猟書家決戦~偉大なる者よ、華のように散れ
キマイラフューチャー世界の中心核、システム・フラワーズ。キマイラフューチャーの安寧を支える『コンコンコン』そのもの。そこには今、超巨大な城が聳え立っていた。
――そう、猟書家キング・ブレイン率いるスーパー怪人の組織『秘密結社ブレイン』の居城、キングブレインキャッスルである!
彼らはすでにキマイラフューチャー世界の侵略をほぼ完了させていた! なんてこった!
そしてキング・ブレインは、スーパー怪人たちを他世界に送り込もうとしているのだ。
……もし、本当にそうなったら? 様々な世界に、深刻な混乱と破壊が引き起こされるだろう! 世界観とかが滅茶苦茶になる!
「ブーレブレブレ! 猟兵のみなさまご機嫌いかがですか?」
玉座っぽいカッコいいデザインの椅子に座ったキング・ブレインが、こちらに向けて語りかけてくる。
「吾輩たちの野望は、一つの大詰めを迎えています。しかし……貴方たちは来るのでしょう?
ならば歓迎しましょう! 吾輩の配下であるスーパー怪人たちと、さらに選りすぐりの四天王も控えています! 止められるものなら止めてみせなさい、猟兵たちよ!」
立ち上がりながら、ばっとマントをひるがえす。その姿に歓声が沸き上がる。
――おおおおぉーっ!
――わー、キング・ブレイン様カッコいいー!
――前の方に居る奴は頭を低くしてくれ! 後ろの俺たちが映んないじゃんかよー!
大首領の周囲に集うはスーパー怪人たち。彼らは一様に気焔万丈、凄まじいテンションであった。
そう、怪人たちは誰も彼もが、心優しき大首領に心酔していた。恐怖で支配ができていると思っているのはキング・ブレインだけである。
「では折角なので、みなさまを待ち構える部下たちを順番に紹介していきましょうか。まずは一人目――」
「大詰めの段階に入ったのに企みが露見したキンブレが、猟兵を迎え撃つと堂々と宣戦布告してきた。バレちゃったんだけど開き直ったパターン、とゆーやつだ」
御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)は、映画館のスクリーン並に巨大な空中ディスプレイに映し出された動画を一旦停止した。
無粋なツッコミは受け付けない、とまず最初に前置きした上で、グリモアベースに集った猟兵たちに説明を始める。なるほど色々と『まあキマフュだし』の精神で流していこう。
「奴は、動画投稿サイトの自分のアカウントにこのカッコ良い映像を投稿しおった。あと妾のところにも宣伝よろしくって依頼が来たし」
ちなみにこの動画、この後にはスーパー怪人一人一人の紹介が入っていて尺が異常に長い。菘が止めた時点ではシークバーが10%も進んでいないほどだ。
というか、本人のアカウントからキング・ブレインたちの動向は知れたのではないかとも思えるが、もちろん敵も身元バレ対策は万全。場所が割れるようなリアルタイム生配信は行わなかったし、投稿内容も、怪人たちが特盛ラーメン完食チャレンジをしたり、ゲーセンで遊んでいたり、バケツいっぱいの氷水を頭から被ったり……というような、割と真っ当な内容だったそうだ。
「そりゃー、それで食い逃げとか悪質な台パンとかやらかすなら、事件予知して出動できたかもしれん。だがそういう類の動画はなかったしな。しかし今思えば、これらも怪人たちをスーパーに鍛え上げる、地獄のような特訓の一環だったのであろうなあ」
本当に、『まあキマフュだし』で済ませないとキリがない話である。
なんにせよキング・ブレインは準備万端。今やデビルキングワールドの悪魔たちすらも凌駕する、スゴい強さを得たスーパー怪人を率い、悪の組織『秘密結社ブレイン』を作り上げていた。
「本拠地である『キングブレインキャッスル』はキマフュ中心部にある。どうやらドンフリのCGからシステム・フラワーズの支配権を譲り受けたようだが、きっと恐るべき頭脳戦、交渉劇が繰り広げられていたのであろう」
多分そんなことはない。何となくとかそんな感じだよ。
「そして奴は、ブレインバイシクルの残骸をシステム・フラワーズに組み込み、他の世界にスーパー怪人たちを送り込もうとしておるのだ。……妾的にはキンブレは、何でも出てくるコンコンコンを輸出して、恵まれん人々に施しをするようなタイプだと思っていたのだがな」
あるいは本人なりに葛藤があったのかもしれないが、それは猟兵たちに推し量れるものではない。
「だが心配無用、システム・フラワーズには直行のメンテナンスルートがある! キマフュが真っ二つに割れてるのもそのためだ。で、猟兵に想定外のルートで進攻をされちゃったわけだが、『自分たちは侵攻を知っていて、待ち構えているんだよ!』と捏造したのが先の動画とゆーわけだ。
はっはっは、妾たちは堂々と乗り込もうではないか! キング・ブレインとスーパー怪人たちを倒し、秘密結社ブレインを壊滅させるぞ!」
キャッスルに乗り込むためには、凄まじい数のスーパー怪人たちとの戦闘を突破する必要がある。
「立ち塞がるのは『白ブーメランパンツ過激派怪人』たちだ。
奴らは強い、そして数が多い。下手をすると数十体、いや百体ぐらいから同時に攻撃されるだろう。対策をせずに突っ込んだら確実に敗北してしまうだろう。いやあ、奴らも修行を必死に頑張ったのだな! 妾は嬉しいぞ!」
キマフュの怪人をボコった数なら相当上位に入る菘は、とてもどうでもよい感激をしていた。
「そしてキングブレインキャッスルの内部に突入したら、いよいよキンブレと決戦だ! しかし残念ながら一対一とはならん。奴のためなら命すら賭ける、『日直式キング・ブレイン四天王』が周囲に控えておるのだ。立ちはだかるそいつらとも同時に戦う必要があるぞ」
当然ながら四天王たちもスーパー怪人で、それぞれがユーベルコードを駆使して襲い掛かってくる。
ところで、日直式とは?
