乙女の夜、生き血を啜る悪魔
「さぁ語ろうか。舞台はダークセイヴァー、苦しむ者の血を啜り、享楽に耽り美と力を求めた魔物を討つ英雄の話を……」
●穢れなき乙女の血涙
下々の民の血と汗と泥の苦役を礎にした豪華な屋敷が退廃の街を見下ろしていた。
その中の暗く薄明かりの灯る一室で、一糸も纏わぬ滑らかな肌の女が恍惚とした顔で生暖かくぬめる液体を体に塗り付けていた。
「あぁっ……いい……」
その女の濁った赤い瞳が見つめるのは、物言わぬ死体となり血を抜き取られたうら若き乙女達の身体。
絶望と恐怖の果てに、穢れを押し付けられ命を奪われた少女達の血を、その女は体に淫靡に塗り付けて恍惚に浸っていたのだ。
やがて熱い一時を終えると女はドレスを纏い、少女達の肉体を宝玉に変えると部下に手渡した。
――これで揃った。これで永遠の美と強さを持てる。
●かつて乙女だった者の涙
「反吐の出る女だ」
長い黒髪で顔に影を作り、額に手をかけながらグリモア猟兵スフィーエ・シエルフィートは唇を歯で破った。
「……話を聞いてくれるなら、一つお願いしたい。すまないがダークセイヴァー世界に赴き、女吸血鬼の野望を挫いて貰いたい」
ダークセイヴァーのとある街を治める女吸血鬼が、密かに街のうら若き乙女を連れ去り夜な夜な生き血を抜き取っているそうだ。
ただ血を抜き取るだけでなく散々な拷問の末に出た血を体に塗って「美容」としているらしい。
「私も女だ。美を求める気持ちは分からんでもないが、こんなのは反吐が出るね」
唇の端から零れた血を手の甲でスフィーエは拭い吐き捨てた。
「本音を言えば今すぐ討伐したいがそうはいかない。街にある意味、爆弾みたいなものが仕掛けられている」
そう言って彼女はグリモアを輝かせ、赤い宝玉を映し出した。
血を抜き取り、命を終えた少女の肉体を変えたモノらしく、それが街の至る所に設置されているという。
「こいつを使った儀式で、奴は強力なオブリビオンを呼び出し、その力を得るつもりだ」
宝玉を起点に街全体の命を生贄に捧げ、より強いオブリビオンを呼び出し従える。
そしてその力で自身の美を永遠のものにする計画なのだそうだ。
だからすぐに屋敷に乗り込んだとしても、それを発動されてしまえば街全体が犠牲になってしまうのだと語った。
「だから君達にはまず、女吸血鬼が設置した儀式の要を破壊して貰いたい」
そうすれば街全体を生贄に捧げるような儀式を止めることが出来るだろう。
路地裏など、分かりにくい場所に隠匿されている上に数もそれなりにあると語り。
宝玉自体はすぐに壊せるものだし、宝玉の破壊がせめてもの少女たちの救いにはなるだろうとも補足し。
勘を頼りにしらみつぶしに街を当たっても良し。
痕跡や街の違和感などを辿って見つけ出すも良し。
魔力の気配や聞き込みで当たっても良いと語った。
「然るのち、屋敷に乗り込みこの女吸血鬼を討って欲しい。そうすれば配下も散り散りとなり、街に平和が戻る筈さ」
そこは正面突破で一気に乗り込むのが手っ取り早く、戦場自体もそれなりに広いのでどこで戦おうと戦闘に支障は無いだろう。
存分に力を振るうといい、と語りながらも、
「とはいえ数多の配下も待ち受けているだろうし、腐っても吸血鬼、直接戦ったとしても正直に言って十分に強力だろうね」
身体を霧に変えたり、魅了を行ってきたり、配下の蝙蝠を嗾けてくるだろう。
そのどれもが厄介な上に普通に力も強いから困る、と肩を竦めて吐き捨てて。
そうして一頻り語り終えると、彼女は壁に背を凭れて天井を仰いだ。
「……すまないね。ダークセイヴァーとなると、いつも取り乱してばっかりで」
目を掌で覆い、零れる雫を必死で見せないように堪えて。
嗚咽の混じる声で、彼女はグリモアを輝かせて転送の結界を作り上げた。
「どうか身勝手な欲の為に、夢見る乙女の未来と幸福を理不尽に啜った魔物に、鉄槌を下して欲しい。……頼んだよ」
裏山薬草
どうも裏山薬草です。
OPに目を通して頂き、ありがとうございます。
ダークセイヴァーで女吸血鬼の野望を打ち砕くシナリオとなります。
基本はシリアス目になると思います。
第一章では、町中に仕掛けられた儀式の要石(キーストーン)を探すお話です。
破壊については特に記述する必要はありません。
どちらかというと、女吸血鬼への怒りなどの心情描写が優先となると思います。
第二章では、屋敷に乗り込み女吸血鬼が待ち受ける部屋までの戦いとなります。
集団戦で相手は基本雑魚なので、無双を楽しむ感じで来てください。
第三章では、女吸血鬼との決戦となります。
それなりに強敵ですのでご注意を。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
裏山薬草でした。
第1章 冒険
『復活の儀式を阻止せよ!』
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POW : 勘で儀式の場所を探す
SPD : 痕跡を辿って儀式の場所を探す
WIZ : 情報収集や魔法で儀式の場所を探す
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ハンネス・ヴェテライネン
「本当に、この世界はこの手の仕事が多いでありますなぁ。自分としては仕事に困らなくていいでありますが」
では、痕跡を辿るとするでありますか。
奴らの血の匂い、魔力痕を追いつつ、路地裏とかの人目につきにくいところを重点的に探すであります。
それにしても仕事柄、吸血鬼と人狼殺しは往々にしてよくあるものではありますが、今回はどういうタイプの吸血鬼でありましょうかなぁ。
敵の戦い方、敵の種族で使う弾丸も変わるでありますよ。
そこらへんのヒントになりそうなものも見つかるといいでありますなぁ。
人の噂話もそこそこ役に立つであります。特に吸血鬼が憎くてしょうがない遺族が出所の話とか。
仕事は準備が成功の8割でありますよ。
●ハンティング
「本当に、この世界はこの手の仕事が多いでありますなぁ。自分としては仕事に困らなくていいでありますが」
「化け物狩り」を生業とする傭兵、ハンネス・ヴェテライネン(対化物専門傭兵・f11965)は路地裏の壁に隠されていた赤い宝玉を前に、しみじみと思った。
歴戦の化け物狩りにて研ぎ澄まされた嗅覚と魔力の痕跡のようなものを頼りに、路地裏を散策した結果、見事に一つを発見したのだ。
彼にとってはそう難しくないことであっただろう。
「それにしても」
ハンネスの生業は吸血鬼や人狼を狩ること。
故に敵の情報収集は欠かせない――宝玉を見つける前に、入念に噂話などから手に入った情報を整理する。
まず敵の戦い方については出発前に聞いた以上の情報は得られなかった。
身体を血煙に変えて奇襲してきたり、魔力を込めた眼で魅了してきたり、眷属の蝙蝠を大量に嗾けてきたり。
街で聞いた遺族らしき男の噂からも、御伽噺で吸血鬼の弱点とされている銀、ニンニク、十字架、流水の類は効果はそれほど無さそうであった。
尤も致命的な弱点ではないというだけで多少の不快感は煽るようであるが。
――ただ、弱者を嬲ることに極上の快楽を得、男の血は食事にし、女の血を浴びることに喜ぶ、依然として救いようのない邪悪な存在であることは誰も彼もが噂しているところであるが。
(人の噂話もそこそこ役に立つでありますな)
致命的な弱点は存在しない種類の吸血鬼ではあったが、特化しすぎてそれ以外には効果のない無駄弾を持ち込むことを避けられるだけでも十分な収穫と言えよう。
「仕事は準備が成功の8割でありますよ」
一応、周りに何かしらの気配がないか探ってから宝玉を置き、マチェットで軽く叩いてみる。
これならすぐに壊せる――そうして勢いよく振り下ろし宝玉を破壊すると、彼の瞳は遠き領主館を映す。
――吸血鬼が狩られるまで、あと少し。
成功
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アリーシャ・マクファーソン
ヴァンパイアは……殺す
儀式の要石……少女たちの成れの果て
街のあちらこちらから臭うわ……生命の最後の一滴、彼女たちが零した血の匂い
忌々しい奴らの穢れた血が流れたこの身だけど……こういう時には役立つわね
一番近い臭いは……こっちの路地裏かしら?
……この石ころが、彼女たち最後の姿だっていうの……?
こんな醜悪なもの……今すぐ終わらせてあげましょう……
ユーベルコード『百華凍刃』
私なんかの血で申し訳ないけど……少しは慰めになるかしら
赤く光る石ころを、塵と化すまで切り刻んでやりましょう……
最後はそうね……綺麗な氷の華でも、咲かせておきましょうか?
いつかは溶けて消えていくけど……この戦いが終わるのを、見届けて
●手向けの花
退廃した街の中を、血の如く紅い瞳に凍てつくような殺意を込めて歩く少女がいた。
彼女の名はアリーシャ・マクファーソン(氷血の小悪魔・f14777)――ヴァンパイアの血が流れ、それを狩る存在。
「ヴァンパイアは……殺す」
幸いにして、他の人間には聞かれていないようだが、もし聞かれていればちょっとした大騒ぎになっていただろう。
滅多なことを言うモノではないと――それでも、止めることはできない。
それが、彼女の存在理由なのだから。
「街のあちらこちらから臭うわ……」
――生命の一滴、彼女たちが零した血の匂い。
忌々しき狩るべき存在の血が流れた身体なれど、こういう時には都合がいい。
一番近くの路地裏、その古びた積み上げられた箱の裏にひっそりと置かれた赤く美しい宝玉を、アリーシャは震える手で取った。
まるで、無残に殺された少女達の遺体が無造作に転がされているようにも見えただろう。
「……この石ころが、彼女たち最後の姿だっていうの……?」
なんと醜悪なのだろう……すぐに、終わらせねば。
自らの爪で食い破った掌から零れた血を媒介に、彼女の静かな怒りと殺意がまるで現象となったかのように極低温が発生し、その血が乾いた音を立てて凍り付く。
その刃を、何度も、何度も、何度も……宝玉が塵と化すまで、怒りをぶつけるように刻み込み。
「私なんかの血で申し訳ないけど……少しは慰めになるかしら」
涙は掌からの血で。
祈るように膝を折り、せめてもの手向けにと、宝玉の置かれていた場所に氷でできた花を咲かせる。
暫し手を組み祈ると、ゆっくりと立ち上がり彼女は震える背を花へと向けて、その先に向かう意志を示す。
「いつかは溶けて消えていくけど……この戦いが終わるのを、見届けて」
彼女の咲かせた水晶の如き氷の花が、僅かに溶けた為の雫が垂れる。
それは無念を託す少女の涙にも見えたかもしれない。
成功
🔵🔵🔴
ヴェスター・アーベント
目的/要石の全破壊
心情/
まただ…また吸血鬼に人々の命が奪われる、子供達が虐げられる…かつての俺のように!
吸血鬼が、オブリビオンがいる限りこの悲劇は終わらぬ、俺の闇は晴れる事もない。
ならば闇に囚われたこの心が生み出す暗黒で、全ての吸血鬼を滅ぼしてやる!
探索/
暗黒の力を研ぎ澄ませ、要石が放つ邪なる波動を探知、反応を感じる場所に赴いて跡形も無く魔剣で粉砕、要石に込められた力を吸収(『生命力吸収』)していく。
「無念だろう、憎いだろう…その全てを俺が晴らしてやる…!」
吸収した力、命、嘆き、全てを暗黒に変えて俺は戦う。
これが俺の道、漆黒の闇を歩く騎士道だ。
※アドリブ歓迎
●夜に帰す
それはあまりにも異様な光景であった。
肌の色以外を全て黒で統一し、物々しい鎧と纏う闇の威容は人通りの比較的少ない場所でもよく目立ち、街行く人々は皆慄いたという。
――ただ不思議なことに、後に街人曰く「怖かったが、どこか心落ち着くような気すらした」というが。
その威容を放っていたのはヴェスター・アーベント(漆黒の騎士・f09560)と呼ばれる騎士である。
(まただ……また吸血鬼に人々の命が奪われる、子供達が虐げられる……かつての俺のように!!)
かつて虐げられ反抗組織も一人の吸血鬼によって滅ぼされ。
復讐を果たしたはずの今でさえも、彼の闇は晴れることはない。
(ならば闇に囚われたこの心が生み出す暗黒で、全ての吸血鬼を滅ぼしてやる!!)
だが――優しき闇は、その力で全ての災厄を無に帰すことを決めていた。
周囲に纏う暗黒の威容は、種は違えど同じ闇に属する揺らぎを捉え、優しき闇の騎士をその場所へといざなう。
やがては影に隠れた小さな枯れ木の下、埋められた宝玉を掘り出すと、ヴェスターは静かに黒き魔剣を構えた。
その刀身に彼の怒りが宿ったかのように暗い炎が揺らめき、周囲を巻き込み轟音を立てることも厭わない重い刃を振り下ろす。
当然、そのような一撃を受けた宝玉が跡形もなく赤い塵となって消え去るのも道理――だが、それは剣に残さず吸い込んでいく。
剣に吸い込まれる赤き塵はまるで少女の生命の残滓――それを魔剣を介して吸い上げるたびに。
彼の心に虐げられた少女の、無念と、苦痛と、怒りが伝わる――常人ならば一瞬で気がふれてしまうだろう
しかしその負の感情が、託された力となる。
「無念だろう、憎いだろう……その全てを俺が晴らしてやる
……!!」
――これが俺の道、漆黒の闇を歩く騎士道だ。
慟哭の代わりに、剣の誓いを捧げるように、彼は領主館の方角目掛けて宝玉の赤き塵の煌めく魔剣を突き付けた。
成功
🔵🔵🔴
胡・翠蘭
「美しさというものは、外見だけでは成せない芸術に等しいもの。いくら容姿を魅せたところで、望む魅了は得られないのではないかしら」
それに、人には相応の美しさというものも…ございますでしょう?
【POW】
第六感、野生の勘を頼りに儀式の場所を探しましょうか
…ふぅ。
吸血鬼なら生き血で美しくなり得るのかもしれないけれど、…まぁ、人を殺してまで手に入れたいものならば尚更、そのリスクは割高と決まっているのよね。
美しさに惹かれる気持ちは理解はしないけれどわからなくはないのよね。
それでも、やり方も考え方も全く気に入らないのだもの。
その他者から成り立つ美しい顔、思い切り傷付けて差し上げたくなるわよね?
アドリブ等お任せ
●化粧水とは血漿水
「美しさというものは、外見だけでは成せない芸術に等しいもの。いくら容姿を魅せたところで、望む魅了は得られないのではないかしら」
外見は内面の一番外側――内面があれでは、美も見せかけに過ぎない。
胡・翠蘭(鏡花水月・f00676)の金言を聞く者はいなかったが、聞く者がいれば特にこの街の者ならば惜しみなくその通りだと言うだろう。
実際はそうすれば処刑される恐れもあるだろうが。
閑話休題。
翠蘭は根拠はないが、何となく妖しい場所を勘を頼りに探していた――そして、それは下手に色々と弄るよりも確かな時もある。
今回の場合は正にそれで、棄てられた小さな蔵の中に一際目立つ赤い宝玉を見つけたのだった。
「せめて嫌な思い出は無きように……」
苦しみの記憶は泡沫の夢であるようにと。
記憶を消す力を持ったリボルバーの銃口を押し当て引き金を引く。
実際にその宝玉に、その記憶があるかどうかは不明だが。
物言わぬ血の宝玉が音もなく崩れていく様を見て、どこか艶めかしく溜息を吐いた。
「ふぅ……」
彼女は確かに吸血鬼ならば血で美しくもなるのかもしれないと思ってはいた。
だが、人を殺してまで手に入れるモノならば、相応の代価を払うべき――それがまるで分かっていない。
実に滑稽な話であるし、それを思い知らせてあげるのもまた一興。
「美しさに惹かれる気持ちは理解はしないけれど」
わからなくもない。
だって、女ですもの。
――でも、だからこそ。
「その他者から成り立つ美しい顔、思い切り傷付けて差し上げたくなるわよね?」
何よりやり方も考え方も、全然気に食わない。
理由なんてそれで十分――まだ直接は見ぬ美貌の吸血姫の、他を踏み躙った美貌をどう崩すか。
配られた写真の顔を美しく整えられた爪でぎぃっと傷つける彼女の瞳は、笑っているようで笑っていなく。
嗜虐の上位者が吸血鬼に迫るのは遠くない未来……
成功
🔵🔵🔴
ミーナ・アングリフ
獣奏器による【楽器演奏】で街中の動物や鳥達を集めてビーストマスターの能力で意思疎通、【動物と話す】で吸血鬼と宝玉の街中での目撃情報を【情報収集】…。
更にそのままみんなに宝玉の場所を探してもらえる様にお願いする…。
わたしも【ライオンライド】でみーくん(ライオン)を召喚…。背中に乗って駆けまわり、街中で探して貰ってる動物達の報告を聞きながらみーくんの鼻(主に血の匂い等)と【第六感】を用いて宝玉を探すよ…。
街全体を生贄に…そんなこと、させない…。
不幸になるひとを、これ以上、増やさせない…。
絶対に、止めてみせる…みんな、お願い…力を貸して…。
●レクイエム
――閑な街の隠れた一角に、それを破るような音色が響いた。
その音色はどこまでも優しく、退廃した街の空気を和らげるような穏やかな音色だった。
その音色を奏でる、ボロ布同然のひとつなぎを着た少女、ミーナ・アングリフ(自称・戦う道具・f14513)の下へ無垢な犬や猫、ネズミに烏などが引き寄せられるように集まっていく。
(街全体を生贄に……そんなこと、させない……)
徐々に集まっていく動物達を見ながら、失われた命の嘆きを鎮めるように。
(不幸になるひとを、これ以上、増やさせない……)
楽器を奏でて暫しの間、魂の安らぎを祈りながら。
改めて己の決意を新たにし。
集まった動物たちに、灰色の瞳を向けて語り掛ける。
(絶対に、止めてみせる……みんな、お願い……力を貸して……)
――少女の真摯な願いは、動物達にも伝わったのか。
中には犠牲になった乙女達に可愛がられた記憶のある個体もあるが故か――種族の垣根を越えて一斉に妖しい目撃情報などを語り始める。
与えられた情報を整理しながら、このまま街の探索を行って欲しいと語れば、犬猫は匂いを探り、ネズミは物陰を、烏は空から街を探り始めた。
「みーくん……おねがい」
勿論、ミーナ自身も呼び出したライオンに跨ると彼の嗅覚を頼りに怪しい目撃情報のあった場所目掛けて早馬ならぬ早獅子を飛ばす。
傍を着いてくる犬と猫も、こっちだと告げるように先導し、空を舞う烏はこっちを通った方が早いと告げて最短のルートを導く。
やがては人目につかない突き当りに辿り着くと、今度は物陰などを探っていたネズミが声を掛ける。
何か隠されているところがあるが、自分たちの力では開けられない――恐らくそれだと勘が告げた。
導かれるままその宝玉をみーくんが爪で叩き壊し、立ち込める血と濁った無念の匂いに主の怒りを代弁するかのように、獅子の咆哮が響き渡った。
成功
🔵🔵🔴
仁科・恭介
「乙女を辱め、傷つけ、血を搾取する…か。(書くのも憚られる言葉)。半分血が流れているだけに…」
スフィーエの話を聞き内心頭にきていますが表情には出しません。
そんな気持ちを吹っ切るように街に隠された宝玉を探します。
捜索方法は勘(POW)。
というかいつもは抑えている【吸血】衝動を逆手にとって宝玉から発する残り香をたどる方法と、【従順なる影達】を使用し一度覚えた宝玉を追跡させる方法を試します。
見つけた宝玉を見た瞬間食べたい気持ちをぐっと抑えて壊します。
「安らかにお休み。君達の分も痛みはきっとあいつに返してあげるから。次の世界で出会えたら美味しいもの御馳走するよ」
※共同作業、アドリブは歓迎です。
●捕食
「乙女を辱め、傷つけ、血を搾取する……か」
仁科・恭介(明日を届けるフードファイター・f14065)はグリモア猟兵の話を思い出していた。
語られた女吸血鬼の悪しき所業の数々、それを思い出すと――
「――」
ふいに流れた突風の音に掻き消され、吐き捨てられた言葉は聞こえることは無かったが、強い怒りの感情が込められていることは間違いないだろう。
顔色一つ変えていないのは流石ではあるが、込み上げる怒りは。
「半分血が流れているだけに……」
――その吸血鬼の血を半分身体に流しているから、尚更に。
しかし、込み上げる怒りは何かを為す為の原動力に変えて、吹っ切らなければならない。
勘を頼りに――といっても、全くのあてずっぽうを行う訳ではなく。
半魔の普段は抑えている吸血衝動を敢て解き、常人には嗅ぎ取れないであろう血の残り香を探る。
特に領主館の方から匂い立つ嫌なそれが目立つが本命はそれではない――別の耐え難い魔力を孕んだ何か――それらしき血の匂いを感じ取った。
それを彼は狼のような影のような何かを呼び出すと、感じ取った匂いを辿らせてその後を追う。
辿り着いた先の、廃屋の中に隠された鮮やかな赤い宝玉を見た瞬間、それを辿るために解き放っていた衝動が彼の胸を内側から揺さぶる。
――コイツヲクラエ。
漆黒の瞳に、宝玉に魅入られたような濁った光を宿し手を震わせながらも宝玉を手に取りつつ、廃屋の中故に積もった塵を手で拭い。
「安らかにお休み。君達の分も痛みはきっとあいつに返してあげるから」
懐から白銀のフォークを一つ取り出すと、込み上げる食への衝動を堪えながら勢いよく突き立てる。
渾身の力で刺されたそれは、口に運ばれることはなく鮮やかな赤い塵となってサラサラと消え失せる。
それを食い入るように見つめながら、彼は亡くなった存在を悼むように静かに告げた。
「次の世界で出会えたら美味しいもの御馳走するよ」
成功
🔵🔵🔴
フェルト・ユメノアール
奪う人と与える人ならボクは与える人になりたいな
奪ってばかりじゃ、いずれ自分が奪われる側になった時
誰も助けてくれないもん
うーん、要の石で街全体を儀式場にするならランダムに設置しているとは考えにくいよねー
中央+外周複数みたいにある程度法則性があるはず
だったらまずは手札から【SPウィングウィッチ】を召喚!
上空から街の全景を把握、調査用に人の集まる場所と逆に人の少ない隠し場所の目星を付ける
そして『コミュ力』を使った聞き込みで
怪しい人がいなかったか、石の設置を見た人がいないか調査するよ
調査が終わったらウィングウィッチと手分けしてできるだけ素早く広範囲を探って
破壊時には手を合わせて死んだ人に祈りをささげる
●パレード
「奪う人と与える人ならボクは与える人になりたいな。奪ってばかりじゃ、いずれ自分が奪われる側になった時、誰も助けてくれないもん」
対照的に煌めくハートと雫。
退廃と絶望の渦巻く街に似つかわしくない、陽気な笑顔を浮かべた姿。
彼女は道化師、フェルト・ユメノアール(夢と笑顔の道化師・f04735)だ。
奪ってばかりの吸血鬼は、奪われる側になった時にどうなるのだろうか――それは、これからの猟兵達の奮戦が決めることだろう。
さて、街に降り立ったは良いが闇雲に探し回る訳にもいかず彼女は顎に手を当てて考えていた。
(うーん、要の石で街全体を儀式場にするならランダムに設置しているとは考えにくいよねー)
今までの猟兵の活躍で分かった設置場所もあるが、いかんせん地図が無いので法則性の導きようがない。
だが何かしらの法則がある筈だと踏んだのは決して間違いではない。
彼女は勢いよく手首に備え付けられた、板の付いた円盤にマウントされたカードの束から一枚のカードを抜いた。
「ボクは手札からスペシャルゲストをご招待!! 現れろ!! 漆黒の魔女、SPウィングウィッチ!!」
板に取り付けられた薄いくぼみにそのカードを設置すると、湧き出る光から漆黒の翼を生やした魔女が傍に現れる。
五感を共有する黒き魔女に上空を飛ばし、人通りの多寡を上から探って貰いつつ。
彼女自身は街行く人々をあたり情報を集めていく。
怪しい人は見なかったかと問えば、帰ってきた遠慮がちな人差し指に、彼女は陽気に笑って確かにと手を叩く。
思わず噴き出した街人に折良く宝玉らしきものは見なかったかと問えば、そこの焼却炉の影で何か見たようなと答えを得て。
依然として上空の魔女と手分けして捜査を行いながら、示された場所まで行き影に隠れていた赤い宝玉を手に取り。
「来世では笑ってね」
手を合わせ祈りを捧げ、ダガーを突き立てて破壊するのだった。
成功
🔵🔵🔴
オリヴィア・ローゼンタール
邪悪な吸血鬼め……
永遠の美などという妄執のために、いったい何人を犠牲にしたのか
必ずやその心臓を槍で穿ち、血と驕りに塗れた貌を醜く歪めてやります
炎の魔力を掌中に灯し、その揺らめきで周辺の魔力の波動や流れを探る
街の住民に、大事な宝玉を落としてしまったが見つからない、どこか見つかり辛い場所などに心当たりはないでしょうか?など聞いてみる
【情報収集】【視力】【暗視】【追跡】【コミュ力】【礼儀作法】【失せ物探し】【聞き耳】などの技能を活用する
最後は槍の導き(【第六感】)に従って捜索
宝玉を破壊する際には【破魔】【優しさ】【祈り】を以って槍で貫く
せめてこの解放が彼女たちの救いであらんことを……
●救済
「邪悪な吸血鬼め……」
誰にも聞こえないように囁く声を出し、吸血鬼への怒りを露わにするのはオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)、悪魔祓いという点ではこの上ない出で立ちのシスターだ。
眼鏡の奥の瞳に宿った怒りを、掌に持っていくように静かに灯すと、炎の揺らめきを頼りに宝玉を探っていく。
仲間の猟兵の情報を総合的に判断すれば、これで最後の筈。
揺らめく炎に引っ張られるように、粛々と脚を運んでいくと疲れ切ったような顔の街人を発見する。
オリヴィアは灯した炎を懐に隠すように消すとその街人に丁寧に声をかける。
「すみません、実は大事な宝玉を落としてしまいまして……これぐらいの赤い宝玉なのですが」
突然声を掛けて来たシスターの姿に一瞬警戒するも、疲れ切った頭ではろくな判断もできなくなっているのか、あるいは面倒を避ける為か。
あの無縁の墓の裏に見た気がする、と答える彼に礼を言うと、去ったのを確認し炎を灯しその道を辿る。
炎の揺らぎや燃え盛る度合いから察するに恐らく正解だろう――無縁の墓を注意深く探ると、とある墓の裏にそれを見つけ。
墓にあることの何と皮肉か。
かつて生きた命であった宝玉を手に取り、それを作るために吸血鬼の為した行為を思い返し強い怒りが沸々と燃え上がる。
(永遠の美などという妄執のために、いったい何人を犠牲にしたのか)
考えたくもない。
聞いたところで馬鹿にされるかもしれないが。それでも。
「必ずやその心臓を槍で穿ち、血と驕りに塗れた貌を醜く歪めてやります」
粛々と黄金の穂先と白銀の柄を持つ槍を取り出し、地に置いた宝玉に突き付ける。
死を悼む慈愛と、穢れを払う破邪の力と、安らぎを願う祈りを宿し。
「せめてこの解放が彼女たちの救いであらんことを……」
突き立てられた穂先に舞う赤い塵が、かつての姿だった少女の姿を象り唇だけを動かしてこう告げた。
――どうか、あの女を討って。
成功
🔵🔵🔴
第2章 集団戦
『堕ちた死体』
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POW : 噛み付き攻撃
【歯】を向けた対象に、【噛み付くこと】でダメージを与える。命中率が高い。
SPD : 一度噛まれると群れる
【他の堕ちた死体の攻撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【追撃噛み付き攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ : 仲間を増やす
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【堕ちた死体】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
イラスト:井渡
👑11
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●強襲
――時は夜、闇が全てを支配し民は恐怖を抱きながらも一時の眠りにつく。
ただ頼りなく、領主の財と踏み躙った嘆きを象徴するかのように、魔力で誂られた灯りが妖しく庭園と館中を照らす。
そんな豪華な領主館の最上階、その一室にて女吸血鬼は頭を掲げ、優美な金髪を振り乱していた。
「何故……!? どうしてっ
……!!」
血を抜き取った少女の命を媒介に作り上げた宝玉を用い、街の全てを生贄に捧げる儀式。
その力で自分はより強い力と、永遠の美を得るつもりだったのに!!
今夜発動する予定だったのにも関わらず、一向に発動の兆しが見えなかった。
魔力を張り巡らせてみれば、設置したはずの宝玉が根こそぎ消え失せていた。
これは何かあったのだろうと、配下全員を出払わせたが調査にはまだ時間が掛かる。
爪を噛み、それを待つ彼女の長い耳に、領主館の門が開かれる音が響く。
オペラグラスでそれを見た瞬間、己と決して相いれない存在――猟兵達であることを知る。
恐らくは奴らの計略だろう、まったく、忌々しい奴ら。
「おのれぇっ……許すまじイェーガー
……!!」
美しき顔を怒りで歪め、吸血鬼は指を弾いた。
重々しい領主館の門を開いた猟兵達は、その瞬間、館の玄関までの道に光の方陣が出来たのを見た。
身構える彼等の前に現れるのは、土から這い出た物言わずただ呻くだけの死人。
それが、吸血鬼の呪術によって仮初の命を与えられた兵隊であることに気付くのは容易いだろう。
まずは彼等を安らかに眠らせてやらねばならない。
何処までも命を弄ぶ闇の眷属を最後に討つ為に。
彼等は一斉に武器を構えるのであった――
アリーシャ・マクファーソン
全く……嫌になるわね
相変わらずヴァンパイア共は悪趣味なことを……
死人の尊厳を……どこまで貶めれば気が済むのかしら
ちょうどいいわ
あの石ころに続いて、この冒涜
……我慢の限界よ
真の姿を解放
瞳が金色に輝いて、背中から深紅の蝙蝠翼が出てくることでしょう
……あの忌々しい吸血鬼と似た姿というのが死にたくなるけど
【SPD】で対抗
噛むことしかできない、哀れな死体たち
でも、ごめんなさい……私を噛むことは許してあげられないわ
【絶断之氷柩】
氷の鎖による束縛
この場は私の支配領域と化した
大人しく……天に召されて
仇は……必ず討つから……
はぁ……まずったなぁ……
ヴァンパイアとの戦いの前に力を使うなんて……
まだまだ、未熟ね……
●氷葬
おどろおどろしい恨み辛みの声が響く。
その声の主である土気色の身体を前にアリーシャは怒りで震えていた。
「全く……嫌になるわね。相変わらずヴァンパイア共は悪趣味なことを……」
血塗られた色の宝玉のことをも思い出す。
限りなく繰り返されてきた死人への冒涜。
「死人の尊厳を……どこまで貶めれば気が済むのかしら」
今も尚、眠りに就かせてやるべき存在が苦役に晒されている。
――現実を認識すればするほどに、何かが彼女の中で切れた。
「……我慢の限界よ」
死人の血を思わせる冷たい真紅は月光にも似た金色の輝きに。
背中からは巨大な蝙蝠の翼が生まれ風を切る。
死にたくなるほどに嫌う姿であるが、それ故に怒りは尚更に湧き上がる、そしてそれが尚更に己の力を高める。
果たしてその姿を認識することがゾンビ達にできているかどうかは不明であるが、まるで生前の怒りをぶつけるかのようにアリーシャに噛みつきかかる。
とっさに避けようとするが、生えた翼を掴まれ幾度となく歯を突き立てられて、群がる死人達に歯を突き立てられていく。
翼に苦痛を感じても、彼女にとっては哀れさしか感じられないが。
「ごめんなさい……これ以上、私を噛むことは許してあげられないわ」
翼から零れる血に湧き上がる魔力を通すと、極低温の鎖に変えて、噛みついていたゾンビ達を数珠つなぎにするように凍てつかせ、縛り上げていき。
慄く彼等の死角から更に別の鎖を以て縛り上げて。
「仇は……必ず討つから……」
だから大人しく天に召されて欲しい。
完全に凍り付いた身体を粉砕し、降り注ぐ氷塵が頬に当たり溶ける。
まるで鎮魂の涙のように見えながらも、彼女は溜息を吐いた。
「はぁ……まずったなぁ……」
吸血鬼との戦いの前に噛みつかれて、これほどの力まで使うとは。
己の未熟に腹が立つが、それは全て女吸血鬼にぶつけねば。
心を新たに、また彼女は群れに立ち向かうのだった。
苦戦
🔵🔴🔴
仁科・恭介
領主が見ているであろう屋敷の高い窓を「真紅の瞳」で見上げながらふとつぶやきます。
「あいつはとことん、私をイラつかせる。観てるんだろ?そこから…」
イラつきをごまかすように爪を噛みながらも、冷静に死人達の動きを観察します。
「とは言え足止めして、こっちの動きを観察してるなら厄介だね。対策を練られる前に倒して館に入らないと」
死人達の動きを把握した後、猟兵達が孤立して取り囲まれないよう細心の注意しながら、他の猟兵が戦いやすいようにサポートする立ち回りをします。
(【目立たない】で死角から切りかかり隙をつくる。
【残像】で自分を追いかけさせ他の猟兵が攻撃しやすいよう誘導する。など)
※アドリブ、共闘は歓迎です。
●影葬
闇の中の庭で、窓の中の闇を見つめていたのは真紅の瞳であった。
その先に恐らくきっとあるであろう、同じ血の如き色の瞳。
己以外の全てを見下し、玩具や餌にすることを愉しむ支配者の目――窓の中の闇にその姿は見えないが、恐らくは。
「あいつはとことん、私をイラつかせる。観てるんだろ? そこから……」
その瞳が、果たして見ているかどうかは不明だが、その先に待ち受けるモノを倒すことには変わりない。
宝玉を探し出す時には顔に出なかった恭介の怒りも、爪を噛むことで次第に表に現れ始めているが、思考の冷静さを失ってはいない。
そこまで失えば敗北は必死、緩慢で、時に急に加速するゾンビ達の動きを冷静に見定めていく。
一体一体はそれほど強くはないが、取り囲まれて押し切られては流石の猟兵も危ういだろうし、何より。
「とは言え足止めして、こっちの動きを観察してるなら厄介だね。対策を練られる前に倒して館に入らないと」
だが急がば回れ、という諺もある。
急がなければいけないからこそ冷静に、最も警戒すべきは一人が多数に囲まれて押し切られる状況だ。
それで遅れをとる仲間がいるとは思っていないが、厄介な要素を潰せばそれだけ戦いやすくなる――気配を極限まで消しながら、密かに緩慢な動きで別の猟兵に歩み寄ろうとしていた一体に背後から忍び寄り。
まずは刀を一閃……鈍色の輝きが魔法の灯りに照らされ重く輝き、土気色の脚を切断し動きを止める。
それに気付いた他のゾンビ達が一斉に、急に速度を上げて噛みつきかかるが、既に残像を残していた彼の肉体にその牙が刺さることは無く。
寧ろある程度纏まったは好都合と、刀を再度閃かせ上顎と脚を綺麗に切断し確実に戦力を封じていく。
そうして再び集まっていくゾンビ達を残影を遺しながら引き付け、死角から斬り伏せて。
恭介は囮と攪乱の役割を見事に果たすのだった。
成功
🔵🔵🔴
オリヴィア・ローゼンタール
これは……ただの従者ではありませんね
犠牲者の骸を……死の安息さえ奪われ、苦役を課され……
【トリニティ・エンハンス】【属性攻撃】【破魔】
槍に聖なる炎の魔力を纏い攻撃力を増大させる
吸血鬼め、その悪行、必ず後悔させてやる――!
館ごと粉砕せんが如き【怪力】を以って聖槍を【なぎ払い】、死人兵をまとめて【吹き飛ばす】
こうなってしまった者を癒す術はない……仮に生き返ったところで、それはオブリビオン
だから、この二度目の死をもって、せめて救われてあれと祈る――!
噛み付き攻撃を【見切り】、ガントレットで殴り返す(【カウンター】【グラップル】)
【ダッシュ】【スライディング】【ジャンプ】で縦横無尽に戦場を駆け巡る
●聖葬
「これは……ただの従者ではありませんね」
庭を照らす魔力灯の輝きが、オリヴィアの掛けた眼鏡のレンズを照らすし、瞳の奥の感情を隠す。
「犠牲者の骸を……死の安息さえ奪われ、苦役を課され……」
オリヴィアが見た限りの分かる真実を、口々に音にして確かめるたびに。
涙は濁流の如き魔力に、敵意は暴風の如き魔力に――激情は炎の魔力となって。
白銀の柄を通して伝う炎の魔力が、神聖なる破邪の輝きを帯び、やがては黄金の穂先に闇を照らす松明のように灯る。
「吸血鬼め、その悪行、必ず後悔させてやる――!!」
纏う魔力を全て破壊の為の力に割り振って。
群がっていくゾンビ達と、それを操る呪力の大本である吸血鬼の存在を視線だけで射抜くように。
そしてともすれば館そのものをも破壊しかねない勢いで、聖なる業火を纏った槍を振るいゾンビ達を纏めて灰の中に帰す――振るわれた剛槍の風圧は、庭園の痩せた木々をも揺らし、遠くに離れている筈の館の窓にもヒビを入れた。
聖なる剛槍の薙ぎ払いにて四肢を吹き飛ばされ、纏う聖なる炎で灰になっていくゾンビ達を見てオリヴィアは思う。
こうなった者を癒す術はない、生き返ったところでオブリビオン――せめて。
「この二度目の死をもって、救われてあれと祈る――!!」
彼女の攻撃そのものに苦悶や恨みの声を挙げないのが、オリヴィアにとってのせめてもの救いか。
剛槍を逃れていたゾンビの一体が背後から噛みつきかかるが、眼鏡の隙間から鋭く金色を向けて向き直りがてらに、破邪の祈りを込められた籠手で顔面にストレートを入れて。
吹き飛ばされるゾンビへ疾走し、聖炎の槍を突き立て灰に変え。
群れを為し飛び掛かってくる集団の下を統べるように潜り抜け、そこから勢いよく飛び上がると、飛んだゾンビ達の背後から闇に黄金の炎の軌跡を残す薙ぎ払いで纏めて灰に変え。
修道女は彼等に安らぎあれと祈りながら、救済を与えていくのであった。
大成功
🔵🔵🔵
胡・翠蘭
「あら、浮かばれないこと。死してなお使役されるなんて」
二度目の死こそは、安らかに…気持ち良く、逝きましょうか
【SPD】
真の姿…瞳の色が本来の紅色に戻る程度かしら?
さて、まずは初撃に注意しましょうか
第六感、野生の勘で攻撃を見切って…舞を踊るように軽やかに、回避出来たら良いのだけど
念の為防具改造で防御も上げましょう
さて、…悪夢から目を覚まして、還りましょう?
私のユーベルコードは…本来行くべき楽園への餞に
死の恐怖、苦痛さえ反転させて上書く至高の快楽であの世に着くまで楽しんでくださいませ
…まぁ、快楽はもうたくさん、…なんて言われても、なかなか自分では止めて差し上げられないのですけどね
※アドリブ等お任せ
●蕩葬
「あら、浮かばれないこと。死してなお使役されるなんて」
――せめて二度目の死こそは、安らかに……気持ち良く、逝きましょうか。
ヘテロクロミアの目を閉じ、鮮やかな唇で囁くように呻く死体への祈りを捧げるように虚空に言葉を吐き。
開かれた瞼の先に輝くのは、翠蘭自身の本来の目の色――鬼灯の如く紅い瞳。
魔力灯に着物の色合いを幻想的に浮かべ、静かに領主館の玄関まで音もたてずに足を進ませていく。
理性あればその美に目を奪われ道を開けたかもしれないが、そこは哀れな死人達――餓えた餓鬼の如き声を上げて、一斉に群がっていく。
しかし翠蘭は群がる土気色を、着物を翻しまるで闇夜に花咲くような姿で舞い、死の誘いを流していく。
時に優美に、時に大胆に――ゆったりした裾を、闘牛士のマントのように煽り、噛みつきを空振らせては後頭部をトン、と押して転ばせたりもして。
「ふふっ……そろそろ頃合いでしょうか」
細い眼に掌で獲物を転がす魔性を輝かせるように、道の途中で急に向き直り。
正に虚空を、掌に乗った球を指先で転がすように煽り――彼女は、かつてゾンビ達が埋もれていた土から別の存在を生やすのであった。
「さて、……悪夢から目を覚まして、還りましょう?」
囁きは聖母のように。
土を割り生えた触手たちは魔娼のように。
指先が蠢く度に連動しうねる触手は、敵意と食欲以外の感覚を捨て去られた筈のゾンビ達に絡みつき、甘い悦楽を与えていく。
「死の恐怖、苦痛さえ反転させて上書く至高の快楽であの世に着くまで楽しんでくださいませ」
男だか女だか、若いのか年寄りなのかも分からないが、触手の中に絡まれ悦楽の声を挙げて文字通り昇天していく彼等を見て。
彼らの主にも劣らないであろう加虐的な目で、中指を引っ掛けるように曲げて言い放った。
「尤も……もうたくさん、なんて言われても、なかなか自分では止めて差し上げられないのですけどね」
成功
🔵🔵🔴
フェルト・ユメノアール
力には力を!数には数を!
敵が集団でくるならこっちも集団で勝負だよ!
ボクは手札からスペルカード、【無人造の機兵】を発動!
自分のレベルと同数の機兵トークンをバトルエリアに召喚する!
いくらキミたちでも機械は食べられないよね?
機兵は合体させず、防戦メインで死人の囮に使用
そして、ボクは機兵の合間から『トリックスターを投擲』して攻撃したり
いつも『パフォーマンス』でやっている曲芸みたいに機兵の体を踏み台に敵の背後に回りこんで攻撃!
囮になっている機兵に噛みついたり、釣られた死人を1体づつ確実に仕留めていくよ!
その時は敵に囲まれないように正面より左右の敵を優先して狙うようにするね
●奇葬
ゾンビ達のうめき声が今も尚やかましく響く中、フェルトは道化師のカードマジックのように手の中に五枚のカードを広げた。
「力には力を!! 数には数を!! 敵が集団でくるならこっちも集団で勝負だよ!!」
カードを持つ手に取り付けられた円盤状の器具にある山札から、勢いよくカードを一枚引いて。
それを確認すると、良いカードを引いたと言わんばかりの顔で頷き、勢いよくカードをゾンビ達に見せつけてから板状の器具の薄い窪みにセットして。
「ボクは手札からスペルカード、無人造の機兵を発動!! 自分のレベルと同数の機兵トークンをバトルエリアに召喚する!!」
フェルトの腕の器具に光の条が走ったかと思えば、地面から湧き上がる激しい光と共に、胸部に1と刻印された23体にも及ぶ戦闘機兵が召喚された。
いくらゾンビといえど、流石に分厚い鋼の装甲を食い破るほどの力はないのか、彼女の狙い通り群がるゾンビ達の牙を食い止めていた。
配下を生み出すこの手の術法としては最低限の強さの状態だが、一体に文字通り歯が立たないのであれば、数の利は十分に活かせるといえるだろう。
そしてその間にフェルトは派手な装飾の為された曲芸用のナイフをジャグリングし――くるりと転回する勢いを乗せつつ隙間を縫って投げつけると、ゾンビの頭部を一撃で粉砕する。
そのまま哀れにゾンビ達を引き付ける機兵の頭に飛び乗り、曲芸の如く身を縮ませ駒のように空中で回転しながら勢いよくゾンビの背後に回り。
ゾンビの一体の頭部を貫き粉砕させたナイフに追い付き、その刃を指先で挟むように捕まえて――別のゾンビ達を、次々と着実に仮初の命を絶っていく。
また別のゾンビが来ても、その時にはゾンビから解放され自由になった機兵が再びガードマンのように押し込め、投げナイフからの跳躍で追いついての連撃を繰り返し。
華麗なる曲芸の演舞が終わるころには、全てのゾンビは残さず悪趣味な吸血鬼のゲームから除外されていたのであった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『ヴァンパイア・レディ』
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POW : 肉体変化
対象の攻撃を軽減する【魔力で出来た霧状の肉体】に変身しつつ、【時折実体化しては、鋭く伸ばした爪や牙】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD : 魅了の魔眼
【魅了の魔力を込めた視線を放つ事】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【瞬時に篭絡し、同士討ちをさせる事】で攻撃する。
WIZ : 闇夜の眷属
レベル×5体の、小型の戦闘用【の『眷属』、吸血コウモリ達】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
イラスト:猫宮さえか
👑11
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●吸血鬼
哀れな死者達を再び眠りに就かせ、そのまま館の中を突っ切って。
勢いよく領主の部屋を開けた猟兵達の目に映る光景は、豪華な玉座に座りグラスの中の赤い液体を優雅に啜る姿だった。
美しき金髪に抜けるような白い肌、魅惑の肢体を包む薄手のドレス――見た目だけ見れば、この世のモノとは思えない美貌だろう。
ただ艶めく肌から漂う、許し難き血の匂いが女吸血鬼の所業を否応なしに連想させる。
「ようこそいらっしゃい。ええ、そうよ。私がこの街の領主よ」
髪をかき上げ、際どく艶めかしい脚を組みグラスに残った液体を飲む。
その正体が――この吸血鬼の肌から漂う、血の匂いと似たモノであることに気付くのは容易い。
吸血鬼は値踏みするように猟兵達を見回し。
「飲む? じゃなくて舐める? ……まぁ、アナタ達のお口には合わないわね。それより余興は楽しんでくれたかしら?」
馬鹿にしたように、スリットから覗く足にグラスに残った血を垂らし掲げたりもし。
その余興がゾンビ達との戦いを指すならば――実に悪趣味な余興だろう。
一斉に武器を構える猟兵達を心底見下すような笑みで立ち上がり、ゆっくりと玉座の周りを回る。
突如として振り返ると、彼女は口を開いた。
「言わなくても分かってるわ。私もアナタ達にはとんだ煮え湯を飲まされたのだわ」
口元の笑みとは裏腹に、その瞳は一切笑っていない。
女吸血鬼はそれなりに重い筈の玉座を、なんと片手で引っ掴むと窓から投げ捨てた。
そうして周囲に眷属のコウモリたちの影を浮かべると、蠱惑的な唇の間から牙を覗かせて言い放った。
「代わりにアナタ達の命を捧げてあげましょう。その方がより強い力と美が手に入るかしら」
胡・翠蘭
「まぁまぁ…誰の為の美しさかは存じ上げませんが…私にはとても血生臭くて、あまりに悍ましくて…正視に耐えませんわね」
袖で口元を隠しながら、そう囁いて差し上げましょうか
【WIZ】
数ばかりといえども、侮れない眷属…ならば、こちらも数で押し返して……
あわよくば、醜く美に執着した彼女へも、一矢報いたいところ
第六感、野生の勘で攻撃を見切り、ダメージを最小限に抑えながら…激痛耐性で痛覚も抑え、反撃の機会を待ち、…好機を逃さず、ユーベルコードで、私の生み出す快楽で、貪り…
ええ、もし近づけたなら、黒髪に仕込んだ鋼糸で…その顔に、傷を付けて差し上げたいわ
「本当に美しければ…多少の疵さえ、美となるのではなくて?」
●精神攻撃
女吸血鬼の視線が、空気そのものを舐る様に嫌な湿り気を与えていくような不快感を煽る。
その中で、鈴を転がすように目を細め笑う翠蘭の姿があった。
女吸血鬼は彼女に標的を定めると、その視線を感じたのか口元を長い裾でゆっくりと隠し始めた。
「まぁまぁ……誰の為の美しさかは存じ上げませんが……私にはとても血生臭くて、あまりに悍ましくて……正視に耐えませんわね」
おお臭い臭い。
目の形だけは笑っているように見えても、鼻から下を裾で覆った仕草は、友好の微笑みではなく、嘲り笑うそれであることは言うまでもなく。
一瞬だけ硬直すると、女吸血鬼はどこからか取り出した羽根扇を口元に宛がう。
「っふっふっふ……」
「おほほ……」
緊迫した、互いに互いを牽制しあう、嫌な女同士の空気が漂い始めて。
「干物になれ」
何かがキレた女吸血鬼は躊躇いなく無数の吸血蝙蝠を嗾ける。
正に目の前を埋め尽くす、としか言いようのない数だが、翠蘭は裾を床に着ける様に腕を下ろすと、右手に拷問具、左手に銃を構えた。
吸血蝙蝠は耐久性の方はよろしくなく、クルミどころか頭蓋をも砕けそうなそれで纏めて潰し、左の銃で撃ち落とす。
背後からの奇襲ですらも、言葉にできない超感覚で見切ると簪を抜き突き刺して落とし。
そうしてこの女吸血鬼の顔を歪ませる悦楽を込めて触手を嗾け。
腕を縛られ際どく衣服の隙間から、甘く這い急所を刺激する触手に悶える吸血鬼に、頬を紅潮させながら翠蘭は首筋を差し出す。
何をとち狂ったか、と不愉快ながらも感じてくる身体の火照りを冷まさんとその牙を突き立てんとした瞬間。
「ッ……!! 私の顔に、キズをっ
……!!」
鋭く首を振るい、髪に仕込まれた鋼糸が女吸血鬼の顔に纏わりつき、女性としては同情する裂傷を刻み。
美を傷つけられ打ちひしがれた吸血鬼を心底、楽しそうに見下して娼妓は語る。
「本当に美しければ……多少の疵さえ、美となるのではなくて?」
成功
🔵🔵🔴
仁科・恭介
領主を目前にし【目立たない】ように注意深く観察しながら隙を伺います。
「あの霧が厄介だ。あれが無ければ他の猟兵もいけるのに」
観察から霧になる防御をどう対処すれば良いか考えた結果、【吸血】での攻撃なら通るのではと考えるに至っています。
最もやりたくない方法ですが。
今まで抑えに抑えていた領主への激情をユーベルコードにのせます。
【目立たない】を使用した奇襲と【残像】を織り交ぜながら【吸血】を狙います。
「それでは貴女の『初めて』をいただきましょうか。『喰われる』という体験です。貴女が『今までやってきたこと』ですけども。さぁ、踊りましょう。貴女が奪った乙女達が舞っていますよ」
※アドリブ、共闘は歓迎です。
ハンネス・ヴェテライネン
「全く、吸血鬼という奴らはどいつもこいつも、しょうもない若作りが好きでありますなぁ。どうあがいても御歳は3桁でありましょうに」
怪力女と近距離戦は御免、銃でお相手するでありますとも。
弾丸精製で短機関銃シュパーギンに炸裂弾、回転式拳銃アイリーンに貫通力の高いAP弾を仕込むであります。
足を止めず、シュパーギンで炸裂弾をばら撒き、徹底的に敵の視界を潰しつつ、爆発の面で制圧するであります。
敵がこれに慣れてきた頃に、アイリーンのAP弾の貫通力で肉体変化ごと、不意打ちにぶち抜くでありますよ。
万が一近接戦になった時はやむなし、麻痺毒付きマチェットで反撃であります。
なに、自分もそれなりに力はあるでありますとも。
●狩食
腕を縛った触手を吸血鬼故の怪力で強引に引き千切り、幾ばくかの疲労を引き換えに顔面の治癒能力を活性化させて女吸血鬼は顔を戻す。
疲労は拭えないが美とは変えられない、満足そうに頷いている彼女を見ながらハンネスは溜息を吐いた。
「全く、吸血鬼という奴らはどいつもこいつも、しょうもない若作りが好きでありますなぁ」
「……あ?」
息を荒げる間も無く響いた声に女吸血鬼が苛立つ。
「どうあがいても御歳は3桁でありましょうに」
「熟成肉と考えれば」
ハンネスの言葉に冗談めかして答えた恭介の声に。
再び女吸血鬼の脳の血管が音を立てて切れたような気がした。
目を輝かせる彼女に対し、ハンネスは視界から外れるように素早く駆けだす。
その最中、短機関銃には炸裂弾、回転式拳銃には徹甲弾を込めていく。
これが今回の最適解、そして。
(怪力女と接近戦も御免でありますからな)
視界から外れるように距離を取りつつ、機関銃で炸裂弾をばら撒く。
自動機構のけたたましい音が響き、撒き散らすと言った方が正しい精度と連射速度が部屋の調度品を爆散させていく。
爆風と煙が視界を潰しながらも、吸血鬼は身体を血煙に変えて直撃しそうな弾は躱す。
漸くその応酬に慣れ反撃を試みようとし、僅かな油断をしたが女吸血鬼の間違い、それはハンネスの狙いそのもの。
「がっ
……!!」
肉体変化を齎し寸でのところで回避を試みた瞬間、極限までの貫通力を誇る徹甲弾が、回転式拳銃から勢いよく音を立てて放たれ、女吸血鬼の太腿を貫く。
苦痛に呻くも、吸血鬼はそれでもハンネスに迫り長く伸ばした爪を振るうが。
「なに、自分もそれなりに力はあるでありますともっ
……!!」
鉈でそれを力強く受け止めて踏ん張り、横薙ぎに振るう。
しかし、それを再び霧に身体を変えると女吸血鬼は彼から逃げた。
その様子を恭介は爆風に紛れ目立たぬように潜みながら機を伺っていた。
「あの霧が厄介だ。あれが無ければ他の猟兵もいけるのに」
機を見て斬り付けようと思ったが、いざという時に霧となってしまえば物理は通じないどころか瞬時にカウンターを喰らう恐れすらある。
再び炸裂弾と徹甲弾の使い分けが繰り広げられているが、何度も通じはしないだろう――だが、この身に流れる半魔の血が霧の匂いを見切る。
それは……血。
血であるならば、吸い上げてしまえばいい――最もやりたくない方法ではあるが。
「私に眠る私の真紅。曝け出せ心の赴くままに!!」
今までに抑えていた女吸血鬼への怒りを剥き出しにし、闇の瞳を鮮血の瞳に変えると背中から蝙蝠が如き翼を生やし。
コイツと同じ種の血が流れていることすら忌まわしい。
だが今はこの血が何より役に立つ――味方の作ってくれる隙、そこに致命打を与えることができるならば!!
半魔の血の全てを開放した姿となって爆風の中を翔ける――接近を許されないで焦れていた女吸血鬼にとって、それは僥倖。
ターゲットをそちらに移すことに決めたのか、血煙に変えていた身体を実体化させ、長く鋭く伸ばした爪で恭介に切りかかる。
だが彼女の爪が切り裂いたのは虚空――何故ならば、彼は既に場に像を残して去っていったからだった。
女吸血鬼が漸く気配に気づいた時、恭介は既に実体化した彼女の背後にいた。
「それでは貴女の『初めて』をいただきましょうか」
慌てて避けようとするが、その動きは敵わず。
何故ならば――擦り抜けたと思った鉈に塗られていた麻痺毒が漸く効いてきたからだった。
その一瞬の隙も許されず、彼女の胸に刀の刃が生えた。
「『喰われる』という体験です。貴女が『今までやってきたこと』ですけども」
霧に姿を変えようとしても、刃に乗せられた吸血の力が吸血鬼の命を吸い上げる。
それの何と皮肉なことであろうか。
「さぁ、踊りましょう。貴女が奪った乙女達が舞っていますよ」
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ミーナ・アングリフ
「これ以上、不幸になるひとは増やさせない…ここで、止める…」
【ライオンライド】でみーくんを召喚…。連携して戦闘…。
【怪力】で鉄塊剣を振り回し、剣から炎【属性攻撃】を噴出させ、【鎧砕き】で敵のや防御ごと粉砕する様に叩きつけて攻撃…。
敵の攻撃は【第六感】で感知して【武器受け】で防御…。
相手が傷を追わせたら、油断した瞬間を狙い【ブレイズフレイム】を発動…。傷口からカウンターで炎を噴出し、相手を焼き尽くすよ…。
最後はその炎を剣に更に纏わせて一閃…。
「…自分の手を切る手間が省けた…さぁ、燃え尽きて…」
※【誘惑】持ちの少女って事で、血を狙われるかも…?
※自分を道具と称する等、自我が薄いので精神攻撃に弱い…
●熱情の口づけ
吸血を血煙となって命辛々に抜け出した女吸血鬼は顔を青ざめさせて喘いでいた。
備え付けの「ワイン」を慌ててラッパ飲みして補うが、所詮は嗜好品――足りない、生きた血……!!
「これ以上、不幸になるひとは増やさせない……ここで、止める……」
獅子を引き連れたミーナの響かせた声に、女吸血鬼は目を細めた。
目を輝かせ誘惑を行い誘き寄せようとするが、獅子のみーくんがミーナの頭を軽く叩くと強引に目を覚まさせて。
ギリっと歯噛みする女吸血鬼目掛けて、ミーナとみーくんは駆けだした。
地獄の炎でも溶けぬであろう鉄塊の如き剣を力強く振るい、血煙にならんとした身体を揺るがせて強引に阻み。
爪を伸ばしてミーナに突き立てんとすれば、それを剣の腹で受け止め、その隙に背後からみーくんの剛腕による殴打が女吸血鬼の背を裂く。
そして今度はよろめく女吸血鬼目掛け、剣から炎を噴き上げさせると身体を変えた血煙ごと蒸発させんとする勢いで薙ぎ払う。
眷属を嗾けたとしても、俊敏な猫科の王者が瞬き一つの時間で十体以上の蝙蝠を牙で仕留め、ミーナの炎を纏った薙ぎ払いが残りを纏めて燃やす。
だが蝙蝠に気を取られたその隙に、彼女はぬるりと割り込むようにミーナの背後にいた。
そしてそのまま、吸血鬼の牙を、華奢な首へ突き立てた――!!
「ありがとう……」
響いたのは礼の声だった。
吸血鬼に吸われることは快楽を伴うというが、それが違うということを思い知るのはすぐのことだった。
「……自分の手を切る手間が省けた……」
流れた血を、一瞬で炎に変えて口の中に流れた瞬間に口内を焼いたのだった。
口を押え声なき声で悶える吸血鬼に、血液を変えた炎、つまり先程よりもより強い炎を纏った剣が。
「さぁ、燃え尽きて……」
――悶える女吸血鬼の胴を、薙いだ。
成功
🔵🔵🔴
オリヴィア・ローゼンタール
まるで被害者のような物言いだな、笑わせるなよ吸血鬼
心臓を打ち貫き、彼女らから奪った血を余さずその身から吐き出してもらう
貴様の死を以って鎮魂とする――!
【血統覚醒】で吸血鬼を狩る吸血鬼と化し戦闘力を増大
【属性攻撃】【破魔】で槍に聖なる炎の魔力を纏う
聖槍よ、邪悪を討つ力を私に――!
霧化や眷属召喚をしようと【怪力】で聖槍を【なぎ払い】、【衝撃波】を起こして【吹き飛ばす】
強化された【視力】や【追跡】で実体化のタイミングを【見切り】、的確に反撃する
魅了には【呪詛耐性】
小手先の隠形や術、有象無象の群れで、我が聖槍の輝きから逃れれると思うな!
聖槍を【投擲】し、初志貫徹する
これが私の全霊の一撃――滅びろっ!
●レクイエム
業火に焼かれドレスを焦がし剥き出しとなった腹部を抑え、体中に刻まれた火傷に涙目になりながら女吸血鬼は喚いた。
「どうしてこんな目にっ
……!!」
「まるで被害者のような物言いだな、笑わせるなよ吸血鬼」
甘え以外の声でしかない声を冷たく制したのはその瞳を真紅に変えたオリヴィアの姿であった。
この期に及んでまだ己が被害者であるように振舞う――何と許し難きことなのであろうか。
修道女の装束に似付かわしくない蝙蝠の翼を生やし、その手に破邪の剛槍を構え。
その金色の穂先を女吸血鬼の心臓に突き付けて。
「その心臓を打ち貫き、彼女らから奪った血を余さずその身から吐き出してもらう――貴様の死を以って鎮魂とする!!」
聖槍よ、邪悪を討つ力を私に――!!
金色の穂先に怒りそのものを具現したような炎を宿したオリヴィアに、女吸血鬼は破れかぶれに無数の蝙蝠を嗾けた。
だがその全てを、彼女は何と――ゾンビ達を薙ぎ払った一撃よりも速く重く、業火を舞い上げる槍の衝撃で一撃で吹き飛ばす。
あまりの衝撃に窓が全壊すらするその威力に慄き、身体を血煙に変えて逃げようとするが、邪を決して逃がさないオリヴィアの目が逃がすことを許さなかった。
血煙から背後に回り、オリヴィアの下腹を爪で貫こうとした瞬間、実体化の隙はとうに見切られ逆に業火の聖槍を下腹に捻じ込まれ。
ならばと離れて魅了の魔眼を放とうとしても、激情を宿した真紅の瞳が輝き逆に魅了の魔力を捻じ伏せられるばかり。
「小手先の隠形や術、有象無象の群れで、我が聖槍の輝きから逃れられると思うな!!」
「この、このっ
……!!」
正に打つ手なし。
憎悪の目を向け合う者同士だが、修道女の行動が早く――初志貫徹。
「これが私の全霊の一撃――滅びろっ!!」
投げ放たれた劫火宿す聖槍が勢いよく穿った下腹の穴に突き刺さり。
宿す炎が一瞬煌めくと、立ち上る金色の火柱が女吸血鬼を包み込むのであった。
大成功
🔵🔵🔵
フェルト・ユメノアール
ようやく本命のお出ましだね
命を踏みにじって、沢山の人の笑顔を奪ったキミをボクは絶対許さない!
ショウマストゴーオン!
さあ、ボクの可愛いアシスタントを紹介するよ!
現れろ!【SPキャンドール・フラン】!
そのままフランに後ろから炎と亡霊で援護を任せつつ、ボクは一直線に女吸血鬼の元へ駆け寄る
もちろん無策じゃないよ!
耳には耳栓、ボクに群がってくる眷属コウモリをギリギリまで引き付けてからスタングレネードを『投擲』
コウモリは超音波でモノを見るらしいけどキミたちはどうかな?
