
「……ここで……記念に取っていた神引きのスクショが役に立つとはね」
「へっ、え? なに、なにこれ、いやぁぁぁ!!!」
バクシエルが頭を抱えながら悲鳴をあげた。
今しがたチョイスした神引き画像。そのデータを直接相手の脳内に送り込んでいるのだ。
いわばブレインハッキング。こうなってしまえばバクシエルは延々と己の苦手なものを見続けて悶えることしか出来なくなる。
「あああああっっっ!!」
「……私は帰りの電車が混む前に帰りたい派なの。……さっさと終わらせるわ」
しばらくの間攻撃はしてこないだろうと踏んだ裕美は、自分の帰路のこともしっかり考えつつ、ステルスボムでひたすらにバクシエル爆破に次ぐ爆破の煙に包んでやった。
大成功
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ヴィクトリア・ヴィッカース
アドリブ・共闘可
ややっ、現れましたねオブリビオン!
このような場所で爆死などと叫び立てるとは…
すなわちテロリズムなのですね!
何が目的なのかは知りませんが、そのような暴力に屈する程わたくしはヤワではないのです!
展開・絶対防衛領域!
この正義の盾を持って皆様をお守りするのがわたくしの役目ッ!
…と言っても守ってばかりではあのオブリビオンは倒せません!
正直使いたくなかったのですが、このキャリバー60を持ってヤツを撃ちます!
…は?ゲーム?ガチャ?
何をバカな事を言っているのですかッ!
ゲーム如きで他人を傷つけて良いワケがないでしょう!
全く、オブリビオンというのは理解し難いものです!
●ヴィクトリアの知らない世界
「ややっ、現れましたねオブリビオン!」
コスプレエリアから現場に駆け付けたヴィクトリア・ヴィッカースは、千連天使バクシエルの姿を視界にとらえると、ビシッと指を突き付けてみせた。
「なあに、あなたも爆死したいの?」
「このような場所で爆死などと叫び立てるとは……すなわちテロリズムなのですね!」
正確には『爆死』の意味は違うと言うべきか……いやしかし実際爆発しているので間違いではないのか……。
なんにせよ、バクシエルをこのまま放置していては危険だということだけは正しい。
ヴィクトリアはセキュリティシールドを地面に置くようにして構えた。
「展開・絶対防衛領域! ここより先は正義の名の下に不可侵の聖域となります!」
詠唱と共に盾が光り輝く。
その光はキラキラと周囲に広がっていき、やがてそのきらめきは透明な壁のようにバクシエルと参加者たちの間を塞いだ。
ヴィクトリアの正義が形となったその防壁は、バクシエルの攻撃から彼らを守り切ることだろう。
しかし防御に徹するだけでは勝機は見えない。
ヴィクトリアは苦々しい顔を浮かべながら、自身の武器を手にする。
「正直使いたくなかったのですが、このキャリバー60を持って
テロリストを撃ちます!」
「テロリストですって!? 違うわよ!」
「何が違うというんですか? あれだけ爆死爆死と叫んでおいて!」
「だーかーらー。それはゲームの用語なの。俗語」
「……は?」
ようやくバクシエルによる訂正が入った。
『爆死』というのはお目当てのキャラクターや装備が引けなかった者たちの悲しみを言葉にしたものである、と。(似たような『地雷』の意味も教えてもらった)
始めはふんふんと聞いていたヴィクトリアであったが、聞き終えてもなお納得できない点がある。
「何をバカな事を言っているのですかッ! ゲーム如きで他人を傷つけて良いワケがないでしょう!」
「如き!? 如きって言ったわね! ゲームに命を賭けてる人たちだっているのに!!」
「ですが、そういう人たちはこんな風に爆弾騒ぎなど起こしません!」
「ううっ」
まさに、正論。
オタクや創作の世界には疎いヴィクトリアであったが、この短い交流の中でも彼らが持つ熱い情熱や愛はこれでもかと感じた。
だからこそ、それを人を傷つけるという方面で発露したバクシエルのことはなおさら許せないと思ったのだ。
「全く、オブリビオンというのは理解し難いものです!」
一時を共にした同胞たちを守るため、ヴィクトリアはキャリバー60を構え直す。
その姿はまさにヒーロー。本物のヒーローの風格であった。
大成功
🔵🔵🔵
シン・クレスケンス
【WIZ】
「ノクス」
ぼそりと呟くように呼べば、手元に梟の姿の精霊が現れ、ホゥとひと鳴き。
【隔絶結界】が拡がり、範囲内のオブリビオンを結界内に引きずり込みます。
周りの景色をそっくり写し取った異空間の迷宮です。結界内に一般人はいませんし、飽くまで異空間なので破壊されたところで現実世界には何ひとつ影響はありません。
「ツキ、暴れて構いませんよ」
言うなり、通常の大きさに戻ったツキが、鞄の中に押し込められた鬱憤を晴らすように、爆弾などものともせずオブリビオンを喰い散らかします。
僕は詠唱銃や【範囲攻撃】魔術で仕留めていきます。
神引きの経験、ですか。一回の引きでシークレットを当てた、とかでも有効でしょうか?
