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闇の救済者戦争⑤〜素知らぬ素振りこそが~

#ダークセイヴァー #ダークセイヴァー上層 #闇の救済者戦争


●真に心の壊れた者
「大丈夫と問われて、大丈夫な者は『何が?』と答える。大丈夫でない者は『大丈夫だ』と答える。有名な見分け方だ」
 色を幾度も幾度も千紫万紅に変える四つの翼、黒髪に揺れる山百合の闇の世に在る御使いオラトリオは唐突に語り出した。
「しかし。それを知った、本当の本当に危うい者こそが、裏で壊れていることも知らずに『何が?』と答える」
 グリモア猟兵スフィーエ・シエルフィートは、それは何とも抑圧の末に壊れた痛々しい姿だとも語り――羽根ペンを象ったグリモアを手に取れば、世界の色は目まぐるしく変わる。

「さて諸君、戦争だ。深く浅い、常世の闇に苦しむ御使いを救いに行ってあげて欲しい」

 闇の救済者戦争――ダークセイヴァーの真の支配者の一員が、一早く彼等の致命的な弱点に到ったことを察知し、第三層以下全ての生命を消し去る心算で仕掛けた戦争だ。
 それを止める為に進まなくてはならないのだが、その中にある、数多の拷問器具が立ち並ぶ常闇の森の中に、何故かオラトリオの魂人達が集まっているのだという。
 そんな彼等の姿は、全身から翼が奇妙に生え非常に痛々しい姿となり、実際にグリモアの映す像からは肉体・精神の両方に於ける苦しみの喘ぎが響いていた。

「……非常に痛々しい姿だ。こうしている間にも、彼等は心身共に蝕まれ声なき苦しみの声を挙げているだろう。故に連れ帰る必要がある」
 当然、彼等は戦闘力こそ相応のものがあるものの、オブリビオンではない為、倒す必要も、何ならば戦う必要性すらないように思えるが――説得で何とか出来ないのかと、或る猟兵の一人が問えば。
「説得は無意味だ。聞く耳を持たないし、それで攻勢が弱まるとか、そういったこともないのだよ」
 だから倒すしかない――下唇を微かに噛み締める素振りを伺わせながら、それでも語りたいものがあれば止めないけど、とも補足し。
 更にまた別の猟兵が、手加減する必要はあるのかと問えば、スフィーエは少し口元を緩めてから応える。
「ああ、その辺は心配は要らない。無理に殺すつもりで掛からなければ、まぁ大丈夫だろう。尤も、殺したところで永劫回帰はあるにはあるが……」
 これもまた当然のことであるが、永劫回帰によって擦り減らす記憶じかんのことも考えれば、なるべくならば使わせずに倒すのがベターだろう。
 本気で倒すつもりで掛かり戦闘不能にする、然る後に保護して連れ帰る――といったところだろうか。

「以上だ。曲がりなりにも同胞はらからの苦しみに、自分で駆け付けられないのが心苦しくはあるが……」
 一頻りを語り終えたグリモア猟兵は、四枚の翼と眉毛を下げ、何かが詰まってしまったかのようなか細い声で語り出す。
 しかしながらも、猟兵達の視線に気づくやいなや、何でもないことのように振舞うかの如く翼を張り、グリモアを手に取って。
「……いや、唯の私情だよ。悪かったね。さて、準備が出来たら声を掛けてくれたまえ。既に行く先ゲートは開かれている」
 ――指示した先に描かれた黄金の扉が、苦しみに喘ぐ御使いの待つ森へ開かれていった。


裏山薬草
 どうも、裏山薬草です。
 相当な久し振りになりましょうか、ともあれよろしくお願いいたします。

 さて、今回は奇病に侵されたオラトリオ達を倒しに行って貰います。
 敵はオブリビオンでないので殺す必要はありませんが、説得は無意味なので、死なない程度に痛めつけて戦闘不能にする必要があります。
 また殺しても永劫回帰で復活はできますが、なるべく使わせずに倒しましょう。

●プレイングボーナス
 なるべく魂人に「永劫回帰」を使わせず、戦闘不能に追い込む。

 プレイングの受付状況に関しては、タグにてお知らせします。

 それでは皆様のプレイングをお待ちしております。
 裏山薬草でした。
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第1章 集団戦 『翼圧症患者』

POW   :    おぞましく伸びる翼
【全身から伸びる翼】が命中した敵を【さらに伸びる翼】で追撃する。また、敵のあらゆる攻撃を[さらに伸びる翼]で受け止め[全身から伸びる翼]で反撃する。
SPD   :    痛苦の叫び
【体内に生えた羽で塞がれた喉】から、詠唱時間に応じて範囲が拡大する、【肉体の羽毛化】の状態異常を与える【痛苦の叫び】を放つ。
WIZ   :    時空凍結翼
【全身に生える翼】から【オーロラのような光】を放ち、【時を凍らせる現象】により対象の動きを一時的に封じる。
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リーヴァルディ・カーライル
…何故そんな姿になっているのかは分からないけど、無為に苦しめるのは本意ではないわ

