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そして誰も死ななかった

#獣人戦線 #ヨーロッパ戦線 #ゾルダートグラード

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#ゾルダートグラード


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●とある村
 結婚式が行われていた。
 戦地より遠く、いつかは戦場に変わるであろう小さな村で行われるささやかな祝い。
 新郎は緊張を隠しきれず、新婦はこれからの幸福へと思いを馳せ頬に朱を差していた。
 けれど二人の視線は誰かを求めるばかり。
 ゾルダートグラードと戦うために村を出て、片足を失った友を。
 子供のころから一緒だったのに、突然消えて戻って来た時には右足は木の棒に変わり果てていた。
 畑を耕すことは出来なかったが手先が器用で村の道具や機械を直して生活し、そして自分達を一番に祝福してくれた彼がいない。
「……どこに行ったんだろ、あいつ」
「楽しみにしているって言ったのに……」
 不安そうに辺りを見回す男に女は不満を述べる。

 爆発音が響き渡ったのはその時だった。

 咄嗟に新郎は花嫁を抱きしめ、女は男の腕の中で不安と安心感が混ざった表情で音が響いた先を向いた。

 その先には村へと続く橋があったはず……。

●とある橋
 部隊が橋に差し掛かる。
 ここへ来る前にレジスタンスを血祭りに上げ前線と言える場所は突破した。
 後は速度が勝負。
 橋を渡り、村を占領し、敵が態勢を立て直す前に橋頭保と勢力圏を確保する。
「……全軍進撃」
 部隊長らしきガトリング砲を背負ったゾルダートが号令を発し、副官が復唱する。
 小回りが利き、戦意旺盛な尖兵が一番前。
 続いてパンツァーキャバリア、次に砲兵が後に続く。

「……おいでなすったな」
 レジスタンスの生き残りが橋の下で荒い息を整える。
 彼がここに居るのは訳があった。
 右足が無いのだ。
 代わりにあるのは棒のような義足一つ。
 歩くには支障はないが、もう銃を持って戦うことは出来ない。
「悪いが今日は祝い事の日だ」
 だから村へと帰り、そして同胞からの連絡を受けてここに潜んだ。
「祝砲代わりに吹っ飛んでくれ!」
 生き残りの兎が持っていた配線を繋ぐと起爆装置が作動し、橋が爆発した。

「……やられたな」
 指揮官は渋面を隠せない。
「やられましたね」
 気心知れた副官が上官の咥えた煙草に火を灯した。
「我々の情報ではここから先にレジスタンスが居る可能性はほぼ無い。故に速度を以って行動をしなければならなかった」
「しかし橋を爆破され、尖兵を分隊規模ですが失いました」
 部隊長が目的を確認し、部下は途中で起こった状況を報告した。
「つまりここは戦地に変えられた。もう拙速ではなく巧遅を以って対応しなくてはならない」
「では作戦は如何に?」
 状況を変えられたことに苛立ちを隠せない指揮官。
 副官は敢えて問いかける、行動を明確にし意志統一を図るのが仕事であるが故に。
「キャバリアによる上方からの索敵と支援を伴って動ける人間で徒渉し対岸の安全を確保。其の後、全軍を以って渡河にかかる。それまで負傷者は応急処置を行い動けるようにしろ」
「了解」
 部下が走り、命令を実行に移す。
 部隊が動く中、ガトリング砲を背負ったゾルダートは橋だった物から転がり川を流れていく何かを目に留めた。
「|兎の足《ラビッツ・フット》か……何のお守りなんだか」
 皮肉だけが指揮官の口元を歪ませた。

●グリモアベース
「こうして稼がれた時間によって村人は誰も死ななかった……物語はこれでおしまい。反対意見はあるかな?」

 グリモア猟兵、氏家・禄郎(探偵屋・f22632)が問いかけた。

「よろしい我々は猟兵だ。オブリビオンを倒すのが仕事だからね」
 答えを聞かずにグリモア猟兵は話を続けた。
 最もこの話を是とする者はここに来る事は無いし、賢しい者ならこの時点でありとあらゆる方法で勝ち筋を導きださんとするだろう。

「まず君達が現場に到着できるのは結婚式の準備の真っ最中。この辺りで元レジスタンスである片足の兎がかつての同胞から接触を受け、行動を開始する」
 故に探偵屋は状況を説明し。
「彼と接触し、どうするかは任せる。上手くやればレジスタンスと共に橋の向こう側で戦えるかもしれないし、あるいは敢えてレジスタンス達を下がらせて我々だけで戦う事も可能だ。戦場を選べるのは非常に有利だね」

 続いてタイプライターで打ち込んだ資料を写真付きで投げ渡す。
「敵は勇猛果敢な突撃歩兵と砲撃特化のキャバリアや兵士を召喚できる指揮官の組み合わせ。指揮官を排除するには歩兵が邪魔をしてくる。まずはこいつらを駆逐しよう」
 そして写真がもう一枚。
「指揮官の方はガトリング砲を埋め込んだ砲撃型。キャバリアや砲兵による攻撃の他に衛生兵も呼び出して戦闘を継続するし、焼夷弾を無数に発射してくる。勿論、考える頭もある」
 話しが終わればグリモア猟兵はタイプライターのレバーを倒す。
 そろそろ時間のようだ。

「そうそう。君達は結婚式には間に合わないが、兎一人くらいは参加させることはできるかもしれない」
 猟兵とはそういう物だろう?
 そんな風に笑いながら、探偵屋は開かれたゲートを指差した。
「じゃあ、よろしくやってくれ」


みなさわ
 たった一人の命で村が守られる。
 それが安くつくと見るか、それとも損と見るかは君達次第。

 こんにちは、みなさわです。
 今回はとある村から離れた橋での攻防戦です。

●村
 結婚式の準備で大忙しです。
 そんな中、戦傷を負って村に戻って来た兎は同胞からの連絡を受け祝砲の準備にかかろうと動き出します。
 どのような対応を行うかはお任せします。

●戦場
 村から約10キロ離れた橋。
 橋から村にかけては畑が中心となった見渡しの良い平原。
 逆に橋の向こう側は森の中を切り開いた道が一本通っているだけです。
 レジスタンスなら森を使って奇襲をかけるのが常道を考えるかもしれません。

●兎
 元レジスタンスで片足を失い、村へと戻ってきました。
 畑は耕せなくても、手先が器用で機械を弄れる彼を村人と幼馴染は暖かく迎えてくれした。
 祝砲を上げに行くのはそれで充分でしょう。

●レジスタンス
 村に危機を伝えに来た者が一人。
 あとは橋の向こう側で部隊を展開しています。
 何もしなければ勇気を持って戦いますが、森の栄養に寄与する以外の成果はありません。

●敵部隊
 獰猛な突撃歩兵と砲撃戦に長けた指揮官によって構成され、ユーベルコードを使って砲兵や戦車型キャバリアを展開し、砲弾の雨を降らせつつ歩兵が飛びこんでいくのが基本戦術です。
 戦場を選び間違うと集団戦と言えど厳しいものになるかもしれません。

●その他
 マスターページも参考にしていただけたら、幸いです。

 では皆様、物語を変える時間です。
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第1章 日常 『ささやかな結婚式』

POW   :    結婚式を見守りつつ周囲に気を配る

SPD   :    結婚式を見守りつつ怪しい気配を探る

WIZ   :    結婚式を見守りつつ敵の動きを予想する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●結婚式

 小さな村に久しぶりの春が訪れた。

 農業を営み、収穫物を遠くの街へ売り出し、代わりに機械や何かを持って帰る。
 時代と共に移り変わっていくささやかな村。
 その日常を維持できたのはゾルダートと戦っている者が居た為だった。
 最初は血気盛んな若者が。次に相続の末、畑を守る必要が無くなくなった者が、そして何も成せないと思い込みレジスタンスなら居場所を見つけられると信じた者が村を出ていき、家族と技術と一生癒えない傷を負って戻ってくる。
 だから右足を失った兎のパトリックを誰も拒むことは無く、彼も村の為に戦いで得た工学知識で村の機械を直し生きていた。

 そんなパトリックを応援する者が二人。
 犬のロージーと熊のボニー。
 誠実で村を取りまとめるロージーと気の強いボニーが背中を押してくれたからこそ、パトリックはこの村に帰ることができたのだ

 だが兎の心はまだ燻ったままだった。

 成し得ないまま足を失って村に戻り、一生を終える。
 最初はそれでいいと思った。
 幼馴染だった二人が結婚して幸せという物が形になれば、片足を一つで充分なお釣りがくる。
 そう思い、心に蓋を被せる決意をした時……かつての同胞が報せて来たのだ。

 ゾルダートの進軍を。

「ロージー、ボニー……悪い、結婚式は不参加だ」
 兎のパトリックが名残惜しそうに笑い、準備に賑わう教会に背を向けた。
 成し得なかったことを今度こそ果たすために。

 村に来た猟兵が見たのは祝いの時の中、戦地へ赴く一人のレジスタンス。

 ――君ならどうする?
ユキト・エルクード
(アドリブ、絡み、連携歓迎)
死地へ赴こうとするパトリックと自然とさりげなく接触を果たし、やんわりと引き返すよう伝える。

ダチが誰にも看取られず一人寂しく死んだって時に浮かれてたと後々知ったら、ご友人らはさぞかし後悔するだろうからな。

だが、本人の意思が固ければ別に止めはしない。
俺は人様の意思は可能な限り尊重する柔軟な男だ。

もっともその場合、誰も来ない橋の下で無駄足を踏む羽目になることを敢えて伝えておこう。
俺は気遣いが出来る男だ。

また、パトリックと接触する前にUC[霧影蜻蛉神楽]を展開しておき、戦場となるであろうエリアを上空から監視。
万一、敵斥候が来ていた場合は追跡させ、可能な限り情報収集を図る。


シャロン・イロアス
わぁ…!凄い♪ホントにモフモフした人達しか居ないんだ。不思議♪
さて、兎のパトリック君とやらを追わないと

接触した後は、取り敢えず現状の確認を細かく聞いとこうかな?

うん?村の事が気になる??
君の事探してたよ?

でも、焼け石に水だって分かってるのにそんな身体で何かしようと言うのが君の誇りなら。わたしは止めないよ?

だけど自暴自棄になって命を捨てるだけなら、可哀想だからわたしが今刎ねてあげる♪

その足がどうにもならないのは君が良く分かっている…出来る事をするのが筋な筈……

ん〜まぁ、わたしは君じゃ無いから分からないよ?出来る事なんて♪
昔からの知り合いなら知ってるんじゃない?幼馴染とか

【アドリブ歓迎】



●生きる事、出来る事、為すべき事

 死ぬと分かっていて、何故人は歩くのだろう。
 誰も英雄になることは望まない。
 だが何かを成したいと……自分が生きていると知りたいからこそ歩くのだ。
 例え、何かを失ったとしても。

「わぁ……! 凄い♪ ホントにモフモフした人達しか居ないんだ。不思議♪」
 シャロン・イロアス(Malignoid:Proud・f31692)が始まりの猟兵の現れた世界にて行われる結婚式を見て、声を漏らした。
 人に近い獣や二本足で歩く獣人そのものの姿が珍しいのだろう。
「さて、兎のパトリック君とやらを追わないと」
 シャロンが村人が歩き回る中、見回せば外へと歩いていく獣人が一人。
 そして彼に最初に説得したのがユキト・エルクード(亡霊夜警・f38900)であった。

「よした方がいい」
 ユキトは本題をぼかして話しかけた。
 兎のパトリックもそれが分かっているから首を振った。
「祝いの直後に葬式だなんて、二人に悪いだろう」
 誰にも看取られず一人寂しく死んだって時に浮かれてたと後々知ったら、ロージーとボニーはさぞかし後悔する――そう思っての行動だった。
「それでも二人や村のみんなが生き残ってくれればいい。奴らの手にかかったら軍事パレード以外の式典すらないだろう?」
 勿論、かつての終焉砕きたるユキトだってそのまま見過ごす気はない。
 だからパトリックの言葉を無理に否定せず。
「もし、このまま行っても無駄足に終ったとしても……か?」
 暗に代わりに戦うと伝えるのみ。
 自分はそのためにやってきたのだから。
「無駄足なら、それで充分だろう?」
 兎が笑った。
「99回無駄足を踏んでも100回目に本物が来た時に動いてなかったらおしまい……貴方も分かってるはずだ」
 パトリックの台詞の意味はユキト自身が一番知っている。
 だから、これ以上は問わず。
 霧の蜻蛉を以って、戦場になるべき橋と森を覗いた。
 敵はいない――まだ間に合いそうだ。

「どうしたの?」
 後ろ髪を引かれそうに歩く兎にシャロンが問いかける。
「いや、別に」
 適当に誤魔化そうとしたパトリック。
「うん? 村の事が気になる?」
 剣劇の悪魔が更に問いかけ。
「君の事探してたよ?」
「だとしたら用事ができたと伝えてくれないか?」
 続けたシャロンの言葉に兎が言づけて頼む。
 けれど第六の猟兵は首を振るのみ。
 自分も戦いに赴く身であり、それ以上に。
「でも、焼け石に水だって分かってるのにそんな身体で何かしようと言うのが君の誇りなら。わたしは止めないよ?」
 知りたかったのだ。
「だけど自暴自棄になって命を捨てるだけなら、可哀想だからわたしが今刎ねてあげる♪」
 兎のパトリックが何故、戦地へと歩むのか。
「その足がどうにもならないのは君が良く分かっている……出来る事をするのが筋な筈……」
 剣劇の悪魔がその刃を抜かんと柄に手をかけた時、男は笑った。
「出来る事か……貴女は人手を借りたとして、どれくらいの時間で橋を爆破できる?」
 パトリックの言葉にシャロンは剣から手を離した。
「他に選択肢は無いの?」
「同胞の情報では勇猛果敢な歩兵と背中に武器を持ったゾルダートと聞いた。彼らも逃げてくれと言ったが、内心は私を必要としているだろう……」
 女の問いかけに兎はただ答える。
「昔からの知り合いなら他に出来る事とか知ってるんじゃない? ほら幼馴染とか」
 それでもシャロンが問いかければ、パトリックは首を振った。
「私は友人に銃を持たせる趣味は無いよ。ほら、こうなるからね」
 片足の兎が自分の右足を指差して皮肉った。
 邪神に作られし悪魔には彼の心が分からない。
 でも|誇り《プライド》だけは分かる。
 それが命をかける物であると証明するならば――。
 見極めねばならない。
 故にシャロン・イロアスも共に歩くことを選んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シプラ・ムトナント
【POW】
民を守る為に命を懸けるのは戦士の誇り。それが、友の門出を祝う為であるのなら尚更でしょう。

軍人として、わたしに彼を止めることは出来ませんが……共に戦うことならば出来ます。パトリックさんに声をかけましょう。

「こんにちは。こちらの村では、今から結婚式が開かれると伺いましたが……どちらに?」

「わたしは軍属の身でして。戦いに行かれる方の背中は、よく分かります」
予知がなくとも、きっとその背中に気付くことは出来たでしょう。

「わたしは|衛生兵《メディック》です。前線で戦う技術も修めています。良ければ、共に戦わせて頂けませんか」
戦う|獣人《ひと》を支え、生きて還らせる……それが、衛生兵の使命ですから。



●誇りと使命と

 何かを成すべき心は誇りと言う名の|獣人《ひと》の精神。
 だからこそムトナントの娘は背中を押す。

 ――民を守る為に命を懸けるのは戦士の誇り。

 それが、友の門出を祝う為であるのなら尚更だった。

 シプラ・ムトナント(鋼の衛生猟兵・f39963)は軍人の生まれ。
 生還と言う幸運と生き残るという不運を受け継いだ戦場の申し子だ。
 だからこそ軍人として、パトリックを止めることは出来ないが共に戦う事はできる。
「こんにちは。こちらの村では、今から結婚式が開かれると伺いましたが……どちらに?」
 兎のパトリックは瞬きをした後、肩を竦める。
「ドレスを忘れたのでね?」
「まあ……ゾルダートから襟付きの制服をお借りになると」
 パトリックの冗談にシプラが微笑む。
「貴女は止めないのかい?」
「わたしは軍属の身でして。戦いに行かれる方の背中は、よく分かります」
 兎の言葉に羊は笑みを止め、彼の背中に触れる。
 背嚢越しに触れる物は見知った火薬と武器ばかり。予知が無くても分かる。
 だから、その背中をそっと押すのだ。
「わたしは|衛生兵《メディック》です。前線で戦う技術も修めています。良ければ、共に戦わせて頂けませんか」
「良いのかい? 死ぬ事になるぞ」
 シプラの言葉に対して、パトリックは逆に止める。
 生き死にを見て来たからこその問いかけだった。
「大丈夫です。わたしは|衛生兵《メディック》ですから」
「……|衛生兵《メディック》? まさか」
 兎がその意味に気づき、目を見開いた。
「わたしがあなたの知っている者かどうかは関係ありません」
 今はただ……一人の戦士として。
「戦う|獣人《ひと》を支え、生きて還らせる……それが、衛生兵の使命ですから」
 シプラ・ムトナントは使命を果たすために隣に並んだ。

「あれはおとぎ話と聞いていた」
 自分を止める者や同行する者が何者かと気づき、兎のパトリックは呟いた。
「もし、あなたがおとぎ話を信じているのなら……」
 だからシプラは告げるのだ。
「もしもの時に叫んでください、その言葉を」
 |衛生兵《メディック》の真の意味を。

大成功 🔵​🔵​🔵​

東・よるは
【狼と桜】
ということですのでパトリックくん。
結婚式を諦めるのを諦めてください。

|原初《はじまり》の世まで幾千里、ラウラちゃんと一緒にレジスタンスとの接触を試みます。
会話に関しては基本わたくしが担当し、その間の監視をラウラちゃんに任せる形で。
その際の報告は一切聞き逃さずに。

大事な友の門出をその目で見届けたいと、本当はそう思っていらっしゃるのではないですか、パトリックくん?
であれば、そんな友の所に向かってあげることこそが彼らの望みです。
だからどうか、わたくしたちにお任せを。

レジスタンスの皆との共闘も申し出ます。
全てを護る為、打てる手は打つ。
力を合わせ、必ずや犠牲を出さずに全てを御守りしましょう。


ラウラ・シュトラウス
【狼と桜】

村を守る為に無謀な戦いに挑む気概は買うけど、あまり無茶なやり方をするならこっちが手出ししても文句は言えないよね?