●バーチャルだけが爆死ではない
未だ喧騒の中にある戦場に一人の青年――シン・クレケンスが姿を現した。
「ノクス」
自分にしか聞こえないくらいの声量で呟くと、自身の手元に梟がふわりと姿を現す。
この梟も普通のものではない。シンが使役する精霊だ。
シンの視線の真意に応えるように頷いたノクスは、ホゥと一鳴き。
すると彼を中心に結界が広がっていき、ハッキングされた空間をさらに埋め尽くしていく。
景色自体は変わらない。だが、この空間にはシンとバクシエルの二人だけが居る。
ハッ、とバクシエルが鼻で笑った。
「こんなもので閉じ込めたつもり? 全部爆破してあげるんだから!」
そう言うが早いか、バクシエルはどこに隠し持っていたのか分からないほどの無数の爆弾を宙に放り投げた。
無造作に投げられた爆弾は連鎖して大きな爆発を起こす。
爆風によってスーツの裾をはためかせながら、シンはあくまでも落ち着いた顔のまま呟く。
「飽くまで異空間なので破壊されたところで現実世界には何ひとつ影響はありません。ですから……ツキ、暴れて構いませんよ」
『待ってたぜ!』
嬉しそうに跳ねた声をあげ、ツキがバッグから飛び出した。
するとまるでぬいぐるみのようだったサイズはみるみるうちに巨大化し、立派な闇色の狼が参上する。
『ずっとせまっ苦しいとこに居たんでな……ちょっくら肩慣らしと行くか』
一吠えするやいなや、ツキはバクシエルの方へと駆け出していった。
無論、そんなツキの方にも爆弾が投げつけられるが、ツキはそれを野生の勘で軽々と躱していく。ときにはヘディングで相手にお返しだ。
そうしてバクシエルとの距離を詰めると、後ろ足を蹴って飛び上がり、バクシエルの白い羽にガブリと噛みついた。
「いやー! いたたたたた!! そこも痛覚あるんですけどー!!」
狼一匹がぶら下がる体重を支えるのは酷だろう。
痛みに悶えながらもなおバクシエルは周囲に爆弾をばらまき続けている。
そのうちの一つがシンを狙って降ってきた。
「そんな攻撃では当たるものも当たりませんね」
精度を欠いた爆弾を詠唱銃で撃ち落とす。宙で爆発する様は花火の様。
重みに負けて地面に落ちてきたバクシエルはツキを引き離そうと必死にもがいている。
見た目は少女とはいえオブリビオン。なかなかいい勝負になっているようだ。
あと一手が欲しい……と考えたところでシンはなにかを思い出して懐を探った。
「ああ、ありました。神引きの経験というのは一回の引きでシークレットを当てた、とかでも有効でしょうか?」
「へえ……?」
バクシエルにスマホの画面を見せる。
それはゲーム画面ではなく写真。なにやらたくさんのカードが並んでいるが、その中心にひときわ輝くキラキラで派手派手のカードがあった。
この山盛りすぎな存在感。まさしくシークレットレアの輝き。
「きゃああああああああ!!!」
その眩さに目をやられたバクシエルは、両目を手のひらで覆い、その場をゴロゴロと転がり始めた。
思ったよりダメージが入ったらしい。そのあまりの反射行動にシンもツキも一瞬ぽかんとしてしまうほどの勢いだった。
『撮っておいて良かったな、それ』
「何が決め手になるか、というのもあなどれませんねえ」
とにかく、千連天使バクシエルは確実に弱体しつつある。
倒すにはあともう一押しといったところだろうか。
大成功
🔵🔵🔵
南青台・紙代
アドリブ連携歓迎
【WIZ】
姿を見せたな影朧(オブリビオン)
イベントを台無しにするなど、我輩的には許されざる所業である。
ここは我が故郷ではないが故に大人しく骸の海にお帰り願おう。
電脳ゴーグルをはめ、UC『エレクトロレギオン』を発動。
「数には数で対抗させてもらうとしよう」
レベル×5体の戦闘用機械兵器の群れに
相手を囲むようにして攻撃させる。
自身への攻撃の余波は『蛇怪之気』のオーラで防御。