「なんか四天王のポストが人気すぎて日替わりらしい。まあ何人いても問題あるまい、四天王とはそういうものだ」
それはごもっとも。
「繰り返し念を押すが、キンブレを含めて奴らは極めて強敵だ。ノリはそのままであっても怪人だからと気を抜くなよ?」
なお、キング・ブレインを倒した後は、キングブレインキャッスルは自動的に崩壊する。破壊についてを考える必要はない。
「実はキンブレは城に自爆装置を設置していたようでな。自分が倒されたら自動的に作動するようだ。いや~、お約束をよく分かっておる!」
お約束なのかどうかはともかく。猟兵たちは簡単に脱出することができるが、爆発するまでには多少の時間の猶予がある。潔くこの場で死ぬつもりのキング・ブレインと話すこともできるだろう。
「なんだかんだで奴も頭脳派の強者だ、最期にオウガ・フォーミュラの秘密とかをポロリするような迂闊なことはしでかさんだろうが、何かトークとかがしたいなら好きにしてくれ」
それに仮に、これでキングブレインキャッスルごと吹き飛んでも、ドン・フリーダムのCGがキング・ブレインたちを纏めて再生する。
「再生できる回数にも限度はあるようだがな。まずはこの一戦を勝利することが大切だ。
……さて、ではこのノリに付き合えるだけの心の準備はできたかのう? 皆の勝利を信じておるぞ! では行ってくるがよい!」
高笑いとともに菘のグリモアが輝き、猟兵たちはシステム・フラワーズへと転送されていくのだった。
雨森
OPをご覧いただきありがとうございます。雨森です。
今回はコメディな純戦、猟書家キング・ブレインとの最終決戦。
戦場の舞台はキマイラフューチャーの中心部、システム・フラワーズとなります。
●第一章
スーパー怪人となった『白ブーメランパンツ過激派怪人』との集団戦です。
非常に頭数が多く、追加のユーベルコードも使用してきます。常に誰かのものが使用状態であると考えてください。
何か対策を取っておかないと、必ず失敗となります。
『追加ユーベルコード』
【白ブーメランパンツ】に【研ぎ澄ました気合い】を付与して攻撃し、あらゆる物質を透過して対象の【メンタル】にのみダメージを与える。
●第二章
キング・ブレインとの決戦です。
と同時に、日直式キング・ブレイン四天王とも戦うことになるという状況を想定しておかないと、厳しい戦いとなります。
第二章の断章でプロフィール紹介をする四天王のうち、最低でもどれか一体のユーベルコードへの対策が必要となるでしょう。
『四天王の使用ユーベルコード』
【キング・ブレインへの親愛に溢れるか】の如き楽曲「【大首領様サイコー!】」を演奏し、聞いて【呆れ】を感じた対象全てを自身に殺到させる。
「【行くぞ僕らの秘密結社】」の演奏中、戦場には敵の視界だけを奪う【雰囲気が出ている黒い煙】が散布され、味方全員の【テンション】が増加する。
【キング・ブレイン賞賛】の主張を込めて歌う事で、レベルm半径内の敵全てに【プレッシャー(命中率ダウン)】の状態異常を与える。
「【キング・ブレインは正々堂々戦う】」を歌唱中、自身及び歌が聞こえる範囲内の全員の【正面以外からの攻撃】の成功率を10分の1にする。
●第三章
自爆装置が作動したキングブレインキャッスルから脱出をします。
僅かな時間ですが、最期にキング・ブレインと話すもよし、スタイリッシュ脱出を試みるもよし。
故郷のことなどを話してあげると、喜ぶかもしれませんね。
それでは、皆様の素敵なプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『白ブーメランパンツ過激派怪人』
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POW : 至高の履物とは
【白のブーメランパンツ】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD : 白ブーメランパンツとは強さの象徴なり
完全な脱力状態でユーベルコードを受けると、それを無効化して【白のブーメランパンツ】から排出する。失敗すると被害は2倍。
WIZ : 白ブーメランパンツの魅力を知れ!
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【同志】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11
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アルテミシア・アガメムノン
……怪しい人と書いて怪人。それを体現した感じの方達ですわね。
あの様な方達にキマフュ以外の世界で彷徨かれてはその世界は恐怖に包まれてしまうでしょう!
という事でキング・ブレインさんを止めに行きましょうか。
でもあの怪人さん達と正面から戦いたくありませんし……
そうですわね、こうしましょう。
『認識不能の神威』で不可視の存在に。
そのまま空を飛んで彼等をスルーして奥へ……行っても良いのですがまあ後追いされると厄介ですから魔力の衝撃波をズバー(衝撃波×範囲攻撃)
ただの衝撃波ではありません。この魔力に触れた方は秘密結社の一員であるという記憶を失ってしまうのです!
混乱が収まる頃には城の自爆が始まるでしょう。多分。
キングブレインキャッスルの前には、白いブーメランパンツ一丁だけを着た
漢たちが大量に群れていた。
「さーて、俺たちが相手をする猟兵はどんな奴だろうな?」
「初心者にも、いや初心者だからこそ、優しくコーディネイトしてやらんとな、素敵な白ブーメランパンツを!」
その光景を見た者のほとんどは、まるで悪夢のようだと断じることだろう。そしてごく一部の、非常に奇特な――良くも悪くもこのノリについていける――者は、実に賑やかな有り様だと微笑むことだろう。本当に居るのかな?
「……怪しい人と書いて怪人。それを体現した感じの方たちですわね」
もちろん、意気軒高な彼らを遠くから隠れて窺っているアルテミシア・アガメムノン(黄金の女帝・f31382)は前者。一般的でマトモな思考を持っていた。
怪しいというか、彼らははっきりいって不審者である。と同時に、嫌な想像も浮かんでくる。
「あの様な方たちにキマフュ以外の世界へ彷徨かれては、その世界は恐怖に包まれてしまうでしょう!」
……例えばクロムキャバリア。キャバリアと互角に戦えてしまう怪人たち! 恐ろしい!
ということで、キング・ブレインを止めに行きたいとは思うアルテミシアだったが……正直言って、白ブーメランパンツ過激派怪人と正面から交戦したくはない。勝っても負けても何かを失いそうだもの。
「……そうですわね、こうしましょう」
割と長めで必死な逡巡の末、アルテミシアは自身の肉体に魔力を纏った。外部からの様々な感知を不可能にして、空を飛んで城に乗り込む作戦である。怪人たちはスルー一択で。
「と、言いたいところですけれど。まあ後追いされると厄介ですからね」
上空から、魔力の衝撃波を広く拡散するように放っておく。
「な、なんだ!? どこから攻撃が?」
「……あれ、どうして俺たちはこんなとこに居るんだ?」
「分からん、いやしかし俺たち、随分と身体が立派になってるな!」
アルテミシアの魔力をズバーっと受けた白ブーメランパンツ過激派怪人は、秘密結社の一員であるという記憶を失ってしまった。
「混乱が収まる頃には、城の自爆が始まることでしょう。多分」
こんな彼らでも、爆発に巻き込まれてしまうには忍びない。わちゃわちゃと元気よく騒いでいるスーパー怪人たちを下に眺めつつ、アルテミシアは空高く飛んでいくのだった。
大成功
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フリル・インレアン
ふええ!?へ、変質者です!!
ふえ?変質者は私の方って、そんなわけあるわけないじゃないですか!
ふえ?この場で
・・・を被ってないのは私だけって、確かにそうですけど、それとこれは別の話のような……。
ふええ、アヒルさんどうしましょう。
こんな時のふええ劇場って、アヒルさんが使うんですか?
嫌な予感しかしません。
これはアヒルのラビリンスですか?
『この中で
・・・を装着する者にダメージ』ですか、よかったこれは怪人さん達だけダメージですね。
ふええ!?なんで私までダメージを受けるんですか?
