5
闇の救済者戦争⑬〜ピュルガトワルの涯の園

#ダークセイヴァー #闇の救済者戦争 #月光城 #紅竜の異端神ベルザード #夕狩こあら



 デスギガス災群に乗って現れた城塞群の一つ、「緋の水晶砦」の主ベルザード。
 嘗て己が炎熱の領域を維持・拡大すべく大地に君臨した紅き竜の異端神は、目下、その巨躯に負う翼を660枚に増やしていた。
『ガァァアア……ッ……!』
 元の燃えるような緋翼に加え、月の如く煌々と輝く光の翼が頸椎から鬣のように生えている。
 生えている――否、其は何者かの手によって移植された異物に違いなかった。
『ゲェァァアアアッッ!!』
 元来は知能を有する崇高な竜であったが、その舌は言葉を忘れて叫ぶばかり。
 異形の身体部位が齎した「力」も制禦できないようで、ベルザードは凄まじい熱波を迸るや一瞬で周囲を砂漠化させると、砂という砂に炎熱を浴びせ、ドロドロに溶かして練り上げた水晶の柱を地中から突き出させた。
『……ァァアアッ……ァァアア……ッッ!』
 炎々と燃え立つ火柱と、その赫耀を表面に映して照る水晶柱が、緋竜を中心に檻を成していく。
 凡そ体内に多くの水を含む生物にとって過酷な「炎の牢獄」が其処にあった。


「月光城砦群への道が開かれた今、私達は禁獣の持つ無敵能力を無効化するチャンスを得られたわね」
 早めに攻略に掛かろうと口を開いたのは、ニコリネ・ユーリカ(花屋・f02123)。
 儀式魔術【Q】によって発見された戦場『月光城砦群』は、元は異端の神々と戦う為の城塞であったが、これが今、デスギガス災群に乗って現れた。
 この城塞群の各々を治める「月光城の主達」は、第五の貴族をも凌駕する難敵であるが、彼等は城塞群の中央に『禁獣ケルベロス・フェノメノン』の“欠落”を隠しているらしい――。
 この戦場を制圧すれば、禁獣の欠落が判明する上、其を破壊する事で「無敵能力」を無効化できるという訳だ。
「欠落を壊さない限り、禁獣は無敵……現状、戦っても撃退するのが精一杯なら、攻略しておきたい処よね」
 ただ、それも手強いとは彼女の表情が示そう。
 少々過酷な戦場に向かって貰う事になると前置いた花屋は、自身が案内する「緋の水晶砦」について説明を始めた。
「皆に行って貰いたいのは、城塞の主ベルザードによって地形が大きく変わった水晶宮……砂漠化した地面から水晶と火柱が続々と突き上がって檻を成す、とっても熱い城塞なの」
 元々、紅き竜は異端の神々の一柱で、存在そのものが自然現象の具現であった。
 今や何者かによって、恐らくは五卿六眼のいずれかと思しき者によって「月の如く煌々と輝く、異形の身体部位」を多数移植されたベルザードは、超自然の存在となり、「およそ通常の生物では不可能な、生命体の構造を無視した奇怪な挙動」で襲い掛かってくる。
 その影響で城塞が水晶化しているのだが、猟兵は難敵ベルザードと対峙するに、この異常な地形をどう進んで近付くかも考えなければならないだろう。
「常に状態を変化させる火柱と水晶柱を抜けた先、ベルザードは元々の能力に加えて、移植された異形の翼から全方向に光の矢を照射してくるの。これもどうにかしなきゃだし……負傷や流血は避けられないかも」
 常に定まらぬ地形への対応。
 戦闘能力を爆上げした紅竜との対戦。
 彼奴に移植された異形が齎す光撃の攻略。
 これら全てに対抗策を用意するのは「やや難」だと確言したニコリネは、然し、これまでも様々な難題・難敵をやっつけてきた猟兵の力を強く信じており、だからこそ煉獄に送り出す。
「無敵を攻略するなんて無理な話と思うところ、皆はその無理を覆してきたわ。今回もやっちゃいましょ!」
 故に、己もいつも通り。
 ぱちんとウインクした花屋は、溢れる光に精鋭を包んだ。


夕狩こあら
 オープニングをご覧下さりありがとうございます。
 はじめまして、または、こんにちは。
 夕狩(ゆうかり)こあらと申します。

 このシナリオは、『闇の救済者戦争』第十三の戦場「月光城砦群」に於いて、「月の如く煌々と輝く、異形の身体部位」を多数移植されたオブリビオンと戦うボス戦シナリオ(難易度:やや難)です。

●戦場の情報
 ダークセイヴァー第五層の「月光城」城塞群の一つ。
 地面は砂漠化して足場が不安定な他、所々炎熱によって砂が硝子化して水晶柱を生み出しており、共に突き出る火柱を映して視界を阻害しています。これらは紅竜を中心に「檻」を成し、超自然・超生命的な現象の連続によって形を定める事はありません。

●敵の情報:『紅竜の異端神ベルザード』(ボス戦)
 巨大な竜の姿を持つ異端の神。その本質は自然現象の具現。
 元々の攻撃方法に加え(PSW)、移植された「鬣のような翼」から光矢を放ってきます。
 元来は知能を有していましたが、現在でもそれを保っているかは不明です。