…本来は殺しても死なない吸血鬼を封印する為の術だけど、
殺傷を控える必要がある相手を大人しくさせるには、おあつらえ向きの業ね

敵UCの状態異常を受けた時は瞬間的に吸血鬼化を行い、
霧化した肉体を正常な状態にして再構築肉体改造して治癒する

…今のは、あまりスマートではなかったわね
どうするか対策を練っておかないと…

UCを発動して石化の魔力を溜めた銀貨を弾丸のような高速で投擲して乱れ撃ち、
銀貨に宿る"石化の呪詛"で敵を石にして捕縛する呪属性攻撃で戦闘不能にして回る

…これ以上、苦しませるのはしのびない。夢すら見ずに眠りなさい



●その“いし”はしずかに
 辛うじて人型が人型であったことが分かるかもしれないシルエット。
 それが“自然”と見えるところでない、明らかに“不自然”と分かる部位に生えた結果は、あるべき場所ではない場所に生えた代価は彼等を苦痛を以て苛める。
 不自然に喉元にすら生えた抑圧の証である翼は、彼等の出す筈の声に詞を与えず、されど呻く声の苦痛はそれそのものが呪詛となって聞く者の耳を犯していた。
『~~~~~ッ!』
「……ッ!」
 その声を聞いてしまったリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)の姿にも――魔に分類カテゴライズされる身には似つかわしくない、白い羽毛の生えた翼が不自然に生えていく。
 まるで強固な根が岩を割って侵し生ずるが如く、肉と肌を裂く苦痛が襲う――が、彼女の身体は一瞬に鮮血の如き赤の霧と散った。
「……ッ、今のは、あまりスマートではなかったわね」
 そして散った霧が集まっていき、その霧が再び翼が不自然に生えていない、元のリーヴァルディの姿を象っていた。
 彼女の身体に流れる魔、吸血鬼の血によって自らの身体を吸血鬼と化し――吸血鬼の特質が一つ、自らの身を霧と変える業を以て一旦病魔に侵された身体を分解し、健全な身体に組み替えることで病を退けていたのだ。
 ――尤も、今後何かしらの対策は必要になるかもしれないが、今は目の前のオラトリオ達の無力化が優先だ。
「……三十枚、代価には十分かしら」
 何故に彼等がそのような姿となってしまったか、リーヴァルディには分からない。
 だけれども無為に苦しめるのもまた本意ではなく、故に彼女は取り出した三十枚の銀貨を握ると、それに魔力を込めた。
「……これもまた、不死者を狩る業の一つ」
 そして親指が軽快に次々と、散弾銃か機関銃宛らに銀貨を弾き、魔を祓う銀弾が如く鈍い輝きの尾を引きながら、全身に不自然な翼の生えた魂人達の額に埋め込まれていく。
 すると込められた魔力と共に銀貨に浮かんでいた、蛇の髪の毛を持った、石化の魔眼を持つ怪物ゴルゴーンの紋章が輝き、魂人達の身を物言わぬ石と変えていく。
 何かを求め彷徨うこともなく、苦痛の声なき声を訴えることもなく、ただただ向かう意志を石の中に閉じ込める。
 本来は不死の鬼を殺さず閉じ込める業だが――このように殺してはならない相手を殺さずに無力化するにもうってつけ、といったところだろうか。
 全ての銀貨を弾き切り、数多の拷問具の傍らにオブジェのように並ぶ苦悶と嘆きに満ち溢れた石像をリーヴァルディは一瞥し。
「……夢すら見ずに眠りなさい」
 ――思考の領域すら石となれば、これ以上苦しめる夢も見ずに済むだろうから。
 そうして再び銀貨を手に、それへゴルゴーンの紋章を浮かべ、彼女はまた次の魂人の下へ向かうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャオ・フィルナート
…殺しさえしなければ、手加減は不要…と
わかりやすくていいね、ある意味

氷麗ノ剣に宿した魔力から放出する水流を操り攻撃
まぁ、所詮は水だし致命傷にはならない筈
当たれば全身ずぶ濡れにはなるだろうけど
更に氷の魔力を上乗せし、近接、あるいは遠距離から【凍結攻撃】
死なない程度に凍り付かせる事で動きを封じる

更に【蒼魔】発動
こっちの動きを封じられても無反応
構わない、というか…この状態の俺に触れたら凍るのは向こうだし
傷つけてもらえればその分破壊力が増すだけだ

…もう、終わり?
次はこっちの番…

一歩踏み出した瞬間【暗殺】技術で培った【ダッシュ】力で加速
すれ違いざまに触れ凍結の【範囲攻撃】

…ちゃんと、生きてる?



●先に凍てつかす時
 白い羽毛に覆われ、不自然な翼の生えた苦しみに呻き続ける者達を前に、その色を際立たせた黒と青。
 青年シャオ・フィルナート(悪魔に魅入られし者・f00507)は己が魔力を練り上げて作り出した、麗しき氷の剣を手に一つ呟いた。
「……殺しさえしなければ、手加減は不要……と」
 無理に殺すつもりでなければ、その心配は要らない。グリモア猟兵の言っていたことを思い出し、シャオは静かに剣の切っ先を向けた。
 突き出されたそれの切っ先が、文字通りに冷たい輝きを帯びては、其処から放出される水流が踊り翼圧に罹った魂人達を飲み込んでいく。
 水といえども質量を備えたうねりは、相応の威力を発揮して彼等の進軍を阻む――が、水は水でしかなく、致命傷には至らない。されども。
「わかりやすくていいね、ある意味」
 濡らしてしまえば、それは文字通りの呼び水となる――手繰る水流に今度は、剣の冷たい輝きに相応しい凍てつく氷の魔力を乗せれば、濡れた彼等の身体は氷の魔力に蝕まれ、帯びさせられた水が凍てつき彼等の動きを閉ざす。
「……まだ、来る? でも、近づかない方が、いいよ……」
 それでも足を踏み出そうとする魂人達へと、何処までも冷たく静かに彼は告げる。
「……俺が、蒼魔と呼ばれるに至った所以……知ることになるから……」
 シャオの身に纏われる、剣の放つ冷たい気よりも尚冷たく、正に蒼き魔と呼ぶに相応しい、見るだけでも冷たく鋭い針が身を突き刺すような痛々しく、激しい気が魂人を圧していた。
 例え魂人達がその翼から、時をも凍てつかせる極光を放ち、シャオへと手を伸ばしても――彼が帯びた突き刺すような冷気は彼等の身体に帯びた水分を凍てつかせ、逆に身動きの取れぬ氷像と化していき。
 シャオに攻撃を与えれば与える程、彼の纏う冷気の勢いは増すばかりであり、触れる魂人の身は唯々凍てつくばかり。
 やがて時を凍てつかせる波動の効力が切れ、動き出したシャオの時間は、彼の唇を静かに動かして。
「……もう、終わり?」
 尤もその声に応え何かの返答を示す理性も、翼圧に罹った彼等にはないのだが――本能か何か、言い表せない何かは彼等の足に一歩を踏み出させていた。
「……次は、こっちの番……」
 魂人の歩みよりも尚速く。
 踏み込みの一つから瞬時に加速し、夜に溶け込むが如く素早く。
 静かにただ、触れるだけの、されど纏う冷気が帯のように広がり、魂人の身を氷の中へと閉じ込めていく。
「……ちゃんと、生きてる?」
 少なくとも、耳を澄ませば微かな呻きも聞こえるか。
 一先ずは生きてはいることも、戦闘不能に追いやったことも確認し、シャオはまた新たに魂人の身を凍てつかせに行くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
他人の救助ってのはあまり柄じゃないんだけどねえ。
とはいえ放っておくわけにはいかないし、まあ何とかしようか。

さて、暴れてる相手を死なないように大人しくさせるんなら、
あたしがやる分には殴って気絶させるのが一番簡単だし加減も効くかな。
時間をかけても叫びの範囲が広がるだけだし、
患者を見つけ次第ダッシュで一気に近づいて【蛮震揺打】で攻撃して静かにさせようか。
肉体の羽毛化を治してる時間は無いし、痛いのは我慢してなるべく急がないとね。