私も履いているって、そうですけど……。
怪人さんの方が多く履いているからダメージが多かったようです。
「ふええ!? へ、変質者です!!」
開口一番、フリル・インレアン(大きな
帽子の物語はまだ終わらない・f19557)が叫んでしまったのは仕方がないことであろう。
もちろん、キング・ブレインを倒すべくキマイラフューチャーの中枢部まで赴いたのはフリル自身の意志である。……が、何が待ち構えているかが分かっていても、現実というか現物に直面した時に、悲鳴を上げずにいられるかというのは別問題なのである。なんせ外見がアレな怪人たちの山だもの。
「むむっ、失礼だな! むしろお前の方が変質者じゃないか」
「ふえ? 変質者は私の方って、そんなわけあるわけないじゃないですか!」
「周りを見てみたまえ。現実を直視するんだ」
「ふえぇ、この場で、パ、
・・・を被ってないのが私だけなのは、確かにそうですけど」
「君にも大切な家族や友人、恋人がいるだろう? さあ、このブーメランパンツを穿いてお帰り。被る用もあげよう」
残念なことにスーパー怪人は内面も相当アレになってしまっていた。
紳士的に差し出されたブーメランパンツを前に、フリルは激しく困惑してしまう。場の雰囲気に呑まれかけてしまい、まさに尊厳の危機である。あと怪人たちも『このまま押し切れるぜ!』とか思っていた。なんせパンツという言葉すら、ごにょごにょと恥ずかしそうに小声で口に出しているし。
とはいえ、怪人たちはある意味で好戦的ではあるが、フリルの弱気さがこの場では良い方向に作用していたのは事実。この頭数で直接的な実力行使に出られたら、今頃はもう酷いことになっていただろう。
「ふええ、アヒルさんどうしましょう?」
打開できる確信はないが、ひとまずは相棒のアヒルさんに作戦を相談する。
……すると、返ってきたのはやや意外な回答。
「こんな時のふええ劇場って、アヒルさんが使うんですか? 嫌な予感しかしません」
妙に自信満々なのが気になるが、フリルはふええ劇場の内で何を使用するかをアヒルさんに任せることにした。
――そして、場には巨大な迷宮が広がる。
「これは、アヒルのラビリンスですか?」
「何だこれは!」
「ぐあっ! 頭が痛い……!」
フリルと怪人たちの間にせり上がってきた壁が、両者を隔てる。と同時に聞こえてきた悲鳴は、何か理不尽な『アヒルの法則』による被害なのだろう。
「『この中で
・・・を装着する者にダメージ』ですか。よかった、これは怪人さんたちだけダメージですね。……ふええ!?」
納得するフリル。だが、突然下腹部に締め付けられるような痛みが走る……!
「なんで私までダメージを受けるんですか?」
それはもちろん、フリルもパンツを穿いているからである。
「それは、そうですけど……」
迷宮の中で法則は分け隔てなく平等に適応される。白ブーメランパンツ過激派怪人たちは、頭にもパンツを装着している分ダメージが倍増するし、あと手持ちの分も武器にしているので、更に加算だか乗算されただけだ。
「ふええ、なんだか納得いきません……」
痛みに倒れ込む怪人たちの目を掻い潜りつつ、フリルは迷宮という壁も活用しながら、場の突破を試みるのであった。
それと、さすがに穿いているパンツを脱ぐという選択はしなかった、ということにしておこう。真実は本人のみぞ知るのであるが。
大成功
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ユニ・バンディッド
アドリブ歓迎
え、えー……コレ、盗んないとダメ?(目が死んでいる)
もー!どうにでもなれ!悪魔的視力で動きを盗み、気合の入ったブーメランパンツ攻撃やヒップアタックを先読み回避しつつ、わー!わー!【デモン・フェイカー】。
宙に生やすのは、精巧なる贋作!偽物ブーメランパンツ!だからって被らないし穿かないよ!偽物ブーメランパンツ投擲で反撃だー!。
……贋作生成能力で攻撃がボクのユーベルコード、と思うよね?。真価は、贋作対象になった「本物の操作権」を盗むこと!。
怪人さん達の無効化ユーベルコードもタイミングを見誤らせて、騙し討ちに盗った「本物のブーメランパンツを自在に操作できる権」で、とーぜん……『潰すよね?』
デビルキングワールドの悪魔は、必ず何かの概念を司っている。
たとえばユニ・バンディッド(贋作の悪魔・f31473)は贋作の悪魔だ。そして魔界盗賊として、様々なモノを贋作とすり替えて盗んできた。それはあたかも息をするように。まるで三大欲求に続く、四番目の欲求であるかのように。
根本的に盗みとは悪行だ。良心が痛むことだってある。もちろん相対する者が
オブリビオンであるならば、盗み奪うことに躊躇いなどあろうはずもない。
「え、えー……」
しかし、とはいえ。
「ふっふっは、ブーメランパンツは実に素晴らしいだろう? さあ穿け!」
「……コレ、
盗んないとダメ?」
今、ユニの目は完全に死んでいた。テンションも死んでいた。
鍛え上げたユニの審美眼からすれば、白ブーメランパンツが極めて上質な物だと理解はできた。怪人たちが股間どころか頭にまで装着して、おまけに武器として所持をしているのは、安物下着とは比べ物にもならない、原材料から製作工程まですべての質が高い高級品に違いない(実際には、レアなコンコンコンスポットから出てきた物だが)。きっと着心地も素晴らしいのだろう。
いや、そんなパンツのクオリティ云々なんてどうでもいいのだが。
「もー! どうにでもなれ!」
もう開き直るしかない! ユニは怪人たちを無視して戦闘へと入った。
「せいっ!」
襲い掛かるスーパー怪人たちの動きを悪魔的な視力で
盗み、攻撃を回避する。
すごい勢いで飛んでくるブーメランパンツをギリギリ……ではちょっと嫌なので、それなりに間隔を作って躱す。ユーベルコードでなくても普通に勘弁である。
「飛び道具が避けられるなら、直接攻撃だ! 見よ至高のブーメランパンツアタック!」
「わー、わー! 『生えろ、精巧なる贋作!』」
「むむっ!? なんた、観念して自らブーメランパンツを被ろうというのか!」
ヒップアタックで迫る尻に悲鳴を上げながらユニが宙に生み出したのは、大量の偽物のブーメランパンツ。それらを引っ掴み、怪人たちに投げつけまくる!
「んなわけあるか! というか穿く方が先だろ、穿かないけど! どりゃー!」
「ははは、ブーメランパンツを武器とする志だけは良しとしよう! だが、そもそもそのパンツは出来が悪い!」
笑いながらも一旦攻め手を止め、反撃へとするために無防備な状態でパンツを受ける白ブーメランパンツ過激派怪人たち。ユニの細腕で投げた白い布地が、ぽすぽすと身体に当たっていく絵面は実にシュールである。
「これはユーベルコードなのだろう、ならば遠慮なしに跳ね返す!」
「……うん、そうだと思うよね?」
ヒップアタックを仕掛けてくる怪人たち。迫る尻に対して、ユニは薄く笑う。
「ん? ……おおおっ!?」
次の瞬間、怪人たちは倒れ込んだ。皆が身悶えしている。
このユニの攻撃の真価は、『贋作対象となった本物の、操作権を盗む』ことにある。相手の所有物の贋作を生み出し、自身の武器として利用することではない。
そう思わせるように騙し、無効化のユーベルコードの使いどころも見誤らせたのだ。
彼らは今、頭と股間のブーメランパンツの操作権をユニに掌握されていた。パンツの操作権とは何ぞや、と考えてはいけない。
むしろ重要なのは、掌握……そう、『握った』こと。
「そしたら、とーぜん……『潰す』よね?」
「ヒィッ!」
――何をどう潰したのか、具体的な描写は省く。
ただ、ユニは己の立てた作戦を完璧に成功させた、とだけ記述しておこう。
大成功
🔵🔵🔵
煙草・火花
へ、変質者でありますーーーーーー!?!?
こ、このような輩が許されてよいのでありますか!?
