●決戦の予感
ダークセイヴァー。
常に闇夜が支配する絶望の世界において、闇の救済者という希望の芽が育ち始めて久しい。
やがて、その芽は巨大な渦となり、今や世界で名を知らぬ者はいないほどのレジスタンス組織になっていた。猟兵達が祈りの双子との戦いに勝利して以降は、その勢いは更に増した。
「あそこね……砦があるのは」
峡谷にある小さな町の先を指さす少女。背中に銃を、腰に鞭を携え、漆黒の鎧に身を包んだ彼女が、この集団を率いるリーダーである。
「例の人身売買組織が隠れ蓑にしている場所だろう? 構わねぇ……町ごと潰すか?」
「いや、それはあまりに短絡的な判断だろう。もっとも、時に業を背負う覚悟がなければ、我らの戦いは務まらぬのも事実だが……」
血気に逸る人狼を嗜めるのは、街灯に身を包んだダンピール。彼らは、その誰もが超常の力をその身に携え、吸血鬼と戦う人類の希望。
「救える者は救いたい……ですが、時には死が救いとなることもある。……残酷ですわね」
憂いの表情を浮かべ、背中に翼を生やした女性が溜息を吐いた。谷を抜ける風が彼らの身体を煽り、否応なしに決戦を予感させていた。
●集められた者達
「ダークセイヴァーでの大きな戦いが終わって久しいが、どうやら闇の救済者達に、また動きがあったようだ」
先の戦争で猟兵達が勝利したことで、いよいよ吸血鬼達への反抗勢力も勢いづいてきたと、霧崎・紫苑(機械仕掛けの闇医者・f32327)は猟兵達に告げた。今回は、その中でも特に精鋭と呼べる者達と共に、ある砦を攻略して欲しいとも。
「既に知っている者もいると思うが、彼らの中には我々と同じく、ユーベルコードを使用できる者もいる。その中でも、特に強い力を持った者達だけを集めた精鋭部隊を結成し、彼らは第五の貴族が所有する砦のひとつを潰しにかかろうとしているようだ」
その数、総勢百名以上。種族や職業は多種多様であり、ダークセイヴァーに存在する、あらゆる種族や職業の者が集結していると考えて構わない。
しかし、それだけの勢力を以てしても、彼らだけで砦を落とすのは不可能であると紫苑は続けた。砦に第五の貴族本人はいないものの、彼らから砦の守りを任されたオブリビオンの大軍団がいるからだ。
「このオブリビオンの集団だが……元は、人身売買によって攫われてきた少女達だったようだ。だが、彼女達は量産型の紋章を与えられ、既に人ではない存在に変えられてしまっている。その紋章の性質を考慮すると……下手な手心などは加えぬ方が、却ってよいのかもしれないぞ」
紫苑の話では、彼女達に与えられているのは『共生』の紋章。その名の通り、寄生した対象に絶大的な力を与える代わりに命までも共有し、時に主である第五の貴族の命令を直接宿主の脳に届ける役割も果たすという。
「この紋章は、彼女達が奪われた右目に変わり埋め込まれているようだ。弱点が分かりやすいのはありがたいが、この紋章を破壊したり、あるいは引きはがしたりすれば、それで彼女達は死ぬ。本人達が戦いを拒絶しても、紋章の力で強制的に戦いへと駆り立てられる。いかに闇の救済者達とはいえ、真正面からでは戦いにくい相手だろう」
この戦いに勝利しても、それでトラウマを抱え、戦線を離脱する者が出てしまっては話にならない。そのためにも、戦いの際は先陣を切って猟兵達が敵を蹴散らす必要があると同時に、救える者だけでも救っておき、少しでも罪の意識を和らげておく必要もある。
「集団を率いるリーダーは、かつて我々が接触したこともある少女だ。名前は……イリーナとか言ったか? こちらが猟兵であることを名乗れば、快く協力してくれるだろう」
幸い、砦の近くにある町には、人身売買組織が新たな少女達を連れて訪れているようだ。まずは、そこを闇の救済者達と共に襲撃し、囚われている少女達を一人でも多く助け出して欲しい。
最後にそれだけ言って、紫苑は猟兵達を、谷間に位置する辺鄙な町へと転送した。
雷紋寺音弥
こんにちは、マスターの雷紋寺音弥です。
ダークセイヴァーでの戦いは終わりましたが、闇の救済者達の戦いは続きます。
彼らと協力し、第五の貴族が所有する砦のひとつを攻略してください。
●第一章(冒険)
町を訪れている人身売買組織を襲撃します。
拠点の場所は既に割れており、特殊な能力を持った敵もいないようです。
●第二章(集団戦)
『圧政者の娘たち』との戦いになります。
その身に植え付けられた紋章のせいで、彼女達を解放することはできません。
また、個々の戦闘力は低いですが、集団戦において味方側の被害が出やすい相手でもあるため、その辺りも考慮して戦ってください。
●イリーナ・ヘルシング(アリスナイトの黒騎士×咎人殺し)
以前の依頼にも何度か登場したことのある、アリスラビリンスからの帰還者です。
主に二丁のライフルと処刑鞭を扱い、種族と職業由来の基本的なユーベルコードを使用できます(彼女以外の闇の救済者達は、種族か職業由来のユーベルコードを1つだけ使用できます)。
戦闘では、猟兵の使用するユーベルコードと同じ属性のユーベルコードで支援を行ってくれます。
第1章 冒険
『籠の中の小鳥達は』
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POW : 正面突破で救出を試みる
SPD : 潜入して救出を試みる
WIZ : 捕虜の手当などをする
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
真宮・響
【真宮家】で参加
戦争でオブリビオンフォーミュラが倒されてもすぐこの世界の闇が無くなるわけじゃない。イリーナ達のような闇の救済者の皆の戦いもまだまだ続くんだね。
やあイリーナ。加勢しにきたよ。人身売買か。気分悪いね。ああ、協力するよ。組織ぶっ壊すついでに女の子達を助けよう。
真紅の騎士団に正面からの突入を任せ、アタシは【忍び足】【目立たない】【迷彩】で組織の建物の裏に回り、容赦なく組織の売人の背後から【怪力】【グラップル】で殴り倒した上に蹴っ飛ばし、女の子達を助ける。
イリーナは奏と一緒に正面からの襲撃を頼む。アタシは逃げようとする奴らを殴り倒すから。まあ、これぐらいやった方がいいだろう。
真宮・奏
【真宮家】で参加
戦争終わったとしても、この世界の色濃い闇が全部晴れた訳ではありません。イリーナさん達闇の救済者さん達の戦いもまだまだ終わりませんね。
人身売買組織・・許せませんね。きっちり壊滅させましょう。女の子達も助けなければ。
イリーナさんと一緒に正面から突入!!【衝撃波】や【怪力】を込めた【シールドバッシュ】で組織の人達を吹っ飛ばしていきます!!止めに森羅牙道砲で止めの吹き飛ばし!!
騎士として売られていた女の子の容態は気になります・・・すぐ保護して手当をしますよ。
神城・瞬
【真宮家】で参加
ダークセイヴァーのオブリビオンフォーミュラが倒されたとしてもこの世界を覆う闇がすぐ無くなる訳ではありません。むしろ本格的な戦いはこれからですよね。僕達猟兵も、イリーナさん達闇の救済者の皆さんも。
僕は玲瓏の風で突入する前線の皆さんの後押しを。僕は【マヒ攻撃】【武器落とし】を併せた【誘導弾】を当てて組織員を行動不能にしていきます。
仲間が女の子の皆さんを売人から引き離して巻き込まないと判断したら【身体部位封じ】【影縛り】を併せた【結界術】で完全に拘束しておきます。
助け出した女の子達の容態は心配ですね。出来るだけの手当てを。
●戦いは終わらず
「戦争でオブリビオンフォーミュラが倒されても、すぐこの世界の闇が無くなるわけじゃない、か……」
「そうですね。この世界の色濃い闇が全部晴れた訳ではありません」
真宮・響(赫灼の炎・f00434)の言葉に、真宮・奏(絢爛の星・f03210)が重ねるようにして続けた。確かにオブリビオンフォーミュラは撃破したが、それで全てが終わったわけではない。強力な吸血鬼は未だに下層の支配を続けているし、そもそもダークセイヴァー自体も未だよくわかっていないことの方が多い。階層構造となっているこの世界の最上部、第二層より更に上の世界がどのような場所なのかは、相変わらず不明のままである。
「むしろ、本格的な戦いはこれからですよね。僕達猟兵も、イリーナさん達、闇の救済者の皆さんも」
神城・瞬(清光の月・f06558)の言葉に、他の二人も無言で頷く。
自分達は、解放のための足掛かりを作ったに過ぎない。そして、これからの未来は、この世界に住まう者達の勝ち取って行かねば意味がない。
だが、その先に理不尽な障壁が立ちはだかるのであれば、自分達は惜しむことなく彼らに力を貸そう。それが猟兵として、戦後のダークセイヴァー世界にて行える、最良の選択だと思っていたから。
●突入、悪徳の館!
町に巣食う人身売買組織のアジトは、既に闇の救済者達の調査で割れていた。
町の外れにある、古びた屋敷。もはや誰も使わなくなった廃屋は、組織が攫って来た少女達を一時的に監禁するための場所となっていた。
屋敷の周囲には、既に闇の救済者達の精鋭が集まっている。そんな中、響は見知った顔を見かけ、先頭に立つ少女に声をかけた。
「やあ、イリーナ。加勢しにきたよ」
「あなたは……! いつも、本当にありがとうございます!」
既に幾度となく死線を共にしていたので、イリーナも直ぐに響のことに気が付いてくれた。こうなれば、話は早い。まずは非道な組織を叩き潰し、攫われた少女達を助け出すのみ。
「この屋敷には、吸血鬼はいません。いるのは悪徳な商人だけですが……それでも、協力していただけますか?」
「ああ、協力するよ。組織ぶっ壊すついでに女の子達を助けよう」
響が笑みを浮かべ、その後ろから奏と瞬も続く。単に組織を潰すだけなら正面突破すれば問題はないが、完全に禍根を断った上で少女達も救い出すとなれば、少しばかり工夫が必要だ。
「イリーナは奏と一緒に正面からの襲撃を頼む。アタシは逃げようとする奴らを殴り倒すから」
「ええ、お願いするわ。一人でも逃がすと、それだけでまた、同じことの繰り返しになるかもしれないから……」
オブリビオンでなくとも、組織の首魁を逃がしてはならない。否応なしに気合が入る中、まずは奏が衝撃波を放ち、屋敷の扉を正面からブチ破った。
「人身売買組織……許せませんね。きっちり壊滅させましょう」
豪快な音と共に吹き飛ぶ扉。中を覗いてみれば、そこにいたのはゴロツキ同然の格好をした、商人というよりも山賊にしか見えない連中。
「おわっ! な、なんだぁ!?」
「俺たちのアジトを襲撃とか、いい度胸してるじゃねぇか!」
短絡的な三下連中が、早々にブチ切れて殴りかかって来た。だが、その程度で奏が怯むことはない。繰り出された男の拳を片手で受け止め怪力で捻り上げると、豪快に振り回して部屋の奥に放り投げた。
「ひぇっ! な、なんだ、あの女!」
「化け物め……ぶっ殺してやる!!」
身体は人間でも心は化け物な連中が、自分達のことを棚に上げて叫んでいたが、それはそれ。やれるものならやってみろとばかりに、奏は盾を構えて突進すると、次々と悪漢達を吹き飛ばして行く。
「ぐぇっ! だ、だめだ、強すぎる!」
「銃を持ってこい! こうなりゃ、頭をブチ抜いてやる!」
接近戦では敵わないと、中には銃を取り出そうとする者もいるが、そこは瞬がさせはしない。敵の手元を狙って誘導弾を発射し銃を叩き落とすと、そのまま清らかな霊気を込めた風を発生させ、闇の救済者達にも力を与え。
「させませんよ。さあ、闇の救済者の皆さんも……今が好機です」
「うぉぉぉぉっ! 舐めんな、悪徳商人が!」
こうなると、もはや流れは止められない。屋敷になだれ込んだ闇の救済者達が相手では、盗賊紛いの悪徳商人など敵ではない。
「人間のくせに、吸血鬼の連中に媚びるとか、恥ずかしくねぇのか!」
「か、勘弁してくれぇ! 俺が悪かったぁ!!」
徹底的にボコボコにされ、次々と縄で縛られて行く。それでも、中にはドサクサに紛れて逃げ出そうとする者もいるが、そういう連中は全て響に捕まって、そのまま失神昏倒させられて行き。
「じょ、冗談じゃねぇ! こうなりゃ……おい、てめぇら! それ以上近づくと、このガキを殺すぞ!」
進退窮まった組織の首魁は、ついに捕えていた少女の一人を盾にすると、その首にナイフを突きつけた。が、そんな卑怯な手段など、悪辣な吸血鬼と戦い続けてきた猟兵達やイリーナにとっては、もはや見慣れた光景だ。
「その汚い手を、その娘から放して!」
「……ぎゃぁっ! 痛ぇっ!!」
空中を生き物の如く舞うイリーナの処刑鞭が、悪徳商人の顔面を打ち据える。あまりの痛みに少女を放り投げてしまったことが、彼の運が尽きた証。
「あなたには、少しお仕置きが必要ですね……。吹き飛びなさい!!」
最後は奏が怒りのままに見えない衝撃波を放ち、組織の首魁を吹き飛ばす。直撃を食らった男は廃屋の扉をブチ抜きながら吹っ飛んで行き、朽ちた床に頭が突き刺さった状態で気を失った。
●罪と罰
人身売買組織は壊滅し、猟兵達とイリーナは、囚われていた少女達の保護にも成功した。
「手当はこちらで行っておきました。それにしても……あのような劣悪な場所に人を押し込めるなど、人間の所業ではありませんね」
少女達の保護を終えた瞬が、地下牢の光景を思い出して吐き捨てるように言った。
集められてきた少女達は牢の中に鎖でつながれていたが、その密度はかなり酷いもの。座るのがやっとな状態で押し込まれ、満足に横になって眠ることもできない。衣服はボロ布同然の下着だけで殆ど全裸に等しい状態だったし、なにより何日も風呂にさえ入れず、食事も碌に与えられていなかったことから、衰弱や病気も心配だった。
「こんなになるまで放っておかれるなんて……人間を、なんだと思っているの……」
闇の救済者達によって治療を受けている少女達を見ながら、奏の声もまた怒りに震えた。
救済者達の中に、聖女やオラトリオといった、神秘の力を操る者がいてくれたのは幸いだ。もっとも、ユーベルコードによる簡易的な治療だけではどうにもできないこともあるため、彼女達はこれから全員が町の施療院や教会などに預けられ、改めて親元を探して帰されることになるのだろう。
「……で、後はこっちだよね。さて……こいつら、どうしてやろうか?」
捕まっている悪漢達に視線を移し、響が厳しい口調で尋ねる。この連中が犯した罪の重さを考えると、多少の仕置きで済ませるのは割に合わない。
「や、やめてくれぇ! お願いだから、殺さないでくれぇ!」
「もう、人身売買は辞めだ! これから先は、心を入れ替えて真面目に働くからよぉ!」
完全に戦う気を削がれた悪漢達は、瞬の結界術によって捕縛され、情けない声を上げている。もっとも、それで許してやるほど真宮家の人々は甘くなく、悪漢達には然るべき裁きが下されることになる。
「身一つで荒野へ放り出す……では、ダメですね。そのまま山賊にでもなられたら困ります」
「町の人達のために働いてもらう……とか? あ、でも、それだと逃亡されるかもしれないよね」
瞬と奏は、互いに顔を見合わせて、次なる案を考える。あれこれ思案した結果、出された結論は……凶悪犯として一生牢獄にブチ込まれた挙句、主に肉体労働などでこき使われるという罰だった。
「命を奪われないだけ感謝しな。真面目に服役してれば、もしかしたら温情で、牢獄から出してもらえるかもしれないけどね」
「「「そ、そんなぁ!」」」
響の非情な言葉に、一斉に悲鳴を上げる悪漢達。この調子では、彼らは本当に一生を牢獄で過ごさねばならないかもしれないが、それはそれ。
これは、あくまで被害を事前に防ぐための前哨戦。本当の戦いはこれからだと、猟兵と闇の救済者達は、町の街道から続く第五の貴族の砦へと目を向けるのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『圧政者の娘たち』
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POW : 強制されし死の行軍
【逆らえぬ吶喊指示】で敵の間合いに踏み込み、【セミオートライフルの弾丸】を放ちながら4回攻撃する。全て命中すると敵は死ぬ。
SPD : 恐怖は全てを塗り潰す
【吸血鬼の無慈悲な命令】によって【激しい恐怖】を発生させ、自身からレベルm半径内の味方全員の負傷を回復し、再行動させる。
WIZ : 所有物に救い無し
自身が【安堵や安心】を感じると、レベル×1体の【監視用の吸血蝙蝠や魔狼】が召喚される。監視用の吸血蝙蝠や魔狼は安堵や安心を与えた対象を追跡し、攻撃する。
イラスト:にこなす
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●傀儡にされた少女達
悪徳商人を成敗し、改めて第五の貴族の砦へと向かう闇の救済者達。だが、彼らが砦へ到着すると同時に、待っていたかの如く跳ね橋が降り、中から多数の少女達が現れた。
「おいおい、まだこれだけの女の子が捕まっていたのか?」
「……待って! 様子がおかしいわ!」
異変を察知したイリーナが、逸る仲間を慌てて止めた。そんな彼女の直感は正しく、少女達は手にしたマスケット銃を構えると、一斉に闇の救済者達を狙って攻撃を開始した。
「おわっ! あいつら……吸血鬼の手先か!?」
「無理やり従わされているんじゃないの? そんなの、戦えないよ……」
さすがに、見た目が何の変哲もない少女相手では、闇の救済者達も迂闊に攻撃できないようだ。それぞれ、物陰に身を隠してやり過ごすが、いつまでも隠れていては追い詰められるだけだ。
(「あの娘達……もしかして!?」)
寄せ集めの少女達にしては、あまりに正確無比や射撃と、ともすれば大人の男を凌駕する程の身体能力。それに違和感を覚えたイリーナは、徐に銃を構えると、少女の頭部目掛けて発射する。
「……っ!?」
「おい、さすがにやり過ぎだろ!」
頭の半分を吹っ飛ばされた少女が倒れたことで、他の闇の救済者達から抗議の声が上がった。だが、それは倒れたはずの少女が何事もなく起き上がったことで、直ぐに静まることとなった。
「ア……ァァァ……オォ……」
少女の眼帯が外れ、その中から姿を現したのは『共生』の紋章。少女と命を共有する形で融合させられているそれは、宿主の身体が大きく欠損したことで、半ば暴走状態になっており。
「オォ……ゥゥ……アギ……ググ……」
少女の身体がいびつに曲がり、右目の紋章からは無数の触手が伸びて獲物を探し宙を彷徨う。あまりにおぞましい光景に、闇の救済者達の中にも、口元を抑えて吐き戻しそうになる者が出る始末。
「うぅ……こ、こんなの……こんなのって……」
「酷い……あの娘達……みんな……化け物にされて……」
紋章の力によって、既に少女達は人であることさえも辞めさせられていた。こうなってしまっては、もはや彼女達を救う術はない。心を鬼にして倒す他にないのだが、しかし人の姿をした者を容赦なく撃ち、果てはその身体が異形へと変貌して行く様を目の当たりにすることは、あまりに辛いことだった。
(「拙いわね……このままだと、皆の士気が……」)
懸念しつつも物陰に身を隠すイリーナだったが、これでは反撃の糸口が掴めない。人身売買の果てに人を辞めさせられた少女達と戦うのは忍びないが、しかしここで彼女達を倒さねば敗北は必至。
第五の貴族の戦力を削ぐために、そしてなにより、これ以上の悲劇を生まぬためにも、猟兵達の決断が試される!
シホ・エーデルワイス(サポート)
助太刀します!
人柄
普段は物静かで儚げな雰囲気ですが
戦闘時は仲間が活躍しやすい様
積極的に支援します
心情
仲間と力を合わせる事で
どんな困難にも乗り越えられると信じています
基本行動
味方や救助対象が危険に晒されたら身の危険を顧みず庇い
疲労を気にせず治療します
一見自殺行為に見える事もあるかもしれませんが
誰も悲しませたくないと思っており
UCや技能を駆使して生き残ろうとします
またUC【贖罪】により楽には死ねません
ですが
心配させない様
苦しくても明るく振る舞います
戦闘
味方がいれば回復と支援に専念します
攻撃は主に聖銃二丁を使用
戦後
オブリビオンに憎悪等は感じず
悪逆非道な敵でも倒したら
命を頂いた事に弔いの祈りを捧げます
出水宮・カガリ(サポート)
ひとが戦ってはいけない。戦うことは、痛いことだ。そういうものを退けて隔てるのが、門の役目だ。
<得意>
守りは得意だ。カガリのある場所が、境界だとも。
盾として、存分に使うといい。
<苦手>
名前は覚えにくくてなぁ。特徴(○○の)で呼ぶぞ。
細かいのと、素早いのもあまり。
<戦闘>
カガリは不動の門だからな、回避はしないぞ。
雑に壊すのは、できなくはないが。
<冒険・日常>
盾を足場にしたり、籠絡の(籠絡の鉄柵)を大きくして乗ったり。
小さいまま飛ばすこともできるぞ。
カガリ自身は、大きいので。隠れることは苦手だが。
じっと見て、誘惑とか。できるようだ。
そんな感じだろうか。
あとはまるっと、おまかせだ。
よろしく、よろしく。
グレナディン・サンライズ(サポート)
『ここはこの年寄りに任せてもらおうかね?』
『こう見えても、まだまだ衰えちゃいないよ』
年齢3桁の婆。
スペースシップワールド出身の元宇宙海賊。
主な武装はフォースセイバーとブラスター。
戦闘スタイルは基本的には前衛遊撃。敵を翻弄するような戦いを好む。
グルメではない酒好き。
年齢なりの経験を積んでいるので、冷静さと余裕をなくすことはない。
口調(あたし、あんた、だね、だよ、~かい?)