よるはと一緒にレジスタンスと会いに行こう
あたしは人と話すのがそこまで得意じゃないから、話が聞こえる範囲で”Gungnir”で周囲の警戒・索敵に専念する
偵察は得意なんだ
いち早く異変に気づければ、それだけ対処する余裕も生まれるものだから

話を聞きつつスコープ越しに[偵察]しよう
どんなに小さな違和感でも報告するよ
不利な戦いが分かっているなら、尚更情報は大事になる

レジスタンスとして村を守るのはいいけど、死んでしまったらそこで終わりだ
少なくとも残される人達は悲しむからね



●諦めない事、生き抜く事

 もし捨て鉢なのかと問われたら、彼は違うと言うのだろう。
 だが、そうでなくても最終的に彼は拒むのだ。

「ということですのでパトリックくん。結婚式を諦めるのを諦めてください」
「お断りしよう。君達が猟兵であることは知っているが、もしもの事だってある。いや、もしもの時はもう起こっている」
 レジスタンスとの共闘を取り付け、戻って来た東・よるは(風なるよるは・f36266)の言葉を兎のパトリックが謝絶する。
 その様子をラウラ・シュトラウス(|狼《ルプス》・f32573)を傍らで眺めていた。
 よるはもラウラも軍と兵を知る者。
 パトリックの言葉の意味が分からないわけでもない。
「大事な友の門出をその目で見届けたいと、本当はそう思っていらっしゃるのではないですか、パトリックくん?」
 けれど、兎は戦場から平和に|戻って来た《ドロップしてきた》者だ。
 だから桜の學徒は彼がまた還ってくる事を望まない。
「であれば、そんな友の所に向かってあげることこそが彼らの望みです」
 少なくともパトリックが残した友人の事もある。
「だからどうか、わたくしたちにお任せを」
「レジスタンスとして村を守るのはいいけど、死んでしまったらそこで終わりだ」
 ラウラも助け舟をだす。
「少なくとも残される人達は悲しむからね」
「悲しむ……そうかもな」
 続く狼の言葉に兎は村へと振り返った。
「今日はさ……大事な日なんだ。あいつ等は私が帰ってくるまで待ってくれてた。その二人がようやく幸せになるんだ」
 パトリックは再び戦地を見る。
「みんなで逃げても間に合わない奴がいる」
 次に自らの義足。
「そのせいで死ぬかもしれない人間がいる」
 最後に村。
「だから時間を稼ぐ必要がある。橋を落とせば渡河を試みるには時間が生まれる」
「……敵が勇気に不足の無い猪の場合は?」
 情に訴えても無駄と判断したラウラがパトリックの作戦の不安要素を突く。
「部隊の生き残りを纏めて強引に渡渉をはじめるかもしれないぞ?」
 そうすることで彼の行動が無意味だと悟らせるために。
「だから私が行くんだよ」
 兎の言葉に狼は反射的に戦場へとスコープを構えた。
 拡大されるのは砲やキャバリアが動けず、歩兵に頼るしかない森と橋が一つ。そしてこちら側は農地を中心とした平原。

 ……選択肢が無いのだ。

「森で同胞が奇襲をかけ、警戒させ」
 パトリックの言葉が続く。
「そして一人残った私が橋を爆破する――最適なタイミングで」
 もし逃げようにも自分が足手まといになる。
 ならば戦場で為すべきことを……その為の遅滞戦術。
 本来ならば物語は兎の死で終わるだろう。
「そうはなりませんよ、パトリックくん」
 けれど二人には確信があり、よるはが唇を動かす。
「まず、貴方の同胞は森で奇襲をかけません」
 既に他の猟兵が動いている事は桜の學徒が伝える。
「そして君達は橋の方で待機、警戒してもらう予定だ」
 ラウラも手伝うかのように自分たちの戦術を伝える。
「……塹壕どうするんだよ?」
 パトリックは皮肉しか返せなかった。
 少なくとも自分の行動は最後の最後……最悪の事態になった時のものに変わり、あわよくば結婚式は延期か遅れる。
 置いてきたものを取り戻せるのだ。

 それを知らせるかのように森から猟兵が走って来た。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シリン・カービン
森を使って奇襲をかけるのは常道。
敵もそう考えるでしょう。
なら、その裏をかかせてもらいます。

初めに橋向こうのレジスタンスに接触します。
森の中から姿を現し猟兵であることを告げれば、
受け入れられやすいでしょうか。

自身のUCで森から奇襲をかける作戦を提案し、
レジスタンスには橋の村側で残敵の掃討を頼みます。
百挺以上の銃の群舞を見せれば納得しやすいでしょうか。

森の情報を聞いて地形を把握したら一度村へ。
兎が通るのを待ちます。

「こんにちは。何かお祝い事ですか?」
「そうですか。それは皆でお祝いしないと」
悲壮な覚悟が見えたなら。
「あなたが上げるべきは、|本物《・・》の祝砲です」

大丈夫。
そのために私たちは来ました。


ティオレンシア・シーディア
祝砲に弔砲を兼ねられたんじゃ、残されたほうは感情のやり場ないわよねぇ…

橋に爆弾仕掛けられたってことは、まだ接敵にはそれなりに時間あるわけよねぇ?なら、城は流石に無理にしても防衛○拠点構築くらいはできるはず。
●必殺を起動、描くのは|神聖文字《ヒエログリフ》。ヒエログリフは表音文字であると同時に象形文字、その分種類がすごく多いのよねぇ。
こういう状況で数は最大の力だし森から奇襲を仕掛けるにしても気を引くものがあるとないとじゃ大違いだもの、どんどん人員召喚してガンガン建設しちゃいましょ。
当然トラップ類もドカ盛りに。○罠使いに時間を与えたらどうなるか、身をもって体験させてあげようじゃないの。



●常道と準備と戦場と

 レジスタンスが森を戦場に選んだのは訳がある。
 まず彼らは砲を持っていない。
 次に車両の数が少なく、正面切っての勝負にも勝てない。
 故にユーベルコードでキャバリアや戦車を呼び出されてもゲリラ的に戦える森しかないのだ。
 それでも不利は必至……だった。

「つまり、ここで歩兵を潰すって事かい?」
 レジスタンスのリーダーであるネズミが問い返した。
「はい、敵もここで奇襲をかけると想定しています」
 シリン・カービン(緑の狩り人・f04146)が答える。
「なので、その裏をかかせてもらいます」
「お嬢さん方以外にも猟兵はいるみたいだが、兵に不足があるんじゃないか?」
 妖精階梯が故にネズミがちょこまかとシリンの足元を駆け回り、常識論を述べる。
「兵は有りませんが……銃に不足は有りません」
 狩人が指を動かせば、そこに現れるのは125丁の猟銃。
 持ち主無き銃はシリンの意のままに踊り、そして整然と並び銃口を揃える。
「私一人だけでも二個小隊分は補えます。そして……」
 狩人が振り向いた先では、野戦築城が始まっていた。

 𓅱𓇌'𓃭𓃭 𓃀𓍢𓇋𓃭𓂧 𓄿 𓅱𓄿𓃭𓃭
 𓅓𓍯𓍢𓈖𓏏 𓏏𓉔𓇌 𓎼𓍢𓈖 𓅓𓍯𓍢𓈖𓏏𓋴
 𓏏𓉔𓇌 𓏏𓍯𓊃𓉔𓎡𓄿 𓇋𓋴 𓊃𓍯𓅓𓊪𓃭𓇌𓏏𓇌

「文字が形になって……動いてる」
「|神聖文字《ヒエログリフ》よぉ」
 呆然とするレジスタンスの一人にティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)はウィンクと共に答えた。
 最もそれが分かるのは彼女をよく知るものだけだろう。

 祝砲に弔砲を兼ねられたんじゃ、残されたほうは感情のやり場ないわよねぇ……。

 パトリックの考えも分かるがティオレンシアとしては残されたものの事を考えてほしい。
 それはレジスタンスにも言える事。
 だから、この場でのゲームチェンジを試みるのだ。
「橋に爆弾仕掛けられるってことは、まだ接敵にはそれなりに時間あるわけよねぇ?」
「ああ、足りない分は我々が稼ぐことになっていたんだが……」
 あっという間に築かれる防御拠点。
 道路故に塹壕を掘ることができなかった。
 出来るとしたら簡易的な車両止め程度だったろうに魔法言語の使い手はそれすら覆す。
「こういう状況で数は最大の力だし森から奇襲を仕掛けるにしても気を引くものがあるとないとじゃ大違いだもの」
 道路を塞ぐように作られたトーチカ、そして大量の銃架。
 人が無ければユーベルコードで補えばいい。
「どんどん人員召喚してガンガン建設しちゃいましょ。当然トラップ類もドカ盛りに」

 𓇋 𓄿𓅓 𓎼𓍯𓈖𓈖𓄿 𓅓𓄿𓎡𓇌 𓄿 𓏏𓂋𓄿
 𓏏𓉔𓇋𓋴 𓍯𓈖𓇌'𓋴 𓏏𓉔𓇌 𓊪𓇋𓏏𓋴

「罠使いに時間を与えたらどうなるか、身をもって体験させてあげようじゃないの」
 自信満々にトラップを設置し始めるティオレンシアを横目にシリンは森から外へと出ていく。
 伝えるべき言葉があるのだから。

「こんにちは。何かお祝い事ですか?」
 兎のパトリックを道中で出迎えてシリン・カービンは問いかける。
「村で結婚式をやっているんだ、良かったら祝ってやってくれ」
「そうですか。それは皆でお祝いしないと」
 パトリックの言葉に賛同しつつ、シリンは兎の目を覗いた。
 その目のは炎。
 ただ死ぬためではない。
 生きていたという証明と、友と自分を受け入れた者を護る為の覚悟の灯火。
「でも……」
 精霊の狩人が兎の隣に並ぶ。
「あなたが上げるべきは、|本物《・・》の祝砲です」
「……だろうな」
 パトリックが苦笑する。
 村に戻るのは二人の前で祝砲を上げる時だろう。
「大丈夫、そのために私たちは来ました。」

 シリンの言葉がそれを裏付けた。

 たった一人の片足兎は、今、猟兵と共に戦場へ赴く。
 背中に背負った荷物は大分軽くなっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

グエン・ティホァ
※アドリブ歓迎、共闘可

WIZ判定

・行動
ユーベルコードで強化したレジスタンス達と
森で歩兵を迎え撃つ準備をする

・内容
レジスタンスに合流し一説ぶち上げて士気を高めつつ作戦を指示
行軍を遅らせるような罠を仕掛け(落とし穴、くくり罠など)
次の集団戦で有利に立ち回れるように手配する
準備の後、可能ならばレジスタンスは橋の所まで下がらせて
最終防衛ラインを任せる(という名目で避難させておく)

・セリフ
(ひとしきり罵った後)
それで貴様らはこのまま一思いに殺してくださいと
総員突撃でもかける気か!
それで貴様が楽になれたとしても
残された市民を守れると思っているのか!
兵士ならば最後まで任務を遂行するための行動をしろ!


イーブン・ノルスピッシュ
連携アドリブ歓迎
件の兎に声をかけよう

死にに行くつもりか
(肯定された場合は表情が険しくなる)
(|自分《悪霊》と同じになってほしくない)
足掻き方を違えるな
お前の手の中に残っているモノは数多い
自分で思うよりも、ずっとだ
……橋を落とす必要は無い
ここは任せてもらおう

森のレジスタンス部隊にも接触したい
対キャバリア戦や【地形を利用】するゲリラ戦は得意分野だ
役に立てるだろう
ブービートラップに使う高靭性ワイヤーを森の道に使う
引っ掛かれば周囲の木が倒れてバリケードに
歩兵が解除に近寄れば地雷が起爆する【罠】を張りたい
他にも【トンネル掘り】の応用で落とし穴等、幾つか罠を作りたい
手伝ってくれる人員がいればありがたいが


臥待・月紬
命と引き換えに大事な人を守れるなら。他に手立てがないなら。
その時はきっと、自分も同じ選択をするッス。

でも、今は『その時』じゃないッスよ。
自分らが来た以上、敵はここまで辿り着けないッスから!

ウサギさんの後を追って、猟兵の助太刀があることを伝えるッス。

その後は、森に展開しているレジスタンスに合流して陣地構築に協力するッス。
UCを【対戦車地雷】と【鉄条網】の敷設に集中使用。
塹壕を広げる猶予はなさそうだから、防衛火力を増強するッス。

同時に、設置した地雷と鉄条網に妖力を込めた「どろんはっぱ」を仕込んでおくッス。
思い通りにいくかは賭けッスけど。

あのウサギさんに吹かした分、出せる手は出し尽くすッス!