まったく、オブリビオン以外も相手にしなきゃいけないなんて面倒なことだよ。
心配してる人も居ることだし、さっさと片づけるとしようか。



●万国共通の肉体言語ステゴロ
『ウォァァオ、ァア……ア……』
 喉をも潰された身体は発声も儘ならず、声帯は言葉を紡ぐほどに精緻な動きを見せることはない。
 それでも呻き声に込められた苦痛の音色は、例え呪詛が込められなくとも、それそのものの音色ですらも気を容赦なく滅入らせる。
「……はぁー」
 ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)の吐き出す溜息にもまた、何処かやり切れぬ何かを潜ませながら、彼女は己の後頭部を掻いた。
「他人の救助ってのはあまり柄じゃないんだけどねえ」
 さりとて、この苦しく謳うような呻きの正体を放置しておく訳にもいかず、響き続ける呪詛めいた呻きに辟易しながらも。
「まあ何とかしようか……、ッ……!」
 ――ペトニアロトゥシカはその身体に無数の動物の因子を埋め込まれた、合成幻獣キマイラである。
 多くの姿を持つ彼女にも、鳥の翼を生やした姿はあるが――己の因子に依らない翼が、不自然に生える苦痛は容赦なく彼女を襲う。
 治している余裕も無ければ、時間を掛ければ掛けるだけこの苦痛は続くばかりならばと、ペトニアロトゥシカは翼圧症患者を目に映すや否や、地響きを起こしかねない程の力強い踏み込みを以て駆け――
「ひとつ!」
 身を僅かに屈め、力強い機動力を生み出す脚が勢いよくしなり、魂人の足を薙ぐ。
 機動力を殺すに十二分、仮に相手が魂人ではない並の獣ならば、そのまま砕いていた勢いのそれが、魂人の足を打ち据え重たい痺れを与え。
「ふたつ!」
 間髪を入れずに鳩尾へと叩き込む、抉るように打ち出された拳。
 単品にしても強烈な拳でありながら、浸透し体内に波紋を与え内臓を揺さぶり鍛えようのない内を打ち壊すそれが魂人の身体を折り。
「みっつ!!」
 トドメ――二発目のボディブローを叩き込む間、もう片方の拳に込めていた力を一気に立ち昇らせるが如く。
 顎を下から強く強く打ち据えたそれが、感覚器を烈しく揺さぶり――魂人の意識を一気に奪い、地に伏せた。
「黙らせるにはこれが一番だね。あたしがやる分には、加減も効くしねえ」
 手を軽く打ち払い、気絶した魂人が一応はまだ生きていることを確かめつつ。
「それにしてもまったく……」
 ちらり、と未だにゾンビか何かを彷彿とさせる呻きを伴い、幽鬼のようにふらつき歩む魂人の姿を見ては一つ。
 オブリビオンとの戦争はまだしも、それにオブリビオン以外の何かまで相手にしないといけないんほあ、何とも面倒なことかと思う。
「ま、さっさと片付けるとしようか」
 とはいえ、だ。
 心配している人も居る限り、ここで躊躇い動かないでいるという選択肢も無いか――両頬を軽く叩いて気合を入れ直し、ペトニアロトゥシカは力強くまた踏み込み、その拳を叩き付けていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィリヤ・カヤラ
第三層以下の殲滅ってスケールが大きすぎてビックリだよ、
私も思い出が色々あるから無くなったら嫌だし。

さてと、魂人に話が通じないのが厳しいね。
覚えてないうちに永劫回帰で大事な思い出が消えたら嫌だろうし、
頑張って弱らせて連れ帰るよ。

どうしようか……。
「待って」って言っても聞いてくれないんだよね。
『見切り』で攻撃は出来るだけ避けながら、
【氷晶】を致命傷にならない所と敵の周りにばら撒いて、敵に当たらなかった分は爆発させるね。
少しでも気が逸れてくれたら良いな
……逸れなくても強引に行くけど。
UDCの『月輪』を血を使って実体化させて敵を拘束、
暴れるようなら顔を覆って死なない程度に窒息を狙ってみるね。



●通じぬ言葉よりも明確な刃
 邪魔になったから片付ける。
 言われてみれば当たり前の考えではあるが、その「片付け」の規模が一つの世界である階層、それも第三階層以下全てともなれば複数の世界を一挙に消し去ると同じと言えるか。
 敵の為すことの壮大さに驚きの色を隠せずとも、ヴィリヤ・カヤラ(甘味日和・f02681)は感慨深くもなっていた。
「私も思い出が色々あるからね」
 ――忘れもしない。
 積み重ねてきた日々も、乗り越えていった冒険も――忘れたくない、消したくない、だからこそ。
「もちろん、皆の思い出も消えるのは嫌だよね?」
 目を向ける魂人の翼から放たれる、オーロラの如き妖しくも美しい光の波を寸での所で躱しつつ問いかける。
 死を回避し退ける法の代価は、幸福であった記憶を改竄し苦痛の記憶と塗り替える、心を擦り減らす重たい代価。
 止める為に命を奪えば、当然、彼等はその法を使うだろうし、出来ることなら思い留まって貰いたいところではある、ものの。
「だから待って……と言っても、聞いてくれないんだよね」
 元よりどのような説得も思い留まらせるにも、更に言えば攻撃の手を緩ませることすらも出来ないのならば、強引にでも止める他ない。
 魂人達の翼から放たれゆく極光を、戦場に立ち並ぶ不格好な拷問器具を影とし、壁とした拷問器具の時の凍結を肌で感じながらも、ヴィリヤは拷問器具の影より顔を覗かせ。
「――氷よ射抜け」
 突き出された掌から冷たく、幻想的な美しさを伴いながら氷の矢が舞い散っていく。
 幾百をも数えるそれが、森の中の気温を容赦なく奪い去りながら、鋼鉄のように強固にして鋭く、立ち並ぶ魂人の身体に突き刺さる。
 無造作に繰り出されるようにも見えて、それでいて的確に、手足や肩を撃ち抜き、急所は外して。
 勿論、外れた分はただ外れただけではない――それ自体が爆薬となって爆ぜ、氷の矢から逃れた魂人を熱と衝撃を以て追い詰めていく、が。
 それでも歩みを止めぬ者もあれば。
「止まってくれない? なら、仕方ないね。流血は覚悟の上だから」
 それを呼び出すには血を消耗する――されど大切な思い出を失わせることも、増してやこの夜の世界を失わせることに比べれば血の流出など。
 影に潜ませていた名状しがたき謎の怪物UDCを己が血液を媒介に具現化させ。
「頼んだよ、月輪」
 今だ健在であった魂人へと瞬時に飛び掛かり押さえつけ――それでも尚、じたばたと激しい抵抗を見せる彼等へと、月輪は彼等の顔を覆う。
 幾度目かの抵抗も終わり、次第に痙攣を伴いながら腕より力を抜かせるのを見れば、穏やかにヴィリヤは告げた。
「大人しくしててね。してればすぐに終わるからね」