い、いえ、落ち着くのであります、煙草・火花
小生は世界を守護する學徒兵
この程度の状況で心を乱すなど……やっぱり無理でありますーーーー!!?
こ、こうなれば……!!
初手から一気にほぼ全身を可燃ガスに変えて周辺に散布
今の状況を打開するためならば、この姿を晒すのも已む無し……!
ガスが広がった所で軍刀の着火装置で点火
ガスの爆発で一気にまとめて吹き飛ばすであります……!
物質でない炎と爆発を透過することはできないでありましょう……!
それに……布ならば、燃やしてしまえば……!
(燃えて見えてしまうかもしれない物には目を閉じる)
「ぐぬぬ……! このまま猟兵の誰にもブーメランパンツを布教できないなんて許されん!」
「まったくだ、だがスーパー怪人になった俺たちならやれる! やれるさ!」
いつの間にやら戦いの目的が見当違いの方向へ飛んでいってしまっている、白ブーメランパンツ過激派怪人たち。これが力に溺れた者の末路か。
とりあえず円陣を組んで作戦会議をしてみたり、ブーメランパンツを素敵に見せつけるポージングをしたりしている彼らをモロに見てしまい、煙草・火花(ゴシップモダンガァル・f22624)は事件性のある甲高い悲鳴を上げた。
「へ、変質者でありますーーーーーー!?!? こ、このような輩が許されてよいのでありますか!?」
「当たり前だ、キング・ブレイン様が許してくれるからな!」
つまりアウト以外の何者でもない。
「い、いえ、落ち着くのであります、煙草・火花。小生は世界を守護する學徒兵。この程度の状況で心を乱すなど」
なんとかクールダウンを試みる火花。
……しかし、その時に脳裏に浮かんだしまったのは、一つの恐るべき光景。
サクラミラージュで、恐るべき怪奇事件を追いかける自分。斯くして、危険な取材の先に辿り着いたのは……白いブウメランパンツを装着した怪人たち――!
「……やっぱり無理でありますーーーー!!?」
別の意味で怪奇である。キマイラフューチャー産の怪人たちが他の世界へ輸出されることが、なんと恐ろしいことか! だからこそ、ここでキング・ブレインの野望は止めなければならない!
「こ、こうなれば
……!!」
しっかりと包帯が巻かれていた火花の両腕が、指の先からはらりと形を崩していく。そして、溢れ出す
中身が、広く散布されていく。
火花の身体の崩壊ともいえる現象は、しかし、そのまま腕だけでは止まらず全身へと及んでいく。
「出し惜しみはいたしません。この姿を晒すのも已む無し……!」
今の状況を打開するためならば、火花にとってあまり好んで使いたい手札であっても、惜しまず初手から一気に切る!
「なんだ毒ガスか? 頭にもブーメランパンツを装着した我らには効かんぞ!」
……色々と勘違いの入った相手の言動は無視だ。というか、彼らが相手なら晒してもそう構わない気もする。
「点火!」
広がるガスが戦場全体に満ちた頃合いを見計らい、火花は
軍刀に仕込んだ着火装置を作動した。
――!!
閃光、轟音。
「ぎゃーっ!」
盛大に吹き飛ばされるスーパー怪人たち。
「物質でない炎と爆発を、透過することはできないでありましょう……!」
物質透過という特性を与えられた武器として飛んでくるブーメランパンツに対策を講じた火花の作戦勝ちであった。
それに、だ。
「布ならば、燃やしてしまえば……!」
「熱、あっつ!」
「ヤバい! 大切なブーメランパンツが燃えていくぅ!」
これほど激しい爆発ですら身が消し飛ばないほどの頑丈さは恐ろしいが、ブーメランパンツにはそこまでの強度があるはずもなく。
必死に消火を試みる、白ブーメランパンツ過激派怪人たちからは目を逸らしつつ――燃えたら見えてしまうかもしれないモノがあるわけで――火花は、この場を突破するのであった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『猟書家『キング・ブレイン』』
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POW : 侵略蔵書「スーパー怪人大全集(全687巻)」
【スーパー怪人大全集の好きな巻】を使用する事で、【そこに載ってる怪人誰かの特徴ひとつ】を生やした、自身の身長の3倍の【スーパーキング・ブレイン】に変身する。
SPD : 本棚をバーン!
【突然、背中のでかい本棚を投げつけること】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【リアクションをよく見て身体特徴】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ : 脳ビーム
詠唱時間に応じて無限に威力が上昇する【脳(かしこさを暴走させる)】属性の【ビーム】を、レベル×5mの直線上に放つ。
👑11
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あまり同情できない感じでやられているスーパー怪人たちを尻目に見ながら、キングブレインキャッスルに到達した猟兵たち。
ご丁寧に城内案内図とか矢印で進路を誘導されながら城内を進んだ先。やたらと大きな扉を勢いよく開けた先には、キング・ブレインが待ち構えていた。
「ブーレブレブレ!! ようこそいらっしゃいました、猟兵の皆さん!」
派手な玉座から立ち上がり、猟兵たちに対して鷹揚に一礼する。
「語るべきことは多いのかもしれませんが、こと此処に至っては、私たちが為すべきは一つしかないでしょう?」
大首領の言葉の端に、強く濃い闘志が漲ってきているのが理解できる。猟兵たちは僅かに気圧された。
当たり前だ。修羅の世界デビルキングワールドにおいてかつて魔王にまで上り詰めた者が、まかり間違っても弱いはずがないのだ。
そして、そんなキング・ブレインの両端に立つのは『日直式キング・ブレイン四天王』。物凄い競争率を突破した――が、禍根は生みたくないので希望者の日替わりになった――強者たちだ。
「ドコドコドコ! キング・ブレイン様に楯突く者は俺が許さん!」
頭部が太鼓になっているタイコ怪人、ドラムールが頭の太鼓を叩く。
――【キング・ブレインへの親愛に溢れるか】の如き楽曲「【大首領様サイコー!】」を演奏し、聞いて【呆れ】を感じた対象全てを自身に殺到させる。
「ニュル! 僕たちが叩き潰してあげるよ!」
八本の腕を二本一組にして、四本のエレキギターを持ったタコ怪人、オークトパスが叫ぶ。
――「【行くぞ僕らの秘密結社】」の演奏中、戦場には敵の視界だけを奪う【雰囲気が出ている黒い煙】が散布され、味方全員の【テンション】が増加する。
「猟兵よ、我らの前に散るがいい」
頭部がマイクになっている燕尾服姿の怪人、マイキーが嗤う。
――【キング・ブレイン賞賛】の主張を込めて歌う事で、レベルm半径内の敵全てに【プレッシャー(命中率ダウン)】の状態異常を与える。
「うふふ、せいぜい足掻きなさいな」
四角いスピーカー型に手足を生やした怪人、スピーチャーが美声を出す。
――「【キング・ブレインは正々堂々戦う】」を歌唱中、自身及び歌が聞こえる範囲内の全員の【不意討ち攻撃】の成功率を10分の1にする。
「「「「我らキング・ブレイン四天王! さあいくぞ猟兵
!」」」」」
先走った四天王は、攻撃を一斉に行った。
――♪♪♪ ――!!!
「ぎゃー! ち、ちょっと待ってください!」
次の瞬間、凄まじく大きな不協和音の旋律が響き渡った! キング・ブレインも叫ぶ!