●共闘と作戦と冴えたやり方

 死ぬのは楽なことだと誰かが言った。
 そんなのは嘘だと笑ったこともあった。
 けど、実際に天秤に乗せると意外に軽い物だった。
 でも、死ぬために戦う気は無かった。

「貴様らが猪なのは良く分かった! だが貴様らの名前が着いた森が出来るだけだ!」
 グエン・ティホァ(|蛇紋石《サーペンタイン》・f39896)の最大限の敬意のこもった罵倒が響き渡る中、イーブン・ノルスピッシュ(|戦闘猟兵《Scorcher》・f40080)はブービートラップ用の高靭性ワイヤーを張り巡らしつつ、同じ兎との会話を思い出していた。

「死にに行くつもりか」
「生きるつもりさ」
 イーブンの問いにパトリックは笑って答えた。
 そうはならないことは二人とも分かっていた。
 そして|自分《悪霊》と同じになってほしくはないからこそ、過去の兎は片足兎を止めにかかるのだ。
「足掻き方を違えるな、お前の手の中に残っているモノは数多い」
 お前は違う。
「自分で思うよりも、ずっとだ」
『こっち側』に居てはいけない。
 だけども……。
「ご同類、味方が死んだときに『俺じゃなかった』と思ったことは無いかい? 私はあるよ。足が無くなった時『これでもう帰れる』と思ったからね」
 パトリックはラインを超えることを厭わない。
「貴方の言うとおりだ。私の手には数多くのモノが残ってしまった、いい意味でも悪い意味でも。だから行くんだ。死ぬためじゃない、最後まで生きて投げ出さないために」
 イーブンにはこれ以上食い止めることは出来ない。
 何故か、男の生き方が眩しくてならないのだ。
「でも、今は『その時』じゃないッスよ」
 何かを察し、臥待・月紬(超級新兵(自称)化け狸・f40122)が説得を変わる。
「命と引き換えに大事な人を守れるなら。他に手立てがないなら。その時はきっと、自分も同じ選択をするッス」
 狸の言葉に片足兎がそうだねと答える。
「でも、今は違うッス」
 だからこそ月紬は言い放つ。
「自分ら猟兵が助太刀しますから……あなた一人が死ぬ事は無いッス」
「そうだ。だから……橋を落とす必要は無い」
 イーブンが再び口を開く。
 ここが分岐点だと思った。
「ここは任せてもらおう」
 返ってくる答えは分かっていた。
「じゃあ、お願いするよ。私は最後の最後……その準備をするという事で良いかな?」
 強情な片足兎に対して狸が何かを言おうとしたが、過去の兎はそれを制した。

 彼を村に戻せば、別の後悔を引きずることになる。
 ならば……。

「いいんッスか?」
 レジスタンスと共に対戦車地雷と鉄条網の設置を行っている月紬がイーブンに問いかけた。
「橋に残しちゃって……二人とも待ってると思うッスよ」
「問題ないさ」
 同じようにレジスタンスと対人地雷を敷設しながら亡霊兎が答えた。
「どっちにしても大きな音は鳴る。そうなれば結婚式は遅れるか延期だ……あとはどうなる?」
 イーブンが問いかける。
 それが全て丸く収まる方法だと思ったのだから。
 正解は目の前にいる狸が教えてくれた。

 グエンの罵りという名の𠮟咤はまだ続く。
「それで貴様らはこのまま一思いに殺してくださいと総員突撃でもかける気か!」
「いえ、そうではなく」
 反論するかのようにレジスタンスの一人が声を出せば。
「立場を考えろ! 否定する口があるならまずイエスか、はい、ヤーのどれかを覚えろ」
「はい、そうではありません」
 レジスタンスは適応が速かった。
「現戦力と時間を考慮した結果であります。マム!」
「それで貴様が楽になれたとしても、残された市民を守れると思っているのか!」
 ある程度の情状を酌み、その上で蛇は事後の問題点を指摘する。
「兵士ならば最後まで任務を遂行するための行動をしろ!」
 そうだ、彼らは死んではいけない者達だ。
 自分達、猟兵が居ない時に村を護る存在なのだ。
「イエス、マム! では作戦の御教示を願います」
「よろしい。では猟兵の作戦を手伝った後、お前達は橋にて陣地構築、パトリックと共に最終防衛線を守れ! 兎は片足だ、車なり馬車なりも調達して置け!」
「一部、戦力を残した方がいいんじゃないか? 都合の良い手足はいるだろう」
 レジスタンスのリーダーを務める妖精階梯のネズミが見上げて提案した。
 その意味が分かるから、グエンも笑って答える。
「残念だが、戦場はユーベルコードの打ち合いになる、貴様らでは足手まといだ」
「了解した。お前達、アイアイ・マムだ!」
 勿論、グエンの作戦が後方守備と言う名の避難だとリーダーは分かっている。
 故に敢えて意見を具申することで動きやすくする『名分』を作り上げたのだ。

「「アイアイ・マム!!」」
「駆け足!」

 この懐かしい空気に満足しながらグエンはレジスタンスの行動を促した。
 惜しむらくはリーダーを務める小さなネズミに触れあいたかったところだが、立場と状況がそれを許さなかった。

 グエン・ティ・ホァが可愛いもの好きなのはここだけの話。

 鉄条網と地雷の上に月紬が葉を被せて擬装する。
 勿論、ただの葉ではない。
 妖力の困った術力増幅の符だ。
 臥待・月紬が作り上げた防衛線はユーベルコード。
 故に術力も作用する。
「思い通りにいくかは賭けッスけど」
「念には念……だな」
 月紬の言葉をイーブンが補う。
「あのウサギさんに吹かした分、出せる手は出し尽くすッス!」
「ああ、そうだ」
 狸の言葉に亡霊兎が答えた。
「|同点試合《イーブンゲーム》にはさせない――圧倒する」

 今は自分の名をかけたジョークすら必要ない。
 それを出来るものが完成しつつあるのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロウガ・イスルギ
アドリブ・連携歓迎

正体は隠して接触しよう、運び屋件情報屋とでもしとくか
馴れ馴れしい位の態度で話しかけるとしよう
【演技】【言いくるめ】フル活用だ

おやダンナ、結婚式の来賓がドコ行こうってんです?
当てましょうか?|糞共《ゾルダート》が近づいてきてるんでしょ?
そう離れてないトコまで……
いやいや、あっしは占い師じゃありやせん。レインっていうチンケな
運び屋でさあ。最近は「情報」も扱ってやすがね……。
よかったら送って行きますよ、怪しまれない車は用意してありまさあ
急いだ方がいいのは確か、ですよね?

パトリックの確保後ムゲンストライカーをトラックに偽装、
義足もマシな物に代えさせよう
レジスタンスに協力を申し出て出発


ヴィリー・フランツ
心情:未介入の場合、レジスタンスの命と引き換えに非戦闘員の退避は完了、今回の予知はだいぶマシな結果だな。
それじゃもう少し大衆向けの話に書き換えに行くか。

手段:弾薬や武器を満載した軍用大型トラックに乗って例の橋に向かう。
義足の兎に追い付いたらトラックに乗るかと誘ってみるか、流石に10kmをびっこ引いて歩くにゃキツい距離だ。

道中は雑談しながらだな、手持ちの煙草でも吸うか?と勧める。
内容も迎撃地点の橋周辺、川幅や深さ、道幅の広さ等の情報を聞く。
後は結婚式に参加出来ずに悔いは無いのかと話してみる、今回は俺以外にも援兵はいてな、後は任せても大丈夫だぜ、その足を見てこれ以上戦えとは誰も言わんだろ。



●そして戦場へ

 片足の兎だって困ることがある。

「どっちに乗ればいいんだ?」
 同行と移送の申し出を行ったものは二名。
 どちらもトラックだった。

「おやダンナ、結婚式の来賓がドコ行こうってんです?」
 ロウガ・イスルギ(|白朧牙我《虎》・f00846)がトラックで並走し、パトリック達へと呼び掛けた。
「襟付きのシャツを忘れてね、取りに戻っている最中だ」
「冗談はよしましょうや」
 ロウガ自身も傭兵だ、兎の言っている意味も分かる。
「ここは本音でいきましょう。|糞共《ゾルダート》が近づいてきてるんでしょ? そう離れてないトコまで……」
「やはり、分かるかい?」
 パトリックの言葉にロウガも肩を竦める。
 彼と同行する猟兵だっているのだから。
「分かりますよ。あっしはレインっていうチンケな運び屋でさあ。最近は『情報』も扱ってやすがね……。よかったら送って行きますよ、急いだ方がいいのは確か、ですよね?」
 敢えて素性を隠すロウガに対して頷こうと思った時、もう一台トラックがやって来た。
「乗ってくかい? 武器弾薬もつけておくぜ」
 ヴィリー・フランツ(スペースノイドの傭兵・f27848)の言葉に片足の兎は頭を掻くしかなかった。

「で、どっちに乗ればいいんだ?」

 共に歩く猟兵達は困った彼を見守るだけ。

「煙草でも吸うか?」
「混ぜ物はしてないよな?」
 ヴィリーと彼が運転するトラックに乗ったパトリックが会話を交わし、紙巻を受け取る。
 武器弾薬がある以上、スムーズにレジスタンスに渡すためにパトリックが確かめる必要があった。
 故に片足の兎は傭兵の車に乗り。
 他の猟兵達は情報屋の方へと乗った。
「これがまた吸えることになるとは思わなかったよ」
 猟兵の援助に感謝する兎。
「そう思うなら、少しは橋の周りの状況を教えてくれないか? 橋一つ落とすだけで時間を稼げるって事は相当に広いだろ?」
「川幅は10mってところだな」
 ヴィリーの意図を察したパトリックが答えを返す。
「深さは?」
「銃を持っているならバンザイしないと濡れてしばらくは乾かさないとならん」
 傭兵の頭の中で川の情景が浮かんだ。
 渡渉には時間を要する類だ、潜入ならともかく部隊を進軍させるのには相性が悪い。
「あとは道幅と橋の周りだな」
「道幅は普通だ、トラック一台が通れる程度。今日は晴れているから路面も硬い。問題は……」
 質問に答えつつ、片足の兎は窓の外を見た。
「森を抜ければ、平原と畑……キャバリアや戦車、砲が並べられるって事か」
 その視線の向こうを見たヴィリー・フランツが答えを導き出すとパトリックが頷く。

 ――未介入の場合、レジスタンスの命と引き換えに非戦闘員の退避は完了、今回の予知はだいぶマシな結果なのはそういう事か。

 ヴィリーが思考する。
 少なくともパトリックが猟兵と共にいた理由が理解できた。
 片足兎が引き返せば、橋がどうなるか分からない。
 猟兵が意図を組んで橋を落とす算段を着けるならば別だろうが、自分達なら別の方法を考えつく。
 ……だから不安なのだ。
 最後の防衛線だからこそ、自分で見守りたいのだ。

「……結婚式に参加出来ずに悔いは無いのか?」
 分かってはいるが傭兵が問いかけてみた。
「最初は私もそれを考えたし、どうしようもないと思った」
「今回は俺以外にも援兵はいてな、後は任せても大丈夫だぜ、その足を見てこれ以上戦えとは誰も言わんだろ」
 パトリックの呟きに対して、ヴィリーが言葉を続ける。
「貴方達が代わりに戦っても激しく音は鳴るから結婚式は延期か遅れる。なら、参加は出来るって事だろ?」
「違いないな」
 片足兎の答えに傭兵がアクセルを踏んだ。

 パトリックには知らせてもらわなければならない。
 自分達の勝利と村と……彼自身の無事を。 
 同じようにロウガのトラックも加速を始める。

 トラックは走る――戦場へと。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『突撃歩兵』

POW   :    グラナーテ!
【対人柄付手榴弾、対戦車集束手榴弾、火炎瓶】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    アタッケ!
【銃剣による刺突】【自身の爪や塹壕スコップによる斬撃】【取っ組み合いからの殴り合い】で攻撃し、ひとつでもダメージを与えれば再攻撃できる(何度でも可/対象変更も可)。
WIZ   :    アングリフ!
【着剣した騎兵銃を撃ちながら銃剣突撃による】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【砲兵隊による迎撃を阻害する突撃支援砲撃】の協力があれば威力が倍増する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●遭遇、そして展開

 ゾルダートの部隊が森に差し掛かる。

 勇敢さには定評があるが、そのまま真っ直ぐ進むような集団ではない。
 指揮官は獰猛すぎる歩兵の中からさらに獰猛な兵士達と手綱の扱いに慣れた軍曹を選び、偵察部隊を編成。斥候に向かわせて結果を待つ。

「道路の真ん中に防御拠点だと?」
「森にも罠を張り巡らせており、進軍には時間がかかるとの報告です」
 副官の言葉に渋面を作り、指揮官は紙巻を咥えた。
「分隊一つ、半壊と引きかえにそれか……」
「何も持ち帰らないだけ、よろしいでしょう? で、いかがします?」
 副官を務める曹長は部隊長の煙草に火を着け、指示を仰ぐ。
「往来の真ん中に建築物を建てるのはユーベルコード使いだろう? |猟兵《オブリビオン殺し》だ、グレテル」
「突撃をかけますか? 隊長?」
 グレテルと呼ばれた副官がまず案を述べる。
「全員、勲章がもらえるぞ。迫撃砲分隊は残ってるな?」
 指揮官が苦笑しつつ自軍の状況を確認する。
「弾薬多めに担がせて、後方へ待機させています。ほっとくと突撃しますからね」
「尖兵隊を同行させて防御拠点を発見次第、砲撃させろ。第二、第三部隊は左右から森へ進軍。戦端は各部隊長に判断、弱いところを見つけ次第食い破れ――浸透戦術だ」
 副官の軽口を受け流し部隊長は仕事をする。
「各指揮官を集めろ、伝達が終了次第、行動開始だ。目的は分かってるな?」
「部隊長殿に出来るだけ多く歩兵を伴わせて森を突破させること」
 満点の回答を得た指揮官は煙草を吐き捨て、ブーツで踏み消した。

 幾重にも張り巡らされた罠の中、兵士達は進んで行く。
 この中の誰が生き残るかは考えていない。
 自分達は戦争が出来て、指揮官はそれをさせてくれる。
 そして部隊長は彼等が死ぬ事を分かりながらも作戦を指揮する。

 祖国たるゾルダートグラートは英雄を求め、兵士達に成果を求める。

 勇気と蛮性を兼ね備えた者達に報いるには彼らに充実した戦争を与えるのみ。
 指揮官は彼らに英雄と言う名を授けるため、共に地獄を歩くのだ。

 ――かくして作戦を受けた部隊は散開する。
 一つは防御拠点に対し迫撃砲の支援の中飛びこむ尖兵部隊。
 一つは森の中へ侵入し罠を掻い潜りながら敵を蹴散らしにかかる第二部隊と第三部隊。
 そしてもう一つは各部隊が見つけた防御の弱い個所へ飛びこまんとする指揮官が率いる本部部隊。

 誰がどれを狙うかは個人の自由。
 だが、村を狙うゾルダートにとって歩兵が必要なのは確かだ。
 故に壊滅に追い込まねばならない。
 この森こそが狩場。
 全ての歩兵を大木の肥料に変えるべく、猟兵は動かなければならない。
東・よるは
【狼と桜】
ええ、分かりやすく敵ですね。
見えやすいのは助かります。

先ずは尖兵部隊、お覚悟を!

そしてラウラちゃんのUCも、すごく助かるものです。
森の外縁部にて、ラウラちゃんのUC発動を確認次第私も閃夜を抜いてジャンプ、空中機動で敵を翻弄しつつ撃ち漏らしを斬っていきます。
こうして前に出ればラウラちゃんが発見されるリスクも減らせるというもの。

そして、UCにより斬撃波も残しつつさらに手数を重ねて行きます。
迫撃砲の発見やわたくしの死角はラウラちゃんにお任せしてしまい、向こうの攻撃の類は武器受けで防御するか、戦闘知識を活かしてかわしていけばいい。

護るべき生命の為、此処より先は立ち入らせはしないっ!