●プレイングボーナス:『異形の身体部位から繰り出される攻撃に対処する/城内のトラップに対処する』
 このシナリオフレームには、特別な「プレイングボーナス」があります。
 これに基づく行動をすると、戦闘が有利になります。

●リプレイ描写について
 フレンドと一緒に行動する場合、お相手のお名前(ID)や呼び方をお書き下さい。
 二名様以上は【グループ名】を冒頭に記載願います。この場合も呼称があると大変助かります。
 また、このシナリオに導入の文章はありません。
 成功度の高い方から数名程度の採用とし、サポートも採用しつつ早期の完結に努めます。

 以上が猟兵が任務を遂行する為に提供できる情報です。
 皆様の武運長久をお祈り申し上げます。
206




第1章 ボス戦 『紅竜の異端神ベルザード』

POW   :    炎滅の吐息
【自らすら焼き尽くさんとする爆炎の身体】に変形し、自身の【命が討たれた時に大爆発が起こる事】を代償に、自身の【放つ炎熱のドラゴンブレスの火力と範囲】を強化する。
SPD   :    熱砂を喚ぶもの
全身を【周辺を非現実的な速度で砂漠化させる熱波】で覆い、自身の【発する熱量】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
WIZ   :    火は炎に、炎は焱に、焱は燚に
レベル×1個の【可燃物が無くとも周辺に延焼し続ける魔】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
幻・紅蝶
ちょとこの熱さは危険過ぎるヨ!
何とかしないと速攻デッドエンド、思い付く限りの対策で何とかしないとネ。

【仙術】で浮遊して【空中機動】し地面から離れ、山風剣で【天候操作】して雨を降らせて炎と熱の抑制を狙うヨ。
周りの地形や敵の居場所は、山河社稷図を介しての【情報収集】を基に把握するネ。

敵の光線攻撃は面で制圧するタイプだと思うカラ、上手いこと光線の隙間を抜けて避けられないか試みるネ。

初撃を凌いだらUC発動、「冷気」属性の「竜巻」を起こして周りを冷やしたり敵の生み出した炎を消したりしつつ攻撃ヨ!



 睡蓮のグリモアが花葩を開いた途端、刃の如き熱波が花人の玉肌香膩を掠める。
 宛で灼熱の万華鏡を觀るようだと黑瞳を瞬いた幻・紅蝶(電影娘々・f28601)は、薄く開いた紅脣に喫驚を零した。
「ちょとこの熱さは危険過ぎるヨ! 息吸うだけで肺が焼けるようネ……!」
 咄嗟に繊手を胸に遣り、ケホッと咳込む。
 動もすれば体中の水分がトバされてしまうと、熱砂の海原を眼下に敷いた佳人は、着地するより迅く仙氣を練ると、霊符衣をヒラリ翻して宙空に浮かんだ。
「速攻デッドエンドじゃ困るヨ! 思い付く限り何とかしないとネ」
 五感を鋭く、須臾に突き出る水晶柱を躱しざま『山風剣』を抜く。
 水の力を帯びた直劍型宝貝を盾代わりに、次いで噴出する火柱の熱を往なした紅蝶は、玉臂を伸べて宝劍一揮ッ!
 周囲に雨を降らせる事で、自身に浸蝕する炎熱を弱めた。
「――扨て、狂える竜は何處いるヨ?」
 片言に紡がれる科白の語尾を輕妙に持ち上げ、手に『山河社稷図』を広げる。
 其は周辺の地形を瞬時に写し取り、必要な情報を投影する地図型宝貝にて、常に形を變える戰場の中でも特に變化の激しい区域に砦主が居る筈だと読んだ紅蝶は、水晶柱を跳び渡って移動を始めた。
「異形の光線攻撃は、面で制圧するタイプ……? 上手いこと光線の隙間を抜けられたら重畳ネ」
 光矢が放出されるタイミングと波及範囲は、既に地図で把握済み。
 亂れ立つ柱の奧に紅竜ベルザードの巨影を捉えた紅蝶は、間もなく眼路に広がる幾条の閃光に全集中! 光の迅さで照射される矢を、優姿を捺擦るような至近距離で回避した。
「ッ……熱ッッ……でも全然だいじょぶ!」
 幾つかの光条が『蠱衆舞札』を射抜き、雪膚を掠めた灼光が血滴を躍らせるが、この程度・・・・
 光矢を突破するや紅竜の咆哮を間際にした紅蝶は、花顏に塊麗の艶笑えみを溢れさすや【エレメンタル・ファンタジア】――劍の如く冴えた“冷気の竜巻”を解き放ち、炎獄の竜に一番槍を突き入れた!
『――ガァァアアッッ!!』
「アナタ痛そうネ! 多分その移植は失敗ヨ」
 狂気の中に激痛を得た紅竜が、火を、炎を、焱を迸るが、花人は敵が昂ぶるほど靜かに仙氣を励起させる。
 たばしる炎を冷気の渦に擦り潰した竜巻が勢を増して強く、強く、鞭の如く身を撓らせて竜の巨躯に飛び掛かれば、翼を取られたベルザードが大きく身を傾けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第三『侵す者』武の天才
一人称:わし 豪快古風
武器:四天霊障

ついたら即UC使う。これで、攻撃も地形からのダメージも、強化にしかならんからな。
だが、念のためにわしである。…炎司るわしであるから、火炎耐性よ。
さらに、足元に薄く結界を巡らせて、砂に足をとられぬようにな。
水晶は…迂回したり、小さければそのまま四天霊障で破壊したりすればよいであろう。


そうして、攻撃手段は四天霊障による押し潰し。
それに、霊障を槍のようにして…薙ぎ、突き、払う。そういった感じよな。

隠された『欠落』に勝利の鍵があるのならば、進むのが『わしら』四悪霊よ。
誰ぞの故郷を救う戦いであるからな!



 四人の悪霊を宿す「器」たる馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は、此度、灼熱地獄の如き砦を攻略するに相應しい者を既に表層化させている。
「――次は砦攻めか。參ろう」
 豪快にして雄邁なるバリトン、古風で力強い語調。
 聲の主は“侵す者”――第三の靈格である武才のおとこは、睡蓮型のグリモアが花葩を解いた瞬間に四悪霊・『マワル』――悪霊としての力を全身に纏うと、諸有る攻撃が戰鬪力や生命力を増強させるよう“因果”を巡らせた。
「これで竜が繰り出す炎撃も地形が齎す熱撃も、全てわしの力となる」
 膨れ上がる熱量に身が強化されるのを実感し、而して後、重力に從う。
 また着地の瞬間には、手印を結ぶや足元に展開した結界の上を進んで熱砂を免れると、より強く炎熱を感じる方向へ爪先を彈いた。
(「炎を司るわしが、器を、戰場を預ったからには――」)
 今日び手に馴染む『黒燭炎』は無し。
 代わりに己と、己が戰友たる三人の無念を束ねた『四天霊障』を兩の手に迸った“侵す者”は、突如として突き上がる水晶柱が結界を破壞した瞬間、念動力を巧みに操ってその身を砕いた。
「大きければ迂回し、小さければ破砕する。變幻自在は向こうだけのものであるまい」
 炎熱の環境と千變万化の地形に耐性あらば、思考も判斷も極めて冷靜。
 結界術を駆使して戰場を駆けた“侵す者”は、軈て狂熱の中心へ、間隙なく光矢を降らせる炎の巨影を認めると、『黒燭炎』の代わりに霊障を槍の如くして爪先を蹴った!
「狂える竜に問う無粋は爲まい」
 云って、佳脣を眞一文字に結んだ後は槍撃で語るのみ。
 異形の翼が放出する光条が着流しを切り裂き、肌膚を掠めては血斑を染ませるのも構わず、力強い踏み込みで敵懷に侵襲した武人は、炎を薙ぎ、焱を斷ち、燚を斬り払って竜鱗へ迫るッ!
 苛烈な槍は然し怖ろしく靜かに、眼路いっぱいに膨れ上がる焦熱を裂いて伸びた――!
『ガァァアアアアッッッ!!』
 霊障の鋩を鱗に沈められたベルザードが鋭く哮れば、“侵す者”は顏貌を明々と照らしながら告ぐ。
「隱された『欠落』に勝利の鍵があるならば、進むのが『わしら』四悪霊。誰ぞの故郷を救う戰いに力は惜しまぬ!」
 四人共、救う世界で力を加減する性質タチでは無い。
 慥かな言と共に突かれた槍鋩が、紅竜より赫々と鮮血を噴かせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サク・ベルンカステル
炎の熱さには技能オーラ防御で対処を。
砂漠化して不安定な足場は不本意ながら随行大剣に捕まったり足場として跳んだりして不安定な部分をやり過ごす。
水晶柱は空いている随行大剣で斬り払うことで進む。

ついに紅竜を見つけるとUC概念斬断を発動する。
「尋常であれば剣では斬れぬ自然現象に近い不条理な化物を斬る為に得た技、ここで使わずどこで使う?」
不条理なバラ撒く化物どもに復讐をする為に剣を振り続け漸く至った技。
月の光の羽からの矢を随行大剣にも発動させた概念斬断で弾きつつ、紅竜に走る。
敵の姿が爆炎の化身と変わろうとオーラ防御で身を守りと概念斬りのUCと技能切断を同時に発動し爆炎ごと切り裂くべく黒剣を振るう



「異形を移植されて馴染んだ者も居るだろうが、此方は失敗例と云うべきか――不本意だろう」
 遠くから届く竜の咆哮を耳に、靜かに言つ。
 今しがた吐いた息も灼けるようだと佳脣を結んだサク・ベルンカステル(幾本もの刃を背負いし剣鬼・f40103)は、体内を巡る闇の血を烙印として現すと、朱殷のオーラを迸って炎熱を遠ざけた。
 而して己は狂熱の中心へ近付かんと、烈風を手繰るように踵を蹴る。
「――俺も不本意だがな」
 云って、麗顏を嚴しくしながら砂地に突き立てるは四本の「刃」。
 魂で交わった『随行大剣』を自在に動かし、捕まったり足場として跳び渡ったりしながら熱砂の大海を渡った彼は、突如として視界を掠める水晶柱の隆起に烱瞳を結んだ。
「水晶だろうと火柱だろうと、斬り伏せてみせる」
 数秒前までサクの爪先を支えていた『怨剣ミチマイ』は、劍鬼が手を振り翳すや彼の掌に向かって推進し、吸い付くように収まった刹那に怨念の籠った斬撃波を繰り出す。
 袈裟に罅を走らせた水晶柱が崩れ落ちる瞬間を蹴って前進したサクは、狂える儘に灼熱のブレスを吐く紅竜の巨影を遂に捉えた。
「尋常であれば劍では斬れぬ“自然現象”に近い不条理な化物を斬る爲に得た技、此処で使わず何處で使う?」
 宙空から閃くは、【概念斬断】――使い手の「斷つ」という意思と劍技に拠って概念を斷つ絶技。
 不条理をバラ撒く化物どもに復讐をする爲に劍を振り続け、壮絶な研鑽の末に至った技だと、翠緑の瞳を烱々とさせて紅竜の間合いに飛び込んだサクは、怨劍一閃ッ! 迎撃に噴き出るドラゴンブレスを眞二つに兩斷した。
「炎の息吹は斬れる。無論、光も例外では無い」
『――ガァァァアアアッッッ!!』
 二手に分かれて吹き抜ける炎熱の風のみを受け取ったサクには、眞上から月の光の如く輝ける光矢が降り注ぐが、これを『黒刃紅輝』『邪剣ペトリュス』『黒刃紫輝』の劍鋩に往なし、或いは彈かせる。
 目下、サクの正面では紅竜が巨躯を爆炎そのものに變えんと哮るが、その猛々しい咆哮に肌膚を打たせた劍鬼は、更に距離を詰めて肉薄すると、爆炎ごと切り裂くべく黑劍『漆黒ノ魂滅』を巨斧刃に變えた。
「お前が抱えた不条理ごと、我が刃で斷ち斬る」
『――ッッァァアアア!!』
 形無き筈の爆炎が斬られるや、目下、たてがみの如く植えられていた光の翼が溢れるように散った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

冴島・類
灼熱地獄絵図かな?って感じの地形だな…

平準より耐性は強い方でも、限度はある
くれあ、力を借りても?
負傷は避けられずとも
僅かでも炎和らげる為結界を身にまとい

砂に飲み込まれぬよう、戦場を広く見て
水晶を足場に跳び
六感を生かし噴出の兆候を察しなるべく回避と応変に
放たれる光は破魔と火耐性を纏う写し喚び
操り盾のようにかばい反射で方向を逸らせぬかと
もし反射できたなら、翔ぶ紅竜の翼へ向けるが

強力な力だし、叶わずとも…
残像まとい宙舞い追わせることで、
挑発や相手の注意逸らし
動きを視界にとらえることに活用
接近できたら、全力の風魔法乗せた薙ぎ払いで攻撃

貴方を倒さねば欠落を見出せぬなら
業火の中だろうと駆け、斬るだけです



 焼け落ちた社の煤の中より具現した宿神は、輪郭を得て爾後のちは枯野色の外套によって炎熱を禦いでいる。
 蓋し其にも限度があると、眼前に広がる灼熱地獄絵図の如き惨景を映した冴島・類(公孫樹・f13398)は、吸い込む熱気が肺腑を灼く前に佳聲を紡いだ。
「――くれあ、力を借りても?」
 そと持ち上がる語尾を辿るようにして顕現あらわるは、気高き火精Clare。
 品位ある彼女は、狂ったようにそばだつ火柱を見るや溜息ひとつ。亂暴者が類を苛めるのは許さないと、結界を構築して炎熱を緩和させた。
「やぁ有難う。お陰で煤にならずに済みそうだよ」
 拭う汗すら蒸発させる炎獄も、彼女となら赫々しき萬華鏡と愉しめようか。
 頼もしい友を連れて爪先を蹴り出した類は、八方目を以て視野を広く廣く、熱砂を避けながら水晶柱を跳び渡ると、軈て上空から月光色の矢が傘状に降り注ぐ領域に――砦主ベルザードの攻撃射程に至った。
『ガァァァアアッッ!!』
「あれが移植されたという光の翼……」
 餘程馴染まぬか、照射方向も規則性も全く無い連続放射。
 加えて、尋常ならぬ熱波が周囲を急激に砂漠化・結晶化させていると、無数に突き上がる群晶を足場にした麗人は、【空蝉写し】――破魔の靈氣を帯びた鏡を138枚、炎熱の耐性をつけて盾のように組み上げた。
 防護壁か、否。
 類はもっと巧く使って見せよう。
「光なら、“僕”と相性は良い筈」
 姿見かがみ、光を映しては返す明鏡かがみ
 優に百を超える鏡を精緻に操った類は、法則無く降り注ぐ光の矢に對し、一枚一枚角度を變えて反射させると、全てを一點に――狂おしく飛翔する紅竜の翼に集める。
 竜の翼を足で追う事は適わぬが、光の迅さなら捕えられよう。
 また、収斂された光が元より強いエネルギーを齎すとは、事象より遅れて届く絶叫で示された。
『ッッ、ァァアアガァァアア!!』
「――墜ちてくる」
 猶も迫り上がる水晶の錐面を走りつつ、紅竜の着地点に回り込んだ類は、短刀『枯れ尾花』の白刃を暴くや一揮!
 多少の灼光を肌膚に掠めつつ、我が魔力を練り上げた淸冽の風を袈裟に疾らせた――!
「貴方を倒さねば“欠落”を見出せぬなら。業火の中だろうと駆け、斬るだけです」
 靜かに、然れど慥かに言ちて須臾。
 水鏡の如く澄める金緑の虹彩に、熾々と燃えるような鮮血が亂舞した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

バロメリアン・マルゴール
行動:ほぼ無意識に使える全体攻撃を用いて削りつつ、回避やトラップ対処に集中して長期戦を狙う

普段の弾丸飛び交う舞台と似てるな、コレ
炎と水晶と光のステージ、楽しませてもらうぜ?
知性の光を失いそうなムッシューにこのを送ろう
せめて楽しんで聞いていきな―ユーベルコード!

歌の魔術は狙わずとも当たる
攻撃には意識を割かず、ひたすらに回避に徹するぜ
落ち着いて柱の挙動を見て蹄で砂の大地を捉えて走る
光の矢は光魔術の音符との相殺を狙って行くぜ
オレの光のオーラ、貫けるかい?

ま、貫かれても回復だ

厄介なのは炎だな
逃げの一手だ
蹄で水晶柱を蹴り倒して足場にしつつ逃げ回るぜ

一分一秒でも長く歌を聴かせてやるよ、ムッシュー



 尋常なみの猟兵なら、眼前の炎獄に「長居は無用」と短期決戰に構えようものだが、バロメリアン・マルゴール(戦場の光・f39933)には、早々に片を付けようという心算つもりは無い。
「――砲烟彈雨の飛び交う普段の舞台と似てるな、コレ」
 少々新鮮だが變哲は無し。
 いつも通りに始めようとマイクを手にしたディーヴォは、炎熱の中心に向かって小気味良く片目を瞑って見せた。
「炎と水晶と光が、万華鏡のように煌いて踊るステージ、樂しませて貰うぜ?」
 何より己が愉しまなくては最高の舞台ステージにはなるまい。
 肺腑を灼かんばかり空気を胸一杯吸い込んだ彼は、刹那、足元に突出した群晶を“迫上がり装置”の如く乗りこなして高みに出た。
「知性の光を失いそうなムッシューに、このを送ろう。せめて樂しんで聽いていきな――“ユーベルコード”!」


 『m'aider』
 この世を滅ぼす愛で
 芽生えた想いを終わらせて

 美し旋律に紡がれる聲色は“con brio”――活気に滿ちて、魔力に滿ちて、赫き戰場に瑞々しく澄み渡る。
 其は狙わずとも命中する全体攻撃であるとは、歌い手自身が佳く知っていよう。
『ガァァァアアアッッッ!!』
「おや、一緒に歌って呉れるとは光榮だぜ」
 後は回避に徹するのみと、猛然と突き出る火柱を颯ッと躱し、水晶柱は花道にしようと蹄を呉れて組み敷いた彼は、目下、光の矢が傘状に広がって降り注ぐのを見るや、七色の五線譜上を踊る光の音符に相殺した。


 『m'aider』
 この身が壊れど歌う
 泣かないあなたの代わりに

「オレの光のオーラ、貫けるかい? ――Juste comme tu veux.(お好きな樣に)」
 斯くは云うもの、【ユーベルコード】は攻防一体。光矢に貫かれた時には、己が佳聲で癒しを得よう。
 或いは我慢比べになろうかと皮肉を嚙み殺した麗人は、炎だけは勘弁と羊蹄『巌』を鳴らして遁れると、精悍の躯を樂器の如くして歌を、情熱を広げていく。
「一分一秒でも長く歌を聽かせてやるよ、ムッシュー」
 我が役儀はを運ぶこと――。
 異形の翼に狂うより、我が歌に酔い痴れてくれと、七彩の輝きに照らされた白皙が、ふわり、塊麗の微笑を湛えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シキ・ジルモント
ユーベルコードによって五感を研ぎ澄ませ、地面の異変を聴覚や触覚で探る
地面から水晶や火柱が突き上がる直前の音や熱、振動を察知したい

敵に接近後、光矢は狙いを絞らせないよう常に動き続けて直撃を避ける
水晶や火柱にも引き続き注意を払い、逃げ道を塞がれないように進路を選ぶ
走りながら拳銃にエンチャント・アタッチメント【Type:I】を装着しておく

敵が飛翔能力を強化したら、ユーベルコードの効果で敵の攻撃の瞬間を察知し回避を試みる
飛翔で発生する風切音や迫る熱風を感じ取る事も出来そうだ
反撃は躱した瞬間、氷の魔力を纏う弾丸をありったけ叩き込む
熱波を一部でも抑えれば、その部分は通常の弾丸より通りは良くなるかもしれない



 月色の髪に覗く耳は、人狼病に感染した證左あかし――。
 シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)は當の狼耳を隱す事の出來ない“仕方無いもの”と割り切っていたが、寿命を代償に得た聽覺は人間の四倍、猟兵ともなればそれ以上の超感覺を齎す、皮肉な福音であった。
(「……頻りに音が反響している。この音の中心に砦主が居る」)
 狼の耳をピンと立て、音の方向を探るように動かす。
 其は【ワイルドセンス】――獲物を狩る狼の如く五感を研ぎ澄ませ、敵の座標を探ったシキは、間もなく訪れる異變を予知していたように躱した。
「――來る」
 僅かな振動を察知した須臾にサイドステップ、砂中から突き上がる火柱を避ける。
 間際を過る熱風が髪の毛先をチリと灼くのも目に呉れず、次いで炎熱に煽られた珪砂が一気に結晶化する音を拾ったシキは、忽ち隆起する群晶を蹴ると、跳び渡るようにして移動した。
(「常に地形が變動し、景色も定まらない……逃げ道を塞がれないようせねば」)
 限界まで引き上げた五感に加え、最適な進路を選ぶは“直感”。
 烈風を手繰り、また火柱や水晶柱に退路を阻まれぬよう、狼の如く警戒して進んだ彼は、紅竜の咆哮に近付く裡、手に握る拳銃にエンチャント・アタッチメント【Type:I】を取り付けた。
『グァァァアアッッッ!!』
 この時、ベルザードが周囲を一瞬で砂漠化し、無数の水晶柱が突出すると同時に飛翔したのは、侵入者に気付いたからか判然らない。
 餘りに闇雲な光撃が空から傘状に降り注ぐのを見たシキは、水晶の錐面を巧みに移動してダメージを代わらせつつ、烱瞳を鋭く眇めて狂竜の挙動を洞察した。
(「正気が削られてはいるが、何か動作するにも必ず“兆”はある」)
 超自然・超生命の存在になろうとも、「時」を動かさねば具象は生じぬ。
 飛翔時も風切音が耳を掠めたとハンドガン・シロガネを構えた彼は、炎々と滾る熱風も視えるようだと靑瞳を煌々、降り注ぐ光矢を回避しながら氷の魔彈を撃ち込んだッ!
「熱波の一部を抑える」
『ゲァァアアア――ッ!!』
「そうして抉じ開けた道に彈丸を通す」
 カッと漲る熱波を切り裂くように魔彈を撃ち込み、その彈道を辿るように連射する。
 極限の集中を以て絶技を成功させた撃手は、氷の魔彈が竜鱗を貫くや、疾ッと鮮血が迸るのを聢と視るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

矢来・夕立
…視界は、そんなに良くはないですね。こっちにとっては好都合です。
不規則とは言え炎も吹き上がりますから、《闇に紛れる》のもまあ無理ではないでしょう。
【紙技・影遷】【紙技・枝絡】。
手裏剣はブラフ。本命は紙垂。光線を放つ部位を捕まえて硝子の柱に縛りつけます。
「撃ったレーザーが自分に跳ね返ってくる」…というのを狙ってみましょう。
ガラスにぶつかった光は90%が透過されて、2%は吸収される。ですが8%は反射します・・・・・
たった8%かもしれませんね。でも“自分の発する熱量に応じて強化されている”のなら、相当痛いハズですよ。
あ、オレは光線の射線上にも反射上にもならない場所にいますんで。
『幸守』と『禍喰』を使って頭上を取れないかなと。
基本向こうから隠れてるんで試してみる隙はあると思います。まあダメなら都度避けるまでですが。

これ、この光るの。自分じゃないものが身体にくっついてるんですね。
しかも会話もマトモにできないとか。ぞっとしないな。
殺してやるのが優しさでしょう。そんなもん抜きでも殺しますが。



 闇夜は勿論、白昼の雜踏から月下の一本道まで、凡そ彼に隱れられぬ場所は無い。
 火柱と水晶柱が次々と突出する“炎獄の檻”を前にした矢来・夕立(影・f14904)は、雪膚を掠める熱気とは眞逆に、三日月の如く涼しげな橫顏を見せていた。
「視覺的には煩い位でしょうか。不規則に炎が噴くなら、寧ろ好都合です」
 炎々たる業火が水晶の柱面を舐めるように滑り、像を分ける。而して陰影を切り出す。
 翳陰かげの生じる処に潜むべしと、炎の搖らぎと共に我が影を滑らせた夕立は、続々と隆起する群晶を跳び渡って前へ、激しく結晶化が進む炎熱の中心を目指した。
(「……あれが」)
 吸った途端に肺腑まで焼けそうな、噎せ返る程の空気に觸れつつ柱叢の奥を見る。
 六面体に像を分ける巨影が砦主か、赫々しい魁偉を月光に輝かせる紅竜ベルザードを視認した夕立は、扨てかの竜はどこまで正気を手放したかと、その深度を見分ける一手を差した。
「譬えば、こう、影が過ったとして」
 眩々と搖れ立つ陽炎の中から一筋の黑条を引いて顕現あらわれたるは、『水練』なる平型手裏劍。
 繊麗の指を離れた式紙が、猛烈な熱波を斷ち裂いて紅竜に飛び掛る傍ら、夕立は群晶を跳び渡りながら位置を變えてもう一投! 次いで『牙道』なる棒手裏劍型の式紙を側面から擲げ込み、時と座標を違えた二連撃で反應を窺った。
『ッッ、ガァァアアアア――ッ!!』
「初撃は命中。二發目には反撃が間に合うと」
 紅竜に痛撃を置いた水練と、竜鱗に届く寸前で熱波に熔かされた牙道。
 眼路を過る影を目に追うまでの正気は無し、唯だ激痛を味わってからの抵抗が苛烈で、無差別広範囲に熱波を迸らせていると、紅竜を中心に放射状に珪砂の柱が突き立つのを確認した夕立は、更に踏み込んで背後に回る。
(「手裏劍はブラフ。本命は――」)
 烈々たる熱風が月紋の黑羽織を颯ッと飜し、赫々しき血色の裏地を覗かせた瞬間、目覺しい“白”が躍る。
 黑手袋に包まれた掌指に映えるは『朽縄』――純白の紙垂は術者の意の儘に延伸し、何者かが移植したと云う光の翼を縛するや、今しがた結晶化した珪素柱に結わえる。鬣のように竝ぶ異形を捉えるに、背後は絶好の死角だ。
『ッ、ッッ――!!』
「違和感を覺えたなら、どうぞ。俺ならそうします」
 ――咽喉の奧では(ウソですけど)と囁いたろうか。
 とまれ、反撃ひとつも出來ぬほど矜持を狂わされた訳ではあるまいと烱眼を結んだ夕立は、刹那、カッと戰場一帯が白く浮き立つ――超自然且つ超生命の力が齎す“死の光”の奔流を聢と視た。
『ァァァァアアガアアアアッッッ!!』
 月の如く煌々と輝く翼が660枚、ザワと蠢くや全方向に光矢を放出する。
 其は何處に潜もうと致命傷は免れぬ“光撃”であったが、夕立は白皙を輝かせながら淡然と云った。

「硝子にぶつかった光は90%が透過され、2%は吸収される。――ですが8%は反射します・・・・・

「たった8%かもしれませんね。でも、“自分の發する熱量に應じて強化されている”のなら、相當痛いハズですよ」
『ゲェァァアアアッッッ!!』
「ええ、それ位には」
 今の絶叫が示す通りだと、冷やかに事象を見る夕立。
 光ゆえに一瞬であったが、彼が配置した硝子柱は灼光の矢をベルザード自身に跳ね返し、異物に狂い惑う中に更なる激痛を加え、其が脅威である事を示して見せた。
「生憎、俺は超生命体ではないので。引っ込んでおきます」
『ゼェアッ……ァァアアッッ……!!』
 わきまえているとは云ったもの。
 傘状に降り注ぐ光条を仰ぎつつ、その射線上でも反射上でも無い群晶に影を滑らせた彼は、柱面や錐面を蹴って上に上に、紅竜自ら築いた檻を駆け上がって頭上を取ると、長い睫を伏せ気味に云った。
「これ、この光るの。自分じゃないものが身体にくっついてるんですね。しかも全然馴染まない所爲で、会話もマトモに出來ないとか。――ぞっとしないな」
 煮え上がる程の熱気に前髪が煽られる中、美し緋瞳は凍れるように冷たく。
 五卿六眼が接触したと思しき痕跡を俯瞰した夕立は、高々度から『幸守』『禍喰』なる蝙蝠の式紙を羽搏かせると、自律行動を取る黑翼に“異物”を刈り取らせた。
「殺してやるのが優しさでしょう。俺にも道徳心があります」
(「――まあそんなもん抜きでも殺しますが」)
 丹花の脣は慈悲を語りつつ、舌には残酷を忍ばせて。
 蓋しその佳聲も、紅竜の狂おしい悲鳴に掻き消えよう。鋭く滑空する蝙蝠達に光の翼を削がれたベルザードは、数にして660の苦痛を味わう地獄に突き落とされるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鞍馬・景正
剣林処と焦熱地獄が合わされば斯くの如し、という有様ですな。
長居はしたくありません。

早急に、終わらせましょう。


地獄を往くならば――夙夜。
愛馬を呼び寄せ、【鬼騎乗崩】にて突き進みます。

水晶が襲ってくれば、それを足場に飛翔し、炎柱に追い付かれぬ内に上空へ退避。
熱で蹄が焼け爛れぬよう、結界術をその足元にも広げておきましょう。

首尾よく抜けた後、放たれる光の矢には刀を抜き払っての斬撃波で迎撃。
一点集中ではなく全方位への射撃なら、その層も厚くは無い筈。
一刀で足りぬなら二刀で切り伏せ、それでも届く矢は甲冑で防御しつつ致命傷だけは避けましょう。

最後、竜自身には引き絞った弓矢にて勝負を。
その炎熱が当たれば死、こちらは当たりて更に貫かざれば死。
まったく面白いと思わぬかベルザードとやら。

そして相手が吐息を繰り出す瞬間を見極めて、あえて落馬。
落下にて回避を為しながら矢を射ちましょう。

着陸の後は素早く夙夜と合流し、炎や水晶に食われぬ内に離脱を。

……しかしこの熱気に灼かれた体、冷えた酒を流し込むには最高なのでは?



『――ァァアアガァァアアアッッッ!!』
 紅竜が激痛を叫ぶ度に炎柱がそばだち、続々と突き出る水晶柱が身を震わせて音を反響させる。
 今や踏み入る砂漠も無し、珪砂すなという珪砂すなが群晶と化す惨景を見た鞍馬・景正(言ヲ成ス・f02972)は、灼けつくような烈風を頬に掠めつつ云った。
「剣林処と焦熱地獄が合わされば斯くの如し、という有樣ですな」
 果して堕とされたのは、囚われたのは何方か。
 放射状に隆起し続ける叢林の中心、砦主ベルザードの狂態に烱瞳を結んだ景正は、目下、側面から迫り上がる硝子の結晶体を橫ッ飛びに躱すや、間際を翔ける“一陣の風”に跳び渡った。
「地獄を往くならば――夙夜」
「ヒィインッ」
「共に涯まで」
 鞍の前輪に手を掛けて跨った瞬間、景正は『藍染仏胴』を纏った鎧武者に。
 気魄溢れる主を乗せた戰馬『夙夜』も面繋胸繋を搖らして堂々、水晶の柱面に戛ッと蹄音を置くや颯の如く翔けた。
「この儘では竜と心中する事になりそうです。長居は無用にて、早急に畢らせましょう」
 猛炎と結晶の槍衾を颯爽と駆け抜ける、騎馬武者の勇姿こそ【鬼騎乗崩キバジュウリン】。
 往く手を阻む水晶柱を足場に高く飛翔した夙夜と景正は、下腹に迫る炎柱を優に飛び越え、炎獄の檻に囚われぬよう迅く速く、紅竜の咆哮を手繰るように駆けていく。
 人馬一体、抜群の呼吸力を見せた景正が次に見たのは、眉庇の上で一際耀う灼光――傘状に降り注ぐ光の矢。
(「――あれが五卿六眼のいずれかが移植したと思しき“異形”」)
 慥か数は660。故に一度で放たれる光条も660。
 光撃が全方向に放出されるなら、一点に集中して射られるより威力は弱く、その層も厚くはなかろうと烱瞳を眇めた景正は、『鞍切正宗』『鬼包丁』の二刀を抜き、角度を違えた斬撃波で光矢を斬り伏せたッ!
「超自然かつ超生命の力も、身に馴染まねば無用の長物となりましょうに」
 闇雲に放たれる光矢を打ち払い、或いは致命傷だけは避けて甲冑に受け取る。
 而して撃てば接がれた部分が痛もうか、咽喉を晒して叫ぶ紅竜を見た景正は、二刀を群晶に突き立てるや『虎落笛』に矢を番えて云った。
「その炎熱が當たれば死、此方は當たりて更に貫かざれば死。――まったく面白いと思わぬか、ベルザードとやら」
 烈風熱波に煽られる白皙には塊麗の微笑。
 吸い込む空気に肺腑が灼かれそうだと吐息した丹花の脣は、然し、何とも美々しく弧を描いていた。
『グルァァァアアアアッッッ!!』
 ――この時。
 凄まじい熱気を擦り抜ける佳聲に、科白に、景正の影に、紅竜が鋭眼を結んだのは正気であったか判然らない。
 蓋しベルザードは慥かに騎馬武者を睨め据えると、何もかもを灼き尽すドラゴンブレスを吐き出した!
『ガァァァアアアア!!』
「……其が竜の矜持と」
 正気を削られる程の異物を呑んだ経緯は問うまい。五卿六眼の影響かげを見るのさえ野暮だ。
 僅かにも残る矜持を辱めぬと、炎滅の吐息の脅威を眼路いっぱいに映した景正は、身を大きく傾けるや何と落馬し、超光熱が背中を削ぎ落すような――ギリギリの熱撃を躱して一射したッ!

『ゲェァァアアアアアアアッッ――ッ!!』

 時が止まるほど全集中した景正の瞳には、ひやうと熱風を裂いて飛び込んだ矢が紅竜の心臓を貫くと同時、爆炎の塊が輪郭を解いて迸發ほとばしる瞬間が克明に映ったろう。
 圧倒的熱量が大爆発し、炎柱も水晶柱も轟然と打ち砕いていく中を墜下した景正は、宙空でくるり一回転、落下点に滑り込む夙夜と合流すると、手綱を握って走る、疾る、駛る!
 而して爆心地から一気に離脱した彼は、進路の先、己を送り出したグリモアを見るや艶笑ひとつ。
「……しかしこの熱気に灼かれた躰、冷えた酒を流し込むには最高なのでは?」
 今の熱戰に羅刹の血を昂ぶらせた劍鬼にとって、美酒に心地よく酩酊する瞬間こそ至樂。
 無事に帰還した暁には、我が身を酒精に慰むべしと、景正はとてもいい表情かおで帰路を急ぐのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年05月15日


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#ダークセイヴァー
🔒
#闇の救済者戦争
🔒
#月光城
#紅竜の異端神ベルザード
#夕狩こあら


30




種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はガルディエ・ワールレイドです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト