憂サ晴ラシハ燃ユル木々ノ下デ
帝都軍。
その名の通り帝都の保安及び治安維持を司る、桜學府とは別に存在する部隊である。
人によっては影朧となった者と幾度となく遭遇したことがあるだろうが、影朧が影朧となる理由となった研究や軍閥は廃れているはずである……表向きには。
「ひょっとしたら『
學徒兵が普段と違う制服を着てる』と勘違いして話しかけたことがあるかもしれんな」
そう言いつつ幸徳井・保春(栄光の残り香・f22921)は手元に置いてある陶器製のカップをくるくると回していた。
「そんな帝都軍の屯所に『テロル影朧』が爆弾や毒ガス装置、致死呪術など致死性の高い罠を仕掛けようとしていることが分かった」
影朧とは本来「傷付いた魂から生まれる儚いオブリビオン」だが、帝都への敵意と悪意に染まったより強力な個体は「テロル」という冠詞をつけて注意喚起を行っている。
「『生前のおぼろげな記憶による逆恨み』『いきすぎてカルト化した平和思想』『本人にも理由がわからない強大な破壊衝動』……変異する動機は様々だがいずれにせよ敵意によって強大化したテロル影朧の野望を成就させる訳には行かぬ。軍人もまた、守るべき市民であるのだからな」
保春が猟兵達を送り出そうとした瞬間、けたたましい警報が天井近くから鳴り響く。
「明治神宮にて大量の影朧の発生を確認。待機している者はただちに出動せよ。繰り返す、明治神宮にて大量の影朧の発生を確認。待機している者はただちに出動せよ」
校内放送のために視線を上に向けていた保春は猟兵達に視線を戻すと、申し訳なさそうにも苦々しそうにも見える表情で告げた。
「……別の事件が入ってしまったようだ。申し訳ないがテロル影朧が動く前に放送で言っている奴らも片付けてもらえないか。どうもテロル影朧が狙っている屯所は『明治神宮』の近辺らしいからな。一石二鳥だ」
この時、誰も知らなかった。
影朧の大群が白昼堂々街に解き放たれたのはテロル影朧のせいであることに。
そして「桜學府と帝都軍が連携して市民を守らねばならない状況」を作り出すことで屯所に対する警護を薄くして、自身の計画を成功させるためだったということも。
平岡祐樹
陽動作戦も本作戦も叩き潰せ。
お疲れ様です、平岡祐樹です。こちら、作ってからしばらく日の目を浴びてなかったサクラミラージュの依頼でございます。
今案件の第一章にはシナリオギミック「市民・帝都軍人の犠牲を未然に防ぐ」がございます。
これに基づく対抗策が指定されていると第二章以降の判定が有利になることがありますのでぜひご一考くださいませ。
第1章 集団戦
『帝都斬奸隊』
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POW : 風巻(しまき)
【仕込み杖を振り回して四方八方に衝撃波】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : 神立(かんだち)
【仕込み杖】による素早い一撃を放つ。また、【インバネスと山高帽を脱ぐ】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ : 幻日(げんじつ)
自身の【瞳】が輝く間、【仕込み杖】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
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フィーナ・シェフィールド
アドリブ連携歓迎
「帝都に暮らす皆さんを…誰一人傷つけたりしません!」
出現した影朧に追いつくため、白い翼を羽ばたかせて屋根の上を翔けぬけて明治神宮に向かいます。
「エンゲル、みんなを守って!」
シュッツエンゲルにモーントシャインを纏わせて周囲に展開、市民や帝都軍を守る結界を構築。避難及び迎撃の時間を稼ぎます。
わたしはイーリスを手に、影朧に向けて破魔の歌を歌いましょう。
影朧の攻撃をシュッツエンゲルを盾として受け流しつつ、【包み込む破魔の歌声】を発動、スピーカーポッドから破魔の歌声を響かせて、影朧の存在を浄化していきます。
「お還りなさい、幻朧桜の元へ!」
この場の影朧が居なくなるまで、歌い続けましょう。
明治神宮めがけてフィーナ・シェフィールド(天上の演奏家・f22932)は白い翼を羽ばたかせ、屋根の上を翔け抜けていく。
「帝都に暮らす皆さんを……誰一人傷つけたりしません!」
近づくにつれ普段は桜の桃色と葉の緑色に彩られている外苑の一部が炎で赤く染まっているのが分かってくる。そしてその下では仕込み杖から刀を抜き、逃げ惑う人々を嬉々として追いかける影朧の姿があちこち見えた。
足をもたつかせた女性が転び、影朧の瞳が瞬く。
「エンゲル、みんなを守って!」
モーントシャインを纏ったシュッツエンゲルが勢いよく周囲に展開され、一般市民を守る結界が構築される。
突然割って入ってきた銀色の板によって凶刃を弾かれた影朧は忌々しげにそれらが飛んできた空を見上げた。
様々な意図の視線を一身に浴びながら紫と純白の細身のマイク片手に外苑の敷地内に着地したフィーナは深く息を吸い込み、破魔の力を込めた歌を披露する。
その声は決して大きすぎず、音痴でもない。しかしそれを直接、または幾何学模様を描きながら外苑を飛び回るスピーカーポッドから聞いた影朧達は耳を塞いで苦しみ出した。
一般市民はこの曲を最後まで聞いていたい、握手やサインをもらいたい、という想いに後ろ髪を引かれながらも、突然足を止めた影朧から少しでも距離を取ろうと足を動かす。
その動きに気づいた影朧は止めようと反射的に耳から手を離し、すぐに引っ込める。そうしているうちに外套の中から黒い煙が燻り始めた。
フィーナが息継ぎをした瞬間、口元を引き攣らせた影朧達は好機と言わんばかりにすかさずフィーナやスピーカーポッドへ襲いかかる。しかしシュッツエンゲルによる結界は未だに健在で、至近距離から再び紡がれ始める歌声を浴びることとなった。
「ああああああああああ!! 黙れ黙れ黙れ!!」
自らの声で掻き消そうと大声を発しても歌声自体の存在を無いことにすることは出来ず、破魔の力は影朧の荒んだ魂を癒していく。すると影朧の体が端から塵となって空気に溶け込み始めた。
彼岸桜が咲いていても桜の精ではないわたしでも、癒すことは出来る。
いやだ、いやだ、と首を振る、脚を失って宙に浮かんだ格好になった影朧を真正面から見据え、フィーナはマイク越しに告げた。
「お還りなさい、幻朧桜の元へ!」
まるでその言葉を引き金にしたかのように、発声源の近くにいた影朧達は一斉に身を崩して消滅した。
大成功
🔵🔵🔵
バルタン・ノーヴェ
全員リクエストによる、各シナリオへの救援プレイングです。
長らく滞っていたり人手が足りてない時など、ご自由にご利用ください。
台詞のアレンジ、行動のアドリブ、他猟兵との連携歓迎。自作PBWも採用歓迎です。
ユーベルコードも指定外の、公開中から適当なものを使用してもらって構いません。
HAHAHA!
グリモア猟兵殿の要請に応じて参上デース!
お困りのようデスネー? ドントウォーリー! ワタシが手伝いマスヨー!
アタック、ディフェンス、他の方への支援! おまかせくだサーイ!
白兵戦、射撃戦、集団戦もボス戦もオーライ!
冒険の踏破や日常への奉仕活動も得意であります!
臨機応変に対処可能デース、よろしくお願いしマース!
突然の凶行に大恐慌に陥った者達を助けるべく、近隣にあるパーラーに勤めるメイド達が得物を握りしめて飛び出していく。
急いでかけられた臨時の休業を知らせる看板が振り子のように揺れる中、まるでサイレンの如くクラクションを鳴らしながらクッキングカーが煉瓦がしかれた街道を激走していった。
「HAHAHA! お困りのようデスネー? ドントウォーリー! ワタシが手伝いマスヨー!」
ミニ・バルタンに運転を任せ、自身はクッキングカーの屋根に陣取っていたバルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は見せつけるように全身に仕込まれていた武具を晒すと、嬉々として逃げ惑う人々を追い立てる影朧の姿をロックオンした。
「相手のゴールにぃ……シューット!」
弾丸やら火炎放射やら巨大な杭やら榴弾やらオーバーキルの弾幕が影朧を飲み込む。そして一刻遅れて響いた轟音に他の影朧達の注目が出入り口の方へ一斉に向いた。
車止めの手前で急停止したクッキングカーから飛び降りたバルタンは砲塔の間から鎖に繋がれた鉄球をまるでマジックハンドのように飛び出させると、偶然正面にいた影朧を殴り飛ばした。
顔面をへし折られた同胞が便所の入口を隠す壁に叩きつけられたのを尻目に、影朧は仕込み杖を振り回して四方八方に衝撃波を放つ。
「ワオ、なかなかの風切り音デスネー! でも、ワタシを止めるには全然足りまセーン!」
炎に包まれた幻朧桜が激しく揺れる中、大量の砲塔を引っ込める代わりに鋸状の刃が駆動する巨大な動力剣とファルシオンソードを構えたバルタンは衝撃波に真正面からぶつかって突破すると、効かないことを認めることが出来ずがむしゃらに杖を振り続ける影朧を十字に切って捨てた。
「さてさて? 皆々様はどうして来ますカナ?」
刀身についた血糊を振り切り、首を回せば近くにいた影朧は切先をバルタンへ構えながらも一歩二歩後ろに摺り足で下がった。
大成功
🔵🔵🔵
大鷲・鼎
テロルとは、莫迦な事をしてくれる!
怒りからか閃電機関も絶好調。余剰電力がバチバチと電光被服より放電を起こしている。
被害を抑えるなら、速攻ですね。
強襲脚の一撃でもって市民を襲う影朧の行き足を鈍らせ、手近な者から徒手格闘にて制圧する。
これ以上はやらせません。
では……玉と砕けよ!
「テロルとは、莫迦な事をしてくれる!」
怒りに呼応してか体内の閃電機関が全力全開で回ったことで余剰電力がバチバチと電光被服より放電を起こし、大鷲・鼎(試製三號・f43179)の髪が重力に逆らって浮き上がっていく。
普段は機関が動くたびにカチカチツンツンになる髪が気になるお年頃だが、このような非常事態を前にしてはそんな悠長なことは思考の外に追いやっていた。
「被害を抑えるなら、速攻ですね。これ以上はやらせません。では……『玉と砕けよ』!」
市民を襲う影朧の行き足を鈍らせ、手近な者から徒手格闘にて制圧すべく、鼎は瞬間最大出力の電撃を纏い空中高く舞い上がる。
そして急降下する勢いそのままに放つ【強襲脚】の一撃でもって市民を襲う影朧の振るう仕込み杖に強烈な蹴りをお見舞いした。
さらにもう一方の脚もすかさず振り下ろし、まるでステップを踏んでいるかのごとく仕込み杖の上で足踏みを繰り返す。
標的となった影朧は仕込み杖を両手で掴み、ひたすらに足踏みが止まるのを待った。一度手を離せば、仕込み杖を弾き飛ばされてバチバチと音を鳴らす電撃で全身を貫かれるのが明白だったからだ。
「革ではなくゴム手袋とは……猪口才な!」
感電する気配のない影朧の手を覆う素材に気づいた鼎は思わず歯噛みしつつも、力任せに仕込み杖の刀身を粉砕する。
凌ぐことに夢中になっていた影朧はとっさに距離を取ることが出来ず、肉が焦げた臭いを発しながら仰向けに倒れた。
顔面に真っ黒な足跡をいくつもつけられ、痙攣する
影朧が學徒兵や帝都軍人によって取り押さえられるのを阻止すべく、別の影朧が居合切りのように仕込み杖を抜き払って衝撃波を放つ。
正面からそれを浴びて破けた鼎の服の隙間からは青い電流が迸った。
「その程度の斬撃で止まるほど、今の私は脆弱では無いのですよ」
下手人めがけて青い軌跡を描きながら急接近した鼎の回し蹴りが影朧の脇腹を捉えて薙ぎ払う。
感電しながら吹き飛ばされた影朧の体は燃え盛る幻朧桜の幹に叩きつけられ、真っ赤な炎に包まれても悲鳴を上げることも消そうと転げ回ることもせず力なく崩れ落ちていった。
成功
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水澤・怜
放送を聞き現場へ
燃える幻朧桜…か(今は無き故郷を思い一瞬だけ表情が曇るも)
テロルだろうが何だろうが人々を護り影朧を還す…それが俺の仕事だ
一般人保護を最優先
UCを発動し自身と一般人を回復、敵は継続ダメージに加え攻撃の際仲間を傷つけねば更に寿命が縮む状況に追い込む
襲われている一般人の元へダッシュで駆け込み月白で受け流すかオーラ防御でかばう
ここは俺達に任せて逃げろ…早く!
自身への攻撃を見切りと第六感、咄嗟の一撃で受け流しつつ敵の顔めがけマヒ毒を塗った青藍を投げつける
瞳を輝かせねば…いや、麻痺で動きを鈍らせるだけでも良い
怯んだ隙に月白で切り込む
可能ならば桜の癒しを
還れ…在るべき場所へ
…次こそは良き生を
「燃える幻朧桜……か」
現場へ向かう水澤・怜(春宵花影・f27330)の脳裏に今は無き故郷の変わり果てた姿が過ぎり、表情が曇る。
「テロルだろうが何だろうが人々を護り影朧を還す……それが俺の仕事だ」
しかし職務中に私情は不要とすぐに真顔に戻し、歩調を早めていく。明治神宮に近づいてくるにつれ、すれ違う人々に切迫した緊張感が垣間見えるようになってきた。
『人々の命を守るため……』
怜は淡白く光輝く桜の花弁をその場にばら撒く。すると花弁は空に舞い上がりながら浄化の力を宿した結桜紋を形成し出す。
その暖かな光に人々の注目が集まる隙をついて外苑に突入した怜は緊迫した状況下には似つかわしくない笑い声が聞こえてきた。
声がした方を見れば返り血で外套を濡らした影朧が笑みを浮かべながら瞳を爛々と輝かせ、逃げ遅れた一般人に襲い掛かろうとしていた。
息を呑んだ怜は一般人の保護を最優先としてダッシュで駆け込んで割って入り、咄嗟に抜いた月白の刀身で影朧の仕込み杖を受け流す。
「ここは俺達に任せて逃げろ……早く!」
「は、はいっ……!」
影朧は邪魔されたことに対して血の涙を流しながら怜を睨みつけ、自分の行く手を阻むこの忌まわしき軍刀を何とかして弾き飛ばそうと仕込み杖を振るい出す。
怜が1つ行動しようとするところに振るわれる9回の重い斬撃はオーラによる防壁を張っていても月白を持つ手を震わし、痺れさせる。
「瞳を輝かせねば……いや、麻痺で動きを鈍らせるだけでも良い」
それでもその剣筋から次にしてくるであろう動きを見切り、第六感からもたらされる勘を信じてほんの一瞬生まれた隙をついて影朧の顔めがけ麻痺毒を塗った青藍を投げつけた。
至近距離から投じられたメスを避け切れず、影朧の頬に一筋の赤い線が入る。
突然の飛び道具に影朧が怯んだところで怜は攻勢に出て月白で切り込んでいった。
いくら常人の9倍の動きができるようになるとはいえ、時間が経つにつれて傷口から紛れ込んだ毒が全身に回っていくだけでなく、結桜紋の光と幻日の代償が増して重くのしかかる。最初は互角どころか優勢であった影朧の息はあがり、劣勢に追い込まれた。
酷使された仕込み杖が割れ、刀身が宙を飛ぶ。
「還れ……在るべき場所へ」
丸腰になった影朧に向け、怜は癒しの力を注ぎ込む。まだ殺し足りないと影朧は絶叫するが、その姿はどんどん薄れていく。
「……次こそは良き生を」
血湧き肉躍る感覚への執着が転生の過程でその魂から離れることを祈りながら、怜はその姿が消失するのを見届けた。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 冒険
『紅蓮桜花』
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POW : 水をかけたり消火活動をする
SPD : 見物人に被害が出ないように警備する
WIZ : 原因となる影朧の魂を鎮める
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血に染まった地面に根差す、燃え盛る幻朧桜から火の粉と化した花弁が舞い散る。
それらに程近い場所では影朧に襲われた一般人が何人も寝転がされていた。重度の怪我を負い、長距離の移動は出来ないと判断された者達だ。
長期間に渡ってしまった戦いによって桜を愛でる神の庭は學徒兵や軍人、パーラーメイドが薬や包帯を求めて大声をあげて忙しなく動き続ける野戦病院と化していた。
フィーナ・シェフィールド
「あぁ…幻朧桜が…」
まるで、その桜の精の悲鳴が聞こえるかのよう…
一刻も早く火を消し、影朧を鎮めないと!
翼を広げて舞い上がり、燃えていない屋根の上に立ち、天に向かってツウィリングス・モーントを配置。イーリスを片手に、【悲しみを洗い流す慈しみの雨(ノーベンバー・レイン)】を歌います。
「悲しみをすべて洗い流して、涙が消え去るまで降り続いて…♪」
破魔と浄化の力を込めた慈しみの雨を呼び、その雫によって影朧による炎を消し、荒ぶる影朧の魂を鎮めると共に、消火や怪我人の救護を行う人々に力を与えます。
「もうこれ以上、だれも傷つかないで…」
祈りをこめて、炎が消えるまで、声を振り絞って破魔の雨の歌を歌い続けます。
炎の中で木が爆ぜる音が聞こえる。それはまるで幻朧桜を母胎として産まれるはずだった桜の精の悲鳴のようであった。
「あぁ……幻朧桜が……」
無傷または軽傷で済んだ學徒兵や憲兵の手によって懸命な消火活動が始まり、消火栓に近いところにある木や建物へ大量の水が浴びせかけられる。しかし真っ黒に染まった幻朧桜が再び花をつけてくれるかどうかは不明瞭であった。
あまりの惨状を目の当たりにした目尻から一筋の涙が溢れる。しかしこのままただ泣いているわけにはいかないと袖でやや乱暴に目を拭う。
「一刻も早く火を消し、影朧を鎮めないと!」
フィーナは翼を広げて舞い上がり、風に乗った火の粉がかからずに燃えていなかった建造物の屋根の上に立ち、天に向かって2対のツウィリングス・モーントを配置する。そしてイーリスを片手に深く息を吸い込んで腹から声を出した。
『悲しみをすべて洗い流して、涙が消え去るまで降り続いて……♪』
紡がれる楽曲は【
悲しみを洗い流す慈しみの雨】。
空に照っていた太陽が薄灰色の雲に覆い隠され、そこから破魔と浄化の力が込められた慈しみの雨が降り出す。
その雫によって影朧によってつけられた炎は消され、拘束されてもなお荒ぶって聞くに堪えない罵声を吐いていた故に猿轡をはめられて転がされていた影朧の体から黒い煙が立ち昇っていく。
くぐもった声をあげながら煙の中で芋虫のようにのたうち回っていた影朧の体が薄れて消えていく。だが爛々と輝いて血走っていた目は最期までその邪な光を失うことはなかった。
「もうこれ以上、だれも傷つかないで……」
それでも炎が消えるまで、祈りをこめて、フィーナは声を振り絞って破魔の雨の歌を歌い続ける。
その歌声は消火や怪我人の救護を行う人々の背中を押し、力を与えていた。
大成功
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水澤・怜
仕事柄こういう光景に直面する事は多いとはいえ…やはり何度見ても辛いものだ
…気を引き締めねば
到着次第UCを発動して患者の痛みや苦しみを軽減
非猟兵を含む先に到着して救護活動を行っている者に状況確認
UC効果範囲内であれば治療可能な者、早急に治療が必要な重傷者等、患者に色札をつけて簡易的なトリアージを行う
治療者側は回復系UC所持者、医療従事者を優先して重傷者にまわし、その他の者は治療の補助や物資の確保等フォローにあたらせる
自身もUCでの広範囲治療を行いつつ医療従事者として重傷者の治療にあたる
物資にも人手にも限りがある今、効率的に治療を行わねば救える命も救えん…!
一人でも多くの命を救うために最善を尽くす
學徒兵という仕事柄、こういう惨状に直面する事は多い。とはいえ……やはり何度見ても辛いものである。
「……気を引き締めねば」
「おい、まだか!」
「こっちは怪我してんだぞ! 先に診ろ!」
「いたい、いたいよぉー!!」
救護活動が行われている区画に踏み込んだ怜は自らの身から桜の花吹雪を放ち、手当を待っていた患者を眠らせることで痛みや苦しみを軽減させる。
「申し訳ない、桜學府の医療班に所属している者だが、今どのような状況か教えてくれる者はいないか!」
軍医の端くれであることを告げた怜に救護活動を行っていた者が駆け寄りながら口を開く。
「は、はい! こちらには影朧からの避難中に転倒して怪我をされたり気分が悪くなったりした方を集めています」
「トリアージは」
「やってないです。とりあえず来た順で、見るからに重症の方は人目につかない奥の方に移ってもらって治療をしております」
「軽傷の患者には色札をつけて簡易的なトリアージを行い、骨折などの重度の者から対応にあたるようにしよう。用意は出来るか」
寝て意識を失っている今なら本人予想よりも低い優先度でも文句を言われることはないだろう、と怜がダメ押しで言えば、別の従事者が明らかにホッとした顔で頷いた。
「かしこまりました!」
「……助かりました。【桜の癒やし】があれば眠っている間に本当に軽傷の方は治っちゃいますよね。起きたらさっさと帰らせましょう」
説明をしていた者も大きく息を吐く。
こういう時はお互い様の精神で、とよく言うが自分のことしか考えられない者は残念ながら大勢いる。短時間でもそういう者達の圧に晒されて疲弊していたのだろう。
「今からでも回復系の能力の所持者、医療従事者を優先して重傷者にまわし、その他の者は治療の補助や物資の確保等フォローにあたってくれ。……では、重傷者の区画に案内してくれるか」
「はい! こちらです!」
そう言って怜は【桜の癒やし】による広範囲治療と麻酔を続けつつ、医療従事者として重傷者の治療にあたるべく奥の区画へ動き出す。
「物資にも人手にも限りがある今、効率的に治療を行わねば救える命も救えん……!」
今出来る最善を尽くす。全ては、一人でも多くの命を救うために。
大成功
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網野・艶之進(サポート)
「正直、戦いたくはないでござるが……」
◆口調
・一人称は拙者、二人称はおぬし、語尾はござる
・古風なサムライ口調
◆性質・特技
・勤勉にして率直、純粋にして直情
・どこでも寝られる
◆行動傾向
・規律と道徳を重んじ、他人を思いやる行動をとります(秩序/善)
・學徒兵として帝都防衛の技術を磨くべく、異世界を渡り武芸修行をしています
・自らの生命力を刃に換えて邪心を斬りおとす
御刀魂の遣い手で、艶之進としては敵の魂が浄化されることを強く望み、ためらうことなく技を用います
・慈悲深すぎるゆえ、敵を殺めることに葛藤を抱いています……が、「すでに死んでいるもの」や「元より生きていないもの」は容赦なく斬り捨てます
「桜學府の學徒兵よ、感謝する。影朧の浄化は我々には出来ぬのでな」
一ヶ所にまとめられた影朧達が桜學府から派遣された桜の精達の手によって浄化されていく。
浄化されている影朧が突然縄を切って突っ込んでくるのを受け止めるために控えていた網野・艶之進(斬心・f35120)は振り返り、一族に伝わる刀の柄へ添わせていた手で敬礼をした。
「いやいや、これこそ拙者達の役目でござるから。当然でござるよ」
「役目か。それを言うなら、此度の騒動で我々は何も役に立ててないことになるな」
「そ、そんなつもりは!?」
「冗談だ」
そう言って帝都軍人は口を大きく開けて笑う。ここで釣られて笑ったら怒られそうで、艶之進は困った顔をしつつ口角だけ上げて愛想笑いを浮かべた。
「では、我々は詰所に戻るとしよう。お疲れ」
「お疲れ様でござる」
そうして艶之進は帝都軍人の後ろ姿を見送り、影朧へ向き直る。
「我々はっ、武士として、存分に刀を振るいっ! 生きたいだけっ! なのに、なぜ、ユルサレナイノダッ!!」
これといった政治的信条は無く、ただ自らの欲望に従って動き続けた士族の過激分子達は末端から形を崩しながら喚き散らす。
だが新しく手に入れた刀の切れ味を実証する、憂さ晴らし、金品目的、自分の武芸の腕を試すなどの建前で行われる無差別な殺傷に何の価値があるのだろうか。
「……辻斬りなぞ、武士の風上にも置けぬ行為でござるよ」
どうせ縛られて動けないのだから猿轡もさせるべきでござったか……と、自らの命と引き換えに他人の命を絶つことなく邪心のみを斬り落とす活人剣の当主は眉を顰めた。
成功
🔵🔵🔴
第3章 ボス戦
『ダークプルティア『ダーク・グロル』』
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POW : 心を蝕みます。ダークネスファウルハイト
【恨みや憎しみの怨念】を籠めた【ギザギザとした形状の闇魔刀】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【精神の正常さ】のみを攻撃する。
SPD : 果す為なら全力を。ダークネスノインシュナイデン
自身の【恨みや憎しみを籠めた闇魔刀の刀身】が輝く間、【闇魔刀】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ : 貴方は必ず殺します。ダークネスラッヘゾルダート
自身が【恨みや憎しみ】を感じると、レベル×1体の【刀や銃、マントを装備した仮面女学生兵士】が召喚される。刀や銃、マントを装備した仮面女学生兵士は恨みや憎しみを与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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「帝都斬奸隊とかいうあの気狂い達はよくやってくれたわ」
爆発音と共に黒煙が噴き出す。
帝都軍の詰所として使われている建物の異変に、何の気なしに屯していた一般市民達は再びパニックになって四方八方に逃げ出していった。
「私を虐めた者を法の対象外だからと見逃した者達には当然のエンディングね。……でもこれは私の物語のプロローグに過ぎない。次は本編と参りましょう」
そう言って目元を黒いマスクで隠した少女———
テロル影朧は恍惚の笑みを浮かべながら、次の目的地に向けて動き始めた。
フィーナ・シェフィールド
アドリブ連携歓迎。
「もうこれ以上、誰も傷つかない…ううん、誰も傷つけさせない!」
純白の翼を羽ばたかせて、影朧の前に舞い降ります。
「貴女自身が受けた苦しみではないのに、それに囚われて復讐のために行動するなんて…誰も報われないわ!」
荒ぶるその魂を鎮め、幻朧桜の元で心の傷を癒し、転生して欲しい。
【傷ついた魂に捧げる輪廻の唄】を、心を込めて歌います。
「運命が微笑みかけてくれたら。いつかまた、きっと巡り合えるわ♪」
慈愛の想いと、浄化と破魔の力を込めた歌声を影朧に向けて、戦場中に響かせます。
「お願い、もうこんなことは止めて…!」
刀や銃の攻撃はオーラを纏ったシュッツエンゲルで受け流しながら、歌い続けます。
音を伴う一瞬の振動の後、新たにもくもくと湧き出てきた黒煙にフィーナは息を飲むとその現場へ一気に急降下していく。
「もうこれ以上、誰も傷つかない……ううん、誰も傷つけさせない!」
建物の周囲で走って逃げ出す人々の中で唯一、ゆっくりと歩いている少女の姿は悪目立ちしていた。
フィーナは純白の翼を羽ばたかせて、少女の前に舞い降りる。
「貴女がテロル影朧ですね」
「だとしたら何?」
否定をしない黒いマスクの奥から怪訝な視線が向けられる。フィーナは荒ぶるその魂を鎮め、幻朧桜の元で心の傷を癒し、転生して欲しくて、叫んだ。
「貴女自身が受けた苦しみではないのに、それに囚われて復讐のために行動するなんて……誰も報われないわ!」
「はぁ?」
少女の声のトーンが一段階下がる。
「昼食を食べていたら硬球を投げつけられて、地面に落ちた食事と痛がる私を見て笑っていたあの女達の姿が、汚されるどころか修復すら出来ないほど破かれた教科書とノートと宿題を詰め込まれた鞄が、出した恋文の中身をここが引いた点だと晒された掲示板が、全部まやかしだと?」
それらが少女自身の経験なのか、それとも少女が追体験をした物なのか、フィーナには判別出来ない。
「ふざけるな」
しかし「生前のおぼろげな記憶による逆恨み」で動くことがあるテロル影朧にとってはどうしようもない「現実」であり確固たる「理由」であった。
「部外者が勝手に決めつけて、割り込んでくるな!!」
鋸と見間違えるほど刃こぼれした刀をまるで指揮棒のように振るえば、刀や銃を装備した仮面女学生達が路地のあちこちから飛び出してくる。
マントを翻す女学生達の強襲をオーラを纏ったシュッツエンゲルで受け流したフィーナはずっと手にしていたマイクを握り直した。
『運命が微笑みかけてくれたら。いつかまた、きっと巡り合えるわ♪』
慈愛の想いと、浄化と破魔の力を込めた【傷ついた魂に捧げる輪廻の唄】を少女達に向けて、街中に響き渡らせる。
「お願い、もうこんなことは止めて……!」
「薄っぺらい同情なんて、私達には、いらない!」
女学生達の姿が消えていく中、少女は両耳を手で押さえながら血走った目で睨みつけた。
成功
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桜冠・壱百華(サポート)
うははは、これはそれがしのサポートプレイングにござい。
多少の怪我や失敗は厭わず積極的に行動し、他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
影朧の転生役やシナリオ進行に必要な言動など青丸稼ぎに役立てて下さい。
使用ユーベルコヲドの指定はありません。
「成功」の結果で書けそうなものを一つステータス画面からお選び下さい。フラグメント次第で不使用も可です。
アイテムもご自由にお使い下さい。
あとはお任せ致します。
宜しくお願い致します。
というわけである。それがしは帝都桜學府のいち學徒兵。何者にでもなろう。好きに使ってくれてよいぞ。うははは。
「とんでもない爆音が響いたかと思えば……別のテロル影朧も動いていたでござるか」
せめて先程の影朧の被害に遭った屋台のガスボンベが暴発した程度であって欲しかった、と思いつつ桜冠・壱百華(はなかむり・ももか・f43639)はこちらに敵意を持った視線と武器を突きつける女学生達を見遣る。
壱百華が生前の女学生達に起きた事件に介入出来たかと言えば「否」である。それは今黒煙が噴き出している詰所で倒れている帝都軍人にも言えることだ。
だが「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」と関係のある全ての者まで憎悪しているのが今目前にいるテロル影朧だ。その感情を否定することは出来ない。
「恨むなら恨むがよい。それがしは帝都桜學府のいち學徒兵。望まれるがままに、何者にでもなろう」
ただ女学生達が影朧になったことで、壱百華には関わる理由が出来た。なぜなら學徒兵は影朧への対処が職務であるからだ。
「粛々と職務に当たらせてもらおうぞ」
壱百華の身から巻き起こった桜吹雪が女学生達を眠りに誘う。
「きちんとあとで転生の理に返すから、しばらくは眠っていておくれ」
行く手を阻む人の壁が崩れたのを見て、壱百華は詰所へ救助活動を行うべく手に持っていた水を頭から被った。
成功
🔵🔵🔴
水澤・怜
この世の中に『完全に正しい』ものなど存在しない
人然り、人が作ったモノも…法も然りだ
…かつての俺も理不尽な悲劇から過ちを犯した
だがお前に同情はすれど、同意はしない
今の俺とお前が『正しい』と信じるものは…決定的に異なるからだ
指定UCで敵の動きを鈍らせ、可能なら9発食らう前に『闇御津羽』を重ねて使用
相殺出来ぬ分は第六感と咄嗟の一撃で受け流し
お前が周りが憎い、己は悪くないとこれからも過ちを重ねるのであれば…俺は過去に同じ過ちを犯した者として真っ正面から…止める!
…もしも
これほどの憎しみに堕ちる前に…いや墜ちた後であっても
お前にも手を差し伸べてくれる誰かがいたのなら
ここまで苦しむことは…なかったのかもな
「自分を救わなかった物全てに対する『復讐』か」
この世の中に「完全に正しい」ものなど存在しない。人然り、人が作ったモノ……法も然りだ。
かつて怜も理不尽な悲劇から桜の精として取り返しのつかない「過ち」を犯したことがある———目前のテロル影朧と同じように。
「だがお前に同情はすれど、同意はしない。今の俺とお前が『正しい』と信じるものは……決定的に異なるからだ」
「そうですか」
フィーナの歌声に耐性がつき、耳元から手を離した少女は残念、と呟きながらゆっくりと鋸のような刃を指で撫でた。
「ならば『果す為なら全力を。ダークネスノインシュナイデン』!」
恨みや憎しみが重ねて籠められた刀身が不気味に輝き出す。目を見開き、口角を上げた少女はこの世の物とは思えない速さで居眠りする女学生の1人を踏み台にして跳び、突っ込んできた。
怜は懐に忍ばせていたメスを掌の中で広げると棒手裏剣のように一気に放つ。少女は刀を素早く振るうことでボディスーツに傷がつく前に全て打ち落とし、踏みつけた。
だが有事に備えて多めに持ち歩いているメスにはまだまだ余裕がある。
『一撃で済むなどとは…思わぬことだ』
投げたそばから構え直し、投じられるメスを少女は尽く弾き落とす。しかしだんだん近づいていく距離と心身に溜まる疲労から余裕そうだった笑みも引っ込んでいく。
両の手で数えきれないほどメスを投じ終えたところで怜はついに月白に手をかけた。
「お前が周りが憎い、己は悪くないと宣うか」
「ああ、そうさ! 気に入らないだけで虐めてきた同級生! 私の言うことを全く信じず、笑い話で済まそうとした教師! 学校の中の出来事には無干渉無関心の帝都軍! 全部全部めちゃくちゃにしてやる!」
もしもこれほどの憎しみに堕ちる前に……いや墜ちた後であっても、手を差し伸べてくれる誰かがいたのならここまで苦しむことは……なかったかもしれない。
しかしもう手遅れだというのなら。
「そして學徒兵、お前達も私達の道程を阻むというのなら……」
「これからも過ちを重ねるのであれば……俺は過去に同じ過ちを犯した者として真っ正面から……」
「ひとまとめに潰してやる!」
「止める!」
互いの意地と力が籠められた斬撃が交錯する。
月白の刀身から噴き出した波動に弾かれた少女はすぐに体勢を立て直して2発目を振るおうとする。しかし腹部に鋭い痛みが走り、手が止まる。
一瞬視線を下に落とせば、腹に先程まで散々落としてきたものと全く同じ紋様の入ったメスが刺さっていた。
『止められるものなら…止めてみろ!』
怜の絶叫と共に、血飛沫が迸った。
大成功
🔵🔵🔵
バルタン・ノーヴェ(サポート)
「ご安心くだサーイ! ワタシが来マシタ!」
ご用命あらば即参上! アドリブ連携歓迎デース!
普段の口調:片言口調(ワタシor我輩、アナタ&~殿、デス、マス、デショーカ? デース!)
戦闘スタイル:白兵射撃の物理系
各種武装の中から敵に有効なものを選択して用いてくだサーイ!
刀も銃器も、内蔵兵器や換装式ウェポンも、何でもOKデス!
アタック重視でもディフェンス重視でも対応可能デース!
斬り込み、爆撃、弾幕を張ったり、パリィ盾したり、臨機応変に立ち回りマース!
指定ユーベルコードが使いづらいなら、公開している他のものを使用しても問題はありマセーン!
オブリビオンを倒して、ミッションクリアのために力をお貸ししマース!
「まさか爆発まで起きるトハ……急ぐでありマス!」
明治神宮のあちこちで暴れていた斬奸隊の鎮圧及び確保に追われていたバルタンは脚に力を入れ、消防車よろしく鐘の音を助手席のミニバルタンが鳴らすキッチンカーの屋根から飛び降りた。
黒煙の発生元である詰所には學徒兵による消火活動と救助活動が急ピッチで行われていた。
それが出来るのはテロル影朧の一味である女学生達が眠りに落ちたことで妨害がなくなったから。しかしおびただしい量の血を流す少女はその動きに気づくと地の底を這うような声を発した。
「何を……している、貴様ら!!」
標的を変えた少女は怜を振り切り、詰所の周りにいる學徒兵へ襲いかかる。
『骸式兵装展開、冬の番!』
しかし「悲劇の連鎖を断ち切る」という誓いを立ててアスタルシャを模した姿に変身したバルタンが割って入り、鞘に入ったままの剣でその刀身を受け止めた。
「邪魔っ、だっ、さっさと、退きなさいよっ……!」
「行かせません。ここで通せば貴殿のことを本当に知らなかった者達が犠牲となり、彼らを大事に思う者が貴殿を憎むことになる!」
ギザギザとした形状の刀に込められた、斬撃を受けた者の精神の正常さだけを蝕む瘴気が鞘を通り越して、バルタンを知らず知らずのうちに削っていく。だがそれによってバルタンは自ら立てた誓いに固執するようになった。
「黙れ! 今の帝都軍を変えるつもりがないということは、私のような人が不幸になる状況を永遠に維持するということ! なら二度とそんな考えが出来なくなるように制裁を加えねばならない!」
過激な方向に振り切って飛躍した主張にバルタンは眉を顰めつつ、剣を持つ腕に力を込めて少女の刀を弾き返す。
血を流しすぎたのかあまりの力の差に押し込まれたのか、少女はよろめいた。
成功
🔵🔵🔴

北条・優希斗
連・アド○
…恨みと憎悪の果てにアンタはテロルを引き起こした、と言う訳か
己が高ぶる感情に振り回され暴れ回るその姿は
成程、実に不安定なアンタが影朧になる前のアンタの心そのものなのだろうな
それには同情とその感情の理解があるつもりだが…
その上で、敢えて言おう
下らない、と
それはアンタがアンタのエゴの儘に好き放題暴れている
只、それだけの事なんじゃ無いかと俺は思うよ
まあ…だからこそ
堕ちたアンタをその憎悪と苦しみから
解放する為に力を振るう事に躊躇う理由は無いのだがな
まあ、先ずその心をへし折るためにも
その九連撃は回避した方が互いのためか
早業+残像+見切り+オーラ防御+第六感+軽業
一先ずこれでアンタの攻撃を出来る限り躱してみせよう
その上で
カウンターを交えた活性化UC+2回攻撃+連続コンボ+斬撃波+追撃+騙し討ち
で一気に攻撃を叩き付けて、その力を削ぎ
UC真闇・罪業断裂蒼覇斬+覚悟+鎧無視攻撃+上記技能
その刃でアンタの心の奥底にあるだろう憎悪の鎖を断つ
せめて安らかな転生を
―それが、俺の贖罪だから
「……恨みと憎悪の果てにアンタはテロルを引き起こした、と言う訳か」
高らかに謳われた少女の主張を黙って聞いていた北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)が口を開く。
「己が高ぶる感情に振り回され暴れ回るその姿は……成程、実に不安定なアンタが影朧になる前のアンタの心そのものなのだろうな。それには同情とその感情の理解があるつもりだが……」
息継ぎのために一旦言葉を区切った優希斗は少女の意識がこちらに向けられたことを認識した上で告げた。
「その上で、敢えて言おう。
下らない、と」
「はぁ?」
バルタンの静止に対して荒ぶったことでトーンが上がっていた声が再び地を這いずり出す。
「それはアンタがアンタのエゴの儘に好き放題暴れている。只、それだけの事なんじゃ無いかと俺は思うよ」
「エゴ、だと? これだけ今の学園生活に犠牲になった子がいるのが見えないのか! 私の理念に共感し、付いてきている同士達が!」
未だに懇々と眠り続けている女生徒達を見ろと、少女は腕を広げて主張する。しかし優希斗は視線を少女の後ろで倒れ込む女学生達に移しはしたが、一瞥しただけで何も言うことはなかった。
何の感想も何の感情も抱かない、まさに他人事のような態度に少女は激昂し、刃こぼれの激しい刀身を煌めかせながら突っ込んでくる。
「まあ……だからこそ、堕ちたアンタをその憎悪と苦しみから解放する為に力を振るう事に躊躇う理由は無いのだがな」
他人に憎しみや恨みを抱いた女学生の記憶を覗き込み、自分の様に思う少女の動きは熱心に剣道に打ち込んできた者やパーラーメイドになるための訓練を受けた者の経験を自らの身に昇華させたのか、元来の技量によるものなのか、決して素人同然の物ではない。
先ず怒りと憎しみに支配され、それを復讐という形で解消しようとする心をへし折るためには、優希斗は真っ向からぶつかり合うのではなく避けることを選択した。
オーラによる防壁に包まれた残像は実際の肉体を切ったような感触を少女に与えるが、そこから血が溢れ出ることはなくただ黙って消失する。
偽者だったことに気づき、捉えたことに笑みを浮かべかけた顔を忙しなく動かした少女は軽い足取りで距離を取る優希斗を見つけ出して追走する。
決して全力を出していない優希斗に追いつくまでは簡単だったが、憤怒と憎悪に満ちた雄叫びをあげながら振るわれた刃を優希斗は少女の方を全く見ることなく、しかしそこに振るわれるという確信を持った動きで避けた。
こちらの動きを見ていないのだから偶然だろうと決めつけた少女はいくら振るっても擦りもしない事実に驚愕し、アドレナリンの効果で今まで感じていなかった疲れと痛みが襲いかかってきたことで足を止めた。
「その九連撃は回避した方が互いのためだろうからな」
少女の息が荒くなることを予感していた優希斗はここで初めて振り返り、透き通っているかのように美しい刀身を持つ刀を抜く。
『舞えや、舞え。全ての未来と過去のその先を』
そして蒼穹の骸の海を想起させる刀舞で、大量の血を失ったことを体が自覚して切先が定めることが出来なくなった少女の体を次々に穿っていく。
少女は傷つきながらも苦し紛れに肉薄する優希斗へ切り掛かったが当てられずに隙を晒し、逆に深々と身を削られた。
「なんで、なんでなんでなんで!!」
自分の想いが込められた復讐の刃が、その想いを理解しようともしない愚者に届かないという事実を理解することを拒むように少女は喚き散らす。
「『終わらせる。汝の裡に潜むその罪と魔と深淵を』、アンタの心の奥底にあるだろう憎悪の鎖を断つ」
優希斗は闇に堕ちた娘の涙への贖罪の意志を籠めた蒼月の斬撃で、少女の肉体を傷つけず、性根に渦巻くドス黒い感情だけを切り刻む。
自らの身の回りにあった物全てを恨み怨む感情全てを切り離され、霧散させられた少女は行動原理を見失って虚脱状態に陥ってその場に膝をつき、天を見上げて動けなくなった。
「せめて安らかな転生を———それが、俺の贖罪だから」
再び体と感情が結びつく前に、と優希斗に呼びつけられた桜の精が少女———テロル影朧の浄化を敢行する。するとこの世に結びつける未練から強制的に遠ざけられた少女は呆気なく消滅した。
だがその未練を生み出した原因は少女の主張していた通り、解決して無くなったわけではない。
爆発によって一部が倒壊した詰所から未だに登る煙は、表面上は見えず陰で燻っている問題を揶揄しているかのようであった。
大成功
🔵🔵🔵