ラウラ・シュトラウス
【狼と桜】

敵がやってきたようだ。
前哨戦みたいなものだけど、徹底的に捻り潰そう。

森の外縁部で尖兵達を迎え撃つよ。
まずは[迷彩]で木陰に隠れて”Gungnir”のスコープ越しに索敵をする。特に迫撃砲は厄介だから発見したい。索敵を終えたら《Air Support》で戦場全体に爆撃だ。
迫撃砲を発見してたら、座標を送って更に打撃を与えよう。

多少抜けてくる敵もいると思うし、残りはよるはと一緒に掃討するよ。
[精神集中]して[スナイパー]技術を以って敵を確実に狙撃、よるはの死角をカバーしつつ倒していく。
時には[援護射撃]でMGLの爆撃をお見舞いしてもいいね。

|戦場《ここ》に足を踏み入れたことを後悔させてやる。



●開戦

 戦いの始まりは一発の銃声から。
 最初に吹き飛んだのは森へ進軍しようとした迫撃砲分隊の一体。
「散開……いや、突撃! 総員森の中へ!」
 前を進軍していた尖兵隊の隊長の号令一下、まず尖兵が道沿いの木々の中を走り、分隊がそれに続く。
 先頭を走る突撃歩兵の役目は防御拠点の攻略。
 狙撃は厄介だがそれ以上の速度で進軍すれば迫撃砲分隊の犠牲の元、いち早く陣地へ飛びこめる。
 それに迫撃砲分隊にも分隊を一つ置いている。
 勿論護衛ではない、狙撃兵を見つけ次第牙を剥く獣だ。

 ――前哨戦みたいなものだけど、徹底的に捻り潰そう。

 ラウラ・シュトラウスは対物ライフルのボルトを引き、排莢を済ませると次の行動へ移る。
 できれば外縁部で事を済ませたがったが、既に敵は作戦行動を開始している。
 このまま狙撃を続ける間に他の部隊が森へ突入を計るだろうし、指揮官のガトリング砲が厄介だった。
 あれは今用意しているユーベルコードと相性が悪い。
 それにガトリングで動きを止められた隙に迫撃砲が設置されたら森に砲弾の雨が降る。
 誘い込む方が利口であった。

 一方でオブリビオンも道路を真っ直ぐ歩く馬鹿はいない。
 犠牲者を道標にラウラに迫ることを選び、血祭りに上げることを優先する。
 それが分かっている|狼《ルプス》だからこそ、ここでユーベルコードの火蓋を切るのだ。
 森の上を大型のAIドローンが飛翔する。
 地上部隊を手っ取り早く叩く手段は決まっている――空爆であった。

 |Air Support《エア・サポート》

 まず絶え間なき爆撃が森を支配し、全部隊の足を遅らせた。
「……好都合だ」
 けれど、その中でも尖兵部隊の隊長だけは笑っている。
「全軍駆け足! 口は開けていろよ!」
「あの空飛ぶやつは?」
 部下が進言する。
「どうも迫撃砲を壊したいみたいだ。なら全員走った方が良い、木々が屋根になるし、あいつらが貧乏くじを引いてもらっている間に突破を図る」
 最初の狙撃、相手の嫌がる物。
 必然と答えは見つかる。
 あとは命と手足をどう使うかにかかって居るだけなのだ。
 少なくとも尖兵隊に勇気の不足は無い。
 だからこそ頭の切れるやつが隊を率いるのだ――自分の部隊を存分に暴れさせるために。

 だからこそ、森に居るのだ。

「ええ、分かりやすく敵ですね。見えやすいのは助かります」
 ――東・よるはが!
「先ずは尖兵部隊、お覚悟を!」
 霊刀片手によるはが舞った。

「|Attacke《攻撃開始》!!」
 尖兵隊長の号令の元、銃剣を取り付けた騎兵銃を槍の如く構えて兵士が走る。
 だが桜は舞う者、決して大地を歩くことは無い。
 飛翔するが如き体術より繰り出された霊刀閃夜の一撃がオブリビオンのヘルメットを切断し守られていたはずの内容物を赤と共に野に零させた。
「おのれ!」
 着地したよるはを狙って兵士達が殺到する。
 ある者は銃剣、ある者はカービンそのものを棍棒代わりに振り上げる。
「遅いですよ」
 桜の肢が舞う。
 直後、空気が割れる音が響き、オブリビオン達は吹き飛んだ。

 |クレセント・スラッシャー《三日月の牙が空気を切り裂いたのだ》

 そして衝撃波に合わせるようにまた一体、兵士の上半身が吹き飛ぶ。
 ラウラの持つ対物ライフルによる狙撃だった。

「護るべき生命の為、此処より先は立ち入らせはしないっ!」
 東・よるはが森で戦ってくれるのが心強い。
 軍隊相手なら、平原よりも木々の隙間を舞うように戦う方が相性が良いのだから。
 斬撃波を足場に宙返りを見せた桜の精が兵士の背後を取り延髄に刀を突きさす。
 そこへとスコップを振り回す兵士とそれに続く獰猛な集団。
 だがそれは叶わない。
 次々と発射されたグレネードランチャーが集団に放り込まれた身体。
 爆風と榴弾の破片、そして吹き飛ばなかった木々に反射する衝撃波。

「|戦場《ここ》に足を踏み入れたことを後悔させてやる」
 ラウラが呟く。
 だが後悔する者は居ないと自身も思っていた。

 そんな者はみんな骸となって木々に栄養を捧げるのだから……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロウガ・イスルギ
アドリブ・連携歓迎

あれ?これって後ろの迫撃砲片付けとくと
かなり難易度下がらね?やってみる価値はありそうだ!

【迷彩】【ジャミング】したトラックで近づいて迫撃砲部隊の
真ん中に乗り付けてやろう
迷彩解けばいきなり出現したように見えるだろ、まずは混乱させて、と

|糞共《ゾルダートの皆さん》へ荷物のお届けでさあ!
え?間違い?そんなハズは……えーっと
お届け先は……アンタらの死に場所。
お届け物は……「敗北」と「絶望」でさあ!間違いありやせん!

ムゲンストライカーをトラックから黒のオープンスポーツカーに戻し
UC超鋼砕波で迫撃砲を片っ端から破壊
攻撃は【残像】【運転】で躱す

尖兵を銃撃と轢き逃げで引っ掻き回し殲滅を狙おう


グエン・ティホァ
※アドリブ歓迎、共闘希望

WIZ判定

・行動
罠を張った森の中で樹上から視界を広くとって
敵の進攻を妨害しながら味方の支援をする

・戦闘
侵攻してくる敵歩兵の騎兵銃と後方の砲兵隊の迫撃砲を
【蛇髪の女王】で石化して無力化、敵UCの効果を著しく減衰させる

・セリフ
(戦闘前)
「はじまりの猟兵」から伝授されたユーベルコードの力を
十二分に発揮することがこれからの戦いには必要だ……
だから私はやる、やって見せる
自己を拡大解釈し、ただ出来ると信じる事
そう、まさに|赤子の手をひねるが如く《taking candy from a baby》だ

・UC
ゆくぞ【蛇髪の女王】! カッ!
(髪を蛇のようにうねらせながら対象を睨み付ける)


ティオレンシア・シーディア
うーん王道かつ堅実で常識的な部隊運用。「寡兵が一番怖いのは正攻法」ってのを実によく解ってるわねぇ。

近代戦において砲兵はまさしく「戦場の女神」――放っておくわけにはいかないわよねぇ。
|ラグ《幻影》と|摩利支天印《陽炎》で光学○迷彩を展開、ミッドナイトレースに○騎乗してテイクオフ。ミッドナイトレース・流紋・マルガリータをリンクさせて高高度から急襲○爆撃仕掛けましょ。流石にそっちも「空中に突撃」なんて芸当は無理でしょぉ?
どの程度対空防御してるか知らないけれど、流紋で射線〇見切ってマルガリータが出力するんだもの、盲撃ちじゃ当たってあげられないわぁ。
せっかく作った防衛陣地だもの、有効活用しないとねぇ?


ユキト・エルクード
(アドリブ、絡み、連携歓迎)
ハンティング気分でここまで来たんだろうが残念だったな。

・行動
優先目標は尖兵部隊を支援する迫撃砲分隊。
戦場を移動する際は木々の高く葉が鬱蒼と茂った所を跳び、活性化されている技能を駆使して迅速かつ悟られぬよう行動。
標的の位置を把握したらUC【神火分霊葬送陣】で召喚した分霊を隠匿しつつ待機。
開戦し、敵方が砲撃を開始しようとしたタイミングを見計らって分霊を投下。 疑似的な空爆を行い砲撃陣地を集まった人員ごと爆破する。

陣地破壊後は爆発し続ける分霊を尖兵部隊へ突撃させつつ、本体である自分は撤退。
万一、発見された際には手近な相手を爆破しつつUC[手裏剣投げ]で牽制しながら撤退。



●電撃戦

 爆撃が止み、遅れて迫撃砲分隊が行動を開始する。
 戦力は減耗したが尖兵隊長が一分隊つけてくれたのが幸いした。
 迫撃砲部隊のリーダーは尖兵達にも砲と弾丸を持たせた。
 迫撃砲の優位点はいくつかあるが、一番の利点は『歩兵が使える砲』であること。
 尖兵隊長は貧乏くじを引くと分かっていて、敢えて人員を回し、分隊長はそれを効率良く利用する。
 故に何度も叩く必要があった。

「うーん王道かつ堅実で常識的な部隊運用」
 ティオレンシア・シーディアが防御陣地の向こうで敵兵の動きに感心の声を漏らした。
 ちなみに尖兵部隊はもう到達して陣地の破壊にかかっている。
「『寡兵が一番怖いのは正攻法』ってのを実によく解ってるわねぇ」
「でもさ」
 ロウガ・イスルギが戦場の向こう側に布陣する集団を指差す。
「これって後ろの迫撃砲片付けとくと、かなり難易度下がらね?」
「そうよぉ」
 返ってくるのは甘ったるいヴォイス。
「近代戦において砲兵はまさしく『戦場の女神』――放っておくわけにはいかないわよねぇ」
「じゃあ、やってみる価値はありそうだな!」
 意気揚々とトラックに乗り込もうとしたロウガの前に立った糸目の女は悪戯っぽい笑みと共に立ちはだかり。
「まだよぉ」
 虎の口元を人差し指で軽く押した。
「二人ほど、居ないの分かってるかしらぁ?」
 ティオレンシアの言葉にロウガは周辺を見まわした。
「俺達の出番はまだまだか」
「まずはフットワークの軽い人達が動いてから、あたし達の出番はその後よぉ」
 糸目の女の視線がトラックの横にあるバイク型UFO――ミッドナイトレースに注がれた。

「ハンティング気分でここまで来たんだろうが残念だったな」
 木々を跳び、枝から枝を渡りながらユキト・エルクードが呟く。
 視線にはもう迫撃砲分隊が見えていた。
「『はじまりの猟兵』から伝授されたユーベルコードの力を十二分に発揮することがこれからの戦いには必要だ……」
 後ろから着いてきたグエン・ティホァの声は硬い。
「だから私はやる、やって見せる」
 尖兵部隊が銃を撃ち手榴弾を投げる中、後方では木々を遮蔽物にして迫撃砲分隊が準備を開始していた。
「自己を拡大解釈し、ただ出来ると信じる事そう、まさに|赤子の手をひねるが如く《taking candy from a baby》だ」
「そう緊張するな」
 ユキトがグエンの肩を叩き、迫撃砲に釘付けになった蛇の視野を戻してやった。
「俺達は俺達の仕事をする――こういう時の為にいるんだろ?」
「ええ、そうでした」
 少しだけ息を吐き、自分を取り戻したグエンに対し夜警は少しだけ表情を緩めた。
「さて、俺はこっちの流儀は詳しくない。こういう時はどうやるんだ?」
 経験則からユキトは蛇に問いかける。
 言葉にさせることで目標を再確認させるためだ。
「それは勿論――」
 ブラックマンバの視線が再び迫撃砲へ注がれる。
「敵の嫌がる事を徹底的にやるだけ――断固粉砕です」
 彼女は期待に応え。
「そうだな、俺も同意見だ」
 夜警もその意志を尊重した。

 尖兵隊が奮戦している間に迫撃砲の準備が完了する。
 目標に対して必要な仰角は分隊長が計算し、必要な人員を割り出し、残った尖兵には銃を構えさせて護衛と哨戒を任せる。
 おそらく自分達は生きて帰れないだろう。
 迫撃砲部隊のリーダーは自覚している。
 だが、それでも生き残るための警戒は怠ることは無い。
 部下に大量の砲弾を撃たせ、その音楽を聞かせるための努力を惜しまないからこそ分隊を率いられるのだから。
 しかし、その努力は水泡に帰す。

「――ゆくぞ!」
 グエンの髪が蛇のようにうねると虹彩は縦に長くなり、邪視が放たれる。

 |蛇髪の女王《メドゥーサ》

 グエン・ティ・ホァが授かったはじまりの猟兵のユーベルコード。
 その視線が注がれた砲が、銃が、弾が、石と変わりただの重りへと変わる。
「いまだ!」
 タイミングを見計らっていたユキトが分霊を投下した。
 それは疑似的な空爆となって降り注ぎ、分隊を混乱に陥れる。
 その名こそが――

 |神火分霊葬送陣《ジンカブンレイソウソウジン》

 霊峰天舞アマツカグラの龍脈より召喚された神火の分霊。
 それによる自爆突撃は連鎖的な爆発を起こし戦場を地獄へ変える。
 そこへ――地と空から何かが奔った。

「ゴールドシーン」
 シトリンの付いたペンの形をした鉱物生命体を空に投げる。
 今回はタスクが多い。
 自分でやるよりも――頼った方が良い。

 |मᛚ《陽炎は覆いつくし幻影を空を描く》

 ルーンと真言二つの文字を通り抜けたミッドナイトレースが急上昇。
 空高く飛び上がると急降下で爆発の続く陣地へと飛びこむ。
「一気にブチ抜くわよぉ。マルガリータ、解析よろしくねぇ?『はぁい、ますたぁ』」
 バイク型UFOのウィングレットが空を切り裂き、甲高い音を鳴らす。
 それは死神の笛に等しい何か。
 その間にもType-C:F-A・BSs人工知能『マルガリータ』が目標を解析し、視覚拡張型ヘッドマウンテッドディスプレイ『流紋』に投影する。
 後はスイッチを押し、同時にミッドナイトレースを急上昇させれば――精密な急降下爆撃が迫撃砲分隊へと襲い掛かるだけ。

 |轢殺・揺走《ガンパレード・フリッカー》

「砲が……爆撃されている」
 分隊長の背筋が凍る。
 この後に来るものが何か分かっているからだ。
「使える砲は無いか!?」
 リーダーの怒号ともいえる声に応える者は居ない。
 ある者は骸となり、ある者は使えない銃を捨て円匙を組み立てている。
「銃か手榴弾を用意しろ! 次が来る……急げ!」
 だが分隊長の言葉は遅かった。
 防御陣地の門が開き、何かが飛びこんできたのだから。
 それは迫撃分隊長が恐れていた物――機動兵器だった。

 爆撃からの機動戦術、その名は電撃戦。

「|糞共《ゾルダートの皆さん》へ荷物のお届けでさあ!」
 戦場に飛びこんだロウガのトラックがオープンスポーツカーへと変わっていく。
「え? 間違い? そんなハズは……えーっと」
 立ちはだかる尖兵達を吹き飛ばし、迫撃砲分隊を目指し虎の操るムゲンストライカーが疾走する。
「お届け先は……アンタらの死に場所」
 これからやることを十全にこなすには速度が必要なのだ。
「お届け物は……「敗北」と「絶望」でさあ! 間違いありやせん!」
 ゼロ発進でも可能だが、戦場で今必要なのは速度。
 全てを吹き飛ばすには質量と破壊力に速度を乗算するのが確実なのだから。
 つまりは――吶喊!

 |超鋼砕破《デモリションドライバー》

 体当たりが壊乱に追い込まれた迫撃砲分隊に飛びこみ、分隊は砲と指揮官を失った。

 壊乱した迫撃砲分隊に残った尖兵が武器を持ってロウガに取り付かんとすれば、その背中へユキトの手裏剣が突き刺さる。
「断固粉砕なのでな」
 戦場を回り込もうとすれば罠に阻まれ、動けなくなったところへグエンが介錯与える。
「…………」
「おっと、荷物に受け取りのサインを忘れてますぜ」
 尖兵部隊への合流を試みようとした兵士は虎に轢き殺された。
「せっかく作った防衛陣地だもの、有効活用しないとねぇ?」
 防御陣地へ戻ったティオレンシアが呟くころには尖兵部隊の勢いが落ちていく。

 ――この戦場の終わりがそろそろ訪れようとしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

臥待・月紬
※連携アドリブ歓迎

来たッスね。

トラップの上に被せた葉を触媒に【結界術】を使用し、【索敵】結界を展開。
防衛線に接近した敵の種類と規模を探知して、味方に共有するッス。
キャバリア等、脅威度の高い目標を最優先にマークしたいところッス。

同時に、葉を触媒にUCも発動。
仕掛けたトラップを式神化して、探知に掛かった敵を自動で攻撃させるッス。
虫みたいな脚を生やして跳びかかってくる対戦車地雷に、歩兵を絡めとって締め上げる鉄条網。
セオリーが通用しない魑魅魍魎トラップで、盛大に歓迎するッス!

この防衛線は元々、レジスタンスの皆の覚悟の賜物。
信じて預けてくれた彼らに報いるためにも、誰一人通すわけにはいかないッスよ!



●防衛線

 背後の情報はすぐに分かった。
「電撃戦……だと?」
 尖兵隊長の顔が歪む。
 |猟兵《オブリビオン殺し》の戦い方はスタンドアローンが中心と聞いていたのに高度な作戦行動で迫撃砲分隊が壊滅した。
「有能な指揮官が……いや違うな、あっちには斥候がいなかった。となると……」
 何らかの方法でこちらの手がバレた上で、個々人の技量が噛み合せたのだ。
 だとしたら――。
「撤退だ、態勢を立て直す!」
「無理です!」
 危険を悟った隊長の言葉に対して兵士が悲鳴を上げた。
「部隊が鉄条網に囲まれています!」
 遅かった。
 尖兵部隊はもう罠にはまっていたのだった。

「来たッスね」
 鉄条網をコントロールしつつ臥待・月紬が敵の情報を分析する。
 防御陣地までに撒かれた葉がセンサー代わり、この戦場は月紬の結界の中なのだ。
 この情報があったが故に迫撃砲部隊の位置は逐一伝わっていた。
「それじゃ、千変万化と行くッスよ!」
 葉を触媒に狸はユーベルコードを紡ぐ。
 その名は――

 |式神『付喪御霊』《ツクモミタマ》

 葉を通して式神を憑依された罠が生きたように動き出す。
 まず鉄条網が蛇が如く走り、部隊を包囲した。
 無理矢理抜けようと工具を持ち出した兵士が有刺鉄線に絡み取られ、落とし穴に引きずり落とされる。
 悲鳴が響いた。
 落とし穴には釘が打ちつけられた板が敷かれている。
 死なずとも汚泥にまみれた釘が刺されば、泥は毒に変わる。
 括り罠が動き出し獲物を捕らえると兵士を吊り上げ、合わせるように地雷が飛び上がる。
 足を吹き飛ばすものではない、ゾルダートグラードも使う跳躍地雷だ。
 爆発と共にはじけ飛ぶ鉄球がオブリビオンに孔を穿ち、死をもたらす。
 だが、それだけでは終わることはない。
 対戦車地雷が脚を生やして蟲のように走って来るのだ。
 通常、対戦車地雷は人が踏んでも爆発しにくいが――式神が憑依しているなら別だ。
 戦車を破壊できる爆薬量を兵士に向ければ、生きて帰る事は無い……。

「――全滅か」
 爆発の中、尖兵隊長が独り走る。
 最早作戦は果たせない、出来ることは将校として部下に対して責任を取ることだが、今は自分のみ。
 ならば……。
「|Attacke《攻撃開始》!!」
 あの猟兵だけでも血祭りに上げるのみ!
「この防衛線は元々、レジスタンスの皆の覚悟の賜物」
 月紬が立ち向かわんとサブマシンガンを構える。
「信じて預けてくれた彼らに報いるためにも、誰一人通すわけにはいかないッスよ!」
 引鉄と吐き出される銃弾の反動だけがやけに重かった。
 それは命を奪うという行為の代償なのだろう。

 尖兵部隊長の骸を見下ろす臥待・月紬。
 その手に伝わる引鉄の重さはまだ消えない……。

成功 🔵​🔵​🔴​

イーブン・ノルスピッシュ
連携アドリブ
中々場馴れした部隊のようだが
罠に嵌まらせる方法は幾らでもある

左右に展開した部隊のうち、手が足りない方を優先しよう
UC発動
|改造銃《フィフティー・フィフティー》を乱射しながら敵前に躍り出る
初撃が当たれば良し
避けたり、遮蔽を取る頭のある輩には炎の【オーラ防御】を纏って接近戦を仕掛けよう
目前の|脅威《猟兵》からは目を逸らせまいよ
術中に墜ちたなら、仕掛けられた【罠】の方へ【ダッシュ】
無論振り切らない程度の速度でな
冷静さを欠かせる事で確実に罠に嵌めてやる
足の止まった者から、俺の体から噴き出す炎に巻いて【焼却】しよう
装弾の火薬なり、可燃物はたっぷり持っているんだろう?
さぞ良く燃える事だろうな


ヴィリー・フランツ
wiz
目標:迂回する第二・第三部隊を迎撃

心情:相手は命の使い所を心得てるようだ。

手段:レジスタンスは防御陣地に配置、弾薬は俺のトラックの予備弾薬から適時補充、戦闘糧食も積んであるしブルパップ式狙撃銃も好きに使ってくれ。

迂回部隊は散兵戦になる可能性もある、その場合でも約三個中隊規模である【宇宙海兵強襲部隊】を小隊規模で広範囲に展開する事で対応出来る筈だ。

念のため1人レジスタンスを水先案内人として随伴。
小銃での射撃、支援砲撃で煙幕を張られたら、白兵装備に持ち替え迎え撃つ事を試みる、似たような兵種でな、白兵戦では遅れはとらんよ。

暫定的な作戦はこんな感じだ、他の猟兵の配置具合で適時迎撃箇所を変更する



●兵士達よ

 尖兵部隊はここに駆逐された。
 だが戦力はまだ残っている。
 森の中を第二、第三の部隊が進軍しているのだ。
 片方は全員が時間をかけて罠を排除し。
 もう片方は経験ある兵士が先行して罠を見つけると排除せず出来るだけ速く森を抜けようとしていた。

「レジスタンスを残したのか?」
 イーブン・ノルスピッシュが渋面を浮かべた。
 彼らを後方に行かせる方針を示した他の猟兵の立場もある。
 理由は分かってはいるが、ここで確認しておかないと次に関わるだろう。
「敵は数が多い、念のため防御陣地にも数名人員を回した方が良い。それ以上に俺達には土地勘がない」
 ヴィリー・フランツが答えを返す。
「それに、彼らにも俺達が勝つ姿を見せた方が今後に役立つ」
「……確かに」
 ヴィリーが持ってきたトラックから搬出される弾薬は防御陣地に残ったレジスタンスが配分を行う中、イーブンも同意する。

 個人行動が主体な猟兵故、行動の齟齬はある。
「レジスタンスにも勝利を渡しておかないと今後に関わるからな」
 だからこそ亡霊兎は意見交換を行う役割を演じたのだ。
 そうしないと誰かが死ぬ世界だからこそ。
「一人、水先案内人を借りる。相手は命の使い所を心得てる……鉄量で排除するしかない」
 傭兵がレジスタンスを一人引きつれ、戦場へ視線を走らせた後。
「そっちはどうする?」
 亡霊兎に問いかけた。
「中々場馴れした部隊のようだが罠に嵌まらせる方法は幾らでもある」
 イーブンが大口径の対戦車ライフルにパイルバンカーと擲弾発射器を括り付けたバカデカい改造銃片手に背中を向けた。
「手が足りない方を優先するよ」

 第二部隊隊長のベルンハルトは堅実だが生真面目な男だ。
 今回の命令を実行するためには時間ではなく数と判断した。
 それ以上に浸透作戦となれば、他の戦線を釘づける兵士が必要となる。
 故に部隊全軍にて時間をかけて罠の排除に乗り出していた。
 勿論、ヴィリー・フランツもそれが分かっていたからこそ、この戦場を選んだ。
「――隊長殿、アレを!?」
 部下の言葉にベルンハルトが空を見る。
「総員に伝達!」
 第二部隊の隊長が声を張り上げる。
「相手の展開が完成する前に前進し、戦線の突破を図れ!」
 作戦変更命令は当然だった。
 オブリビオンの部隊の視界には飛行する強襲揚陸挺から降りて来る兵士の姿が見えていたのだから。
 その数は三個中隊規模。
 第二部隊を撃破するには十分すぎる数なのだから。

 |宇宙海兵強襲部隊《スペースマリーンゴースト》

 ヴィリーが口にした鉄量とは彼ら幽霊部隊の事であった。

「走れ、走れ! 走れ!」
「罠は手榴弾で吹き飛ばせ!」
「動けない奴は置いていけ、速く突破するんだ!」
 オブリビオンの下士官が兵士に発破をかける。
 このままではただ死ぬだけ……戦争が出来ないのだ。
 だが全ては数によって粉砕される。
 無数のレーザーが森を貫き、音も無く過去は質量を失っていった。

 一方で悲鳴と怒号が響く戦場をヴィリーが走る。
「あんたなら、どのあたりに指揮官が居ると思う?」
 レジスタンスに問いかければ水先案内人は数秒考えて、あるポイントを指差した。

 そこだけ兵士の混乱が少ない――当たりだった。

 連れて来た海兵隊一個小隊にレジスタンスを預けて傭兵が動く。
 気配を察した第二部隊の隊長が銃剣をライフルに取り付ければ部下がそれに倣う。
「|突撃《anglyph》!」
 号令一下、第二部隊の残存がヴィリーへと襲い掛かる。
 だが先に火を吹くのは傭兵のブルパップ。
 火力の差――鉄量で上回るヴィリーの前に歩兵は倒れ、そして隊長の前には傭兵が立つ。
「元々似たような兵種でな」
 銃床でオブリビオンの頭を殴りつけた後。
「白兵戦では遅れはとらんよ」
 銃剣が第二部隊長ベルンハルトの喉笛を切り裂いた。

 同じ頃、一発の銃弾が木々を貫通し、その向こうに居る兵士の上半身を吹き飛ばす。
 イーブンの|改造銃《フィフティー・フィフティー》だ。
 対物用の弾頭を用いれば、木は邪魔にならない。
 次にスコップ片手に襲い掛かる兵士をパイルバンカーが貫いた。
 戦場の中で殺意が増していく。
 その中で先に動くのはイーブン。
 兎を追いかけるように兵士達が牙を剥きだしにして銃剣片手に追撃を開始した。

 ――おかしい。

 第三部隊隊長のフランクは追撃する部下の背中を見ながら引っかかるものを感じた。
 部隊の中で『臆病者』と呼ばれる彼は獰猛な兵士達に比べれても大人しい。
 だが戦闘が始まれば、一番に前に出て、一番に戦闘を終わらせる。
 臆病と恐怖を知り、それが狂気の発露となって一番の兵士になりうるが故、彼は部隊を率いている。
 森の中では速さを重視したのはこの戦場に留まることが死を意味すると判断したから。
 多少の犠牲は止む得ないが経験ある下士官の助言を信じ、彼らに脅威を排除させてから部隊を進めていった。
 それが一人の兎によって狂わされている。
 誰も彼もがバカでかい銃を持った獣欲階梯の尻を追いかけている。
「そういう事か……全員止まれ! 罠だ!」
 何かを見抜いた部隊長の声は虚しくも響くのみ、目の前で歯兵士達が次々と罠に嵌っていった。

 |カインの羨望《カイン・ヴァニティー》

 イーブンのユーベルコードがオブリビオンの復讐心を刺激させ、視野を狭めさせたのだ。
 手榴弾が跳ね上がり鉄球が兵士を呑み込み、括り罠が足を捕え、落とし穴に仕掛けた釘板が軍靴を貫きオブリビオンに悲鳴を上げさせた。
「装弾の火薬なり、可燃物はたっぷり持っているんだろう?」
 亡霊兎の身体から炎が噴き出す。
 それがユーベルコードか技能なのかは分からないが、一度死にそして戻ってきてから炎が消える事は無かった。
 朧気な記憶に唯一遺る復讐の炎が森を兵士と共に焼き尽くす。
「Gaaaaaaaaaaa」
 炎の中、咆哮が響く。
 部隊の中の一番の臆病者で、一番戦争に狂った男が銃剣片手に炎の中を走った来たのだ。
「殺す――お前は必ず殺――ぐぁっ!」
「悪いな」
 指揮官らしき男の腹にパイルバンカーをぶち込んでイーブンは答える。
「もう殺されたんでな」
 次に引鉄を引けば、第三部隊隊長のフランクの身は炎の中に放り込まれた。

 手榴弾や銃の火薬が引火し、小さな爆発が響き渡る。
 その中を亡霊兎はただ、進んでいた。

 ……自らの復讐とまだ引き返せる兎への羨望を胸に。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シリン・カービン
さあ、狩りの時間です。

大樹の梢で植物や風の精霊の声に耳を澄ませます。
森にとっての異物が入り込めば反応があるはず。
発見次第、樹上を駆け抜けます。

敵の部隊を精霊猟銃(複製)でそっと包囲。
銃声や枝葉を揺らして森に仕掛けられた罠に誘導。
足が止まったところで集中砲火を浴びせます。
囲みを抜けようとする敵は私が確実に狙い撃ち。
殲滅後は迅速に、音も立てず次の戦場へ向かいます。

自身の命を顧みぬ兵士の姿に渋面。
蛮勇に酔い、ただただ命を浪費することに何の価値があるものか。
どんなに獰猛な獣でも、戦いは自身の生、次の命のためなのに。
「彼には何としても祝砲を撃ちあげてもらわなければなりませんね」
その轟音は、未来への祝福。


シプラ・ムトナント
敵襲、ですね……まずは、パトリックさんに報告を。
「パトリックさん。わたしは今から、森方面の迎撃に回ります」
わたしは行きずりの羊ですが……貴方の思いと共に、戦わせてください。
新たな門出を邪魔する不埒者に、鉄槌を下してまいります。

それでは、わたしは第二・三部隊の対処に回ります。

木々に罠、ここは身を隠すにはうってつけです。
まずは息を潜めて、敵の接近を待ちます。
十分に引き付けてから、木陰から飛び出すように『近接射撃』を使用。
間合いさえ詰めてしまえば……わたしの方が、速い。

|散弾銃《レミー》による【零距離射撃】を行います。
至近距離では爆発物は自爆の元。弾の限り接近戦を続け、一人でも多くの撃破を。



●浸透

 尖兵も第二、第三の部隊も全滅した。
 だが一つだけ残った部隊があった。
 それは生き残った兵士を取りまとめ、一個小隊規模にまで膨れ上がっていた。

 ――木々の中に潜み、シプラ・ムトナントは戦う前の事を思い出す。

「パトリックさん。わたしは今から、森方面の迎撃に回ります」
「いっしょに行けなくて残念だよ」
 導火線を巻きよせながら片足の兎が答える。
 足が無い上に、彼にはもしもの仕事がある。
 最もシプラにはそれをさせる気は毛頭なかったが。
「わたしは行きずりの羊ですが……貴方の思いと共に、戦わせてください」
「確かに行きずりの羊だけれども、貴女は軍人だ。そうで在ろうとしている」
 パトリックが羊の纏う服装を見て答えを返す。
「私はレジスタンスだ……軍人ではないので敬礼は出来ないが勝利は祈っている」
 片足の兎が何とか身を起こすと上半身を傾けお辞儀でシプラを見送れば。
「新たな門出を邪魔する不埒者に、鉄槌を下してまいります」
 敬礼を以って衛生兵は意志を示した。

 木々が動き、集団が森の中を進む気配がシプラの意識を今に引き戻す。
 視線を上げれば、木の上にはシリン・カービン。
 ここは自然と生まれた最後の|狩場《キル・ゾーン》なのだ。

 先に動くのはシプラ。
 やってくる集団の数が予想より多い。
 指揮官だけではここまで出来ない。
 ――つまりは取りまとめを行った者が居る。
 そいつだけは排除しなくてはならない。
 視界の中に部隊が入り込んだ。
 指揮官と彼に従う経験豊かな下士官が一人、そして兵士達。
「……先任曹長」
 下士官の階級章を見て、羊は誰が取りまとめを行ったかを理解した。
 軍隊は士官と下士官、兵は明確に仕事が分かれている。
 部隊を指揮するのが士官なら、部隊に居る兵を取りまとめ運営し助言するのが下士官。
 シプラの視界に居るのはさしずめ『兵士の中の将軍』
 この部隊の要だ。

 狙いは決まった。
 後は確実にとらえるだけ。
 兵士たちの足音が伝わってくる。
 数名を先行させ、曹長は手勢と共に上官を守る位置にいる。
 だから兵士達が通り過ぎたタイミングを見計らってシプラは|指揮官《・・・》の前に飛びこんだ。
「隊長殿!」
 兵は戦い、生き残ることを考え。
 士官は部隊を率いて、勝利することを考える。
 ならば下士官は何をするか――部隊と兵を生き残らせることを考える。
 だからこそ先任曹長にして副官を務める男は散弾銃をその身に受けるのだ。
 部隊を存続させるために指揮官が必要なのだから。

 |近接射撃《クロスレンジショット》

 シプラの持つ|散弾銃《レミー》の鉄球は狙い通り部隊長を庇った曹長の肉を穿った。
「グレテル!」
 指揮官が叫ぶ。
「すみませんが一抜けです、隊長――お前達、隊長をお守りせよ!」
 副官は笑い、そして最後の指令を兵に伝えた。
 そこへ――大量の猟銃が火を吹いた。

 |ピクシー・シューター《精霊は引鉄を引く》

 シリンが作り上げ、潜ませた126丁の精霊猟銃。
 それが一斉に火を吹いたのだ。
 次々とやられていく兵士。
 生き残り、反撃を試みようとした兵士もまた狩人自身の銃によって眉間を貫かれる。
「彼には何としても祝砲を撃ちあげてもらわなければなりませんね」
 この銃声こそが未来への祝福とばかりにシリンは狙いを定めていく。
 指揮官を守る最後の兵を撃ち抜き、後は部隊長を殺めるのみ――このタイミングで曹長が立ち上がった。
「やらせんぞ、|猟兵《ユーベルコード使い》」
 収束手榴弾をピンを抜き、シプラに対して特攻を試みる。
 対戦車用に束ねた爆弾だ、この辺一帯は無事ではない――グレテルと呼ばれた男の背中の向こう側に居るオブリビオンを除いて。
「それは――こちらの台詞」
 シリンの独白と共に手榴弾が曹長の手から弾き飛ばされる。
 続くのは精霊猟銃たち。
 何発も信管を避けて擲弾を跳ね飛ばせば、それは遠くで爆発する。
「な――」
 呆然とするオブリビオン。
 そこへ羊が体当たりで身体ごと男を地面に叩きつければその顔面に散弾銃を押し付けた。
 水平二連のソードオフ――初陣の時にもらった宝物。
 もう一つの雷管をハンマーが叩けば轟音が鳴り響いた。