「生憎、貴殿の嘆きは正しく理解できぬ。
我輩、ソオシャルゲヱムにだけは手を出さぬと決めているのでな」
我輩の最大の幸運は、裏山で掴んだ朽ち縄が蛇(クチナワ)だったこと。
その蛇が命をくれた。きっと、運は使い果たしておるよ。
●人生最大の神引き
「姿を見せたな
影朧」
サークルスペースから駆けつけてきた南青台・紙代は千連天使バクシエルに向かって蛇のような睨みをきかせた。
自らも創作を嗜む身の紙代にとってサマコミのようなイベントはとても有意義に過ごせる場所だ。そんな場所を爆破など、到底許されるような所業ではない。
故に、紙代は創作者の代表としても彼女と立ち向かっている。
「ここは我が故郷ではないが故に大人しく骸の海にお帰り願おう」
そうきっぱりとした言葉を投げつけ、手にしていた電脳ゴーグルをはめる。
瞬間、目の前に広がるのは電脳空間。サマコミ会場が電子化されたような異空間が周囲に突然現れた。
「こういうのはさっきも見たわ! 空間もろとも爆破してあげる!」
余裕そうな笑みを浮かべたバクシエルが大量の爆弾を宙へとばらまいた。
だが、そういった行為をしてくることは紙代も読んでいる。
「数には数で対抗させてもらうとしよう」
そう言って発動させるは、ユーベルコード・エレクトロレギオン。
瞬く間に電脳空間に小型の戦闘機械兵器が召喚されていく。
その数なんと540機。バクシエルがばらまく爆弾の数よりも多い、ちょっとした軍隊だ。
「爆弾を集中的に破壊するがよい!」
紙代が命令を飛ばせば、忠実な機械兵器は囲い込むように照準を爆弾に合わせ、寸分のラグもなく銃弾を発射する。
総攻撃を受けた爆弾は耐えられるわけもなく、そのまま宙域で爆発した。
ぼぉん、ぼぉん、と花火にも似た爆発音が電脳世界の空に響く。
余波で飛んでくる爆風を防御しながら、紙代はバクシエルへと近づいた。
「生憎、貴殿の嘆きは正しく理解できぬ。我輩、ソオシャルゲヱムにだけは手を出さぬと決めているのでな」
「! なら神引きも未体験なのね! 良いわ、この怨念で爆死しちゃいなさい!」
バクシエルが両腕を翳すと、その上にひと際大きな爆弾が生まれた。今までの物とは桁違いの大きさだ。
おそらく彼女はこの攻撃に全てを賭けるつもりなのだろう。
「いっけぇぇ!!!」
振りかぶった爆弾が紙代に向かって飛んでいく。
……はずだった。
「え?」
何故か巨大爆弾は爆発することなく、ぼてりと地に落ちてころころと転がるだけだった。
紙代はそれを刺激しないように注意をしながらそっと優しく触れる。
「我輩の最大の幸運は、裏山で掴んだ朽ち縄が
蛇だったこと。その蛇が命をくれた。きっと、運は使い果たしておるよ」
「だ、だったらなんで……」
「決まっておろう? それこそが最大の『神引き』に値するからである」
紙代はそうはっきりと言い切ると、口元に笑みを湛えたまま爆弾をくいっと押した。
その反動によって爆弾はごろごろと転がり出し、真っ直ぐにバクシエルの方へと向かって行く。
「え、ちょ、まっ――」
一瞬の閃光。そして爆発。
どおん! と内臓にまで響きそうな衝撃と共に、巨大爆弾は消し飛んだ。
もくもくと煙る中にバクシエルの姿は確認できない。倒したのか、逃げたのか、その辺りは調査が必要だろう。
だが、ミッションはコンプリートだ。
「さて、お目当てのサークルにお邪魔してみるとするかのう」
猟兵の顔から参加者の顔へと切り替わった紙代はゴーグルを外して、現実のサマーコミックフェスティバル会場へと踵を返した。
猟兵たちの活躍もあり、今年のサマーコミックフェスティバルは大盛況のうちに幕を下ろした。
だがしかし、戦いは終わらない。そう――ウィンターコミックフェスティバルに向けて人々はまた動き始めるのである。
大成功
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