●試される覚悟
第五の貴族が所有する砦のひとつを守るのは、吸血鬼でもなければ魔獣でもなかった。
そこにいたのは、人身売買の果てにその身を紋章で蝕まれた少女達。もはや人に戻ることは叶わず、異形として吸血鬼の命に従う他に、生きることを許される者達。
彼女達を倒さなければ、この地を解放することはできない。しかし、頭では理解していても、彼女達もまた被害者であるという現実が、闇の救済者達の攻撃の手を鈍らせる。
「皆、応戦して! このままだと、こっちが全滅してしまうわ!」
「そ、そんなこと言っても……ぐぁっ!!」
イリーナの言葉に一人の騎士が異を唱えようとした瞬間、彼の身体を数多の銃弾が貫いた。どれも掠り傷程度のものだったが、それでも攻撃を食らった騎士は口から血を吐き、そのまま倒れて動かなくなった。
紋章の力によって齎されたユーベルコード。それは少女達の使うライフルに、必殺の魔力をも与えていた。彼女達の持つ銃の連射を食らえば、どんな存在でも問答無余で死んでしまう。
彼女達の攻撃を前に、防御などは意味をなさない。生き残りたければ、殺られる前に殺るしかない。そして、その覚悟ができない者から、この戦場では死んで行く。
(「こうなったら、私が突破口を開くしかないわね。多少の無理は承知でも……」)
部隊の士気が明確に下がっていることを感じ、イリーナは自ら突貫する覚悟を決めた。だが、彼女が飛び出そうとした瞬間、どこからか飛来した光線の一撃が少女の額を正確に射抜き、一撃で活動を停止させた。
「……ふん、情けないね。そんなんじゃ早死にするよ、あんた達」
光線が飛来した箇所に目をやれば、そこに立っていたのはグレナディン・サンライズ(永遠の挑戦者・f00626)だった。戦力不足を考慮して、グリモア猟兵が助力を頼んだのだろう。
かつては宇宙海賊として名を馳せ、今やベテランの猟兵でもある彼女からすれば、目の前の連中はひよっこ同然。腕前以前に、そもそも覚悟が座っていない。相手が非道の極みを地で行く吸血鬼なら、どのような卑怯で卑劣な手を使われても、動じないようでなければ話にならない。
「下がってください。戦えないのであれば、後は私達が……」
同じく、シホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)また二丁の拳銃を構え、少女達を牽制して行く。いったい、何故そこまでして戦えるのかと問い掛ける者達もいたが、シホは当然とばかりに彼らに返した。
「あなた達にも、守りたい誰かがいるでしょう? その人のためにも……こんなところで死ねませんし、目の前の悲劇を放っておくわけにもいかないからです」
その結果、己の身に更なる業を背負うことになろうとも構わない。闇の救済者として立ち上がったのも、そのような理由があったからではないか。そんなシホの言葉に、失われていた士気が徐々に人々の間に蘇って行き。
「まあ、それでも戦えないのであれば仕方がない。人の形をしたものを殺すのは、辛いことだろうからね」
黄金都市の瓦礫を降らせつつ、出水宮・カガリ(死都の城門・f04556)は人々の前に立ち壁となる。彼は全てを塞ぎ、全てを守りし門の化身。境界を司る彼によって引かれた防衛ラインは、そう容易く崩されるものではない。
「うぅ……あ……あぁ……」
「お……お許し……ください……。全ては……主の……望みのままに……」
だが、どれだけ痛めつけられようとも、少女達は第五の貴族への忠誠を言葉に紋章の力を解放して立ち上がって来た。
彼女達は、心まで支配されてしまったのだろうか。いや、もしかすると、あの紋章から今も直に命令を受けているのかもしれない。
「攫った|女子《おなご》に戦いを任せて、自分は高見の見物ってわけかい? ……気に入らないねぇ」
こうなったら、あの紋章諸共に切り刻んでやろうかと、グレナディンがフォースセイバーを引き抜く。しかし、彼女が仕掛けるよりも早く、それを止めたのはシホだった。
「ここは、私に任せてください。彼女達にも……せめて最後くらいは安らかな眠りを与えてあげたいのです」
そう言うが早いか、シホは光の壁で作られた迷宮を展開し、その中に少女達を閉じ込めた。後は、このまま放置しておくだけで、彼女達の中にある邪悪な存在も消え失せるはずだと。
「救える者は救いたい、か……。確かに、間違ってはいないと思うけど」
「まあ、あんたがそうしたいなら、好きにするがいいさ」
他の二人も、しばし攻撃の手を止める。果たして、その選択が本当に正しいのかどうか。それは自分の目で確かめるべきだと告げられ、シホは無言で頷き自らも迷宮の中へと足を踏み入れて行く。
第五の貴族によって人を辞めさせられた少女達を、せめて最後くらいは人として看取ってやるために。
●仕掛けられた悪意
迷宮の中に足を踏み入れると、その中に閉じ込められた少女達は、既に大半が無力化されていた。
シホの作り出した光の迷宮は、邪悪なものを浄化する効果がある。邪悪なものとは、即ち紋章。道具として見れば単なる寄生生物なのかもしれないが、しかしそこに吸血鬼の邪悪な意思が込められていれば、迷宮は紋章を邪悪な存在と認識する。
「あぁ……力が……抜けていく……」
「なんだか……とても……眠いわ……」
紋章の力が弱まるにつれ、少女達の命の灯もまた弱まって行った。紋章と少女達は命を共有しているのだから当然だ。「もう、休んでいいのですよ。あなたは、誰にも縛られることもなければ、命令されることもありません」
「あ……ありが……とう……」
シホの言葉に、少女は涙を流しながら笑顔を浮かべて事切れた。どちらにせよ、殺すことでしか救済を与えることができないのであれば、せめて安らかに眠らせてやりたい。それがシホの願いでもあったが、しかし悪辣なる吸血鬼は最後まで狡猾な罠を仕込んでいた。
「……っ!?」
突然、背後から殺気を感じ、シホは思わず振り返った。すると、どこから迷宮に入り込んだのか、彼女の前には数多の吸血蝙蝠と、鋭い牙を剥き出しにした悪魔の如き狼が現れていた。
魔狼の数は、シホが迷宮に閉じ込めた少女達のそれと同じ。狡猾なる第五の貴族は、情に流された者が、少女達に安らかな死を与えることを見越していた。彼女達に安らぎを与えたが最後、その与えた存在を、魔狼と蝙蝠が現れて自動的に襲うように仕組んでいたのだ。
さすがに、この数を一人で相手にするのは難しい。拳銃を構えるシホだったが、多勢に無勢。最悪の場合は覚悟を決めねばならないかと思われたが……迫り来る魔狼の背中を光線が貫き、吸血蝙蝠の群れを巨大な門が塞き止めた。
「ふん……ほら、ごらんよ。言わんこっちゃない」
魔狼を仕留めたグレナディンが、皮肉ありげな口調でシホに言った。もっとも、こうして助けに来たということは、彼女も根は悪人でない証拠なのだが。
「どちらにしろ、こんな連中を迷宮の外に出すわけにはいかないな。ここで押し留めよう」
盾を構え、カガリが前に出る。いざという時は身を挺して仲間を守れるように。それが自分の役割だと納得していれば、敵がどれだけいようと恐れることはない。
「ええ……わかりました。随分と忙しない後片付けになりそうですね」
己のやるべきことを理解し、シホもまた拳銃を構えて狙いを定める。幸い、迷宮の力によって、目の前の敵は徐々に弱り始めている。
第五の貴族の置き土産を解き放たぬよう、戦いの第二ラウンドが幕を開けた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎
…イリーナ、遅くなったな
ここから加勢するぞ
しかしつくづく第五の貴族は趣味が悪いな
闇の救済者たちなら躊躇う…と踏んだのかもしれないが
まあ単純に戯れ、かつ悪趣味の産物なんだろうな
指定UC発動、分身を10体生成
「ダッシュ、地形の利用」で少女たちとの距離を詰め
「属性攻撃(聖)」の輝きを宿した黒剣で「2回攻撃、怪力」で1体ずつ確実に叩き斬る
可能なら至近距離から共生の紋章を「部位破壊」狙い
再行動しても慈悲なく叩き潰すのみだ
イリーナ、闇の救済者たち
第五の貴族は俺たち人類の感情すら弄んでくる奴らだ
彼女たちを解放したいのであれば、心を鬼にするしかない!
剣を取れ! 躊躇うな!
真宮・響
【真宮家】で参加
この子達は・・・奏がいるんで、年頃の女の子達の痛ましい姿を見ると目を伏せてしまうね。でも、アタシ達がいつまでも戸惑っているとイリーナ達救済者の士気の低下に繋がりかねない。アタシ達がなんとかするしかないか。
敵の攻撃を【残像】【オーラ防御】【心眼】【見切り】で避けつつ、【情熱】を込めたアンチウォーヴォイスを発動。武器封じを与えることで戦意を奪えないか試してみるよ。戦意を失った子達は攻撃しない。
戦意を失わない子は・・・しょうがないね。出来るだけ痛めつけないように【気合い】を入れた【怪力】を込めたブレイズランスの【串刺し】で一思いに終わらせるよ。
全く。こんな事は早く終わらせたいね。
真宮・奏
【真宮家】で参加
うう、なんて痛ましい・・・。私も戦いに身を投じてる身ですが、不本意な戦いを強いられてる上に悍ましいものに侵食されてるとは・・・出来るだけお助けしたい。相当頑張りませんとね。
敵の攻撃の対応は母さんと兄さんにお任せします!!私は【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【ジャストガード】【受け流し】【拠点防御】でイリーナさん達闇の救済者の皆さんを【かばう】のに専念します。
光耀の雨を発動して耐えます。攻撃は【衝撃波】や【怪力】と【シールドバッシュ】で敵を吹き飛ばす程度にとどめて。どうしても戦意を失わない敵のみ止めを刺します。
戦いは辛い目に遭いがちですが、これは酷すぎますよね・・・
神城・瞬
【真宮家】で参加
これは・・どれだけ人の尊厳を辱めれば気が済むのでしょうか。確かに闇の救済者の皆さんは恐れを抱くでしょうね。それにそのまま闇に侵食されたまま死なせるのもあまりにもいたたまれない。
【高速詠唱】で六花の舞を発動。氷の結晶に【マヒ攻撃】【武器落とし】を仕込みます。更に【結界術】を【連続魔法】で展開。結界に【破魔】と【浄化】の効果を併せます。
武器を扱えなくした上で浄化と破魔の結界に捉えることで戦意喪失できないでしょうか。戦意を失わない敵のみ、【全力魔法】での【電撃】で終わらせます。
敵の攻撃は【残像】【第六感】で凌ぎます。
まだ道は遠くても。このような事は必ず終わらせます。
●仕組まれた罠
第五の貴族によって、その命を紋章と共有させられてしまった少女達。
彼女達は、生きるために戦う。それが正しいか、正しくないかなど関係ない。ただ、死の恐怖と痛みから逃れるために、戦わざるを得ないだけ。
そんな彼女達を殺さねばならないという現実を、受け入れられる者は少ないだろう。闇の救済者達だけでなく、それは猟兵であっても同じこと。紋章に浸食され、人であることを強制的に辞めさせられた少女達を前にして、真宮・響(赫灼の炎・f00434)と真宮・奏(絢爛の星・f03210)は、思わず顔を背けずにはいられなかった。
「この子達は……」
「うう、なんて痛ましい……」
望まぬ力を与えられ、望まぬ戦いに駆り出される。道具として使い潰され、家族に看取られることもないまま死んで行く者達。
絶対に避けられることのない悲劇と、そこに潜む底なしの悪意。それらが全て現実として、目の前に広がっているのだ。
「これは……どれだけ人の尊厳を辱めれば気が済むのでしょうか。確かに闇の救済者の皆さんは恐れを抱くでしょうね」
だが、そんな中でも神城・瞬(清光の月・f06558)は、敢えて感情を表に出さず冷静に立ち回っていた。
ここで取り乱せば、それは行軍する全体の士気にも関わる。この戦いを乗り越えても、闇の救済者達の中に戦いへの躊躇いやトラウマが植え付けられてしまったが最後、彼らの反抗もまたそこで終わる。
ならば、先陣を切る自分達が怯んではならない。それに、まだ彼女達を救うための術も残っているかもしれないと……最後まで希望を捨てることなく、瞬は数多の凍れる結晶を召喚する。
「さて、この氷の結晶は色んな事に使えるんですよ?」
そう、彼が告げる通り、呼び出された結晶は時に武器と化し、時に爆弾と化し、あるいは瞬自身の虚像となりて敵を惑わせる。そして、彼が今回の戦いで選択した形は……氷の結晶そのものを、麻痺弾として投げつけるというものだった。
「……っ!?」
「な、なに、これ……身体が……」
結晶が炸裂した瞬間、少女達は途端に動きを封じられた。麻痺弾だけでなく、結界も併用して肉体の自由を奪っているのだ。
これでもう、彼女達は身動きが取れない。武器も落としてしまった今、まともに戦える者はいないはず。後は、抵抗しないのであれば、敢えて命を奪う必要もないと……そう、思っていたのだが。
「……ひぃっ! お、お許しください!」
「わ、私達は……まだ、戦えます! だから……殺さないで!!」
差し伸べられた瞬の手を、少女達は振り払って立ち上がった。身体の感覚は既になく、結界に圧し潰されそうになりながらも、肉体の限界など無視して強引に肉体を動かしている。
それこそが、彼女達が紋章によって仕込まれたユーベルコード。紋章から第五の貴族による直々の命を受け、彼らに対する恐怖心を糧に、肉体を暴走させられているのだ。
逆らうことも、逃げることも許されない。そこにあるのは絶対的な服従と、恐怖による支配でしかない。紋章の力により肉体の再生さえも遂げた少女達は、武器を失っているにも関わらず、素手で猟兵達に殴り掛からんと突撃して来る。
「皆さん、下がってください! ここは、私が……」
さすがに、武器も持たない者を殺させるのは忍びなかったのか、奏は流星を降らせることで、向かってくる少女達を牽制した。それでも臆さずに向かってくる者には、盾で当て身を食らわせて、そのまま勢いに任せ吹き飛ばす。あくまで、倒すためではなく動きを止めるため。そして最後は、戦争を否定する響の歌声に、全てを任せることにした。
「アタシ達がいつまでも戸惑っていると、イリーナ達救済者の士気の低下に繋がりかねない。アタシ達がなんとかするしかないか……」
ここで戦いを止めさせられれば、無駄な血を流さずに済むかもしれない。少女達も、本心では戦いたいと思っていないはず。武器の使用を封じる歌声で拘束してしまえば、抵抗の意思を示さない者は、響もそれ以上は攻撃しようとしなかったが。
「さあ、もうこれで終わりにしよう。アタシ達だって、別にアンタ達を皆殺しにするつもりはないんだ」
そう言って手を差し伸べた瞬間、少女は一瞬だけ安堵の表情を浮かべたものの、直ぐに何かを思い出し、怯えた様子で響から距離を取った。
「……だ、だめ……来ないで……」
最初は、少女達が何に怯えているのか誰も分からなかった。だが、その答えは直ぐに分かることとなる。命を奪わないという響の言葉に少しでも安堵の色を浮かべた少女達の背後から、恐ろしい形相の狼や、少女達を監視する蝙蝠の群れが続々と現れてきたのだから。
「……っ! こいつら、いったい何処から!?」
「どうやら、敵はこちらの手の内を、全て予測していたようですね」
身構える響の隣で、瞬が苦虫を嚙み潰したような表情で呟いた。彼の言う通り、第五の貴族は少女達自身にもまたブービートラップを仕掛けていたのだ。彼女達を解放し、その心に安らぎを与えようとする者がることは承知の上。だからこそ、卑劣なる吸血鬼達は少女達の影に魔物を潜ませ、彼女達に救いの手が差し伸べられた瞬間、差し伸べた者を殺すように命じていたのである。
「なんてこと……。こっちの善意が、却って危機を招くなんて……」
さすがに、場慣れしているはずのイリーナも、この状況にはしばし言葉を失ってしまった。
自分だったら、果たして少女達にどのような態度で接しただろうか。心を鬼にし、無情にも命を奪うことに躊躇いはなかったが、それでも向こうから救いを求められれば、あるいは助けようとしてしまったかもしれない。
無論、そんなことをしたが最後、状況は却って悪くなる。そして、今が正にそのような状況。少女達よりも遥かに面倒な敵が多数現れ、このままでは戦力差から押し切られる。
もはや、形振り構ってなどいられなかった。これ以上の犠牲を出さないためにも、あの少女達を倒す以外に道はない。覚悟を決め、イリーナもまた猟兵達と共に魔獣に挑む。そして、彼女の銃が複数の蝙蝠を纏めて叩き落した瞬間、どこからともなく飛来した斬撃が、魔狼の首を一切の容赦なく刎ね飛ばした。
「……イリーナ、遅くなったな。ここから加勢するぞ」
気が付くと、そこにいたのは館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)だった。人身売買組織を潰す際には間に合わなかったものの、それでも闇の救済者達の動きを知って、加勢に駆け付けてくれたのだ。
「ありがとう、助かるわ。さあ……ここからが正念場よ。皆も覚悟を決めて」
敬輔の登場で場の空気が変わり、イリーナの瞳にも鋭い眼光が宿る。それは、かつて吸血鬼に最後まで抵抗し、志半ばに亡くなった、彼女の父から譲り受けたものだったのかもしれない。
●決意と覚悟
人々の善意さえも食い物にし、それを利用して更なる悪意で塗り潰さんとする第五の貴族。しかし、その企みも覚悟を決めた猟兵達と闇の救済者達を前にしては、もはや何の意味も持たなかった。
「しかし……つくづく第五の貴族は趣味が悪いな。闇の救済者たちなら躊躇う……と踏んだのかもしれないが」
己の身を複数に分け、敬輔は力任せに剣を振るった。元より、既に武器を封じられた者達。急所を狙って剣で叩き切れば、紋章と命を共有している少女達は、次々と倒れて動かなくなって行く。
「残念ですが、これまでのようですね。安らぎを与えても敵が増えるというのなら……」
「せめて、出来るだけ痛めつけないように、楽にしてやる他にない、か……」
瞬と響も覚悟を決め、それぞれ少女達に引導を渡して行く。瞬の電撃が少女達の動きを止めたところで、響の繰り出す槍が共生の紋章を貫けば、それだけで少女達は糸が切れたかの如く動かなくなる。
「酷い……でも、ここで逃げるわけにはいかない……ですよね」
紋章が破壊される度に、少女達の右目があった部分から薄気味悪い汁と触手が爆ぜるのを見て、奏は思わず口元を抑えた。
同じ死でも、安らかな死もあれば苦しみ悶えて迎える死もある。しかし、それ以上に許せないのは、少女達の亡骸さえも冒涜せんとする第五の貴族の所業だ。遺体さえ綺麗な形で残してはくれないなど、いったいどこまで人間の尊厳を破壊すれば気が済むのだろうか。
「イリーナ、そして闇の救済者たち! 第五の貴族は俺たち人類の感情すら弄んでくる奴らだ!」
恐怖に怯えながらも必死の抵抗を見せる少女達を切り伏せながら、敬輔が叫んだ。哀れみや同情、果ては愛情やいたわりといった人間の心さえも、第五の貴族は嘲笑い、人々を蹂躙するための罠に変えて行く。そんな彼らの支配から脱するのに必用なのは、咎と業を背負ってでも戦うという覚悟。
「彼女たちを解放したいのであれば、心を鬼にするしかない! 剣を取れ! 躊躇うな!」
刃を持つのは、手でなく心。それは、今もなお闇に苦しめられる人々に代わり、彼らの盾となって悪と戦うため。そして、盾は攻撃を防げば傷つくもの。故に、盾になるということは、身体だけでなく心の負傷さえも恐れずに、目の前の悪を糾弾する姿勢で示さねばならない。
世界を救うということは、そういうことだ。カッコいい戦争など存在しないし、自分が傷つかない正義などあり得ない。そんな敬輔達の行動に鼓舞されたのか、ついに闇の救済者達も武器を手に取ると、イリーナに続く形で次々と少女達を攻撃し始めた。
「うぉぉぉぉっ! やってやる……やってやるぞぉ!」
「すみません……私達には、こうする以外に方法がありません。ですが……!!」
剣が、銃が、光が、魔術が、それぞれに紋章を宿した少女達に引導を渡す。一度、勢いづいてしまえば、その流れはもう止められない。残った魔獣さえも蹂躙し、気が付いた時には辺りに残っている敵はおらず、そのどれもが全て血の海に沈んでいた。
「ふぅ……なんとか、片付いたみたいだね。それにしても……こんなことは、早く終わらせてしまいたいね」
「ええ、まったくです。戦いは辛い目に遭いがちですが、これは酷すぎますよね……」
響の言葉に頷く奏。この先も、このような戦いがいくつも待ち受けていると思うと気が重い。しかし、第五の貴族を倒さなければ、同じ悲劇があらゆる場所で繰り返されるだけだ。
「まだ道は遠くても……このような事は必ず終わらせます」
未だ晴れぬ空を仰いで、瞬が拳を握り締める。
人が、人として当たり前のように生きられる世界。闇に閉ざされたダークセイヴァーであっても、いずれはそんな世界にしてみせると。それこそが、猟兵である自分達と、そして闇の救済者達が望む、最良の未来であると信じて。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