 戦いが終わり兵士達の骸を見下ろすシリン。
 普段の彼女からは珍しいほどの渋面を見せていた
「……蛮勇に酔い、ただただ命を浪費することに何の価値があるものなのでしょうか?」
 シリン・カービンは元は森から糧を得るハンターであった。
「どんなに獰猛な獣でも、戦いは自身の生、次の命のためなのに」
 糧を得るからこそ、獣が他の生き物を殺す理由も、自分達が獣を狩る理由も分かっていた。
「糧としての狩りを辞めてしまったからこそ、我々は戦っているのかもしれません」
 そんなシリンの言葉にシプラが答える。
「戦争とはそういう物だと、わたしは教わりました」
 生まれし時から戦いの続く世界に生きている羊にとって、レーションと言う食料が生まれ、獣たちが意志を文化を持った世界を歩くシプラも本当の答えは分からない。
「そして、わたし達は護る為に銃を取り――待ってください、パトリックさんが|わたし達を呼んでいます《メディックと叫びました》!」
 シプラの視線が森の向こう、橋へと注がれる。
「指揮官が橋へと到達したようです、キャバリアを伴って!」
「どうします?」
 シリンが問う。
 羊が情報を察知したのはおそらくは『始まりの猟兵』のユーベルコード。
 ならば先に動くことも可能では、と狩人は聞いているのだ。
「キャバリアがあるなら専門家が必要です。全員で行きましょう!」
 シリンは頷き、仲間を集めるためにその場を消える。
 シプラは|散弾銃《レミー》に弾丸を装填しながら、橋へと視線を巡らせた。

 浸透作戦は防いだ。
 手足たる歩兵は全てもぎ取った。
 後は頭を取るだけだ。
 それでも……森を走るシリンも皆を待つシプラも不安が消えることは無かった。

 戦いはまだ続くのだから……。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『クロスファイア・コマンダー』

POW   :    進軍命令
攻撃力に優れた【砲戦型パンツァーキャバリア部隊】、レベル×2体出現する【砲撃型機械兵士部隊】、治癒力を持つ【機械衛生兵部隊】のいずれかを召喚し、使役する。
SPD   :    焼却命令
【背中に装着された巨大ガトリング砲】から【無数の焼夷弾】を放ち、敵及び周辺地形を爆発炎上させる。寿命を削ると、威力と範囲を増加可能。
WIZ   :    殲滅命令
自身の【背中に装着された巨大ガトリング砲】を【殲滅砲火形態】に変形する。変形中は攻撃力・射程が3倍、移動力は0になる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は煙草・火花です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●渡渉

 森を抜けた指揮官はすぐに状況を確認する。
 橋の向こうに急ごしらえの防御陣地。
 時間がなかったのだろう。
 だが、危険なのは事実……ここは戦場で向こうに敵が陣地を作っているなら橋すら危険だ。
「点呼ぉ!」
 遮蔽物に隠れ、生き残った者を確認する。
 風の音、川のせせらぎ、遠くから伝わる敵兵の気配。
 それ以外は何もない。
「……全滅か。占領は難しくなるな」
 部隊指揮官が考えたのは歩兵を失ったことによる様々なリスクだった。
「だからと言って手ぶらでは奴らも浮かばれん」
 脳裏にはかつての部下の姿。
 もう昨日までに半分以上の面子が入れ替わり、そして今日、全てを失った。
 勲章一つでもつけてやらなければ、指揮官たる責任は負えない。
「…………」
 数度の呼吸。
「――やるか、私の戦争を」
 腹を決めた指揮官――クロスファイア・コマンダーは戦場へと飛び出した。

「……キャバリアで川を渡るだと!?」
 陣地の向こうでレジスタンスのリーダーは目を丸くした。
 川に展開されたキャバリア部隊が渡渉を開始したのだ。
「まずいことになりましたね」
 熊のレジスタンスが肩に乗っていた小さなリーダーの声をかけた。
「ああ、まずい。キャバリアは背が高い……こんなタコツボなら上から砲撃するだけで俺達をレーションっぽく焼いてくれるだろう」
「別の意味で不味そうですね」
 熊が軽口で返した、そうでもしないとやってられない。
「パトリックは?」
「もう橋の下です!」
 小さなネズミの問いに別のレジスタンスが答えると妖精階梯が眉をひそめた。
「くそったれ……早まるなよ!?」
 レジスタンスのリーダーに出来るのは祈る事と、ココから引鉄を引いて少しでも彼を生かす事だった。
 一度降りて、また戻ってきた馬鹿は地獄にも天国にも連れていけない。
 あの兎にはベッドで人生を終えるのがお似合いだ。

「本当に無駄足になったな」
 猟兵に言われた言葉が現実化し、片足の兎は笑みが止まらない。
 自暴自棄にはなっていない。
 最初だったら選択肢は一つだった、橋を爆破してレジスタンスを逃がす。
 だが、今は違う。
 おとぎ話を信じる時が来たのだから。
「メディーック!!」
 腹の底から天へと叫ぶ。
 見つかったってかまわない。
 これが最後の……いや、これからを生きるための一番の手段なのだから。

 ――m'aider

 助けを求める叫び。
 それは――。

「|猟兵《オブリビオン殺し》……か」

 届いた。
 キャバリアの肩に乗って渡河を試みようとした指揮官は再び大地を踏み、そしてパンツァーキャバリアを展開して待ち受ける。
 文字通り背水の陣を敷いて。

 最後の戦いがここに始まる。
シプラ・ムトナント
その呼び声に|メディック《わたし》は応えます。おとぎ話を、現実とするために。

戦場において、時に死とは名誉あるものです。
それでも。
"そして誰も死ななかった、めでたしめでたし"なんて、|幸せな結末《ハッピーエンド》に勝るものはないのですから……!

『催眠の羊眼』を使います。
指揮官は間違いなく優秀な軍人、魔眼の力を弾くに充分な精神力を持っているでしょう。
ですが、この眼の効力は無機物にも及びます。
そのガトリング砲……|少しの間《2分強》、|友好的に《撃てなく》なって頂きます。

後は、生まれた隙を突くのみ。
牽制として吸着手榴弾を【投擲】し、指揮官との距離を詰め……|散弾銃《レミー》で【零距離射撃】を。



●|英雄《死者》はもう要らない

 |短い外套《カプ》を翻して一人の羊が歩を進める。
「その呼び声に|メディック《わたし》は応えます」
「あの叫びはユーベルコードだったのか……|猟兵《ユーベルコード使い》」
 シプラ・ムトナントの姿にオブリビオンは忌々しいと言わんばかりに顔を歪めた。
「おとぎ話を、現実とするために」
「おとぎ話は暖かい暖炉の前で聞くものだ」
 シプラの言葉にクロスファイア・コマンダーが皮肉を返す。
「少なくとも|戦場《現実》は寒すぎる、みんな死んで冷たくなるのだからな……話すならば英雄譚にしておけ」
 夢物語は叶わない、今必要なのは死者に名誉を与えることだと。
 勿論、その中には猟兵も含まれている。
「確かに戦場において、時に死とは名誉あるものです」
 だが戦場の申し子は――。
「それでも」
 英雄の詩を否定する。
「“そして誰も死ななかった、めでたしめでたし"なんて、|幸せな結末《ハッピーエンド》に勝るものはないのですから……!」
 誰も生命を失わない戦いこそが一番だと言わんばかりに。
「交渉決裂だな……私は|部下を英雄にしないといけない《部下に報わねばならない》責任がある」
「終わらせます、あなたの戦争を」
 互いに戦争を知るが故に僅かながらの理解を得る二人。
「私は|衛生兵《メディック》――もう誰一人死なせない」
 だが平和に終ることはない。
 二人は猟兵とオブリビオンであり、そして二人は戦争をしているのだから……。

 先に動くのはコマンダー。
 背中のガトリング砲が変形し一つの砲へと変わる。
 合計四門の砲がシプラを狙う。
 この距離なら自らが照準を担えばいい、部隊に砲兵も戦車兵もいないのはそういう理由だった。
 オブリビオン自体が砲を担っていたのだから。
 平射なら即死かグリモア猟兵による強制帰還は免れない。
 だからこそシプラはその目を|開いた《・・・》

 |催眠の羊眼《ヒュプノスシープス・アイ》

「魔眼か……だが、もうお前の距離は『測った』」
 戦慣れしたオブリビオンだ。視ただけである程度の距離は割り出せる。
 後は砲の威力で吹き飛ばせばいい。
 直接当てなくても、衝撃、爆風、なんなら榴弾で周辺ごと吹き飛ばすことも可能だ。
 だが、それは叶う事は無い。
「この眼の効力は無機物にも及びます」
 オブリビオンがシプラの言葉の意味に気づいたのは背中の砲が動かないと悟った時。
 逆に飛んでくる手榴弾。
 砲撃の代償にその場に留まったのが災いとなった。
 爆風から身を護る為、コマンダーが顔を覆い、口を開く。
 轟音と衝撃が響き渡った。

「くっ……」
 オブリビオンが破片によるダメージを警戒していたが、幸いにもそれは無い。
 いや違う……爆風効果がメインの|攻撃手榴弾《コンカッション》だ!
 だとしたら……。
「――牽制!?」
「そうです」
 爆風の中、距離を詰めたシプラが言葉と共に差し伸べるは|散弾銃《レミー》の銃口。

 銃声は二度響き渡り、コマンダーは足元を血で汚した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

グエン・ティホァ
※アドリブ歓迎、共闘不可

SPD判定

・行動
ユーベルコードで変身してその戦闘力でごり押しする
(理性が薄くなるので味方に近づかないように宣言してからUC使用)

・戦闘
【尾を飲み込む蛇】に【威嚇術】を併用
増大した戦闘力で「恐怖を与え」つつ
「怪力・グラップル・暗殺・毒使い」技能で暴れ回る
理性の喪失には「狂気耐性、継戦能力」で抵抗、少しでも長く戦い続ける
敵の攻撃は「環境耐性、激痛耐性」でとにかく耐える方向

・セリフ
どうかこれからの私に近づかないで欲しい……
そして、理性を失い怪物になり果てたのならばヤツと諸共に殺してくれ

|理不尽《オブリビオン》を殺すには更なる|理不尽《ユーベルコード》をもって対するしかない
行くぞ、私が貴様らの|死神《イェーガー》だ!

封印術式、122秒限定解除
決戦形態開放、【|尾を飲み込む蛇《ウロボロス》】!!
(両手のベルトと口枷が外れ全身の皮膚が硬化してヒビが入る、
脱皮して脱げた人型から真の姿が現れる)
ジャッ! ああああああああっ!

(変身解除後に)
無茶をした、皆すまなかったな……



●さらなる理不尽を以って

「くっ……」
 コマンダーがたたらを踏む。
 散弾だったのが幸いだった。
 肉を貫通せず、骨も髄も破壊されていない。
 散弾だったのが不幸だった。
 衝撃が肺を揺さぶり、呼吸を止める。
 そこへ――毒蛇が食らいついた。

「どうかこれからの私に近づかないで欲しい……」
 戦いの前、皆に告げるグエン・ティホァの言葉は拒絶ではなく。
「そして、理性を失い怪物になり果てたのならばヤツと諸共に殺してくれ」
 埒外への一歩と覚悟
「――カハァッ! まるで地獄を見てきたような眼だな」
 呼吸を取り戻した指揮官が笑う。
 同じように地獄を見て来た眼で。
「|理不尽《オブリビオン》を殺すには|更なる理不尽《ユーベルコード》をもって対するしかない」
「……お前はどっちだ猟兵」
 グエンの決意にオブリビオンは問いかける。
「オブリビオン殺しか、それともただのユーベルコード使いか?」
「私は……貴様らの|死神《イェーガー》だ!」
 蛇に皮膚に罅が走った。
「地獄は慣れている……今更、死神は要らない」
 コマンダーが皮肉と共にガトリング砲を回転させ、グエンの様子を見る。
 あの姿は肌の硬化を意味し、コブラたる相手がそれに至るという事は……。
「ジャッ! ああああああああっ!」
「……やはり脱皮からの|真の姿《踏み外し》か」

 封印術式、122秒限定解除。
 決戦形態、またの名を――。

 |尾を飲み込む蛇《ウロボロス》

 脱皮したその姿は人面鱗身の蛇人間。
 その姿で咆哮を放ち、爪を持って襲い掛かれば人は恐れをなす。
 だが……。
「目標、猟兵! 焼夷弾装填!」
 コマンダーは敢えて言葉を発す。
 それが恐怖を紛らわせる方法の一つ。
 そしてもう一つが――。
「撃てぇ!」
 銃声と反動、そして火薬の臭い。
 それがオブリビオンの恐怖を紛らわせた。
 グエンの爪より叩き込まれる焼夷弾。
 貫通はしない、だが――蛇を焼き尽くすには充分だ。
「しゃあああああああああああっ!」
 獲物を狙う声が響いた。
 炎の中よりグエンの腕が伸び、爪がコマンダーの皮膚を切り裂き、毒を流す。
「ぐぬぅ!?」
 神経毒――デンドロトキシンが筋肉の収縮を促しオブリビオンを麻痺させる。
 それでも指揮官は体当たりを仕掛けるように砲撃で焼けた銃身を押し付け蛇を焼いた。
「効かないなら――」
 麻痺しつつある中、生まれた隙。
 グエンに叩き込むかろうじて動いた拳、更に追撃のガトリング。
「空気を奪うだけだ、死神」
 勿論これは死に至らない。
 だが焼夷弾の効果がここで生きる。
「しゃ……カハァ!」
「もう酸素は無いだろう……私の勝ちだ、猟兵」
 炎が蛇の空気を奪い、酸素を奪い、肺腑の運動を阻害し、脳を殺す。
 もう一度とばかりにコマンダーは焼夷弾を装填する。

 それは死の宣告と同義の焼却命令

 だが――それより先にグエンの爪がオブリビオンの襟に引っかかる。
「――ッ!」
 声ならぬブラックマンバの叫び。

 続くのは|掴んで《グラップル》からの怪力による叩きつけ!

 地面が凹み、土が舞う。
「くっ……」
 かろうじて残った理性が蛇に距離を取ることを促した。
 身を大地に転がし、消火を試みるグエン。
 術式のリミットが来た。
 人面鱗身の蛇人間はただの獣人へと戻っていく。
「無茶をした、すまなかったな……」
 元の姿に戻った蛇に仲間が上着をかける中、グエン・ティ・ホァは謝罪する。
 答えは無い。
 最善を尽くした者へ何か言葉をかけるほど重いものは無いのだから。

 その沈黙をどう受け取ったかはグエンのみが知る。

 けれど戦いは続く。
 これが終わっても、その後にも。
 ……それが|理不尽《戦争》という物だから。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ロウガ・イスルギ
退かねえのかい?|傭兵《俺等》と違って正規軍人さンには
|戦略的《遺憾ながら》撤退ってのがあるんじゃねえのか?

敗北も絶望も受け取り拒否か!ごリッパなこった。
まだまだ|届け物《しごと》は残ってるんだ!終わりにしようや!
|頭《アンタ》を潰せば後は烏合の衆……タイマンといきますか!

敵の攻撃は【残像】【早業】【カウンター】にて回避
UC発動、グレイプニルより複製したドローミを束ね槍の如く変形させ
発射阻害及び誘爆による破壊を狙いガトリング砲の発射孔へ突っ込ませる

|物騒な《そういう》のは早めに対処、と。威力は大したモンだが
却って仇になったな!

焼夷弾誘爆で仕留められればよし、倒しきれていなければ
【リミッター解除】【限界突破】ガンディーヴァによる
射撃で仕留めよう

これで終わり、だ。|受領印《サイン》はいらねえよ。



見つけやしたぜダンナ。これから届けないといけないモンが
ありやして、はい。手伝って貰えますかい?
ダンナじゃないと出来ない仕事なんですわ。
届け先は村の結婚式場。届け物は|パトリック《頑固な兎》でさあ!



●届け物が一つ

 ゆっくりとオブリビオンが立ち上がる。
「退かねえのかい?」
 ロウガ・イスルギが問いかければ、コマンダーは笑う。
「命令がないからな」
「|傭兵《俺等》と違って正規軍人さンには|戦略的《遺憾》ながら撤退ってのがあるんじゃねえのか?」
 ロウガの言葉にオブリビオンは少しだけ考え、そして答えた。
「その仕事は私より上の将官がやることだ。私の仕事は上からの命令をこなし、兵を地獄に引きつれ、そして生き残らせること……だが、それが叶わないなら兵達に報いる結果が必要なのだよ」
 襟を正し、軍帽を被りなおす。
「そうでなければ、奴らは犬死となってしまう」
 傷つきながらも士官であろうとした者がそこに居た。

「敗北も絶望も受け取り拒否か! ごリッパなこった」
「そうでなければ、兵達を地獄に連れてはいけない」
 見栄を張るコマンダーに対して虎は言い放ち、オブリビオンもまた士官として答える。
「まだまだ|届け物《しごと》は残ってるんだ! 終わりにしようや!」
 だがロウガにも事情がある。
「|頭《アンタ》を潰せば後は烏合の衆……タイマンといきますか!」
「そう簡単に死ねないさ」
 勿論指揮官にも。
「死ぬのは将校としての責任を果たしてからだ」
 両方の事情が通る道はない。
 あれば争いなど無く、生命は消えない。
 だからロウガ・イスルギは戦うのだ。
 日常を奪い取る戦場の中で。

 先に動くのはロウガ。
 フック付きワイヤー『グレイプニル』を大量に複製すると槍として束ね、ガトリング砲の砲口へと叩き込む。

 |不空羂索《ラウンドアップ・ストラングラーズ》

「物騒なそういうのは早めに対処、と」
 誘爆は狙えなさそうだが発射は阻害できた。
 それをチャンスとスマートガンを構えるロウガ。
「威力は大したモンだが却って仇になったな!」
「本当にそう思っているか?」
 返って来たのは焼夷弾の嵐。
 オブリビオンの問いかけと共にまだ塞がっていないガトリング砲と銃口が猛威を振るっているのだ。
「|激発《弾丸発射》のタイミングをコントロールしたってのか!?」
「火力は落ちるが、撃てない事は無い――それがユーベルコードだろ?」
 虎が一瞬だけ舌打ちを漏らし、グレイプニルの槍を次々と叩き込む。
 戦場が燃える中、塞がっていく回転機関砲の銃口。
 だが焼却命令は実行され、炎の中に立つのはロウガとコマンダーの二人。
「お前の選択は間違ってはいない、むしろ面倒な手を使わないと行けなくなった!」
 オブリビオンが叫び、背中をぶつける。
 ロウガの肌がもう使えなくなったガトリングの熱で焼かれ、モーターの回転が肉を抉る。
「こんなまどろっこしい手を使わないといけないのだからな!」
 勿論、これはフェイントだ。
 虎自身も分かっている、明らかに殺意がこもった一撃ではない。
 ならば次が――本命だ。
「終わりだ、傭兵!」
 コマンダーの手にあるのは焼夷弾。
 強制排莢した一つを手に持って直接ロウガに叩き込むつもりだ。
「それはこっちの台詞だぜ!」
 銃声一発。
 限界を振り切ったガンディーヴァの気弾。
「これで終わり、だ!」
 スマートガン故にモーションが必要ない分、速い。
 勝負を分けたのは装備と知恵と無茶なカードを切るタイミング。
「|受領印《サイン》はいらねえよ」
 気弾の一撃で炎の中へと吹き飛ばされるオブリビオンに背を向けてロウガは戦場から離れた。

「見つけやしたぜダンナ。これから届けないといけないモンがありやして、はい。手伝って貰えますかい?」
「足が無くても出来る仕事かい?」
 虎の言葉に片足の兎は軽口を返す。
「ダンナじゃないと出来ない仕事なんですわ。届け先は村の結婚式場。届け物は|パトリック《頑固な兎》でさあ!」
 ロウガの台詞に肩を借りていたパトリックが笑い、そして口を開く。
「だとしたら、もう少し|戦場《ここ》に居させてくれ」
 頑固な兎は橋の向こうへ視線を向ける。
「見届けたいんだ、戦いの終わりを」

 自分には報告する役目があると。
 パトリックはそう告げると、ロウガも頷き傍らに立つのであった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

シリン・カービン
地上を炎で包む激しい戦いの最中、
音も無く上空から迫る脅威に獲物は気づけるでしょうか。

他の猟兵の戦闘開始後、爆音に紛れて指揮官の死角に回り、
UCで音も無く遥か上空へ駆け上ります。
天頂高くから直下の指揮官目掛け自由落下開始。

「|Du bist meine Beute.《あなたは私の獲物》」

精霊猟銃で狙うのは巨大なガトリング砲の駆動部。
矢継ぎ早に撃ちこんで動けない様に破壊します。
破壊が間に合わずに上空に砲身を向けられたとしても、
「待っていました」
こちらが本命。その砲口を狙い撃ち焼夷弾を誘爆させます。

攻撃後は残りの歩数を使って離脱します。

きっとあの二人は言うでしょう。
パトリック、次はお前の番だよ、と。


ユキト・エルクード
(アドリブ、絡み、連携歓迎)
理不尽な結末は破壊させて貰う。
それが俺に課せられた仕事だからな。

・戦術
占領が無理で勝てもしないなら、最後にやり出すことは嫌がらせだろう。
大見得切った戦闘は味方に任せて、俺は詰めの仕込みをやる。

敵味方が起こす爆炎や煙、戦場の僅かな起伏、撃破されたキャバリアの残骸等の障害物と、活性化されている技能をフルに使って己の存在を徹底して隠蔽しつつ移動。

可能なら大将の背後、無理なら側面近くの川縁か橋の下で待機。

味方の攻撃や混乱等、最高のタイミングを計ってUC【奉魂忍殺】を仕掛け、可能なら仕留める。
損ねたなら敵の砲口よりさらに内側へ突っ込んでヘイトを稼ぎ、他の猟兵達にトドメを促す。


臥待・月紬
この局面でも、退かないんスね。
そっちが軍人としての忠誠と意地を貫くなら、自分もやることは一つッス。

【陣中変化・808式】を発動。
|階梯0《自然階梯》の小鳥に化けて上空から接近、指揮官の背後から奇襲を試みる。
気取られるのは想定のうち。だから仕掛ける前にもう一度化ける。

先刻、森で交戦した尖兵隊長。目に焼き付いたその姿に。

きっと、部下の姿を写された程度で迷う相手じゃない。
でも、UCで10倍に強化した【化術】なら、【捨て身の一撃】をかます隙ぐらい作れるはず。

一瞬でも隙ができたら、収束手榴弾を投擲。
至近距離の【爆破】に、妖力を纏った【オーラ防御】で備える。
汚い騙し討ちには丁度いい賭け。いざ勝負ッス。



●超える一線

 炎の中、コマンダーが歩く。

 ――占領が無理で勝てもしないなら、最後にやり出すことは嫌がらせだろう。

 ユキト・エルクードが炎に隠れてオブリビオンを伺う。
「――目標の村まで10キロだったな」
 だが予想に反し、コマンダーの視線は橋の向こうへと向いていた。
「私が時間を稼ぎに稼いで、砲弾を撃ちまくれば村は落とせる。あとは発煙弾か何かで連絡すれば問題は無いな」
 嫌がらせどころではなかった。
 作戦としては稚拙だが、オブリビオンは諦めてはいないのだ。
 結婚式で賑わう村に砲弾を落とされる絶望は想像に絶えないであろう。

 ――詰めの仕込みをやる必要があるな。

 その為に終焉砕きの夜警は炎に消えた。

「この局面でも、退かないんスね」
 自然階梯の鳥が遠くより見るのはオブリビオン。
「そっちが軍人としての忠誠と意地を貫くなら、自分もやることは一つッス」
 空中でターンを切るとコマンダーの背後より臥待・月紬が奇襲を敢行する。
「新手か!」
 振り向いた指揮官がガトリング砲を発射する。
 無数の弾丸が空を切り裂く中、月紬はもう一度『化ける』
 最初の鳥もそうだった、これは臥待・月紬の術なのだ。
 狸の正体はこの世界に流れ着いた妖怪。
 そしてこの世界に生きる――化け術を使いし狸。

 |見せる姿はコマンダーの部下《陣中変化・808式》

「……もう迎えに来たのか?」
 コマンダーは憂いを見せた後楽しそうに笑った。
「だが、私はまだ責任を取っていない」
「そこまで想っているのなら――なんでッスカ!」
 オブリビオンのかつての部下――尖兵部隊の隊長の身を借りた月紬が叫び。
「お前だって分かっているだろう猟兵?」
 焼夷弾の猛威を潜り抜けた狸の投げる収束手榴弾を見つめて指揮官は答えた。
「私達は戦争をしているんだ」
「だったら――そんな戦争は自分達が止めるッス!!」
 月紬の叫びと共に手榴弾は爆発した。
「汚い騙し討ちには丁度いい賭け……だったッスかね?」
 地面に突き刺した軍用シャベルを杭に展開したオーラ防御で爆風と破片を防ぎながら狸は呟いた。

 ……その言葉が妙に重たく感じたのは気のせいだったのだろうか?

 爆音が響き渡る。
 その中を立ちあがるのはオブリビオン一人。
 せき込むと零れる赤い物。
 破片が腹の中を搔きまわしてくれたようだ。
 だからこそ、飛んでくる|彼女《・・》には気づかない。

 |風の妖精が如く空を舞う《シルフィード・ダンス》、シリン・カービンに!

 天頂まで駆け上がったシリンがそのまま重力に任せて落下する。
「待っていました」
 自由落下の中、構えた一撃が狙うのはオブリビオンの背にあるガトリング砲の駆動部。
 先の猟兵によって仕込まれたユーベルコードの戒めから解放された砲がその機構を破壊され、ただの束ねた筒と変わる。
「数で来たか……いや、好機と見て動いたな」
 猟兵の動きを理解している指揮官が負けじと残った砲で焼夷弾を放つ。
 弾丸の特性上、当たらなければただの弾丸。
 だから、狩人は引鉄を引くのだ。

「|Du bist meine Beute《あなたは私の獲物》」

 ――と。
 高速回転するガトリング砲の砲口を狙うのはユーベルコードの域でなければ叶わないだろう。
 だが……どんなに回転しても発射する銃身は一つ。
 位置とタイミングが合えば――発射される弾丸に当てて、オブリビオンを炎に包み込むことは可能だ!
 爆炎がコマンダーを包み込む中、着地したシリンが精霊猟銃の照準を合わせた。
「きっとあの二人は言うでしょう」
 狩人の思考の海に浮かぶのは幸せそうな犬と熊の姿。
「パトリック、次はお前の番だよ、と」

 闇が炎の中から飛び出したのはその時だった。

 ユキトは夜警にして忍者。
 故に暗殺を得意とする。
 かつては終焉砕きとして、効率的かつ|確実《クリティカル》に相手を倒していたが猟兵となってからはその鋭さは別の方向へと練り上げていた。

 そう――一撃の冴えへと。

「理不尽な結末は破壊させて貰う」
 爆炎が消えれば、オブリビオンの背後に立った夜警が告げる。
 その手にあるナイフはコマンダーの背中――腎臓辺りを正確に貫いていた。
「それが俺に課せられた仕事だからな」
 短剣を捩じり、臓腑を抉りユキトが離れる。
「――今だ」
 膝を着いたオブリビオンへと止めを促すように夜警が離れた。
 同時に響くのは猟銃の弾丸。
 ガトリング砲へと叩き込み、その衝撃でコマンダーの身を無理矢理起こさせる。
 たたらを踏むオブリビオン。
 そこへ月紬が全力で軍用シャベルを振りまわし、その頭部へと研いだ刃を叩き込んだ!

「いけたッスか!?」
 狸の言葉の直後、戦場に張られるのは炎のベール。
 オブリビオンが足元に焼夷弾を撃ち込んだのだ。
「…………」
 眉を顰め、シリン・カービンは銃を下す。
 炎が激しすぎて|慈悲の一撃《coup de grace》すら撃ち込めない。
「……しぶといな」
 ユキト・エルクードが狩人の隣へと歩みつつ呟いた。
「戦争……してるって……言ってた……ッス」
 臥待・月紬がゆっくりと言葉を選ぶように唇を動かす。
「オブリビオンになっても尚、戦争に囚われてる」
「ああ」
 シリンの言葉に、ユキトは一言、応えた。
「もう引き返せないところまで行ってしまった、そういうヤツだ、アレは」
 かつて砕いた|仮面《マスカレイド》。
 終焉砕きはオブリビオンにそれを重ねた。

 炎が、音を立て、そして猟兵達とコマンダーを隔てていた。
 どちらかが死ぬ……その一線を示すかのように。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴィリー・フランツ
心情:くそっ!?防衛ラインに到達しちまったか!
ボヤボヤしてると今までの戦果がパァだぜ。
手段:【宇宙海兵強襲部隊】を再編成、ロケット砲を持たせた一個中隊は揚陸挺に乗せ川沿いの防衛ラインに再配置させる、レジスタンスの他に猟兵も残ってると思うが、念のためだ。
残る二個中隊は俺に続け、森を抜け敵司令官に強襲をかける!

俺は個人携帯型磁場展開式偏向フィールドを展開し先頭でヘイトを集める、殲滅形態に移行したら現状の火器じゃ反撃出来ん、突撃歩兵宜しく弾幕の中を突っ込んで混戦に持ち込むしかねぇ!
接敵出来たら敵車両やキャバリアには海兵のロケットやプラズマグレネードで攻撃、司令官にはヒートアクスを叩き込んでやる。


イーブン・ノルスピッシュ
連携アドリブ歓迎
チッ、抜けられたか
だが間に合わせる!
|今の俺《猟兵》ならば、届くはずだ!

これ以上森を燃やすのは忍びない
噴き上がる炎を凝縮して身に纏う
地面を蹴って空へと駆け上がる
森を抜けて、コマンダーの方を瞥見
最短距離を急降下しよう
展開したキャバリア共から反撃が来ようとお構いなしだ
炎の【オーラ防御】と【火炎耐性】を盾に吶喊する
落下速を乗せた徹甲弾の【零距離射撃】とパイルバンカーの【捨て身の一撃】を同時に放つぞ
数瞬遅れて追従した炎も地面で弾ける
手近なキャバリアを巻き込んで【焼却】してやる

|貴様ら《オブリビオン》に川は渡らせん
あの村で芽生える幸福と、それを守る者にかけて、必ず!



●防衛戦線

 炎から逃れたコマンダーが改めて時間と距離を計算する。
 正直、稚拙な作戦だと自分でも思う。
 だが兵も下士官も失った今、出来ることはユーベルコードによる砲撃。
 けれどタイムリミットは迫っていた。
 先回りして橋へと展開する飛行揚陸艇をオブリビオンは目撃したのだから。

「くそっ!? 防衛ラインに到達しちまったか!」
 指揮官が橋に到達したのを知ったヴィリー・フランツはすぐに宇宙海兵強襲部隊を再編制し、一個中隊を揚陸艇の乗せて先行させた。
 他の猟兵もいるが橋と川を確保することは重要だ。
 そうすればキャバリアや砲兵を展開することは難しくなる上に、上手く行けば残した中隊と挟撃が可能だ。
 勿論、それはコマンダーも分かっている。
 だからこそガトリング砲を殲滅砲火形態へと変形させた。
 |空挺降下《エアボーン》でないのがオブリビオンにとって幸いだった。
 一発の破壊力と射程距離を増した砲火なら――中に居る兵ごと落とせるのだから。
 空が赤く染まり、揚陸艇が落下していく。
 背後からの銃弾が指揮官を貫いたのはその直後だった。

「残る二個中隊は俺に続け!」
 紫煙漂うブルパップ片手にヴィリーが麾下の中隊に指揮を発す。
「ボヤボヤしてると今までの戦果がパァだぜ」
 念のためと展開させようとした一個中隊は潰されたが予測の範囲。まだこちらには兵が残っている。

 |宇宙海兵強襲中隊《スペースマリーンカンパニー》が!

 今、コマンダーが喉から手が出るほど欲しい存在を引きつれて傭兵は強襲をかける。
 対するオブリビオンは砲の向きをヴィリー達へと向け弾丸を装填した。

 ……いけるか?

 傭兵は内心焦りを感じていた。
 揚陸艇を落とせる火力。
 個人携帯型磁場展開式偏向フィールドを展開し自分へと引き寄せようとしているが……砲の余波を浴びるであろう海兵隊は無事では済まない。
 上手く弾道を逸らすか、あるいは――|もう一人《・・・・》に賭けるのみ!

「抜けられたか」
 これでイーブンゲームと言うなら、神の趣味は悪いに違いない。
 だが、間に合わないとは思っていない。
「|今の俺《猟兵》ならば、届くはずだ!」
 そう、地獄から戻って来たイーブン・ノルスピッシュにはその力があるのだから。

 森を焼く炎がイーブンへと流れ込む。
 これ以上、此処を焼くのが忍びないのとそれ以上に心に迸るものがある。
 怒りか、情念か、それは分からない。
 だが激情が焔となった時、森を焼く炎は亡霊兎へと引き寄せられ、一つとなる。
 炎が大地を蹴った時、凝縮されたエネルギーは足元で爆発し、イーブンを空へ飛ばした。

 目的地は分かっている。
 仲間が教えてくれた。
 狙うべきは分かっている。
 海兵隊を率いる猟兵に砲を向けたオブリビオンだ。
 あの砲を止め、そして展開されつつあるキャバリアを排除しなければならない。
 こちらに気づいた砲撃型キャバリアが対空射撃にて迎え撃つがそんなことは構わない。
 |ノルスピッシュL50-50《フィフティー・フィフティー》を構え、只、吶喊するのみ!

 |オレステスの業怒《オレステス・アヴェンジ》

 炎に包まれた亡霊兎がコマンダーへと飛びこめば、その腹へパイルバンカーをねじ込み、同時に徹甲弾の引鉄を引いた。
 二つを激発音が響き、オブリビオンが吹き飛んだ。
 そして着地と同時に炎を走らせ、展開させたキャバリアも焼き尽くす。
「今だ!」
「いくぞ、野郎ども!」
 イーブンの言葉が機となって海兵隊がキャバリアへと攻撃を開始する。
 ロケット砲を放ち、距離を詰める。
 大型機動兵器であるキャバリアや戦車は小回りが利かない。
 損耗を考えなければ、一番に恐れる存在は歩兵なのだ。
 しかも亡霊兎の炎がキャバリアの視界を塞いでいれば幽霊中隊が有利。
 機動兵器が兵に圧倒される中、ヴィリーとイーブンが走る。
「|貴様ら《オブリビオン》に川は渡らせん」
 亡霊兎が大型の改造銃の銃床を腹に叩き込み。
「あの村で芽生える幸福と、それを守る者にかけて、必ず!」
 その顎をかち上げる。
「そういう事だ……諦めな!」
 仰け反ったコマンダーへと傭兵の振るうヒートアクスが叩き込まれ、ガトリング砲が一門、宙に舞った。

 防衛線は維持され、村への被害はひとまず回避された。
 あとはオブリビオンを死への道に送るのみ――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ティオレンシア・シーディア
予想はしてたけれど大概な火力ねぇ…
急拵えの防衛陣地じゃ障子紙にもならないわよねぇ、コレ。
まあもともと大駒止めるための物じゃなかったしねぇ。

…というかコレ、焼夷弾後ろに流したら村は流石に範囲外にしても畑とかマズいんじゃ…?なんとか止めないと、よねぇ…
…近くの川で水気は十分、|防衛陣地《境界線》もまだ残ってる――場の状況としては十全ねぇ。
MG・AR・GL積めるだけマウントしたスノーフレークをマルガリータと直結、●鏖殺・滅謡と黙殺・砲列を同時起動。描くのはラグとソーン――即ち、「阻害する流れ」及び「水による門」。ベタ足で|全力全開全門開放《フルファイア》○一斉発射、魔術文字の○弾幕による結界術も同時起動・全力稼働させて片っ端から叩き墜とすわぁ。マルガリータ、|同時多重捕捉《マルチロックオン》よろしくねぇ?
当然本体にも射撃はブチ撒けるわよぉ。折角川縁にいるんだもの、|水妖《ルサールカ》の足引きを味わっていきなさいな?

そろそろ兎さん送ってあげないと慶事に遅れちゃうもの。いい加減潰れてちょうだいな?



●野望折れるまで

 炎の中に消えていくキャバリアを見つめながら、オブリビオンは立ちあがる。
 まだ残っている機動兵器があれば、まだ動く背中のガトリング砲があれば……戦争は続けられるのだから。
 だが指揮官は気づかなかった。
 いや分かってはいたが、敢えて見なかったのだ。
 兵に話せば、戦意が落ちる事は確実だったが故に。

 森の中の防御陣地。
 尖兵部隊に同行した迫撃砲分隊の壊滅。
 明らかに戦い方を知っており、戦闘をコントロールした者が居た。
 ティオレンシア・シーディアがオブリビオンの心を挫くために用意したのは機動兵器――キャバリアであった。

「予想はしてたけれど大概な火力ねぇ……」
 世界樹にて発掘した|全環境対応型機体《スノーフレーク》にアサルトライフルとグレネードランチャー、そしてマシンガンを詰めるだけ取り付けたマンハンターともいえる存在をティオレンシアは川の中心に着地させる。
「……というかコレ、焼夷弾後ろに流したら村は流石に範囲外にしても畑とかマズいんじゃ……?」
 現場の状況を確認し、流れ弾を懸念する魔法言語の女。
「なんとか止めないと、よねぇ……」
 実際、戦場は炎が走っており、橋を越えたレジスタンスの防御陣地に届いていなかったのが幸いだった。
 この辺りは指揮官の性格だろう。
 ティオレンシアはそう看破し、戦場を再確認。
「……近くの川で水気は十分、防衛陣地境界線もまだ残ってる――場の状況としては十全ねぇ」
 せっかく有る物は有効に利用すべきだ。
「ゴールドシーン……お願いねぇ」
 主の意に従いシトリンのペンを模した鉱石生命体が空を走り、ルーンを……魔術言語を描く。

 |ᛚᚦ《水の流れは阻害され、門となり対岸を塞がん》

 たちまち川にそびえ立つ壁、通る道は橋一つのみ。
「――チィッ!」
 舌打ちと共にオブリビオンがガトリング砲をティオレンシアに向け焼夷弾を放つ。
 人と機動兵器が真正面から撃ち合えば、敗北は必至。
 だが、コマンダーの武器は焼夷弾。
 武装の誘爆、過熱によるオーバーヒート。
 隔壁が未熟なら乗り手はキャバリアの中で蒸し焼きにされるであろう。
 だが、この戦場に置いて盤面を操っていたのは糸目の女なのだ。
 描かれる魔法言語はユーベルコード。
 併用可能な|二種発動《プラスワン!》

 |鏖殺・滅謡《アサルト・パソドブレ》
 |黙殺・砲列《デザイア・バッテリー》

 言葉は砲台。
 言葉は弾丸。
「マルガリータ、|同時多重捕捉《マルチロックオン》よろしくねぇ?」
 スノーフレークに搭載した武装含めてAIの助けを借り、アクセルベタ足で|全力全開全門開放《フルファイア》
 コマンダーの焼却命令を上回る鉄量を以って、焼夷弾を駆逐すれば。狙いは当然オブリビオンへ。
「折角川縁にいるんだもの、|水妖《ルサールカ》の足引きを味わっていきなさいな?」
 指揮官の立つ戦場へと弾丸と砲弾をありったけ叩き込む。
 ある意味では過剰であったが水妖と化したキャバリアは、ティオレンシアは手を緩めない。
「そろそろ兎さん送ってあげないと慶事に遅れちゃうもの」
 ここで叩き折らなければならない。
「いい加減潰れてちょうだいな?」
 コマンダーがわずかでも持ち、伺っている勝機を。
 任務を果たさんとする鉄の心を。
 死んでいった部下への報いとして結果を作り出さんとする卑近な存在にもある小さな気高さを。
 全て叩き折らなければ、戦闘は終わらないのだ。

 ゾルダートの戦争を終わらせるため、ティオレンシア・シーディアは引鉄を引き続けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

東・よるは
【狼と桜】
総て越えよと……

……よるはが叫ぶ。

交戦を開始次第真の姿に変身しつつ戦闘を行います。
頭の桜の樹が失せ、桜色に転じる髪。真の姿、桜の神が参ります。

基本的に防御は閃夜による武器受け、継戦能力による長期戦への適応にて対処。
ラウラちゃんの援護を受ける形で、ジャンプからの空中機動で自由に暴れ回り、効率的に兵士たちを斬り伏せましょう。戦闘知識を活かし、手負いの敵から順に、確実にその数を減らします。余裕が有れば敵指揮官を空中機動で撹乱したりもしましょう。

ラウラちゃんがUCを発動するようでしたら…。
ええ、その火力の嵐に、さらに彩りを与えましょう。

一度納刀……UC発動。
獣人戦線世界の森羅万象を刃に宿し、ゆっくりと抜刀して、浄化の力をも込めて力を底上げしたならば……。

色は碧空……深き森なる、戦の色。

居合技能で完全に抜刀、至近距離でこれを直撃させ切断しにいきます。

深き森の世にて生命を摘み踏み躙る者よ。
お前をこうして殺したら、お釣りは幾らくるかしら。
……なんて、分かりたくも無いけれど。


ラウラ・シュトラウス
【狼と桜】
さぁ、ここからが本番だ。
よるはと共にヤツを倒そうか。
このままヤツらの喉笛を噛み千切ってやる。

まずは事前準備として双眼鏡型のターゲットロケーターから敵指揮官を覗いて、4点マーキングして囲っておこう。これは”その時”が来るまで追尾し続けてくれるはずだ。

その後はよるはが攻撃しやすいようにMGLで[制圧射撃]をしよう。[爆破]で射撃体勢に入るのを妨害しつつ、[援護射撃]をして手傷を負わせて気を引きたいね。時折スモークグレネードを投げて敵の視界を塞いだ後にチェイスマインを転がして、自分のいる方向とは別の場所から攻撃もしよう。

煙幕で見当違いの場所を攻撃してる間に《Fortress Buster》でミサイルランチャーをこちらに投下させて起動する。本体にロケーターを接続して同期したら、敵にミサイルランチャーを構えよう。晴れた頃にはちょうど発射した姿が見えるだろうね。
あとはMGLで牽制しながら着弾を見届けてやろう。
猟兵に戦いを挑んだことを悔いる間も無く斃れるがいいさ。



●そして誰も死ななかった

 戦場は焦土と化し、川は障壁へと変わり。
 例えキャバリアをもってしても、砲を用いても、最早作戦は叶わない。
 ゾルダートの作戦はここに潰え、オブリビオンは責任を取る時が来た。
 降伏?
 それは無い。
 生き方が違うのだから。
 だからこそ……。

「感謝する」

 目の前に立つ東・よるはに礼を述べ、遠くより自らへ死の感覚を位置づけたラウラ・シュトラウスの居るであろう方向へ目礼を捧げた。

「さぁ、ここからが本番だ」
 オブリビオンをマーキングしターゲットロケーター越しにラウラが呟いた。
「よるはと共にヤツを倒そうか」
 確かに本番なのだ。
 今までは村へと向けようとしたキャバリアや砲が二人へと向けられる。
 正面から走る桜の精にはキャバリアとオブリビオンの射撃が、そして|狼《ルプス》自身も数回の狙撃でおおよその地点を割り出され、砲撃が叩き込まれるであろう。
「このままヤツらの喉笛を噛み千切ってやる」
 常識的に考えれば分は悪い。
 だが二人ならば、そしてもう一つのカードを切り、戦場の空気を支配すれば勝利は掴める。
 ラウラの手には輪胴弾倉の擲弾発射機。
 砲には砲で――まず対抗する!

 最初はグレネードランチャーによる制圧射撃から始まった。
 爆発の中、コマンダーは最後のカードを切る。

 砲戦型パンツァーキャバリア部隊。
 
 他の猟兵が徹底的に指揮官を攻撃し、川を壁とし、中隊規模の兵士で潰しにかかった機動兵器。
 射程距離に優れた砲がグレネードの発射された領域へと向けられつるべ打ちにかからんとすればラウラとてひとたまりもない。
「総て越えよと……」
 だからこそ、よるはは|超越した力《オーバーロード》を以って。
「……よるはが叫ぶ」
 真の姿――埒外の領域へと足を踏み入れる。
 桜の精の証であった頭の桜は消え、代わりに黒髪が桜色へと花開く。
 それは神の証、桜神となったよるはがオブリビオンを超え、キャバリアへと刀を振るう。
 清水と神鋼、自然の力を宿した霊刀を一閃すれば光をたなびかせて機動兵器が切断され、消えていく。
 直後、投じられた煙幕弾。
 コマンダーの視界が塞がれ、次々と転がっていくる自走爆弾がオブリビオンの動きを封じ込め、キャバリア部隊への指揮を阻む。

 グレネード弾はキャバリア部隊にも撃ち込まれた。
 武器と弾丸の性質上、機動兵器を破壊するには至らないが動きを止めるには充分。
 そうすれば――桜神が舞い、刃が煌めくのだから。
 一歩跳躍、二歩切断。
 動きの遅い相手、手負いの敵を狙ったよるはは確実に仕留めていく。
 5mに届くかのような巨人と言えど、桜神には叶わない。
 しかも彼女には狼という十全な支援があるのだから。
 最後のキャバリアを両断し、後はコマンダー一人となった時、オブリビオンは最後の一撃とばかりにガトリング砲を砲へと変形させていた。

 煙幕、自動爆弾。
 数々の手管が指揮官を混乱させていた。
 だが、その中でも推測し、ラウラがどこから撃ってきているかを計算することは出来た。
 オブリビオン自身も砲兵であり、指揮官なのだから。
 だから――ミサイルランチャーを構えた狼を狩る殲滅砲火を構えることができた。
 先に放たれたのはラウラのミサイル。
 遅れて、コマンダーの砲が発射されようとしている。
 当たるのは砲弾が先だろう。
 これは武器の性質上の差。
 大砲の初速はミサイルを上回るのだ。
 けれど狼が狩られる事は無い。
 その砲はよるはが切断するのだから。
 桜神が離れると同時に天頂よりミサイルが叩き込まれた。

 |Fortress Buster《フォートレス・バスター》

 ターゲッティングは既に最初に行っている。
 初速に負ける分、誘導性を持ち高い命中精度を持っているのがミサイルの特徴。
 しかも発射されるのは要塞を破壊する貫通弾。

 致命傷はまず、免れない!

 火柱が立ち、後に残るのはオブリビオンの命の残り火。
 そしてよるはは刀を納め、腰を落とす。
 ラウラの一撃に更なる彩りを与えんがために。

「深き森の世にて生命を摘み踏み躙る者よ」
 ミサイルによって焼かれた男へ女へ呼びかける。
「お前をこうして殺したら、お釣りは幾らくるかしら」
 よるはの問いかけに返ってくるのは全てを失ったオブリビオンの虚ろな瞳。
「……なんて、分かりたくも無いけれど」
 だからこそ桜神は駆け、そして退魔刀『閃夜』を。
「釣りはやらん、全て地獄へ持っていかねば部下に悪いからな」
「――!?」
 抜刀した。

 |現世成レバ《ウツシヨナレバ》

 碧空――深き森なる、戦の色が戦争に囚われた過去の残滓を薙ぎ払う。
 そこには何も残らず、ただ戦いの後だけが残った。

「……死んだね」
「猟兵に戦いを挑んだことを悔いる間も無く斃れるがいい……と思っていたが」
 戦いが終わり、桜の精となったよるはの呟きにラウラが応えるように口を開いた。
「案外、死にたかったのかもしれないな」
 紛争の中で生まれたラウラ・シュトラウスが知っていた、終わりを求めていた人間。
 彼女がそれを思い出すと。
「そうかもね」
 東・よるはが同意した。

 どちらにしてもそれを知る術は無く。
 それ以上に今は祝い事を優先せねばならなかった。
 結婚式に遅れた兎を連れて行かねばならないのだから。

 ――そして|誰も《オブリビオン以外は》死ななかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年04月22日


挿絵イラスト