そりゃそうだ、四人ともが演奏系ユーベルコード使い。自分の楽曲をそれぞれ勝手に演奏するものだから、同時に聞こえるのは騒音にしかならない。しかも全員音楽ジャンルがバラバラだし。
「四人で演奏を合わせましょうよ!」
「いや、俺の演奏(という名のキング・ブレイン様への敬愛)が一番だから」
「そうだよ、だから僕に合わせてくれ!」
「いや我をバックアップしたまえ」
「何言ってんの、あなたたちは私の伴奏役でしょ?」
わちゃわちゃと論争を始める四天王たち。……このままキング・ブレインを不意討ちしてもいいかも。
「とにかく! だったら一度に戦うのは一人か二人ぐらいまでに絞ってください、そうしないとまともに戦えません!」
「「「「はーい
……」」」」
……強引にまとめたキング・ブレインは、何事もなかったかのように猟兵に向き直る。
「いやあ失礼しました。それでは改めて、戦うと致しましょうか!」
かくして、ちょっと締まらずいかにもな感じで、最終決戦は始まるのだった。
アルテミシア・アガメムノン
【魔王国】
ほほほ、スピーチャーさんの歌は見事なものですわね!
流石です。ですが、うちのユニさんの舞も負けていませんわよ!
(とにこにこでユニさんの舞を見る。ブレインさんの突然の本棚をバーン!は第六感で何となく察知して瞬間思考力で見極めて回避)
……確かに正々堂々とは相性が悪いようですわねえ。
さて、ユニさんは……えっ、ブーメランパンツ怪人との絡み??
みちゃダメ?? あっ……(察し)
キング・ブレインさん。わたくし、個人の趣味をとやかく言うつもりはありませんが、ソレを(本棚ごと)投げつけるとなれば話は別です。おしおきが必要ですわね!
と『黄金の暴嵐』を発動。
吹き荒ぶ神雷と滅颶の奔流でおしおきです。(冤罪)
ユニ・バンディッド
【魔王国】アドリブ歓迎
うわ、スピーチャーさんの正々堂々って、相性悪くないかな!?(突然の本棚をバーン!と)
そっちが歌ならコッチは視力と足場習熟度を軸にした【盗みの奉納舞】で!動きを盗み、柱や空飛ぶ金貨も足場に蹴って空中も駆ける舞を魔王様に披露するよ。
キング・ブレインさん秘蔵の叡智の書ってどんなのかなー?……って、ちょっとー!?(嘘つきは泥棒の始まりって言うけどね!本棚を避け本を抜き盗って。こそっと錬金術で
真物改変、本の中身を盗り替えて投擲)
うわー!うわー!コッチはブーメランパンツ怪人さんとの絡み!?……叡智ってそういう…ばかー!(驚かせて捏造に混沌の布教)
あ、魔王様はみちゃダメ!
「ブーレブレブレブレ! 皆さん怖気づいてしまいましたか? であれば、そのままお帰り頂いても結構ですよ!」
独特な笑い声を響かせるキング・ブレイン。戦えば勝つと信じながらも、戦わずに済むならそれでも構わないと考えているのもまた本心なのだろう。
だがもちろん、猟兵たちが退くはずもない。
「ほほほ、スピーチャーさんの歌は見事なものですわね!」
堂々と一歩、アルテミシア・アガメムノン(黄金の女帝・f31382)が前に出る。その後ろには配下であるユニ・バンディッド(贋作の悪魔・f31473)も付き従っていた。
「あら嬉しいわね。私をご指名なの?」
「そうだね。君が一番、相手しやすそうだから」
「へえ……言ってくれるじゃないの」
ユニの挑発に乗せられ、スピーカーから響く声が低いものへ変わる。
「なら、せいぜいあたしの歌を堪能することね! 『キング・ブレインは正々堂々戦う』――!」
「ブレブレブレ、いきましょうか!」
美しい歌声が鳴り響き、キング・ブレインは地を蹴った!
でかい本棚が、アルテミシアの身体の寸前まで迫っていた。――と、気づけたのは、まさに彼女の直感による察知と状況判断力の高さの賜物だろう。同時に、その軌道は顔面直撃などではなく、身体の末端をかすめる程度で危険なコースではなかったことも気づいていた。
「残念! キング・ブレイン様、頑張って!」
「……ふっ! 歌は流石ですが、うちのユニさんの舞も負けていませんわよ!」
易々と本棚を避け、にこにこの笑顔でアガメムノンはユニの方を見る。その視線の先は斜め上方、ユニは空を蹴りながら舞を踊っていた。
「そっちが首領に捧げる歌を歌うなら、コッチは魔王様に納める舞を披露するよ!」
いや、何も踏んでいないわけではない。柱、空飛ぶ金貨といった、本来であれば足場になり得ないものを、ユニの卓越した視力やバランス感覚で踏んでいるのだ。
「うぬぬ……! 動きは読めているはずなのにどうして当たらないのでしょう!? 今日の本棚はスーパー怪人さんたちの叡智の書が満載、普段よりも攻撃力が高いはずなのに……!」
キング・ブレインが呻く。リアクションを覚えることで二投目、三投目と次第に命中率や威力が上がるはずの自分の攻撃。だがアルテミシアにもユニにも回避されて命中すらしない。おかしい、こんなはずでは……!