大成功 🔵​🔵​🔵​

メフィス・フェイスレス
(自分の躰に生えた羽毛を無造作に毟り取りつつ)
あらあら、随分と質の悪い病気だこと
でも最初から錯乱してるなら逆に都合が良いかもね
私のやり方じゃ正気じゃいられなかったかもしれないから

――触ったら感染(うつ)るわよ

【行動】
・UCで躰から溢れ出た「飢渇」が魂人に飛び掛かり寄生していく
翼圧症を上書きするようにデッドマン化、一時的に眷属として操り無力化しつつ、不死の躰で同士討ちで永劫回帰が起こらないようケアする
・眷属化した魂人に【染】を使用させ、他の魂人にも「飢渇」を感染させていく事で無力化する

ま、絵面はアレだけど安心して。ちゃんと元に戻せるから



●狂った御使い正す怪物
 声なき声の低く重たく響き渡る呻き、それそのものが詠唱となり呪詛を戦場に広げていく。
 苦しみを知るが故にその苦しみを他に与えんとする、望むや望まぬやにしろ、感染を広げる呪いが、今もまた一人の猟兵に不自然な翼をその身体に生やさせていた。
「あらあら」
 元来ならば肉と肌の割ける苦痛に何かしらの反応を示すものであるが、それを生やされた者は、まるで「あ、いつの間にか虫に刺されていた」とでも言わんばかりの何でもない反応を伴い自らの身に生えた翼を見ていた。
「随分と性質の悪い病気だこと」
 メフィス・フェイスレス(継ぎ合わされた者達・f27547)は無造作に、それを毟り取りながら呟いてみせた。
 身体から引き抜かれる羽毛と血肉を引き裂く痛みも、何のことでもないかのように――それこそ、身体に付いた埃を払うかのように。
 生えてはそれを毟り取り、その生やす呪詛である翼圧症患者の声、苦痛の呻きと焦点の定まらぬ移ろう姿を目に映して。
(でも、最初から錯乱しているのは……逆に都合が良いかもね)
 行われることが何であるか、知るが故に逆に狂気に侵されるというのも儘あるもの。
 その点でいえば正気を失っているが故に逆に正気を保てるだろう――記憶さえ残らなければ、このような悍ましいものは。
 最高に便利で、忌々しい身体から、一つ、二つ――次々と溢れ出ていく、どういう形かを描くのも難しい眼と顎門の並ぶ怪物。
「――触ったら感染うつるわよ」
 尤もそれは自分から触れに行く・・・・・・・・・のであり、メフィスの身体より出でたそれが、魂人達へと飛び掛かりその身体に潜り込んでいく。
 さすればそれは、翼圧症に悩まされる魂人の身体を不死者デッドマンの身体と変える――身を犯し続ける奇病を不死者と上書きするように。
 更に更に、身体に寄生せし怪物の力によって不死者と変えられた彼等は、同様にその怪物を自らの身から生み出し、未だ感染していない者に潜り込ませ眷属と変えていき、その眷属が更に感染を広げていく突発的大流行を引き起こす。
 例え同士討ちの様相を呈し、互いに互いの身を引き裂き致命打となろうとも、不死者の身体と作り替えられた身は記憶を擦り減らすこともなく、活動を続けていく。
「絵面はちょっとアレだけど」
 ――曲がりなりにも御使いであり、パーツだけで見れば神聖にも見えた翼の生えた身体が、不死者となり、連鎖的に感染を広げ不死者を増やす。
 恐怖映像宛らに繰り広げられる、見た目には実に、翼圧症の群れよりも尚恐ろしい光景となりながらも――
「安心して。終わったら全部、ちゃんと元に戻るから」
 間違いなく、齎されているのは病からの解放――全てが終われば、不死者と変えられた身からも、怪物からも、増してや病からも彼等は無事に解き放たれていることだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レナータ・バルダーヌ
魂人さんはオラトリオ、そして拷問器具……。
偶然でも縁を感じてしまいます。
決して嬉しいものではないですけど、だからこそ余計に見過ごせません。

手加減の必要はないといっても、殺傷力の高い攻撃は控えたいです。
【サイコキネシス】で周囲の拷問器具を複数操作し、相手にぶつけて攻撃しましょう。
こういう時に便利な手段を意外と持ち合わせていないことを、今さらながら実感します。
相手の反撃はサイキック【オーラで防御】、防ぎきれなくても【痛みには耐え】られます。
ある程度は防がれる前提でいくつかを囮に使いつつ、お腹などの致命的になりにくい急所を狙って気絶させます。
正しい使い方でなくても、気持ちのいいものではありませんね。



●錆び付いた拷問具は半端に刺さるか
 その姿が御使いオラトリオであることは、全身に悍ましく生えてしまった翼だけが示していた。
 全身より不自然に生えた歪なそれが、御使いであった魂人の身体を裂き、肉体も精神の等しく苛め続けている。
 言葉はなくとも苦しみの呻き声が続々と響き渡り、それは周囲に立ち並ぶ最早機能をしていない拷問器具が、まるで彼等を見えずとも苛めているような――
「……」
 拷問、そしてオラトリオ。
 レナータ・バルダーヌ(護望天・f13031)の脳裏に浮かぶ、御使いオラトリオとして覚醒したが故に囚われ、吸血鬼に弄ばれた凄惨な記憶。
 縁を感じるのは偶然の一致でしかなく、さりとて嬉しい偶然とは羽毛の一つとも思えないし、思いたくもないものだ。
 ――だからこそ、目の前で声なき苦しみの声に呻き、彷徨い続ける彼等を見過ごすことも出来ないのも、また事実である。
「忍びないものです。……このようなことしかできませんが」
 小さな呟きもそこそこに、レナータは広げた掌を輝かせる。
 思念によって繰り出される不可視の手が、立ち並ぶ機能していない拷問器具を草か何かのように引き抜き――刹那、風切り音も重厚にそれを魂人に飛ばす。
 だがそれも、広がり行く――その最中に魂人の苦しみに呻く声も大きくなるが――翼を以て受け止められる。
 だがそれも想定済みであり、最初に飛ばした拷問器具は囮、間髪を入れずに即座に飛ばした別の拷問器具が、魂人の腹部を強く打ち据え意識を奪う。
 尤も、同時に魂人より伸ばされた翼が、レナータを襲ってはいたが――念力の不可視の力場を壁とし、貫通してきた衝撃が少なからず彼女を痛めつけるも。
「……痛みには耐えられます」
 小さく微笑み、何でもないことのように耐え、痛みを捻じ伏せて。
 再びに思念によって拷問器具を浮かべ、同様にして魂人達へと飛ばす中、レナータは自嘲するように呟く。
「こういう時、難儀なものですね」
 実感してしまう。
 殺さずに無力化する、という一点に於いて都合の良い力を、そうは持ち合わせていないことを。
 そして――機能をしていない拷問器具を、思念の手で操り叩き付ける。
 拷問器具を拷問器具として使ってはいない以上、単なる鈍器で殴り付けているのと何ら変わらない筈、だが。
「……気持ちのいいものでは、ありませんね」
 ――それもまた、中途半端に錆び付いたが故に突き刺さる拷問器具の、凄惨な拷問と言えなくもないのだろうか。
 だが――【痛みには耐えられる】のだから。この胸に襲う痛みすらも耐え、苦しみより救い出す為に、レナータは念動力によって拷問器具を飛ばすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

日輪・黒玉
……痛ましいですね
黒玉は誇り高き人狼、狩るべき獲物は弁えています
……すぐに終わらせてあげます

拷問器具と森を足場にしながらの高速移動で攪乱
【ダッシュ】に【スライディング】【ジャンプ】なども組み合わせた立体的な動きで伸びてくる翼を撒くように動き回ります
こちらの蹴りを受け止めてくる翼を根元を狙い、斬り落とす
大きい痛みを与えれば戦闘できなくなる時間も近くなる、筈……

元より障害物の多い場所
無秩序に翼を伸ばし続ければ、必ず隙は大きくなっていきます
理性的に戦っていないのなら尚のこと
その隙を逃さず、一気に攻めて立てます



等しく訪れる死に狂い踊ったダンスマカブル
『ウァァ、……ァ、……ガ、……ァゥァ……』
 全身に生えた翼は、生えるべきでない所に生えた代価として身体を内側から裂き、魂すらも千々に引き裂くようで。
 喉にも埋め尽くされた翼は、彼等の声帯より言葉を詞として発する力を奪い、それでもただ呻く声は鮮明に苦痛を伝える。
「……痛ましいですね」
 眉間にきつい皺を寄せ、日輪・黒玉(日輪の子・f03556)は小さく呟いた。
「……すぐに終わらせてあげます」
 彼等が何を言おうとしているのか、それは分からない。されど今確実に出来ることは、彼等の苦しみを長引かせずに手早く終わらせること。
 ローラーブレードめいた靴を以て走り、魂人の身より悍ましく伸ばされた翼の殴打、次々と繰り出されゆくその隙間を掻い潜るように駆ける。
「付いてこられますか?」
 立ち聳える拷問器具を足掛かりに、高く跳躍を行いながら薙ぎ払われる翼を躱す――続け様に突き出されるように伸びてくる翼を、空中で身を翻しては避け、着地する。
 追い撃ちを掛けるかのように打ち下ろされる翼を、横跳びに軽快に躱していき、その先に待ち構えているかのように薙ぎ払われた翼を、その下に滑り込むようにスライディングで踊り込み。
 しなやかに、スライディングの体勢から力強く足で地を踏みしめ跳び掛かる――藍の狼が如く勇ましく、そしてしなやかなる脚を振るいては、防御の為に翳された翼へと、刃を煌めかせつつの蹴りを繰り出す。
 ――黒玉は誇り高き人狼、狩るべき獲物は弁えている。
 彼等の喉笛を切り裂き仕留めるは容易い、されど――
「――~~~ッ!!」
『ブゥオァァァアアアアッ!?!?』
 切り裂くのは彼等の身体に生えた翼、それを根元から綺麗に落とす。
 痛ましい苦痛の言葉なき叫びが響き渡り、近くで脳髄を揺さぶるものの、それほどの痛みを与えたのならば――きっと戦闘を続けられる時間は、減る筈。
 激しい苦悶の叫びを返り血の代わりに浴びては着地し、そこを襲う他の魂人達が繰り出す翼の殴打を、立ち並ぶ拷問器具を、森の木々を足掛かりとし縦横無尽に飛び交い躱していきながら。
 或る時、伸ばされた翼の振るわれる速度が鈍く、或いは別々の翼がぶつかり合い、少なからずの隙を見せる。
 それが好機――狙った獲物を決して逃すことなく狩り取る正しく狼の化身が如く。
「無秩序に伸ばし過ぎるからです。……嗚呼、本当に、痛ましい」
  軽やかにして鋭い跳躍を伴いながら、打ち下された踵落としが、魂人の翼を根本から落とす――!
 着地からも間髪を入れずに、立ち上がりと同時に打ち上げた蹴り上げや、その勢いの回転蹴りが翼を根本から切り落とす。
 その声の痛ましさに辟易しつつも、狼は着実に翼を刈り取っていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

空桐・清導
POW
アドリブや連携も大歓迎だ

「俺に任せてくれ。一人だって取り逃さねえ。
全員助け出してみせるさ。」
雄々しく笑い、転送される

「さて、翼圧症か。それがアンタ達を苦しめるというなら、
ヒーローであるオレが為すべき事は…コイツだ!」
UCを発動させて黄金の炎を全身に纏う
迫る翼を[オーラ防御]で防ぎながら接近
光焔で翼圧症患者を包むとその症状と狂気が一瞬で消滅する
「すまない!今は話している余裕はないんだ。
オレのそばから離れないでくれよ!」
次々と翼圧症患者を救出していく
「みんなの方にいく人は出来るだけ無力化してくれ!
後で必ず助けるから!」
協力してくれる人にはそう助けを求める
確認できる範囲で救出したら帰還するぞ!


ウィーリィ・チゥシャン
スフィーエには何度も世話になってるし、そうでなくてもこの惨状を放っておく訳にはいかないだろ?