一瞬でいい、コウモリと吸血鬼を音と光で怯ませた隙に懐に飛び込み
攻撃の要の眼か弱点の首のどちらかを狙い『トリックスター』による攻撃を仕掛ける
●Bye-Bye
火柱が止み、際どいドレスが要所要所を隠しているだけの無残な姿になった女吸血鬼にこれは皮肉というものだろうか。
意図は全然ないと思われるが。
「ようやく本命のお出ましだね」
フェルトの言葉に許さない、と言わんばかりの目を向けるが、それはフェルト自身も同じこと。
笑顔を与える道化師と、笑顔を奪う悪魔――与える側だからこそ、その尊さを知る、だからこそ。
「命を踏みにじって、沢山の人の笑顔を奪ったキミをボクは絶対許さない!!」
「なら私は、私の美を踏み躙り穢したアナタ達を絶対に許さない!!」
互いの怒りが互いに交わされる目線の中で、熱く火花を散らす。
女吸血鬼が両腕を広げれば。
道化師がデッキからカードを一枚引き。
「ショウマストゴーオン!! さあ、ボクの可愛いアシスタントを紹介するよ!!」
吸血鬼の周りに眷属のコウモリたちが一つ一つ現れていけば。
道化師は引いたカードを見せつけると、それを板状の器具の窪みにセットして。
「現れろ!! 【SPキャンドール・フラン】!!」
地面から湧き立つ光の中から、頭に蝋燭を戴き、数多の亡霊を率いた不健康な肌色の少女が呼ばれ。
女吸血鬼は無数のコウモリ達を嗾けた。
そのコウモリ達を蝋燭の少女が率いる亡霊と、少女自身の周りに浮かぶ蝋燭の炎で撃墜する中、フェルトは駆けていく。
途中で耳に栓を詰めつつ、牙を躱しながら吸血コウモリ達を可能な限りその身に引き寄せると。
「コウモリは超音波でモノを見るらしいけどキミたちはどうかな?」
突如として広がる閃光と爆音。
閃光手榴弾の不意打ちに一瞬で無数のコウモリ達は感覚器官を狂わされ、行き場を失いフラフラと舞う中を、亡霊と炎が文字通り焼き払い。
そうしてその閃光で目を抑えている女吸血鬼の懐に飛び込むと。
「バイ、バァ~イ」
その喉笛を、暴君を諫める道化の刃が掻き切った――!!
成功
🔵🔵🔴
ヴェスター・アーベント
目的/吸血鬼の撃破
コイツも同じだ、俺の仇だった女と同じ、人間を家畜にしか思っていない吸血鬼!
「貴様が奪ってきた全てを奪いに来た、貴様の血…根こそぎ吸い尽くしてやる」
戦術/UC【聖魔二刀流】で攻撃
「小賢しい変身が俺に通用すると思うなよ」
少ない攻撃機会を最大限に活かす為、重視は攻撃力。
『怪力』を以って振るう攻防一体の剣技。
聖剣の『武器受け』で攻撃をいなし、その攻撃の為に実体化した一瞬を狙い『鎧砕き』の暗黒を纏う魔剣で斬りつけて『吸血』し『生命力を奪い』受けた傷を癒しながら敵を倒すまで戦う継戦能力と破壊力に長ける戦術。
「冥府で少女達が待っている、応報せよ、その首を落とせと叫んでいる!」
※アドリブ歓迎
●引き寄せる者
女吸血鬼は濁った血液の零れる喉笛をひゅーひゅーと息を荒げながら抑え、体に残った生命力を燃やして傷口を塞ぐ。
「オノレ……貴様等全て片付け、血だ、血を
……!!」
赤い瞳に餓えた濁りを見せ、窓の外に眠る民に狙いを定める姿を見、黒騎士ヴェスターは胸の内に憎悪を燃やした。
(コイツも同じだ)
右手に全てを飲み込む引力を秘めた闇の剣を構え、かつての過去を思う。
反抗組織であった時分、その全てを奪った銀髪の女吸血鬼。
(俺の仇だった女と同じ、人間を家畜にしか思っていない吸血鬼!!)
仇討ちを果たし、決着をつけた今であっても――同じように人を弄ぶ吸血鬼への怒りは募るばかり――だからこそ、決めたのだ。
滅ぼす。
その一念を以て、左に聖なる輝きを秘めた白き剣を構えて。
「貴様が奪ってきた全てを奪いに来た、貴様の血……根こそぎ吸い尽くしてやる」
「やれるものならやってみなさいよ……」
まずは彼の血から逆に吸ってやる、と言わんばかりに女吸血鬼は狂気に満ちた笑みを浮かべ、身体を血煙に変えてヴェスターの周囲を舞う。
煽るように血腥い霧の姿で彼の身体を擦り抜けたりもするが、優しき闇の騎士は眉一つ動かさない。
やがては痺れを切らし、長く伸ばした爪で切り裂かんとするが、その一撃を白き剣で受け止める。
「小賢しい変身が俺に通用すると思うなよ」
吸血鬼の一番の武器である怪力を以てしても黒騎士は一切の揺るぎを見せず。
寧ろ逆に爪を払い除けると、霧と化す前に黒の――極限までの剛力を乗せた閃きが走った。
「冥府で少女達が待っているぞ」
ただの一撃。
たったのそれだけで、女吸血鬼は切り裂かれた腹部を抑え床に這いつくばり悶える。
その腹部から零れる血を、黒騎士の魔剣は吸い上げ持ち主の生命力を癒していく。
消耗させることすら許されず、打ち震える吸血鬼に振り上げた魔剣を容赦なく振り下ろし、黒騎士は叫んだ。
「応報せよ、その首を落とせと叫んでいる!!」
大成功
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アリーシャ・マクファーソン
まだ……この姿は維持できそうね……っ
真の姿(金色の瞳に真紅の蝙蝠の翼)を改めて解放
ほんと、反吐が出るほど性悪ね……ヴァンパイアはどいつもこいつも……
なんて濃い血の匂い……くっ、反応するなっ……身体が、熱い……っ
さっさとあの売女を潰してしまいましょう
【SPD】で対抗
魔眼……ヴァンパイアたちがよく使う手ね……
視線を合わせないように注意はするけど……もし魅了されたなら、甘んじて味方の攻撃を受けましょう
流れた私の血が……反撃の狼煙よ……
【百華凍刃】
己の血を氷の刃として、やつを切り刻んであげましょう……
少しでも長く、惨たらしく痛めつけてやる
犠牲者たちの万分の一でも、苦しみを味わうがいいわ……
●終末の慟哭
女吸血鬼の終わりは近かった。
しかし消え失せる前の最後の炎の激しい揺らめきというべきか――幾度となく追い詰められた身体の最後の生命を燃やし、噎せ返る血の匂いを部屋に満たす。
せめて猟兵達を滅ぼさんと躍起になるのは最後の意地か――その中を、アリーシャは金色の目を輝かせ、背中に大きな真紅の蝙蝠の翼を生やしながら割って入っていく。
(まだ……この姿は維持できそうね……っ)
少なくとも目の前の邪悪を滅する時間はある。
この女吸血鬼の悪辣さを改めて思いつつ吐き捨てる。
「ほんと、反吐が出るほど性悪ね……ヴァンパイアはどいつもこいつも……」
「くすくす……アナタも同じよ」
命を燃やして立ち上がる吸血鬼は体中から更に濃密な血の臭気を放つ。
滑らかな肌からは信じられない臭い。
(なんて濃い血の匂い……くっ、反応するなっ……)
魔の血の衝動を抑えるように身体を抱き、アリーシャは女吸血鬼の誘惑に耐える。
その耐える姿をあざ笑うように、女吸血鬼は血の瞳を輝かせて魅了の波動を放つ。
(身体が、熱い……っ)
必死に目を逸らし、吸血鬼の魔眼を耐えていくが――血の誘惑と、魅了の魔力に抗っている間に、何かがキレたかのように、額の血管から血が噴き出した。
この流れた血が反撃の狼煙――自ら付ける手間が省けた。
「この痛みが……いいえ」
額から湧き上がる血を手に取り女吸血鬼に投げつける。
宙で放たれたそれは一瞬で凍てつき、鋼すらも切り裂く刃となって、一斉に女吸血鬼に突き刺さる。
「彼女たちの痛みが、あなたを殺すわ」
まるで虐げられた乙女の怒りを全てぶつけるように。
苦痛の慟哭に悶える女吸血鬼に、何度も、何度も、何度も凍り付いた血の刃を突き刺す。
両手足を張り付けにするように突き立てる。
何度も何度も、億千万の肉片まで切り刻むように刃を放つ。
「万分の一でも、苦しみを味わうがいいわ……」
それすら及ばないだろうけど。
吸血鬼の慟哭が終わったのは、惨たらしくその命を終えた時だった。
●涙の終わり
戦いは終わった。
退廃と絶望の中、それでも必死に生きて来た乙女の純潔と希望を弄んだ女吸血鬼は打倒された。
女吸血鬼の狂った美容も、更なるモノを得んがため街一つを生贄にせんとした恐るべき野望も止めることはできた。
だが失われた命は決して戻ってこない――あの乙女達は、決して戻りはしないのだ。
しかし――もうこれ以上、力なき者が道楽の為の犠牲になることは決して無いだろう。
今はまだ、傷は深いであろうが、いつかは。
失われたモノの傷が癒える時が訪れることと。
失われたモノの魂の安らぎが訪れることを祈り。
この地を救った猟兵達は闇夜を後にするのであった。
大成功
🔵🔵🔵