「ねえ、その本棚バーン!、スピーチャーさんの『正々堂々』と相性悪くないかな?」
「確かに、『正々堂々』とは相性が悪いようですわねえ」
「えっ」
「えっ」
……いや、本当に気付いていなかったのか。両者とも強者だからこそ、負のシナジーが起こった時のマイナス効果は凄まじいのである。だからこそ、キング・ブレインの投げる本棚は敵に当たらない。当たるはずがないのだ。
そんな、本気でショックを受けている相手の動向を気にしつつ、ユニは盗賊として抑えきれない本分を果たすべく動く。
「さて、キング・ブレインさん秘蔵の叡智の書って、どんなのかなー?」
舞いながら飛来する本棚を避けつつ、するりと中身の本を掠め取る。もちろん盗んだことに気づかれないよう、こそっと錬金術で
真物改変した偽物を戻しておくことも怠らない。興味津々でぱらりとページをめくると、そこに書かれていたのは……。
「……って、ちょっとー!?」
「ユニさん、どうされましたか?」
「あ、魔王様はみちゃダメ! うわー! うわー! コッチはブーメランパンツ怪人さんとの絡み!? ……
叡智ってそういう……ばかー!」
「何をそこまで驚いているのです? スーパー怪人の皆さんが精魂込めた、素晴らしい
手作りの本ではありませんか」
「そうよ、お互いに作品を批評しあってるんだから!」
自分が出演している本を喜んで収集する。しかもジャンルが結構年齢高めなものでも。流石は魔王キング・ブレイン、デビルキングワールドに覇を唱えた者は懐が深い。深すぎる。あとそもそもスーパー怪人たちは何をやっているのか。
なお後で調べたところ、キマイラフューチャーの同人ショップには『怪人』というジャンルが存在していた。しかも結構冊数が多かった。
更についでに、ユニが
現魔王様の叡智な本もアリかな、とか少し考えちゃったのは誰にも言えない秘密である。
「みちゃダメ?? あっ……」
とはいえ、そんな顔を紅潮させたユニの反応などで、アルテミシアもおおよそ内容を察することができたわけだが。
「キング・ブレインさん……わたくし、個人の趣味をとやかく言うつもりはありませんけれど、ソレを(本棚ごと)投げつけるとなれば話は別です」
堂々とした仕草で突き出したアルテミシアの両手の掌から、金色の神雷と滅びの暴風が巻き起こる。
「ゾーニングは大切。おしおきが必要ですわね、吹き荒ぶ神雷と滅颶の奔流で!」
「きゃーっ!」
「こ、これは凄まじい……! というか吾輩、冤罪ではありませんか!?」
問答無用の終焉の風雷が、キング・ブレインとスピーチャーを呑み込んでゆくのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
レイ・アウレーゼ(サポート)
『どんな高い所や遠くでもオレにまかせな!』
本名はレイ・L・アウレーゼ。
サイボーグのハイウェイスター×サイバーニンジャ
管理や束縛を嫌う風来坊。
UCや技能は使えるなら何でも使用。
多少の怪我なら気にせず積極的に、時には大胆に行動。
他の猟兵や無関係な一般人には配慮する。
でも自分がガチで悪いor嫌な奴だと思った相手(だいたい敵)には迷惑かけようが邪魔しようが気にしない。
サイバーザナドゥ以外では一応その世界の公序良俗に反さないが走る時は別。
あとはおまかせ。
・連携okアドリブ大歓迎
「ブレブレブレ、猟兵たちもなかなかやりますね」
「そんなことはありませんよ! たまたま相性が悪かっただけです!」
「確かにな。だが、お前たちがそれをひっくり返せない程度ってことだろ?」
「なに!?」
広範囲を薙ぎ払う先程の攻撃の余波で倒れ込んだ四天王たちを起こしてあげるキング・ブレイン。そんな彼らにレイ・アウレーゼ(サイバーザナドゥの風来坊・f36588)が不敵に笑いかける。
「まとめて撥ね飛ばしてやるよ!」
相棒の
バイクにまたがり、目一杯にエンジンをふかして急加速。そのままキング・ブレインに突撃する!
「させるものか」
キング・ブレインの前に飛び出した燕尾服のマイク男、マイキーがキング・ブレインを賞賛する歌を歌い始める。
「むっ」
劈くようなエンジン音の中にマイキーの美声が混じった瞬間、レイは妙な引っ掛かりを覚えた。なんとなく機械化された身体部位の調子が悪いように思える。具体的に危険信号が出ているわけでもないが、レイの脳は不調を認識していた。
「なるほどこれがプレッシャー、……だが!」
束縛など恐れるものか。レイは気にせず、いやむしろ楽しむように叫ぶ!
そしてスピードを緩めないレイに向けて、キング・ブレインは迎撃を行った。
「バイクに乗ったままだと危ないですよ、降りましょう!」
「この程度で、オレの走りをどうこうできるか!」
――瞬間、レイと相棒の身体が、五体に増えた。
キング・ブレインが投げた本棚はレイに命中した。だがそれは分身の中の一つのみ。敵からの被弾と回避されることを前提として覚悟を決めたのだ!
「ふっ飛べ!」
「うわっ……!」
キング・ブレインにうまく激突できたのは一体、そしてマイキーにも一体。
バイクに撥ねられ、両名は大きく吹き飛ばされるのであった。
成功
🔵🔵🔴
煙草・火花
ふぅ、なんともひどい目に…………芸人の集団でありますか?
いえ、例えふざけたように見えても相手は世界を脅かす敵
ゆ、油断せずに参るでありますよ!
不意打ちを弱める歌……効果もさることながら、スピーチャー殿の歌声もお見事
ならば、真っ向勝負と参るであります!
本棚が武器というのなら小生とは相性がよいでありますな
少々気は引けますがその中身ごと本棚を焼かせてもらうであります!
燃え盛るガスの軍刀を生み出し、飛んでくる本棚を斬りつけ、燃えし尽くすであります
そのまま、炎を突っ切り、残った軍刀を一点目掛けて振り下ろしての真っ向勝負
身体特徴を覚えようともこの数、凌げるでありますかな!
「いやはや、酷い目に遭いましたな。注意一秒怪我一生、注意しませんと」
もちろん痛手は相応に受けているが、それでも未だデビルキングワールドの悪魔たちの頂点であった存在を打倒するには至っていない。
「四天王の皆さんもまだいけますね? ブレブレブレ、それでは次の方は?」
闘志充分のキング・ブレインたちの前に現れたのは、先のスーパー怪人たちを割と精神的にいっぱいいっぱいになりながら突破した煙草・火花(ゴシップモダンガァル・f22624)。
「ふぅ、なんともひどい目に……」
「ようこそ、モダンな少女よ!」
「……芸人の集団でありますか?」
まあ火花の直感は概ね間違っていない。およそ彼女の認識からするとオブリビオンや影朧など『敵』の分類に入る者たちとは異なるその外見は、まるで道化のよう。観客を笑わせることの方が、きっと天職ではないだろうか。
が、彼らが今まさにやろうとしていることは、その真逆。
「いえ、例えふざけたように見えても、相手は世界を脅かす敵。ゆ、油断せずに参るでありますよ!」
「ブーレブレブレブレ! 生真面目なタイプも良いものですね。かかってきなさい!」
髑髏は高らかに笑い、そして戦いが始まる。
――♪♪
スピーチャーの身体であるスピーカーから、澄んだ女声でキング・ブレインを讃える歌が響き渡る。火花に歌唱の嗜みは然程なかったが、それでもその歌が引け目なしに上等なものであることは理解できた。
「不意打ちを弱める歌……効果もさることながら、スピーチャー殿の歌声もお見事。ならば……」
だからこそ、愚直に前に出る。下手な搦め手など一切が無意味。
「真っ向勝負と参るであります! さて、どれに斬られるのがお好みでありますかな!?」
凛とした火花の問い掛けと共に、両腕の両腕の包帯から漏れたガスが百数十にも達する数の軍刀へと変形する。双方の間は狭まり、すでに十メートルもないぐらいだ。
「どれも御免被りたいですな! 斬には面で当たりましょう!」
あと数歩の踏み込みで火花の刀が届く、その手前で、キング・ブレインは本棚を投げつけた!
「少々気は引けますが、その中身ごと本棚を焼かせてもらうであります!」
「ぬお……!」
ガスを着火させて燃え盛る無数の刀を、本棚へと叩きつけ、斬り裂くだけではなく燃やし尽くす!
斬られた本が、本棚の破片が、燃えながら千々に周囲に飛び散っていく。その中を臆さず突っ切り、火花はいよいよキング・ブレインに迫る。
「お覚悟!」
「なんの、読めておりますよ!」
「だとしてもこの数、凌げるでありますかな!」
残ったガスの軍刀は半分程度。だから後は一点集中させる。手に持つ七◯◯式軍刀丙の動きに追随させるようにして狙う先は、キング・ブレインの頭部――!
再びの本棚の投擲すらも斬り凌ぎ、そうして残った数本の刃は、過たずに首魁の頭を燃やし斬るのであった。
大成功
🔵🔵🔵
フリル・インレアン
ふええ、アヒルさんがあんな迷宮を作るから遅れてしまったじゃないですか。
着いた時に終わっていたらどうするんですか?
ふえ?大丈夫ってどういうことですか?
私が『ふええ石』を持っているかぎり、こんなおいしい展開を逃すわけがないって、私はなんてものを持っているんですか。
ふええ、しかも捨てることができないですし。
ふええ、」やっと到着しました。
そして、やっぱり終わっているということはなかったみたいです。
えっと、キング・ブレインさんと四天王さんが相手って、
まずその時点で無理じゃないですか!
こうなったら、恋?物語です。
私の運に賭けてみましょう。
あとはフォースフライパンでどうにかしていきましょう。
猟兵とキング・ブレインたちが激闘を繰り広げているその頃。
「ふええ、アヒルさんがあんな迷宮を作るから、遅れてしまったじゃないですか」
フリル・インレアン(大きな
帽子の物語はまだ終わらない・f19557)は、少々覚束ない足取りでキングブレインキャッスル内部を進んでいた。
何故だか下腹部を押さえている彼女の姿は、決してコンディションが良さそうではない。
「着いた時に終わっていたら、どうするんですか? ふえ? 大丈夫ってどういうことですか? 帽子?」
とはいえ、誰か居たとしても心配されるのはちょっと遠慮したい状況ではあった。そしてアヒルさんに遅参の愚痴をぶつけているわけだが、アヒルさんの返答はちょっと予想外のもの。
アヒルさんに指摘されてフリルが帽子を探ると、見つけたのは……なんだか宝石っぽく輝く、手のひらサイズの綺麗な石。ただなんというか、お得な気分だとか、なんだかイラっとする感情だとか、見ていてなんとも複雑な気持ちが湧いてくる。
「私がこの『ふええ石』を持っている限り、こんなおいしい展開を逃すわけがないって。私はなんてものを持っているんですか?」
そして捨てることができない。城の片隅にでも放り捨てておこうと考えたのだが、フリルの手から離れてくれないのだ。
「ふええ、呪いのアイテムか何かなんですか?」
ある意味では恐るべき呪いなのだろう。傷ついた猛者たちが一喜一憂させられる、神の雫だとか多分そんな感じだから。知らんけど。
そしてやや憔悴したまま、フリルはいよいよキング・ブレインたちの前に到着した。
「ふええ、やっぱり終わっているということはなかったみたいです」
「ブレブレブレ、突破されはしましたが、吾輩自慢の配下はよほど強敵だったようですね?」
「ふええ、そんな……いえ、ある意味とても強敵でした。
っていうか! キング・ブレインさんと四天王さんが相手って、まずその時点で無理じゃないですか!」
「ブーレブレブレブレ! とても良いリアクションありがとう! 見逃してあげても良いのですよ?」
「いえ、戦いますよ。わたしにだって意地があります」
サイキックエナジーをフライパンの形と成し、構える。
「……やはり猟兵は恐ろしいですね」
対するキング・ブレインも、背負う本棚に手を掛ける。高まる空気に四天王も呼応し、己の歌を奏で始めた。
「ふええ、右か、左か……」
フリルは、自分の運に賭けた。キング・ブレインの奇襲攻撃の命中率を五分にした上で、どうにかする。
「……勝負!」
フリルが駆ける。投擲された本棚に対してフリルは身を屈め、スライディングの要領で辛うじて下を通り抜けた。
「!」
「その上で、可能性を上げる努力はしますから」
呟きに嘘を仕込み。見上げた先には、顔に驚愕の表情を張り付けているキング・ブレイン。
フライパンの振り上げに自分が立ち上がる勢いも加えて、フリルの全力のアッパースイングがキング・ブレインの顎を見事に打ち抜いたのであった。
成功
🔵🔵🔴
第3章 日常
『キングブレインキャッスルの最期』
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POW : 相手の強さを讃えて行く
SPD : 少しでも長く話せるよう工夫する
WIZ : デビルキングワールドの話を土産に聞かせる
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崩れる。音を立てて爆ぜて砕けていく。大首領の、魔王の、猟書家の野望が。キングブレインキャッスルが。主の敗北に反応して、仕込まれた自爆装置が作動したのだ。
お約束のようにそこかしこから小さな爆発が始まり、次第に広がり規模が大きくなり、最後には城を消滅させる大爆発が起こるだろう。
「ああ、負けてしまいましたか」
玉座に力なく座り、身を震わす崩壊の振動に逆らうことなく揺れながらキング・ブレインは虚空を見上げていた。その髑髏頭からは、去来しているであろう内心を読み取ることはできない。
すでに配下のスーパー怪人たちはこの場に居ない。怒りに震える彼らを宥めて逃がし、捲土重来を約束させたのは見事な弁舌であった。
「いえ、吾輩の敗北を嘆くより、今は勝者を讃えるべきでしょう。おめでとう、猟兵の皆さん。
脱出するための時間は作ってあります。さあお逃げなさい」
猟兵たちを気遣うキング・ブレインの語り口は優しく、本来の彼の性格が滲み出ているようであった。
そう、時間の猶予は多少ある。ある程度はキング・ブレインと会話などをする余裕もあるだろう。もちろん、こちらの聞きたいことに対して何でも答えてくれるというわけでもないだろうが。
あるいは、安全確実に逃げられるように早めの脱出を試みるのも構わないだろう。
「……どうしましたか? 吾輩に、まだ何か?」
フリル・インレアン
ふええ、早く逃げないと爆発に巻き込まれてしまいます。
ふえ?アヒルさん何をしているんですか?
まさか、敗れたキング・ブレインさんに止めをなんてしませんよね?
ふえ?アヒルさんが敬礼するなんて珍しいです。
アヒルさんの言いたいことは私にしか分からないですけど、代わりに私が伝えてもいいんですよ。
ふえ?男と男に言葉は不要って、それ伝わってなかったらどうするんですか?
でも、なんとなく伝わっていそうですね。
私も最後にコンコンコンを輸出するのは無理ですけど、他の世界の貧困は減らしてみせますと約束をしましょう。
ふえ?これで私も秘密結社ブレインの一員って、
えっとそれは……考えておきますね。
轟音が鳴り響き、徐々に崩壊していくキングブレインキャッスル。
ちゃんと逃げれば問題は起こらないと説明されてはいても、現場で恐怖を感じないかどうかはまた別問題。
「ふええ、早く逃げないと爆発に巻き込まれてしまいます。……ふえ? アヒルさん、何を?」
焦りながらも速やかに脱出を試みようとするフリル・インレアン(大きな
帽子の物語はまだ終わらない・f19557)だが、不意に、頭に乗せていたアヒルさんがフリルの頭から降りた。そしてそのままキング・ブレインの元へとテクテク歩いていく。
「む……?」
「まさか、敗れたキング・ブレインさんに止めを、なんてしませんよね? ふえっ?」
見た目は可愛らしいが、アヒルさんは結構戦闘力が高い。ただキング・ブレインのようなタイプに追撃を入れるタイプでもないのだが……と思っていると、アヒルさんはキング・ブレインに対してひょこりと、深いお辞儀をした。
これは、敬礼だ。誰に対してもそう滅多に見せる態度ではない。そして、フリルはその動作の意図を半ば読み取る。
「アヒルさんの言いたいことは私にしか分からないですけど、代わりに私が伝えてもいいんですよ」
しかしアヒルさんはフリルの声には応えず、じっと大首領の目を見つめていた。
「ふむ、なるほど……」
「男と男に言葉は不要って、……それ、伝わってなかったらどうするんですか?」
「いえ、分かりますよ。なんとなくですが」
「ふえ? そうなんですか?」
当の本人がそう言うのなら、それで良いのだが。そういうセンチメンタル(?)な世界はフリルにはやや理解し難かったが、それでも当人同士が納得できているのなら問題はないだろう。
「あ、あのう」
「おや、何ですかな」
そしてそれならばと、フリルは、伝えるつもりなどなかったが思ってはいたことをキング・ブレインに話す。
「コンコンコンを輸出するのはわたしには無理ですけど、他の世界の貧困は減らしてみせます。約束します」
結果として活動は相容れなかったが、彼自身の思想の節々には、善がいくらも垣間見えた。だからこそフリルは、己の決意を言葉に出した。
「フ、……フフフ、ハハハハッ! ……いえ、ブーレブレブレブレ! 素晴らしいですね、草葉の陰から応援しますよ!
ところで、であれば吾輩の秘密結社ブレインの一員として名乗ってやってみませんか? 秘密結社としてもう少し名を高めて、歴史に刻んでおきたいですから」
「ふえ? えっと、それは……前向きに考えておきますね」
……ちょっと強引な勧誘を適当にあしらい、フリルはアヒルさんとキング・ブレインの会話?を暫し無言で眺めるのであった。
大成功
🔵🔵🔵

ユニ・バンディッド
【魔王国】アドリブ歓迎
ボクからは
デビキンの日常でもお話ししようかな。
キング・ブレインさんは、魔界のぶどう踏みをやったことある?そう葡萄踏み。ぐちゃぐちゃと踏み拉き、上がる悲鳴、飛び散る飛沫。紅くてスプラッタな様が人気の、ぶどう踏みー。色々と派生があるけれどマンドラゴラのぶどう版みたいなモノだよ!。
ボク達に縁があったのは、葡萄の悪魔さんによるかき氷屋さんとかかな。様々な味の葡萄を創り踏んでシロップを作るんだって!もちろん悲鳴つきでね!。
機会があったらキング・ブレインさんも一緒にどうかな?。だって何が復活の切欠になるかわからないもの。だから、またね!キング・ブレインさん!
アルテミシア・アガメムノン
【魔王国】アドリブ歓迎
ほほほ、まあ冥土の土産と言うものですわね。
せっかくオブリビオンとして蘇ったのにブレインさん、故郷デビキンの土を踏んでいらっしゃらないでしょう?
貴方の制定したデビルキング法のお陰で魔界はずいぶんと楽しい世界になっていますわよ?
それを少しお話しようかと思います。
(アルテミシアからは世界魔界情勢的な大まかな話を。ユニさんからは日常の様子を伝えてあげましょう)
さて、そろそろ時間ですわね。それではブレインさん、ごきげんよう。
蘇るのならきちっと蘇るのですよ? もうオブリビオンなどにならないように!
――走馬灯を見る、という言葉がある。
「ふふ、思い残すことはいくつもありますが、しかし割と悔いはありませんね」
文字通りの意味で、巨魁は今まさに走馬灯を見ていた。また復活はするのかもしれないが、しかし今回の死の瞬間とは一度きりなのだ。脳裏に去来する光景は彼にしか分からないものだろう。
「ほほほ、ブレインさん。まだ気になることはあるでしょう?」
「そうそう、ボクたちが今のデビキンの日常を教えてあげるよ」
そんなキング・ブレインの前に、高笑いをするアルテミシア・アガメムノン(黄金の女帝・f31382)とユニ・バンディッド(贋作の悪魔・f31473)が現れる。
「おや、貴方がたは……よく見れば故郷の者たちでしたか。懐かしい、相も変わらず皆はワルに邁進しているようですね」
「ええ、ええ。だからわたくしたちが、冥途の土産を差し上げましょう。せっかくオブリビオンとして蘇ったのに、ブレインさん、故郷デビキンの土を踏んでいらっしゃらないでしょう?」
「……ええ、今更に戻れるものでもありませんでしたからね」
アルテミシアの指摘に言葉を濁すキング・ブレイン。彼が猟書家として故郷を侵攻地に選ばなかった理由は知れない。ただ、故郷とそこに生きる人々を傷つけるのは避けた、という理由であったとしても納得はできただろう。もちろん、だからといってキマイラフューチャーなら構わないわけではないのだが。
「貴方の制定したデビルキング法のお陰で、魔界はずいぶんと楽しい世界になっていますわよ?」
悪とはかくあるべし。悪魔の道徳の規範は、大いにデビルキングワールドを栄えさせている。
「悪魔の皆さんは皆、真面目ですもの。大小を問わず、そこかしこで絶えず悪事が繰り広げられていますわ。貴方のお陰ですわね」
その『悪事』が、デビルキングワールドならではの意味であることは今更強調する必要もない。
「ブレブレブレ、そうですか。願ったり叶ったりです」
そしてユニが伝えるのは、そんな平和――と呼べるのかは非常に怪しい、むしろ過激――なデビルキングワールドの日常。
「ねえ、キング・ブレインさんは、魔界のぶどう踏みをやったことある?」
「葡萄踏み、となるとワイン作りですか? いえ、吾輩はありませんね。……まるで血のように赤いものが好きでしたな、格好が良いので」
掌を上向きにして腕を前に出し、ゆっくりと手首を回すキング・ブレイン。さすがは元魔王、エアワイングラス回しの仕草が実に様になっている。
「ふふっ、ぐちゃぐちゃと踏み拉き、上がる悲鳴、飛び散る飛沫。紅くてスプラッタな様が人気の、ぶどう踏みー。色々と派生があるけれど、マンドラゴラのぶどう版みたいなモノ!
それにワインだけじゃなく、ボクたちに縁があったのは、葡萄の悪魔さんによるかき氷屋さんとかかな。様々な味の葡萄を創り踏んでシロップを作るんだって! もちろん悲鳴つきでね!」
「なるほど、実に美味しそうだ。食い逃げはやらかしますか?」
「もちろん! 店主に追いかけられたら死ぬ気で逃げるよ!」
「ユニ、まさか捕まったことなどありませんわよね? 盗賊の名折れですわよ?」
物騒な内容だが、ほのぼのとした日常のエピソード。同じ世界出身の者たちによる和やかな雑談は続く。
しかし、そんな時間は短く、すぐに終わりを迎える。
……一際に大きい爆発音。いよいよ終焉の時が近づいてきた。
「さて、そろそろ時間ですわね。それではブレインさん、ごきげんよう。蘇るのならきちっと蘇るのですよ? もうオブリビオンなどにならないように!」
「あはは、機会があったらキング・ブレインさんも一緒にぶどう踏みをどうかな? なんだったらかき氷を食べる方でも! だって何が復活の切欠になるかわからないもの。だから、またね! キング・ブレインさん!」
二人の惜しむ声は、本心からのものだった。
「そうですね、またお逢いしましょう!」
ユニの肩を抱きながら、アルテミシアはキング・ブレインの元を去っていった。
後にはただ、息も絶え絶えの男がひとり。
「……、ああ……」
言葉少なに、ただ玉座に在る大首領。
彼は爆発に消える最期の瞬間まで、先程までよりもずっと、満ち足りた穏やかな表情をしていたのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