持ち込んだ調理道具を邪魔にならない様に隅に置いてから救助開始。
【幻炎鎮魂斬】で魂人たちの奇病だけ攻撃し、肉体を傷つけずに正気に戻す。
ただ、一人ずつやっていく形になるから少々骨が折れるけどな。
相手の攻撃を【盾受け】で防御し、【カウンター】で【幻炎鎮魂斬】を繰り出し、奇病を斬る。
複数の相手は【地形の利用】や【フェイント】で一か所に集めて【範囲攻撃】の【幻炎鎮魂斬】で一斉に斬り伏せる。

一通り片付いたら、魂人も病気の後で体力が落ちているだろうからスープを【料理】して振る舞う。



●セイヴァー×セイヴァー
 ――誇り高き料理人は、グリモアベースで快活に笑いながらこう言った。
「何度も世話になってるし、そうでなくてもこの惨状を放っておく訳にはいかないだろ?」

 ――そして熱き志を持つ英雄ヒーローもまた、グリモアベースにてこう言った。
「俺に任せてくれ。一人だって取り逃さねえ。全員助け出してみせるさ」

 それぞれの立てられた親指と笑顔を黄金の門の輝きに溶け込ませ、一瞬の光の後に見えるは、グリモアベースに嫌というほどに映され続けた光景。
 実際に目に映し、生の詞なき苦しみの声も響き渡り、痛々しく不自然に生えさせられた翼を持って彷徨う姿が、それだけで生々しくこの世の地獄を彼等の心に訴える。
「さて、翼圧症か」
「確かなるべく殺さないで無力化、だったよな」
 気の滅入りそうになりかけた心を奮い立たせ、英雄たる空桐・清導(ブレイザイン・f28542)が状況を確かめるように言えば、料理人ウィーリィ・チゥシャン(鉄鍋のウィーリィ・f04298)が鉄鍋と大包丁を手に答えた。
 相手は滅ぼすべき敵ではなく、苦しみ続ける被害者、それを為しているものが翼圧症という病ならば――清導はウィーリィの言に頷き答える。
「その通りだ。だからヒーローであるオレが為すべき事は……コイツだ!」
 ――決意と願いはこの火を燃やす燃料。
 清導の全身に黄金の光輝く焔が盛り、伸ばされる翼を全身に纏った闘気で受け止め――そのままカウンター気味に放つ光焔が帯となって薙ぎ払われ、魂人達を焼き払う。
 そして奇しくも奇しくも――といったところであり、光り輝く焔の帯が魂人達を過ぎ去るのと同じくして、こちらは純粋な炎を纏った大包丁の刃が走る。
 だが二つの炎が魂人達を包んでも、それは彼等を死に至らしめるではなく――ただ彼等を犯し続けていた翼圧の証のみを焼き尽くし、彼等の姿を元に戻していた。
 炎としての姿は違えども、それに込められた願いと想い、その力は等しく同じ。
「お互い、考えることは似たようなものってことか!」
 ――だが、悪くはない。
 どれだけ遠慮なく力を振るい続けていようと、互いに互いの為すことが同じと分かれば、何の懸念ぞいるものかと二人顔を合わせ頷き合い。
「そのようだ! 行くぜ!!」
「応!!」
 そして始まっていくのは、黄金と紅蓮、それぞれの形違えども同じ決意を燃料とし、浄化の為に盛る炎が振るわれて病のみを焼き尽くしていく光景。
『ゥ、ァ……ォ……あ……あ……?』
「すまない! 今は話している余裕はないんだ。オレのそばから離れないでくれよ!」
 自らの身に起こったことが何なのか分からぬまま、元の姿に戻った魂人達の戸惑いもそこそこに指示を飛ばす清導だったが、そんな彼と魂人へと向かって、未だ病に苦しむ者より翼が伸びる。
「危ないッ!」
 咄嗟に割って入るウィーリィ――翳された鉄鍋の曲面を重厚な盾とし、伸ばされた翼を受けとめるや否や、翼が引く前に軽やかに、鋭くかつ素早く胸元に吸い込ませるように炎を帯びた大包丁が走る。
「この数は結構、骨が折れるな……」
 清導の放つ光焔に追い立てられた魂人達を、密集するかのように立ち並んでいた拷問器具の中心に追い詰め、一気に薙ぎ払いながらもウィーリィはぼやいた。
 一対一で斬り結んだり、こうして纏めて薙ぎ払うこともあれど、やはり数の多さは如何ともし難く――彼の背後から向かう翼を、振り向き様に鉄鍋で受け止め、浄化の炎を纏った大包丁の一撃を繰り出す。
 しかしそれは伸びた翼にて受け止められるが――その隙に横から殴りつけるかのように、清導が黄金の炎を纏いながらの突進をかまし、盛る光焔が病を焼き尽くす。
「だが無力化してくれるなら大丈夫だ! オレが助けてやる! それはキミも例外じゃない!!」
 例え多勢に無勢、不利が如何ほどに重なろうとも、彼等を殺さずにいてくれるのならば。
 例え偶然にしろ同じ志を以て動く仲間の為ならば、英雄は何処までも心を輝かせ、苦しみ続ける敵も、多勢に無勢に立ち向かう仲間も救いにいけるのだから。

 * * * * * * * * * * *

 目に映る場所に翼が不自然に生えた魂人達の姿も、不穏な痛ましい苦しみの声も聞こえ無くなれば、軽く周囲を見渡してから清導はウィーリィに問う。
「大方こんなところか?」
 少なくとも自分達が転送された所の魂人達は、粗方救い終えているだろうか。
 このまま引き返すにしろ、他の仲間の所に向かうにしろ――まずは、明らかに消耗し切った様子の伺える魂人達の保護が優先か。
 そんな中で、消耗し切った彼等の鼻腔をくすぐるのは、香しいスープの匂い――戦闘を一旦終え、本分を発揮していたウィーリィの用意していたものが差し出される。
「ああ。……ほら、食べてってくれよ。腹減ってるだろ?」
『あ、ありがとうございます……』
 まして病み上がりなのだから尚更に。
 おずおずと受け取り、口に運ばれるスープの旨味と滋養が優しく、病の苦しみにて擦り減った身体と心を癒す中でウィーリィは笑ってみせた。
「いいって! 刀工と火工は、こんな風に誰かを救う為だからな!」
 ――誰かは言った。
 自由なものは肉を食うが、英雄とはすなわち肉を他に分けるものだと。
 ならばこの料理人もまた、苦しみ抜いた者の心を癒す英雄ではないか――ということを思うか思わぬかは定かでなくも、清導が親指を立て片目を瞑る笑顔を示せば、ウィーリィもまた親指を立てて返す。
 形は違えど正に英雄同士、それはグリモアベースを発った時のように。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シノギ・リンダリンダリンダ
こういう時は一切の哀れみも持たず、さっと無力化させるに限ります
永劫回帰を使わせずにできるだけ無力化させる
無茶な仕事ですが、この大海賊にお任せください

【嫉妬の厄祭】を開催
黄金と化した己の体から、その身を黄金に変える呪詛を漏れ出させる
そして同時に多少の痛みと、黄金となった私への執着を与える
後は私を求めて集まってきた魂人を黄金に変えるだけです
黄金の像にしたら、いくつかはお宝として徴収したい所ではありますが……さすがにこの黄金像は私のセンスに反しますね。意識が無いあいだに持ち帰りましょう



●見出す価値
 敵は決して侮ってよい戦闘力ではないが、さりとて全力を出さなければ死ぬほどの脅威でもなく。
 その上で敵は倒すべき敵ではなく、言ってみれば病気に苦しむ被害者であり、殺してもNGにはならないものの、耐え難い傷を心に残す。
 加えて相手は更に絶え間なく、言葉に出せずとも鮮烈な苦しみの声を終始響かせ続けていて、何とも気の滅入る。
 ――実に難儀なミッションというものだ、が。
「お任せくださいな、この大海賊に」
 こういう時は一切の哀れみを持たずにさっさと済ませるに限る――シノギ・リンダリンダリンダ(強欲の溟海グリードオーシャン・f03214)は誰ともなく、海賊らしからぬ淑女めいた挨拶口上もそこそこに。
「さあさあ、お集まりいただきましてありがとうございます、翼圧症患者の皆様。ただいまより――【嫉妬の厄祭が開催されます。どうぞ存分にお戯れください】」
 ――古来より、この輝きは万人を魅了してならない。故にこの鉱物は何時如何なる世にも相応の価値を以て扱われる。
 シノギの身体は見るも艶やかにして、人の人生を何度買えるかも分からぬ黄金と変わり、その輝きは魂人の放つ呪詛よりも早く駆け巡る。
 魅惑的な黄金の輝きによって植え付けられた痛みと、それと同時に灯されてしまった価値ある金への執着。
 それは己を圧する軛すらも彼等に意味を為さなくしては、我先にと争い合うかのように、この一時に苦痛も忘れシノギにと手を伸ばしていく。
「あらまあ」
 黄金というものが如何な価値ぞあるものかな世に於いても等しく価値を――植え付けさせたものであるが――証明するかのような、苦しみをも忘れる程の執着に突き動かされ、手を伸ばしていく姿は何処か滑稽で。
 小さくシノギが笑みを漏らし、それでも触れることを許さぬようにすんなりと、彼等の横を過ぎ去ると。
「病よりも、黄金に執着してしまいまして。……嫉妬、してしまいますね?」
 次第に詞なき呻き声すらも止められるのは、他ならぬ魂人達が黄金と変わっていったから――翼の生える苦痛もこれ以上なく、全てが黄金と化した身には身体の苦痛もなく、物言わぬ黄金の像と成り果てる。
 高位の天使は高位であるほど、異形に近い見た目ともいうが、全身から翼が生えて苦悶の表情かおを浮かべた天国と地獄の入り混じる純金――価値はあるのかもしれないが、しかし。
「……センスに反しますね。やはり持ち帰りましょう」
 宝にするのは眼鏡に叶うものでないならば、然るべき所に。
 斯くあるべき場所、あるべき者の所へと持ち帰る――己にとって見出せぬ価値も、また別の場所と者には代え難い宝であるのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーゼロッテ・ローデンヴァルト
【POW】

◆心情
心身両面に及ぶ奇病は転戦先で数多診てるけど
コレまた奇怪な風土病だねえ
闇医者らしく壊れる前に救ってアゲる♪

◆戦闘
愛機【ナインス・ライン】で自生拷問具を突破・接敵
【アーク・ファランクス/マギ・バダディルマ】の
多重防壁と装甲で羽を凌ぎ【カイルス】で照準ロック後
【瞬間思考力】と【操縦】テクで精密狙撃

但し【スカベンジャー】から放たれた特殊光弾は
オペ55番【ロゴスイグニッション・ウィザード】の産物
『悪事の発生源』…未知の病魔と症状のみ殲滅するのさ

◆事後
愛機背部の医療機構【イリーガル・メディック】展開
『患者』を内部ポッド群へ収容後【医術】で解析・治療しつつ後送
他の猟兵が寝かせた分も面倒診るよ



弾丸病破Silver Bullet
 立ち並ぶ拷問の棺や、身体を引き延ばす車輪のような悪趣味な玩具立ち並ぶ森を、それを破壊しながら迫る一機のキャバリアがあった。
 コンソールに映した、全身に痛々しく翼が奇怪に生え、集音機の拾う嘆きと苦痛の声に、操縦者のリーゼロッテ・ローデンヴァルト(KKSかわいくかしこくセクシーなリリー先生・f30386)は呟いた。
「コレまた奇怪な風土病だねぇ」
 数多の世界を渡り歩き事件に挑む身として、斯様な奇病は何度も見たことあれど、こうした病気を見るのもまた初めてであり、興味は尽きぬ、が。
『ボァァァア……ァァ……、ジ……』
 まずは彼等をどうにかするのが先決か――伸ばされた翼の殴打に動ずることもなく、盾と臑より膝にかけての装甲より発する障壁でそれを受け止める。
「闇でも医者なんでね。暴れる患者はお手の物ってね」
 次々と伸ばされ打ち据えてくる翼も、難なく障壁を以て逸らしていきながら、リーゼロッテは機体の大型ビームマシンガンを向ける。
「【マトリクス・メモリ】対発生源キル・プロセス始動」
 ――記録媒体に刻まれた過去の記憶が呼び起こされる。
 この状況を打破し撃ち抜き、勝利を掴む為の切り札Silver Bulletが光弾となってビームマシンガンへと装填される。
「――ターゲットロック。壊れる前に救ってあげるよ」
 高度な計算と演算が未来すらも映し出す。
 回避に動く魂人の動きも、翼を翳して防ごうとする動きも、手に取るようにわかる――回避するならその先に、翼で防ぐのならばその前に。
「敢えて言おうか……アンタの咎を示しなっ! マトリクス! ロゴスイグニッション!!」
 狙いを定めて、引鉄は今、引かれる――砲口より閃光が迸り、放たれた光弾が次々と魂人達を貫いていく。
 回避も防御も許さず、ただただ一方的に――光弾の蹂躙が終わり、倒れ伏していた魂人達が立ち上がると、彼等は己の状況に驚く。
『……ッ!?』
 齎された【救い】は滅ではなく、綺麗さっぱり、醜く生え揃わされた翼が消えることによって、あらゆる苦痛より解き放たれた病からの解脱。
 あの時確かに身体を撃ち抜かれたにも関わらず、肉体も滅ぶこともなく、心身の平定を取り戻した事実に魂人達の驚愕は隠せない。
 信じられないといったものを見る魂人達へ、機体の通信機を介してリーゼロッテは微笑みを口元に浮かべながらこう言った。
「言っただろ? 救ってあげる・・・・・・って」
 放たれた光弾が撃ち抜くものは【悪事の発生源】――即ち、今回の件であるならば、それは魂人達を犯していた翼圧症という病。
 彼等を蝕んでいた醜い翼やそれに齎される苦痛、そして救っていた病魔の根源のみを綺麗に撃ち抜くことで元に戻していたのだ。
 未だ驚き隠せぬ魂人達を最後まで面倒見るべく、リーゼロッテは機体の背部にあるポッドに収容――他の猟兵が気絶させた分も面倒を見つつ、護送していくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

己を見失う程の苦痛か…此度の戦争が原因なのは間違いあるまい
仕掛けた奴らには相応の報いを受けさせるとして…まずは彼らを救わねば

スクレットコートを着用
銃刀の類は装備せずに、コートに装着された腕部アームギアで立ち向かう
手加減しても彼らの苦痛が長引くだけだ
一発で意識を刈り取る勢いで打撃を与えていく

文句は幾らでも聞こう
だが、今は大人しくしてもらおうか!

【怪力】と【グラップル】を活用し、唸りを上げるアームギアで翼圧症患者達を吹き飛ばす
全身から伸びる翼の動きを見切りアームギアで受け止め、翼を持ったまま敵集団へと放り投げる

囲まれたか…多勢に無勢と言った所だな
だが、此方にとっては都合がいい

相手が集団で囲うように襲ってきたらUCを発動
アンファントリア・ブーツによる重い蹴りを次々と叩き込む
蹴りの威力と発生した衝撃波を受ければ容易に相手の意識を刈り取れるだろう
相手の弱点を見抜き、確実に戦闘不能にしなければ
やりすぎて永劫回帰を起こさぬように注意しよう
彼らの幸福な記憶を奪うわけにはいかないからな



●眠りとはこれ以上とない精神安定剤トランキライザー
 彼等が元々に如何なる人間であったか。
 普段の生活の中で街行く民に特に気を払うでもないように、初対面である彼等のことを知る由もない。
 ただ分かるのは――
「己を見失うほどの苦痛……か」
 自分で自分の為していることが何であるかも分からず、苦悶に悶え彷徨い、害意を撒き散らし続ける姿。
 腕の辺りに物々しい装甲を取り付けたロングコートの裾を微かに揺らし、古錆びた拷問器具の立ち並ぶ中でキリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)は呟いた。
「落とし前は必ずつけさせてやろう。だがまずは、彼等を救わねば、な」
 一体何故に彼等にこのような残酷な病が襲ってしまったのかも分かりかねるが、此度の戦争が原因であることに間違いはないだろう。
 この病に裏で糸を引いた者がいるとするならば、それに確りと制裁を加えてやることを固く誓いながら、キリカは力強く足を踏み出した。
 コートの上、取り付けられた腕甲アームギアが唸りを挙げ、伸ばされる翼、その軌道を一つ一つ微塵の揺らぎも見逃すことなく映し――
「文句は後で幾らでも聞こう」
 伸ばされた翼を、力強く掴んでいた。
 伸びた翼の相応の質量と強度を苦とも思わず、駆動音が気合を入れる咆哮のように響き渡り――そのまま、伸ばされた翼ごとに苦しみ続ける魂人の身を、持ち上げた。
「だが、今は大人しくしてもらおうか!!」
 更に更にと、アームギアの駆動音がけたたましく森の木々と拷問器具を響かせる。
 足腰の幹を確かに、力強く雄々しくも美しい投球の型を以て、キリカは魂人の身をまた別の魂人の群れへと投げ放った。
 同質のものを打ち破るには同質のものが一番というものであるが、他ならぬ同じオラトリオの魂人、それも翼圧症の悍ましい病の翼生え揃った身は正に同質。
 それに加えて投げ放たれた勢いが加わったそれが、ピン倒しのように薙ぎ倒していく――が。
 それが奇しくも囮となり、その隙にと別の魂人達がキリカを取り囲み翼を伸ばしていた。
「……囲まれたか……」
 このままならば、伸ばされる翼によって隙間なく四方を埋め尽くされ、為す術なく打ち据えられてしまうのだろうか。
 倒しても倒してもキリの無い、多勢に無勢、拷問器具の森に彷徨う拷問器具よりも拷問めいた姿と脅威かもしれない。
「だが、逆に都合が良い――吹き飛べ」
 が、キリカはそんな多勢にして無勢の軍勢に絶望するどころか、寧ろ好機とも言わんばかりに口角を僅かに釣り上げていた。
 ゆっくりと、片脚を上げ――刹那、弧を描きつつ放たれた重たく、鋭い蹴りの一撃が伸ばされた翼を打ち据え、その先の魂人を弾き飛ばす。
 それだけでなく、振るわれた脚より放たれた衝撃という圧が、翼圧に苦しみ続ける魂人達へと連鎖して広がり、その身体を打ち据えていく。
 そのまま、蹴りを放った足を地に着け、間を置かずにすぐに地を蹴り、伸ばされる翼の間、狭い間の中を切り抜け――今一度、蹴りを叩き込む。
 綺麗に鳩尾に入ったそれに、くの字に身体を曲げられ、吹き飛ばされた魂人がまた別の魂人の脳天を揺さぶるように当たり、気絶の連鎖を重ねていく。
「安心しろ。幸福な記憶を失わせはしない。だから今は、少し眠って解き放たれていてくれ」
 的確に、確実に、無駄のなく――彼等がこれ以上の苦しみを重ねることの無きようにと、洗練された体術は彼等に等しく眠りという安らぎを与えていくのだった、

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年05月06日


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🔒
#ダークセイヴァー
🔒
#ダークセイヴァー上層
🔒
#闇の救済者戦争


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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト